説明

搬送装置及び基板処理装置

【課題】歪みの発生を抑えつつ基板を搬送すること。
【解決手段】帯状のシート基板FBを搬送する搬送装置30であって、シート基板FBを案内する表面を有し、表面とシート基板FBとの間に液状媒体LQを介してシート基板FBを案内するローラー部材Rを備える。ローラー部材Rは、外周面Ra上のうち支持領域Rbで基板FBの裏面を支持した状態で、基板FBを案内する。この場合、基板FBとローラー部材Rの外周面Raとの間に液状媒体LQが介在しているため、液状媒体LQの表面が基板FBを案内する案内面となる。基板FBが液状媒体LQを介して案内されるため、基板FBとローラー部材Rとの間における摩擦力の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置などの表示装置を構成する表示素子として、例えば液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子、電子ペーパに用いられる電気泳動素子などが知られている。現在、これらの表示素子として、基板表面に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)と呼ばれるスイッチング素子や増幅素子を形成した後、その上にそれぞれの表示デバイスを形成する能動的表示素子(アクティブディプレーデバイス)が主流となってきている。
【0003】
近年では、シート状の基板(例えばフィルム部材など)上に表示素子を形成する技術が提案されている。このような技術として、例えばロール・トゥ・ロール方式(以下、単に「ロール方式」と表記する)と呼ばれる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ロール方式は、基板供給側の供給用ローラーに巻かれた1枚のシート状の基板(例えば、帯状のフィルム部材)を送り出すと共に送り出された基板を基板回収側の回収用ローラーで巻き取りながら基板を搬送する。
【0004】
そして、基板が送り出されてから巻き取られるまでの間に、例えば複数の搬送ローラー等を用いて基板が搬送され、複数の処理装置(ユニット)を用いてTFTを構成するゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体膜、ソース・ドレイン電極等を形成し、基板の被処理面上に表示素子の構成要素を順次形成する。例えば、有機ELの素子を形成する場合には、発光層、陽極、陰極、電気回路等を基板上に順次形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2008/129819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成においては、基板の搬送時に、基板と搬送ローラーとの間に摩擦が発生する場合がある。例えば、基板の搬送方向に対する直交方向(基板の幅方向(短尺方向))において基板と搬送ローラーとの間の摩擦の大きさが異なったりすると、基板に歪みが発生する場合がある。このような基板の歪みは、例えば、基板の被処理面に形成する表示素子の各構成要素の位置合わせ精度の低下などの原因となることがある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明は、歪みの発生を抑えつつ基板を搬送することができる搬送装置及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に従えば、帯状のシート基板を搬送する搬送装置であって、シート基板を案内する表面を有し、表面とシート基板との間に液状媒体を介してシート基板を案内するローラー部材を備える搬送装置が提供される。
【0009】
本発明の第二の態様に従えば、帯状のシート基板を搬送する搬送装置と、シート基板に対して所定の処理を行う処理装置とを備え、当該搬送装置として、本発明の第一の態様に従う搬送装置が用いられる基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、歪みの発生を抑えつつ基板を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係る搬送装置の構成を示す図。
【図3】本実施形態に係る搬送装置の動作を示す図。
【図4】本実施形態に係る搬送装置の動作を示す図。
【図5】本実施形態に係る搬送装置の動作を示す図。
【図6】本実施形態に係る搬送装置の他の構成を示す図。
【図7】本実施形態に係る搬送装置の他の構成を示す図。
【図8】本実施形態に係る搬送装置の他の構成を示す図。
【図9】本実施形態に係る搬送装置の他の構成を示す図。
【図10】本実施形態に係る搬送装置の他の構成を示す図。
【図11】本実施形態に係る搬送装置の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る基板処理装置FPAの構成を示す図である。
図1に示すように、基板処理装置FPAは、シート基板(例えば、帯状のフィルム部材)FBを供給する基板供給部SU、基板FBの表面(被処理面)に対して処理を行う基板処理部PR、基板FBを回収する基板回収部CL、及び、これらの各部を制御する制御部CONTを有している。基板処理装置FPAは、例えば製造工場の床部などに設置される。
【0013】
なお、本実施形態では、図1に示すようにXYZ座標系を設定し、以下では適宜このXYZ座標系を用いて説明を行う。XYZ座標系は、例えば、水平面に沿ってX軸及びY軸が設定され、鉛直方向に沿ってZ軸が設定される。また、基板処理装置FPAは、全体としてX軸に沿って、そのマイナス側(−側)からプラス側(+側)へ基板FBを搬送する。その際、帯状の基板FBの幅方向(短尺方向)は、Y軸方向に設定される。
【0014】
基板処理装置FPAは、基板供給部SUから基板FBが送り出されてから、基板回収部CLによって基板FBが回収されるまでの間に、基板FBの表面に各種処理を実行する装置である。基板処理装置FPAは、基板FB上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に用いることができる。
【0015】
基板処理装置FPAにおいて処理対象となる基板FBとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0016】
基板FBは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0017】
基板FBのY方向(短尺方向)の寸法は例えば50cm〜2m程度に形成されており、X方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば基板FBのY方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。本実施形態においては、Y方向の寸法が2mを超える基板FBであっても好適に用いられる。また、基板FBのX方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0018】
基板FBは、例えば1mm以下の厚みを有し、可撓性を有するように形成されている。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても線断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板FBとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0019】
基板供給部SUは、例えばロール状に巻かれた基板FBを基板処理部PRへ送り出して供給する。この場合、基板供給部SUには、基板FBを巻きつける軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。この他、例えばロール状に巻かれた状態の基板FBを覆うカバー部などが設けられた構成であっても構わない。なお、基板供給部SUは、ロール状に巻かれた基板FBを送り出す機構に限定されず、帯状の基板FBをその長さ方向に順次送り出す機構を含むものであればよい。
【0020】
基板回収部CLは、基板処理部PRからの基板FBを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部CLには、基板供給部SUと同様に、基板FBを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動装置、回収した基板FBを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部PRにおいて基板FBがパネル状に切断される場合などには例えば基板FBを重ねた状態に回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板FBを回収する構成であっても構わない。
【0021】
基板処理部PRは、基板供給部SUから供給される基板FBを基板回収部CLへ搬送すると共に、搬送の過程で基板FBの被処理面Fpに対して処理を行う。基板処理部PRは、例えば処理装置10、搬送装置30及びアライメント装置50を有している。
【0022】
処理装置10は、基板FBの被処理面Fpに対して例えば有機EL素子を形成するための各種装置を有している。このような装置としては、例えば被処理面Fp上に隔壁を形成するための隔壁形成装置、電極を形成するための電極形成装置、発光層を形成するための発光層形成装置などが挙げられる。より具体的には、液滴塗布装置(例えばインクジェット型塗布装置、スクリーン印刷型塗布装置など)、成膜装置(例えば蒸着装置、スパッタリング装置など)、露光装置、現像装置、表面改質装置、洗浄装置などが挙げられる。これらの各装置は、基板FBの搬送経路に沿って適宜設けられる。
【0023】
搬送装置30は、基板処理部PR内において基板FBを基板回収部CL側へ搬送するローラー部材Rを有している。ローラー部材Rは、基板FBの搬送経路に沿って複数設けられている。複数のローラー部材Rのうち少なくとも一部のローラー部材Rには、駆動機構(不図示)が取り付けられている。このようなローラー部材Rが回転することにより、基板FBがX軸方向に搬送されるようになっている。複数のローラー部材Rのうち一部のローラー部材Rが基板FBの表面と交差する方向に移動可能に設けられた構成であっても構わない。
【0024】
アライメント装置50は、基板FBに対してアライメント動作を行う。アライメント装置50は、基板FBの位置を検出するアライメントカメラ51と、当該アライメントカメラ51の検出結果に基づいて基板FBの位置及び姿勢の少なくとも一方を調整する調整装置52とを有している。
【0025】
アライメントカメラ51は、例えば基板FBに形成されたアライメントマークを検出し、検出結果を制御部CONTに送信する。制御部CONTは、当該検出結果に基づいて基板FBの位置情報を求め、当該位置情報に基づいて調整装置52による調整量を制御する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る搬送装置30の構成を示す図である。
図2に示すように、搬送装置30は、ローラー部材Rの他、液状媒体供給装置LS及び液状媒体回収装置LCを有している。ローラー部材Rは、例えば円筒状に形成されており、ローラー部材Rは、例えば図中時計回りに回転可能に設けられている。基板FBの裏面とローラー部材Rの外周面(表面)Raとの間には、液状媒体LQが介在している。
【0027】
液状媒体LQは、ローラー部材Rの回転軸方向に関して、外周面Raのほぼ全面に亘っ供給されており、液状媒体LQの厚みは、例えばローラー部材Rの回転軸方向においてほぼ均一となっている。液状媒体LQとしては、例えば、水やシリコンオイル、磁性流体などが挙げられる。ローラー部材Rは、外周面Ra上のうち支持領域Rbで基板FBの裏面を支持した状態で、基板FBを案内する。この場合、基板FBとローラー部材Rの外周面Raとの間に液状媒体LQが介在しているため、液状媒体LQの表面が基板FBを案内する案内面となる。基板FBが液状媒体LQを介して案内されるため、基板FBとローラー部材Rとの間における摩擦力の発生が抑制される。
なお、本実施形態において、基板FBの液状媒体LQに接する面、すなわち、基板FBの裏面に、当該液状媒体LQに対するバリア層を形成してもよい。
【0028】
液状媒体供給装置LSは、吐出ノズルNZ1を有している。吐出ノズルNZ1は、ローラー部材Rのうち支持領域Rbよりも回転方向の上流側に配置されている。吐出ノズルNZ1の先端には、開口部OP1が形成されている。開口部OP1は、ローラー部材Rの外周面Raに向けられている。吐出ノズルNZ1は、不図示の液状媒体供給源に接続されている。開口部OP1からは、当該液状媒体供給源から供給される液状媒体が外周面Raに向けて吐出される。
なお、ローラー部材Rの外周面Raには、吐出ノズルNZ1から供給される液状媒体LQを外周面Raで保持するために、液状媒体LQに対して親水性(親液性)を有する膜をコーティングしてもよい。
【0029】
開口部OP1は、例えばローラー部材Rの回転軸方向(例えば図1に示すローラー部材Rの場合はY方向)に平行な方向が長手方向となるようにスリット状に形成されている。なお、本実施形態においては、当該回転軸方向は、基板FBの搬送方向に直交する方向(基板FBの幅方向)と一致する。
【0030】
開口部OP1は、ローラー部材Rの回転軸方向の全体をカバーする寸法に形成されている。このため、開口部OP1から吐出された液状媒体は、ローラー部材Rの外周面Ra上に満遍なく塗布される。勿論、この構成に限られることは無く、例えば吐出ノズルNZ1の先端にローラー部材Rの回転軸方向に沿って複数の開口部OP1が配置された構成であっても構わない。
【0031】
液状媒体回収装置LCは、吸引ノズルNZ2を有している。吸引ノズルNZ2は、ローラー部材Rのうち支持領域Rbよりも回転方向の下流側に配置されている。吸引ノズルNZ2の先端には、開口部OP2が形成されている。開口部OP2は、ローラー部材Rの外周面Raに向けられている。吸引ノズルNZ2には、不図示の吸引機構に接続されている。吸引ノズルNZ2は、当該吸引機構による吸引力を用いて、外周面Ra上の液状媒体を開口部OP2から吸引して回収する。
【0032】
開口部OP2は、例えば開口部OP1と同様にローラー部材Rの回転軸方向に平行な方向が長手方向となるようにスリット状に形成されている。開口部OP2は、外周面Raのうちローラー部材Rの回転軸方向の全体をカバーする寸法に形成されている。このため、開口部OP2においては、外周面Raのほぼ全面に配置された液状媒体が満遍なく吸引される。勿論、この構成に限られることは無く、例えばローラー部材Rの回転軸方向に沿って複数の開口部OP2が配置された構成であっても構わない。
【0033】
上記のように構成された基板処理装置FPAは、制御部CONTの制御により、ロール方式によって有機EL素子、液晶表示素子などの表示素子(電子デバイス)を製造する。以下、上記構成の基板処理装置FPAを用いて表示素子を製造する工程を説明する。
【0034】
まず、不図示のローラーに巻き付けられた帯状の基板FBを基板供給部SUに取り付ける。制御部CONTは、この状態から基板供給部SUから当該基板FBが送り出されるように、不図示のローラーを回転させる。そして、基板処理部PRを通過した当該基板FBを基板回収部CLに設けられた不図示のローラーで巻き取らせる。この基板供給部SU及び基板回収部CLを制御することによって、基板FBの被処理面Fpを基板処理部PRに対して連続的に搬送することができる。
【0035】
制御部CONTは、基板FBが基板供給部SUから送り出されてから基板回収部CLで巻き取られるまでの間に、基板処理部PRの搬送装置30によって基板FBを当該基板処理部PR内で適宜搬送させつつ、処理装置10によって表示素子の構成要素を基板FB上に順次形成させる。
【0036】
搬送装置30のローラー部材Rで基板FBを搬送する場合、搬送装置30のローラー部材Rの外周面Rと、基板FBの裏面との間に、液状媒体供給装置LSを用いて液状媒体LQを供給する。例えば図3に示すように、制御部CONTは、ローラー部材Rを回転させつつ、吐出ノズルNZ1の開口部OP1から外周面Raに向けて液状媒体LQを吐出させる。ローラー部材Rが一回転以上回転すると、図4に示すように、吐出ノズルNZ1と吸引ノズルNZ2との間におけるローラー部材Rの外周面Raには液状媒体LQの層が形成される。
【0037】
液状媒体LQの層が形成された後、制御部CONTによって当該ローラー部材Rを用いた基板FBの搬送が行われる。図5に示すように、ローラー部材Rの外周面Raのうち所定の支持領域Rbに基板FBが掛けられた状態で案内される。基板FBとローラー部材Rとの間には液状媒体LQが介在しているため、基板FBとローラー部材Rとの間における摩擦力の発生が抑制される。このため、歪みなどの変形の発生が抑えられた状態で基板FBが搬送される。また、液状媒体LQの層は、ローラー部材Rの回転軸方向においてほぼ均一な厚さとなっているため、ローラー部材R及び液状媒体LQによる搬送速度はローラー部材Rの回転軸方向においてほぼ均一となる。このため、基板FBに対して歪みなどの変形が生じにくくなる。また、ローラー部材Rによって基板FBが安定して支持されるため、当該基板FBに対して処理を行う場合などにおいて、基板FBの面精度が高精度に維持されることになる。
【0038】
なお、本実施形態においては、ローラー部材Rの外周面Raに対して、吐出ノズルNZ1から供給された液状媒体LQを吸引ノズルNZ2で常時、回収する構成を説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば、ローラー部材Rの外周面Raに保持されている液状媒体LQが、所定の厚さで外周面Raに保持されている場合には、吐出ノズルNZ1による液状液体LQの供給及び吸引ノズルNZ2による液状液体LQの回収を一時停止してもよい。この場合、基板FBの搬送が終了した場合やローラー部材Rのメンテナンスを行う時にのみ、制御部CONTは、ローラー部材R上に配置された液状媒体LQを吸引ノズルNZ2によって回収させてもよい。図6に示すように、制御部CONTは、ローラー部材Rを回転させつつ、吸引ノズルNZ2に接続された不図示の吸引機構を作動させる。この動作により、外周面Ra上に配置された液状媒体LQは、ローラー部材Rの回転と共にノズルNZの開口部OP2から吸引されていく。なお、吐出ノズルNZ1及び吸引ノズルNZ2がローラー部材Rの近傍に設けられているため、液状媒体LQの供給時及び回収時には、ローラー部材Rの周囲に液状媒体LQが飛散したりするなどの事態が発生しにくくなる。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、基板FBを搬送する搬送装置30が、外周面Raと基板FBとの間に液状媒体LQを介して基板FBを案内するローラー部材Rを備えることとしたので、基板FBとローラー部材Rとの間における摩擦力の発生が抑制される。これにより、歪みなどの変形の発生を抑えつつ基板FBを搬送することができる。また、本実施形態によれば、ローラー部材Rにより基板FBを安定して支持することができるため、基板FBの面精度を高めることができる。これにより、高精細な処理を行うことができる。
【0040】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、液状媒体供給装置LSの吐出ノズルNZ1の開口部OP1をローラー部材Rの外周面Raに向けた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、開口部OP1が外周面Raとは異なる方向に向けられた構成であっても構わない。
【0041】
例えば、基板FBの裏面が液状媒体LQを保持することが可能(例えば、液状媒体LQに対して親水性(親液性)を有する膜をコーティングしてもよい)であれば、図7に示すように、液状媒体供給装置LSの吐出ノズルNZ1の開口部OP1を基板FBに向けて配置してもよい。開口部OP1からは、基板FBのうちローラー部材Rに案内される面に対して液状媒体LQが吐出され、基板FBがローラー部材Rに到達すると、当該基板FBの裏面のうち液状媒体LQが付着した面が液状媒体LQを介してローラー部材Rに掛けられることになる。この場合、ローラー部材Rの外周面Raと基板FBとの間に液状媒体LQが配置されることになるため、基板FBとローラー部材Rとの間における摩擦力の発生が抑制され、歪みなどの変形が抑えられた状態で基板FBが搬送されることになる。
【0042】
また、図7に示す構成の他に、例えば基板FBと外周面Ra上の支持領域Rbとの間の部分に開口部OP1が向けられた構成とすることができる。この構成によれば、基板FBと支持領域Rbとの間に直接的に液状媒体LQを供給することができる。
【0043】
また、上記実施形態においては、液状媒体供給装置LSの吐出ノズルNZ1の開口部OP1及び液状媒体回収装置LCの吸引ノズルNZ2の開口部OP2がローラー部材Rとは別個に独立して設けられた構成(ローラー部材Rに向けられた構成)を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図8に示すように、ローラー部材Rの外周面Raに開口部OP1及び開口部OP2を配置した構成としても構わない。
【0044】
この構成によれば、吐出ノズルNZ1及び吸引ノズルNZ2を設けなくても済むため、部品点数の削減及び省スペース化が可能となる。なお、開口部OP1に接続される不図示の液状媒体供給源や、開口部OP2に接続される吸引機構などを、例えばローラー部材Rの円筒内部に配置させることができる。また、これらの液状媒体供給源や吸引機構をローラー部材Rの外部に別途配置させた構成であっても構わない。また、図8には、開口部OP1及び開口部OP2の両方が外周面Raに設けられた構成を示したが、これに限られることは無く、例えば開口部OP1及び開口部OP2のうちいずれか一方のみがローラー部材Rの外周面Raに設けられた構成であっても構わない。
【0045】
また、上記実施形態においては、液状媒体回収装置LCが不図示の吸引機構を有し、当該吸引機構の吸引力を用いてローラー部材R上の液状媒体LQを回収する構成としたが、これに加えて基板FBに付着した液状媒体LQを回収する構成を有していても構わない。例えば図9に示す構成では、液状媒体回収装置LCは、吸引ノズルNZ2とは別個に配置されたスキージ部材SQを有している。スキージ部材SQは、ローラー部材Rに対して基板FBの搬送方向下流側に配置されている。スキージ部材SQの先端は、基板FBのうち液状媒体LQに接していた面に近接して配置されている。この構成により、基板FBに付着した液状媒体LQがスキージ部材SQの先端によって掻き取られることになる。これにより、基板FBの状態を清浄に保持することができる。
【0046】
上記実施形態においては、ローラー部材Rの円筒面を用いて基板FBを案内する構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば平面を用いて基板FBを案内する構成であっても構わない。また、円筒面以外の曲面を用いて基板FBを案内する構成であっても構わない。
【0047】
また、上記実施形態においては、ローラー部材Rが周方向に回転可能である構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば回転せずに固定された構成であっても構わない。この構成によれば、基板FBは、ローラー部材R上に形成された液状媒体LQ上を滑るように案内される。このため、基板FBとローラー部材Rとの間における摩擦の発生を抑えた状態で基板FBを搬送することができる。
【0048】
また、上記実施形態の構成において、例えばローラー部材Rの外周面Ra、基板FBの裏面が液状媒体に対して親水性(親液性)にすることによって、液状媒体の保持力を向上させることができる。
【0049】
また、上記実施形態の搬送装置30において、例えば液状媒体回収装置LCを設けない構成であっても構わない。これにより、搬送装置30の部品点数を削減することができ、省スペース化を図ることができる。なお、この構成においては、例えばメンテナンス時などに外部から液状媒体回収装置LCをアクセスさせることで液状媒体LQを回収することができる。
【0050】
また、上記実施形態の搬送装置30において、例えば図10に示すように、ローラー部材Rの外周面Raに円筒状の多孔質層Rpを配置させる構成であっても構わない。この場合、液状媒体供給装置LSは、多孔質層Rpの内周側から外周側に液状媒体を供給するように構成されている。液状媒体供給装置LSは、液状媒体の供給量を調整する調整部LSaを有している。
【0051】
図10に示す構成では、多孔質層Rpの円筒内に液状媒体供給部材Rsが設けられている。液状媒体供給部材Rsは、多孔質層Rpの内周面に接するように円筒状に形成されている。液状媒体供給部材Rsの内部には、液状媒体を流通させる流路Rfが形成されている。各流路Rfは、円筒の軸方向に延びている。流路Rfの一部は、円筒の外周面に開口部を有している。液状媒体は、当該開口部から多孔質層Rpに供給される。流路Rfは、例えば液状媒体供給部材Rsの周方向に複数並んで形成されている。複数の流路Rfは、当該流路Rfの一部(不図示)で接続されている。
【0052】
この構成においては、液状媒体供給装置Lsから供給された液状媒体は、液状媒体供給部材Rsの複数の流路Rfに分岐して流れる。各流路Rfを流れる液状媒体は、当該流路Rfに設けられた開口部から多孔質層Rp内に滲み込み、多孔質層Rpの内周側から外周面Raに滲み出す。このため、多孔質層Rpの外周面Raの全面に均一に液状媒体が供給されることになる。
【0053】
また、液状媒体の供給動作を行う際に、液状媒体供給装置LSに設けられる調整部LSaによって液状媒体の供給量を調整しても構わない。これにより、多孔質層Rpから外周面Raに供給される液状媒体の供給量を調整することができる。このため、液状媒体LQの層厚を調整しやすい構成となる。なお、図10に示すような液状媒体供給部材Rsが配置された構成に限られず、例えば多孔質層Rpに直接液状媒体を供給する構成であっても構わない。
【0054】
また、上記各実施形態では、基板FBの搬送方向が床部に平行な方向(XY平面に平行な方向)である例を挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、基板FBの搬送方向が床部(XY平面)に交差する方向である場合にも、基板FBの裏面とローラー部材Rとの間に液状媒体LQを介在させることが可能である。例えば、図11は、基板FBを鉛直方向に平行な方向に搬送する場合の例を示す図である。
【0055】
図11に示すように、基板FBは、鉛直方向において、上方から下方に向かって搬送される当該基板FBの搬送経路には、ローラー部材Rが設けられている。ローラー部材Rは、鉛直方向に直交する方向(水平方向)において、液状媒体LQを介して支持部Rnが当該基板FBを支持する。
【0056】
当該ローラー部材Rの支持部Rnには、液状媒体供給装置LSの吐出ノズルNZ1が向けられている。吐出ノズルNZ1から吐出される液状媒体LQは、支持部Rnと基板FBとの間に供給される。また、支持部Rnには、液状媒体回収装置LCの吸引ノズルNZ2が向けられている。支持部Rnと基板FBとの間に供給された液状媒体LQは、吸引ノズルNZ2によって吸引されて除去される。吐出ノズルNZ1からの吐出量と、吸引ノズルNZ2による吸引量とを調整することにより、支持部Rnと基板FBとの間に、例えば薄膜状の液状媒体LQの層を形成することができる。
【0057】
基板FBに処理装置10による処理を行う場合、ローラー部材Rの支持部Rnに基板FBを近接させ、上記の吐出量と吸引量との調整により支持部Rnと基板FBとの間に薄膜状の液状媒体LQを配置させる。この動作により、基板FBが支持部Rn上の液状媒体LQに密着し、支持部Rnの形状に沿って湾曲するため、基板FBの面精度が保たれる。また、基板FBが液状媒体LQを介して支持部Rnに支持されるため、支持部Rnと基板FBとの間の摩擦が低減された状態となる。
【0058】
なお、図11では、基板FBが鉛直方向において、上方から下方に向かって搬送される例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、下方から上方に向かって搬送してもよい。また、基板FBが鉛直方向に対して傾いた方向に沿って、基板FBを搬送してもよい。
【0059】
また、上記の各構成において、液状媒体LQとして磁性体を含んだ磁性流体が用いられると共に、ローラー部材Rとして電磁石が用いられる構成であっても構わない。この場合、ローラー部材Rにおける磁力を調整することで、ローラー部材Rと基板FBとの間の液状媒体LQの層厚を調整することが可能となる。液状媒体LQの層厚を変化させることにより、基板FBの摩擦力分布を変化させることができ、当該基板FBの搬送特性を調整することができる。また、磁性流体が用いられる場合、回収が不要となるため、回収時に液状媒体が周囲に飛散するといった事態を回避することができる。このため、周囲の環境の変化を防ぐことができる。
【0060】
また、吐出ノズルNZ1の吐出量及び吸引ノズルNZ2の吸引量を調整することで、ローラー部材Rと基板FBとの間の液状媒体LQの量を調整することができ、これによって液状媒体LQの層厚を調整することもできる。この場合、液状媒体LQとして磁性流体とは異なる他の流体が用いられる構成であっても、液状媒体LQの層厚を調整可能である。また、この場合、基板FBの搬送速度に対してローラー部材Rの回転速度を速くしたり遅くしたりすることで、基板FBの摩擦力分布を調整することができる。
【0061】
さらに、液状媒体LQとして、基板FBの裏面を洗浄するための洗浄液を用いてもよい。洗浄液としては、例えば、純水、酸性溶液、アルカリ性溶液などが挙げられる。酸性溶液としては、例えば過酸化水素などを含む溶液(過酸化水素水など)が挙げられる。アルカリ性溶液としては、例えばアンモニアを含む溶液(アンモニア水など)が挙げられる。また、洗浄液として、例えばアルコールを含む溶液などを用いても良い。また、この場合、液体媒体LQは、基板FBの裏面だけでなく、ローラー部材Rの表面も洗浄することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
FB…基板 FPA…基板処理装置 PR…基板処理部 CONT…制御部 Fp…被処理面 R…ローラー部材 Ra…外周面 Rb…支持領域 LS…液状媒体供給装置 LC…液状媒体回収装置 LQ…液状媒体 NZ…ノズル SQ…スキージ部材 NZ1…吐出ノズル NZ2…吸引ノズル OP1、OP2…開口部 30…搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のシート基板を搬送する搬送装置であって、
前記シート基板を案内する表面を有し、前記表面と前記シート基板との間に液状媒体を介して前記シート基板を案内するローラー部材
を備える搬送装置。
【請求項2】
前記ローラー部材の表面と前記シート基板との間に前記液状媒体を供給する供給系を更に備える
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記供給系は、前記液状媒体を吐出する供給口を有する
請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記供給口は、前記シート基板に対向して配置され、前記シート基板に向けて前記液状媒体を吐出する
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記供給口は、前記ローラー部材の表面に対向して配置され、前記ローラー部材の表面に向けて前記液状媒体を吐出する
請求項3に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記供給口は、前記ローラー部材の表面に設けられている
請求項2又は請求項3に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記ローラー部材は、表面に多孔質層を有し、
前記供給系は、前記多孔質層を介して前記ローラー部材の表面に前記液状媒体を供給する液状媒体供給部を有する
請求項2に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記供給系は、前記ローラー部材の表面に供給される前記液状媒体の量を調整する調整部を有する
請求項7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記ローラー部材の表面と前記シート基板との間の前記液状媒体を回収する回収系を更に備える
請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記回収系は、前記ローラー部材に向けられた回収口を有する
請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記回収系は、前記ローラー部材よりも前記シート基板の搬送方向の下流側に配置されたスキージ部材を有する
請求項9又は請求項10に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記ローラー部材の表面の少なくとも一部は、前記液状媒体に対して親液性に形成されている
請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記ローラー部材は、回転可能に設けられている
請求項1から請求項12のうちいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項14】
帯状のシート基板を搬送する搬送装置と、
前記シート基板に対して所定の処理を行う処理装置と
を備え、
前記搬送装置として、請求項1から請求項13のうちいずれか一項に記載の搬送装置が用いられる
基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−48153(P2013−48153A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185834(P2011−185834)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】