説明

振動ミル

【課題】 乾式、湿式のいずれにでも利用でき、高遠心力場で被処理物をより短時間でより微粉砕することができる振動ミルを提供すること。
【解決手段】 縦向きで回転可能に支持した駆動軸6と、この駆動軸6の周囲に駆動軸6で回転させる粉砕部30とを備え、前記駆動軸6は、この駆動軸6の軸心に対して偏心した偏心部7と、この偏心部7の反偏心方向に配置したカウンタウエイト46とを備え、偏心部7は、前記粉砕部30を回転可能に支持する支持部31,32を有し、前記駆動軸6は、この駆動軸6の軸心で回転するピニオンギヤ20を有し、前記粉砕部30は、前記駆動軸6のピニオンギヤ20と噛合して粉砕部30を駆動軸6の周囲で公転させるインターナルギヤ45と、前記駆動軸6の周囲に位置する縦向きの粉砕壁39と、被処理物Wを投入する上部開口34aとを具備した筒状部34とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を粉砕するミルに関し、詳しくは、回転しながら振動する粉砕部で被処理物を粉砕する振動ミルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属原料や化学原料の精選工程等においては粉砕工程が必須の工程となっており、この粉砕工程によって製品粒度を保った製品が製造されている。
【0003】
一方、近年、被処理物を数十μからナノレベルで微粉砕することにより、金属粉や有機物において粉砕物の物理的・化学的活性が高まるメカノケミカル効果を利用した加工方法が注目されており、バイオマス資源活用等に利用しようとする考えがある。このようなバイオマス資源活用の一例として、例えば、木質系バイオマス原材料を粉砕し、酵素糖化させてエタノール発酵させることによってエタノールを得ようとする考えがある。
【0004】
また、他の被処理物においても、微粉砕することで性状が変化して、例えば、表面の活性化や、触媒的な働きをするような被処理物もあり、そのような被処理物を微粉砕できる粉砕装置が切望されている。
【0005】
例えば、このような被処理物を微粉砕する装置として、図5に示すように、太陽歯車101の周囲で公転する遊星歯車102を自転させ、この遊星歯車102と同軸心で回転する粉砕容器103内で被処理物をボール104で粉砕するようにした遊星ボールミル100がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、他の先行技術として、筒状本体内で回転する回転翼をもつ回転部材を有し、この回転部材を回転させた後に、筒状本体内に粉砕用ボールを装入し、次いで被処理物を投入して粉砕するようにしたボールミルもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−194650号公報
【特許文献2】特開2005−246204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された遊星ボールミルは、自転させながら公転させるための構造が複雑となるため、現在、卓上型ボールミルがテスト的に利用されているが、大量処理(連続処理・バッチ処理)が可能な実用レベルで使用できる遊星ボールミルは実用化されていない。しかも、複数のミルポットを自転させながら公転させる構造が複雑であるため、取扱いが面倒で効率良く被処理物を大量処理することが難しい。
【0009】
また、上記したような遊星ボールミルは、木質原料を粉砕したとしても、細かく粉砕するためには時間を要するので、上記したようなバイオマス資源活用のために利用するのは難しい。そのため、更なる微粉砕が可能で、且つより短時間で微粉砕することが可能な機械が切望されている。
【0010】
なお、上記した特許文献2に記載されたボールミルは、重力場における被処理物の粉砕であるため、被処理物の粉砕粒度に限界があるとともに、短時間で微粉砕することができるものではない。
【0011】
そこで、本発明は、乾式、湿式のいずれにでも利用でき、高遠心力場で被処理物をより短時間でより微粉砕することができる振動ミルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、縦向きで回転可能に支持した駆動軸と、該駆動軸の周囲に該駆動軸で回転させる粉砕部とを備えた振動ミルであって、前記駆動軸は、該駆動軸の軸心に対して偏心した偏心部と、該偏心部の反偏心方向に配置したカウンタウエイトとを備え、前記偏心部は、前記粉砕部を回転可能に支持する支持部を有し、前記駆動軸は、該駆動軸の軸心で回転する外歯車を有し、前記粉砕部は、前記駆動軸の外歯車と噛合して該粉砕部を駆動軸の周囲で公転させる内歯車と、前記駆動軸の周囲に位置する縦向きの粉砕壁と被処理物を投入する上部開口とを具備した筒状部とを有していることを特徴とする。
【0013】
これにより、駆動軸で粉砕部を高速回転させることで、この粉砕部の筒状部内側を高遠心力場としつつ、駆動軸の偏心部でその粉砕部に振動を与えるので、筒状部の粉砕壁内面に衝突する被処理物をより微粉に粉砕することができる。しかも、筒状部を回転させながら偏心部で振動させるので、被処理物を短時間で微粉砕することができる。従って、木質原料等の被処理物を更なる微粉に短時間で粉砕することが可能となり、バイオマス原料の生産、メカノケミカル分野において有用な振動ミルを構成することができる。
【0014】
また、前記筒状部は、上端が上向きに縮径して上端に前記上部開口を有する上部縮径部と、下端が下向きに縮径して下端に下部開口を有する下部縮径部とを備えていてもよい。このようにすれば、上部開口から投入した被処理物を高遠心力場の上部縮径部と下部縮径部との間の筒状部の粉砕壁内面に保持し、その被処理物を高遠心力場で振動させて粉砕することができる。しかも、粉砕した被処理物は、筒状部の遠心力を小さくすることで下方へ排出することができるので、筒状部に作用する遠心力を制御することで連続的、またはバッチ的に粉砕処理を行って微粉を大量生産することができる。
【0015】
さらに、前記粉砕部は、前記被処理物とともに粉砕メディアを投入して被処理物を粉砕するように構成されていてもよい。このようにすれば、高遠心力場の粉砕部において被処理物とともに粉砕メディアを振動させて、被処理物をより短時間でより小さく粉砕することができる。
【0016】
また、前記支持部は、前記筒状部の縦方向中間部と、該筒状部の下部とに配置されていてもよい。このようにすれば、粉砕部を高速回転させて高遠心力場を形成するとともに、より大きい振動加速度で振動させる粉砕部を長期間安定して支持することができる。
【0017】
さらに、前記駆動軸は、上部及び下部を支持軸受で支持した両端支持構造となっていてもよい。このようにすれば、回転している粉砕部に被処理物を投入することによる重量バランスの変化を上下部の支持軸受で安定して支持することができる。
【0018】
また、前記駆動軸の上部を防振支持する防振支持部を備え、該防振支持部で前記駆動軸とともに粉砕部を吊下げて防振支持するように構成してもよい。このようにすれば、回転している粉砕部に被処理物を投入することによって重量バランスが変化したとしても、防振支持部によってその振動を吸収することができる。
【0019】
さらに、前記防振支持部は、駆動軸の上部を駆動軸軸心に対して放射状に配置した防振ゴムで吊下げて支持するように構成されていてもよい。このようにすれば、被処理物を投入することによって粉砕部の重量バランスが崩れたとしても、ゴムバネ等の防振ゴムによる調芯作用によって安定した姿勢に戻すことができる。
【0020】
また、前記粉砕部の周囲を密閉するケーシングを備えていてもよい。このようにすれば、不活性ガス等の気体中や、アルコール等の液中で被処理物を粉砕することで、反応促進や反応抑制を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高遠心力場となった粉砕部における筒状部の粉砕壁に振動を与えて被処理物を衝突させて粉砕するので、乾式、湿式のいずれにおいても更なる微粉に粉砕することが短時間で可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る振動ミルを示す縦断面図である。
【図2】(a) は、図1に示す振動ミルにおける遠心力と振動力とを模式的に示す側面視の説明図であり、(b) は、同振動ミルの遠心力と振動力とを模式的に示す平面視の説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る振動ミルを示す縦断面図である。
【図4】従来の遊星ボールミルの概要を示す平面視の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。以下の実施形態では、密閉構造にすることが可能な竪型の振動ミルを例に説明する。
【0024】
図1に示すように、第1実施形態の振動ミル1は、架台2の上部に円筒状のケーシング3が固定され、このケーシング3の上下位置で駆動軸6が縦向きに支持されている。この駆動軸6は、駆動軸軸心V1に対して所定の偏心量V3で偏心した偏心軸心V2の偏心部7を縦方向中央から下方部に有する偏心軸となっている。また、ケーシング3は、下方以外は密閉構造となっている。
【0025】
上記駆動軸6は、ケーシング3の上部に設けられた上部支持板4と、ケーシング3の下部に設けられた下部支持フレーム5とに設けられた支持軸受8,9によって支持された両端支持構造となっている。上部支持板4には、後述する粉砕部30の筒状部34に被処理物と粉砕メディアとを投入する投入シュート10が設けられている。
【0026】
また、上記駆動軸6の上端には従動プーリ11が設けられており、この従動プーリ11は、上記ケーシング3の側方に設けられた駆動モータ12で回転させる駆動プーリ13によってベルト14で駆動されるようになっている。
【0027】
上部支持板4に設けられた上部支持軸受8は、上部支持板4にボルト15で固定されたピニオンギヤユニット16の内部に設けられている。このピニオンギヤユニット16は、上部にフランジ部17が設けられ、このフランジ部17から下方に向けて延びる軸受部分18と筒状部分19とが形成され、この筒状部分19の下端部の周囲に外歯車のピニオンギヤ20が設けられている。そして、ピニオンギヤユニット16の軸受部分18に上記上部支持軸受8が配設されている。
【0028】
また、上記下部支持フレーム5に設けられた下部支持軸受9は、下部支持フレーム5に設けられた軸受ケーシング内において駆動軸6の下端部を支持するように軸受が設けられている。
【0029】
これらの軸受8,9に支持された駆動軸6は、上端に設けられた上記従動プーリ11によって回転自在となっている。従動プーリ11と上記上部支持軸受8との間には、カラー21とシール材22,23とが設けられている。シール材23は、駆動軸6に設けられた凹凸部材23aと、ピニオンギヤユニット16に設けられた凹凸部材23bとが隙間を設けて組合わされたラビリンスシールとなっている。また、上記ピニオンギヤユニット16のフランジ部17の下部には、下面がシール面24aになった金属製のシールブロック24が設けられている。
【0030】
一方、上記駆動軸6の偏心部7には、粉砕部30が駆動軸6を中心に回転可能な状態で設けられている。この粉砕部30は、上記駆動軸6の偏心部7によって支持される上部支持部31及び下部支持部32と、これらの支持部31,32から放射状に設けられたステー33と、このステー33の外端に設けられた筒状部34とを有している。上記上部支持部31は、筒状部34の縦方向中間部に配置され、下部支持部32は、筒状部34の下部に配置されている。
【0031】
また、上記筒状部34は、上端が上向きに縮径して上端に上部開口34aを有する上部縮径部35と、下端が下向きに縮径して下端に下部開口34bを有する下部縮径部36とを備えており、上下方向に開放している。上部縮径部35は小さな角度で縮径しており、下部縮径部36は大きな角度で縮径している。下部縮径部36の角度は、後述するように、遠心力が作用している状態で被処理物Wと粉砕メディアXとを筒状部34の内面で保持することができる角度に設定されている。この筒状部34は、後述するように粉砕壁39となる。
【0032】
さらに、上記粉砕部30は、後述するように被処理物Wを粉砕する粉砕メディアXが、例えば、SUS、アルミナ、ジルコニュウム等の材料で形成されるため、同一の、SUS、アルミナ、ジルコニュウム等の材料で形成される。
【0033】
このような粉砕部30は、上記偏心部7に設けられた上部軸受ユニット37と下部軸受ユニット38とによって支持部31,32が回転可能に支持されている。上部軸受ユニット37及び下部軸受ユニット38には、大きなラジアル方向荷重等を安定して支持することができる軸受が採用される。この下部軸受ユニット38は、上部から軸受部に潤滑するような潤滑路42が設けられている。
【0034】
また、上部支持部31の上端には、上記シールブロック24のシール面24aに接するシールリング40が設けられている。上部支持部31及び下部支持部32の下端は、駆動軸6の偏心部7に接するシール材41が設けられている。これらのシールリング40及びシール材41により、回転体である粉砕部30が回転している状態でも固定側との間でシール性は保たれている。
【0035】
さらに、上部支持部31には、上記ピニオンギヤユニット16の下端に設けられたピニオンギヤ20と噛合する内歯車のインターナルギヤ45が設けられており、このインターナルギヤ45は、駆動軸6の偏心量V3でピニオンギヤ20と噛合っている。
【0036】
従って、粉砕部30は、駆動軸6の自転によってピニオンギヤ20が回転させられ、このピニオンギヤ20によって回転させられるインターナルギヤ45によって公転させられるようになっている。この駆動軸6の自転に対する粉砕部30の公転の速度差は、インターナルギヤ45とピニオンギヤ20との歯数比で決定される。
【0037】
また、上記駆動軸6の偏心部7には、所定重量のカウンタウエイト46が設けられている。このカウンタウエイト46は、偏心部7の反偏心方向に配置されており、偏心方向と逆方向に突出するように設けられている。このカウンタウエイト46により、上記粉砕部30が後述するように所定の振動加速度で振動する時に、駆動軸6に対する振動を打消すようにバランスさせている。この駆動軸6の偏心部7が、粉砕部30に所定の振動加速度を与えるバイブレータ部分であり、後述するように、粉砕部30に所定の振動加速度を与えている。
【0038】
さらに、上記支持部31,32には、上記カウンタウエイト46の周囲を覆うウエイトケーシング47が設けられている。このウエイトケーシング47は、カウンタウエイト46が自由に回転できる大きさで形成されている。なお、このウエイトケーシング47及び上記筒状部34は、駆動軸6に取付けるために複数に分割可能な構成がボルト48で連結される分割構造となっているが、この分割構造は一例である。
【0039】
次に、上記振動ミル1による粉砕工程を説明する。上記振動ミル1によれば、まず駆動軸6を回転させて粉砕部30を所定回転数で回転させる。そして、粉砕部30が高遠心力場となった状態で、上記投入シュート10から被処理物Wと粉砕メディアXとが粉砕部30の筒状部34内側に投入される。この粉砕メディアとしては、例えば、SUS、アルミナ、ジルコニュウム等の球体が用いられる。
【0040】
図2(a),(b) に示すように、上記したように筒状部34の内側に投入された被処理物Wと粉砕メディアXとは、高遠心力場となっている粉砕部30により、筒状部34の粉砕壁39の内面に張り付いた状態となる。そして、その高遠心力場において筒状部34が遠心力G1よりも大きい振動加速度G2で振動するので、その振動加速度G2で筒状部34の内面から被処理物Wと粉砕メディアXとは一瞬浮上がるが、その後大きな遠心力G1によって筒状部34の粉砕壁39内面に叩き付けられるので、その衝突による粉砕と、粉砕メディアXとの衝突によって被処理物Wは粉砕される。
【0041】
しかも、駆動軸6を高速回転させるとともに、高振動数で振動させることにより、例えば、3600rpmで振動させると1分間に3600回もの回数で粉砕壁39に叩き付けられて粉砕が繰り返されるので、粉砕部30の筒状部34内で被処理物Wを短時間で非常に細かく微粉砕することが可能となる。
【0042】
上記粉砕部30の加速度と、この粉砕部30の振動加速度の一例としては、例えば、粉砕部30の外径を約500mmとし、回転数を720rpmとすると、筒状部34の壁面の遠心力G1は標準重力加速度G(G=9.8m/s)に対して約145Gとなり、駆動軸6の偏心量を約10mmとし、回転数を3600rpmとすると、振動加速度G2は標準重力加速度G(G=9.8m/s)に対して約150Gとなるので、5Gの差で振動加速度Gを大きくすることができ、この振動加速度Gによって高遠心力場において被処理物Wを半径方向に振動させて粉砕することができる。
【0043】
この粉砕部30の筒状部34の内部(遠心力場)における加速度と、この筒状部34を振動させる加速度との関係は重要な要素であり、被処理物、処理量、処理時間等に応じて最適の加速度に設定される。
【0044】
また、筒状部34内の被処理物W及び粉砕メディアXは、上記したように筒状部34の粉砕壁39内面に向けて約145Gが作用する高遠心力場で約150Gの振動加速度で浮かされた後、衝突させられるので、上部縮径部35と下部縮径部36とによって上下端部が縮径する筒状部34内の被処理物Wは、粉砕処理中は重力によって下方へ落ちることなく筒状部34内で粉砕される。
【0045】
以上のような振動ミル1によれば、高速で回転する筒状部34の粉砕壁39部分に高い遠心力場を発生させ、さらにその筒状部34の半径方向に、より大きい振動加速度の高速振動を発生させるので、被処理物Wに作用させる衝突エネルギを極大化して、被処理物Wを従来よりもより短時間で、より細かく粉砕することができ、粉砕物を短時間で大量生産することが可能となる。
【0046】
例えば、従来の重力場で粉砕する従来の円筒ボールミルによる粉砕能率に比べて、重力場で振動させる振動ボールミルによる粉砕能率の方が粉砕能率は高いが、同様に、遠心力場で粉砕する遊星ボールミルによる粉砕能率に比べて、遠心力場において振動させる上記振動ミル1によれば、より短時間で、より細かい粉砕物を生産することができる。
【0047】
しかも、粉砕した被処理物Wの排出は、駆動軸6の回転数を落とすことで半径方向の遠心力を小さくすることができるので、それにより垂直方向の重力によって筒状部34の下部縮径部36の下部開口34bから落下させて排出することができる。従って、駆動軸6(偏心部7)の回転数制御と被処理物Wの投入制御、及び粉砕時間を制御することにより、バッチ的又は連続的に粉砕処理を行って被処理物Wを連続的に微粉砕し、大量の微粉を生産することができ、粉砕能力の向上、及び粉砕時間の短縮を図ることが可能となる。
【0048】
また、被処理物の排出時に、出口部に粉砕メディアよりも小さい開口の網材を配設することにより、出口部において被処理物Wと粉砕メディアXとを分離することができる。なお、この粉砕メディアXの分離は、排出後に行ってもよい。
【0049】
その上、筒状部34内の被処理物Wと粉砕メディアXは、高速回転中は遠心力で筒状部34の粉砕壁39の内面に保持されるため、気体中であっても液体中であっても被処理物Wと粉砕メディアXを筒状部34の粉砕壁39に保持した状態で粉砕工程を行うことができ、例えば、不活性ガス中やアルコール液中で被処理物を粉砕することで、被処理物の粉砕による反応促進・反応抑制を図った粉砕処理を行うような運用にも容易に対応できる。また、連続バッチ処理が可能となり、微粉を大量生産をすることのできる実用レベルの振動ミル1を構成することができる。
【0050】
図3は第2実施形態に係る振動ミル50であり、この実施形態の振動ミル50は、上記第1実施形態における粉砕部30を上部のみで支持し、下部を自由端とした例である。上述した第1実施形態と同一の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0051】
図3に示すように、この実施形態の振動ミル50は、円筒状のケーシング3の上部に設けられた上部支持板51によって駆動軸53及び粉砕部30が支持されている。上部支持板51には防振支持部52が設けられ、この防振支持部52を介して上記駆動軸53とともに粉砕部30が支持されている。
【0052】
防振支持部52は、上部支持板51に設けられた防振ゴム54,55と、この防振ゴム54,55の上面に設けられた支持ブロック56とを有している。防振ゴム54,55は、駆動軸53の軸心に対して放射状に複数個が設けられており、この実施形態では支持ブロック56を吊下げて支持するゴムバネが用いられている。この防振支持部52と上部支持板51との間は、シール材59でシールされている。支持ブロック56は、中央部に上記駆動軸53が貫通する貫通穴57を有し、その貫通穴57の上端と駆動プーリ13との間に上述した第1実施形態と同一のラビリンスシール23が設けられている。
【0053】
また、この支持ブロック56の上端にはフランジ部58が形成されており、このフランジ部58が上記防振ゴム54,55で上部支持板51に防振支持されている。なお、図示する左側の防振ゴム54は、上部支持板51の所定位置に固定されており、支持ブロック56の位置決めをしている。この支持ブロック56に、ピニオンギヤユニット16がボルト15で取付けられている。
【0054】
さらに、この実施形態では、駆動軸53の下端部における下部支持部32の下面を塞いで、粉砕した被処理物が下部支持部32等に入るのを防いでいる。また、この例では、ケーシング3の下部が粉砕物受60で塞がれており、粉砕部30が密閉された構成となっている。
【0055】
なお、他の構成は上述した第1実施形態と同一であるため、同一の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
以上のような第2実施形態の振動ミル50によれば、上記した第1実施形態の振動ミル1と同様に、高遠心力場となる粉砕部30の筒状部34内側において、より大きな振動加速度を作用させることにより、高遠心力場における高加速度で被処理物Wを短時間で細かく粉砕することができる。
【0057】
しかも、この実施形態の振動ミル50によれば、高速回転する筒状部34および振動発生部である偏心部7及びカウンタウエイト46等を一体として防振支持しているので、被処理物Wと粉砕メディアXのアンバランスなどによる駆動軸53及び筒状部34の姿勢変化を自動調芯機能によって元に戻すことができるとともに、振動発生を外部に伝達することを抑制することができる。
【0058】
以上のように、上述した振動ミル1,50によれば、高遠心力場となる粉砕部30の筒状部34の粉砕壁39内面において、その遠心力よりも大きい振動加速度Gで被処理物Wと粉砕メディアXとを粉砕壁39から浮上がらせた後、高遠心力場の遠心力で粉砕壁39に繰り返し衝突させるので、その衝突によって被処理物を非常に細かく粉砕することができるとともに、粉砕時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0059】
また、上述した振動ミル1,50によれば、大気中以外に、不活性ガス中等で粉砕する乾式粉砕、アルコール液中等で粉砕する湿式粉砕のいずれでも使用可能であり、酸化・劣化防止等の反応抑制、又は反応促進等を図った微粉砕を短時間で行うことが可能となる。
【0060】
さらに、上記筒状部34に作用する加速度を最適に設定することにより、例えば、木粉の場合、20ミクロン以下に粉砕することで、糖化が促進されて、セルロースなどの高分子量の炭水化物を、酸または酵素の作用により低分子量の糖類にまで変化させる反応を生じさせるようなバイオマス資源活用も容易に可能となる。
【0061】
なお、上記実施形態では、被処理物Wを粉砕メディアXで粉砕するように構成した例を説明したが、上記したように非常に大きな加速度Gで粉砕するため、硬質の被処理物Wであれば、被処理物Wだけを筒状部34の内側に投入して自己の衝突によって粉砕するように構成することもでき、粉砕メディアXを必ずしも必要とする構成に限定されるものではない。
【0062】
また、上述した被処理物Wとしては、鉱物、化成品、有機物、廃棄物等、種々の被処理物を粉砕することができる。
【0063】
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る振動ミルは、例えば、メカノケミカル分野等において被処理物を細かく粉砕した微粉を大量に生産したい生産設備のミルとして利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 振動ミル
3 ケーシング
4 上部支持板
5 下部支持フレーム
6 駆動軸
7 偏心部
8 上部支持軸受
9 下部支持軸受
16 ピニオンギヤユニット
20 ピニオンギヤ
30 粉砕部
31 上部支持部
32 下部支持部
33 ステー
34 筒状部
34a 上部開口
34b 下部開口
35 上部縮径部
36 下部縮径部
37 上部軸受ユニット
38 下部軸受ユニット
39 粉砕壁
45 インターナルギヤ(内歯車)
46 カウンタウエイト
50 振動ミル
51 上部支持板
52 防振支持部
53 駆動軸
54,55 防振ゴム
56 支持ブロック
58 フランジ部
V3 偏心量
G1 加速度
G2 振動加速度
W 被処理物
X 粉砕メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦向きで回転可能に支持した駆動軸と、該駆動軸の周囲に該駆動軸で回転させる粉砕部とを備えた振動ミルであって、
前記駆動軸は、該駆動軸の軸心に対して偏心した偏心部と、該偏心部の反偏心方向に配置したカウンタウエイトとを備え、
前記偏心部は、前記粉砕部を回転可能に支持する支持部を有し、
前記駆動軸は、該駆動軸の軸心で回転する外歯車を有し、
前記粉砕部は、前記駆動軸の外歯車と噛合して該粉砕部を駆動軸の周囲で公転させる内歯車と、前記駆動軸の周囲に位置する縦向きの粉砕壁と、被処理物を投入する上部開口とを具備した筒状部とを有していることを特徴とする振動ミル。
【請求項2】
前記筒状部は、上端が上向きに縮径して上端に前記上部開口を有する上部縮径部と、下端が下向きに縮径して下端に下部開口を有する下部縮径部とを有している請求項1に記載の振動ミル。
【請求項3】
前記粉砕部は、前記被処理物とともに粉砕メディアを投入して被処理物を粉砕するように構成されている請求項1又は請求項2に記載の振動ミル。
【請求項4】
前記支持部は、前記筒状部の縦方向中間部と、該筒状部の下部とに配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動ミル。
【請求項5】
前記駆動軸は、上部及び下部を支持軸受で支持した両端支持構造となっている請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動ミル。
【請求項6】
前記駆動軸の上部を防振支持する防振支持部を備え、該防振支持部で前記駆動軸とともに粉砕部を吊下げて防振支持するように構成した請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動ミル。
【請求項7】
前記防振支持部は、駆動軸の上部を駆動軸軸心に対して放射状に配置した防振ゴムで吊下げて支持するように構成されている請求項6に記載の振動ミル。
【請求項8】
前記粉砕部の周囲を密閉するケーシングを備えている請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動ミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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