説明

搬送装置

【課題】既存の装置に安価な構成を付加するだけで、稼働中の各ローラの振動や発熱の異常を容易に検出することが可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】ローラ駆動部200の動力により駆動ローラ201が回転し、搬送ベルト202を所定方向に移動可能とする。搬送ベルト202を支えるローラ203は複数設けられ、搬送ベルト202の搬送方向の移動に伴って各々が回転される。複数のローラ203の側面に該ローラの回転数の変化に応じて見え方が変化する色彩及びパターンでなる被監視部MPが付されている。被監視部MPは、ベルトコンベヤ装置103における1ユニット、例えばローラ駆動部201で稼働される搬送ベルト202を支える複数の中間のローラ203に対して全て同様な色彩及びパターンで付され、正常な稼働中、被監視部MPの一様な変化パターンを監視及び比較し、劣化、寿命等で回転数が落ち発熱異常を起こしたローラを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受を有するローラが複数設置されるベルトコンベヤ等の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受を有するローラが複数設置されるベルトコンベアの設備では、ローラと搬送ベルトとが接触して稼働する。従って、各ローラの正常回転に伴う軸受の円滑な動作は不可欠である。ローラ又はその軸受が寿命等により劣化又は損傷した場合、ローラの正常回転は妨げられるので、ベルトコンベア設備の巡視、点検及びローラの交換を含むメンテナンスは重要である。
【0003】
例えば、火力発電所では、燃料に使用される石炭を搬送するためにベルトコンベヤが多用される。一例を示すと、石炭運搬船で運ばれてきた石炭は、揚炭機でベルトコンベヤへ陸揚げされる。さらに、石炭はベルトコンベヤで貯炭場へ送られ山積みされ(貯炭)、消費時には貯炭場からベルトコンベヤでボイラに送られる。
【0004】
上記ボイラは、通常、電力供給や燃料効率の面から連続稼働であり、ベルトコンベヤも常に稼働状態である。このようなベルトコンベヤは、ローラ駆動部と、駆動ローラと、搬送ベルトと、ベルトコンベヤの中間にあって、搬送ベルトを支える従動的な複数のローラとを有する。ローラ駆動部は、駆動ローラに動力を伝達し、駆動ローラを回転させることによって搬送ベルトを稼働する。ベルトコンベヤの中間の複数のローラは、内部に軸受を有して搬送ベルトを支えているので、稼働中の搬送ベルトの動きに伴ってそれぞれが回転される。
【0005】
このようなベルトコンベヤは、複数ユニット配備されるので、搬送ベルトを支える中間の複数のローラは、数百個設けられることになる。駆動ローラは、劣化又は損傷等により異常が発生すると、ベルトコンベヤ装置を停止することになるので、常に監視する必要がある。そのため、駆動ローラは、温度センサや振動センサを取付ける等、温度や振動の変化を常に監視している。
【0006】
一方、ベルトコンベヤの中間にあって搬送ベルトを支える複数のローラでは、個数が多いこともあって、駆動ローラのように細かく管理することはしていない。また、1以上の任意の中間ローラに回転異常があっても、大多数の正常に回転するローラによって稼働可能である。
【0007】
しかし、ベルトコンベヤの稼働中に、ローラ又はその軸受が寿命等により劣化又は損傷した場合、その回転異常のローラは、搬送ベルトとの接触による摩擦熱を搬送ベルト側に伝達し続ける。搬送ベルトの異常加熱はベルトコンベヤ火災の原因となる。
【0008】
そこで、各ローラは、前回の交換記録から、定格の軸受寿命が経つ前の、より安全な時期に交換されるように対策している。言い換えれば、交換する各ローラの中には、ローラ又はその軸受等に決定的な劣化又は損傷を認めない、未だ正常に使えるローラが混在する。なお、この場合のローラの交換は、適宜の処置を施して、ベルトコンベヤを止めることなく行えるようにしている。
【0009】
従来のベルトコンベヤ火災の防止対策としては、ベルトコンベヤ停止中の高温部の発生に起因する気体の擾乱あるいは煙によるベルトコンベヤ上方を通過する光の強度変化を検出する技術、及び赤外線センサを利用するベルトコンベヤ稼働中の高温部検知機能を備える技術がある(特許文献1参照)。このような技術によれば、ベルトコンベヤ駆動モータ、ローラ等の異常発熱箇所を検知することができ、稼働中のベルトコンベヤに対し警報したり停止させたりして危険を未然に防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第188109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1によるベルトコンベヤの高温部検知技術は、例えば、火力発電所における既存のベルトコンベヤ装置に新たに組み込む際、相当のコストがかかる。また、ベルトコンベヤの稼働中においてはベルトの発熱の履歴データから発熱箇所を特定し得るとされている。しかし、稼働中のベルトコンベヤの中間にあって搬送ベルトを支える複数のローラにおいては、異常箇所(異常なローラ)を特定することは困難との懸念がある。
【0012】
本発明は、既存の装置に安価な構成を付加するだけで、稼働中の各ローラの振動や発熱の異常を容易に検出することが可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、搬送ベルトを支えるローラが複数設置されるベルトコンベア装置の稼働中において、ローラ又はその軸受が寿命等により劣化又は損傷した場合、ローラは正常回転しようとしても回転数が減少することを重視した。すなわち、発熱量増大の原因となるローラの回転数の減少に着目し、以下のような搬送装置を提供する。
【0014】
(1) ローラ駆動部と、該ローラ駆動部からの動力が伝達される駆動ローラと、前記ローラ駆動部が前記駆動ローラを回転させることにより所定方向に移動可能な搬送ベルトと、前記搬送ベルトを支え、前記搬送ベルトの搬送方向の移動に伴ってそれぞれが回転される複数のローラと、前記複数のローラそれぞれの側面に付された該ローラの回転数の変化に応じて見え方が変化する色彩及びパターンでなる被監視部と、を備える搬送装置。
【0015】
上記(1)の搬送装置によれば、本来同様な範囲の回転数で回転すべき監視及び比較対象の複数のローラそれぞれには、全て同様な色彩及びパターンの被監視部が付されることが好ましい。該複数のローラは、装置の稼働中、回転不良や異常振動等、回転異常のローラがなければ、全て同様な変化パターンを呈する被監視部が観察される。しかし、該複数のローラのうち任意のローラ(又はその軸受)が劣化又は損傷した場合、その任意のローラだけ回転数が落ち、他の正常に回転しているローラとは異なる被監視部の変化パターンを呈するようになる。
【0016】
上記(1)の搬送装置において、被監視部は、監視及び比較対象の複数のローラに対して、全て同様な色彩及びパターンを付すこと、そして既存の搬送装置に簡易的に付加する形態が好ましいことから、次の(2)及び(3)のうち、いずれかの態様を少なくとも一つは含む。
【0017】
(2) 前記被監視部は、水性塗料、樹脂系塗料及び蛍光塗料のうち少なくともいずれかの塗料を用いて所定の各ローラそれぞれに同様な色彩及びパターンが付される。
(3) 前記被監視部は、貼付け部材が含まれる。
【0018】
上記(1)から(3)の搬送装置において、回転中の複数のローラに関して、次の(4)のような合理的な判断ができることにより搬送装置の保全に寄与する。
【0019】
(4) 前記複数のローラが回転する稼働中において、前記被監視部が第1の変化パターンを呈して回転しているローラに比べて、回転数の減少している前記被監視部が第2の変化パターンを呈して回転しているローラでは、発熱量が増大しているとみなされる。
【0020】
上記(4)の搬送装置によれば、回転数の減少しているローラは、正常な搬送速度に基づいて動いている搬送ベルトに引きずられながら回転される状態が続くので、搬送ベルトとの摩擦や、劣化又は損傷した軸受における摩擦によって発熱量が増大する。
【0021】
そこで、上記搬送装置において、被監視部をより機能的に活用するために、次の(5)のような搬送装置を含む。
【0022】
(5) 前記搬送ベルトは、可燃物を搬送する搬送ベルトであり、稼働中において、前記複数のローラは、前記駆動ローラの回転に基づく前記搬送ベルトの搬送動作に応じた標準的な回転数を有して回転され、前記標準的な回転数に基づいて、前記被監視部に第1の変化パターンを呈して回転しているローラに対し、前記標準的な回転数より数十%減少している非標準的な回転数に基づいて、前記被監視部に第2の変化パターンを呈して回転しているローラは、交換の対象として特定される。
【0023】
上記(5)の搬送装置によれば、稼働中の複数のローラについて各被監視部の呈する変化パターンを比較し、非標準的な回転数で回転しているローラを特定する。該特定されたローラは正常に機能しないものと判定され、交換の対象とされる。
【0024】
さらに、上記(1)から(5)のいずれかの搬送装置において、複数ユニットある場合の効率的なシステムとして、次の(6)のような搬送装置を含む。
【0025】
(6) 前記搬送装置は複数ユニット配備され、該複数ユニットのうち第1の搬送装置と第2の搬送装置とでは前記ローラの交換時期を互いにシフトさせてあり、前記被監視部は、前記第1の搬送装置内の各ローラの側面において統一された色彩及びパターンでなる第1の被監視部と、前記第2の搬送装置内の各ローラの側面において統一された色彩及びパターンでなる前記第1の被監視部とは異なる第2の被監視部と、を有する。
【0026】
上記(6)の搬送装置によれば、交換時期の近い、点検に注力しなければならない搬送装置のユニットが一目で判断され、巡視・点検の作業効率向上に寄与する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、搬送装置の稼働中において、ローラ又はその軸受等に機能的な問題の起こったローラを目測で特定し易くなる。このため、前回の交換記録とは別の観点から、容易に、未だ正常に使えるローラと、交換すべきローラとを分けて対処することができ、合理的な保守・管理のできる搬送装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の構成が適用可能なベルトコンベヤ装置を備えた石炭火力発電所の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る搬送装置の要部を示す概観図である。
【図3】ベルトコンベヤ装置稼働中の上記図2における回転するローラ側面の被監視部の変化パターンを示す第1の概観図である。
【図4】ベルトコンベヤ装置稼働中の上記図2における回転するローラ側面の被監視部の変化パターンを示す第1の概観図である。
【図5】図2に示すベルトコンベヤ装置のローラの側面に付される被監視部の第1の変形例を示す概観図である。
【図6】図2に示すベルトコンベヤ装置のローラ203の側面に付される被監視部の第2の変形例を示す概観図である。
【図7】図6に示す被監視部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の構成が適用可能なベルトコンベヤ装置を備えた石炭火力発電所の概略図である。石炭運搬船から揚炭機で陸揚げされた石炭は、ベルトコンベヤ装置101で貯炭場102へ送られ、山積みされる(貯炭)。このような石炭は、消費時には貯炭場102から、ベルトコンベヤ装置103でバンカ104へ移送され、微粉炭機105によって微粉炭にされ、ボイラ106に送られる。ボイラ106で生成される蒸気は、発電機を回す蒸気タービンへ送られる。また、排煙は、脱硝装置107、電気集塵機108及び脱硫装置109を通って煙突110から排出される。上記ボイラ106は、通常、電力供給や燃料効率の面から連続稼働であり、ベルトコンベヤ装置103も常に稼働状態である。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態に係る搬送装置の要部を示す概観図であり、図1のベルトコンベヤ装置103の一部を示している。ベルトコンベヤ装置103は、ローラ駆動部200と、駆動ローラ201と、搬送ベルト202と、搬送ベルト202の移動方向に沿って複数設けられる中間の従動的なローラ203とを有する。ここでは任意の3つのローラ203が示されている。
【0031】
ローラ駆動部200は、プーリ等の駆動ローラ201に動力を伝達し、駆動ローラ201を回転させることにより、搬送ベルト202を所定方向に移動可能とする。ローラ203は、それぞれ軸受支持部204で回転可能に固定されている。このように、ローラ203は、搬送ベルト202を支えるために複数設けられ、搬送ベルト202の搬送方向の移動に伴ってそれぞれが回転されるものである。
【0032】
本発明の特徴的な構成は、上記複数のローラ203の側面に付された被監視部MPにある。被監視部MPは、該ローラの回転数の変化に応じて見え方が変化する色彩及びパターンを有する。被監視部MPは、ベルトコンベヤ装置103における1ユニット、例えば駆動ローラ201で稼働される搬送ベルト202を支える複数の中間のローラ203に対して全て同様な色彩及びパターンで付されることが好ましい。本来同様な範囲の回転数で回転すべき複数のローラ203に対して作業者が監視及び比較するのに都合がよいからである。これにより、大部分の正常に回転しているローラとは明らかに異なる回転をしているローラを、被監視部MPの呈する変化パターンの比較を通じて特定することができる。
【0033】
上記被監視部MPの色彩及びパターンは、例えば白色の下地50に、4分の1の円の相互の対角領域に設けられた2個の黒色の扇形のパターン60を配している。被監視部MPは、ローラの回転数の変化に応じて見え方が変化する色彩及びパターンであればよく、色彩は、この例のように下地/パターン=白/黒に限定はされないし、パターンもこの例に示す扇形等には限定されない。しかし、既存のローラに対して付すことを考慮すれば、よりシンプルなデザインで、回転の変化が見分け易く、かつ配し易い設置手法が望ましい。
【0034】
被監視部MPは、例えば、図示しないスプレー塗布用のテンプレート(又はマスク)を作製し、各ローラ203の側面に該テンプレートを当ててスプレー塗布し、該テンプレートのパターンに従ったパターンを一様に形成するとよい。
【0035】
より具体的には、各ローラ203の側面に白色又は明るい蛍光色等の下地50を塗布する。下地の塗布も専用のテンプレートを使うと便利である。塗料は、水性塗料、樹脂系塗料、蛍光塗料、夜光塗料等が利用される。次に該下地50上に描くパターン60は、ここでは2つの黒色(又は暗い色)の扇形であり、塗料としては、下地に定着し易い塗料が、水性塗料、樹脂系塗料、蛍光塗料、夜光塗料等の中から選択される。
【0036】
被監視部MPは、その他、下地50を塗布後、予め準備した貼付け部材を所定の箇所に貼付け、上記パターン60を構成してもよい。このような貼付け部材を利用する場合は、貼付け面に、下地50と貼付け部材とが接着しやすい粘着材又は接着剤が必要である。あるいは、下地50やパターン60を総合的なデザインとした貼付け部材を準備してもよい。この場合の貼付け面には、ローラ側面と貼付け部材とが確実に接着する粘着材又は接着剤が必要である。
【0037】
図3は、ベルトコンベヤ装置103の稼働中の上記図2における回転するローラ側面の被監視部の変化パターンを示す第1の概観図である。また、図4は、ベルトコンベヤ装置103の稼働中の上記図2における回転するローラ側面の被監視部の変化パターンを示す第2の概観図である。
【0038】
本来同様な範囲の回転数で回転すべき監視及び比較対象の複数のローラ203それぞれには、全て同様な色彩及びパターンの被監視部MPが付されている。従って、ベルトコンベヤ装置103の稼働中、該複数のローラ203について回転不良や異常振動等の回転異常がなければ、該複数のローラ203それぞれの被監視部MPは、全て同様な変化パターンRnを呈する(図3参照)。
【0039】
しかし、該複数のローラ203のうち、任意のローラ(又はその軸受)が劣化又は損傷した場合、その任意のローラだけ回転数が落ち、被監視部MPは、他の正常に回転しているローラとは異なる変化パターンを呈するようになる。図4に示す任意のローラ203aは、他のローラ203に比べて明らかに回転数が減少しており、その被監視部MPは、他の正常に回転しているローラとは異なる変化パターンRaを呈する。
【0040】
作業者による巡視・点検が行われる際、作業者は、点検の対象となるベルトコンベヤ装置103において、稼働中の複数のローラ203について各被監視部MPの呈する変化パターンを比較し、明らかに異なる変化パターンが有るか否かを点検する。
【0041】
図4を参照すると、標準の回転数の範囲を維持して回転しているローラ203の被監視部MPの変化パターンRnに対して、回転数が減少し、標準の回転数の範囲を下回って回転しているローラ203aの被監視部MPの変化パターンRaを視認することができる。回転数の減少しているローラ203aでは、他の正常な範囲の回転を維持しているローラ203に比べて発熱量が増大しているとみなされる。
【0042】
上記のような、回転数が減少し、標準の回転数の範囲を下回って回転している回転異常のローラ203aは、正常な搬送速度に基づいて動いている搬送ベルト202に引きずられながら回転される状態が続くので、搬送ベルト202との摩擦や劣化又は損傷した軸受における摩擦によって発熱量が増大するのである。ここでは搬送ベルト202は、可燃物(石炭)を搬送する搬送ベルトであり、搬送ベルトの異常加熱はベルトコンベヤ火災の原因となる。
【0043】
そこで、ベルトコンベヤ装置103の稼働中において、複数のローラ203は、駆動ローラ201の回転に基づく搬送ベルト202の搬送動作に応じた標準的な回転数を有して回転され、該標準的な回転数に基づいて、被監視部MPに第1の変化パターン(ここではRn)を呈して回転しているローラは正常と判断される。これに対し、該標準的な回転数より数十%、より具体的にはだいたい該標準的な回転数より20%以下の非標準的な回転数に基づいて、被監視部MPに第2の変化パターン(ここではRa)を呈して回転しているローラ(ここでは203a)は、正常ではないと判断され、交換の対象として特定される。
【0044】
上記構成のベルトコンベヤ装置103によれば、稼働中の複数のローラ203について各被監視部の呈する変化パターンを比較し、非標準的な回転数で回転しているローラ203aを特定する。該特定されたローラ203aは正常に機能しないものと判定され、交換の対象とされるのである。交換の対象と特定されたローラ203aは、ベルトコンベヤ装置の稼働中に予備のローラをあてがう等の適宜措置を施して、正常に回転可能なローラ(新品又はそれに準ずるローラ)と交換される。交換されるローラにはその側部に複数のローラ203と同様な被監視部MPが付されている。
【0045】
上記実施形態の構成によれば、既存の搬送装置であるベルトコンベヤ装置103に安価な構成の各被監視部MPを付加するだけで、稼働中の各ローラ203の振動や発熱の異常を容易に検出することが可能である。すなわち、搬送装置の稼働中において、ローラ又はその軸受等に機能的な問題の起こったローラを目測で特定し易くなる。このため、作業者は、前回の交換記録とは別の観点から、容易に、未だ正常に使えるローラと、交換すべきローラとを分けて対処することができ、合理的な保守・管理のできる搬送装置を提供し得る。
【0046】
なお、本実施形態の構成では、搬送装置としてベルトコンベヤ装置103に適用される構成を示すが、これに限らず、本発明に係る構成は、図1に示されるベルトコンベヤ装置101等、火力発電所内で用いられる様々な用途のベルトコンベヤ装置に適用可能である。また、火力発電所以外の場所で用いられる、特に可燃物を搬送するベルトコンベヤ装置等の搬送装置への適用も有用である。
【0047】
図5は、図2に示すベルトコンベヤ装置のローラ203の側面に付される被監視部の第1の変形例を示す概観図である。被監視部MPiは、例えばローラ側面の半円を覆う白色の扇形の下地51に、2本の黒色の太い平行線のパターン61,62を付している。もちろん、色彩は白/黒以外の別の色(明/暗)の組合せとしてもよい。
【0048】
上記被監視部MPiは、前記被監視部MPと同様に、下地51とパターン61及び62を適当な塗料で付してもよいし、下地51を適当な塗料で、そしてパターン61及び62を貼付け部材として下地51上に貼付けてもよい。また、下地51やパターン61及び62を総合的なデザインとした貼付け部材を準備してもよい。貼付け部材とする場合、貼付け面は、塗料面への貼付けやローラ側面への貼付けが確実に行える粘着材又は接着剤を使用することが重要である。
【0049】
図1及び図2のようなベルトコンベヤ装置103は、搬送装置として複数ユニット配備される場合、該複数ユニットうち、第1の搬送装置と第2の搬送装置では保有するローラの交換時期を互いにシフトさせてある。両搬送装置における被監視部は、色彩だけ又はパターンだけ、あるいは色彩及びパターンを異ならせる。すなわち、該被監視部は、第1の搬送装置内の各ローラの側面において統一された色彩及びパターンでなる第1の被監視部と、第2の搬送装置内の各ローラの側面において統一された色彩及びパターンでなる上記第1の被監視部とは異なる第2の被監視部とを有する。より具体的には次のようにするとよい。
【0050】
例えば第1の例として、基本とするパターンを、図2に示す被監視部MPのパターンとし、色彩を互いに異ならせた被監視部を一組準備する。準備される被監視部の一方は、第1の搬送装置内の各ローラ203の側面に付す、統一された色彩及びパターンでなる被監視部として用い、他方は、第2の搬送装置内の各ローラ203の側面に付す、統一された色彩及びパターンでなる被監視部として用いる。つまり、両者の被監視部は互いに色彩が異なり、パターンは同じである。
【0051】
例えば第2の例として、基本とするパターンを、図5に示す被監視部MPiのパターンとし、色彩を互いに異ならせた被監視部を一組準備する。準備される被監視部の一方は、第1の搬送装置内の各ローラ203の側面に付す、統一された色彩及びパターンでなる被監視部として用い、他方は、第2の搬送装置内の各ローラ203の側面に付す、統一された色彩及びパターンでなる被監視部として用いる。つまり、両者の被監視部は互いに色彩が異なり、パターンは同じである。
【0052】
例えば第3の例として、基本とする色彩を、図2や図5に示すとおり、下地/パターン=白/黒として、パターンを互いに異ならせた被監視部を一組準備する(MPとMPi)。準備される被監視部の一方は、第1の搬送装置内の各ローラ203の側面に付す、統一された色彩及びパターンでなる被監視部として用い、他方は、第2の搬送装置内の各ローラ203の側面に付す、統一された色彩及びパターンでなる被監視部として用いる。つまり、両者の被監視部は互いにパターンが異なり(MPとMPi)、色彩は同じである。
【0053】
また、第4の例は、互いに色彩もパターンも異ならせた被監視部を一組準備し、一方は、第1の搬送装置内の各ローラ203の側面に付す、統一された色彩及びパターンでなる被監視部として用い、他方は、第2の搬送装置内の各ローラ203の側面に付す、統一された色彩及びパターンでなる被監視部として用いる。
【0054】
上記構成によれば、交換時期の近い、点検に注力しなければならない搬送装置のユニットが一目で判断され、巡視・点検の作業効率向上に寄与する。
【0055】
図6は、図2に示すベルトコンベヤ装置のローラ203の側面に付される被監視部の第2の変形例を示す概観図である。図7は、図6に示す被監視部の拡大図である。被監視部MPjは、例えばローラ側面に貼付けることのできる大きさの円形の貼付け部材である。円形の明るい色の下地52に、暗い色のドーナツ状の円のパターン63を合わせている。図7に示すように、ドーナツ状の円のパターン63に囲まれるようにして円形の下地52cが配されている。もちろん、貼付け面71は、ローラ側面への貼付けが確実に行える粘着材又は接着剤が配されている。
【0056】
また、上記被監視部MPjは、パターン63又はパターン63に囲まれた円形の下地52cの少なくとも一方の領域が温度を感知して色が変化する部材となった温度感知シールであってもよい。このような温度感知シールは、補助的に使われることが好ましい。例えば、温度感知シールとしての被監視部MPjは、標準的な回転数で回転しているローラ、異常とは判定されないまでも、標準的な回転数より数%減少しているように観察されるローラ、さらには、定格の軸受寿命前後の、正常に回転していると観察されるローラ等、に補助的に貼付け、ローラの温度測定に関する参考とする。また、実際に回転数が著しく落ちてきたローラの温度上昇について調査することもできる。
【0057】
以上説明したように、本発明に係る実施形態の構成によれば、本来同様な範囲の回転数で回転すべき監視及び比較対象の複数のローラそれぞれには、全て同様な色彩及びパターンの被監視部が付されている。該複数のローラは、装置の稼働中、回転異常のローラがなければ全て同様な変化パターンを呈する被監視部が観察される。しかし、該複数のローラのうち任意のローラ(又はその軸受)が劣化又は損傷した場合、その任意のローラだけ回転数が落ち、他の正常に回転しているローラとは異なる被監視部の変化パターンを呈するようになる。このように、搬送装置の稼働中において、複数のローラについて各被監視部の呈する変化パターンを比較することにより、ローラ又はその軸受等に機能的な問題の起こったローラは、目測で特定できるようになっている。このため、前回の交換記録とは別の観点から、容易に、未だ正常に使えるローラと、交換すべきローラとを分けて対処することができ、合理的な保守・管理のできる搬送装置を提供し得る。
【符号の説明】
【0058】
101,103 ベルトコンベヤ装置
102 貯炭場
104 バンカ
105 微粉炭機
106 ボイラ
107 脱硝装置
108 電気集塵機
109 脱硫装置
110 煙突
200 ローラ駆動部
201 駆動ローラ
202 搬送ベルト
203,203a ローラ
204 軸受支持部
MP,MPi,MPj 被監視部
50,51,52 52c 下地
60,61,62,63 パターン
71 貼付け面
Rn,Ra 変化パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ駆動部と、
前記ローラ駆動部からの動力が伝達される駆動ローラと、
前記ローラ駆動部が前記駆動ローラを回転させることにより所定方向に移動可能な搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを支え、前記搬送ベルトの搬送方向の移動に伴ってそれぞれが回転される複数のローラと、
前記複数のローラそれぞれの側面に付された該ローラの回転数の変化に応じて見え方が変化する色彩及びパターンでなる被監視部と、
を備える搬送装置。
【請求項2】
前記被監視部は、水性塗料、樹脂系塗料及び蛍光塗料のうち少なくともいずれかの塗料を用いて所定の各ローラそれぞれに同様な色彩及びパターンが付される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記被監視部は、貼付け部材が含まれる請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記複数のローラが回転する稼働中において、前記被監視部が第1の変化パターンを呈して回転しているローラに比べて、回転数の減少している前記被監視部が第2の変化パターンを呈して回転しているローラでは、発熱量が増大しているとみなされる請求項1から3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトは、可燃物を搬送する搬送ベルトであり、稼働中において、前記複数のローラは、前記駆動ローラの回転に基づく前記搬送ベルトの搬送動作に応じた標準的な回転数を有して回転され、
前記標準的な回転数に基づいて、前記被監視部に第1の変化パターンを呈して回転しているローラに対し、前記標準的な回転数より数十%減少している非標準的な回転数に基づいて、前記被監視部に第2の変化パターンを呈して回転しているローラは、交換の対象として特定される請求項1から3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送装置は複数ユニット配備され、該複数ユニットのうち第1の搬送装置と第2の搬送装置とでは前記ローラの交換時期を互いにシフトさせてあり、
前記被監視部は、
前記第1の搬送装置内の各ローラの側面において統一された色彩及びパターンでなる第1の被監視部と、
前記第2の搬送装置内の各ローラの側面において統一された色彩及びパターンでなる前記第1の被監視部とは異なる第2の被監視部と、
を有する請求項1から5のいずれかに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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