説明

抗ウィルス薬

本明細書で定義の構造式(I)の化合物およびそれの製薬上許容される塩が、HCV感染の予防および/または治療での使用について説明される。式(I)の新規化合物およびそれを含む医薬製剤についても記載されている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオシドおよびヌクレオチド誘導体、それの合成、ならびにRNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬としてのそれの使用に関するものである。本発明の化合物は、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害薬であることから、RNA依存性RNAウィルス感染の治療に有用である。それは、C型肝炎ウィルス(HCV)NS5Bポリメラーゼの阻害薬として、HCV複製の阻害薬として、そしてC型肝炎感染の治療用に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウィルス(HCV)感染は、推定で世界の人口の2から15%というかなりの数の感染者において、肝硬変および肝細胞癌などの慢性肝臓疾患を生じる主要な健康上の問題である。米国疾病管理センターによると、米国単独で推定で感染者は450万人とされている。世界保健機構によれば、世界中では2億人を超える感染者がおり、毎年少なくとも300から400万人が感染している。一旦感染すると、約20%の人がウィルスを除去するが、残りの人々はそれ以後の生涯にわたりHCVを宿すことになる。慢性感染者のうちの10から20%が最終的に、肝臓を破壊する肝硬変または癌を発症する。そのウィルス感染は、汚染された血液および血液製剤、汚染された針によって非経口的に、または性的におよび感染した母親もしくはキャリアの母親からその子孫へ垂直に伝染する。単独またはヌクレオシド類縁体であるリバビリンとの併用での組換えインターフェロン−αによる免疫療法に限定されるHCV感染に対する現在の治療では、臨床効果は限定的である。さらに、HCVには確立されたワクチンがない。結果的に、慢性HCV感染と効果的に戦う改善された治療薬が緊急に必要とされている。HCV療法に対しては各種手法が行われており、それにはウィルスセリンプロテイナーゼ(NS3プロテアーゼ)、ヘリカーゼおよびRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)の阻害およびワクチンの開発などがある。
【0003】
HCVビリオンは、約3010個のアミノ酸のポリタンパク質をコードする約9600塩基の単一オリゴリボヌクレオチドゲノム配列を有するエンベロープを持ったプラス鎖RNAウィルスである。HCV遺伝子のタンパク質産物は、構造タンパク質C、E1およびE2および非構造タンパク質NS2、NS3、NS4AおよびNS4B、およびNS5AおよびNS5Bからなる。非構造(NS)タンパク質は、ウィルス複製の触媒機構を提供するものと考えられている。NS3プロテアーゼは、ポリタンパク質鎖からRNA依存性RNAポリメラーゼであるNS5Bを放出する。HCVの複製周期において鋳型として働く一本鎖ウィルスRNAから二本鎖RNAを合成するには、HCV NS5Bポリメラーゼが必要である。従って、NS5Bポリメラーゼは、HCV複製複合体において必須の成分であると考えられる[K. Ishi, et al., ″Expression of Hepatitis C virus NS5B Protein: Characterization of Its RNA Polymerase Activity and RNA Binding,″ Hepatology, 29: 1227−1235 (1999)およびV. Lohmann, et al., ″Biochemical and Kinetic Analyses of NS5B RNA−Dependent RNA Polymerase of the Hepatitis C virus,″ Virology, 249: 108−118 (1998)を参照。]。HCV NS5Bポリメラーゼの阻害は、二本鎖HCV RNAの生成を防止することから、HCV特異的抗ウィルス療法の開発に対して有望な手法を構成するものである。
【0004】
HCV感染治療の可能性を有するHCV NS5Bポリメラーゼの阻害薬の開発が、文献において総覧されている(M.P. Walker et al, ″Promising candidates for the treatment of chronic hepatitis C,″ Expert Opin. Invest. Drugs, 12: 1269−1280 (2003)およびP. Hoffmann et al, ″Recent patents on experimental therapy for hepatitis C virus infection (1999−2002).″ Expert Opin. Ther. Patents, 13: 1707−1723 (2003))。HCVポリメラーゼに対するプリンリボヌクレオシド類の活性が報告されている(A.E. Eldrup et al, ″Structure−Activity Relationship of Purine Ribonucleosides for Inhibition of HCV RNA−Dependent RNA Polymerase,″ J. Med. Chem., 47: 2283−2295 (2004))。現在もなお、HCV療法に対する治療手法として、HCVポリメラーゼの阻害薬としての構造的に多様なヌクレオシド誘導体が必要とされている。
【0005】
中国特許出願CN10117742には、抗ウィルス活性を有するものとして、下記式のヌクレオシド誘導体が開示されている。
【化1】

【0006】
式中、Rはメチル、ニトリル、アジドまたはエチニルであり、Bは置換されていても良いピリミジン、プリンまたは7−デアザプリン塩基である。
【0007】
Rがアジドであり、bがウリジンである化合物が具体的に開示され、HCVウィルスに対する活性を有すると報告されている。
【0008】
Journal of Biological Chemistry (208), 283(4), 2167−2175には、置換ピリミジン塩基を含むc2′−デオキシ(dexy)4′−アジドヌクレオシド類縁体が「非常に強力なHCV複製阻害薬」であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
中国特許出願CN10117742
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】K. Ishi, et al., ″Expression of Hepatitis C virus NS5B Protein: Characterization of Its RNA Polymerase Activity and RNA Binding,″ Hepatology, 29: 1227−1235 (1999).
【非特許文献2】V. Lohmann, et al., ″Biochemical and Kinetic Analyses of NS5B RNA−Dependent RNA Polymerase of the Hepatitis C virus,″ Virology, 249: 108−118 (1998).
【非特許文献3】Journal of Biological Chemistry (208), 283(4), 2167−2175.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、RNA依存性RNAウィルス複製、特にはHCV複製の強力な阻害薬である新たな種類のヌクレオシド類およびヌクレオチド類を提供する。
【0012】
本発明は、HCV感染の予防および/または治療で使用される下記構造式(I)の化合物およびそれの製薬上許容される塩に関するものである。
【化2】

【0013】
Yは基CRであり、Rは水素、CHO、ニトリル、エチニル、1個もしくは2個のC1−3脂肪族基によって置換されていても良い基CONHまたはフルオロによって置換されていても良いC1−3脂肪族基であるか、RはCORによって置換されていても良いアミノであり、RはC1−6脂肪族基またはフェニルであり、またはYがRに連結されて、下記の三環式環:
【化3】

【0014】
を形成しており、
式中、点線は単結合もしくは二重結合を表し、Zは、点線が二重結合を表す場合はCHを表し、または前記点線が単結合を表す場合はOまたはCHを表し;
WはNまたはCHであり;
は、アジド、エチニル、ニトリルまたはフルオロによって置換されていても良いC1−3脂肪族基であり;
は水素またはフルオロであり;
は、水素、フルオロもしくはヒドロキシまたはフルオロによって置換されていても良いC1−3脂肪族基もしくはC1−3アルコキシ基であり;
は水素、アミノまたはヒドロキシルであり;
はヒドロキシルまたはアミノであり;
は水素または一、二もしくは三リン酸基または保護基Qであり;
は水素または保護基Qである。
【0015】
好適には、Rはアジドまたはエチニルであり、最も好適にはアジドである。
【0016】
好適には、Rは水素である。
【0017】
好適には、Rはフルオロである。
【0018】
好適には、Rは水素である。
【0019】
好適には、Rはアミノである。
【0020】
好適には、YはCHである。
【0021】
好適には、WはCHである。
【0022】
好適な基QおよびQは当業者には公知であり、例えばWO2006/065335およびPCT/EP2008/056128(これらは参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のものなどがある。例えば、Qは、C1−16アルキルカルボニル、C2−18アルケニルカルボニル、C1−10アルキルオキシカルボニル、C3−6シクロアルキルカルボニル、C3−6シクロアルキルオキシカルボニルまたは一リン酸プロドラッグ残基:
【化4】

【0023】
であることができ;
は、水素、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、グアニジノ、メルカプト、メチルチオ、1H−イミダゾリルおよび1H−インドール−3−イルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていても良いC1−6アルキルであり;またはRは独立にハロゲン、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択される1もしくは2個の置換基でそれぞれ置換されていても良いフェニル、ベンジルまたはフェネチルであり;
は水素またはメチルであり;
またはRおよびRがそれらが結合している炭素原子とともに、3から6員脂肪族スピロ環状環系を形成しており;
は、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたは
【化5】

【0024】
であり;
11は、独立にハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチルおよび(CH0−4NR1516から選択される1から3個の置換基でそれぞれ置換されていても良いC1−16アルキル、C2−20アルケニル、(CH0−47−9シクロアルキル、(CH0−43−9シクロアルケニルまたはアダマンチル(adamantly)であり、R15およびR16は独立に水素およびC1−6アルキルから選択され;またはR15およびR16がそれらが結合している窒素原子とともに、N、OおよびSから選択される1もしくは2個の追加のヘテロ原子を含んでいても良い4から7員複素環を形成しており、その環はC1−6アルキルによって置換されていても良く;
10は、ヒドロキシまたは基OR16であり、R16はCHOC(O)R17またはCHCHSR17であり、R17はヒドロキシル基によって置換されていても良いC1−6アルキルカルボニルであり、またはR16は(CH2−4−O−(CH1−17CHまたはフェニル、ナフチル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択される芳香環であり、前記芳香族は独立にハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルキルカルボニルオキシおよびC1−4アルキルオキシカルボニルからなる群から選択される1から5個の置換基で置換されていても良く;またはR10およびQが結合を形成して、環状リン酸基を作り;
12はC6−16アルキル、C2−20アルケニル、(CH0−27−9シクロアルキル、(CH0−23−9シクロアルケニル、OC1−6アルキルまたはアダマンチルであり;
13およびR14は独立に、水素およびC1−6アルキルから選択され;
またはR13およびR14がそれらが結合している炭素原子とともに、3から6員脂肪族スピロ環状環系を形成しており;
および/またはQは、メチル、C1−16アルキルカルボニル、C2−18アルケニルカルボニル、C1−10アルキルオキシカルボニル、C3−6シクロアルキルカルボニル、C3−6シクロアルキルオキシカルボニルおよび下記構造式のアミノアシル残基:
【化6】

【0025】
であることができ;
式中、R18は水素、C1−5アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;R19は水素、C1−4アルキル、C1−4アルキルスルホニルまたはフェニルC0−2アルキルスルホニルまたは基COR20であり、R20はフェニルによって置換されていても良いC1−4アルキル、フェニルによって置換されていても良いC1−4アルコキシ、フェニルによって置換されていても良いC1−4アルキルによって置換されていても良いC1−4アルキルアミノである。
【0026】
好適には、Qは水素、一、二もしくは三リン酸、またはC−C16−アルキルカルボニルまたは前記構造の一リン酸プロドラッグから選択され;Rは水素、メチルまたはベンジル、より好適には水素またはメチルであり;Rは水素またはメチル、より好適には水素であり;RはPh、CO11またはCR1314OC(O)R12であり、R10はヒドロキシルまたはOR16であり;R16は芳香族またはヘテロ芳香族環またはCHCHSR17であり、R17はヒドロキシル基で置換されていても良いC−Cアルキルカルボニルであり;より好適には、R10はヒドロキシル、O−フェニルまたはヒドロキシル基で置換されていても良いCHCHS−C−C−アルキルカルボニルであり;最も好適にはR10はヒドロキシルまたはCHCHSS−tert−ブチルカルボニルまたはCHCHS−ヒドロキシ−tert−ブチルカルボニルである。
【0027】
好適にはR11は、C−C16アルキル、好ましくはC−C16アルキルであり;R12はC−C16アルキル、好ましくはC−C16アルキルであり;R13およびR14はいずれも水素である。
【0028】
最も好適には、Qは水素またはトリホスホリルである。
【0029】
好適には、Qは、水素、C−C16−アルキルカルボニルまたは前記構造のアミノアシル残基から選択され、R18は水素またはC−Cアルキル、より好適にはメチルであり、R19は水素である。
【0030】
最も好適には、Qは水素である。
【0031】
式(I)の化合物は、指定された立体化学配置を有する。
【0032】
式(I)の化合物の好ましい実施形態には、下記式(III)、(IV)、(V)および(VI)から選択される化合物ならびにこれらの製薬上許容される塩などがある。
【化7】


【0033】
式中、RからR、Z、QおよびQは前述で定義の通りである。
【0034】
好ましくは、式(I)の化合物は、下記式(VII)の化合物およびそれの製薬上許容される塩である。
【化8】

【0035】
式中、R、QおよびQは、前述で定義の通りである。
【0036】
好ましくは、Rは水素である。好ましくは、QおよびQは水素である。
【0037】
式(VII)の化合物は新規化合物であり、従って本発明のさらに別の態様を形成するものである。
【0038】
本発明の好ましい化合物には、7−(4−アジド−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミンおよびそれの製薬上許容される塩などがある。
【発明を実施するための形態】
【0039】
式(I)の化合物は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ、特にはHCVNS5Bポリメラーゼの阻害薬として有用である。それは、RNA依存性RNAウィルス複製、特にHCV複製の阻害薬でもあり、RNA依存性RNAウィルス感染の治療、特にはHCV感染の治療に有用である。QおよびQがそれぞれ5′−三リン酸およびヒドロキシル以外である式(I)の化合物は、プロドラッグとして作用することができるか、RNA依存性RNAウィルス感染の治療、特にはHCV感染の治療に有用な式(I)の化合物に変換することができる。
【0040】
作用機序に関して限定はないが、本明細書で定義の本発明の化合物のプロドラッグは、相当するヌクレオシド5′−一リン酸の前駆体として作用する。内因性キナーゼ酵素が、その5′−一リン酸をそれの5′−三リン酸誘導体に変換し、それはRNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬である。従って、プロドラッグは、ヌクレオシド自体より効率の良い標的細胞透過を提供することができ、代謝分解に対する感受性が低いものであることができ、肝臓などの具体的な臓器を標的とする能力を有することができることで、より広い治療指数が得られ、抗ウィルス薬の全体的な用量を減らすことが可能となる。
【0041】
本発明には、単独でまたはRNA依存性RNAウィルスに対して、特にはHCVに対して活性な他薬剤と併用して前記化合物を含む医薬組成物、ならびにRNA依存性RNAウィルス複製の阻害方法およびRNA依存性RNAウィルス感染の治療方法も包含される。
【0042】
本発明の1実施形態において、本発明の化合物は、プラス鎖一本鎖RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害薬、プラス鎖一本鎖RNA依存性RNAウィルス複製の阻害薬に対する前駆体として、および/またはプラス鎖一本鎖RNA依存性RNAウィルス感染の治療に有用である。この実施形態の場合、プラス鎖一本鎖RNA依存性RNAウィルスは、フラビ・ウイルス科ウィルスまたはピコルナ・ウイルス科ウィルスである。この分類の下位分類において、ピコルナ・ウイルス科ウィルスは、ライノウィルス、ポリオウィルスまたはA型肝炎ウィルスである。この分類の第2の下位分類では、フラビ・ウイルス科ウィルスは、C型肝炎ウィルス、黄熱病ウィルス、デング熱ウィルス、西ナイルウィルス、日本脳炎ウィルス、バンジウィルスおよび牛ウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)からなる群から選択される。この下位分類の下位分類では、フラビ・ウイルス科ウィルスはC型肝炎ウィルスである。
【0043】
本発明の別の態様は、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害方法、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害方法、および/または哺乳動物に対して治療上有効量の構造式(I)の化合物を投与する段階を有する、処置を必要とする哺乳動物でのRNA依存性RNAウィルス感染の治療方法に関するものである。
【0044】
本発明のこの態様の1実施形態において、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼは、プラス鎖一本鎖RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼである。この実施形態の1分類では、前記プラス鎖一本鎖RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼは、フラビ・ウイルス科ウィルスポリメラーゼまたはピコルナ・ウイルス科ウィルスポリメラーゼである。この分類の1下位分類では、ピコルナ・ウイルス科ウィルスポリメラーゼはライノウィルスポリメラーゼ、ポリオウィルスポリメラーゼまたはA型肝炎ウィルスポリメラーゼである。この分類の第2の下位分類では、フラビ・ウイルス科ウィルスポリメラーゼはC型肝炎ウィルスポリメラーゼ、黄熱病ウィルスポリメラーゼ、デング熱ウィルスポリメラーゼ、西ナイルウィルスポリメラーゼ、日本脳炎ウィルスポリメラーゼ、バンジウィルスポリメラーゼおよび牛ウィルス性下痢症ウィルス(BVDV)ポリメラーゼからなる群から選択される。この分類の1下位分類では、フラビ・ウイルス科ウィルスポリメラーゼはC型肝炎ウィルスポリメラーゼである。
【0045】
本発明のこの態様の第2の実施形態では、RNA依存性RNAウィルス複製は、フラビ・ウイルス科ウィルス複製またはピコルナ・ウイルス科ウィルス複製などのプラス鎖一本鎖RNA依存性RNAウィルス複製である。1下位分類において、ピコルナ・ウイルス科ウィルス複製はライノウィルス複製、ポリオウィルス複製またはA型肝炎ウィルス複製である。第2の下位分類では、フラビ・ウイルス科ウィルス複製は、C型肝炎ウィルス複製、黄熱病ウィルス複製、デング熱ウィルス複製、西ナイルウィルス複製、日本脳炎ウィルス複製、バンジウィルス複製、および牛ウィルス性下痢症ウィルス複製および好ましくはC型肝炎ウィルス複製からなる群から選択される。
【0046】
本発明のこの態様の第3の実施形態において、RNA依存性RNAウィルス感染は、フラビ・ウイルス科ウィルス感染またはピコルナ・ウイルス科ウィルス感染などのプラス鎖一本鎖RNA依存性ウィルス感染である。この分類の1下位分類では、ピコルナ・ウイルス科ウィルス感染は、ライノウィルス感染、ポリオウィルス感染またはA型肝炎ウィルス感染である。この分類の第2の下位分類では、フラビ・ウイルス科ウィルス感染は、C型肝炎ウィルス感染、黄熱病ウィルス感染、デング熱ウィルス感染、西ナイルウィルス感染、日本脳炎ウィルス感染、バンジウィルス感染および牛ウィルス性下痢症ウィルス感染からなる群から選択される。好ましくは、フラビ・ウイルス科ウィルス感染はC型肝炎ウィルス感染である。
【0047】
本願を通じて、下記の用語は指定した意味を有する。
【0048】
「脂肪族」という用語は、指定数の炭素原子を含むアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を意味するものとする。
【0049】
上記で具体的に指定されたアルキル基は、直鎖もしくは分岐の配置で指定された長さのアルキル基を含むものである。そのようなアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、1−プロピルブチル、オクチル、2−プロピルペンチルなどがある。
【0050】
「アダマンチル」という用語は、1−アダマンチルおよび2−アダマンチルの両方を包含する。
【0051】
「アルケニル」という用語は、指定数またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐のアルケンを意味するものとする(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、オレイルなど)。
【0052】
「アルキニル」という用語は、指定数またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐のアルキンを意味するものとする(例えば、エチニル、プロピニルなど)。
【0053】
「シクロアルキル」という用語は、指定数またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子を有する環を意味するものとする(例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルなどがある。)。
【0054】
「シクロアルケニル」という用語は、指定数またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子を有するアルケンの環を意味する(すなわち、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルまたはシクロオクテニル)。
【0055】
「C1−6脂肪族基」という用語は、1から6個の炭素原子を含むアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル基を指す。
【0056】
「アルコキシ」という用語は、指定の炭素原子数(例えば、C1−4アルコキシ)またはその範囲内のいずれかの数の炭素原子の直鎖もしくは分岐のアルコキシドを指す[すなわち、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなど]。
【0057】
「アルキルアミノ」という用語は、指定された炭素原子数の(例えば、C1−4アルキルアミノ)またはこの範囲内のいずれかの数の直鎖もしくは分岐のアルキルアミンを指す[すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノなど]。
【0058】
「アルキルスルホニル」という用語は、指定された炭素原子数の(例えば、C1−6アルキルスルホニル)またはこの範囲内のいずれかの数の直鎖もしくは分岐のアルキルスルホンを指す[すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど]。
【0059】
「アルキルオキシカルボニル」という用語は、指定された炭素原子数の(例えば、C1−8アルキルオキシカルボニル)またはこの範囲内のいずれかの数の本発明の化合物に存在する直鎖もしくは分岐のカルボン酸基またはカルバミン酸基を指す[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニルまたはブチルオキシカルボニル]。
【0060】
「アルキルカルボニル」という用語は、指定された炭素原子数の(例えば、C1−8アルキルカルボニル)またはこの範囲内のいずれかの数の直鎖もしくは分岐のアルキルアシル基を指す[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニルまたはブチルオキシカルボニル]。
【0061】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含むものである[すなわち、クロロまたはフルオロ]。
【0062】
「一リン酸」という用語は、−P(O)(OH)を指す。
【0063】
「二リン酸」という用語は、下記構造:
【化9】

【0064】
を有する基を指し、「三リン酸」という用語は、下記構造:
【化10】

【0065】
を有する基を指す。
【0066】
「置換された」という用語は、指名された置換基による複数回の置換を含むものと考えられる。複数の置換基部分が開示または特許請求されている場合、置換された化合物は独立に、1以上の開示もしくは特許請求された置換基部分により、1回または複数回置換されていることができる。
【0067】
「5′−三リン酸」という用語は、下記の一般構造式を有する本発明のヌクレオシド化合物の5′−ヒドロキシル基の三リン酸エステル誘導体を指す。
【化11】

【0068】
式中、R、R、R、R、R、Y、W、QおよびQは上記で定義の通りである。
【0069】
「医薬組成物」でのような「組成物」という用語は、有効成分および担体を構成する不活性成分を含む製造物、ならびにいずれか2以上の成分の組み合わせ、複合体化または凝集から、または1以上のそれら成分の解離から、または1以上のそれら成分の他の種類の反応もしくは相互作用から直接もしくは間接に生じる製造物を包含するものである。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物および製薬上許容される担体を混合することで製造される組成物を包含するものである。
【0070】
化合物「の投与」および化合物「を投与する」という用語は、必要とする個体に対して本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを提供することを意味すると理解すべきである。
【0071】
本発明の別の態様は、HCV感染の治療に有用な1以上の薬剤と併用しての本発明の化合物によるHCV NS5Bポリメラーゼの阻害方法、HCV複製の阻害方法またはHCV感染の治療方法に関するものである。HCVに対して活性なそのような薬剤には、リバビリン、レボビリン、ビルアミジン、ニタゾキサニド、チモシンα−1、インターフェロン−β、インターフェロン−α、peg化インターフェロン−α(pegインターフェロン−α)、インターフェロン−αおよびリバビリンとの組み合わせ、pegインターフェロン−αおよびリバビリンの組み合わせ、インターフェロン−αおよびレボビリンの組み合わせ、およびpegインターフェロン−αおよびレボビリンの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。インターフェロン−αには、組換えインターフェロン−α2a(Hoffmann−LaRoche, Nutley, NJから入手可能なRoferonインターフェロンなど)、peg化インターフェロン−α2a(Pegasys(商標名))、インターフェロン−α2b(Schering Corp., Kenilworth, NJから入手可能なIntron−Aインターフェロンなど)、peg化インターフェロン−α2b(PegIntron(商標名))、組換えコンセンサスインターフェロン(インターフェロンalphacon−1など)および精製インターフェロン−α製品などがあるが、これらに限定されるものではない。アムジェン(Amgen)の組換えコンセンサスインターフェロンは、インファーゲン(登録商標)の商品名を有する。レボビリンは、リバビリンと同様の免疫調節活性を示しているリバビリンのL−エナンチオマーである。ビルアミジンは、WO01/60379(ICN Pharmaceuticalに譲渡)に開示のリバビリンの類縁体を表す。本発明のこの方法によれば、組み合わせの個々の成分は、治療の途中で異なる時点で別個に、または分割もしくは単一の組み合わせ形態で同時に投与することができる。従って本発明は、そのような同時もしくは交互の治療法全てを包含するものと理解すべきであり、「投与」という用語はそれに従って解釈すべきである。HCV感染治療に有用な他薬剤と本発明の化合物の組み合わせの範囲は、原則的にHCV感染を治療するための医薬組成物との組み合わせを含むものであることは明らかであろう。本発明の化合物またはそれの製薬上許容される塩をHCVに対して活性な第2の治療剤と併用する場合、各化合物の用量は、その化合物を単独でもちいる場合の用量と同じであるか異なるものであることができる。
【0072】
HCV感染の治療のため、本発明の化合物は、HCV NS3セリンプロテアーゼの阻害薬である薬剤と併用投与することもできる。HCV NS3セリンプロテアーゼは必須のウィルス酵素であり、HCV複製の阻害における優れた標的であると報告されている。HCV NS3プロテアーゼ阻害薬の基質系および非基質系の両方の阻害薬が、WO98/22496、WO98/46630、WO99/07733、WO99/07734、WO99/38888、WO99/50230、WO99/64442、WO00/09543、WO00/59929、GB−2337262、WO02/18369、WO02/08244、WO02/48116、WO02/48172、WO05/037214および米国特許第6323180号に開示されている。HCV複製の阻害薬開発およびHCV感染治療における標的としてのHCV NS3プロテアーゼが、B.W. Dymock, ″Emerging therapies for hepatitis C virus infection,″ Emerging Drugs, 6: 13−42 (2001)に記載されている。本発明の化合物と組み合わせることができる具体的なHCV NS3プロテアーゼ阻害薬には、BILN2061、VX−950、SCH6、SCH7およびSCH−503034などがある。
【0073】
リバビリン、レボビリンおよびビルアミジンは、細胞内酵素イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)の阻害を介してグアニンヌクレオチドの細胞内プールを調節することによって、それの抗HCV効果を発揮することができる。IMPDHは、デノボでのグアニンヌクレオチド生合成における生合成経路に対する律速酵素である。リバビリンは、細胞内で容易にリン酸化され、その一リン酸誘導体がIMPDHの阻害薬である。従って、IMPDHの阻害は、HCV複製阻害薬発見のための別の有用な標的を代表するものである。従って、本発明の化合物は、WO97/41211およびWO01/00622(Vertexに譲渡)に開示のVX−497などのIMPDHの阻害薬;WO00/25780(Bristol−Myers Squibbに譲渡)に開示のものなどの別のIMPDH阻害薬;またはミコフェノール酸モフェチル[A.C. Allison and E.M. Eugui, Agents Action. 44 (Suppl.): 165 (1993)参照]と併用投与することもできる。
【0074】
HCV感染治療のためには、本発明の化合物は、抗ウィルス剤アマンタジン(1−アミノアダマンタン)[この薬剤についての総合的説明については、J. Kirschbaum、Anal. Profiles Drug Subs. 12: 1−36 (1983)を参照する。]と併用投与することもできる。
【0075】
本発明の化合物は、HCV感染治療のために、文献(R. E. Harry−O′kuru, et al., J. Org. Chem., 62: 1754−1759 (1997);M. S. Wolfe, et al., Tetrahedron Lett., 36:7611−7614(1995);米国特許第3,480,613号(1969年11月25日);米国特許第6,777,395号(2004年8月17日);米国特許第6,914,054号(2005年7月5日);国際公開番号WO01/90121(2001年11月29日);WO01/92282(2001年12月6日);WO02/32920(2002年4月25日);WO02/057287(2002年7月25日);WO02/057425(2002年7月25日);WO04/002422(2004年1月8日);WO04/002999(2004年1月8日);WO04/003000(2004年1月8日);WO04/002422(2004年1月8日);米国特許出願公開第2005/0107312号;US2005/0090463;US2004/0147464;およびUS2004/0063658;これらの各内容は、参照によって全体が組み込まれるものとする。)に開示の抗ウィルス2′−C−分岐リボヌクレオシド類と併用することもできる。そのような2′−C−分岐リボヌクレオシド類には、2′−C−メチルシチジン、2′−フルオロ−2′−C−メチルシチジン2′−C−メチルウリジン、2′−C−メチルアデノシン、2′−C−メチルグアノシン、および9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン;フラノースC−2′、C−3′およびC−5′ヒドロキシルの相当するアミノ酸エステル類(バロピシタビン・2塩酸塩またはNM−283および3′−O−(L−バリル)−2′−フルオロ−2′−C−メチルシチジンとも称される3′−O−(L−バリル)−2′−C−メチルシチジン・2塩酸塩など)、および5′−リン酸誘導体の相当する置換されていても良い環状1,3−プロパンジオールエステル類などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明の化合物は、HCV感染治療において、米国特許第6,864,244号(2005年3月8日);WO02/51425(2002年7月4日)、Mitsubishi Pharma Corp.に譲渡;WO01/79246、WO02/32920、およびWO02/48165(2002年6月20日)、Pharmasset, Ltd.に譲渡;WO01/68663(2001年9月20日)、ICN Pharmaceuticalsに譲渡;WO99/43691(1999年9月2日);WO02/18404(2002年3月7日)、Hoffmann−LaRocheに譲渡;U.S.2002/0019363(2002年2月14日);WO02/100415(2002年12月19日);WO03/026589(2003年4月3日);WO03/026675(2003年4月3日);WO03/093290(2003年11月13日):US2003/0236216(2003年12月25日);US2004/0006007(2004年1月8日);WO04/011478(2004年2月5日);WO04/013300(2004年2月12日);US2004/0063658(2004年4月1日);およびWO04/028481(2004年4月4日)に開示のものなどの抗HCV特性を有する他のヌクレオシドと組み合わせることもできる。
【0077】
1実施形態において、本発明のヌクレオシド誘導体と組み合わせることができるヌクレオシドHCVNS5Bポリメラーゼ阻害薬は、下記の化合物:4′−アジド−シチジン;4−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2−C−ヒドロキシメチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−7−(2−C−フルオロメチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;4−アミノ−5−フルオロ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;2−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン;4−アミノ−7−(2−C,2−O−ジメチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン;β−D−2′−デオキシ−2′−フルオロ−2′−C−メチル−シチジンおよびそれらの製薬上許容される塩およびプロドラッグから選択される。
【0078】
本発明の化合物は、HCV感染の治療において、WO01/77091(2001年10月18日)、Tularik, Inc.に譲渡;WO01/47883(2001年7月5日)、日本たばこ産業に譲渡;WO02/04425(2002年1月17日)、Boehringer Ingelheimに譲渡;WO02/06246(2002年1月24日)、Istituto di Ricerche di Biologia Molecolare P. Angeletti S.p.A.に譲渡;WO02/20497(2002年3月3日);WO2005/016927(特にはJTK003)、日本たばこ産業に譲渡;これらそれぞれの内容は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる)に開示のもの;ならびにHCV−796(Viropharma Inc.)などのHCVポリメラーゼの非ヌクレオシド系阻害薬と組み合わせることもできる。
【0079】
1実施形態において、本発明のヌクレオシド誘導体と組み合わせることができる非ヌクレオシドHCV NS5Bポリメラーゼ阻害薬は、下記の化合物:14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−(2−モルホリン−4−イルエチル)−5、6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−3−メトキシ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−3−メトキシ−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;({[(14−シクロヘキシル−3−メトキシ−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−イル)カルボニル]アミノ}スルホニル)酢酸メチル;({[(14−シクロヘキシル−3−メトキシ−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−イル)カルボニル]アミノ}スルホニル)酢酸;14−シクロヘキシル−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−3−メトキシ−6−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボキサミド;3−クロロ−14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン11−カルボン酸;N′−(11−カルボキシ−14−シクロヘキシル−7,8−ジヒドロ−6H−インドロ[1,2−e][1,5]ベンゾオキサゾシン−7−イル)−N,N−ジメチルエタン−1,2−ジアミニウム・ビス(トリフルオロ酢酸塩);14−シクロヘキシル−7,8−ジヒドロ−6H−インドロ[1,2−e][1,5]ベンゾオキサゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−メチル−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−3−メトキシ−6−メチル−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−3−メトキシ−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−7−オキソ−6−(2−ピペリジン−1−イルエチル)−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−(2−モルホリン−4−イルエチル)−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−(1−メチルヘキシル−4−イル)−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−7−オキソ−6−(2−ピペリジン−1−イルエチル)−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボキサミド;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボキサミド;14−シクロペンチル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−7−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;6−アリル−14−シクロヘキシル−3−メトキシ−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロペンチル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−5,6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;14−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−5、6,7,8−テトラヒドロインドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾシン−11−カルボン酸;13−シクロヘキシル−5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロフロ[3′,2′:6,7][1,4]ジアゾシノ[1,8−a]インドール−10−カルボン酸;15−シクロヘキシル−6−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−7−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−インドロ[2,1−a][2,6]ベンゾジアゾニン−12−カルボン酸;15−シクロヘキシル−8−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロ−5H−インドロ[2,1−a][2,5]ベンゾジアゾニン−12−カルボン酸;13−シクロヘキシル−6−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−インドロ[1,2−d][1,4]ベンゾジアゼピン−10−カルボン酸;およびこれらの製薬上許容される塩から選択される。
【0080】
「製薬上許容される」とは、担体、希釈剤または賦形剤が製剤の他の成分と適合性であり、被投与者に対して有害ではないものであるべきことを意味している。
【0081】
製薬上許容される担体とともに本発明の化合物を含む医薬組成物も本発明に含まれる。本発明の別の例は、上記のいずれかの化合物および製薬上許容される担体を組み合わせることで製造される医薬組成物である。本発明の別の例は、上記いずれかの化合物および製薬上許容される担体を組み合わせる段階を有する医薬組成物の製造方法である。
【0082】
有効量の本発明の化合物および製薬上許容される担体を含む、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ、特にはHCV NS5Bポリメラーゼを阻害する上で有用な医薬組成物も本発明の範囲に含まれる。RNA依存性RNAウィルス感染、特にはHCV感染の治療に有用な医薬組成物も本発明に包含され、RNA依存性RNAウィルスポリメラーゼ、特にはHCV NS5Bポリメラーゼを阻害する方法およびRNA依存性ウィルス複製、特にはHCV複製を治療する方法も包含される。さらに、本発明は、治療上有効量のRNA依存性RNAウィルスに対して、特にはHCVに対して活性な別の薬剤と組み合わせて、治療上有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物に関するものである。HCVに対して活性な薬剤には、リバビリン、レボビリン、ビルアミジン、チモシンα−1、HCV NS3セリンプロテアーゼの阻害薬、インターフェロン−α、peg化インターフェロン−α(pegインターフェロン−α)、インターフェロン−αとリバビリンの組み合わせ、pegインターフェロン−αとリバビリンの組み合わせ、インターフェロン−αとレボビリンの組み合わせ、およびpegインターフェロン−αとレボビリンの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない。インターフェロン−αには、組換えインターフェロン−α2a(Hoffmann−LaRoche, Nutley, NJから入手可能なRoferonインターフェロンなど)、インターフェロン−α2b(Schering Corp., Kenilworth, NJから入手可能なIntron−Aインターフェロンなど)、コンセンサスインターフェロンおよび精製インターフェロン−α製品などがあるが、これらに限定されるものではない。リバビリンおよびHCVに対するそれの活性についての議論に関しては、J. O. Saunders and S.A. Raybuck, ″Inosine Monophosphate Dehydrogenase: Consideration of Structure, Kinetics, and Therapeutic Potential,″ Ann. Rep. Med. Chem. 35: 201−210 (2000)を参照する。
【0083】
本発明の別の態様は、RNA依存性RNAウィルス複製、特にはHCV複製の阻害、および/またはRNA依存性RNAウィルス感染、特にはHCV感染の治療のための医薬品製造における本発明の化合物およびそれの医薬組成物の使用を提供する。本発明のさらに別の態様は、RNA依存性RNAウィルス複製、特にはHCV複製の阻害、および/またはRNA依存性RNAウィルス感染、特にはHCV感染の治療のための医薬品として使用される本発明の化合物およびそれの医薬組成物を提供する。
【0084】
本発明の医薬組成物は、有効成分としての式(I)の化合物またはそれの製薬上許容される塩を含み、製薬上許容される担体および適宜に他の治療成分を含んでも良い。その組成物には、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与(皮下投与、筋肉投与および静脈投与など)、点眼投与(眼球投与)、肺投与(経鼻または口腔吸入)または経鼻投与に好適な組成物などがあるが、ただし、ある場合に最も好適な経路は、治療対象の状態の性質および重度ならびに有効成分の性質によって決まる。それらは簡便には、単位製剤で提供することができ、製薬業界で公知のいずれかの方法によって製造することができる。
【0085】
実際の使用では、従来の医薬配合技術に従い、式(I)の化合物を、有効成分として医薬担体と十分に混和することができる。担体は、例えば経口投与または非経口投与(静脈投与など)のような投与に望まれる製剤に応じて非常に多様な形態を取ることができる。経口製剤用の組成物を製造する上では、例えば懸濁液、エリキシル剤および液剤などの経口液体製剤の場合には例えば水、グリコール類、オイル類、アルコール類、香味剤、保存剤、着色剤などの通常の医薬媒体;または例えば粉剤、硬および軟カプセルおよび錠剤などの経口固体製剤の場合にはデンプン類、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体を用いることができ、液体製剤より固体経口製剤の方が好ましい。
【0086】
投与が容易であることから、錠剤およびカプセルが、最も有利な経口単位製剤を代表するものであり、その場合に固体医薬担体を用いることは明らかである。所望に応じて、標準的な水系または非水系技術によって錠剤をコーティングすることができる。
【0087】
そのような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むべきである。これら組成物中の活性化合物のパーセントは、当然のことながら変動し得るものであり、簡便にはその単位の約2重量%から約60重量%であることができる。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効用量が得られるようなものとする。活性化合物は、例えば液体の滴剤または噴霧剤として経鼻的に投与することもできる。
【0088】
錠剤、丸薬、カプセルなどは、トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびショ糖、乳糖およびサッカリンなどの甘味剤を含むこともできる。単位製剤がカプセルである場合、それは、上記の種類の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含むことができる。
【0089】
各種他の材料をコーティング剤として存在させたり、単位製剤の物理的形状を変えるのに存在させることができる。例えば、錠剤はシェラック、糖またはその両方でコーティングすることができる。シロップまたはエリキシル剤は、有効成分に加えて、甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、チェリーもしくはオレンジフレーバーなどの香味剤を含むことができる。
【0090】
式Iの化合物は、非経口投与することもできる。これらの活性化合物の溶液または懸濁液は、好適にはヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と混合して水中で調製することができる。分散液も、グリセリン、液体ポリエチレングリコール類およびそれらのオイル中の混合物で調製することができる。通常の貯蔵および使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含む。
【0091】
注射での使用に好適な医薬剤型には、無菌の水溶液もしくは分散液ならびに無菌の注射液もしくは分散液の即時調製用の無菌粉剤などがある。いずれの場合も、製剤は滅菌されていなければならず、容易に注射器に入れることができる程度に流動性でなければならない。それは製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して防腐されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物および植物油を含む溶媒または分散媒であることができる。
【0092】
有効用量の本発明の化合物を哺乳動物、特にはヒトに提供するよう、好適な投与経路を用いることができる。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼球、肺、経鼻などを用いることができる。製剤には、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、液剤、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどがある。好ましくは、構造式Iの化合物は経口投与する。やはり好ましくは、構造式Iの化合物は非経口投与する。
【0093】
ヒトへの経口投与の場合、用量範囲は、分割投与で0.01から1000mg/kgである。1実施形態において、用量範囲は分割投与で0.1から100mg/kgである。別の実施形態において、用量範囲は分割投与で0.5から20mg/kgである。経口投与の場合、組成物は好ましくは、治療を受ける患者に対する症状に応じた調節を行い、有効成分1.0から1000mgの、特には有効成分1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900、および1000mgを含む錠剤またはカプセルの形態で提供される。
【0094】
使用される有効成分の有効用量は、使用される特定の化合物、投与形態、治療対象の状態および治療対象の状態の重度に応じて変わり得る。そのような用量は、当業者であれば容易に確認することができる。この投与法を調節することで、至適な治療応答を得ることができる。
【0095】
本発明の化合物は、1以上の不斉中心を含むことから、ラセミ体およびラセミ混合物、単独のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして得られ得る。Qのアミノアシル残基の実施形態におけるR18が下記式:
【化12】

【0096】
における水素以外の置換基である場合、そのアミノアシル残基は不斉中心を含み、個々のR−およびS−立体異性体ならびにRS−ジアステレオマー混合物を含むものである。1実施形態において、立体中心炭素での立体化学は、S−アミノ酸の立体化学、すなわち下記式で描いたように天然のα−アミノ酸立体化学に相当する。
【化13】

【0097】
さらに、R
【化14】

【0098】
であり、R13およびR14が両方とも水素ではない場合、カルボキシ残基は不斉中心を含み、個々のR−およびS−立体異性体ならびにRS−立体異性体混合物を含むものである。従って、RおよびRも両方とも水素ではない場合、アミノアルコール残基は2個の不斉中心を含み、個々のR,R−、R,S−、S,R−およびS,S−ジアステレオマーならびにそれらの混合物を含むものである。
【0099】
本発明は、構造式で描かれた5員フラノース環についてβ−D立体化学配置を有する化合物、すなわち5員フラノース環のC−1およびC−4での置換基がβ−立体化学配置を有するヌクレオシドホスホルアミデート(太線によって示された「上側」方向)を包含するものである。本明細書に記載の化合物の一部は、オレフィン系二重結合を含み、別段の断りがない限り、EおよびZの両方の幾何異性体を含むものである。
【0100】
本明細書に記載の化合物の一部は、ケト−エノール互変異体などの互変異体として存在し得る。個々の互変異体ならびにそれらの混合物は、構造式(I)の化合物に包含される。
【0101】
構造式(I)の化合物は、例えば好適な溶媒、例えばメタノールまたは酢酸エチルまたはそれらの混合物からの分別結晶、または光学活性固定相を用いるキラルクロマトグラフィーによって、それの個々のジアステレオマーに分離することができる。
【0102】
あるいは、構造式(I)の化合物のいずれかの立体異性体を、立体配置公知である光学的に純粋な原料または試薬を用いる立体特異的合成によって得ることができる。
【0103】
本発明の化合物は、製薬上許容される塩の形態で投与することができる。「製薬上許容される塩」という用語は、無機もしくは有機塩基および無機もしくは有機酸などの製薬上許容される無毒性の塩基もしくは酸から製造される塩を指す。「製薬上許容される塩」という用語に包含される塩基性化合物の塩は、遊離塩基を好適な有機もしくは無機酸と反応させることで製造される本発明の化合物の無毒性塩を指す。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、2塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩(estolate)、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアニサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルブロマイド、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミン・アンモニウム塩、オレイン酸、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジドおよび吉草酸塩などがあるが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、それの好適な製薬上許容される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの無機塩基から誘導される塩などがあるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩である。製薬上許容される有機無毒性塩基から誘導される塩には、1級、2級および3級アミン、環状アミンの塩ならびに塩基性イオン交換樹脂などがあり、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどがある。
【0104】
さらに、カルボン酸(−COOH)またはヒドロキシル木が本発明の化合物に存在する場合、メチル、エチルもしくはピバロイルオキシメチルエステルなどのカルボン酸誘導体の製薬上許容されるプロドラッグエステルまたはO−アセチル、O−ピバロイル、O−ベンゾイルおよびO−アミノアシルなどのリボースC−2′、C−3′およびC−5′ヒドロキシルのプロドラッグアシル誘導体を用いることができる。生物学的利用能、組織分布、溶解度および徐放製剤またはプロドラッグ製剤として使用する上での加水分解特性を変えるために、当業界で公知のエステルおよびアシル基を含める。想到される誘導体は、イン・ビボで必要な化合物に容易に変換可能である。従って、本発明の治療方法において、「投与する」および「投与」という用語は、具体的に開示されている化合物または具体的に開示されない可能性があるがヒト患者などの哺乳動物への投与後にイン・ビボで指定の化合物に変換される化合物で、記載のウィルス感染を治療することを包含する。好適なプロドラッグ誘導体の選択および製造についての従来の手順は、例えば″Design of Prodrugs,″ ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985(参照によって全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0105】
合成の一般的説明
本発明に記載の化合物は、図式1に示した方法に従って製造することができる。好適にはアノマー位置で保護されているか脱離基を有する1などの糖構成単位(例えば、3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−α−D−アラビノフラノシルブロマイド、J. Org. Chem. 1988, 55, 85に報告の方法に従って製造)を、適切な塩基存在下に、2などの官能化複素環誘導体と反応させることができる。次に、5′−ヒドロキシル部分をさらに操作できるようにする上で、保護基の脱離が必要である。代表的には、5′−OHの相当する5′−ヨウ化物への変換を、当業者に公知の標準的な方法によって行う。好適な手順には、適宜にジオキサン、アセトニトリル等などの好適な有機溶媒と組み合わせてのピリジン中でのヨウ素およびPhPによる3の処理、あるいはメチルトリフェノキシホスホニウムヨージドなどの好適な試薬と3との反応などがある。得られたヨウ化物を、例えばDBUもしくはBuOKなどの適切な有機塩基で処理し、次にヒドロキシル部分およびアミノ部分に好適な保護基を導入することで、4′,5′−オレフィン4が得られる。次に、オレフィンのエポキシ化とそれに続くルイス酸促進アジド付加を特徴とする2段階手順を介して、所望の4′−アジド官能基を組み込む。この変換を行う上での実際の方法は、エポキシ化段階でのDMDOの使用、McGuigan et al, J. Med. Chem. 2007, 50, 54623によって記載の方法に従っての、SnCl存在下でのTMS−Nによる処理に依存している。最終的な脱保護および精製段階(代表的には分取HPLCによる)により、本発明に記載の化合物に向けた合成手順を完了する。
【化15】

【0106】
特定の場合に、図式2に描いたように、合成段階の順序を若干変えることが有利である場合がある。特に、塩素置換段階を実施してから、5′位でヨウ素の導入を進めることが有効となる可能性がある。
【化16】

【0107】
当業者に公知の方法を用いて、本明細書に記載のヌクレオシド類縁体を、相当する一リン酸類および一リン酸プロドラッグ類、二リン酸類および三リン酸類などの各種ヌクレオチド誘導体に変換することができる(選択される参考文献:Ludwig, J. Acta Biochim. Biophys. Acad. Sci. Hung. 1981, 16, 131; Ludwig, J., Eckstein, F. J. Org. Chem. 1989, 54, 613; Mishra, N. C; Broom, A. D. J. Chem. Soc, Chem. Commun. 1991, 1276; McGuigan et al, J.Med.Chem. 1993, 36, 1048; Uchiyama et al, J. Org. Chem., 1993, 58, 373)。三リン酸誘導体の製造に用いられる方法の例を図式3に記載しているが、これらに限定されるものではない。
【化17】

【0108】
ヌクレオシド一リン酸類およびヌクレオシド一リン酸プロドラッグ類の合成例を図式4に描いているが、これらに限定されるものではない。
【化18】

【0109】
一般合成手順
溶媒は全て商業的入手先から得たものであり、それ以上の精製を行わずに用いた。通常の脱保護段階およびカップリング段階を除き、反応は、乾燥機で乾燥した(110℃)ガラス容器中窒素雰囲気下に行った。有機抽出液を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下で運転するロータリーエバポレータで濃縮した(脱水剤の濾過後)。公開されている手順に従ってシリカゲルで(W.C. Still et al, J. Org. Chem. 1978, 43, 2923)、またはプレパックカラムを用いる半自動フラッシュクロマトグラフィーシステムで、フラッシュクロマトグラフィーを実施した。
【0110】
試薬は通常、商業的供給者から直接入手したが(そして供給されたまま使用)、社内での収集物からの限られた数の化合物を用いた。後者の場合、科学文献で報告されているか、当業者には公知である通常の合成段階を用いて、試薬を容易に入手することができる。
【0111】
H、19Fおよび31Pnmrスペクトラムは、300から600MHzの(報告の)周波数で動作するBruker AMシリーズスペクトル装置で記録した。非交換性プロトン(および観察可能な場合は交換性プロトン)に相当するシグナルの化学シフト(δ)をテトラメチルシランに対する百万分率(ppm)で記録し、基準として残留溶媒ピークを用いて測定する。シグナルは、多重性(s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;m、多重線;br、広いおよびこれらの組み合わせ);Hz単位でのカップリング定数;プロトン数の順に表に表す。質量スペクトル(MS)データは、陰(ES)または陽(ES)イオン化モードで動作するWaters Micromas ZMDで得たものであり、結果は質量/電荷の比(m/z)として報告する。分取規模のRP−HPLC分離は、1)Waters 2487二重λ吸光度検出器を取り付けたWaters Delta Prep 4000分取クロマトグラフィーシステム;2)LC−8A分取液体クロマトグラフィーモジュール、SPD−10A UV−VIS検出器およびFRC−10Aフラクションコレクターモジュールを組み込んだ自動(UV誘発)RP−HPLC Shimadzu Discovery VPシステムで実施した。いずれの場合も、使用した固定相はAtlantis Prep T3 5μm OBD(19×150mm)またはXBridge Prep C18 5μm OBD(19×150mm)であった。別段の断りがない限り、移動相には、15おから25mL/分の流量を用いての、MeCN(0.1%TFA含有)および水(0.1%TFA含有)またはMeCNおよび5mM重炭酸ジメチルヘキシルアンモニウム水溶液の二元混合物の直線勾配を含めた。
【0112】
マイクロ波照射下での反応は、Personal Chemistry, SwedenからのEmrys Optimizerリアクターで実施した。
【0113】
図式および実施例では、下記の略称を用いた。すなわち、AcOH:酢酸;aq.:水系;bs:広い一重線;bt:広い三重線;DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン;DIAD:ジイソプロピルアゾジカルボキシレート;DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン;DMF:ジメチルホルムアミド;DMSO:ジメチルスルホキシド;eq.:当量;EtO:ジエチルエーテル;EtOAc:酢酸エチル;EtOH:エタノール;(HNBu:ビストリブチルアンモニウムピロホスフェート;h:時間;M:モル濃度;MeCN:アセトニトリル;MeOH:メタノール;(MeO)PO:トリメチルホスフェート;min:分;NaBHCN:水素化ホウ素シアノナトリウム;NBu:トリブチルアミン;NMP:1−メチル−2−ピロリジノン;Pd(PPh:テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0);PE:石油エーテル;P(O)Cl:オキシ塩化リン;RP−HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー;RT:室温;SPE:固相抽出;TBDMS:tert−ブチルジメチルシリル;TEA:トリエチルアミン;TFA:トリフルオロ酢酸;THF:テトラヒドロフラン;UPLC:超高速液体クロマトグラフィーである。
【0114】
実施例1(表1、項目1):7−(4−アジド−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミン
【化19】

【0115】
段階1:4−クロロ−7−(3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン
【化20】

【0116】
KOH(3.0当量)の脱水AcCN(0.1M)中懸濁液を撹拌しながら、それにトリス(ジオキサ−3,6−ヘプチル)アミン(0.2当量)を加え、混合物を室温で20分間撹拌した。4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(1.0当量)を一気に加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。前記の溶液に、0.2Mの3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−α−D−アラビノフラノシルブロマイドの脱水AcCN中溶液(1.0当量;J. Org. Chem. 1988, 53, 85に報告の方法に従って製造)を滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌し、AcOEtで希釈した。褐色様スラリーを短いセライト層で濾過し、AcOEtで洗浄した。有機相を減圧下に濃縮し、残留物をSiOゲルクロマトグラフィー(勾配溶離10%から40%AcOEt/PE)によって精製して、標題化合物を白色泡状物として得た(50%)。H−NMR(400MHz、CDCl)δ8.65(s、1H)、8.13−8.07(m、4H)、7.66−7.44(m、7H)、6.86(m、1H)、6.62(m、1H)、5.71(m、1H)、5.32(m、1H)、4.82−4.50(m、3H);19F−NMR(400MHz、CDCl)δ−198.60;MS(ES)C2519ClFN理論値:495、実測値:496(M+H)。
【0117】
段階2:4−クロロ−7−(2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン
【化21】

【0118】
段階1からの4−クロロ−7−(3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンを7N NH/MeOHに溶かし、得られた溶液(0.5M)を室温で終夜撹拌した。揮発分を減圧下に除去し、標題化合物をDCM/MeOHから結晶化させて白色粉末を得た(68%).H−NMR(400MHz、DO)δ8.55(s、1H)、7.72(s、1H)、6.79−6.68(m、2H)、5.26(m、1H)、4.49(m、1H)、4.09−3.81(m、3H);MS(ES)C1111ClFN理論値:287、実測値:288(M+H)。
【0119】
段階3:7−(2,5−ジデオキシ−2−フルオロ−β−D−スレオ−ペント−4−エノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミン
【化22】

【0120】
0.1Mの段階2からの4−クロロ−7−(2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンのピリジン中溶液に、ヨウ素(1.5当量)およびPhP(1.5当量)を加え、得られた混合物を室温で終夜撹拌した。揮発分を減圧下に除去し、残留物をトルエンで2回共留去し、DCM/MeOHで溶離を行うフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、4−クロロ−7−(2,5−ジデオキシ−2−フルオロ−5−ヨード−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンを淡黄色泡状物として得た。後者の化合物を脱水AcCN(0.1M)に溶かし、DBU(2.0当量)を加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌し、揮発分を減圧下に除去した。残留物を7N NH/MeOHに溶かし、得られた溶液(0.1M)を圧力密閉管中110℃で終夜撹拌した。反応混合物を放冷して室温とし、揮発分を減圧下に除去し、標題化合物をDCM/MeOHから白色粉末として結晶化させた(3段階で16%)。H−NMR(400MHz、CDCN/DO)δ8.18(s、1H)、7.19(m、1H)、6.89(dd、J18.0、J3.6、1H)、6.61(d、J3.6、1H)、5.16(m、1H)、4.90(m、1H)、4.58(bs、1H)、4.42(bs、1H);MS(ES)C1111FN理論値:250、実測値:251(M+H)。
【0121】
段階4:7−{3−O−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]−2,5−ジデオキシ−2−フルオロ−β−D−スレオ−ペント−4−エノフラノシル]−N−(2,2−ジメチルプロパノイル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミン
【化23】

【0122】
0.2Mの段階4からの7−(2,5−ジデオキシ−2−フルオロ−β−D−スレオ−ペント−4−エノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミンの脱水ピリジン中溶液に、イミダゾール(8.0当量)およびTBDMS−Cl(4.0当量)を加え、得られた混合物を室温で終夜撹拌した。MeOHで反応停止し、揮発分を減圧下に除去した。残留物をDCMに溶かし、クエン酸(1N水溶液)、水およびブラインで洗浄した。有機相を分離し、MgSOで脱水し、減圧下に濃縮した。残留物を脱水DMF(0.1N)に溶かし、DIPEA(2.0当量)を加え、次にピバロイルクロライド(1.9当量)を加え、得られた反応混合物を室温で終夜撹拌した。次に減圧下に揮発分を除去し、残留物を、2%MeOH/DCMで溶離を行うSiOゲルクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物をオフホワイト泡状物として得た。MS(ES)C2233FNSi理論値:448、実測値:449(M+H)。R=1.7分(UPLC:カラムAcquity BEH C18 1.7mm 2.1×50mm;勾配:2分以内で10%から100%AcCN)。
【0123】
段階5:7−(4−アジド−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミン
【化24】

【0124】
調製したばかりのDMDO/アセトン溶液(0.07M、3当量)を、0.03Mの段階4からの7−{3−O−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]−2,5−ジデオキシ−2−フルオロ−β−D−スレオ−ペント−4−エノフラノシル}−N−(2,2−ジメチルプロパノイル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミンのアセトン中溶液に−30℃で滴下した。混合物を同温度で1時間撹拌した。揮発分を減圧下に除去し、粗エポキシドを脱水DCMに溶かし(0.03M)に溶かし、冷却して−78℃とした。SnCl(3当量)およびTMS−N(3当量)を加え、得られた反応混合物を−78℃で1時間、室温で30分間撹拌した。0℃で2NのNH/MeOH溶液(2N)数滴によってpH=7として反応停止した。得られた褐色スラリーを短いセライト層で濾過し、濾液を減圧下に濃縮した。7−{4−アジド−3−O−[tert−ブチル(ジメチル)シリル]−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−スレオ−ペントフラノシル}−N−(2,2−ジメチルプロパノイル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミンの粗エピマー混合物を脱水THFに溶かし、1NのTBAF/THF溶液(4当量)を加えた。得られた混合物を室温で2時間撹拌し、揮発分を減圧下に除去し、残留物をアンモニア/メタノール7N(0.1M)に溶かし、圧力密閉管中40℃で48時間撹拌した。揮発分を減圧下に除去し、粗取得物を水とともに2回共留去した。分取RP−HPLC精製後に、標題化合物を極性が高い方のエピマーとして単離した(4段階で9%)(カラム:AtlantisT3 OBD 190×150mm/5μM;移動相:HO/MeCN/0.1%TFA;勾配:2分5%MeCN、14分5%から50%)。H−NMR(400MHz、CDCN/DO)δ8.02(s、1H)、7.32(bs、1H)、6.68(d、J3.6、1H)、6.61(dd、J21.6、J3.6、1H)、5.16(見かけのdt、J53.6、J=6.0、1H)、4.52(dd、J21.2、J6.0、1H)、3.65(s、2H);19F−NMR(400MHz、CDCN/DO)δ−204.73;MS(ES)C1415FN理論値:309、実測値:310(M+H)。
【0125】
実施例2(表1、項目2):7−(4−アジド−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−5−フルオロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミン
【化25】

【0126】
図式1および図式2に記載の合成経路に従って、実施例1について記載の方法と同様の方法で、標題化合物を得ることができる。NMR(400MHz、CDCN/DO)δ8.13(s、1H)、7.26(bs、1H)、6.77(m、1H)、5.27(見かけのdt、J53.7、J6.1、1H)、4.62(dd、J21.0、J6.3、1H)、3.76(s、2H);19F−NMR(400MHz、CDCN/DO)δ−204.5(1H)、−166.5(1H);MS(ES)C1111理論値:327、実測値:328(M+H)。
【0127】
実施例3(表1、項目3):9−(4−アジド−2−デオキシ−2−フルオロ−b−D−アラビノフラノシル)−9H−プリン−6−アミン
【化26】

【0128】
図式1および図式2に記載の合成経路に従って、実施例1について記載の方法と同様にして、標題化合物を得ることができる。
【0129】
NMR(400MHz、CDCN/DO)δ8.35(s、1H)、6.71(m、1H)、5.28(見かけのdt、J53.2、J6.0、1H)、4.61(dd、J20.8、J6.4、1H)、3.90(s、2H);19F−NMR(400MHz、CDCN/DO)δ−202.9(1H)、−166.5(1H);MS(ES)C1011FN理論値:310、実測値:311(M+H)。
【0130】
表1
【表1】

【0131】
本発明の化合物について、下記で説明するカウンタースクリーニングで細胞毒性および抗ウィルス特異性も評価した。
【0132】
以上、具体的な実施形態を参照しながら本発明について説明および例示を行ったが、当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて、それに各種の変更、修正および置き換えを行うことが可能であることは明らかであろう。例えば、HCV感染の重度について治療を受けるヒトの応答性に変動があるために、上記において記載の好ましい用量以外の有効用量が適用可能となる場合がある。同様に、観察される薬理応答は、選択される特定の活性化合物または医薬担体が存在するか否か、そして製剤の種類および使用される投与形態に従い、それに応じて変わり得るものであり、結果におけるそのような予想される変動や差は、本発明の目的および実務に従って想到されるものである。従って、本発明は後述の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、そのような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈すべきである。
【0133】
生物アッセイ
HCV NS5BポリメラーゼおよびHCV複製の阻害を測定するのに用いられるアッセイについて、下記で説明する。
【0134】
HCV NS5B RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の阻害薬としての本発明の化合物の有効性を、下記のアッセイで測定した。
【0135】
A.HCV NS5Bポリメラーゼの阻害のアッセイ
このアッセイを用いて、本発明のヌクレオシド誘導体がヘテロメリックRNA鋳型に対するC型肝炎ウィルス(HCV)のRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)の酵素活性を阻害する能力を測定した。
【0136】
手順
アッセイ緩衝液条件:(52.5μL−合計/反応)
−20mM Tris、pH7.5
−45mM KCl
−2mM MgCl
−0.01%Triton X−100
−1μgBSA、DNaseを含まない
−1mM DTT
−2nM DC55−1b.BKまたは10nM DC55−2b.2
−20nM不均一鋳型dCoh
−UTP 1μM
−ATP 1μM
−CTP 1μM
−GTP 1μM
−3H−UTP 1,000,000cpm
−2.5μL/反応のHO中の阻害薬化合物。
【0137】
最終濃度100μM以下の各種濃度で化合物を調べた。ヌクレオシド誘導体を、ピペットで96ウェルプレートのウェルに入れた。反応緩衝液で希釈した酵素をピペットでウェルに入れ、室温で10分間インキュベートし;次に鋳型dCohを加え、室温で10分間インキュベートした。放射標識UTPを含むヌクレオチド三リン酸類(NTP類)の混合物を加えることで反応開始し、室温で2時間進行させた。dCoh鋳型を省略して、ブランクサンプルを行った。TCA20%(トリクロロ酢酸)/NaPPi 20mM 50μLを加えることで反応停止し、プレートを氷に5分間入れた。次に、混合物をUnifilter GF/B96ウェルプレート(PerkinElmer)で濾過し、TCA2.5%で洗浄した。50μL/ウェルのシンチレーター溶液(Microscint 20、PerkinElmer)を加え、シンチレーターカウンターでプレートのカウンティングを行った。
【0138】
下記式により、阻害パーセントを計算した。
【0139】
阻害%=[1−(試験反応でのcpm−ブランクでのcpm)/(対照反応でのcpm−ブランクでのcpm)]×100。
【0140】
代表的化合物を、HCV NS5Bポリメラーゼアッセイで調べた。
【0141】
活性範囲:
+++:<1μM;++:<50μM;+:>50μM。
【0142】
B.HCV RNA複製阻害のアッセイ
本発明の化合物について、サブゲノムHCVレプリコンを含む培養肝臓癌(HuH−7)細胞におけるC型肝炎ウィルスRNAの複製に影響を与える能力も評価した。アッセイの詳細については後述する。このレプリコンアッセイは、文献(V. Lohmann, F. Korner, J−O. Koch, U. Herian, L. Theilmann, and R. Bartenschlager, ″Replication of a Sub−genomic Hepatitis C Virus RNAs in a Hepatoma Cell Line,″ Science 285:110 (1999))に記載の方法の変法である。
【0143】
プロトコール
アッセイは、イン・サイツのリボヌクレアーゼ保護、シンチレーション近接式プレートアッセイ(SPA)であった。96ウェルのcytostarプレート(Amersham)における0.8mg/mLのG418を含む培地100から200μL中、細胞10,000から40,000個を平板培養した。時間0から18時間で100μM/1%DMSO以下の各種濃度で、化合物を細胞に加え、24から96時間培養した。細胞を固定し(20分、10%ホルマリン)、透過化処理し(20分、0.25%Triton X−100/PBS)、RNAウィルスゲノムに含まれる(+)鎖NS5B(または他の遺伝子)に対して相補性である一本鎖33P RNAプローブを用いてハイブリダイズした(終夜、50℃)。細胞を洗浄し、RNAseで処理し、洗浄し、過熱して65℃とし、Top−Countでカウンティングした。複製の阻害を、カウント/分(cpm)における減少として読み取った。
【0144】
サブゲノムレプリコンを含むよう選択されたヒトHuH−7肝臓癌細胞は、HCV5′非翻訳領域(NTR)、ネオマイシン選択可能マーカー、EMCV IRES(内部リボソーム侵入部位)およびHCV非構造タンパク質NS3からNS5Bからなる細胞質RNAとそれに続く3′NTRを有する。
【0145】
代表的な化合物を、HCV複製アッセイで調べ、結果を下記の表でEC50活性範囲として報告している。
【0146】
表2
【表2】

【0147】
活性範囲
+++:<20μM;
+:20<EC50<100μM;
−:>100μM。
【0148】
医薬製剤の例
本発明の化合物の経口組成物の具体的な実施形態として、いずれかの実施例50mgを、微粉砕乳糖とともに製剤して、総量580から590mgを得て、サイズOの硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0149】
以上、具体的な実施形態を参照しながら本発明について説明および例示を行ったが、当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて、それに各種の変更、修正および置き換えを行うことが可能であることは明らかであろう。例えば、HCV感染の重度について治療を受けるヒトの応答性に変動があるために、上記において記載の好ましい用量以外の有効用量が適用可能となる場合がある。同様に、観察される薬理応答は、選択される特定の活性化合物または医薬担体が存在するか否か、そして製剤の種類および使用される投与形態に従い、それに応じて変わり得るものであり、結果におけるそのような予想される変動や差は、本発明の目的および実務に従って想到されるものである。従って、本発明は後述の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであり、そのような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HCV感染の予防および/または治療で使用される下記構造式(I)の化合物および該化合物の製薬上許容される塩。
【化1】

[式中、
Yは基CRであり、Rは水素、CHO、ニトリル、エチニル、1個もしくは2個のC1−3脂肪族基によって置換されていても良い基CONHまたはフルオロによって置換されていても良いC1−3脂肪族基であるか、RはCORによって置換されていても良いアミノであり、RはC1−6脂肪族基またはフェニルであり、またはYがRに連結されて、下記の三環式環:
【化2】

を形成しており、
式中、点線は単結合もしくは二重結合を表し、Zは、点線が二重結合を表す場合はCHを表し、または前記点線が単結合を表す場合はOまたはCHを表し;
WはNまたはCHであり;
は、アジド、エチニル、ニトリルまたはフルオロによって置換されていても良いC1−3脂肪族基であり;
は水素またはフルオロであり;
は、水素、フルオロもしくはヒドロキシまたはフルオロによって置換されていても良いC1−3脂肪族基もしくはC1−3アルコキシ基であり;
は水素、アミノまたはヒドロキシルであり;
はヒドロキシルまたはアミノであり;
は水素または一、二もしくは三リン酸基または保護基Qであり;
は水素または保護基Qである。]
【請求項2】
下記式(III)、(IV)、(V)および(VI)から選択される請求項1に記載の化合物ならびに該化合物の製薬上許容される塩。
【化3】

[式中、RからR、Z、QおよびQは請求項1に関して前述で定義の通りである。]
【請求項3】
におけるQが、C1−16アルキルカルボニル、C2−18アルケニルカルボニル、C1−10アルキルオキシカルボニル、C3−6シクロアルキルカルボニル、C3−6シクロアルキルオキシカルボニルまたは一リン酸プロドラッグ残基:
【化4】

から選択され;
が、水素、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、グアニジノ、メルカプト、メチルチオ、1H−イミダゾリルおよび1H−インドール−3−イルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていても良いC1−6アルキルであり;またはRは独立にハロゲン、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択される1もしくは2個の置換基でそれぞれ置換されていても良いフェニル、ベンジルまたはフェネチルであり;
が水素またはメチルであり;
またはRおよびRがそれらが結合している炭素原子とともに、3から6員脂肪族スピロ環状環系を形成しており;
が、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたは
【化5】

であり;
11が、独立にハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシ、トリフルオロメチルおよび(CH0−4NR1516から選択される1から3個の置換基でそれぞれ置換されていても良いC1−16アルキル、C2−20アルケニル、(CH0−47−9シクロアルキル、(CH0−43−9シクロアルケニルまたはアダマンチルであり、R15およびR16は独立に水素およびC1−6アルキルから選択され;またはR15およびR16がそれらが結合している窒素原子とともに、N、OおよびSから選択される1もしくは2個の追加のヘテロ原子を含んでいても良い4から7員複素環を形成しており、その環はC1−6アルキルによって置換されていても良く;
10が、ヒドロキシまたは基OR16であり、R16はCHOC(O)R17またはCHCHSR17であり、R17はヒドロキシル基によって置換されていても良いC1−6アルキルカルボニルであり、またはR16は(CH2−4−O−(CH1−17CHまたはフェニル、ナフチル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリニルまたはイソキノリニルから選択される芳香環であり、前記芳香族は独立にハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルキルカルボニルオキシおよびC1−4アルキルオキシカルボニルからなる群から選択される1から5個の置換基で置換されていても良く;またはR10およびQが結合を形成して、環状リン酸基を作り;
12が、C6−16アルキル、C2−20アルケニル、(CH0−27−9シクロアルキル、(CH0−23−9シクロアルケニル、OC1−6アルキルまたはアダマンチルであり;
13およびR14が独立に、水素およびC1−6アルキルから選択され;
またはR13およびR14がそれらが結合している炭素原子とともに、3から6員脂肪族スピロ環状環系を形成しており;
および/またはQが、メチル、C1−16アルキルカルボニル、C2−18アルケニルカルボニル、C1−10アルキルオキシカルボニル、C3−6シクロアルキルカルボニル、C3−6シクロアルキルオキシカルボニルおよび下記構造式のアミノアシル残基:
【化6】

であることができ;
式中、R18が水素、C1−5アルキルまたはフェニルC0−2アルキルであり;R19が水素、C1−4アルキル、C1−4アルキルスルホニルまたはフェニルC0−2アルキルスルホニルまたは基COR20であり、R20がフェニルによって置換されていても良いC1−4アルキル、フェニルによって置換されていても良いC1−4アルコキシ、フェニルによって置換されていても良いC1−4アルキルによって置換されていても良いC1−4アルキルアミノである請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が水素、一、二もしくは三リン酸、またはC−C16−アルキルカルボニルまたは請求項3に記載の構造の一リン酸プロドラッグから選択され;Rが水素、メチルまたはベンジル、より好適には水素またはメチルであり;Rが水素またはメチルであり;RがPh、CO11またはCR1314OC(O)R12であり、R10がヒドロキシルまたはOR16であり;R16が芳香族またはヘテロ芳香族環またはCHCHSR17であり、R17がヒドロキシル基で置換されていても良いC−Cアルキルカルボニルである請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
が、水素、C−C16−アルキルカルボニルまたは前記構造のアミノアシル残基から選択され、R18が水素またはC−Cアルキル、より好適にはメチルであり、R19が水素であり、最も好適にはQが水素である請求項1から4のうちのいずれか1項の記載の化合物。
【請求項6】
がアジドまたはエチニルである請求項1から5のうちのいずれか1項の記載の化合物。
【請求項7】
が水素であり、Rがフルオロである請求項1から6のうちのいずれか1項の記載の化合物。
【請求項8】
が水素であり、Rがアミノである請求項1から7のうちのいずれか1項の記載の化合物。
【請求項9】
YがCHであり、WがCHである請求項1から8のうちのいずれか1項の記載の化合物。
【請求項10】
下記式(VII)の化合物および該化合物の製薬上許容される塩。
【化7】

[式中、R、QおよびQは、請求項1から5のうちのいずれか1項によって定義の通りである。]
【請求項11】
が水素である請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
およびQが水素である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
7−(4−アジド−2−デオキシ−2−フルオロ−β−D−アラビノフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−アミンおよびそれの製薬上許容される塩。
【請求項14】
医薬品で使用される請求項10から13のうちのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
HCV感染の予防または治療のための医薬品の製造で使用される請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
治療上有効量の請求項1から9のうちのいずれか1項に従って定義の構造式(I)の化合物を、哺乳動物に対して投与する段階を有する、処置を必要とする哺乳動物でのRNA依存性RNAウィルスポリメラーゼの阻害方法、RNA依存性RNAウィルス複製の阻害方法、および/またはRNA依存性RNAウィルス感染の治療方法。
【請求項17】
請求項10から13のうちのいずれか1項に記載の式(VII)の化合物および製薬上許容される担体を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2012−517401(P2012−517401A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545764(P2011−545764)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050578
【国際公開番号】WO2010/084115
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・エルレ・エルレ (90)
【Fターム(参考)】