説明

拡散層調節固体

賦形剤、ならびに溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩、溶解性の劣る酸性薬剤の可溶性塩または可溶性のイオン化薬剤を包含する拡散層調節固体は、たとえば、薬剤の送達の改良に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2003年7月1日付で提出された米国特許仮出願60/484,205の利益を享受するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、拡散層調節固体、および拡散層調節固体の調製方法に関する。また、本発明は、拡散層調節固体を包含する組成物、カプセルおよび錠剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
溶解度は薬剤処方の設計および開発に最も重要な因子の一つである。たとえば薬剤の経口生物学的利用性はしばしば薬剤の水に対する溶解度により限定される。溶解性の劣る酸性または塩基性薬剤の可溶性塩が、これまで薬剤の経口生物学的利用性を高める試みで調製され、経口生物学的利用性が改善される場合もある。しかしながら多くの場合、溶解性の劣る薬剤の可溶性塩の経口生物学的利用性はもとの遊離酸または遊離塩基の生物学的利用性より高くないのみか、場合によりその塩が母体薬剤より経口生物学的利用性の低いことがある(たとえばワルファリンと比べたワルファリンナトリウム、フェノバルビタールと比べたフェノバルビタールナトリウムがある)。
【0003】
薬剤の塩の溶解性および経口生物学的利用性の挙動が予測できないの理由の一つは、溶解性の劣る薬剤の塩が薬剤と水の接触時に解離もしくは「塩加水分解」を受ける傾向があり、その結果、相当する薬剤の遊離酸または遊離塩基型が沈殿することに帰されている。
【0004】
生成した薬剤の遊離酸または遊離塩基の溶液濃度が水性拡散層内に発生するpHにおける薬剤の溶解度を著しく越える場合には、溶解性の劣る薬剤の遊離酸または遊離塩基型の沈殿が、溶解する薬剤塩の表面上に直接または溶解する薬剤塩結晶の表面から除去される部位のいずれかに起こる。これが、溶解性の劣る薬剤の可溶性塩の溶出速度の低下および経口生物学的利用性の低下を導くことになる。
【0005】
溶解性の劣る薬剤の塩は、その薬剤に対して希釈剤またはビヒクルとして働く賦形剤との単純な物理的混合物として処方され、これはバルク溶液のpH変化を介して薬剤の溶解度の上昇を招来する。有用な賦形剤には中性、酸性および塩基性の物質が包含される。溶解性の劣る塩基性薬剤の場合、バルク溶液のpH変化を介して塩基性薬剤溶液の溶解度を上昇させるための賦形剤として酸性の物質を用いることが知られている。同様に溶解性の劣る酸性薬剤の場合は、バルク溶液のpH変化を介し塩基性薬剤溶液の溶解度を上昇させるための賦形剤として塩基性物質を用いることが知られている。さらに溶解性の劣る非イオン化薬剤の場合には、バルク溶液中で薬剤の溶解度を上昇させるための可溶化賦形剤を含有する可溶化物理的混合物の使用が知られている。
【0006】
しかしながら、これらの溶解性の劣る塩基性薬剤の酸性賦形剤との可溶性塩;溶解度の劣る酸性薬剤の塩基性賦形剤との可溶性塩;および溶解度の劣る非イオン性薬剤の可溶化賦形剤との可溶性塩の単純な物理的混合物の使用では、一般的に、経口吸収に所望の改善をもたらすレベルまで薬剤の溶出速度を上昇させることは期待できない。
【0007】
本技術分野においては、溶出速度が上昇した溶解性の劣る薬剤および/またはそれらの塩、ならびに溶解性の劣る薬剤および/またはそれらの溶出速度を上昇させる方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一態様においては、拡散層調節固体、および拡散層調節固体の調製方法を提供する。拡散層調節固体を包含する組成物、カプセルおよび錠剤も提供される。
【0009】
一実施態様においては、拡散層調節固体は溶解性の劣る薬剤の可溶性塩、塩基性薬剤、および酸性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤を包含し、この場合少なくともあるpHに対し拡散層調節固体の固有の溶出速度は同じpHにおける薬剤塩単独の固有の溶出速度より少なくとも10%大きい。この場合、溶出速度はいずれも回転ディスク法を使用してpH1〜7の水中25℃で測定する。
【0010】
他の実施態様においては、拡散層調節固体は溶解性の劣る薬剤の可溶性塩、酸性薬剤および、塩基性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤を包含し、この場合少なくともあるpHに対する拡散層調節固体の固有の溶出速度は同じpHにおける薬剤塩単独の固有の溶出速度より少なくとも10%大きく、この場合溶出速度はいずれも回転ディスク法を用いて、pH1〜7の水中25℃で測定する。
【0011】
他の実施態様においては、拡散層調節固体は溶解性の劣る薬剤の可溶性塩、非イオン化薬剤および可溶化賦形剤を包含し、この場合少なくともあるpHに対し調節固体拡散層の固有の溶出速度は、同じpHにおける薬剤塩単独の固有の溶出速度より少なくとも10%大きい。この場合、溶出速度はいずれも回転ディスク法を用いてpH1〜7の水中25℃で測定する。
【0012】
他の態様においては、本発明は、粒子を包含する拡散層調節固体を提供する。一実施態様においては、粒子は溶解性の劣る薬剤の可溶性塩、塩基性薬剤および、酸性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤を包含する。他の実施態様においては、粒子は溶解性の劣る薬剤の可溶性塩、酸性薬剤、ならびに塩基性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤を包含する。他の実施態様においては、粒子は溶解性の劣る非イオン化薬剤および可溶化賦形剤を包含する。
【0013】
拡散層調節固体は、薬剤の生物学的利用性の上昇を提供することが好ましく、これは疾患の処置方法を改善する。
【0014】
定義
本明細書で用いられる「薬剤」の語は医薬的に活性な化合物を意味する。
【0015】
本明細書で用いられる「溶解性の劣る薬剤」の語はpH6〜pH7の水性液体中において、25℃で高々50μg/mLの溶解度しか示さない薬剤を意味する。
【0016】
本明細書で用いられる「酸性薬剤」の語は、高々11のpKaを示す薬剤を意味する。
【0017】
本明細書で用いられる「塩基性薬剤」の語は少なくともpKa1を有する薬剤を意味する。
【0018】
本明細書で用いられる「可溶性塩」の語は、pH6〜pH7の水性液体中に、25℃で、非塩型の薬剤の場合より少なくとも50%以上の溶解度を示す薬剤を意味する。
【0019】
本明細書で用いられる「固体」の語はたとえば粉末および圧縮粉末を含む固体形態の物質を包含する意図である。
【0020】
本明細書で用いられる「賦形剤」の語は医薬処方中の医薬的に不活性な成分を意味する

【0021】
本明細書で用いられる「酸性賦形剤」の語は、高々6のpKaを示す賦形剤を意味する。
【0022】
本明細書で用いられる「塩基性賦形剤」の語は少なくともpKa4を示す賦形剤を意味する。
【0023】
本明細書で用いられる「可溶化賦形剤」の語は、薬剤とその賦形剤の混合物により、その賦形剤の不存在下における薬剤の場合に比べて薬剤の溶解度の上昇を生じる賦形剤を意味する。
【0024】
本明細書で用いられる「固有の溶出速度」の語は、単位面積あたり単位時間内に溶解する薬剤の量を意味する。
【0025】
本明細書で用いられる「結晶成長阻害剤」の語は、結晶成長阻害剤のない場合の成長速度に比較して、結晶の成長速度を遅延させる化合物を意味する。
【0026】
本明細書で用いられる「粒子」の語は固体物質の小さな塊を意味する。
【0027】
本明細書で用いられる「顆粒」の語は互いに接着した粒子の集合からなる固体物質を意味する。
【0028】
本明細書で用いられる「顆粒化」の語は粒子を互いに接着させることによって凝集体のサイズを増大させる方法を意味する。
【0029】
本明細書で用いられる「平均サイズ」の語は、粒子群の平均直径を意味する。球形でない粒子では、直径は粒子の最長の方向を採択する。
【0030】
本明細書で用いられる「均質(homogeneous)」の語は、組成が均一な物質を意味する。本明細書で用いられる「マイクロナイズされた」の語は、平均粒子サイズを減少させるためにマイクロナイザーを通して処理された固体物質を意味する。
【0031】
本明細書で用いられる「錠剤」の語は固体であり、固体(たとえば薬剤、薬剤塩および/または賦形剤)の圧縮形態を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる「カプセル」の語はその内容物(たとえば薬剤、薬剤塩および/または賦形剤)を所望の部位に送達するために用いられる固体ポリマーの殻を意味する。一般に、内容物は殻の溶出時に放出される。
【0033】
本明細書で用いられる「ローラー圧縮」の語は物質(たとえば固体)の混合物を高圧で圧縮するためローラー圧縮機を使用する方法を意味する。
【0034】
本明細書で用いられる「スプレー乾燥」の語は、径の小さい開口部を通し高圧の液体を乾燥室内に噴出させることにより、液体を膨張させる方法を意味する。
【0035】
本明細書で用いられる「揮発性液体」の語は、水の蒸気圧と等しいかもしくは大きい蒸気圧1を有する液体を意味する。
【0036】
本明細書で用いられる「生物学的利用性」の語は、薬剤の経口投与後に認められるAUC(薬剤投与後の時間に対する血漿濃度のプロット下面積)をIV投与後に認められるAUCにより除し100を乗じて百分率として表した値を意味する。
【0037】
図1は薬剤の化学構造を例示する。図1aは溶解性の劣る塩基性薬剤(すなわちデラビルジン)の可溶性塩(すなわちデラビルジンメシレート)の化学構造を例示する。図1bは溶解性の劣る酸性薬剤(すなわちチプラナビル)の可溶性塩(すなわち、チプラナビル二ナトリウム)の化学構造を例示する。図1cは溶解性の劣る塩基性薬剤の化学構造を例示する。図1dは溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩の化学構造を例示する。図1eは溶解性の劣る非イオン化薬剤の化学構造を例示する。図1fは溶解性の劣る酸性薬剤の化学構造を例示する。
【0038】
図2は、pH6で0.6%SLSと共圧縮(Carverプレス)したデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物についての固有の溶出速度プロフィル(x-軸は分での時間、y-軸はμg/mLでの濃度)を示すグラフである。pH2およびpH6、ならびに37℃における0.6%SLSとのデラビルジンメシレート単独についての固有の溶出速度プロフィルも示す。デラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮混合物はpH2およびpH6では10分未満でそのほぼ100%が溶解する。デラビルジンメシレート単独では、0.6%SLSとpH6で60分以内に約2%が溶解するにすぎず、pH2では約60%の溶出が起こる。
【0039】
図3は、デラビルジンメシレート単独およびデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物のペレットの固有溶出速度(μg-cm-2・秒-1)に対するpHの影響を示すプロットをデラビルジンメシレートの理論的溶出速度とともに例示する。デラビルジンメシレートのような水溶性の高い塩の溶出はpH依存性をほとんど示さない。しかしながら、バルク薬剤単独では、pH6における遊離塩基層の表面沈殿によりバルクpHに極めて強い依存性を有する。デラビルジンメシレートとクエン酸の共圧縮は、溶解表面における遊離塩基の形成を妨害し、これが一方ではpH6における溶出速度を実質的に増大させる。
【0040】
図4は、pH2におけるデラビルジンメシレートでの溶出ペレット試験からの残部の粉末X-線回折(XRD)パターンの選択部分のオーバーレイ(x-軸は2つのθ角、y-軸は1秒あたりのカウント)ならびにデラビルジン遊離塩基と、デラビルジンメシレートのXI型(無水)およびXIV(三水和物)についての対照XRDスペクトルを例示する。溶出ペレットは、pH2.0 HCl, 300 rpmおよび37℃における15分間の固有溶出試験から得られ、X-線スペクトルは数日後に記録した。溶出ペレットのXRDスペクトルは結晶性無水デラビルジン遊離塩基およびデラビルジンメシレート二水和物(XIV型)のほぼ同量(17°〜18°2θの領域参照)とともに非結晶性の物質(多分デラビルジン遊離塩基)およびデラビルジンメシレート、XI型塩の痕跡量の存在を示す。
【0041】
図5は、デラビルジンメシレート−クエン酸顆粒についての37℃における固有溶出速度(μg-cm-2・秒-1)を例示するグラフである。顆粒(左側および中央)の溶出速度は明らかにpH非依存性で、バルク薬剤、デラビルジンメシレート(右側)とは著しく対照的である。顆粒中におけるステアリン酸マグネシウムの存在は溶出速度を有意に低下させた(ロットLMH-004a左対JMH-004b中央)。
【0042】
図6は、デラビルジンメシレート−ラクトース顆粒およびデラビルジンメシレート−クエン酸顆粒についての0.6%SLSでのpH6におけるUSP溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y軸は溶解%である)のグラフ表示である。
【0043】
図7は、デラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮顆粒混合物(■)、ならびにPfizer Inc., New York, NYからRESCRIPTORの商品名で市販されているデラビルジンメシレート錠(〇)を、pH5のラット胃内に20mg/kgの用量(n=4)で経口投与後、デラビルジンのラット平均血漿レベル(x-軸は時での時間、y軸はμg/mLの濃度)をグラフで表示する。
【0044】
図8は、チプラナビル二ナトリウムのスプレー乾燥粉末から調製した拡散層調節固体、THAMおよびPVPを含みラウリル硫酸ナトリウムを加えたゼラチンカプセル(■)およびバルクのチプラナビル二ナトリウム(◆)の経口投与後におけるラット血中レベルの曲線(x-軸は時間、y軸はμg/mLの濃度である)をグラフで例示する。いずれの場合も用量は20mg/kgのチプラアナビルとした。すべての処方を7〜8匹のラット群に経口的挿管により投与した。血漿サンプルは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってアッセイした。処方の組成は表4に示し、AUCInfの値は表5に示す。
【0045】
図9は、図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩の溶出挙動についてのpH依存性をグラフ(x-軸は分での時間、y軸はμg/mLの濃度である)で例示する。この塩の溶解度はこの領域では比較的一定であるにもかかわらず、溶出速度はpHの上昇につれて急激に低下する。
【0046】
図10は、例1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩を酸性賦形剤、クエン酸と共圧縮した場合の溶出プロフィルをグラフ(x-軸は分での時間、y軸はμg/mLの濃度である)で例示する。共圧縮物質の溶出はpH4におけるその塩単独に比べ、はるかに早かった。
【0047】
図11は、図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の投与後、各個体における血漿濃度対時間をグラフ(x-軸は時間、y軸はμg/mLの濃度である)で例示する。図11aは図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤のHCl−塩の投与を示す。個体1および2は24時間時点での薬物動態特性の計算には含めなかった。図11bは図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩とクエン酸を含むpH−調節固体の投与を示している。個体1および2は24時間時点での薬物動態特性の計算には含めなかった。図11bは図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩とクエン酸を含むpH−調節固体の投与を示している。
【0048】
図12は溶解性の劣る塩基性薬剤(たとえばデラビルジン)の可溶性塩(たとえばデラビルジンメシレート)と酸性賦形剤(たとえば、クエン酸)の混合物についての溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y軸はμg/mLでの濃度)を圧縮の関数として示す。図12aは、デラビルジンメシレート:クエン酸の2:1(w/w)混合物についてpH6(0.05Mリン酸塩)における粉末溶出データを例示する。共圧縮粉末の溶出は、2つの賦形剤を手動で粉砕した場合よりはるかに速かった。図12bは、pH6, 25℃でのバスケット溶出において、共圧縮した拡散層調節固体(5B)についての溶出プロフィルを、手動で粉砕した成分混合物の場合と比較して例示する。拡散層調節固体はデラビルジンメシレート:クエン酸:ラクトース(2:1:1 w/w/w)から調製した。サンプル5Aは手動で粉砕し、溶出バスケット内に粉末として入れた。サンプルB5は共圧縮したのち、手動で粉砕し、溶出バスケット内に粉末として入れた。拡散層調節固体は成分単独の混合物より急速な溶出を示し、また高濃度の溶液を発生する能力を示す。
【0049】
図13はデラビルジンメシレート:クエン酸の1:1(w/w)混合物をカプセル中pH6のメジウムに溶解させた場合の相対溶出速度を共圧縮混合物の関数として例示する。溶出速度は薬剤濃度の初期のスロープと溶出開始後に得られた時間プロフィルとして測定した。
【0050】
図14は、溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩(すなわち図1dに例示)と酸性賦形剤(たとえば、リンゴ酸)の混合物についての溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y軸はμg/mLでの濃度)を図1dに例示した可溶性塩酸塩と様々な重量分画(0〜40%)のリンゴ酸との共圧縮混合物について、pH6, 25℃での回転ディスク操作を用いて例示する。7重量%のような低含量のリンゴ酸でも、溶出速度には有意な上昇が観察された。
【0051】
図15は、溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩(すなわち図1dに例示)と酸性賦形剤(たとえば、クエン酸、リンゴ酸、フマール酸、キシナト酸(xinatoic acid)、およびアスパルテーム)の共圧縮混合物についての溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y軸は溶解したサンプルのmg)を、pH6, 25℃での回転ディスク操作を用いて例示する。すべてのサンプルは当量のモル比(約1:1)で調製した。最も速い溶出速度は酸性賦形剤としてフマール酸、リンゴ酸、およびクエン酸を用いた場合に観察された。比較のために賦形剤を使用しない塩酸塩の溶出プロフィルを含める。
【0052】
図16は、デラビルジンメシレート:クエン酸混合物サンプルの光学顕微鏡検査(7-400×)を表示する。図16aおよび16bはローラー圧縮顆粒によって調製したサンプルを示し、図16cおよび16dは乳鉢および乳棒で調製したサンプルを示す。図16aおよび16cは同じ低倍率である。図16bおよび16dは同じ高倍率である。サンプルには粒子サイズおよび成分分布に有意な差が認められた。乳鉢および乳棒で調製されたサンプル(図16cおよび16d)の粒子サイズは全体としてローラー圧縮顆粒によって調製されたサンプル(図16aおよび16b)よりはるかに小さかった。
【0053】
図17は、デラビルジンメシレートおよびクエン酸混合物のローラー圧縮顆粒により調製し、二分した顆粒を横切るラマン顕微鏡ラインマップ(x軸はcm-1でのラマンシフト、y軸はカウントである)を例示する。
【0054】
図18は、デラビルジンメシレートおよびクエン酸混合物のローラー圧縮顆粒により調製し、二分した顆粒を横切るラマン顕微鏡ラインマップからの1点を表す(中段)スペクトルでのラマンスペクトル(x軸はcm-1でのラマンシフト、y軸はカウントである)を例示する。上段のスペクトルはデラビルジンメシレートを表し、下段のスペクトルはクエン酸を表す。
【0055】
図19は、デラビルジンメシレートおよびクエン酸混合物から乳鉢および乳棒で製造した典型的な個々の結晶についてのラマンスペクトル(x軸はcm-1でのラマンシフト、y軸はカウント)(中央の2つのスペクトル)であり、上から2番目のスペクトルは黄褐色多色性粒子、上から3番目のスペクトルは無色の粒子である。上段のスペクトルはデラビルジンメシレートであり、下段のスペクトルは含水クエン酸である。
【0056】
図20は、デラビルジンメシレートとクエン酸からローラー圧縮顆粒によって調製した平坦化顆粒の空間分解能15μmでの赤外顕微鏡ラインマップ(x軸はcm-1での波数、y軸は吸収である)の例示である。
【0057】
図21は、デラビルジンメシレートとクエン酸からローラー圧縮顆粒によって調製した二分顆粒を横切るラインマップからの典型的な点の赤外線スペクトル(x軸はcm-1での波数、y軸は吸収である)の例示である(中段のスペクトル)。上段のスペクトルはクエン酸を表し、下段のスペクトルはデラビルジンメシレートを表す。
【0058】
図22は、図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤−尿素−ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(66:33:1)の共圧縮(Carverプレス)混合物について溶出メジウムとして37℃, pH2における0.01 N HClによる固有の溶出速度プロフィル(x-軸は分での時間、y-軸はμg/mLでの濃度)を示すグラフ(■)である。図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤単独の固有の溶出速度のプロフィルについても示す(●)。図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤−尿素−SDSを共圧縮した混合物の溶出速度は図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤単独のpH2, 0.01 N HCl中37℃における溶出速度よりも100倍以上大きかった。共圧縮混合物についての2分後の溶出速度の安定化は、この時点で全ペレットがほぼ溶解したという事実によるものであった。
【0059】
図23は、図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤の尿素水溶液中における溶解度を示すグラフである(x-軸はg/mLでの尿素の濃度、y-軸は図1に例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤のmg/mLでの濃度である)。図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤の溶解度は尿素濃度の増加とともに上昇する。
【0060】
図24は、カプセル中の図1(f)に例示した溶解性の劣る酸性薬剤の遊離酸(-▲-);図1(f)に例示した溶解性の劣る酸性薬剤のTRIS塩(-■-);および図1(f)に例示した溶解性の劣る酸性薬剤-TRIS(1:1)の共圧縮(Carverプレス)混合物(-●-)についての溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y-軸は溶解したサンプル%)を例示する。溶出試験はUSP II-型装置上、37℃、パドル速度1分あたり50回転(rpm)で完了した。薬剤濃度の定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を用いて実施した。溶出試験中のpHの制御にはpH 4.5のクエン酸緩衝液を用いた。緩衝液の容量は900mLとした。溶出試験は10mg(遊離酸当量の処方を用いて実施した。塩(-■-)は高い溶解度にもかかわらずカプセル中の遊離酸(-▲-)ほど急速には溶解しなかった。共圧縮混合物(-●-)の溶出は他の処方に比べて著しく速かった。
【0061】
溶解性の劣る非イオン化薬剤および溶解性の劣る酸性または塩基性薬剤の塩の経口生物学的利用性は溶解性の劣る薬剤と賦形剤の混合物を含む粒子を調製することにより改善できることが見出された。ここでいう粒子とは「拡散層調節固体」と呼ばれる。拡散層調節固体粒子は、酸性、塩基性または可溶化賦形剤と緊密に会合させた薬剤または薬剤塩の固体型を包含する。ここで用いられる「緊密に会合させる」の語は、薬剤または薬剤塩および賦形剤は粒子中に別個の成分として存在するが、粒子内にμmのスケールで緊密に会合していることを意味する。粒子の溶出は、溶出時に粒子を取り巻く水性拡散層内における薬剤のpHおよび/または溶解度に変化をもたらす。
【0062】
薬剤の結晶が水と接触すると、薬剤の結晶を取り囲む水性拡散層の停滞を生じ、溶解する結晶の直ぐの表面に薬剤の飽和溶液が形成される。薬剤の溶出速度は、直接拡散層、薬剤の水性拡散層内における拡散係数、および薬剤結晶によって提供される総表面積により決定される。
【0063】
可溶化賦形剤が溶解性の劣る薬剤と共圧縮される場合は、水との接触時に発生する拡散層中に生じる薬剤の溶解度は拡散層における賦形剤の可溶化作用により上昇させることができる。拡散層における薬剤の溶解度が高いほど、速い溶出速度および過飽和溶液の形成を招来し、これは放置すると急速な沈殿が可能である。過飽和状態は、ポリマーたとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、他のセルロース材料、ポリビニルピロリドン(PVP)またはプロピレングリコールの添加によって長時間維持することができる。したがって、共圧縮、ローラー圧縮またはスプレー乾燥により、溶解性の劣る薬剤を、酸性、塩基性または可溶化賦形剤と緊密に接触させて拡散層調節固体を形成させ(軽い粉末としてもよい)可溶性の塩とすることができる。得られた拡散層調節固体は、HMPC、他のポリマー、他の賦形剤および滑沢剤と処方することができる。得られた固体はカプセル中に添加、錠剤に圧縮または粉末処方に製造できる。これらの拡散層調節(DLM)固体の経口生物学的利用性は好ましく改善され、吸収の不完全なことが多い薬剤単独または慣用の錠剤もしくはカプセル処方の生物学的利用性よりはるかに優れている。
【0064】
粒子は共圧縮(たとえば手動で操作するプレスまたはローラー圧縮機の使用、ついで顆粒化)およびスプレー乾燥を含む方法によって調製することができる。場合により、限られた量の水と湿式顆粒化を用い、ついで薬剤結晶を酸性、塩基性または可溶化賦形剤と会合させるために乾燥することもできる。
【0065】
一実施態様においては、拡散層調節固体は溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩と、酸性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの混合物からなる群より選択される賦形剤を包含する。
【0066】
他の実施態様においては、拡散層調節固体は溶解性の劣る酸性薬剤の可溶性塩と、塩基性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの混合物からなる群より選択される賦形剤を包含する。
【0067】
他の実施態様においては、拡散層調節固体は、溶解性の劣る非イオン化薬剤可溶化賦形剤を包含する。
【0068】
一実施態様においては、拡散層調節固体は、溶解性の劣る薬剤または溶解性の劣る薬剤の可溶性塩と賦形剤を、少なくとも15:85、さらに好ましくは少なくとも25:75、もっと好ましくは少なくとも35:65の重量比で包含することが好ましい。この実施態様においては、拡散層調節固体は、好ましくは溶解性の劣るまたは溶解性の劣る薬剤の可溶性塩と賦形剤を多くとも95:5、さらに好ましくは多くとも90:10、もっとも好ましくは多くとも85:15の重量比で含有する。
【0069】
他の実施態様においては、拡散層調節固体は、溶解性の劣る非イオン化薬剤:賦形剤を、少なくとも15:85、さらに好ましくは少なくとも25:75、もっと好ましくは少なくとも35:65の重量比で包含することが好ましい。この実施態様においては、拡散層調節固体は、好ましくは溶解性の劣る非イオン薬剤:賦形剤を多くとも95:5、さらに好ましくは多くとも90:10、もっとも好ましくは多くとも85:15の重量比で含有する。
【0070】
溶解性の劣る薬剤は本技術分野において周知であり、たとえば、米国特許出願公告2003/0091643 A1(Friesenら)に引用された薬剤が包含される。好ましい溶解性の劣る薬剤にはたとえばプロクロルペラジンエジシレート、硫酸第一鉄、アルブテロール、アミノカプロン酸、塩酸メカミルアミン、塩酸プロカインアミド、硫酸アンフェタミン、塩酸メタンフェタミン、塩酸ベンズフェタミン、硫酸イソプロテレノール、塩酸フェンメトラジン、塩化ベタンコール、塩化メタコリン、塩酸ピロカルピン、硫酸アトロピン、臭化スコポラミン、ヨウ化イソプロパミド、塩化トリジヘキセチル、塩酸フェンフォルミン、ジフェンジオール、塩酸メクリジン、マレイン酸プロクロルペラジン、フェノキシベンザミン、マレイン酸チエチルペラジン、アニシンジオン、エリスリチル酒石酸ジフェナジオン、ジゴキシン、イソフルオロフェート、アセタゾールアミン、ニフェジピン、メサゾラミド、ベンドロフルメチアジド、クロルプロアミド、グリピジド、グリブリド、グリクラジド、トブタミド、クロルプロアミド、トラザミド、アセトヘキサミド、メトフォルミン、トログリタゾン、オルリスタット、ブプロピオン、ネファゾドン、トラミド、酢酸クロラマジオン、フェナグリコドール、アロプリノール、アルミニウムアスピリン、メトトレキセート、アセチルスルフォキサゾール、ハイドロコーチゾン、酢酸ハイドロコーチコステロン、酢酸コーチゾン、デキサメサゾンおよびその誘導体たとえばベータメサゾン、トリアムシノロン、メチルテストステロン、17-β-エストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3-メチルエーテル、プレドニソロン、酢酸17-β-ヒドロキシプロゲステロン、19-ノル-プロゲステロン、ノルゲステレル、ノルエチステロン、ノルエチエデロン、プロゲステロン、ノルゲステロン、ノルエチノドレルテルファンジン、フェキソフェナジン、アスピリン、アセトアミノフェン、インドメサシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スイリンダック、インドプロフェン、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、プロプラノール、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドーパ、セレギリン、クロルプロマジン、メチルドーパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、グルコン酸カルシウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、セファレキシン、エリスロマイシン、ハロペリドール、ゾメピラック、ビンカミン、フェノキシベンザミン、ジルチアゼム、ミリノン、カプトプリル、マンドール、クワンベンズ、ハイドロクロロチアジド、ラニチジン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、フルプロフェン、トルメチン、アルクロフェナック、メフェナミック、フルフェナミック、ジフニナール、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、リドフラジン、チアパミール、ガロパミール、アムロジピン、ミオフラジン、リシノプリル、エナラプリル、カプトプリル、ラミプリル、エナラプリラート、フェモチジン、ニザチジン、スクラルフェート、エチンジン、テトラトール、ミノキシジル、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、アミトリプチリン、およびこれらの活性物質の医薬塩、ならびにそれらの組み合わせが包含される。
【0071】
溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩
溶解セルロースの劣る塩基性薬剤は、一般的に、少なくとも1のpKa 1、好ましくは少なくとも2、さらに好ましくは少なくとも3を有する。pKaの測定方法は本技術分野の熟練者には周知であり、たとえば慣用の滴定法が含まれる。
【0072】
溶解性の劣る塩基性薬剤は一般に、pH6〜7の水性液体中25℃において、多くとも50μg/mL、多くの場合多くとも25μg/mL、時には多くとも10μg/mLの溶解度を有する。溶解性の劣る塩基性薬剤は、pH6〜7の水性液体中25℃において、少なくとも1μg/mL、さらに好ましくは少なくとも2μg/mL、最も好ましくは少なくとも5μg/mLの溶解度を有する。溶解度の測定方法は本技術分野の熟練者には周知である。たとえば水または緩衝水中たとえば25℃または37℃において薬剤または薬剤塩の水性懸濁液を平衡化し、ろ過後の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が包含される。
【0073】
溶解性の劣る塩基性薬剤には、たとえば、少なくとも1のpKa、好ましくは少なくとも2、さらに好ましくは少なくとも3を有する上掲の溶解性の劣る塩基性薬剤が包含される。好ましい溶解性の劣る塩基性薬剤には、たとえばアセノクマロール、アルブテロール、アルプレノロール、アミトリプチリン、アムロジピン、硫酸アンフェタミン、アテノロール、硫酸アトロピン、塩酸ベンヅフェタミン、ベプリジール、ブプロピオン、クロルプロマジン、シメチジン、クロニジン、クロトリマゾール、ジアゼパム、ジヒドロキシフェニルアラニン、ジルチアゼム、エコナゾール、エリスロマイシン、フェロジピン、ガロパミール、ハロペリドール、イミプラミン、イミプラミン、硫酸イソプロテレノール、二硝酸イソソルビド、レボドーパ、リドフラジン、塩酸メカミルアミン、塩酸メクリジン、メトフォルミン、塩酸メタンフェタミン、メチルドーパ、ミコナゾール、塩酸ネファゾドン、ニカルジピン、ニソルジピン、塩酸フェンフォルミン、塩酸フェンメトラジン、フェノキシベンザミン、フェンプロクマゾール、塩酸ピロカルピン、プラゾシン、塩酸プロカインアミド、プロクロールペラジンエジスレート、マレイン酸プロクロルペラジン、プロプラノール、セレグリン、テルファニジン、マレイン酸チエチルペラジン、チアパミール、チモロール、酒石酸トルテロジンおよびそれらの組み合わせが包含される。
【0074】
溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性の塩は、たとえば塩基性薬剤を有機酸または無機酸と反応させて調製することができる。溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性の塩は、pH6〜pH7の水性液体中25℃において、少なくとも1.5倍、さらに好ましくは少なくとも1.75倍、最も好ましくは少なくとも2倍の溶解度を有する。
【0075】
溶解性の劣る塩基性薬剤の塩には、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、チオシアン酸塩、亜硫酸塩、メシル酸塩(すなわちメタンスルホン酸塩)、カミシル酸塩(すなわちカンファースルホン酸塩)、イセチオン酸塩(すなわち2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩)、エシジル酸塩(すなわち1,2-エタンジスルホン酸塩)、トシル酸塩(すなわちp-トルエンスルホン酸塩)、ナプシル酸塩(2-ナフタレンスルホン酸塩)、1,5-ナフタレンスルホン酸塩、エシル酸塩(すなわちエタンスルホン酸塩)、ベシル酸塩(ベンゼンスルホン酸塩)、エストール酸塩(すなわちラウリル硫酸塩)、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸、コハク酸塩、アジピン酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ヒベンズ酸塩(すなわちo-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩)、サリチル酸塩、リジン酸塩、グリシン酸塩、グリセロリン酸、アスパラギン酸塩、リンゴ酸塩、オロチン酸塩、サッカリネート、シクラメート、グルセプテート(すなわちD-グリセロ-D-グロ-ヘプタン酸塩)、グルクロネート、マンダレート、オキソグルレート、カンフォレート、パントテネート、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0076】
溶解性の劣る酸性薬剤の可溶性塩
酸性薬剤は、一般的に、大きくとも11のpKa、好ましくは大きくとも9のpKa、さらに好ましくは大きくとも7のpKaを有する。pKaの測定方法は本技術分野の熟練者には周知であり、たとえば慣用の滴定法が含まれる。
【0077】
溶解性の劣る酸性薬剤は一般に、pH6〜7の水性液体中25℃において、大きくとも50μg/mL、多くの場合大きくとも25μg/mL、時には大きくとも10μg/mLの溶解度を有する。溶解性の劣る酸性薬剤は、pH6〜7の水性液体中25℃において、少なくとも1μg/mL、さらに好ましくは少なくとも2μg/mL、最も好ましくは少なくとも5μg/mLの溶解度を有する。溶解度の測定方法は本技術分野の熟練者には周知である。たとえば水または緩衝水中たとえば25℃または37℃において薬剤または薬剤塩の水性懸濁液を平衡化し、ろ過後の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が包含される。
【0078】
溶解性の劣る酸性薬剤には、たとえば、大きくとも11、好ましくは大きくとも9、さらに好ましくは大きくとも7のpKaを有する上掲の溶解性の劣る酸性薬剤が包含される。好ましい溶解性の劣る酸性薬剤には、たとえばアセタゾールアミド、アセトヘキサミド、アルクロフェナック、アミノカプロン酸、アスピリン、ベンザプリル、クロルプロアミド、クマリン、ビスクムアセテート、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェナム酸、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フロセミド、グリクラジド、グリピジド、グリブリド、ヒドロクロロチアジド、インドメサシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、リシノプリル、ロスタルタンk、メフェナミック、メチルテストステロン、ミノキシジル、ミオフラジド、ミリノン、ナプロキセン、フェノバルビタール、フェニルブタゾン、ラミプリル、スリンダック、トラザミド、トルメチン、ゾメプリアックおよびそれらの組み合わせが含まれる。
【0079】
溶解性の劣る酸性薬剤の可溶性の塩は、たとえば酸性薬剤を有機塩基または無機塩基と反応させて調製することができる。溶解性の劣る酸性薬剤の可溶性の塩は、pH6〜pH7の水性液体中25℃において、非塩型の場合より少なくとも1.5倍、さらに好ましくは少なくとも1.75倍、最も好ましくは少なくとも2倍の溶解度を有する
【0080】
溶解性の劣る塩基性薬剤の典型には、カウンターイオン、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ビスマス、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、コリン、ベタイン(すなわち水酸化(カルボキシメチル)トリメチルアンモニウム)およびそれらの組み合わせが包含される。
【0081】
溶解性の劣る塩基性薬剤の塩は、たとえばリン酸水素ナトリウム、エルブミン(すなわちt-ブチルアミン)、ジエチルアミン、ピペラジン、イミダゾール、エチレンジアミン、ピリドキシン、4-フェニルシクロヘキシルアミン、オラミン(すなわち2-アミノエタノール)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン(すなわちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、メグルミン(すなわちN-メチルグルカミン)、エグルミン(すなわちN-エチルグルカミン)、ベンザシン(すなわちN,N'-ジベンジレンジアミン)、プロカイン、ヒドロキシエチルピロリジン、ヒドラバミン(すなわちN,N'-ジ(ジヒドロアビエチル)エチレンジアミン)、ヘプタミノール(すなわち6-アミノ-2-メチルヘプタン-2-オール)、クロルシクリジン(すなわち1-(4-クロロベンズヒドリル)-4-メチルピペラジン)、ベネタミン(すなわちN-ベンジルフェネチルアミン)およびそれらの組み合わせから形成させることができる。
【0082】
溶解性の劣る非イオン化薬剤
非イオン化薬剤とは、水性メジウム中で容易にイオン化可能な基を欠く薬剤である。イオン化可能な基には、たとえば容易にプロトン化され(たとえば塩基性アミン基)、容易に脱プロトン化される基(たとえばカルボン酸基)が包含される。溶解性の劣る非イオン化薬剤は一般に、pH6〜7の水性液体中25℃において、大きくとも50μg/mL、多くの場合大きくとも25μg/mL、時には大きくとも10μg/mLの溶解度を有する。溶解性の劣る非イオン化薬剤は、pH6〜7の水性液体中25℃において、少なくとも1μg/mL、さらに好ましくは少なくとも2μg/mL、最も好ましくは少なくとも5μg/mLの溶解度を有する。溶解度の測定方法は本技術分野の熟練者には周知である。たとえば水または緩衝水中、たとえば25℃または37℃において薬剤またはは薬剤塩の水性懸濁液を平衡化しろ過後の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が包含される。
【0083】
溶解性の劣る非イオン化薬剤の例は、たとえば、水性メジウム中で容易にイオン化できる基を欠く上掲の溶解性の劣る薬剤を包含する。好ましい溶解性の劣る非イオン化薬剤には、たとえば酢酸17-β-ヒドロキシプロゲステロン、17-β-エストラジオール、19-ノル-プロゲステロン、アセトアミノフェン、スルフイソキサゾール、アロプリノール、アニシンジオン、ベンドロフルメサジン、クロリンジオン、酢酸クロルマジノン、クロピドゲル、酢酸コーチゾン、デキサメサゾン、ジゴキシン、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール3-ニルバジピン、ノルエチエデロン、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチノドレル、ノルゲステロン、ノルゲストレル、プレドニソロン、プロゲステロン、トブタミド、トリアムシノロン、トログリタゾンおよびそれらの組み合わせが包含される。
【0084】
賦形剤
賦形剤は、たとえば処方の流動性を改善するためグライダントを包含させる、薬剤の安定性を改善するため抗酸化剤を包含させる、処方の色を変化させるため染料を包含させる、錠剤もしくはカプセルの味覚を改善するため矯味剤を包含させる、処方の溶出を改善するために界面活性剤を包含させるなど、様々な理由で拡散層調節固体に加える組成物が含まれる。本発明に有用な賦形剤は一般に医薬的に許容される賦形剤であり、本技術分野の熟練者には周知であり、たとえば、欧州特許出願EP 1027886A2(Bacockら);“Handbook of Pharmaceutical Additives, M. Ash & I. Ash, Gower Publications, Vermont (1997);および“Handbook of Pharmaceutical Excipients,” 3rd Edition, A. H. Kribe, Am. Pharm. Assoc., Washington D.C. (2000)に記載の賦形剤が包含される。
【0085】
拡散層調節固体に含まれる組成物には、所望により過飽和状態を維持する補助のための賦形剤を包含させることができる。このような有用な賦形剤には、たとえばポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、キトサン、ヒドロキシエチルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチレンビニルアルコールコポリマー、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、酢酸テレフタル酸セルロース、酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピオン酸フタル酸セルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピオン酸トリメリット酸セルロース、酪酸トリメリット酸セルロース、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸メチルセルロース、酢酸コハク酸メチルセルロース、酪酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸イソフタル酸エチルセルロース、酢酸フタル酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリット酸メチルセルロース、酢酸トリメリット酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸トリメリット酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸ピリジンジカルボン酸セルロース、酢酸安息香酸エチルセルロース、酢酸安息香酸エチルヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸ニコチン酸エチルセルロース、酢酸ピコリン酸エチルセルロース、アラビヤガム、カラゲナン、ガッティガム、グアーガム、カラヤガム、トラガントガム、ブロックエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー(たとえばBASF Corp. Mount Olive, NJ からPLURONIC F68, PLURONIC F108, PLURONIC F127およびPLURONIC F50の商品名で市販されている製品)、ポリエチレングリコールたとえばポリエチレングリコール400、600、800、1000、4000等、および相当するモノアルキルポリエチレングリコールたとえばセトマクロゴール、またはポリエチレングリコール1000セチルエーテル、ならびにそれらの組み合わせが包含される。
【0086】
拡散層調節固体を含む組成物には、所望により賦形剤として医薬的に許容される希釈剤を包含させることができる。適当な希釈剤には、たとえばラクトースUSP、ラクトースUSP無水、ラクトーススプレー乾燥、デンプンUSP、直接打錠可能なデンプン、マンニトールUSP、ソルビトール、デキストロース一水和物、微結晶セルロースNF、塩基性リン酸カルシウム二水和物NF、スクロースベースの希釈剤、菓子製造用砂糖、およびそれらの組み合わせが包含される。このような希釈剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも20%を構成する。このような希釈剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは多くとも99%、さらに好ましくは多くとも85%、最も好ましくは多くとも80%を構成する。選択された希釈剤(単数または複数)は適当な流動性、錠剤が所望の場合は圧縮性を示すことが好ましい。好ましい希釈剤にはラクトース、微結晶セルロース、およびそれらの組み合わせが包含される。
【0087】
拡散層調節固体を含む組成物には、硬度を改善するために(たとえば、錠剤の場合)所望により、また適当な放出速度、安定性、圧縮前の流動性、乾燥性、および/または崩壊時間を付与するための賦形剤を包含させることができる。このような有用な賦形剤にはたとえば顆粒外微結晶セルロース(たとえば、乾燥工程後の湿潤顆粒化組成物に微結晶セルロースを添加する)、ラクトース(たとえばラクトース一水和物)およびそれらの組み合わせが包含される。
【0088】
拡散層調節固体を含む組成物には、とくに錠剤処方においては、所望により、医薬的に許容される崩壊剤を賦形剤として包含させることができる。このような崩壊剤には、たとえばデンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、クレー(たとえばVeegum HV)、セルロース(たとえば精製セルロース、メチルセルロース)、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース)、アルギン酸塩、アルファ化トウモロコシデンプン(たとえばNational 1551およびNational 1550)、クロスポビドンUSP NF、およびガム(たとえばアガール、グアール、ローカストビーン、カラヤ、ペクチンおよびトラガント)ならびにそれらの組み合わせが包含される。崩壊剤は、組成物の調製時の適当な工程で、とくに顆粒化の前または圧縮前の滑沢時に添加される。このような崩壊剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも0.2%を構成する。このような崩壊剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは高々30%、さらに好ましくは高々10%、最も好ましくは高々5%を構成する。錠剤またはカプセル剤の崩壊に好ましい崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムである。クロスカルメロースナトリウムが使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも0.2%を構成する。クロスカルメオースナトリウムが使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは多くとも10%、さらに好ましくは多くとも6%、最も好ましくは多くとも5%を構成する。クロスカルメロースナトリウムは本発明の組成物に対して優れた顆粒内崩壊特性を付与する。
【0089】
拡散層調節固体を含む組成物には、所望により(たとえば、錠剤処方の場合)、医薬的に許容される結合剤または接着剤を賦形剤として包含させることができる。このような結合剤および接着剤は、好ましくは錠剤化される粉末に十分な接着性を付与し、正常なプロセッシング操作たとえばサイジング、滑沢化、圧縮および包装を可能にするが、なお錠剤が崩壊し、摂取により組成物を吸収させる。適当な結合剤および接着剤にはアラビアゴム、トラガント、スクロース、ゼラチン、グルコース、デンプン、セルロース物質、それらに限定されるものではないがメチルセルロースおよびナトリウムカルボキシメチルセルロース(たとえばTylose)、アルギン酸およびアルギン酸塩、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ポリエチレングリコール、グアールガム、多糖酸、ベントナイト、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(Klucel)、エチルセルロース(Ethocel)、アルファ化デンプン(たとえばNational 1551およびNational 1550)、およびそれらの組み合わせが包含される。このような結合剤および/または接着剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも0.5%、さらに好ましくは少なくとも0.75%、最も好ましくは少なくとも1%を構成する。このような結合剤および/または接着剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは多くとも25%、さらに好ましくは多くとも15%、最も好ましくは多くとも10%を構成する。好ましい結合剤はポリビニルピロリドンであり、その使用は粉末配合物に接着性を付与し、たとえば湿式顆粒化時の顆粒の形成を容易にする。ポリビニルピロリドンが使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも0.2%を構成する。ポリビニルピロリドンが使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは多くとも10%、さらに好ましくは多くとも7%、最も好ましくは多くとも5%を構成する。20センチポイズ(cP)までの粘度を有するポリビニルピロリドンが好ましく、とくに6cPまたはそれより低い粘度を有するものが好ましく、さらに3cPまたはそれより低い粘度を有するものがとくに好ましい。
【0090】
拡散層調節固体を含む組成物には、医薬的に許容される湿潤剤を所望により賦形剤として包含させることができる。このような湿潤剤は、好ましくは、拡散層調節固体の水との緊密な会合を維持するために選択され、組成物の相対的生物学的利用性を改善すると考えられている。適当な湿潤剤には、たとえばオレイン酸、ものステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリル酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリル酸ポリオキシエチレンソルビタン、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(ここではこれらは同義語として使用される)およびそれらの組み合わせが包含される。陰イオン界面活性剤である湿潤剤が好ましい。湿潤剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも0.25%、さらに好ましくは少なくとも0.4%、最も好ましくは少なくとも0.5%を構成する。湿潤剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは多くとも15%、さらに好ましくは多くとも10%、最も好ましくは多くとも5%を構成する。好ましい湿潤剤はラウリル硫酸ナトリウムである。ラウリル硫酸ナトリウムが使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも0.25%、さらに好ましくは少なくとも0.4%、最も好ましくは少なくとも0.5%を構成する。ラウリル硫酸ナトリウムが使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは高々7%、さらに好ましくは高々6%、最も好ましくは高々5%を構成する。
【0091】
拡散層調節固体を含む組成物には所望により、医薬的に許容される滑沢剤および/またはグライダントを賦形剤として包含させることができる。適当な滑沢剤および/またはグライダントには、単独または組み合わせでグリセリルベハペート(Compritol 888)、ステアリン酸塩(マグネシウム、カルシウムおよびナトリウム)、ステアリン酸、水素化植物油(たとえばSterotex)、タルク、ワックス、Sterowet、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマール酸ナトリウム、食塩、ロイシン、ポリエチレングリコール(たとえばCarbowax 4000およびCarbowax 6000)、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムが包含される。このような滑沢剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも0.1%、さらに好ましくは少なくとも0.2%、最も好ましくは少なくとも0.25%を構成する。このような滑沢剤が使用される場合には、組成物の総重量に対して好ましくは多くとも10%、さらに好ましくは多くとも8%、最も好ましくは多くとも5%を構成する。好ましい滑沢剤はステアリン酸マグネシウムであり、これは錠剤処方の圧縮時に装置と顆粒化混合物の摩擦を軽減させるために使用される。
【0092】
拡散層調節固体を含む組成物には所望により、製薬技術において周知の他の賦形剤(たとえば、付着防止剤、着色剤、フレーバー、甘味剤および防腐剤)が包含される。
【0093】
酸性賦形剤:酸性賦形剤は高々6、好ましくは高々5.5、さらに好ましくは高々5のpKaを有する。pKaの測定方法は本技術分野の熟練者には周知であり、たとえば慣用の滴定法が包含される。本発明に有用な酸性賦形剤には大きくとも6、好ましくは大きくとも5.5、さらに好ましくは大きくとも5のpKaを有する上掲の賦形剤が包含される。
【0094】
適当な酸性賦形剤の例にはマレイン酸、クエン酸、酒石酸、パモエ酸、フマール酸、タンニン酸、サリチル酸、2,6-ジアミノヘキサン酸、カンファースルホン酸、グルコン酸、グリセロリン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イセチオン酸、コハク酸、炭酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、8-クロロテオフィリン、ベンゼンスルホン酸、リンゴ酸、オロト酸、シュウ酸、安息香酸、2-ナフタレンスルホン酸、ステアリン酸、アジピン酸、p-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、アスコルビン酸、硫酸、シクラム酸、ラウリル硫酸ナトリウム、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、グリシン、硫酸、マンデル酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、2-オキソグルタール酸、リン酸5-ピリドキサール、ウンデカン酸、p-アセトアミド安息香酸、o-アセトアミド安息香酸、m-アセトアミド安息香酸、N-アセチル-L-アスパラギン酸,樟脳酸、デヒドロコリン酸、マロン酸、エデト酸、エチレンジアミン四酢酸、エチル硫酸、ヒドロキシフェニルベンゾイル安息香酸、グルタミン酸、グリチルリチン酸、4-ヘキシルレゾルシノール、馬尿酸、p-フェノールスルホン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ラクトビオン酸、3'-アデニル酸、5'-アデニル酸、粘液酸、ガラクタール酸、パントテン酸、ペクチン酸、ポリガラクツロン酸、5-スルホサリチル酸、1,2,3,6-テトラヒドロ-1,3-ジメチル-2,6-ジオキソプリン-7-プロパンスルホン酸、テレフタル酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、およびそれらの組み合わせが包含される。
【0095】
好ましい酸性賦形剤には、たとえばマレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマール酸、サッカリン、重硫酸塩を含む硫酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、リジン、d-カンファースルホン酸、アスパラギン酸、アミノサリチル酸、シクラミン酸、グリシン、マンデル酸、マロン酸、グルタミン酸、グルコース-1-リン酸、およびそれらの組み合わせが包含される。
【0096】
塩基性賦形剤:塩基性賦形剤は少なくとも4、好ましくは少なくとも5、さらに好ましくは少なくとも6のpKaを有する。pKaの測定方法は本技術分野の熟練者には周知であり、たとえば慣用の滴定法が包含される。本発明に有用な塩基性賦形剤には、たとえば上掲の少なくとも4、好ましくは少なくとも5、さらに好ましくは少なくとも6のpKaを有する賦形剤が包含される。
【0097】
適当な塩基性賦形剤には、N-メチルグルカミン、アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ピペラジン、ジエチルアミン、塩化コリン、4-フェニルシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、イミダゾール、トリエタノールアミン、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、塩酸ピリドキシン、プロカイン、6-アミノ-2-メチル-ヘプタノール、1,2-エタンジアミン、tert-ブチルアミン、N-エチルグルカミン、ジエチルアミン、ジベンジルアミン、1-[(4-クロロフェニル)フェニルメチル]-4-メチルピペラジン、N-ベンジル-2-フェネチルアミンおよびそれらの組み合わせが包含される。
【0098】
好ましい塩基性賦形剤には、たとえばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(tris)、三ナトリウムリン酸、N-メチルグルカミン、ピペラジン、イミダゾール、プロカイン、オルニチン、アルギニン、グルコサミンおよびそれらの組み合わせが包含される。
【0099】
可溶化賦形剤:可溶化賦形剤は、薬剤と賦形剤の混合物について、賦形剤がない場合に比べて薬剤の生物学的利用性の上昇を生じる賦形剤である。適当な可溶化賦形剤には、たとえば上掲の賦形剤および“Handbook of Pharmaceutical Additives”, M. Ash & I. Ash, Gower Publications, Vermont (1997) に記載の賦形剤が包含される。好ましくは可溶化賦形剤は非ポリマーである。
【0100】
上掲の好ましい酸性および塩基性賦形剤に加えて、好ましい可溶化賦形剤にはたとえば、尿素、アセチル尿素、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマール酸ナトリウム、ステアリル乳酸ナトリウム、ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ココモノグリセリドスルホン酸ナトリウム、コカイン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム(水素硫酸ナトリウム)、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、THAM、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、オレイン酸スクロース、コハク酸三ナトリウム、クエン酸、ラウロイルザルコシン、リンゴ酸(ヒドロキシコハク酸)、フマール酸、クロトン酸、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパノール、L-アスパラギン酸、L-リジン、L-グルタミン酸、ジメチルベンズアミド、ニコチンアミド、エチル尿素、およびそれらの組み合わせが包含される。一部の実施態様においては、可溶化賦形剤はポリマーでもよい。適当なポリマーの可溶化賦形剤には、たとえばポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール3350、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール10000およびそれらの組み合わせが包含される。
【0101】
結晶成長阻害剤
拡散層調節固体には、所望により、薬剤の結晶化を防止または遅延させ、好ましくは生物学的利用性を上昇させるために、結晶成長阻害剤を包含させるかそれとともに処方する。結晶成長阻害剤は、薬剤と賦形剤の共圧縮またはスプレー乾燥の前および/または後に添加することができる。たとえば、拡散層調節固体は結晶成長阻害剤と配合し、得られた混合物をカプセル中に入れるかまたは錠剤に圧縮する。
【0102】
結晶成長阻害剤は本技術分野の熟練者には周知であり、たとえばセルロースポリマーが包含される。本発明に有用な結晶成長阻害剤には、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース(HPCAP)、酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAP)、酢酸フタル酸メチルセルロース(MCAP)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、酢酸フタル酸メチルセルロース(MCAP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)およびそれらの組み合わせが包含される。
【0103】
方法
本発明の拡散層調節固体は溶解性の劣る薬剤または溶解性の劣る薬剤の可溶性塩と賦形剤から、たとえば共圧縮およびスプレー乾燥を含む様々な方法によって調製することができる。溶解性の劣る薬剤の可溶性塩および/または賦形剤は混合する前に粒子の形態とすることが好ましい。粒子の平均サイズは、好ましくは大きくとも400μm、さらに好ましくは大きくとも100μm、なおさらに好ましくは50μm、最も好ましくは20μmである。粒子の平均サイズは、好ましくは少なくとも0.1μm、さらに好ましくは少なくとも1μm、なおさらに好ましくは少なくとも5μm、最も好ましくは少なくとも10μmである。拡散層調節固体の調製に薬剤および賦形剤の共圧縮を使用する場合には、好ましくは少なくとも70メガパスカル(MPa)(1平方インチあたり10,000ポンド(psi))、さらに好ましくは少なくとも140 MPa(20,000 psi)、なおさらに好ましくは少なくとも210 MPa(30,000 psi)、最も好ましくは少なくとも240 MPa(35,000 psi)の圧力を使用する。
【0104】
本発明の一実施態様においては、拡散層調節固体の共圧縮は、ローラー圧縮、ついで顆粒化を含む技術よって提供される。ローラー圧縮は顆粒化のために製薬工業で広く用いられている技術である。たとえばMillerら, “A Survey of Current Industrial Practices and Preferences of Roller Compaction Technology and Excipients Year 2000,”, American Pharmaceutical Review, pp. 24-35, Spring 2001参照。たとえば、溶解性の劣る薬剤または溶解性の劣る薬剤の可溶性塩と賦形剤を共圧縮するためにローラー圧縮を用いると2種の物質を「ガラス状」のリボンの形態の緊密な混合物として提供することが可能である。得られた「リボン」を軽く粉末化すると、共圧縮された拡散層調節粉末の粗い顆粒を生じる。微粉化物質(たとえば、薬剤、薬剤塩および/または賦形剤)が好ましく、ミクロン以下の形態が極めて有用である。
【0105】
ローラー圧縮過程は少なくとも9000ニュートン(2000ポンド力)、さらに好ましくは少なくとも18000ニュートン(4000ポンド力)、最も好ましくは少なくとも72000ニュートン(6000ポンド力)を用いる共圧縮を提供する。たとえば、Geregら, Pharmaceutical Technology(October 1, 2002);Adeyeye, American Pharmaceutical Review, 3: 37-39, 41-42(2000)参照。ローラー圧縮による薬剤の溶出については、またMitchellら, International Journal of Phamaceutics, 250: 3-11(2000)にも報告されている。
【0106】
本発明の他の実施態様においては、拡散層調節固体はスプレー乾燥を含む技術によって提供される。スプレー乾燥は、たとえば薬剤の粉末、顆粒および凝集生成物の提供のために製薬工業で広く用いられている。たとえば、PCT国際特許出願WO 0142221(Hagemanら);Nathら, Drying Technology, 16: 1173-1193(1998)参照。一般に、2種の物質の混合物は液体(たとえば揮発性液体)中に溶液、乳化液、または懸濁液として提供することができる。液体は、好ましくは水を含む揮発性液体である。液体は、必要な小滴のサイズ分布を有するスプレーを形成させるためにアトマイザーを通して圧縮する。好ましくは空気流と温度で制御される蒸発により所望の粒子が形成される。
【0107】
拡散層調節固体の特性
本発明の一部の実施態様では、拡散層調節固体は粒子の形態である。好ましくは、粒子の平均サイズは少なくとも5μm、さらに好ましくは少なくとも20μm、最も好ましくは少なくとも50μmである。粒子の平均サイズは大きくとも400μm、さらに好ましくは大きくとも300μm、最も好ましくは大きくとも200μmである。所望により、粒子は顆粒を形成させる。
【0108】
本発明の一部の実施態様では、拡散層調節固体は、好ましくは、大きくとも50μm、さらに好ましくは大きくとも30μm、最も好ましくは大きくとも20μmの空間ドメインにおいて均一である。
【0109】
分散層調節固体の溶出速度は、本技術分野の熟練者には周知の様々な技術によってしく定することができる。たとえば、Brynら, “Solid-State Chemistry of Drugs”, pp. 91-102, SSCI Inc., West Lafayette, IN(1999)。溶出速度はたとえば、USP溶出II型(パドル)装置または回転ディスク法によって測定することができる。好ましくは、溶出速度はpH1〜7の25℃の水中で測定される。pHは遊離薬剤の溶解度が最小になるpHに選択されるのが好ましい。
【0110】
一部の実施態様においては、溶出速度の測定に回転ディスク法を用いるのが好ましい。とくに、回転ディスク法は以下の方法での評価に使用される。粉末物質の混合物を調製し、ついでCarverプレスにより1分間4450ニュートン(1000ポンド力)(すなわち255 MPa (3700 psi))で0.48cm(3/16インチ)の直径の臼および杵で圧縮する。溶出は300 rpmの電気モーターでディスクを回転し、50mLの溶出液中に置く。メジウムのpHは溶出メジウムの内容に応じて0〜8に変動させることができる。興味ある化合物のUV吸収スペクトルを時間の関数として測定することにより薬剤の濃度を時間の関数として測定する。固有の溶出速度は、濃度対時間ラインのスロープを溶液中に暴露された興味ある化合物の表面積で除して計算する。この好ましい方法を使用する少なくとも1つのpHについて、溶解性の劣る薬剤または溶解性の劣る薬剤の可溶性塩を含む拡散層調節固体は、同じpHで、溶解性の劣る薬剤または溶解性の劣る薬剤の可溶性の塩単独よりも少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも100%大きい固有の溶出速度を有する。この場合、溶出速度はいずれも1〜7のpH、25℃の水中で測定する。好ましくは、pHは遊離薬剤の溶解度が最小であるpHに選択される。
【0111】
本発明の分散層調節固体はたとえばカプセル剤、錠剤および粉末剤またはサッシェ剤もしくは顆粒処方を含む様々な形態に使用される。本発明の分散層調節固体を包含するカプセル剤を調製することができる。本発明の分散層調節固体を包含する錠剤も、本技術分野の熟練者には周知の技術、たとえば世界的に広く行き渡っているウエブ、pformulate. com.に記載されているように調製できる。
【0112】
分散層調節固体の生物学的利用性は、本技術分野の熟練者には周知の様々な技術によって測定することができる。本発明の分散層調節固体の生物学的利用性は、好ましくは溶解性の劣る薬剤または溶解性の劣る薬剤の可溶性塩たとえば単独に比べて上昇する。さらに好ましくは本発明の分散層調節固体の生物学的利用性は、溶解性の劣る薬剤または溶解性の劣る薬剤の可溶性塩単独の生物学的利用性に比べて、少なくとも50%以上、最も好ましくは少なくとも100%大きい。拡散層調節固体は、動物とくにヒトにおける疾患の処置または予防の改良方法を提供するために使用される。
【実施例】
【0113】
本発明を以下の実施例によって例示する。とくに例、材料、量、および操作はここに掲げる本発明の範囲および精神に従って広く解釈されるべきであることを理解すべきである。
【0114】
実施例1:溶解性の劣る薬剤または溶解性の劣る塩基性薬剤の溶出を、その薬剤塩および酸性賦形剤の共圧縮混合物を用いる改良
材料および方法
デラビルジンメシレートは、たとえばPCT国際特許出願公告WO 91/09849(Romeroら)の記載のように製造できる。デラビルジンメシレートを含む錠剤(たとえば100mgまたは200mg)はPfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で市販品を入手できる。クエン酸一水和物はMallinckrodt, Hazelwood, MOから入手できる酸性賦形剤である。
【0115】
デラビルジンメシレートの固有の溶出速度測定
デラビルジンメシレートおよびデラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮混合物の固有の溶出速度測定は繊維光学的自動化回転ディスク溶出法により測定した。
【0116】
固有の溶出速度測定用のデラビルジンメシレート圧縮ディスクの調製
デラビルジンメシレートおよびデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物は、中央部が0.48cm(3/16インチ)の高速鋼(HSS)ロッド(8.9cm、31/2インチ長)からなる臼を用い、中央部に0.48cm(3/16 インチ)の孔部を有するステンレス鋼(SS)の杵、3.2cm(11/4インチ)直径×2.5cm(1インチ)中で共圧縮した。0.48cm(3/16 インチ)HSSロッドは型に1.9cm(3/4インチ)の距離まで挿入し、0.64(1/4インチ)は20±1mgの薬剤もしくは薬剤混合物を直径0.48cm(3/16)インチの孔部に配置するために残した。
【0117】
薬剤の添加後、臼(またはHSSロッド)を杵に挿入し、杵のすべてのアッセブリーを、0.64(1/4インチ)のSS基板を、杵の中への圧縮時、粉末床に対して強固に保持させるために3-ボルトホルダーに配置した。粉末の圧縮はCarverプレス上、力を4450ニュートン(1000ポンド力)(すなわち、255 MPa (37000 psi))までの段階的上昇を用い、ついで次第に、以下に記載のように圧力を低下させて達成された。1110の力(250ポンド力)を約10秒間適用し、圧力を除去した。これを2220ニュートン(500ポンド力)、3330ニュートン(750ポンド力)および4450ニュートン(1,000ポンド力)で繰り返した。4450ニュートン(1000ポンド力)(すなわち255 MPa (37000 psi))を」再び適用し、1分間維持した。圧力を単純に低下させることにより段階的に圧力を低下させ、ついで3330ニュートン(750ポンド力)に10秒間保持し、これを2220ニュートン(500ポンド力)、1110ニュートン(250ポンド力)で反復して、最後に圧力を除去した。
【0118】
杵およびホルダーをCarverプレスから除き、臼(またはHSSロッド)を捻ってロッドを緩め、ペレットをバックサイドから弛緩または拡張させた。3分(最低)の弛緩期後、HSSロッド上のセットスクリューを杵に強固に固定した。
【0119】
薬剤ペレットの一方の面が露出して薬剤ペレットを含有する臼および杵の全アッセンブリーをユニットとしてホルダーから外し、固有の溶出速度を以下の記載のように測定した。
【0120】
デラビルジンメシレートの固有の溶出速度の測定
薬剤ペレットの一方の面が露出した圧縮薬剤を含む杵内のHSSロッドを、1分あたり300回転(rpm)の固定した速さの電動機に取り付ける。杵を回転(300 rpm)させ、この間、杵はt=0に、37±0.5℃に維持した所望の脱ガス(ハウス真空、3分)溶出メジウム500mLを含むジャケット付800mLのビーカー(Pyrex, No. 1000)からなる溶出容器の中央まで下げる。溶出メジウムは、0.6% SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)を含む希塩酸(0.01, 0.001または0.0001 N HCl)またはpH6, 0.01 Mリン酸のいずれかから構成される。杵は圧縮薬剤が500mLの溶出ビーカーの底から約6.4cm(2.5インチ)および液体表面からほぼ同じ距離になるように配置された。紫外線(UV)分光によるモニタリングを連続して、以下の記載のように繊維光学UV自動化溶出法により行うか、サンプルをHPLCサンプリング法によって自動的に採取した。
【0121】
繊維光学溶出システム:繊維光学UV自動化溶出システムには、Ocean Optics PC1000型繊維光学スペクトロメーターを120 mHz Pentiumコンピューターに接続して用いた。溶出過程は290 nmにおいて繊維光学プローブにより連続して、1分あたり5〜10のデータポイントでモニタリングした。データはVisual Basicアプリケーションプログラムで自動的に処理し、これはスペクトロメーターからのデータの自動的収集を可能にした。
【0122】
デラビルジンメシレートの固有の溶出速度プロフィルはExcelにプロットし、固有の溶出速度はそのプログラムによって自動的に計算した。溶出期間は通常15分としたが、それより短く約1分またはそれより長く数時間とすることもできた。
【0123】
固有の溶出速度の計算:固有の溶出速度(IDR)は、溶液中の濃度対時間のプロットのスロープ、容量(500mL)および薬剤ディスクの表面積(0.177cm2)から次式によって計算した。
IDR=(スロープ・500mL)/(0.177cm2・60秒・分-1
スロープの単位は(μg・mL-1・分-1)、IDRの単位は(μg・cm-2・秒-1)である。
【0124】
デラビルジンメシレートおよびクエン酸混合物の光鏡検法
光鏡検法は、Olympus BHSP偏光顕微鏡で実施した。粉末をガラス顕微鏡スライド上に薄い層に拡げた。ついでオーバースリップに約5μLの溶液を負荷し、注意深く粉末上に下ろした。観察にはビデオカメラを使用した。映像はビデオカメラからの送信のデジタル映像によって保持した。
【0125】
結果
デラビルジンメシレートの予測される溶出速度
塩の溶出速度の計算のための理論はMooneyのモデル(Mooneyら, J. Pharm. Sci., 70: 13-22 (1981);Mooneyら, J. Pharm. Sci., 70: 22-32 (1981))に基づいた。興味あることに、デラビルジンメシレートの固有の溶出速度は極めて速く(約400μg・秒-1・cm-2)、pHにほとんど依存しないと予測された。デラビルジンメシレートの急速な溶出は、pH6では、以下に述べるようにメシレート塩の表面上におけるデラビルジン遊離塩基フィルムの形成により、実際上観察されなかった。デラビルジンメシレートとクエン酸の共圧縮についてのこの記録はデラビルジン遊離塩基の表面沈殿の防止と一致する。
【0126】
固有の溶出速度の研究
図2は、0.6%のSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)を含むpH6(0.01 Mリン酸)におけるデラビルジンメシレート−クエン酸混合物(2:1 w/w比)の固有の溶出プロフィルを、0.6%のSLS含むpH2(0.01 N)HClおよび6(0.01 Mリン酸)におけるデラビルジンメシレート単独の溶出速度とともに示す。
【0127】
pH2においては、純粋なデラビルジンメシレートは、初期には急速に溶解するが、約60%の薬剤が溶解したのちには、ペレットの表面にデラビルジン遊離塩基の形成により溶出は停止する。
【0128】
しかしながら、デラビルジンメシレート−クエン酸の共圧縮混合物の溶出はpH6(0.6% SLSによる)において速やかである。約12mgのメシレートを含む20mgのペレットの完全な(100%)溶出は10分未満で起こるが、同じ時間に溶解する純粋なデラビルジンメシレートのペレットは1%未満である。結論として、デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)の共圧縮混合物の溶出速度は、0.6% SLSによるpH6において、デラビルジンメシレート単独よりもはるかに速い。
【0129】
デラビルジンメシレート−クエン酸混合物(2:1)の定量的な固有の溶出速度および固有の溶出速度のpH依存性を図3に示し、結果を表1にまとめる。
【表1】

【0130】
すなわち、クエン酸とデラビルジンメシレートの共圧縮はデラビルジン遊離塩基の表面沈殿を防止し、これがpH6における急速な溶出の理由である。デラビルジンメシレートとクエン酸を混合して含有するペレットの溶出はバルク溶液のpHにはほとんど依存性を示さず(表1)、溶出メジウムのバルクpHには変化がなかった。
【0131】
デラビルジンメシレートペレットのpH2での溶出後、粉末x-線回折(XRD)解析では、無水の結晶性デラビルジン遊離塩基のスペクトルを示し(図4)、これは溶出時に表面上でデラビルジンメシレートのデラビルジン遊離塩基への変換が起こったことを指示している。
【0132】
デラビルジンメシレート単独およびデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物のペレットの顕微鏡下における外観およびXRD解析データに基づいて、塩の表面上におけるデラビルジン遊離塩基の出現について提案された機構は次の通りである。理論的には、緩衝液なしでは高濃度のデラビルジンメシレート溶液が、デラビルジンメシレート結晶−液体表面に、少なくとも200mg/mLの濃度で生成する。デラビルジンメシレートのこの表面溶液は、pHが2.88(イオン強度については未補正)であることから、遊離デラビルジンに関して高度に過飽和であり、これはデラビルジン遊離塩基の溶解度を維持するには高すぎると考えられる。結果として、デラビルジン遊離塩基の沈殿が起こる筈である。しかしながら、証拠として顕微鏡下、ペレットの表面上に凝集が見られることから、デラビルジン遊離塩基は溶解するデラビルジンメシレートの表面に直接、油状の形態として沈殿する。油状遊離塩基は多分、表面拡散、シンタリング(Ristic', “Sintering-New Developments” in Materials Science Monograph 4, Elsevier Scientific Publishing Co. (New York, 1997))を受け、結晶化し、x-線回折により確立されたように、ペレットの表面上に結晶性デラビルジン遊離塩基三水和物を生じる。溶出速度は、デラビルジンメシレートペレットの表面上に形成される結晶性デラビルジン遊離塩基の連続的なフィルムにより著しく低下する。
【0133】
溶出の直後における顕微鏡下のペレットの検査では、油状の粒子(デラビルジン)が弱く複屈折させることを示したが、ペレットの外表面上の物質(デラビルジン)では明らかな複屈折が見られた。
【0134】
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物でも、低い表面pHにより溶解するペレットの表面上にデラビルジン遊離塩基の沈殿は生じない。低い表面または拡散層pHは、デラビルジン遊離塩基に関して程度の低い過飽和を生じるので、遊離塩基の沈殿は防止される。この事実はpH6におけるデラビルジンメシレート−クエン酸混合物の著しく速い溶出を説明するものである。
【0135】
結論として、デラビルジンメシレートの固有の溶出速度はpH1〜2において迅速であるが、溶出時にはペレットの表面におけるデラビルジン遊離塩基への急速な変換によりpH6では遅い。これがpH6で固有の溶出速度が遅い理由である。しかしながら、デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物の固有の溶出速度は、デラビルジンメシレート単独より、ほぼ200倍速く、これは水性拡散層の低いpHが遊離塩基の表面沈殿を防止しているからである。デラビルジンメシレート−クエン酸混合物は、メシレート塩の場合よりも高い経口生物学的利用性を示すことにより、とくに高い胃のpHでは有利である。
【0136】
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物の固有の溶出
この研究は、デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)のCarverプレスによる共圧縮混合物は、0.6% SLSとのpH6における固有の溶出速度には大きな上昇を生じた。デラビルジンメシレート−クエン酸混合物の固有の溶出速度は、純粋なデラビルジンメシレート単独よりも200倍速かった(表1、図2および3)。興味あることに、pH6における溶出速度は驚くほど速く、pH2における場合と類似している。
【0137】
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物は、0.6% SLSを含むpH2およびpH6の溶出液体中に完全に溶解するが、デラビルジンメシレート単独では、pH2でわずか約60%しか溶解しなかった。すなわちデラビルジンメシレート−クエン酸混合物は、pH6ならびにpH2の両者で、溶解する塩の表面における遊離塩基の沈殿を防止する。
【0138】
実施例2:溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩および酸性賦形剤の共圧縮(2:1)混合物のローラー圧縮および溶出
材料および方法
デラビルジンメシレートは溶解性の劣る塩基性薬剤、デラビルジンの可溶性の塩であり、たとえばPCT国際特許出願公告WO 91/09849(Romeroら)の記載のように製造することができる。デラビルジンメシレートを含む錠剤(たとえば100mgまたは200mg)はPfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で市販品を入手できる。クエン酸一水和物はMallinckrodt, Hazelwood, MOから入手できる酸性賦形剤である。
【0139】
デラビルジンメシレートとクエン酸のローラー圧縮
ローラー圧縮はVector TF-Miniローラー圧縮機を使用し、平滑なDP型ロールにより実施した。圧縮に用いた成分は、秤量し、#30メッシュの篩を用いて篩過した。成分は手動で混合し、ローラー圧縮機のホッパーに添加した。ついで粉末を約3トンのロール圧と7rpmのフィードスクリュー速度を用いて顆粒化した。
【0140】
ロール速度は、圧縮機を停止させないような許容されるリボンを産生するように決定された。産生されたリボンをついでコニカルミル(Quadro Comil, 197S型)を通して円形の篩(#2A-062R037/41)、標準インペラー(#2A-1601-173)および0.38cm(0.150インチ)のスペーサーとともに供給した。
【0141】
さらに細かい顆粒が所望の場合には、ミックスを二度目にさらに細かい円形の篩(#2A039R031/25)を用い、Comilを通した。ついでローラー圧縮過程で通常行われるように、顆粒を篩過して大きな顆粒および細かい顆粒を除去した。1000μmより大きい顆粒および105μmより細かい顆粒を除去するためには#18および#140の篩を使用し、残部は更なる試験に用いた。この時点で除去された顆粒は、ローラー圧縮機に戻しリサイクルに付すが、再処理によって起こる可能性がある顆粒の性質に対する影響を避けるため、この場合はリサイクルを実施しなかった。ローラー圧縮試験のために調製したロットは、各ロットに使用した成分とともに表2に示す。
【0142】
デラビルジンメシレートおよびクエン酸のローラー圧縮は、混合物を単独で用いた場合の接着および過剰な粘着を欠くので、他の賦形剤の添加で、さらに便利なことは予備的な試験から明らかであった。したがって、溶出速度に悪影響を与えないで混合物の処理特性を改善するために添加できる賦形剤を同定するため、更なる実験を実施した。
【0143】
混合物の接着性を改善するため、薬剤/クエン酸混合物を用い、これに微結晶セルロース(Avicel)を加えてローラー圧縮を試みた。これは境界ぎりぎりのリボンを産生したが、ロールへの粘着が、この場合もこの方法の利用性を制限した。顆粒化を微結晶セルロース(たとえばAvicelの商品名で市販されている)とステアリン酸マグネシウム(0.5%)で試みたところ、許容されるリボンが生成し、容易に微粉砕されて顆粒を生成した。デラビルジン−クエン酸顆粒はAvicelまたはAvicelおよびステアリン酸マグネシウムで製造され、これらの顆粒を更なる溶出試験に使用した。
【0144】
ステアリン酸マグネシウムの添加は、デラビルジンメシレートの溶出はAvicel単独の顆粒に比較して遅延することが見出されたことから、以後の実験ではステアリン酸マグネシウムの添加は回避された。
【表2】

【0145】
Avicelおよびラクトースは、混合物の処理性および溶出に対する影響を測定するために検討した。
【0146】
顆粒化は、デラビルジンメシレートおよびクエン酸にAvicel/ラクトースの混合物を加え、上述の様式と同様に実施した。この組み合わせは顆粒化のために容易に顆粒に微粉砕できる許容されるリボンを製造した。
【0147】
しかしながら、これらの賦形剤を用いると粘着性が見られ、この方法は大規模の製造では許容し難いように思われた。これらの成分すべてでの顆粒化は、対照実験としてクエン酸を加えないで調製した顆粒と同様であった。
【0148】
USPによる溶出速度測定
デラビルジンメシレートを含む錠剤(たとえば100mgまたは200mg、Pfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で市販品を入手できる)を用いて溶出試験を実施した。試験にはUSP 2装置(パドル)を用い、溶出メジウム中、0.6%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.05 M pH6.0リン酸とpH6において、50 rpmで操作した。これらの条件は、各種pHおよび攪拌条件の検討後に、デラビルジンメシレート−クエン酸混合物の検査のために選択した。特定のメジウムが、曲線の緩やかなスロープにより、溶出プロフィルの処方識別能力を上昇させた。
【0149】
固有の溶出速度の測定
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)粉末固体の固有の溶出速度を繊維光学溶出装置により研究した。すべての実験は37℃において、0.6% SDSを含有するpH(0.01 N HCl)または0.05 Mリン酸緩衝液のいずれかを用いて行った。
【0150】
結果
ローラー圧縮によって調製したデラビルジンメシレート−クエン酸顆粒についての固有の溶出速度の研究
図5は、ローラー圧縮によって調製したデラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮混合物2種について一定の表面積ペレットを用いて測定した固有の溶出速度を示す。ロット31610-JMH-004aおよびJMH-004bはいずれも、デラビルジンメシレート単独よりはるかに速い固有の溶出を示した。
【0151】
ロットJMH-004aおよびJMH-004bの違いは、ロットJMH-004bにはステアリン酸マグネシウムが存在することのみである。ステアリン酸マグネシウムの存在は、溶出速度の履行を若干遅延させるように思われた。
【0152】
ローラー圧縮による顆粒での結果は、共圧縮混合物ついて得られた結果と一致した。一般に、顆粒中のデラビルジンメシレートの固有の溶出速度は、pH2におけるデラビルジンメシレートのバルク薬剤の場合より大きく、拡散層のpHがクエン酸によって低下したことが示唆された。
【0153】
溶出の加速は、薬剤が単にクエン酸に分散されたことによるものではないことを確認するために、デラビルジンメシレートとラクトースの2:1のペレットを用いてIDR実験を行った。この場合、溶出速度は、デラビルジンメシレート−クエン酸顆粒の場合よりほぼ50分の1であった。この実験は、薬剤の分散が重要なのではなく、溶解する薬剤を取り巻く拡散層内のpHの調節が、混合物の溶出挙動の改善における重要な因子であることを指示している。
【0154】
顆粒としてのデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物のUSP溶出挙動
図6は、0.6% SLSとpH6において測定したカプセル中3種の異なる物質についての、0.6% SLSとpH6におけるUSP溶出速度を示す。これらは、対照としてデラビルジンメシレート+ラクトース(2:1)顆粒(JMH-010)、デラビルジンメシレート+クエン酸(2:1)ローラー圧縮顆粒(JMH-004a)である。
【0155】
データはデラビルジンメシレート−クエン酸顆粒が極めて急速であることを明瞭に示している。重要なことは、デラビルジンメシレート−ラクトース処方に対し、溶出速度が有意に改善されたことである。これは固有の溶出速度の結果と一致し、溶解する微環境のpHが溶出パーフォーマンスを決める重要な因子であることを示唆している。最後に、クエン酸処方における変動性はいずれも、ラクトース処方の場合より小さかった。これも、本発明者らの顆粒モデルの挙動と一致し、これは塩基の沈殿(本来、再現性の劣る過程である)がクエン酸の使用により消失または減少するからである。
【0156】
考察
上述の解析に基づき、酸性または塩基性賦形剤と共圧縮または他の方法でそれに付着させたイオン化薬剤の塩により調製した拡散層pH調節固体は、溶解性の劣る母体の遊離酸および塩基を含む溶解性の劣る薬剤塩の溶出および経口生物学的利用性の改善を提供する可能性がある。
【0157】
デラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮混合物のpH6における溶出速度は、デラビルジンメシレートのバルク薬剤単独のpH6における溶出速度より約200倍速い。これはデラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮混合物による低い拡散層pHに帰すものであり、これがデラビルジン遊離塩基の表面沈殿を防止し、pH6でも急速な溶出を生じる。
【0158】
実施例3:溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩および酸性賦形剤の共圧縮混合物のラットにおける生物学的利用性
材料および方法
デラビルジンメシレートは、溶解性の劣る塩基性薬剤、デラビルジンの可溶性塩であり、たとえばPCT国際特許出願公告WO 91/09849(Romeroら)の記載のように製造することができる。デラビルジンメシレートを含む錠剤(たとえば100mgまたは200mg)はPfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で市販品を入手できる。クエン酸一水和物はMallinckrodt, Hazelwood, MOから入手できる酸性賦形剤である。
【0159】
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物のラットにおける生物学的利用性のデラビルジンメシレート錠の場合との比較
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物、およびPfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で入手できるデラビルジンメシレート200mg錠の経口生物学的利用性を、これらの2種の物質を粉末化(顆粒)型して20mg/kgの用量で、ラット(n=4)に経口投与(挿管投与)して、経口生物学的利用性を測定した。ラット(雄性、360〜400gm)に外部頚静脈カニューレを外科的に移植し、1週間回復させて使用した。ラットは投与前16時間絶食させた。
【0160】
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物はCarverプレス上約255 MPa(37,000 psi)の圧力で共圧縮し、ペレットを乳鉢と乳棒で軽く粉砕し、粗い顆粒とした。この材料を、0.48cm(3/16インチ外径)×0.16cm(1/16インチ)内径のTeflonチューブの10cm(4インチ)部分の一端に置き、粉末を少量のチーズ(American, Fat Fee)とともに保持させた。遠位に薬剤粉末を負荷し、1mLのシリンジに固着し、チューブをラットの胃内に挿入し、ついでチューブを通し1mLのpH5(0.001 M)酢酸塩緩衝液を投与した。
【0161】
血液サンプル(0.20mL)を頚静脈から採取し、1mLのリチウムヘパリン試験管に取った。遠心分離後の血漿を集めアッセイの日まで−20℃で保存した。血漿レベルはHPLCで測定し、デラビルジン(遊離塩基として)の濃度は、既知量のデラビルジン遊離塩基でスパイクした一連の血漿サンプルを用いて測定した。
【0162】
デラビルジンの血漿レベルは上述のようにHPLCによって測定した。濃度は、一連の標準と比較するピーク面積法で測定した。
【0163】
結果
この試験の目的はデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物の経口投与に際し、胃のpH5におけるラットの経口生物学的利用性を測定し、Pfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で入手できるデラビルジンメシレート200mg錠の場合と比較することであった。ラットに経口的に投与したデラビルジンメシレート塩の用量は20mg/kgであった。
【0164】
デラビルジンメシレート−クエン酸混合物が、後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者に共通している無酸症(Zimmermanら, Int. J. Clin. Pharmacol. Ther. 32: 491-496, 1994)でも有利であるか否かを調べる試みで、胃のpH5を用いて生物学的利用性試験を実施した。
【0165】
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物のラット経口生物学的利用性の胃のpH5におけるデラビルジンメシレート錠の場合との比較
デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物の経口生物学的利用性を、胃のpH5においてラット(n=4, 20mg/kg)に経口投与後に評価し、Pfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で市販されているデラビルジンメシレート200mg錠の場合と比較した。
【0166】
生物学的利用性の研究は、デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物を顆粒粉末として経口挿管投与、ならびにデラビルジンメシレートの200mg錠の一部を顆粒粉末として経口投与(挿管投与)することにより行った。これらの2種の材料の用量は1kgあたり遊離塩基20mg当量(fbe/kg)であった。図3は、HPLCで測定したラット血漿におけるデラビルジン濃度を示す。
【表3】

【0167】
図7はデータのプロットを示し、デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物のラット経口生物学的利用性は、AUCの合計によって評価すると、Pfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で市販されているデラビルジンメシレート錠200mgの場合と比較して、酢酸塩緩衝液pH5(0.001 M)の胃内pHを用いてほぼ2倍高かった。
【0168】
このデータは、共圧縮デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)顆粒性混合物の生物学的利用性の上昇は、薬剤の迅速な、さらに完全な溶出を可能にする混合物表面における低い拡散層pHの結果であることを示唆している。
【0169】
したがって、このラットでの研究におけるデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物の高い生物学的利用性は、多分、これらの実験の場合にラット胃内に存在する高いバルクpHにもかかわらず(a)迅速に溶解する混合物の能力および(b)胃および腸内で過飽和溶液を形成する能力によるものと思われる。
【0170】
固有の溶出試験では、pH5においてデラビルジンメシレートは、溶解するメシレート塩結晶の表面上に極めて迅速な直接的遊離塩基型フィルムの形成によって、デラビルジンメシレート単独の溶解は極めて遅いことを示している。一旦、表面上に遊離塩基が形成すると、溶解は阻害されるので、その型からのデラビルジンの生物学的利用性は比較的低い。しかしながら、共圧縮デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)の顆粒状混合物の場合には、拡散層のpHは低く保持されるので、溶出は比較的速やかに進行し、経口生物学的利用性は改善される。
【0171】
結論として、デラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)の共圧縮混合物のラット経口生物学的利用性は、pH5の胃内ではデラビルジンメシレート錠の場合の約2倍と高い。錠剤またはカプセル剤形態におけるこのデラビルジンメシレートとクエン酸の共圧縮分散層調節粉末化混合物は、通常高い胃内pHを有するAIDS患者において、より高くより均一な血中レベルを発生する可能性が強い。
【0172】
結論
初期の胃pH5におけるラット経口生物学的利用性は、しかしながら、デラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮粉末化混合物の生物学的利用性がPfizer Inc, New York, NYからDESCRIPTORの商品名で市販されているデラビルジンメシレート錠の場合と比較して約2倍高いことを示した。これは、デラビルジンメシレート−クエン酸混合物が、とくに、高い胃内pH値、通常多くのAIDS患者でより均一な血中レベルという利点を有することを指示している。
【0173】
実施例4:溶解性の劣る酸性薬剤の可溶性塩および塩基性賦形剤のスプレー乾燥粉末の製造およびラット経口生物学的利用性
背景
チプラアナビル二ナトリウム(図1b)は、溶解性の劣る、pH6においてほぼ5〜10μg/mLの水溶性を有する二酸性薬剤(すなわち、チプラアナビル)である。チプラアナビル二ナトリウムのカプセル処方中のバルク薬剤に認められる低い経口生物学的利用性は、インビボにおける胃および腸での塩加水分解および相当する遊離酸、チプラアナビルの沈殿によると考えられる。
【0174】
本例は、塩基性賦形剤およびポリマーまたは界面活性剤を含有するチプラアナビル二ナトリウムのスプレー乾燥した粉末形態の製造、ならびにラットにおける経口生物学的利用性の測定を示す。
【0175】
チプラアナビル二ナトリウムのスプレー乾燥バルク薬剤粉末の製造
バルク粉末は、チプラアナビル二ナトリウムと各種賦形剤の水溶液をスプレー乾燥することにより調製した。スプレー乾燥処方の要約は表4に示す。Yamato GA-21実験室用スプレー乾燥機をすべての試験に使用した。用いた塩基性賦形剤には、ポリビニルピロリドン(ポビドン, PVP; K-値30)が包含される。その他の賦形剤には、トレハロース(二糖類)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC; 2910, 3センチポイズ)、トリス (ヒドロキシメチル)-アミノメタン(TRISまたはTHAM)および商品名PLURONIC F68で市販されている界面活性剤(BASF, Mt. Olive, NJから入手可能)が包含される。
【0176】
薬剤/賦形剤溶液を、表示入口および出口温度それぞれ125℃および70℃の使用により、Yamatoスプレー乾燥機中でスプレー乾燥した(表4)。スプレー乾燥速度は2.5〜5g/分、噴出は0.5〜1バール、風の流量は3.5〜4.0とした。黄色の、自由に流動する粉末をサイクロンから取り出し、テフロン張りのガラススクリュートップバイアル中に置き、冷蔵庫条件下に保存した。50〜85%の収率が得られ、これはこのスプレー乾燥機ユニットでは典型的である。
【0177】
バルク粉末をスプレー乾燥およびYamato GA-21サイクロン内での収集により単離した。50〜85%の収率が得られ、これはこのスプレー乾燥機ユニットでは典型的である。水分含量を計算に入れれば効能は理論値に極めて近く、薬剤にも、賦形剤にも優先的な喪失はないことがHPLC解析により確認された。
【0178】
表4に示すように、一部のサンプルでは、スプレー乾燥粉末に、ラウリル硫酸ナトリウムのような添加物を配合した。
【表4】

【0179】
ラット血漿サンプルにおけるチプラアナビルのHPLC分析
様々なチプラアナビル二ナトリウムスプレー乾燥サンプルの投与後におけるラット血漿サンプル中のチプラアナビルのHPLC分析は、RP8カラム(Zorbax, DuPont)と、メタノール水性0.05 Mギ酸緩衝液, pH4(75:27)から構成される移動相を用いて実施した。
【0180】
ラット経口生物学的利用性
チプラアナビル二ナトリウムのスプレー乾燥粉末ならびに母体のチプラアナビル二ナトリウムバルク薬剤は、Tacomic(Germantown, NY)から入手したラット(250〜290g)7〜8匹を一群として用い粉末の挿管により投与した。挿管投与は、外径0.32cm(1/8インチ)×内径0.48cm(3/16インチ)のテフロンチューブの10cm(4インチ)部分を使用し、一片のチーズ(American, Fat Fee)をチューブの底に入れて行った。所望のチプラアナビル二ナトリウム粉末化バルク薬剤をチューブ内に置き、チューブをラットの胃内に挿入した。薬剤はテフロンチューブから取り出し、チューブを通して2mLの水を送った。すべての場合、用量は2mg/kgとした。
【0181】
血液サンプルは、アセトニトリルを加えて蛋白質を沈殿させ、ついで遠心分離によって処理した。サンプルは上述のようにアッセイした。
【0182】
ラット経口生物学的利用性試験
チプラアナビル二ナトリウム粉末(20mg/kg)のラットにおける経口生物学的利用性は図2に示す血中レベル曲線から計算し、AUCInf値は表5に示す。
【表5】

【0183】
チプラアナビル二ナトリウムのスプレー乾燥粉末のラット経口生物学的利用性
チプラアナビル二ナトリウムのスプレー乾燥粉末(20mg/kg)(図8および表5)は、チプラアナビル二ナトリウム+THAM+PVP+SLSからなるスプレー乾燥粉末についてAUC値は最高(AUC=46.4μg・mL-1・時)であった。後者のAUCはその母体化合物、チプラアナビル二ナトリウム(23.4μg・mL-1・時、絶食時)の約2倍高く、一方、摂食状態での生物学的利用性も同様であった。
【0184】
実施例5:溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩の処方の雄ビーグル犬における経口生物学的利用性
緒言
図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の固有の溶解度は1μg/mL未満である。図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩は、より溶解性で、ラットにおいて100mgより高い用量またはそれと等しい用量で、よりよい経口生物学的利用性を与えることが示されたので遊離塩基の方が好ましいと考えられる。
以下のイヌでの試験では、HCl−塩懸濁液の経口生物学的利用性は溶液(97%)に比較して低かった(27%)。他の試験では、オメプラゾール(胃のpHを上げる)の前投と酸チエーサーの共投与を比較した。図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の経口生物学的利用性は、胃のpHが4〜6になるオメプラゾールの前処置後に薬剤を投与した場合は、胃のpHが1〜2になる投与直後に酸チエーサーを与えた場合より、有意に低かった。したがって、図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩のイヌにおける低い傾向生物学的利用性は、一部の個体における高い胃のpHによるものであった。高いpHは薬剤の遊離塩基としての沈殿を引き起こすと仮定される。したがって、これらの個体においては高い胃のpHにより経口生物学的利用性は低下する。
【0185】
この問題を解決するための選択には、図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩の溶解する共圧縮顆粒を取り囲む拡散層pHの制御のために選ばれた酸と共圧縮される薬剤から構成される固体粒子の処方である。酸には、顆粒を取り囲む拡散層におけるpHを低く維持することが意図され、それにより溶出時の高濃度を達成するものである。これらの拡散層調節固体のpHは、遊離塩基型(すなわち、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤)への沈殿を防止または低下させるものでなければならない。
【0186】
処方
HCl−塩の水性懸濁液:図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩を2% Cremophor ELとともに0.15 M NaClに、濃度が30mg/gになるように懸濁した。
【0187】
図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩と共圧縮したpH調節固体の調製:
図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩およびクエン酸からなる拡散層調節固体形態は以下の方法で製造された。
(1)図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤のバルク塩酸塩とクエン酸の両者を、乳鉢および乳棒で、手動により粉砕する。
(2)粉砕された材料を、2:1の質量比で、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩2g、I型(34563-DCS-005)および1gのクエン酸と物理的に混合する。
(3)混合物を、臼および杵アッセンブリー、0.64cmを用いて9000ニュートン(2000ポンド力)で打錠した。それぞれ約100mgの錠剤は、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩およびクエン酸を共圧縮して作成した。臼および杵アッセンブリーの内部は粘着から保護するため、ステアロイルフマール酸ナトリウムで軽くコーティングした。
【0188】
ついで錠剤は、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩−クエン酸の共圧縮混合物を乳鉢および乳棒で軽く粉砕して調製し、粗い粉末として、硬質ゼラチンカプセル#00(Torpac, Hanover, NJ)に充填した。各カプセルへの充填量はイヌの体重に対し遊離塩基15mg/kg当量になるように調整した。
【0189】
図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤のpH調節塩酸塩−クエン酸共圧縮混合物の回転ディスク溶出による特性
拡散層pH調節固体は、回転ディスク溶出装置を用い、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩が純粋な薬剤単独とともに、既に溶出速度の大きな低下を認める条件下、pH4および37℃で評価した。薬剤の検出は306nmにおけるUV吸収で達成された。
【0190】
動物プロトコール:一般的説明
上記処方を、4匹の雄ビーグル犬(Marshall Farms, USA, Inc, North Rose NY)に投与した。各投与の間には1週間のウオッシュアウト期間を設けた。用量は遊離塩基(すなわち、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤)15mg/kg当量とした。胃のpHのコントロールには2×10mgのオメプラゾール(Prilosec, Astra Zeneca)を、試験処方の投与ほぼ18時間および1時間前に前投与した。
【0191】
動物を朝、投与前に体重測定し、投与量(15mg遊離塩基当量/kg)を投与し、ついで相当する処方の容量または重量を計算した。液体処方は、投与前後に秤量したシリンジで投与した。ドライ処方は直接、硬質ゼラチンカプセル中で秤量した。
【0192】
血液サンプル(2mL)は頚静脈または橈側皮静脈からEDTA真空チューブに、投与前、ならびに投与後0.33、0.67、1、2、4、6、8、12および24時間後に収集した。サンプルは1時間まで氷上に保存し、血漿を約2000×gで10分間遠心して分離した。分離した血漿はポリプロピレン保存バイアルに収集し、分析まで−10℃またはさらに低温で保存した。
【0193】
動物プロトコール:試験システム
イヌな年齢1〜5歳で、体重は12〜17kgであった。動物には耳に刺青を使用して個々に同定した。動物には明らかな健康異常はなかった。試験の開始前に、血液サンプルを完全な血液化学的および臨床化学的評価のために臨床検査室に提出した。
【0194】
動物はステンレス鋼のケージ中、アスペン(Aspen)材の削り屑で寝床を作って飼育した。温度は65°〜78°F、相対湿度は30〜70%とした。換気は12回交換/時以上とし、蛍光灯は12時間の点滅サイクルで提供した。
【0195】
動物は前々日の夕方前から、投与の4時間前まで絶食させた。その他はMPI Certified Canine飼料#5007 400g/日までを与えた。飲用再塩素化脱イオン水を自由に摂取させた。
【0196】
血漿中の薬剤濃度の測定
イヌ血漿中の図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の測定には、LC−MSに基づく分析方法を用いた。略述すれば、この方法では血漿蛋白質のアセトニトリル沈殿、逆相様式でのC8カラム上アナライトの迅速な分離、および陽イオン気圧化学的イオン化による分析(APCI-MS)を選択されたイオンモニタリング(SIM)を使用した。図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤はM+Hイオンに相当するm/e 432において検出された。内部標準(IT)はm/e 446で検出した。シグナル強度−時間データを得て、UPACSクロマトグラフィーデータシステムにより分析した。UPACSクロマトグラフィーシステムは、ベースラインを同定し、ピーク面積(PA)の計算を実施した。図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤対ISのピーク面積比(PAR)を計算し、装置の応答を線形回帰分析によって検量し、PAR対マトリックス中に調製された検量標準の理論的濃度の1/濃度によって加重した。試験サンプルおよびQCサンプルの血漿濃度は応答検量線から決定した。
【0197】
薬物動態学的計算
個々の動物についての濃度-時間データは、濃度−時間プロフィルからの非コンパートメント薬物動態パラメーターを計算するADMEデータベースにおける両アッセイに従った。これらの計算で、「q」と記録された濃度、すなわち定量の限界を下回る濃度はゼロとして処理した(Glassら, ADME User's Manual, Version 5.0, October 14, 1999)。
【0198】
見かけの終結速度定数、λzは半対数変換濃度−時間データの終結線形セグメントの線形回帰分析によった。ゼロから無限大までの血漿濃度−時間曲線下面積AUC0-∞はAUC0-1+Ct/λz(この場合、AUC0-1は0から最終的に測定可能な血漿濃度までの血漿濃度−時間曲線下面積、Ctおよびλzは見かけの終結速度定数である)として計算した。AUC0-1は線型テイプゾイドの方法によって計算した。
【0199】
観察された最大血漿濃度Cmaxおよびその起こった時間tmaxは濃度−時間データの検査によって決定した。AUC0-∞およびCmaxについての平均および標準偏差は手計算で求めた。
【0200】
結果
処方の特性−pH調節固体
拡散層pH調節固体は回転ディスク法をpH4で用いて溶出性能を測定することにより特性づけた。図9は、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩について測定された回転ディスク溶出をpHの関数として示す。溶出速度はpHの上昇とともに低下し、これは高いpHの胃において観察されたイヌの低い生物学的利用性と相関した。図10には、拡散層調節固体についての回転ディスクのデータを示す。溶出速度は、非緩衝バルク薬剤に関し、pH調節固体についてpH4において著しい上昇を示した。溶出は極めて急速で、薬剤/クエン酸ペレットは約12分で完全に溶解した。
【0201】
生物学的分析の性能
アッセイは2回の試行で実施し、データを取得し、UPACSデータシステムに集積した。AUCの計算はADMEデータベースによって実施し、得られたデータはADMEによって集積した。
【0202】
血漿マトリックスで調製した標準曲線の10個のポイントを各試行の始めと終わりにアッセイした。アッセイ2の標準1〜5の初期の反復は実験室エラーにより脱落させたが、試行の終わりに注射した標準の第二のセットは許容できるものであった。アッセイ2についての高い標準(70.7μM)は許容し難い応答により脱落としたが、この濃度に近づく試験サンプルはなかった。標準曲線の一部削除によるアッセイの反復は必要なかった。
【0203】
許容できる標準について、定量の下限は0.0495μM、この場合の総回収率は103%、変動係数(C. V.)は12%であった。高い濃度の標準は1〜8%の低いC. V.範囲で測定した。0.982で調製したQCの低いサンプルは、アッセイ1で8回、アッセイ2で6回測定した。両アッセイにわたって、このQCサンプルの測定濃度は理論値の80〜110%、総回収率は91±8%であった。中程度(14.7μM)および高度(47.7μM)のQCサンプルにおける総回収率はそれぞれ、108±6%および97.5±5%であり、すべてのQCサンプルの総回収率は99±10%であった。検量標準データおよびQCデータに基づくアッセイの実行は、アッセイが、この研究プロトコールにおいて試験された処方の生物学的利用性評価に十分な正確さおよび精度を可能にすることを示唆している。
【0204】
4つのサンプルは、これらのサンプルで記録された濃度が他の濃度−時間データトプロフィルにおいて一致しなかったことから、再度アッセイを繰り返した。対象1および2の処置AおよびBの両者において、24時間サンプルが、以前のサンプルとの関係で上昇(C24>C12)しているように見えた。4つのすべてのサンプルについての二重の再アッセイは、初期の結果を確認した。再アッセイのデータは生物学的利用性の解析には使用せず、再アッセイの記録はADMEに記録しなかったが、アッセイの記録研究の生データとともに集積した。
【0205】
図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤のプロトタイプ処方のビーグル犬における性能
すべての処方はイヌに良好な耐容性を示した。嘔吐は認められなかった。
【0206】
個々のおよび平均血漿濃度プロフィルは図11aおよび11bに示す。一般に、0.33および2時間に観察される単一濃度の最大値からなる濃度−時間プロフィルは、血漿濃度の漸減に続いた。大部分の場合、見かけの終結速度定数の評価することができて、AUC0-infの計算が可能であった。イヌ1および2の処置Aについては、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の血漿濃度は24時間に、低下よりむしろ上昇しているように見えた(C24>C12)。この場合、24時間の時点での観察はAUC0-infの計算には無視した。処置Bのイヌ4では、経口生物学的利用性は極めて低く、ただ1個の血漿サンプルのみが定量可能であり、したがって、AUC0-infは計算されなかった。対象1および2処方についての最後のサンプリング時間(24時間)における血漿濃度は前のサンプリング(12時間)の場合より有意にたかかった。これらの時点のデータはAUC、Cmaxおよびtmaxを計算する場合には除外した。対象4についての生物学的利用性は、pH調節固体の投与後の1つを除くすべての時点で定量限界に達しなかった。したがって、AUCの計算は不可能であった。
【0207】
検討した処方についてのAUC、Cmaxおよびtmaxを表6に示す。比較のために、前の試験からの一部の結果も包含する。HCl−塩懸濁液(参考処方)は低いAUCを示し、これは前の試験でオメプラゾールと共投与された同じ処方の場合に匹敵するものであった。同じ個体動物が本試験におけるようにその試験で使用されたことから、それは驚くことではなく、データは両試験の間で匹敵することが示唆される。
【0208】
AUCは、pH調節システムで、オメプラゾールと共投与されたHCl−塩の場合より有意に高かった(約4倍)。
【0209】
AUCについて上述したように、処方の間でCmaxは変動した。tmaxには明らかな差は観察されなかった。
【表6】

【0210】
考察
結果は、pH−調節固体が、図1cに例示された溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩の生物学的利用性の改善に有用であることを示唆している。
【0211】
実施例6:溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩と酸性賦形剤の混合物についての圧縮の関数としての溶出プロフィル
デラビルジンメシレート:クエン酸2:1(w/w)混合物を0.48cm(3/16インチ)の臼および杵の組み合わせを用い、1分間255 MPa(37,000 psi)でCarverプレス中において共圧縮した。デラビルジンメシレート:クエン酸2:1(w/w)はまた、混合物を乳鉢および乳棒により手動で粉砕しても調製した。共圧縮混合物および単純な物理学的混合物についてpH6(0.05 Mリン酸塩)中溶液の溶出プロフィルはデラビルジン(μg/mL)の濃度を、図12aに示すように時間(分)の関数として測定することにより決定した。共圧縮拡散層調節(DLM)粉末の溶出は2種の賦形剤の手動粉砕物理学的混合物よりはるかに速かった。
【0212】
同様に、サンプルはデラビルジンメシレート:クエン酸:ラクトース2:1:1(w/w/w)の混合物からも調製した。サンプル5Aは手動で粉砕し、粉末として溶出バスケットに入れた。サンプル5Bは0.48cm(3/16インチ)の臼および杵を用い、1分間255 MPa(37,000 psi)でCarverプレス中において共圧縮し、次いで手動で軽く粉砕し、粉末として溶出バスケットに入れた。図12bは、デラビルジンメシレート共圧縮拡散層調節固体(5B)についてのpH6および25℃での溶出バスケッツにおける溶出プロフィルを、手動で粉砕した成分の物理学的混合物(5A)と比較して例示する。溶出層調節固体は、より急速な溶出を示し、またそれらの成分単独よりも高い濃度の溶液を発生する能力を示している。255 MPa(37,000 psi)で共圧縮したサンプルについての観察の場合と同じ溶出速度がまた、17 MPa(2500 psi)で共圧縮されたサンプルについても観察された。
【0213】
拡散層調節固体の生物学的利用性性能と、2種の賦形剤混合物を共圧縮することなくゼラチンカプセル中に取った場合を比較するために、他の実験を設計した。拡散層調節固体は、2:1の重量比のデラビルジンメシレートとクエン酸を0.48cm(3/16インチ)の臼および杵の組み合わせを用い1分間255 MPa(37,000 psi)でCarverプレス中において共圧縮して形成させた。デラビルジンメシレートとクエン酸の同じ比率の手動で粉砕した物理学的混合物も調製し、ゼラチンカプセル中に封入した。DLM固体の溶出速度は3.04mg/分を、単純物理学的混合物についてpH6における1.04と比較した。DLM固体の溶出速度は、2種の成分の単純な乾燥物理学的混合物に対して明らかに約3倍まで上昇した。
【0214】
他の実験では、デラビルジンメシレート:クエン酸1:1の混合物(w/w)を調製した。圧縮していない粉末のサンプルを17 MPa(2500 psi)で圧縮後、および266 MPa(37,000 psi)で圧縮後カプセル中に配置し、pH6のメジウム中、図13に例示するように相対溶出速度を測定した。溶出速度は、溶出の開始後に得られた薬剤濃度の初期スロープ対時間プロフィルから測定した。このデータは材料を255 MPa(37,000 psi)で圧縮した場合に溶出速度が最も速いことを示した。17 MPa(2500 psi)で圧縮した材料では、非圧縮材料に比べてその溶出速度はわずかな上昇を示したのみであった。
【0215】
実施例7:溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩と酸性賦形剤の混合物についての、酸性賦形剤の重量分画の関数としての溶出プロフィル
溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩(すなわち、図1dに例示)と酸性賦形剤(たとえば、リンゴ酸)の混合物を0〜40重量%のリンゴ酸から調製した。混合物は、0.48cm(3/16インチ)の臼および杵の組み合わせを用い1分間255 MPa(37,000 psi)でCarverプレス中において共圧縮し、手動で粉末に粉砕した。1分間に300回転(rpm)での回転ディスク操作法をpH6(0.05 Mリン酸)を使用し、25℃で時間に対して溶解したサンプル量(mg)を測定することによって溶出プロフィルを決定した。図1dに例示された可溶性の塩酸塩−リンゴ酸共圧縮混合物の溶出プロフィルは図14に例示する。溶出速度の有意な上昇が7%という低いL-リンゴ酸重量によっても観察された。
【0216】
他の実験においては、溶解性の劣る塩基性薬剤(デラビルジン)の可溶性塩(たとえば、デラビルジンメシレート)を酸性賦形剤(たとえば、クエン酸)の混合物から、重量比1:7.5(サンプルA)および1:1(サンプルB)のでメシレート:クエン酸混合物を調製した。サンプルBは0.48cm(3/16インチ)の臼および杵の組み合わせを用い1分間255 MPa(37,000 psi)でCarverプレス中において共圧縮し、ついで手動で軽く粗い粉末に粉砕した。サンプルAは薬剤(デラビルジンメシレート)および酸性賦形剤(クエン酸)の単純な物理学的混合物から構成される。粉末をカプセル中に取り、pH6で溶出速度を測定した。サンプルA(物理学的混合物)の溶出速度は1.69mg/分、サンプルB(共圧縮薬剤混合物)の溶出速度は5.91で、有意に速かった。溶出速度はpH2でも測定し、類似の結果:サンプルAで1.67mg/分、サンプルBで5.03mg/分であった。すなわち、拡散層が調節された混合物は、単純な物理学的混合物よりすみやかに溶解した。
【0217】
実施例8:溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩と酸性賦形剤の混合物の様々な酸性賦形剤についての溶出プロフィル
溶解性の劣る塩基性薬剤可溶性塩酸塩(すなわち、図1dに例示)と酸性賦形剤(たとえばクエン酸、リンゴ酸、フマール酸、キシナホ酸(xinafoic acid)およびアスパラテーム)の混合物を約1:1のモル比で調製した。混合物は、0.48cm(3/16インチ)の臼および杵の組み合わせを用い1分間255 MPa(37,000 psi)でCarverプレス中において共圧縮し、300 rpmでの回転ディスク操作法をpH6(0.05 Mリン酸)を使用し、25℃で時間に対して溶解したサンプル量(mg)を測定することによって溶出プロフィルを決定した。混合物の溶出プロフィルは図15に例示する。最も高い溶出速度は、酸性賦形剤としてフマール酸、リンゴ酸およびクエン酸を用いた場合に観察された。塩酸塩についての溶出プロフィル(図15)は比較のために賦形剤を含んでいない。
【0218】
実施例9:溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩と酸性賦形剤の共圧縮混合物の顕微鏡的特性
2種のデラビルジンメシレート:クエン酸混合物を比較するため、光学顕微鏡、ラマン顕微鏡および赤外顕微鏡を使用した。混合物の一つは172 MPa(25,000 psi)より大きい圧力でのローラーコンパクト顆粒であり、他方は2種の粉末を乳鉢および乳棒でほぼ1分間粉砕した実験室規模の手動粉砕製剤である。デラビルジンメシレート:クエン酸混合物は0.48cm(3/16インチ)の臼および杵の組み合わせを用い、17 MPa(2,500 psi)でCarverプレス中において圧縮したので、互いに粘着することはなく、更なる顕微鏡的特性はこのサンプルで実施した。解析により、粒子サイズおよび均一性に有意な差が明らかにされた。解析により、ローラーで圧縮した材料は微細に配合された成分の大きな顆粒からなり、一方、実験室規模の手動で粉砕した材料は会合していない分離した不均一な粒子から構成されていた。ラマンおよび赤外顕微鏡のデータからは、手動で粉砕した材料は約100μmの空間ドメインで不均一性を示し、一方、ローラーで圧縮した材料は比較的均一で、約15μmの空間ドメインに低下した。
【0219】
光学顕微鏡:サンプルは、倍率7×〜40×の商品名SMZ-10(#AN079059)の商品名で入手できる立体顕微鏡、および商品名OPTIPHOT(#231561)で入手できる倍率100〜400×(すべて、Nikon USA(Melevile, NY)から入手可能)を用いてトップ/透過光で検査した。
【0220】
ラマン顕微鏡:Thremo Nicolet(Madison, WI)からALMEGA(#373500)の商品名で入手できる分散ラマン顕微鏡を以下の条件において操作した:532 nmレーザー、10〜50%レーザー力、25μmピンホール開口部、4.8〜8.9cm-1(672 line/mm)分解能、1.9cm-1データスペーシング、2秒露出時間、16露出および20×または50×LWD対物。
【0221】
ラマン顕微鏡ラインマッピング試験は、Prior(Rockland, MA)からProscan
の商品名で入手できる動力を装備したx-yステージおよびz-軸焦点コントロールとThremo Nicolet(Madison, WI)から入手できる商品名Atlusのソフトウエアを用いて実施した。ラインマップは5μmステップでの標本のビデオ画像の横切と定義された。50×長の作動距離(LWD)およびピンホールスペクトグラフ開口が約2μmの空間分解能を創生する。
【0222】
ポイントマッピング試験は、Prior(Rockland, MA)からProscanの商品名で入手できる動力を装備したx-yステージおよびThremo Nicolet(Madison, WI)から入手できる商品名Atlusのソフトウエアの自動焦点能力を用いて実施した。解析すべきポイントは可視画像からソフトウエアAtlus中に定義された。スペクトルは上述のスペクトルパラメーターを用いて自動的に収集した。
【0223】
赤外顕微鏡:ラインマッピングはNEXUS 670(#374953)の商品名で市販されているフーリエ変換赤外(FTR)を赤外(IR)顕微鏡アクセサリーおよび商品名CONTINUUMで市販されている動力装備x-yステージおよびz-軸焦点コントロール(いずれもThremo Nicolet(Madison, WIから入手可能)とATRUSの商品名で市販されている制御ソフトウエアを用いて実施した。 ラインマップは10μmステップでの標本のビデオ画像の横切と定義され、32×IR対物レンズおよび15μm反射開口部セッティングを使用した。スペクトルはMCT-A検出器を50μmエレメントとともに使用し、透過様式で4cm-1スペクトル分解能において収集した。サンプルはNaCl基板上で平坦化した。
【0224】
光学顕微鏡による比較
サンプルの顕微鏡検査(7〜400×)により、粒子サイズおよび成分の分布に有意な差
が明らかになった。乳鉢および乳棒で製造されたサンプルの粒子サイズは、ローラー圧縮顆粒化によって調製されたサンプル(図16aおよび16b)より、全体的にはるかに小さかった(図16cおよび16d)。
【0225】
デラビルジンメシレートおよびクエン酸のローラー圧縮を介して創生されたサンプルは円形/平等な黄褐色の、直径が通常150〜1000μmの顆粒から構成された。粉砕時、材料はほぼ均一な褐色の圧縮塊の外観であり、屈折性であるが、正味の消光は検出できず、μm(またはそれ未満)のサイズ範囲でのドメインでの結晶性材料の凝集が指示された。デラビルジンメシレートおよびクエン酸の個々の粒子は認識できなかった。したがって、このサンプルの個々の粒子は大きな顆粒で存在するが、顆粒の構造内では密接に会合している(μmのスケール)。
【0226】
デラビルジンメシレートおよびクエン酸の手動粉砕で調製されたサンプルは、10〜100μmサイズドメイン中の分離した不均一混合物であり、黄褐色多色性(すなわち、方向によって色が変動する)横紋プレートならびに無色の円形/平等および結晶を形成したプレートと、2次または3次の屈折性を包含する。黄褐色の粒子はそれらの色によりデラビルジンメシレートと推測された。したがって、このサンプルの個々の成分は、ローラー圧縮顆粒化により調製されたサンプルに比べてはるかに会合の程度が低いものと考えられる。
【0227】
ラマン顕微鏡
不均一性の評価は分散ラマン顕微鏡Almegaのマッピング能力を使用して行われた。ローラー圧縮顆粒化によって調製されたサンプルについては、顆粒を横断して内径を横切って約255μmの距離に5μmのステップでラインマップを発生させた。得られたラマンスペクトルは、図17に示すようにマップのすべての位置で均一な特徴を示したが、ピーク強度は顆粒を横切ってかなり変動し、デラビルジンメシレートの特徴はマップの各位置で明瞭であり、クエン酸のスペクトルの特徴は明らかではなかった。図18はマップ上の一ポイントにおけるデラビルジンメシレートとクエン酸(含水)の比較を示す。
【0228】
乳鉢と乳棒により製造したサンプルにおける個々の粒子をラマン顕微鏡で解析し、光学顕微鏡で認められた不均一性を確認した。多色性粒子はデラビルジンメシレートに類似のスペクトルを産生したが、無色の粒子はデラビルジンメシレートの両特徴およびクエン酸の特徴を有するスペクトルを産生した。典型的なスペクトルを図19に示す。
【0229】
赤外顕微鏡
デラビルジンメシレートおよびクエン酸についての相対的ラマン応答は未知であったから、ローラー圧縮顆粒化により産生したサンプルをさらにIR顕微鏡スペクトルによっても解析した。顆粒の一分画を数μmの薄さにして透過を可能にし、ついで15μmの空間分解能ラインマップを発生させた。この製剤を横切るラインマップから、すべての位置でデラビルジンメシレートおよびクエン酸の特徴の存在が明らかになり、2つの成分15μmの技術的空間分解能内に配合されていることが確認された。相対的ピーク高における変動が認められ、これはマクロ規模でのデラビルジンメシレートおよびクエン酸の相対的濃度における変動を反映している。図20はラインスキャンの間に収集されるスペクトルを示し、1750〜1700cm-1におけるクエン酸の特徴が明白であり、一方、デラビルジンメシレートは1650〜1300cm-1の領域に明らかである。図21は、クエン酸およびデラビルジンメシレートに対するマップからの典型的なスペクトルである。
【0230】
結論
顕微鏡的評価により、ローラー圧縮材料と手動粉砕材料を比較すると、粒子サイズおよび成分分布に有意な差が明らかになった。ローラー圧縮材料は大きな顆粒(150〜1000μm)からなり、強固に圧縮され、混合物の均一性はスペクトロスコピー技術の空間ドメインに低下した(IRでは約15μm)。手動で粉砕した材料は個々の成分は、主として非会合の分離した粒子であり、配合物の均一性は約100μmのオーダーであった。
【0231】
実施例10:溶解性の劣る非イオン化薬剤と可溶化賦形剤の共圧縮混合物の溶出速度
材料および方法
図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤は、前述のように、たとえばPCT国際特許公告WO99/29688(Poelら)のに記載のように調製した。尿素はAldrich Chemical Company, St. Louis, MOから入手できる可溶化賦形剤である。
【0232】
図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤は、固有の溶出速度を測定するためディスクに圧縮した。
【0233】
図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤−尿素−SDS(33:66:1重量による)の混合物は秤量し、乳鉢と乳棒中に入れた。3種の成分すべてを乳鉢と乳棒で手動により1分間穏やかに粉砕した。回転ディスク実験のために約20mgの混合材料を調製し、実施例1の記載と同様に255 MPa(37,000 psi)で共圧縮した。
【0234】
図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤の固有の溶出速度の測定
図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤の固有の溶出速度および図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤−尿素−SDS−共圧縮混合物を、実施例1の記載と同様に繊維光学自動化回転ディスク法により測定した。溶出メジウムにはpH2における500mLの0.01N HClを37℃で使用した。図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤は239.3 nmのUV吸収をモニタリングすることによって検出した。
【0235】
結果
図22は、図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤単独(●)ならびに33%の図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤、66%の尿素および1%のSDSから共圧縮した拡散層調節固体(■)と比較した回転ディスク溶出結果を示す。共圧縮した固体では、溶出速度(計算された固有の溶出速度=290μg・秒-1・cm-2)は、バルク単独(計算された固有の溶出速度=2.3μg・秒-1・cm-2)は比べ大きな上昇を示した。濃度対時間プロフィルの初期のスロープは、共圧縮固体では、バルク薬剤単独よりも100倍以上速く溶解した。溶出速度におけるこの大きな上昇は、図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤の拡散層における溶解度の上昇の結果であり、これは尿素の濃厚溶液によった。収集された溶解度のデータは、図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤の溶解度が尿素溶液で有意に増大し(図23)、尿素と共圧縮した、図1eに例示された溶解性の劣る非イオン化薬剤から作成した拡散層調節固体についての溶出速度も改善された溶出を示した。
【0236】
実施例11:溶解性の劣る酸性薬剤の可溶性塩と塩基性賦形剤(1:1)の共圧縮混合物の溶出
材料および方法
図1(f)に例示された薬剤は、たとえば米国特許6,077,850(Carterら)の実施例68に記載されたようにして調製できる溶解性の劣る酸性薬剤である。この薬剤は、pKa約3、固有の溶解度は1μg/mL未満の水溶性の劣る遊離酸である。したがって、この分子は、酸性pHの水性メジウムへの溶解度は低い。
【0237】
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)はAldrich Chemical Company, St. Louis, MOから入手できる可溶化賦形剤である。処方に使用される他の賦形剤には、MCC Coarse(154645)、Fast Floラクトース、クロスカルメロースナトリウム、NF Type A(128622)、コロイド状二酸化ケイ素NF(112250)およびステアリン酸マグネシウムNF粉末が包含され、これらは標準の等級で、改変しないで使用された。
【0238】
図1(f)に例示された薬剤は、溶解性の劣る酸であり、胃内に存在するpH環境に比較的不溶である。したがって、薬剤のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(またはTRIS)の塩は薬物の水溶性の代替固体を提供するために調製された。
【0239】
しかしながら、図24に示すように、TRIS塩単独(バルク活性医薬成分としてゼラチンカプセル中に処方)では、薬剤の溶出速度は実質的に上昇しなかった。TRIS塩は遊離酸よりも大きな水溶性を有するので、もっと速く溶解することが期待された。しかしながら、pH 4.5のメジウム中で遊離酸はこの処方から沈殿し、遊離酸から最初に作成したカプセル処方よりも溶解が遅い大きな粒子を形成した。
【0240】
溶出実験のpH(pH 4.5)におけるそのバルク溶解性に関して遊離酸が理解されている濃度においてこの場合に起こった遊離酸の沈殿に注目することが重要である。しかしながら、塩の比較的高い溶解度のため、拡散層における遊離酸の濃度は極めて高く、拡散層における局所的な沈殿が生じた。
【0241】
拡散層における塩から遊離酸の沈殿を防止するために、拡散層調節固体を調製した。薬剤は酸性であるから、pHを上昇させて沈殿を防止するために塩基性賦形剤TRISが使用された。TRISのpKaは8.1であり、したがってTRISの濃厚溶液は拡散層内の局所的pHを有意に上昇させることができる。処方の組成は、図1(f)に例示された薬剤対TRISの質量比は1:1とした。この組成物には、図1(f)に例示された薬剤のTRIS塩(13.62mg)、TRIS(10.00mg)、MCC Coarse(154645)(35.19mg)、Fast Floラクトース(35.19mg)、クロスカルメロースナトリウム、NF Type A(128622)(5.00mg)、コロイド状二酸化ケイ素NF(112250)(0.50mg)およびステアリン酸マグネシウムNF粉末(0.50mg)が包含される。
【0242】
拡散層調節固体は以下の操作を用いて調製された。すなわち、図1(f)に例示された薬剤のTRIS塩を付加的なTRISと合せて混合した。崩壊剤(たとえば、クロスカルメロース)を混合物に加え、十分に混合する。配合物をついで、面の平坦な道具およびCarverプレスを用いて塊に圧縮した。塊を乳鉢および乳棒で粉砕し、粉砕された顆粒を#20メッシュの篩に通した。付加的な充填剤(たとえば、ラクトース)、結合剤(たとえば、微結晶セルロース)および崩壊剤を顆粒に混合し、適当な時間混合した。次に、滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム)を加え、短時間混合した。最終混合物は、適当なサイズの道具および圧縮力を用い、Carverプレスにより錠剤に圧縮した。
【0243】
USP溶出速度の測定
溶出プロフィル(図24に例示)は、図1(f)に例示された溶解性の劣る酸性薬剤の遊離酸についてカプセル中(-▲-)、図1(f)に例示された溶解性の劣る酸性薬剤のTRIS塩について(-■-)、および図1に例示された溶解性の劣る酸性薬剤−TRIS(1:1)共圧縮(Carverプレス)混合物について(-●-)測定した。溶出試験は、USP II型装置上37℃、パドル速度1分あたり50回転(rpm)で完了させた。薬剤濃度の定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を用いて実施した。溶出実験の間のpH制御には、pH 4.5のクエン酸塩緩衝液を使用した。緩衝液の容量は900mLとした。溶出試験は10mg(遊離酸当量)の処方で実施した。
【0244】
結果
図24は、共圧縮混合物についての溶出実験の結果である。共圧縮混合物は、バルク塩単独に比べて溶出速度および溶解した総量に大きな上昇を示した。上昇した溶出は、薬剤塩およびTRIS粒子の周囲にTRISの可溶化によって提供されたpHの上昇による拡散層における遊離酸の沈殿防止によるものと考えられる。
【0245】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、刊行物、および電子的に利用可能な材料(たとえば、遺伝子バンクのアミノ酸およびヌクレオチド配列の提案)の完全な開示は参照によりここに組み込まれる。上述の詳細な記述および実施例は、明確な理解のためにのみ与えられるものである。それらを不必要な限定と理解すべきではない。本発明は、提示および記述された正確な詳細に限定されるものではなく、本技術分野の熟練者に自明な変化は特許請求の範囲に定義された本発明内に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1−1】薬剤の化学構造を例示する。図1aは溶解性の劣る塩基性薬剤(すなわちデラビルジン)の可溶性塩(すなわちデラビルジンメシレート)の化学構造を例示する。図1bは溶解性の劣る酸性薬剤(すなわちチプラナビル)の可溶性塩(すなわち、チプラナビル二ナトリウム)の化学構造を例示する。図1cは溶解性の劣る塩基性薬剤の化学構造を例示する。
【図1−2】薬剤の化学構造を例示する。図1dは溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩の化学構造を例示する。図1eは溶解性の劣る非イオン化薬剤の化学構造を例示する。図1fは溶解性の劣る酸性薬剤の化学構造を例示する。
【図2】pH6で0.6%SLSと共圧縮(Carverプレス)したデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)混合物についての固有の溶出速度プロフィル(x-軸は分での時間、y-軸はμg/mLでの濃度)を示すグラフである。pH2およびpH6、ならびに37℃における0.6%SLSとのデラビルジンメシレート単独についての固有の溶出速度プロフィルも示す。デラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮混合物はpH2およびpH6では10分未満でそのほぼ100%が溶解する。デラビルジンメシレート単独では、0.6%SLSとpH6で60分以内に約2%が溶解するにすぎず、pH2では約60%の溶出が起こる。
【図3】デラビルジンメシレート単独およびデラビルジンメシレート−クエン酸(2:1)共圧縮混合物のペレットの固有溶出速度(μg-cm-2・秒-1)に対するpHの影響を示すプロットをメシレートデラビルジンメシレートの理論的溶出速度とともに例示する。デラビルジンメシレートのような水溶性の高い塩の溶出はpH依存性をほとんど示さない。しかしながら、バルク薬剤単独では、pH6における遊離塩基層の表面沈殿によりバルクpHに極めて強い依存性を有する。デラビルジンメシレートとクエン酸の共圧縮は、溶解表面における遊離塩基の形成を妨害し、これが一方ではpH6における溶出速度を実質的に増大させる。
【図4】pH2におけるデラビルジンメシレートでの溶出ペレット試験からの残部の粉末X-線回折(XRD)パターンの選択部分のオーバーレイ(x-軸は2つのθ角、y-軸は1秒あたりのカウント)ならびにデラビルジン遊離塩基と、デラビルジンメシレートのXI型(無水)およびXIV(三水和物)についての対照XRDスペクトルを例示する。溶出ペレットは、pH2.0 HCl, 300 rpmおよび37℃における15分間の固有溶出試験から得られ、X-線スペクトルは数日後に記録した。溶出ペレットのXRDスペクトルは結晶性無水デラビルジン遊離塩基およびデラビルジンメシレート二水和物(XIV型)のほぼ同量(17°〜18°2θの領域参照)とともに非結晶性の物質(多分デラビルジン遊離塩基)およびデラビルジンメシレート、XI型塩の痕跡量の存在を示す。
【図5】デラビルジンメシレート−クエン酸顆粒についての37℃における固有溶出速度(μg-cm-2・秒-1)を例示するグラフである。顆粒(左側および中央)の溶出速度は明らかにpH非依存性で、バルク薬剤、デラビルジンメシレート(右側)とは著しく対照的である。顆粒中におけるステアリン酸マグネシウムの存在は溶出速度を有意に低下させた(ロットLMH-004a左対JMH-004b中央)。
【図6】デラビルジンメシレート−ラクトース顆粒およびデラビルジンメシレート−クエン酸顆粒についての0.6%SLSでのpH6におけるUSP溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y軸は溶解%である)のグラフ表示である。
【図7】デラビルジンメシレート−クエン酸共圧縮顆粒混合物(■)、ならびにPfizer Inc., New York, NYからRESCRIPTORの商品名で市販されているデラビルジンメシレート錠(〇)を、pH5のラット胃内に20mg/kgの用量(n=4)で経口投与後、デラビルジンのラット平均血漿レベル(x-軸は時での時間、y軸はμg/mLの濃度)をグラフで表示する。
【図8】チプラナビル二ナトリウムのスプレー乾燥粉末から調製した拡散層調節固体、THAMおよびPVPを含みラウリル硫酸ナトリウムを加えたゼラチンカプセル(■)およびバルクのチプラナビル二ナトリウム(◆)の経口投与後におけるラット血中レベルの曲線(x-軸は時間、y軸はμg/mLの濃度である)をグラフで例示する。いずれの場合も用量は20mg/kgのチプラナビルとした。すべての処方を7〜8匹のラット群に経口的挿管により投与した。血漿サンプルは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってアッセイした。処方の組成は表4に示し、AUCInfの値は表5に示す。
【図9】図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩の溶出挙動についてのpH依存性をグラフ(x-軸は分での時間、y軸はμg/mLの濃度である)で例示する。この塩の溶解度はこの領域では比較的一定であるにもかかわらず、溶出速度はpHの上昇につれて急激に低下する。
【図10】例1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩を酸性賦形剤、クエン酸と共圧縮した場合の溶出プロフィルをグラフ(x-軸は分での時間、y軸はμg/mLの濃度である)で例示する。共圧縮物質の溶出はpH におけるその塩単独に比べ、はるかに早かった。
【図11】図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の投与後、各個体における血漿濃度対時間をグラフ(x-軸は時間、y軸はμg/mLの濃度である)で例示する。図11aは図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤のHCl−塩の投与を示す。個体1および2は24時間時点での薬物動態特性の計算には含めなかった。図11bは図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩とクエン酸を含むpH−調節固体の投与を示す。個体1および2は24時間時点での薬物動態特性の計算には含めなかった。図11bは図1cに例示した溶解性の劣る塩基性薬剤の塩酸塩とクエン酸を含むpH−調節固体の投与を示している。
【図12】溶解性の劣る塩基性薬剤(たとえばデラビルジン)の可溶性塩(たとえばデラビルジンメシレート)と酸性賦形剤(たとえば、クエン酸)の混合物についての溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y軸はμg/mLでの濃度)を圧縮の関数として示す。図12aは、デラビルジンメシレート:クエン酸の2:1(w/w)混合物についてpH6(0.05Mリン酸塩)における粉末溶出データを例示する。共圧縮粉末の溶出は、2つの賦形剤を手動で粉砕した場合よりはるかに速かった。図12bは、pH6, 25℃でのバスケット溶出において、共圧縮した拡散層調節固体(5B)についての溶出プロフィルを、手動で粉砕した成分混合物の場合と比較して例示する。拡散層調節固体はデラビルジンメシレート:クエン酸:ラクトース(2:1:1 w/w/w)から調製した。サンプル5Aは手動で粉砕し、溶出バスケット内に粉末として入れた。サンプルB5は共圧縮したのち、手動で粉砕し、溶出バスケット内に粉末として入れた。拡散層調節固体は成分単独の混合物より急速な溶出を示し、また高濃度の溶液を発生する能力を示す。
【図13】デラビルジンメシレート:クエン酸の1:1(w/w)混合物をカプセル中pH6のメジウムに溶解させた場合の相対溶出速度を共圧縮混合物の関数として例示する。溶出速度は薬剤濃度の初期のスロープと溶出開始後に得られた時間プロフィルとして測定した。
【図14】溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩(すなわち図1dに例示)と酸性賦形剤(たとえば、リンゴ酸)の混合物についての溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y軸はμg/mLでの濃度)を図1dに例示した可溶性塩酸塩と様々な重量分画(0〜40%)のリンゴ酸との共圧縮混合物について、pH6, 25℃での回転ディスク操作を用いて例示する。7重量%のような低含量のリンゴ酸でも、溶出速度には有意な上昇が観察された。
【図15】溶解性の劣る塩基性薬剤の可溶性塩酸塩(すなわち図1dに例示)と酸性賦形剤(たとえば、クエン酸、リンゴ酸、フマール酸、キシナト酸、およびアスパルテーム)の共圧縮混合物についての溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y軸は溶解したサンプルのmg)を、pH6, 25℃での回転ディスク操作を用いて例示する。すべてのサンプルは当量のモル比(約1:1)で調製した。最も速い溶出速度は酸性賦形剤としてフマール酸、リンゴ酸、およびクエン酸を用いた場合に観察された。比較のために賦形剤を使用しない塩酸塩の溶出プロフィルを含める。
【図16】デラビルジンメシレート:クエン酸混合物サンプルの光学顕微鏡検査(7-400×)を表示する。図16aおよび16bははローラー圧縮顆粒によって調製したサンプルを示し、図16cおよび16dは乳鉢および乳棒で調製したサンプルを示す。図16aおよび16cは同じ低倍率である。図16bおよび16dは同じ高倍率である。サンプルには粒子サイズおよび成分分布に有意な差が認められた。乳鉢および乳棒で調製されたサンプル(図16cおよび16d)の粒子サイズは全体としてローラー圧縮顆粒によって調製されたサンプル(図16aおよび16b)よりはるかに小さかった。
【図17】デラビルジンメシレートおよびクエン酸混合物のローラー圧縮顆粒により調製し、二分した顆粒を横切るラマン顕微鏡ラインマップ(x軸はcm-1でのラマンシフト、y軸はカウントである)を例示する。
【図18】デラビルジンメシレートおよびクエン酸混合物のローラー圧縮顆粒により調製し、二分した顆粒を横切るラマン顕微鏡ラインマップからの1点を表す(中段)スペクトルでのラマンスペクトル(x軸はcm-1でのラマンシフト、y軸はカウントである)を例示する。上段のスペクトルはデラビルジンメシレートを表し、下段のスペクトルはクエン酸を表す。
【図19】デラビルジンメシレートおよびクエン酸混合物から乳鉢および乳棒で製造した典型的な個々の結晶についてのラマンスペクトル(x軸はcm-1でのラマンシフト、y軸はカウント)(中央の2つのスペクトル)であり、上から2番目のスペクトルは黄褐色多色性粒子、上から3番目のスペクトルは無色の粒子である。上段のスペクトルはデラビルジンメシレートであり、下段のスペクトルは含水クエン酸である。
【図20】デラビルジンメシレートとクエン酸からローラー圧縮顆粒によって調製した平坦化顆粒の空間分解能15μmでの赤外顕微鏡ラインマップ(x軸はcm-1での波数、y軸は吸収である)の例示である。
【図21】デラビルジンメシレートとクエン酸からローラー圧縮顆粒によって調製した二分顆粒を横切るラインマップからの典型的な点の赤外線スペクトル(x軸はcm-1での波数、y軸は吸収である)の例示である(中段のスペクトル)。上段のスペクトルはクエン酸を表し、下段のスペクトルはデラビルジンメシレートを表す。
【図22】図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤−尿素−ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(66:33:1)の共圧縮(Carverプレス)混合物について溶出メジウムとして37℃, pH2における0.01 N HClによる固有の溶出速度プロフィル(x-軸は分での時間、y-軸はμg/mLでの濃度)を示すグラフ(■)である。図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤単独の固有の溶出速度のプロフィルについても示す(●)。図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤-尿素-SDSを共圧縮した混合物の溶出速度は図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤単独のpH2, 0.01 N HCl中37℃における溶出速度よりも100倍以上大きかった。共圧縮混合物についての2分後の溶出速度の安定化は、この時点で全ペレットがほぼ溶解したという事実によるものであった。
【図23】図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤の尿素水溶液中における溶解度を示すグラフである(x-軸はg/mLでの尿素の濃度、y-軸は図1に例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤のmg/mLでの濃度である)。図1eに例示した溶解性の劣る非イオン化薬剤の溶解度は尿素濃度の増加とともに上昇する。
【図24】カプセル中の図1(f)に例示した溶解性の劣る酸性薬剤の遊離酸(-▲-);図1(f)に例示した溶解性の劣る酸性薬剤のTRIS塩(-■-);および図1(f)に例示した溶解性の劣る酸性薬剤−TRIS(1:1)の共圧縮(Carverプレス)混合物(-●-)についての溶出プロフィル(x-軸は分での時間、y-軸は溶解したサンプル%)を例示する。溶出試験はUSP II-型装置上、37℃、パドル速度1分あたり50回転(rpm)で完了した。薬剤濃度の定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を用いて実施した。溶出試験中のpHの制御にはpH 4.5のクエン酸緩衝液を用いた。緩衝液の容量は900mLとした。溶出試験は10mg(遊離酸当量の処方を用いて実施した。塩(-■-)は高い溶解度にもかかわらずカプセル中の遊離酸(-▲-)ほど急速には溶解しなかった。共圧縮混合物(-●-)の溶出は他の処方に比べて著しく速かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH6〜7の水性液体中25℃において大きくても50μg/mLの溶解度の塩基性薬剤の可溶性塩、ならびに酸性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤から構成される拡散層調節固体であって、ここでこの拡散層調節固体の少なくともあるpHにおける固有の溶出速度が、同じpHにおける薬剤塩単独の固有の溶出速度より少なくとも10%大きく、この場合、溶出速度はいずれも回転ディスク法を用いてpH1〜7の水中25℃で測定されたものである、上記拡散層調節固体。
【請求項2】
pH6〜7の水性液体中25℃において大きくても50μg/mLの溶解度の酸性薬剤の可溶性塩、ならびに塩基性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤から構成される拡散層調節固体であって、ここでこの拡散層調節固体の少なくともあるpHにおける固有の溶出速度が、同じpHにおける薬剤塩単独の固有の溶出速度より少なくとも10%大きく、この場合、溶出速度はいずれも回転ディスク法を用いてpH1〜7の水中25℃で測定されたものである、上記する拡散層調節固体。
【請求項3】
pH6〜7の水性液体中25℃において大きくても50μg/mLの溶解度の非イオン化薬剤、および可溶化賦形剤から構成される拡散層調節固体であって、ここでこの拡散層調節固体の少なくともあるpHにおける固有の溶出速度は、同じpHにおける薬剤単独の固有の溶出速度より少なくとも10%大きく、この場合、溶出速度はいずれも回転ディスク法を用いてpH1〜7の水中25℃で測定されたものである、上記拡散層調節固体。
【請求項4】
pH6〜7の水性液体中25℃において大きくても50μg/mLの溶解度の塩基性薬剤の可溶性塩、ならびに酸性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤から構成される拡散層調節固体。
【請求項5】
pH6〜7の水性液体中25℃において大きくても50μg/mLの溶解度の酸性薬剤の可溶性塩、ならびに塩基性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤から構成される粒子からなる拡散層調節固体。
【請求項6】
pH6〜7の水性液体中25℃において大きくても50μg/mLの溶解度の非イオン化薬剤からなる粒子、および可溶化賦形剤から構成される拡散層調節固体。
【請求項7】
粒子の平均サイズは5μm〜400μmである請求項4〜6のいずれか1項に記載の拡散層調節固体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の拡散層調節固体、および結晶成長阻害剤からなる組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の拡散層調節固体からなるカプセル。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の拡散層調節固体からなる錠剤。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の拡散層調節固体を提供することからなる薬剤の生物学的利用性を上昇させる方法。
【請求項12】
pH6〜7の水性液体中25℃で大きくても50μg/mLの溶解度の塩基性薬剤の可溶性塩および酸性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤からなる粒子を調製することを含む、請求項1、4および7のいずれか1項に記載の拡散層調節固体の製造方法。
【請求項13】
pH6〜7の水性液体中25℃で大きくても50μg/mLの溶解度の酸性薬剤の可溶性塩および塩基性賦形剤、可溶化賦形剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される賦形剤からなる粒子を調製することを含む、請求項2、5および7のいずれか1項に記載の拡散層調節固体の製造方法。
【請求項14】
pH6〜7の水性液体中25℃で大きくても50μg/mLの溶解度の非イオン化薬剤および可溶化賦形剤からなる粒子を調製することを含む、請求項3、6および7のいずれか1項に記載の拡散層調節固体の製造方法。
【請求項15】
薬剤および賦形剤の混合物をローラー圧縮によって粒子を調製することからなる請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2007−527394(P2007−527394A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518756(P2006−518756)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/021143
【国際公開番号】WO2005/004763
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
2.PENTIUM
3.TEFLON
4.テフロン
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】