説明

揮散器

【課題】揮散量の増大を図ることができる揮散器を提供する。
【解決手段】仕切部101を引き抜いて揮散体201を吸上芯44上に落下させ、揮散体201の下縁203を吸上芯44に接触させる。吸上芯44で吸い上げた液状薬剤2が揮散体201に染み込み揮散体201より揮散する。揮散体201は、面積の広い厚み方向331の前面332及び後面333の両面が側方を向くように配置されており、この両面を揮散面として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状薬剤を揮散する揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤等の液状薬剤を揮散する揮散器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この揮散器は、前記液状薬剤を収容したボトルを備えており、該ボトルの口部には、中栓が装着されている。この中栓の天部には、受け皿が形成されており、該受け皿の中央部は、段差を有した中栓天板により構成されている。該中栓天板には、前記液状薬剤を吸い上げる芯材が挿通しており、該芯材の上端部が当該中栓天板より突出するように構成されている。
【0004】
この中栓の周縁には、中蓋が接着されており、前記芯材が露出した前記受け皿は、前記中蓋によってシールされている。
【0005】
前記ボトルの上部には、オーバーキャップが装着されており、該オーバーキャップは、前記中栓を覆うように構成されている。前記オーバーキャップの天面には、揮散孔が設けられており、該天面の内側面には、インナーリングが設けられている。該インナーリングには、フェルト板が保持されており、該フェルト板は、前記中栓に設けられた前記中蓋によって支持されている。
【0006】
前記オーバーキャップには引き取り孔が設けられており、該引き抜き孔からは、前記中蓋の一部が延出するように構成されている。
【0007】
これにより、この延出部分を引っ張って前記中蓋を前記中栓から剥離することで、前記フェルト板を前記受け皿に落下して前記芯材と接触させ、該芯材に吸い上げた前記液状薬剤を前記フェルト板に吸い上げて当該フェルト板から揮散できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−276831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の揮散器にあっては、液状薬剤の揮散面が受け皿に支持されたフェルトの上面のみで構成される。
【0010】
このため、揮散量を増大するには、前記フェルト板を大型化する必要があり、これに伴って揮散器が大型化するという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、揮散量の増大を図ることができる揮散器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の揮散器にあっては、液状薬剤を収容する収容部と、該収容部内の前記液状薬剤を吸収して揮散する板状の揮散体とを備え、該揮散体と当該揮散体下部の前記液状薬剤との間に設けられた仕切部を引き抜いて使用する揮散器において、前記揮散体を、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置し、前記仕切部を引き抜いた際に落下可能に支持するとともに、落下時に当該揮散体の厚み方向両面を揮散面として利用可能に構成した。
【0013】
すなわち、板状の揮散体は、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置されており、面積が広い厚み方向に位置する両面が側方へ向くように構成されている。
【0014】
このため、仕切部を引き抜いて前記揮散体を落下させた際には、前記収容部内の前記液状薬剤が吸収され当該揮散体より揮散される。
【0015】
このとき、前記揮散体は、面積が広い厚み方向両面が側方を向くように配置されており、この両面が揮散面として利用される。
【0016】
このため、厚み方向片面しか揮散面として利用できなかった従来と比較して、前記液状薬剤の揮散面積の増大が図られる。
【0017】
また、本発明の請求項2の揮散器にあっては、液状薬剤を収容する収容部と、該収容部内の前記液状薬剤を吸い上げる吸上芯と、該吸上芯と接続された際に当該吸上芯で吸い上げられた前記液状薬剤を揮散する板状の揮散体とを備え、該揮散体と前記吸上芯との間に設けられた仕切部を引き抜いて使用する揮散器において、前記揮散体を、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置し、前記仕切部を引き抜いた際に前記吸上芯上へ落下可能に支持するとともに、落下時に前記揮散体の下面が前記吸上芯と接触し、当該揮散体の厚み方向両面を揮散面として利用可能に構成した。
【0018】
すなわち、板状の揮散体は、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置されており、面積が広い厚み方向に位置する両面が側方へ向くように構成されている。
【0019】
このため、仕切部を引き抜いて前記揮散体を落下させた際には、前記揮散体の下面が前記吸上芯と接することで、前記吸上芯で吸い上げられた液状薬剤が前記揮散体に染み込んで当該揮散体より揮散される。
【0020】
このとき、前記揮散体は、面積が広い厚み方向両面が側方を向くように配置されており、この両面が揮散面として利用される。
【0021】
このため、厚み方向片面しか揮散面として利用できなかった従来と比較して、前記液状薬剤の揮散面積の増大が図られる。
【0022】
また、請求項3の揮散器においては、前記吸上芯と接触する前記揮散体の前記下面を、前記吸上芯との接触部分へ向かうに従って下方へ突出する突出形状に形成した。
【0023】
すなわち、前記揮散体の前記下面は、前記吸上芯との接触部分へ向かうに従って下方へ突出する突出形状に形成されており、前記接触部分が平坦及び後退するように形成された場合と比較して、前記揮散体と前記吸上芯との接触状態が確実に確保される。
【0024】
さらに、請求項4の揮散器では、前記仕切部の引き抜き方向が、前記縦置きに配置された前記揮散体の長さ方向と同方向になるように設定した。
【0025】
すなわち、前記仕切部の引き抜き方向は、縦置きに配置された前記揮散体の長さ方向と同方向になるように設定されており、前記仕切部は、前記揮散体の長さ方向へ引き抜かれる。
【0026】
このため、前記揮散体の倒れやすい厚み方向に前記仕切部が引き抜かれる場合と比較して、特別な傾倒防止構造を設けること無く、不用意な前記揮散体の傾倒が防止される。
【0027】
加えて、請求項5の揮散器にあっては、前記仕切部の引き抜き方向が、前記縦置きに配置された前記揮散体の厚み方向と同方向になるように設定した。
【0028】
すなわち、前記仕切部の引き抜き方向は、縦置きに配置された前記揮散体の厚み方向と同方向になるように設定されており、前記仕切部は、前記揮散体の厚み方向へ引き抜かれる。
【0029】
このため、前記仕切部が折り返されたフィルムで構成された場合、当該フィルムの裏面に前記液状薬剤が付着していた場合であっても、この折り返されたフィルムを引き抜く際に、当該フィルムの裏面に付着した液状薬剤が前記揮散体と接触することで拭き取られる。
【0030】
これにより、前記フィルムの裏面に前記液状薬剤が付着したまま引き抜かれる場合と比較して、周囲や手の汚れが軽減される。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明の請求項1の薬剤容器にあっては、液状薬剤を吸収して揮散する板状の揮散体は、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置されており、その面積が広い厚み方向に位置する両面が側方を向くように配置され、この両面を揮散面として利用することができる。
【0032】
このため、水平に維持された板状の揮散体を水平状態のまま落下させる構造上、その上面しか揮散面として利用することができなかった従来と比較して、前記液状薬剤の揮散面積の増大を図ることができる。
【0033】
したがって、揮散体の大型化に伴う製品の大型化を図ることなく、揮散量の増大を実現することができる。
【0034】
また、本発明の請求項2の薬剤容器にあっては、吸上芯で吸い上げた液状薬剤を揮散する板状の揮散体は、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置されており、その面積が広い厚み方向に位置する両面が側方を向くように配置され、この両面を揮散面として利用することができる。
【0035】
このため、水平に維持された板状の揮散体を水平状態のまま落下させる構造上、その上面しか揮散面として利用することができなかった従来と比較して、前記液状薬剤の揮散面積の増大を図ることができる。
【0036】
したがって、揮散体の大型化に伴う製品の大型化を図ることなく、揮散量の増大を実現することができる。
【0037】
さらに、請求項3の揮散器においては、前記揮散体の前記下面が前記吸上芯との接触部分へ向かうに従って下方へ突出する突出形状に形成されている。
【0038】
このため、前記接触部分が平坦及び後退するように形成された場合と比較して、前記揮散体と前記吸上芯との接触状態を確実に確保することができる。
【0039】
加えて、請求項4の揮散器では、前記仕切部の引き抜き方向が、前記縦置きに配置された前記揮散体の長さ方向と同方向になるように設定されており、前記仕切部は、前記揮散体の長さ方向へ引き抜かれる。
【0040】
このため、前記揮散体が倒れやすい厚み方向に前記仕切部が引き抜かれる場合と比較して、特別な傾倒防止構造を設けること無く、不用意な前記揮散体の傾倒を防止することができる。これにより、構造の簡素化を図ることができる。
【0041】
また、請求項5の揮散器では、前記仕切部の引き抜き方向が、縦置きに配置された前記揮散体の厚み方向と同方向になるように設定されており、前記仕切部は、前記揮散体の厚み方向へ引き抜かれる。
【0042】
このため、前記仕切部が折り返されたフィルムで構成された場合、当該フィルムの裏面に前記液状薬剤が付着していた場合であっても、この折り返されたフィルムを引き抜く際に、当該フィルムの裏面に付着した液状薬剤が前記揮散体と接触することで拭き取られる。
【0043】
これにより、前記フィルムの裏面に前記液状薬剤が付着したまま引き抜かれる場合と比較して、周囲や手の汚れを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】同実施の形態の側面及び底面を示す要部断面図である。
【図3】同実施の形態の要部を示す拡大図である。
【図4】同実施の形態の中蓋部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0046】
図1は、本実施の形態にかかる揮散器1を示す図であり、該揮散器1は、液状薬剤2を揮散するものである。
【0047】
この液状薬剤2としては、芳香剤、消臭剤、防虫剤、殺虫剤、忌避剤等が挙げられ、本実施の形態では、前記液状薬剤2が芳香剤で構成された場合を例に挙げて説明する。
【0048】
この揮散器1は、内側を構成する内側構成部11と、外側を構成する外側構成部12とによって構成されている。
【0049】
前記外側構成部12は、矩形容器状に形成された紙箱21によって構成されており、前記内側構成部11を、当該外側構成部12内に収容した状態で隠蔽できるように構成されている。該外側構成部12の天面22には、複数の長穴が並設されており(図示省略)、これらの長穴によって前記揮散した液状薬剤2を放出する放出部が構成されている。そして、前記外側構成部12の側面には、引き抜き穴23が開設されている。
【0050】
前記内側構成部11は、図1及び図2にも示すように、前記液状薬剤2が収容された収容部31と、該収容部31の上面開口部を閉鎖する中蓋部32と、前記収容部31の上部に装着された上カバー33とを備えている。
【0051】
前記中蓋部32は、図3にも示したように、横長の長方形状に形成された板状部材によって構成されており、その周縁部は、上方へ向けて起立した後、側方へ向けて延出した支持片35が全周に渡って形成されている。
【0052】
この中蓋部32は、中央部へ向かうに従って下方へ傾斜するように構成されており、その中央部には、矩形状の挿通穴41が開設されている。該挿通穴41の一辺には、円弧状に後退した円弧部42が形成されており、この挿通穴41の開口縁部からは、矩形状の筒部43が下方へ向けて延出している。該筒部43には、前記収容部31内の前記液状薬剤2を吸い上げるための四角柱状の吸上芯44が挿通されており(図1及び図2参照)、当該吸上芯44は、その上端部が前記挿通穴41を介して、上方へ突出するように構成されている。
【0053】
前記収容部31は、図1及び図2に示したように、横長の長方形状に形成された底面51と、該底面51の前縁より起立した前壁面52と、前記底面51の後縁より起立した後壁面53と、前記底面51の左縁より起立した左壁面54と、前記底面51の右縁より起立した右壁面55とによって矩形容器状に形成されている。前記底面51には、L字状の突出部56,・・・が中心部を包囲するように四ヶ所に形成されており(図2参照)、四角柱状に形成された前記吸上芯44の下端部を保持できるように構成されている。
【0054】
前記各壁面52〜55の上部には、外側に延出した段部61が形成されており、該段部61に前記中蓋部32周縁の前記支持片35を載置した状態で、当該中蓋部32を支持できるように構成されている。この段部61の外周縁には、上方へ向けて延出した大径部62が形成されており、該大径部62の上縁からは、側方に延出したフランジ63が全周に渡って形成されている。
【0055】
前記左壁面54より延出したフランジ63部分を構成する左フランジ部71と、前記右壁面55より延出したフランジ63部分を構成する右フランジ部72とには、図4に示すように(左フランジ部71のみ図示)、側方に延出する外波部73が中央部に形成されている。各外波部73は、三つの山形部74,・・・からなり、各山形部74,・・・の間には、内側に円弧状に後退した後退部75,75が形成されている。
【0056】
この外波部73の内側には、内波部81が形成されており、該内波部81は、前記フランジ63に形成された段差部によって構成されている。
【0057】
すなわち、前記フランジ63は、外周部を構成する厚肉部91と、内周部を構成する薄肉部92とによって構成されており、前記フランジ63の内周部には、前記厚肉部91で構成された外周部より一段低い下段部93が形成されている。該下段部93は、前記外波部73の前記山形部74,・・・に対応する部位が外方へ向けて円弧状に張り出しており、円弧状凹部94,・・・が形成されている。各円弧状凹部94,・・・の間には、内側へ向けて突出した三角形状の三角部95,95が形成されており、当該三角部95,95は、前記下段部93より高い上段部96によって形成されている。
【0058】
このフランジ63の前記上段部96には、図1に示したように、シート状の仕切部101の周縁が剥離可能に熱溶着されており、該仕切部101によって前記収容部31の上部開口部が閉鎖されている。これにより、前記中蓋部32より延出する前記吸上芯44で吸い上げられた前記液状薬剤2が揮散しないように構成されている。
【0059】
この仕切部101は、前記フランジ63に溶着された仕切部本体111と、該仕切部本体111の一縁より折り返された折返し部112とによって構成されている。
【0060】
前記仕切部本体111は、先端縁が前記収容部31の前記左フランジ部71に溶着されており、その側縁が前記前壁面52より延出したフランジ63部分を構成する前フランジ部121及び前記後壁面53より延出したフランジ63部分を構成する後フランジ部122に溶着されている。そして、その折返し部分が前記右フランジ部72に溶着されており、当該仕切部本体111で前記収容部31の上部開口部を閉鎖するように構成されている。
【0061】
前記右フランジ部72に溶着された前記仕切部本体111からは、前記折返し部112が延出しており、該折返し部112は、前記仕切部本体111上に折り返されるように構成されている。この折返し部112は、前記仕切部本体111より細長に形成されており、当該折返し部112の先端部は、前記収容部31の前記左フランジ部71より延出する長さ寸法に設定されている。この延出部分は、前記外側構成部12の側面に設けられた前記引き抜き穴23より側方へ延出するように構成されている。
【0062】
これにより、当該揮散器1を使用する際には、前記外側構成部12の前記引き抜き穴23より延出した前記仕切部101の前記折返し部112を引っ張ることで、前記フランジ63に溶着された前記仕切部本体111を折返し部分側の前記右フランジ部72から前記左フランジ部71までの全域に渡って剥離できるように構成されており、剥離された仕切部101を前記外側構成部12の前記引き抜き穴23から引き抜けるように構成されている。
【0063】
前記上カバー33は、下方へ向けて開口した矩形容器状に形成されており、該上カバー33内には、揮散体201が収容されている。
【0064】
該揮散体201は、前記吸上芯44で吸い上げられた前記液状薬剤2を吸収して揮散するものであり、フェルト等によって長方形板状に形成されている。該揮散体201は、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きにした状態で使用されるように構成されており、この縦置き状態において、上縁202は、その左右部分が中央へ向かうに従って上方へ突出した円弧状に形成され、当該上縁202の中央部は水平に形成されている。また、前記揮散体201の下縁203は、その左右部分が中央へ向かうに従って下方へ突出した円弧状に形成されており、当該下縁203の中央部は水平に形成されている。
【0065】
これにより、前記揮散体201を前記縦置きにした状態で、当該揮散体201の上面及び下面は、前記吸上芯44との接触部分である中央部へ向かうに従って下方へ突出する突出形状に形成されている。
【0066】
また、この揮散体201は、前記収容部31の左右方向に沿って延在するように配置されている。これにより、当該揮散体201の長さ方向Lと前記仕切部101の引き抜き方向211とが同方向になるように設定されている。
【0067】
前記上カバー33は、横長の長方形状の天面301と、該天面301の前縁より下方へ向けて延出した前側面302と、前記天面301の後縁より下方へ向けて延出した後側面303と、前記天面301の左縁より下方へ向けて延出した左側面304と、前記天面301の右縁より下方へ向けて延出した右側面305とを備えている。前記各側面302〜305の下縁には、側方へ向けて延出するカバーフランジ306が一体形成されており、該カバーフランジ306の周縁からは、外嵌部307が下方へ向けて延出している。
【0068】
これにより、当該上カバー33を前記収容部31にセットした際には、前記外嵌部307が前記収容部31の上部に外嵌した状態で、前記カバーフランジ306が前記収容部31の前記フランジ63に載置された状態で支持されるように構成されている。
【0069】
前記前側面302及び前記後側面303の中央部には、上下方向に延在する凹溝311,311が形成されており、該凹溝311,311の奥行寸法は、前記カバーフランジ306の幅寸法と同寸法に設定されている。
【0070】
前記前側面302及び前記後側面303の内側面からは、図2に示しように、中心方向へ向かって延出する板状の支持片321,・・・がそれぞれ二箇所に設けられており、両面より延出した支持片321,・・・は、対向するように構成されている。対向した支持片321,321間には、間隙が形成されており、この間隙に前記揮散体201を前記縦置きにした状態で落下自在に保持できるように構成されている。
【0071】
これにより、当該上カバー33内は、前記各支持片321,・・・と前記左側面304及び前記右側面305とによって前記揮散体201が落下自在に保持されており、当該揮散体201は、前記中蓋部32に設けられた前記仕切部101によって下方から支持されている。また、この支持状態において、前記揮散体201は、前記吸上芯44の真上に位置決めされるように構成されており、前記仕切部101を引き抜いた際には、図1の下図に示すように、前記揮散体201が前記吸上芯44上に落下するとともに、下方へ突出した前記下縁203の中央部が前記吸上芯44と接するように構成されている。
【0072】
これにより、前記揮散体201と前記吸上芯44とが接続された状態では、該吸上芯44で吸い上げられた前記液状薬剤2が前記揮散体201を介して揮散するように構成されており、その際に、当該揮散体201の厚み方向331側を構成する前面332及び後面333の両面が揮散面として利用されるように構成されている。
【0073】
そして、前記上カバー33の前記天面301には、矩形状の開口部341が開設されており、前記揮散体201より揮散した液状薬剤2を放出する為の放出口が形成されている。また、前記上カバー33の前記左側面304及び右側面305より延出した前記カバーフランジ306の部位には、矩形状の切欠部342,342が形成されており、図2に示したように、前記左側面304及び右側面305には、M字状に開口するM字状切欠部345,345が設けられ、揮散した前記液状薬剤2を放出できるように構成されている。
【0074】
以上の構成にかかる本実施において、この揮散器1を使用する際には、当該揮散器1から仕切部101を引き抜いて前記揮散体201を吸上芯44上に落下させる。すると、前記揮散体201の下面を構成する下縁203が前記吸上芯44と接触することで、当該吸上芯44で吸い上げた液状薬剤2が前記揮散体201に染み込む。これにより、前記液状薬剤2を、前記揮散体201から揮散させることができる。
【0075】
このとき、板状に形成された揮散体201は、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置されている。これにより、面積が広い厚み方向331に位置する前面332及び後面333の両面が側方を向くように配置されており、この両面を揮散面として利用することができる。
【0076】
このため、水平に維持された板状の揮散体を水平状態のまま落下させる構造上、その上面しか揮散面として利用することができなかった従来と比較して、前記液状薬剤2の揮散面積の増大を図ることができる。
【0077】
したがって、前記揮散体201を大型化に伴う製品の大型化を図ることなく、揮散量の増大を実現することができる。
【0078】
また、前記仕切部101の引き抜き方向211は、前記縦置きに配置された前記揮散体201の長さ方向Lと同方向になるように設定されており、前記仕切部101を、前記揮散体201の長さ方向Lへ引き抜くことができる。
【0079】
このため、前記縦置きにされた前記揮散体201が倒れやすい前記厚み方向331に前記仕切部101が引き抜かれる場合と比較して、特別な傾倒防止構造を設けること無く、不用意な前記揮散体201の傾倒を防止することができる。
【0080】
これにより、傾倒防止構造の簡素化を図ることができる。
【0081】
さらに、前記揮散体201の下面を構成する下縁203は、前記吸上芯44との接触部分へ向かうに従って下方へ突出する突出形状に形成されている。
【0082】
このため、前記下縁がが平坦及び後退するように形成された場合と比較して、前記揮散体201と前記吸上芯44との接触状態を確実に確保することができる。
【0083】
特に、中蓋部32が、前記吸上芯44の設けられた中心部へ向かうに従って傾斜した本実施の形態にあっては、前記揮散体201の端部と前記中蓋部32との不用意な干渉を防止できるため特に有効である。
【0084】
なお、本実施の形態では、前記液状薬剤2を前記吸上芯44を介して前記揮散体201に吸い上げる場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、吸上芯44を設けず、前記仕切部101を引き抜いた際に、前記揮散体201の一部が前記液状薬剤2に直接接するように構成してもよい。
【0085】
また、前記仕切部101の引き抜き方向211が、前記縦置きに配置された前記揮散体201の長さ方向Lと同方向になるように設定した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0086】
すなわち、前記仕切部101の引き抜き方向211を、前記縦置きに配置された前記揮散体201の厚み方向331と同方向になるように設定しても良い。この場合、前記仕切部101を前記揮散体201の厚み方向331へ引き抜くことができるので、当該仕切部101の裏面に前記液状薬剤2が付着していた場合であっても、この折り返された仕切部101を引き抜く際に、当該仕切部101の裏面に付着した液状薬剤2が前記揮散体201と接触することで拭き取られる。
【0087】
これにより、前記仕切部101の裏面に前記液状薬剤2が付着したまま引き抜かれる場合と比較して、周囲や手の汚れを軽減することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 揮散器
2 液状薬剤
31 収容部
44 吸上芯
101 仕切部
201 揮散体
211 引き抜き方向
331 厚み方向
332 前面
333 後面
L 長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状薬剤を収容する収容部と、該収容部内の前記液状薬剤を吸収して揮散する板状の揮散体とを備え、該揮散体と当該揮散体下部の前記液状薬剤との間に設けられた仕切部を引き抜いて使用する揮散器において、
前記揮散体を、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置し、前記仕切部を引き抜いた際に落下可能に支持するとともに、落下時に当該揮散体の厚み方向両面を揮散面として利用可能に構成したことを特徴とする揮散器。
【請求項2】
液状薬剤を収容する収容部と、該収容部内の前記液状薬剤を吸い上げる吸上芯と、該吸上芯と接続された際に当該吸上芯で吸い上げられた前記液状薬剤を揮散する板状の揮散体とを備え、該揮散体と前記吸上芯との間に設けられた仕切部を引き抜いて使用する揮散器において、
前記揮散体を、その上面の面積より周方向の面積が大きくなる縦置きに配置し、前記仕切部を引き抜いた際に前記吸上芯上へ落下可能に支持するとともに、落下時に前記揮散体の下面が前記吸上芯と接触し、当該揮散体の厚み方向両面を揮散面として利用可能に構成したことを特徴とする揮散器。
【請求項3】
前記吸上芯と接触する前記揮散体の前記下面を、前記吸上芯との接触部分へ向かうに従って下方へ突出する突出形状に形成したことを特徴とする請求項2記載の揮散器。
【請求項4】
前記仕切部の引き抜き方向が、前記縦置きに配置された前記揮散体の長さ方向と同方向になるように設定したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の揮散器。
【請求項5】
前記仕切部の引き抜き方向が、前記縦置きに配置された前記揮散体の厚み方向と同方向になるように設定したことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載の揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−102844(P2013−102844A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247131(P2011−247131)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】