説明

接着剤及びシーラント並びに結合剤を含む接着剤システム

【課題】本発明の目的は、結合剤組成物が揮発性有機化合物を放出しない又はごく僅かな量の揮発性有機化合物を放出する接着剤システムであって、結果として湿気の多い及び温かい条件下での接着の損失を同時にもたらさないシステムを提供することである。
【解決手段】本発明は、固体エポキシ樹脂の少なくとも1つの水性分散液及び少なくとも1つのポリアミンを含有する結合剤組成物と、ポリアミンと縮合反応で反応できる遊離した形態又は加水分解により放出可能な形態の少なくとも1つの化合物Vを含有する接着剤又はシーラントとを含む接着剤システムに関する。本発明の接着剤システムは、結果として湿気の多い及び温かい条件下での改善された接着をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性接着剤及びシーラント、並びにこうした接着剤及びシーラントのための結合剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤及びシーラントは、種々の材料を結合し及びシールするのに用いられる。異なる基体上への接着剤及びシーラントの接着を改善するために、しばしば結合剤組成物が用いられ、これは表面又は基体上にプライマとして塗布され得る。
こうした結合剤組成物は、典型的に、溶媒として、塗布中に蒸発し且つ環境上の及び労働安全衛生上の理由で不利である揮発性有機化合物(VOC)を含有する。
したがって、溶媒ベースの結合剤組成物を水性結合剤組成物と置き換える試みがなされる。水性結合剤組成物は、しかしながら、パップ貯蔵などの湿気の多い及び温かい条件下での接着においてそれらの結合を失う傾向があり、結果として接着剤システム全体の破壊をもたらす。湿気の多い及び温かい条件下での比較的良好な安定性をもつ水性結合剤組成物は、例えば、WO2008/037780で説明される。これはエポキシ樹脂分散系とアミン硬化剤からなる2成分系を表す。しかしながら、より長期のパップ貯蔵中に、この結合剤組成物はまた、接着の損失を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2008/037780
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、したがって、その結合剤組成物が揮発性有機化合物を放出しない又はごく僅かな量の揮発性有機化合物を放出する接着剤システムであって、結果として湿気の多い及び温かい条件下での接着の損失を同時にもたらさないシステムを提供することである。この目的は、請求項1に記載の本発明の接着剤システムによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚いたことに、接着剤又はシーラント中の化合物Vの存在は、湿気の多い及び温かい条件下での基礎をなす結合剤組成物の安定性を著しく改善することが見出された。したがって、湿気の多い及び温かい条件下での接着剤システムの安定性が保証される。加えて、湿気の多い及び温かい条件下での接着の損失に普通は悩まされる既存の結合剤組成物の適用分野を拡大することができる。
【0006】
本発明の他の態様は、さらなる独立請求項の対象である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、接着剤システムであって、
固体エポキシ樹脂の少なくとも1つの水性分散液と少なくとも1つのポリアミンとを含有する結合剤組成物と、
ポリアミンと縮合反応で反応できる遊離した形態又は加水分解により放出可能な形態の少なくとも1つの化合物Vを含有する接着剤又はシーラントと、
を含む接着剤システムに関する。
【0008】
本明細書では、ポリアミン又はポリイソシアネートのような「ポリ」で始まる物質名は、正式には物質名にある分子1つにつき2つ又はそれ以上の官能基を有する物質を表す。
したがって、本明細書では、「ポリアミン」化合物は、2つ又はそれ以上のアミノ基を有するように理解される。
本明細書では、「ポリマー」という用語は、第1に、それらの重合度、分子量、及びポリ反応(polyreaction)(重合、重付加、重縮合)で形成される鎖の長さに関して異なる化学的に一様な巨大分子の群を含む。他方では、この用語はまた、重合反応からのこうした巨大分子の群の誘導体、言い換えれば、既存の巨大分子における官能基の付加又は置換のような反応によって得られる化学的に一様であってもよいし又は化学的に一様でなくてもよい化合物を含む。この用語はまた、所謂プレポリマー、すなわち、反応性のオリゴマープレ付加体を含み、その官能基は、巨大分子の合成に関係する。
【0009】
「ポリウレタンポリマー」という用語は、所謂ポリイソシアネート重付加プロセスによって調製されるすべてのポリマーを含む。これはまた、ウレタン基をほとんど又はまったく含まないポリマーを含む。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリ尿素、ポリ尿素、ポリエステルポリ尿素、ポリイソシアヌレート、及びポリカルボジイミドである。
「パップ貯蔵」は、ここでは、70℃の温度及び100%の相対湿度での試験片の貯蔵を表す。
本明細書では、「分子量」という用語は、平均分子量M(数平均)を常に意味する。
【0010】
水性分散液の固体エポキシ樹脂は、特に、式(I)の固体エポキシ樹脂である。
【化1】

【0011】
ここで、置換基Rは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。
加えて、指数rは>1、特に≧1.5の値である。好ましくは、rは2〜12である。
【0012】
典型的に、固体エポキシ樹脂は、約23℃の室温よりも上のガラス転移温度を有する。したがって、固体エポキシ樹脂は、自由に流動する粉体に室温で分解することがある。
【0013】
そのような又は既に分散した形態で存在するこうした固体エポキシ樹脂は、例えば、米国のDow Chemical Company、米国のHuntsman International LLC、又は米国のHexion Specialty Chemicals Inc.から市販されている。
【0014】
適切な固体エポキシ樹脂はまた、例えば、少なくとも部分的に、グリシジルエーテル基の代わりにNグリシジル基を有するエポキシ樹脂、及び脂肪族グリシジルエーテルに基づくエポキシ樹脂である。
【0015】
適切な固体エポキシ樹脂はまた、フェノール樹脂の群から選択されたエポキシ樹脂、特に、フェノール又はクレゾールノボラックである。
【0016】
随意的に、固体エポキシ樹脂の水性分散液は、液体エポキシ樹脂、乳化剤、共乳化剤、発泡防止剤、殺生物剤、顔料、フィラー、反応性希釈剤、又は触媒のような付加的な構成成分を含有する。
【0017】
固体エポキシ樹脂の水性分散液は、好ましくは30〜80wt%、特に50〜70wt%の固体エポキシ樹脂の含有量を有する。したがって、エポキシ樹脂の水性分散液は、特に、約20〜70wt%の水を含有する。
【0018】
分散液中に分散される固体エポキシ樹脂粒子の平均粒子径は、特に0.05〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.2〜5μmの範囲内である。
【0019】
例えば、固体エポキシ樹脂の適切な水性分散液は、Cognisから商標名Waterpoxy(登録商標)1422で市販されており、又はAir Productsから商標名Ancarez(商標)AR555 Waterborne Epoxy Resinで市販されている。
【0020】
固体エポキシ樹脂の水性分散液の比率は、全ての結合剤組成物に基づき、好ましくは30〜99wt%、特に40〜80wt%である。
【0021】
さらに、本発明の結合剤組成物は、少なくとも1つのポリアミンを含む。
【0022】
適切なポリアミンは、例えば、欧州特許出願EP09178262.3で説明され、その内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
好ましくは、ポリアミンは、反応生成物であり、特にポリアミドアミン又はエポキシ樹脂/ポリアミン付加生成物である。
好ましくは、ポリアミンはポリアミドアミンである。これらは、例えば、カルボン酸とポリアミン、例えば脂肪酸とポリアルキレンアミンの縮合生成物を含む。
【0024】
特に適切なポリアミンは、エポキシ樹脂とポリアミンの付加生成物である。こうした付加生成物は、例えば、当業者に公知の複数の可能なポリアミンとエポキシ樹脂、特にビスフェノールAジグリシジルエーテルから得ることができる。これに関して、好ましいポリアミンは、エチレンジアミン、イソフォロンジアミン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−キシリレンジアミン、ポリアルキレンアミン、例えばポリエチレンアミン又はポリオキシアルキレンジアミン、若しくは特に商標名Jeffamine(登録商標)でHuntsmanから入手可能なトリアミンである。好ましくは、反応生成物は、ビスフェノールA及び/又はビスフェノールFのジグリシジルエーテルとポリオキシアルキレンジアミン又はポリオキシアルキレントリアミンとの反応生成物である。特に適切な付加生成物は、EP0567831でビス−(ジアミン)−ジエポキシド付加体として説明される付加生成物である。
【0025】
本発明の結合剤組成物において異なるポリアミンの混合物を用いることが十分可能であり、有利な場合もある。随意的に、ポリアミンとメルカプト含有化合物との混合物が用いられてもよい。
【0026】
ポリアミンの比率は、特に、結合剤組成物中のアミノ基とエポキシ基との比が0.1:1〜1:1の範囲内にあるように選択される。
【0027】
好ましくは、ポリアミンの比率は、全ての結合剤組成物に基づき、1〜40wt%、特に5〜20wt%である
【0028】
好ましくは、本発明の接着剤システムの結合剤組成物は、結合剤組成物では一般的なものであって、例えばWO2008/037780で説明されるもの、特に、エポキシ−シランES又はESx、アミノシランAS又はASx、若しくはメルカプトシランMSとしてそこで説明される化合物のような他の成分を含有する。
より好ましくは、結合剤組成物は、随意的に、少なくとも部分的に、それらのシロキサン、及び顔料の形態のシランを含有する。好ましいシランは、エポキシシラン、特に3−グリシドキシプロピルシラン及びアミノシラン、特に3−アミノプロピルシラン及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルシラン、エポキシシランとアミノシランの付加物、及びメルカプトシラン、特に3−メルカプトプロピルシランを含有する。
【0029】
好ましい顔料は、鉄顔料、特に煤を含む。
【0030】
説明された結合剤組成物は、特に2成分系として用いられ、固体エポキシ樹脂の水性分散液は第1の成分中に含有され、ポリアミンは第2の成分中に含有される。
好ましくは、結合剤組成物は、
固体エポキシ樹脂の少なくとも1つの水性分散液を含有する第1の成分K1と、
少なくとも1つのポリアミンを含有する第2の成分K2と、
からなる2成分結合剤組成物である。
【0031】
典型的に、調製後に、結合剤組成物の個々の成分は、密封包装に互いとは別々に詰められる。個々の成分は、互いとは別々に貯蔵されたときに安定である。本発明の結合剤組成物は、特に5〜30℃の範囲内の温度で貯蔵される。これは、固体エポキシ樹脂の水性分散液の安定性を保証する。
【0032】
さらに、本発明の接着剤システムは、ポリアミンと縮合反応で反応できる遊離した形態又は加水分解により放出可能な形態の少なくとも1つの化合物Vを含有する少なくとも1つの接着剤又はシーラントを含む。
【0033】
使用される接着剤又はシーラントは、原則として、従来の任意の接着剤又はシーラントとすることができる。特に、これは湿気硬化型接着剤又はシーラントである。
【0034】
適切な接着剤及びシーラントは、特にポリウレタン接着剤及びシーラント、特にイソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを含有するものである。
さらに、本発明の結合剤組成物は、シラン架橋接着剤及びシーラントに特に適する。
本発明の結合剤組成物は、スイスのSika AGによって製品ラインSikaflex(登録商標)及びSikaBond(登録商標)で市販されるような弾性湿気硬化型接着剤に特に適する。
【0035】
好ましい接着剤及びシーラントは、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを含有するポリウレタン接着剤及びシーラント、並びにシラン架橋接着剤及びシーラントであり、両方のタイプは、特に、室温(23℃)で塗布することができ且つまた室温で硬化することができる。
【0036】
イソシアネート末端ポリウレタンポリマーに基づく適切な接着剤はまた、2成分ポリウレタン接着剤を含み、その第1の成分はアミン又はポリオールを含み、その第2の成分は、イソシアネート基又はポリイソシアネートを有するポリウレタンポリマーを含む。2成分室温硬化ポリウレタン接着剤の例は、Sika Schweiz AGから市販されるようなSikaForce(登録商標)製品ラインからの接着剤である。
イソシアネート末端ポリマーに基づく適切な接着剤はまた、熱可塑性ポリマーとイソシアネート基末端ポリマー又は熱可塑性のイソシアネート基末端ポリマーとを含有する反応性ポリウレタンホットメルト接着剤を含む。こうした反応性ポリウレタンホットメルト接着剤は、溶融され、一方では、冷却により固化し、他方では、大気中の湿気との反応により架橋する。例えば、適切な反応性ポリウレタンホットメルト接着剤は、SikaMelt(登録商標)という名称でSika Schweiz AGから市販されている。
【0037】
さらに、本発明の接着剤システムの接着剤又はシーラントは、ポリアミンと縮合反応で反応できる遊離した形態又は加水分解により放出可能な形態の少なくとも1つの化合物Vを含む。
【0038】
特に、化合物Vはカルボニル化合物である。好ましいカルボニル化合物は、アルデヒド、β−ジケトン、β−ケトエステル、及びβ−ケトアミドである。
【0039】
好ましくは、化合物Vの比率は、接着剤又はシーラントに基づき0.2から20wt%まで、特に0.5から10wt%までの範囲である。
【0040】
適切なアルデヒドは、一方では、室温で液体のアルデヒド、特に、プロパナール、2−メチルプロパナール、ブタナール、2−メチルブタナール、2−エチルブタナール、ペンタナール、ピバルアルデヒド、2−メチルペンタナール、3−メチルペンタナール、4−メチルペンタナール、2,3−ジメチルペンタナール、ヘキサナール、2−エチルヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、2−メチルウンデカナール、ドデカナール、メトキシアセトアルデヒド、シクロプロパンカルボキシアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド(cyclohexanecarboxalhyde)、2,2−ジメチル−3−フェニルプロパナール、1−ナフトアルデヒド、ベンズアルデヒド又は置換されたベンズアルデヒド、特に、異性体のトルアルデヒド、サリチルアルデヒド、及びm−フェノキシ−ベンズアルデヒド、及びシンナムアルデヒドである。
【0041】
他方では、特に適切なアルデヒドは、式(II)のアルデヒドを含む。
【化2】

【0042】
この場合、R及びRのいずれかは、それぞれ独立して1〜12個の炭素原子を有する1価の炭化水素残基であり、又は共に、5〜8個、好ましくは6個の炭素原子を有する随意的に置換された炭素環の一部である4〜12個の炭素原子を有する二価の炭化水素残基である。好ましくは、R及びRは、それぞれメチル残基である。
さらに、Rは、水素原子、若しくは1〜12個の炭素原子、特に水素原子を有するアリールアルキル又はシクロアルキル又はアルキル基である。
Zは、31個までの炭素原子を有する、随意的に付加的なエーテル酸素原子を有するエステル、エーテル、第3アミノ又はアミド基である。好ましくは、Zは、式(III)又は(IV)の残基であり、
【化3】

は、水素原子、若しくは1〜30個の炭素原子を有する、随意的に環状成分を有する、及び随意的に少なくとも1つのヘテロ原子、特にエーテル、カルボニル、又はエステル基の形態の酸素を有する直鎖又は枝分かれ鎖アルキル残基のいずれかである。
【0043】
さらに、Rは、5〜30個の炭素原子若しくは随意的に置換された芳香族又はヘテロ芳香族5員環又は6員環を有するモノ−又はポリ不飽和直鎖又は枝分かれ鎖炭化水素残基であってもよい。
好ましくは、Rは、6〜30個、特に11〜30個の炭素原子を有する、随意的に環状成分を有する、及び随意的に少なくとも1つのヘテロ原子を有する直鎖又は枝分かれ鎖アルキル残基であり、又は、6〜30個、特に11〜30個の炭素原子を有するモノ−又はポリ不飽和、直鎖又は枝分かれ鎖炭化水素残基である。
【0044】
及びRは、それぞれ独立して水素原子、1〜12個の炭素原子を有する、随意的にエーテル基又はハロゲン原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールアルキル基であり、又は共に、5〜8個、好ましくは5〜6個の炭素原子を有する随意的に置換された炭素環の一部である二価の炭化水素残基である。
好ましくは、R及びRは、それぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、又はアルコキシエチル基であり、又は共に、それらは窒素原子を含む環、特に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、又はN−アルキルピペラジン環を形成し、この環は随意的に置換される。
特に好ましくは、R及びRは、それぞれ独立してベンジル又はメトキシエチル基であり、又は共に、窒素原子を含むモルホリン環を形成する。
【0045】
式(II)の好ましいアルデヒドは、室温で液体である。
【0046】
残基Zとして式(III)の残基を有する式(II)のアルデヒドは、特に2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパナールのような脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族2,2−二置換3−ヒドロキシ−アルデヒドと適切なカルボン酸とのエステルを含み、適切なカルボン酸は、特に、飽和脂肪族カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、2−エチル−カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸;モノ不飽和脂肪族カルボン酸、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸;ポリ不飽和脂肪族カルボン酸、例えばリノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸;脂環式カルボン酸、例えばシクロヘキサンカルボン酸;アリール脂肪族カルボン酸、例えばフェニル酢酸;芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、ナフトエ酸、トルイル酸、アニス酸;これらの酸の異性体;キャノーラ油、ひまわり油、亜麻仁油、オリーブ油、ココナッツ油、オイルパーム核油、及びオイルパーム油のような天然油及び脂肪の工業的加水分解からの脂肪酸混合物;及びジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,6,9−トリオキサウンデカン二酸、及びポリエチレングリコールの同様の誘導体と、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、これらのアルコールのより高級の同族体及び異性体との単純なエステル化から得られるジカルボン酸モノアルキル及びアリールエステルを含む。好ましいのは、少なくとも7個の炭素原子を有するカルボン酸、特に、12〜31個の炭素原子を有するもの、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸である。
特に好ましいのはラウリン酸である。
【0047】
好ましくは、アルデヒドは、2−エチルブタナール、ペンタナール、ピバルアルデヒド、2−メチルペンタナール、3−メチルペンタナール、4−メチルペンタナール、2,3−ジメチルペンタナール、ヘキサナール、2−エチルヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、メトキシアセトアルデヒド、2,2−ジメチル−3−フェニルプロパナール、ベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、サリチルアルデヒド、及び式(II)のアルデヒド、特に、3−アセトキシ−2,2−ジメチルプロパナール、2,2−ジメチル−3−ラウロイロキシプロパナール、2,2−ジメチル−3−(N−モルホリノ)−プロパナール、及び2,2−ジメチル−3−ビス−(メトキシエチル)−アミノ−プロパナールからなる群から選択される。
【0048】
特に好ましくは、アルデヒドは、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、2,2−ジメチル−3−フェニルプロパナール、3−アセトキシ−2,2−ジメチルプロパナール、2,2−ジメチル−3−ラウロイロキシプロパナール、及び2,2−ジメチル−3−(Nモルホリノ)−プロパナールからなる群から選択される。
【0049】
特に好ましいアルデヒドは、11〜30個の炭素原子、特に11〜20個の炭素原子を有するRをもつ残基Zとして式(III)の残基を有する式(II)のアルデヒドである。最も好ましいのは2,2−ジメチル−3−ラウロイロキシプロパナールである。
これらのアルデヒドは無臭の物質である。「無臭の」物質とは、ほとんどのヒト個体が臭いを嗅ぐことができない、したがって知覚できる臭気を有さない物質を意味する。こうしたアルデヒドを用いるときには、無臭であり且つVOCを放出しない接着剤及びシーラントが利用可能である。
【0050】
特に適切なβ−ジケトンは式(V)のものを含む。
【化4】

【0051】
一方では、R及びR10は、それぞれ独立して1〜12個の炭素原子を有する、随意的にエーテル基又はハロゲン原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールアルキル基であり、Rは、水素原子、若しくは1〜12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールアルキル基である。
他方では、R及びRは、共に、5〜8個、好ましくは5又は6個の炭素原子を有する随意的に置換された炭素環の一部である二価の炭化水素残基であり、R10は、1〜12個の炭素原子、随意的にエーテル基又はハロゲン原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールアルキル基である。
【0052】
式(V)の好ましいβ−ジケトンは、特に、2,4−ペンタンジオン、3位でアルキル化された2,4−ペンタンジオン、すなわち、特に、3−メチル−、3−エチル−、3−プロピル−、3−イソプロピル−、3−ブチル、3−tert−ブチル、3−シクロヘキシル−、及び3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−オクタンジオン、6−メチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、2−アセチルシクロペンタノン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロペンタノン、及び2−ベンゾイルシクロヘキサノンからなる群から選択される。
特に好ましいのは2,4−ペンタンジオンである。
【0053】
特に適切なβ−ケトエステルは式(VI)のβ−ケトエステルである。
【化5】

【0054】
11は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は枝分かれ鎖アルキル基、好ましくはtert−ブチル基である。
12及びR13は、それぞれ独立して水素原子、1〜12個の炭素原子を有する、随意的にエーテル基又はハロゲン原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールアルキル基であり、又は共に、5〜8個、好ましくは5又は6個の炭素原子を有する随意的に置換された炭素環の一部を形成する二価の炭化水素残基である。
特に、R12は水素原子であり、R13はメチル基である。
【0055】
特に適切なβ−ケトアミドは、式(VII)のβ−ケトアミドである。
【化6】

【0056】
12及びR13は、独立して、上記の式(VI)のβ−ケトエステルに対する残基のような残基に対応する。
14及びR15は、それぞれ独立して水素原子、1〜12個の炭素原子を有する、随意的にエーテル基又はハロゲン原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアリールアルキル基であり、又は共に、5〜8個、好ましくは5又は6個の炭素原子を有する随意的に置換された炭素環の一部を形成する二価の炭化水素残基である。
【0057】
化合物Vはまた、上記で説明されたカルボニル化合物に含まれる2つ又はそれ以上のカルボニル基を有する多官能性化合物であってもよく、1つの分子内でこれらのカルボニル基は必ずしも同一である必要はない。例えば、適切な化合物Vは、テレフタルアルデヒドのようなジアルデヒド、又はそのヒドロキシル基がすべてアセトアセチル化される、ポリオールである。
【0058】
遊離した形態である代わりに、化合物Vは、接着剤又はシーラント中に加水分解により放出可能な形態で含まれることが可能である。
加水分解後に化合物Vを放出する特に適切な化合物は、アルジミン、エナミン、又はオキサゾリジンを含む。
【0059】
好ましくは、加水分解により放出可能な形態の化合物Vは、式(VIII)のアルジミンである。
【化7】

【0060】
ここで、nは、1から4までの数、特に2又は3である。
Aは、n価の炭化水素残基であり、これは、2〜30個の炭素原子を有し、特にエーテル酸素又は第3アミン窒素の形態の少なくとも1つのヘテロ原子を随意的に含有する。
特に、Aは、n個のアミノ基の除去後のアミンの残基である。好ましいアミンは、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,3−ペンタンジアミン、イソフォロンジアミン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−キシリレンジアミン、1,3−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、3(4),8(9)−ビス−(アミノメチル)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,2−、1,3−、及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、2又は3つのアミノ基を有し、且つ600g/molまでの分子量を有するポリオキシアルキレンポリアミン、特に、商標名Jeffamine(登録商標)でHuntsmanから入手可能なタイプD−230、D−400、及びT−403、並びにBASF又はNitroilからの類似の化合物;1,3−及び1,4−フェニレンジアミン、2,4−及び2,6−トルイレンジアミン、4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、及び上記アミンの混合物からなる群から選択される。
【0061】
16は、アルデヒド基の除去後の上記で説明されているようなアルデヒドの残基である。
【0062】
他の適切なアルジミンは、例えば、ポリアルジミンPAとしてWO2010/112537で説明される。適切なアルジミンはまた、Vestamin(登録商標)A−139(Evonik)のような市販のアルジミンを含む。
【0063】
さらに好ましくは、加水分解により放出可能な形態の化合物Vは、エナミンである。特に、こうしたエナミンは、少なくとも1つの第2アミノ基を有するアミンと、カルボニル基に対してα位に少なくとも1つの水素原子を有する、したがってエノール化可能である少なくとも1つのアルデヒド、特に、アセトアルデヒド、プロパナール、2−メチルプロパナール、ブタナール、2−メチルブタナール、2−エチルブタナール、ペンタナール、2−メチルペンタナール、3−メチルペンタナール、4−メチルペンタナール、2,3−ジメチルペンタナール、ヘキサナール、2−エチルヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、2−メチルウンデカナール、ドデカナール、メトキシアセトアルデヒド、シクロプロパンカルボキシアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、又はジフェニルアセトアルデヒドとの縮合反応から得ることができる。少なくとも1つの第2アミノ基を有する適切なアミンは、一方では、少なくとも2つの第2アミノ基を有するアミン、特に、ピペラジン、2,5−及び2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5,6−テトラメチルピペラジン、1,7−ジオキサ−4,10−ジアザシクロドデカン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジメチル−ジエチレントリアミン、N,N’−ジメチル−ジプロピレントリアミン、1−(1−メチルエチルアミノ)−3−(1−メチルエチルアミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(Jefflink(登録商標)754、Huntsman)、N4−シクロヘキシル−2−メチル−N2−(2−メチルプロピル)−2,4−ペンタンジアミン、N,N’−ジアルキル−1,3−キシリレンジアミン、ビス−(4−(N−アルキルアミノ)−シクロヘキシル)−メタン,4,4’−トリメチレンジピペリジン、及びN−アルキル化ポリエーテルアミン、例えば、Jeffamine(登録商標)SD−231(Huntsman);さらに、ヒドロキシル基及び第2アミノ基を有するアミン、特に、N−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、4−ヒドロキシピペリジン、及びモノアルコキシル化第1モノアミン、例えば特に、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、及びNブチルイソプロパノールアミン;さらに、メルカプト基及び第2アミノ基を有するアミン、特に、N−(2−メルカプトエチル)−ピペラジン、4−メルカプトピペリジン、及び2−メルカプトエチルブチルアミンを含む。
【0064】
さらに、加水分解により放出可能な形態の化合物Vは、好ましくはオキサゾリジンである。特に、こうしたオキサゾリジンは、そのヒドロキシル基及び第1又は第2アミノ基が随意的に置換されたエチレン又はプロピレン残基によって分離される少なくとも1つのヒドロキシアミンと、少なくとも1つのアルデヒド、特にホルムアルデヒド又は上記のエノール化可能なアルデヒドのうちの1つとの縮合反応から得ることができる。特に適切なのは、2−メチルプロパナール及び2−エチルヘキサナールである。適切なヒドロキシアミンは、特に、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミンを含み、これは結果としてヒドロキシオキサゾリジンをもたらし、これから例えばポリイソシアネート又はポリエステルとの反応によってポリオキサゾリジンを容易に調製することができる。
適切な市販のオキサゾリジンは、例えば、Harter OZ及びDesmophen(登録商標)VP LS2959(Bayer)、Zoldine(登録商標)ZA−78及びZoldine(登録商標)ZE(Dow Chemical)、Zoldine(登録商標)RD−4及びZoldine(登録商標)RD−20(Angus Chemie)及びIncozol(登録商標)2、Incozol(登録商標)3、Incozol(登録商標)LV、Incozol(登録商標)4、Incozol(登録商標)HP、Incozol(登録商標)CF、Incozol(登録商標)NC、及びIncozol(登録商標)K(Incorez)を含む。
【0065】
本発明の接着剤システムの好ましい実施形態では、接着剤又はシーラントは、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを含有するポリウレタン接着剤又はシーラントであり、加水分解により放出可能な形態の化合物Vを含有する。最も好ましくは、加水分解後に化合物Vを放出する化合物は、ポリアルジミン、ポリエナミン、及びポリオキサゾリジンである。
【0066】
この好ましい実施形態は、接着剤又はシーラントにおける適切なポリアルジミンの使用に起因して、上記の接着剤又はシーラントが水と接触した後で遅延した様態で化合物Vを放出し、湿気の多い及び温かい条件下での接着剤結合の安定性を保証するので、特に有利である。化合物Vの遅延された放出は、ポリアミンを伴う固体エポキシ樹脂の妨害されない硬化を保証する。
化合物Vの放出と同時に、ポリアミン又はアミノアルコールが放出され、これは、アミノ基又はヒドロキシル基とポリウレタンポリマーのイソシアネート基との反応によって、結果としてポリウレタン接着剤又はシーラントの硬化をもたらす。
【0067】
さらに、本発明は、
i)固体エポキシ樹脂の少なくとも1つの水性分散液と少なくとも1つのポリアミンとを含有する結合剤組成物を基体に塗布するステップと、
ii)ポリアミンと縮合反応で反応できる遊離した形態又は加水分解により放出可能な形態の少なくとも1つの化合物Vを含有する接着剤又はシーラントを、結合剤組成物が塗布された領域に少なくとも部分的に塗布するステップと、
を含む、本発明の接着剤システムを塗布するための方法に関する。
【0068】
こうした接着剤システムの使用は、特にパップ貯蔵後の湿気の多い及び温かい条件での接着剤又はシーラントの接着を改善する。
【0069】
上記で説明された方法では、結合剤組成物は、典型的に、布、フェルト、ローラ、スプレー、スポンジ、ブラシ、浸漬コーティングなどによって塗布され、これは手動又はロボットのいずれかによって行うことができる。
結合剤組成物が2成分結合剤組成物である場合、2成分の混合は、塗布前に又は塗布中に行われる。
【0070】
結合剤組成物の塗布後に及び接着剤又はシーラントの塗布前に、結合剤組成物は、普通は揮発(flashed off)させられる。揮発は、大気条件下で、又は必要な場合に、高温で、低下した圧力で、及び/又はガスを吹きつけることによって行うことができ、これは結果として揮発時間の短縮をもたらすことができる。
【0071】
接着剤又はシーラントは、次いで、結合剤組成物が塗布された部位で少なくとも部分的に、適切なデバイスによって基体に好ましくはビードの形態で塗布される。
【0072】
本発明の接着剤システムは、金属及び合金、特に、鋼、アルミニウム、及び非鉄金属、並びにそれらの合金、コンクリート、モルタル、レンガ、クリンカー、天然石、ガラス、ガラスセラミックス、木材、及びポリスチレンのようなプラスチックといった種々の基体に適している。好ましい基体は、無機基体、特に、ガラス及びガラスセラミックス、コンクリート及びモルタルを含む。
基体は、結合剤組成物に塗布する前に必要に応じて前処理されてもよい。特に、こうした前処理は、研削、サンドブラスト、ブラッシングなどのような物理的及び/又は化学的クリーニング方法、若しくは洗剤又は溶媒での処理を含む。
【0073】
本発明の接着剤システムの好ましい適用分野は、特に、ジョイント・シーリング、寄木の取付け、付属品の取付け、シームのシーリング、真空シーリング、組立、車体の取付け、窓の取付けなどに関する建設業及び製造業並びに自動車産業を含む。
【0074】
本発明の接着剤システムを用いる基体の接着、シーリング、又はコーティングから結果として得られるアイテムは、例えば、建築物、特に、建設工学又は土木工学の建築物、輸送手段、例えば、車両、特に、自動車、バス、トラック、鉄道車両、又は船、若しくはこれらの付属品を含む。
好ましくは、本発明の接着剤システムは、車両構造の弾性結合、例えば、プラスチックカバー、トリム、フランジ、バンパー、乗務員室又は他の付属品のような部品を輸送手段の塗装された本体に取り付ける、又は窓を本体に結合するために用いられる。
【0075】
実施例
以下では、本発明をより詳細に例証することを意図される実施形態が記載される。本発明は、これらの説明された実施形態の例に限定されないことが理解される。
【0076】
結合剤組成物の調製
市販の固体エポキシ樹脂の水性分散液であるAncarez(商標)AR555(Air Products;55wt%固形分)を成分K1として用いた。
脱イオン水で17wt%の固形分に希釈した市販の水性アミン硬化剤であるAnquamine(登録商標)419(Air Products;60wt%固形分)を成分K2として用いた。
【0077】
接着剤の調製
接着剤1:
除湿の下で、真空ミキサの中で、500gの市販の単一成分ポリウレタン接着剤Sikaflex(登録商標)−221(Sika Schweiz AG)と、5.5gのN,N−ジエチルアセトアセトアミドとを均一なペーストに処理し、これを内部被覆されたアルミニウム・カートリッジの中にすぐに分取し、カートリッジを気密封止した。
接着剤2:
除湿の下で、真空ミキサの中で、500gの市販の単一成分ポリウレタン接着剤Sikaflex(登録商標)−221(Sika Schweiz AG)と、12.0gのジアルジミン(51gの2,2−ジメチル−3−ラウロイロキシプロパナール及び10gの1,6−ヘキサンジアミンから調製した)と、0.5gの安息香酸とを均一なペーストに処理し、これを内部被覆されたアルミニウム・カートリッジの中にすぐに分取し、カートリッジを気密封止した。
【0078】
結合剤の調製
結合剤組成物の塗布のために、50重量部の成分K1と50重量部の成分K2を一緒に混合し、混合物を含ませたフェルトを用いて混合物を基体(フロートガラス、Rocholl GmbH、ドイツ;スズ側)に塗布し、「標準気候」(23±1℃、50±5%相対湿度)で60分間揮発させた。
このように前処理された基体に、表1に従うそれぞれの接着剤をカートリッジ・ガンによって三角形ビードとして標準気候条件下で塗布した。標準気候条件(「RT」)下で7日間の硬化時間後に及びその後の7日間のパップ貯蔵(「CP」)後に、接着剤を接着に関して試験した。
接着剤の接着は、ビード試験によって判定した。ここで、ビードの端は接着面の真上で切断される。ビードの切断端をプライヤで保持し、基体から引き離す。これは、プライヤの先端部上にビードを注意深く巻き上げ、切断部を下の裸の基体までのビード引張方向に対し垂直に配置することによって達成される。ビード引張速度は、約3秒毎に切断が行われなければならないように選択される。試験距離は、少なくとも8cmでなければならない。ビードの除去後に基体上に残る接着剤(凝集破壊)が分析される。接着領域の凝集成分のパーセンテージとしての視覚的判定によって接着特性が評価される。スコアの接尾文字「P」は、基体からの結合剤又はプライマの剥離、又は結合剤における凝集破壊を示す。接着剤における凝集破壊のパーセンテージがより高くなると、結合がより良好な評価を受けることになる。50%未満、特に40%未満の凝集破壊を伴う試験結果は、不適当であると考えられる。結果が表1に示される。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤システムであって、
固体エポキシ樹脂の少なくとも1つの水性分散液と少なくとも1つのポリアミンとを含有する結合剤組成物と、
前記ポリアミンと縮合反応で反応できる遊離した形態又は加水分解により放出可能な形態の少なくとも1つの化合物を含有する接着剤又はシーラントと、
を含む接着剤システム。
【請求項2】
前記固体エポキシ樹脂の水性分散液が、30〜80wt%の固体エポキシ樹脂の含有量を有することを特徴とする請求項1に記載の接着剤システム。
【請求項3】
前記分散液中に分散される固体エポキシ樹脂粒子の平均粒子径が、0.05〜20μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2のうちの一項に記載の接着剤システム。
【請求項4】
前記固体エポキシ樹脂の水性分散液の比率が、全ての結合剤組成物に基づき30〜99wt%であることを特徴とする上記請求項のうちの一項に記載の接着剤システム。
【請求項5】
前記結合剤組成物が、
固体エポキシ樹脂の少なくとも1つの水性分散液を含有する第1の成分K1と、
少なくとも1つのポリアミンを含有する第2の成分K2と、
からなる2成分結合剤組成物であることを特徴とする上記請求項のうちの一項に記載の接着剤システム。
【請求項6】
前記化合物Vが前記接着剤又はシーラント中に加水分解により放出可能な形態で含有されることを特徴とする上記請求項のうちの一項に記載の接着剤システム。
【請求項7】
加水分解後に化合物Vを放出する前記化合物がポリアルジミンであることを特徴とする請求項6に記載の接着剤システム。
【請求項8】
前記接着剤又はシーラントが、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを含有するポリウレタン接着剤又はシーラントであることを特徴とする上記請求項のうちの一項に記載の接着剤システム。
【請求項9】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを含有する前記ポリウレタン接着剤又はシーラントが、室温で塗布することができ且つ室温で硬化することができることを特徴とする上記請求項のうちの一項に記載の接着剤システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の接着剤システムを用いるためのプロセスであって、
i)固体エポキシ樹脂の少なくとも1つの水性分散液と少なくとも1つのポリアミンとを含有する結合剤組成物を基体に塗布するステップと、
ii)前記ポリアミンと縮合反応で反応できる遊離した形態又は加水分解により放出可能な形態の少なくとも1つの化合物Vを含有する接着剤又はシーラントを、前記結合剤組成物が塗布された部位に少なくとも部分的に塗布するステップと、
を含むプロセス。

【公開番号】特開2012−254983(P2012−254983A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−129726(P2012−129726)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】