説明

揮発性有機化合物処理装置

【課題】従来の放電によりVOCを分解する揮発性有機化合物処理装置は、全てのVOC吸着体を一度に処理するので、放電電流ひいては電源容量を大きくする必要が有り、装置コストが高くなる、放電発生時も放電が発生してない時と同じ量のガスを流しているため、ガス中の窒素と酸素が放電により反応して、大量の有害な窒素酸化物(NOxと略す)を発生する、という課題がある。
【課題を解決するための手段】この発明に係る揮発性有機化合物処理装置は、処理対象ガスに触れ揮発性有機化合物を吸着する吸着体1Cと、吸着体1Cを間に挟んで配置された放電を発生させる電極の対1Aと、処理対象ガスの流れとは逆方向に放電発生後の所定期間に吸着体1Cにガスを流すガス返送機構とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばトルエンやキシレン、スチレンなど大気に放出すると有害である有機溶剤やその他有機化合物の蒸気すなわち揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds:VOCと略す)の分解に用いられる揮発性有機化合物処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗装工場や半導体工場、あるいは印刷工場などは多量の有機溶剤を使用している。このような工場から大気に排出されるVOCは、太陽光やオゾンなどとの反応により有害な有機性微粒子を形成したり、大気中のオゾン濃度を増大させたりなど大気環境に重大な悪影響を与えることが知られている。このため、VOCを回収し無害化することが強く求められている。
VOCの回収を行うために疎水性ゼオライトや活性炭を担持したシートを蜂の巣(ハニカム)状に形成したガス濃縮ローターが開発され普及している。ガス濃縮ローターによって吸着され濃縮されたVOCは、触媒や燃焼装置によって分解され無害化されて大気へ放出される。
【0003】
放電によりVOCを分解する装置も開発されている。放電によりVOCを分解する装置の構成は、疎水性ゼオライトを担持した段ボール状のVOC吸着体を絶縁体とともに一対の電極で挟むという構成である。VOC吸着体が吸着飽和してVOCを十分には吸着できなくなる前に、電極間に5〜7kVの交流電圧を印加して放電を発生させ、発生させた放電プラズマによりVOC吸着体からVOCを脱着し、さらに脱着したVOCを水と二酸化炭素に分解する。放電でVOCを分解処理する間も、放電発生中でない場合と同量の処理対象のガスを流している。なお、VOC吸着体に放電を触れさせてVOCを分解処理する際にガスを止めると、VOC吸着体が1個しかないので、ガスの処理ができなくなる。
なお、VOC吸着体が吸着飽和し処理対象のガス中のVOCを十分には吸着できなくなることを、VOC吸着体が破過するという。(例えば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−126445号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VOCを分解処理できかつ環境に悪影響を与える物質を発生させないで、消費電力が少なく、装置コストが安価な装置が望まれている。従来の放電によりVOCを分解する装置は、以下の課題が有る。
(1)全てのVOC吸着体を一度に処理するので、放電電流ひいては電源容量を大きくする必要が有り、装置コストが高くなる。
(2)放電発生時も放電が発生してない時と同じ量のガスを流しているため、ガス中の窒素と酸素が放電により反応して、大量の有害な窒素酸化物(NOxと略す)を発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る揮発性有機化合物処理装置は、処理対象ガスに触れ揮発性有機化合物を吸着する吸着体と、吸着体を間に挟んで配置された放電を発生させる電極の対と、処理対象ガスの流れとは逆方向に放電発生後の所定期間に吸着体にガスを流すガス返送機構とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る揮発性有機化合物処理装置は、ガス返送機構を備えているので、NOxなどの副生成物の排出量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1での揮発性有機化合物処理装置のシステムブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1でのVOC処理装置の構造を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1でのVOC処理装置の制御方式においてガス処理ユニットのグループが取る動作状態のシーケンスを説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1でのVOC処理装置の制御方式の効果を説明する図である。
【図6】この発明に係るVOC処理装置の別の制御方式を説明する図である。
【図7】この発明に係るVOC処理装置のさらに別の制御方式を説明する図である。
【図8】この発明に係るVOC処理装置のグループの構成を可変とする場合の制御方式を説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態2でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図10】この発明の実施の形態3でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図11】この発明の実施の形態4でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態4での給電層の構造の例を説明する図である。
【図13】この発明の実施の形態4での入口部に絶縁層を設けた高圧電極の縦断面図を示した図である。
【図14】この発明の実施の形態5でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図15】この発明の実施の形態6でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図16】この発明の実施の形態7でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図17】この発明の実施の形態8でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図18】この発明の実施の形態9でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図19】この発明の実施の形態10でのガス処理ユニットの構造を説明する図である。
【図20】この発明の実施の形態10での放熱板の間に絶縁物を設けた高圧電極の構造を説明する図である。
【図21】この発明の実施の形態11でのVOC処理装置の構造を説明する図である。
【図22】この発明の実施の形態12でのVOC処理装置の構造を説明する図である。
【図23】この発明の実施の形態13でのVOC処理装置の構造を説明する図である。
【図24】この発明の実施の形態14でのVOC処理装置の構造を説明する平面図である。
【図25】この発明の実施の形態14でのVOC処理装置のガス処理ユニットの構造を説明する縦断面図である。
【図26】この発明の実施の形態14でのVOC処理装置のガス処理ユニットの電極配置を説明する横断面図である。
【図27】この発明の実施の形態14でのVOC処理装置の電極の構造を説明する縦断面図である。
【図28】この発明の実施の形態14でのVOC処理装置におけるガス処理ユニット内の吸着剤の位置によるVOC吸着量の変化を説明する図である。
【図29】この発明の実施の形態15でのVOC処理装置のガス処理ユニットの電極配置を説明する横断面図である。
【図30】この発明の実施の形態15でのVOC処理装置の電極の構造を説明する縦断面図である。
【図31】この発明の実施の形態15でのVOC処理装置の接地電極に近い位置での縦断面図である。
【図32】この発明の実施の形態16でのVOC処理装置のガス処理ユニットの電極配置を説明する横断面図である。
【図33】この発明の実施の形態17でのVOC処理装置の構造を説明する平面図である。
【図34】この発明の実施の形態17でのVOC処理装置のガス処理ユニットの構造を説明する縦断面図である。
【図35】この発明の実施の形態18でのVOC処理装置の構造を説明する図である。
【図36】この発明の実施の形態19でのVOC処理装置の構造を説明する図である。
【図37】この発明の実施の形態20でのVOC処理装置の構造を説明する図である。
【図38】この発明の実施の形態21でのVOC処理装置のシステムブロック図である。
【図39】この発明の実施の形態21でのVOC処理装置が取る動作状態を説明する図である。
【図40】この発明の実施の形態21でのVOC処理装置の制御方式においてガス処理ユニットのグループが取る動作状態のシーケンスを説明する図である。
【図41】この発明の実施の形態22でのVOC処理装置のシステムブロック図である。
【図42】この発明の実施の形態22でのVOC処理装置が取る動作状態を説明する図である。
【図43】この発明の実施の形態22でのVOC処理装置の制御方式においてガス処理ユニットのグループが取る動作状態のシーケンスを説明する図である。
【図44】この発明の実施の形態23でのVOC処理装置のシステムブロック図である。
【図45】この発明の実施の形態23での処理対象ガス中のVOC濃度とガス処理ユニットの各グループでの吸着剤のVOC吸着量の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1での揮発性有機化合物処理装置(VOC処理装置と略す)のシステムブロック図である。VOC処理装置には、ガスが並列に供給されるVOCを吸着し放電により分解する所定個(2個以上)のグループに分割された所定個のガス処理ユニット1と、放電を起こすための交流の高電圧を発生させる高電圧発生装置2と、高電圧を何れかのガス処理ユニット1の高圧電極に印加する電圧スイッチング制御機構3と、ガスの吸入口にあるフィルター4と、各ガス処理ユニット1に流れるガスの流量を調整する流量調整機構5と、排気ファン6を有する。ここで、電圧スイッチング制御機構3がこの発明における放電制御機構である。なお、ガス処理ユニット1のグループには、1個以上のガス処理ユニット1が有るものとする。
ガス処理ユニット1は、VOCを吸着する吸着剤1Cと、放電を発生させる一対の電極である接地電極1Aと高圧電極1Dとを有する。
【0010】
VOC処理装置は、排気ファン6により装置からガスを排気することにより、同量のガスを吸入口から吸入する。VOC処理装置が吸入するガスを処理対象ガスと呼び、VOC処理装置から排気されるガスを処理済ガスと呼ぶ。処理済ガスをVOCやNOxなどを含まない清浄な空気とすることが、VOC処理装置の使命である。
フィルター4は、ペンキカスや油分などの粘着度が高く処理対象ガスから比較的容易に分離できる成分を除去するためのものである。フィルター4は有用だが、VOC処理装置に必要不可欠なものではない。別の装置で処理された後のガスが処理対象ガスになるなどして、処理対象ガスにフィルター4で除去可能な成分が含まれない場合は、フィルター4は不要である。
【0011】
VOC処理装置の構造を説明する図を、図2に示す。図2(a)に横断面図を、図2(b)に縦断面図をそれぞれ示す。また、1個のガス処理ユニット1の構造を説明する図を、図3に示す。図3(a)に横断面図を、図3(b)に縦断面図をそれぞれ示す。なお、図2(a)におけるBB断面での断面図が図2(b)と図3(b)であり、図2(b)でのAA断面での断面図が図2(a)と図3(a)である。
図2(a)から分かるように、この実施の形態1では、断面が円形の容器7の中に、6個ずつ6グループに分割された36個のガス処理ユニット1が有る。図2(a)において破線が、ガス処理ユニット1のグループの区分を意味する。図2(b)に示すように、このグループごとにガスの流量を調整するバルブ5Aが有る。図2(b)において、処理対象ガスが容器7の右下にある吸気口7AからVOC処理装置の内部に入り、さらにバルブ5Aを通って並列に配置されたガス処理ユニット1で処理されて、容器7の左下にある排気口7Bから処理済ガスとして排出される。吸気口7Aの外側にはフィルター4が有り、排気口7Bのすぐ内側には排気ファン6が有る。なお、図2(b)では容器7の外側は、断面図ではなく側面から見た図として書いている。
【0012】
図3に示すように、1個のガス処理ユニット1は、円筒状の接地電極1Aと、接地電極1Aの内部に有る一端が半球面である円筒状のガラス管1Bと、ガラス管1Bと接地電極1Aの間の空間一杯に配置された吸着体である吸着剤1Cと、ガラス管1Bの内面に密着してある円筒状の高圧電極1Dと、高圧電極1Dと電圧スイッチング制御装置3との間を結ぶ高圧導線1Eと、高圧導線1Eに流れる電流が許容値を超えた場合に切れるヒューズ1Fと、ガラス管1B内で高圧導線1Eを支持し電流を流すブラシ状の支持材1Gとから構成される。接地電極1Aと高圧電極1Dとの間の間隔は、印加する高電圧で放電を発生できる値とする。吸着剤1Cは、球状の疎水性ゼオライトとし、疎水性ゼオライトの直径は高圧電極1Aとガラス管1Bとの間隔とほぼ同じにする。こうすると、高圧電極1Dとガラス管1Bとに1列の疎水性ゼオライトが入るようになる。
【0013】
VOC処理装置全体に有る吸着剤1Cの一部が、各ガス処理ユニット1には有ることになる。そのため、ガス処理ユニット1の高圧電極1Dに高電圧を印加すると、一部の吸着剤1Cが放電に触れることになる。また、ガス処理ユニット1は、接地電極1Aと高圧電極1Dという電極の対を備えており、ガス処理ユニット1のグループは、電極の対のグループでもある。
【0014】
ヒューズ1Fの図における左側の高圧導線1Eは、電圧スイッチング素子3Aに接続する。電圧スイッチング素子3Aはガス処理ユニット1ごとに有る。容器7の外側に有る高電圧発生装置2の高電圧が発生する端子と接続する高圧導線1Hは、容器7の高圧線導入口7Cから容器内部に入り、各電圧スイッチング素子3Aの一方の端子に接続する。電圧スイッチング素子3Aのもう一方の端子には高圧導線1Eが接続されており、電圧スイッチング素子3Aを入りにすると対応するガス処理ユニット1の高圧電極1Dに高電圧が印加される。高圧導電1Eと高圧導線1Hなどの高電圧が印加される部分には、必要な絶縁を実施しておく。図には示さないが、高電圧発生装置2の接地された端子と各ガス処理ユニット1の接地電極1Aとの間は電気的に接続する。また、高圧線導入口7Cでは、必要な気密性を持たせる。
【0015】
図2(a)に示すように、容器7に形成された穴に、ガス処理ユニット1が1個ずつ収納される。なお、容器7に形成された穴の側面に接地電極1Aを配置し必要な配線を施した後で、他の構成要素を挿入してガス処理ユニット1とする。ガス処理ユニット1を収納する穴と容器7との間は密閉可能な空洞7Dであり、この空洞7Dには冷却用の水を満たして循環させる。空洞7Dの図2(b)における中央の位置に隔壁7Eが有り、隔壁7Eには上部に1箇所の貫通穴7Fが有る。容器7の下側で隔壁7Eよりも右側の位置に冷却水供給口7Gが有る。容器7の下側で隔壁7Eよりも左側の位置に冷却水排出口7Hが有る。冷却水供給口7Gから空洞7D内に入った水は、隔壁7Eが有るために上方向に移動し、貫通穴7Fを通って隔壁7Eの左側に移動し、さらに下方向に移動し冷却水排出口7Hから排出される。
【0016】
次に動作を説明する。まず、ガス処理ユニット1の動作状態について説明する。ガス処理ユニット1は、動作状態Aと動作状態Bという2個の動作状態を取る。動作状態Aは、バルブ5Aが開で高圧電極1Dに高電圧が印加されていない状態であり、吸着剤1CがVOCを吸着する動作状態である。これに対して、動作状態Bでは、バルブ5Aが閉じられ、高圧電極1Dに高電圧が印加されて、接地電極1Aと高圧電極1Dの間で放電が発生している状態である。動作状態Bでは、1kHz程度で10kV程度の交流電流を高圧電極1Dに印加する。すると、高圧電極1Dを囲む誘電体であるガラス管1Bの外面と接地電極1Aの内面の間で、安定した放電が発生する。なお、誘電体としてアルミナやジルコニアなどのセラミック管やセラミック溶射ガラスライニングなどを、ガラス管の代わりに用いてもよい。
吸着剤1Cが放電に触れて温度が上昇し、吸着したVOCを放出する。放出されたVOCは、電子と衝突したり、放電で発生した酸素原子やオゾンなどの活性種と反応したりして、水と二酸化炭素に分解される。吸着剤1CからはVOCが脱着され、吸着剤1CはVOCを吸着可能な状態に再生される。
【0017】
VOCを分解する力がオゾンよりも強い酸素原子の寿命は1マイクロ秒程度と短く、発生するとほとんど移動しないうちに消滅する。そのため、酸素原子によるVOCの分解は、放電が発生している個所のすぐ近くで行われる。オゾンの寿命は100秒程度と比較的長いので、ガス処理ユニット1内部の放電が発生している個所から離れた所でもオゾンが移動してくれば、オゾンとVOCが反応してVOCを分解する。
【0018】
VOC処理装置の制御方式においてガス処理ユニット1のグループが取る動作状態のシーケンスを説明する図を、図4に示す。フェーズ1からフェーズ6までが有り、フェーズnではグループnが動作状態Bにあり、残りは動作状態Aである。フェーズ1から順番にフェーズ6まで変化し、フェーズ6の次にはフェーズ1に戻ることを繰り返す。この実施の形態1では、1フェーズが10分で、1周期を60分とする。
図4のシーケンスによる方式(本方式と呼ぶ)の効果を、図5で説明する。図5では横軸に時間軸をとり、縦軸にVOC処理装置の消費電力を書く。実線が本方式であり、破線が連続方式(後述)、点線が間欠方式(後述)である。図5から、本方式は連続方式、間欠方式のどちらよりも消費電力が少ないことが分かる。なお、1周期における消費電力の積分値は、本方式と間欠方式とほぼ同じであり、連続方式はこれらよりも大きい。
【0019】
ここで、間欠方式が特許文献1での方式であり、吸着剤1CにVOCを十分に吸着させた後で、処理対象ガスを流しながらすべての吸着剤を同時に放電にあてて処理する方式である。連続方式とは、処理対象ガスを流しながら連続的に放電を発生させて、吸着剤1Cの再生を常に行う方式である。
特許文献1でも記載されているように、VOCの濃度が高いほどVOCの処理に要するエネルギー量が少なくなる。前にも説明したようにVOCは、放電された電子が衝突するか、放電された電子が酸素分子と衝突して発生した酸素原子やオゾンなどの活性種と反応して、分解される。このため、処理対象ガス中のVOCの濃度が高いほど、VOCが活性種または電子と反応する確率が高くなり、処理の効率も高くなる。このため、VOCを濃縮しない連続方式では、VOCを濃縮する本方式及び間欠方式よりも消費電力量が大きくなる。
【0020】
さて、本方式と間欠方式を比較すると、間欠方式では、本方式とほぼ同じ電力量を短い時間で消費するので、装置の電源容量が大きくなり、電源装置のコストも高くなる。これに対して、本方式では、定常的に小さい電力を消費して、高効率でVOCを分解できるため、装置の電源容量を小さくでき、VOC処理装置の低コスト化が実現できる。
【0021】
ガス処理ユニット1のグループ数、処理の周期、消費電力などは、想定するVOCの濃度や処理対象ガスの量などに応じて適した値となるように決める。吸着剤が破過しないようにする必要があるため、大量の吸着剤を使用可能な大型の装置では処理の周期が長くなり、小型の装置では短くなる。VOC濃度が変動する場合でも周期で平均してみると、周期が長いほどVOCの量が所定の範囲に入る確率が高くなり、吸着剤が破過する確率を小さくできる。ガス処理ユニット1のグループ数が多い方が、一度に脱着処理する吸着剤の量が少なくなるので、電源容量をより小さくできる可能性が高い。吸着剤がVOCを脱着するには、吸着剤の量が少量であっても所定の時間は放電で処理する必要があるため、グループ数を多くする場合でも、各グループでの動作状態Bを取る時間がこの所定の時間以上となるようにする必要が有る。消費電力は、ガス処理ユニット1が動作状態Bを取る時間内に、想定する最大量のVOCを吸着した場合で吸着剤からVOCを脱着して分解可能な大きさとする。
【0022】
本方式では、動作状態Bではガス処理ユニット1に処理対象ガスが流れないようにしている。これは、NOxをできるだけ発生させないようにするためである。放電エネルギーを注入することで高速電子が生成され、生成された高速電子が処理対象ガス中の酸素分子や窒素分子と衝突することで、有害なNOxが生成される。放電処理時にガス流を止めておくと、ガス処理ユニット1内のNOx濃度は高くなるがガス量が少ないため、NOxの生成量は少なくなる。ガス中のNOx濃度が3%程度になると、NOxの分解と生成がほぼつりあう平衡状態になり、投入する放電エネルギーが大きくなってもNOxの濃度は上昇しなくなる。ガスを止めた場合にはガス処理ユニット1の内部空間でこの平衡状態になり、発生するNOxの量がガス処理ユニット1の内部空間の体積に対して3%程度しか生成されないことになる。ガス処理ユニット1の内部空間の体積は、ガス流量と比較して格段に小さく、発生するNOxの量が少なくなる。放電発生時も放電が発生していない時と同じ量のガスを流す場合には、NOxは投入する放電エネルギーにほぼ比例して生成される。
【0023】
なお、放電発生中にガス流を止めることによるNOxの生成量を低減させる効果は、間欠方式でも適用できる。ただし、間欠方式に適用した場合は、放電発生中はVOC処理装置に処理対象ガスを流すことができず、その間に発生した処理対象ガスをどこかに貯めておくか、処理対象ガスが発生しないようにする必要が有る。これに対して、本方式では、ガス流を止めるのは一部のガス処理ユニット1だけであり、VOC処理装置全体としては処理対象ガスの処理を中断することがないという効果が有る。
十分にVOCを吸着した吸着剤に放電を触れさせると、吸着剤温度が上昇し、吸着されていたVOCが急速に脱着され、ガスを流す場合には、放電で分解しきれなかったVOCが処理済ガスとしてVOC処理装置外に漏れ出す問題があった。放電時にガスを止めることにより、VOCがガス処理ユニット1の外部に出ることはない。脱着されたVOCは、ガス処理ユニット1内にとどまり、電子や活性種と反応して分解される。
この実施の形態1では、一部のガス処理ユニット1で順番に放電を発生させることと、放電時にガス流を止めることを同時に実施したが、どちらかだけを実施してもよい。
【0024】
吸着剤1CからVOCを脱着する上では、吸着剤1Cの温度が高い方が脱着効率は高くなる。しかし、放電が発生する空間内のガスの温度が高くなり、ガラス管1Bの温度があまり高くなると、ガラス管1Bの耐電圧の低下をもたらし、ガラス管1Bが絶縁破壊を引き起こすことがある。ガラス管1Bが絶縁破壊すると、ガス処理ユニット1として機能しなくなる。絶縁破壊に至らなくても、ガラス管1Bの温度が上昇するとガラス管1Bの誘電体損失tanδが増大して、消費電力が増大する。このため、この実施の形態1では、接地電極1Aを水冷して、間接的にガラス管1Bの温度上昇を抑え、放電中でもガラス管1Bや吸着剤1Cの温度が100℃程度になるようにしている。従来のガス濃縮ローターなどでは、吸着剤の周囲のVOC濃度が高くなることにより吸着剤からVOCが脱着する速度が低下するという現象(飽和現象と呼ぶ)が発生するので、この現象があってもVOCを脱着できるように300℃程度まで加熱してVOCを脱着している。放電によりVOCを脱着する本方式では、脱着したVOCをその場で分解するので、飽和現象が発生することなく、吸着剤の温度を100℃程度に抑えても、VOCを脱着できる。なお、必ずしも100℃程度でなくてもよい。誘電体を保護でき脱着処理を効率よく行える温度であれば、100℃程度より高くても低くてもよい。
【0025】
放電が発生中でも吸着剤1Cを100℃程度までしか加熱しないので、放電させない動作状態Aに変化した後でもすぐに吸着剤の温度が低下し、VOCを吸着できるようになる。なお、動作状態Aでのガス処理ユニット1内の温度は、冷却水の温度程度になる。動作状態Bから動作状態Aに戻った直後でVOCを十分に吸着できないガス処理ユニット1がある場合でも、過半のガス処理ユニット1はVOCを十分に吸着できる状態であり、吸着剤を再生するために、VOCの分解を停止する工程がなくてもよいという効果が有る。
【0026】
この実施の形態1では、常にどれか1個のグループのガス処理ユニット1が動作状態Bを取るとしたが、図6に示すように、すべてのグループが動作状態Aであるフェーズ0を取るようなシーケンスであってもよい。
この実施の形態1では、各グループでのガス処理ユニット1の数を同じにして、動作状態Bを取る時間も同じにした。これは、VOC処理装置を定常的に効率よく稼動させるためである。グループでのガス処理ユニット1の数を同じでなくしたり、動作状態Bを取る時間や放電の消費電力などを変化させたりしてもよい。ただし、その場合には、同時に何らかの対策をとらないと効率は低下する可能性が有る。吸着剤1CにVOCを十分に吸着させたガス処理ユニット1のグループを順番に高電圧を印加することで放電を発生させるものであればどのような制御方式でも、VOC濃度を高くすることによるVOCの分解に要する電力を低減し、かつ電源容量を小さくできるという効果が有る。
【0027】
この実施の形態1では複数のガス処理ユニット1を備えたが、ガス処理ユニット1はなくてもよい。吸着剤を複数の部分に区分可能であり、吸着剤に十分にVOCを吸着させて、区分した吸着剤の一部を順番に電極間で発生する放電で処理するものであれば、VOCの分解に要する電力を低減し、かつ電源容量を小さくできるという効果が有る。なお、複数の部分に区分可能とは、区分の仕方が場合によって変化する場合も含むものとする。
接地電極1Aまたは高圧電極1Dのどちらかを複数の電極の対で兼用するようにしてもよい。接地電極1Aと高圧電極1Dの複数の対が構成できるように、接地電極1Aまたは高圧電極1Dのどちらかが対の数だけあればよい。
【0028】
ここで、一般的にVOC処理装置で必要となる対策を、性能維持対策と効率向上対策に分類する。性能維持対策とは、VOC処理装置として問題なく動作させるための対策である。効率向上対策とは、VOC処理装置としての効率を向上させる対策である。性能維持対策と効率向上対策は、必要に応じて実施する。
【0029】
各グループでのガス処理ユニット1の数が異なることも許容することは、効率向上対策になる場合が有る。例えば、図2(a)では容器7の中央に空洞を設けているが、この個所にガス処理ユニット1を設けてもよい。その場合には、外側の寸法が同じ容器7でも1個多くガス処理ユニット1を設けることができる。ただし、37個のガス処理ユニット1を同じく6個のグループに分割する場合には、グループのガス処理ユニット1の数は6個になるのが5グループで、7個になるのが1グループになる。VOC処理装置の電源容量に余裕があれば対策は不要であるが、電源容量がぎりぎりの場合は7個のグループでも対応できるように電源容量を増大させる性能維持対策が必要になる。さらに、効率向上対策として、同時に動作状態Bになるガス処理ユニット1の数に応じて、動作状態Bである時間を同じにして消費電力を変化させたり、消費電力を同じにして動作状態Bである時間を変化させたりすることも必要である。なお、電源容量がぎりぎりだとすると、動作状態Bである時間を同じにする場合は、電源容量を7/6倍にする必要が有り、動作状態Bである時間を変化させる場合は、電源容量を37/36倍にする必要が有る。
【0030】
ガス処理ユニット1の総数がグループ数の整数倍にならない場合は、グループを2種類以上にして、種類ごとにその中の1個のグループが順番に動作状態Bを取るようにしてもよい。例えば、37個のガス処理ユニット1を、4個ずつである種類Aの3グループと5個ずつである種類Bの5グループに分割して、図7のような動作シーケンスを取るなどしてもよい。図7では、グループA1からグループA3まではどれか1個のグループが順番に動作状態Bになり、グループB1からグループB5まではどれか1個のグループが順番に動作状態Bになる。図7では、種類Aと種類Bとで動作状態Bを取る時間を同じにし、消費電力をガス処理ユニット1の数に比例させている。このように制御しても、各ガス処理ユニット1で同様に効率よくVOCを処理できる。種類Aと種類Bで吸着剤が処理対象ガスに触れる時間がほぼ等しくなるように、種類Aと種類Bで動作状態Bを取る時間ひいては周期を別の値にしてもよい。さらには、種類Aと種類BとでVOCの処理に関して許容できない差が発生しないならば、種類Aと種類Bの消費電力と処理時間をどのように決めてもよい。
【0031】
ガス処理ユニット1の総数がグループ数の整数倍にならない場合の効率向上対策として、図8に示すような対策をとってもよい。図8では、動作状態Bとなる個所に括弧で囲んで動作状態Bを取るガス処理ユニット1の番号を書く。図8を見ると、動作状態Bを取るガス処理ユニット1の数は常に一定だが、動作状態Bを取るガス処理ユニット1のグループの構成はそのつど変化している。最初は、番号1〜7のガス処理ユニット1が同時に動作状態Bになったのが、次には、番号36,37,1〜5のガス処理ユニット1が同時に動作状態Bになる。このようにしても、各ガス処理ユニット1で同様に効率よくVOCを処理できる。ガス処理ユニット1のグループ分けは、放電制御機構である電圧スイッチング制御機構3により行われる。
このような制御は、動作状態Bでガス流を止めない場合には、特別な配管などを付加することなく容易に実施できる。処理対象ガスの配管が複雑になり、ガス処理ユニット1ごとにバルブ5Aが必要となるが、放電時にガス流を止める場合で同様な制御を行ってもよい。
【0032】
この実施の形態1では、図2と図3に示す構成のVOC処理装置で説明したが、VOCを吸着する吸着剤を間に挟んで1対の電極が存在し、電極間で発生する放電が吸着剤に触れる構成であれば、どのような構成でもよい。誘電体を高圧電極の周りに配置したが、接地電極の方に誘電体を付加してもよい。高圧電極と接地電極の両方との間に空隙を持たせて、高圧電極と接地電極の間に誘電体を配置してもよい。さらには、誘電体をなくして交流または直流の高電圧を印加するようにしてもよい。
この実施の形態1では、放電時にガス流を止めるバルブ5Aをガス処理ユニット1の吸気側に設けたが排気側に設けてもよい。バルブ5Aをガス処理ユニット1のグループごとに設けているので、部品点数を削減して低コストを実現する上で有利である。ガス処理ユニット1ごとにバルブ5Aを設けてもよく、その場合には装置のコストは高くなるが、より高度な制御ができてVOCの処理効率を向上できる場合もある。
この実施の形態1では、ガス処理ユニット1ごとに電圧スイッチング素子3Aを設けたが、ガス処理ユニット1のグループごとに設けてもよい。グループごとの方が、電圧スイッチング素子3Aの数が少なくなり、低コスト化の上では有利である。
【0033】
放電時にガス流を完全に止めたが、放電に触れている時に吸着剤に流れるガス流量を、放電に触れていない時の流量より少なくするものでもよい。ガス流量をどの程度少なくするとNOxの発生を低減できるかについて考察する。ここで、放電に触れていない時のガス流量に対する放電に触れている時のガス流量の比率をXとする。Xは1未満で0以上の実数である。前にも説明したように、NOx濃度が高くなるとNOxが分解する反応が無視できなくなる。NOx濃度が小さくNOxが分解する反応が無視できる場合は、NOxの発生量はガス流量によらず同じになる。従って、ガス流量をX倍にすると、ガス中のNOx濃度は1/X倍となる。ガス中のNOx濃度が高くなるとNOxの分解反応が無視できなくなり、ガス中のNOx濃度が1/X倍よりも小さくなる。ガス中のNOx濃度が1/X倍よりも小さくなる場合に、NOxの発生を低減できるという効果が得られる。
バルブ5Aではなく開口と開口を塞ぐ部材による機構などでもよく、放電に触れている吸着剤に流れるガスの流量を十分に少なくできるものであれば、流量調整機構はどのようなものでもよい。流量調整機構は、ガス処理ユニット1ごとに備えるようにしてもよい。
【0034】
NOxの発生を抑えるには放電時に窒素を含む処理対象ガスの供給を止めるか少なくするという対策でも十分な効果が得られるが、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスや酸素ガスを放電中のガス処理ユニット1に供給すればさらにNOxの発生を低減できる。特に酸素ガスを流す場合は、酸素原子やオゾンがより多く発生することになり、VOCの分解効率をさらに向上させることができる。NOxを低減させる目的で、放電中のガス処理ユニット1に供給する所定の成分を所定の濃度に配合したガスを特別配合ガスと呼ぶ。酸素ガスなど1種類の成分の場合も、特別配合ガスと呼ぶ。特別配合ガスを回収して再利用するようにしてもよい。
【0035】
この実施の形態1では、疎水性ゼオライトを吸着剤として使用したが、疎水性とすることにより処理対象ガス中に水分が多い場合でも、VOCを吸着できるという効果が有る。事前に処理対象ガスを乾燥させるなどの前処理を行う場合であれば、疎水性の吸着剤でなくてもよい。疎水性ゼオライトを球状としたが、処理対象ガスを通すことができ、電極の間に配置できるものであれば、吸着剤はどのような形状であってもよい。吸着剤としては、ゼオライト以外でも、メソボーラスシリケート、脱アルミニウムフォージャサイト、高シリカペンタシルゼオライト、シリカゲルなどの高シリカ吸着剤であってもよいし、他の種類の吸着剤でもよい。VOCを吸着できかつ脱着できるものであれば、吸着剤はどのようなものでもよい。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
【0036】
実施の形態2
この実施の形態2は、ガス処理ユニット1の内部の電極構成を変更したものである。この実施の形態2でのガス処理ユニット1の構造を説明する図を、図9に示す。図9(a)に横断面図を、図9(b)に縦断面図をそれぞれ示す。接地電極1Aの内面に誘電体膜1Jをコーティングし、球状の疎水性ゼオライトを1列配置して、金属円筒の高圧電極1Dを配置している。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0037】
この実施の形態2では、接地電極1Aに誘電体膜1Jをコーティングしているので、接地電極1Aを水冷することにより誘電体も冷却できる。そのため、誘電体膜1Jの温度を同じ100℃程度にした場合の放電電流密度を、実施の形態1の場合よりも増大させることができ、ガス処理ユニット1をより小型化できる。
この実施の形態2でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。
なお、接地電極1Aの内面に誘電体膜1Jをコーティングする代わりに、誘電体の管の外側に金属を密着させて接地電極1Aを構成してもよい。
【0038】
実施の形態3.
この実施の形態3は、ガス処理ユニット1の内部の電極構成を変更して、高圧電極を冷却するように実施の形態1を変更したものである。この実施の形態3でのガス処理ユニット1の構造を説明する図を図10に示す。図10(a)に横断面図を、図10(b)に縦断面図をそれぞれ示す。なお、図10(a)におけるBB断面が図10(b)であり、図10(b)におけるAA断面が図10(a)である。
【0039】
金属円筒製の高圧電極1Dを内部に冷却水が流すことができる構造としている。高圧電極1Dは2重構造の円筒とし、内側の円筒の一端に冷却水が流れ込む冷却水供給口1Nが有り、冷却水供給口1Nから流れ込んだ冷却水は反対側の端から出て外側の円筒との間の空間を逆に戻って冷却水排出口1Pから出る。高圧電極1Dの外面に誘電体膜1Jをコーティングしている。つまり、誘電体と隣接する電極である高圧電極1Dは、電極冷却機構を備えていることになる。
高圧電極1Dの内面(冷却水が接触する面)は何もコーティングしていないので、高圧電極1Dが冷却水を介して接地とつながることがないように、冷却水は比抵抗10(Ω×m)以上の純水とする。
誘電体膜1Jの外部には、実施の形態2同様に吸着剤1Cである球状の疎水性ゼオライトを1列配置して、金属円筒の接地電極1Aを配置している。接地電極1Aの外側の空洞7Dには冷却水を流さない。
その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0040】
この実施の形態3でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。
この実施の形態3では、高圧電極1Dに誘電体膜1Jをコーティングしているので、高圧電極1Dを水冷することにより誘電体膜1Jも冷却できる。そのため、誘電体膜1Jの温度を実施の形態1の場合と同じ100℃程度にした場合に、接地電極1Aを冷却する実施の形態1の場合よりも、接地電極1Aと高圧電極1Dの間にある放電空間の温度を高くできる。つまり、放電電流密度を高くして放電空間の温度が高くなっても誘電体1Jの温度は100℃程度に維持できる。放電電流密度を高くできるので、同じ出力の場合には、ガス処理ユニット1をより小型化できる。なお、誘電体膜1Jを接地電極1Aにコーティングするなど、接地電極1Aに隣接して誘電体がある場合は、接地電極1Aの方を冷却した方が放電電流密度を高くできる。高圧電極1Dと接地電極1Aの両方を冷却してやれば、さらに放電電流密度を高くできる。
【0041】
なお、高圧電極1Dの冷却水が接触するすべての面に絶縁膜をコーティングすることにより、純水を使う必要がなくなり、通常の水道水もしくは工業用水を用いて冷却することができる。
以上のことは、電極を冷却する他の実施の形態でもあてはまる。
【0042】
実施の形態4.
この実施の形態4は、実施の形態3での誘電体膜の代わりにガラス管を用いるように実施の形態3を変更したものである。この実施の形態4でのガス処理ユニット1の構造を説明する図を図11に示す。図11(a)に横断面図を、図11(b)に縦断面図をそれぞれ示す。なお、図11(a)におけるBB断面が図11(b)であり、図11(b)におけるAA断面が図11(a)である。
高圧電極1Dの構造は、実施の形態3の場合とほぼ同様である。ただし、高圧電極1Dの外面には誘電体膜をコーティングしていない。高圧電極1Dの外側にはガラス管1Bを配置し、ガラス管1Bと高圧電極1Dとを電気的及び熱的に結合する給電層1Qをガラス管1Bと高圧電極1Dの間に設ける。なお、ガラス管1Bと高圧電極1Dの間の電気的結合が不十分であると、高圧電極1Dとガラス管1Bの間で異常放電が発生する。熱的結合が不十分であるとガラス管1Bが十分に冷却できない。給電層1Qは、そのような事態が発生しないようにするためのものである。
その他の構成は、実施の形態3と同じである。
【0043】
給電層1Qの構造の例をいくつか示す図を、図12に示す。図12(a)にはスチールウール1Q1を使用した場合を、図12(b)にはバネ性をもつ金属メッシュ1Q2を使用した場合を、図12(c)にはスチールウール1Q1の上からバネ性をもつ金属メッシュ1Q2を巻いた場合を、図12(d)には形状記憶合金1Q3を使用した場合を、それぞれ示す。何れの場合も、給電層1Qを高圧電極1Dの外面に装着してから、給電層1Qを装着した高圧電極1Dをガラス管1Bに挿入する。
電気的及び熱的な結合を高める上では給電層1Qが薄い方が望ましい。給電層1Qを装着した高圧電極1Dをガラス管1Bに挿入するためには、給電層1Qは所定の柔軟性も持ちかつ所定の厚さが必要である。給電層1Qの材質などにもよるが、給電層1Qの厚みは0.5mm程度以上であることが望ましい。
【0044】
スチールウール1Q1を使用する場合は、必要な柔軟性が得られる線直径とし、必要な熱伝導度が得られる容積率とする。金属メッシュ1Q2を使用する場合も、その線直径は必要な柔軟性から決める。また、熱伝導の観点からメッシュの密度が決まる。形状記憶合金1Q3を使用する場合も、同様の観点から諸特性を決める。
給電層1Qは、所定の導電性および熱伝導特性を有するものであれば良く、導電性グリース、導電性接着剤、導電性パテ、導電性粘土、導電性高分子、金属板等でも代用できる。スチールウールではなく、より熱伝導率が高い銅やアルミニウムを編みこんだ給電層1Qとしてもよい。さらに、導電性を増すために、ガラス管1Bの内面に、ニッケルや、アルミや、クロム、金などのメッキなどにより導電層を設けるようにするなどしてもよい。
【0045】
この実施の形態においても、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発を低減できる。
誘電体としてガラス管1Bを使用することにより、高圧電極1Aに誘電体膜1Jをコーティングする手間を省くことができ、コストを低減できる。
給電層1Qを備えることにより、ガラス管1Bの温度を実施の形態1と同じ100℃程度にした場合の放電電流密度を、実施の形態1の場合よりも増大させることができ、ガス処理ユニット1をより小型化できる。
なお、ガラス管ではなくセラミックなどの管を誘電体として使用してもよい。ガラス管のような固体の誘電体を使用して、電極との間に隙間が発生する可能性がある場合は、隙間が発生しないように電気的及び熱的に誘電体と電極とを結合する給電層を備えることにより、安定に放電を発生させ、冷却効率を維持できる。
【0046】
この実施の形態での電極構成は、高圧電極が内側に接地電極が外側にあり高圧電極のすぐ外側に固体の誘電体を配置する場合であるが、接地電極に内接して誘電体を配置する場合や、高圧電極と接地電極を入れ替えた電極構成で高圧電極の内側または接地電極の外側に誘電体を配置する場合にも、誘電体と電極の間に給電層を備える構成には同様の効果が有る。さらには、角柱状や平面状の電極の場合でも、誘電体と電極の間に給電層を備える構成により同様の効果が得られる。
図13は、高圧電極1Dの縦断面図を示した図である。ガラス横断面の入口部に炭化珪素(SiC)や、シリコン(Si)系ゴムなどの絶縁層1Rを設けることにより、沿面放電による絶縁破壊を防ぎ、信頼性を高めることができる。
以上のことは、給電層を有する他の実施の形態でもあてはまる。
【0047】
実施の形態5.
この実施の形態5は、ガス処理ユニット1の内部にある吸着剤の構成を変更したものである。この実施の形態5でのガス処理ユニット1の構造を説明する図を、図14に示す。図14(a)に横断面図を、図14(b)に縦断面図をそれぞれ示す。吸着剤1Cは、突起がある弾力性を持つ平板を円筒状に丸めた構造である。吸着剤1Cは、平板及び突起の表面にVOCを吸着する成分を付加している。図14(a)から分かるように、吸着剤1Cの突起がガラス管1Bを支持する部材を兼ねている。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0048】
この実施の形態5でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。
【0049】
実施の形態6.
この実施の形態6も、実施の形態5と同様に、ガス処理ユニット1の内部にある吸着剤の構成を変更したものである。この実施の形態6でのガス処理ユニット1の構造を説明する図を、図15に示す。図15(a)に横断面図を、図15(b)に縦断面図をそれぞれ示す。図15に示すように、吸着剤1Cは、中心部分が欠けた円柱(ドーナツ状)である。円柱の縦方向にハニカム(蜂の巣)状にガス通路を構成した吸着剤1Cを、接地電極1Aとガラス管1Bの間に配設している。ガス通路は、図15(b)において矢印で示すガスの流れる方向と平行である。ここで、小さい断面積の管を多数集積したような構造をハニカム状と呼ぶことにする。このハニカム状の吸着剤1Cがガラス管1Bを支持する部材を兼ねている。ガス通路に対して垂直に電極が配置され、放電もガス通路に対してほぼ垂直に発生する。その他の構成は実施の形態1と同じである。
このような形状の吸着剤1Cは、疎水性ゼオライトを円筒状に成形後に中心部分に穴をあけて成形するか、薄いガス通路を有するシート状の疎水性ゼオライトを巻いて重ねて成形する。シートを巻く方が安価に成形できる場合が多い。
【0050】
この実施の形態6でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。
吸着剤1Cを誘電体とすれば、ガス通路の壁面に対して垂直に放電が発生するので、誘電体であるガラス管1Bと同様に、吸着剤1Cが放電を安定させる効果を発揮する。なお、吸着剤1Cの絶縁耐力はそれほど大きくないので、ガラス管1Bなどの誘電体が電極間にある方が装置の信頼性は高くなる。
【0051】
吸着剤1Cに垂直でなくても交差する方向に電極を配置して電極間で放電が発生すれば、吸着剤1Cが放電の安定化に寄与するという効果が有る。吸着剤1Cはドーナツ状でなくても四角やその他の形状でもよい。同様に電極も円筒状でなくても平板であってもよい。吸着剤1Cのガス通路の壁面と交差する方向に高電圧を印加できるように電極を配置していれば、どのような構造でもよい。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
【0052】
実施の形態7.
この実施の形態7も、ガス処理ユニット1の内部にある吸着剤1Cの構成の変更を実施の形態1に対して行ったものである。この実施の形態7でのガス処理ユニット1の構造を説明する図を、図16に示す。
図16(a)に横断面図を、図16(b)に縦断面図をそれぞれ示す。図16に示すように、吸着剤1Cは、多数の細かい孔ができるように疎水性ゼオライトを焼結した中心部分が欠けた高さ5〜100mm程度の円柱(ドーナツ状)である。円柱の縦方向にガス通路を構成した吸着剤1Cを、接地電極1Aとガラス管1Bの間に重ねて配設している。ドーナツの内径と外径は、ガラス管1Bと接地電極1Aの間でできるだけ隙間なく挿入できる大きさとする。吸着剤1Cの高さは、低い方が製造しやすく歩留まりが高くなるが、扱い易さという点では高い方がよい。
【0053】
圧力損失が所定値以下となり必要なVOCの吸着能力を有するように、吸着剤1Cの孔の直径と気孔率を決める。例えば、吸着剤1Cの厚みを5mm、風速1m/秒での圧力損失を50Pa(=約0.0005気圧)以下にするには、孔の直径を0.01〜1mm程度とし、気孔率が5〜80%程度に望ましくは10〜40%程度になるようにする。なお、圧力損失を低減する上では孔の直径は大きく気孔率は高い方が望ましいが、VOCを吸着する上では孔の直径は小さく気孔率は低いほうが望ましい。孔の直径が大きくなると孔の数が少なくなり、孔の総表面積も減少する。VOCを吸着する上では、孔の総表面積が大きい方が有利である。気孔率が大きくなると単位体積あたりの吸着剤1Cの量が減少して、単位体積あたりに吸着できるVOCの量が少なくなる。
その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0054】
吸着剤1Cは、疎水性ゼオライトの粉末にウレタンなどの物質を混合して形成したものを、炉に入れて焼結させて製作する。炉で焼結する際にウレタンなどが燃えてその後に孔ができる。ウレタンなどの混合する物の大きさと混合する比率を調整することにより、所定の直径で所定の気孔率である吸着剤1Cを容易に安価に製作することができる。
このような形状の吸着剤1Cは、疎水性ゼオライトが好ましいが、天然ゼオライト、ゼオライト以外でも、メソポーラスシリケート、脱アルミニウムフォージャサイト、高シリカペンタシルゼオライト、シリカゲルなどの高シリカ吸着剤の中から一つもしくは複数を配合し焼結したものを用いても、同様の効果が得られる。吸着剤の焼結時に酸化分解の触媒作用がある白金、金、二酸化チタン、二酸化マンガンなどの金属を配合しても良い。
【0055】
この実施の形態7でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。
吸着剤1Cを誘電体としているので、吸着剤1Cと交差するように放電が発生すると、誘電体であるガラス管1Bと同様に、吸着剤1Cが放電を安定させる効果を発揮する。
吸着剤1Cを焼結して製造しているので、安価に製造できるという効果も有る。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
【0056】
実施の形態8.
この実施の形態8は、誘電体であるガラス管1Bを無くするように、実施の形態6を変更した実施の形態である。この実施の形態8でのガス処理ユニット1の構造を説明する図を、図17に示す。図17(a)に横断面図を、図17(b)に縦断面図をそれぞれ示す。図17に示すように、吸着剤1Cは、中心部分が欠けた円柱(ドーナツ状)である。円柱の縦方向にハニカム状にガス通路を構成した吸着剤1Cを、接地電極1Aと高圧電極1Dの間に配設している。このハニカムを有する吸着剤1Cが高圧電極1Dを支持する部材を兼ねている。ガス通路に対して垂直に電極が配置され、放電もガス通路に対してほぼ垂直に発生する。その他の構成は実施の形態1と同じである。
このような形状の吸着剤1Cは、実施の形態6と同様にして成形する。
【0057】
この実施の形態8でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。ガラス管1Bなどの誘電体部品が無く、実施の形態6よりも構造が簡単であり、より安価に製作できる。吸着剤1Cが誘電体であるため、この実施の形態8でも安定した放電を発生させることができるという効果がある。なお、吸着剤1Cの絶縁耐力はそれほど高くないので、装置の信頼性は電極間に吸着剤1C以外の誘電体を配置する場合よりも低くなる。電流密度が小さい場合など装置の信頼性がそれほど高くなくてもよい場合に、この実施の形態8を適用する。
【0058】
実施の形態9.
この実施の形態9は、ガス処理ユニット1を縦置きにした場合である。この実施の形態9でのガス処理ユニット1の構造を説明する図を、図18に示す。図18(a)に水平な平面での横断面図を、図18(b)に垂直な平面での縦断面図をそれぞれ示す。図18は、実施の形態1での図3を、ヒューズ1Fが上になるように90度回転させている。VOC処理装置全体も、図は示さないが、同様に90度回転している。その他の構成は実施の形態1と同じである。
【0059】
この実施の形態9でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。粒状の吸着剤を使用する場合は、縦置きの方が吸着剤を封入しやすいという特徴が有る。
この実施の形態9は実施の形態1を元にしたが、ガス処理ユニット1を縦置きにすることは他の実施の形態でも適用できる。
【0060】
実施の形態10.
この実施の形態10は、ガス処理ユニットを縦置きにして、高圧電極1Dをヒートパイプにより冷却するように実施形態3を変更したものである。縦置きというのは、高圧電極1Dなどが地面に対して垂直な方向になるように配置することを意味する。このガス処理ユニット1の構造を説明する図を、図19に示す。図19(a)に水平な平面での横断面図を、図19(b)に垂直な平面での縦断面図をそれぞれ示す。なお、図19(a)は図19(b)のAA断面に対応し、図19(b)は図19(a)のBB断面に対応する。
【0061】
ここで、高圧電極1Dに用いている電極冷却機構であるヒートパイプ14を説明する。ヒートパイプ14は高圧電極1Dである銅製の管の下端を閉じて、管の内部に冷媒14Aを封じこめ、上部に放熱のための放熱板14Bを備えたものである。冷媒14Aとしては、水が主に使われる。水を使用する理由は、地球温暖化係数がゼロで安価だからである。
放熱板14Bは、薄いアルミ板を所定の間隔で重ね合わせたものである。高圧電極1Dの上端で高圧導線1Eに接続され、放熱板14B全体に高電圧が印加される。放熱板14Bの厚みとその間隔は、必要となる冷却能力が得られる表面積が使用可能なスペースで得られるように決める。
ヒートパイプ14は冷媒14Aの蒸発潜熱により、放電により生じた熱を高圧電極1Dおよび誘電体膜1Jから取り去る。蒸発した冷媒蒸気は、放熱板14Bで熱を奪われて冷却されて凝縮し再び冷媒液となる。
【0062】
この実施の形態においても、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。
高圧電極1Dおよび誘電体膜1Jを効率的に冷却して、放電電流密度の増大ひいてはガス処理ユニット1をより小型化できるという効果は、実施の形態3と同様である。さらに、ヒートパイプ14を使うことにより、純水の管理が不要のためメンテナンスが容易になる。また、冷却水を循環させる必要がなくなるため、冷却水を循環させるためのポンプが不要になり、運転コストが低減できる。
【0063】
ヒートパイプ14を高圧電極1Dとして用いた場合、放熱板14Bにも高電圧が印加されており、放熱板14Bから異常放電が発生する可能性が有る。これを避けるために、冷却効率が少し低下しても良い場合には、放熱板14Bに絶縁物を使用する、もしくは、絶縁層をコーティングする。もしくは、図20に示すように、高圧電極1Dとヒートパイプ14の上部との接続をガラス、セラミック、エポキシなどの絶縁物1Sで行うことにより、安全なガス処理ユニットの設計が可能になる。高圧電極1Dが腐食性ガスにさらされる場合には、銅管の上にステンレスで被覆して、銅管の腐食を防止する。なお、高圧電極1Dは、導電率及び熱伝導率が必要な程度に高いものであれば、銅製でなくてもよい。
【0064】
ヒートパイプ内に封じ込める冷媒は水以外でも、冷却効率がよく地球温暖化係数が小さいものであればよい。
誘電体膜1Jの代わりに、実施の形態4に示すようなガラス管などの固体の誘電体を用いた場合でも同様の効果を得ることができる。
高圧電極にヒートパイプを適用して冷却したが、接地電極にヒートパイプを適用して冷却してもよい。高圧電極と接地電極の両方をヒートパイプにより冷却してもよい。
以上のことは、ヒートパイプを用いる他の実施の形態でもあてはまる。
【0065】
実施の形態11.
この実施の形態11は、平板状の電極を使用するように構成したものである。この実施の形態11でのVOC処理装置の構造を説明する図を、図21に示す。図21(a)に縦断面図を、図21(b)に横断面図を、図21(c)に別の位置での横断面図をそれぞれ示す。なお、図21(b)におけるAA断面が図21(a)に対応し、図21(a)におけるBB断面が図21(b)に対応し、図21(b)におけるCC断面が図21(c)に対応する。
図21では4個のガス処理ユニット1が有る。1個のガス処理ユニット1は、高さ2cm弱で、幅と奥行きは数10cm程度である。図21では、構造を説明するために高さ方向に拡大して表現している。
【0066】
ガス処理ユニット1は上下に面状の冷却水通路7Jで挟まれている。冷却水は図21(a)では表示されない上方右側の手前にある冷却水供給口7Gから入り、冷却水通路7Jを通って、上方左側の奥にある冷却水排出口7Hから出て行く。2個の隔壁7Eが有り、冷却水通路7Jは、図21(a)における左右に1往復半することになる。図21(b)に示すように、BB断面の位置では1個の隔壁7Eと貫通穴7Fが有る。
フィルター4を通った処理対象ガスは、右側面にある吸気口7Aから容器7の内部に入り、ガス処理ユニット1の内部を通過して、左側面の排気口7Bから排気される。排気口7Bのすぐ手前には排気ファン6が有る。
【0067】
ガス処理ユニット1は、上下の面に接地電極1Aが有り、中央にセラミックなどの誘電体膜1Jを外面に被覆した高圧電極1Dが有る。高圧電極1Dと上下の接地電極1Aの間には粒状の疎水性ゼオライトである吸着剤1Cが有る。容器7の内側側面との間で放電が発生することがないように、容器7の内側側面には絶縁体7Kが有る。高圧電極1Dと接地電極1Aの間隔は5mm程度とし、高圧電極1Dに20kV程度の交流の電圧を印加する。
高圧電極1Dは、高圧導線1Eとヒューズ1Fを介して電圧スイッチング素子3Aに接続し、電圧スイッチング素子3Aのもう一端に接続する高圧導線1Hは、容器7の排気側の上部に有る高圧線導入口7Cから容器7の外部に出て、高電圧発生装置2に接続する。
【0068】
ガス処理ユニット1の排気側には、図21(c)に示すように、所定の数(この実施の形態11では8個)の長方形の排気口1Kが、排気口1Kの幅よりも僅かに大きい間隔で有る。排気口1Kの排気側には排気口1Kを開閉する遮蔽板1Lが有る。遮蔽板1Lは排気口1Kと同じ大きさで1個少ない数の開口を有する板で、遮蔽板1Lが左右に移動することにより、ガス処理ユニット1のすべての排気口1Kが同時に開閉する。図21(c)では、一番上のガス処理ユニット1の排気口1Kが閉じられており、それ以外のガス処理ユニット1の排気口1Kは開いている。図21では図示しない流量調整機構5が、遮蔽板1Lの移動を制御する。
この実施の形態11での動作状態Aは、排気口1Kが開き高圧電極1Dに高電圧が印加されていない状態とする。そして、動作状態Bは、排気口1Kが閉じられて高圧電極1Dに高電圧が印加されて放電している状態とする。
【0069】
次に動作を説明する。4個のガス処理ユニット1は、1個ずつ順番に動作状態Bを取り、その他のガス処理ユニット1は動作状態Aであるように、電圧スイッチング制御装置3と流量調整機構5により制御される。図21では、一番上のガス処理ユニット1が動作状態Bである場合を示す。
【0070】
この実施の形態11でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。
この実施の形態11では、複数の積層したガス処理ユニット1を1個の容器7の中に収納したので、より安価に実用的な装置とすることができる。なお、1個のガス処理ユニット1ごとに容器7と処理対象ガス及び冷却水の配管を備えるようにしてもよい。
以上のことは、同様な構成を持つ他の実施の形態でもあてはまる。
【0071】
実施の形態12.
この実施の形態12は、平板状の電極とハニカム状の吸着剤を使用するように構成したものである。この実施の形態12でのVOC処理装置の構造を説明する図を、図22に示す。図22(a)に縦断面図を、図22(b)に横断面図を、図22(c)に別の位置での横断面図をそれぞれ示す。なお、図22(b)におけるAA断面が図22(a)に対応し、図22(a)におけるBB断面が図22(b)に対応し、図22(b)におけるCC断面が図22(c)に対応する。
吸着剤1Cをハニカム状の疎水性ゼオライトとしている。ハニカム状のガス通路の壁面とほぼ直角に放電が発生する。その他の構造は、実施の形態11と同じである。
【0072】
この実施の形態12でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。ハニカム状の吸着剤を使用しているので、ガス流を流す際の圧力損失が小さくなり、より実用的なVOC処理装置となる。
【0073】
実施の形態13.
これまでの実施の形態ではガス流方向に直角に放電を発生させたが、この実施の形態13は、ガス流方向に平行に放電を発生するように構成した場合である。この実施の形態13でのVOC処理装置の構造を説明する図を、図23に示す。図23(a)に横断面図を、図23(b)に縦断面図をそれぞれ示す。なお、図23(b)におけるAA断面が図23(a)に対応し、図23(a)におけるBB断面が図23(b)に対応する。ただし、図23(b)では容器7の内部だけを断面図とする。
横長の長方形の断面を有するガス処理ユニット1を収容した4個の容器7を、縦に4個重ねて配置している。各容器7にはそれぞれ処理対象ガスの供給配管8と排気配管9が接続する。排気配管9の手前には、バルブ5Aが有る。図における右から左に、ガスは流れる。供給配管8は、処理対象ガスの吸入口では1本だが、各ガス処理ユニット1に向けて分岐し、各ガス処理ユニット1からの排気配管9は1本に合流する。排気口7Bの手前に排気ファン6を配置する。
【0074】
ガス処理ユニット1では、排気側にメッシュ状の接地電極1Aが有り、ハニカム状の吸着剤1Cを間に挟んで線状もしくは棒状の高圧電極1Dを配置する。接地電極1Aはセラミックなどの誘電体膜1Jを被覆しておく。吸着剤1Cの厚さは、印加する高電圧で放電を発生するのに適切な厚さとする。高圧電極1Dは、吸気側から高圧導線1Eと、ヒューズ1F、電圧スイッチング素子3A及び高圧導線1Hを介して、交流の高電圧を発生する高電圧発生装置2と接続する。不要な放電が発生しないようにするために、容器7の内側の側面には所定の幅で絶縁体7Kを付加している。
バルブ5Aの開閉を流量調整機構5が制御し、電圧スイッチング素子3Aを電圧スイッチング制御装置3が制御し、1個のガス処理ユニット1が順番に動作状態Bを取り、その他のガス処理ユニット1は動作状態Aを取る。
【0075】
この実施の形態13でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。
ガス流方向に放電を発生させるので、ガスが流れることができるように、電極はメッシュ状または線状または棒状とした。メッシュ状ではなくても、必要な大きさの穴を設けた板や、間隔を空けて並べた複数の線状または棒状の電極などでもよく、ガス流を流すことができ放電を発生させることができれば、電極の形状はどのようでもよい。
【0076】
接地電極1Aに誘電体膜1Jを被覆して交流電圧を印加するので、電力密度が高い放電を安定して発生させることができ、コンパクトなVOC処理装置とすることができる。高圧電極1Dの方を誘電体で被覆してもよい。高圧電極と接地電極の間に誘電体を適切に配置すれば、放電の電力密度を高くしてVOC処理装置をコンパクトにできる。
放電の電力密度をそれほど高くする必要がない場合は、高圧電極と接地電極の間に誘電体を配置しなくてもよい。その場合には、接地電極をメッシュなどの面状とし、高圧電極を線状として、高圧電極に負の高電圧を印加した場合に、安定な放電が得られやすい。
以上のことは、同様な構成を持つ他の実施の形態でもあてはまる。
【0077】
実施の形態14.
この実施の形態14は、ガス流方向に平行に放電を発生する構成において、ヒートパイプで冷却する円筒型高圧電極と金属メッシュ(金網)またはパンチングメタル(孔あき金属板)による接地電極を用いた場合のものである。この実施の形態14でのVOC処理装置の構成を説明する図を、図24〜図27に示す。図24はシステム全体図であり、図25はガス処理ユニット1の内部の縦断面図であり、図26はガス処理ユニット1の内部の電極配置を示す横断面図であり、図27はVOC処理装置の電極の構造を説明する縦断面図である。なお、図26におけるBB断面が図27に対応し、図27のAA断面が図26に対応する。
【0078】
図24では、密閉可能な隔室を有する4塔のガス処理ユニット1で1つのVOC処理装置を構成している。VOC処理装置は、処理対象ガスを排気用ファン6で吸い込み、ごみや塗料カスなどをフィルター4で除去する。図における上から3塔のガス処理ユニット1は、入口側バルブ5Aと出口側バルブ11Dの両方を開いて、処理対象ガスを吸着剤に吸着して空気の浄化を行っている。また、最下段の1塔のガス処理ユニット1は、入口側バルブ5Aと出口側バルブ11Dを閉じて密閉され、高圧電源2から電圧スイッチング素子3Aを通して高電圧が印加されて、放電による脱着処理が行われている。
【0079】
ガス処理ユニット1の内部の縦断面図を、図25に示す。図25に示すガス処理ユニット1は、バルブ5Aと11Dが閉じて放電を行っている放電再生モードである。ガラス管1Bの温度が上昇しすぎることなく100℃付近に保って運転するために、高圧電極1Dと兼用するヒートパイプ14で冷却を行っている。ヒートパイプ14は、図27に示すように実施の形態10の場合と同様な構成である。
ガス処理ユニット1は処理対象ガスを通す四角い筒状の金属製の構造部材1Tと、処理対象ガスの流れと交差する向きの最も外側の接地電極1Aの外側に所定の数の柱1Uを備える。構造部材1Tは供給配管8及び排気配管9と接続され、ガスが外部に漏れない隔室を構成する。構造部材1Tは所定の厚さの鋼板であり、外側の所定の個所に強度を高めるための補強リブを設ける。四角い筒状の構造部材1Tの上面と下面にはガラス管1Bを1個ずつ挿入する穴を設けておく。この穴にガラス管1Bを挿入して、所定の位置に固定する。柱1Uは、吸着剤1Cの荷重が加わる最も外側の接地電極1Aを支え、構造部材1Tの上面と下面とを接続してより頑丈にするものである。柱1Uはガスの流れをできるだけ妨げないように、ガス流に平行な接地電極1Aがある位置に配置する。
【0080】
構造部材1Tの上面と下面の内側には絶縁物1Vを設置して、構造部材1Tと高圧電極1Aとの間で放電が発生しないようにする。絶縁物1Vにもガラス管1Bを通す穴を設けるが、絶縁物1Vの穴とガラス管1Bの間には気密性を持たせる構造として、処理対象ガスが漏れないようにする。
さらに、放熱板14Bに冷却ファン15Aで強制的に風をあててヒートパイプ14を冷却している。冷却ファン15Aによる空気の流れが安定する通風路を形成するように、放熱板15Aの周囲を筒状の送風ガイド15Bで囲っている。冷却ファン15Aにより外部の塵や埃を吸い込まないために、通風路の入口と出口にはフィルター15Cを設ける。通風路となる筒状の送風ガイド15Bは、構造部材1Tの上に設けている。なお、放熱板14Bと外気との自然な熱交換でガラス管1Bが適切に冷却することが可能であれば、冷却ファン15A、送風ガイド15B、フィルター15Cは不要である。
【0081】
図26に、1個のガス処理ユニット1の内部での電極配置を示す。図26では、各列7個で4列の高圧電極1Dが有る。高圧電極1Dの図における縦方向の位置は、隣接する列での位置の中間になるように配置している。このように配置する理由は、高圧電極1Dの部分には処理対象ガスが通れないため、処理対象ガスが放電空間内にできるだけ一様に流れるようにするためである。なお、1列の高圧電極1Dの個数と列の数は、何個でもよい。
図27に、高圧電極1D及びその周囲の構成を説明する縦断面図を示す。高圧電極1Dは内部に冷媒として水を封入した円筒である。高圧電極1Dの外側にガラス管1Bを同心円状に設置し、高圧電極1Dとガラス管1Bと間には電気的及び熱的な伝導性がよい柔軟性のある金属などによる給電層1Qを設けている。高圧電極1Dの上部に所定の数の放熱板14Bを設けている。放熱板14Bは、図26に示す全4列の高圧電極14Dを冷却するヒートパイプ14で共用される。ここで、図27などの縦断面図では煩雑さを避けるために、送風ガイド15Bなどは図示していない。高圧電極1D及び放熱板14Bには高電圧が印加されるので、送風ガイド15Bなどとの間に放電が発生しないようにする適切な部材を配置するが、それらも図示していない。なお、図20に示すように放熱板14Bに高電圧が印加されないようにしておけば、送風ガイド15Bなどとの間に放電が発生しないようにする部材は不要である。
【0082】
接地電極1Aは、各高圧電極1Dを四角く囲むように配置する。接地電極1Aと各ガラス管1Bとの最短距離すなわち放電ギャップ長が5〜20mmの範囲にある所定の値で均一になるように、接地電極1Aを設置する。放電ギャップが短いと印加電圧が小さくてよいという利点があり、放電ギャップが長いと印加電圧を高くする必要は有るが電極の数を少なくできるという利点がある。放電ギャップは、実現すべき性能値やコストや必ず守る必要がある制約などの諸条件を考慮して総合的に決める。
吸着剤1Cは粒状であり、最も外側の接地電極1Aで囲まれる範囲内に充填される。
【0083】
接地電極1Aには処理対象ガスの流れと交差する向きの部分もあるので、接地電極1Aは、処理対象ガスが流れやすいように金属メッシュ、もしくはパンチングメタルで構成する。最も外側以外の接地電極1Aでは、金属メッシュでの網の目の大きさ及びパンチングメタルの孔径は、吸着剤1Cが容易に通り抜けることができる大きさとする。例えば、粒状である吸着剤1Cの直径の1.5倍程度以上とする。放電を効率的に発生させるために、孔径は6mm程度以下とする。その理由は、放電は直径1〜4mm程度の柱状で発生し、直径3mm程度のものが最も多いことが知られているからである。孔径が6mm程度であれば孔が有ることによる放電柱の数の減少が10%程度に抑えられる。以上のことから、粒径2mmの球状吸着剤を使用する場合には、接地電極1Aの孔径は3mm程度以上、望ましくは3〜6mm程度とする。粒径3mmのペレット型においては、孔径4.5mm程度以上、望ましくは、4.5〜6mm程度とする。なお、処理対象ガスの流れと交差する向きの最も外側の接地電極1Aでは、粒状の吸着剤1Cが漏れ出ることがないように、金属メッシュでの網の目の大きさ及びパンチングメタルの孔径は、吸着剤1Cの直径未満とする。処理対象ガスの流れと平行な向きの最も外側の接地電極1Aは、吸着剤1Cが漏れないように穴を設けない。
その他の構造については、実施の形態13と同様である。
【0084】
動作については、実施の形態13と同様である。水平な面における接地電極1Aの断面が四角形であり高圧電極1Dの断面が円形であるため水平な面での放電密度が一様ではないが、電極間のギャップが長くなる四角形の接地電極1Aの角に近い部分の吸着剤1Cも必要な程度に脱着できるように、放電時間を調整する。
この実施の形態においても、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。接地電極1Aの孔径が、吸着剤1Cの直径よりも十分に大きくすることにより、吸着剤1Cを詰める時に、上部1箇所から吸着剤を入れてもガス処理ユニット1の内部の最も外側の接地電極1Aで囲まれた放電空間の全体に吸着剤1Cが広がるため、組立てが容易になる。
なお、放電空間内部の接地電極1Aがすべて同じ孔径の孔を有する必要はない。例えば図26における水平方向にある接地電極1Aでは、孔の数を少なくしたり、孔の径を小さくしたり、さらには孔を無くしたりしてもよい。その理由は、この接地電極1Aは、処理対象ガスが流れる方向と平行なので、孔がなくても処理対象ガスを流すことができるからである。
【0085】
接地電極1Aの断面を正六角形にすると、高圧電極1Dと接地電極1Aとの間の距離の変化が四角形の場合よりも小さくなり、かつデッドスペース(高圧電極1Dと接地電極1Aの間にない部分のこと)も少なくなる。デッドスペースが発生することも許容すれば、正八角形などとしてもよい。
なお、高圧電極1Dを円柱状としたが、角に所定の丸みを持たせた四角柱状としてもよい。高圧電極1Dを四角柱状にすれば、高圧電極1Dと接地電極1Aとの間の距離の変動を小さくできる。四角柱の角に丸みを持たせる理由は、放電が角に集中しないようにするためである。必ずしも角に丸みを持たせなくてもよい。
【0086】
さらに、吸着剤1Cが吸着するVOCの量を考慮することにより放電電力を節約することも可能である。図28に、処理対象ガス中のVOCを完全には吸着できなくなり、ガス処理ユニット1から出る処理済ガス中にガス処理ユニット1の入口でのVOC濃度の例えば10%のVOCが残存する時点での吸着剤1CのVOC吸着量を説明する図を示す。
図28(a)に処理対象ガスの入口からの距離を説明する概念図を示す。図28(b)にガス処理ユニット1の入口からの距離による吸着剤1CのVOC吸着量の変化を示す。ここでの距離は、吸着剤の全長に対する比率である相対距離で表現する。図28(b)では縦軸は、吸着剤1Cの吸着可能なVOCの量に対して実際に吸着した量が何%かを意味する吸着済率を示す。
図28(a)ではガス流に垂直に放電を発生させる場合で示しているが、本実施の形態のようにガス流に平行に放電を発生させる場合でもガス処理ユニット1の入口からの距離による吸着剤1Cの吸着済率の変化は、図28(b)のようになる。
【0087】
図28(b)に示すように、ガス処理ユニット1で入口に近い部分から全長のほぼ半分程度までは吸着剤1CはVOCを100%吸着している。全長のほぼ半分よりも下流では吸着済率がしだいに減少し、出口に近い部分では10%程度である。
ここで、吸着剤1Cの全長の中央よりも上流側のVOCをほぼ100%吸着した部分を風上部と呼び、下流側のVOCをまだ十分に吸着可能な部分を風下部と呼ぶ。図28(b)では、風上部で平均した吸着済率は100%に近いが、風下部での吸着済率の平均は50%程度である。吸着剤1CからVOCを脱着するために必要なエネルギー量は、吸着したVOCの量に比例するので、風下部で放電を発生させる時間は風上部の半分程度にする。こうすると、風上部と風下部での放電時間を同じにした場合に風下部で無駄に消費されるエネルギーを節約できることになる。
【0088】
なお、放電時間は同じにして放電エネルギー量を変化させるようにしてもよい。また、図25では風上部と風下部で高圧電極1Dの個数を同じにしたが、風下部では同じ面積内での高圧電極1Dの個数を少なくするように配置してもよい。なお、同じ面積内での高圧電極1Dの個数を変化させると、高圧電極1Dと接地電極1Aの間の最小距離すなわち放電ギャップも変化して放電電圧も変化するので、風上部と風下部とで高圧電源装置を別にする必要が有る。風上部と風下部で放電エネルギー量を変化させる場合も、風上部と風下部とで高圧電源装置を別にする必要が有る。なお、高圧電源装置を複数にすると、装置製造コストが上昇するが、高圧電源装置の個数とその電圧などは、コストと性能を総合的に判断して決める。
ここで、風上部と風下部とが吸着剤1Cの全長のほぼ中央で区分するとしたが、区分する位置は、吸着剤1Cの全長により異なる。吸着剤1Cの全長が長ければ風上部の割合が大きくなる。その理由は、図28(b)の特性を持つVOC処理装置があったとすると、処理済ガスにVOCが残存するかどうかは、VOCをまだ十分に吸着できる吸着剤1Cの量すなわち風下部の長さだけにより決まり、吸着剤1Cの全長を長くすると長くした部分は風上部に入るからである。
【0089】
吸着剤を保持する空間の処理対象ガスが流れる方向での断面積、処理対象ガスが流れる方向での吸着剤の全長、配置する高圧電極の大きさ及び数、高圧電極と接地電極の間の最小距離は、処理すべき処理対象ガスの単位時間当たりの流量、処理対象ガス中のVOC濃度、吸着剤を保持する空間でのガスの通りやすさ、構造強度、吸着と脱着のサイクルの周期、製造コスト及び運転コストなどを総合的に考慮して設計する。例えば、以下のような点を考慮する。処理の周期内で吸着剤が破過しないように、吸着剤の総量を周期及びVOC濃度に見合った値とする必要が有る。吸着剤を保持する空間の断面積とガスの流速は、処理対象ガスの流量から決まる。吸着剤の全長は、脱着を開始する直前でも吸着されないVOCが発生しないように、かつガスの圧力損失が所定の範囲になるように決める。吸着剤を保持する空間の形状を決めて、放電ギャップと高圧電極の大きさと数を決める場合もあれば、放電ギャップを最初に決めてから吸着剤を保持する空間の形状を決める場合もある。
【0090】
処理対象ガスの流れと交差する向きの最も外側の接地電極1Aの外側に柱1Uを設けることにより、充填された吸着剤1Cの重量により最も外側の接地電極1Aが変形したり破損したりする可能性が小さくなる。また、構造部材1Tの上面と下面が連結されるので、構造部材1Tの構造強度も大きくなる。なお、柱1Uは、横梁や斜め梁にしてもよい。
構造部材1Tは金属製としたが、十分な強度が得られる場合は、強化セラミックス、強化プラスチックなどで製作してもよい。絶縁性を有する強化セラミックスまたは強化プラスチックで構造部材を製作する場合は、構造部材が不要な放電を防止するための絶縁物の機能も実現することになる。
柱1Uの太さや数や位置などは、所定の強度が得られ、処理対象ガスの流れをできるだけ妨げないように決める。小型の装置で筒状の構造部材で十分な強度が得られる場合は、処理対象ガスの流れと交差する向きの最も外側の接地電極1Aの外側に構造部材を設けなくてもよい場合が有る。吸着剤1Cを保持する空間の外側の構造部材だけでは強度が十分でない場合は、吸着剤1Cを保持する空間の内部に、放電に影響を与えないように接地電極で囲んだ構造部材を配置してもよい。
ガス処理ユニット1の吸着剤を保持する空間を直方体としたが、多角柱や円筒状や直方体を組合せた形状など直方体以外の形状でもよい。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
【0091】
実施の形態15.
この実施の形態15は、高圧電極1Dを取り囲む接地電極1Aの断面を正八角形にして、接地電極1Aだけで囲まれる四角形の部分に金属製の柱を通すように実施の形態14を変更した場合である。
図29〜図31に、この実施の形態15でのVOC処理装置の構造を説明する図を示す。図29が横断面図であり、図29のBB断面における縦断面図が図30であり、図29のCC断面における縦断面図が図31である。
実施の形態14の場合である図26、図27とは異なる点だけを説明する。高圧電極1Dとそれを囲むガラス管1Bは隣接する列で同じ位置になるように配置し、高圧電極1Dを取り囲む接地電極1Aの断面を正八角形にしている。すると、接地電極1Aで囲まれる四角形の部分が発生するので、この四角形の部分に表面を接地電極1Aとして機能させ、かつガス処理ユニットを構造的に強くする補強部材である柱1Uを設ける。柱1Uは、筒状の構造部材1Tの上面と下面を連結する。柱1Uは高導電性かつ高い熱伝導率を有する金属製とする。構造部材1Tの側面の内側には、穴がない板材の所定の位置に直角二等辺三角形の断面の溝をプレス加工などにより設けた接地電極1Aを溝の底が内部に向くように取り付けて、接地電極1Aの断面を正八角形にする。この接地電極1Aに穴を設けない理由は、接地電極1Aと構造部材1Tの間の空間に吸着剤1Cが入りこまないようにするためである。なお、この空間に入った吸着剤1Cは放電により脱着できないので、無駄になる。
その他の構造は、実施の形態14と同じである。
高圧電極1Dとそれを囲むガラス管1Bは隣接する列で同じ位置に配置されているので、図30では4列の高圧電極1D及びガラス管1Bが断面上にある。処理対象ガスの流れと平行な向きの接地電極1Aに非常に近い断面である図31では、接地電極1Aに穴が設けられており、その穴の向こう側にも吸着剤1Cが充填されていることが分かる。
【0092】
この実施の形態15は、実施の形態14と同様に動作し、同様の効果が有る。さらに、吸着剤を保持する空間の内部に金属製の柱1Uを備えるので、構造体として頑丈なガス処理ユニットを実現することができる。金属製の柱1Uは、放電で発生した熱を構造部材1Tに伝えるので、ガス処理ユニット内部の温度が同じでも放電電流をより大きくできる。また、高圧電極を囲む接地電極の断面を正八角形にしているので、高圧電極と接地電極の間のギャップ長を正方形の場合よりも一定に近くでき、放電をより均等に近く発生させることができる。
柱1Uを接地電極1Aと兼用するようにしたが、導電率がそれほど高くない材料製で柱1Uを製作する場合などは、柱1Uとは別に接地電極1Aを設けるようにしてもよい。
構造部材1Tの側面の内側に設けた接地電極は、1個ずつを構造部材に取り付けてもよい。また、接地電極1Aを板材ではなく断面が直角二等辺三角形の柱材としてもよい。このことは、同様な接地電極を有する他の実施の形態でもあてはまる。
【0093】
実施の形態16.
この実施の形態16は、より強度を増し、組立てを容易にするために、ガスの流れと平行にある側面側の接地電極を構造部材と兼用するように実施の形態15を変更した場合である。
図32に、この実施の形態16でのVOC処理装置の構造を説明する横断面図を示す。実施の形態15の場合である図29とは異なる点だけを説明する。処理対象ガスの流れと平行な向きにある強度を増すための補強部材として、柱1Uではなく板材1Wとしている。板材1Wは、高導電性かつ高い熱伝導率を有する金属製とする。板材1Wの両面にも、構造部材1Tの内側面と同様な形状の接地電極1Aを取り付ける。このような接地電極1Aを設けることにより、高圧電極1Dを囲む接地電極1Aの断面が正八角形になり、放電密度を一様に近くできる。板材1Wの厚さは所定の構造強度が得られる厚さとする。
その他の構造は、実施の形態15と同じである。
【0094】
この実施の形態16は、実施の形態15と同様に動作し、同様の効果が有る。補強部材を柱1Uから板材1Wにしたので、補強部材を構造部材1Tに取り付ける手間が減り、ガス処理ユニットの組立てがより容易になるという効果が有る。
高圧電極1Dを囲む接地電極1Aの断面を正八角形にするための接地電極1Aを取り付けているので、放電が一様に近くなるという効果が有る。なお、板材1Wに接地電極1Aを取り付けなくてもよい。その場合は、放電が一様でない度合いが悪化するが、ガス処理ユニット1の製作コストを低減できるという効果が有る。
ガス処理ユニット1を構造的に補強する構造部材は、所定の強度が得られるものであれば、どのようなものでもよい。
【0095】
実施の形態17.
この実施の形態17は、処理済ガスをヒートパイプの冷却に使用するように実施の形態14を変更した場合である。
図33に、この実施の形態17でのVOC処理装置の構造を説明する平面図を示す。図34に、この実施の形態17でのVOC処理装置の構造を説明する縦断面図を示す。実施の形態14の場合での図24と異なる点だけを説明する。処理済ガスをヒートパイプ14の冷却に使用するために、各ガス処理ユニット1の上部の送風ガイド15Bと排気配管9との間に冷却空気供給管16を設けている。排気ファン6により冷却空気供給管16を通ってヒートパイプ14に風が送られるので、冷却ファン15Aが無い。
その他の構造は、実施の形態14と同様である。
【0096】
この実施の形態17は、実施の形態14と同様に動作し、同様の効果が有る。VOC処理装置で処理したガスは清浄であり、室内ガスを処理した場合などには、室温程度の処理済ガスが排出される。この実施の形態では、処理済ガスをヒートパイプの冷却に用いるようにしたので、屋外に設置されたVOC処理装置において特に夏場などは、屋内の空調された空気でヒートパイプを冷却することができるため、冷却効率が良くなるという利点が有る。
冬季などは外気の方が室温よりも温度が低くなるので、外気の方が室温よりも温度が低い場合は外気によりヒートパイプを冷却できる構造を備えるようにしてもよい。
【0097】
実施の形態18.
この実施の形態18は、接地電極1Aと吸着剤1Cを複数のガス処理ユニット1で兼用するように、実施の形態13を変更した場合である。この実施の形態18でのVOC処理装置の構造を説明する図を、図35に示す。図35(a)に横断面図を、図35(b)と図35(c)に縦断面図をそれぞれ示す。なお、図35(b)におけるAA断面が図35(a)に対応し、図35(a)におけるBB断面が図35(b)に対応し、図35(a)におけるCC断面が図35(c)に対応する。
【0098】
実施の形態13と相違する点だけを説明する。この実施の形態18では、複数のガス処理ユニット1が1個の容器7に収納され、供給配管8が不要である。接地電極1Aと吸着剤1Cがすべてのガス処理ユニット1で兼用される。
【0099】
この実施の形態18でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。接地電極1Aと吸着剤1Cをガス処理ユニット1で兼用しているので、装置の小型化や低コスト化が可能となる。なお、接地電極1Aまたは吸着剤1Cのどちらかだけを兼用してもよいし、それら以外を兼用するようにしてもよい。部品を兼用することは他の実施の形態でも適用でき、適用すると同様の効果が有る。
【0100】
実施の形態19.
この実施の形態19は、接地電極を回転させるようにした場合である。この実施の形態19でのVOC処理装置の構造を説明する図を、図36に示す。図36(a)に横断面図を、図36(b)に縦断面図をそれぞれ示す。なお、図36(b)におけるAA断面が図36(a)に対応し、図36(a)におけるBB断面が図36(b)に対応する。
【0101】
円筒状の容器7の中に、円形のハニカム状の吸着剤1Cを間に挟んで、円形でメッシュ状の高圧電極1Dと扇形の回転可能な接地電極1Aを配置している。容器7の内側面に所定の幅で絶縁体7Kを付加し、不要な放電が発生することを防止する。絶縁体7Kを付加するのは、高圧電極1D、吸着剤1C及び接地電極1Aがある部分とその両側には所定の余裕を持たせた部分とする。接地電極1Aと高圧電極1Dは、モリブデン、タングステン、ステンレススチールなどの導電性が高い金属か、これらの金属の表面に酸化分解の触媒作用がある白金、金、二酸化チタン、二酸化マンガンなどの金属をコーティングした材料とする。
【0102】
吸着剤1Cと高圧電極1Dの断面は、容器7の内側一杯になるようにする。接地電極1Aの半径は吸着剤1Cの半径よりも僅かに小さくし、容器7の中で回転可能とする。接地電極1Aの扇形の角度αは、360度をαで割った値(整数でなくてもよい)が、実施の形態1などにおけるガス処理ユニット1のグループ数に相当する所定の大きさになるようにする。なお、接地電極1Aの扇形は複数に分割してもよい。複数に分割する場合は、扇形の角度は同様な点を考慮して決める。
【0103】
図における左から右に処理対象ガスが流れ、高圧電極1Dが吸気側に有り、接地電極1Aが排気側に有る。接地電極1Aの排気側には、接地電極1Aを回転させる回転機構10が有る。回転機構10は、回転軸10Aと、回転軸10Aを容器7に固定する固定枠10Bと、回転軸10Aの真下にある回転軸10Aと平行な駆動軸10Cと、駆動軸10Cを回転駆動する容器7に固定したモータ10Dと、駆動軸10Cの回転を回転軸10Aに伝えるベルト10Eから構成する。
回転機構10が放電制御機構であり、かつ流量調整機構でもある。
【0104】
接地電極1Aと高圧電極1Dの間隔は、印加する高電圧で放電が発生できる適切な間隔とする。接地電極1Aと吸着剤1Cの間隔は、接地電極1Aが下流にある部分での吸着剤1Cに流れるガス流が他の部分よりも少なくなるように短くする。具体的には、5mm以下、望ましくは1mm以下とする。なお、接地電極1Aが下流にある部分の吸着剤1Cが、放電に触れている部分である。
【0105】
次に動作を説明する。VOC処理装置が動作中は常に、高圧電極1Cに直流の正の高電圧を印加しておく。接地電極1Aは、数分程度の所定の時間ごとに角度αだけ移動させる。こうすると、接地電極1Aと対向する高圧電極1Dの部分との間で放電が発生し、放電に触れている部分の吸着剤1Cでは、VOCが脱着され、脱着されたVOCが放電により水と二酸化炭素に分解される。放電に触れていない部分の吸着剤1Cは、VOCを吸着する。これは、吸着剤1Cの一部が順番に放電に触れている状態になることを意味する。なお、接地電極1Aを移動させる時間間隔は、放電に触れている部分の吸着剤1CでVOCを分解脱着するのに十分な時間であり、放電に触れるまでの時間間隔が破過する時間よりも長くなるような吸着剤1Cが発生しないように決める。
この実施の形態19でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理できる。さらには、ガスを流すための配管やバルブなどが不要であるという特徴も有る。
【0106】
接地電極1Aと吸着剤1Cの間隔を短くしており、放電が発生する吸着剤1Cの部分にはガス流が少なくなり、NOxの発生も低減できる。さらに、高圧電極1D、吸着剤1C、容器7が1個でよく、水による冷却装置やガス流調整用のバルブなども不要なので、安価に製造できるという長所がある。
【0107】
接地電極1Aの回転は、1回に接地電極1Aの扇形の角度αと同じ角度を断続的に回転させるとしたが、連続的に回転させてもよい。断続的に回転させる場合は、1回の回転角度βはαでなくてもよい。αよりも小さい角度にして移動させる間隔を短くしてもよいし、αよりも大きい角度で所定の間隔で移動させてもよい。αよりも大きい角度で移動させる方が、前回に脱着した部分とは離れた吸着剤の部分を脱着することになるので、より効率的に脱着できる。
【0108】
吸着剤の部分が順番に脱着でき、脱着できない吸着剤の部分が発生したり、まだ脱着していない部分が存在するのに脱着済の個所を脱着することが発生したりしないように、接地電極1Aを回転させる。ここで、脱着できない吸着剤の部分が発生するというのは、例えば、α=30度でβ=120度とするような場合である。この場合には、0度〜30度、120度〜150度、240度〜270度という3箇所の吸着剤だけが脱着され、他の部分の吸着剤が脱着できない。まだ脱着していない部分が存在するのに脱着済の個所を脱着するというのは、例えば、α=30度でβ=125度とするような場合である。この場合には、0度〜30度、125度〜155度、250度〜280度、15度〜45度の範囲が脱着され、まだ240度の角度の範囲が脱着されていないのに、15度〜30度が2回目に脱着されることになる。複数の接地電極1Aがある場合にも、同様な点に注意して接地電極1Aを回転させる。
効率は低下するが、脱着できない吸着剤の部分が発生したり、まだ脱着していない部分が存在するのに脱着済の個所を脱着することが発生したりすることを許容してもよい。
【0109】
電極の形状は扇形でなくても、長方形や扇形と長方形の組合せなどでもよい。扇形と長方形を組合せる場合は、半径が大きい部分は扇形にし、半径が小さい部分は長方形にするとよい。さらには、電極の形状は、吸着剤1Cの一部を蔽い、電極が1回転すると大部分の吸着剤を蔽うことができるものであれば、どのようなものでもよい。
【0110】
高圧電極1Dに正の高電圧を印加したが、負の直流の高電圧を印加するようにしてもよい。接地電極1Aまたは高圧電極1Dのどちらか少なくとも一方の放電面に誘電体をおき交流電圧を印加するようにしてもよい。交流電圧を印加する方が、より高い電力で安定した放電を得られやすい。誘電体を使用する場合には、図36における接地電極1Aを、ガラス管の中に金属電極を配置した構造、すなわち実施の形態1における高圧電極1Dの構造とすると有効である。あるいは、図36における高圧電極1Dを、金属電極を中に入れた複数のガラス管を配置する構造としてもよい。なお、ガラスは誘電体の例であり、他の誘電体でもよい。金属電極に誘電体をコーティングしてもよい。
【0111】
回転する小さい電極を接地電極1Aではなく高圧電極1Dとしてもよい。高圧電極1Dの方が接地電極1Aよりも小さい場合の方が、放電の安定性が増しより実用的な装置となる。しかし、高電圧が印加される電極を移動させる場合には、絶縁などに配慮する必要が有り構造が複雑になるので、用途によって回転する電極を接地電極1Aと高圧電極1Dのどちらにするか決めればよい。
この実施の形態19では、冷却装置は省略したが、コストと性能を総合的に判断して、電極を冷却する装置を備えてもよい。なお、電極を冷却することは高い電力で安定して放電させる上で有効である。
【0112】
ハニカム状の吸着剤の場合は、吸着剤の内部のガス通路を直線状にガスが通るので、ガス通路の入口または出口で若干の圧力損失を発生させるだけで、ガス流量を大きく低下させることができる。つまり、ハニカム状の場合の方が、接地電極1Aと吸着剤1Cの間隔が同じ場合には、ガス流量の低減効果すなわちNOx発生量の低減効果が大きい。ハニカム状でなくても、十分に間隔を小さくすれば、必要なNOx発生量の低減効果が得られる。なお、NOx発生量が低減しないことを許容するか、NOx発生量を低減させる別の対策を取る場合は、接地電極1Aと吸着剤1Cの間隔を大きくしてもよい。
【0113】
この実施の形態19では、接地電極1Aを回転させたが、平行移動させてもよい。高圧電極1Dをメッシュ状として移動させなかったが、高圧電極1Dを接地電極1Aと同じ形状として、接地電極1Aと高圧電極1Dをともに移動させてもよい。電極を固定しておいて吸着剤を移動させるようにしてもよい。吸着剤を移動させる場合は、吸着剤を円形にして回転させると、スペース配置上の無駄が少ない。一部の吸着剤と触れるように電極の対の間で放電が発生して、電極または吸着剤の何れか少なくとも一が移動することにより大部分の吸着剤が放電と触れることができるならば、電極および吸着剤の形状と移動方法はどのようなものでもよい。
以上のことは、同様な構成を持つ他の実施の形態でもあてはまる。
【0114】
実施の形態20.
この実施の形態20は、接地電極を回転させるようにした別の場合である。この実施の形態20でのVOC処理装置の構造を説明する図を、図37に示す。図37(a)に横断面図を、図37(b)に縦断面図をそれぞれ示す。なお、図37(b)におけるAA断面が図37(a)に対応し、図37(a)におけるBB断面が図37(b)に対応する。
実施の形態19の場合である図36と比較して、相違する点だけを説明する。接地電極1Aを線状として、接地電極1Aのガス流の下流側に邪魔板1Mが有る。邪魔板1Mの幅は、放電に触れている範囲のハニカムのガス通路を隠すのに必要十分な長さとする。接地電極1Aと邪魔板1Mの組は、互いに120度の角度間隔で3個ある。その他の構造は、実施の形態19と同じである。
【0115】
この実施の形態20でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減でき、部品数を低減でき低コストで製造できる。さらに、接地電極1Aが線状なので、電極付近の電界強度が増大し放電が発生しやすくなる。
【0116】
邪魔板1Mの幅が放電に触れている吸着剤の部分を蔽い、放電に触れていない吸着剤の部分は蔽わないようにする。邪魔板1Mが放電に触れていない吸着剤の部分まで蔽ってガス流を止めると、その部分で吸着剤がVOCを吸着も脱着もせずにVOC処理装置の効率が低下する。ハニカム状の吸着剤だと1個のガス通路の断面積は小さいので、1個のガス通路をすべて蔽うことができれば、ガス通路の外側は蔽わなくてもそのガス通路にガスが流れなくできる。そのため、ハニカム状の場合は、VOCを吸着も脱着もしない吸着剤が必要最小限になる。よって、VOC処理装置の効率を低下させることなく、NOxの発生を低減できる。吸着剤がハニカム状でない場合は、邪魔板1Mをより大きくするか、邪魔板1Mと吸着剤との間隔を短くするかなどの対策を取る。なお、邪魔板1Mは板状でなくてもよい。いずれにしても、邪魔板1Mは、放電に触れている吸着剤へのガス流を低減させるのに必要十分な形状と大きさとする。なお、NOx発生量が低減しないことを許容するか、NOx発生量を低減させる別の対策を取る場合は、邪魔板1Mはなくてもよい。
【0117】
接地電極1Aを線状にするだけだと放電に触れている吸着剤の部分の割合が減少するので、接地電極1Aを複数にした。移動する電極または邪魔板1Mの形状、大きさ、数は、放電に触れている吸着剤を全体のどの程度にするか、ガス流量を減少させる範囲とその度合いなどを考慮して、総合的に決める。
【0118】
実施の形態21.
この実施の形態21は、放電させるガス処理ユニット1に酸素濃度を高くし窒素の代わりに不活性ガスを配合した特別配合ガスを供給するようにした場合である。実施の形態21でのVOC処理装置のシステムブロック図が図38である。
【0119】
この実施の形態21でのVOC処理装置は、実施の形態1のものに、特別配合ガスを処理するための以下のものを追加している。(1)特別配合ガスを供給するガス供給機構である特別配合ガス供給機構11A。(2)特別配合ガス供給機構11Aとガス処理ユニット1との間の配管11B。(3)配管11Bを流れる特別配合ガスの流量を調整するバルブ11C。(4)ガス処理ユニット1の排気が排気ファン6の方へ流れるかどうかを調節するバルブ11D。(5)ガス処理ユニット1からの特別配合ガスを回収して再生する特別配合ガス回収再生機構11E。(6)ガス処理ユニット1と特別配合ガス回収再生機構11Eとを結ぶ配管11F。(7)配管11Fの流量を調整するバルブ11G。(8)配管11Fの内部で排気口の手前にある排気ファン11H。(9)特別配合ガス回収再生機構11Eと特別配合ガス供給機構11Aとを結ぶ配管11J。
【0120】
特別配合ガスは、窒素分が極力少なくなるように、不活性ガスと酸素を所定の割合で配合したものである。特別配合ガスの組成は、性能向上効果とコストを総合的に判断して決める。
特別配合ガス供給機構11Aは、酸素と不活性ガスを所定の割合で配合した特別配合ガスを供給する機構である。特別配合ガス回収再生機構11Eは、回収した特別配合ガスから酸素と不活性ガス以外の成分を除去して、再び特別配合ガスとして使用できるように再生する機構である。再生した特別配合ガスは、特別配合ガス供給機構11Aで、所定の配合になるように酸素または不活性ガスを追加してガス処理ユニット1に供給される。
【0121】
1個のガス処理ユニット1は密閉可能な隔室を備えており、吸気側にバルブ5Aとバルブ11Cとが有り、排気側にバルブ11Dとバルブ11Gとが有る。これらのバルブの開閉状態と高電圧の印加の有無により、ガス処理ユニット1は以下の4種類の動作状態を取る。動作状態Aは、吸着剤は処理対象ガス中のVOCを吸着する状態である。動作状態Bは、VOCを吸着した吸着剤を脱着しVOCを分解している状態である。これに対して、動作状態Cと動作状態Dは、状態移行の途中の過渡的な状態である。動作状態Aから動作状態Bに移行する途中に動作状態Cを取り、動作状態Bから動作状態Aに戻る途中に動作状態Dを取る。
【0122】
各動作状態を説明する図を、図39に示す。なお、特別配合ガスは薄い梨子地状で表現する。動作状態Aは、図39(a)に示すように、バルブ5Aとバルブ11Dが開で、バルブ11Cとバルブ11Gが閉で有り、処理対象ガスがガス処理ユニット1の中を流れる状態である。高圧電極1Dに高電圧は印加されず、放電は発生していない。動作状態Cは、図39(b)に示すように、バルブ5Aを閉じバルブ11Cを開き、バルブ11Dを閉じバルブ11Gを開くように、動作状態Aから変化させた状態である。動作状態Aではガス処理ユニット1内に処理対象ガスが充満していたのが、特別配合ガスに入れ替わる途中の状態が動作状態Cである。ガス処理ユニット1の内部が特別配合ガスで充満するようになると、バルブ11Cとバルブ11Gを閉じ、高圧電極1Dに高電圧を印加して放電を発生させる。こうして、図39(c)に示す動作状態Bとなる。動作状態Bでは、バルブ11Cとバルブ11Gのどちらかは開でもよい。さらには、特別配合ガスの消費量は増加するが、動作状態Bでバルブ11Cとバルブ11Gの両方を開にしてもよい。
【0123】
動作状態Bから、高圧電極1Dに高電圧を印加しないようにし、バルブ5Aとバルブ11Gとを開くと、図39(d)の動作状態Dとなる。動作状態Dでは、動作状態Bでガス処理ユニット1の内部に充満していた特別配合ガスが処理対象ガスに入れ替わる。ガス処理ユニット1の内部から特別配合ガスがなくなると、バルブ11Gを閉じバルブ11Dを開いて、動作状態Aに戻る。これらのバルブの制御は、流量調整機構5により行われる。なお、特別配合ガスに関するバルブは、特別配合ガス供給機構11Aや特別配合ガス回収再生機構11Eなどの他の機構から制御するようにしてもよい。
【0124】
VOC処理装置でガス処理ユニット1のグループが取る動作状態のシーケンスを説明する図を、図40に示す。なお、図40では、下から動作状態A、動作状態C、動作状態D、動作状態Bの順番に並べている。フェーズ1Aからフェーズ6Bまでの動作状態が有る。フェーズ1A、フェーズ1B、フェーズ2A、フェーズ2B、フェーズ3A、…、フェーズ6A、フェーズ6Bの順番に変化し、フェーズ6Bからはフェーズ1Aに戻ることを繰り返す。フェーズnBではグループnが動作状態Bにあり、残りは動作状態Aである。フェーズnAでは、グループn−1が動作状態Dであり、グループnが動作状態Cであり、残りのグループは動作状態Aである。グループn−1を動作状態Dにするのと同時にグループnを動作状態Cにするので、グループnー1を動作状態Aにしてグループnを動作状態Bにするのに要する時間を短くすることができる。
【0125】
時間は要するが、グループn−1を動作状態Aにしてからグループnを動作状態Cにするようにしてもよい。また、グループn−1を動作状態Dにした後でグループnを動作状態Cにしてもよいし、グループnを動作状態Cにした後でグループn−1を動作状態Dにしてもよい。なお、これらの場合には、厳密にはフェーズの数もより多くなる。以下ではフェーズについては特に言及しないが、グループごとに取る動作状態のシーケンスを変更する場合には、そのシーケンスに合わせてフェーズの数も変化させるものとする。
【0126】
この実施の形態21でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、窒素を含まない特別配合ガス中で放電を発生させるのでNOxがほとんど発生しない。さらに、特別配合ガス中の酸素濃度を高くすれば、酸素原子やオゾンなどの活性種の発生確率が高まり、VOCの分解効率も向上する。特別配合ガスは、酸素を含み、大気中よりも酸素濃度が高いか、大気中よりも窒素濃度が低いかの何れかの特徴を有するものであれば、VOCの分解効率を高める、NOxの発生を低減させるという何れかの効果を有する。窒素の代わりに不活性ガスを配合したが、不活性ガスでなくても酸素と反応しないか、反応しても有害物質を発生しないガスであればどのようなガスでもよい。
この実施の形態21は、実施の形態1を元にして特別配合ガスを使用するように変更したものだが、他の実施の形態を元にしてもよい。
【0127】
この実施の形態21では、特別配合ガスをできるだけ外部に漏らさないように、バルブを開閉している。回収する特別配合ガスに処理対象ガスが混入しないことを重視する場合には、動作状態Aから動作状態Cに変化する際に、バルブ11Dとバルブ11Gの開閉操作を行わずに、動作状態Cから動作状態Bに変化する際に、バルブ11Dだけを閉じるようにする。そして、動作状態Dから動作状態Aに戻るタイミングを早くして、ガス処理ユニット1内の特別配合ガスが完全に排出される前に動作状態Aに戻るようにする。なお、これらのバルブを操作する順番は、これ以外のものでもよい。同時に複数のバルブを操作しているが、1度に1個のバルブだけを操作するようにしてもよい。また、放電の開始と終了のタイミングを変化させてもよい。なお、各バルブの制御と放電の開始と終了のタイミングを変化させることにより、動作状態Aと動作状態Bの間の過渡的な動作状態は変化し、動作状態Cと動作状態D以外の動作状態を取ることになる。ただし、複数のグループで同時に放電させるような動作状態を取る場合には、放電で消費する電力が電源容量を越えないようにする対策も必要である。放電で消費する電力が電源容量を越えないようにする対策が実施できない場合は、複数のグループで同時に放電させることは行わない。
【0128】
動作状態Cである時間と動作状態Dである時間を同じにしているが、別にしてもよい。別にした場合は、動作状態Cと動作状態Dの開始のタイミングを同じにしてもよいし、終了のタイミングを同じにしてもよい。さらには、動作状態Cの開始及び終了のタイミングと動作状態Dの開始及び終了のタイミングをそれぞれ別にしてもよい。
【0129】
この実施の形態21では、回収した特別配合ガスを再生して、特別配合ガスとして再利用するようにしているが、回収するだけで再利用しないようにしてもよい。また、特別配合ガスを回収しないようにしてもよい。特別配合ガスを回収または再生するかどうかは、特別配合ガスの組成と合わせて、特別配合ガスを使用することによる性能向上の度合い、特別配合ガスのコスト、回収及び再生に要する装置などのコスト、回収しない場合のデメリットなどを考慮して、総合的に判断して決める。
【0130】
実施の形態22.
この実施の形態22は、処理対象ガスの流れを止めて放電によりVOCを脱着した後にガス処理ユニット1の内部に残るガス(脱着後ガスと呼ぶ)を処理済ガスにより吸気側に返送するようにしたものである。実施の形態22でのVOC処理装置のシステムブロック図が図41である。
この実施の形態22でのVOC処理装置は、実施の形態1のものに、脱着後ガスを吸気側に返送するためのガス返送機構として以下のものを追加している。(1)処理済ガスをガス処理ユニット1の内部を通して吸気配管8に返送するための排気ファン11H。(2)ガス処理ユニット1と排気ファン11Hを結ぶ配管11F(3)配管11Fの流量を調整するバルブ11G(4)ガス処理ユニット1の排気が排気ファン6の方へ流れるかどうかを調節するバルブ11D。
【0131】
1個のガス処理ユニット1は密閉可能な隔室であり、吸気側にバルブ5Aが有り、排気側にバルブ11Dとバルブ11Gとが有る。これらのバルブの開閉状態と高電圧の印加の有無により、ガス処理ユニット1は以下の3種類の動作状態を取る。動作状態Aは、吸着剤は処理対象ガス中のVOCを吸着する状態である。動作状態Bは、VOCを吸着した吸着剤を放電により脱着しVOCを分解している状態である。動作状態Dは、脱着後ガスを処理済ガスにより吸気側に返送している状態である。動作状態Dは、動作状態Bから動作状態Aに戻る途中に一時的に取る過渡的な状態である。
【0132】
各動作状態を説明する図を、図42に示す。なお、脱着後ガスは薄い梨子地状で表現する。動作状態Aは、図42(a)に示すように、バルブ5Aとバルブ11Dが開で、バルブ11Gが閉で有り、処理対象ガスがガス処理ユニット1の中を流れる状態である。高圧電極1Dに高電圧は印加されず、放電は発生していない。動作状態Bは、図42(b)に示すように、バルブ5A、バルブ11D、バルブ11Gを閉じ高圧電極1Dに高電圧を印加して放電を発生させた状態である。バルブ5Aが開でもよい。動作状態Bから、高圧電極1Dに高電圧を印加しないようにし、バルブ5Aとバルブ11Gとを開くと、図42(c)の動作状態Dとなる。動作状態Dから、バルブ11Dを開いてバルブ11Gを閉じると、動作状態Aに戻る。これらのバルブの制御は、流量調整機構5により行われる。なお、脱着後ガスの吸気側への返送に関するバルブは、新たに設けた別の機構から制御するようにしてもよい。
【0133】
動作状態Dでは、動作状態Bでガス処理ユニット1の内部に充満していた放電副生成物を含む脱着後ガスが処理済ガスにより供給配管8に送られ、他の動作状態Aにあるガス処理ユニット1で副生成物が吸着される。動作状態Dでガスが流れる方向は、VOCを吸着している動作状態Aで処理対象ガスが流れる方向とは逆方向になる。動作状態Dを取る期間は、脱着後ガスをすべて吸気配管8に戻すことができる所定の期間とする。なお、脱着後ガスを返送する先は吸気配管8でなくても、吸気側で外部に排出されない個所であればどこでもよい。
【0134】
VOC処理装置でガス処理ユニット1のグループが取る動作状態のシーケンスを説明する図を、図43に示す。なお、図43では、下から動作状態A、動作状態D、動作状態Bの順番に並べている。フェーズ1Aからフェーズ6Bまでの動作状態が有る。フェーズ1A、フェーズ1B、フェーズ2A、フェーズ2B、フェーズ3A、…、フェーズ6A、フェーズ6Bの順番に変化し、フェーズ6Bからはフェーズ1Aに戻ることを繰り返す。フェーズnBではグループnが動作状態Bにあり、残りは動作状態Aである。フェーズnAでは、グループn−1が動作状態Dであり、残りのグループは動作状態Aである。以上のように説明した各グループが取る動作状態の変化のパターンをパターンAと呼ぶ。
ここで、フェーズnAにおいて、グループn−1が動作状態Dであり、グループnが動作状態Bであり、残りのグループは動作状態Aであるようにしてもよい。このような各グループが取る動作状態の変化のパターンをパターンBと呼ぶ。なお、パター−ンBでは常に1個のグループが動作状態Bにあり、フェーズnAでの動作状態Aを取るグループの数がパターンAの場合よりも1個少なくなる。グループの数が十分に大きければ、動作状態Aを取るグループの数がパターンAの場合よりも1個少ないことは問題ではなく、脱着後ガス中の副生成物や処理対象ガス中のVOCを吸着できないような事態は発生しない。
【0135】
この実施の形態22でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減できる。さらに、放電により生成したNOxなどの副生成物を含む脱着後ガスを供給配管に返送後に副生成物を吸着剤1Cで吸着除去するため、処理済ガスとして排出されるNOxなどの副生成物は非常に僅かである。
この実施の形態22は、実施の形態1を元にして処理済ガスを供給配管に返送するガス返送機構を備えるように変更したものだが、他の実施の形態を元にしてもよい。
【0136】
ガス処理ユニット1を複数のグループに分けて、グループごとに吸着剤の脱着処理を行うVOC処理装置でなくても、ガス返送機構を備えれば、NOxなどの副生成物の排出量を低減できるという効果が有る。グループごとに吸着剤の脱着処理を行うVOC処理装置でない場合の動作状態Dでは、脱着後ガスが充満したガス処理ユニット1の内部に、バルブ11Dから外気などを送り込んで脱着ガスを吸気側に戻す。なお、グループごとに吸着剤の脱着処理を行うVOC処理装置の場合の方が、脱着後ガスを吸気側に戻すことに処理済ガスを利用でき、吸気側に戻したガスをすぐに他のガス処理ユニットで吸着処理できるという利点が有る。
【0137】
放電発生時もガスを吸気側に戻すことでも、放電により生成したNOxなどの副生成物を排出することを防止できる。ただし、放電発生時に逆向きに流すガスの流量が放電発生中でない時の流量と同じか大きい場合は、放電により発生するNOxの量を低減するという効果はない。なお、放電発生時に逆向きに流すガスの流量が放電発生中でない時の流量よりも少ない場合は、少ない度合いが大きいほど放電により発生するNOxの低減量が大きくなる。
放電発生時もガスを吸気側に戻す場合は、ガス処理ユニット1内に残留する副生成物の量が少ないので、放電発生後にガスを吸気側に戻す所定の時間は短くしてもよい。
以上のことは、他の実施の形態でもあてはまる。
【0138】
実施の形態23.
この実施の形態23でのVOC処理装置は、実施の形態1を元にして、処理対象ガス中のVOC濃度を計測し、VOC濃度に応じて放電の消費電力量を調整するようにしたものである。実施の形態23でのVOC処理装置のシステムブロック図が図44である。実施の形態1の場合である図1に対して、以下の点が相違している。フィルター4の直後に処理対象ガス中のVOC濃度を計測するVOC濃度センサ12を追加している。電圧スイッチング制御装置3と流量調整機構5の代わりに、放電制御機構である放電電力制御機構13が有る。放電電力制御機構13は、VOC濃度センサ12で計測されたVOC濃度から吸着剤1Cが吸着したVOCの量(VOC吸着量と呼ぶ)を計算し、放電開始時のVOC吸着量に応じて、VOCを分解するのに必要最小限な放電の消費電力量となるように、電圧スイッチング素子3Aとバルブ5Aを制御する。その他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0139】
次に動作を説明する。この実施の形態23では、ガス処理ユニット1が実施の形態1の同様な動作状態Aと動作状態Bに加えて、以下の動作状態Eを取る。動作状態Eは、バルブ5Aが閉で高圧電極1Dに高電圧が印加されていない状態である。動作状態Eは、VOC吸着量が少ない場合に動作状態Bでの吸着剤1Cの脱着が完了した後に、次のグループのガス処理ユニット1が動作状態Bになりこのグループが動作状態Aになるまでの間に取る動作状態である。
動作状態Eが必要となる理由を説明する。VOC濃度が低い場合には動作状態BでVOCを分解処理する時間は短くなる。動作状態Eを取らないで、あるグループで動作状態Bが終了した時点で、次のグループで動作状態Bを取るようにすると、VOC濃度に応じてVOC処理装置の動作の周期が変化することになる。VOC濃度が低い場合には処理の周期が短くなり、吸着剤が十分にVOCを吸着する前に放電で分解処理されることになり、VOCの分解効率が低下する。VOC濃度が低い場合に分解効率を低下させないように、処理の周期が所定の長さ以上とするために、動作状態Eは必要である。
【0140】
処理対象ガス中のVOC濃度とガス処理ユニット1の各グループでの吸着剤1CのVOC吸着量の関係を説明する図を、図45に示す。図45(a)に処理対象ガス中のVOC濃度を示し、図45(b-g)にグループ1〜グループ6のガス処理ユニット1における吸着剤1CのVOC吸着量を示す。処理対象ガス中のVOC濃度は、想定する最大濃度に対する%で表現する。吸着剤1CのVOC吸着量は、想定する最大濃度の処理対象ガスが連続した場合に1周期で吸着するVOCの量に対する%で表現する。ここでは仮に、吸着剤1Cが破過しない領域では、吸着剤1Cが触れる処理対象ガス中のVOCをすべて吸着できるとする。このことは、ガス流量が時間的に一定ならば、吸着剤1CのVOC吸着量はVOC濃度の時間積分に単位時間あたりのガス流量をかけて計算できることを意味する。分解できるVOCの量は、消費電力に比例するとする。なお、実際には、VOCの吸着は、VOC吸着量など他の条件にも依存する。VOCを分解する速度も、VOC吸着量などにも依存する。
【0141】
図45(a)で、VOC濃度は、最初は想定する最大量の100%程度であったのが、途中から50%に変化した場合とする。VOC処理装置は、時間がゼロの時点から動作を開始し、動作開始時にはすべてのガス処理ユニット1で吸着剤はVOCを吸着していないとする。吸着剤が吸着するVOCの量は、前に説明した前提により、脱着が完了した後に処理対象ガスと接触するようになった時点からの処理対象ガスのVOC濃度の時間積分に単位時間あたりのガス流量をかけたものになる。そのため、放電電力制御機構13がガス処理ユニット1のグループごとに動作状態Bの開始時点でVOC吸着量を計算する。さらに、放電電力制御機構13はVOC吸着量に応じて動作状態Bの継続時間を決めて、動作状態Bの継続時間が決めた時間になるように電圧スイッチング素子3Aの入切を制御する。動作状態Bが終了した後は、動作状態Eとする。
【0142】
動作状態Bまたは動作状態Eを取る時間が所定の時間T(図45では10分)になるように制御する。所定の時間Tは、ガス処理ユニット1のグループをNとすると、VOC濃度が100%の処理対象ガスがT×(N−1)の時間だけ継続した場合に、吸着剤が100%のVOCを吸着する時間であり、VOCの分解処理に要する時間以上である必要がある。
グループ1では時間0ではVOC吸着量がゼロなので動作状態Bを取らないで、動作状態Eとなる。VOC吸着量が多くなると、動作状態Bを取る時間が長くなることが分かる。また、VOC吸着量がゼロになった後は、動作状態Bではなく動作状態Eを取ることが分かる。
【0143】
この実施の形態23でも、小さい電源容量で効率よくVOCを処理でき、NOxの発生を低減でき、さらにVOCの分解に要する消費電力量を必要最小限に低減できる。なお、VOCを確実に分解処理するために、動作状態Bを取る時間を必要最小限の時間よりも少し長くするなどしてもよい。そのような場合でも、VOCの分解処理が終了した後に無駄に放電することをなくすることにより、消費電力量を低減できるという効果が有る。
この実施の形態23では、印加電圧と放電電流ひいては消費電力を一定にして放電させる時間を変化させたが、放電する時間は一定にして、高電圧発生装置2を制御して吸着したVOCの量に応じて、印加電圧または放電電流のどちらかまたは両方ひいては放電の消費電力を変えるようにしてもよい。さらには、印加電圧または放電電流のどちらかまたは両方とともに、放電する時間も変化させるようにしてもよい。VOCを脱着分解するための消費電力量を低減できれば、どのような方法でもよい。なお、VOCを確実に分解処理できる範囲で、消費電力量が必要最小限にできるだけ近い方が望ましい。
【0144】
この実施の形態23では、吸着剤1CがVOCを吸着する速度はVOC濃度に比例するとし、吸着剤1CがVOCを脱着する速度は消費電力に比例すると仮定したが、他の要素も考慮したより厳密な方法で計算するようにしてもよい。目的に合った妥当な計算式を使用すればよい。
動作状態Bまたは動作状態Eを取る時間を所定値としたが、可変にしてもよい。可変にする場合の例としては、次に動作状態Bになるグループのガス処理ユニット1のVOC吸着量が所定値(例えば、75%)以上になるまでとする場合などが考えられる。可変にする場合には、VOC濃度が高い状況が継続しているような場合には、動作状態Bの後に動作状態Eを取らないで、次のグループのガス処理ユニット1を動作状態Bにしてもよい。
【0145】
動作状態Bまたは動作状態Eを取る時間を可変とすることにより、VOC濃度が低い場合でも吸着剤が十分にVOCを吸着させてから分解処理することができるので、効率よくVOCを分解処理できる。ただし、十分にVOCを吸着させるのを待つ上では、VOC濃度が急に高くなり高い状態が継続しても吸着剤が破過しないように考慮する。より具体的には、急にVOC濃度が100%に上昇して、それ以降は100%が継続したとしても、次のグループのガス処理ユニット1での動作状態Bが完了するまでに、その次以降のグループのガス処理ユニット1が破過しないように、次のグループのガス処理ユニット1での動作状態Bの開始時間を制御する。
動作状態Bでの印加電圧、放電電流、放電継続時間を固定にして、動作状態Eの時間だけを可変にするようにしてもよい。
【0146】
動作状態Bの後に動作状態Eではなく、動作状態Aを取るようにしてもよい。その場合には、すべてのグループが動作状態Aを取るフェーズ0と、1個のグループは動作状態Bまたは動作状態Eを取るフェーズとで、動作状態Aを取るグループの数が異なることになる。動作状態Aを取るグループの数が異なると、処理対象ガスの流量が同じだと、1個のガス処理ユニット1あたりのガス流量が変化する。ガス流量が変化する場合には、VOC濃度をガス流量に対して積分してVOC吸着量を計算する。なお、動作状態Aを取るグループの数が変化しても、ガス処理ユニット1あたりのガス流量が変化しないようにガス流量の総量を変化させるように制御してもよい。
この実施の形態23は実施の形態1を元にしたが、他の実施の形態を元にしてもよい。
以上のことは、VOC濃度センサを使用する他の実施の形態でもあてはまる。
【符号の説明】
【0147】
1 :ガス処理ユニット
1A:接地電極
1B:ガラス管(誘電体)
1C:吸着剤(吸着体)
1D:高圧電極
1E:高圧導線
1F:ヒューズ
1G:支持材
1H:高圧導線
1J:誘電体膜
1K:排気口
1L:遮蔽板
1M:邪魔板
1N:冷却水供給口
1P:冷却水排出口
1Q:給電層
1R:絶縁層
1S:絶縁物
1T:構造部材
1U:柱(補強部材)
1V:絶縁物
1W:板材(補強部材)
2 :高電圧発生装置
3 :電圧スイッチング制御装置(放電制御機構)
3A:電圧スイッチング素子
4 :フィルター
5 :流量調整機構
5A:バルブ
6 :排気ファン
7 :容器
7A:吸気口
7B:排気口
7C:高圧線導入口
7D:空洞
7E:隔壁
7F:貫通穴
7G:冷却水供給口
7H:冷却水排出口
7J:冷却水通路
7K:絶縁体
8 :供給配管
9 :排気配管
10 :回転機構(放電制御機構、流量調整機構)
10A:回転軸
10B:固定枠
10C:モータ
10D:円盤
10E:ベルト
11A:特別配合ガス供給機構(ガス供給機構)
11B:配管
11C:バルブ
11D:バルブ
11E:特別配合ガス回収再生機構
11F:配管
11G:バルブ
11H:排気ファン
11J:配管
12 :VOC濃度センサ
13 :放電電力制御機構(放電制御機構、流量調整機構)
14 :ヒートパイプ(電極冷却機構)
14A:冷媒
14B:放熱板
15A:冷却ファン
15B:送風ガイド
15C:フィルター
16 :冷却空気供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象ガスに触れ揮発性有機化合物を吸着する吸着体と、前記吸着体を間に挟んで配置された放電を発生させる電極の対と、前記処理対象ガスの流れとは逆方向に放電発生後の所定期間に前記吸着体にガスを流すガス返送機構とを備えた揮発性有機化合物処理装置。
【請求項2】
処理対象ガスに触れ揮発性有機化合物を吸着する吸着体と、処理対象ガスが流れる所定の径の孔が所定の気孔率で形成されて成る誘電体である吸着体と、該吸着体を間に挟んで配置された放電を発生させる電極の対と、処理対象ガスの流れとは逆方向に放電発生後の所定期間に前記吸着体にガスを流すガス返送機構とを備えた揮発性有機化合物処理装置。
【請求項3】
処理対象ガスに触れ揮発性有機化合物を吸着し、処理対象ガスが流れる所定の径の孔が所定の気孔率で形成されて成る誘電体である吸着体と、該吸着体を間に挟んで配置された放電を発生させる電極の対と、前記吸着体と前記電極の対を中に収容する密閉可能な隔室とを有するガス処理ユニットを備え、放電発生時に密閉された前記隔室に放電を発生させた後の所定の期間に他の前記ガス処理ユニットで処理された処理済ガスを処理対象ガスの流れとは逆方向に流すガス返送機構とを備えた揮発性有機化合物処理装置。
【請求項4】
処理対象ガスに触れ揮発性有機化合物を吸着し、処理対象ガスが通るガス通路を有し、この前記ガス通路の壁面を誘電体として成る吸着体と、該吸着体を間に挟んでガス通路の壁面と交差する方向に放電を発生させるよう配置された、交流の電圧が印加される電極の対と処理対象ガスの流れとは逆方向に放電発生時およびその後の所定期間に前記吸着体にガスを流すガス返送機構とを備えた揮発性有機化合物処理装置。
【請求項5】
処理対象ガスに触れ揮発性有機化合物を吸着し、処理対象ガスが通るガス通路を有し、この前記ガス通路の壁面を誘電体として成る吸着体と、該吸着体を間に挟んでガス通路の壁面と交差する方向に放電を発生させるよう配置された、交流の電圧が印加される電極の対と、前記吸着体と前記電極の対を中に収容する密閉可能な隔室とを有する前記ガス処理ユニットを備え、放電発生時に密閉された前記隔室に放電を発生させた後の所定の期間に他の前記ガス処理ユニットで処理された処理済ガスを前記処理対象のガスの流れとは逆方向に流すガス返送機構とを備えた揮発性有機化合物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2013−27878(P2013−27878A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247654(P2012−247654)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2009−281692(P2009−281692)の分割
【原出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】