説明

抗炎症用組成物

【課題】安全、安価かつ簡便に日常的に継続して摂取することができ、かつ顕著な炎症抑制作用を有する素材の提供。
【解決手段】青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物を有効成分として含有する抗炎症用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗炎症用組成物、ならびに当該組成物を含有する医薬、化粧品、飲食品及び飼料等に関する。
【背景技術】
【0002】
抗炎症剤は、胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患、関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎、並びに花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の炎症症状の治療に有用である。医薬品としての抗炎症剤には、これまでステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬及び免疫抑制剤等が知られている。しかし、いずれも強い副作用があるため、医師の指導や管理の下での慎重な投与を要するという問題がある。
【0003】
一方、これらの医薬品に代えて、抗炎症作用を示すいわゆる健康食品、例えば、保健機能食品等を摂取することによって炎症性疾患や炎症症状を改善しようとする試みも行われている。例えば、甜茶、グルコサミン、コンドロイチン、アスタキサンチン、カテキン等又はそれを添加した食品が挙げられる。しかし、これらの健康食品は、医薬品に比べて副作用は少ないものの、炎症の改善効果も弱いため十分な抗炎症効果があるとは言い難かった。
【0004】
したがって、日常的に服用が可能で、しかも効果的に炎症性疾患や炎症症状を緩和できる抗炎症剤の開発が望まれている。
【0005】
大豆は、豆腐、醤油、納豆等の原料としてよく知られており、大豆種子から機能性成分を得る試みが盛んに行われている。例えば、特許文献1には、スタキオースを有効成分とするアトピー性皮膚炎モデル動物の炎症症状を改善する抗アレルギー性組成物が開示されており、スタキオースは大豆種子から抽出できることが記載されている。しかし、大豆種子に含まれるスタキオースは極めて量が少なく、通常の抽出操作を行っただけでは十分な量を得ることができない。それ故、効果の認められる98%以上の濃度に濃縮するには、クロマトグラフィー等の複雑な精製工程を行う必要があり、その結果、コストがかかり過ぎるという問題があった。また、スタキオースは難消化性であり、高濃度で摂取すると下痢等を発症する恐れがあるという問題もあった。
【0006】
大豆は、その成熟種子の色から黄色の普通大豆、種子が緑色の青大豆、種子が黒色の黒大豆等に分類される。このうち、青大豆種子の生理活性効果については、特許文献2に、青大豆種子の溶媒抽出物はIgE低下作用や、Th1−Th2バランスをTh1有意に改善する作用を有し、抗アレルギー剤として使用できることが記載されている。
一方、青大豆の抗炎症作用はこれまで知られていないのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-321372号公報
【特許文献2】特開2010-53125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、斯かる従来の実状に鑑み、安全、安価かつ簡便に日常的に継続して摂取することができ、かつ顕著な炎症抑制作用を有し、種々の炎症性疾患、炎症症状の予防及び/又は改善に有効な天然由来の素材を開発し、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物が、優れた抗炎症作用を有することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物を有効成分として含有する抗炎症用組成物を提供することにより、上記課題を解決したものである。
さらに本発明は、青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物を含有する医薬、化粧品、飲食品、及び飼料を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、安全・安価かつ簡便に日常的に継続して摂取することができ、かつ顕著な抗炎症作用を有し、種々の炎症性疾患、炎症症状の予防及び/又は改善に有効な抗炎症用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】抗原塗布8週後(9回塗布終了後)におけるマウス背部の写真。
【図2】抗原塗布8週後(9回塗布終了後)のマウスにおける皮膚炎スコア。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「青大豆」とは、完熟状態の種子において種皮及び/又は胚の全部又は一部が緑色を呈するダイズ(Glycine max)品種の総称である。青大豆としては、例えば、キヨミドリ、越後みどり(エチゴミドリ)、大袖振、音更大袖(振)、大袖の舞、早生緑、くらかけ、スズカリ、青丸くん、青目大豆、あきたみどり、秋試縁1号、岩手みどり、双青、青入道、黒神、あやみどり、信農青豆、秘伝、ひたし豆、天津青大豆、青仁大豆(Chinese green soybean)等の品種が含まれる。
一般に、青大豆には、あきたみどりのように、種皮及び胚が緑色を呈する品種と、大袖振のように種皮のみが緑色を呈する品種が知られているが、本発明の青大豆は、いずれの品種であってもよい。好ましくは種皮及び胚が緑色を呈する品種である。また、青大豆であっても「臍」の色は、品種により黄、緑、暗褐色、黒と様々であるが、特に制限しない。
「完熟状態」とは、種子が発芽能力を有するまでに十分に成熟した状態をいう。一般に枝豆と称される未成熟な状態の大豆種子は、黄色大豆又は黒大豆であっても緑色を呈している。しかし、このような未成熟状態時のみに緑色を呈する品種は、本発明の青大豆には該当しない。また、ここでいう「緑色」とは、波長490nm〜570nmの反射光に基づいてヒトの眼によって認識される色彩をいう。したがって、「緑色」とは、前記波長の範囲内であれば、その濃度を制限するものではなく、例えば、淡緑色、黄緑色、緑、青緑色、濃緑色及び黒緑色を包含する。
【0014】
本明細書において、「種子」は種皮及び/又は胚を含み、胚は子葉及び胚軸を含む。
【0015】
本明細書において、「抗炎症用組成物」とは、抗炎症作用を有する組成物あるいは抗炎症剤として使用することができる組成物をいう。
【0016】
本明細書において、「炎症」とは、局所的な炎症及び全身的な炎症を含み、「炎症」の症状および状態としては、炎症の4大徴候である疼痛、発赤、熱感、腫脹;ならびにそれらによって誘発される様々な二次的症状、例えば、炎症性の皮膚炎、胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患、関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎、ならびに花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等を含む。
本発明の抗炎症用組成物は、これらの炎症の症状又は状態を予防、治療、改善又は緩和させることができる。
【0017】
上記「抗炎症」作用とは、即時型アレルギー反応の抑制作用、すなわちIL−4低下やIFNγ亢進に起因するTh2の偏向の抑制、又はIgE低下によるI型アレルギー反応の抑制作用、とは異なる作用である。よって、本発明の抗炎症用組成物によって予防、治療、改善又は緩和される上記アレルギー性炎症疾患とは、好ましくは、I型アレルギー反応による疾患を除く、II型〜V型アレルギー反応による疾患である。例えば、上記アレルギー性炎症疾患がアトピー性皮膚炎の場合、本発明の抗炎症用組成物によって予防、治療、改善又は緩和される症状には、丘疹や色素沈着が含まれるが、IgEによって引き起こされる掻痒症状の改善は含まれない。また例えば、本発明の抗炎症用組成物によって予防、治療、改善又は緩和される症状には、炎症の4大徴候である、疼痛、発赤、熱感、腫脹が含まれるが、ここには、IgEにより肥満細胞等から放出されたケミカルメディエイターによる血管透過性亢進によって引き起こされる浮腫は含まれない。
【0018】
本発明の抗炎症用組成物は、青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られた青大豆種子の加熱処理物を有効成分として含有する。本発明の抗炎症用組成物は、当該青大豆種子の加熱処理物から実質的に構成されるものを含む。
【0019】
上記青大豆種子は、任意の形態の青大豆種子であればよく、例えば、青大豆種子(好ましくは脱皮種子)そのもの;当該青大豆種子を切断、粉砕若しくは粉末化したもの;当該青大豆種子を乾燥したもの;当該青大豆種子を乾燥後粉砕若しくは粉末化したもの;当該青大豆種子を圧搾抽出した搾汁若しくはその残渣、等の形態であり得る。
上記青大豆種子をいずれの形態で用いるかは、所望の活性強度、コスト、品質、大豆としての風味の程度などをもとに選択すればよい。
【0020】
上記水性液体としては、水又は水と混合し得る(分離しない)有機溶媒が好ましい。具体的には、水としては、純水、蒸留水、水道水、酸性水、アルカリ水、中性水等が挙げられる。また、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール、及び1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の室温で液体であるアルコール;ジエチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル;並びにアセトン、エチルメチルケトン等のケトン等を挙げることができる。
【0021】
上記の有機溶媒の中では、操作性や環境性の点から、室温で液体であるアルコール、たとえば、炭素原子数1〜4の低級アルコールを用いるのが好ましく、残留溶媒による安全性の観点からはエタノールを用いるのがより好ましい。
【0022】
上記水性液体としては、上記に挙げた水及び有機溶媒を単独で用いてもよいし、いずれか2種以上を組み合わせて用いてもよいが、水を単独で用いるのが好ましい。水性液体としては、例えば、含水有機溶媒が挙げられる。好ましくは、水、エタノール等のアルコール、及び含水エタノール等の含水アルコールが挙げられる。このうち、水、エタノール、含水エタノールがより好ましい。
上記含水有機溶媒中の水の含有量は、通常60体積%以上、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上であるのが望ましい。
【0023】
上記加熱は、炎症抑制効果が十分に増強されるまで行えばよく、例えば、70℃〜水性液体の沸点の温度で5分〜48時間、好ましくは80℃〜105℃の温度で15分〜24時間の加熱である。加熱手段としては、一般的に使用される温度制御が可能なヒーターやオーブンを用いることができるが、特に限定されない。
【0024】
好ましくは、上記青大豆種子の加熱処理物は、青大豆種子を水性液体に浸漬した状態で加熱することによって得ることができる。浸漬の際の青大豆種子と水性液体との容量比は、青大豆種子が完全に液中に浸漬する量であれば特に限定されないが、1:0.5〜1:20、好ましくは1:1〜1:20、より好ましくは1:2〜1:10である。加熱の方法としては、例えば、青大豆種子の浸漬した水性液体を、上記の時間、上記温度に設定したヒーター等によって加熱するか、あるいは煮沸すればよい。
【0025】
上記加熱によって得られた青大豆種子の加熱処理物は、本発明の抗炎症用組成物の有効成分として使用することができる。この青大豆種子の加熱処理物は、そのまま本発明に用いてもよく、あるいは必要に応じて、濃縮あるいは凍結乾燥やスプレードライ等の方法により乾燥、粉末化したものとして使用するか、又はさらに液状、粉末状又はペースト状に調製して使用してもよい。
【0026】
青大豆種子の浸漬した水性液体を加熱する場合、青大豆種子中の活性成分が水性液体中に溶出することがある。特に、水性液体が有機溶媒単独の場合または有機溶媒の混合比率が高い含水有機溶媒の場合にその可能性が高い。そのような場合には、加熱後に得られた青大豆種子の加熱処理物の液相のみを本発明の組成物の有効成分として使用してもよく、又は液相を除去して残った残渣のみを使用してもよい。当然ながら、当該液相と残渣の混合物を使用してもよい。これらの液相、残渣、またはその混合物は、いずれも上記青大豆種子の加熱処理物に包含される。
これらの液相、残渣、またはその混合物は、そのまま本発明に用いてもよく、必要に応じて、水性液体を蒸留、ろ過、遠心、減圧乾燥、真空乾燥等により濃縮若しくは乾燥させるか、又は凍結乾燥やスプレードライ等の方法により乾燥若しくは粉末化して使用してもよく、あるいはさらに液状、粉末状又はペースト状に調製して使用してもよい。このうち、水性液体を溜去したものや、種々の方法により乾燥したものは、取り扱い性が向上する点で有利である。
【0027】
青大豆等の大豆は、食品として長期間利用され、安全性が確認されている物質である。したがって、これらを原料とする上記青大豆種子の加熱処理物を含有する本発明の組成物は、長期投与又は摂取しても副作用の心配がなく、健常者や成人だけでなく、小児、高齢者及び病弱者対しても、安全且つ継続的に投与し又は摂取させることができる。
したがって、上記青大豆種子の加熱処理物は、ヒト又は動物用の医薬、化粧品、飲食品、飼料等として、あるいはそれらを製造するために有用である。
【0028】
よって、本発明はまた、上記青大豆種子の加熱処理物を含有する医薬、化粧品、飲食品、及び飼料を提供する。当該医薬、化粧品、飲食品、及び飼料は、抗炎症のため、例えば、疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善又は緩和、等のために使用することができる。
【0029】
本発明の医薬は、上記青大豆種子の加熱処理物を有効成分として含有する抗炎症剤、あるいは疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善若しくは緩和剤、等であり得る。
本発明の医薬の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等の経口剤;吸入剤、坐剤等の経腸製剤;点滴剤;注射剤;外用剤;経皮、経粘膜、経鼻剤;吸入薬;貼布剤等が挙げられる。
なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングされていてもよい。
【0030】
本発明の化粧品は、上記青大豆種子の加熱処理物を有効成分として含有する。当該化粧品の形態としては、クリーム、乳液、ローション、懸濁液、ジェル、パウダー、パック、シート、パッチ、スティック、ケーキ等、化粧品が通常とり得る任意の形態が挙げられる。
【0031】
本発明の医薬及び化粧品は、上記青大豆種子の加熱処理物を単独で含有していてもよく、あるいは、各々、医薬として許容される担体及び化粧料として許容される担体を組み合わせて含有していてもよい。本発明の医薬及び化粧料は、上記青大豆種子の加熱処理物に、慣用される担体、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、アルコール、水、水溶性高分子、香料、甘味料、矯味剤、酸味料等を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。必要に応じてさらに、他の有効成分又は薬効成分を配合してもよい。
【0032】
本発明の医薬及び化粧品における上記青大豆種子の加熱処理物の含有量は、その剤型により異なるが、その乾燥質量を基準として、通常は、0.1〜99質量%、好ましくは1〜80質量%の範囲である。
【0033】
本発明の飲食品又は飼料は、上記青大豆種子の加熱処理物を有効成分として含有し、且つ抗炎症効果、あるいは疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善又は緩和、等の効果を企図して、その旨を表示した健康食品、機能性飲食品、特定保健用飲食品、病者用飲食品、家畜、競走馬、鑑賞動物等のための飼料、ペットフード等であり得る。
【0034】
本発明の飲食品及び飼料の形態は特に制限されず、上記青大豆種子の加熱処理物を配合できる全ての形態が含まれる。例えば当該形態としては、固形、半固形または液状であり得、あるいは、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ゲル、シロップ、経管経腸栄養用流動食等の各種形態が挙げられる。
具体的な飲食品の形態の例としては、緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、アルコール飲料、精製水等の飲料、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等が挙げられる。
本発明の飼料は飲食品とほぼ同様の組成や形態で利用できることから、本明細書における飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることが出来る。
【0035】
上記飲食品及び飼料は、上記青大豆種子の加熱処理物に、ならびに飲食品や飼料の製造に用いられる他の飲食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(たとえば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。あるいは、通常食されている飲食品又は飼料に上記青大豆種子の加熱処理物を配合することにより、本発明に係る飲食品又は飼料を製造することができる。
【0036】
本発明の飲食品及び飼料における上記青大豆種子の加熱処理物の含有量は、食品の形態により異なるが、その乾燥質量を基準として、通常は、0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜50質量%の範囲である。
【0037】
上記医薬、化粧品、飲食品及び飼料は、上記青大豆種子の加熱処理物の乾燥質量を基準として、成人1日当たり0.1〜100gの範囲で投与又は摂取される。経口投与又は摂取の場合、一般的な1日当たりの投与量は、1〜50gであるが、上記青大豆種子の加熱処理物は安全性の高いものであるため、その量をさらに増やすこともできる。上記1日当たりの投与又は摂取量は、1回で投与又は摂取してもよいが、数回に分けて投与又は摂取してもよい。
上記1日当たりの量を適切に投与又は摂取できるよう、本発明の医薬の剤型若しくは投与レジメン、又は飲食品及び飼料の形態を、1日当たりの投与又は摂取量が管理できる形にすることが望ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
青大豆種子(エチゴミドリ)の粉砕物に7倍量の水を加え、90℃で1時間加熱した。得られた加熱処理物を青大豆種子と水の混合状態のままスプレードライして乾燥し、本発明の組成物を粉末状態で得た。
(比較例1)
青大豆種子に代えて黄大豆種子(フクユタカ)を用いた以外は、実施例1と同様にして粉末を得た。
【0040】
(試験例1)炎症抑制作用
マウス(NC/Nga、オス、6週齢;日本SLC製)を馴化後に使用した。AIN−76精製飼料で飼育を行い、6〜8匹ごと表1に示す4群に群分けし、群分け後は同表に示す各試験飼料を給餌した。試験飼料の給餌開始日から抗原溶液の塗布を開始した。
抗原溶液の塗布は背部に行った。抗原溶液としてはビオスタ(登録商標)AD(コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)由来成分のタンパク質含有;株式会社ビオスタ製)を用いた。塗布前に背部をバリカンおよびシェーバーを用いて剃毛し、さらにサージカルテープを用いて除毛した。ここに最初に4%SDS水溶液100μLを塗布した後、同じ領域に100mgのビオスタ(登録商標)ADを塗布した。
同様の手順で、以後7日毎に抗原溶液を塗布した。塗布開始から8週後(9回塗布終了後)、各動物の皮膚炎症状を目視で観察し、表2にしたがってスコア化した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
結果を図1に示す。対照飼料を摂取したマウス(コントロール)や比較例1の組成物を含む飼料を摂取したマウス(黄大豆)には多くの発赤が観察され、皮膚炎が発生していた一方、実施例1の組成物を含む飼料を摂取したマウス(青大豆)には発赤が観察されず、炎症症状が顕著に抑制されていた。
【0044】
マウスの皮膚炎症状をスコア化した結果を図2に示す。実施例1の組成物は濃度依存的に炎症症状を抑制した。
黄大豆にも含まれるスタキオースが抗アレルギー作用を有し、アトピー性皮膚炎のモデル動物であるNC/Ngaマウスに0.5%混餌で改善効果を示すことが公知である(特開2003−321372号公報)。大豆中に含まれるスタキオース量は平均3.31%(日本食品工業学会誌 36, 968-980 (1989))とされているから、大豆丸ごとを摂取して改善効果を示すには、15.1%の混餌が必要である。図2に示すとおり、黄大豆の加熱処理物は5%の混餌で若干の改善効果を示したが、本発明の組成物はその半分の濃度(2.5%)でも黄大豆群の約2倍(1/2スコア)の抗炎症効果を示し、同濃度(5%)では約4倍(1/4スコア)の抗炎症効果を示した。これらの結果からは、本発明の組成物が顕著な改善効果を示すことは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物を有効成分として含有する抗炎症用組成物。
【請求項2】
前記加熱が80℃〜105℃で15分〜24時間の加熱である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記水性液体が水又はエタノール水溶液である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物を含有する医薬。
【請求項5】
青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物を含有する化粧品。
【請求項6】
青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物を含有する飲食品。
【請求項7】
青大豆種子を水性液体とともに加熱して得られる青大豆種子の加熱処理物を含有する飼料。

【図2】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−176917(P2012−176917A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41127(P2011−41127)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)日本食品科学工学会第57回大会事務局 平成22年9月1日「日本食品科学工学会第57回大会講演集」に文書をもって発表 (2)社団法人日本食品科学工学会 平成22年9月2日「日本食品科学工学会第57回大会」に文書をもって発表
【出願人】(000226998)株式会社日清製粉グループ本社 (125)
【Fターム(参考)】