説明

換気フィルター及び換気建具

【課題】花粉、土砂、粉塵、雨滴等を効率よく除去する能力に優れた圧力損失の低い安価な換気フィルター及び換気建具を提供する。
【解決手段】細幅形状に裁断された複数の三次元立体織物を積層し、該積層された三次元立体織物の裁断面をろ過面とし、該三次元立体織物の表裏組織面を連結する多数の連結糸によって、外気とともに室内に侵入する花粉、土砂、粉塵、雨滴等を効率よく補集する自然換気用に適した換気フィルター及び該換気フィルターを使用した換気建具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の粉塵、土砂、花粉などの塵芥物質、カーボン類、雨等(以下ダストという)を捕集する換気フィルター及び該換気フィルターを建物の壁や窓、出入口等に取付け、ダストが除去された清浄な外気を室内に取り入れて、室内の湿った暖かい空気を屋外に効率よく排出する換気建具や換気レジスターなどに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の建築物の室内空間は気密構造のため、建物の壁に換気レジスターや小窓を設け、該換気レジスターや小窓から外気を取り入れて快適空間を保つようにしている。また、換気レジスターや小窓に開閉自在なファン付きシャッターを取り付けて強制的に外気を取り入れている。しかしながら、上記換気レジスターや小窓からダストを含む外気を室内に取り入れた場合、室内環境が悪化して、人体に悪影響が出るなどの問題が生じる。
そのため屋外からのダストの侵入を防止するため換気レジスターや小窓に不織布等の換気フィルターが取り付けられている。
また、これらの換気レジスターや小窓は、建物の建築時に壁に埋め込んで固定されるため、簡単に取り外しや付け替えができないという問題がある。一方トイレ等の窓に取付けられるガラス戸の上部に開閉自在なファン付きシャッターを備えた防虫網付きの小窓を設けたものがあるが、このガラス戸の小窓は防臭換気用のもので開口面積が小さく居住用の屋内の換気には適していない。さらに、不織布等からなる換気フィルターは、換気率向上のため圧力損失の低い材料が使用される結果、荒ゴミは補集するが、ダストを効率よく除去する能力に乏しく実用的でない。
【0003】
上記問題を解消した換気フィルターとして、建物の吸気穴に埋め込むフィルターが知られている。かかる換気フィルターは、一般に粗塵用と呼ばれている非常に密度の低いカード綿を樹脂で接着したシート状物、樹脂の代わりに熱接着繊維をブレンドし熱接着でシート状化した換気フィルターである。
しかしながら、換気フィルターの設置場所は限られたスペースのためろ過面積に限度がある。一方換気率の縛りから圧力損失の低い換気フィルターを選定する必要があるが、限られたろ過面積で換気率を向上させるために、荒ゴミは捕集するが、ダストを捕集する能力が乏しく、かつ圧力損失が低い換気フィルターが採用されているのが現状である。ダストを効率よく捕集するには、ダスト捕集能力の高いフィルターを使用することが好ましいが、これらは一般的に圧力損失の高いフィルターであり、特に自然換気用フィルターには適していない。
そのため、ダスト捕集能力が高く、かつ圧力損失の低い、自然換気用フィルターとしても使用できる換気フィルターは未だ提案されていない。
【0004】
一方、換気建具としては、例えばサッシ窓の窓枠を構成するサッシ材からなる横中枠、縦中枠を、上枠又は下枠、あるいは一方の縦枠への偏った位置に配置することにより、窓枠に換気部を設け、該換気部にサッシ材を主体とした開閉体を、該開閉体の長手方向の一側を軸として回動開閉自在に取り付けた換気部を有するサッシ窓が提案されている(特許文献1参照)。
また、透明板を取り付けたサッシの少なくとも下部位置に内外に通じる防虫網付きの小窓を設け、この小窓の外側に雨水や異物の侵入を防止するガラリを設けるとともに、小窓を必要に応じて開閉することのできるシャッターを設けた自然換気用建具が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、ルーパー形状などの通気性がある雨除け本体の両側に設けた支柱の上端に固定用部品を取り付け、窓の開閉に支障がないように、該固定用部品をネジによって窓枠に固定する雨除け具が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、上記各特許文献に提案されたサッシ窓や建具は、外気の吸気には優れた構造であるが、風雨の激しい時、粉塵が多い時にはサッシ窓や建具、雨除け具からの雨や粉塵などのダストの侵入を阻止することができないため、サッシ窓や換気用小窓、ガラス戸を閉める必要がある。
雨天時にサッシ窓や換気用小窓、ガラス戸などを閉めるとダストの侵入が防止されるものの、屋内の温湿度が上昇して、人体に悪影響を与えるなどの問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−301056号公報
【特許文献2】特開2002−13359号公報
【特許文献2】特開2010−174612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、雨水や粉塵などのダストを効率よく除去する能力に優れた、圧力損失の低い換気フィルターを提供することである。
本発明の他の目的は、コストと手間のかかる工事を必要とせずに上記換気フィルターを使用した換気建具、例えば窓枠などに容易に設置することのできる自然換気型の換気建具や換気レジスターを提供することである。
更に、本発明の目的は、ダストの多い時に窓や戸を開放しても、ダストや蚊などの小さな虫、雨水がフィルターで捕捉され、室内を常に快適空間に保つことができる換気建具や換気レジスターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来の換気フィルターを徹底的に検討した結果、寝具や椅子等のクッション材等として使用されている、表裏二層の編地を多数の連結糸で連結した三次元立体編物の連結糸が露出する面をろ過面とすると、多数の細い連結糸が鼻毛と同様なフィルター機能を発揮することに着目し、更に検討した結果、三次元立体編物の多数の連結糸が外気中のダストに対し、良好な補集能力を有し、しかも圧力損失が低く、形態安定性も良好で、換気フィルターとして適していることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)細幅形状に裁断された三次元立体編物を積層したフィルター本体が、上下枠及び両縦枠からなる枠内に収納され、該三次元立体編物の裁断面から侵入する気体中のダストを上下編地と連結する多数の連結糸で捕集するよう構成したことを特徴とする換気フィルターである。
(2)細幅形状に裁断された一枚、又は複数枚の三次元立体編物を渦巻き状に巻回したフィルター本体が、筒状ケース内に収容され、該三次元立体編物の裁断面から侵入する気体中のダストを上下編地と連結する多数の連結糸で捕集するよう構成したことを特徴とする換気フィルターである。
(3)該フィルター本体が、メッシュ布帛、または不織布からなる収納空間内に収納された上記(1)乃至(2)記載の換気フィルターである。
(4)上下枠及び両縦枠からなる建具枠内、または該建具枠内に設けられた少なくとも一つの仕切枠で区画された複数の枠内に、上記(1)乃至(3)記載の換気フィルターを収容したことを特徴とする換気建具である。
(5)上下枠及び両縦枠からなるルーパー形状の建具枠の各ルーパー間に上記(1)乃至(3)記載の換気フィルターを収容したことを特徴とする換気建具である。
(6)該ルーパー形状の建具枠の内側に、上記(1)乃至(3)記載の換気フィルターを収容したことを特徴とする換気建具である。
(7)換気レジスターの内側に、上記(1)乃至(3)記載の換気フィルターを収容したことを特徴とする換気レジスターである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の換気フィルターは、三次元立体編物の表裏二層の編地を連結する多数の細い連結糸により、外気とともに室内に侵入する花粉、土砂、粉塵、雨滴等を鼻毛効果によって効率よく補集することができる。そのため本発明の換気フィルターを収容した換気建具を使用すると、ダストの多い時や雨天時に窓や戸を開放することができ、室内を常に快適空間に保つことができる。
また、本発明の換気フィルターは、市販の三次元立体織物を裁断し、その裁断面を通気面とするため安価で、しかも三次元立体編物の厚みや連結糸の直径、連結糸の密度を変更することにより捕集性能が容易に調整できる。
更に、本発明の換気フィルターを収容した換気建具や換気レジスターは、複雑な工事をする必要がなく、既設の建物の窓や出入口、壁などに簡単に取り付けることができる。また、建物の上下二カ所に換気建具や換気レジスターを取り付けると空気の温度差によるベンチュレーション効果で自然換気を行うことができ快適な居住環境を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】換気フィルターに使用する三次元立体織物の斜視図。
【図2】換気フィルターの斜視図。
【図3】換気フィルターの他の例を示す斜視図。
【図4】換気フィルターの更に他の例を示す斜視図。
【図5】換気フィルターユニット用のフィルター枠の斜視図。
【図6】換気フィルターユニットの斜視図。
【図7】サッシ網戸の全体図。
【図8】サッシ網戸の断面図。
【図9】サッシ網戸の取り付け状態を示す斜視図。
【図10】引き戸式のサッシ戸の全体図。
【図11】引き戸式のサッシ戸の断面図。
【図12】三次元立体編物6を巻回して筒状ケース32内に収容した換気建具。
【図13】換気レジスターを使用した連通用吸気孔の断面図。
【図14】気流の流れを表わす模式図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
次に本発明の換気フィルターの一実施例について図面にて説明する。図1は本発明で使用される三次元立体編物1の斜視図であり、該三次元立体編物は、表面2及び裏面3の二層の編地と、該二層の編地を連結する多数の細い連結糸4から構成されている。かかる三次元立体編物1は、通常ダブルラッセル編機、ダブルトリコット編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成される。表裏面二層の編地2、3を連結する連結糸4としてはポリエステル系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維などの疎水性の繊維が用いられる。また連結糸4は上記表裏面二層の編地と同じ繊維が使用されるが、通常圧縮回復率の優れたポリエステル系繊維が用いられる。
【0012】
三次元立体編物1の構造または製造方法は、特開平11−269747号公報、特開平10−102363号公報、特開2002−138352号公報、特開平02−74648号公報、特開2003−13337号公報等に記載されている。
また、繊維メーカー各社から商品化され、例えば、ユニチカ(株)の「キュービックアイ」、住江織物(株)の「スウィングネット」、旭化成商事(株)の「フュージョン」、東洋紡(株)の「ブレスエアー」などの商品名で販売されている。本発明の換気フィルターは、上記各社の三次元立体編物の中から使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0013】
本発明の換気フィルターは、三次元立体編物を使用し、通気方向を三次元立体編物の断面、言い換えれば表裏面二層の編地2、3を連結する細い多数の連結糸4に垂直な方向とし、鼻毛と同様なフィルター機能を利用したことに特徴がある。
例えば、多数の連結糸4に垂直方向に外気が流れると三次元立体編物を構成する細い連結糸4に微細な塵芥や雨滴がくっつき、更にその上に微細な塵芥や雨滴がくっつくという現象が生じ、その繰り返しにより微細な塵芥や雨滴が集合して次第に大きく成長し、ついには、大きな塵芥や雨滴の集合物(例えば直径20〜100μm)として、フィルター下部から流れ出る。そのため図2に示す三次元立体編物を利用した換気フィルター5に使用するフィルター本体6の幅(a)は、微細な塵芥や雨滴を連結糸に接触させて大きな塵芥や雨滴に成長させるための長さと圧力損失を考慮すると10〜30mm、通常15〜20mmが適当である。また、フィルター本体の厚み(b)、言い換えれば連結糸の長さは形態安定性を考慮すると8〜20mm、通常8〜10mmが適当である。複数枚の薄い三次元立体編物を積層してフィルター本体の厚み(b)を調整してもよい。連結糸の密度は、通常50〜1000本/2.54cm平方程度の商品が市販されているが、使用目的及び用途により適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0014】
図2は細幅形状の三次元立体編物6からなる複数のフィルター本体を積層一体化した平板状換気フィルター5の例である。図2では5枚の三次元立体編物6を積層した換気フィルターを示している。三次元立体編物6の切断面がろ過面になるため、濾過面積は三次元立体編物6の厚さと積層枚数及び長さにより決定される。また複数のフィルター本体を積層する場合は、例えば接着剤あるいは両面テープ等で積層一体化すれば作業効率が向上して好ましいが、積層枚数が少ない場合は接着しなくても構わない。フィルター本体の積層枚数は作業性を考慮して決定すればよい。積層枚数は少ない程作業効率が優れ、しかも取扱い性がよく好ましい。通常10〜20枚が好ましい。工業的にフィルター本体を積層する場合は、例えば三次元立体編物の上面に接着剤を塗布し、その上に別の三次元立体編物を重ねて接着固定する作業を繰り返して、所定の枚数の三次元立体編物を積層した後、レーザーや回転刃などの切断手段で一定幅、例えば20mm幅に切断することによりフィルター本体が製造される。上記三次元立体編物の積層作業と切断作業を自動化することで安価な換気フィルターの提供が可能である。換気フィルター5の通気面積は、三次元立体編物の断面積と積層枚数で適宜決定することができる。
また、換気フィルター5による粉塵等の粒子補足性能は、三次元立体編物を構成する連結糸の密度や糸径のほかに、三次元立体編物の幅(a)でも調整が可能である。更に三次元立体編物をエレクトリック加工すると小さな粒子が捕捉でき、寿命も長くすることができて好ましい。
【0015】
三次元立体編物の切断面からの連結糸4の脱落防止とフィルターの取扱い性や外観を良くするため、メッシュ布帛、または不織布からなる収納空間内に換気フィルターを収納してもよい。また、図3の断面図に示すように換気フィルター5の少なくとも一面、通常換気フィルターの表面側に網状体、例えば18メッシュ以下のプラスチック製の網状体7などを配置してもよい。換気フィルター5をフィルター枠に収容する方法は、例えば、換気フィルター5の表面に網状体7を配置し、換気フィルターの表面を押し込み手段で、後述する換気フィルターユニットを構成するフィルター枠に押し込むと、換気フィルター5と網状体7をフィルター枠内に容易に収容できて好ましい。その際、予めフィルター枠の内周面に接着剤を塗布しておくと換気フィルターをフィルター枠に接着固定できる。また、フィルター枠がない場合は、換気フィルターの表面に網状体を直接接着固定したり、換気フィルターの表面に網状体を配置して、換気フィルターの周縁からはみ出た網状体の外周縁部を折り曲げて、該折り曲げ部分を換気フィルターの周縁に接着固定する。
【0016】
また、換気フィルター5の取扱い性向上のため、換気フィルターの少なくとも底面にプラスチック板などの枠体を取り付けることが好ましい。例えば図4に示すように、換気フィルターの全周縁をプラスチックや金属性のテープ8で被覆する。7、7’は換気フィルター5の裏表両面に配置された網状体である。換気フィルター5の表面側に配置される網状体7’を外気に含まれる大きな粉塵等を除去するプレフィルターとする場合は、プラスチック製のネットや圧力損失が低いメッシュ布帛、薄い三次元立体編物、不織布などが使用できる。更に、細菌やウィルスなどを確実に捕捉するために、三次元立体編物をエレクトリック加工したり、換気フィルターの裏面に除菌性を有する不織布を配置することが好ましい。かる不織布としては、短繊維不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、あるいは、上記各不織布をエレクトリック加工した不織布などが使用できる。特に、高捕集性能を有するエレクトリック加工した不織布は除菌性が必要な病院等で好ましく使用される。
【0017】
図5は、換気フィルターを収容するフィルター枠10の一例を示す斜視図であり、該フィルター枠10は、上枠12と両縦枠14及び下枠13から構成されている。上枠12は平板状で、上枠の長手方向の端部に折り曲げ部15が設けられ、該折り曲げ部15がフィルター枠10内に収容される換気フィルターの上部ストッパーとなる。また、下枠13は二層構造であり、上層16は換気フィルターで補足された塵芥や雨水を排出させるため外方に向かって傾斜している。上層の傾斜角度は、例えば15〜60度、通常20〜50度の角度が適当である。下層17は上枠12と同様に平板状であり、下枠13の長手方向の端部に折り曲げ部18が設けられ、該折り曲げ部18がフィルター枠10内に収容される換気フィルター5の下部ストッパーとなる。傾斜した下枠13の下端部は塵芥や雨水が流下しやすいように下方に折り曲げられた流下部19が設けられている。該流下部19は、複数の換気フィルターユニットを積層する際に、下段の換気フィルターユニットをスムースに積層できる長さで、通常5〜15mmが適当である。また、フィルター枠10の幅を換気フィルター5の幅より若干長くすると換気フィルターから塵芥や雨水をスムースに流下させることができて好ましい。フィルター枠10を構成する各枠は、構造が単純なため、サッシ材やプラスチック材の曲げ加工や押し出し成型で製造され、量産によるコストダウンが可能である。上記各枠がネジやピンで接合されて図5に示すフィルター枠10が形成される。また、両縦枠14には換気フィルターユニット11を後述する建具枠内に収容固定するためのネジ孔(図示せず)が設けられている。
【0018】
図6は、図5に示すフィルター枠10内に換気フィルター5を収容した換気フィルターユニット11の斜視図である。換気フィルター5の全周縁とフィルター枠を構成する各枠の内壁とを接着固定すると形態が安定して好ましい。該換気フィルターユニット11の長さは適応する小窓や戸の幅と同じであるが、高さは一枚の換気フィルターユニットがそのまま小窓等に適用できる高さとすることが好ましく、通常20〜30cmが適当である。換気フィルターユニット11が長いと換気フィルター5が波打ち状態となる恐れがあるため、フィルター枠の表面と裏面側に細幅の換気フィルター抑え板20を、例えば20〜30cm間隔で取り付けることが好ましい。該換気フィルター抑え板20はフィルター枠の上枠と下枠に夫々ネジ又はピン(図示せず)で固定される。
【0019】
換気フィルターユニット11を窓枠に建込んで用いられる既存の換気建具、例えばサッシ網戸内に収容すると窓の工事が不要で好ましい。図7はサッシ網戸21の全体図である。サッシ網戸21は左右の縦枠24と上下の横枠25とを接合して方形状に形成したサッシ枠22と、該サッシ枠22に張られた網23及びサッシ枠22内に収容された換気フィルターユニット(図示せず)から構成されている。サッシ枠22を構成する縦枠24と横枠25にはその内側に長手方向に延びる凹溝26が設けられている。図8に断面図で示すように網押えゴム27をサッシ枠22に張られた網23の上部から凹溝26に嵌入させて網をサッシ枠に固定する。次に凹溝26の周縁部からはみ出た網23の周縁部を切断分離してサッシ網戸21が完成する。また、サッシ網戸21を構成する上下の横枠25間には複数の換気フィルターユニット支持板28が取り付けられており、該換気フィルターユニット支持板28上に図6の換気フィルターユニット11が載置される。換気フィルターユニット11はサッシ網戸21を構成する左右の縦枠24にビス又はネジ(図示せず)により固定される。網戸21に使用される網23は蚊の侵入を防止するため通常18〜30メッシュの網が好ましく使用される。図7では網戸枠としてサッシ枠を使用した例を示したが、木製枠を使用しても構わない。サッシ網戸21は、図9に示すように二枚のサッシ戸29の外側に設けられた網戸用レール30に取り付けられる。31はサッシ戸用のレールである。
【0020】
図10は通気性建具の他の例であり、通常のガラス戸と同様なサッシ33の上部位置と下部位置に小窓31が設けられている。この小窓は少なくともサッシ33の下部位置に主として吸気用に設けておくことができるが、サッシ33上部の壁に換気窓がない場合は、図10のように小窓31をサッシの上部位置と下部位置に設けることが好ましい。
【0021】
小窓31の構造は、図7のサッシ網戸と同じである。この小窓31は、サッシ33の内部を横フレーム34で仕切った空間に配置される。小窓は、上記空間部の左半分に設けられ、残りの右半分は、例えばアルミニウム製の化粧版35で覆われている。図11に示すように、小窓31の内側には、引き戸式のシャッター36が設けられている。このシャッター36は、小窓31と化粧版35との間に設けられたレール37に沿ってスライドして小窓を開閉する。常時は、化粧板35の裏側に引き込まれた状態で、小窓31を開いているが、必要に応じて小窓31の裏側に引き出して、小窓31を閉めることができる。このためシャッター36は気密性を有するものとして構成されている。38はこのシャッター36をスライド操作するためのハンドルである。
【0022】
図11に示すような引き戸式では、サッシ33の内部を横フレーム40で仕切った上下部の空間部の左半分に小窓を設けるため、換気効率が低下する場合には、例えば、特許文献1に記載されているように、サッシ33の内部を横フレーム34で仕切った下部空間部の全域に小窓を収容し、該小窓の屋内側の空間部にサッシ材を主体とした開閉体を、該開閉体の長手方向の一側を軸として回動自在に取り付けると、換気が必要な場合には、開閉体を回動させて空間部を開放することにより、屋内側の空気が換気され、新鮮な外気を取り込み、換気が不要な場合は、開閉体を回動して空間部を閉止し換気を中止することができる。
【0023】
また、既設のルーパー形状の窓枠の場合は、各ルーパー間に換気フィルターを装着してもよい。通常ルーパー間隔は8〜30mmであるため、換気フィルターの幅と高さを上下のルーパーで形成される隙間の幅と高さより若干大きくすると換気フィルターを隙間に押し込むとフィルターの反発力で隙間を確実に埋めることができる。その場合は接着しなくてもよい。フィルターが詰まるとルーパーから取り外して洗浄すると再度使用することができる。
【0024】
更に、既設のルーパー形状の窓枠の場合は、ルーパー枠の内側に換気建具を収容するか、又は換気建具をルーパー枠に連結一体化してもよい。例えば食品工場や印刷工場などでは窓の外側にルーパーが取り付けられているがダスト侵入防止のため窓が閉められている。そのため工場内は蒸し暑く、特に夏の作業環境は最悪である。本発明の換気建具を使用することで工場内の作業環境を向上させることができる。また、ルーパーで雨水の侵入が防止されるため、図5に示すように換気フィルターを収容するフィルター枠の下枠を二重にする必要がなく、しかも外方に向かって傾斜させる必要がない。
【0025】
図12は、細幅形状の三次元立体編物6を巻回して筒状ケース32内に収容した換気建具33の例である。三次元立体編物6を巻回すると三次元立体編物の積層作業が省略されるため換気フィルターの製造が容易である。該換気フィルターの通気面積は巻回した三次元立体編物の断面積で決定される。通常建具に少なくとも一つの筒状の開口を設け、該筒状開口に巻回した三次元立体編物6が収容される。3次元立体編物の巻回作業は、巻回時に三次元立体編物の一面に接着剤を塗布しながら行ってもよい。その場合、接着剤は、3次元立体編物の全面でも、部分的に塗布してもよい。所定の回数巻回した三次元立体編物は筒状ケース32に収容される。通気面積の小さな換気フィルターでは接着剤を塗布しなくても巻回できる。
【0026】
図13は換気レジスターを使用した連通用吸気孔の断面図であり、吸気孔34は外気と接する外壁35に埋め込まれたコンクリート打ち込みスリーブ36、コンクリート打ち込みスリーブの内面に挿入されたジョイントスリーブ37、コンクリート打ち込みスリーブの外端部に取付けられる換気ルーパー38、及びジョイントスリーブの内端部に取付けられる換気レジスター39から構成されている。換気レジスター39のマウント側端面に巻回された三次元立体編物6が着脱可能に収容されている。
【0027】
換気建具や換気レジスターは、上述の説明のように建物の窓や出入口に取付けたり、また、建物の壁に埋め込んで固定される。この場合、吸気用として使用する換気建具は、上側の小窓又は換気レジスターをシャッター等で閉止し、下側の小窓又は換気レジスターを開いておく。逆に、排気用として使用する換気建具は、下側の小窓又は換気レジスターをシャッター等で閉止し、上側の小窓又は換気レジスターを開いておく。必要な場合は、上下の小窓又は換気レジスターを共に開いておくこともできる。両建具又は換気レジスターは、引き戸式に同じ出入口や窓に配置してもよいが、吸気用と排気用の建具又は換気レジスターを離れた位置に配置するとベンチュレーション効果により効率良い換気ができて好ましい。
【0028】
図14は、気流の流れを矢印で表す模式図であり、吸気用として使用する建具の小窓又は換気レジスター31は、低い位置に開口しているので、外部の空気が低い位置に設けられている小窓又は換気レジスター31から室内に流入し、室内の温かい空気が上昇して高い位置に設けられた小窓又は換気レジスター31‘から外部に流出する。高い位置と低い位置に小窓又は換気レジスターを設けることにより、外気と室内空気の温度差を利用して気流の流れを生じさせ、該気流によって換気することができるので、換気用のファンは必要でなく、経済的である。
【0029】
なお、図10は、上下に小窓が設けられ、中間部の広い部分にガラスが嵌め込まれたガラス戸状の建具を吸気用と排気用に使い分けているが、従来の建物には、高い位置に換気用の排気口が設けられているものが多いので、この場合には下側の小窓のみを利用して換気を行うことが可能である。また、換気扇を利用する場合は、使用条件によっては、建具の下側に小窓を設けておき、この小窓を利用して吸気を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の換気フィルターは、外気とともに室内に侵入する花粉、土砂、粉塵、雨滴等を効率よく補集する。また、圧力損失が低く、形態安定性も良好であるため自然換気型フィルターとして好適である。
また、本発明の換気建具又は換気レジスターは、面倒な工事をする必要がなく、既設の建物の窓や出入口に簡単に取り付けることができる。また、雨や粉塵の多い時でも窓等を閉める必要がなく、空気の温度差によるベンチュレーション効果で自然換気を行うことができ快適な居住環境を保つことができる。
【符号の説明】
【0031】
1:三次元立体編物
2:表面
3:裏面
4:連結糸
5:換気フィルター
8:網状体
9:換気フィルターユニット
13:フィルター枠
21:サッシ網戸
22:サッシ枠
23:網
31:小窓
33:サッシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細幅形状に裁断された三次元立体編物を積層したフィルター本体が、上下枠及び両縦枠からなる枠内に収納され、該三次元立体編物の裁断面から侵入する気体中のダストを上下編地と連結する多数の連結糸で捕集するよう構成したことを特徴とする換気フィルター。
【請求項2】
細幅形状に裁断された一枚、又は複数枚の三次元立体編物を渦巻き状に巻回したフィルター本体が、筒状ケース内に収容され、該三次元立体編物の裁断面から侵入する気体中のダストを上下編地と連結する多数の連結糸で捕集するよう構成したことを特徴とする換気フィルター。
【請求項3】
該該フィルター本体が、メッシュ布帛、または不織布からなる収納空間内に収納されたことを特徴とする請求項1乃至2記載の換気フィルター。
【請求項4】
上下枠及び両縦枠からなる建具枠内、または該建具枠内に設けられた少なくとも一つの仕切枠で区画された複数の枠内に、上記(1)乃至(3)記載の換気フィルターを収容したことを特徴とする換気建具。
【請求項5】
上下枠及び両縦枠からなるルーパー形状の建具枠の各ルーパー間に上記(1)乃至(3)記載の換気フィルターを収容したことを特徴とする換気建具。
【請求項6】
該ルーパー形状の建具枠の内側に、上記(1)乃至(3)記載の換気フィルターを収容したことを特徴とする換気建具。
【請求項7】
換気レジスターの内側に、上記(1)乃至(3)記載の換気フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−47599(P2013−47599A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173375(P2012−173375)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【出願人】(300045846)
【Fターム(参考)】