説明

搬送用コンベヤチェーン

【課題】バックベンドが可能で立体的な搬送を実現するとともに、スプロケット歯の掛かりが深く、歯飛びしにくい搬送用コンベヤチェーンを提供する。
【解決手段】連結ピンが貫通するピン用長孔が形成された筒状部からなる頭部と該頭部にチェーン長手方向に延設された一対の脚部とからなるリンク本体が、トッププレートの下面に設けられてリンクが構成され、筒状部にピン用貫通孔が形成された軸受体が回転可能に装着されて軸受部が形成され、一方のリンクに形成された頭部が隣接する他方のリンクの一対の脚部間に配設された状態で、軸受部を貫通して、その両端が一対の脚部にそれぞれ形成されたピン孔に挿嵌された連結ピンにより、リンクどうしが無端状に連結され、軸受体140の一端が筒状部より外側に突出して形成されているとともにその突出した端部に鍔142が形成されていることによって前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、薬品関連産業、一般産業等でビン、缶、食品、医薬品、その他物品を搬送する場合に使用される搬送用コンベヤチェーンに関し、特に、曲線経路を循環させて使用する搬送用コンベヤチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、曲線経路を循環させて使用する搬送用コンベヤチェーンは公知である。
【0003】
例えば、図13及び図14に示すような、外リンクプレート320及び内リンクプレート310に平行にトッププレート380を取り付けた、いわゆる水平駆動チェーン300が知られている。ここで、図14は、図13を矢視XIV方向から見た時の平面図である。特にトッププレート380をエンジニアリングプラスチックで成形した水平駆動チェーン300は、回転寿司の搬送用コンベヤチェーンとして多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図15に示すような、トッププレート480の前後が櫛歯状の凹凸形状に形成されたトップチェーン400も知られている。ここで、図15は、トップチェーン400の背面図である。このトップチェーン400は、搬送路の曲線軌道部でも利用できるように、リンク440の後部のブシュ孔460は軸方向に拡開するテーパ状になっている。前部のピン孔450と後部のブシュ孔460を整列させて、それぞれのピン孔450及びブシュ孔460に連結ピン420を装入すると、隣り合うリンク440は互いに水平方向への屈曲を許された状態になる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3580415号公報
【特許文献2】特許第3398110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述したような水平駆動チェーン300は、その構造上、トッププレート380に対して垂直方向の屈曲、すなわち、バックベンドができないため、搬送経路途中に垂直方向の屈曲が存在するような立体的な水平搬送用には不向きであるという課題があった。
【0007】
一方、前述したようなトップチェーン400は、スプロケットとブシュ相当部とが噛み合う軌道、すなわち、スプロケットのピッチ円SPがチェーンセンターCC(上面から見た場合の)より、かなりスプロケット中心側に寄っているため、スプロケット歯の掛かりが浅く、歯飛びしやすいという課題があった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、バックベンドが可能で立体的な搬送を実現するとともに、スプロケット歯の掛かりが深く、歯飛びしにくい搬送用コンベヤチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず、本請求項1に係る発明は、連結ピンが貫通するピン用長孔が形成された略々円筒状の筒状部からなる頭部と該頭部にチェーン長手方向に延設された一対の脚部とからなるリンク本体が、トッププレートの下面に設けられてリンクが構成され、前記筒状部にピン用貫通孔が形成された略々円柱状の軸受体が回転可能に装着されて軸受部が形成され、一方のリンクに形成された頭部が隣接する他方のリンクの一対の脚部間に配設された状態で、前記軸受部を貫通して、その両端が一対の脚部にそれぞれ形成されたピン孔に挿嵌された連結ピンにより、リンクどうしが無端状に連結されてなる搬送用コンベヤチェーンであって、前記軸受体の一端が筒状部より外側に突出して形成されているとともにその突出した端部に鍔が形成されていることにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
そして、本請求項2に係る発明は、請求項1に係る搬送用コンベヤチェーンにおいて、前記トッププレートがリンクより幅広のスラットを有することにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0011】
また、本請求項3に係る発明は、請求項2に係る搬送用コンベヤチェーンにおいて、前記スラットが前後のリンクにおいて互いに組み合う櫛歯状形状であることにより、前記課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の搬送用コンベヤチェーンは、連結ピンが貫通するピン用長孔が形成された略々円筒状の筒状部からなる頭部と、頭部にチェーン長手方向に延設された一対の脚部とからなるリンク本体が、トッププレートの下面に設けられてリンクが構成され、筒状部にピン用貫通孔が形成された略々円柱状の軸受体が回転可能に装着されて軸受部が形成され、一方のリンクに形成された頭部が隣接する他方のリンクの一対の脚部間に配設された状態で軸受部を貫通して、その両端が一対の脚部にそれぞれ形成されたピン孔に挿嵌された連結ピンにより、リンクどうしが無端状に連結されてなる搬送用コンベヤチェーンであることにより、リンクが連結ピンを中心に垂直方向に回動するとともに連結ピンがピン用長孔内で水平方向の遊びを有しているので、隣り合うリンクは互いに上下及び水平方向への屈曲を許された状態となりバックベンドが可能で立体的な搬送を実現でき、加えて、以下のような特有の構成に対応した格別の効果を奏することができる。
【0013】
すなわち、本請求項1に係る搬送用コンベヤチェーンによれば、軸受体の一端が筒状部より外側に突出して形成されているとともにその突出した端部に鍔が形成されていることにより、軸受体間にスプロケット歯が入り込むようにチェーンとスプロケットが噛み合うとともに、チェーンの浮き上がりを押さえるようにスプロケット歯側面と軸受体の鍔が摺動するので、スプロケット歯の掛かりが深く、歯飛びしにくい搬送用コンベヤチェーンが実現できる。
【0014】
しかも、後述するような搬送用コンベヤチェーンの搬送経路に沿ったガイドレールを軸受体の突出部に摺接させるように設置することにより、上下及び水平方向への屈曲を円滑に案内することが実現でき、優れた搬送性能を発揮させることができる。
【0015】
そして、本請求項2に係る搬送用コンベヤチェーンによれば、請求項1に係る搬送用コンベヤチェーンにおいて、トッププレートがリンクより幅広のスラットを有することにより、搬送物とトッププレートとの接触面積が大きくなるので、搬送物を安定して搬送することが実現できる。
【0016】
さらに、本請求項3に係る搬送用コンベヤチェーンによれば、請求項2に係る搬送用コンベヤチェーンにおいて、スラットが前後のリンクにおいて互いに組み合う櫛歯状形状であることにより、水平方向に屈曲した場合であっても前後のトッププレート間に大きな隙間が生じることを防止できるので、縦長形状の缶やビンなど物品を搬送する場合であっても物品がトッププレート間に生じる隙間に嵌って転倒することなく水平屈曲軌道に対して安定且つ確実な搬送が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の搬送用コンベヤチェーンの旋回部分を上方から見た時の斜視図。
【図2】実施例1の搬送用コンベヤチェーンの旋回部分を下方から見た時の斜視図。
【図3】実施例1の搬送用コンベヤチェーンのリンクの斜視図。
【図4】実施例1の搬送用コンベヤチェーンのリンクの上面図。
【図5】実施例1の搬送用コンベヤチェーンのリンクの側面図。
【図6】実施例1の搬送用コンベヤチェーンの2リンクの連結状態を説明する斜視図。
【図7】実施例1の搬送用コンベヤチェーンが水平屈曲走行する状態を説明する断面図。
【図8】実施例1の搬送用コンベヤチェーンが垂直屈曲走行する状態を説明する側面図。
【図9】図8の搬送用コンベヤチェーンを矢視IXから見た時の上面図。
【図10】実施例2の搬送用コンベヤチェーンの旋回部分を上方から見た時の斜視図。
【図11】実施例2の搬送用コンベヤチェーンの旋回部分を下方から見た時の斜視図。
【図12】実施例2の搬送用コンベヤチェーンの2リンクの連結状態を説明する斜視図。
【図13】従来の水平駆動チェーンの側面図。
【図14】図13の水平駆動チェーンの矢視XIVから見た時の背面図。
【図15】従来のトップチェーンの背面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の搬送用コンベヤチェーンは、連結ピンが貫通するピン用長孔が形成された略々円筒状の筒状部からなる頭部と、頭部にチェーン長手方向に延設された一対の脚部とからなるリンク本体が、トッププレートの下面に設けられてリンクが構成され、筒状部にピン用貫通孔が形成された略々円柱状の軸受体が回転可能に装着されて軸受部が形成され、一方のリンクに形成された頭部が隣接する他方のリンクの一対の脚部間に配設された状態で、軸受部を貫通して、その両端が一対の脚部にそれぞれ形成されたピン孔に挿嵌された連結ピンにより、リンクどうしが無端状に連結されてなる搬送用コンベヤチェーンであって、軸受体の一端が筒状部より外側に突出して形成されているとともにその突出した端部に鍔が形成されていることによって、バックベンドが可能で立体的な搬送を実現するとともに、スプロケット歯の掛かりが深く、歯飛びしにくい搬送用コンベヤチェーンを提供するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0019】
例えば、本発明の搬送用コンベヤチェーンは、リンク本体とトッププレートとがエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂により一体成形されたものであっても、あるいは、リンク本体とトッププレートとを別部材として形成し、接着やネジ止めなどの方法で両者を固設して構成されたものであっても何ら構わない。
【実施例1】
【0020】
本発明の一実施態様である実施例1の搬送用コンベヤチェーン100について、図1乃至図9に基づいて説明する。
【0021】
ここで、図1は、実施例1の搬送用コンベヤチェーン100がスプロケットSの歯STに、後述する軸受体140の突出部が良好に噛み合って水平旋回している旋回部分を上方から見た時の斜視図であり、図2は、図1に示した旋回部分を下方から見た時の斜視図であり、図3は、実施例1の搬送用コンベヤチェーン100を構成するリンク120の斜視図であり、図4は、実施例1の搬送用コンベヤチェーン100を構成するリンク120の上面図であり、図5は、実施例1の搬送用コンベヤチェーン100を構成するリンク120の側面図であり、図6は、実施例1の搬送用コンベヤチェーン100を構成する2つのリンクの連結状態を説明する斜視図であり、図7は、実施例1の搬送用コンベヤチェーン100が水平屈曲走行する状態を説明する断面図であり、図8は、実施例1の搬送用コンベヤチェーン100が垂直屈曲走行する状態を説明する側面図であり、図9は、図8の搬送用コンベヤチェーン100を矢視IXから見た時の上面図である。
【0022】
本実施例の搬送用コンベヤチェーン100は、図6及び図7に示すように、リンク120が連結ピン130により連結されてなるもので、直線方向、上下左右方向などの走行ラインに沿って屈曲しながら走行できるユニバーサルタイプの搬送用コンベヤチェーンである。
【0023】
搬送用コンベヤチェーン100を構成するリンク120は、図3乃至図5に示すように、搬送物が載置されるトッププレート121と、トッププレート121の下面に設けられたリンク本体124とからなり、このリンク120は合成樹脂で一体に成形されている。
【0024】
リンク本体124は、図6に示すように、軸受体140が装着される軸受体用の筒孔125aを有する略々円筒状の頭部125を備えると共に、この頭部125にチェーン長手方向に延設された一対の脚部126、127を備えている。
【0025】
また、この頭部125の筒孔125a周囲の筒状部には、連結ピン130が貫通するピン用長孔125bが形成されている。脚部126、127には、それぞれ連結ピン130が挿嵌されるピン孔126a、127aが形成されている。
【0026】
頭部125の筒孔125a内には、リンク120どうしを連結するためのリンク120の高さよりも略スプロケットの歯厚分長い略々円柱状で端部に鍔142が形成されている軸受体140が挿入され、この軸受体140は中心軸線を中心として自由に回動するように装着される。このように、この頭部の筒孔125a内に装着された軸受体140と、頭部125とで軸受部150が構成される(図7)。軸受体140には、図6及び図7に示すように、連結ピン130が遊嵌される円形のピン用貫通孔140aが形成されている。
【0027】
上記の構成からなるリンク120を連結して搬送用コンベヤチェーン100を形成する場合、まず、各リンク120の頭部125の筒孔125a内に軸受体140を装着し、次いで、一方のリンク120の頭部125が隣接する他方のリンク120の一対の脚部126、127間に位置するようにして、脚部間に亘って設けられた連結ピン130により、リンク120どうしを無端状に連結する。
【0028】
このように構成された実施例1の搬送用コンベヤチェーン100は、図1及び図2に示すように軸受体140の円柱状の突出部がスプロケットSの歯溝に噛み合うように懸架され水平旋回する。そのため、搬送用コンベヤチェーン100のセンターラインとスプロケットSのピッチ円とが同一となり、スプロケット歯STの掛かりが深く、歯飛びしにくい搬送用コンベヤチェーン100が実現できる。また、軸受体140の突出した端部に形成した鍔142がスプロケットSの歯側面と摺接するため、高速回転で旋回したとしても搬送用コンベヤチェーン100が浮き上がることなく安定して搬送物を搬送することができる。
【0029】
また、図8及び図9に示すように、搬送経路の復路などで、複数の搬送用コンベヤチェーンを立体交差させる場合などにおいて、搬送用コンベヤチェーンに並設して垂直方向に屈曲したガイドレール160を設置することによって、所望の垂直屈曲軌道を実現することができる。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明の別の実施態様である実施例2の搬送用コンベヤチェーン200について、図10乃至図12に基づいて説明する。
【0031】
実施例2の搬送用コンベヤチェーン200は、前述した実施例1の搬送用コンベヤチェーン100とトッププレート220の形状を除き、基本的な装置構成が全く同一であるから、同一部材に付した符号の100番台を200番台に書き換えることにより、その説明を省略する。
【0032】
ここで、図10は、実施例2の搬送用コンベヤチェーン200がスプロケットSの歯STに、軸受体240の突出部が良好に噛み合って水平旋回している旋回部分を上方から見た時の斜視図であり、図11は、図10に示した旋回部分を下方から見た時の斜視図であり、図12は、実施例2の搬送用コンベヤチェーン200を構成する2つのリンクの連結状態を説明する斜視図である。
【0033】
実施例1の搬送用コンベヤチェーン100は、リンクを構成するリンク本体とトッププレートとが略々同じ形状をしているが、実施例2の搬送用コンベヤチェーン200は、図12に示すように、トッププレート221が、リンク本体より幅広のスラット228を有している。そして、このスラット228が、前後のリンクにおいて互いに組み合う櫛歯状形状をしている。
【0034】
そのため、搬送用コンベヤチェーン200が水平面上を屈曲走行しても前後のリンク間に大きな隙間が生じず、缶やビンなどの縦長の物品を搬送する場合であっても、物品がリンク間の隙間に嵌って転倒するということがなく円滑に物品を搬送できる。
【0035】
以上のように、本発明の搬送用コンベヤチェーンによれば、バックベンドが可能で立体的な搬送を実現するとともに、スプロケット歯の掛かりが深く、歯飛びしにくい搬送用コンベヤチェーンを実現することができるなど、その効果は絶大である。
【符号の説明】
【0036】
100、200 ・・・ 搬送用コンベヤチェーン
120、220 ・・・ リンク
121、221 ・・・ トッププレート
121a ・・・ 面取り
121b ・・・ 湾曲面
121c ・・・ 湾曲面
124 ・・・ リンク本体
125、225 ・・・ 頭部
125a、225a ・・・ 筒孔
125b、225b ・・・ ピン用長孔
126、226 ・・・ 脚部
126a、226a ・・・ ピン孔
127、227 ・・・ 脚部
127a、227a ・・・ ピン孔
130、230 ・・・ 連結ピン
140、240 ・・・ 軸受体
140a、240a ・・・ ピン用貫通孔
142、242 ・・・ 鍔
150 ・・・ 軸受部
160 ・・・ ガイドレール
300 ・・・ 水平駆動チェーン
310 ・・・ 内リンクプレート
320 ・・・ 外リンクプレート
380 ・・・ トッププレート
400 ・・・ トップチェーン
440 ・・・ リンク
450 ・・・ ピン孔
460 ・・・ ブシュ孔
480 ・・・ トッププレート
S ・・・ スプロケット
ST ・・・ スプロケット歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結ピンが貫通するピン用長孔が形成された略々円筒状の筒状部からなる頭部と該頭部にチェーン長手方向に延設された一対の脚部とからなるリンク本体が、トッププレートの下面に設けられてリンクが構成され、前記筒状部にピン用貫通孔が形成された略々円柱状の軸受体が回転可能に装着されて軸受部が形成され、一方のリンクに形成された頭部が隣接する他方のリンクの一対の脚部間に配設された状態で、前記軸受部を貫通して、その両端が一対の脚部にそれぞれ形成されたピン孔に挿嵌された連結ピンにより、リンクどうしが無端状に連結されてなる搬送用コンベヤチェーンであって、
前記軸受体の一端が筒状部より外側に突出して形成されているとともにその突出した端部に鍔が形成されていることを特徴とする搬送用コンベヤチェーン。
【請求項2】
前記トッププレートがリンクより幅広のスラットを有することを特徴とする請求項1に記載の搬送用コンベヤチェーン。
【請求項3】
前記スラットが前後のリンクにおいて互いに組み合う櫛歯状形状であることを特徴とする請求項2に記載の搬送用コンベヤチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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