説明

手摺試験装置

【課題】 設置された手摺の上面から水平方向に加圧する水平試験と、設置された手摺の上面から垂直下方に加圧する垂直試験とを、設置し直すことなく効率的に且つ正確に行うことのできる試験装置を提供する。
【解決手段】 手摺の笠木HTの複数個所それぞれに圧接する複数の圧接コマ11と、複数の圧接コマ11を保持するコマ保持部1と、前記コマ保持部1と交差して取り付けられ、その交差方向に可動する加圧シリンダを有するジャッキ2と、前記ジャッキ2を所定位置及び所定角度で保持して設置固定される保持アーム3と、を具備する。保持アーム3は、アーム本体の角度調節とジャッキの配向角度調節が可能であり、水平保持状態S1と、垂直保持状態S2の2状態を維持し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場に取り付けた手摺の取り付け強度を確認するための手摺強度試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用手摺の取り付け強度に関し、手摺部材自体の強度試験のほかに、実際に接地された手摺の取り付け強度を確認する試験が求められている。例えば或る財団法人が発表する住宅部品性能試験方法においては、設置された手摺を側面から水平方向に所定荷重で加圧する水平荷重試験、或いは、設置された手摺を上面から垂直下方に所定荷重で加圧する鉛直荷重試験を行い、このときの撓み量が所定長を超えないこと、或いはこのとき破壊、変形、破損が生じないこと等が、優良住宅部品に求められる基準である、とされている。
【0003】
上記のような取り付け状態の手摺の強度を確認するものとして、従来、手摺を設置する床面にフレームを載置し、このフレームに、手摺に水平荷重を載荷する加圧機と、水平荷重を検出するロードセルと、手摺の水平変位を測定する変位計とを装備し、かつフレームに、手摺の支柱の基端部に係止する係止部を設けた手摺強度試験機が開示される(特許文献1参照)。これは、係止部が手摺強度試験機の転倒及び滑動を阻止するものであり、また支柱の基端部に係止部を係止するので、係止部から受ける力が手摺の強度に影響することはない、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−309510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記住宅部品性能試験方法をはじめとする取り付け後の手摺性能試験の多くは、笠木部分や支柱部分などの手摺構成材に水平荷重を加える水平荷重試験と、手摺構成材に鉛直荷重を加える鉛直荷重試験によるものからなる。しかしながら上記従来の手摺試験装置は、一旦設置した試験機を水平荷重試験、鉛直荷重試験のそれぞれに対応して、一旦設置した試験機を取り付け面から外し、各試験用に組み替えて設置し直す必要があった。このため、水平荷重試験と鉛直荷重試験の切り替えに手間や時間がかかり、手摺強度試験を効率的に且つ正確に行うことに支障があった。
【0006】
そこで本発明は、一旦設置した試験機を水平保持状態、鉛直保持状態の2状態に切り替えることで、設置された手摺の上面から水平方向に加圧する水平荷重試験と、設置された手摺の上面から垂直下方に加圧する鉛直荷重試験とを、取り付け面へ設置し直すことなく連続的に行うことができ、もって手摺の取り付け強度試験を効率的に且つ正確に行い得る手摺試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明では下記(1)〜(4)の手段を講じている。
【0008】
(1)本発明の手摺試験装置は、手摺の笠木(HT)に加力して取り付け済みの手摺(H)の取り付け強度試験を行う手摺試験装置であって、
手摺の笠木(HT)の複数個所それぞれに圧接する複数個の圧接コマ(11)と、
笠木近傍にて笠木と略並行に延伸配置され、前記複数の圧接コマ(11)を保持するコマ支持部(1)と、
前記コマ支持部(1)と交差して取り付けられ、当該交差方向に可動する加圧シリンダを有するジャッキ(2)と、
前記ジャッキ(2)を所定位置及び所定角度で保持し、床面、天井面、又は壁面の少なくともいずれかの取り付け面に設置固定される保持アーム(3)と、を具備してなる手摺強度試験機であって、
前記保持アーム(3)は、取り付け面に設置固定される基部(4)と、前記基部(4)に角度調節可能に基端固定されて所定の調節角度で伸長するアーム本体(33)と、前記アーム本体(33)上を移動可能な取り付け枠(32)を介してアーム本体(33)の所定位置に取り付けられると共にジャッキ(2)を所定の調節角度に配向保持する連結保持部(31)とを有してなり、
前記アーム本体の角度調節とジャッキの配向角度調節とによって、
ジャッキ(2)を笠木と略同一高さで略水平保持する水平保持状態(S1)と、
ジャッキ(2)を笠木の略鉛直上方位置で下垂保持する鉛直保持状態(S2)と、の少なくとも2状態を維持し得ることを特徴とする。
【0009】
(作用効果)前記水平保持状態にてジャッキを作動させることで、複数の圧接コマによって手摺を水平方向に同時加圧することが可能である。一方、前記鉛直保持状態にてジャッキを作動させることで、複数の圧接コマによって手摺を笠木側面から水平方向に同時加圧することが可能である。
【0010】
また保持アームの角度調節によって水平保持状態と鉛直保持状態の2状態を入れ替えることができるため、一旦設置状態にすればそのまま水平方向加圧試験と垂直方向加圧試験という2試験を同機で行うことができる。特に、長尺の保持アーム33を、手摺の取り付け壁付近に下端固定し、上端側部分でジャッキを角度調整可能に取り付けた構造とし、この角度調整したジャッキによって手摺を加力することによって、鉛直方向と水平方向以外の任意の角度での加圧状態を容易に設定することができる。また前記保持アームは構造上引っ張り方向に加力されるため、大きな座屈強度を要することなく効率的に加圧構造を支持することができる。これは保持アームの軽量化や構造簡易化に貢献するため、運搬性に優れた試験機を安価に提供することに繋がる。
【0011】
(2)上記手摺試験装置において、
前記保持アーム(3)は、一つの基部(4)から並走して伸長する複数本のアーム本体(33)と、これら複数本のアーム本体(33)それぞれに取り付けられた取り付け枠(32)間に挟持固定される連結保持部(31)と、を具備してなり、
前記ジャッキ(2)は、連結保持部(31)の前記取り付け枠間の側面から突出固定されてコマ保持部(1)に先端連結された配向軸(21)と、
配向軸(21)に挿通保持される挿通部を有するセンターホールジャッキ(22)とを具備してなることが好ましい。
【0012】
(作用効果)上記のものであれば、並走する複数本のアーム本体の間でジャッキを保持することで、支持荷重を均等なものとなり、余計な曲げモーメントが発生しにくい状態でジャッキを安定的に保持することが可能となる。特に、後述する実施例では保持アームが並走する一対のアーム(ダブルアーム)からなり、アーム間の中間位置にてジャッキの基部を保持するものとしている。ジャッキアップによって加圧反力が発生しても、保持アームには余分な曲げモーメントが発生しないため、安定的にジャッキを支持することができる。
【0013】
(3)上記手摺試験装置において、前記コマ保持部は、笠木と並行して、前記配向軸の連結部を中心とする両側方へ伸長形成された対向面と、この対向面内であって前記配向軸の連結部を中心とする両側方対称位置に設けられた複数の支持穴とを有してなり、
また、前記複数の圧接コマは、それぞれ前記取り付け穴へ挿入固定される支持突部を有してなり、各支持突部が前記取り付け穴のいずれかの対称位置に突入支持されることが好ましい。
【0014】
(作用効果)上記のものであれば、ジャッキの連結部を中心として左右均等な位置における左右均等な圧接を確実に行うことができる。
【0015】
(4)前記いずれか記載の手摺試験装置においては、さらに、高さ調整可能な支持枠を上端に有した支持架台(5)を具備してなり、この支持架台(5)をジャッキ配設位置の床上に選択式に立設して、連結保持部31及び/又はコマ保持部1を支持するように組み合せて設置し得ることが好ましい。
【0016】
上記のものであれば、支持架台の組み合せという比較的簡易な方法によって、ジャッキを水平方向に安定的に保持することができ、より正確な水平荷重試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
上記手段を講じており、一旦設置した試験機を水平保持状態、鉛直保持状態の2状態に切り替えることで、設置された手摺の上面から水平方向に加圧する水平荷重試験と、設置された手摺の上面から垂直下方に加圧する鉛直荷重試験とを、取り付け面へ設置し直すことなく行うことで、手摺強度試験を効率的に且つ正確に行うことのできるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の手摺試験装置の水平保持状態における斜視図。
【図2】図1に示す実施例1の手摺試験装置の上部構成の分解斜視図。
【図3】図1に示す実施例1の手摺試験装置の下部構成の分解斜視図。
【図4】図1に示す実施例1の手摺試験装置の平面説明図。
【図5】図1に示す実施例1の手摺試験装置の側面説明図。
【図6】実施例1の手摺試験装置に支持架台を組み合わせた水平保持状態における斜視図。
【図7】図6に示す実施例1の支持架台を組み合わせた水平保持状態の手摺試験装置の平面説明図。
【図8】実施例1の支持架台組み込み手摺試験装置の水平保持状態の使用状態例を示す正面図。
【図9】図8の使用状態例における側面図。
【図10】実施例1の支持架台組み込み手摺試験装置の鉛直保持状態の使用状態例を示す正面図。
【図11】図10の使用状態例における側面図。
【図12】実施例2の手摺試験装置の設置状態の下部構成を示す部分拡大正面図。
【図13】実施例2の手摺試験装置の設置状態の下部構成を示す部分拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の手摺試験装置は基本的に、取り付け施工された手摺の笠木HTの複数個所それぞれに圧接する複数の圧接コマ11と、複数の圧接コマ11を保持するコマ保持部1と、前記コマ保持部1と交差して取り付けられ、その交差方向に可動する加圧シリンダを有するジャッキ2と、前記ジャッキ2を所定位置及び所定角度で保持して設置固定される保持アーム33と、を具備する。保持アーム33は、アーム本体の角度調節とジャッキの配向角度調節が可能であり、手摺試験装置を手摺付近の床面、壁面又は天井面に設置した後にこれら角度を調節することによって、ジャッキ2を水平に保持して手摺の笠木HTの側面を水平方向に圧接加圧する水平保持状態S1と、ジャッキ2を鉛直方向に保持して手摺の笠木HTの天面を鉛直下方に圧接加圧する鉛直保持状態S2との2状態を維持し得るものである。
【実施例1】
【0020】
図1〜11に示す実施例1の手摺試験装置は、手摺の笠木HTの複数個所それぞれに圧接する弾性板11Fを先端固定した円柱状の圧接コマ11と、
笠木HT近傍にて笠木HTの側面又は天面側と略並行に延伸配置された穴開き角棒からなり、角柱の一面に列設した固定孔12Hによって前記複数の圧接コマ11を挿入保持するコマ支持部1と、
前記コマ支持部1の角棒の伸長方向と直交して角棒の略中央位置に取り付けられ、当該直交方向にシリンダ伸縮可動する加圧シリンダを有するセンターホール型のジャッキ2と、
前記ジャッキ2を、笠木HTの側方ないし上方の所定位置、かつ、水平方向ないし垂直方向の所定角度で保持し、床面、天井面、又は壁面の少なくともいずれかの取り付け面に基部4を介して設置固定される保持アーム33と、を具備してなる。
【0021】
ここで保持アーム33は、一つの基部4から並走して伸長する複数本たる2本のアーム本体33と、これら2本のアーム本体33それぞれに取り付けられた取り付け枠32と、取り付け枠32間に角度調節機構を介して挟持固定される連結保持部31と、を具備してなる。
【0022】
そして前記ジャッキ2は、連結保持部31の前記取り付け枠間の側面から突出固定されてコマ保持部1に先端連結された配向軸21と、
配向軸21に挿通保持される挿通部を有するセンターホールジャッキ22とを具備してなる。
【0023】
(圧接部1)
圧接部1は、圧接コマ11、コマ保持枠(反力受け角パイプ)12から構成される。
【0024】
(コマ保持部)コマ保持部は、笠木と並行して、前記配向軸の連結部を中心とする両側方へ伸長形成された対向面と、この対向面内であって前記配向軸の連結部を中心とする両側方対称位置に設けられた複数の支持穴とを有してなる。また、前記複数の圧接コマは、それぞれ前記取り付け穴へ挿入固定される支持突部を有してなり、各支持突部が前記取り付け穴のいずれかの対称位置に突入支持される。実施例では断面正方形空間を有する剛性板からなる中空角パイプで構成される。このコマ保持部たる中空角パイプは、伸長方向中央で配向軸21に軸貫通連結されており、角パイプの外側面(笠木との対向面)内の左右対称位置に複数追の支持穴121Hが形成されてなる。圧接コマ11の本体を構成する円筒部は、固定ネジ11Pを介していずれかの支持穴121H内に螺入固定され、コマ先部に弾性円板からなる圧接板11Fが貼付け固定される。圧接コマ11がジャッキの連結部を中心として左右均等な位置に一対または複数対ずつ保持されることで、ジャッキによる加圧部となる配向軸21を中心として、角パイプの伸長方向に沿った左右均等な圧接を確実に行うことができる。
【0025】
(検出器2)
検出器2は、連結保持部31及びセンターホールジャッキ22内を挿通して所定角度に配向させる配向軸21と、配向軸21が軸挿通するセンターホールを有した筒状シリンダ式のセンターホールジャッキ22と、配向軸21用の挿通孔23Hを中心に有して所定間隔でバネ連結された2枚の矩形板によって立方体状に構成された立体スペーサー23と、配向軸21用の挿通孔を中心に有した剛性板体からなる板スペーサー24から構成される。配向軸21は周面に螺子溝が形成された長尺の円柱棒体からなり、取り付け時には図2に示すように、連結保持部31の保持孔31H、立体スペーサー23の挿通孔23H,板スペーサー24の各挿通孔、及び、センターホールジャッキ22のセンターホールへ順に挿通して、軸先端部(図2の向かって左下方向端)が、コマ保持部の内側面(角パイプの両側面のうち、笠木と対向する外側面に対して反対側の側面)に形成された螺子孔12h内に螺入し、軸基端部(図2の向かって右上方向端)に固定ナット21Nが螺子止めされて、これら各部材(連結保持部31、立体スペーサー23、板スペーサー24、センターホールジャッキ22、コマ保持部12)を順に連結支持する。このうち立体スペーサー及び板スペーサーは、センターホールジャッキ22のジャッキ長、及び保持アーム33に取り付けて角度調節した連結保持部31とセンターホールジャッキ22との隙間の量に合わせて選択式に挿入される。図2〜図9では水平支持状態S1を保持するために、1つの立体スペーサー23と2枚の板スペーサー24とを順に挟設するものとしている。図10、図11では鉛直支持状態S2を保持するために、これらすべてのスペーサーを取り除き、連結保持部31とセンターホールジャッキ22とを直接隣接させて固定ナット21Nで挟み込み固定している。
【0026】
(保持機構3)
保持機構3は、連結保持部31、軸ピン31P、スライド枠32、角度調整孔32H、角度調整ピン32P、保持アーム33、枢支枠34から構成される。このうち連結保持部31は、アーム間内幅33Bと略同一幅の孔開き中空直方体からなり、正面から背面の中央位置、及び平面から底面の中央位置を貫通する配向軸21用の保持孔31Hが上下及び前後方向に内部貫通形成される。水平支持状態とする場合には、前後方向の保持穴31H内に配向軸21を挿通させる(図1、図2等)。一方、垂直支持状態とする場合には、上下方向の保持穴31H内に配向軸21を挿通させる(図10、図11等)。また略正方形状の両側面には、軸ピン31P用の中央孔が形成されると共に、貫通孔を中心として円弧状に複数の固定穴312Hが分離配設される。この複数の固定穴312Hは、いずれかの穴内に角度調整ピン32Pが挿入して連結保持部31の角度固定を行うためのものである。
【0027】
(スライド枠32)
スライド枠32は、保持アーム33の棒上をスライド移動可能に周着する部分筒体部と、部分筒体部から径方向外方へ張り出し固定された三角形の枠板とから一体的に構成される。このうち部分筒体部は保持アーム33のスライド溝33D内に突入する凸条を、部分筒体部の筒内面に、筒長方向に沿って形成してなる。この凸条がスライド溝33D内を移動可能に収容されることで、連結保持部31の部分筒体部が保持アーム33周りに所定角度で周着したままスライド移動する。また枠板には軸ピン31P用の一つの中央挿通孔と、この中央挿通孔の周りに円弧状に離間配置された角度調整ピン32p用の複数のピン挿通孔321Hとが貫通形成される。軸ピン31Pは2枚の枠板及び枠板間に挟まれた連結保持部31内を共に貫通してピン両端の抜け止め機構によって抜け止め構成される。これにより、軸ピン31Pを中心として連結保持部31をスライド枠32間に回動支持することとなる。連結保持部31の回動支持角度は、連結保持部31の両側面に円弧状に離間配置された固定穴312Hと、スライド枠32の枠板に円弧状に離間配置されたピン挿通孔321Hとの孔位置を合わせ、角度調整ピン32Pを合わせ挿入することで固定することができる。
【0028】
(保持アーム33)
実施例1の保持アーム33は、手摺の取り付け壁と取り付け床とから構成される2つの隣り合う取り付け面の角部にアンカー固定されるL型板を有すると共にこのL型内部にアーム取り付け板42が立設固定される基部4と、枢支枠34が基端固定されると共にこの枢支枠34が前記基部4のアーム取り付け板42に角度調節可能に基端固定されて、斜め方向の所定の調節角度で伸長する、溝33D付き円形断面の棒状のアーム本体33と、前記アーム本体33の溝付き棒の溝にガイドされて棒上の任意位置にスライド移動可能に枠周着されると共に枠板が張り出し固定された取り付け枠32と、取り付け枠32の枠板内を挿通する軸ピン31Pを介して所定角度で取り付けられると共に、側面に形成された角度調整穴及びこの調整穴内に突入する角度調整ピンによってジャッキ2を所定の調節角度に配向保持する箱状の連結保持部31とを有してなる。
【0029】
(固定機構4)
固定機構4は、断面L字状板を含む三方枠状の当接アングル41と、当接アングル41の隣り合う少なくとも2面の両端付近にそれぞれ複数個ずつ形成された当接孔41Hと、当接アングル41の枠内部に立設状態で固定された2枚のアーム取り付け板42と、各アーム取り付け板42にて共通する複封箇所に形成された枢支ピン43の貫通用の枢支孔42Hと、いずれかの枢支孔42H内を選択貫通する外ねじ付きの枢支ピン43と、枢支ピン43に螺着してアーム取り付け板42を跨ぐ枢支枠34の両面にそれぞれ圧接するナット43Nとから構成される。このうちアーム取り付け板42は、上辺が傾斜して横倒しの向きに固定された片傾斜台形板からなり、複数の枢支孔42Hは、このアーム取り付け板42の板幅方向にそれぞR高さを変えて右位置、中央位置、左位置に離間形成される。水平支持状態とするときには、このうち中央位置又は左位置(当接壁面寄りの位置)の枢支孔を使用し、また、鉛直支持状態とするときには、右位置(当接壁面から離れた位置)の枢支孔を使用して、保持アーム33をM、異なる高さ兼異なる板幅方向位置にて枢支支持する。
【0030】
(支持架台)
図6〜9の態様においては、前記いずれか記載の手摺試験装置に加えて、さらに、高さ調整可能な支持枠を上端に有した支持架台5を組み合せ、全体として支持架台組み込み手摺試験装置を水平支持状態に構成してなる。この支持架台5をジャッキ配設位置の床上に選択式に立設して、連結保持部31及び/又はコマ保持部1を支持するように組み合せて設置することで、安定的に水平荷重試験を行うことができる。
【0031】
(作用効果)
上記構成によれば、アーム本体のアーム取り付け板42への枢支角度の調節固定と、連結保持部31の角度調整穴、取り付け枠32の枠板の角度調整穴、及びこの調整穴内に突入する角度調整ピンによるジャッキの配向角度の調節固定とによって、ジャッキ2を所定位置及び所定角度で保持固定し得る。これにより、水平保持状態S1及び鉛直保持状態S2を維持することができる。ここで水平保持状態S1は、笠木と略同一高さで略水平保持する状態であり、鉛直保持状態S2は、ジャッキ2を笠木の略鉛直上方位置で下垂保持する状態である。
【0032】
前記水平保持状態にてジャッキを作動させることで、複数の圧接コマによって手摺を水平方向に同時加圧することが可能である。一方、前記鉛直保持状態にてジャッキを作動させることで、複数の圧接コマによって手摺を笠木側面から水平方向に同時加圧することが可能である。
【0033】
また保持アームの角度調節によって水平保持状態と鉛直保持状態の2状態を入れ替えることができるため、一旦設置状態にすればそのまま水平方向加圧試験と垂直方向加圧試験という2試験を同機で行うことができる。特に、長尺の保持アーム33を、手摺の取り付け壁付近に下端固定し、上端側部分でジャッキを角度調整可能に取り付けた構造とし、この角度調整したジャッキによって手摺を加力することによって、鉛直方向と水平方向以外の任意の角度での加圧状態を容易に設定することができる。また前記保持アームは構造上引っ張り方向に加力されるため、大きな座屈強度を要することなく効率的に加圧構造を支持することができる。これは保持アームの軽量化や構造簡易化に貢献するため、運搬性に優れた試験機を安価に提供することに繋がる。
【0034】
また、並走する複数本のアーム本体の間でジャッキを保持することで、支持荷重を均等なものとなり、余計な曲げモーメントが発生しにくい状態でジャッキを安定的に保持することが可能となる。特に、後述する実施例では保持アームが並走する一対のアーム(ダブルアーム)からなり、アーム間の中間位置にてジャッキの基部を保持するものとしている。ジャッキアップによって加圧反力が発生しても、保持アームには余分な曲げモーメントが発生しないため、安定的にジャッキを支持することができる。
【0035】
またコマ保持部が、中央で軸貫通連結された中空角パイプからなり、角パイプの一面が対向面として面内の左右対称位置に複数追の支持穴が形成されてなることで、ジャッキの連結部を中心として左右均等な位置における左右均等な圧接を確実に行うことができる。
【実施例2】
【0036】
図12、13に示す実施例2の手摺試験装置は、減圧式の定着パッドを下部の固定機構4として有してなり、バキュームポンプで定着パッドと接地面の間の封止空間を減圧して取り付け床面に定着支持している。田の基本的な構成および使用方法は、実施例1と共通である。
【0037】
その他本発明は上述したい実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜、構成乃至要素の一部抽出、形態の配置、形状の変更、取り付け順の変更、一体構成と別体の組み合わせ構成への相互変更といった変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
H 手摺
HB 笠木
L 手摺長
1 圧接部
11 圧接コマ
12 コマ保持枠(反力受け角パイプ)
2 検出器
21 配向軸
22 センターホールジャッキ
23 立体スペーサー
24 板スペーサー
3 保持機構
31 連結保持部
31P 軸ピン
32 スライド枠
32H 角度調整孔
32P 角度調整ピン
33 保持アーム
34 枢支枠
4 固定機構
41 当接アングル
41H 当接孔
42 アーム取り付け板
42H 取り付け孔
43 枢支ピン
43N ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺の笠木(HT)に加力して取り付け済みの手摺(H)の取り付け強度試験を行う手摺試験装置であって、
手摺の笠木(HT)の複数個所それぞれに圧接する複数個の圧接コマ(11)と、
笠木近傍にて笠木と略並行に延伸配置され、前記複数の圧接コマ(11)を保持するコマ支持部(1)と、
前記コマ支持部(1)と交差して取り付けられ、当該交差方向に可動する加圧シリンダを有するジャッキ(2)と、
前記ジャッキ(2)を所定位置及び所定角度で保持し、床面、天井面、又は壁面の少なくともいずれかの取り付け面に設置固定される保持アーム(3)と、を具備してなる手摺強度試験機であって、
前記保持アーム(3)は、取り付け面に設置固定される基部(4)と、前記基部(4)に角度調節可能に基端固定されて所定の調節角度で伸長するアーム本体(33)と、前記アーム本体(33)上を移動可能な取り付け枠(32)を介してアーム本体(33)の所定位置に取り付けられると共にジャッキ(2)を所定の調節角度に配向保持する保持部(31)とを有してなり、
前記アーム本体の角度調節とジャッキの配向角度調節とによって、
ジャッキ(2)を笠木と略同一高さで略水平保持する水平保持状態(S1)と、
ジャッキ(2)を笠木の略鉛直上方位置で下垂保持する垂直保持状態(S2)と、の少なくとも2状態を維持し得ることを特徴とする手摺試験装置。
【請求項2】
前記保持アーム(3)は、一つの基部(4)から並走して伸長する複数本のアーム本体(33)と、これら複数本のアーム本体(33)それぞれに取り付けられた取り付け枠(32)間に挟持固定される保持部(31)と、を具備してなり、
前記ジャッキ(2)は、保持部(31)の前記取り付け枠間の側面から突出固定されてコマ支持部(1)に先端連結された配向軸(21)と、
配向軸(21)に挿通保持される挿通部を有するセンターホールジャッキ(22)とを具備してなる請求項1記載の手摺試験装置。
【請求項3】
コマ支持部(1)は、手摺の笠木(HT)と対向しながら、前記配向軸(21)の連結部を中心とする両側方へ伸長形成された対向面と、この対向面内であって前記配向軸の連結部を中心とする両側方の対称位置に設けられた複数対の支持穴とを有してなり、
また、前記複数の圧接コマ(11)は、それぞれ前記取り付け穴へ挿入固定される支持突部を有してなり、各支持突部が各対いずれかの取り付け穴の対称位置に突入支持される請求項2記載の手摺試験装置。
【請求項4】
高さ調整可能な支持枠を上端に有した支持架台(5)をさらに具備してなり、この支持架台(5)をジャッキ配設位置の床上に立設して、保持部(31)及び/又は前記コマ支持部(1)を支持するように組み合せ得る請求項1、2又は3記載の手摺試験装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−113823(P2013−113823A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263145(P2011−263145)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(508284850)株式会社トラスト (5)
【Fターム(参考)】