説明

搬送用ベルト

【課題】 フッ素ゴムの特性を活かしつつ、かつ樹脂のように溶融によるエンドレスが可能な搬送用ベルトを作成することを目的とする。
【解決手段】 本発明にかかる搬送用ベルトは、フッ素ゴム部分とフッ素樹脂部分とが結合したポリマーであり、常温ではゴム弾性を示し、融点以上の高温では、熱可塑性プラスチックと同様の流動性を示す熱可塑性組成物のみからなることを特徴とすることから、大型の機械等に当該搬送用ベルトを提供する場合であっても、金型を作製する必要はなく、現地でエンドレス加工を施すことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂からなり、かつエンドレス加工が可能な搬送用ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送用ベルトには従来から種々のものがあり、幅広い態様で使用されている。搬送用ベルトの使用用途としては、例えば、金融端末装置(いわゆるATM)において入金された現金を搬送するもの、駅の自動改札機において挿入された切符を搬送するもの、印刷機において印刷物を搬送するものおよび食品工場において加工された食品を搬送するもの等である。
【0003】
搬送用ベルトは使用用途に応じて求められる機能が異なっており、この求められる機能としては、例えば、撥水性・撥油性を有することによりベルトに水分を付着させにくいもの、離型性を有することによりベルトに汚れが付着し難いもの、耐静電性を有することにより静電気が発生しにくいもの、抗菌活性を有するものおよび耐熱性を有するもの等である。また、使用用途によっては、現地でのエンドレス加工ができることも要求される。
【0004】
上記のような様々な要求を満たすには、フッ素ゴムを搬送用ベルトの素材に用いることが好ましい。しかしながら、フッ素ゴムは熱可塑性ではないため、フッ素ゴムを素材に用いた搬送用ベルトは、容易にエンドレス加工を行うことができないという不都合がある。
【0005】
そこで、フッ素ゴムの特性を活かしつつもエンドレス加工を可能とするために、フッ素基含有ポリマーと合成樹脂(例えば、ミラブルウレタン)とを含有する樹脂組成物を用いた搬送用ベルトが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−123297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の特許文献1に記載された搬送用ベルトは一体成型品であるので、大型機械に使用される搬送用ベルトを提供する場合には大型の金型を製作する必要があり、また、現地でのエンドレス加工が要求される用途には用いることができない。
【0008】
さらに、フッ素基含有ポリマーと熱可塑性樹脂(例えば、ポリウレタン)とを含有する樹脂組成物を用い、現地で接着を行うことができる搬送用ベルトも現存するものの、この種の搬送用ベルトは、接着部分にいわゆるバリが発生し、ベルト表面の平滑性が損なわれるという問題がある。しかも、接着部分は他の部分よりも脆いため、強い圧力を受けると、接着部分から破断しやすいという問題もあった。
【0009】
本発明の目的は、こうした課題を解消するために鑑みてなされたものであり、フッ素ゴムの特性を活かしつつ、かつ現地でのエンドレス加工が可能な搬送用ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明にかかる搬送用ベルトは、フッ素ゴム部分とフッ素樹脂部分とが結合したポリマーであり、常温ではゴム弾性を示し、融点以上の高温では、熱可塑性プラスチックと同様の流動性を示す熱可塑性組成物のみからなることを特徴とする。
【0011】
上記の発明による搬送用ベルトは、熱可塑性組成物、つまり熱可塑性フッ素ゴムのみからなることにより、フッ素の特性(例えば、撥水性・撥油性、離型性、耐静電性、抗菌活性または耐熱性などが挙げられる)を有しつつも、熱可塑性樹脂の特性(例えば、ゴム弾性、熱安定性、流動性などが挙げられる)をも有する搬送用ベルトを製造することが可能である。
【0012】
さらに本発明にかかる搬送用ベルトは、平ベルトの一方の端部を、複数の凸部が形成されたフィンガー状にするとともに、他方の端部を、前記一方の端部に対して相補的な複数の凹部が形成されたフィンガー状にし、前記複数の凸部を、各々、前記複数の凹部に嵌め込んで接合されることによってエンドレス加工されたことを特徴とする。
【0013】
通常のフッ素ゴムは、熱で溶融させることができないため、平ベルトの一方の端部と、もう一方の端部とを接着剤等で接着する方法をとらざるを得なかった。しかし本発明による搬送用ベルトは、熱可塑性樹脂と同様に溶融させることが可能であるため、熱融着によるフィンガー継手加工を施すことが可能となる。
【0014】
これにより、本発明による搬送用ベルトを作製するに際してあらかじめ金型を作製する必要がなく、大型の機械等に使用される搬送用ベルトを提供する場合であっても、現地でエンドレス加工(熱融着によるフィンガー継手加工)を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によると、フッ素ゴムの特性を活かしつつ、かつ現地でエンドレス加工を行うことが可能な搬送用ベルトを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の搬送用ベルトは、熱可塑性フッ素ゴムのみを素材として用いている。このような熱可塑性フッ素ゴムは、フッ素ゴム部分(ソフトセグメント)とフッ素樹脂部分(ハードセグメント)とが結合したポリマーであり、フッ素樹脂相で物理的な架橋が行われているため常温ではゴム弾性を示し、融点以上の高温では、熱可塑性プラスチックと同様の流動性を示す素材である。具体的な商品名としては、ダイキン工業株式会社製 ダイエル(登録商標)サーモプラスチックである。なお、「常温」とは25℃前後を意味するものの、本実施形態の搬送用ベルトは、春夏秋冬を通じてありえる温度(例えばー5℃〜45℃)であれば問題なく使用することができる。
【0017】
また、本実施形態の搬送用ベルトに使用される熱可塑性フッ素ゴムは、熱安定性に優れており、融点(約230℃)以上で良好な流動性を示すため、一般的な熱可塑性樹脂に適用される押出成形または圧縮成形による成形が可能である。つまり、本発明の搬送用ベルトを成形するにあたり、必要とするベルトサイズに応じた金型を製作する必要がなく、押出成形で長尺のベルトが作成可能なため、当該搬送用ベルトが使用される機械等の大きさに応じたサイズの搬送用ベルトを容易に提供することができる。また、融点のない一般的な加硫フッ素ゴムと比較すると、約230℃で融解するため、熱融着により現地でのエンドレス加工を行うことも可能となる。
【0018】
現地でのエンドレス加工は、フィンガー継手加工と呼ばれる加工にて行うことができる。このフィンガー継手加工は、先ずは、熱可塑性フッ素ゴムからなる平ベルトの一方の端部を、複数の凸部が形成されたフィンガー状にすると共に、他方の端部を、上記の一方の端部に対して相補的な複数の凹部が形成されたフィンガー状にすることによって行われる。次いで、上記の一方の端部に形成された各凸部を、上記の他方の端部に形成された各凹部に、1対1で嵌め込む。そして、このように各凹部に各凸部が嵌め込まれた平ベルトを、両方の面から圧力を加えるとともに融点(約230℃)よりも高い熱を与えて、上記の一方の端部と他方の端部とを溶着させることで、端部のないエンドレスベルトとされる。
【0019】
このように、本実施形態の搬送用ベルトは、フッ素ゴムの優れた特性を活かしつつも現地でエンドレス加工を行うことができるので、例えば大型機械に使用される場合であっても、一体成型品のように多大なコストを必要とせずに提供することができる。
【0020】
また、本実施形態によると、熱可塑性フッ素ゴムからなる平ベルトの一方の端部に複数の凸部を形成するとともに他方の端部に複数の凹部を形成し、これらの各凹部と各凸部とを嵌め込んだ上で、当該平ベルトの両方の面から圧力を加えて融点(約230℃)以上に高い熱を加えて一方の端部と他方の端部とを溶着させるフィンガー継手加工を行うことにより、エンドレスベルトを提供することができる。したがって、バリが発生することなく、しかも、ベルト表面の平滑性が損なわれることもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素ゴム部分とフッ素樹脂部分とが結合したポリマーであり、常温ではゴム弾性を示し、融点以上の高温では、熱可塑性プラスチックと同様の流動性を示す熱可塑性組成物のみからなる
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項2】
平ベルトの一方の端部を、複数の凸部が形成されたフィンガー状にするとともに、他方の端部を、前記一方の端部に対して相補的な複数の凹部が形成されたフィンガー状にし、前記複数の凸部を、各々、前記複数の凹部に嵌め込んで接合されることによってエンドレス加工された
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送用ベルト。

【公開番号】特開2012−96886(P2012−96886A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245669(P2010−245669)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】