説明

振動フィーダ

【課題】軽量化を図るとともに、長時間容易に振動できる振動フィーダを提供することである。
【解決手段】本実施の形態に係る振動フィーダ100は、主にトラフ200、加振機300、ベース310、制振バネ320、加振バネ330、トラフ保持部材(図示せず)および台座400から形成される。トラフ200は、物品と接触する接触面260aを有する金属部材260と、金属部材260の裏側に形成された樹脂層270とからなる。また、金属部材260と樹脂層270との接着強度を高めて一体的にするため、複数の突起部262を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動により物品を搬送する振動フィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を搬送するため、振動フィーダが用いられている。これらの振動フィーダに関して、日々研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、軽量で強度が強く、製造が低コストでかつ容易で、洗浄が可能で再利用を適切に行えるトレイについて開示されている。
【0004】
特許文献1記載のトレイは、所望の収容物を収容して段積み可能なトレイであって、独立発泡性の低発泡樹脂を芯材として当該芯材の表裏両面に金属膜が貼着された金属・樹脂複合板により形成された床板と、床板の周囲を囲んで収容物の収容空間を形成する複数の側板であって、各側板の長手方向に垂直な断面の形状が略同一であり、複数のトレイを段積みした場合に、上下に段積みされたトレイが水平方向に位置ずれしないように当該上下に段積みされたトレイで側板同士が掛合するような断面形状を有する複数の側板と、床板の収容空間の反対面の所定箇所に設置され、床板を支持する金属製の補強部材とを有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−143569公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載のトレイは、一時的な物品の搬送および保管に用いるトレイであるため、短期的に加わる多大な荷重、振動、衝撃に対しては、効果があると考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のトレイにおいては、軽量化を実現しているものの、振動フィーダに使用されるトラフと異なり、長時間における振動状態を想定していないため、金属膜の剥離が生じる可能性が否定できない。
【0008】
本発明の目的は、軽量化を図るとともに、長時間容易に振動できる振動フィーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
一局面に従う振動フィーダは、側壁部および底板部を有するトラフと、該トラフを振動させる振動源とを有し、振動によりトラフ内部の物品を搬送させる振動フィーダであって、トラフは、物品と接触する接触面に配置された金属部材と、金属部材の裏側に形成された樹脂層とからなるものである。
【0010】
振動フィーダは、トラフと振動源とからなり、トラフは、物品と接触する接触面に配置された金属部材と、金属部材の裏側に形成された樹脂層とからなる。
【0011】
この場合、トラフは、金属部材と樹脂層とからなるので、金属部材の厚みを抑制しつつ、樹脂層により金属部材の補強を行うことができる。その結果、金属部材を薄くすることができるので、トラフの加工費用を低減することができる。また、トラフ全体を金属で形成する場合と比較して、重量を低減することができるので、振動源の容量を小さくし、振動源の加振力を抑制することができ、コスト低減を実現することができる。また、物品と接触する接触面が金属部材から構成されているので、経時変化による異物混入が生じない。
【0012】
(2)
樹脂層は、繊維強化樹脂から形成されてもよい。
【0013】
この場合、樹脂層は、繊維強化樹脂から形成されるので、金属部材の強度を補強することができる。
【0014】
(3)
金属部材の側壁部から外側に突起する突起部を有してもよい。
【0015】
この場合、金属部材の側壁部から外側に突起する突起部を有するので、金属部材と樹脂層との分離を防止することができる。すなわち、金属部材の側壁に突起部を形成することで、樹脂層が下方に向かって剥がれ落ちることを防止できる。
【0016】
(4)
金属部材は、ステンレス鋼であってもよい。
【0017】
この場合、金属部材は、ステンレス鋼(SUS)であるので、強度および耐久性を高く維持することができる。
【0018】
(5)
トラフによる前記物品の供給側の樹脂層の下部にカバーが設けられていてもよい。
【0019】
この場合、トラフによって搬送される物品の供給側にカバーが設けられているので、トラフの振動により樹脂層の一部の剥れを防止することができる。
【0020】
(6)
カバーは、金属部材を延長させた部位を樹脂層の裏面側に折り曲げて形成されてもよい。
【0021】
この場合、カバーは、金属部材を延長させて、延長させた部位を樹脂層の裏面側に折り曲げて形成しているので、金属部材により樹脂層を保持させることができる。その結果、樹脂層の剥れを確実に防止することができる。また、金属部材を折りまげて形成することにより、樹脂層が万が一において金属部材から剥離した場合でも、金属部材からなるカバーで落下する樹脂層を受けることができ、当該樹脂層が物品の供給側へ混入することを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る振動フィーダにおいては、軽量化を図るとともに、長時間容易に振動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係る振動フィーダの一例を示す模式的斜視図
【図2】トラフを上面から見た模式的平面図
【図3】トラフを側方から見た模式的側面図
【図4】図3におけるA−A線断面図
【図5】トラフ200を構成の一例を示す模式的断面図
【図6】トラフ200の製造工程の一部を説明するための模式的斜視図
【図7】本実施の形態に係るトラフ200の他の例を示す側面図
【図8】図7の先端部A1の拡大図
【図9】本実施の形態に係るトラフのさらに他の例を示す側面図
【図10】図9の先端部A2の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態において図面を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る振動フィーダ100の一例を示す模式的斜視図である。
【0025】
図1に示すように、振動フィーダ100は、トラフ200、加振機300、ベース310、制振バネ320、加振バネ330、トラフ保持部材(図示せず)および台座400を含む。
【0026】
図1の振動フィーダ100においては、略直方体からなる台座400上に4個の制振バネ320が設けられ、制振バネ320の上にベース310が載置される。そして、ベース310の上に斜め方向に傾斜して複数の加振バネ330が設けられる。当該複数の加振バネ330の上に平板からなるトラフ保持部材(図示せず)が設けられ、トラフ保持部材にトラフ200が固設される。
【0027】
具体的に、振動フィーダ100の動作の概略について説明する。加振機300が水平方向に振動し、その水平方向の振動が、加振バネ330により斜め上方向の力に変化される。それにより、トラフ200が斜め上方向に振動し、物品が搬送される。その結果、トラフ200に対して矢印H1の方向に物品が供給され、トラフ200内を物品が搬送され、最後に矢印H2の方向に物品が排出される。
【0028】
次いで、図2から図4を用いてトラフ200の構造について説明を行う。図2はトラフ200を上面から見た模式的平面図であり、図3はトラフ200を側方から見た模式的側面図であり、図4は図3におけるA−A線断面図である。
【0029】
図2および図3に示すように、トラフ200は、主に側壁210および底面220を有する。また、側壁210の端部には、周縁部230が設けられている。側壁210は、略矩形上の平面からなる底面220の3片に対して上方向に延在するように設けられている。
【0030】
また、図3および図4に示すように、側壁210の外側には、複数の突起部262が設けられている。
【0031】
ここで、側壁210および底面220の構造について説明を行う。側壁210および底面220は、金属部材260および樹脂層270の2層構造からなる。具体的には、金属部材260は、ステンレス鋼(Stainless
steel)(以下、単にSUSと呼ぶ)の板を折り曲げ加工することにより形成されており、樹脂層270は、繊維強化プラスチック(FRP)からなる。また、複数の突起部262は、SUSからなり、金属部材260の側壁210の外側に固設されている。
【0032】
このように、本実施の形態に係る振動フィーダ100のトラフ200においては、複数の突起部262を形成することにより、後述する樹脂層270の剥離を完全に防止することができる。
【0033】
次に、トラフ200の断面状態について詳細に説明を行う。図5はトラフ200を構成の一例を示す模式的断面図であり、図6はトラフ200の製造工程の一部を説明するための模式的斜視図である。
【0034】
図5に示すように、金属部材(SUS)260の物品の接触面260aの裏側の面に樹脂層270を設ける。具体的に、樹脂層270を設ける場合には、金属部材260の裏面に、接着層(プライマリー)280を設け、接着層280に対して樹脂層270を重ね合わせる。
【0035】
また、本実施の形態における樹脂層270は、主に樹脂を含浸させたロービングクロス271およびガラスマット272の複合材料からなる。また、ロービングクロスを1から3プライのいずれか、およびガラスマットを7から12プライのいずれか、選択し形成してもよい。
【0036】
さらに、図5に示すように、金属部材260の曲げ加工を行った部分については、ロービング繊維275を設けてもよい。すなわち、ロービング繊維275を設けることにより、当該部位の樹脂層270の剥離を防止することができる。また、図6に示すように、トラフ200の底面端部の周辺領域AR1、AR2、AR3および突起部262の周辺領域AR4、AR5、AR6においてガラス繊維入りパテを予め塗布して樹脂層270を形成してもよい。
【0037】
<変形例>
次に、図7は本実施の形態に係るトラフ200の他の例を示す側面図であり、図8は図7の先端部A1の拡大図である。
【0038】
図7および図8に示すように、トラフ200aは、先端部A1において金属部材260が曲げ加工されている。具体的に、金属部材260を設けて曲げ加工することにより、距離H21において樹脂の剥離を確実に防止することができる。また、当該距離H21は、物品を次工程に受け渡す場合の受け渡し装置、例えば、容器またはベルトコンベア等の領域よりも大きな距離である。その結果、万が一の場合において樹脂層270の一部が落下する状態を確実に防止することができる。
【0039】
続いて、図9は本実施の形態に係るトラフ200のさらに他の例を示す側面図である、図10は図9の先端部A2の拡大図である。
【0040】
図9および図10に示すように、トラフ200bは、先端部A2において金属部材260および樹脂層270が曲げ加工されている。具体的に、金属部材260の全体に樹脂層270を形成し、それらを曲げ加工することにより、距離H21において樹脂の剥離を確実に防止することができる。当該距離H21は、物品を次工程に受け渡す場合の受け渡し装置、例えば、容器またはベルトコンベアの領域よりも大きな距離である。その結果、万が一の場合において樹脂層270の一部が落下する状態を確実に防止することができる。
【0041】
以上のように、本実施の形態に係る振動フィーダ100においては、トラフ200が、金属部材260と樹脂層270とからなるので、ステンレス鋼からなる金属部材260の厚みを抑制しつつ、繊維強化樹脂からなる樹脂層270により金属部材260の補強を行うことができる。その結果、金属部材260を薄くすることができるので、トラフ200の加工費用を低減することができる。具体的に金属部材260の厚みを0.5mm〜1.0mmの厚みにすることができる。また、トラフ200全体を金属で形成する場合(厚み3mmから5mm程度)と比較して、重量を大幅に低減することができるので、加振機300の容量を小さくし、加振力を抑制することができ、コスト低減を実現することができる。また、物品と接触する接触面260aが金属部材260から構成されているので、経時変化による異物混入を防止することができる。
【0042】
また、金属部材260の側壁210から外側に突起する突起部262を有するので、樹脂層270が突起部262に係止され、金属部材260と樹脂層270との分離を防止することができる。
【0043】
さらに、トラフ200によって搬送される物品の供給側にカバーが設けられているので、トラフ200の振動による樹脂層270の一部の剥れを防止することができる。特に、図7から図10に示したように、金属部材260を延長させて、延長させた部位を樹脂層270の裏面側に折り曲げて形成しているので、金属部材260により樹脂層270を保持させることができる。その結果、樹脂層270の剥れを確実に防止することができる。また、金属部材260を折りまげて形成することにより、樹脂層270が万が一において金属部材260から剥離した場合でも、金属部材260からなるカバーで落下する樹脂層270を受けることができ、当該樹脂層270が物品の供給側(図1矢印H2側)へ混入することを確実に防止することができる。
【0044】
なお、上記の金属部材260、突起部262としてSUSを例示したが、これに限定されず、他の金属であってもよい。さらに、上記の樹脂層270として、繊維強化プラスチックを例示して説明を行ったが、具体例として繊維強化熱可塑性プラスチック(FRTP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、ガラス長繊維強化プラスチック(GMT)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ボロン繊維強化プラスチック(BFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP,KFRP)、ポリエチレン繊維強化プラスチック(DFRP)、ザイロン強化プラスチック(ZFRP)等を用いてもよい。また、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂に限定されず、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂またはフェノール樹脂、熱可塑性樹脂であるメチルメタアクリレートまたはポリアミド樹脂等、さらに他の液晶ポリマー等を用いてもよい。
【0045】
また、図7から図10に示す他の例において、金属部材260、または金属部材260および樹脂層270を、金属部材260および樹脂層270と密接するように180度曲げ加工する場合について説明したが、これに限定されず、90度の曲げ加工を2回行ってもよい。
【0046】
本実施の形態においては、側壁210が側壁部に相当し、底面220が底板部に相当し、トラフ200がトラフに相当し、加振機300が振動源に相当し、振動フィーダ100が振動フィーダに相当し、接触面260aが接触面に相当し、金属部材260が金属部材に相当し、樹脂層270が樹脂層に相当し、突起部262が突起部に相当する。
【0047】
さらに、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0048】
100 振動フィーダ
200、200a、200b トラフ
210 側壁
220 底面
260 金属部材
260a 接触面
270 樹脂層
300 加振機
310 ベース
320 制振バネ
330 加振バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁部および底板部を有するトラフと、該トラフを振動させる振動源とを有し、前記振動により前記トラフ内部の物品を搬送させる振動フィーダであって、
前記トラフは、
前記物品と接触する接触面に配置された金属部材と、
前記金属部材の裏側に形成された樹脂層とからなることを特徴とする振動フィーダ。
【請求項2】
前記樹脂層は、繊維強化樹脂から形成されることを特徴とする請求項1に記載の振動フィーダ。
【請求項3】
前記金属部材の側壁部から外側に突起する突起部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の振動フィーダ。
【請求項4】
前記金属部材は、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動フィーダ。
【請求項5】
前記トラフによる前記物品の供給側の前記樹脂層の下部にカバーが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の振動フィーダ。
【請求項6】
前記カバーは、前記金属部材を延長させた部位を樹脂層の裏面側に折り曲げて形成されたことを特徴とする請求項5に記載の振動フィーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−246237(P2011−246237A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121287(P2010−121287)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】