説明

接合されたタービン動翼部材及び接合方法

【課題】鋼とニッケル合金との融解ラインの検査の問題を克服する。
【解決手段】タービンの動翼部材10,30のための接合方法において、a)鋼から形成された第1の動翼部材10を提供するステップと、b)該第1の動翼部材10にニッケル合金バタリング層20を提供するステップと、c)ニッケル合金から形成された第2の動翼部材30を提供するステップと、d)第1の動翼部材10を第2の動翼部材30に接合するために、ニッケル合金溶接溶加材25を用いてニッケル合金バタリング層20を第2の動翼部材30に溶接するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ガスタービン又は蒸気タービンの動翼、特に、鋼及びニッケル合金から形成されたタービン動翼部材の接合に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの分野において、異なる材料の区分から形成された動翼を必要とすることが一般的である。しかしながら、この要求は、異なる材料を常に容易に接合することができるわけではないので、努力を要する。
【0003】
動翼部材片を接合する1つの望ましい方法は、溶接である。例えば、米国特許第4962586号明細書には、異なる鋼を接合することを含む接合手段が記載されている。この解決手段は、部材の一方にバタリング層を提供し、バタリング層を熱処理し、次いで、別の鋼製の動翼部材をバタリング層に接合することを含む。米国特許第7371988号明細書には、両方の部材に熱処理されるバタリング層を提供することも含む、鋼動翼部材を接合する別の方法が記載されている。
【0004】
米国特許第7168916号明細書には、中間動翼リングを用いて、鋼及びニッケル合金の部材を接合することを含む別の方法が記載されている。この解決手段は、超音波減衰特性の突然の変化によるニッケル合金から鋼への移行部における欠陥の不十分な解像度、及び融解ラインに位置するあらゆる欠陥を溶接された接合部の外面から検出する際の困難さにより、公知の問題を克服する1つの方法を提供する。
【0005】
鋼製のタービン動翼部材と、ニッケル合金製のタービン動翼部材とを接合する必要性は依然として存在するので、択一的な接合手段を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4962586号明細書
【特許文献2】米国特許第7371988号明細書
【特許文献3】米国特許第7168916号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
接合されたタービン動翼部材、及び接合されたタービン動翼部材を製造する方法が提供され、この場合、タービン動翼部材は、それぞれ鋼及びニッケル合金から形成されている。接合方法は、鋼とニッケル合金との融解ラインの検査の問題を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、独立請求項の主体によってこの問題を解決しようとするものである。有利な実施形態は従属請求項に示されている。
【0009】
したがって、1つの態様は、
a)鋼から形成された第1の動翼部材を提供し、
b)第1の部材にニッケル合金バタリング層を提供し、
c)ニッケル合金から形成された第2の動翼部材を提供し、
d)第1の動翼部材を第2の部材に接合するためにニッケル合金溶接溶加材を用いてニッケル合金バタリング層を第2の部材に溶接することを含む、タービン動力部材のための接合方法を提供する。
【0010】
この方法は、ニッケル合金バタリング層への良好なアクセスが得られながら、検出のために、すなわちステップd)の前に、鋼とニッケル合金との間の融解ラインを容易に検査することができる手段を提供する。方法では、さらに、ニッケル合金バタリング層を提供した後、第1の動翼部材及び第2の動翼部材の接合の前に、中間熱処理ステップが必要とされない。
【0011】
別の態様は、上記方法によって製造された、接合されたタービン動翼部材を提供し、第1の動翼部材と、ニッケル合金バタリング層と、ニッケル合金溶接溶加材と、第2の動翼部材とは、長手方向軸線に沿って軸方向に連続して位置している。
【0012】
本発明の別の態様及び利点は、添付の図面に関連した以下の説明から明らかになるであろう。図面には、例として、発明の実施形態が開示されている。
【0013】
例えば、発明の典型的な実施形態は、添付の図面を参照して以下により詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ニッケル合金バタリング層を提供することを含む典型的な方法のフローチャートである。
【図2】図1の方法に含まれる、択一的なステップを示すフローチャートである。
【図3】典型的な接合されたタービン動翼部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態をここで図面を参照して説明する。図面中、同一の参照符号は全図を通じて同一の部材を示すために用いられる。以下の説明では、説明を目的として、発明の十分な理解を提供するために多数の特定の詳細が示される。しかしながら、発明は、これらの特定の詳細を用いずに実施されてよいことが明らかである。別の例では、発明の説明を容易にするために、公知の構造及び装置がブロック図で示されている。
【0016】
この明細書を通じて、"バタリング層"とは、ベース部材の表面に提供された金属の層であると定義される。その結果、バタリング層は、提供プロセスの間、バタリング層はベース部材にのみ提供されるので、部材間の接合を形成しない。バタリング層は初期溶接パスを含んでおり、この初期溶接パス上に、2つの表面を接合するために使用される付加的な溶接パス又は溶接溶加材が提供される。
【0017】
図1は、タービン動翼部材10,30を接合するための典型的な方法の本質的なステップを示している。この方法は、まず鋼製の動翼部材10を提供し、次いで、鋼製の動翼部材10にニッケル合金バタリング層20を提供することを含む。次いで、ニッケル合金の動翼部材30が提供され、その後、ニッケル合金溶接溶加材25によってニッケル合金バタリング層20に溶接することによって接合される。この手段により、鋼製の動翼部材10がニッケル合金製の部材30に接合される。
【0018】
欠陥検出のための一般的な方法は、渦電流法及び超音波法を含む。これらの試験法は、通常、試験表面が所要の平滑度を有するように、バタリング層の表面前処理を必要とする。渦電流法が選択される場合、鋼製の動翼部材10の溶接前処理部15に対して垂直に測定されたニッケル合金バタリング層20の厚さは、好適には2mmよりも大きく、最も好適には2〜4mmである。超音波法が選択される場合、鋼製の動翼部材10の溶接前処理部15に対して垂直に測定されたニッケル合金バタリング層20の厚さは、好適には3mmよりも大きく、最も好適には10mmの上限を有する。
【0019】
これらの厚さは、2つの試験法のための最適な欠陥解像度を提供する。典型的な方法において、図2に示したように、鋼/ニッケル融解ラインの領域における欠陥を検出する場合、ニッケル合金バタリング層20の厚さは、ニッケル合金バタリング層20の提供後に完了される機械加工によって制御される。
【0020】
溶接後の熱処理は、接合部の熱に影響されたゾーンの領域における応力を緩和するために、接合された動翼部材10,30に提供される。
【0021】
図3は、図1及び図2に示された方法によって接合された、典型的な接合されたタービン動翼部材10,30を示している。接合されたタービン動翼部材10,30は、長手方向軸線LAに関して接合された軸方向の列で、鋼製の動翼部材10と、ニッケル合金のバタリング層20と、ニッケル合金の溶接溶加材25と、ニッケル合金製の動翼部材30とを有している。
【0022】
ニッケル合金バタリング層20は、1つの典型的な実施形態において2〜4mm、別の典型的な実施形態において3〜10mmの、第1の部材10の溶接前処理部15に対して垂直に測定された厚さを有している。
【0023】
発明は、最も実用的な典型的な実施形態であると考えられるものについて示されかつ説明されたが、発明の本質的な特徴の精神から逸脱することなく別の特定の形態で本発明を具体化することができることは当業者によって認められるであろう。したがって、ここで開示された実施形態は、全ての点において例示的であり制限されないと考えられる。発明の範囲は、前記説明ではなく添付の請求項によって示されており、請求項の意味及び範囲及び均等物に含まれる全ての変更は発明に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
10 鋼製の動翼部材、 15 溶接準備、 20 ニッケル合金バタリング層、 25 ニッケル合金溶接溶加材、 30 ニッケル合金製の動翼部材、 LA 長手方向軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンの動翼部材(10,30)のための接合方法において、
a)鋼から形成された第1の動翼部材(10)を提供するステップと、
b)該第1の動翼部材(10)にニッケル合金バタリング層(20)を提供するステップと、
c)ニッケル合金から形成された第2の動翼部材(30)を提供するステップと、
d)第1の動翼部材(10)を第2の動翼部材(30)に接合するために、ニッケル合金溶接溶加材(25)を用いてニッケル合金バタリング層(20)を第2の動翼部材(30)に溶接するステップとを含むことを特徴とする、タービンの動翼部材(10,30)のための接合方法。
【請求項2】
第1の動翼部材(10)の溶接前処理部(15)に対して垂直に測定されたニッケル合金バタリング層(20)の厚さが2〜4mmであるように該ニッケル合金バタリング層(20)が提供される、請求項1記載の接合方法。
【請求項3】
第1の動翼部材(10)の溶接前処理部(15)に対して垂直に測定されたニッケル合金バタリング層(20)の厚さが3〜10mmであるように該ニッケル合金バタリング層(20)が提供される、請求項1記載の接合方法。
【請求項4】
前記ステップb)の後に、ニッケル合金バタリング層(20)の厚さを達成するために前記ニッケル合金バタリング層(20)が機械加工される、請求項2又は3記載の接合方法。
【請求項5】
前記ステップd)の後に、溶接後の熱処理ステップを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の接合方法。
【請求項6】
第1の動翼部材(10)と、ニッケル合金バタリング層(20)と、ニッケル合金溶接溶加材(25)と、第2の動翼部材(30)とが、長手方向軸線(LA)に沿って軸方向に連続して位置している、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
接合されたタービン動翼部材(10,30)において、
鋼から形成された第1の動翼部材(10)と、
該第1の動翼部材(10)に接合されたニッケル合金バタリング層(20)と、
該ニッケル合金バタリング層(20)に接合されたニッケル合金溶接溶加材(25)と、
ニッケル合金溶接溶加材(25)に接続された、ニッケル合金から形成された第2の動翼部材(30)との組合せであり、
第1の動翼部材(10)と、ニッケル合金バタリング層(20)と、溶接溶加材(25)と、第2の動翼部材(30)とが、長手方向軸線(LA)に沿って軸方向に連続して位置していることを特徴とする、接合されたタービン動翼部材。
【請求項8】
前記ニッケル合金バタリング層(20)が、第1の動翼部材(10)の溶接前処理部(15)に対して垂直に測定された、2〜4mmの厚さを有している、請求項7記載の接合されたタービン動翼部材。
【請求項9】
前記ニッケル合金バタリング層(20)が、第1の動翼部材(10)の溶接前処理部(15)に対して垂直に測定された、3〜10mmの厚さを有している、請求項7記載の接合されたタービン動翼部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−64197(P2011−64197A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−188334(P2010−188334)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】