説明

指示支援装置

【課題】本発明は、目標から到来した反射波で示される画像の分解能の向上を図る高分解能処理の対象を設定する指示支援装置に関し、構成が大幅に複雑化することなく高分解能処理の処理量を削減できることを目的とする。
【解決手段】到来した反射波で示される画像の内、前記画像に含まれる見かけ上の目標が位置する領域もしくは部位を抽出する抽出手段と、前記領域または前記部位を分解能の向上を図る高分解能処理の対象とする制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標から到来した反射波で示される画像の分解能の向上を図る高分解能処理の対象を設定する指示支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
進路上にある陸地や塀などの大きな障害物の位置を常に把握することは、レーダ操作者にとっては、衝突等の事故を回避するために非常に重要な事項である。
【0003】
例えば、海上を航行する船舶に搭載されたレーダ装置の操作者は、指示器に表示されているPPI(Plan Position Indicator)等のスコープ上における陸地(海岸線や島の一部を含む。)については、以下の基準(1)〜(3)に基づいて識別する。
【0004】
(1) 対地座標系における静止目標である。
(2) 船舶などの小さな目標に比較してエコーの表示面積が広く連続して分布している。
(3) 上記スコープとして表示されている画像の輪郭や外形と、地図(操作者が記憶しているものであってもよい。)等として与えられる地理情報との照合の下で、陸地等であることに大きな矛盾がない。
【0005】
なお、本発明に関連性がある先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献3があった。
(1) 「電子海図データ格納部から自船を中心とする電子海図データを電子海図データ読み出し部で読み出し、陸地遮断ゲート発生部へ送出し、ここで別途入力される送信周期トリガーと空中線方位信号とで送信スイープ毎にその時の空中線の向いている方位における陸地部分に対応する時間位置に遮断ゲート信号を発生し、これをレーダ目標検出部へ送りここで遮断ゲートにかかる時間位置では目標検出処理を禁止することにより陸地領域から目標が検出することをなくする」ことによって、「船舶レーダ装置において陸地領域からの反射に起因する誤認によりPPI表示上に船舶のシンボルマークおよび航行データが表示されることのないようにする」点に特徴がある船舶レーダ用目標検出装置…特許文献1
【0006】
(2) 「レーダ送受信機からの反射信号を入力し、レーダ装置で観測される物標の速度・進行方向を予測計算して自動追尾し、自船との衝突の可能性等を算出,表示する自動レーダプロッティング援助装置(ARPA)の信号処理方法において、自船の現在位置情報を用いて前記レーダ装置で出力されるレーダ映像と同じ範囲の海図情報を取得し、この海図情報から自船を中心とする陸地部分の方位,距離情報を得、前記レーダ送受信機から入力される反射信号に前記方位,距離情報で特定できる前記陸地部分からの反射信号を除去して前記ARPAへ入力し、海上からの反射信号にのみ補足処理を施す」ことによって、「捕捉に必要ない陸地部分を自動的に電子的なラインでマスクし、陸地部分からの影響を受けることなく適切な衝突防止情報を提供できる」点に特徴があるARPA及びその信号処理方法…特許文献2
【0007】
(3) 「原画像データに対して2次元方向にデコンボリューション処理を施して、原画像データとデコンボリューション画像データとに基づいて、画像パターンの略一致する部分を反射体画像としてデコンボリューション画像より抽出し、画像パターンの不一致部分を非反射体画像として原画像データより抽出し、両画像データを合成して探知画像データとする」ことによって、「レーリー散乱による画像データを扱って、レーリー散乱によるスペックルパターンがもつ情報を損なうことなく、且つ反射体の像を高い分解能で観測できるようにし、レーリー散乱による偽像を効果的に抑制して、目的の物体を的確に探知できるようにする」点に特徴がある探知画像データ処理方法、物体探知装置、超音波診断装置、およびレーダ…特許文献3
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−20031号公報
【特許文献2】特開平11−23707号公報
【特許文献3】特開平9−269370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来例の内、特許文献3以外では、陸地については、以下に列記する特徴があるにもかかわらず、識別を妨げる要因の緩和や解消は、必ずしも十分には図られていなかった。
【0010】
(1) 船舶等の目標との対比においては、反射源が隣接しあるいは密度高く連なって分布し、かつ起伏等の地形と建造物等の地物との反射源としての実効的な反射面に広範なバラツキがあるために、互いに近接した無数の微少な反射源から到来した反射波の集合として観測される。
【0011】
(2) 必ずしも巨大な反射体としては観測されず、上記微少な反射源から到来した反射波が空中線のメインローブの幅に応じて解像度が低下した画像として観測される。なお、画像処理の領域で分解能の向上が図られる場合には、上記隣接しあるいは密度高く連なって分布する反射源の内、実効的な反射面が大きい反射源から到来し、かつ振幅(電力)が尖頭値やその近傍の大きな値となる主要な反射波の成分からなる画像として観測されるので、例えば、送信パルス幅の短縮や空中線開口面の拡大等のような物理的な手段が対処がなされた場合であっても、空中線のメインローブにサイドローブが付随することにより、陸地を示す画像の見かけ上の分断はある程度緩和される。
【0012】
(3) 一方、レーダー信号処理の過程で高分解能化が図られた場合には、サイドローブを介して受信された反射波の成分がその高分解能化の下で制限されたり著しく欠落するため、陸地を示す見かけ上の画像は、分断されたりあたかも散在する多数の小目標の集合として観測されるために、陸地としての識別が困難となり易い。
【0013】
(4) 指示の対象となるレーダ信号に対して高分解能信号処理が全距離および全方位に亘って施された場合には、陸地に相当する部分は、空中線の主ローブの広がりが間接的に是正されるために、微少な反射体が点在する粗い画像として観測され、指示器上における識別が難しくなる可能性がある。
【0014】
また、上述したように全距離および全方位に亘って施される高分解能信号処理は、例えば、船舶レーダでは、測位、測距および探知の主な対象が海面や湖面に位置する物標であるために、陸地の境界の識別を精度よく容易に実現する技術としては一定の利点はあるものの、このような対象が複数個近接して位置している場合を除いて必ずしも重要ではなく、むしろ、総合的な処理量が増加し、あるいは応答性が低下する要因となる場合が多かった。
【0015】
なお、既述の特許文献1および特許文献2には、例えば、海図のような外部情報に基づいて海と陸地との領域を識別する技術が開示されている。
しかし、このような技術は、上記外部情報の参照ができない場合には適用できず、また技術的には適用可能であっても、コスト、物理的なサイズ等の制約の下で実際には適用できない場合があった。
【0016】
また、既述の特許文献3には、原画像データに対して逆畳み込み演算が施され、その原画像データと逆畳み込み処理の結果との略一致分布が逆畳み込み処理の対象から抽出され、反対に不一致部分が原画像データから抽出された後に両者が合成される技術が開示されている。
したがって、上記技術は、処理手順が複雑であって所要する処理量が多かった。
さらに、特許文献3は、上記略一致分布と不一致部分とに対してそれぞれ別の信号処理が施される場合には、適用できなかった。
【0017】
本発明は、構成が大幅に複雑化することなく安価に、高分解能処理の処理量を削減できる指示支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明では、抽出手段は、到来した反射波で示される画像の内、前記画像に含まれる見かけ上の目標が位置する領域もしくは部位を抽出する。制御手段は、前記領域または前記部位を分解能の向上を図る高分解能処理の対象とする。
【0019】
すなわち、高分解能処理は、上記画像の内、見かけ上の目標の分解能の向上、あるいはその見かけ上の目標に含まれる互いに近接した複数の目標の区分が必要ない領域や部位に対して無用に施されることがない。
【0020】
請求項2に記載の発明では、抽出手段は、到来した反射波で示される画像に含まれる目標の輪郭または境界を検出し、前記画像上で前記輪郭または前記境界で仕切られた領域もしくは部位を抽出する。制御手段は、前記領域または前記部位を分解能の向上を図る高分解能処理の対象とする。
【0021】
すなわち、高分解能処理は、上記画像の内、見かけ上の目標の分解能の向上、あるいはその見かけ上の目標に含まれる互いに近接した複数の目標の区分が必要ない領域や部位に対して無用に施されることがない。
【0022】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の指示支援装置において、前記抽出手段は、前記画像を領域分割することにより、前記領域または前記部位を抽出する。
【0023】
すなわち、上記画像の内、高分解能処理が施される必要がない領域や部位は、特徴が一様と見なされ得る領域や部位として識別される。
【0024】
請求項4に記載の発明では、 請求項1または請求項2に記載の指示支援装置において、
前記抽出手段は、前記画像上における特徴の分布に基づいて、前記領域または前記部位を抽出する。
【0025】
すなわち、上記画像の内、高分解能処理が施されるべき領域や部位は、その周辺に比べて特徴が異なる領域や部位として識別される。
【0026】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の指示支援装置において、前記抽出手段と前記制御手段との双方もしくは何れか一方の機能は、前記反射波に施されるレーダ信号処理に組み込まれる。
【0027】
すなわち、前記抽出手段と前記制御手段との双方もしくは何れか一方の機能は、画像処理としてではなくレーダ信号処理として実現される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、海図等のデータベースが備えられなくても、高分解能処理の対象が精度よく制限されることにより、処理量の削減が図られる。
また、本発明によれば、探知されるべき目標に適した多様な構成の態様に対する柔軟な適応が可能となる。
したがって、本発明が適用されたレーダ装置は、分解能が無用に低下することなく、総合的な性能および信頼性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態の動作フローチャート図である。
【図3】非陸地部の輪郭の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
本実施形態は、以下の要素から構成される。
【0031】
(1) 図示しない空中線に目標から到来した反射波に所定の処理を施すレーダセンサ11
(2) その処理の下で生成されたレーダ信号が入力されるA/D変換器12
【0032】
(3) A/D変換器12の出力に接続された第一の書き込みポートと、図示されない指示装置に接続された第一の読み出しポートとを有する記憶部13
(4) 記憶部13の第二の読み出しポートと第二の書き込みポートとに接続された画像生成部14
【0033】
図2は、本実施形態の動作フローチャートである。
以下、図1および図2を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0034】
A/D変換器12は、上記レーダ信号をA/D変換することによりディジタルレーダ信号を生成し、記憶部13の所定の記憶領域にスキャン毎に対応する面の集合として配置された原画像スタック13sに、そのディジタルレーダ信号をサイクリックに書き込み、かつ蓄積する。
【0035】
画像生成部14は、上記原画スタック13sに時系列(レンジおよびスキャン)の順に蓄積されたディジタルレーダ信号の列に以下の処理(1)〜(9)をスイープ周期で施す。
【0036】
(1) ディジタルレーダ信号の列に所定のレーダ信号処理(クラッタの除去、所望の目標の追尾等を実現する処理を含む。)を施すことにより、原画像を生成する(図2ステップS1)。
【0037】
(2) 以下に列記する手順(2-1)〜(2-6)に基づいて、上記原画像に含まれる陸地の部分(以下、「陸地部」という。)の抽出に供されるべき「陸地マスク」を生成する(図2ステップS2)。
【0038】
(2-1) 2値化
既定の閾値Thと画素毎の濃度(階調値)との大小関係を示す2値の列(以下、「2値化像」という。)に上記原画像を変換する。なお、このような2値については、対応する画素の濃度(階調値)が閾値Thより大きいことを示す「1」と、反対に小さいことを示す「0」とであると仮定する。
【0039】
なお、上記レーダ信号処理が遠距離のレンジに関して行われる場合には、このような2値化に先行して、例えば、既述の反射波が生じる反射源の距離に応じたその反射波のレベルの相違を補償する処理が行われてもよい。
【0040】
(2-2) 面積の算出
2値化像にラベリングを施し、個々の2値化像の面積値を算出する。
【0041】
ここでいう面積値とは、1スイープ・1レンジビンあるいは、幅1ピクセル・高さ1ピクセルの配列要素において、値が「1」である要素の総数である。
【0042】
(2-3) 縦横比の算出
上記個々の2値化像の外接四角形の縦横比を算出する。
【0043】
(2-4) 不要画像の除去
該当する2値化像が以下の事項a),b)の何れかに該当する場合には、その2値化像を示す配列の特定の要素の値(海域上に位置する探索対象には該当しないことを示す「1」がデフォルト値として設定される。)を「0」に設定する。
【0044】
a) 面積値が、船舶エコー等のような探知の対象となる最小の目標を示す2値化像の面積値より小さい。
b) 「ビーム幅分のスイープ数」と「パルス幅に応じたレンジビン数」との比に比べて上記縦横比が数倍程度以下である。
【0045】
(2-5) 以下の手順a)〜c)に基づいて4近傍膨張方式による拡張処理を行う。
a) 既述の不要画像の除去により得られた2値化像を特定の軸の方向(例えば、距離方向)にラスタスキャンすることにより、その2値化像の輪郭上に位置して値が「1」であるピクセル(以下、「対象ピクセル」という。)については、上記ラスタスキャンが行われる方向の前後に隣接するピクセルの値を「0」から「1/2」に変更する。
【0046】
b) 既述の特定の軸に直交する軸の方向(例えば、方位方向)にラスタスキャンすることにより、上述した2値化像の輪郭上に位置して値が「1」である対象ピクセルについては、上記ラスタスキャンが行われる方向の前後に隣接するピクセルの値を「0」から「1」に変更する。さらに、「1/2」のピクセルを「1」に変更する。
【0047】
c) 上記a),b)を適宜反復して各2値化像の間の隙間を埋めることにより、陸地を示す画像に見かけ上含まれる隙間が陸地ではないと識別されることの回避を図る。なお、このような反復は、「陸地の輪郭を示す大規模な構造を損なうことがない」との歯止めとなる回数を限度として行われる。
【0048】
(2-6) 小像除去
上記膨張処理により生成された2値化像に、既述の4近傍膨張方式に適合した「4近傍収縮方式」に基づく収縮処理を以下の手順a)〜c)に基づいて施す。
a) 該当する2値化像を特定の軸の方向(例えば、距離方向)にラスタスキャンすることにより、その2値化像の輪郭上に位置して値が「1」であるピクセル値を「1」から「1/2」(「1」と「0」との何れとも異なる。)に変更する。
b) 既述の特定の軸に直交する軸の方向(例えば、方位方向)にラスタスキャンすることにより、上述した2値画像の輪郭上に位置して値が「1」もしくは「1/2」であるピクセルについては値を「1/4」に変更し、値が「1/2」または「1/4」であるピクセルについては値を「0」に変更する。
【0049】
c) 先行して既述の膨張処理が反復して行われた回数に適合する回数に亘って、上記a),b)を適宜反復することによって、「陸地マスク」を生成する。
【0050】
(3) 陸地部の抽出(図2ステップS3)
「陸地マスク」と原画像の論理積をとることにより、その原画像に含まれる陸地部を抽出する。
【0051】
(4) 非陸地マスクの生成(図2ステップS4)
「陸地マスク」に反転処理を施すことにより、原画像に含まれる陸地部以外の部分を示す「非陸地マスク」を生成する。
【0052】
(5) 非陸地部の抽出(図2ステップS5)
「非陸地マスク」と原画像の論理積をとることにより、その原画像に含まれる陸地以外の部分(以下、「非陸地部」という。)を抽出する。
【0053】
(6) 非陸地部の高分解能処理(図2ステップS6)
非陸地部に高分解能処理を施すことにより、その区分の結果が反映された画像(以下、「高分解能化非陸地部」という。)を生成する。
【0054】
(7) 非陸地部の輝度の調整(図2ステップS7)
高分解能化非陸地部の濃度(階調値)の平均値が既定の閾値を下回る場合には、その高分解能化非陸地部に原画像の信号強度分布との格差を是正する処理を施すことにより、輝度の調整を行う。
【0055】
(8) 高分解能化非陸地部と陸地部との合成(図2ステップS8)
このようにして生成された高分解能化非陸地部と既述の陸地部とを合成することにより、指示対象画像を生成する。
【0056】
(9) 記憶部13の記憶領域に既述の原画像スタック13sとは別に配置された特定の記憶領域13pに、上記指示対象画像情報を保持する(図2ステップS9)。
【0057】
このようにして特定の記憶領域13pに保持された指示対象画像情報は、例えば、スイープ周期毎に既述の指示装置に引き渡され、所定の指示方式で(例えば、PPI(Plan Position Indicator)スコープとして)指示される。
【0058】
したがって、高分解能処理が施される領域は、原画像の全域ではなく、その原画像に含まれる非陸地部であって、例えば、図3に一点鎖線枠より右側にハンチングを付して示すように、非陸地部の輪郭線(同図3に太い実線で示される。)に外接し、かつ距離および方位の最小の単位で陸地部(陸地マスク)に重なる領域に制限される。
【0059】
したがって、高分解能処理は、原画像に含まれる略非陸地部に対して施されることによって無用な処理量を要することなく、その非陸地部上で互いに近接する複数の船舶の区分と、陸地部とその陸地部に近接する船舶との区分との双方に有効に作用する。
【0060】
また、本実施形態によれば、海図等の膨大なデータベースが参照されなくても、原画像が高分解能処理の対象となる非陸地部と、反対に対象とはならない陸地部とに区分される。
【0061】
したがって、上記データベースが備えられることによる構成の複雑化および規模の増加を伴うことなく、多様な目標の識別や区分が安価にかつ精度よく実現される。
【0062】
なお、本実施形態では、既述の閾値Thについては、以下の何れに基づいて求められてもよい。
(1) 原画像(または「先行原画像」)が格子状に区分されてなるブロック毎の濃度(階調値)のヒストグラムに応じて動的に更新される値
(2) pタイル法、判別分析法、可変閾値法その他のアルゴリズムに基づいて算出される値
【0063】
また、本実施形態では、既述の拡張処理は、以下の点(1)、(2)で既述の4近傍膨張方式と異なる8近傍膨張方式に基づいて行われてもよい。
(1) 値が「0」から「1」に変更されるピクセルが、既述の特定の軸に直交する軸の方向(例えば、方位方向)に行われるラスタスキャンの方向の前後に隣接するピクセルである。
(2) このような値の変更が上記ラスタスキャンが行われる最初の軸上における走査の結果が反映されて行われる。
【0064】
さらに、本実施形態では、上記4近傍膨張方式や8近傍膨張方式に基づく拡張処理の過程では、値が「0」から「1」に変更されるピクセルの数は、必ずしも各軸方向に対して1ピクセルずつでなくてもよく、例えば、これらの軸の方向における分解能(該当するレーダ装置の構成、性能、稼働の形態等によって定まる。)の比率に適合した数に予め設定され、あるいは適宜更新されてもよい。例えば、距離方向と方位方向とのそれぞれの分解能の比が1:2である場合には、距離方向と方位方向とにそれぞれ「1」、「2」に設定されることが望ましい。
【0065】
また、本実施形態では、既述の収縮処理は、上記拡張処理が8近傍膨張方式に基づいて行われる場合には、その8近傍膨張方式に適合した8近傍収縮方式に基づいて行われることが望ましい。
【0066】
さらに、本実施形態では、このような収縮処理は、上記4近傍収縮方式と8近傍収縮方式との何れに基づいて行われる場合であっても、各軸の方向に付加されるべきピクセルの数の比率の相違は、先行して行われた拡張処理で適用された同一の比率が適用されることが望ましい。
【0067】
また、本実施形態では、陸地部と非陸地部との境界におけるピクセルの値に不整合が生じる場合には、数レンジビンもしくは数スイープに亘って該当する境界の近傍におけるピクセルの値が平滑化されることにより、このような不整合の緩和が図られてもよい。
【0068】
さらに、本実施形態では、「非陸地マスク」は、「陸地マスク」の単なる反転により生成されている。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、「非陸地マスク」が「陸地マスク」の縁部に幾分なりとも重なるマスクとして生成されてもよい。
【0069】
また、このように「陸地マスク」に重なる「非陸地マスク」と原画像との論理積に既述の高分解能処理が施されることによって生成された画像が「陸地部」を過度に伸縮する要因となる場合には、高分解能化非陸地部と陸地部との合成は、「陸地部」の優先の下で行われてもよい。
【0070】
さらに、本実施形態では、陸地部には高分解能処理が施されていない。
しかし、このような高分解能処理は、陸地部であっても、その陸地部における地形や地物の分布の精度や忠実度が過度に劣化しあるいは損なわれることがない形態で施されてもよく、あるいは異なる高分解能処理で代替されてもよい。
【0071】
また、上記高分解能処理は、互いに近接する目標の区分が所望の精度や応答性で実現されるならば、「個々の目標から到来する反射波に関して、以下に列記する手法(1)〜(6)の何れか1つ、または任意の組み合わせに基づいて行われる到来方向の推定」が適用された処理であってもよい。
(1) Capon法
(2) 最小ノルム法
【0072】
(3) MUSIC(Multiple Signal Classification)法
(4) ESPRIT(Estimation of Signal Parameters
via Rotational Invariance Techniques)法
(5) 最尤推定法
(6) 上記と独立成分分析との組み合わせ
【0073】
さらに、上記高分解能処理は、逆問題が適用される場合には、逆畳み込み演算、拘束付き最小自乗規範、統計的手法(例えば、下記の(1)〜(5)項)、あるいはこれらの任意の組み合わせの何れに基づいて行われてもよい。
【0074】
(1) 最大エントロピー法
(Maximum Entropy Method)
(2) Richardson-Lucy法
(3) EM(Expectation-Maximization)法
(4) MAP(Maximum
A-Posteriori)法
(5) 上記(1)〜(5)の組み合わせ
【0075】
また、本実施形態では、高分解能処理の対象となる領域は、原画像の領域の内、以下に列記する何れであってもよい。
【0076】
(1) 陸地部、非陸地部の如何にかかわらず、反射波に施された何らかの信号処理の下で識別された目標が位置する部位や領域(目標の存在や特性が及び、あるいはその目標との関連性がある空間または地域)
(2) 如何なる反射源(目標)も存在しない領域(陸地部には限らない。)以外の領域
【0077】
(3) レーダ信号処理や画像処理の過程で過去のスキャンにより得られた情報に基づいて行われる「領域分割」の下で、原画像が区分されることによって識別され、かつ特徴(反射波の周波数、位相、振幅等の成分や分布、(その反射波で示される)目標等の画像の距離、方位、変位、速度等の任意の組み合わせとして識別されてもよい。)が一様と見なし得る領域や部位
(4) 本実施形態に係るレーダ装置の操作者によってポインティングデバイス等を介して指定された領域や部位
(5) 衛星画像等として与えられる陸地以外の領域や部位
(6) レーダ間通信の下で与えられ、あるいは識別された領域や部位
(7) レーダセンサ11以外のセンサの併用によって識別された領域や部位
【0078】
さらに、本実施形態において行われる演算の手順は、等価なあるいは所望の精度および応答性で高分解能処理の対象が同様に制限されるならば、如何なる演算手順で代替されてもよい。
【0079】
または、このような演算手順に基づく処理は、レーダ信号処理に基づいて生成された原画像に対して施される画像処理の領域で行われなくてもよく、例えば、上記レーダ信号処理として行われ、あるいはレーダ信号処理と画像処理との連係(フィードバック制御やフィードフォワード制御も該当し得る。)により行われてもよい。
【0080】
さらに、本発明は、船舶用のレーダに限定されず、以下のレーダにも同様に適用可能である。
(1) 送信波が放射されるべき方向の方位角と仰角との双方または何れか一方が可変されるレーダ
(2) 送信波が放射されるべき方向の方位角や仰角が可変されないレーダ
【0081】
また、本発明は、レーダ装置に限定されず、例えば、魚群探知機、ソナー、光学カメラ(赤外線カメラを含む。)、レンジファインダ、合成開口レーダ、天体望遠鏡、温度センサにも同様に適用可能である。
【0082】
さらに、本発明が適用された装置によって検知されるべき目標は、船舶に限定されず、航空機、移動体、動植物(人を含む)その他の如何なるものであってもよい。
【0083】
また、本発明が適用されるレーダ装置の方式はパルスレーダ方式、パルス圧縮レーダ方式、その他の如何なる方式であってもよく、このようなレーダ装置によって送信される送信波は、如何なる変調方式や多元接続方式に基づいて生成されてもよい。
【0084】
さらに、本発明は、既述の原画像、陸地マスク、陸地部、非陸地マスク、非陸地部、指示対象画像の何れも、既述のAスコープやBスコープとして与えられなくてもよく、如何なる指示方式および画像情報として与えられてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、原画像は、既述の処理の演算対象として適切な内容および形式で与えられ、例えば、レーダやソナーのように、距離−方位方向における目標のスキャンを行う探査装置に本発明が適用される場合には、距離―方位のデータ配列を示すBスコープとして与えられてもよいが、光学カメラ等のようにな撮像を行う探査装置に本発明が適用される場合には、幅−高さの対の列を示す配列として与えられてもよい。
【0086】
さらに、本実施形態では、原画像は、現スキャン内における瞬時値の列や配列として与えられるが、例えば、後述する「陸地マスク」を作成する目的であれば、過去のスキャンにより得られた所定数の原画像(以下、「先行原画像」という。)にアルファフィルタ等による濾波処理が施されることによって生成されたスキャン間の相関画像で代替されてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、非陸地部に施される高分解能化処理については、例えば、到来方向推定による手法、あるいは逆問題による手法の何れに基づいて行われてもよいが、逆問題による手法が適用される場合には、高分解能処理の対象となる非陸地部の地理的な範囲については、本実施形態が適用されたレーダセンサ11によって送信される送信波のパルス幅に適合した距離の範囲と、そのレーダセンサ11の空中線系の主ローブの幅に適合した方位角や仰角の範囲との双方が含まれることが望ましい。
【0088】
さらに、このような範囲については、以下のように本発明の適用分野に適した範囲に設定されることが望ましい。
【0089】
〔本発明が光学的なセンサに適用される場合〕
そのセンサに備えられた光学系(レンズ)の収差に応じた点広がり関数(PSF:Point Spread Function) の値域を十分に包含する範囲
【0090】
〔高分解能処理が到来方向の推定に基づいて行われる場合〕
例えば、送信波のパルス幅に適したレンジのビン数と空中線系の主ローブの幅とに適合したスイープの数で定まる範囲のように、評価関数値が十分信頼できる範囲
【0091】
また、本発明が適用されたレーダ装置は、船舶だけではなく、航空機、飛翔体、車両(自動車を含む。)、所定のサイト(レードームや舎屋等の有無を問わない。)の何れに搭載され、あるいは配置されてもよい。
【0092】
さらに、このようなレーダ装置では、海面反射の除去その他のレーダ信号処理は、所望の精度や応答性で実現されるならば、高分解能処理に先行してまたは後続して行われてもよく、もしくは並行して行われてもよい。
【0093】
また、本発明が適用されるレーダ装置では、高分解能処理の下で、解像度の向上あるいは近接した複数の目標の区分が実現されるならば、必ずしも指示装置が備えられなくてもよい。
さらに、非陸地部の輝度の調整(図2ステップS7)は、既述の処理に限定されず、例えば、以下に列記する処理として行われてもよい。
【0094】
(1) 高分解能化非陸地部を示すレーダ信号(例えば、Aスコープを示す。)の瞬時値の列に、「高分解能処理の対象となった陸地部を示すレーダ信号(例えば、Aスコープを示す。)」のピーク値と、その高分解能化非陸地部を示すレーダ信号の対応するピーク値との差δを一律に加える。
(2) 「高分解能処理の対象となった陸地部を示すレーダ信号(例えば、Aスコープを示す。)」のピーク値の列に、高分解能化非陸地部を示すレーダ信号の瞬時値の列を最小自乗法等に基づいてあてはめることにより、これらのピーク値の列の格差を緩和(圧縮)する。
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0095】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成、作用および効果を「特許請求の範囲」、「課題を解決するための手段」および「発明の効果」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0096】
[請求項6] 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の指示支援装置において、
前記抽出手段と前記抽出手段との双方もしくは何れか一方の機能は、
前記反射波に施されるレーダ信号処理により生成された画像の画像処理に組み込まれた
ことを特徴とする指示支援装置。
【0097】
このような構成の指示支援装置では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の指示支援装置において、前記抽出手段と前記抽出手段との双方もしくは何れか一方の機能は、前記反射波に施されるレーダ信号処理により生成された画像の画像処理に組み込まれる。
【0098】
すなわち、前記抽出手段と前記制御手段との双方もしくは何れか一方の機能は、レーダ信号処理としてではなく画像処理として実現される。
【0099】
したがって、本発明は、指示の対象となる画像を生成するレーダ装置と、このような画像を指示する指示装置との何れのハードウェアやソフトウェアにも、適用可能となる。
【0100】
[請求項7] 請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の指示支援装置において、
前記抽出手段と前記制御手段との双方もしくは何れか一方は、
前記反射波に施されるレーダ信号処理に、前記抽出手段と前記制御手段との双方もしくは何れか一方により生成された情報を前記レーダ信号処理の演算対象として反映させる
ことを特徴とする指示支援装置。
【0101】
このような構成の指示支援装置では、請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の指示支援装置において、前記抽出手段と前記制御手段との双方もしくは何れか一方は、前記反射波に施されるレーダ信号処理に、前記抽出手段と前記制御手段との双方もしくは何れか一方により生成された情報を前記レーダ信号処理の演算対象として反映させる。
【0102】
すなわち、反射波に施されるレーダ信号処理は、上記抽出手段と制御手段との双方または何れか一方の連係もしくは主導の下で行われる。
【0103】
したがって、到来した反射波に施されるレーダ信号処理は、その反射波で示される画像に施されるべき高分解能処理に適合した形態による実現が可能となる。
【符号の説明】
【0104】
11 レーダセンサ
12 A/D変換器
13 記憶部
13p 特定の記憶領域
13s 原画像スタック
14 画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
到来した反射波で示される画像の内、前記画像に含まれる見かけ上の目標が位置する領域もしくは部位を抽出する抽出手段と、
前記領域または前記部位を分解能の向上を図る高分解能処理の対象とする制御手段と
を備えたことを特徴とする指示支援装置。
【請求項2】
到来した反射波で示される画像に含まれる目標の輪郭または境界を検出し、前記画像上で前記輪郭または前記境界で仕切られた領域もしくは部位を抽出する抽出手段と、
前記領域または前記部位を分解能の向上を図る高分解能処理の対象とする制御手段と
ことを特徴とする指示支援装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の指示支援装置において、
前記抽出手段は、
前記画像を領域分割することにより、前記領域または前記部位を抽出する
ことを特徴とする指示支援装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の指示支援装置において、
前記抽出手段は、
前記画像上における特徴の分布に基づいて、前記領域または前記部位を抽出する
ことを特徴とする指示支援装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の指示支援装置において、
前記抽出手段と前記制御手段との双方もしくは何れか一方の機能は、
前記反射波に施されるレーダ信号処理に組み込まれた
ことを特徴とする指示支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−230024(P2012−230024A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98997(P2011−98997)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】