説明

抗体代替軽鎖配列を含む構築物およびライブラリー

B細胞の前駆体(プレB細胞)は、μ重鎖を産生するが、十分に発達した軽鎖の代わりにVpreB(l−3)およびλ5とそれぞれ呼ばれるB系統特異的遺伝子のセットを発現するリンパ球として骨髄中で特定されてきた。本発明は、抗体代替軽鎖配列を含む構築物およびライブラリーに関する。特に、本発明は、例えば、抗体重鎖可変ドメイン配列のような別のポリペプチドと任意にパートナーにされたVpreB配列を含む構築物、およびそれを含有するライブラリーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体代替軽鎖配列を含む構築物およびライブラリーに関する。特に、本発明は、例えば、抗体重鎖可変ドメイン配列のような別のポリペプチドと任意にパートナーにされたVpreB配列を含む構築物、およびそれを含有するライブラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
Bリンパ球により産生された抗体(Ig)分子は、重(H)鎖および軽(L)鎖で作られている。H鎖およびL鎖のアミノ末端ドメインのアミノ酸配列は、特に抗原結合部位を形成する3つの超可変領域(CDR1、CDR2、CDR3)において可変である(VおよびV)。H鎖およびL鎖の集合は、L鎖(C)の定常領域と重鎖(CH1)の第1の定常領域との間のジスルフィド結合によって、およびVドメインとVドメインとの間の非共有結合的相互作用によって安定化される。
【0003】
ヒトおよびマウスのような多くの動物において、抗体H鎖およびL鎖をコードする遺伝子は、V領域のいくつかの部分をコードする遺伝子断片の段階的体細胞再構成により組み立てられる。Bリンパ球発達の様々な段階は、Ig遺伝子座の再構成状態により特徴付けられる(例えば、非特許文献1を参照されたい)。
【0004】
B細胞の前駆体(プレB細胞)は、μ重鎖を産生するが、十分に発達した軽鎖の代わりにVpreB(l−3)およびλ5とそれぞれ呼ばれるB系統特異的遺伝子のセットを発現するリンパ球として骨髄中で特定されてきた。
【0005】
ヒトVpreB1(CAG30495)の主要なアイソフォームは、145aa−長ポリペプチド(配列番号1)である。これは、IgVドメイン様構造を有しているが、典型的なVドメインの最後のβ−ストランド(β7)を欠いており、他のどのようなタンパク質とも配列相同性を全く示さないカルボキシル末端を有する。VpreB2は、142−アミノ酸マウスVpreB2ポリペプチド(Pl3373;配列番号2)、およびマウスVpreB2配列の171−アミノ酸長スプライス変異体(CAA019641 配列番号3)を含むいくつかのアイソフォームを有する。VpreB1配列およびVpreB2配列は、欧州特許第0269127号および米国特許第5,182,205号;非特許文献2;ならびに非特許文献3に開示にされている。ヒトVpreB3(配列番号4)の主要なアイソフォームは、非特許文献2に開示されている123アミノ酸長タンパク質(CAG30496)である。
【0006】
VpreB(1−3)は、別のタンパク質、λ5と、非共有結合的に会合している。ヒトλ5は、抗体軽鎖との強い相同性および、そのアミノ末端に向かって、一方がVλドメインのβ7との強い相同性を示す2つの機能的に別個の領域を有するIgCドメイン様構造を持つ209−アミノ酸ポリペプチド(CAA01962;配列番号5)である。ヒトλ5様タンパク質は、213のアミノ酸(NP_064455;配列番号6)を有し、抗体λ軽鎖定常領域と約84%の配列同一性を示す。
【0007】
さらなる詳細については、以下の総説を参照されたい:非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6。
【0008】
VpreBおよびλ5ポリペプチドは共に、非共有結合的に会合されたIg軽鎖様構造を形成し、これは、代替軽鎖または偽軽鎖と呼ばれる。初期のプレB細胞の表面において、代替軽鎖は、シグナルトランスデューサーCD79a/CD79bヘテロ二量体と共同して膜結合Igμ重鎖にジスルフィド結合されており、B細胞様構造、いわゆるプレB細胞受容体(preBCR)を形成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Melchers,F.&Rolink,A.,B−Lymphocyte Development and Biology,Paul,W.E.,ed.,1999,Lippincott,Philadephia
【非特許文献2】Collins et al.,Genome Biol.5(10):R84(2004)
【非特許文献3】Hollins et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(14):5552−5556(1989)
【非特許文献4】Karasuyama et al.,Adv.Immunol.63:1−41(1996)
【非特許文献5】Melchers et al.,Immunology Today 14:60−68(1993)
【非特許文献6】Melchers,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:2571−2573(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、本発明は、異種アミノ酸配列にコンジュゲートされたVpreB配列またはλ5配列を含むポリペプチドに関し、このポリペプチドは、標的に結合することができる。
【0011】
好ましい実施形態において、ポリペプチドはVpreB配列を含み、ここで、ポリペプチドが標的に結合する能力を保持するのであれば、VpreBは、ヒトVpreB1(配列番号1)、マウスVpreB2(配列番号2および3)およびヒトVpreB3(配列番号4)、あるいは別の哺乳動物種におけるそれらの相同体、またはそれらの断片もしくは変異体を含む任意の未変性VpreBであり得る。
【0012】
好ましい実施形態において、異種アミノ酸配列はλ5配列であり、これは、配列番号5の未変性ヒトλ5配列、配列番号6のヒトλ5様配列、ならびにそれらの断片および変異体を含む、任意の未変性λ5配列、またはそれらの任意の断片もしくは変異体であり得る。
【0013】
VpreB配列および異種アミノ酸配列、例えばλ5配列は、互いに直接融合されてもよく、または非共有結合的に会合させられてもよい。前者の場合、融合は好ましくは、それぞれ、VpreBおよびλ5のCDR3類似領域においてまたはそのまわりで起きる。
【0014】
別の実施形態において、異種アミノ酸配列は、抗体軽鎖可変領域配列であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、抗体軽鎖可変領域配列は、抗体軽鎖CDR3領域に類似する部位においてVpreB配列に融合される。別の実施形態において、融合は、抗体軽鎖のCDR3領域とVpreBのCDR3類似領域との間である。すべての実施形態において、抗体軽鎖は、λ鎖またはκ鎖であり得る。
【0015】
特定の実施形態において、VpreB−λ5コンジュゲート(融合、他の共有結合、および非共有結合性会合を含む)、およびVpreB−抗体軽鎖コンジュゲートを制限なく含む本明細書におけるポリペプチドは、抗体重鎖可変領域のような抗体重鎖可変領域配列、または可変領域を含む完全な抗体重鎖を含む配列とさらに会合させられてもよい。
【0016】
ポリペプチドがλ5配列を含む場合、ポリペプチドが標的に結合する能力を保持するのであれば、λ5は、配列番号5のヒトλ5および配列番号6のヒトλ5様タンパク質、あるいは別の哺乳動物種における相同体、またはそれらの任意の断片もしくは変異体を含む任意の未変性λ5であり得る。特定の実施形態において、λ5配列にコンジュゲートされた異種アミノ酸配列は、VpreB配列である。
【0017】
本発明のポリペプチド構築物において、VpreBおよびλ5配列は、もし両方とも存在すれば、直接融合、リンカー配列(例えば、ペプチドリンカー)による共有結合、および非共有結合性会合を含む任意の手段によるコンジュゲートであり得る。
【0018】
特定の実施形態において、VpreB配列とλ5配列との融合物は、非共有結合性会合によって抗体重鎖配列にコンジュゲートされて、二量体複合体を形成する。
【0019】
別の実施形態において、三量体複合体が、VpreB配列、λ5配列および抗体重鎖配列の非共有結合性会合によって形成される。ある一定の実施形態において、「SURROBODY(商標)変異体」の変異体代替軽鎖構造とも呼ばれるこれらの構造において、VpreBおよびλ5部分の一方または両方の特徴的な尾部(付属物)が、保持され得る(ただし、保持されなくてもよい)。付加的な機能性をそのような付属物に付けることが可能である。加えて、様々な実施形態において、有用な付属物融合が、PKおよび/または効力のような構築物の様々な特性を向上させるために設計および作られ得る。
【0020】
すべての実施形態において、可変領域配列を含む抗体重鎖が存在する場合、本発明のポリペプチドおよび抗体重鎖可変領域配列は、同じまたは異なる標的に結合してもよい。
【0021】
別の態様において、本発明は、そのようなポリペプチドのライブラリーに関する。
【0022】
さらに別の態様において、本発明は、可変領域配列を含む抗体重鎖またはその断片と会合させられたそのようなポリペプチドのライブラリーに関する。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、抗体重鎖可変領域配列と任意に会合させられた代替軽鎖配列のコレクションを含むライブラリーに関する。
【0024】
すべての態様において、ライブラリーは、例えば、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、またはミクロビーズディスプレイのようなディスプレイの形態でもよい。
【0025】
本発明はさらに、例えば、重要な治療的応用を有する所望の結合特性および/または結合親和性を有する抗体様分子を設計または選択するための、そのようなポリペプチドおよびそのようなポリペプチドを含むライブラリーの様々な使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ヒトVpreBl(配列番号1)およびヒトλ5と、抗体λ鎖可変および定常領域との配列比較を示す。VpreBlが抗体λ鎖可変領域といくらかの配列類似性を共有する一方、λ5は、抗体λ鎖定常領域およびフレームワーク領域4といくらかの類似性を共有する。四角で囲んだ領域は、抗体λ鎖CDRl、CDR2および各CDR3領域とそれぞれ類似するVpreB1およびλ5配列を特定する。
【図2】VpreBおよびλ5配列により形成された代替軽鎖、代替軽鎖配列を含む例示的な融合ポリペプチド、およびV−J接合由来の抗体軽鎖構造の概略図である。
【図3】様々な代替軽鎖欠失および単鎖構築物の概略図である。
【図4】代替軽鎖構築物内への組み合せ機能多様性の組み込みを概略的に例示する。
【図5】様々な例示的な代替軽鎖構築物の遺伝子およびタンパク質構造を示す。
【図6】VpreBl配列と抗体λ5軽鎖可変領域配列との配列比較である。最も高い配列類似度を有する領域が四角で囲んである。図に示されるように、VpreBlは、λ5軽鎖可変領域生殖系列に対し56%〜62%(アミノ酸2〜97)配列同一性しか示さない。
【図7】VpreBl配列と抗体λ5軽鎖定常領域配列との配列比較である。図に示されるように、整列されたVpreBl配列は、対応する抗体λ5軽鎖定常領域配列に対し62%(アミノ酸97〜209)配列同一性しか示さない。
【図8】VpreBl配列と抗体κ軽鎖定常領域配列との配列比較である。図に示されるように、整列されたVpreBl配列は、対応する抗体κ軽鎖定常領域配列に対し35%(アミノ酸105〜209)配列同一性しか示さない。
【図9】代替軽鎖(SLC)コンポーネントに機能性を付加する様々な代表的方法を例示する。
【図10−1】配列番号1のヒトVpreBl配列、配列番号2および3のマウスVpreB2配列;配列番号4のヒトVpreB3配列、配列番号5のヒトλ5配列および配列番号6のヒトλ5様タンパク質配列、ならびに実施例において用いられた様々な構築物の配列を示す。
【図10−2】配列番号1のヒトVpreBl配列、配列番号2および3のマウスVpreB2配列;配列番号4のヒトVpreB3配列、配列番号5のヒトλ5配列および配列番号6のヒトλ5様タンパク質配列、ならびに実施例において用いられた様々な構築物の配列を示す。
【図10−3】配列番号1のヒトVpreBl配列、配列番号2および3のマウスVpreB2配列;配列番号4のヒトVpreB3配列、配列番号5のヒトλ5配列および配列番号6のヒトλ5様タンパク質配列、ならびに実施例において用いられた様々な構築物の配列を示す。
【図10−4】配列番号1のヒトVpreBl配列、配列番号2および3のマウスVpreB2配列;配列番号4のヒトVpreB3配列、配列番号5のヒトλ5配列および配列番号6のヒトλ5様タンパク質配列、ならびに実施例において用いられた様々な構築物の配列を示す。
【図11】本発明の様々な三量体および二量体代替軽鎖構築物を例示する。
【図12】代替軽鎖およびコンジュゲートされた重鎖の検出。レーン1:完全長、レーン2:λ5 dT、レーン3:VpreB dt、レーン4:ショート、レーン5:SCL融合1、レーン6:SLC融合2、レーン7:抗体。
【図13】SLC融合タンパク質が、E.coliのペリプラズム中で発現および十分に分泌し、IgMではなくIgGl由来の重鎖CHlと最もうまくパートナーにされる。パネルA:E.coliにおけるSCL融合タンパク質発現。パネルB:IgGlγ鎖は、IgMμ鎖よりもうまくSLC融合とパートナーになり精製する。
【図14】抗ファージ検出を介したファージ代替軽鎖構築物捕獲ELISA。
【図15】哺乳動物細胞中で発現された精製代替軽鎖構築物がウイルス標的と結合する。
【図16】哺乳動物細胞中で発現された精製代替軽鎖構築物が、ウイルス抗原と結合する安定な複合体を含む。
【図17】E.coliペリプラズムライゼートと結合する抗原。
【図18】無力化重鎖と対にされた代替軽鎖融合構築物ファージがH5 HA抗原と容易に結合する。
【図19】無力化重鎖と対にされた代替軽鎖構築物ファージが抗原と結合する。
【図20】ファージディスプレイ実験の結果の概要を示す表。
【図21】代替軽鎖融合1および2のラウンド1のクローン分析の結果。
【図22】代替軽鎖融合1および2のラウンド2のクローン分析の結果。
【発明を実施するための形態】
【0027】
A. 定義
他に定義されなければ、本明細書中で用いられる技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 1994)は、本出願中で用いられる用語の多くへの一般的指針を当業者に提供する。
【0028】
当業者は、本明細書中に記載されるものと類似または同等な多くの方法および材料を認め、それらは、本発明の実施において使用することができるかもしれない。事実、本発明は、記載された方法および材料に全く限定されるものではない。本発明の目的のため、次の用語が以下定義される。
【0029】
用語「代替軽鎖」は、本明細書中で用いられる場合、VpreBおよびλ5タンパク質の非共有結合性会合により形成された二量体を意味する。
【0030】
用語「VpreB」は、本明細書中では最も広い意味で用いられ、さらに、具体的には、配列番号1のヒトVpreB1、配列番号2および3のマウスVpreB2、配列番号4のヒトVpreB3、および、スプライス変異体および翻訳後修飾によって形成された変異体を含むアイソフォーム、それらの他の哺乳動物相同体を、制限なく含む任意の未変性配列VpreBポリペプチド、ならびにそのような未変性配列ポリペプチドの変異体を意味する。
【0031】
用語「λ5」は、本明細書中では最も広い意味で用いられ、さらに、具体的には、配列番号5のヒトλ5、配列番号6のヒトλ5様タンパク質、および、スプライス変異体および翻訳後修飾によって形成された変異体を含むそれらのアイソフォーム、それらの他の哺乳動物相同体を、制限なく含む任意の未変性配列または変異体λ5ポリペプチド、ならびにそのような未変性配列ポリペプチドの変異体を意味する。
【0032】
用語「変異体VpreBポリペプチド」および「VpreBポリペプチドの変異体」は、区別なく用いられ、本明細書中では、アミノ酸修飾の結果として1つ以上のアミノ酸位置において未変性配列VpreBポリペプチドと異なるポリペプチドとして定義される。本明細書中で定義されるような「変異体VpreBポリペプチド」は、未変性抗体λまたはκ軽鎖配列、あるいはそれらの断片と異なる。「変異体VpreBポリペプチド」は、好ましくは、未変性配列VpreBポリペプチドと、少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%配列同一性を保持する。別の好ましい実施形態において、「変異体VpreBポリペプチド」は、そのアミノ酸配列において、未変性抗体λまたはκ軽鎖配列と、95%未満、または90%未満、または85%未満、または80%未満、または75%未満、または70%未満、または65%未満、または60%未満同一である。変異体VpreBポリペプチドは、具体的には、VpreB配列のC末端における非Ig様ユニーク尾部が部分的にまたは完全に取り去られているVpreBポリペプチドを制限なく含む。
【0033】
用語「変異体λ5ポリペプチド」および「λ5ポリペプチドの変異体」は、区別なく用いられ、本明細書中では、アミノ酸修飾の結果として1つ以上のアミノ酸位置において未変性λ5ポリペプチドと異なるポリペプチドとして定義される。本明細書中で定義されるような「変異体λ5ポリペプチド」は、未変性抗体λまたはκ軽鎖配列、あるいはそれらの断片と異なる。「変異体λ5ポリペプチド」は、好ましくは、未変性配列λ5ポリペプチドと、少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%配列同一性を保持する。別の好ましい実施形態において、「変異体λ5ポリペプチド」は、そのアミノ酸配列において、未変性抗体λまたはκ軽鎖配列と、95%未満、または90%未満、または85%未満、または80%未満、または75%未満、または70%未満、または65%未満、または60%未満同一である。変異体λ5ポリペプチドは、具体的には、λ5配列のN末端におけるユニーク尾部が部分的にまたは完全に取り去られているλ5ポリペプチドを制限なく含む。
【0034】
パーセントアミノ酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI−BLAST2(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997))を用いて決定され得る。NCBI−BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードされてもよく、またはNational Institute of Health,Bethesda,MDから別の方法で得られてもよい。NCBI−BLAST2は、いくつかの検索パラメータを含んでおり、それらの検索パラメータのすべては、例えば、アンマスク=はい、ストランド=全部、予想発生数=10、最小低複雑度長=15/5、マルチパスe−値=0.01、マルチパスのための定数=25、最終ギャップ付加配列比較のためのドロップオフ=25およびスコアリング行列=BLOSUM62を含む既定値に設定される。
【0035】
用語「VpreB配列」は、本明細書中で、上記で定義されたような「VpreB」の配列、またはその断片を意味するために用いられる。
【0036】
用語「λ5配列」は、本明細書中で、上記で定義されたような「λ5」の配列、またはその断片を意味するために用いられる。
【0037】
本明細書中で定義されるような用語「代替軽鎖配列」は、上記で定義されたような「VpreB配列」および/または「λ5配列」を含む任意のポリペプチド配列を意味する。本明細書中で定義されるような「代替軽鎖配列」は、具体的には、配列番号1のヒトVpreB1配列、配列番号2および3のマウスVpreB2配列、配列番号4のヒトVpreB3配列、および、スプライス変異体および翻訳後修飾によって形成された変異体を含むそれらの種々のアイソフォーム、他の哺乳動物種におけるそれらの相同体、ならびにそれらの断片および変異体を制限なく含む。用語「代替軽鎖配列」はさらに、配列番号5のヒトλ5配列、配列番号6のヒトλ5様配列、および、スプライス変異体および翻訳後修飾によって形成された変異体を含むそれらのアイソフォーム、他の哺乳動物種におけるそれらの相同体、ならびにそれらの断片および変異体を制限なく含む。用語「代替軽鎖配列」はさらに、上記で定義されたようなVpreB配列およびλ5配列双方を含む配列を含む。
【0038】
代替軽鎖(SCL)およびそのコンポーネントの構造を含む、プレB細胞受容体(pre−BCR)の三次元構造については、例えば、Lanig et al.,Mol.Immunol.40(17):1263−72(2004)を参照されたい。
【0039】
「代替軽鎖配列」は、異種アミノ酸配列、または何か他の異種コンポーネントに任意にコンジュゲートさせて、本明細書における「代替軽鎖構築物」を形成することができる。従って、用語「代替軽鎖構築物」は、最も広い意味で用いられ、異種アミノ酸配列、核酸、および代替軽鎖配列にコンジュゲートされた他の分子を含むすべての付加的な異種コンポーネントを含み、「コンジュゲーション」は、以下で定義される。「代替軽鎖構築物」はまた、本明細書中で、「SURROBODY(商標)」とも呼ばれ、これら2つの用語は区別なく用いられる。
【0040】
本発明のポリペプチドの脈絡の中で、用語「異種アミノ酸配列」は、第1のアミノ酸配列を基準として、第1のアミノ酸配列に自然に会合されておらず、少なくとも第1のアミノ酸配列が本明細書における代替軽鎖構築物中で存在する形態ではないアミノ酸配列を意味するために用いられる。従って、VpreBに比べて「異種アミノ酸配列」は、その未変性環境において未変性VpreBと会合されていない任意のアミノ酸配列であり、アミノ酸配列変異体、例えば、誘導体化されたおよび/またはトランケートされたλ5配列のような代替軽鎖を発生途上のB細胞上にVpreBと共に形成するλ5配列とは異なるλ5配列を制限なく含む。VpreBに比べて「異種アミノ酸配列」はまた、未変性配列λ5を含む、VpreBに共有結合的に会合された、例えば、融合されたλ5配列も含む。なぜならば、VpreBおよびλ5配列は、それらの未変性環境において、互いに共有結合的に会合、例えば、融合されていないからである。異種アミノ酸配列はまた、例えば、抗体軽鎖および重鎖可変領域配列、ならびに抗体軽鎖および重鎖定常領域配列のような、抗体および重鎖配列ならびにそれらの断片を含む抗体配列を制限なく含む。
【0041】
用語「コンジュゲート」、「コンジュゲートされた」および「コンジュゲーション」は、共有結合的または非共有結合的な結合のすべての形態を意味し、直接遺伝子または化学的融合、リンカーまたは架橋剤を介したカップリング、および、例えば、ファンデルワールス力を介した、またはロイシンジッパーを用いた非共有結合的会合を制限なく含む。
【0042】
用語「融合」は、本明細書中で、1つのポリペプチド鎖中における異なる起源のアミノ酸配列のコード化ヌクレオチド配列のインフレーム組み合わせによるそれらのアミノ酸の組み合わせを意味するために用いられる。用語「融合」は、内部融合、すなわち、ポリペプチド鎖の末端の1つへの融合に加え、ポリペプチド鎖内への異なる起源の配列の挿入を明示的に包含する。
【0043】
本明細書中で用いられるように、用語「標的」は、本明細書中におけるポリペプチドと相互作用する物質である。本明細書中で定義されるような標的は、具体的には、本発明のVpreB−含有構築物が相互作用する抗原を含む。好ましくは、相互作用は、直接結合によって起こる。
【0044】
本明細書中で用いられるように、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」はすべて、共有結合的な「ペプチド結合」によって結合されるアミノ酸の一次配列を意味する。一般に、ペプチドは、少数のアミノ酸、典型的には、約2〜約50のアミノ酸からなり、タンパク質よりも短い。本明細書中で定義されるような用語「ポリペプチド」は、ペプチドおよびタンパク質を包含する。
【0045】
用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は典型的には、アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リシン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);トレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)からなる群より選択される技術的に認識される定義を有するアミノ酸を意味するが、変性アミノ酸、合成アミノ酸、またはまれなアミノ酸も要望どおりに用いられ得る。従って、37 CFR 1.822(b)(4)に記載される変性アミノ酸およびまれなアミノ酸は、この定義に具体的に含まれ、参照により本明細書に明確に組み込まれる。アミノ酸は様々なサブグループに細分することができる。従って、アミノ酸は、非極性側鎖を有するもの(例えば、Ala、Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val)、負電荷を帯びた側鎖を有するもの(例えば、Asp、Glu);正電荷を帯びた側鎖を有するもの(例えば、Arg、His、Lys);または、電荷を帯びていない極性側鎖を有するもの(例えば、Asn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、およびTyr)として分類することができる。アミノ酸はまた、小アミノ酸(Gly、Ala)、求核性アミノ酸(Ser、His、Thr、Cys)、疎水性アミノ酸(Val、Leu、Ile、Met、Pro)、芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp、Asp、Glu)、アミド(Asp、Glu)、および塩基性アミノ酸(Lys、Arg)として分類することもできる。
【0046】
用語「ポリヌクレオチド(単数または複数)」は、DNA分子およびRNA分子ならびにそれらの類似体(例えば、ヌクレオチド類似体を用いてまたは核酸化学を用いて生成されたDNAまたはRNA)のような核酸を意味する。要望どおりに、ポリヌクレオチドは、合成的に、例えば、技術的に認識される核酸化学を用いてまたは、例えば、ポリメラーゼを酵素的に用いて作成することができ、あるいは、要望されれば、変性され得る。典型的な変性としては、メチル化、ビオチン化、および他の技術的に知られている変性が含まれる。加えて、核酸分子は、一本鎖または二本鎖とすることができ、要望されれば、検出可能部分に結合され得る。
【0047】
基準ポリペプチドと比べて用語「変異体」は、未変性ポリペプチドと比較して少なくとも1つのアミノ酸変異または変性(すなわち、改変)を有するポリペプチドを意味する。「アミノ酸変性」により生成された変異体は、例えば、未変性アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸を置換、欠失、挿入および/または化学的に変性することによって産生され得る。
【0048】
「アミノ酸変性」は、予め決められたアミノ酸配列のアミノ酸配列における変化を意味する。代表的な変性としては、アミノ酸置換、挿入および/または欠失が含まれる。
【0049】
指定された位置「におけるアミノ酸変性」は、指定された残基の置換または欠失、あるいは指定された残基に隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を意味する。指定された残基に「隣接する」挿入は、その1つないし2つの残基以内の挿入を意味する。挿入は、指定された残基へのN末端またはC末端であり得る。
【0050】
「アミノ酸置換」は、別の異なる「交換」アミノ酸残基による、前もって決められたアミノ酸配列中の少なくとも1つの既存のアミノ酸残基の交換を意味する。1つまたは複数の交換残基は、「天然アミノ酸残基」(すなわち、遺伝コードによりコードされている)であてえもよく、アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リシン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);トレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)からなる群より選択されてもよい。1つ以上の非天然アミノ酸残基による置換もまた、本明細書中におけるアミノ酸置換の定義により包含される。
【0051】
「非天然アミノ酸残基」は、上記で列記された天然アミノ酸残基以外の残基であって、ポリペプチド鎖中の隣接アミノ酸残基(単数または複数)と共有結合できるものを意味する。非天然アミノ酸残基の例としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリンおよびEllman et al.,Meth.Enzym.202:301 336(1991)に記載されるような他のアミノ酸残基類似体が含まれる。そのような非天然アミノ酸残基を生成するため、Noren et al.Science 224:182(1989)および上記のEllman et al.の手技を用いることができる。簡潔に言えば、これらの手技は、非天然アミノ酸残基によりサプレッサーtRNAを化学的に活性化させ、続いてRNAのin vitro転写および翻訳を行うことを含む。
【0052】
「アミノ酸挿入」は、前もって決められたアミノ酸配列中への少なくとも1つのアミノ酸の組み込みを意味する。挿入が通常、1つないし2つのアミノ酸残基の挿入からなるのに対し、本出願は、より大きい「ペプチド挿入」、例えば、約3〜約5さらには最大約10のアミノ酸残基に挿入を企図する。挿入された残基(単数または複数)は、上記で開示されたように天然または非天然であり得る。
【0053】
「アミノ酸欠失」は、前もって決められたアミノ酸配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基の除去を意味する。
【0054】
用語「突然変異誘発」は、特にことわらない限り、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を改変するための任意の技術的に認識された手法を意味する。突然変異誘発の好ましいタイプとしては、エラー頻発型PCR突然変異誘発、飽和突然変異誘発、または他の部位特異的突然変異誘発が含まれる。
【0055】
「部位特異的突然変異誘発」は、当該分野における技術的標準であり、所望の突然変異を表す、限定されたミスマッチを除いて変異を誘発させられる単鎖ファージDNAに相補的な合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施される。簡潔に言えば、合成のオリゴヌクレオチドは、単鎖ファージDNAに相補的なストランドの合成を導くプライマーとして用いられ、結果として生じる二本鎖DNAは、ファージ支持宿主細菌に形質変換される。形質転換された細菌の培養物は、上層寒天に塗布され、ファージを収容する単細胞からのプラーク形成を可能にする。理論的には、新しいプラークの50%が、単鎖として、突然変異形を有するファージを含有し、50%が本来の配列を有する。目的とするプラークは、正確な一致のハイブリダイゼーションを可能にするが、本来のストランドとのミスマッチがハイブリダイゼーションを防止するのに十分である温度で、キナーゼ処理した合成プライマーとハイブリダイズすることによって選択される。プローブとハイブリダイズするプラークが次に選択され、配列決定および培養され、DNAが回復される。
【0056】
本発明の脈絡において、用語「抗体」(Ab)は、V(D)J遺伝子組み換えから誘導された古典的な方法で組み換えられた重鎖およびやはりVJ遺伝子組み換えから誘導された古典的な方法で組み換えられた軽鎖に由来する未変性抗体、またはその断片を指すために用いられる。
【0057】
「未変性抗体」は、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖で構成された約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、共有結合ジスルフィド結合(単数または複数)によって重鎖に接続される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンイソタイプの重鎖の間で変化する。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔をおいて配置された鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の末端において、いくつかの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を有する。各軽鎖は、その一方の末端において可変ドメイン(V)を、他方の末端において定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと位置合わせされており、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと位置合わせされている。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間のインターフェースを形成すると考えられている、Chothia el al.,J.Mol.Biol.186:651(1985)、Novotny and Haber,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.82:4592(1985)。
【0058】
用語「可変」は、抗体鎖に関連して、抗体間で配列が広範囲にわたって異なっており、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性に関係する抗体鎖の部分を指すために用いられる。そのような変動性は、軽鎖および重鎖可変ドメイン双方における超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。未変性の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、3つの超可変領域によって接続されたβ−シート立体配置を主としてとる4つのFR(それぞれ、FRl、FR2、FR3およびFR4)を含み、3つの超可変領域は、β−シート構造を接続、場合によってはその一部をなす、ループを形成する。各鎖中の超可変領域は、FRによって一緒に極めて接近して保持されており、他の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequneces of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)647−669ページ参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与のような様々なエフェクター機能を発揮する。
【0059】
用語「超可変領域」は、本明細書中で用いられる場合、抗原結合をつかさどる抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、「相補性決定領域」すなわち「CDR」由来のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン中の残基30−36(Ll)、46−55(L2)および86−96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の30−35(Hl)、47−58(H2)および93−101(H3);MacCallum et al,.J Mol Biol.262(5):732−45(1996))を含む。
【0060】
用語「フレームワーク領域」は、より分岐したCDR領域間に存在する抗体可変領域の技術的に認識される部分を意味する。そのようなフレームワーク領域は、フレームワーク1〜4(FRl、FR2、FR3、およびFR4)と一般に呼ばれ、CDRが抗原結合表面を形成できるように、重鎖または軽鎖抗体可変領域中に見出される3つのCDRを三次元空間中に保持するための骨格を提供する。
【0061】
抗体の重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は、異なるクラスに割り当てることができる。抗体の5つの主要なクラスIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのうちのいくつかが、サブクラス(イソタイプ)、例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2にさらに分割され得る。
【0062】
免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0063】
任意の脊椎動物種由来の抗体の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)、およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプの一方に割り当てることができる。本明細書中における抗体軽鎖へのどのような参照も、κ軽鎖およびλ軽鎖双方を含む。
【0064】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、一般的には抗原結合またはその可変ドメインを含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、および(scFv)断片が含まれるが、それらに限定されない。
【0065】
本明細書中で用いられるように、用語「抗体結合領域」は、抗原(単数または複数)と結合することができる免疫グロブリンまたは抗体可変領域の1つ以上の部分を意味する。典型的には、抗体結合領域は、例えば、抗体軽鎖(VL)(またはその可変領域)、抗体重鎖(VH)(またはその可変領域)、重鎖Fd領域、Fab、F(ab’)、単一ドメイン、または単鎖抗体(scFv)のような組み合わされた抗体軽および重鎖(またはその可変領域)、あるいは完全長抗体、例えば、IgG(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ)、IgAl、IgA2、IgD、IgE、またはIgM抗体である。
【0066】
本明細書中で用いられるような用語「エピトープ」は、少なくとも約3〜5、好ましくは少なくとも約5〜10、または少なくとも約5〜15のアミノ酸、一般にはせいぜい約500、または約1000のアミノ酸の配列を意味し、これらのアミノ酸は、それ自体で、またはより大きい配列の一部として、そのような配列に応答して生成された抗体に結合する配列を定義する。エピトープは、それが誘導される親タンパク質の部分と同一の配列を有するポリペプチドに限定されない。実際に、ウイルスゲノムは、一定の変化の状態にあり、単離物間で比較的高い程度の変動性を示す。従って、用語「エピトープ」は、未変性配列と同一の配列、ならびに、未変性配列に対する欠失、置換および/または挿入のような変性も包含する。一般に、そのような変性は、本質的に保存的であるが、非保存的な変性もまた企図される。この用語は、具体的には「ミモトープ」、すなわち連続的な線状の未変性配列を識別せず、または必ずしも未変性タンパク質中で生じるわけではないが、未変性タンパク質上のエピトープを機能的に模倣する配列を含む。用語「エピトープ」は、具体的には、線状および立体配座的なエピトープを含む。
【0067】
用語「ベクター」は、細胞中での自律的複製が可能であり、かつ付着させられたセグメントの複製を生じさせるようにDNAセグメント、例えば、遺伝子またはポリヌクレオチドが操作的に結合させられ得るrDNA分子を意味するために用いられる。1つ以上のポリペプチドについてコードする遺伝子の発現を導くことが可能なベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と呼ばれる。用語「制御配列」は、特定の宿主生物における操作的に結合されたコード配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に適する制御配列は、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
【0068】
核酸は、それが別の核酸配列との機能的関係の中に置かれる場合に、「操作的に結合」される。例えば、プレ配列または分泌リーダーのためのDNAは、もしそれが、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現されれば、ポリペプチドのためのDNAに操作的に結合され、プロモーターまたはエンハンサーは、もしそれが配列の転写に影響すれば、コード配列に操作的に結合され、あるいは、リボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするように置かれていれば、コード配列に操作的に結合される。一般に、「操作的に結合された」は、結合されているDNA配列が、隣接しており、分泌リーダーの場合には、隣接しておりかつ読み取り段階にある。しかしながら、エンハンサーは、隣接している必要がない。結合は、手頃な制限部位でのライゲーションによって達成される。もしそのような部位が存在しなければ、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の手法に従って用いられる。
【0069】
「ファージディスプレイライブラリー」は、クローン化されたタンパク質配列のコレクションをファージコートタンパク質との融合として発現させるタンパク質発現ライブラリーである。従って、「ファージディスプレイライブラリー」の語句は、本明細書中では、ファージ(例えば、繊維状ファージ)のコレクションを意味し、ファージは、外部(一般には異種)タンパク質を発現させる。外部タンパク質は、ファージと接触させられている他の部分と自由に相互作用する(結合する)。外部タンパク質をディスプレイしている各ファージは、ファージディスプレイライブラリーの「メンバー」である。
【0070】
用語「繊維状ファージ」は、異種ポリペプチドをその表面にディスプレイすることができるウイルス粒子を意味し、fl、fd、Pf1、およびM13を制限なく含む。繊維状ファージは、テトラサイクリン(例えば、「fd−tet」)のような選択可能なマーカーを含んでもよい。様々な繊維状ファージディスプレイシステムが当業者によく知られている(例えば、Zacher et al.,Gene 9:127−140(1980),Smith et al.,Science 228:1315−1317(1985);およびParmley and Smith Gene 73:305−318(1988)を参照されたい)。
【0071】
用語「パンニング」は、標的に対する高い親和性および特異性を有する抗体のような化合物を運ぶファージの同定および単離におけるスクリーニングプロセスの複数のラウンドを意味するために用いられる。
【0072】
B. 詳細な説明
本発明の方法を実行するための手法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、Ausubel et al.,Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons(1997);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,J.Sambrook and D.W.Russell,eds..Cold Spring Harbor,New York,USA,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001;O’Brian et al.,Analytical Chemistry of Bacillus Thuringiensis,Hickle and Fitch,eds.,Am.Chem.Soc,1990;Bacillus thuringiensis:biology,ecology and safety,T.R.Glare and M.O’Callaghan,eds.,John Wiley,2000;Antibody Phage Display,Methods and Protocols,Humana Press,2001;and Antibodies,G.Subramanian,ed.,Kluwer Academic,2004を含む標準実験室教科書に記載されている。突然変異誘発は、例えば、部位特異的変異誘発を用いて実行できる(Kunkel et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA 82:488−492(1985))。PCR増幅方法は、米国特許第4,683,192号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、および同第4,965,188号、ならびに“PCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification”,H.Erlich,ed.,Stockton Press,New York(1989);およびPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.,eds..Academic Press,San Diego,Calif.(1990)を含むいくつかの教科書に記載されている。
【0073】
本発明は、抗体代替軽鎖配列を含む構築物およびライブラリーに関する。
【0074】
代替軽鎖構築物
上記で論じられたように、プレB細胞は、μ重鎖を産生するが成熟した軽鎖の代わりに、それぞれVpreB(l−3)およびλ5と呼ばれるB系統特定的遺伝子のセットを発現するリンパ球として骨髄中で同定されてきた。VpreBおよびλ5ポリペプチドは一緒に、非共有結合的に会合したIg軽鎖様構造を形成し、これは代替軽鎖と呼ばれる。代替軽鎖は、抗体鎖ではないものの、すべての抗体重鎖と自然に会合し、代替軽鎖−抗体重鎖複合体は、自己抗原と結合することが明らかにされている。
【0075】
1つの態様において、本発明は、VpreBおよび/またはλ5配列を含み、標的と結合する能力を有するポリペプチドを提供する。標的は、本発明のVpreBおよび/またはλ5配列含有ポリペプチドにとっての結合パートナーである任意のペプチドまたはポリペプチドであり得る。標的としては具体的に、抗体結合の文脈において「抗原」と一般に呼ばれるすべてのタイプの標的が含まれる。
【0076】
従って、本発明のポリペプチドとしては、異種アミノ酸配列へのVpreB配列のコンジュゲートが、もしそれらが所望の標的と結合する能力を保持するのであれば、制限なく含まれる。異種アミノ酸配列へのVpreB配列の結合は、共有結合的か、または非共有結合的であり得、直接的または、ペプチドリンカーを含むリンカーを介して生じてもよい。
【0077】
本明細書中におけるポリペプチド構築物の具体的な例としては、未変性配列の断片および変異体を含むVpreB1、VpreB2、またはVpreB3配列のようなVpreB配列が、未変性配列の断片および変異体を含むλ5配列にコンジュゲートされるポリペプチドが含まれる。このタイプの代表的な融合は、図2および図11に例示され、実施例において説明される。
【0078】
直接融合において、典型的には、VpreB配列(例えば、VpreB1、VpreB2またはVpreB3配列)のC末端がλ5配列のN末端に融合される。未変性VpreB配列の長さ全体を完全長λ5配列に融合させることが可能である一方(例えば、図3の第1図参照)、典型的には、融合は、2つのポリペプチドの各々におけるCDR3類似部位においてまたはそのまわりで起こる。VpreB1およびλ5のためのそのようなCDR3類似部位が図1に例示してあり、代表的な融合構築物が図2に例示してある。この実施形態において、融合は、CDR3類似領域の中でまたはそのどちらか一方の側で約10アミノ酸残基以内の位置で起こり得る。好ましい実施形態において、融合は、未変性VpreB1配列(配列番号1)のアミノ酸残基116〜126の間付近および未変性λ5配列(配列番号5)のアミノ酸残基82と93との間付近で起こる。
【0079】
図2に示されるように、VpreB配列を、抗体λ軽鎖のCDR3領域に融合させることも可能である。VpreBおよびλ5の一方のみがトランケートされるさらなる構築物が図3に示してある。同様な構築物は、抗体κ軽鎖配列を用いて調製することができる。
【0080】
さらなる直接融合構造が図11の右側に例示してある。「SLC融合1」と呼ばれる構造は、2つの二量体で構成された四量体であり、これらの二量体において、トランケートされたV−preB1配列(未変性VpreBlのC末端における特徴的な「尾部」を欠いている)の、同様にトランケートされたλ5配列への融合は、抗体重鎖と非共有結合的に会合されている。「SLC融合2」と呼ばれる構造は、2つの二量体で構成された四量体であり、これらの二量体において、トランケートされたVpreB1配列(未変性VpreBlのC末端における特徴的な「尾部」を欠いている)の、抗体軽鎖定常領域への融合は、抗体重鎖と非共有結合的に会合されている。「SLC融合3」と呼ばれる構造は、2つの二量体で構成された四量体であり、これらの二量体において、抗体軽鎖可変領域の、トランケートされたλ5配列(未変性λ5のN末端における特徴的な「尾部」を欠いている)への融合物は、抗体重鎖と非共有結合的に会合されている。
【0081】
上記で指摘されたように、直接融合に加え、本発明のポリペプチド構築物としては、VpreB配列(未変性配列の断片および変異体を含む)の、λ5配列(未変性配列の断片および変異体を含む)のような異種配列、および/または抗体配列との非共有結合的会合が含まれる。従って、例えば、完全長VpreB配列は、トランケートされたλ5配列と非共有結合的に会合され得る。あるいは、トランケートされたVpreB配列は、完全長λ5配列と非共有結合的に会合され得る。
【0082】
抗体重鎖と非共有結合的に会合している、非共有結合的に会合させられたVpreB1およびλ5配列を含む代替軽鎖構築物が、図11の左側に示してある。種々の図解が示すように、構造としては、例えば、完全長VpreBlおよびλ5配列、トランケートされたλ5配列と会合させられた完全長VpreBl配列1(「λ5dT」)、完全長λ5配列と会合させられたトランケートされたV−reBl配列(VpreBdT)およびトランケートされたλ5配列と会合させられたトランケートされたVpreB1配列(「短」)が含まれる。
【0083】
図11は一定の具体的な構築物を例示しているが、当業者は、様々な他の構築物が同様な方法で作成および使用され得ることを理解するであろう。例えば、構造は、図11に例示される構造とは対照的に、非対称的であることができ、各アーム中に異なる代替軽鎖配列を含み、および/または三量体もしくは五量体構造を有する。本発明の代替軽鎖構築物の様々な部分に異なる機能性を含ませ、それによって多特異的および/または多価構築物を産生することが可能である。
【0084】
もし要望されれば、本発明の構築物は、例えば、抗体のCDRl、CDR2および/またはCDR3領域由来の既知の配列または配列モチーフを組み込みまたは追加し、既知の治療抗体を代替軽鎖配列のCDRl、CDR2および/またはCDR3類似領域に含ませることにより設計され得る。これにより、抗体ではないが、既知の治療抗体の結合特性および親和性に非常に類似した結合特性および親和性を示す分子を作り出すことが可能になる。
【0085】
本明細書中のすべての代替軽鎖構築物は、抗体配列と会合させられてもよい。例えば、図5に示されるように、VpreB−λ5融合物は、ペプチドリンカーにより抗体重鎖可変領域配列に結合することができる。別の実施形態において、VpreB−λ5融合物は、抗体重鎖、または可変領域配列を含むその断片と非共有結合的に会合され、二量体複合体を形成する。さらに別の実施形態において、VpreBおよびλ5配列は、互いにおよび抗体重鎖、または可変領域配列を含むその断片と非共有結合的に会合されており、それによって三量体複合体を形成する。抗体重鎖を含む代表的な構築物が図11に例示してある。
【0086】
本発明の構築物がある特定の実施形態に関連して例示されるのに対して、当業者は、代替軽鎖および抗体配列の様々な並べ換えにより得られる多くのさらなる実施形態が可能であり、本発明の範囲内にあることを理解するであろう。本発明は、代替軽鎖配列を含みかつ所望の標的に結合する能力を有するすべての構築物を含む。ある特定の実施形態において、構築物は、抗体重鎖可変領域配列と会合する能力も有する。
【0087】
本発明の構築物は、代替軽鎖配列のライブラリーを構築するために用いてもよく、このライブラリーは、抗体ライブラリーと同様、所望の結合特性および親和性を有する構築物の選択を含む様々な目的のために使用することができる。
【0088】
VpreBおよびλ5代替軽鎖配列が互いに非共有結合的に会合させられている場合、一方または双方のコンポーネントの自由端(すなわち、VpreB配列のC−末端および/またはλ5配列のN−末端)は、付加的な多様性をそのような配列のライブラリーに組み入れるために利用可能である。例えば、ランダムペプチドライブラリーを、これらの自由端の1つに付加または置換し、特定の標的に対する特定の結合についてパンニングすることができる。所望の結合特異性を有することが確認されている代替軽鎖を、同じ標的に対する抗体由来の重鎖または重鎖断片と組み合わせることにより、2つの別個の場所で同族体に結合する能力を有する分子を作り出すことができる。このタンデム結合、または「キレーティング」効果は、二量体免疫グロブリンにおいて見られるアビディティー効果と同様、単一標的への結合を強力に増強させる。異なる標的に結合するコンポーネントを用いることも可能である。従って、例えば、所望の結合特異性を持つ代替軽鎖コンポーネントを、異なる標的に結合する抗体重鎖または重断片と組み合わせることができる。例えば、代替軽鎖コンポーネントが腫瘍抗原を結合してもよい一方で、抗体重鎖または重鎖断片は、エフェクター細胞に結合してもよい。このように、ターゲティングおよび抗腫瘍活性を持つ単一の実体を作り出すことができる。特定の実施形態において、VpreBおよびλ5配列を接続する付属物またはポリペプチドは、FabまたはscFv断片のような、抗体または抗体断片であり得る。抗体配列の組み込みは、「キレーティング」効果をもたらすだけでなく、二重特異性抗体に見られるような第2の独立したアームを必要とせずに、単一分子の二重特異性も生成することができる。これら2つの特異性は、同じ標的の異なる部分に対するもの、異種の標的に対するもの、または標的抗体複合体に対するものであってもよい。同様に、多特異的な構築物を、ペプチド、タンパク質、酵素等を含む、抗体または抗体断片を除く、任意のタイプの分子で作ることができる。例えば、所望の特異性を持つ代替軽鎖コンポーネントは、任意の治療ペプチドまたはタンパク質と組み合わせることができる。
【0089】
代替軽鎖構築物の調製
本発明の代替軽鎖構築物は、周知の組み換えDNA技術を含む当該技術分野において知られている方法により調製され得る。
【0090】
代替軽鎖、例えば、VpreBおよびλ5ポリペプチドをコードする核酸は、自然供給源、例えば発生途上のB細胞から単離および/または合成もしくは半合成的方法により得ることができる。ひとたびこのDNAが同定および単離または別の方法で産生されると、さらなるクローニングまたは発現のためにこのDNAを複製可能なベクター中にライゲートすることができる。
【0091】
本明細書においてポリペプチドのコード配列を発現するために使用され得るクローニングおよび発現ベクターは、当該技術分野においてよく知られており、商業的に利用可能である。ベクターコンポーネントとしては一般に、以下のもののうちの1つ以上が含まれるが、それらに限定されない:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列。本明細書においてベクター中で代替軽鎖構築物をコードするDNAをクローニングまたは発現させるための適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、またはより高等な真核生物(哺乳動物)細胞であり、哺乳動物細胞が好ましい。
【0092】
適切な哺乳動物宿主細胞系統の例としては、SV40により変換されたサル腎臓CVl系統(COS−7,ATCC CRL 1651);懸濁培養中での増殖のためにサブクローニングされたヒト胎児腎臓系統293(293細胞)、Graham et al,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトーリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562,ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーマ系統(Hep G2)が制限なく含まれる。
【0093】
哺乳動物細胞における使用のため、発現ベクターに関する制御機能はしばしばウイルス性材料から提供される。従って、一般的に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイスル2、レトロウイルス、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)のゲノムから誘導することができる。β−アクチンプロモーターのような他のプロモーターは、異種供給源に由来する。適切なプロモーターの例としては、SV40ウイルスの初期および後期プロモーター(Fiers et al.,Nature,273:113(1978))、ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーター(Greenaway et al.,Gene,18:355−360(1982))、ならびに所望の遺伝子配列と普通に会合させられたプロモーターおよび/または制御配列が、もしそのような制御配列が宿主細胞系と共存できるのであれば、制限なく含まれる。
【0094】
より高等な真核生物による所望の異種ポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増大させられる。エンハンサーは、通常約10〜300bpの、DNAのシス作用因子であり、プロモーターに作用してその転写開始活性を増強させる。エンハンサーは、配向および位置に比較的依存しないが、好ましくは、発現ベクター中に存在するプロモーター配列の上流に位置する。エンハンサーは、例えば、真核細胞ウイルス、例えば、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp 100−270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサー由来のような、プロモーターと同じ供給源由来であるかもしれない。
【0095】
哺乳動物宿主細胞において用いられる発現ベクターは、例えば、SV40(初期および後期)またはHBVのようなウイルスから誘導されたポリアデニル化部位のようなポリアデニル化部位も含む。
【0096】
複製の起点は、SV40または他のウイルス(例えば、ポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)供給源から誘導されるような外因的起点を含むベクターの構築によって提供されるか、あるいは宿主細胞によって提供されてもよい。
【0097】
発現ベクターは通常、ベクターによって形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする選択可能なマーカーを含んでいる。哺乳動物細胞のための適切な選択可能なマーカーの例としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ(TK)、およびネオマイシンが含まれる。
【0098】
適切な哺乳動物発現ベクターは、当該技術分野においてよく知られており、商業的に利用可能である。従って、例えば、本発明の代替軽鎖構築物は、DNAインサートの構成性発現を促進するためにヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサー/プロモーター領域を持つpCI発現ベクター(Promega)を用いて哺乳動物宿主細胞において産生することができる。ベクターは、選択可能なマーカーとしてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含み得る。
【0099】
本発明の代替軽鎖構築物はまた、細菌宿主細胞において産生することもできる。細菌系において使用するための制御要素としては、オペレーター配列を任意に含むプロモーター、およびリボソーム結合部位が含まれる。適切なプロモーターとしては、ガラクトース(gal)、ラクトース(lac)、マルトース、トリプトファン(trp)、β−ラクタマーゼプロモーター、バクテリオファージλおよびT7プロモーターが、制限なく含まれる。加えて、tacプロモーターのような合成プロモーターを用いることができる。細菌系において使用するためのプロモーターは一般に、Fab分子をコードするDNAに操作的に結合されたシャイン−ダルガノ(SD)配列も含む。プラスミドpBR322からの複製の起点は、ほとんどのグラム陰性菌に適する。
【0100】
抗体代替軽鎖配列を含む多鎖構築物内の個々の鎖のコード配列は、別個の調節配列の制御下で同じ発現ベクター中に、または真核および原核宿主を含む所望の宿主細胞に同時形質移入するために用いられる別個の発現ベクター中に存在し得る。従って、複数の遺伝子を、Novagenから商業的に利用可能なDuet(商標)ベクターを用いて同時発現させることができる。
【0101】
形質転換された宿主細胞は、各種の培地中で培養されてもよい。哺乳動物宿主細胞を培養するための商業的に利用可能な培地としては、Ham’s F10(Sigma)、Minimal Essential Medium((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびDulbecco’s Modified Eagles’s Medium((DMEM)、Sigma)が含まれる。加えて、Ham et al.,Meth.Enz.58:44(1979)およびBarnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)に記載される培地のいずれかを、宿主細胞のための培地として用いてもよい。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択された宿主細胞と共にこれまで用いられているものであり、製造業者の取扱説明に含まれているか、さもなければ当業者には明白であろう。
【0102】
哺乳動物、細菌(例えば、E.coli)または他の宿主細胞を培養するためのさらなる適切な培地も、例えば、上記のSambrook et al.、または上記のAusubel et al.のような標準教科書に記載されている。
【0103】
精製は、当該技術分野において知られている方法により実行できる。好ましい実施形態において、代替抗体分子は、Ni−NTA精製システム(Invitrogen)を用いて6xHis−タグ付加形で精製される。
【0104】
ライブラリーは代替軽鎖配列を含む
本発明はさらに、代替軽鎖配列およびそのような配列を含む構築物の様々なライブラリーに関する。従って、そのようなライブラリーは、上記で具体的に説明され、図に例示されおよび/または実施例中で説明されるものを制限なく含む本発明のVpreB−および/またはλ5−含有構築物のような代替軽鎖配列のディスプレイを含んでもよく、それらで本質的に構成されてもよく、またはそれらで構成されてもよい。
【0105】
本発明のライブラリーは、好ましくはディスプレイの形態である。抗体および他のポリペプチドを含む異種タンパク質をディスプレイするためのシステムは、当該技術分野においてよく知られている。抗体断片は、抗体遺伝子をコードする繊維状ファージの表面でディスプレイされてきた(Hoogenboom and Winter J.Mol.Biol.,222:381 388(1992);McCafferty et al.,Nature 348(6301):552 554(1990);Griffiths et al.EMBO J.,13(14):3245−3260(1994))。抗体ライブラリーを選択およびスクリーニングするための技術の総説については、例えば、Hoogenboom,Nature Biotechnol.23(9):1105−1116(2005)を参照されたい。加えて、Escherichia coli(Agterberg et al.,Gene 88:37−45(1990);Charbit et al.,Gene 70:181−189(1988);Francisco et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:2713−2717(1992))、およびSaccharomyces cerevisiaeのような酵母(Boder and Wittrup,Nat.Biotechnol.15:553−557(1997);Kieke et al.,Protein Eng.10:1303−1310(1997))の表面での異種タンパク質およびそれらの断片のディスプレイのためのシステムが当該技術分野において知られている。他の知られているディスプレイ技術としては、リボソームまたはmRNAディスプレイ(Mattheakis et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9022−9026(1994);Hanes and Pluckthun,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4937−4942(1997))、DNAディスプレイ(Yonezawa et al.,Nucl.Acid Res.31(19):el 18(2003))、細菌ディスプレイのような微生物細胞ディスプレイ(Georgiou et al.,Nature Biotech.15:29−34(1997))、哺乳動物細胞、胞子上でのディスプレイ(Isticato et al.,J.Bacteriol.183:6294−6301 (2001);Cheng et al.,Appl.Environ.Microbiol.71:3337−3341(2005)および2006年11月13日提出の同時係属仮出願番号第60/865,574号)、レトロウイルスディスプレイのようなウイルスディスプレイ(Urban et al.,Nucleic Acids Res.33:e35(2005)、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ(Odegrip et al.,Proc.Acad.Natl.Sci.USA 101:2806−2810(2004);Reiersen et al.,Nucleic Acids Res.33:e10(2005))、ならびにマイクロビーズディスプレイ(Sepp et al.,FEBS Lett.532:455−458(2002))が含まれる。
【0106】
本発明の目的のため、代替軽鎖含有ライブラリーは、ファージディスプレイおよび胞子ディスプレイを含む任意のディスプレイ技術を用いて有利にディスプレイできる。
【0107】
ファージディスプレイにおいて、代替軽鎖ポリペプチドのような異種タンパク質は、ファージ粒子のコートタンパク質に結合される一方、それが発現されたDNA配列は、ファージコート内にパッケージされる。ファージディスプレイ方法の詳細は、例えば、免疫化されていないドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからのin vitroでのヒト抗体および抗体断片の産生を記載しているMcCafferty et al.,Nature 348,552−553(1990))に見出すことができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、M13またはfdのような、繊維状バクテリオファージのメジャーかマイナーコートタンパク質遺伝子のどちらかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上で機能性抗体断片としてディスプレイされる。繊維状粒子がファージゲノムの単鎖DNAコピーを含んでいるので、抗体の機能的特性に基づく選択も、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択にという結果になる。従って、ファージはB−細胞の特性のいくつかを模倣する。
【0108】
ファージディスプレイは、各種の型式で実行でき、それらの総説については、例えば、Johnson,Kevin S.,and Chiswell,David J.,Current Opinion in Strucural Biology ,564−571(1993)を参照されたい。重鎖V−遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイを介して見出すことができる。Clarkson et a.,Nature,352,624−628(1991)は、免疫化したマウスの脾臓由来のV遺伝子の小さいランダム組合せライブラリーからの抗オキサゾロン重鎖および軽鎖の様々なアレイを単離した。抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに特異的な、免疫化されていないヒトドナーからの重および軽鎖V遺伝子のレパートリーは、Marks et al.,J.Mol.Biol.222,581−597(1991)、またはGriffith et al.,EMBO J.12,725−734(1993)により記載された技術に本質的に従って、構築および回復することができる。これら、および当該技術分野において知られている他の技術は、代替軽鎖配列を含むポリペプチドおよび他の構築物を含む任意のポリペプチドのディスプレイに適合させることができる。従って、例えば、代替軽鎖は、リンパ球のような天然の多様な供給源から、あるいは完全に分子生物学の技術により作り出された合成的に生成されたコレクションからのどちらか一方からの重鎖のコレクションで補うことができる。これらのコレクションは、当該技術分野において知られている方法により、クローニング、発現および選択され得る。選択された結果として生じるSURROBODY(商標)は、直接使用したり、多量体分子として発現させたり、あるいは、例えば、ランダムまたは非ランダム部位特異的または限局的変異誘発を用いて、重鎖最適化、または代替軽鎖最適化によりさらに最適化したりできる。
【0109】
胞子ディスプレイシステムは、ディスプレイされる配列を、Bacillus subtilis胞子コートタンパク質のようなコートタンパク質に付加させていることに基づく。胞子原形質体(核)は、細胞壁、皮質、および胞子コートにより包囲されている。種によっては、エキソスポリウムも存在することがある。核壁は、栄養細胞壁と同じタイプのペプチドグリカンで構成されている。Bacillus subtilis胞子コート(CorB)およびBacillus thuringiensis(Bt)胞子ディスプレイのコンポーネントを用いた表面ディスプレイシステムを含む胞子ディスプレイは、lsticato et al.,J.Bacteriol.183:6294−6301(2001);Cheng et al.,Appl.Environ.Microbiol.71:3337−3341(2005)に記載されており、その開示全体は、参照により本明細書中に明確に組み込まれる。様々な胞子ディスプレイ技術はまた、米国特許出願公開第2002/0150594号、同2003/0165538号、同2004/0180348号、同2004/0171065号、および同2004/0254364号において開示されており、開示全体は、参照により本明細書中に明確に組み込まれる。
【0110】
胞子ディスプレイシステムの利点は、理想的な非反応性のバックグラウンドを提供することが期待される非真核的性質の均質な粒子表面および粒径である。加えて、胞子の粒径は、相互作用に基づいて、選択可能なクローン単離を可能にするフローサイトメトリーによる選択を可能にするのに十分である。
【0111】
胞子の安定性に影響を与えることにより、様々な芽胞形成後の化学的、酵素的および/または環境的な処理および変性を実行することが可能である。従って、そのような構造がディスプレイされる場合、トリフルオロエタノール(TFE)を用いる化学的処理により構造的螺旋構造を安化することが可能である。加えて、活性酸素種(例えば、過酸化物)または活性窒素種(例えば、亜硝酸)を用いた処理のような酸化ストレス処理が可能である。胞子ディスプレイされたポリペプチドの定義された粗製の個体群を、タンパク質分解暴露、他の酵素プロセス、リン酸化などの酵素処理に暴露することも可能である。他の考え得る処理としては、ペルオキシナイトライト処理によるニトロシル化、組み換え、精製、または血清プロテアーゼ処理によるタンパク質分解、照射、熱ショックタンパク質(細菌性および哺乳動物性双方)のような既知のシャペロンを用いたコインキュベーション、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、プロピルイソメラーゼ等の折りたたみタンパク質を用いた処理、凍結乾燥、およびチメロソルを用いた処理のような防腐剤様処理が、制限なく含まれる。これらの処理は、当該技術分野においてよく知られた方法により実行され得る。
【0112】
同様な技術は、例えば、以下に開示される胞子ディスプレイシステムを含む、付加が胞子コートタンパク質に対してであるディスプレイを含むすべての胞子ディスプレイシステムにおいて用いることができる。
【0113】
代替軽鎖配列、構築物およびそれらを含むライブラリーの使用
本発明のライブラリーは、所望の特性を有する代替軽鎖配列を含む融合物のような代替軽鎖配列および代替軽鎖構築物を識別するために用いることができる。例えば、本明細書中におけるライブラリーのin vitroまたはin vivoスクリーニングは、高い結合特異性および親和性で所望の標的に結合する代替軽鎖配列を含むポリペプチドを産生できる。従って、本明細書中のライブラリーは、腫瘍マーカーまたは治療的介入の他の分子標的に結合する代替軽鎖配列を含むポリペプチドのような治療および診断目的のための分子を識別するために使用できる。加えて、上述の技術によって、同じ標的に結合するポリペプチドのコレクションを含むライブラリー、異なる標的に結合するポリペプチドのライブラリー、複数の特性を備えるポリペプチドのライブラリー等を含む、代替軽鎖の非常に多岐にわたるライブラリーを設計することができる。
【0114】
本発明の抗体代替軽鎖構築物は、任意の所望の標的に結合するそれらの能力の結果として、腫瘍抗原または病態もしくは状態に関連した任意のポリペプチドのような所望の標的分子の存在を検出するために、分析および診断アッセイにおいて用いることができる。加えて、本発明の代替軽鎖構築物は、例えば、癌治療において、癌の発生および/または広がりに関連することが突き止められている腫瘍抗原を標的とするために、治療薬剤として用いることができる。
【実施例】
【0115】
本発明のさらなる詳細が、以下の非限定的な実施例において提供される。
【0116】
(実施例1)
結合ドメインタンパク質としてのVpreBおよびそれを含む融合物
VpreB結合ドメインを作るため、図5に示される単一タンパク質を、組み換え的作成する。SLC結合ドメインタンパク質構築物は、VpreB1からのアミノ酸20〜121およびλ5からのアミノ酸87〜105で構成される。もし所望されれば、新規かつ特定の結合能力を作り出すため、分子を、構造的または配列エビデンスに従って再設計される。付加的に、または代わりに、変異体のコレクションが、例えば、エラー頻発型PCRにより無作為に、あるいはアミノ酸のコレクションを用いた単一または多部位特定突然変異誘発により直接的に、のいずれかで作り出される。結果として生じるクローンまたはコレクションは次に、ファージまたはファージミドディスプレイで使用するためにpIIIを用いてインフレームでクローニングする。このファージミド構築物をTGl細胞に転換する。次に、50μg/mlアンピシリンおよび2%グルコースを補ったルリアブロス(LB)中で、単一コロニーを、それがOD600〜0.3に達するまで繁殖させ、30分間、37℃で振とうせずにMK307ヘルパーファージで感染させる。次に細胞をペレットにし、次いで、50μg/mlアンピシリンおよび75μg/mlカナマイシンを含有するLB中に再懸濁させ、30℃で、強くエアレーションして一晩成長させる。翌日、ファージミド発現SLC−HC融合タンパク質を含有する上清をファージELISAにおいて使用し、標的とした結合を決定する。簡潔に言えば、ELlSAは、ヒトTNF−αによるELISAプレートの被覆および遮断を伴い、4℃で2時間のSLC−HCファージのインキュベーション、PBS−Tween−20(0.05%)を用いた洗浄および抗m13−HRP抗体による直接検出が続く。あるいは、結合は、結合ファージを直接増幅または溶出し、XL−1Blue細胞を用いてファージ力価を決定することにより評価される。この実施例は、SLC結合ドメイン融合を単一クローンとして記載しているが、このSLCは、共通の標的を認識する他の異種配列と組み換え的に組み換え、ライブラリーとしてスクリーニングされ得る。さらに、このSLC結合タンパク質は、重鎖の前もって選ばれたコレクションと組み合わせ、目的とする同じ標的または目的とする第2の標的に関して直接スクリーニングされて二重特異性分子を作り出すことができる。あるいは、この強化された結合または二重特異性結合は、重鎖の選択されていないコレクションと共にスクリーニングすることによって見出すことができる。加えて、この実施例は抗体重鎖を指している一方で、完全な重鎖が要求されないことが理解されるべきである。重鎖可変領域配列を含む単鎖融合物は、重鎖定常領域、または完全な重鎖定常領域でない場合、類似したやり方で作ることができ、この実施例の範囲内である。
【0117】
(実施例2)
可変重鎖(VH)パートナーとしてのVpreB融合物
図5の第2の図に示される機能性VpreB−λ5融合タンパク質(「VpreBタンパク質融合物−二量体複合体」と呼ばれる)は、組み換え的に作り出される。VpreB−λ5融合タンパク質は、m13遺伝子IIIシグナル配列、VpreB1からのアミノ酸20〜115、およびλ5からのアミノ酸83〜209で構成される。この構築物は、ファージまたはファージミドディスプレイで使用するためにpIIIを用いて可変重鎖−CH1融合物と共にインフレームで同時発現させる。VHコード配列として、抗−TNF−α抗体、D2E7、のVHコード配列が用いられ、CH1は、ヒトIgGlのCHl領域である。このファージミド構築物を、TG1細胞に形質転換させる。次に、50μg/mlアンピシリンおよび2%グルコースを補ったルリアブロス(LB)中で、単一コロニーを、それがOD600〜0.3に達するまで繁殖させ、30分間、37℃で振とうせずにMK307ヘルパーファージで感染させる。次に細胞をペレットにし、次いで、50μg/mlアンピシリンおよび75μg/mlカナマイシンを含有するLB中に再懸濁させ、30度で、強くエアレーションして一晩成長させる。翌日、ファージミド発現SLC−HC融合タンパク質を含有する上清をファージELISAにおいて使用し、標的とした結合を決定する。簡潔に言えば、ELlSAは、ヒトTNF−αによるELISAプレートの被覆および遮断を伴い、4度で2時間のSLC−HCファージのインキュベーション、PBS−Tween−20(0.05%)を用いた洗浄および抗m13−HRP抗体による直接検出が続く。あるいは、結合は、結合ファージを直接増幅または溶出し、XL−1Blue細胞を用いてファージ力価を決定することにより評価される。この実施例は、重鎖可変−CH1融合物とパートナーにされたSLC融合物を単一クローンとして記載しているが、このSLCは、共通の標的を認識する重鎖可変領域のフォーカスされたコレクションと組み合わせ、ライブラリーとしてスクリーニングすることもできる。さらに、このSLC融合物は、重鎖の選択されていないコレクションと組み合わせ、目的とする標的に関して直接スクリーニングすることができる。SLC融合の妥当な代案として、VH会合を、λ5タンパク質断片の代わりに従来の抗体軽鎖からの定常ラムダ領域を融合させることにより強化することができる。
【0118】
(実施例3)
会合させられた可変重鎖(VH)パートナーとしてのVpreBおよびλ5
図5の第3の図に示されるVpreB−λ5同時発現タンパク質は、(「VpreBおよびλ5−三量体複合体」と呼ばれる)は、m13遺伝子IIIシグナル配列ならびに予測され成熟した処理されたVpreBl(アミノ酸20〜146)およびλ5(アミノ酸31〜209)の対応するアミノ酸で構成される。これらは、ファージまたはファージミドディスプレイにおいて使用するためにpIIIを用いて可変重鎖−CH1融合物と共にインフレームで同時発現させる。VHコード配列として、抗−TNF−α抗体、D2E7、のVHコード配列が用いられ、CH1は、ヒトIgGlのCHl領域である。このファージミド構築物を、TG1細胞に形質転換させる。次に、50μg/mlアンピシリンおよび2%グルコースを補ったルリアブロス(LB)中で、単一コロニーを、それがOD600〜0.3に達するまで繁殖させ、30分間、37℃で振とうせずにMK307ヘルパーファージで感染させる。次に細胞をペレットにし、次いで、50μg/mlアンピシリンおよび75μg/mlカナマイシンを含有するLB中に再懸濁させ、30度で、強くエアレーションして一晩成長させる。翌日、ファージミド発現SLC−HC三量体タンパク質複合体を含有する上清をファージELISAにおいて使用し、標的とした結合を決定する。簡潔に言えば、ELlSAは、ヒトTNF−αによるELISAプレートの被覆および遮断を伴い、4度で2時間のSLC−HCファージのインキュベーション、PBS−Tween−20(0.05%)を用いた洗浄および抗m13−HRP抗体による直接検出が続く。あるいは、結合は、結合ファージを直接増幅または溶出し、XL−1Blue細胞を用いてファージ力価を決定することにより評価される。この実施例は、重鎖可変−CH1融合物とパートナーにされたSLC融合物を単一クローンとして記載しているが、このSLCは、共通の標的を認識する重鎖可変領域のフォーカスされたコレクションと組み合わせ、ライブラリーとしてスクリーニングすることができる。さらに、このSLC融合物は、重鎖の選択されていないコレクションと組み合わせ、目的とする標的に関して直接スクリーニングすることができる。
【0119】
(実施例4)
VpreBl CDR3類似領域への多様性の設計
代替軽鎖(SLC)のCDR類似領域は、抗体軽鎖のCDRの機能と同様な機能を有するので、VpreBとλ5との間の融合点を決定することが重要である。1つのアプローチによれば、特定の目的に最も適切な融合点は、すべてのVpreBアミノ酸を含有するCDR3類似部位から始め、アミノ酸位置を、クローニング可能なオリゴヌクレオチド中でコードされたλ5の位置により増分的に置換することにより決定される。この増分的置換は、CDR類似部位が、λ5ソースの配列によって完全に構成されるまで続く。このプロセスの間のある時点で、相補的重鎖を付加し、その抗原結合および認識を可能/容易にすることが望ましいかもしれない。この相補性をさらに強化または可能にするため、一致CDR長さ分析に基づく多様性だけでなく、ランダム多様性をCDR類似部位のうちのいずにおいても用いることができる。代わりに、またはそれに加えて、多様性を付加するために抗体Vλ5配列を用いることができる。なぜならば、それらのCDR長さが、VpreB CDR類似部位長さと良好に一致するからである。
【0120】
(実施例5)
SLCコンポーネントへの機能性の付加
SLCは2つの独立なポリペプチドで構成されているので、これにより第2の機能性を付加または埋め込むための自然な機会が作り出される。本実施例では、第1の例において、VpreBをλ5と結合する融合タンパク質を作り出するために、抗VEGFscFvが挿入される(図9A)。この結果として生じる設計されたSLC−制約scFvは、抗TNF−α抗体の重鎖と対にされる。結果として生じる構築物は、ファージまたはファージミドディスプレイで使用するためにpIIIを用いてインフレームクローニングされた重鎖と共に同時発現させる。このファージミド構築物を、TGl細胞に形質転換し、50μg/mlアンピシリンおよび2%グルコースを補ったルリアブロス(LB)中で、単一コロニーを、それがOD600〜0.3に達するまで繁殖させ、30分間、37℃で振とうせずにMK307ヘルパーファージで感染させる。次に細胞をペレットにし、次いで、50μg/mlアンピシリンおよび75μg/mlカナマイシンを含有するLB中に再懸濁させ、30度で、強くエアレーションして一晩成長させる。翌日、ファージミド発現SLC−HC融合タンパク質を含有する上清をファージELISAにおいて使用し、標的とした結合を決定する。簡潔に言えば、ELlSAは、ヒトTNF−αまたはヒトVEGFによるELISAプレートの被覆および遮断を伴い、4℃で2時間のSLC−HCファージのインキュベーション、PBS−Tween−20(0.05%)を用いた洗浄および抗m13−HRP抗体による直接検出が続く。
【0121】
次に、VpreBのC末端への抗VEGFscFvの融合を作り出し、結果として生じる3つの部分からなるタンパク質複合体構築物を、上述のファージミドELISAと同様に評価した。
【0122】
あるいは、抗オボアルブミンscFvを、λ5のアミノ末端に融合し、3つの部分からなるタンパク質複合体を、TNF−αおよびオボアルブミンの双方への結合について試験する。
【0123】
最後に、これらの2つの融合構築物(VpreB−抗VEGFscFvおよびλ5−抗オボアルブミン)を、抗TNF−α抗体の重鎖と組み合わせて三重特異性分子を作り出し、次に上記のようにファージミドELISAにおいて確認する。
【0124】
この説明において、異種標的に対するscFvが組み込まれるが、機能性バインダーを同じ標的と組み合わせてタンデム「スーパーバインダー」を作り出すことができる。これらのタンデムバインダーは、強化された結合を提供するか、あるいは場合によっては架橋機能さえも提供できる。Fab架橋は、すべての抗体が、望ましくなくかつ長期の架橋をもたらす場合には、有用であろう。例えば、インスリン代替物として作用するすべての免疫グロブリンインスリン受容体抗体が、血清クリアランスに3〜4週間要することは望ましくないことがある。インシュリンは通常、数分間の半減期を有するので、Fabは、この半減期のスケールとより一致するであろうし、タンデム機能性はこの用途に適切に対処できるかも知れない。
【0125】
上記の記述は、2次機能性群としての抗体のみを説明しているが、関連するペプチド(例えば、エリスロポエチン(EPO)ミメティック)、受容体(例えば、TNF−RI)、結合タンパク質(例えば、IL−1ra)、およびインターフェロンのような治療タンパク質を、付加および制約された構築物に同様に組み込み、同様な機能の分子を作り出すことができる。
【0126】
また、2次Fab様分子を作り出すための重および軽鎖のように、ヘテロ二量体タンパク質を組み込むために2つの部位を利用できるかも知れない。
【0127】
最後に、本発明者らは、個別の例のみを説明してきたが、SLC候補抗体を用いてそれらの指示されたおよび所望された標的に対してスクリーニングするために、組み合わせ的に多様なファージ抗体ライブラリーおよびペプチド多様性ライブラリーの組み込みも本明細書に含まれる。
【0128】
(実施例6)
哺乳動物細胞における代替軽鎖構築物(SURROBODY(商標))の発現
図11において「三量体」(「SURROBODY(商標)変異体」とも呼ばれる)と呼ばれる構造物の代替軽鎖コンポーネントのコード配列を、完全長IgGl抗体重鎖を用いてCHO−Kl細胞(ATCC CCL−61)に同時形質移入し、生化学分析のための代替軽鎖構築物を一時的に産生した。具体的には、完全長ヒトVpreBlおよびλ5を、哺乳動物発現ベクターpCI(Promega,Madison WI)中にクローニングした。これらの構築物は、それらの未変性の予測される分泌物シグナルを含んでいた。VpreB1の場合、予測されるシグナルペプチドは、配列番号1のアミノ酸1−20であり、λ5については、予測されるシグナル配列は、配列番号5のアミノ酸1−30である。これらのタンパク質の双方について、それらの予測される非構造的尾部の部分は欠失されていた。VpreBlについては、これは、配列番号1のC末端アミノ酸122−146を含んでおり、ラムダ5については、これは、配列番号5のN末端アミノ酸30−86を含んでいた。
【0129】
図11において「ラムダ5 dT」と呼ばれる「三量体」中のトランケートされたλ5配列の配列が、配列番号7として示してある。図11において「VpreB dT」と呼ばれる「三量体」中のトランケートされたVpreBl配列の配列が、配列番号8として示してある。
【0130】
4つの組合せ代替軽鎖可能性の各々を、C末端ヘキサヒスチジン(His6)タグ(配列番号9)を含有する既知のヒト抗インフルエンザ重鎖で同時形質移入し、製造業者(Invitrogen,Carlsbad CA)の提案に従って低血清培地中で発現させた。3日後、上清を採集し、濾過し、ニッケルキレートクロマトグラフィー(Qiagen,Germany)により精製した。次に、精製タンパク質を、抗ペプチドウサギ血清(VpreBおよびλ5)か、あるいは抗ヒスチジン抗体(Serotec,Raleigh NC)のいずれかによるウェスタンブロット分析により試験し。タンパク質の検出は、抗ウサギHRP(VpreBおよびλ5)または抗マウスHRP(重鎖)およびTMB基質による比色発色の後に視覚化した。(図12、レーン1〜4)
加えて、代替軽鎖融合物(図11参照)を、VpreBl遺伝子とλ5遺伝子か軽鎖定常ラムダドメインとで構成されたキメラタンパク質を設計することにより作り出した。具体的には、VpreB(配列番号1)からλ5タンパク質アミノ酸121−209(配列番号5)(配列番号10)までのアミノ酸1−87を含む組み換え的に融合されたタンパク質を産生した。加えて、VpreB(配列番号1)から抗体λ軽鎖定常(配列番号11)のC末端121アミノ酸までのアミノ酸1−87を含む第2の融合物を作成した。各代替軽鎖融合物を、基本的には上記で記載されたように、一時的に発現させ、収集し、精製し、ウェスタンブロット分析により試験した。特に、両方の融合物が、抗VpreB1抗ペプチド血清に対するエピトープを含んでいたので、これはウェスタンブロット分析に用いた。(図12、レーン5−6)
(実施例7)
E.coliにおける代替軽鎖構築物(SURROBODY(商標))の発現
組み換えタンパク質は、細菌中でしばしば有用に発現させられるので、原核生物系において可溶性代替軽鎖構築物を産生する能力を試験した。これに対処するため、図11において「二量体」と呼ばれる代替軽鎖融合を、E.coli発現/分泌系中でクローニングした。plac抑制発現系が用いられ、成熟哺乳動物タンパク質、原核生物リーダー配列への組み換え融合によりペリプラズムに発現および分泌された。具体的には、代替軽鎖融合物は、m13 gIIIリーダーコード配列(配列番号12および13)のC末端へ成熟タンパク質のコード配列を融合させることにより、ペリプラズムへ誘導した。重鎖は、IgGl重鎖可変領域および抗インフルエンザ抗体の重鎖定常領域ドメインを、pelBリーダー配列(配列番号14)のC末端に融合させることにより発現させた。両方のタンパク質を発現させるプラスミドを、HB2151 E.coli細胞(Stratagene)に形質変換し、100mcg/mlアンピシリンおよび200ミクロモルIPTGを含有するLB培地中で、30度で一晩発現させた。細胞を収集し、当該技術分野において知られている方法に従い、ペリプラズムライゼートを調製した。このペリプラズムライゼートを、ウェスタンブロット分析により直接試験、または上述のように精製した(図13、パネルA)。
【0131】
代替軽鎖は従来、膜結合preB細胞受容体のコンポーネントなので、これは通常、IgMクラス重鎖と対になっているのが見出される。本発明者らの実用的な目的のため、本発明者らは、IgM対IgGベースの定常重ドメイン1領域と代替軽鎖融合物とを対にする能力を比較したいと考えた。これを調べるため、本発明者らは、μ定常重ドメイン1(配列番号15)を、上述の抗インフルエンザ抗体のガンマ定常ドメイン領域で置換した。本発明者らは、ペリプラズムライゼートのウェスタンブロット分析から、IgG(γ)−ベースの定常重ドメインが、μ−ベースの定常重ドメインベースの系よりも、より良好に発現され、かつより高水準に精製されることを見出した(図13、パネルB)。
【0132】
(実施例8)
代替軽鎖構築物(SURROBODY(商標))m13ファージミドの発現
組み換えタンパク質は、細菌においてだけでなく、個別におよび細菌ウイルス粒子の表面上の多様なライブラリーコレクションにおいて有用に発現されるので、本発明者らは、m13ファージミドの表面上に可溶性代替軽鎖構築物を産生したいと考えた。これに対処するため、代替軽鎖融合物(図11の「二量体」)を、E.coli発現/分泌系にクローニングした。すべての系について、上述のpLac抑制発現系を用いた。しかしながら、この場合、本発明者らは、E−タグエピトープ(GAPVPYPDPLEPR)(配列番号16)を代替軽鎖融合物、ならびに軽鎖制御タンパク質にも付加した。遺伝子III VpreBl−ラムダ5−E−タグ融合物(融合物1)および遺伝子III VpreBl−CI−Eタグ融合物(融合物2)の配列が、それぞれ配列番号12および13として示してある。重鎖構築物をm13ファージミドに固着するため、重鎖構築物を、可変重鎖およびガンマ定常重ドメイン1領域とインフレームでm13遺伝子III生成物により組み換え的にクローニングした。具体的には、組み換えタンパク質は、介在性のヘキサヒスチジンペプチド、抗c−myc抗体(GEQKLISLEEDL)(配列番号17)のためのペプチドエピトープ、およびアンバー終止コドンを含んでいた。本発明者らは、抗ヒスチジンおよび抗E−捕獲ELISAにより、タンパク質発現および複合体形成の忠実度をそれぞれ調べた。
【0133】
抗体およびsurrobodyのファージミド発現を、当該技術分野においてよく知られた標準的方法により達成した。本質的に、発現プラスミドで形質移入されたTG−1細胞を、100mcg/mlアンピシリンおよび2%ブドウ糖抑制を補った2−YT培地中で、mid log(OD600〜0.3)まで成長させ、次にm13K07ヘルパーファージで感染させ、次いで、100mcgアンピシリン、70mcg/mlカナマイシン、および200ミクロモルIPTGを補った2−YT培地中で一晩成長させた。ファージ含有上清または沈降させPBS再懸濁させたファージを、ファージ捕獲ELISA用に用いた。ファージ捕獲ELISAは、マイクロタイタープレートに抗ヒスチジン(Serotec)か抗E抗体(Abcam)を塗布し、次に抗m13ペルオキシダーゼ抗体(Pharmacia)との結合を検出し、続いてTMB基質で比色視覚化することにより達成した。これらの例において、本発明者らは、重鎖および安定な代替軽鎖会合によるファージへの高信頼度タンパク質発現融合をサポートする、両方の方法によるファージの特異的捕獲を見出した。結果は、図14に示してある。
【0134】
(実施例9)
哺乳動物細胞中で発現された代替軽鎖構築物の抗原結合
代替軽鎖変異体が、ニッケルキレートクロマトグラフィーの後に容易に検出可能な複合体を形成すると思われたので、同族の重鎖パートナーの親抗原に結合するそれらの能力を試験した。一時的発現および精製は、上述の通り実行した。抗原結合を、ELlSAにより試験した。簡潔に言えば、マイクロタイターウェルを、不活性化したH5N1ベトナム12−3/04ウイルス製剤(USFDA−CBER、抗原基準)で塗布し、ブロックし、次に、定量した連続希釈精製タンパク質でインキュベートした。洗浄後、複合体を、抗ヒトFcペルオキシダーゼコンジュゲート抗体で検出した。最後に、結合を、TMB基質発色により、比色的に視覚化し、定量した(図15参照)。
【0135】
加えて、一時的形質移入の上清を、抗原結合について未希釈で同様に試験し、図16に示してある。洗浄後、代替軽鎖複合体を、抗−VpreBl抗ペプチド血清および抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲート2次抗体か抗ヒトFcペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を用いて検出し、次いでTMB基質発色により比色的に視覚化し、定量した。
【0136】
(実施例10)
E.coliにおいて発現された代替軽鎖構築物の抗原結合
代替軽鎖融合物が安定な複合体を形成すると思われたので、本発明者らは、抗インフルエンザ抗体からの重鎖と対にされたそのような融合物が抗体の同族ウイルスと結合するかどうかを確かめたいと考えた。結合について試験するため、ペリプラズムライゼートを、上述の通りに調製した。ライゼートを次に、本質的には上述の通りにELISA抗原結合に供したが、重鎖のC末端の付加されたヘキサヒスチジンエピトープか、あるいは代替軽鎖融合物のC末端の付加されたE−タグかのどちらか一方に対するモノクロナール抗体を用いてポリクロナール親和性精製抗体を介して結合を検出した点が異なる。エピトープ検出は、抗マウスペルオキシダーゼコンジュゲート抗体か抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲート抗体のどちらか一方により達成した。最後に、結合を、TMB基質発色により比色的に視覚化し、定量した。結果は、図17に示してある。
【0137】
(実施例11)
ファージディスプレイされた代替軽鎖構築物の抗原結合
異種系中で代替軽鎖変異体を作成することが可能であり、ファージディスプレイされたコレクションが将来のタンパク質発見および設計に望ましいので、本発明者らは、代替軽鎖変異体および/または融合物が、m13ファージの表面で遺伝子III−会合複合体として容易にディスプレイされるかどうかを決定したいと考えた。変異体(配列番号18−22)および前に記載された融合物(配列番号12および13)を、上述の通りに2つの抗インフルエンザ抗体重鎖(配列番号19および14)のどちらか一方と共に同時発現させ、結合は本質的に、同じく上述された条件に従った。簡潔に言えば、マイクロタイターウェルを、H5N1ベトナム1203/04ウイルスで塗布し、ファージミドを結合させ、次に洗浄し、抗m13ペルオキシダーゼコンジュゲート抗体で直接検出した。結合は、TMBを用いて比色基質生成物形成に従って定量的に決定した。結果は、図18および19に示してある。
【0138】
(実施例12)
ファージ代替軽鎖構築物ライブラリー構築、選択、およびクロナールELlSA
抗原に結合した代替軽鎖構築物を発生および試験するため、組み合わせ抗体ライブラリーを用いた反復アプローチを使用した。簡潔に言えば、H5N1トリインフルエンザ生存者の骨髄から調製した組み合せ抗体ライブラリーを作成した。これらのライブラリーを、H5N1ウイルス血球凝集素タンパク質に対して2ラウンドの選択についてスクリーニングした。次に、ファージミドプラスミドを増幅および精製した。重鎖可変領域を制限消化によりこのプラスミド調製物から単離し、定常重ドメイン1と共にインフレームでクローニングして、ファージミドディスプレイのためのm13遺伝子IIIコートタンパク質への組み換えの融合を形成した。重要なことに、本発明者らは、VpreBlおよびラムダ5(SLC融合物1)(配列番号10)か、VpreBlおよび古典的なラムダ軽鎖(SLC融合物2)からの定常ラムダドメイン(配列番号11)かで構成される代替軽鎖融合物を同時発現させる2つの受容体プラスミドを用いた。融合物1ライブラリーが3.84×10の独立した形質転換体を産生したのに対し、融合物2ライブラリーは、7.8×10の形質転換体を産生した。両方のライブラリーを、2ラウンドを通して独立してスクリーニングし、両方ともバックグラウンド(融合物1=5×、融合物2=20×)に対し有意な濃縮を示し、この濃縮は第2のパンニングラウンドにおいて増大した(融合物1=97×、融合物2=48×)。
【0139】
クロナール抗原結合についてELISAにより試験するため、両方のラウンドおよび両方のライブラリーからのファージをHB2151 E.coli株中に移行させて、可溶性surrobody融合タンパク質を産生した。簡潔に言えば、HB2151クローンを成長させ、可溶性surrobodiesを産生するように誘導した。具体的には、コロニーを、100mcg/mlアンピシリンおよび200ミクロモルIPTGを補った2−YT培地中で、30度で一晩培養し、上述のようにペリプラズムライゼートを得た。結果として生じるペリプラズムライゼートを、本質的に上記で略述されるように、ELISAにより試験した。
【0140】
ラウンド1および2のパンニングにおける、2つの融合物についての形質転換体の数および陽性クローン百分率が図20に示してあり、融合物1および融合物2ライブラリークローンのラウンド1および2についてのクローン分析データが図21および22に示してある。
【0141】
(実施例13)
血清半減期を増大させる代替軽鎖融合物
in vivoの抗体断片の半減期は、その抗体断片が、すべての重鎖定常ドメインを含む元のままの完全な重鎖への融合の一部であって、安定な抗原結合断片を形成するのに必要なものではない場合に、大きく延長される。IgGの場合、このことは、ドメインCHl、CH2、およびCH3の包含を意味する。特に、CH2およびCH3がin vivoでこの効果の大部分を付与することが十分に確認されている。実際、異種タンパク質へのこれらのCH2およびCH3ドメインの融合は一般に、親分子と比較してこれらのキメラ分子の効力およびPK/PDを改善するのに十分である。同様に、VpreBおよびλ5の両方またはどちらか一方への機能的融合は、重鎖の定常ドメインとのこの会合により恩恵を受ける。
【0142】
II型糖尿病の処置について、グルカゴン様ペプチド1(またはGLP−1)の投与は、膵臓でのグルコース依存性インスリン分泌を誘導し、それによって患者におけるグルコース糖管理を改善することにより、患者に利益をもたらす。しかしながら、長命GLP−1ペプチドが望ましい目標である。代替軽鎖の尾部が特異でありかつアクセス可能なので、活性GLP−1部分を、VpreB1尾部のC末端(配列番号23および24)か、λ5のN末端尾部(配列番号25および26)かのどちらか一方に組み換え的に融合することによりこの目標を遂行できるかも知れない。λ5融合の場合、図11に描かれるように、VpreBlの存在下でまたはそれ無しで、さらには可変重ドメインの存在下でまたはそれ無しで、これを発現させてもよい。VpreBlへの融合は同様に、λ5の存在下でまたはそれ無しで、そしておそらく重鎖のCHlドメインの存在下でまたはそれ無しで行うことができる。同様に、他の有用な成長因子、サイトカイン、受容体、および酵素融合物を作り出すことができる。これらのケースのすべてにおいて、結合は、代替軽鎖、またはSURROBODY(商標)コンポーネントの必要条件ではなく、むしろ、異種代替軽鎖融合された要素により、完全にまたは大部分が付与され得る。
【0143】
上記の説明において、本発明はある一定の実施形態に関連して例示されている、本発明はそのように限定されない。事実、本明細書中で示されかつ説明されるもの加えて本発明の様々な修正が上記の説明から当業者にとって明らかになり、特許請求の範囲に入るであろう。
【0144】
(実施例14)
血球凝集素−結合代替軽鎖構築物の親和性決定
融合代替軽鎖構築物(SURROBODIES(商標)、図11参照)の親和性を決定するため、本発明者らは、E.coli中で様々なsurrobodyを過剰発現および精製し、それらを、重鎖が最初に同定された親Fabと比較した。親和性は、基本的に以下の通り、BioForte Octet上でのBio−Layer Interferometryにより決定した。最初に、100μgの精製血球凝集素タンパク質を、製造業者の取扱説明に従いPierce No−Weight PEO4ビオチン(cat#21329)を用いて20:1モル過剰でビオチニル化し、室温で1〜3時間、間欠的に撹拌しつつインキュベートし、次に、4Cで一晩インキュベートした。過剰ビオチンは、サイズ排除スピンカラムによって除去し、PBSに交換した。次に、HA結合代替軽鎖構築物およびFabを、Ni2+アフィニティークロマトグラフィーを用いてFPLCにより精製し、脱塩して過剰なイミダゾールを除去し、濃縮し、製造業者の取扱説明に従って実行する定量的軽鎖ELlSA(Bethel Labs,cat#E80−115−κ、およびE80−116−λ)により定量した。最後に、親和性を、一般に連続2倍希釈して15nM〜500nMである試料濃度の範囲を分析することにより決定した。試料を、HAタンパク質を塗布したバイオセンサーを用いて最高15分間インキュベートし、次に試料希釈剤中で最高1時間インキュベートした。これらのステップのすべては、1500 RPMでの試料プレート回転で行った。会合は、HA−塗布バイオセンサーによりFabインキュベーションの間に測定し、解離は、結合の後に試料希釈剤インキュベーションにおいて測定する。親和性は、以下の表に示してある。
【0145】
【表1】

本明細書全体を通して引用されたすべての参考文献、およびその中で引用された参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書により明確に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種アミノ酸配列にコンジュゲートされたVpreB配列および/またはλ5配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドが、標的に結合することができる、ポリペプチド。
【請求項2】
VpreB配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記VpreB配列が、未変性VpreB1配列、未変性VpreB2配列、未変性VpreB3配列ならびにそれらの断片および変異体からなる群より選択される、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記未変性VpreB配列が、配列番号1のヒトVpreB1、配列番号2および3のマウスVpreB2、配列番号4のヒトVpreB3、ならびにそれらの断片および変異体からなる群より選択される、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記異種アミノ酸配列が、λ5配列を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記異種アミノ酸配列が、配列番号5のヒトλ5または配列番号6のヒトλ5様ポリペプチドの全部または一部を含む、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記λ5配列が、前記VpreB配列に融合される、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項8】
異種アミノ酸配列へのVpreB配列の融合物を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記異種アミノ酸配列が、λ5配列である、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記VpreB配列が、配列番号1のヒトVpreBl、配列番号2および3のマウスVpreB2、および配列番号4のヒトVpreB3、ならびにそれらの断片および変異体からなる群より選択される、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記λ5配列が、配列番号5のヒトλ5の配列、配列番号6のヒトλ5様ポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変異体である、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記融合が、それぞれ、前記VpreB配列およびλ5のCDR3類似領域においてまたはそのまわりで起きる、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記異種アミノ酸配列が、抗体軽鎖可変領域配列を含む、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記抗体軽鎖可変領域配列が、抗体軽鎖CDR3領域に類似する部位において前記VpreB配列に融合される、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記抗体軽鎖可変領域配列の前記CDR3領域が、前記CDR3領域に類似する部位において前記VpreB配列に融合される、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記抗体軽鎖が、λ鎖である、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記抗体軽鎖が、κ鎖である、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記異種アミノ酸配列が、抗体軽鎖定常領域配列をさらに含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記定常領域配列が、抗体軽鎖の定常領域全体である、請求項18に記載のポリペプチド。
【請求項20】
λ5配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記λ5配列が、配列番号5のヒトλ5の配列、または配列番号6のヒトλ5様ポリペプチド、あるいはそれらの断片または変異体である、請求項20に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記異種アミノ酸配列が、前記λ5配列にコンジュゲートされたVpreB配列である、請求項21に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記コンジュゲーションが、前記λ5およびVpreB配列の融合である、請求項22に記載のポリペプチド。
【請求項24】
前記コンジュゲーションが、前記λ5とVpreB配列との間の共有結合である、請求項22に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記共有結合が、接続ペプチドまたはポリペプチド配列により形成される、請求項24に記載のポリペプチド。
【請求項26】
VpreB配列およびλ5配列を含み、前記コンジュゲーションが、非共有結合性会合であり、前記VpreBおよびλ5配列の少なくとも一方が、それぞれ、完全長未変性VpreBおよびλ5配列以外である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記VpreBおよびλ5配列の少なくとも一方が、それぞれ、未変性VpreBおよびλ5配列の断片または変異体である、請求項26に記載のポリペプチド。
【請求項28】
前記ポリペプチドが、第2の異種アミノ酸配列にさらにコンジュゲートされる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項29】
前記第2の異種アミノ酸配列と共有結合的に会合させられた、λ5配列へのVpreB配列の融合物を含む、請求項28に記載のポリペプチド。
【請求項30】
前記第2の異種ポリペプチド配列が、可変領域を含む抗体重鎖配列である、請求項29に記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記抗体重鎖配列が、前記VpreB配列と前記λ5配列との融合物にペプチドリンカーによってコンジュゲートされる、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記抗体重鎖配列が、前記VpreB配列と前記λ5配列との融合物に非共有結合性の会合によってコンジュゲートされ、二量体複合体を形成する、請求項30に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記抗体重鎖可変領域配列が、前記ポリペプチドと同じ標的に結合する、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記抗体重鎖可変領域配列が、前記ポリペプチドが結合する標的と異なる標的に結合する、請求項32に記載のポリペプチド。
【請求項35】
前記ポリペプチドが腫瘍抗原に結合し、前記抗体可変領域配列がエフェクター細胞に結合する、請求項34に記載のポリペプチド。
【請求項36】
非共有結合的に会合させられたVpreB配列およびλ5配列と非共有結合的に会合させられて三量体複合体を形成する可変領域を含む抗体重鎖配列をさらに含む、請求項26に記載のポリペプチド。
【請求項37】
前記抗体重鎖が、前記ポリペプチドと同じ標的に結合する可変領域配列を含む、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項38】
前記抗体重鎖が、前記ポリペプチドが結合する標的と異なる標的に結合する可変領域配列を含む、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項39】
前記ポリペプチドが腫瘍抗原に結合し、前記可変領域配列がエフェクター細胞に結合する、請求項38に記載のポリペプチド。
【請求項40】
前記VpreB配列および/または前記λ5配列のCDR類似領域が、治療抗体由来の対応するCDR配列をグラフトすることにより設計される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項41】
前記標的が、抗原である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項42】
前記標的が、ウイルス抗原である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項43】
前記標的が、インフルエンザAウイルスである、請求項42に記載のポリペプチド。
【請求項44】
前記ポリペプチドが、前記インフルエンザAウイルスを無力化する、請求項43に記載のポリペプチド。
【請求項45】
請求項1〜44のいずれか1項に記載のポリペプチドを含むライブラリー。
【請求項46】
抗体重鎖と会合させられたVpreB配列とλ5配列とのコンジュゲートを含むライブラリー。
【請求項47】
前記コンジュゲートが、前記VpreBとλ5配列との融合物である、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項48】
前記コンジュゲートが、前記VpreBとλ5配列との非共有結合性会合である、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項49】
前記コンジュゲートが、ペプチドリンカーを介した前記VpreBとλ5配列との共有結合である、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項50】
前記抗体重鎖可変領域配列が、前記コンジュゲートと非共有結合的に会合される、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項51】
前記抗体重鎖可変領域配列が、前記コンジュゲートと共有結合的に会合させられる、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項52】
前記抗体重鎖が、前記コンジュゲートと同じ標的に結合する可変領域配列を含む、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項53】
前記抗体重鎖が、前記コンジュゲートが結合する標的と異なる標的に結合する可変領域配列を含む、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項54】
前記コンジュゲートが腫瘍抗原に結合し、前記可変領域配列がエフェクター細胞に結合する、請求項53に記載のライブラリー。
【請求項55】
ディスプレイの形態である、請求項45に記載のライブラリー。
【請求項56】
前記ディスプレイが、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、およびミクロビーズディスプレイからなる群より選択される、請求項55に記載のライブラリー。
【請求項57】
ディスプレイの形態である、請求項46に記載のライブラリー。
【請求項58】
前記ディスプレイが、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、およびミクロビーズディスプレイからなる群より選択される、請求項57に記載のライブラリー。
【請求項59】
代替軽鎖配列を含むライブラリー。
【請求項60】
ディスプレイの形態である、請求項59に記載のライブラリー。
【請求項61】
前記ディスプレイが、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、およびミクロビーズディスプレイからなる群より選択される、請求項59に記載のライブラリー。
【請求項62】
前記ライブラリーのメンバーに付加されたまたは埋め込まれた少なくとも1つの付加的な機能性をさらに含む、請求項45、46または59に記載のライブラリー。
【請求項63】
前記付加的な機能性が、抗体、ペプチド、またはポリペプチド配列により提供される、請求項62に記載のライブラリー。
【請求項64】
前記ポリペプチド配列が、受容体またはリガンド配列である、請求項63に記載のライブラリー。
【請求項65】
前記抗体、ペプチド、またはポリペプチド配列が、抗体、ペプチド、またはポリペプチドライブラリーのメンバーである、請求項63に記載のライブラリー。
【請求項66】
前記ペプチドライブラリーが、ランダムペプチド配列のライブラリーである、請求項65に記載のライブラリー。
【請求項67】
前記ペプチド配列の少なくともいくつかが、標的抗原への結合特異性を有する、請求項66に記載のライブラリー。
【請求項68】
ディスプレイの形態である、請求項62に記載のライブラリー。
【請求項69】
前記ディスプレイが、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、およびミクロビーズディスプレイからなる群より選択される、請求項68に記載のライブラリー。
【請求項70】
抗体重鎖可変領域配列と会合させられた代替軽鎖配列のコレクションを含む、ライブラリー。
【請求項71】
前記代替軽鎖配列が、1つ以上の標的に対する結合特異性を有する、請求項70に記載のライブラリー。
【請求項72】
前記代替軽鎖配列が、同じ標的に対する結合特異性を有する、請求項71に記載のライブラリー。
【請求項73】
前記代替軽鎖配列が、少なくとも2つの異なる標的に対する結合特異性を有する、請求項71に記載のライブラリー。
【請求項74】
前記代替軽鎖配列が、複数の標的に対する結合特異性を有する、請求項71に記載のライブラリー。
【請求項75】
前記代替軽鎖配列が、VpreB配列および/またはλ5配列を含む、請求項70に記載のライブラリー。
【請求項76】
前記VpreB配列が、ヒトVpreB1(配列番号1)、マウスVpreB2(配列番号2および3)、およびヒトVpreB3(配列番号4)配列、ならびにそれらの断片および変異体からなる群より選択される、請求項75に記載のライブラリー。
【請求項77】
前記λ5配列が、配列番号5のヒトλ5、配列番号6のヒトλ5様ポリペプチド、ならびにそれらの断片および変異体からなる群より選択される、請求項75に記載のライブラリー。
【請求項78】
前記VpreBおよびλ5配列が、互いに非共有結合的に会合させられる、請求項75に記載のライブラリー。
【請求項79】
前記VpreBおよびλ5配列が、互いに共有結合的に接続される、請求項75に記載のライブラリー。
【請求項80】
前記VpreBおよびλ5配列が、互いに直接的に融合される、請求項79に記載のライブラリー。
【請求項81】
前記ライブラリーのメンバーに付加されたまたは埋め込まれた少なくとも1つの付加的な機能性をさらに含む、請求項75に記載のライブラリー。
【請求項82】
前記付加的な機能性が、抗体、ペプチド、またはポリペプチド配列により提供される、請求項81に記載のライブラリー。
【請求項83】
前記ポリペプチド配列が、受容体またはリガンド配列である、請求項82に記載のライブラリー。
【請求項84】
前記抗体、ペプチド、またはポリペプチド配列が、抗体、ペプチド、またはポリペプチドライブラリーのメンバーである、請求項82に記載のライブラリー。
【請求項85】
前記ペプチドライブラリーが、ランダムペプチド配列のライブラリーである、請求項84に記載のライブラリー。
【請求項86】
前記ペプチド配列の少なくともいくつかが、標的抗原への結合特異性を有する、請求項85に記載のライブラリー。
【請求項87】
ディスプレイの形態である、請求項70に記載のライブラリー。
【請求項88】
前記ディスプレイが、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ、哺乳動物細胞上のディスプレイ、胞子ディスプレイ、ウイルスディスプレイ、タンパク質−DNA結合に基づくディスプレイ、およびミクロビーズディスプレイからなる群より選択される、請求項87に記載のライブラリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2010−522566(P2010−522566A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501191(P2010−501191)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/058283
【国際公開番号】WO2008/118970
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(508339161)シー レーン バイオテクノロジーズ, エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】