説明

排ガス測定装置

【課題】排ガスの流速もしくは温度、または結露により、センサが故障したり、測定誤差が生じたりすることを防止して、より正確に一酸化炭素などの濃度を検出する。
【解決手段】抽出パイプ4と排ガスセンサ5とを備える。抽出パイプ4は、燃焼機器からの排ガス路2の壁に斜め上方へ延出して設けられ、排ガス路2を通る排ガスの一部を、取出し路6を介して取り出し、この取出し路6の端部で折り返して、戻し路7を介して排ガス路2へ戻す。排ガスセンサ5は、戻し路7に設けられた上方への凹部8に設置され、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出する。排ガスセンサ5は、凹部8に設けられるので、排ガス流が直接に当たらない。また、排ガスセンサ5は、排ガス路2から離れた位置に設けられるので、高温にならない。さらに、抽出パイプ4は斜めに設けられるので、結露水が溜まらない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機器からの排ガス中に含まれる一酸化炭素などの濃度を検出する排ガス測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラまたは給湯器などの燃焼機器には、排ガス中の一酸化炭素の濃度を監視するCOセンサが設けられることがある。この場合、コスト面から、接触燃焼式のCOセンサが用いられることが多い。
【0003】
ところが、この種のCOセンサは、排ガスの流速および温度の他、結露の影響を受けやすい。具体的には、排ガスの流速が速いと、故障や誤差を生じる原因となる。また、排ガスの温度が高くても、故障や誤差を生じる原因となる。さらに、センサに水分が付着しても、故障や誤差を生じる原因となる。
【0004】
この内、流速の影響を防止するために、従来、下記特許文献1に開示されるように、排ガスの流れと垂直方向に開口するカバー(35)内に、CO検出機構部(3)を配置すると共に、カバー(35)の開口にメッシュなどの流速減速部材(40)を設けて、排ガスを減速してカバー(35)内に導入してCO濃度を検出することが提案されている。
【0005】
しかしながら、流速の影響はある程度除去できても、排ガスの温度の影響や、結露の影響を解決するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−5278号公報(段落番号0024−0025、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、排ガスの流速もしくは温度、または結露により、センサが故障したり、測定誤差が生じたりすることを防止して、より正確に一酸化炭素などの濃度を検出できる排ガス測定装置を提供することにある。
【0008】
なお、流速、温度、結露による故障や測定誤差の影響は、接触燃焼式のCOセンサに限らず、その他の形式のCOセンサにも生じ得るものであるし、また、一酸化炭素に限らず、その他の成分を測定するセンサにも生じ得るものである。従って、接触燃焼式のCOセンサに限らず、各種のセンサについても、同様の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、燃焼機器からの排ガス路の壁に斜め上方へ延出して設けられ、前記排ガス路を通る排ガスの一部を、取出し路を介して取り出し、この取出し路の端部で折り返して、戻し路を介して前記排ガス路へ戻す抽出パイプと、前記戻し路に設けられた上方への凹部に設置され、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出する排ガスセンサとを備えることを特徴とする排ガス測定装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、排ガスが通される抽出パイプの流路(取出し路、戻し路)そのものではなく、排ガスの戻し路に設けた上方への凹部に排ガスセンサを配置するので、排ガスセンサに排ガス流が直接に当たることを防止して、流速による故障や測定誤差を防止することができる。また、排ガスセンサが設けられる抽出パイプは、排ガス路の壁から外方へ延出して設けられるので、排ガスセンサへの温度の影響を防止することができる。さらに、排ガスセンサが設けられる抽出パイプは、排ガス路の壁から斜め上方へ延出して設けられると共に、抽出パイプの戻し路に設けた上方への凹部に排ガスセンサを配置するので、抽出パイプや凹部内への結露水の滞留を塞ぎ、排ガスの流路の閉塞を防止すると共に、排ガスセンサへの浸水を防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記抽出パイプは、断面矩形の外パイプと、この外パイプの断面下半分にはめ込まれる断面矩形の内パイプとから構成され、前記外パイプは、一端部が端壁で閉塞される一方、他端部が前記排ガス路に開口するよう設けられ、前記内パイプは、一端部が前記端壁と離隔して配置されることで折返し開口が形成されるか、一端部が閉塞されつつその一端部側の上壁に折返し開口が形成される一方、他端部が前記外パイプよりも延出して前記排ガス路に開口するよう設けられ、前記外パイプには、前記折返し開口より下流側における上壁に、上方への凹部が設けられ、この凹部に、前記排ガスセンサが設けられることを特徴とする請求項1に記載の排ガス測定装置である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、外パイプと内パイプとの二重管構造とすることで、簡易で安価にしかも安定した品質で、排ガス測定装置を製造することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記内パイプは、その先端部を前記排ガス路内に突入して設けられることを特徴とする請求項2に記載の排ガス測定装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、内パイプの先端部を排ガス路内に突入して設けることで、排ガス路の壁面に生じる境界層の影響を防止して、安定して排ガスを排ガス測定装置に通すことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記内パイプおよび前記外パイプは、水平状態に対し30度以上の角度で、前記排ガス路の壁から離隔するに従って上方へ傾斜して設けられることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の排ガス測定装置である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、抽出パイプを水平状態に対し30度以上の角度に保持することで、水滴が表面張力によりパイプ内に残留することを確実に防止することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記排ガス路を通る排ガスに当てて、排ガスの一部を前記内パイプへ導く切替口が、前記内パイプの他端部に設けられたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の排ガス測定装置である。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、内パイプの端部に切替口を設けることで、排ガス路から内パイプへの排ガスの導入を円滑に行うことができる。
【0019】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記切替口は、前記排ガス路が縦向きおよび横向きの双方に対応する形状であることを特徴とする請求項5に記載の排ガス測定装置である。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、排ガス路が縦向きであっても横向きであっても、共通の排ガス測定装置を用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、排ガスの流速もしくは温度、または結露により、センサが故障したり、測定誤差が生じたりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の排ガス測定装置の一実施例を示す概略図であり、使用状態を示す縦断面図である。
【図2】図1の排ガス測定装置の斜視図である。
【図3】図1の排ガス測定装置の斜視断面図である。
【図4】図1の排ガス測定装置を横向きの排気筒に設置した状態を示す概略正面図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1から図3は、本発明の排ガス測定装置の一実施例を示す概略図であり、図1は使用状態を示す縦断面図、図2は斜視図、図3は斜視断面図である。
【0024】
本実施例の排ガス測定装置1は、燃焼機器からの排ガス路(排気筒2)に、傾斜した状態で取り付けられる。燃焼機器は、油やガスなどの燃料を燃焼させる機器であり、その種類を特に問わないが、典型的にはボイラ3(図4)または給湯器である。燃焼機器からの排ガスは、排ガス路を介して外部へ排出される。排ガス路は、典型的には断面円形または断面矩形の排気筒2、つまり煙道または煙突から構成される。そして、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出するために、排気筒2には、排ガス測定装置1が取り付けられる。
【0025】
排ガス測定装置1は、排気筒2の周側壁から外側へ延出して設けられる抽出パイプ4と、この抽出パイプ4に設けられる排ガスセンサ5とを備える。抽出パイプ4は、排気筒2の周側壁から離隔するに従って上方へ傾斜するよう設けられる。また、図1において、上下に延びる排気筒2を上方から見た平面視において、抽出パイプ4は、通常、排気筒2の径方向に配置される。なお、抽出パイプ4は、排気筒2の周側壁から斜め上方へ延出する側の一端部を基端部といい、排気筒2内に開口される側の他端部を先端部ということにする。
【0026】
抽出パイプ4は、排気筒2を通る排ガスの一部を、取出し路6を介して取り出し、この取出し路6の端部で折り返して、戻し路7を介して排気筒2へ戻す構成とされる。また、排ガスセンサ5は、戻し路7に設けられた上方への凹部8内に設置され、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出する。もちろん、排ガスセンサ5は、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素および窒素酸化物の内、複数のものを検出可能であってもよいし、複数の排ガスセンサ5を前記凹部8内に設置してもよい。
【0027】
抽出パイプ4についてさらに具体的に説明すると、本実施例の抽出パイプ4は、断面矩形の外パイプ9と、この外パイプ9の断面下半分にはめ込まれる断面矩形の内パイプ10とから構成される。外パイプ9は、基端部が端壁11で閉塞される一方、先端部は開口されている。一方、内パイプ10は、基端部が前記端壁11と離隔して配置されることで、内パイプ10の基端部と外パイプ9の端壁11との間に、折返し開口12が形成されるか、基端部が端壁(外パイプ9の端壁11でもよい)で閉鎖される代わりに、その基端側の上壁13(戻し路7側の壁)に折返し開口が形成される。また、内パイプ10は、外パイプ9の先端部よりも十分延出して設けられると共に、先端部が開口されている。内パイプ10をどの程度延出させるかについては、後述するように、排気筒2内を流れる排ガスの境界層の影響を考慮して決定するのがよい。
【0028】
折返し開口12の大きさは、適宜に設定されるが、本実施例の場合、取出し路6の流路断面積(内パイプ10の軸線と直交する断面積)や戻し路7の流路断面積(外パイプ9の軸線と直交する断面のうち、内パイプ10がはめ込まれずに残った上半分の断面積)よりも小さく、たとえば、それら流路断面積のおよそ1/2から1/4程度の大きさに設定されている。より具体的には、本実施例では、外パイプ9は、外寸が幅22mm×高さ22mmで内寸が幅20mm×高さ20mmの矩形断面のパイプであり、内パイプ10は、外寸が幅19mm×高さ10mmで内寸が幅17mm×高さ8mmの矩形断面のパイプであり、内パイプ10の基端面と外パイプ9の端壁11との隙間は、2.5mm〜3mmである。但し、これら寸法は一例であって、適宜に変更可能なことは言うまでもない。
【0029】
このような構成であるから、外パイプ9および内パイプ10の各先端部を排気筒2内に開口させれば、内パイプ10内が前記取出し路6、外パイプ9内で且つ内パイプ10外が前記戻し路7として機能する。つまり、排気筒2の排ガスは、内パイプ10の先端部から導入され、内パイプ10の先端部から基端部へ移動し、折返し開口12から内パイプ10外で外パイプ9内に導出され、外パイプ9の基端部から先端部へ移動し、外パイプ9の先端部から排気筒2内へ戻される。
【0030】
ところで、外パイプ9の上壁14には、折返し開口12より下流側に、上方への凹部8が設けられている。折返し開口12からどの程度下流側に凹部8を設けるかは適宜に設定されるが、たとえば、折返し開口12による流路の急縮小と急拡大後の圧力回復点またはその直後に凹部8が設けられる。
【0031】
抽出パイプ4に凹部8を形成するために、本実施例ではセンサ取付筒15が用いられる。このセンサ取付筒15は、円筒状または角筒状であり、軸方向両端部にフランジ(下方フランジ16、上方フランジ17)を備える。そして、センサ取付筒15は、下方フランジ16が、外パイプ9の上壁14に気密状態に固定される。なお、外パイプ9の上壁14には、センサ取付筒15の中空穴と対応した位置に、予め穴が開けられている。このようにして、排ガスの戻し路7には、上方への凹部8が設けられる。この凹部8は、通常、外パイプ9の上壁14に対し垂直に設けられる。つまり、センサ取付筒15の軸線は、通常、外パイプ9の軸線と垂直に配置される。なお、後述するように、凹部8の中空穴の上部開口は閉塞されると共に、そのようにして構成される閉空間(凹部8)内の上部に、下方へ向けて排ガスセンサ5が設けられる。
【0032】
センサ取付筒15の中空穴で構成される凹部8には、排ガスセンサ5(たとえば接触燃焼式のCOセンサ)が設けられる。本実施例では、排ガスセンサ5は、円柱状の本体部18の上端部に、フランジ19が設けられてなる。従って、排ガスセンサ5は、本体部18が、センサ取付筒15の中空穴に上方から差し込まれ、フランジ19が、センサ取付筒15の上方フランジ17にパッキン20を介して重ね合わせてネジ21で固定される。両フランジ17,19間にパッキン20を挟み込むことで、両フランジ17,19間の隙間を封止し、センサ取付筒15を介して外部へ排ガスが逃げることが防止される。センサ取付筒15への排ガスセンサ5の取付状態において、排ガスセンサ5の本体部18は、外パイプ9内へ突出することなく凹部8内に収容される。
【0033】
抽出パイプ4の基端部には、図2に示すように、適宜の板材22を介して、基板ケース23が設けられ、この基板ケース23内には、検出回路(図示省略)が収容される。検出回路は、排ガスセンサ5と電気的に接続され、一酸化炭素などの濃度を検出する。なお、前記板材22は、抽出パイプ4からの熱が検出回路へ伝わるのを防止する遮熱板としても機能する。
【0034】
図1では、排ガス路としての測定口24付き排気筒2に、排ガス測定装置1を取り付けた状態を示している。具体的には、上下方向に沿う筒体からなる排気筒2には、予め周側壁に径方向外側へ突出して円筒25が設けられており、この円筒25の端部にはフランジ26が設けられ、このフランジ26には蓋板27が気密に着脱可能に取り付けられる。このようにして構成される測定口24は、従来、煤塵センサなどを取り付けるのに用いられているが、本実施例の排ガス測定装置1を取り付けるのにも用いることができる。但し、排ガス測定装置1は、必ずしも排気筒2の測定口24に取り付ける必要はなく、測定口24がなくても、排気筒2の周側壁に適宜のブラケットを設置して、同様に排ガス測定装置1を設置することができる。
【0035】
測定口24の蓋板27への排ガス測定装置1の設置について説明すると、排ガス測定装置1には予め取付板28が設けられている。取付板28は、外パイプ9の先端部が通された状態で、外パイプ9の先端部に固定されている。この際、抽出パイプ4の長手方向軸線を水平から設定角度αだけ傾斜させた状態で、取付板28が垂直に配置されるよう設けられる。これにより、図1に示すように、測定口24の蓋板27に取付板28を重ね合わせて取り付けた状態では、抽出パイプ4は、水平から設定角度αだけ傾斜した状態に配置される。この傾斜角度αは、特に問わないが、好ましくは数十度であり、且つ30度以上に設定するのが好ましい。本実施例では、30度に設定されている。水平状態に対し30度以上の角度で排気筒2の壁から離隔するに従って上方へ傾斜するよう設けることで、排ガス測定装置1の使用時、水滴が表面張力により各パイプ9,10内に残留するのを確実に防止することができる。なお、取付板28と蓋板27との間には、パッキン29を介在させている。また、取付板28は、下端部を折り曲げて、強度をもたせている。
【0036】
このようにして、排気筒2の測定口24に排ガス測定装置1を設置した状態では、外パイプ9および内パイプ10の双方が、排気筒2内に連通する。図示例では、外パイプ9は、排気筒2内に突入して開口され、内パイプ10は、測定口24の円筒25内に開口されている。
【0037】
外パイプ9および内パイプ10は、その先端部が排気筒2内に連通すれば足り、それぞれ単に排気筒2または測定口24の壁面付近で開口させてもよいが、少なくとも内パイプ10は、その先端部を排気筒2内に突入して設けるのが好ましい。これは、排気筒2内を流れる排ガスの境界層の影響を受けないようにするためである。そのため、内パイプ10は、境界層の厚さよりも深く突入させればよく、たとえば排気筒2の中心に開口させるか、排気筒2の内面から30mm以上離れかつ排気筒2の中心までの位置で、内パイプ10の先端部を開口させるのがよい。なお、小型貫流ボイラの排気筒2の場合、排気筒2の直径は、標準的には90〜400mm程度である。
【0038】
内パイプ10の先端部には、適宜の切替口30を設けてもよい。この切替口30は、排気筒2を通る排ガスに当てて、排ガスの一部を内パイプ10へ導くためのものである。切替口30の形状は、特に問わないが、本実施例では、図2に示すように、第一板31と第二板32とから構成される。第一板31は、図2において、内パイプ10の前壁33の先端部に設けられ、後方へ行くに従って先端側へ傾斜して設けられる矩形状の板である。また、第二板32は、第一板31の上縁と内パイプ10の上壁13の先端部とを塞ぐように設けられる台形状の板である。これにより、図2において、内パイプ10の先端部は、後方および下方へのみ開口することになる。
【0039】
このような構成であるから、図3に示すように、排気筒2を上方へ流れる排ガスの一部は、切替口30の第二板32に当たるようにして、内パイプ10(取出し路6)内に導かれる。そして、内パイプ10の端部における折返し開口12にて、外パイプ9(戻し路7)へ導かれ、外パイプ9の先端部から排気筒2へ戻される。この間、戻し路7の凹部8に設けた排ガスセンサ5により、一酸化炭素などの濃度が正確に検知される。
【0040】
本実施例の排ガス測定装置1によれば、排ガスが通される抽出パイプ4の流路(取出し路6,戻し路7)そのものではなく、排ガスの戻し路7に設けた上方への凹部8に排ガスセンサ5を下方へ向けて逆さに設置するので、排ガスセンサ5に排ガス流が直接に当たることを防止して、流速による故障や測定誤差を防止することができる。
【0041】
また、排ガスセンサ5が設けられる抽出パイプ4は、排気筒2の壁から外方へ延出して設けられるので、排ガスセンサ5への温度の影響を防止することができる。しかも、折返し開口12の大きさを調整して、戻し路7に過剰に排ガスが流れるのを防止することでも、排ガスセンサ5への温度の影響を防止することができる。
【0042】
さらに、排ガスセンサ5が設けられる抽出パイプ4は、排気筒2の壁から斜め上方へ延出して設けられると共に、抽出パイプ4の戻し路7に設けた上方への凹部8に排ガスセンサ5を逆さに設置するので、抽出パイプ4や凹部8内への結露水の滞留を塞ぎ、排ガスの流路の閉塞を防止すると共に、排ガスセンサ5への浸水を防止することができる。
【0043】
しかも、抽出パイプ4を外パイプ9と内パイプ10との二重管構造とすることで、簡易で安価にしかも安定した品質で、排ガス測定装置1を製造することができる。
【0044】
流速の影響を防止する構成について、念のためさらに詳細に説明する。まず、排気筒2内の排ガスの流速が遅いときでも、確実に抽出パイプ4内へ排ガスを導入するために、抽出パイプ4への入口は、排ガスの動圧を受ける構造としている。つまり、典型的には、抽出パイプ4への入口は、排気筒2を流れる排ガスの上流側へ向ければよい。一方、抽出パイプ4からの出口は、排ガスの動圧を受けにくい方向に向けている。典型的には、抽出パイプ4からの出口は、排気筒2を流れる排ガスの流れと直交する方向へ向ければよい。このようにして、低流速時にも、抽出パイプ内に排ガスの流れを確実に発生させることができる。逆に、排気筒2内の排ガスの流速が速いときの影響を防止するために、センサ設置位置を戻し路7内ではなく、閉空間となる上方への凹部8を作り、その凹部8内に排ガスセンサ5を配置している。そのため、抽出パイプ4の流路内に直接に排ガスセンサ5を設置した場合と比較して、流速の影響を受けにくくすることができる。このようにして、幅広い流速(ボイラ3の場合たとえば1〜15m/s)に対応可能となる。
【0045】
以上のとおりであるから、たとえば、排ガスセンサ5として接触燃焼式のCOセンサを用いた場合でも、流速、温度、結露の影響を防止して、燃焼機器の不完全燃焼を確実に検出することができる。しかも、たとえばボイラ3の場合、排ガスの流速や温度、結露水の発生状況は、機種ごとに異なるが、本実施例の排ガス測定装置1によれば、多種のボイラ3に対して同一の構成で対応可能となる。なお、排ガスセンサ5の出力(たとえばCOセンサの場合には一酸化炭素の濃度)が設定以上になれば、警報を発したり、あるいは燃焼機器(ボイラ3)の燃焼を停止させたりすればよい。
【0046】
図4および図5は、上記実施例の排ガス測定装置1を、横引きと呼ばれる横向きの排気筒2に設置した状態を示す概略図であり、図4は正面図、図5はそのV−V断面図である。
【0047】
排ガス測定装置1は、図1では、上下方向に沿う排気筒2に設けたが、図4では、左右方向に沿う排気筒2に設けられる。つまり、図示例のように、ボイラ3などの燃焼機器からの排気筒2は、建物の天井に沿うなどして横向きに設けられることがあり、その箇所にも同一の構成で排ガス測定装置1を設置することができる。
【0048】
具体的には、図5に示すように、横向きの排気筒2の周側壁の一部には、図1と同様の測定口24または適宜のブラケットが設けられており、この測定口24等に、図1の場合と同様に、排ガス測定装置1を設置することができる。この際、切替口30の開口を、排ガスの上流側へ向けて配置する。この場合、横向きの排気筒2を通る排ガスを切替口30の第一板31に当てて、内パイプ10に導くことができる。このように、本実施例の切替口30は、排気筒2が縦向きおよび横向きのいずれにも共通の構成で対応することができる。
【0049】
本発明の排ガス測定装置1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。前記実施例では、外パイプ9に内パイプ10をはめ込んで構成したが、場合により、実質的に同等の形状であればその構成方法は特に問わない。また、外パイプ9や内パイプ10の断面形状は、必ずしも矩形状に限らない。さらに、内パイプ10の先端部に設ける切替口30も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 排ガス測定装置
2 排気筒(排ガス路)
3 ボイラ(燃焼機器)
4 抽出パイプ
5 排ガスセンサ
6 取出し路
7 戻し路
8 凹部
9 外パイプ
10 内パイプ
11 端壁
12 折返し開口
30 切替口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機器からの排ガス路の壁に斜め上方へ延出して設けられ、前記排ガス路を通る排ガスの一部を、取出し路を介して取り出し、この取出し路の端部で折り返して、戻し路を介して前記排ガス路へ戻す抽出パイプと、
前記戻し路に設けられた上方への凹部に設置され、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出する排ガスセンサと
を備えることを特徴とする排ガス測定装置。
【請求項2】
前記抽出パイプは、断面矩形の外パイプと、この外パイプの断面下半分にはめ込まれる断面矩形の内パイプとから構成され、
前記外パイプは、一端部が端壁で閉塞される一方、他端部が前記排ガス路に開口するよう設けられ、
前記内パイプは、一端部が前記端壁と離隔して配置されることで折返し開口が形成されるか、一端部が閉塞されつつその一端部側の上壁に折返し開口が形成される一方、他端部が前記外パイプよりも延出して前記排ガス路に開口するよう設けられ、
前記外パイプには、前記折返し開口より下流側における上壁に、上方への凹部が設けられ、
この凹部に、前記排ガスセンサが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の排ガス測定装置。
【請求項3】
前記内パイプは、その先端部を前記排ガス路内に突入して設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の排ガス測定装置。
【請求項4】
前記内パイプおよび前記外パイプは、水平状態に対し30度以上の角度で、前記排ガス路の壁から離隔するに従って上方へ傾斜して設けられる
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の排ガス測定装置。
【請求項5】
前記排ガス路を通る排ガスに当てて、排ガスの一部を前記内パイプへ導く切替口が、前記内パイプの他端部に設けられた
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の排ガス測定装置。
【請求項6】
前記切替口は、前記排ガス路が縦向きおよび横向きの双方に対応する形状である
ことを特徴とする請求項5に記載の排ガス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145523(P2012−145523A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5521(P2011−5521)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】