説明

押釦スイッチ用カバー部材

【課題】 ELシートの発光領域における輝度の低下または不点灯の要因を低減させる。
【解決手段】 下部周縁にフランジ部11aが形成されたキートップ部11と、このキートップ部11の下方側に形成され、キートップ部11を下方側から照光するためのELシート14と、ELシート14の下方側に形成される弾性ゴム部16と、この弾性ゴム部16の底面から下方側に突出する押圧部16aとを備える押釦スイッチ用カバー部材10において、ELシート14を構成する透明電極141(ITO)と発光層143との間、かつ、キートップ部11に含まれるフランジ部11aの外周の直下部分および押圧部16aの直上部分に、ITOを含有する樹脂からなるITO接着層142を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光機能を有する電子機器に用いる押釦スイッチ用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯電話機等の入力部に用いられる押釦スイッチ用カバー部材には、暗所での視認性を確保するために、キートップ部を照光するための照光機能が備えられている。これにより、ユーザが暗所で携帯電話機を使用した場合であっても、各押釦の機能を容易に認識することができる。
【0003】
下記特許文献1には、上述した照光機能を実現するための部材としてEL(エレクトロルミネッセンス)シートが用いられた照光式押釦スイッチ用部材に関する技術が開示されている。ここで、ELシートは、一般に、透明電極、発光層、誘電体層および対向電極により構成されている。そして、上記特許文献1に記載されたELシートでは、透明電極がITO(酸化インジウム・スズ)により形成されている。また、上記特許文献1に記載されたキートップ部の下部周縁にはフランジが設けられている。さらに、ELシートの下面に形成された弾性シートには、接点部材の皿バネを押圧するための押圧部が設けられている。
【特許文献1】特開2004−193060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された押釦スイッチ用カバー部材では、キートップ部が押下されると、押下時の応力がフランジの外周部分および押圧部に集中する。すなわち、キートップ部が押下されると、押下時の応力によって、フランジの外周の直下部分および押圧部の直上部分にあるELシートには、他の部分よりも大きな衝撃が加わり、ELシートが大きく変形する。これに対して、ITOは金属酸化物であり、接着性に乏しいうえ、さらにITOが形成される樹脂フィルムが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載する。)フィルムである場合には、PETフィルム自体がいわゆる難接着材料となる。それゆえ、ELシートの透明電極がITOにより形成される場合には、透明電極と発光層との間の接着性が必然的に低くなる。
【0005】
したがって、上記特許文献1に記載された押釦スイッチ用部材を用いた押釦スイッチにおいては、キートップ部が繰り返し押下されることによって、透明電極と発光層との間に層間剥離が生じるおそれがある。透明電極と発光層間に層間剥離が生じてしまうと、ELシートの発光領域の一部または全部が、輝度の低下または不点灯状態に陥る要因になる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、ELシートの発光領域における輝度の低下または不点灯の要因を低減させる押釦スイッチ用カバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材は、キートップ部の下方側に形成され、キートップ部を下方側から照光するためのELシートと、ELシートの下方側に形成される弾性ゴム部と、を備え、ELシートは、少なくとも透明電極、発光層、誘電体層および対向電極を有し、透明電極は、ITOにより形成され、ELシートの透明電極と発光層との間には、少なくともキートップ部の外周の直下部分(例えば、キートップ部にフランジ部が形成されている場合には、キートップ部に含まれるフランジ部の外周の直下部分)に、透光性を有する樹脂を主成分とする接着層が形成されることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、少なくともキートップ部の外周の直下部分(例えば、キートップ部にフランジ部が形成されている場合には、キートップ部に含まれるフランジ部の外周の直下部分)にあるELシートの透明電極と発光層との間に接着層が形成されるため、キートップ部が繰り返し押下された場合であっても、キートップ部の押下時に応力が集中するキートップ部の外周の直下部分にあるELシートの透明電極と発光層との間で発生し得る層間剥離を防止することができる。ひいては、ELシートの発光領域における輝度の低下または不点灯の要因を低減させることができる。
【0009】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材は、キートップ部の下方側に形成され、キートップ部を下方側から照光するためのELシートと、ELシートの下方側に形成される弾性ゴム部と、弾性ゴム部の底面から下方側に突出する突出部と、を備え、ELシートは、少なくとも透明電極、発光層、誘電体層および対向電極を有し、透明電極は、ITOにより形成され、ELシートの透明電極と発光層との間には、少なくとも突出部の直上部分に、透光性を有する樹脂を主成分とする接着層が形成されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、少なくとも突出部の直上部分にあるELシートの透明電極と発光層との間に接着層が形成されるため、キートップ部が繰り返し押下された場合であっても、キートップ部の押下時に応力が集中する突出部の直上部分にあるELシートの透明電極と発光層との間で発生し得る層間剥離を防止することができる。ひいては、ELシートの発光領域における輝度の低下または不点灯の要因を低減させることができる。
【0011】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材において、上記接着層は、発光層の上面全体に形成されることが好ましい。このようにすれば、発光層の上面に形成される透明電極を、発光層の上面全体に亘って形成される接着層で接着することができるため、接着がより強固なものとなり、層間剥離をより一層防止することができる。また、接着層が、発光層の上面全体に亘って形成されるため、発光ムラや着色ムラをより抑えることができる。
【0012】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材において、上記接着層は、透光性を有する導電粉を含有することが好ましい。このようにすれば、接着層に含有される導電粉が、透明電極としての役割を担うことができるため、透明電極から発光層への電界が、接着層を通過することによって弱められてしまう事態を防止することができる。これにより、接着層が形成されていない場合と同等の発光輝度を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材によれば、ELシートの発光領域における輝度の低下または不点灯の要因を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
まず、図1を参照して、本実施形態における押釦スイッチ用カバー部材(押釦スイッチ用キーパッド)が適用された押釦スイッチについて説明する。図1は、押釦スイッチ1の断面図である。図1に示す押釦スイッチ1は、押釦スイッチ用カバー部材10と、基板部材20とに大別される。
【0016】
押釦スイッチ用カバー部材10は、キートップ部11と、樹脂フィルム13と、ELシート14(EL素子)と、弾性ゴム部16とを備える。キートップ部11と樹脂フィルム13との間、およびELシート14と弾性ゴム部16との間には、それぞれの部材を接着させるための接着層12,15が形成される。
【0017】
キートップ部11の下部周縁には、フランジ部11aが形成される。弾性ゴム部16の底面には、下方側に突出する押圧部16a(突出部)および位置決め用突出部16b(リブ)が形成される。押圧部16aは、後述する金属製皿バネ部材24を押圧するために設けられるものである。位置決め用突出部16bは、押釦スイッチ用カバー部材10が製品に組み込まれた際に、キートップ部11の押下によって、キートップ部11が沈み込んでしまう事態や、隣接したキートップ部11が連動してしまう事態を防止するために設けられるものである。すなわち、位置決め用突出部16bは、キートップ部11の移動方向に対する押釦スイッチ用カバー部材10の位置決めを目的として設けられるものである。また、樹脂フィルム13は、ポリエチレンテレフタレートにより形成される。
【0018】
基板部材20は、回路基板21と、固定接点22,23と、固定接点22および固定接点23を接続するための金属製皿バネ部材24とを備える。なお、固定接点22,23および金属製皿バネ部材24は、必ずしも基板部材20に含ませて構成する必要はなく、基板部材20から独立した接点部材として構成させてもよい。また、固定接点22と固定接点23とを接続する部材は、上述した金属製皿バネ部材24に限られず、可動接点であればよい。
【0019】
次に、図2を参照して、押釦スイッチ用カバー部材10を構成するELシート14について説明する。図2は、押釦スイッチ用カバー部材10におけるフランジ部11aの下部周辺の断面図である。図2に示すように、ELシート14は、透明電極141と、発光層143と、誘電体層144と、対向電極145と、絶縁層146とを有する。透明電極141と発光層143との間には、ITO接着層142(透光性を有する樹脂を主成分とする接着層)が形成される。透明電極141は、ITOにより形成される。
【0020】
ITO接着層142は、キートップ部11に含まれるフランジ部11aの外周の直下部分を含む範囲に形成されるとともに、押圧部16aの直上部分を含む範囲にも形成される。ここで、ITO接着層142が形成される範囲について、図3を参照して具体的に説明する。図3は、フランジ部11aを有するキートップ部11と、ITO接着層142と、押圧部16aとの位置関係をキートップ部11の上方から表した図である。図3に例示するITO接着層142は、フランジ部11aの外周の直下部分を含む範囲と、押圧部16aの直上部分を含む範囲に形成されている。
【0021】
図2に示すITO接着層142は、樹脂フィルム13および発光層143に対して良好な接着性を有する透光性樹脂により形成される。具体的に説明すると、ITO接着層142は、例えば、ITOが分散されたポリエステル系、アクリル系、ウレタン系もしくはフッ素系の樹脂、またはそれらの重合物や、エラストマーからなる材料により形成される。なお、ITO接着層142は、上述した材料に限られず、例えば、金属と架橋するシラン、アルミニウム、チタン系のカップリング剤を、ITO接着層142に添加することや、ITO接着層142および透明電極141に塗布することとしてもよい。また、上述したITO接着層142を形成する樹脂に分散する材料は、ITOに限られない。例えば、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、金、銀、カーボン、金でコーティングされたナノサイズの銀粒子等の透光性を有する導電粉を、上述したITO接着層142を形成する樹脂に分散させてもよい。
【0022】
このように、ITO接着層142にITO等の透光性を有する導電粉を含有することによって、ITO接着層142に導電性を付与させることができる。これにより、ITO接着層142が透明電極141としての役割を担うことができるため、透明電極141から発光層143への電界が、ITO接着層142を通過することによって弱められてしまう事態を防止することができる。したがって、ITO接着層142が形成されていない場合と同等の発光輝度を得ることができる。すなわち、ELシート14の発光領域における輝度の低下や不点灯をより防止することができる。
【0023】
ここで、キートップ部11が押下された場合には、押下時の応力がフランジの外周部分および押圧部16aに集中するため、フランジの外周部分の直下部分にあるELシートと、押圧部16aの直上部分にあるELシートには、他の部分よりも大きな衝撃が加わるとともに、ELシートが大きく変形する。したがって、フランジ部11aの外周の直下部分を含む範囲と、押圧部16aの直上部分を含む範囲とに、上述したITO接着層142を設けることによって、透明電極141と発光層143とが強固に接着されるため、層間剥離を防止することができる。
【0024】
図2に示す発光層143は、例えば、防湿被膜をコーティングした硫化亜鉛等の無機蛍光体粉を、バインダーに分散することにより形成される。バインダーとしては、例えば、フッ素系、ポリエステル系、アクリル系およびエポキシ系の樹脂やゴム、またはこれらの共重合物が該当する。
【0025】
誘電体層144は、例えば、チタン酸バリウム、酸化チタン等の誘電体粉を、バインダーに分散することにより形成される。なお、バインダーは、発光層143に用いられるバインダーと同様である。
【0026】
対向電極145は、例えば、金、銀、銅、ニッケル等の金属もしくは合金、またはカーボンブラック、グラファイト等の導電性フィラーを、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系の樹脂もしくはゴム、またはこれらの共重合物に分散したものからなる導電膜により形成される。
【0027】
絶縁層146は、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ポリカーボネート系、シリコーン系もしくはフッ素系の樹脂やゴム、またはこれらの複合物により形成される。なお、絶縁層146は、必ずしもELシート14に含ませる必要はなく、ELシート14から独立させて形成してもよい。
【0028】
上述した実施形態における押釦スイッチ用カバー部材10によれば、フランジ部11aの外周の直下部分および押圧部16aの直上部分にあるELシート14の透明電極141と発光層143との間にITO接着層142が形成されるため、キートップ部11が繰り返し押下された場合であっても、キートップ部11の押下時に応力が集中するフランジ部11aの外周の直下部分および押圧部16aの直上部分にあるELシート14の透明電極141と発光層143との間で発生し得る層間剥離を防止することができる。ひいては、ELシート14の発光領域における輝度の低下または不点灯の要因を低減させることができる。
【0029】
[実施例]
次に、本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材10(図1参照)の実施例について説明する。
【0030】
最初に、実施例1について説明する。まず、厚さ75μmのPET13上に形成されたITO膜141の上に、ITO粒子を分散させたポリエステル系樹脂(IPS−000:帝国インキ社製商品名)をスクリーン印刷し、ITO接着層142を形成した。このITO接着層142は、キートップ部11に含まれるフランジ部11aの外周の直下部分を含んだ幅1mmの範囲、および押圧部16aの直上部分を含む範囲(押圧部16aの外周よりも1mm広い範囲内)に形成した。
【0031】
次に、ITO接着層142およびITO膜141上に、銀ペースト(ED6022SS:アチソン社製商品名)を塗布して前面補助電極(不図示)を形成した。
【0032】
次に、前面補助電極上に、発光体ペースト(8155N ELミディアム:デュポン社製商品名)を塗布して発光層143を形成した。
【0033】
次に、発光層143上に、誘電体ペースト(8153N EL絶縁体ペースト:デュポン社製商品名)を塗布して誘電体層144を形成した。
【0034】
次に、誘電体層144上に、カーボンペースト(7144 ELカーボン導体ペースト:デュポン社製商品名)を塗布して対向電極145を形成した。
【0035】
次に、対向電極145上に銀ペースト(ED6022SS:アチソン社製商品名)を塗布して対向電極銀(不図示)を形成した。
【0036】
次に、対向電極銀上に絶縁塗料(ED452SS:アチソン社製商品名)をスクリーン印刷して絶縁層146を形成した。これにより、ELシート14がPET13上に形成された。
【0037】
次に、ELシート14の所定の場所に所定の切り欠きを形成し、PET13上に接着剤12を塗布してキートップ部11と接着させ一体化した。
【0038】
最後に、押圧部16aが形成された弾性ゴム16上に接着剤15を塗布し、上記絶縁層146と接着させ一体化した。これにより、ELシート14の発光領域における輝度の低下または不点灯の要因を低減させることができる押釦スイッチ用カバー部材10が得られた。
【0039】
次に、上記実施例1におけるITO接着層142を形成する工程において、ITO粒子を添加していないポリエステル系樹脂をスクリーン印刷した場合に生成される押釦スイッチ用カバー部材を実施例2として得た。また、上記実施例1において、ITO接着層142を形成する工程のみを省略して生成される押釦スイッチ用カバー部材を比較例1として得た。
【0040】
これらの実施例1,実施例2および比較例1を用いて、それぞれの発光状態を、以下の条件により行われた試験の前後で比較した。試験の条件は、無負荷(無発光)状態において、同一形状のキートップを、3kgの荷重で、5万回繰り返して打鍵することである。この条件により試験を行い、この試験の前後におけるそれぞれのキーの発光状態について観察した結果を図4に示す。図4に示すように、比較例1では、試験を行ったことにより、プッシャー部の直上部分にある透明電極と発光層間に剥離が発生し、試験後はプッシャー部の直上部分の全体に亘って不点灯状態に陥った。これに対して、実施例1および実施例2では、試験後も試験前と同様にムラ無く発光している。これにより、本実施形態における押釦スイッチ用カバー部材10によって、ELシートの発光領域における輝度の低下または不点灯の要因が低減されることが実証された。また、透明電極141と発光層143との間に形成される接着層にITOが添付されていない場合であっても、輝度が多少は低くなるものの、ITOが添付された接着層と同様の効果を有することが実証された。
【0041】
[変形例]
なお、上述した実施形態においては、ITO接着層142を、フランジ部11aの外周の直下部分を含む範囲と、押圧部16aの直上部分を含む範囲とに形成しているが、ITO接着層142を形成する範囲はこれに限られない。具体的に説明すると、ITO接着層142は、少なくとも、フランジ部11aの外周の直下部分を含む範囲(図5参照)、または、押圧部16aの直上部分を含む範囲(図6参照)に形成されていればよい。すなわち、ITO接着層142は、キートップ部11が押下されたときに、押下時の応力が集中する部分にあるELシートの透明電極141と発光層143との間に、少なくとも形成されていればよい。また、ITO接着層142を、フランジ部11aの外周の直下部分を含む範囲のみに形成する場合には、形成する範囲をフランジ部11aの直下部分のみに限定することによって、ITO接着層142がキートップ部11を照光するELシート14の発光領域に影響を及ぼしてしまう要因を排除することができる。これにより、輝度の低下や発光色変化を防止することができる。
【0042】
また、ITO接着層142は、発光層143の上面全体に形成されることが、より好ましい。ITO接着層142を発光層143の上面全体に形成することによって、透明電極141と発光層143との接着をさらに高めることができるためである。これにより、透明電極141と発光層143との間に生じ得る層間剥離をより一層防止することができる。また、ITO接着層142が、発光層143の上面全体に亘って形成されるため、発光ムラや着色ムラをより抑えることができる。
【0043】
また、例えば、図7に示すように、キートップ部11の底面に肉盗み11c(凹み部)が設けられているような場合には、フランジ部11aの直下部分を含む範囲と、肉盗み11cを設けるために形成された十字部11bの直下部分を含む範囲とにITO接着層142を設けることとしてもよい。これは、肉盗み11cを形成することにより、キートップ部11とELシート14との接触部分が、フランジ部11aと十字部11bとに減縮されるため、キーが押下されたときには、フランジ部11aおよび十字部11bに応力が集中することになる。したがって、フランジ部11aおよび十字部11bの直下部分にある透明電極141と発光層143との間に剥離が生じやすくなる。そこで、ELシート14と接触するフランジ部11aおよび十字部11bの直下部分にITO接着層142を設けることによって、透明電極141と発光層143との間に発生し得る層間剥離をより低減させることができ、ひいては、ELシート14の発光領域における輝度の低下または不点灯の要因を低減させることができる。
【0044】
また、上述した実施形態においては、押釦スイッチとして、図1および図2に示す押釦スイッチ1を例示しているが、本発明に係る押釦スイッチ用カバー部材が適用される押釦スイッチはこれに限られない。例えば、図8および図9に示す押釦スイッチ2にも適用可能である。図8および図9に示す変形例における押釦スイッチ2が、図1および図2に示す実施形態における押釦スイッチ1と異なる点は、実施形態における押釦スイッチ1では、キートップ部11が接着層12を介して樹脂フィルム13に接着されているのに対し、変形例における押釦スイッチ2では、樹脂フィルム13上に弾性ゴム部17がさらに形成され、キートップ部11が接着層12を介して弾性ゴム部17に接着されている点である。また、変形例における押釦スイッチ2には、実施形態における押釦スイッチ1に形成されている接着層15が形成されていない点についても異なる。この他の押釦スイッチ2の構成要素については、押釦スイッチ1の構成要素と同様であるため、それらの説明については省略する。
【0045】
さらに、上述した実施形態および変形例においては、フランジ部11aが形成されたキートップ部11を有する押釦スイッチ用カバー部材10について説明しているが、本発明は、フランジ部11aが形成されていないキートップ部11を有する押釦スイッチ用カバー部材10にも適用可能である。したがって、この場合におけるITO接着層142は、少なくとも、キートップ部11の外周の直下部分を含む範囲、または、押圧部16aの直上部分を含む範囲に形成されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施形態における押釦スイッチの断面図である。
【図2】実施形態における押釦スイッチ用カバー部材のフランジ部下部周辺の断面図である。
【図3】実施形態におけるフランジ部を有するキートップ部とITO接着層と押圧部との位置関係をキートップ部の上方から表した図である。
【図4】実施例1および実施例2と比較例1におけるキーの発光状態を説明するための図である。
【図5】変形例におけるフランジ部を有するキートップ部とITO接着層との位置関係をキートップ部の上方から表した図である。
【図6】変形例におけるキートップ部とITO接着層と押圧部との位置関係をキートップ部の上方から表した図である。
【図7】変形例における肉盗みが設けられたキートップ部と接着層との位置関係をキートップ部の上方から表した図である。
【図8】変形例における押釦スイッチの断面図である。
【図9】変形例における押釦スイッチ用カバー部材のフランジ部下部周辺の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1,2・・・押釦スイッチ、10・・・押釦スイッチ用カバー部材、11・・・キートップ部、11a・・・フランジ部、11b・・・十字部、12,15・・・接着層、13・・・樹脂フィルム、14・・・ELシート、141・・・透明電極、142・・・ITO接着層、143・・・発光層、144・・・誘電体層、145・・・対向電極、146・・・絶縁層、16・・・弾性ゴム部、16a・・・押圧部、16b・・・位置決め用突出部、17・・・弾性ゴム部、20・・・基板部材、21・・・回路基板、22,23・・・固定接点、24・・・金属製皿バネ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップ部の下方側に形成され、前記キートップ部を下方側から照光するためのELシートと、
前記ELシートの下方側に形成される弾性ゴム部と、を備え、
前記ELシートは、少なくとも透明電極、発光層、誘電体層および対向電極を有し、
前記透明電極は、ITO(酸化インジウム・スズ)により形成され、
前記ELシートの前記透明電極と前記発光層との間には、少なくとも前記キートップ部の外周の直下部分に、透光性を有する樹脂を主成分とする接着層が形成されることを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項2】
キートップ部の下方側に形成され、前記キートップ部を下方側から照光するためのELシートと、
前記ELシートの下方側に形成される弾性ゴム部と、
前記弾性ゴム部の底面から下方側に突出する突出部と、を備え、
前記ELシートは、少なくとも透明電極、発光層、誘電体層および対向電極を有し、
前記透明電極は、ITOにより形成され、
前記ELシートの前記透明電極と前記発光層との間には、少なくとも前記突出部の直上部分に、透光性を有する樹脂を主成分とする接着層が形成されることを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項3】
前記接着層は、前記発光層の上面全体に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項4】
前記接着層は、透光性を有する導電粉を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用カバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−134819(P2006−134819A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325392(P2004−325392)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【出願人】(000132518)株式会社セコニック (22)
【Fターム(参考)】