説明

抗菌性組成物および方法

本発明は概して、加工肉、果物および野菜、植物部分のような有機質、布地およびステンレススチールのような無生物表面上の、ならびに口中のまたは歯科製品上の微生物汚染を減らすための製品および方法に関する。具体的には、本発明は、抗菌性脂質と、バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択されたエンハンサーと、任意に界面活性剤とを含有する抗菌性組成物を使用する表面を殺菌するための製品および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、加工肉、果物および野菜、植物部分のような有機質、ならびに布地およびステンレススチールのような他の無生物表面上の微生物汚染を減らすための組成物および方法に関する。かかる組成物はまた、例えば、口中の微生物濃度を下げるための歯科用途で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
食品経由の病気は毎年かなりの疾病および死亡の原因となり、直接的および間接的な医療コストは年10億を超えると幾つかの情報源によって推定されている。一般的な食品病原体は、サルモネラ属(Salmonella)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、大腸菌(Escherichia coli)O157:H7、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、セレウス菌(Bacillus cereus)、およびノーウォーク様ウィルス(Norwalk−like viruses)を含む。食品経由の病気の発生は典型的には、汚染された肉製品、生乳、または鶏肉製品に関連してきたが、果物および野菜もまた食品経由の疾病の発生源として働くことができる。表面、容器、および他の基材は食品汚染の発生源であり得る。牛ひき肉、ホットドッグ、アルファルファもやし、およびオレンジジュースのような食品のリコールは、食品グレードであり、かつ、費用効果的である広範なスペクトルの抗菌性解決策の必要性を示している。
【0003】
食品中および食品上のならびに他の表面上の微生物汚染を減らすために使用される組成物は、典型的には、より高い濃度では処理される表面の特性に影響を及ぼすかもしれない、有機酸および例えば次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素化合物のような物質の使用を伴ってきた。脂肪酸モノエステルを使用する組成物は、米国特許第5,460,833号明細書および同第5,490,992号明細書に記載されているように鶏肉、ならびに国際公開第200143549A号パンフレットに記載されているように果物および野菜のような食品上の微生物負荷を減らすために近年使用されてきた。脂肪酸モノエステルはまた、2000年5月17日に出願された、出願人の譲受人の同時係属米国特許出願第09/572,549号明細書に記載されているように、布地上の乾燥組成物にも使用されてきた。それらはまた、米国特許第4,485,029号明細書に記載されているように、コンタクトレンズでも使用されてきた。これらの組成物中の脂肪酸モノエステルは、他の成分の存在下では限られた安定性を有する。
【0004】
米国特許第5,804,549号明細書は、グリセロールモノラウレートと組み合わせてバクテリオシン、ナイシンを含有するランチオニンより本質的になる組成物、およびヘリコバクター(Helicobacter)属の細菌感染症の処置のためのかかる組成物の使用を開示している。これらの調合物は、微生物を保護する粘膜システムに作用することによる胃腸管での処置を指向している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、食品、哺乳類皮膚、および口内(すなわち、口腔)のような有機質上でおよび/または無生物材料上で微生物のレベルを下げるのに有効な抗菌活性を有する組成物を提供する。本発明の組成物は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらの(エステルかエーテルかのどちらかの)アルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された抗菌性脂質を含む。これらの組成物はエンハンサーをさらに含む。好適なエンハンサーは、バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせを含んでもよいが、それらに限定されなくてもよい。必要ならばエンハンサーの様々な組み合わせを使用することができる。
【0006】
本発明の組成物に含まれ得る他の成分は、様々な組み合わせで、界面活性剤、および他の添加剤である。組成物は濃厚な形で使用されてもよいし、または必要ならば使用前に水性媒体か非水性媒体かのどちらかにさらに組み合わされてもよい。
【0007】
一態様では、本発明は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分と、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分とを含む抗菌性組成物を提供する。
【0008】
別の態様では、本発明は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分と、有機酸ならびにバクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分とを含む抗菌性組成物を提供する。
【0009】
一態様では、本発明は、多価アルコールの(C7〜C14)飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C8〜C22)不飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの(C7〜C14)飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの(C8〜C22)不飽和脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分であって、該アルコキシル化誘導体が多価アルコールのモル当たり5モル未満のアルコキシドを有する(好ましくは、抗菌性脂質成分はグリセロールモノエステルを含まない)抗菌性脂質成分(好ましくは、主要量の抗菌性脂質成分)と、バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分と、任意に界面活性剤とを含む抗菌性組成物を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分、ただし、グリセロールモノエステルを含まない抗菌性脂質成分と、マンノース、キシロース、マンニトール、キシリトール、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分とを含む抗菌性組成物を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分、ただし、グリセロールモノエステルを含まない抗菌性脂質成分と、バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分とを含む抗菌性組成物であって、組成物のpHが6以下である組成物を提供する。
【0012】
別の態様では、本組成物は、任意にまた界面活性剤(すなわち、1つもしくはそれ以上の界面活性剤)を含有してもよい。界面活性剤は、組成物の予想される用途に基づいて選ぶことができる。好適な界面活性剤は、アシルラクチレート(acyl lactylate)塩、スルホコハク酸ジオクチル塩、ラウリル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、および(C8〜C18)脂肪酸の塩を含む。
【0013】
本発明のさらなる態様では、食品グレード成分を含有する組成物は、食物および食品の味覚、食感、色、臭い、または外観に悪影響を及ぼすことなく有効な抗菌活性を好ましくは示す。これは、利き味試験を用いることによって評価されてもよい。ハンバーガーのような普通に調理される食品については、利き味試験は、調理された食品で行われるべきである。処理食品は、処理製品と対照未処理製品との間に何の統計的な差もない場合には、食物および食品の味覚、食感、色、臭い、または外観に何の影響も持たないと考えられる。
【0014】
別の態様では、本発明のエステルおよびエンハンサーの多くのような、一般に食品グレードと認められる(GRAS)成分を含有する組成物は、有意の有害な毒物学または環境問題を好ましくは提起しない。本発明の組成物の多くはまた、加工工場で容易に取り扱うことができ、加工装置と相性がよい。
【0015】
別の態様では、本発明はまた、食品または他の表面の殺菌方法も含む。本方法は、食品または表面を本発明の組成物と接触させる工程を含む。ある種の実施形態については、本組成物は濃厚であり、本方法は組成物を基材への塗布前に希釈する工程を含む。ある種の実施形態では、1つもしくはそれ以上の部分で、抗菌性脂質成分を塗布する工程と、エンハンサー成分を塗布する工程とを含む方法が提供される。例えば、2つもしくはそれ以上の部分が塗布される場合、エンハンサー成分は抗菌性脂質成分の前後に塗布することができる。
【0016】
一実施形態では、本発明は、基材への抗菌性組成物の塗布方法を提供する。本方法は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む主要量の抗菌性脂質成分を基材に塗布する工程と、バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分を基材に塗布する工程とを含む。エンハンサー成分は、抗菌性脂質成分と同時に、該成分の前に、または後に塗布することができる。
【0017】
本発明の別の態様では、好ましくは、本明細書で開示される調合物および方法を用いてトータル好気性細菌カウント(すなわち、その多くが食品を腐敗させる原因となり得る)の少なくとも1−log平均減少を基材(例えば、食品)上で達成することができる。これは、1%抗菌性脂質が牛ひき肉に塗布されるように十分な組成物が塗布される時に10000〜100,000細菌/グラム牛ひき肉の初期天然(native)細菌濃度を有する牛ひき肉のサンプルを用いて実施例5〜7に記載される方法に従って測定することができる。より好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも2のlog平均減少、さらにより好ましくは少なくとも3のlog平均減少を達成する。最も好ましくは、本発明の組成物は、天然細菌の完全な撲滅(細菌レベルが検出できないような)を達成する。
【0018】
特定の調合物では、組成物は有機質によって不活性化されない。すなわち、本発明の組成物は血液、血清、脂肪、および食品上に典型的に見いだされ、かつ、ヨウ素およびクォーツのような他の抗菌剤を不活性化することが知られている他の有機質の存在下で活性である。
【0019】
別の態様では、本発明は、少なくとも60%脂肪酸モノエステルを含有する主要量のプロピレングリコール脂肪酸エステルと、少量のエンハンサーと、任意に界面活性剤とを含む使用準備のできた抗菌性調合物であって、プロピレングリコール脂肪酸エステルの濃度が使用準備のできた調合物の30重量パーセント(重量%)より大きく、かつ、エンハンサーの濃度が使用準備のできた調合物の0.1重量%〜30重量%である調合物を特徴とする。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分を含む第1容器(好ましくは、第1容器は主要量の(C7〜C14)プロピレングリコール脂肪酸エステルを含む)と、バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分を含む第2容器とを含むキットを特徴とする。
【0021】
代わりの実施形態では、キットは、主要量の(C7〜C14)プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびエンハンサー入り組成物を有する第1容器と、第2エンハンサーを有する第2容器とを含む。キット中の1つまたは両方の容器はまた、任意に界面活性剤を含有してもよい。キットは、第1容器および第2容器の内容物が微生物汚染を減らすのに有効である抗菌性調合物を生み出すために好ましくは混合されることを示すラベルまたは添付文書をさらに含むことができる。ラベルまたは添付文書は、抗菌性調合物を食物、食品、または無生物表面への塗布前に希釈できることをさらに示すことができる。
【0022】
定義
「主要量」は、いかなる他の個別成分よりも高い濃度で存在する成分を意味する。
【0023】
「エンハンサー」は、抗菌性脂質なしの組成物か、エンハンサー成分なしの組成物かのどちらかが別々に使用された時に、それらが全体としての組成物と同じレベルの抗菌活性を提供しないほどに抗菌性脂質の有効性を高める成分を意味する。例えば、エンハンサーは、抗菌性脂質がない場合にはいかなる感知できる抗菌活性も提供しないかもしれない。増強効果は、殺傷のレベル、殺傷の速度、および/または殺される微生物のスペクトルに関してであり得るし、すべての微生物については見られないかもしれない。実際に、殺傷の高められたレベルは、大腸菌のようなグラム陰性菌で最もしばしば見られる。エンハンサーは、組成物の残りと組み合わせられた時に全体としての組成物に、エンハンサー成分なしの組成物および抗菌性脂質なしの組成物の活性の合計よりも大きい活性を示させる相乗剤であるかもしれない。
【0024】
「微生物」または「マイクローブ」は、細菌、酵母、糸状菌、真菌類、マイコプラズマ、ならびにウィルスを意味する。
【0025】
「貯蔵寿命」は、加工食品が腐敗するのに要する期間を意味する。例えば、牛肉は、表皮の区域(1平方センチメートル)についての細菌カウントが107(平方センチメートル当たりのコロニー形成単位)に等しいかもしくはそれ以上である場合に腐敗していると考えることができる。
【0026】
「媒体」は、組成物の成分のためのキャリアを意味する。抗菌性組成物では、媒体は典型的には主要量で存在する成分である。
【0027】
抗菌「活性」は、グラム陰性菌およびグラム陽性菌、真菌類、真菌胞子、酵母、マイコプラズマ生物、ならびに脂質被覆ウィルスを含むがそれらに限定されない微生物に対する活性を含む。
【0028】
用語「含む」およびその変形は、これらの用語が本説明および特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を持たない。
【0029】
本明細書で用いるところでは、単数形(「a」、「an」、「the」)、「少なくとも1つの」、および「1つもしくはそれ以上の」は同義的に使用される。
【0030】
また本明細書では、終点による数値域の列挙は、当該範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0031】
本発明の上記の概要は、本発明のそれぞれの開示された実施形態またはあらゆる実施を記載することを意図するものではない。次に続く説明は、例示的な実施形態をより具体的に例証する。本出願の全体にわたって幾つかの場所で、手引は例のリストによって提供され、それらの例は様々な組み合わせで用いることができる。それぞれの場合において、列挙リストは代表的な群として役立つに過ぎず、限定的なリストと解釈されるべきではない。本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、抗菌性組成物(その幾つかは濃厚な形態にある)、およびこれらの組成物の使用方法を含む。
【0033】
一実施形態では、濃厚な抗菌性組成物は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらの(エステルかエーテルかどちらかの)アルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された1つもしくはそれ以上の化合物を含む抗菌性脂質成分を含む。組成物は、バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された1つもしくはそれ以上の化合物を含むエンハンサー成分をさらに含む。
【0034】
本発明の組成物は、界面活性剤ならびに風味料および風味マスキング剤をはじめとする他の添加剤をさらに含んでもよい。室温で液体である主要量の抗菌性脂質を含むそれらの組成物にとって、抗菌性脂質は、活性な抗菌性剤および抗菌性組成物の他の成分のための媒体の両方として機能する。
【0035】
本調合物は、微生物によって汚染されているまたは汚染されるかもしれない多種多様な基材を処理するために使用することができる。例えば、本組成物は、スチール、ガラス、アルミニウム、木材、紙、ポリマー材料、フォーマイカ(Formica)、および他のカウンタートップ表面、タイル、セラミックス、ゴム、紙、ならびに綿、ナイロン、ポリプロピレン不織布、およびリンネルのような布地を処理するために使用することができる。食品および医療用途のような、本組成物の他の用途は、2003年9月9日に出願された、出願人の譲受人の同時係属特許出願第10/659,584号明細書および同第10/659,571号明細書に記載されている。本組成物のためのさらに他の用途は歯科用途を含む。
【0036】
抗菌性脂質成分は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された1つもしくはそれ以上の化合物を含む。ある種の実施形態では、抗菌性脂質成分は、多価アルコールの(C7〜C14)飽和脂肪酸エステル(好ましくは、多価アルコールの(C8〜C14)飽和脂肪酸エステル)、多価アルコールの(C8〜C22)不飽和脂肪酸エステル(好ましくは、多価アルコールの(C12〜C22)不飽和脂肪酸エステル)、多価アルコールの(C7〜C14)飽和脂肪族エーテル(好ましくは、多価アルコールの(C8〜C14)飽和脂肪族エーテル)、多価アルコールの(C8〜C22)不飽和脂肪族エーテル(好ましくは、多価アルコールの(C12〜C22)不飽和脂肪族エーテル)、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物であって、該アルコキシル化誘導体が多価アルコールのモル当たり5モル未満のアルコキシドを有する化合物を含む。
【0037】
ある種の実施形態は、(C7〜C14)脂肪酸エステル(好ましくは、(C8〜C14)脂肪酸エステル)、多価アルコールの不飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの不飽和脂肪族エーテル、多価アルコールのモル当たり5モル未満のアルコキシドを有するそれらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態は、ラウリン酸、カプリル酸およびカプリン酸のグリセロールモノエステルおよび/またはラウリン酸、カプリル酸またはカプリン酸のプロピレングリコールモノエステルのような、公知の(C7〜C14)脂肪酸エステル(好ましくは、(C8〜C14)脂肪酸エステル)を含む。
【0038】
脂肪酸エステルは、モノエステルの多くが食品グレード、一般に食品グレードと認められる(GRAS)物質であると報告されてきたし、食品防腐剤および局所薬剤として有効であると報告されてきたので、ヒト病原体の数および食品の腐敗を減らすために、食品および食品に曝される表面を処理するのに特に有用な候補である。例えば、カバラ(Kabara)著、食品保護雑誌(J.of Food Protection)、44(1981)、633−647ページおよびカバラ著、食品安全性雑誌(J.of Food Safety)、4(1982)、13−25ページは、ラウリシジン(LAURICIDIN)(モノラウリンと一般に言われるラウリン酸のグリセロールモノエステル)、食品グレードのフェノール類およびキレート剤が食品保存システムをデザインする際に有用であるかもしれないと報告している。脂肪酸モノエステルは、ペストリーおよびパン生地、アイスクリーム、マーガリン、ならびにサラダドレッシングのような食品で食品グレード乳化剤として50年以上の間使用されてきた。
【0039】
ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、およびヘプタン酸のグリセロールモノエステルおよび/またはラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸およびヘプタン酸のプロピレングリコールモノエステルのような脂肪酸モノエステルは、グラム陽性菌、真菌類、酵母および脂質被覆ウィルスに対して活性であるが、単独ではグラム陰性菌に対して一般に活性ではない。脂肪酸モノエステルが組成物中でエンハンサーと組み合わされる時、組成物はグラム陰性菌に対して活性である。
【0040】
具体的には、本発明の調合物は、肉中の食品経由ヒト病原体の数を減らすことができる。例えば、それらは牛肉、豚肉、鶏肉のような屠殺肉、魚、および屠殺子羊肉を処理するためのスプレーおよび浸漬液として使用することができる。それらはまた、牛ひき肉、豚ひき肉、鶏ひき肉、七面鳥ひき肉、ホットドッグ、ソーセージおよび加工肉食品のような加工肉をさらに処理するためのスプレーおよび浸漬液として使用することもできる。開示される調合物によって殺されるヒト食品経由病原体は、例えば、大腸菌O157:H7、リステリア・モノサイトゲネス、およびサルモネラ血清型(Salmonella serovars)を含む。
【0041】
本発明の調合物はヒト病原体を肉および肉製品から除去するために使用されるだけでなく、それらはまた、ヒト病原体と、腐敗を生み出し、かつ、果物および野菜の品質および貯蔵寿命に悪影響を及ぼす他の病原体とから植物および植物部品のような他の食品を保護するのを助けるために使用することもできる。
【0042】
一般に、組成物中の成分は、全体として、本質的にほとんどの病原性のまたは望ましくない細菌、真菌類、酵母および脂質被覆ウィルスを殺す、またはその数をそれらの許容できるレベルまで減らすために十分な幅のスペクトルを有する抗菌性(抗ウィルス性、抗細菌性、または抗真菌性を含む)活性を提供する。本発明の組成物で、成分の濃度または量は、別々に考えられる場合、許容できるレベルまで殺さないかもしれないし、またはそれほど広いスペクトルの望ましくない微生物を殺さないかもしれないし、またはそれほど速く殺さないかもしれないが、一緒に使用される場合、かかる成分は(同じ条件下に単独で使用される同じ成分と比べて)高められた(好ましくは相乗的な)抗菌活性を提供することが理解されるべきである。
【0043】
当業者は、本発明の組成物がいつ高められたまたは相乗的な抗菌活性を提供するかを、当該技術分野で周知の効力検定および細菌スクリーニング方法を用いて容易に決定するであろう。容易に行われる一効力検定は、大腸菌、ブドウ球菌種(Staphylococcus spp.)、連鎖球菌種(Streptococcus spp.)、シュードモナス種(Pseudomonas spp.)、またはサルモネラ種(Salmonella spp.)のような、選択された公知のまたは容易に入手可能な生菌株を、適切な温度で培地中の予め決定された細菌負担レベルで試験組成物に曝すことを含む。十分な接触時間の後、曝された細菌を含有するサンプルのアリコートが集められ、希釈され、中和され、そして寒天のような培地上にプレートアウトされる(plated out)。細菌のプレート化サンプルは約48時間培養され、プレート上に増殖しつつある生菌コロニーの数がカウントされる。いったんコロニーがカウントされると、試験組成物によってもたらされた細菌の数の減少は容易に測定される。細菌減少は、初期の接種物カウントのlog10と曝露後の接種物カウントのlog10との間の差で求められたlog10減少として一般に報告される。
【0044】
好ましくは、本発明の組成物は、基材上で使用された時にトータル好気性細菌カウントの少なくとも1−log平均減少を実証する。高められた活性と相乗活性とを区別するためにチェッカー盤効力検定を行うことができる。
【0045】
本発明の好ましい組成物は物理的に安定であるかもしれない。本明細書で定義されるところでは、「物理的に安定な」組成物は、23℃で少なくとも3ヶ月間、好ましくは少なくとも6ヶ月間の貯蔵の間にそれらの元の状態から、実質的な沈澱、結晶化、相分離などによって有意に変化しないものである。特に好ましい組成物は、組成物の10ミリリットル(10mL)が15mL円錐状の目盛付きプラスチック遠心分離管(コーニング(Corning))に入れられ、ヘラエウス・セパテック有限責任会社(Heraeus Sepatech GmbH)、西独国オステロード(Osterode,West Germany)によって製造されたラボフーゲ(Labofuge)B、モデル2650(2275×g)を用いて3,000回転毎分(rpm)で10分間遠心分離された時にチューブの底部および最上部に何の目に見える相分離もない場合、物理的に安定である。
【0046】
本発明の好ましい組成物は、良好な化学的安定性を示すかもしれない。これは、例えば、エステル交換をしばしば受け得る抗菌性脂肪酸エステルで特に懸案事項であり得る。好ましい組成物は、50℃で4週間のエージング後に抗菌性脂質成分の少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも92%、さらにより好ましくは少なくとも95%を保持する(3サンプルの平均値)。最も好ましい組成物は、密封容器中50℃で4週間のエージング後に抗菌性脂質の少なくとも平均97%を保持する。
【0047】
パーセント保持率は、完全に同じように調製されたサンプル(好ましくは同じバッチから)に分解を引き起こさない密封容器中でエージングされたサンプル中に残っている量を調製され室温で1〜5日間放置されたサンプル中の実際の測定レベルと比較して、保持された抗菌性脂質成分の量を意味すると理解される。複数部分中にあることを意図される組成物については、抗菌性脂肪酸エステルを含む部分は好ましくは上記の安定性を示す。
【0048】
抗菌性調合物
本発明の抗菌性調合物は、1つもしくはそれ以上の脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、またはそれらのアルコキシル化誘導体、1つもしくはそれ以上のエンハンサー、および任意に1つもしくはそれ以上の界面活性剤を含んでもよい。本組成物は、植物および植物部分、肉および他の食品上でならびに無生物表面上でグラム陰性およびグラム陽性菌、ウィルス、真菌類および真菌胞子をはじめとする微生物のレベルを下げるために使用することができる。本明細書で用いるところでは、「微生物のレベルを下げること」は、微生物増殖を抑制すること、微生物死亡を促進すること、ならびに植物または植物部分、肉および他の食品の表面からならびに無生物表面から微生物を除去することを含む。
【0049】
本発明の好ましい調合物は、組成物が食品への塗布に好適な濃度に水中で混合された時に、6以下のpHを有し、より好ましくは、それらは4.5〜5.5のpHを有する。
【0050】
抗菌性脂質
抗菌性脂質は、抗菌活性の少なくとも一部を提供する組成物の当該成分である。すなわち、抗菌性脂質は、少なくとも1つの微生物に対して少なくとも幾らかの抗菌活性を有する。それは、本発明の組成物の主要な活性成分と一般に考えられる。抗菌性脂質は、1つもしくはそれ以上の多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、もしくはそれらの(エステルおよびエーテルのどちらかもしくは両方の)アルコキシル化誘導体、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。より具体的には、抗菌性成分は、多価アルコールの(C7〜C14)飽和脂肪酸エステル(好ましくは、多価アルコールの(C8〜C14)飽和脂肪酸エステル)、多価アルコールの(C8〜C22)不飽和脂肪酸エステル(好ましくは、多価アルコールの(C12〜C22)不飽和脂肪酸エステル)、多価アルコールの(C7〜C14)飽和脂肪族エーテル(好ましくは、多価アルコールの(C8〜C14)飽和脂肪族エーテル)、多価アルコールの(C8〜C22)不飽和脂肪族モノエーテル(好ましくは、多価アルコールの(C12〜C22)不飽和脂肪族モノエーテル)、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された1つもしくはそれ以上の化合物を含むことができる。
【0051】
多価アルコールの脂肪酸エステルは好ましくは式(R1−C(O)−O)n−R2(式中、R1は(C7〜C14)飽和脂肪酸(好ましくは、(C8〜C14)飽和脂肪酸)、または(C8〜C22)不飽和(好ましくは、ポリ不飽和を含む(C12〜C22)不飽和)脂肪酸の残基であり、R2は多価アルコール(典型的にはグリセリン、プロピレングリコール、またはショ糖)の残基であり、そしてn=1または2である)のものである。R2基は少なくとも1つの遊離のヒドロキシル基(好ましくは、グリセリン、プロピレングリコール、またはショ糖の残基)を含む。多価アルコールの好ましい脂肪酸エステルは、C7、C8、C9、C10、C11、およびC12飽和脂肪酸から誘導されたエステルである。多価アルコールがグリセリンまたはプロピレングリコールである実施形態については、n=1であるが、それがショ糖である時はn=1または2である。
【0052】
模範的な脂肪酸モノエステルは、ラウリン酸(モノラウリン)、カプリル酸(モノカプリリン)およびカプリン酸(モノカプリン)のグリセロールモノエステル、およびラウリン酸、カプリル酸およびカプリン酸のプロピレングリコールモノエステル、ならびにショ糖のラウリン酸、カプリル酸およびカプリン酸モノエステルを含むが、それらに限定されない。模範的な脂肪酸ジエステルは、ショ糖のラウリン酸、カプリル酸およびカプリン酸ジエステルを含むが、それらに限定されない。他の脂肪酸モノエステルは、オレイン(18:1)、リノール(18:2)、リノレン(18:3)、およびアラキドン(20:4)不飽和(ポリ不飽和を含む)脂肪酸のグリセリンおよびプロピレングリコールモノエステルを含む。一般に知られているように、例えば、18:1は、化合物が18個の炭素原子および1個の炭素−炭素二重結合を有することを意味する。
【0053】
ある種の好ましい実施形態では、および食品での使用のための特定のそれら実施形態では、本発明組成物での使用に好適である脂肪酸モノエステルは、GMLまたは商品名ラウリシジン(一般にモノラウリンまたはグリセロールモノラウレートと言われるラウリン酸のグリセロールモノエステル)、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、およびそれらの組み合わせのような、ラウリン酸、カプリル酸、およびカプリン酸の公知のモノエステルを含むであろう。
【0054】
多価アルコールの脂肪族エーテルは好ましくは式(R3−O)n−R4(式中、R3は(C7〜C12)飽和脂肪族基(好ましくは、(C8〜C12)飽和脂肪族基)、または(C8〜C22)不飽和(好ましくは、ポリ不飽和を含む(C12〜C22)不飽和)脂肪族基であり、R4はグリセリン、ショ糖、またはプロピレングリコールの残基であり、そしてn=1または2である)のものである。グリセリンおよびプロピレングリコールについては、n=1であり、ショ糖についてはn=1または2である。好ましい脂肪族エーテルは、(C7〜C12)アルキル基(好ましくは、(C8〜C12)アルキル基)のモノエーテルである。
【0055】
模範的な脂肪族モノエーテルは、ラウリルグリセリルエーテル、カプリルグリセリルエーテル、カプリリルグリセリルエーテル、ラウリルプロピレングリコールエーテル、カプリルプロピレングリコールエーテル、およびカプリリルプロピレングリコールエーテルを含むであろうが、それらに限定されない。他の脂肪族モノエーテルは、オレイル(18:1)、リノレイル(18:2)、リノレニル(18:3)、およびアラコニル(20:4)不飽和およびポリ不飽和脂肪族アルコールのグリセリンおよびプロピレングリコールモノエーテルを含む。本発明組成物での使用に好適である脂肪族モノエーテルは、ラウリルグリセリルエーテル、カプリルグリセリルエーテル、カプリリルグリセリルエーテル、ラウリルプロピレングリコールエーテル、カプリルプロピレングリコールエーテル、カプリリルプロピレングリコールエーテル、およびそれらの組み合わせを含む。
【0056】
前述の脂肪酸エステルおよび脂肪族エーテルのアルコキシル化誘導体(例えば、残存アルコール基上でエトキシル化および/またはプロポキシル化されているもの)はまた、全アルコキレートが比較的低く保たれる限り、抗菌活性を有する。好ましいアルコキシル化レベルは米国特許第5,208,257号明細書(カバラ)に開示されている。エステルおよびエーテルがエトキシル化されているケースでは、エチレンオキシドの全モルは好ましくは5未満、より好ましくは3未満である。
【0057】
多価アルコールの脂肪酸エステルまたは脂肪族エーテルは、通常の技法によって、アルコキシル化、好ましくはエトキシル化および/またはプロポキシル化することができる。アルコキシル化剤は好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびそれらの混合物、ならびに類似のオキシラン化合物よりなる群から選択される。
【0058】
本発明の組成物は、所望の結果を生み出すために好適なレベルで1つもしくはそれ以上の脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、アルコキシル化脂肪酸エステル、またはアルコキシル化脂肪族エーテルを含んでもよい。媒体で希釈された時、抗菌性組成物は、組成物の総重量を基準にして、少なくとも0.01重量パーセント(重量%)、好ましくは少なくとも0.10%、より好ましくは少なくとも1重量%の総量のかかる材料を含むことができる。
【0059】
1つもしくはそれ以上の脂肪酸モノエステル、脂肪族モノエーテル、またはそれらのアルコキシル化誘導体を含む本発明の好ましい組成物はまた、少量のジ−もしくはトリ−脂肪酸エステル(すなわち、脂肪酸ジ−もしくはトリ−エステル)、ジ−もしくはトリ−脂肪族エーテル(すなわち、脂肪族ジ−もしくはトリ−エーテル)、またはそれらのアルコキシル化誘導体を含むことができる。プロピレングリコールのモノエステル、モノエーテル、またはアルコキシル化誘導体については、好ましくは40%以下の二官能性物質が存在する。グリセリンのモノエステル、モノエーテル、またはアルコキシル化誘導体については、好ましくは少量の二−または三−官能性物質が存在するに過ぎない。グリセリンの脂肪酸モノエステルおよび脂肪族モノエーテルのケースでは、組成物中に存在する抗菌性脂質の総重量を基準にして、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらにより好ましくは7重量%以下、さらにより好ましくは6重量%以下、そしてさらにより好ましくは5重量%以下のジエステル、ジエーテル、トリエステル、トリエーテル、またはそれらのアルコキシル化誘導体が存在する。本明細書で用いるところでは、「脂肪族」は、特に明記しない限り、6〜14(奇数または偶数)個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルまたはアルキレン部分を意味する。
【0060】
プロピレン脂肪酸エステルが使用される場合、組成物中のこれらのエステルは、抗菌活性体および別個の媒体として別の水性または非水性溶媒を必要としない媒体の両方として二重の目的を果たすことができる。4℃以上で液体である他の抗菌性脂質もまた、媒体および抗菌活性体の両方として機能することができる。これらの濃厚組成物は、効能を上げ、かつまた、同時に安定な組成物を与え、そして使用のコストを低減するかもしれない。
【0061】
ある種の実施形態では、抗菌性脂質成分は、(C7〜C14)脂肪酸エステル(好ましくは、(C8〜C14)脂肪酸エステル)を含む。ある種の実施形態では、抗菌性脂質成分は、多価アルコールの脂肪族エーテル、そのアルコキシル化誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。
【0062】
ある種の実施形態では、抗菌性脂質成分はグリセロールモノエステルを含まない。
【0063】
ある種の実施形態では、抗菌性脂質成分は、(C7〜C14)脂肪酸エステル(好ましくは、(C8〜C14)脂肪酸エステル)、多価アルコールの不飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの不飽和脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物であって、該アルコキシル化誘導体が多価アルコールのモル当たり5モル未満のアルコキシドを有する化合物を含む。
【0064】
エンハンサー
本発明の組成物は、抗菌活性を高めるためのエンハンサー(好ましくは相乗剤)を含む。エンハンサーは、バクテリオシン、抗菌性酵素、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、糖、糖アルコール、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択されてもよい。好ましいエンハンサーは下に説明される下記のクラスの化合物から選択される。
【0065】
好適なバクテリオシンは、属乳酸菌(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ロイコノストック(Leuconnostoc)、およびペジオコッカス・バクテリオシン(Pediococcus Bacteriocin)をはじめとする、食品生産に使用される乳酸生産菌によって生産されるものを含むことができ、また、C.ネットルス(C.Nettles)およびS.ベアフート(S.Barefoot)著、食品保護雑誌、Vol.56(1993)、No.4、338−356ページに見いだされるかもしれない。かかるバクテリオシンからの例には、ナイシンおよびペディオシン(Pediocin)AcHが挙げられるが、それらに限定されない。バクテリオシンの他の例は、スタフィロコックシン(Staphylococcins)および細菌学レビュース(Bacteriological Reviews)、1976年9月、722−756ページにリストされている他のものをはじめとするグラム陽性菌によって生産される。エンテロシン(Enterocins)AおよびB、コリスチン(Colistin)(ポリマイキシンE(Polymyxin E))、コリシンE1(Colicin E1)およびポリマイキシンB細菌によって生産されるもののような、グラム陽性菌によって生産されるバクテリオシンもまた、エンハンサーとして使用されてもよい。
【0066】
細菌によって生産される好適な抗菌性酵素は、リソスタフィンおよびリゾチーム、ならびに第一級アミノ酸配列で天然タンパク質とは異なるかもしれない、これらの酵素の遺伝子操作または組み換え形を含んでもよい。リソスタフィンの組み換え形の例は、米国特許出願公開第2002/0006406号明細書(リソスタフィン類似体)および米国特許出願公開第2003/0215436A1号明細書(リソスタフィン・ポリマー共役体)に見いだされるかもしれない。
【0067】
鉄結合化合物は、小さなシデロホアと鉄結合タンパク質およびその誘導体との両方を含む。
【0068】
好適な鉄結合シデロホアは、鉄制限状況で細菌によって放出されて第二鉄と錯体をつくり、自然環境中での鉄オキシヒドロキシドの沈澱を防ぐ1000未満ダルトン(典型的には、400〜1000ダルトン)の分子量を有する有機分子を含む。それらは、第二鉄に対して高親和性錯体形成サイトを提供するヒドロキサメートおよびフェノレート誘導体よりなる。かかる分子の例は、細菌によって合成される高親和性第二鉄イオンキレート化剤であり、それは、エンテロケリン(enterochelin)(エンテロバクチン)、ヴィブリオバキチン(vibriobactin)、アングイバクチン(Anguibactin)、パイロケリン(pyochelin)、パイロバーディン(Pyoverdin)、マイコバクチン(Mycobactin)、エクソケリン(Exochelins)、エアロバクチン(Aerobactin)、およびデスフェリオキアミン(Desferrioxamine)を含んでもよいが、それらに限定されない。
【0069】
好適な鉄結合タンパク質は、ラクトフェリンおよびその誘導体、特に、それらから誘導されたペプチド(例えば、ラクトフェリンおよびアクチビンの酵素的切断によって誘導されたラクトフェリシンB、ラクトフェリシンH)を含む。ある種の実施形態では、ラクトフェリンが好ましいエンハンサーである。
【0070】
好適な糖は単糖類および二糖類の両方を含むことができる。好適な単糖類は、マンノース、キシロース、マルトース、ソルボース、ならびにそれらの対応する糖アルコール、マンニトール、キシリトール、マルチトールおよびソルビトールを含むが、それらに限定されない。ある種の好ましい実施形態では、糖は、マンノース、キシロース、マンニトール、キシリトール、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される。ある種の実施形態では、糖はキシリトールおよびグルコースの二糖類である。二糖類については、糖の少なくとも1つは好ましくは、本明細書でリストされる好適な単糖類の1つである。第2の糖単位は、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、ガラクトース、ソルボース、およびソルビトールのような、しかしそれらに限定されない、食品で一般に使用される任意の好適な糖から選択されてもよい。
【0071】
必要ならば様々な組み合わせのエンハンサーを使用できることが理解されるべきである。幾つかの実施形態では、大きな成果をエンハンサーの組み合わせの使用によって得ることができる。
【0072】
本発明のある種の組成物は、異なるクラスの化合物の、少なくとも2つのエンハンサー、および好ましくは少なくとも3つのエンハンサーを含む。例えば、ある種の実施形態は、鉄結合タンパク質、シデロホア、およびそれらと少なくとも1つの異なるクラスの化合物の少なくとも1つの他のエンハンサーとの組み合わせよりなる群から選択されたエンハンサーを含む。
【0073】
あるいはまた、ある種の実施形態は、鉄結合タンパク質、シデロホア、およびそれらと少なくとも2つの異なるクラスの化合物の少なくとも2つの他のエンハンサーとの組み合わせよりなる群から選択されたエンハンサーを含む。かかる他のエンハンサーは、バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択することができる。一実施形態では、エンハンサー成分はナイシンおよびラクトフェリンを含む。一実施形態では、エンハンサー成分はナイシン、ラクトフェリン、ならびに糖および/または糖アルコールを含む。
【0074】
特に様々な非殺菌剤と組み合わせて、ナイシンを含む組成物は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の様々な種に対して高度に活性であることが示されてきた(例えば、米国特許第5,135,910号明細書、同第5,217,950号明細書、および同第5,260,271号明細書を参照されたい)。もっと最近になって、ナイシンの殺菌活性は、キレート化剤の存在下で、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)をはじめとする追加のグラム陰性菌に対して記載された(例えば、米国特許第5,304,540号明細書および同第5,334,582号明細書を参照されたい)。単独ではそれらの殺菌効果の点で次善であるグリセロールモノラウレートおよびナイシンは、属ヘリコバクターの菌株に対して組み合わせて互いの殺菌活性を相互に高める。しかしながら、ナイシンとグリセロールモノラウレートとの調合物は、肉および他の食品に塗布される抗菌性組成物として無効であり得る。ある種の好ましい実施形態では、ナイシンは含まれない。
【0075】
例えば有機酸、キレート剤、フェノール系化合物、またはアルコール(本明細書と同じ日に出願された出願人の同時係属米国特許出願第 号明細書(代理人整理番号第58707US005号)に記載されているような)などの他のクラスのエンハンサー化合物がまた抗菌性組成物に添加されてもよい。好適な有機酸は、例えば、乳酸、酒石酸、アジピン酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、グリコール酸、リンゴ酸、マンデル酸、酢酸、ソルビン酸、安息香酸、およびサリチル酸を含むことができる。ある種の実施形態では、エンハンサー成分は、有機酸とバクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物とを含む。一実施形態では、エンハンサー成分は、有機酸、ラクトフェリン、および糖、糖アルコールのどちらか、または両方を含む。
【0076】
好適なキレート剤は、例えば、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム(スポリックス(SPORIX)酸性ヘキサメタリン酸ナトリウムのような)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩を含むことができる。好適なアルコールは、例えば、エタノール、イソプロパノール、またはオクタノールもしくはデシルアルコールのような長鎖アルコールであることができる。例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、および第三ブチルヒドロキノンのようなフェノール系化合物は、メチル、エチル、プロピル、およびブチルパラベンのような安息香酸誘導体がするように脂肪酸モノエステルの活性を高める。他の好適なエンハンサーは、2003年9月9日に出願された、出願人の譲受人の同時係属特許出願第10/659,584号明細書にリストされているものを含む。ある種の好ましい実施形態では、有機酸エンハンサーは安息香酸であり、フェノール系化合物エンハンサーはメチルパラベン(4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル)である。
【0077】
界面活性剤
本発明の組成物は、組成物を乳化させるための、かつ、表面を湿らせるのを助けて微生物と接触させるのに役立つための界面活性剤を含んでもよい。本明細書で用いるところでは、用語「界面活性剤」は、共有結合している極性領域および非極性領域の両方を有する分子と定義される両親媒性材料を意味する。該用語は、石鹸、洗剤、乳化剤、表面活性剤などを含むことを意味する。界面活性剤は陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、または両性イオン性であることができる。これは多種多様な通常の界面活性剤を含むが、ある種のエトキシル化界面活性剤は抗菌性脂質の抗菌性効能を低下させるまたは排除するかもしれない。これの正確なメカニズムは知られていないが、すべてのエトキシル化界面活性剤がこの負の効果を示すわけではない。例えば、ポロキサマー・ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド界面活性剤は抗菌性脂質成分と適合性であることが示されてきたが、ICIによって商品名トゥイーン(TWEEN)で販売されているもののようなエトキシル化ソルビタン脂肪酸エステルは幾つかの調合物で適合性ではなかった。これらは大まかな一般化であり、活性は調合物依存性であり得る、すなわち、使用される抗菌性脂質およびエトキシル化界面活性剤の両方の選択および量に基づき得ることに留意されるべきである。当業者は、調合物を製造し、そして実施例セクションに記載されているように抗菌活性について試験することによって界面活性剤の適合性を容易に判断することができる。必要ならば様々な界面活性剤の組み合わせを使用することができる。
【0078】
陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤が、抗菌性脂肪酸エステルの好適なエマルジョンを作るために使用されてもよい。例えば、抗菌性調合物は、アシルラクチレート塩、スルホコハク酸ジオクチル塩、ラウリル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、および(C8〜C18)脂肪酸の塩のような陰イオン性界面活性剤を含むことができる。好適な塩はナトリウム、カリウム、またはアンモニウム塩を含む。アシルラクチレートは、例えば、ステアロイル−2−ラクチレート・カルシウムまたはナトリウム、イソステアロイル−2−ラクチレート・ナトリウム、ラウロイル−2−ラクチレート・ナトリウム、カプロイルラクチレート・ナトリウム、ココイルラクチレート・ナトリウム、およびベヘノイルラクチレート・ナトリウムを含む。非イオン性界面活性剤は、デカグリセリルテトラオレエートのようなグリセロールエステル;ユニケマ・インターナショナル(Uniquema International)、イリノイ州シカゴ(Chicago,IL)から商品名スパン(SPAN)20で商業的に入手可能な、ソルビタンモノラウレートのようなソルビタンエステル;およびポリアルキレンオキシドのブロック共重合体、例えば、バスフ(BASF)(ニュージャージー州パーシッパニー(Parsippany,NJ))から商品名プルロニック(PLURONIC)およびテトロニック(TETRONIC)で入手可能なポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含む。スルホコハク酸ジオクチル・ナトリウムは、ファインテックス社(Finetex Inc.)、ノースカロライナ州スペンサー(Spencer,North Carolina)から商品名ジェムテックス(GEMTEX)SC40界面活性剤(イソプロパノール中の40%スルホコハク酸ジオクチル・ナトリウム)で入手可能である。カプロイルラクチレート・ナトリウムは、リタ(RITA)(イリノイ州ウッドストック(Woodstock,IL))から商品名パチオニック(PATIONIC)122Aで商業的に入手可能である。ラウリル硫酸ナトリウムはステパン・ケミカル社(Stepan Chemical Co.)、イリノイ州ノースフィールド(Northfield,IL.)から商業的に入手可能である。
【0079】
本発明の抗菌性組成物での使用に好適であるかもしれない他の界面活性剤は、2003年9月9日に出願された、出願人の譲受人の同時係属特許出願第10/659,584号明細書にリストされている。
【0080】
食品での応用
本発明の調合物は、大腸菌O157:H7;ネズミチフス菌(S.typhimurium)を含むサルモネラ血清型、リステリア菌(例えば、L.モノサイトゲネス)、カンピロバクター(例えば、C.ジェジュニ)、赤痢菌(Shigella)種、およびセレウス菌をはじめとする、食品経由のヒト病原体のレベルを下げるために特に有用である。
【0081】
抗菌性調合物での使用に好適な脂肪酸モノエステルは一般に食品グレード、GRASと考えられ、および/または米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)(FDA)認可食品添加物である。特に、カプリル酸、カプリン酸、もしくはラウリン酸のグリセロールモノエステルおよび/またはカプリル酸、カプリン酸、もしくはラウリン酸のプロピレングリコールモノエステルのようなC7〜C12脂肪酸(好ましくは、C8〜C12脂肪酸)に由来する1つもしくはそれ以上の脂肪酸モノエステルが本発明の調合物で有用であるかもしれない。脂肪酸モノエステルの組み合わせを標的微生物に誂えることができる。例えば、ラウリン酸モノエステルは、植物または植物部分の表面上の真菌類レベルを下げることが望まれる場合、カプリレートモノエステルおよび/またはカプレートモノエステルと組み合わせることができる。
【0082】
本発明で有用なモノグリセリドは典型的には、未反応グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドの混合物の形で入手可能である。従って、高濃度、例えば、60重量%より高いモノグリセリドを含有する材料を使用することが好ましい。幾つかの組成物では、所望の材料は、85重量%または90重量%より高い濃度のモノグリセリドを含有するであろう。特に有用な商業的に入手可能な材料の例には、商品名ラウリシジンでメディ−ケム・ラボラトリーズ(Med−Chem Laboratories)、ミシガン州イースト・ランシング(East Lansing,MI)から入手可能なグリセロールモノラウレート(GML)、それぞれ、商品名ポエム(POEM)M−100およびポエムM−200で理研ビタミン株式会社、日本国東京から入手可能なグリセロールモノカプリレート(GM−C8)およびグリセロールモノカプレート(GM−C10)、ならびに商品名「モノムルス(MONOMULS)90L−12」で独国のヘンケル社(Henkel Corp.of Germany)から入手可能なものが挙げられる。プロピレングリコールモノカプリレート(PG−C8)、プロピレングリコールモノカプレート(PG−C10)、およびプロピレングリコールモノラウレート(PG−C12)は、ユニケマ・インターナショナル、イリノイ州シカゴから入手可能である。
【0083】
食品用途では、エンハンサーは食品グレードであり、GRASリストされており、および/またはFDA認可食品添加物である。本発明でのエンハンサーの量は20.0重量%以下、好ましくは1.0重量%〜10.0重量%である。媒体を含むもののような他の実施形態では、エンハンサーは0.01重量%〜1.0重量%、好ましくは0.01重量%〜0.5重量%を含んでもよい。一つには食品の味覚、食感、色、臭いまたは外観の望ましくない変化または変更を避けるために、より低い濃度のエンハンサーが必要であるかもしれない。使用される特定のエンハンサーに依存して、それはエステルに可溶で安定な場合には濃厚媒体中へ直接調合され得るか、それは好適な溶媒に別々にパックされ得るかのどちらかである。
【0084】
ほとんどの組成物で、食品グレードおよび/またはGRAS界面活性剤は、1.0重量%〜30.0重量%、好ましくは4.0重量%〜12.0重量%の濃厚組成物を提供する量で使用されてもよい。媒体を含む他の実施形態では、組成物は0.001重量%〜1.0重量%、好ましくは0.01重量%〜0.5重量%の界面活性剤濃度を提供してもよい。
【0085】
微生物の増殖を効果的に抑制するために必要とされる前述の成分の濃度は、標的とされる微生物のタイプならびに使用される調合物(例えば、存在する抗菌性脂質、エンハンサー、および界面活性剤のタイプ)に依存する。成分のそれぞれの濃度または量は、別々に考えられる時には、全体としての組成物のように大きなスペクトルの病原性微生物もしくは望まれない微生物を殺さない、それらを迅速に殺さない、またはかかる微生物の数を許容できるレベルまで減らさないかもしれない。このように、調合物の成分は、一緒に使用される場合に、単独でおよび同じ条件で使用される同じ成分と比較された時に高められたまたは相乗的な抗菌活性を肉、植物もしくは植物部分、または他の処理表面に提供する。抗菌活性の許容できるレベルは、食品中もしくは食品上で、または他の表面上で1−log減少を典型的には超える。
【0086】
それぞれの成分の有効量は、本明細書での教示および当該技術分野で公知の効力検定を用いて当業者によって容易に確認することができる。本発明の組成物は調製され、直接使用されてもよいし、または使用前に希釈して非水性もしくは水性の溶液、エマルジョンもしくは懸濁液を調製することができる。溶液または懸濁液を調製するために好適な媒体は、FDAおよび米国環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency)(EPA)のような規制当局に典型的には許容されるものである。特に許容される媒体は、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エタノール、イソプロパノール、およびそれらの組み合わせを含む。あるいはまた、1つもしくはそれ以上の抗菌性脂質が媒体として機能してもよい。
【0087】
好ましい実施形態では、脂肪酸モノグリセリドは、抗菌性調合物の0.001重量%〜30重量%であり、エンハンサーは0.001重量%〜30重量%であり、1つもしくはそれ以上の界面活性剤は0.001重量%〜30重量%である。例えば、使用準備のできた調合物は、0.01重量%〜5.0重量%の脂肪酸モノエステル、0.5重量%〜30重量%のエンハンサー、および0.5重量%〜5.0重量%の界面活性剤を含むことができる。特に、使用準備のできた調合物は、0.2重量%〜2.0重量%の脂肪酸モノエステル、0.1重量%〜25.0重量%のエンハンサー、および0.1重量%〜1.5重量%の1つもしくはそれ以上の界面活性剤を含むことができる。
【0088】
抗菌性調合物の追加の成分は、例えば、蜜蝋、パラフィン、カルナバ、カンデリラおよびポリエチレンワックスのような食品グレードのコーティング材;樹脂、セラック、ウッドロジン、コーンゼインをはじめとする他のコーティング材料;ならびに調合物をUV不活性化または分解から保護する成分、着色剤、香気増強剤、ゴム・トラガカント、ゴム・アカシア、カラギーナン、カーボポール(Carbopol)(ビー.エフ.グッドリッチ(B.F.Goodrich)、オハイオ州クリーブランド(Cleveland,Ohio))、グァーガム、およびセルロースガムのような粘度調整剤;シリコーン消泡剤、例えば、ポリジメチルシロキサン(ダウ・コーニング(Dow Corning)、ミシガン州ミッドランド(Midland,MI))のような消泡剤、固着剤、または天然オイルもしくは人工甘味料のような風味料を含むことができる。
【0089】
食品用途で使用される抗菌性調合物は典型的には、塗布時の上昇した温度で増加した抗菌性能を示す。
【0090】
肉および肉製品の処理
本発明の組成物は、当業者に周知の方法および手順を用いて上記の成分を組み合わせることによって調製されてもよい。例えば、濃厚組成物は、プロピレングリコール脂肪酸エステルを70℃に加熱し、界面活性剤を加え、次に脂肪酸エステルに可溶のエンハンサーを加えて溶液を形成することによって調製される。幾つかの実施形態では、抗菌性脂質は、エンハンサーの塗布とは別個の工程で塗布することができる。
【0091】
本発明の組成物は、加工の様々な段階中に様々な好適なやり方で食品加工工場において使用されてもよい。例えば、本発明組成物は、ビーフ屠殺体、牛肉トリム、牛肉プライマル、またはひき肉のような肉製品にスプレー、リンス、または洗浄液として塗布されてもよい。肉製品はまた組成物中に浸漬されてもよい。さらに、本発明は、組成物が加工工場において異なる段階で使用されるのを可能にする広い有用な温度範囲を有する。例えば、組成物は、ビーフ屠殺体を殺菌するために高温で、ならびに牛ひき肉および牛肉トリムを殺菌するために冷温(4〜5℃)で使用されてもよい。本発明の組成物はまた、米国特許第5,460,833号明細書および同第5,490,992号明細書に開示されている製品および方法でも有用であるかもしれない。
【0092】
植物および植物部分の処理
本発明の調合物を使用すると、植物病原体のレベルは植物および植物部分の表面上で下げられるかもしれず、それは植物および諸物部分の貯蔵寿命を延ばすことができる。植物病原体の非限定的な例には、エルビニア・カロトヴォラ(Erwinia carotovora)、フザリウム(Fusarium)種、ボトリチス(Botrytis)種、フィトプセラ(Phytopthera)種、フォーマ(Phoma)種、ベルチシリウム(Verticilium)種、ペニシリウム(Penicillium)種、およびコレクトトリチュム(Colletotrichum)種が挙げられる。本発明の調合物はまた、植物および植物部分の表面上のペニシリウム真菌類(penicillium fungi)からの胞子のような胞子の生存率を下げるのに有効であるかもしれない。
【0093】
本発明の調合物は、例えば、吹き付け、浸漬、ワイピング、刷毛塗り、スポンジング、パッディングによって植物および植物部分に塗布することができる。調合物は、植物または植物部分の全体外面の一部分または一面に塗布することができる。ほとんどの塗布では、植物または植物部分の全表面は調合物で十分に濡らされる。幾つかの実施形態では、抗菌性脂質は、エンハンサーの塗布とは別個の工程で塗布することができる。
【0094】
調合物は、2℃〜90℃の範囲の温度で塗布することができ、微生物レベルを下げるのに十分な時間(例えば、10秒〜60分間)植物または植物部分の表面と接触する。典型的には、塗布時間は、温度が上がるにつれて減らされる。調合物を40℃〜65℃(例えば、44〜60℃、46〜58℃、48〜56℃、または50〜54℃)に加熱し、まだ暖かい間に表面に塗布すると、植物または植物部分上の微生物レベルを下げるのに特に有効であるかもしれない。同様に、植物または植物部分が調理される場合、本発明の組成物は特に有効であり得る。存在する場合、液体媒体は、例えば、風乾によって植物または植物部分の表面から除去することができる。
【0095】
好適な植物および植物部分は、生の農産物(すなわち、非加工産物)および加工産物を含んでもよい。生の農産物の非限定的な例には、アルファルファ種子、もやし、キュウリ、メロン、タマネギ、レタス、キャベツ、ニンジン、ジャガイモ、ナス、グレープフルーツ、レモン、ライム、およびオレンジのような柑橘類果物、バナナ、パイナップル、キウイ、ならびにリンゴが挙げられる。加工産物は、引き裂かれた、スライスされた、チョップにされた、細かく切られた、またはミンチにされた果物または野菜、ならびに果物または野菜から得られたジュースを含む。
【0096】
例えば、オレンジのような果物は、本発明の抗菌性調合物で処理し、風乾し、次に食品グレード・ワックスでコートすることができる。これは、抗菌性調合物がオレンジと食品グレード・コーティングとの間に入れられたオレンジを生み出す。あるいはまた、抗菌性調合物および食品グレード・コーティングは、塗布前に混合することができる。別の代替案では、食品グレード・ワックスがオレンジのような果物に塗布され、次に果物をワックス一面上に抗菌性組成物で処理することができる。これらは水性分散系として都合よく塗布されてもよい。好適なワックスは蜜蝋、パルミチン酸セチルなどである。
【0097】
本発明の組成物はまた、国際公開第200143549A号パンフレットに開示されている製品および方法でも有用であるかもしれない。
【0098】
それらはまた、食品加工装置、医療デバイス、クロス、紙、または殺菌活性が望まれる任意の表面を処理するのに有用であるかもしれない。
【0099】
歯科用途
本発明は、抗菌性歯科組成物ならびに該組成物の使用および製造方法を提供する。かかる組成物は、原因となる細菌種の効果的な低減、防止または排除によってもたらされる、虫歯または歯周病のような口腔疾患の処置に有用である。典型的には、組成物は口腔硬組織または軟組織に局所的に塗布され、口腔硬組織を修復するために使用される組成物である。口腔硬組織は歯組織(例えば、エナメル質、象牙質、およびセメント質)および骨を含む歯組織表面を含む。口腔軟組織は粘膜組織、すなわち、粘膜を含む。かかる組成物は、微生物、特に細菌、真菌類、およびウィルスの有効な低減、防止、または排除を提供することができる。ある種の実施形態では、本発明の歯科組成物は幅広いスペクトルの活性を有する。
【0100】
本発明のある種の歯科組成物は、有効な局所的抗菌活性を提供し、従って口腔組織または歯科材料上の微生物(ウィルス、細菌、真菌類、マイコプラズマ、および原虫を含む)によって引き起こされるまたは悪化させられる状態の局所的な処置および/または予防に有用である。重要なことには、本発明のある種の実施形態は、微生物耐性を引き起こす非常に低い可能性を有する。従って、かかる組成物は、口腔面感染症を処置するためにまたは望まれない細菌を絶滅させるために、1つもしくはそれ以上の日にわたって複数回塗布することができる。さらに、本発明の組成物は、抗菌耐性を引き起こす恐れなしに同じ患者への複数処置養生法のために使用することができる。
【0101】
口中で使用され、次に口腔外で取り扱われるデバイスの感染予防に好適な歯科組成物もまた本発明の範囲内である。
【0102】
本発明の歯科組成物は、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体などのような1つもしくはそれ以上の抗菌性脂質成分を含む。脂肪酸モノエステルが好ましい材料である。好ましい脂肪酸モノエステルは、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプレート、プロピレングリコールモノカプリレート、およびそれらの組み合わせを含む。
【0103】
ある種の好ましい歯科組成物は、有機酸(例えば、安息香酸)、糖(キシロースおよびマンノースのような)、糖アルコール(キシリトールのような)、バクテリオシン(ナイシンのような)、タンパク質(ラクトフェリンのような)およびそれらの組み合わせよりなる群から選択されたエンハンサーまたは相乗剤を含有する。含まれ得る他の成分は、界面活性剤(スルホコハク酸ジオクチル・ナトリウム)、親水性成分(グリコール、低級アルコールエーテル、短鎖エステル、およびそれらの組み合わせのような)、ならびに疎水性成分である。組成物は、濃厚な形でまたは使用前に水性媒体か非水性媒体かのどちらかにさらに組み合わせられて使用されてもよい。
【0104】
本発明のさらなる態様は、患部中のいかなる残留カリエス細菌も効果的に排除する、カリエス病変の化学−機械的または酵素的除去のための歯科組成物である。幾つかの実施形態では、別個の抗菌性組成物は、化学−機械的、酵素的または純粋に機械的方法によるカリエス病変の除去後に塗布することができる。
【0105】
本発明の抗菌性組成物は、口中の有害な細菌、例えば、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)の濃度を下げるためにスプレー、ウォッシュ、リンス、液体、ペースト、または粉末の形で使用されてもよい。かかる歯科製品は、オーラルリンス液(例えば、うがい薬)、口洗浄液、再鉱化液などを含むが、それらに限定されない。別の態様では、組成物は、歯口清掃、例えば、予防ペースト、予防粉、サブ歯茎洗浄液などのために使用することができる。口腔硬組織上への直接使用のための組成物は、歯磨剤(例えば、練り歯磨き)、義歯接着剤、およびエッチング液を含む。
【0106】
本発明の組成物はまた、例えば、歯科印象トレー、歯科用器具、デンタルフロス、つまようじ、デンタルテープ、歯科充填材(例えば、繊維)などのような、歯科物品ならびに歯科装置の抗菌保護を提供するために使用されてもよい。
【0107】
製品
本発明の調合物はキットへパックすることができる。幾つかの抗菌性脂質は、特にエンハンサーの存在下で本質的に反応性であることができる。例えば、脂肪酸モノエステルは水性媒体中で対応する脂肪酸へ加水分解する、ヒドロキシ含有エンハンサー(例えば、乳酸)とエステル交換する、またはヒドロキシ含有溶媒とエステル交換することができる。選ばれた成分に依存して、液体組成物の抗菌活性が低下し、貯蔵寿命は1年未満に短縮されるかもしれない。
【0108】
従って、調合物は、安定性を上げるために二部分システム(キット)に好都合にもパックされてもよい。二部分システムの一例では、エンハンサーを除いて、調合物の全成分が1容器中に存在するが、エンハンサーは別個の容器中に存在する。別の例では、第1容器はプロピレングリコール脂肪酸エステルに可溶なエンハンサーをはじめとする、組成物の成分すべてを含有するであろうが、第2容器は第2エンハンサーを収納する。各容器からの内容物は一緒に混合され、塗布可能な食品または表面を処理する前に希釈されてもよい。
【0109】
幾つかの実施形態では、抗菌性調合物は、様々な成分を貯蔵するための別個の区画を有するたった一つの容器中にパックされ、すなわち、エンハンサーは1区画中にあり、抗菌性脂質、および任意に1つもしくはそれ以上の界面活性剤、ならびに第2エンハンサーは同じ容器の第2区画中にある。かかる2区画容器は典型的には、2つの区画の間に壊れやすいまたは移動可能な間仕切りを用いる。間仕切りは次に混合を可能にするために破壊するか移動するかのどちらをすることができる。あるいはまた、容器は、各区画からの内容物の一部が各区画の全内容物を混合することなく取り出されるように配置構成される。2区画容器の説明については、例えば、米国特許第5,862,949号明細書、同第6,045,254号明細書および同第6,089,389号明細書を参照されたい。
【0110】
特に明記されない限り、本明細書で用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものに類似のまたは同等の方法および材料は本発明を実践するために用いることができるが、好適な方法および材料は下に記載される。不一致のケースでは、定義を含む本明細書が支配するであろう。さらに、材料、方法、および実施例は例示的であるに過ぎず、限定的であることを意図されない。本発明は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない、次の実施例でさらに説明される。
【実施例】
【0111】
次の実施例は、本発明の実践に関連したさらなる詳細および実施形態を提供することを意図される。次の実施例は本発明の理解に役立つ例示目的のために提供され、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。すべての材料は、特に明記しないまたは明らかでない限り、商業的に入手可能である。実施例ですべての部、百分率、比などは、特に明記しない限り重量による。
【0112】
【表1】

【0113】
実施例1〜4および比較例C1〜C8:硬表面での抗菌性効能
コンセントレート1を、94重量部のPGMC8および6重量部DOSSを混合することによって調製した。実施例溶液を調製するために、それぞれ、マンニトールまたはラクトフェリンまたはナイシンまたはコリスチンと共にコンセントレート1を水中0.5〜1重量%に希釈することによって実施例溶液を調製した。混合割合を、様々なエンハンサーについて表1および表2に示す。溶液を乳状エマルジョンが形成するまで振盪した。エマルジョン液を製造後直ちに使用した。すべての最終溶液のpH値は4.5〜5の範囲にあった。比較例をエンハンサーか抗菌性脂質かのどちらかが存在しない状態で同じように調製した。
【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【0116】
接種物および試験手順
AOAC(公認分析化学者協会)公定法(AOAC公定法991.49,6.2.05):緑膿菌に対する殺菌剤の試験手引(Testing guidance Disinfectants Against Pseudomonas aeruginosa)からの手順をシュードモナス(ATCC9027)に対する殺菌剤を試験するために用い、AOAC公定法955.15:黄色ブドウ球菌に対する殺菌剤の試験(Testing Disinfectants against Staphylococcus aureus)をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicilum Resistant Staphylococcus Aureus)(MRSA)(ATCC#33593)に対する殺菌剤を試験するために使用した。初期接種物:シュードモナス:8.00 log(ミリリットル(mL)当たり1×108コロニー形成単位(CFU));MRSA 8 log(1×108CFU/mL)。
【0117】
この試験では、中空ガラスシリンダー(ペニシリンダー)をチャレンジ細菌でコートした。細菌をペニシリンダー上で1時間(hr)乾燥させた。乾燥細菌付きペニシリンダーを実施例調合物中へ24時間浸漬し、取り出し、中和剤溶液(D/E中和ブロス)中へ30秒間入れ、次にトリプチックソイブロス(TSB)含有ガラス管中へ24時間入れた。24時間の終わりに、ペニシリンダーを含有する管を濁度について評価し、増殖か増殖なしかのどちらかを記録した。調合物当たり10個の中空ガラスシリンダーを試験した。10管のうちどれも何の増殖も示さなかった場合、調合物を「合格」と格付けした。10管のうち2以上の管が増殖を示した場合、調合物を「不合格」と格付けした。
【0118】
【表4】

【0119】
【表5】

【0120】
実施例5〜7および比較例C9〜C10:牛ひき肉の処理
牛ひき肉処理のための追加のエンハンサーとしてラクトフェリンおよびナイシンを使用する抗菌性効能を評価した。
【0121】
牛ひき肉上での天然細菌カウントの測定
食料品店から購入した牛ひき肉を、それぞれ99ミリリットル(mL)のレセーンブロス(Letheen Broth)(VWRサイエンティフィック(VWR Scientific)、イリノイ州バタヴィア(Batavia,IL))と共に11グラム(11g)部分の牛ひき肉を別個のフィルター付きホモジナイザー袋(Homogenizer Bag)#6469(3M、ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))中へ入れ、実験室ブレンダー・ストマッカー(Stomacher)400(テックマー(Tekmar)、オハイオ州シンシナチ(Cincinnati,OH))中で1分間混和させることによって天然細菌カウントについて直ちに試験した。一連の10倍順次希釈をレセーンブロスで行った。サンプルを、ペトリフィルム腸内細菌科(PETRIFILM Enterobacteriaceae)カウント・プレート(EB)(3M、ミネソタ州セントポールから入手可能な)およびペトリフィルム好気性カウント(Aerobic Count)(AC)プレート(3M、ミネソタ州セントポールから入手可能な)上で平板培養した。ペトリフィルム・プレートを35℃で24±2時間培養し、添付文書に推奨されているようにカウントした。プレートのカウント範囲(ペトリフィルムACプレート当たり25〜250CFUおよびペトリフィルムEBプレート当たり15〜100CFU)内にあったカウントのプレートを分析のために使用した。
【0122】
調合物調製および肉処理
抗菌性脂質のコンセントレート(コンセントレート2)を、下の表5にリストする成分をガラス容器中へ加えることによって作った。容器をホットプレート上で50〜80℃に加熱し、加熱中に溶液を絶えず撹拌した(磁気かプロペラ撹拌システムかのどちらかによって)。均一で透明な単相液体が生じるまで溶液を混合した。このコンセントレートを牛ひき肉サンプルを処理するために使用した。
【0123】
【表6】

【0124】
牛ひき肉サンプルを二部分システム(部分Aおよび部分B)で処理した。部分Aは、水で40重量%に希釈したコンセントレート2よりなり、部分Bは、10重量%ラクトフェリンか1.6重量%ナイシンかのどちらかを水中に、または10重量%ラクトフェリンおよび1.6重量%ナイシンの両方を水中に溶解することによって作った水性エンハンサー溶液よりなった。
【0125】
秤量した量の牛ひき肉を、櫂混合ヘッドを備えたキッチン−エイド(KITCHEN−AID)ミキサー中へ加えた。部分B溶液を、スプレーノズルに連結された圧力ポット(23℃)に入れた。櫂ミキサーで混合しながら溶液をミキサー中に含有される牛ひき肉(5℃)中へスプレーした。スプレーされた肉は約2.5重量%の水溶液を含有した。これは、0.25重量%ラクトフェリンおよび/または0.04重量%ナイシン(800IU)を1.5分(min)で牛ひき肉に配送した。次にサンプルに部分A(40重量%コンセントレート2)をスプレーした。スプレーされた肉は約2.5重量%水溶液(肉サンプル中へ配送された1重量%コンセントレート2)を含有した。全混合時間は3分であった。処理された牛ひき肉サンプルを冷蔵庫に再び入れた。5セットの処理剤を上記の吹き付け手順でひき肉に塗布した。スプレーおよび混合後に、各処理剤について肉中の最終重量パーセントは下の表6にリストする通りであった。
【0126】
【表7】

【0127】
何の色変化も貯蔵過程にわたってこれらのサンプルのいかなるものにも観察されなかった。24時間後に、牛ひき肉の11gアリコートを秤り取り、サンプル袋に加えられる99mLのレセーンブロスと共にフィルター付きホモジナイザー袋中へ入れた。袋中のサンプルを、肉からの細菌の除去を支援するために30秒間混和させた。混和溶液を、1mLを9mLレセーンブロス中へ移すことによって順次さらに10倍希釈した。各希釈液を、媒体としてペトリフィルムACおよびペトリフィルムEBを用いて分析した。プレートのカウント範囲(ペトリフィルムACプレート当たり25〜250CFUおよびペトリフィルムEBプレート当たり15〜100CFU)内にあるカウントのプレートを分析のために使用した。結果をlog10に変換し、反復試験値を平均した。処理肉サンプルの結果を、処理のlog減少を求めるために類似の未処理肉サンプルの結果から差し引いた。表7は上記の試験から得られたデータを示す。
【0128】
【表8】

【0129】
同じ実験を異なるバッチの肉で3回繰り返し、同様な結果を観察した。表7の実施例は、牛ひき肉で4℃で、3つのエンハンサー(カルボン酸、バクテリオシン、鉄結合タンパク質)がかなりの抗菌性効能を提供することを示す。これは感覚特性に影響を及ぼすことなく肉の貯蔵寿命を延ばすことが期待されよう。
【0130】
実施例8
実施例5を次の書き留められる違いで繰り返した。扇型ノズル付き加圧スプレイヤー(スプレイヤー・システムズ社(Sprayer Systems Co.)、イリノイ州ホイートン(Wheaton,IL))を用いた。キッチン−エイド・ミキサーが、部分A(未希釈)と部分B(ラクトフェリンおよびナイシンの両方を含有する)との組み合わせを低混合設定で合計3分間櫂付属部品でブレンドした。エンハンサー、部分Bを最初の1.5分の混合中に30mL/分のスプレー速度で先ず配送した。部分A、コンセントレート2をこのケースでは希釈せず、混合を追加の1.5分(min)間継続しながら7.5mL/分のスプレー速度で配送した。1重量%のコンセントレート2および4重量%エンハンサー溶液を肉に配送するために十分なエンハンサーおよび抗菌性脂質を加えた。初期の天然細菌は、ペトリフィルムACで検知されて、40〜80カウント/グラムであった。処理の10分後に、天然細菌は検知されなくなった。
【0131】
実施例9〜28および比較例C11〜C15
ヒト口腔で潜在的な実用性を有する、抗菌性液体組成物(実施例9〜28および比較例C11〜C15)を、表8および9にリストする成分を組み合わせることによって調製した。各液体組成物は、溶媒システムとしての水(0.5重量%プルロニックP65界面活性剤入り)、2つの脂肪酸モノエステル(PGMC8およびGMLC12)、アニオン界面活性剤(DOSS)、任意に有機酸エンハンサー(安息香酸)、およびショ糖、キシリトール、ラクトフェリン、およびナイシンを含む群から選択されたエンハンサーを含有した。第2エンハンサーなしの(すなわち、有機酸エンハンサーのみの)組成物は対照(文字Cで明示される)と考えた。
【0132】
【表9】

【0133】
【表10】

【0134】
評価および結果
抗菌性組成物(実施例9〜28および比較例C11〜C15)を、下記のような抗細菌性(Antibacterial)(ストレプトコッカス・ミュータンス)殺傷率試験方法(Kill Rate Test Method)に従って抗細菌活性について評価した。結果を表10に提供する。
【0135】
抗細菌性(ストレプトコッカス・ミュータンス)殺傷率試験方法
脳心臓浸出液(BHI)ブロス中108CFU/mLでの0.1mLのS.ミュータンス(ATCC#25175)のサンプルを、水中所与濃度での19.9mLの液体試験抗菌性サンプルと予め定めた時間(それぞれ0.5分、2分、5分、および10分間)混合した。予め定めた時間混合した後直ちに、1.0mLのサンプルをフラスコから9.0mLレセーンブロス(VWRサイエンティフィック、イリノイ州バタヴィア)を含有する試験管中へ移してサンプル中に存在するかもしれない脂肪酸モノエステルおよび安息香酸成分のために中和した。ヴォルテックス(Vortex)ミキサーを十分な混合のために用い、生じた溶液を10-1希釈と称した。1.0mLアリコートを10-1希釈から9.0mLレセーンブロスを含有する第2チューブ中へ移し、上記のように混合して10-2希釈と称される溶液を与えた。10-1希釈および10-2希釈のそれぞれからのアリコート(0.1mL)を正副2通りにプレートアウトし、ペトリ皿プレート上でホッケー−スチック塗布機を使って羊血液寒天上に板状に広げて各それぞれのプレート上で10-2および10-3濃度を与えた。ペトリ皿を37℃で96時間好気培養し、引き続きコロニー形成単位(CFU)の数をカウントした。この情報を用いて試験サンプルの指定濃度でのS.ミュータンスに対する殺傷率をコンピューター計算した。
【0136】
【表11】

【0137】
表10のデータから、一般に、有機酸エンハンサー(安息香酸)を含有する抗菌性組成物ならびに有機酸エンハンサーおよびエンハンサーの両方を含有する抗菌性組成物が最高レベルのS.ミュータンスlog減少を示したと結論することができる。
【0138】
本発明への様々な修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかになるであろう。本発明は本明細書に記載される例示的実施形態および実施例によって不当に限定されることを意図されないこと、ならびに本発明の範囲が次の通り本明細書に記載される特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図されて、かかる実施例および実施形態はほんの一例として提示されることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分と、
鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分と
を含む抗菌性組成物。
【請求項2】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗菌性脂質成分が(C7〜C14)脂肪酸エステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記エンハンサー成分が少なくとも1つの異なるクラスの化合物の少なくとも1つの他のエンハンサーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記エンハンサー成分が少なくとも2つの異なるクラスの化合物の少なくとも2つの他のエンハンサーをさらに含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記エンハンサー成分がバクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択されたエンハンサーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記エンハンサー成分がナイシンおよびラクトフェリンまたはそれらの誘導体を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記エンハンサー成分がナイシン、ラクトフェリン、および糖、糖アルコールのどちらか、または両方を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
トータル好気性細菌カウントの少なくとも1−log平均減少を実証する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
歯科組成物の形態にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分と、
有機酸またはフェノール系化合物とバクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物とを含むエンハンサー成分と
を含む抗菌性組成物。
【請求項12】
前記エンハンサー成分が有機酸、ラクトフェリン、および糖、糖アルコールのどちらか、または両方を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記糖が単糖類または二糖類である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記糖がマンノース、キシロース、マルトース、ソルボース、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された単糖類である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記糖アルコールがマンニトール、キシリトール、マルチトール、ソルビノール、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記有機酸エンハンサーが安息香酸である、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
界面活性剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗菌性脂質成分が(C7〜C14)脂肪酸エステルを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
歯科組成物の形態にある、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
(C7〜C14)脂肪酸エステル、多価アルコールの不飽和脂肪酸エステル、多価アルコールの飽和脂肪族エーテル、多価アルコールの不飽和脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分であって、該アルコキシル化誘導体が多価アルコールのモル当たり5モル未満のアルコキシドを有する抗菌性脂質成分、ただし、該抗菌性脂質がグリセロールモノエステルを含まない抗菌性脂質成分と、
バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分と
を含む抗菌性組成物。
【請求項21】
前記エンハンサー成分が糖、糖アルコール、またはそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記エンハンサー成分がナイシンを含まない、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記エンハンサー成分がラクトフェリンを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
界面活性剤をさらに含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗菌性脂質成分が(C7〜C14)脂肪酸エステルを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
前記抗菌性脂質成分が多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項27】
トータル好気性細菌カウントの少なくとも1−log平均減少を実証する、請求項20に記載の組成物。
【請求項28】
歯科組成物の形態にある、請求項20に記載の組成物。
【請求項29】
前記抗菌性脂質成分が主要量で組成物中に存在する、請求項20に記載の組成物。
【請求項30】
多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分、ただし、グリセロールモノエステルを含まない抗菌性脂質成分と、
マンノース、キシロース、マンニトール、キシリトール、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分と
を含む抗菌性組成物。
【請求項31】
多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分、ただし、グリセロールモノエステルを含まない抗菌性脂質成分と、
バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分と
を含む抗菌性組成物であって
組成物のpHが6以下である組成物。
【請求項32】
多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む抗菌性脂質成分を含む第1容器と、
バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含むエンハンサー成分を含む第2容器と
を含む抗菌性キット。
【請求項33】
請求項1に記載の組成物の使用方法であって、請求項1に記載の組成物を表面に塗布する工程を含む方法。
【請求項34】
前記表面が肉、肉製品、植物、および植物部分よりなる群から選択された基材の表面である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記表面が布地、ガラス、ポリマー表面、金属、木材、およびゴムよりなる群から選択された無生物基材の表面である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記表面が哺乳類の皮膚または髪の表面である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記表面が哺乳類の口腔内の表面または歯科製品の表面である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
哺乳類の口腔内の前記表面が歯系組織表面である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物を基材に塗布する前に該組成物を媒体で希釈する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
請求項11に記載の組成物の使用方法であって、請求項11に記載の組成物を表面に塗布する工程を含む方法。
【請求項41】
前記表面が肉、肉製品、植物、および植物部分よりなる群から選択された基材の表面である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記表面が布地、ガラス、ポリマー表面、金属、木材、およびゴムよりなる群から選択された無生物基材の表面である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記表面が哺乳類の皮膚または髪の表面である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記表面が哺乳類の口腔内の表面または歯科製品の表面である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
哺乳類の口腔内の前記表面が歯系組織表面である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物を基材に塗布する前に該組成物を媒体で希釈する工程をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
請求項20に記載の組成物の使用方法であって、請求項20に記載の組成物を表面に塗布する工程を含む方法。
【請求項48】
前記表面が肉、肉製品、植物、および植物部分よりなる群から選択された基材の表面である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記表面が布地、ガラス、ポリマー表面、金属、木材、およびゴムよりなる群から選択された無生物基材の表面である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記表面が哺乳類の皮膚または髪の表面である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記表面が哺乳類の口腔内の表面または歯科製品の表面である、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
哺乳類の口腔内の前記表面が歯系組織表面である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組成物を基材に塗布する前に請求項47に記載の組成物を媒体で希釈する工程をさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
請求項30に記載の組成物の使用方法であって、請求項30に記載の組成物を表面に塗布する工程を含む方法。
【請求項55】
請求項31に記載の組成物の使用方法であって、請求項31に記載の組成物を表面に塗布する工程を含む方法。
【請求項56】
基材への抗菌性組成物の塗布方法であって、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、それらのアルコキシル化誘導体、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む主要量の抗菌性脂質成分を該基材に塗布する工程と、
バクテリオシン、抗菌性酵素、糖、糖アルコール、鉄結合タンパク質およびその誘導体、シデロホア、ならびにそれらの組み合わせよりなる群から選択された化合物を含む少量のエンハンサー成分を該基材に塗布する工程と
を含む方法。
【請求項57】
前記エンハンサー成分が前記基材に塗布される前に前記抗菌性脂質成分が該基材に塗布される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記エンハンサー成分が前記基材に塗布された後に前記抗菌性脂質成分が該基材に塗布される、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記抗菌性脂質成分およびエンハンサー成分が、少なくとも60%脂肪酸モノエステルを含有する主要量のプロピレングリコール脂肪酸エステルと、少量のエンハンサーと、任意に界面活性剤とを含む使用準備のできた調合物であって、該プロピレングリコール脂肪酸エステルの濃度が該使用準備のできた調合物の30重量%より多く、かつ、該エンハンサーの濃度が該使用準備のできた調合物の0.1重量%〜30重量%である調合物の形で塗布される、請求項56に記載の方法。

【公表番号】特表2007−505125(P2007−505125A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526258(P2006−526258)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/029241
【国際公開番号】WO2005/022998
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】