説明

搬送ローラ及び基板搬送装置

【課題】安定した搬送性能を有する搬送ローラ及び基板搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明は、各種基板(3)を搬送ローラ(4)によって搬送しながら各種処理を行うインライン方式の基板処理システムに用いられる基板搬送装置に関するものである。本発明による基板搬送装置は、基板搬送方向に沿って所定の間隔で配列した複数の搬送ローラ(4)と、前記複数の搬送ローラを部分的に包囲するチャンバ(60,62a,62b)と、搬送ローラに連結され、基板搬送ローラに回転駆動力を伝達する駆動機構(70)と、搬送ローラに連結され、搬送ローラの水平度を調整する水平度調整機構(71)とを具える。搬送ローラの水平度調整機構及び回転駆動機構はチャンバの外部に位置し、チャンバの外部から搬送ローラの水平度が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の各種の基板を搬送するための搬送ローラ及び基板搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや半導体デバイスの製造工程においては、各種基板に対する処理効率を向上させるため、基板の搬送ラインに沿って各種処理装置を配置し、搬送ローラにより基板を搬送させながら基板について各種処理を行うプロセスが既知である(例えば、特許文献1参照)。このインライン方式の基板処理システムでは、基板搬送方向に沿って搬送ローラを配置し、搬送ローラ上においてガラス基板を搬送し、搬送中に現像処理や洗浄処理等の各種の処理が行われている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−281991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インライン方式による基板処理システムでは、基板サイズが大型化するに伴い、搬送ローラが長尺化するため、搬送ローラ自体に撓みが発生し易くなる。搬送ローラが撓むと、基板に対する搬送速度や搬送性能が不安定になり、各処理工程における処理品質が低下する不具合が生じてしまう。また、大型サイズの基板だけでなく小型サイズの基板も処理する必要があり、タクトタイムを短縮する必要性より、複数の基板を並列して搬送する必要もある。しかし、搬送ローラの回転精度及び水平精度が悪化すると、ローラ軸線方向に速度分布が発生し、搬送中の基板に蛇行が発生し、基板同士が接触する不具合が発生してしまう。従って、従来の基板処理システムでは、複数の基板を並列して処理することが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、搬送ローラが長尺化しても、安定した搬送性能を有する搬送ローラを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、各種基板を安定して搬送できる基板搬送装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、複数の基板を並列して搬送することができる基板搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による搬送ローラは、各種基板を搬送する搬送ローラであって、円筒状のシャフトと、シャフトに嵌合されると共にローラ軸線方向に沿って配置され、搬送すべき基板と当接して基板に搬送力を伝達する複数のコロと、前記シャフトに嵌合されると共に隣接する2つのコロの間を所定の間隔に維持し、隣接するコロ同士を連結するスペーサと、前記シャフトに固定されると共に前記コロに連結され、コロ及びスペーサを固定する少なくとも1対の係止部材とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明では、搬送されるべき基板に搬送力を伝達する複数のコロをシャフトに対してフリーな状態に保持し、シャフトにネジ止めされている係止部材を介してシャフトに連結しているため、ネジ止めによる不所望な応力歪みがコロに発生する不具合が防止される。この結果、基板に対して安定した搬送性能が達成される。
【0008】
本発明による基板搬送装置は、搬送ローラを基板搬送方向に沿って複数具え、
複数の搬送ローラを搬送ローラのシャフト両端にて互いに連結する連結フレームと、該搬送ローラに連結され、搬送ローラに回転駆動力を伝達する駆動機構と、該連結フレームに連結され、搬送ローラの水平度を調整する水平度調整機構と、を具えることを特徴とする。
【0009】
複数の基板を並列して同時に処理する基板処理システムにおいては、搬送ローラにローラ軸線方向において速度分布が形成されると、蛇行等の搬送障害が発生してしまう。特に、長尺の搬送ローラを用いて複数の基板を搬送する場合、ローラの水平度に僅かな不均衡が生ずるだけでも、水平度の不均衡が増幅されるため、一方又は両方の基板に蛇行が生じ、基板同士が接触する不具合が発生してしまう。そこで、本発明では、搬送ローラの一端側のチャンバの外部に搬送ローラの水平度を調整する水平度調整機構を設ける。水平度調整機構を設けることにより、基板処理システム全体として安定した搬送性能が得られ、複数の基板を並列して同時に処理することが可能になる。さらに、搬送ローラの各コロをシャフトに対してフリーな状態で保持し、キー結合した係止部材を介してシャフトに連結することにより、基板に搬送力を直接伝達する各コロについても安定した搬送力が得られるため、水平度調整機構と相まって、大型基板を安定して搬送できると共に複数の基板を並列して搬送処理することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
コロをシャフトに連結する際に発生する応力歪みの発生が防止されるので、安定した搬送力を有する搬送ローラが実現される。
また、各搬送ローラには、水平度調整機構がチャンバの外部に設けられているので、蛇行等の搬送障害の発生を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、インライン方式の基板処理システムの一例を示す図である。本例では、現像処理及び洗浄処理に適用した例について説明する。基板搬送ラインLに沿って現像ユニット1(現像ユニットの一部だけを示す)及び洗浄ユニット2が配置され、基板3は搬送ラインLに沿って現像ユニット及び洗浄ユニットを通過する間に現像処理及び洗浄処理が行われる。基板搬送システムは、搬送ラインLに沿って所定の間隔で配置した複数の搬送ローラ4(1本の搬送ローラについてだけ符号を付す)を有し、各基板3は、搬送ローラの回転駆動力により搬送ラインLに沿って進行する。
【0012】
現像ユニット1は、現像チャンバ10を有し、当該現像チャンバ内に搬送ローラを挟んで上下に現像ノズル11(図面を明瞭にするため、1個の現像ノズルについてだけ符号を付す)が配置され、基板3は、搬送中に現像ノズルから噴射される現像液により現像処理される。
【0013】
現像処理が終了すると、基板3は、現像チャンバ10から搬出され、洗浄チャンバ20に搬入される。洗浄チャンバ20は、搬送ライン方向に沿って配列された搬送ローラを挟んで上下に複数の洗浄ノズルが配置され、現像液が残存する基板は、搬送中に洗浄ノズルから噴射される洗浄液により洗浄される。
【0014】
図2は、搬送ローラの一例を示すである。搬送ローラは、円筒状の金属製パイプで構成されるシャフト30を有し、シャフトの外周にコロ31〜38を所定の間隔で嵌合装着する。これらのコロは、搬送される基板の裏面と当接して基板に搬送力を伝達する作用を果たし、耐薬品性を有する合成樹脂材料で構成される。隣接するコロ間にスペーサ41〜46を嵌合装着する。スペーサもコロの同一の合成樹脂材料で構成され、キー結合により互いに隣接するコロ同士を機械的に連結する作用を果たす。コロ及びスペーサは、シャフトに対してネジ止めせず、シャフトに対して回転可能ないし移動可能に装着される。
【0015】
尚、シャフト30に装着するコロとスペーサの数はローラ長に応じて設定することができ、例えば大型基板を搬送する場合、シャフト30に嵌合装着されるコロとスペーサの数を多くすることにより、基板の大型化に対応することができる。
【0016】
コロ31及び34に隣接するように係止部材50a及び50bを装着すると共に、コロ35及び38と隣接するように係止部材50c及び50dを装着する。これらの係止部材は、リング状の金属材料又は合成樹脂材料で構成され、シャフト30に対してネジ止めする。係止部材は、隣接するコロとキー結合され、シャフトの回転駆動力をコロに伝達する作用を果たす。従って、シャフトが回転すると、その回転駆動力は係止部材に伝達され、係止部材からキー結合を介してコロ及びスペーサに伝達されて全てのコロに伝達される。全てのコロは、シャフトに対しネジ止めされずフリーな状態に維持されているため、無用な歪みが発生せず、安定した回転精度及び搬送性能が得られる。
【0017】
シャフト30のほぼ中央に、コロの外径寸法よりも小さい外径の軸受等の回転支持部材51を装着し、その両側に係止部材50e及び50fを配置して回転支持部材51をシャフトに対して固定する。回転支持部材51は、支柱52を介してチャンバのベース60に支持する。大型のガラス基板を搬送する場合、搬送ローラに相当な荷重がかかり、搬送ローラに撓みが発生するおそれがある。そこで、本例では、搬送ローラのほぼ中央の部位を回転支持部材を介してチャンバのベースに支持し、撓みの発生を防止する。尚、回転支持部材による支持は、1カ所だけでなく、ローラ軸線方向の複数の箇所において支持することも可能である。
【0018】
シャフト30の両端部分は、軸受け61a及び61bを介してチャンバの側壁62a及び62bにより支持される。従って、本例の搬送ローラは、ローラの両端及び中央部分の3点により支持されることになる。尚、側壁62aに対しては、後述する水平度の調整を行うため、軸受を介して回転可能に支持すると共に上下動可能に支持する。
【0019】
シャフト30のチャンバの側壁62aの外部に突出する部分にギア(傘歯車)70を固着し、回転駆動機構を介して伝達される回転駆動力をシャフトに伝達する。回転駆動機構として、傘歯車71が連結されている駆動軸72を紙面と直交する方向に延在させて各搬送ローラに回転駆動力を伝達する。さらに、シャフト30には、チャンバの側壁62aの外側に後述する水平度調整機構を連結する。2枚の基板を並列して処理する場合並びに大型基板を処理する場合、搬送ローラが長尺化し、撓みが発生し易くなってしまう。撓みが発生すると、搬送ローラの水平度が非平衡であることに起因する悪影響が現れ、蛇行等の搬送障害が発生する。そこで、チャンバの外部に水平度調整機構を設けることにより、チャンバの外部から搬送ローラの水平度の調整を可能とする。この結果、2枚の基板を並列して処理する場合であっても、蛇行等の不具合が発生せず、基板同士が接触する不都合が解消される。尚、水平度調整機構は、搬送ローラの片側に設けるだけでなく、搬送ローラの両側に設けることもできる。
【0020】
図3は、図2に示す搬送ローラの一部を拡大して示す断面図であり、当該図3を用いて、シャフト、係止部材、コロ及びスペーサの連結状態を説明する。円筒状のシャフト30に4個のコロ31〜34を嵌合装置する。各コロはローラ軸線方向及びローラの円周方向に移動自在に装着される。隣接するコロ間にスペーサ41〜43を嵌合装着する。各スペーサは、コロと同様にローラ軸線方向及びローラ円周方向に移動自在に装着する。コロ31及び34と隣接するようにリング状の係止部材50a及び50bをシャフトに固定する。係止部材は、シャフトに対してネジ止めする。係止部材は金属材料で構成されるため、ネジ止めしても歪みが生ずる不具合は発生しないが、コロ及びスペーサは合成樹脂材料であるため、ネジ止めした際応力歪みが発生し、真円度等のローラ性能が低下してしまう。そこで、本発明では、シャフトに対してコロ及びスペーサをフリーな状態に装着すると共に、コロと係止部材及びスペーサとの間はキー結合により連結してシャフトに伝達された回転駆動力をキー結合を介して各コロに伝達する。コロがシャフトに対してフリーな状態にあるため、コロには不要な応力及び歪みが発生せず、ローラとして極めて良好な真円度が得られ、安定したローラ回転精度が達成される。
【0021】
本例では、各コロ31〜34にはキー溝を形成すると共に、係止部材50a及び50b並びにスペーサ41〜43にはキーを形成してキー結合を形成する。従って、シャフト30に伝達された回転駆動力は、係止部材50a及び50bに伝達され、係止部材とコロとの間に形成されるキー結合により隣接するコロ31及び34に伝達される。これらコロに伝達された回転駆動力はスペーサ41及び43を介してコロ32及び33に伝達される。
【0022】
次に、本発明による基板搬送装置における搬送ローラの水平度調整機構について説明する。図4は、チャンバの外部から搬送ローラの軸線方向に見た側面図である。一例として5本の搬送ローラの水平度を調整する機構について説明する。各搬送ローラには傘歯車70(図面を明瞭にするため、1本の搬送ローラだけに符号を付す)が結合され、傘歯車70は、駆動軸72に結合された傘歯車71が連結され、駆動軸72の回転駆動力が各搬送ローラに伝達される。駆動軸72は、4つの垂直フレーム80a〜80dにより回転自在に支持され、これら4つの垂直フレームはベースフレーム81に取り付ける。ベースフレーム81は、昇降機構82を介してベース60に固定され、昇降機構82を調整することにより、駆動軸72の垂直方向の高さが調整され、搬送ローラの垂直方向の高さが調整されることになる。この垂直方向の高さ調整により、搬送ローラの水平度が調整される。尚、この水平度調整機構は、搬送ローラの両側に設けることが可能である。また、本例では、5本の搬送ローラの水平度を調整する機構としたが、搬送ローラの本数は一例である。
【0023】
本発明は、上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。
例えば、上述した実施例では、現像工程及び洗浄工程を例にして説明したが、これらの工程以外の各種工程にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】基板処理システムの一例を示す図
【図2】搬送ローラの一例を示す図
【図3】図2に示す搬送ローラの一部を拡大して示す断面図
【図4】搬送ローラをチャンバの外側から見た側面図
【符号の説明】
【0025】
1…現像ユニット、2…洗浄ユニット、3…基板、4…搬送ローラ、10…現像チャンバ、11…現像ノズル、20…洗浄チャンバ、30…シャフト、31〜38…コロ、41〜46…スペーサ、50a〜50f…係止部材、51…回転支持部材、60…ベース、70…ギア(傘歯車)、71…傘歯車、72…駆動軸、80a〜80d…垂直フレーム、81…水平フレーム、82…昇降機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種基板を搬送する搬送ローラであって、この搬送ローラは、
円筒状のシャフトと、このシャフトに嵌合されると共にローラ軸線方向に沿って配置され、搬送すべき基板と当接して基板に搬送力を伝達する複数のコロと、前記シャフトに嵌合されると共に隣接する2つの前記コロの間を所定間隔に維持し、隣接するコロ同士を連結するスペーサと、前記シャフトに固定されると共に前記コロに連結され、コロ及びスペーサを固定する少なくとも1対の係止部材とを有することを特徴とする搬送ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ローラにおいて、前記係止部材は、前記シャフトにネジ止めされていることを特徴とする搬送ローラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送ローラにおいて、前記コロは、係止部材及び/またはスペーサとキー結合により連結されていることを特徴とする搬送ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の搬送ローラにおいて、前記コロ及びスペーサが1対の係止部材により固定されている搬送部位が、シャフトに複数設けられていることを特徴とする搬送ローラ。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の搬送ローラを備えることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板搬送装置において、前記搬送ローラを基板搬送方向に沿って複数本配置し、複数の搬送ローラを搬送ローラのシャフト両端にて互いに連結する連結フレームと、該搬送ローラに連結され、搬送ローラに回転駆動力を伝達する駆動機構と、該連結フレームに連結され、搬送ローラの水平度を調整する水平度調整機構と、を備えることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板搬送装置において、前記複数の搬送ローラは、部分的にチャンバに包囲されており、前記駆動機構及び水平調整機構が、前記チャンバ外に設けられていることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の基板搬送装置において、該搬送ローラを回動可能に支持する回転支持部材を備えていることを特徴とする基板搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−56471(P2008−56471A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238408(P2006−238408)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】