摂動膜結合性化合物
【課題】細胞形質膜の正常な構造が乱されている細胞に選択的に結合する化合物を提供する。
【解決手段】式(II)に示す構造で表される化合物
(式(II)に示す構造で表される化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびに前記塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、RはC1〜C16の直鎖または分枝鎖アルキルを表し、nおよびmは、各々独立して、0、1、2、3または4の整数を表し、Mは非存在であり、かつDは放射性同位体に置換される部分であり、前記部分はヒドロキシル基、ニトロ基、またはハロゲン原子から選択される)。
【解決手段】式(II)に示す構造で表される化合物
(式(II)に示す構造で表される化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびに前記塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、RはC1〜C16の直鎖または分枝鎖アルキルを表し、nおよびmは、各々独立して、0、1、2、3または4の整数を表し、Mは非存在であり、かつDは放射性同位体に置換される部分であり、前記部分はヒドロキシル基、ニトロ基、またはハロゲン原子から選択される)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、正常な形質膜組織化の摂動および改変を受けている細胞、すなわち、細胞死を実行中の細胞、アポトーシス細胞または活性化された血小板に選択的に結合する化合物に関する。本発明は、さらに、この化合物を、医療行為において、診断用および治療用目的のために利用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
無傷の真核細胞の形質膜(外膜)は、高度に組織化された構造を特徴とする。この高レベルの膜組織化は、とりわけ、この膜を構成する特定の脂質の分子構造;膜を構成する種々の脂質種の比率;この膜の外側と内側リーフレット間でのリン脂質の分布によって;および膜タンパク質構成要素によって決定される。
【0003】
形質膜組織化を高レベルに維持することは、正常な細胞生理機能の基本であるが、実質的な細胞形質膜の正常な組織化の摂動および改変(PNOM)は、数多くの生理学的および病理学的条件において起こり、複数の疾患の特徴となっている。かかる改変および摂動は、形態学的レベル(アポトーシスを実行中の細胞で観察される膜泡)および分子レベルの両方において明白であり得る。PNOMには、とりわけ、膜リン脂質の無秩序化(scrambling)および再分布が含まれ、これは、アミノリン脂質、主にホスファチジルセリン(PS)とホスファチジルエタノールアミン(PE)(これらは、通常、膜二重層の内側リーフレットにほぼ完全に限定される)の細胞表面への移動、およびスフィンゴミエリン(SM)およびホスファチジルコリン(PC)のこの膜の外側リーフレットから内側リーフレットへの相互移動を伴う。この再分布を、本明細書では、細胞膜脂質の非対称性(CMLA)の喪失という。CMLA喪失に加え、PNOMはまた、多くの場合、膜リン脂質パッキングレベルの低下および膜流動性の増大と関連している。
【0004】
このような改変は、細胞表面を、いくつかの凝固因子複合体、例えば、テナーゼ(tenase)およびプロトロンビナーゼタンパク質複合体などの会合のための触媒的基盤とするのに重要な役割を果たす。したがって、血小板活性化は、PNOM中の血小板膜と関連しており、これらの改変は、正常な血液凝固において、ならびに数多くの障害での異常な過剰血液凝固の起始および/または伝播において重要な要因を構成する。このような障害としては、とりわけ、動脈または静脈の血栓症または血栓塞栓症[例えば、脳卒中、心筋梗塞、深部静脈血栓症(DVT)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病など]、不安定なアテローム性プラーク、鎌状赤血球症、βサラセミア、抗リン脂質抗体症候群[とりわけ、全身性エリテマトーデス(SLE)において]、および膜微粒子の流出と関連する障害、例えば、心肺バイパスと関連する神経機能障害が挙げられる。
【0005】
アポトーシスは、細胞膜の改変/摂動が起こっている別の主な状況である。アポトーシスは、細胞の自己崩壊すなわち「自殺」という固有のプログラムであり、どの真核細胞にも生来備わっている。刺激の誘発に応答し、細胞は、細胞収縮、細胞膜泡、クロマチンの凝縮および断片化、細胞の膜結合粒子のクラスター(アポトーシス体)への変換への終結という事象の高度に特徴的なカスケードを起こし、その後マクロファージに囲まれる。PNOMは、アポトーシスの普遍的な現象であり、アポトーシスカスケードの初期(おそらく、細胞が死亡過程を遂行する時点)で起こり、また、マクロファージによるアポトーシス細胞の認識および除去における重要な要因であることが示されている。
【0006】
最近、PNOMとアポトーシス細胞の強力な凝血促進活性との間に強い相関性が導かれた。アポトーシス内皮細胞におけるPNOM(例えば、アテローム性プラークにおいて起こるものなど)は、おそらく、血栓症の血管障害の病原において重要な役割を果たしている。
【0007】
アポトーシスまたは血栓症は、各々、大部分の内科的障害において重要な役割を有するため、これらの生物学的プロセスの検出および関連細胞の標的化のためのツールがあることが望ましい。また、PNOM膜への選択的な結合のための化合物(これは、潜在的に、後に、かかるPNOM膜を有するこのような細胞(PNOM細胞)内への侵入を行なう)は、したがって、障害または死亡過程を実行中の細胞(特に、アポトーシスにより)、または活性化を受けている血小板を検出し、イメージング用の薬剤または薬物をこれらに標的化するための重要なツールとしての機能を果たし得る。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明の一つの態様において、形質膜の正常な組織化の摂動を受けている細胞(PNOM細胞)に選択的に結合し得るが、形質膜の正常な組織化を維持している細胞(これを、以下、「正常細胞」と定義する)には、より低程度で結合する化合物を提供する。PNOM細胞は、本発明の一つの実施形態において、死亡過程を実行中の細胞である。本発明の一つの実施形態ではこの細胞はアポトーシス細胞であり、別の実施形態では、この細胞は、活性化された血小板であり得る。本発明は、さらに、PNOM細胞に選択的に結合するこれらの化合物を使用することによりPNOM細胞を検出する方法に関する。本発明の別の実施形態では、式I〜XIVに示す構造で表される化合物を提供する。
【0009】
用語「摂動膜結合性化合物(perturbed membrane−bindingcompound)」PMBC)は、PNOM細胞を選択的に標的化するが、正常細胞には、より低程度で結合する化合物をいう。本発明によれば、PMBCのPNOM細胞への結合は、正常細胞への結合よりも少なくとも30%多いのがよい。
【0010】
用語「選択的に標的化すること」は、本発明では、化合物のPNOM細胞への選択的な結合、すなわち、正常細胞への結合よりも少なくとも30%多い程度でのPNOM細胞への結合をいう。
【0011】
用語「診断用摂動膜結合性化合物」(診断用PMBC)は、PNOM細胞に選択的に標的化することができる化合物をいい、この化合物はマーカーを含むか、またはこれに連結されており、このマーカーは、当業者に知られた手段によって検出可能である。
【0012】
用語「治療用摂動膜結合性化合物」(治療用PMBC)は、上記規定のPMBCであって、薬物を含む、疾患の治療に有用なものをいう。
用語「固相支持体」は、本発明の内容においては、固相マトリックス、不溶性マトリックスまたは不溶性支持体をいう。本発明による固相支持体は、種々の構造、例えば、マイクロ粒状物、マイクロフィルターまたはマイクロキャピラリー(capillara)の積層体に形成されたものであり得る。
【0013】
PMBCは、本発明の一つの実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化するための薬剤の調製に使用される。
一つの態様において、本発明は、PNOM細胞を選択的に標的とする化合物(すなわち、PMBC)であって、式(I):
【0014】
【化1】
に示す構造で表される化合物、または式(I)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を提供する(式中、RおよびR’基の各々は、独立して、各存在において、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せから選択される;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;xおよびzは、各々、独立して存在し、0、1または2の整数であり、ここで、xおよびzは同じまたは異なり得る;yは、0、1または2の整数であり、ここでy=2のとき、置換基R’は、各存在において同じであっても異なっていてもよい;およびDは、診断に用いるマーカー、水素、ヒドロキシル、Fまたは薬物であり、ここで、診断に用いるマーカーは、イメージング用マーカー、例えば、F(F原子は18Fまたは19Fのいずれかであり得る)または放射標識された金属キレートから選択され、イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、PNOM細胞に標的化される薬物である。
【0015】
薬物は、特定の疾患の予防、改善または治療に医薬として有用な薬剤であり得、例えば、限定されないが、アポトーシスの阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤、抗酸化剤、 Bcl−2系の調節剤);細胞死の活性剤(例えば、抗癌薬);または血液凝固の調節剤(これは、抗凝血薬、抗血栓剤または血栓溶解剤であり得る)であり得る。かかる場合において、この薬物は、好ましくは、抗血小板剤、ヘパリン、低分子量ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaの拮抗薬、組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)、または凝固因子の阻害剤(例えば、トロンビンの阻害剤または第Xa因子のなど阻害剤);または抗炎症薬または免疫調節剤薬から選択される。本発明の一つの実施形態において、抗癌薬を腫瘍に、薬物をアポトーシス(腫瘍内で自発的にまたは治療に応答してのいずれかで起こる)の病巣に標的化することにより、抗癌治療の改善のための方法を提供する。本発明の別の実施形態において、凝固が抑制、低減または停止されるように、抗凝血薬を血栓に標的化することにより血栓症を治療する方法を提供する。
【0016】
本発明の別の実施形態において、Dは、固相支持体であり得る。
本発明の別の実施形態において、PNOMを選択的に標的とし、式(II):
【0017】
【化2】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(II)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Rは水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;Dは、水素またはである。診断に用いるマーカーは、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えば、F(F原子は18Fまたは19Fのいずれかであり得る)または放射標識された金属キレートであり得る;イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、上記規定のような、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0018】
本発明の別の実施形態において、式(III):
【0019】
【化3】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(III)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、R3は、ヒドロキシルまたはFである;R4は、C4、C5、C6、C7、C8、C9またはC10直鎖または分枝鎖アルキルであり、kは、0、1、2、3、4および5から選択される整数である)。
【0020】
本発明の別の実施形態において、式(IV):
【0021】
【化4】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(IV)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含む)。この化合物は、指定したNST200である。
【0022】
本発明の別の実施形態において、式(V):
【0023】
【化5】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(V)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Jは、−Fおよび−OHであり、rは、4、5、6、7、8、9、10の整数を表す)。rが4であり、Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST201である。rが5であり、Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST−ML−10である。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態において、式(VI):
【0025】
【化6】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VI)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Jは、水素、−Fおよび−OHから選択される)。Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST204である。
【0026】
本発明の別の実施形態において、式VII:
【0027】
【化7】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物および溶媒和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Qは、テクネチウム、オキソテクネチウム、レニウムおよびオキソレニウムから選択され、R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖アルキルから選択され、pは、1、2、3、4および5から選択される整数を表す)。
【0028】
本発明の別の実施形態において、式VIII:
【0029】
【化8】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VIII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物および溶媒和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Qは、テクネチウム、オキソテクネチウム、レニウムおよびオキソレニウムから選択される)。
【0030】
本発明の別の実施形態において、式(IX):
【0031】
【化9】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(IX)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、R5は、水素、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、ならびにC1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキルから選択される;qは、1、2、3、4および5から選択される整数を表す;およびYは蛍光用マーカーである)。本発明の一つの実施形態では、Yは、ダンシルアミド基およびフルオレセインから選択される。
【0032】
本発明の別の実施形態において、式(X):
【0033】
【化10】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(X)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含む)。この化合物は、指定したNST203である。
【0034】
本発明の別の実施形態において、式(XI):
【0035】
【化11】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XI)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Rは水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す)。
【0036】
本発明の別の実施形態において、式(XII):
【0037】
【化12】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Fは、18Fまたは19Fであり得る)。
【0038】
本発明の別の実施形態において、式(XIII):
【0039】
【化13】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XIII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、Rは、水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;mは、0、1、2、3または4の整数を表す;Dは診断に用いるマーカーであり、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えば、F(Fは18Fまたは19Fであり得る)または放射標識された金属キレートであり得、イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、上記規定のような、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0040】
本発明の別の実施形態において、式(XIV):
【0041】
【化14】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XIV)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Fは、18Fまたは19Fであり得る)。
【0042】
本発明の別の態様において、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る患者において、アポトーシスまたは血液凝固の病巣に薬物を標的化するための医薬組成物であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI XII、XIIIまたはXIVに示す構造による化合物を含み、この化合物が薬物を含むか、またはこれに連結されている医薬組成物を提供する。
【0043】
本発明の一つの態様において、医薬として有用な化合物を細胞集団内にあるPNOM細胞に選択的に標的化する方法であって、細胞集団を、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す構造で表される化合物と接触させ、それにより、医薬として有用な化合物を細胞集団内のPNOM細胞に選択的に標的化させることを含む方法を提供する。
【0044】
本発明の別の態様において、細胞集団内のPNOM細胞の検出方法であって、(i)細胞集団を、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す構造で表される化合物、または式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、ならびにこの塩の溶媒和物および水和物と接触させること;および(ii)細胞に結合した化合物の量を測定することを含み、ここで、細胞に結合した化合物の有意な量は、この細胞がPNOM細胞であることを示す方法を提供する。
【0045】
本発明の別の態様において、患者または動物におけるPNOM細胞の検出方法であって、(i)患者または動物に、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物、または式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を投与すること;および(ii)細胞に結合した化合物の量を測定するために、検査対象の患者または動物のイメージングを行なうことを含み、ここで、細胞に結合した化合物の有意な量は、この細胞がPNOM細胞であることを示す方法を提供する。
【0046】
本発明の別の態様において、薬物を、患者または動物の血餅内のアポトーシスの病巣または活性化された血小板(or)の病巣に標的化するための医薬組成物であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造の化合物(この化合物は、薬物を含むか、またはこれに連結されている)を含む医薬組成物を提供する。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、検査対象の被験体の腫瘍内の死亡過程を実行中の細胞の検出方法であって、(i)検査対象の被験体に、化合物またはこの化合物を含むコンジュゲートを投与すること、ここで、この化合物は、式(I):
【0048】
【化15】
に示す構造で表される化合物、または式(I)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物であり、式中、RおよびR’基の一方は水素であり、RおよびR’基の他方は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;xおよびzは、各々、独立して存在し、0、1または2の整数であり、ここで、xおよびzは同じまたは異なり得る;yは、0、1または2の整数であり、ここでy=2のとき、置換基R’は、各存在において同じであっても異なっていてもよい;およびDは、診断に用いるマーカーである。診断に用いるマーカーは、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えば、F(F原子は18Fまたは19Fのいずれかであり得る)または放射標識された金属キレートであり得、イメージング用マーカーは、蛍光標識、放射能標識、X線用マーカー、MRI用マーカー、PETスキャン用マーカーおよび酵素反応を行なうことができ、検出可能な色をもたらす標識を含む群から選択される;および(ii)患者の検査対象の腫瘍に結合した化合物の量を測定することを含み、ここで、腫瘍内の細胞に結合した化合物の有意な量は、これらの腫瘍細胞が死亡過程を実行中であることを示す方法を提供する。
【0049】
別の実施形態において、本発明は、検査対象の被験体の腫瘍内の死亡過程を実行中の細胞の検出方法であって、(i)検査対象の被験体に、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造の化合物を投与すること、ここで、この化合物は、イメージング用マーカーまたは標識された金属キレートを含むか、またはこれに連結されている;および(ii)腫瘍内の細胞に結合した化合物の量を測定することを含み、ここで、腫瘍内の細胞に結合した化合物の有意な量の検出は、これらの腫瘍細胞が死亡過程を実行中であることを示す方法を提供する。
【0050】
別の実施形態において、抗癌薬を、アポトーシス細胞の病巣を有する腫瘍に標的化する方法であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す化合物であって、細胞傷害剤を含むか、または細胞傷害剤に連結されているかのいずれかであるこの化合物を投与し、それにより、薬物の腫瘍内の細胞死の病巣への標的化を達成する工程を含む方法を提供する。
【0051】
別の実施形態において、抗凝血薬または線維素溶解薬の血餅への標的化方法であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す化合物であって、抗凝血薬または線維素溶解薬のいずれかを含むこの化合物を投与し、それにより、薬物の血餅への標的化を達成する工程を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の化合物:NST−ML−作用モチーフの作用機序のスキームを示す。
【図2A】CD95により誘導されたアポトーシスを実行中の培養ジャーカット細胞に対するトリチウム標識NST200の選択的な結合(A)およびCD95により誘導されたアポトーシスを実行中の培養ジャーカット細胞に対するトリチウム標識NST205の選択的な結合(B)を示す。
【図2B】CD95により誘導されたアポトーシスを実行中の培養ジャーカット細胞に対するトリチウム標識NST200の選択的な結合(A)およびCD95により誘導されたアポトーシスを実行中の培養ジャーカット細胞に対するトリチウム標識NST205の選択的な結合(B)を示す。
【図3A】蛍光顕微鏡検査を示し、アポトーシスを実行中の培養HeL細胞に対するNST203の選択的な結合(図3A)を示す。同じフルオロフォアを有するがNST−ML−作用モチーフを欠く、対照化合物のn−ブチル−ダンシルアミド(BDA)は、この選択性を示さなかった(図3B)。
【図3B】蛍光顕微鏡検査を示し、アポトーシスを実行中の培養HeL細胞に対するNST203の選択的な結合(図3A)を示す。同じフルオロフォアを有するがNST−ML−作用モチーフを欠く、対照化合物のn−ブチル−ダンシルアミド(BDA)は、この選択性を示さなかった(図3B)。
【図4A】マウスにおいてインビボで化学療法により誘導された細胞死を実行中の細胞に対するNST203の選択的な結合の蛍光顕微鏡検査を示す:(A)。黒色腫細胞のアポトーシス;(B)。胃腸管の上皮細胞のアポトーシス
【図4B】マウスにおいてインビボで化学療法により誘導された細胞死を実行中の細胞に対するNST203の選択的な結合の蛍光顕微鏡検査を示す:(A)。黒色腫細胞のアポトーシス;(B)。胃腸管の上皮細胞のアポトーシス
【図5A】トリチウム標識NST200によって検出された、癌細胞死に対する化学療法の効果を示す。
【図5B】トリチウム標識NST200によって検出された、癌細胞死に対する化学療法の効果を示す。
【図5C】トリチウム標識NST200によって検出された、癌細胞死に対する化学療法の効果を示す。
【図6】化学療法で処置した結腸癌を有するマウスにおけるNST 200によるオートラジオグラフィーを示す。
【図7】化学療法の前後での癌腫瘍と他の身体器官における取込みの比率を示す表を示す。
【図8A】トリチウム標識NST200の結腸癌内への取込み、およびこれに対する化学療法の効果を示す(図8A)。図8Bは、結腸重量の変化を示す。
【図8B】トリチウム標識NST200の結腸癌内への取込み、およびこれに対する化学療法の効果を示す(図8A)。図8Bは、結腸重量の変化を示す。
【図9A】トリチウム標識NST200の脳内のアポトーシス死の領域への標的化を示すオートラジオグラフィー画像解析(A)およびH&E染色(B)を示す。
【図9B】トリチウム標識NST200の脳内のアポトーシス死の領域への標的化を示すオートラジオグラフィー画像解析(A)およびH&E染色(B)を示す。
【図10A】ラット虚血再潅流腎のトリチウム標識NST200によるオートラジオグラフィーを示す;;(A)障害腎臓;(B)無傷の腎臓。
【図10B】ラット虚血再潅流腎のトリチウム標識NST200によるオートラジオグラフィーを示す;;(A)障害腎臓;(B)無傷の腎臓。
【図11】放射線造影剤誘導性急性遠位腎尿細管壊死のラットモデルにおけるトリチウム標識NST205によるオートラジオグラフィーを示す;(A)障害腎臓;(B)無傷の腎臓。
【図12】図12は、実験的自己免疫性脳脊髄炎の脳および脊髄におけるオートラジオグラフィーによる3H−200イメージングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な実施形態
本発明は、形質膜の正常な組織化の摂動を受けている細胞(PNOM細胞)に対して選択的な結合を行うことができるが、形質膜の正常な組織化を維持している細胞には、より低程度で結合する化合物に関する。PNOM細胞は、死亡過程を実行中の細胞、アポトーシス細胞および活性化された血小板から選択される。本発明は、さらに、PNOM細胞に選択的に結合する化合物を用いることによりPNOM細胞を検出する方法に関する。
【0054】
本発明の化合物は、PNOM細胞の選択的標的化において活性であるという利点を有するとともに、比較的低い分子量および潜在的に有利な薬物動態プロフィールを特色とする。
【0055】
本発明の一つの実施形態では、PNOM細胞を選択的に標的とする化合物(すなわち、PMBC)であって、式(I):
【0056】
【化16】
に示す構造で表される化合物、または式(I)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を提供する(式中、RおよびR’基の各々は、独立して、各存在において、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せから選択される;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;xおよびzは、各々、独立して存在し、0、1または2の整数であり、ここで、xおよびzは同じまたは異なり得る;yは、0、1または2の整数であり、ここでy=2のとき、置換基R’は、各存在において同じであっても異なっていてもよい;およびDは、診断に用いるマーカーであり、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えばF(ここで、Fは、18Fまたは19Fであり得る)または標識された金属キレートである;イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。別の実施形態では、Dは、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0057】
薬物は、ある特定の疾患の予防、改善または治療のための医薬として有用な薬剤であり得、例えば、限定されないが、アポトーシスの阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤、抗酸化剤、Bcl−2系の調節剤);細胞死の活性剤(例えば、抗癌薬);または血液凝固の調節剤(抗凝血薬、抗血栓剤または血栓溶解剤であり得る)であり得る。かかる場合において、薬物は、好ましくは、抗血小板剤、ヘパリン、低分子量ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaの拮抗薬、組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)、または凝固因子の阻害剤(例えば、トロンビンの阻害剤または第Xa因子のなど阻害剤);または抗炎症薬または免疫調節剤薬から選択される。本発明の一つの実施形態において、腫瘍細胞の死滅を達成するため、薬物を、目的の領域(例えば、腫瘍内のアポトーシスの病巣)に標的化する方法を提供する。本発明の別の実施形態において、凝固が抑制、低減または停止されるように、血栓領域に抗凝血薬または線維素溶解薬を標的化する方法を提供する。
【0058】
本発明の別の実施形態において、Dは固相支持体であり得る。
本発明の別の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的とする化合物であって、式(II):
【0059】
【化17】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(II)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Rは水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;Dは、水素、またはイメージング用マーカー(例えば18Fなど)または標識された金属キレートから選択される診断に用いるマーカーである;イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、上記規定のような、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0060】
本発明の別の実施形態において、式(III):
【0061】
【化18】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(III)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、R3は、ヒドロキシルまたはFである;R4は、C4、C5、C6、C7、C8、C9またはC10直鎖または分枝鎖アルキルであり、kは、0、1、2、3、4および5から選択される整数である)。
【0062】
本発明の別の実施形態において、式(IV):
【0063】
【化19】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(IV)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含む)。この化合物は、指定したNST200である。
【0064】
本発明の別の実施形態において、式(V):
【0065】
【化20】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(V)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Jは、−Fおよび−OHであり、rは、4、5、6、7、8、9、10の整数を表す)。rが4であり、Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST201である。rが5であり、Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST−ML−10である。
【0066】
本発明のさらに別の実施形態において、式(VI):
【0067】
【化21】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VI)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Jは、水素、−Fおよび−OHから選択される)。Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST204である。
【0068】
本発明の別の実施形態において、式VII:
【0069】
【化22】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物および溶媒和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Qは、テクネチウム、オキソテクネチウム、レニウムおよびオキソレニウムから選択され、R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖アルキルから選択され、pは、1、2、3、4および5から選択される整数を表す)。
【0070】
本発明の別の実施形態において、式VIII:
【0071】
【化23】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VIII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物および溶媒和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Qは、テクネチウム、オキソテクネチウム、レニウムおよびオキソレニウムから選択される)。
【0072】
本発明の別の実施形態において、式(IX):
【0073】
【化24】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(IX)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、R5は、水素、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、ならびにC1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキルから選択される;qは、1、2、3、4および5から選択される整数を表す;およびYは蛍光用マーカーである)。本発明の一つの実施形態では、Yは、ダンシルアミド基およびフルオレセインから選択される。
【0074】
本発明の別の実施形態において、式(X):
【0075】
【化25】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(X)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含む)。この化合物は、指定したNST203である。
【0076】
本発明の別の実施形態において、式(XI):
【0077】
【化26】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(X)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Rは水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す)。
【0078】
本発明の別の実施形態において、式(XII):
【0079】
【化27】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Fは、18Fまたは19Fであり得る)。
【0080】
本発明の別の実施形態において、式(XIII):
【0081】
【化28】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XIII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、Rは、水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;mは、0、1、2、3または4の整数を表す;Dは、水素、または診断に用いるマーカーであり、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えば、F(Fは18Fまたは19Fであり得る)または放射標識された金属キレートであり得、イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、上記規定のような、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0082】
本発明の別の実施形態において、式(XIV):
【0083】
【化29】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XIV)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Fは、18Fまたは19Fであり得る)。
【0084】
本発明の別の実施形態において、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVで表される化合物の各々は、診断に用いるマーカー、例えば、限定されないが、Tc、Tc=O、In、Cu、Ga、Xe、Tl、ReおよびRe=O、123I、131I、Gd(III)、Fe(III)、Fe2O3、Fe3O4、Mn(II)、18F、15O、18O、11C、13C、124I、13N、75Br、Tc−99mまたはIn−111などを含むものであってもよく、またはこれに連結されたものであってもよい。
【0085】
本発明の別の態様において、細胞集団内のPNOM細胞の検出方法であって、(i)細胞集団を、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造のいずれか1つで表される化合物、または式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、ならびにこの塩の溶媒和物および水和物と接触させること;および(ii)細胞に結合した化合物の量を測定することを含み、ここで、細胞に結合した化合物の有意な量は、これがPNOM細胞であることを示す方法を提供する。
【0086】
用語「細胞に結合した化合物の有意な量」は、本発明によれば、正常細胞に結合した量よりも少なくとも30%多い量でPNOM細胞に結合する本発明の化合物(診断に用いるマーカーを含むか、またはこれに結合している)の量をいう。別の実施形態では、その量は50%多いこともあり得る。本発明の別の実施形態では、その量は75%多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は150%多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は約2倍多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は少なくとも2倍より多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は少なくとも5倍多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は少なくとも10倍多いこともあり得る。
【0087】
PETまたはSPECTによる放射性核種イメージングにより、患者において死亡過程を実行中の細胞の画像を得るための本発明の化合物の使用に関する本発明の一つの実施形態において、PNOM細胞に結合した化合物の量対正常細胞に結合した量の比の計算は、死亡過程の負担を有する組織から得られたシグナルの大きさまたは強度を、このプロセスの負担のない器官から得られた大きさ/強度と比較することにより行ない得る。
【0088】
本発明の別の態様により、患者または動物におけるPNOM細胞の検出方法であって、(i)患者または動物に、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物化合物(ここで、この化合物は、イメージング用マーカー、例えば18Fなどを含む)、または式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を投与すること;および(ii)細胞に結合した化合物の量を測定するために、検査対象のヒトまたは動物のイメージングを行なうことを含み、ここで、細胞に結合したこの化合物の有意な量は、これがPNOM細胞であることを示す方法を提供する。
【0089】
本発明の化合物の作用機序は、一般式XVを有し、かつNST−ML−作用モチーフ:
【0090】
【化30】
(式中、Rはアルキルを表す)
と示す、すべての化合物が共有するモジュールの活性を、少なくともある程度含む。本発明の一つの実施形態において、Rはブチルである。
【0091】
NST−ML−作用モチーフは、アポトーシス細胞の形質膜に見られる構造的改変(これにより、これらの膜は健常細胞の膜と識別される)に対応させるために設計されたものである。膜改変のこの複合には、
(i) 膜リン脂質の無秩序化(scrambling)(ホスファチジルエタノールアミン(PE)および負に帯電したホスファチジルセリン(PS)の細胞表面上に露出した状態で)。細胞表面上でのPSの露出により、負の表面電位がもたらされ、プロトンの吸引によって膜界面に大きな塊(bulk)が形成される;
(ii)膜の外側リーフレット内におけるアミノリン脂質(PEおよびPS)の割合の増加の結果、膜の外側リーフレットの界面におけるプロトン電流(界面プロトン電流、IPC)の増強がもたらされる。この増強は、PEおよびPSが外膜リーフレット内のホスファチジルコリン(PC)およびスフィンゴミエリン(sphingomeylin)(SM)と置き換わるにつれて、プロトン転移反応に関与しやすい官能基の数の実質的な増加によるものである。PEは第一級アミンを含み、一方、PSは第一級アミンとカルボキシル基を含む。対照的に、PCおよびSMは、各々、永久的な正電荷を有する第四級アンモニウムを含み、したがって、プロトン転移反応には関与し得ない;
(iii)加えて、アポトーシス膜は、膜構成要素のパッキングレベルの低下および膜流動性の増加を特徴とする;
が含まれる。
【0092】
NST−ML−作用モチーフの作用の様式の非限定的な仮定において、これは、上記の特徴を特色とする膜、すなわち、アポトーシス細胞の形質膜に接近すると選択的に活性化されるスイッチ部分を含む(図1)。作用モチーフは、負に帯電したカルボキシレート基を2個有し(マロン酸アルキルのpKaは約5.6および2.8である)、したがって、ほとんどの場合、生理学的条件で形式電荷−2を有するため、生理学的pHでは可溶性である。しかしながら、アポトーシス膜に接近すると、表面の酸性がより強いため、および界面環境の誘電率の低下(これは、カルボキシル基のpKa値を上昇させる作用をする)のため、プロトンは、マロネート部分(moeity)に捕捉されている。
【0093】
マロネート基によるプロトンの捕捉により、負電荷の1つが中和され、したがってこの分子はより疎水性となる(全体的な電荷−1を有する)。さらにまた、プロトンの捕捉によって非常に特有の状況がさらにもたらされ、それには、以下のものが含まれる。
(i)酸−アニオン対が形成され、このとき、例外的に、強い水素結合が、プロトン付加されたカルボキシル基とプロトン付加されていないカルボキシル基との間に形成される。この水素結合は強力であり、対称的で、共鳴および互変異性化(tautamerization)によって安定化されている。
(ii)これは、4個のカルボキシル原子の上部に負電荷の分布をもたらす、すなわち、部分的に非局在化させる。
(iii)強酸−アニオン水素結合はこの分子を剛性化し、バルキーで剛性の平坦な6員環を生成する。これは、部分的に非局在化した負電荷を有し、カルボキシル二重(bouble)結合の上部にπ電子雲を含む。かかる成分(element)は、本発明の化合物の作用機序の非限定的な仮定によれば、膜界面への比較的有利な浸透を行ない得る。しかしながら、そのバルキーな剛性構造は、緩くパッキングされた膜(emebrane)、すなわち、アポトーシス膜(memebrane)に選択的に結合し、高度にパッキングされた膜(例えば、健常細胞の形質膜)への結合を排除するよう指令する。したがって、このような立体構造の特徴は、アポトーシス膜への結合における選択性を促進する。
【0094】
アポトーシス細胞の膜界面に1個のプロトンが付加されたマロネートが選択的に浸透すると、これは、増強された界面プロトン電流に供されることになり、増強された界面の水素結合網目内に組み込まれることになる。この条件下では、マロネート部分が第2のプロトンを獲得する可能性は著しく増加する。これにより、さらに、電荷の中和および隣接するリン脂質分子とのさらなる酸−アニオン対の形成がもたらされる。総合すると、これらの事象は、アポトーシス膜の界面へのこの分子の結合を安定化するために作用する。
【0095】
プロトン付加されたマロネート部分の膜界面内への浸透および界面におけるその結合の安定化により、アルキル鎖Rが膜界面を横断し、その最適な結合環境、すなわち膜炭化水素コアに達することが可能になり、その結果、疎水性(hydorphobic)相互作用によって、化合物の結合の自由エネルギーの獲得にさらに寄与する。
【0096】
NST−ML−作用モチーフは、炭化水素リンカーを介したイメージング用マーカーまたは治療用薬物(式IのD部分)との結合により、有用な診断用または治療用目的に利用されている[式Iまたは2の(CH2)m]。このアプローチによるNST−ML−作用モチーフは、標的化部分(moeity)としての機能を果たし、自身に結合しているイメージング用マーカーまたは薬物を、細胞死、特に(paricularly)アポトーシスの負担を有する細胞および組織、または血小板活性化および血栓症の負担を有する組織に選択的に標的化することを可能にする。
【0097】
図1は、NST200(式IV)を示し、生理学的条件におけるPNOM膜への接近および結合の3つの段階を表す:
A:この化合物は水溶液中に存在し、したがって、両カルボキシル基は脱プロトン化されている、すなわち負に帯電しており、この化合物は高度に可溶性である。
B:負に帯電したアポトーシス膜に接近すると、この化合物はプロトンを獲得する。アニオン−酸二量体が形成され、したがって、安定な6員環の共鳴安定化した環が生成する。これは膜界面に浸透する。このバルキーな剛性環構造は、その立体構造の特徴が、充分パッキングされた健常細胞の形質膜に対する結合よりも、緩くパッキングされたアポトーシス細胞の形質膜に対する結合にとってより有利であるため、選択性を補助する。
C:この化合物は、アポトーシス膜の膜界面内に浸透すると、この膜の界面で見られるこの界面の水素結合網目および増大された界面プロトン電流に供されることになる。結果として生じるプロトン化および水素結合形成は、さらに、この化合物への界面への結合(矢印)を安定化するために作用する。かかる浸透は、アルキル鎖が膜内でのその最適な位置に達するのをさらに可能にし、したがって、膜炭化水素コアとの疎水性相互作用の形成により、結合エネルギーにさらに寄与する。
【0098】
本発明の化合物は、医薬として有用な薬剤を、PNOM細胞を含む組織および器官に選択的に標的化するために、本発明の3種類の異なるアプローチで使用され得る。
(i)以下、「検出アプローチ」と称する第1のアプローチによれば、選択的な結合は、イメージング用マーカーをPNOM細胞に標的化するために利用され得る。これは、インビボ、エキソビボまたはインビトロのいずれかで、かかる細胞が現れる疾患(以下に説明する)の診断のために診療において使用される。
(ii)以下、「治療用アプローチ」と称する第2のアプローチによれば、選択的な結合特性は、PNOM細胞が現れた身体内の器官および組織、例えば、細胞死、血栓形成または炎症の領域に対する治療用薬剤の選択的標的化に使用される。
(iii)「クリアランスアプローチ」と称する本発明の第3のアプローチによれば、PNOM細胞に対する本発明の化合物の選択的な結合は、この化合物の固相支持体との結合を介して、体液(例えば、血液)を、その凝血促進性により潜在的に有害であり得るPNOM細胞から浄化するために利用される。
【0099】
検出アプローチに従い、本発明は、イメージング用マーカー含むか、またはこれに連結されたPMBCを有効成分として含む、インビトロ、エキソビボまたはインビボのいずれかでPNOM細胞を検出するための組成物に関する。かかるPMBCを、以下、「診断用PMBC」と示す。診断用PMBCは、アッセイした試料中に存在するPNOM細胞に対して選択的な結合を行なうことができる。次いで、この結合を、当該技術分野で知られた任意の手段で確認し得る。本発明の診断用PMBCは、PNOM細胞に対して選択的な様式でのマーカー標的化(PMBCによる)を可能にする。次いで、検出可能な標識を、当該技術分野で知られた任意の様式で、特定の標識(例えば、蛍光、放射能の放出、または呈色、MRI、X線など)の使用に従って検出し得る。一つの実施形態では、診断用PMBCは、共有または非共有(例えば、静電)結合によって検出可能な標識に連結されている。
【0100】
一つの実施形態において、検出可能な標識は、金属イオンのそれぞれの放射性同位元素、Tc、オキソTc、In、Cu、Ga、Xe、TlおよびRe、オキソRe、ならびに共有結合した原子のいずれか:123Iおよび131I(放射性同位体スキャン用、例えばSPECTなど);Gd(III)、Fe(III)またはMn(II)(MRI用);ならびに18F、15O、18O、11C、13C、124I、13Nおよび75Br(陽電子断層撮影法(PET)スキャン用)であり得る。
【0101】
一つの実施形態において、本発明のPMBCは、PETスキャンによるアポトーシスの臨床用イメージングを目的としたものであり、PMBCは18F原子を含む。
イメージング用マーカーとして使用されるある種の放射性同位体(例えば、18F)は半減期が短いため、臨床用PETイメージングの目的のためのかかるマーカーの結合は、患者への診断用化合物の投与直前に行うのがよい。したがって、患者への投与前に、18Fなどの放射性同位体に置換される部分を含むPMBC−PET前駆物質を合成することは有用であり得る。一つの実施形態では、18Fと置き換わる部分は、ヒドロキシル基、ニトロ基またはハロゲン原子(例えば、臭素または塩素など)から選択される。かかるPMBC前駆物質PMBC−PET前駆物質もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0102】
PMBC(このの構造の任意のPMBCであり得る)をPETイメージング用18Fで標識するための方法は、18F原子をPMBCに結合する工程;それにより、PMBCをPETイメージング用の18Fで放射性標識する工程を含む。任意選択で、18F原子を結合する工程の前に、PMBCの官能基を適切な保護基で保護してもよい。この保護基は、その後、任意選択で、18F原子の結合工程の後で除去する。
【0103】
マーカー金属原子の場合(例えば、それぞれMRIまたはSPECTの場合でGd、99mTcまたはオキソ99mTc)、PMBCは、金属キレート化剤を含む。キレート化剤の金属配位性原子は、窒素、硫黄または酸素原子であり得る。本発明の一つの実施形態において、キレート化剤は、ジアミンジチオール、モノアミンモノアミド−ビスチオール(MAMA)、トリアミド−モノチオールおよびモノアミン−ジアミド−モノチオールである。かかる場合において、金属原子との錯体形成前のキレート化剤と結合しているか、またはこれを含むPMBCであるPMBCキレート前駆物質、金属原子を含有する錯体は、ともに本発明の範囲に含まれる。
【0104】
蛍光検出のため、診断用PMBCは、当該技術分野で知られた任意の蛍光プローブから選択される蛍光基を含み得る。かかるプローブの例は、5−(ジメチルアミノ)ナフタレン−1−スルホニルアミド(ダンシルアミド)、およびフルオレセインである。
【0105】
本発明の化合物は、PNOM細胞の形成を特徴とする多種多様な病状の検出および診断に使用され得る。PNOM細胞を特徴とする病状の例は、以下のとおりである。
過剰アポトーシスの発生を特徴とする疾患、例えば、変性障害、神経変性障害(例えば、パーキンソン疾患、アルツハイマー疾患、ハンティングトン舞踏病)、AIDS、ALS、プリオン病、骨髄異形成症候群、虚血性または毒性傷害、移植片拒絶反応の際の移植片の細胞減損;腫瘍、および 特に高度に悪性/攻撃的な腫瘍などは、多くの場合、過剰組織増殖に加えてアポトーシスの増強もまた特徴とする。
【0106】
本発明の実施例3ならびに図2は、死亡過程を実行中の脳細胞の検出における本発明の化合物の性能を例示する。細胞死の誘因は、虚血/再潅流とした。障害を受けた脳半球は、反対側の非障害半球と比べ、著しく高いレベルのトリチウム標識NST200取込みを示した。
【0107】
過剰血液凝固を示す疾患、これは、PNOMが、血小板活性化の際、および/または他の細胞内事象の活性化またはこれに対する障害(例えば、内皮細胞)の際に存在する。このような疾患としては、とりわけ、動脈または静脈の血栓症、血栓塞栓症、例えば、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、鎌状赤血球症、サラセミア、抗リン脂質抗体 症候群、全身性エリテマトーデスが挙げられる。
【0108】
炎症性障害および/または免疫媒介性の病因または病原と関連する疾患、自己免疫障害(例えば、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデスなど)、結合組織障害(例えば、慢性関節リウマチ、強皮症など);甲状腺炎;皮膚障害(例えば、天疱瘡または結節性紅斑);自己免疫性血液障害;自己免疫性神経障害(例えば、重症筋無力症);多発性硬化症;炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎など);脈管炎。
【0109】
アテローム性プラーク、特に、不安定で、裂開を受けやすく、また裂開する傾向があるプラークもまた、PNOM細胞(例えば、アポトーシスマクロファージ、アポトーシス平滑筋細胞、アポトーシス内皮細胞、および活性化された血小板)を特徴とする。かかる活性化された血小板は血栓において見られ、多くの場合、不安定なアテローム性プラークと会合している。
【0110】
また、検出は、それぞれの疾患を有することがすでにわかっている場合において、疾患の重篤度を評価する目的で、および疾患過程および/または種々の治療モダリティに対する応答をモニターするために行なわれ得る。かかるモニタリングの非限定的な例は、抗癌治療に対する応答の評価である。ほとんどの抗腫瘍治療(例えば、化学療法または放射線療法など)は、アポトーシスの誘導によってその効果を発揮し、腫瘍細胞の治療誘導性アポトーシスの診断用PMBによる検出は、抗腫瘍薬剤に対する腫瘍の感受性の程度を教唆し得る。これは、抗癌治療の施行時点と、その効力の適正な評価時点との間の遅延期間を実質的に短縮し得る。
【0111】
さらにまた、検出は、抗癌治療の有害効果をモニターするためにも使用され得る。かかる有害効果の大部分は、正常であるが敏感な細胞(例えば、胃腸管上皮または骨髄造血系ものなど)における不適当な治療に誘導されたアポトーシスによるものである。
【0112】
加えて、検出は、固有のアポトーシス負荷(多くの場合、腫瘍攻撃的性のレベルと相関する)の特性付けを目的としたものであり得、また、転移部内で頻繁に起こる固有のアポトーシスの検出により転移の検出を補助し得る。
【0113】
同様に、本発明の診断用PMBCは、アポトーシスが移植片拒絶の際の細胞減損に主要な役割を果たしているため、器官移植後の移植片生着のモニタリングに有用であり得る。
加えて、検出は、細胞保護治療に対する応答のモニタリングを目的としたものであり得、したがって、細胞死の評価の目安となり得ることにより、種々の疾患における細胞減損を抑制することができる薬物(例えば、上記のもの)のスクリーニングおよび開発を補助する。
【0114】
また、検出は、かかるプラークの不安定化(裂開、血栓症および塞栓形成を受けやすくなり、また裂開する傾向になる)が、いくつかの型のPNOM細胞(アポトーシス細胞(アポトーシス性マクロファージ、平滑筋細胞および内皮細胞)、and 活性化された血小板を含む)の関与を特徴とするため、アテローム性プラークの検出に有用であり得る。
【0115】
このアプローチによれば、本発明は、全身、器官、組織、組織培養物から選択される細胞集団または任意の他の細胞集団におけるPNOM細胞の検出方法であって、(i)細胞集団を、本発明の実施形態のいずれかによる診断用PMBCと接触させること;および(ii)細胞集団に結合したPMBCの量を測定することを含み、ここで、この集団内の細胞に結合した化合物の有意な量の検出は、細胞がPNOM細胞であることを示す、PNOM細胞の検出方法に関する。
【0116】
実施例の項に、トリチウム標識NST 200、NST 203およびNST 205がアポトーシス細胞に、対照の非アポトーシス細胞よりも高量で結合する能力の能力を示し、これは、アポトーシス細胞の選択的な結合および検出を行なう際の本発明の化合物の特性を示す。
【0117】
別の実施形態では、本発明は、さらに、患者または動物においてインビボでのPNOM細胞の検出方法であって、(i)診断用PMBCを検査対象の患者または動物に投与すること、ここで、この投与は、非経口(例えば、静脈内)または経口投与などの当該技術分野で知られた任意の手段によって行なわれる;および(ii)検査対象の患者または動物のイメージングを、当該技術分野で知られた任意の方法(例えば、PETスキャン、SPECT、MRI)によって行ない、細胞に結合した診断用PMBCの量を検出および測定することを含み、ここで、細胞に結合した化合物の有意な量は、細胞がPNOM細胞であることを示す、PNOM細胞の検出方法に関する。
【0118】
本発明の別の実施形態において、本発明は、組織または細胞培養物試料中のPNOM細胞のインビトロまたはエキソビボでの検出方法であって、(i)試料を診断用PMBC(本発明において記載のPMBC化合物のいずれかであり得る)と、診断用PMBCのPNOM細胞の生体膜との結合を可能にする条件下で接触させること;および(ii)細胞に結合した診断用PMBCの量を検出すること、ここで、結合した診断用化合物の有意な量の存在は、組織または細胞培養物内におけるPNOM細胞の存在を示す、検出方法に関する。
【0119】
インビトロまたはエキソビボ試験における検出工程は、例えば蛍光標識された本発明の化合物の場合、限定されないが、市販品として広く入手可能な装置にて細胞の可視化を可能にするフローサイトメトリー解析を使用するものであり得る。細胞を可視化するために蛍光を使用する一例では、単一の15mWアルゴンイオンレーザー光線(488 nm)を用いてFITC 蛍光を励起し、蛍光データを、530nm帯域通過フィルタを用いて収集し、ヒストグラムを作成する。蛍光細胞の割合は、例えば、Lysis IIソフトウェアまたは任意の他のソフトウェアを用いて算出し得る。この検出方法は、本発明の一つの実施形態において、抗癌薬などの治療用薬物のスクリーニングのために使用し得る。
【0120】
用語「有意な量」は、本発明によれば、PNOM細胞に結合したPMBCの量が、非PNOM細胞に結合した量よりも少なくとも30%多いことを意味する。実際の量は、用いるイメージング方法および装置に応じて、および検査対象の器官または組織に応じて異なり得る。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量よりも少なくとも50%多い。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量よりも少なくとも75%多い。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量の少なくとも2倍である。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量の少なくとも4倍である。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PM細胞に結合した量の少なくとも6倍である。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量の少なくとも8倍である。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量の少なくとも10倍である。
【0121】
結合の作用は、とりわけ、結合の違いを測定する方法に依存する。本発明の方法は、PNOM細胞の存在を特徴とする疾患、例えば、限定されないが、上記のいずれかの疾患の診断に使用され得る。
【0122】
本発明の方法はまた、疾患または病状の治療のため、あるいはまた、先に説明したような基礎的な科学研究目的のために使用される種々の治療モダリティの効果のモニタリング
に使用され得る。
【0123】
「治療用アプローチ」と称する本発明の第2のアプローチによれば、本発明は、活性な薬物またはプロドラッグをPNOM細胞に標的化するために使用される、PMBCを含む医薬組成物に関する。治療用PMBCは、本発明によれば、薬物を含むPMBCまたは医薬として有用な薬剤とコンジュゲートしたPMBCを意味する。用語「コンジュゲート」は、当該技術分野で知られた任意の手段によって互いに連結された2つの分子を意味する。
【0124】
医薬として有用な薬物と、PMBC(これは、治療用PMBCに含まれているか、または連結されている)との会合は、共有結合、非共有結合(例えば、静電力)によるもの、または薬物を含み、かつその表面上に、この複合体をPNOM細胞に標的化するPMBCを有する担体粒子(例えば、リポソームなど)の形成によるものであり得る。薬物が標的に達すると、これはその生理学的活性を、なおPMBC−コンジュゲートの一部であるとき、PMBCをその膜上に有する薬物含有リポソームの食作用によって、または任意の他の既知の機序によってPMBC単位から解離した後(例えば、切断、破壊など、天然酵素の活性により)のいずれかで発揮できるはずである。
【0125】
薬物は、組成物が意図される具体的な疾患に応じて選択するのがよい。
本発明の医薬組成物、ならびに診断用組成物は、任意の公知の経路、とりわけ、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、舌下、眼内、鼻腔内または局所投与、または大脳内投与によって投与され得る。担体は、所望の投与様式に応じて選択するのがよく、任意の公知の成分、例えば、溶媒;乳化剤(emulgator)、賦形剤、タルク;香料;着色料などを含み得る。医薬組成物は、所望により、他の医薬的に活性な化合物(これは、疾患を治療するため、副作用を排除するため、または活性成分の活性を増大させるために使用される)もまた含み得る。
【0126】
この態様によれば、本発明は、さらにまた、PNOM細胞が現れる疾患の治療方法であって、かかる治療を必要とする個体に、有効量の治療用PMBCを投与することを含み、この治療用PMBCが、疾患の治療物質として活性である薬物または標的化領域において活性な薬物に変換されるプロドラッグを含む、この疾患の治療方法に関する。治療用PMBCは、薬物を、PNOM細胞を含むに組織に選択的に標的化することを可能にし、したがって、その局所濃度を増大させ、標的部位でのその治療効果を潜在的に増強する。かかる医学的障害は上記規定のものである。
【0127】
別の実施形態では、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す化合物のいずれか1つおよび細胞傷害剤を含む治療用PMBCの投与によって、腫瘍内のアポトーシス細胞を標的化し、それにより、癌細胞を死滅させる工程を含む、腫瘍内の癌細胞の死滅方法を提供する。一つの実施形態では、腫瘍細胞の死滅方法は「自己触媒機構」を伴い、この場合、腫瘍に標的化される細胞傷害性薬剤の量は順次用量とともに増加する。それは、各用量において、その細胞傷害性効果により腫瘍内のアポトーシス細胞の負荷が増強され、したがって、治療用PMBCの次の用量での標的化のための部位がより多くもたらされるためである。かかるストラテジーは、抗癌治療の効力を増強し得、腫瘍根絶の機会を増大させ得る。
【0128】
治療用PMBCの「有効量」という用語は、疾患の少なくとも1つの有害な徴候を測定可能なレベルまで減少させることができる量をいい、使用する薬物、投与様式、患者の年齢および体重、疾患の重篤度などに応じて選択するのがよい。
【0129】
別の実施形態では、本発明の治療用PMBCは、治療効果を有する放射性同位体を含むか、またはこれに連結されている。かかる放射性同位体の一例は、限定されないが、治療用目的に有用な、イットリウム90、ヨウ素131、レニウム188、ホルミウム166、インジウム111、ルテチウム(Leutitium)177、または放射線を発する任意の他の放射性同位体である。
【0130】
別の実施形態では、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す化合物であって、抗凝血薬または線維素溶解薬に連結されたこの化合物のいずれか1つを含む治療用PMBCを投与し、それにより、治療剤を、血餅内の活性化された血小板に標的化し、血栓形成を低減/抑制することによる、血餅の低減/抑制を提供する。
【0131】
この方法はまた、過剰血液凝固を示す疾患であって、PNOMが血小板活性化の際、および/または他の細胞内事象の活性化またはこれに対する障害の際に存在する(例えば、内皮細胞)疾患治療または予防するためにも使用され得る。このような疾患としては、とりわけ、動脈または静脈の血栓症、血栓塞栓症、例えば、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、鎌状赤血球症、サラセミア、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデスが挙げられる。
【0132】
「クリアランスアプローチ」と称する本発明の第3のアプローチによれば、PNOM細胞に特異的に結合する本発明のPMBCの性質は、細胞の体液を浄化するために利用される。本発明の一つの実施形態において、体液は血液または血液製剤である。
【0133】
体外循環を必要とする多くの外科的または医学的介入には、血液成分の外因性人工的環境への曝露が付随する。これは、多くの場合、血液細胞の活性化およびこれに対する障害、全身性炎症、および深刻な臨床結果(例えば、脳血管内の微小塞栓の持続的存在(lodging)時の神経機能障害など)を潜在的に有する血栓塞栓性の現象をもたらす。したがって、障害され活性化された細胞またはアポトーシス細胞を検出し、血液から除去することが望ましい。
【0134】
したがって、その態様の1つによれば、本発明は、固相支持体上に固定化されたPMBCに関する。固定化は、直接結合によるもの、共有結合または非共有結合のいずれかによるもの、またはスペーサーを介した結合によるものであり得る。固定化されたPMBCは、体液をPNOM細胞から浄化することを意図するものである。
【0135】
本発明の別の実施形態によれば、固相支持体は、PMBCが結合される複数のビーズを特色とする。好ましくは、ビーズは樹脂コートビーズである。あるいはまた、ビーズは磁気ビーズであり得る。
【0136】
固相支持体が複数のファイバーまたはマイクロキャピラリーを含み、個々の間および/または内部に体液が流れる場合、その内側および/または外側の面をPMBCで被覆する。
【0137】
固相支持体上に固定化された化合物は、濾過デバイスの一部を構成する。したがって、クリアランスアプローチによれば、本発明は、さらに、固相支持体上に固定化された化合物を内包するハウジング、ならびに流体供給口および流体排出口を備える濾過デバイスに関する。血液または血液製剤などの体液は、供給口を通してハウジング内に入り、ハウジングに内包された固定化PMBCと接触し、これに接着する。したがって、体液には、摂動した膜を有する循環細胞、例えば損傷を受けた細胞または死滅中の細胞がなく、より大きな構造体、例えばPNOM膜を有する塞栓がない。結果として、排出口から排出される流体は、PNOM細胞の含量が低下しており、本質的にこれをもたない。
【0138】
濾過デバイスは、体外循環装置の交換可能な部分、常置される部分、または付加的部分を構成し得る。したがって、本発明はまた、濾過デバイスを含む体外循環装置であって、この装置内部を循環する血液がこの装置も通る体外循環装置に関する。
【0139】
かかる装置の例は、心肺バイパス装置;血液透析装置;血漿交換装置および輸血装置(例えば、当該技術水準の輸血バッグ)である。
実施例
本発明を理解するため、およびこれを実際にどのように行い得るかがわかるように、以下の実施例:本発明の化合物の合成に関する実施例;および死亡過程を実行中の細胞に対する選択的な結合における本発明の化合物の性能に関する実施例を記載する。本発明の化合物の検出を可能にするため、これをトリチウムで放射標識し、損傷を受けた領域内への取込みを測定することにより、またはオートラジオグラフィー法によって検出した。一部の実施例では、化合物を蛍光標識、すなわちダンシルアミド基への結合によって標識し、蛍光顕微鏡検査によって検出した。アポトーシス細胞に対するこの化合物の結合の選択性は、インビトロで組織培養物において、およびインビボで細胞死を中大脳動脈の閉塞によって誘導した脳卒中のマウスモデル、腎虚血性または毒性傷害のマウスモデル、黒色腫のマウスモデル、結腸癌のマウスモデル、および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)において、多発性硬化症に関連するマウスモデルにおいて示された。
【0140】
(実施例1)
NST−ML−F−4(2−ブチル−2(3−フルオロプロピル)−マロン酸)の合成;(スキーム1):
ジ−t−ブチルマロネート(5mL)を、1当量のNaHを含むジメチルホルムアミド(DMF)で脱プロトン化し、1当量のヨウ化n−ブチルを、水素発生が止まった後、添加した。反応混合物を50℃まで14時間加熱した。5.8gのジ−t−ブチル、ブチルマロネート(2)を95%収率で、カラムクロマトグラフィーを用いて得た。2(3.8g)を、NaOCH3(0.05当量、触媒量)およびアクロレイン(1.1当量)を含むトルエンで処理し、1.26gのアルデヒド(3)を30%収率で得た。化合物3を、次いで、NaBH4(1.05当量)を含むエタノール/水(8:1v/v)の混合物で2時間反応させた。処理(work−up)およびフラッシュクロマトグラフィー後、純粋なアルコール4を得た(93%)。得られた生成物を、1.1当量の塩化メタンスルホニル(MsCl)および2.2当量のトリエチルアミン(Et3N)で処理し、メシラート化合物5を97%収率で得た。この生成物は本質的に純粋であり、さらに精製を行なわずに次の反応に直接持ち越した。
【0141】
KF(5当量)、クリプトフィックス(5当量)およびK2CO3(2.5当量)を2mLのアセトニトリル中に含む混合物を、窒素気流下、4回ストリッピングして乾固した。次いで、メシラート化合物5(167mg)を含む2mLのアセトニトリルを添加した。反応物を、120℃のサンドバス内で10分間攪拌した。処理すると、粗製生成物の1H NMRにより、所望の生成物6とクリプトフィックスの混合物が示された。di−t−ブチルエステル6の脱保護を、(474mg)およびトリフルオロ酢酸(TFA)(17mL)を用い、10℃で30分間行ない、次いで、蒸発乾固した。残留物を、クロロホルムから2回エバポレートし、真空ラインにて乾燥し、NST−ML−F−4の白色固形物(312mg、99%)を得た。この化合物のNMRデータは:lHNMR(300MHz, CDC13)δ4.41(dt,Jt=5.9Hz,Jd=47.4Hz,2H),1.97−1.91(m,2H),1.89−1.83(m,2H),1.69−1.60(m,1H),1.58−1.52(m,1H),1.33(p,J=6.9Hz,2H),1.25−1.14(m,2H),0.92(t,J=7.2Hz,3H);13CNMR(75MHz,CD3OD)δ175.8,86.2,84.1,58.6,34.1,30.1,30.0,27.9,27.3,27.0,24.5,14.6;l9FNMR(282MHz,CD3OD)δ−220.9;MS(EI)m/z219(M−H)である。
【0142】
【化31】
(実施例2)
NST−ML−F:2−メチル−2(3−フルオロプロピル)−マロン酸の合成;(スキーム2):
4−ブロモ−1−ブタノール(1)3gを、1.5当量の3,4−ジヒドロ−2H−ピランおよび0.1当量のp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)を含む135mLのCH2Cl2で処理した。処理および精製後、1.45g(33%)の生成物2を得た。1.0当量のジエチルメチルマロネートを、1当量のNaHで脱プロトン化し、1.0当量のブロミド2を、触媒量のKIとともに50℃で添加した。完全な変換が10時間に観察され、90%収率が得られた。テトラヒドロピラン(THP)のPPTS含有エタノールでの脱保護は、55℃で順調に進行した。処理後、定量的収率のアルコール4が得られ、メシル化反応に直接使用した(前述と同様)。得られたメシラート5を用い、クリプトフィックスの反応を、上記のようにして適用した。化合物6を68%収率で得た。化合物6(233mg)を、2N NaOH/EtOH(30mL/5mL)で50℃にて処理し、NST−ML−Fを約99%収率(190mg)で得た。この化合物のNMRデータは、以下のとおりである。1HNMR(300MHz,CDC13)δ11.89(bs,2H),4.46(dt,Jt=5.9Hz,Jd=47.2Hz,2H),1.99−1.92(m,2H),1.82−1.64(m,2H),1.50(s,3H),1.50−1.40(m,2H),13CNMR(75MHz,CDC13)δ178.6,85.1,82.9,54.2,35.5,31.0,30.8,20.8,20.7,20.2;19FNMR(282MHz,CDC13)δ−219.0,MS(EI).
【0143】
【化32】
(実施例3)
トリチウム標識NST 200およびNST205の、CD95により誘導されたアポトーシスを実行中である培養ジャーカット細胞への選択的結合
実験手順
培養ジャーカット細胞(ヒト成人T細胞白血病細胞)を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、lmMのピルビン酸ナトリウム、1mM HEPESおよび抗生物質(100単位/mlペニシリン;100μg/mlストレプトマイシンおよび12.5単位/mlのナイスタチン)を加えたRPMI培地(Beit−Haemek,Israel)中の懸濁液中で成長させた。アポトーシスの誘導前に、培地をHBSバッファー(10mM HEPES;140mM NaCl、1mM CaCl)と交換した。次いで、アポトーシスを、CD95(0.1ug/107細胞/ml)での処置によって誘発した。その結果、著しい割合の細胞がアポトーシスとなった。非処置細胞を対照とした。次いで、対照細胞およびアポトーシス細胞の両方を40分間、室温でインキュベートした後、30分間氷上で、(2μCi/107細胞/0.5ml)トリチウム標識NST 200およびNST 205とともにインキュベートした。
【0144】
細胞を2回洗浄した後、1mlのSOLVABLE(商標)試薬(GNE9100、Packard Biosciences)を、このペレットに添加した。1時間の60℃でのインキュベーション後、抽出物をガラスシンチレーションバイアル内に移し、10mlのシンチレーション液(Ultima gold 6013329、Packard Biosciences)を各バイアルに添加した。放射能を、1時間の室温までの冷却および暗順応後に計測した。放射能の値を計算し、添加した放射標識したNST 200およびNST 205の総量に対するパーセントで示した。
実験結果
図2Aから明白にわかるように、アポトーシス細胞は、非アポトーシス細胞と比べ、著しく高いNST200の取込み(8倍を超える)を示した。この実験は、NST200が、アポトーシス細胞に選択的に結合でき、その検出のためのマーカーとしての機能を果たし得ることを示す。同様に、図2Bからわかるように、アポトーシス細胞は、非アポトーシス細胞と比べ、高いNST205の取込みを示し、この効果は、カスパーゼ阻害剤であるZVAD(フルオロメチルケトンペプチド(peptid)(V−バリン、A−アラニン、D−アスパラギン酸塩)カスパーゼ阻害剤)を添加している間に完全に逆転した。
【0145】
(実施例4)
アポトーシスを実行中の培養HeL細胞に対するNST 203の選択的結合
HeLa S3 細胞(ATCC CCL−2.2)を、2mMのL−グルタミン;100単位/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5単位/mlのナイスタチンおよび10%のウシ胎仔血清(FCS)を加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で成長させた。細胞を、5×106細胞/プレートの密度で10cm3 培養プレート上に、10mlの容量で播種し、成長培地を交換することなく96時間、培養物をインキュベートすることにより熟成させた。その結果、著しい割合の細胞がアポトーシスとなった。細胞を、細胞スクレーパーを用いて回収し、18Gニードルを有するシリンジに通すことにより単一の細胞に分離し、106細胞/mlの密度でPBSバッファー(pH=7.4)中に再懸濁した。これは、単一の細胞の蛍光(flouresence)の可視化を可能にするダンシルアミド基を含むNST 203の前に見られた。アポトーシス細胞に対するNST203の選択的な結合を図3Aに示す。図は、アポトーシス細胞集団内へのNST 203の取込みを示す(緑、照り輝く(glowing)色の細胞の代表を矢印で示す)。一方、非アポトーシス細胞では蛍光観察されない(青、照り輝いていない細胞、矢じりで示す)。
【0146】
対照的に、同じフルオロフォアを有するが、NST−ML−作用モチーフを欠く対照化合物のn−ブチル−ダンシルアミド(BDA)は、この選択性を示さず、したがって、アポトーシス細胞に対する選択的な結合におけるNST−ML−作用モチーフの活性が示された(図3B)。したがって、NST203は、マーカーとしての機能を果たし得、アポトーシス細胞に対する選択的な結合を行なう。
【0147】
(実施例5)
マウスにおいてインビボで化学療法により誘導された死亡過程を実行中の黒色腫に対するNST 203の選択的結合
実験手順
マウス(c57/black;8週齢雄マウス)に、マウス黒色腫由来B16−F10細胞(ATCC CRL−6475;105細胞/マウスを100μlの容量で)を、脇腹に左右対称に皮下注射した。注射の前、この細胞株は、4mMのL−グルタミン;100単位/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5単位/mlのナイスタチンおよび10%のウシ胎仔血清(FCS)を加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、培養状態で維持した。10日後、腫瘍直径が5〜7mmの大きさに達したとき、マウスを、化学療法処置(Taxol 20mg/Kgをシクロホスファミド(Cyclophosphomide)300mg/Kgとともに、200μlの容量で腹腔内注射)に供した。24時間後、NST−203を、2.8mg/マウス(10%発色団含有トリス系バッファー中)の用量で静脈内注射した。2時間後、マウスを致死させ、腫瘍および他の器官を回収し、直ちに液体窒素中で凍結させた。腫瘍または他の器官によるNST−203の取込みを、各組織由来の凍結切片の蛍光顕微鏡検査によって評価した。
実験結果
図4Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡検査を示す。アポトーシスを実行中の数多くの腫瘍細胞に対するNST203の広範な結合を観察することができる。また、この化合物の細胞内蓄積(写真の右側)および高レベルの選択性も示されており、アポトーシス細胞内への著しい取込みを反映しているが、周囲の腫瘍生細胞は、非染色のままである(写真の左上側)。
【0148】
化学療法は、多くの場合、標的腫瘍組織だけでなく、非標的組織(例えば、胃腸管の上皮)においても細胞死を誘導する作用をする。図4Bは、アポトーシスを実行中のこれらの細胞を選択的に検出するNST203の能力を示す(矢印参照)。腫瘍における所見と同様、胃腸管の生細胞は、NST203の取込みを示さず、したがって暗いままであった。
【0149】
したがって、この結果は、本発明の化合物であるNST203が、死亡過程が化学療法により誘導されているアポトーシス細胞をインビボで特異的に標的化する能力を示す。アポトーシス細胞は、関与する組織とは無関係に、普遍的な様式で検出される。対照的に、この組織の生細胞は、かかる結合を示さない。
【0150】
(実施例6)
結腸癌のマウスモデルにおける化学療法に対する応答の3H−NST200を用いたオートラジオグラフィー法によるイメージング
実験手順
結腸癌モデルを、Balb/c 雄マウスの腹部において確立した。第12〜14日に、腫瘍の大きさが直径6〜8mmになったとき、結腸癌腫瘍を、2回用量のドキソルビシン(20mg/kg、72時間空ける)の点滴で処置した後、腫瘍内へのNST200の取込みを測定した。化学療法の48時間後、対照非処置動物および化学療法処置動物の両方に、放射標識したNST200(80μCi/動物)を静脈内注射した。4時間後、動物を致死させた。10μm凍結切片を調製し、風乾し、トリチウム感受性フィルムに露光した。フィルムを7週間の期間露光し、現像し、デンシトメトリー測定によって解析した。3H−DDC密度(光学密度/mm2)の測定を、虚血中心対反対側の半球とでのシグナルにおいて行い、TINAソフトウェアによって評価した。シグナルを、Microscaleオートラジオグラフィー標準にしたがって変換し、nCi/mg単位で示した。
実験結果
非処置腫瘍はNST200の取込みを示さず、したがって、オートラジオグラフィーによって画像は検出され得なかった(図5A)。しかしながら、化学療法により細胞死を誘導すると、NST 200取込みの劇的な増加が起こり、これは、照射誘導性細胞死の大規模プロセスを示す(図5BおよびC)。NST 200取込みは、腫瘍の表面上の多くの病巣において、暗くて強い斑の形態で検出され得る。NST−200標識化は、腫瘍内の特定のアポトーシスの病巣領域に局在し、腫瘍全体に拡散していなかった。処置腫瘍の他の領域は標識されず、これは、腫瘍組織の生存を示す。この観察結果により、NST 200が、死滅中の細胞に選択的に大量に蓄積され、生細胞には蓄積されない分子を標的化するのに好都合であることが強調された(図5B)。同じ腫瘍内であっても治療に対する応答が不均一な性質が図5Cに示されている。NST200の取込みは、特に、細胞死の増大を示した腫瘍の大きな一領域に蓄積しているが、化学療法に対する応答を示さなかった他の腫瘍領域には蓄積されていない。
【0151】
(実施例7)
結腸癌モデル内への3H−NST 200の取り込み:化学療法の効果
実験手順
結腸癌モデル
マウス結腸癌細胞(CT−26)(ATCC CRL−2638)を、RPMI(Gibco, UK)、2mMのL−グルタミン;100単位/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5単位/mlナイスタチン;および10%加熱不活化FCS中で維持した。試験は、8〜10週齢の成体雄Balb/Cマウス(体重20〜25g)において行なった。
腫瘍の播種:
細胞をトリプシン処理し、HBS(140mM NaCl;0. 5M Hepes、PH 7.4)で2回洗浄し、次いで(than)遠心分離し(5分間、1000rpm、4℃)、(2%)メチルセルロースと生理食塩水(1:3)の混合物中2×106細胞/mlに濃縮した。0.2mlの容量の上記の溶液(4×105細胞/用量を含有)をマウス腹部の両側に皮下注射し、この間、マウスには麻酔した。麻酔用ストック溶液は、0.85mlケタミン(lOOmg/ml)+0.15mlキシラジン(2%)を1:10に希釈して調製した。重量10gあたりO.lmlの希釈溶液を、(i.p.)注射した。
腫瘍追跡:
マウスを、毎日、触診可能な腫瘍形成について検査した。腫瘍注射の7〜10日間後、小さな腫瘍が現れた。
結腸癌腫瘍内への3H−NST200 取込みの評価
腫瘍内への3H−NST200の取込みを、2回用量のドキソルビシン(20mg/kg、72時間空ける)の点滴での結腸癌腫瘍の処置後に測定した。2回目の投与の48時間後、マウスに3H−NST200(10μCi/動物)を静脈内注射した。4時間後、腫瘍を回収し、重量計測し、組織を処理した。腫瘍の溶解を、SOLVABLE(商標)試薬(GNE9100, Packard Bioscience)を、150mgの腫瘍組織に対して試薬1mlの比率で用い、60℃にて、20ml容シンチレーションガラスバイアル内で行なった。2〜4時間後、各組織抽出物の1mlをガラスシンチレーションバイアルに移した。着色消光の問題を低減するため、試料を0.4mlの30%H202で0.066M EDTAの存在下で処理した。15分間の室温でのインキュベーション時間後、抽出物を1時間60℃でインキュベートした後、さらに15分間室温でインキュベーションした。10mlのシンチレーション液(Ultima gold、6013329、Packard Bioscience)を各バイアルに添加した。バイアルを1時間室温でインキュベートし、次いで、βカウンター(TRI−CARB 2100TR、液体シンチレーションアナライザー、Packard Bioscience)において解析した。すべての試料は、3連で測定した。注射した用量のパーセントの値(%ID/g(組織))を各試料について計算した。
実験結果:
ドキソルビシン処置した結腸癌腫瘍対非処置対照腫瘍における3H−NST200蓄積の定量分析により、処置の48時間後に3H−NST200の大量蓄積が示された。一方、対照群では、すべての腫瘍に、同様だが少量の3H−NST200が蓄積し、化学療法処置腫瘍では、蓄積値は、腫瘍によってばらつきがあり、対照群と比べ、取込みの40〜50倍の増加を示した。処置群における取込みの平均値は1.28%ID/gであり、これは、more of 対照群の平均値より12.1倍大きかった(図6参照)。この広域の3H−NST200蓄積値は、種々の腫瘍の抗癌処置に対する個々の応答を反映する。上記の実験は、3H−NST200が、癌を検出する機能および癌細胞に対して細胞傷害剤の効果を検出する機能を果たし得ることを明白に示す。
【0152】
(実施例8)
結腸癌腫瘍を有するマウスにおける3H−NST200の生体分布
実験手順
結腸癌モデルを、Balb/c雄マウスの腹部において、前述の実施例に記載のようにして確立し、3H−NST200(10μCi)を、ドキソルビシンで処理した動物に注射した。4時間後、動物を致死させ、種々の器官/組織を回収し、処理し、これらの内部での3H−NST200の蓄積を測定した。各器官内における取込みを、注射した用量(ID)に対する%で示し、腫瘍と他の器官との取込みの比率を計算し、これを表に添付の図7として示す。
実験結果
ドキソルビシンによって誘導された腫瘍組織に対する障害は、実際、他の非標的器官(心臓および小腸を含む)に対する障害よりも大きかった。腫瘍対すべての器官における取込みの比率は、表において>1であり、これは、腫瘍におけるアポトーシスの増加および標的対非標的組織における3H−NST200の選択的蓄積を示す。
【0153】
(実施例9)
3H−NST200は、BiCNU処置腫瘍内で起こっている細胞死を腫瘍の大きさの縮小前に検出し得る
実験手順
結腸癌モデルを、Balb/c雄マウスの腹部において、実施例10に記載のようにして確立した。第12〜14日に、腫瘍の大きさが直径6〜8mmになったとき、マウスにドキソルビシンを静脈内注射した。合計2回のドキソルビシンを、3日間の間隔を空けて与えた(各用量は20mg/Kgとした)。2回目のドキソルビシン注射の2日後、マウスに、10μCiの3H−NST200を0.2mlの容量の生理食塩水にて点滴した。3H−NST200注射の4時間、マウスを、ペンタールの過剰投与により致死させた。腫瘍をエッペンドルフチューブ内に回収し、重量計測し、−20℃にて凍結させた。
【0154】
腫瘍の溶解を、SOLVABLE(商標)試薬(GNE9100, Packard Bioscience)を、150mgの腫瘍組織に対して試薬1mlの比率で用い、60℃にて、20ml容シンチレーションガラスバイアル内で行なった。2〜4時間後、各組織抽出物の1mlをガラスシンチレーションバイアルに移した。着色消光の問題を低減するため、試料を0.4mlの30%H2O2で0.066M EDTAの存在下で処理した。15分間の室温でのインキュベーション時間後、抽出物を1時間60℃でインキュベートした後、さらに15分間室温でインキュベーションした。10mlのシンチレーション液(Ultima gold、6013329、Packard Bioscience)を各バイアルに添加した。バイアルを1時間室温でインキュベートし、次いで、βカウンター(TRI−CARB 2100TR、液体シンチレーションアナライザー、Packard Bioscience)において解析した。すべての試料は、3連で測定した。注射した用量のパーセントの値(%ID/g(組織))を各試料について計算した。NST200取込みと腫瘍容積間の比較を示す。各投与後のNST200の取込み値は腫瘍容積と相関しており、これを、式(腫瘍を球形と仮定する)V=πD3/6(式中、Dは、平均腫瘍直径である)によって計算した。
実験結果
ドキソルビシン(5日間持続)での処置の間、腫瘍塊は縮小しなかった(図8A参照)。対照的に、腫瘍は、成長し続け、その容積は、対照非処置腫瘍(処置腫瘍よりも5日間早く回収した)と比べ50%増加を示す。この増加は、非有意であることがわかった。腫瘍容積のかかる非有意な変化は、2回用量のドキソルビシン処置後に起こり、3H−NST200取込みの18.5倍という劇的な増加が検出され、これは、3H−NST200が、腫瘍塊の収縮が検出されない場合であっても、腫瘍内の細胞死を検知することできる感度のよいツールであることを示す(図8B参照)。
【0155】
(実施例10)
マウスにおける中大脳動脈閉塞後のアポトーシス障害のオートラジオグラフィー法による検出のためのトリチウム標識NST200の使用
実験手順
p−MCAを、側頭骨(subtemporal)からのアプローチにより、顕著な虚血性障害の転帰を有するBalb/Cマウスにおいて誘導した。p−MCAの24時間後、動物の神経学的スコアを評価し(0−臨床的症状なし〜3−片麻痺、回転行動および緊張病)、放射標識されたNST200(80μCi/動物)を、連続2時間静脈内注射した後、動物を致死させた。10μm凍結切片を調製し、風乾し、トリチウム感受性フィルム(Hyperfilm−3h、RPN535B Amersham−Pharmacia, Eu)に露光した。フィルムを7週間の期間露光し、現像し(GBX Developer & Fixer, Kodak, USA)、デンシトメトリー測定によって解析した。3H−DDC密度(光学密度/mm2)の測定を、虚血中心対反対側の半球とでのシグナルにおいて行い、TINAソフトウェアによって評価した。シグナルを、Microscaleオートラジオグラフィー標準(RPN510 Amersham−Pharmacia, Eu)にしたがって変換し、nCi/mg単位で示した。
実験結果
3H−NST 200の蓄積(a)H&E染色(b)を示す図9からわかるように、オートラジオグラフィー画像解析により、アポトーシス(apoptotoc)細胞死/壊死性細胞死の領域内での3H−NST200による傷害の標的化の特異性が示された。この結果を、H&E染色によってさらに確認した。したがって、3H−NST200は、オートラジオグラフィー画像解析において、脳アポトーシス障害のマーカーとして使用することができる。
【0156】
(実施例11)
3H−放射標識されたNST 200によるラット虚血再潅流腎(I/R)のオートラジオグラフィー
実験手順
ケタミン(80mg/kg)とキシラジン(lOmg/kg)の組合せの腹腔内投与によって誘導した全身麻酔下のラットにおいて手術を行なった。腎虚血は、片側性左腎動脈を、小さな非外傷性血管用鉗子を用いて45分間締めることにより誘導した。同じ動物の反対側の未処置腎臓を、偽手術された(sham−operated)対照由来の腎臓とした。再潅流は、鉗子を外すことにより開始した。腎再潅流の期間は24時間とした。再潅流の過程の間、動物に100μCiの3H−NST205を静脈内注射し、1時間後、両方の腎臓を切除し、液体窒素中で凍結し、−70℃で使用まで保存した。10μm凍結切片を調製し、風乾し、トリチウム感受性フィルム(Hyperfilm−3h、RPN535B Amersham−Pharmacia, Eu)に露光した。フィルムを7週間の期間露光し、現像し(GBX Developer & Fixer, Kodak, USA)、デンシトメトリー測定によって解析した。3H−DDC密度(光学密度/mm2)の測定を、虚血性腎臓対反対側の腎臓とでのシグナルにおいて行い、TINAソフトウェアによって評価した。シグナルを、Microscaleオートラジオグラフィー標準(RPN510 Amersham−Pharmacia, Eu)にしたがって変換し、nCi/mg単位で示した。
実験結果
図10に示すように、ラット腎臓の虚血−再潅流傷害の間、アポトーシスが、皮髄領域と外髄(OM)の遠位細管において観察され、一方、重篤な壊死が、(OM)の近位直細管において見られた。皮質では障害はあまり観察されなかった。反対側の偽腎臓では、障害細管は観察されなかった。オートラジオグラフィー画像解析により、アポトーシス細胞死/壊死性細胞死の領域内での3H−NST205による傷害の標的化の特異性が示され、形態素解析によって確認した。対照的に、反対側の腎臓内への3H−NST205取込みは示されず、傷害腎臓内のみへの3H−NST205取込みの特異性が強調される。
【0157】
(実施例12)
放射線造影剤誘導性急性遠位腎尿細管壊死(ATN)のラットモデルにおける3H NST205によるオートラジオグラフィー
実験手順
選択的髄質低酸素細管障害を有する腎障害を、インドメタシン(Sigma Chemical Co.)10mg/kg(i.v.)、Nωニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME、Sigma Chemical Co.)10mg/kg(i.v.)、および放射線造影剤であるイオタラム酸ナトリウム80%(Angio−Conray, Mallinckrodt Inc)6mL/kg(i.a.)の併用投与によって誘導した。別のラットにビヒクルを注射し、対照とした。損傷を与えた24時間後、対照動物と実験動物の両方に、100μCiの3H−NST205を静脈内注射し、1時間後、両方の腎臓を切除し、液体窒素中で凍結した。
実験結果
図11からわかるように、腎臓の形態の解析により、広範囲の程度の髄質(すなわち、外髄の外側および内側細片)障害が明らかになった。3H−NST205のホーミングは、主に、外髄内に限定された。形態の損傷のない特定の領域では、3H−NST205取込みは観察されなかった。
【0158】
(実施例13)
3H−200による実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のイメージング;オートラジオグラフィー
実験手順
EAEを、C3H.SW/C57/bl雌マウス(6〜8週齢)の免疫処置により誘導した。動物は、ラットミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)のアミノ酸35〜55を包含するペプチドで免疫処置した。このペプチドは、固相手法を用いてペプチド合成装置にて合成した。マウスの脇腹の一部位に、75μlのMOGペプチド含有完全フロイントアジュバント(CFA)および200μgのヒト結核菌(mycobacterium tuberculosis)を含むエマルジョン200μlを皮下注射した。同一のブースター(buster)を、1週間後に、他方の脇腹の一部位に注射した。脳炎誘発性抗原刺激の後、マウスを毎日観察し、EAEの臨床的兆候をスコアリングした(0=臨床的症状なし〜5=四肢の完全麻痺)。疾患の選択した病期において(症状発現前または末期)、1時間のインキュベーションのために、動物に、放射標識したNST200(100μCi/動物)を静脈内注射し、その後、動物を致死させた。10μm凍結切片を調製し、風乾し、トリチウム感受性フィルムに露光した。フィルムを7〜9週間の期間露光し、現像し、デンシトメトリー測定によって解析した。3H−DDC密度(光学密度/mm2)の測定を、虚血中心対反対側の半球とでのシグナルにおいて行い、TINAソフトウェアによって評価した。
実験結果
多発性硬化症疾患のEAE動物モデルは、中枢神経系の白質を標的とする慢性障害性(disabling)自己免疫神経障害を擬態した。実験動物における白質の重篤な障害は、図12に示すオートラジオグラフィーにおいて観察された。脳レベルでは、冠状部切片は、対照の非免疫処置マウスでは明るい染色であるのと比べ、脳の底部の錐体路の暗い染色、および脳全体で過剰の放射能−リガンド蓄積を示した。また、放射性同位元素標識した3H−200の印象的な蓄積が、脊髄レベルでも観察された。脊髄の縦断面は、対照未処置動物の脊髄と比べ、免疫処置マウスの白質の側方路(lateral tract)の高レベルの標識化を示した。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、正常な形質膜組織化の摂動および改変を受けている細胞、すなわち、細胞死を実行中の細胞、アポトーシス細胞または活性化された血小板に選択的に結合する化合物に関する。本発明は、さらに、この化合物を、医療行為において、診断用および治療用目的のために利用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
無傷の真核細胞の形質膜(外膜)は、高度に組織化された構造を特徴とする。この高レベルの膜組織化は、とりわけ、この膜を構成する特定の脂質の分子構造;膜を構成する種々の脂質種の比率;この膜の外側と内側リーフレット間でのリン脂質の分布によって;および膜タンパク質構成要素によって決定される。
【0003】
形質膜組織化を高レベルに維持することは、正常な細胞生理機能の基本であるが、実質的な細胞形質膜の正常な組織化の摂動および改変(PNOM)は、数多くの生理学的および病理学的条件において起こり、複数の疾患の特徴となっている。かかる改変および摂動は、形態学的レベル(アポトーシスを実行中の細胞で観察される膜泡)および分子レベルの両方において明白であり得る。PNOMには、とりわけ、膜リン脂質の無秩序化(scrambling)および再分布が含まれ、これは、アミノリン脂質、主にホスファチジルセリン(PS)とホスファチジルエタノールアミン(PE)(これらは、通常、膜二重層の内側リーフレットにほぼ完全に限定される)の細胞表面への移動、およびスフィンゴミエリン(SM)およびホスファチジルコリン(PC)のこの膜の外側リーフレットから内側リーフレットへの相互移動を伴う。この再分布を、本明細書では、細胞膜脂質の非対称性(CMLA)の喪失という。CMLA喪失に加え、PNOMはまた、多くの場合、膜リン脂質パッキングレベルの低下および膜流動性の増大と関連している。
【0004】
このような改変は、細胞表面を、いくつかの凝固因子複合体、例えば、テナーゼ(tenase)およびプロトロンビナーゼタンパク質複合体などの会合のための触媒的基盤とするのに重要な役割を果たす。したがって、血小板活性化は、PNOM中の血小板膜と関連しており、これらの改変は、正常な血液凝固において、ならびに数多くの障害での異常な過剰血液凝固の起始および/または伝播において重要な要因を構成する。このような障害としては、とりわけ、動脈または静脈の血栓症または血栓塞栓症[例えば、脳卒中、心筋梗塞、深部静脈血栓症(DVT)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病など]、不安定なアテローム性プラーク、鎌状赤血球症、βサラセミア、抗リン脂質抗体症候群[とりわけ、全身性エリテマトーデス(SLE)において]、および膜微粒子の流出と関連する障害、例えば、心肺バイパスと関連する神経機能障害が挙げられる。
【0005】
アポトーシスは、細胞膜の改変/摂動が起こっている別の主な状況である。アポトーシスは、細胞の自己崩壊すなわち「自殺」という固有のプログラムであり、どの真核細胞にも生来備わっている。刺激の誘発に応答し、細胞は、細胞収縮、細胞膜泡、クロマチンの凝縮および断片化、細胞の膜結合粒子のクラスター(アポトーシス体)への変換への終結という事象の高度に特徴的なカスケードを起こし、その後マクロファージに囲まれる。PNOMは、アポトーシスの普遍的な現象であり、アポトーシスカスケードの初期(おそらく、細胞が死亡過程を遂行する時点)で起こり、また、マクロファージによるアポトーシス細胞の認識および除去における重要な要因であることが示されている。
【0006】
最近、PNOMとアポトーシス細胞の強力な凝血促進活性との間に強い相関性が導かれた。アポトーシス内皮細胞におけるPNOM(例えば、アテローム性プラークにおいて起こるものなど)は、おそらく、血栓症の血管障害の病原において重要な役割を果たしている。
【0007】
アポトーシスまたは血栓症は、各々、大部分の内科的障害において重要な役割を有するため、これらの生物学的プロセスの検出および関連細胞の標的化のためのツールがあることが望ましい。また、PNOM膜への選択的な結合のための化合物(これは、潜在的に、後に、かかるPNOM膜を有するこのような細胞(PNOM細胞)内への侵入を行なう)は、したがって、障害または死亡過程を実行中の細胞(特に、アポトーシスにより)、または活性化を受けている血小板を検出し、イメージング用の薬剤または薬物をこれらに標的化するための重要なツールとしての機能を果たし得る。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明の一つの態様において、形質膜の正常な組織化の摂動を受けている細胞(PNOM細胞)に選択的に結合し得るが、形質膜の正常な組織化を維持している細胞(これを、以下、「正常細胞」と定義する)には、より低程度で結合する化合物を提供する。PNOM細胞は、本発明の一つの実施形態において、死亡過程を実行中の細胞である。本発明の一つの実施形態ではこの細胞はアポトーシス細胞であり、別の実施形態では、この細胞は、活性化された血小板であり得る。本発明は、さらに、PNOM細胞に選択的に結合するこれらの化合物を使用することによりPNOM細胞を検出する方法に関する。本発明の別の実施形態では、式I〜XIVに示す構造で表される化合物を提供する。
【0009】
用語「摂動膜結合性化合物(perturbed membrane−bindingcompound)」PMBC)は、PNOM細胞を選択的に標的化するが、正常細胞には、より低程度で結合する化合物をいう。本発明によれば、PMBCのPNOM細胞への結合は、正常細胞への結合よりも少なくとも30%多いのがよい。
【0010】
用語「選択的に標的化すること」は、本発明では、化合物のPNOM細胞への選択的な結合、すなわち、正常細胞への結合よりも少なくとも30%多い程度でのPNOM細胞への結合をいう。
【0011】
用語「診断用摂動膜結合性化合物」(診断用PMBC)は、PNOM細胞に選択的に標的化することができる化合物をいい、この化合物はマーカーを含むか、またはこれに連結されており、このマーカーは、当業者に知られた手段によって検出可能である。
【0012】
用語「治療用摂動膜結合性化合物」(治療用PMBC)は、上記規定のPMBCであって、薬物を含む、疾患の治療に有用なものをいう。
用語「固相支持体」は、本発明の内容においては、固相マトリックス、不溶性マトリックスまたは不溶性支持体をいう。本発明による固相支持体は、種々の構造、例えば、マイクロ粒状物、マイクロフィルターまたはマイクロキャピラリー(capillara)の積層体に形成されたものであり得る。
【0013】
PMBCは、本発明の一つの実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化するための薬剤の調製に使用される。
一つの態様において、本発明は、PNOM細胞を選択的に標的とする化合物(すなわち、PMBC)であって、式(I):
【0014】
【化1】
に示す構造で表される化合物、または式(I)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を提供する(式中、RおよびR’基の各々は、独立して、各存在において、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せから選択される;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;xおよびzは、各々、独立して存在し、0、1または2の整数であり、ここで、xおよびzは同じまたは異なり得る;yは、0、1または2の整数であり、ここでy=2のとき、置換基R’は、各存在において同じであっても異なっていてもよい;およびDは、診断に用いるマーカー、水素、ヒドロキシル、Fまたは薬物であり、ここで、診断に用いるマーカーは、イメージング用マーカー、例えば、F(F原子は18Fまたは19Fのいずれかであり得る)または放射標識された金属キレートから選択され、イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、PNOM細胞に標的化される薬物である。
【0015】
薬物は、特定の疾患の予防、改善または治療に医薬として有用な薬剤であり得、例えば、限定されないが、アポトーシスの阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤、抗酸化剤、 Bcl−2系の調節剤);細胞死の活性剤(例えば、抗癌薬);または血液凝固の調節剤(これは、抗凝血薬、抗血栓剤または血栓溶解剤であり得る)であり得る。かかる場合において、この薬物は、好ましくは、抗血小板剤、ヘパリン、低分子量ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaの拮抗薬、組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)、または凝固因子の阻害剤(例えば、トロンビンの阻害剤または第Xa因子のなど阻害剤);または抗炎症薬または免疫調節剤薬から選択される。本発明の一つの実施形態において、抗癌薬を腫瘍に、薬物をアポトーシス(腫瘍内で自発的にまたは治療に応答してのいずれかで起こる)の病巣に標的化することにより、抗癌治療の改善のための方法を提供する。本発明の別の実施形態において、凝固が抑制、低減または停止されるように、抗凝血薬を血栓に標的化することにより血栓症を治療する方法を提供する。
【0016】
本発明の別の実施形態において、Dは、固相支持体であり得る。
本発明の別の実施形態において、PNOMを選択的に標的とし、式(II):
【0017】
【化2】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(II)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Rは水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;Dは、水素またはである。診断に用いるマーカーは、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えば、F(F原子は18Fまたは19Fのいずれかであり得る)または放射標識された金属キレートであり得る;イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、上記規定のような、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0018】
本発明の別の実施形態において、式(III):
【0019】
【化3】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(III)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、R3は、ヒドロキシルまたはFである;R4は、C4、C5、C6、C7、C8、C9またはC10直鎖または分枝鎖アルキルであり、kは、0、1、2、3、4および5から選択される整数である)。
【0020】
本発明の別の実施形態において、式(IV):
【0021】
【化4】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(IV)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含む)。この化合物は、指定したNST200である。
【0022】
本発明の別の実施形態において、式(V):
【0023】
【化5】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(V)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Jは、−Fおよび−OHであり、rは、4、5、6、7、8、9、10の整数を表す)。rが4であり、Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST201である。rが5であり、Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST−ML−10である。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態において、式(VI):
【0025】
【化6】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VI)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Jは、水素、−Fおよび−OHから選択される)。Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST204である。
【0026】
本発明の別の実施形態において、式VII:
【0027】
【化7】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物および溶媒和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Qは、テクネチウム、オキソテクネチウム、レニウムおよびオキソレニウムから選択され、R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖アルキルから選択され、pは、1、2、3、4および5から選択される整数を表す)。
【0028】
本発明の別の実施形態において、式VIII:
【0029】
【化8】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VIII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物および溶媒和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Qは、テクネチウム、オキソテクネチウム、レニウムおよびオキソレニウムから選択される)。
【0030】
本発明の別の実施形態において、式(IX):
【0031】
【化9】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(IX)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、R5は、水素、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、ならびにC1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキルから選択される;qは、1、2、3、4および5から選択される整数を表す;およびYは蛍光用マーカーである)。本発明の一つの実施形態では、Yは、ダンシルアミド基およびフルオレセインから選択される。
【0032】
本発明の別の実施形態において、式(X):
【0033】
【化10】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(X)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含む)。この化合物は、指定したNST203である。
【0034】
本発明の別の実施形態において、式(XI):
【0035】
【化11】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XI)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Rは水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す)。
【0036】
本発明の別の実施形態において、式(XII):
【0037】
【化12】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Fは、18Fまたは19Fであり得る)。
【0038】
本発明の別の実施形態において、式(XIII):
【0039】
【化13】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XIII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、Rは、水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;mは、0、1、2、3または4の整数を表す;Dは診断に用いるマーカーであり、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えば、F(Fは18Fまたは19Fであり得る)または放射標識された金属キレートであり得、イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、上記規定のような、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0040】
本発明の別の実施形態において、式(XIV):
【0041】
【化14】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XIV)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Fは、18Fまたは19Fであり得る)。
【0042】
本発明の別の態様において、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る患者において、アポトーシスまたは血液凝固の病巣に薬物を標的化するための医薬組成物であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI XII、XIIIまたはXIVに示す構造による化合物を含み、この化合物が薬物を含むか、またはこれに連結されている医薬組成物を提供する。
【0043】
本発明の一つの態様において、医薬として有用な化合物を細胞集団内にあるPNOM細胞に選択的に標的化する方法であって、細胞集団を、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す構造で表される化合物と接触させ、それにより、医薬として有用な化合物を細胞集団内のPNOM細胞に選択的に標的化させることを含む方法を提供する。
【0044】
本発明の別の態様において、細胞集団内のPNOM細胞の検出方法であって、(i)細胞集団を、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す構造で表される化合物、または式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、ならびにこの塩の溶媒和物および水和物と接触させること;および(ii)細胞に結合した化合物の量を測定することを含み、ここで、細胞に結合した化合物の有意な量は、この細胞がPNOM細胞であることを示す方法を提供する。
【0045】
本発明の別の態様において、患者または動物におけるPNOM細胞の検出方法であって、(i)患者または動物に、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物、または式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を投与すること;および(ii)細胞に結合した化合物の量を測定するために、検査対象の患者または動物のイメージングを行なうことを含み、ここで、細胞に結合した化合物の有意な量は、この細胞がPNOM細胞であることを示す方法を提供する。
【0046】
本発明の別の態様において、薬物を、患者または動物の血餅内のアポトーシスの病巣または活性化された血小板(or)の病巣に標的化するための医薬組成物であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造の化合物(この化合物は、薬物を含むか、またはこれに連結されている)を含む医薬組成物を提供する。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、検査対象の被験体の腫瘍内の死亡過程を実行中の細胞の検出方法であって、(i)検査対象の被験体に、化合物またはこの化合物を含むコンジュゲートを投与すること、ここで、この化合物は、式(I):
【0048】
【化15】
に示す構造で表される化合物、または式(I)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物であり、式中、RおよびR’基の一方は水素であり、RおよびR’基の他方は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;xおよびzは、各々、独立して存在し、0、1または2の整数であり、ここで、xおよびzは同じまたは異なり得る;yは、0、1または2の整数であり、ここでy=2のとき、置換基R’は、各存在において同じであっても異なっていてもよい;およびDは、診断に用いるマーカーである。診断に用いるマーカーは、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えば、F(F原子は18Fまたは19Fのいずれかであり得る)または放射標識された金属キレートであり得、イメージング用マーカーは、蛍光標識、放射能標識、X線用マーカー、MRI用マーカー、PETスキャン用マーカーおよび酵素反応を行なうことができ、検出可能な色をもたらす標識を含む群から選択される;および(ii)患者の検査対象の腫瘍に結合した化合物の量を測定することを含み、ここで、腫瘍内の細胞に結合した化合物の有意な量は、これらの腫瘍細胞が死亡過程を実行中であることを示す方法を提供する。
【0049】
別の実施形態において、本発明は、検査対象の被験体の腫瘍内の死亡過程を実行中の細胞の検出方法であって、(i)検査対象の被験体に、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造の化合物を投与すること、ここで、この化合物は、イメージング用マーカーまたは標識された金属キレートを含むか、またはこれに連結されている;および(ii)腫瘍内の細胞に結合した化合物の量を測定することを含み、ここで、腫瘍内の細胞に結合した化合物の有意な量の検出は、これらの腫瘍細胞が死亡過程を実行中であることを示す方法を提供する。
【0050】
別の実施形態において、抗癌薬を、アポトーシス細胞の病巣を有する腫瘍に標的化する方法であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す化合物であって、細胞傷害剤を含むか、または細胞傷害剤に連結されているかのいずれかであるこの化合物を投与し、それにより、薬物の腫瘍内の細胞死の病巣への標的化を達成する工程を含む方法を提供する。
【0051】
別の実施形態において、抗凝血薬または線維素溶解薬の血餅への標的化方法であって、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVのいずれかに示す化合物であって、抗凝血薬または線維素溶解薬のいずれかを含むこの化合物を投与し、それにより、薬物の血餅への標的化を達成する工程を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の化合物:NST−ML−作用モチーフの作用機序のスキームを示す。
【図2A】CD95により誘導されたアポトーシスを実行中の培養ジャーカット細胞に対するトリチウム標識NST200の選択的な結合(A)およびCD95により誘導されたアポトーシスを実行中の培養ジャーカット細胞に対するトリチウム標識NST205の選択的な結合(B)を示す。
【図2B】CD95により誘導されたアポトーシスを実行中の培養ジャーカット細胞に対するトリチウム標識NST200の選択的な結合(A)およびCD95により誘導されたアポトーシスを実行中の培養ジャーカット細胞に対するトリチウム標識NST205の選択的な結合(B)を示す。
【図3A】蛍光顕微鏡検査を示し、アポトーシスを実行中の培養HeL細胞に対するNST203の選択的な結合(図3A)を示す。同じフルオロフォアを有するがNST−ML−作用モチーフを欠く、対照化合物のn−ブチル−ダンシルアミド(BDA)は、この選択性を示さなかった(図3B)。
【図3B】蛍光顕微鏡検査を示し、アポトーシスを実行中の培養HeL細胞に対するNST203の選択的な結合(図3A)を示す。同じフルオロフォアを有するがNST−ML−作用モチーフを欠く、対照化合物のn−ブチル−ダンシルアミド(BDA)は、この選択性を示さなかった(図3B)。
【図4A】マウスにおいてインビボで化学療法により誘導された細胞死を実行中の細胞に対するNST203の選択的な結合の蛍光顕微鏡検査を示す:(A)。黒色腫細胞のアポトーシス;(B)。胃腸管の上皮細胞のアポトーシス
【図4B】マウスにおいてインビボで化学療法により誘導された細胞死を実行中の細胞に対するNST203の選択的な結合の蛍光顕微鏡検査を示す:(A)。黒色腫細胞のアポトーシス;(B)。胃腸管の上皮細胞のアポトーシス
【図5A】トリチウム標識NST200によって検出された、癌細胞死に対する化学療法の効果を示す。
【図5B】トリチウム標識NST200によって検出された、癌細胞死に対する化学療法の効果を示す。
【図5C】トリチウム標識NST200によって検出された、癌細胞死に対する化学療法の効果を示す。
【図6】化学療法で処置した結腸癌を有するマウスにおけるNST 200によるオートラジオグラフィーを示す。
【図7】化学療法の前後での癌腫瘍と他の身体器官における取込みの比率を示す表を示す。
【図8A】トリチウム標識NST200の結腸癌内への取込み、およびこれに対する化学療法の効果を示す(図8A)。図8Bは、結腸重量の変化を示す。
【図8B】トリチウム標識NST200の結腸癌内への取込み、およびこれに対する化学療法の効果を示す(図8A)。図8Bは、結腸重量の変化を示す。
【図9A】トリチウム標識NST200の脳内のアポトーシス死の領域への標的化を示すオートラジオグラフィー画像解析(A)およびH&E染色(B)を示す。
【図9B】トリチウム標識NST200の脳内のアポトーシス死の領域への標的化を示すオートラジオグラフィー画像解析(A)およびH&E染色(B)を示す。
【図10A】ラット虚血再潅流腎のトリチウム標識NST200によるオートラジオグラフィーを示す;;(A)障害腎臓;(B)無傷の腎臓。
【図10B】ラット虚血再潅流腎のトリチウム標識NST200によるオートラジオグラフィーを示す;;(A)障害腎臓;(B)無傷の腎臓。
【図11】放射線造影剤誘導性急性遠位腎尿細管壊死のラットモデルにおけるトリチウム標識NST205によるオートラジオグラフィーを示す;(A)障害腎臓;(B)無傷の腎臓。
【図12】図12は、実験的自己免疫性脳脊髄炎の脳および脊髄におけるオートラジオグラフィーによる3H−200イメージングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な実施形態
本発明は、形質膜の正常な組織化の摂動を受けている細胞(PNOM細胞)に対して選択的な結合を行うことができるが、形質膜の正常な組織化を維持している細胞には、より低程度で結合する化合物に関する。PNOM細胞は、死亡過程を実行中の細胞、アポトーシス細胞および活性化された血小板から選択される。本発明は、さらに、PNOM細胞に選択的に結合する化合物を用いることによりPNOM細胞を検出する方法に関する。
【0054】
本発明の化合物は、PNOM細胞の選択的標的化において活性であるという利点を有するとともに、比較的低い分子量および潜在的に有利な薬物動態プロフィールを特色とする。
【0055】
本発明の一つの実施形態では、PNOM細胞を選択的に標的とする化合物(すなわち、PMBC)であって、式(I):
【0056】
【化16】
に示す構造で表される化合物、または式(I)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を提供する(式中、RおよびR’基の各々は、独立して、各存在において、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せから選択される;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;xおよびzは、各々、独立して存在し、0、1または2の整数であり、ここで、xおよびzは同じまたは異なり得る;yは、0、1または2の整数であり、ここでy=2のとき、置換基R’は、各存在において同じであっても異なっていてもよい;およびDは、診断に用いるマーカーであり、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えばF(ここで、Fは、18Fまたは19Fであり得る)または標識された金属キレートである;イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。別の実施形態では、Dは、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0057】
薬物は、ある特定の疾患の予防、改善または治療のための医薬として有用な薬剤であり得、例えば、限定されないが、アポトーシスの阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤、抗酸化剤、Bcl−2系の調節剤);細胞死の活性剤(例えば、抗癌薬);または血液凝固の調節剤(抗凝血薬、抗血栓剤または血栓溶解剤であり得る)であり得る。かかる場合において、薬物は、好ましくは、抗血小板剤、ヘパリン、低分子量ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaの拮抗薬、組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)、または凝固因子の阻害剤(例えば、トロンビンの阻害剤または第Xa因子のなど阻害剤);または抗炎症薬または免疫調節剤薬から選択される。本発明の一つの実施形態において、腫瘍細胞の死滅を達成するため、薬物を、目的の領域(例えば、腫瘍内のアポトーシスの病巣)に標的化する方法を提供する。本発明の別の実施形態において、凝固が抑制、低減または停止されるように、血栓領域に抗凝血薬または線維素溶解薬を標的化する方法を提供する。
【0058】
本発明の別の実施形態において、Dは固相支持体であり得る。
本発明の別の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的とする化合物であって、式(II):
【0059】
【化17】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(II)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Rは水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;nおよびmは、各々、0、1、2、3または4の整数を表す;nおよびmは、同じであっても異なっていてもよい;Mは、非存在、水素、−O−、−S−および−N(U)(式中、Uは、水素またはC1、C2、C3またはC4アルキルを表す)から選択される;Dは、水素、またはイメージング用マーカー(例えば18Fなど)または標識された金属キレートから選択される診断に用いるマーカーである;イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、上記規定のような、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0060】
本発明の別の実施形態において、式(III):
【0061】
【化18】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(III)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、R3は、ヒドロキシルまたはFである;R4は、C4、C5、C6、C7、C8、C9またはC10直鎖または分枝鎖アルキルであり、kは、0、1、2、3、4および5から選択される整数である)。
【0062】
本発明の別の実施形態において、式(IV):
【0063】
【化19】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(IV)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含む)。この化合物は、指定したNST200である。
【0064】
本発明の別の実施形態において、式(V):
【0065】
【化20】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(V)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Jは、−Fおよび−OHであり、rは、4、5、6、7、8、9、10の整数を表す)。rが4であり、Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST201である。rが5であり、Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST−ML−10である。
【0066】
本発明のさらに別の実施形態において、式(VI):
【0067】
【化21】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VI)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Jは、水素、−Fおよび−OHから選択される)。Jが−Fである場合、この化合物は、指定したNST204である。
【0068】
本発明の別の実施形態において、式VII:
【0069】
【化22】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物および溶媒和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Qは、テクネチウム、オキソテクネチウム、レニウムおよびオキソレニウムから選択され、R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖アルキルから選択され、pは、1、2、3、4および5から選択される整数を表す)。
【0070】
本発明の別の実施形態において、式VIII:
【0071】
【化23】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(VIII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物および溶媒和物ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Qは、テクネチウム、オキソテクネチウム、レニウムおよびオキソレニウムから選択される)。
【0072】
本発明の別の実施形態において、式(IX):
【0073】
【化24】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(IX)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、R5は、水素、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、ならびにC1、C2、C3、C4、C5およびC6直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキルから選択される;qは、1、2、3、4および5から選択される整数を表す;およびYは蛍光用マーカーである)。本発明の一つの実施形態では、Yは、ダンシルアミド基およびフルオレセインから選択される。
【0074】
本発明の別の実施形態において、式(X):
【0075】
【化25】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(X)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含む)。この化合物は、指定したNST203である。
【0076】
本発明の別の実施形態において、式(XI):
【0077】
【化26】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(X)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Rは水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す)。
【0078】
本発明の別の実施形態において、式(XII):
【0079】
【化27】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Fは、18Fまたは19Fであり得る)。
【0080】
本発明の別の実施形態において、式(XIII):
【0081】
【化28】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XIII)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、Rは、水素またはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16の直鎖または分枝鎖アルキル、直鎖または分枝鎖ヒドロキシアルキル、直鎖または分枝鎖フルオロアルキル、1つまたは2つの環で構成されるアリールまたはヘテロアリール、またはその組合せを表す;mは、0、1、2、3または4の整数を表す;Dは、水素、または診断に用いるマーカーであり、本発明の一つの実施形態では、イメージング用マーカー、例えば、F(Fは18Fまたは19Fであり得る)または放射標識された金属キレートであり得、イメージング用マーカーは、着色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴映像法(MRI)または放射性同位体スキャン、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層法(SPECT)または陽電子断層撮影法(PET)などによって検出され得る。あるいはまた、Dは、上記規定のような、PNOM細胞に標的化される薬物である)。
【0082】
本発明の別の実施形態において、式(XIV):
【0083】
【化29】
に示す構造で表される化合物を提供する(式(XIV)に示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびにこの塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、Fは、18Fまたは19Fであり得る)。
【0084】
本発明の別の実施形態において、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVで表される化合物の各々は、診断に用いるマーカー、例えば、限定されないが、Tc、Tc=O、In、Cu、Ga、Xe、Tl、ReおよびRe=O、123I、131I、Gd(III)、Fe(III)、Fe2O3、Fe3O4、Mn(II)、18F、15O、18O、11C、13C、124I、13N、75Br、Tc−99mまたはIn−111などを含むものであってもよく、またはこれに連結されたものであってもよい。
【0085】
本発明の別の態様において、細胞集団内のPNOM細胞の検出方法であって、(i)細胞集団を、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造のいずれか1つで表される化合物、または式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、ならびにこの塩の溶媒和物および水和物と接触させること;および(ii)細胞に結合した化合物の量を測定することを含み、ここで、細胞に結合した化合物の有意な量は、これがPNOM細胞であることを示す方法を提供する。
【0086】
用語「細胞に結合した化合物の有意な量」は、本発明によれば、正常細胞に結合した量よりも少なくとも30%多い量でPNOM細胞に結合する本発明の化合物(診断に用いるマーカーを含むか、またはこれに結合している)の量をいう。別の実施形態では、その量は50%多いこともあり得る。本発明の別の実施形態では、その量は75%多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は150%多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は約2倍多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は少なくとも2倍より多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は少なくとも5倍多いこともあり得る。別の実施形態では、その量は少なくとも10倍多いこともあり得る。
【0087】
PETまたはSPECTによる放射性核種イメージングにより、患者において死亡過程を実行中の細胞の画像を得るための本発明の化合物の使用に関する本発明の一つの実施形態において、PNOM細胞に結合した化合物の量対正常細胞に結合した量の比の計算は、死亡過程の負担を有する組織から得られたシグナルの大きさまたは強度を、このプロセスの負担のない器官から得られた大きさ/強度と比較することにより行ない得る。
【0088】
本発明の別の態様により、患者または動物におけるPNOM細胞の検出方法であって、(i)患者または動物に、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物化合物(ここで、この化合物は、イメージング用マーカー、例えば18Fなどを含む)、または式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す構造で表される化合物の医薬的に許容され得る塩、金属キレート、溶媒和物および水和物、ならびにこの塩の溶媒和物および水和物を投与すること;および(ii)細胞に結合した化合物の量を測定するために、検査対象のヒトまたは動物のイメージングを行なうことを含み、ここで、細胞に結合したこの化合物の有意な量は、これがPNOM細胞であることを示す方法を提供する。
【0089】
本発明の化合物の作用機序は、一般式XVを有し、かつNST−ML−作用モチーフ:
【0090】
【化30】
(式中、Rはアルキルを表す)
と示す、すべての化合物が共有するモジュールの活性を、少なくともある程度含む。本発明の一つの実施形態において、Rはブチルである。
【0091】
NST−ML−作用モチーフは、アポトーシス細胞の形質膜に見られる構造的改変(これにより、これらの膜は健常細胞の膜と識別される)に対応させるために設計されたものである。膜改変のこの複合には、
(i) 膜リン脂質の無秩序化(scrambling)(ホスファチジルエタノールアミン(PE)および負に帯電したホスファチジルセリン(PS)の細胞表面上に露出した状態で)。細胞表面上でのPSの露出により、負の表面電位がもたらされ、プロトンの吸引によって膜界面に大きな塊(bulk)が形成される;
(ii)膜の外側リーフレット内におけるアミノリン脂質(PEおよびPS)の割合の増加の結果、膜の外側リーフレットの界面におけるプロトン電流(界面プロトン電流、IPC)の増強がもたらされる。この増強は、PEおよびPSが外膜リーフレット内のホスファチジルコリン(PC)およびスフィンゴミエリン(sphingomeylin)(SM)と置き換わるにつれて、プロトン転移反応に関与しやすい官能基の数の実質的な増加によるものである。PEは第一級アミンを含み、一方、PSは第一級アミンとカルボキシル基を含む。対照的に、PCおよびSMは、各々、永久的な正電荷を有する第四級アンモニウムを含み、したがって、プロトン転移反応には関与し得ない;
(iii)加えて、アポトーシス膜は、膜構成要素のパッキングレベルの低下および膜流動性の増加を特徴とする;
が含まれる。
【0092】
NST−ML−作用モチーフの作用の様式の非限定的な仮定において、これは、上記の特徴を特色とする膜、すなわち、アポトーシス細胞の形質膜に接近すると選択的に活性化されるスイッチ部分を含む(図1)。作用モチーフは、負に帯電したカルボキシレート基を2個有し(マロン酸アルキルのpKaは約5.6および2.8である)、したがって、ほとんどの場合、生理学的条件で形式電荷−2を有するため、生理学的pHでは可溶性である。しかしながら、アポトーシス膜に接近すると、表面の酸性がより強いため、および界面環境の誘電率の低下(これは、カルボキシル基のpKa値を上昇させる作用をする)のため、プロトンは、マロネート部分(moeity)に捕捉されている。
【0093】
マロネート基によるプロトンの捕捉により、負電荷の1つが中和され、したがってこの分子はより疎水性となる(全体的な電荷−1を有する)。さらにまた、プロトンの捕捉によって非常に特有の状況がさらにもたらされ、それには、以下のものが含まれる。
(i)酸−アニオン対が形成され、このとき、例外的に、強い水素結合が、プロトン付加されたカルボキシル基とプロトン付加されていないカルボキシル基との間に形成される。この水素結合は強力であり、対称的で、共鳴および互変異性化(tautamerization)によって安定化されている。
(ii)これは、4個のカルボキシル原子の上部に負電荷の分布をもたらす、すなわち、部分的に非局在化させる。
(iii)強酸−アニオン水素結合はこの分子を剛性化し、バルキーで剛性の平坦な6員環を生成する。これは、部分的に非局在化した負電荷を有し、カルボキシル二重(bouble)結合の上部にπ電子雲を含む。かかる成分(element)は、本発明の化合物の作用機序の非限定的な仮定によれば、膜界面への比較的有利な浸透を行ない得る。しかしながら、そのバルキーな剛性構造は、緩くパッキングされた膜(emebrane)、すなわち、アポトーシス膜(memebrane)に選択的に結合し、高度にパッキングされた膜(例えば、健常細胞の形質膜)への結合を排除するよう指令する。したがって、このような立体構造の特徴は、アポトーシス膜への結合における選択性を促進する。
【0094】
アポトーシス細胞の膜界面に1個のプロトンが付加されたマロネートが選択的に浸透すると、これは、増強された界面プロトン電流に供されることになり、増強された界面の水素結合網目内に組み込まれることになる。この条件下では、マロネート部分が第2のプロトンを獲得する可能性は著しく増加する。これにより、さらに、電荷の中和および隣接するリン脂質分子とのさらなる酸−アニオン対の形成がもたらされる。総合すると、これらの事象は、アポトーシス膜の界面へのこの分子の結合を安定化するために作用する。
【0095】
プロトン付加されたマロネート部分の膜界面内への浸透および界面におけるその結合の安定化により、アルキル鎖Rが膜界面を横断し、その最適な結合環境、すなわち膜炭化水素コアに達することが可能になり、その結果、疎水性(hydorphobic)相互作用によって、化合物の結合の自由エネルギーの獲得にさらに寄与する。
【0096】
NST−ML−作用モチーフは、炭化水素リンカーを介したイメージング用マーカーまたは治療用薬物(式IのD部分)との結合により、有用な診断用または治療用目的に利用されている[式Iまたは2の(CH2)m]。このアプローチによるNST−ML−作用モチーフは、標的化部分(moeity)としての機能を果たし、自身に結合しているイメージング用マーカーまたは薬物を、細胞死、特に(paricularly)アポトーシスの負担を有する細胞および組織、または血小板活性化および血栓症の負担を有する組織に選択的に標的化することを可能にする。
【0097】
図1は、NST200(式IV)を示し、生理学的条件におけるPNOM膜への接近および結合の3つの段階を表す:
A:この化合物は水溶液中に存在し、したがって、両カルボキシル基は脱プロトン化されている、すなわち負に帯電しており、この化合物は高度に可溶性である。
B:負に帯電したアポトーシス膜に接近すると、この化合物はプロトンを獲得する。アニオン−酸二量体が形成され、したがって、安定な6員環の共鳴安定化した環が生成する。これは膜界面に浸透する。このバルキーな剛性環構造は、その立体構造の特徴が、充分パッキングされた健常細胞の形質膜に対する結合よりも、緩くパッキングされたアポトーシス細胞の形質膜に対する結合にとってより有利であるため、選択性を補助する。
C:この化合物は、アポトーシス膜の膜界面内に浸透すると、この膜の界面で見られるこの界面の水素結合網目および増大された界面プロトン電流に供されることになる。結果として生じるプロトン化および水素結合形成は、さらに、この化合物への界面への結合(矢印)を安定化するために作用する。かかる浸透は、アルキル鎖が膜内でのその最適な位置に達するのをさらに可能にし、したがって、膜炭化水素コアとの疎水性相互作用の形成により、結合エネルギーにさらに寄与する。
【0098】
本発明の化合物は、医薬として有用な薬剤を、PNOM細胞を含む組織および器官に選択的に標的化するために、本発明の3種類の異なるアプローチで使用され得る。
(i)以下、「検出アプローチ」と称する第1のアプローチによれば、選択的な結合は、イメージング用マーカーをPNOM細胞に標的化するために利用され得る。これは、インビボ、エキソビボまたはインビトロのいずれかで、かかる細胞が現れる疾患(以下に説明する)の診断のために診療において使用される。
(ii)以下、「治療用アプローチ」と称する第2のアプローチによれば、選択的な結合特性は、PNOM細胞が現れた身体内の器官および組織、例えば、細胞死、血栓形成または炎症の領域に対する治療用薬剤の選択的標的化に使用される。
(iii)「クリアランスアプローチ」と称する本発明の第3のアプローチによれば、PNOM細胞に対する本発明の化合物の選択的な結合は、この化合物の固相支持体との結合を介して、体液(例えば、血液)を、その凝血促進性により潜在的に有害であり得るPNOM細胞から浄化するために利用される。
【0099】
検出アプローチに従い、本発明は、イメージング用マーカー含むか、またはこれに連結されたPMBCを有効成分として含む、インビトロ、エキソビボまたはインビボのいずれかでPNOM細胞を検出するための組成物に関する。かかるPMBCを、以下、「診断用PMBC」と示す。診断用PMBCは、アッセイした試料中に存在するPNOM細胞に対して選択的な結合を行なうことができる。次いで、この結合を、当該技術分野で知られた任意の手段で確認し得る。本発明の診断用PMBCは、PNOM細胞に対して選択的な様式でのマーカー標的化(PMBCによる)を可能にする。次いで、検出可能な標識を、当該技術分野で知られた任意の様式で、特定の標識(例えば、蛍光、放射能の放出、または呈色、MRI、X線など)の使用に従って検出し得る。一つの実施形態では、診断用PMBCは、共有または非共有(例えば、静電)結合によって検出可能な標識に連結されている。
【0100】
一つの実施形態において、検出可能な標識は、金属イオンのそれぞれの放射性同位元素、Tc、オキソTc、In、Cu、Ga、Xe、TlおよびRe、オキソRe、ならびに共有結合した原子のいずれか:123Iおよび131I(放射性同位体スキャン用、例えばSPECTなど);Gd(III)、Fe(III)またはMn(II)(MRI用);ならびに18F、15O、18O、11C、13C、124I、13Nおよび75Br(陽電子断層撮影法(PET)スキャン用)であり得る。
【0101】
一つの実施形態において、本発明のPMBCは、PETスキャンによるアポトーシスの臨床用イメージングを目的としたものであり、PMBCは18F原子を含む。
イメージング用マーカーとして使用されるある種の放射性同位体(例えば、18F)は半減期が短いため、臨床用PETイメージングの目的のためのかかるマーカーの結合は、患者への診断用化合物の投与直前に行うのがよい。したがって、患者への投与前に、18Fなどの放射性同位体に置換される部分を含むPMBC−PET前駆物質を合成することは有用であり得る。一つの実施形態では、18Fと置き換わる部分は、ヒドロキシル基、ニトロ基またはハロゲン原子(例えば、臭素または塩素など)から選択される。かかるPMBC前駆物質PMBC−PET前駆物質もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0102】
PMBC(このの構造の任意のPMBCであり得る)をPETイメージング用18Fで標識するための方法は、18F原子をPMBCに結合する工程;それにより、PMBCをPETイメージング用の18Fで放射性標識する工程を含む。任意選択で、18F原子を結合する工程の前に、PMBCの官能基を適切な保護基で保護してもよい。この保護基は、その後、任意選択で、18F原子の結合工程の後で除去する。
【0103】
マーカー金属原子の場合(例えば、それぞれMRIまたはSPECTの場合でGd、99mTcまたはオキソ99mTc)、PMBCは、金属キレート化剤を含む。キレート化剤の金属配位性原子は、窒素、硫黄または酸素原子であり得る。本発明の一つの実施形態において、キレート化剤は、ジアミンジチオール、モノアミンモノアミド−ビスチオール(MAMA)、トリアミド−モノチオールおよびモノアミン−ジアミド−モノチオールである。かかる場合において、金属原子との錯体形成前のキレート化剤と結合しているか、またはこれを含むPMBCであるPMBCキレート前駆物質、金属原子を含有する錯体は、ともに本発明の範囲に含まれる。
【0104】
蛍光検出のため、診断用PMBCは、当該技術分野で知られた任意の蛍光プローブから選択される蛍光基を含み得る。かかるプローブの例は、5−(ジメチルアミノ)ナフタレン−1−スルホニルアミド(ダンシルアミド)、およびフルオレセインである。
【0105】
本発明の化合物は、PNOM細胞の形成を特徴とする多種多様な病状の検出および診断に使用され得る。PNOM細胞を特徴とする病状の例は、以下のとおりである。
過剰アポトーシスの発生を特徴とする疾患、例えば、変性障害、神経変性障害(例えば、パーキンソン疾患、アルツハイマー疾患、ハンティングトン舞踏病)、AIDS、ALS、プリオン病、骨髄異形成症候群、虚血性または毒性傷害、移植片拒絶反応の際の移植片の細胞減損;腫瘍、および 特に高度に悪性/攻撃的な腫瘍などは、多くの場合、過剰組織増殖に加えてアポトーシスの増強もまた特徴とする。
【0106】
本発明の実施例3ならびに図2は、死亡過程を実行中の脳細胞の検出における本発明の化合物の性能を例示する。細胞死の誘因は、虚血/再潅流とした。障害を受けた脳半球は、反対側の非障害半球と比べ、著しく高いレベルのトリチウム標識NST200取込みを示した。
【0107】
過剰血液凝固を示す疾患、これは、PNOMが、血小板活性化の際、および/または他の細胞内事象の活性化またはこれに対する障害(例えば、内皮細胞)の際に存在する。このような疾患としては、とりわけ、動脈または静脈の血栓症、血栓塞栓症、例えば、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、鎌状赤血球症、サラセミア、抗リン脂質抗体 症候群、全身性エリテマトーデスが挙げられる。
【0108】
炎症性障害および/または免疫媒介性の病因または病原と関連する疾患、自己免疫障害(例えば、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデスなど)、結合組織障害(例えば、慢性関節リウマチ、強皮症など);甲状腺炎;皮膚障害(例えば、天疱瘡または結節性紅斑);自己免疫性血液障害;自己免疫性神経障害(例えば、重症筋無力症);多発性硬化症;炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎など);脈管炎。
【0109】
アテローム性プラーク、特に、不安定で、裂開を受けやすく、また裂開する傾向があるプラークもまた、PNOM細胞(例えば、アポトーシスマクロファージ、アポトーシス平滑筋細胞、アポトーシス内皮細胞、および活性化された血小板)を特徴とする。かかる活性化された血小板は血栓において見られ、多くの場合、不安定なアテローム性プラークと会合している。
【0110】
また、検出は、それぞれの疾患を有することがすでにわかっている場合において、疾患の重篤度を評価する目的で、および疾患過程および/または種々の治療モダリティに対する応答をモニターするために行なわれ得る。かかるモニタリングの非限定的な例は、抗癌治療に対する応答の評価である。ほとんどの抗腫瘍治療(例えば、化学療法または放射線療法など)は、アポトーシスの誘導によってその効果を発揮し、腫瘍細胞の治療誘導性アポトーシスの診断用PMBによる検出は、抗腫瘍薬剤に対する腫瘍の感受性の程度を教唆し得る。これは、抗癌治療の施行時点と、その効力の適正な評価時点との間の遅延期間を実質的に短縮し得る。
【0111】
さらにまた、検出は、抗癌治療の有害効果をモニターするためにも使用され得る。かかる有害効果の大部分は、正常であるが敏感な細胞(例えば、胃腸管上皮または骨髄造血系ものなど)における不適当な治療に誘導されたアポトーシスによるものである。
【0112】
加えて、検出は、固有のアポトーシス負荷(多くの場合、腫瘍攻撃的性のレベルと相関する)の特性付けを目的としたものであり得、また、転移部内で頻繁に起こる固有のアポトーシスの検出により転移の検出を補助し得る。
【0113】
同様に、本発明の診断用PMBCは、アポトーシスが移植片拒絶の際の細胞減損に主要な役割を果たしているため、器官移植後の移植片生着のモニタリングに有用であり得る。
加えて、検出は、細胞保護治療に対する応答のモニタリングを目的としたものであり得、したがって、細胞死の評価の目安となり得ることにより、種々の疾患における細胞減損を抑制することができる薬物(例えば、上記のもの)のスクリーニングおよび開発を補助する。
【0114】
また、検出は、かかるプラークの不安定化(裂開、血栓症および塞栓形成を受けやすくなり、また裂開する傾向になる)が、いくつかの型のPNOM細胞(アポトーシス細胞(アポトーシス性マクロファージ、平滑筋細胞および内皮細胞)、and 活性化された血小板を含む)の関与を特徴とするため、アテローム性プラークの検出に有用であり得る。
【0115】
このアプローチによれば、本発明は、全身、器官、組織、組織培養物から選択される細胞集団または任意の他の細胞集団におけるPNOM細胞の検出方法であって、(i)細胞集団を、本発明の実施形態のいずれかによる診断用PMBCと接触させること;および(ii)細胞集団に結合したPMBCの量を測定することを含み、ここで、この集団内の細胞に結合した化合物の有意な量の検出は、細胞がPNOM細胞であることを示す、PNOM細胞の検出方法に関する。
【0116】
実施例の項に、トリチウム標識NST 200、NST 203およびNST 205がアポトーシス細胞に、対照の非アポトーシス細胞よりも高量で結合する能力の能力を示し、これは、アポトーシス細胞の選択的な結合および検出を行なう際の本発明の化合物の特性を示す。
【0117】
別の実施形態では、本発明は、さらに、患者または動物においてインビボでのPNOM細胞の検出方法であって、(i)診断用PMBCを検査対象の患者または動物に投与すること、ここで、この投与は、非経口(例えば、静脈内)または経口投与などの当該技術分野で知られた任意の手段によって行なわれる;および(ii)検査対象の患者または動物のイメージングを、当該技術分野で知られた任意の方法(例えば、PETスキャン、SPECT、MRI)によって行ない、細胞に結合した診断用PMBCの量を検出および測定することを含み、ここで、細胞に結合した化合物の有意な量は、細胞がPNOM細胞であることを示す、PNOM細胞の検出方法に関する。
【0118】
本発明の別の実施形態において、本発明は、組織または細胞培養物試料中のPNOM細胞のインビトロまたはエキソビボでの検出方法であって、(i)試料を診断用PMBC(本発明において記載のPMBC化合物のいずれかであり得る)と、診断用PMBCのPNOM細胞の生体膜との結合を可能にする条件下で接触させること;および(ii)細胞に結合した診断用PMBCの量を検出すること、ここで、結合した診断用化合物の有意な量の存在は、組織または細胞培養物内におけるPNOM細胞の存在を示す、検出方法に関する。
【0119】
インビトロまたはエキソビボ試験における検出工程は、例えば蛍光標識された本発明の化合物の場合、限定されないが、市販品として広く入手可能な装置にて細胞の可視化を可能にするフローサイトメトリー解析を使用するものであり得る。細胞を可視化するために蛍光を使用する一例では、単一の15mWアルゴンイオンレーザー光線(488 nm)を用いてFITC 蛍光を励起し、蛍光データを、530nm帯域通過フィルタを用いて収集し、ヒストグラムを作成する。蛍光細胞の割合は、例えば、Lysis IIソフトウェアまたは任意の他のソフトウェアを用いて算出し得る。この検出方法は、本発明の一つの実施形態において、抗癌薬などの治療用薬物のスクリーニングのために使用し得る。
【0120】
用語「有意な量」は、本発明によれば、PNOM細胞に結合したPMBCの量が、非PNOM細胞に結合した量よりも少なくとも30%多いことを意味する。実際の量は、用いるイメージング方法および装置に応じて、および検査対象の器官または組織に応じて異なり得る。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量よりも少なくとも50%多い。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量よりも少なくとも75%多い。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量の少なくとも2倍である。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量の少なくとも4倍である。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PM細胞に結合した量の少なくとも6倍である。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量の少なくとも8倍である。別の実施形態では、PNOM細胞に結合したPMBCの量は、非PNOM細胞に結合した量の少なくとも10倍である。
【0121】
結合の作用は、とりわけ、結合の違いを測定する方法に依存する。本発明の方法は、PNOM細胞の存在を特徴とする疾患、例えば、限定されないが、上記のいずれかの疾患の診断に使用され得る。
【0122】
本発明の方法はまた、疾患または病状の治療のため、あるいはまた、先に説明したような基礎的な科学研究目的のために使用される種々の治療モダリティの効果のモニタリング
に使用され得る。
【0123】
「治療用アプローチ」と称する本発明の第2のアプローチによれば、本発明は、活性な薬物またはプロドラッグをPNOM細胞に標的化するために使用される、PMBCを含む医薬組成物に関する。治療用PMBCは、本発明によれば、薬物を含むPMBCまたは医薬として有用な薬剤とコンジュゲートしたPMBCを意味する。用語「コンジュゲート」は、当該技術分野で知られた任意の手段によって互いに連結された2つの分子を意味する。
【0124】
医薬として有用な薬物と、PMBC(これは、治療用PMBCに含まれているか、または連結されている)との会合は、共有結合、非共有結合(例えば、静電力)によるもの、または薬物を含み、かつその表面上に、この複合体をPNOM細胞に標的化するPMBCを有する担体粒子(例えば、リポソームなど)の形成によるものであり得る。薬物が標的に達すると、これはその生理学的活性を、なおPMBC−コンジュゲートの一部であるとき、PMBCをその膜上に有する薬物含有リポソームの食作用によって、または任意の他の既知の機序によってPMBC単位から解離した後(例えば、切断、破壊など、天然酵素の活性により)のいずれかで発揮できるはずである。
【0125】
薬物は、組成物が意図される具体的な疾患に応じて選択するのがよい。
本発明の医薬組成物、ならびに診断用組成物は、任意の公知の経路、とりわけ、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、舌下、眼内、鼻腔内または局所投与、または大脳内投与によって投与され得る。担体は、所望の投与様式に応じて選択するのがよく、任意の公知の成分、例えば、溶媒;乳化剤(emulgator)、賦形剤、タルク;香料;着色料などを含み得る。医薬組成物は、所望により、他の医薬的に活性な化合物(これは、疾患を治療するため、副作用を排除するため、または活性成分の活性を増大させるために使用される)もまた含み得る。
【0126】
この態様によれば、本発明は、さらにまた、PNOM細胞が現れる疾患の治療方法であって、かかる治療を必要とする個体に、有効量の治療用PMBCを投与することを含み、この治療用PMBCが、疾患の治療物質として活性である薬物または標的化領域において活性な薬物に変換されるプロドラッグを含む、この疾患の治療方法に関する。治療用PMBCは、薬物を、PNOM細胞を含むに組織に選択的に標的化することを可能にし、したがって、その局所濃度を増大させ、標的部位でのその治療効果を潜在的に増強する。かかる医学的障害は上記規定のものである。
【0127】
別の実施形態では、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す化合物のいずれか1つおよび細胞傷害剤を含む治療用PMBCの投与によって、腫瘍内のアポトーシス細胞を標的化し、それにより、癌細胞を死滅させる工程を含む、腫瘍内の癌細胞の死滅方法を提供する。一つの実施形態では、腫瘍細胞の死滅方法は「自己触媒機構」を伴い、この場合、腫瘍に標的化される細胞傷害性薬剤の量は順次用量とともに増加する。それは、各用量において、その細胞傷害性効果により腫瘍内のアポトーシス細胞の負荷が増強され、したがって、治療用PMBCの次の用量での標的化のための部位がより多くもたらされるためである。かかるストラテジーは、抗癌治療の効力を増強し得、腫瘍根絶の機会を増大させ得る。
【0128】
治療用PMBCの「有効量」という用語は、疾患の少なくとも1つの有害な徴候を測定可能なレベルまで減少させることができる量をいい、使用する薬物、投与様式、患者の年齢および体重、疾患の重篤度などに応じて選択するのがよい。
【0129】
別の実施形態では、本発明の治療用PMBCは、治療効果を有する放射性同位体を含むか、またはこれに連結されている。かかる放射性同位体の一例は、限定されないが、治療用目的に有用な、イットリウム90、ヨウ素131、レニウム188、ホルミウム166、インジウム111、ルテチウム(Leutitium)177、または放射線を発する任意の他の放射性同位体である。
【0130】
別の実施形態では、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIIIまたはXIVに示す化合物であって、抗凝血薬または線維素溶解薬に連結されたこの化合物のいずれか1つを含む治療用PMBCを投与し、それにより、治療剤を、血餅内の活性化された血小板に標的化し、血栓形成を低減/抑制することによる、血餅の低減/抑制を提供する。
【0131】
この方法はまた、過剰血液凝固を示す疾患であって、PNOMが血小板活性化の際、および/または他の細胞内事象の活性化またはこれに対する障害の際に存在する(例えば、内皮細胞)疾患治療または予防するためにも使用され得る。このような疾患としては、とりわけ、動脈または静脈の血栓症、血栓塞栓症、例えば、心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、鎌状赤血球症、サラセミア、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデスが挙げられる。
【0132】
「クリアランスアプローチ」と称する本発明の第3のアプローチによれば、PNOM細胞に特異的に結合する本発明のPMBCの性質は、細胞の体液を浄化するために利用される。本発明の一つの実施形態において、体液は血液または血液製剤である。
【0133】
体外循環を必要とする多くの外科的または医学的介入には、血液成分の外因性人工的環境への曝露が付随する。これは、多くの場合、血液細胞の活性化およびこれに対する障害、全身性炎症、および深刻な臨床結果(例えば、脳血管内の微小塞栓の持続的存在(lodging)時の神経機能障害など)を潜在的に有する血栓塞栓性の現象をもたらす。したがって、障害され活性化された細胞またはアポトーシス細胞を検出し、血液から除去することが望ましい。
【0134】
したがって、その態様の1つによれば、本発明は、固相支持体上に固定化されたPMBCに関する。固定化は、直接結合によるもの、共有結合または非共有結合のいずれかによるもの、またはスペーサーを介した結合によるものであり得る。固定化されたPMBCは、体液をPNOM細胞から浄化することを意図するものである。
【0135】
本発明の別の実施形態によれば、固相支持体は、PMBCが結合される複数のビーズを特色とする。好ましくは、ビーズは樹脂コートビーズである。あるいはまた、ビーズは磁気ビーズであり得る。
【0136】
固相支持体が複数のファイバーまたはマイクロキャピラリーを含み、個々の間および/または内部に体液が流れる場合、その内側および/または外側の面をPMBCで被覆する。
【0137】
固相支持体上に固定化された化合物は、濾過デバイスの一部を構成する。したがって、クリアランスアプローチによれば、本発明は、さらに、固相支持体上に固定化された化合物を内包するハウジング、ならびに流体供給口および流体排出口を備える濾過デバイスに関する。血液または血液製剤などの体液は、供給口を通してハウジング内に入り、ハウジングに内包された固定化PMBCと接触し、これに接着する。したがって、体液には、摂動した膜を有する循環細胞、例えば損傷を受けた細胞または死滅中の細胞がなく、より大きな構造体、例えばPNOM膜を有する塞栓がない。結果として、排出口から排出される流体は、PNOM細胞の含量が低下しており、本質的にこれをもたない。
【0138】
濾過デバイスは、体外循環装置の交換可能な部分、常置される部分、または付加的部分を構成し得る。したがって、本発明はまた、濾過デバイスを含む体外循環装置であって、この装置内部を循環する血液がこの装置も通る体外循環装置に関する。
【0139】
かかる装置の例は、心肺バイパス装置;血液透析装置;血漿交換装置および輸血装置(例えば、当該技術水準の輸血バッグ)である。
実施例
本発明を理解するため、およびこれを実際にどのように行い得るかがわかるように、以下の実施例:本発明の化合物の合成に関する実施例;および死亡過程を実行中の細胞に対する選択的な結合における本発明の化合物の性能に関する実施例を記載する。本発明の化合物の検出を可能にするため、これをトリチウムで放射標識し、損傷を受けた領域内への取込みを測定することにより、またはオートラジオグラフィー法によって検出した。一部の実施例では、化合物を蛍光標識、すなわちダンシルアミド基への結合によって標識し、蛍光顕微鏡検査によって検出した。アポトーシス細胞に対するこの化合物の結合の選択性は、インビトロで組織培養物において、およびインビボで細胞死を中大脳動脈の閉塞によって誘導した脳卒中のマウスモデル、腎虚血性または毒性傷害のマウスモデル、黒色腫のマウスモデル、結腸癌のマウスモデル、および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)において、多発性硬化症に関連するマウスモデルにおいて示された。
【0140】
(実施例1)
NST−ML−F−4(2−ブチル−2(3−フルオロプロピル)−マロン酸)の合成;(スキーム1):
ジ−t−ブチルマロネート(5mL)を、1当量のNaHを含むジメチルホルムアミド(DMF)で脱プロトン化し、1当量のヨウ化n−ブチルを、水素発生が止まった後、添加した。反応混合物を50℃まで14時間加熱した。5.8gのジ−t−ブチル、ブチルマロネート(2)を95%収率で、カラムクロマトグラフィーを用いて得た。2(3.8g)を、NaOCH3(0.05当量、触媒量)およびアクロレイン(1.1当量)を含むトルエンで処理し、1.26gのアルデヒド(3)を30%収率で得た。化合物3を、次いで、NaBH4(1.05当量)を含むエタノール/水(8:1v/v)の混合物で2時間反応させた。処理(work−up)およびフラッシュクロマトグラフィー後、純粋なアルコール4を得た(93%)。得られた生成物を、1.1当量の塩化メタンスルホニル(MsCl)および2.2当量のトリエチルアミン(Et3N)で処理し、メシラート化合物5を97%収率で得た。この生成物は本質的に純粋であり、さらに精製を行なわずに次の反応に直接持ち越した。
【0141】
KF(5当量)、クリプトフィックス(5当量)およびK2CO3(2.5当量)を2mLのアセトニトリル中に含む混合物を、窒素気流下、4回ストリッピングして乾固した。次いで、メシラート化合物5(167mg)を含む2mLのアセトニトリルを添加した。反応物を、120℃のサンドバス内で10分間攪拌した。処理すると、粗製生成物の1H NMRにより、所望の生成物6とクリプトフィックスの混合物が示された。di−t−ブチルエステル6の脱保護を、(474mg)およびトリフルオロ酢酸(TFA)(17mL)を用い、10℃で30分間行ない、次いで、蒸発乾固した。残留物を、クロロホルムから2回エバポレートし、真空ラインにて乾燥し、NST−ML−F−4の白色固形物(312mg、99%)を得た。この化合物のNMRデータは:lHNMR(300MHz, CDC13)δ4.41(dt,Jt=5.9Hz,Jd=47.4Hz,2H),1.97−1.91(m,2H),1.89−1.83(m,2H),1.69−1.60(m,1H),1.58−1.52(m,1H),1.33(p,J=6.9Hz,2H),1.25−1.14(m,2H),0.92(t,J=7.2Hz,3H);13CNMR(75MHz,CD3OD)δ175.8,86.2,84.1,58.6,34.1,30.1,30.0,27.9,27.3,27.0,24.5,14.6;l9FNMR(282MHz,CD3OD)δ−220.9;MS(EI)m/z219(M−H)である。
【0142】
【化31】
(実施例2)
NST−ML−F:2−メチル−2(3−フルオロプロピル)−マロン酸の合成;(スキーム2):
4−ブロモ−1−ブタノール(1)3gを、1.5当量の3,4−ジヒドロ−2H−ピランおよび0.1当量のp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)を含む135mLのCH2Cl2で処理した。処理および精製後、1.45g(33%)の生成物2を得た。1.0当量のジエチルメチルマロネートを、1当量のNaHで脱プロトン化し、1.0当量のブロミド2を、触媒量のKIとともに50℃で添加した。完全な変換が10時間に観察され、90%収率が得られた。テトラヒドロピラン(THP)のPPTS含有エタノールでの脱保護は、55℃で順調に進行した。処理後、定量的収率のアルコール4が得られ、メシル化反応に直接使用した(前述と同様)。得られたメシラート5を用い、クリプトフィックスの反応を、上記のようにして適用した。化合物6を68%収率で得た。化合物6(233mg)を、2N NaOH/EtOH(30mL/5mL)で50℃にて処理し、NST−ML−Fを約99%収率(190mg)で得た。この化合物のNMRデータは、以下のとおりである。1HNMR(300MHz,CDC13)δ11.89(bs,2H),4.46(dt,Jt=5.9Hz,Jd=47.2Hz,2H),1.99−1.92(m,2H),1.82−1.64(m,2H),1.50(s,3H),1.50−1.40(m,2H),13CNMR(75MHz,CDC13)δ178.6,85.1,82.9,54.2,35.5,31.0,30.8,20.8,20.7,20.2;19FNMR(282MHz,CDC13)δ−219.0,MS(EI).
【0143】
【化32】
(実施例3)
トリチウム標識NST 200およびNST205の、CD95により誘導されたアポトーシスを実行中である培養ジャーカット細胞への選択的結合
実験手順
培養ジャーカット細胞(ヒト成人T細胞白血病細胞)を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、lmMのピルビン酸ナトリウム、1mM HEPESおよび抗生物質(100単位/mlペニシリン;100μg/mlストレプトマイシンおよび12.5単位/mlのナイスタチン)を加えたRPMI培地(Beit−Haemek,Israel)中の懸濁液中で成長させた。アポトーシスの誘導前に、培地をHBSバッファー(10mM HEPES;140mM NaCl、1mM CaCl)と交換した。次いで、アポトーシスを、CD95(0.1ug/107細胞/ml)での処置によって誘発した。その結果、著しい割合の細胞がアポトーシスとなった。非処置細胞を対照とした。次いで、対照細胞およびアポトーシス細胞の両方を40分間、室温でインキュベートした後、30分間氷上で、(2μCi/107細胞/0.5ml)トリチウム標識NST 200およびNST 205とともにインキュベートした。
【0144】
細胞を2回洗浄した後、1mlのSOLVABLE(商標)試薬(GNE9100、Packard Biosciences)を、このペレットに添加した。1時間の60℃でのインキュベーション後、抽出物をガラスシンチレーションバイアル内に移し、10mlのシンチレーション液(Ultima gold 6013329、Packard Biosciences)を各バイアルに添加した。放射能を、1時間の室温までの冷却および暗順応後に計測した。放射能の値を計算し、添加した放射標識したNST 200およびNST 205の総量に対するパーセントで示した。
実験結果
図2Aから明白にわかるように、アポトーシス細胞は、非アポトーシス細胞と比べ、著しく高いNST200の取込み(8倍を超える)を示した。この実験は、NST200が、アポトーシス細胞に選択的に結合でき、その検出のためのマーカーとしての機能を果たし得ることを示す。同様に、図2Bからわかるように、アポトーシス細胞は、非アポトーシス細胞と比べ、高いNST205の取込みを示し、この効果は、カスパーゼ阻害剤であるZVAD(フルオロメチルケトンペプチド(peptid)(V−バリン、A−アラニン、D−アスパラギン酸塩)カスパーゼ阻害剤)を添加している間に完全に逆転した。
【0145】
(実施例4)
アポトーシスを実行中の培養HeL細胞に対するNST 203の選択的結合
HeLa S3 細胞(ATCC CCL−2.2)を、2mMのL−グルタミン;100単位/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5単位/mlのナイスタチンおよび10%のウシ胎仔血清(FCS)を加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で成長させた。細胞を、5×106細胞/プレートの密度で10cm3 培養プレート上に、10mlの容量で播種し、成長培地を交換することなく96時間、培養物をインキュベートすることにより熟成させた。その結果、著しい割合の細胞がアポトーシスとなった。細胞を、細胞スクレーパーを用いて回収し、18Gニードルを有するシリンジに通すことにより単一の細胞に分離し、106細胞/mlの密度でPBSバッファー(pH=7.4)中に再懸濁した。これは、単一の細胞の蛍光(flouresence)の可視化を可能にするダンシルアミド基を含むNST 203の前に見られた。アポトーシス細胞に対するNST203の選択的な結合を図3Aに示す。図は、アポトーシス細胞集団内へのNST 203の取込みを示す(緑、照り輝く(glowing)色の細胞の代表を矢印で示す)。一方、非アポトーシス細胞では蛍光観察されない(青、照り輝いていない細胞、矢じりで示す)。
【0146】
対照的に、同じフルオロフォアを有するが、NST−ML−作用モチーフを欠く対照化合物のn−ブチル−ダンシルアミド(BDA)は、この選択性を示さず、したがって、アポトーシス細胞に対する選択的な結合におけるNST−ML−作用モチーフの活性が示された(図3B)。したがって、NST203は、マーカーとしての機能を果たし得、アポトーシス細胞に対する選択的な結合を行なう。
【0147】
(実施例5)
マウスにおいてインビボで化学療法により誘導された死亡過程を実行中の黒色腫に対するNST 203の選択的結合
実験手順
マウス(c57/black;8週齢雄マウス)に、マウス黒色腫由来B16−F10細胞(ATCC CRL−6475;105細胞/マウスを100μlの容量で)を、脇腹に左右対称に皮下注射した。注射の前、この細胞株は、4mMのL−グルタミン;100単位/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5単位/mlのナイスタチンおよび10%のウシ胎仔血清(FCS)を加えたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、培養状態で維持した。10日後、腫瘍直径が5〜7mmの大きさに達したとき、マウスを、化学療法処置(Taxol 20mg/Kgをシクロホスファミド(Cyclophosphomide)300mg/Kgとともに、200μlの容量で腹腔内注射)に供した。24時間後、NST−203を、2.8mg/マウス(10%発色団含有トリス系バッファー中)の用量で静脈内注射した。2時間後、マウスを致死させ、腫瘍および他の器官を回収し、直ちに液体窒素中で凍結させた。腫瘍または他の器官によるNST−203の取込みを、各組織由来の凍結切片の蛍光顕微鏡検査によって評価した。
実験結果
図4Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡検査を示す。アポトーシスを実行中の数多くの腫瘍細胞に対するNST203の広範な結合を観察することができる。また、この化合物の細胞内蓄積(写真の右側)および高レベルの選択性も示されており、アポトーシス細胞内への著しい取込みを反映しているが、周囲の腫瘍生細胞は、非染色のままである(写真の左上側)。
【0148】
化学療法は、多くの場合、標的腫瘍組織だけでなく、非標的組織(例えば、胃腸管の上皮)においても細胞死を誘導する作用をする。図4Bは、アポトーシスを実行中のこれらの細胞を選択的に検出するNST203の能力を示す(矢印参照)。腫瘍における所見と同様、胃腸管の生細胞は、NST203の取込みを示さず、したがって暗いままであった。
【0149】
したがって、この結果は、本発明の化合物であるNST203が、死亡過程が化学療法により誘導されているアポトーシス細胞をインビボで特異的に標的化する能力を示す。アポトーシス細胞は、関与する組織とは無関係に、普遍的な様式で検出される。対照的に、この組織の生細胞は、かかる結合を示さない。
【0150】
(実施例6)
結腸癌のマウスモデルにおける化学療法に対する応答の3H−NST200を用いたオートラジオグラフィー法によるイメージング
実験手順
結腸癌モデルを、Balb/c 雄マウスの腹部において確立した。第12〜14日に、腫瘍の大きさが直径6〜8mmになったとき、結腸癌腫瘍を、2回用量のドキソルビシン(20mg/kg、72時間空ける)の点滴で処置した後、腫瘍内へのNST200の取込みを測定した。化学療法の48時間後、対照非処置動物および化学療法処置動物の両方に、放射標識したNST200(80μCi/動物)を静脈内注射した。4時間後、動物を致死させた。10μm凍結切片を調製し、風乾し、トリチウム感受性フィルムに露光した。フィルムを7週間の期間露光し、現像し、デンシトメトリー測定によって解析した。3H−DDC密度(光学密度/mm2)の測定を、虚血中心対反対側の半球とでのシグナルにおいて行い、TINAソフトウェアによって評価した。シグナルを、Microscaleオートラジオグラフィー標準にしたがって変換し、nCi/mg単位で示した。
実験結果
非処置腫瘍はNST200の取込みを示さず、したがって、オートラジオグラフィーによって画像は検出され得なかった(図5A)。しかしながら、化学療法により細胞死を誘導すると、NST 200取込みの劇的な増加が起こり、これは、照射誘導性細胞死の大規模プロセスを示す(図5BおよびC)。NST 200取込みは、腫瘍の表面上の多くの病巣において、暗くて強い斑の形態で検出され得る。NST−200標識化は、腫瘍内の特定のアポトーシスの病巣領域に局在し、腫瘍全体に拡散していなかった。処置腫瘍の他の領域は標識されず、これは、腫瘍組織の生存を示す。この観察結果により、NST 200が、死滅中の細胞に選択的に大量に蓄積され、生細胞には蓄積されない分子を標的化するのに好都合であることが強調された(図5B)。同じ腫瘍内であっても治療に対する応答が不均一な性質が図5Cに示されている。NST200の取込みは、特に、細胞死の増大を示した腫瘍の大きな一領域に蓄積しているが、化学療法に対する応答を示さなかった他の腫瘍領域には蓄積されていない。
【0151】
(実施例7)
結腸癌モデル内への3H−NST 200の取り込み:化学療法の効果
実験手順
結腸癌モデル
マウス結腸癌細胞(CT−26)(ATCC CRL−2638)を、RPMI(Gibco, UK)、2mMのL−グルタミン;100単位/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5単位/mlナイスタチン;および10%加熱不活化FCS中で維持した。試験は、8〜10週齢の成体雄Balb/Cマウス(体重20〜25g)において行なった。
腫瘍の播種:
細胞をトリプシン処理し、HBS(140mM NaCl;0. 5M Hepes、PH 7.4)で2回洗浄し、次いで(than)遠心分離し(5分間、1000rpm、4℃)、(2%)メチルセルロースと生理食塩水(1:3)の混合物中2×106細胞/mlに濃縮した。0.2mlの容量の上記の溶液(4×105細胞/用量を含有)をマウス腹部の両側に皮下注射し、この間、マウスには麻酔した。麻酔用ストック溶液は、0.85mlケタミン(lOOmg/ml)+0.15mlキシラジン(2%)を1:10に希釈して調製した。重量10gあたりO.lmlの希釈溶液を、(i.p.)注射した。
腫瘍追跡:
マウスを、毎日、触診可能な腫瘍形成について検査した。腫瘍注射の7〜10日間後、小さな腫瘍が現れた。
結腸癌腫瘍内への3H−NST200 取込みの評価
腫瘍内への3H−NST200の取込みを、2回用量のドキソルビシン(20mg/kg、72時間空ける)の点滴での結腸癌腫瘍の処置後に測定した。2回目の投与の48時間後、マウスに3H−NST200(10μCi/動物)を静脈内注射した。4時間後、腫瘍を回収し、重量計測し、組織を処理した。腫瘍の溶解を、SOLVABLE(商標)試薬(GNE9100, Packard Bioscience)を、150mgの腫瘍組織に対して試薬1mlの比率で用い、60℃にて、20ml容シンチレーションガラスバイアル内で行なった。2〜4時間後、各組織抽出物の1mlをガラスシンチレーションバイアルに移した。着色消光の問題を低減するため、試料を0.4mlの30%H202で0.066M EDTAの存在下で処理した。15分間の室温でのインキュベーション時間後、抽出物を1時間60℃でインキュベートした後、さらに15分間室温でインキュベーションした。10mlのシンチレーション液(Ultima gold、6013329、Packard Bioscience)を各バイアルに添加した。バイアルを1時間室温でインキュベートし、次いで、βカウンター(TRI−CARB 2100TR、液体シンチレーションアナライザー、Packard Bioscience)において解析した。すべての試料は、3連で測定した。注射した用量のパーセントの値(%ID/g(組織))を各試料について計算した。
実験結果:
ドキソルビシン処置した結腸癌腫瘍対非処置対照腫瘍における3H−NST200蓄積の定量分析により、処置の48時間後に3H−NST200の大量蓄積が示された。一方、対照群では、すべての腫瘍に、同様だが少量の3H−NST200が蓄積し、化学療法処置腫瘍では、蓄積値は、腫瘍によってばらつきがあり、対照群と比べ、取込みの40〜50倍の増加を示した。処置群における取込みの平均値は1.28%ID/gであり、これは、more of 対照群の平均値より12.1倍大きかった(図6参照)。この広域の3H−NST200蓄積値は、種々の腫瘍の抗癌処置に対する個々の応答を反映する。上記の実験は、3H−NST200が、癌を検出する機能および癌細胞に対して細胞傷害剤の効果を検出する機能を果たし得ることを明白に示す。
【0152】
(実施例8)
結腸癌腫瘍を有するマウスにおける3H−NST200の生体分布
実験手順
結腸癌モデルを、Balb/c雄マウスの腹部において、前述の実施例に記載のようにして確立し、3H−NST200(10μCi)を、ドキソルビシンで処理した動物に注射した。4時間後、動物を致死させ、種々の器官/組織を回収し、処理し、これらの内部での3H−NST200の蓄積を測定した。各器官内における取込みを、注射した用量(ID)に対する%で示し、腫瘍と他の器官との取込みの比率を計算し、これを表に添付の図7として示す。
実験結果
ドキソルビシンによって誘導された腫瘍組織に対する障害は、実際、他の非標的器官(心臓および小腸を含む)に対する障害よりも大きかった。腫瘍対すべての器官における取込みの比率は、表において>1であり、これは、腫瘍におけるアポトーシスの増加および標的対非標的組織における3H−NST200の選択的蓄積を示す。
【0153】
(実施例9)
3H−NST200は、BiCNU処置腫瘍内で起こっている細胞死を腫瘍の大きさの縮小前に検出し得る
実験手順
結腸癌モデルを、Balb/c雄マウスの腹部において、実施例10に記載のようにして確立した。第12〜14日に、腫瘍の大きさが直径6〜8mmになったとき、マウスにドキソルビシンを静脈内注射した。合計2回のドキソルビシンを、3日間の間隔を空けて与えた(各用量は20mg/Kgとした)。2回目のドキソルビシン注射の2日後、マウスに、10μCiの3H−NST200を0.2mlの容量の生理食塩水にて点滴した。3H−NST200注射の4時間、マウスを、ペンタールの過剰投与により致死させた。腫瘍をエッペンドルフチューブ内に回収し、重量計測し、−20℃にて凍結させた。
【0154】
腫瘍の溶解を、SOLVABLE(商標)試薬(GNE9100, Packard Bioscience)を、150mgの腫瘍組織に対して試薬1mlの比率で用い、60℃にて、20ml容シンチレーションガラスバイアル内で行なった。2〜4時間後、各組織抽出物の1mlをガラスシンチレーションバイアルに移した。着色消光の問題を低減するため、試料を0.4mlの30%H2O2で0.066M EDTAの存在下で処理した。15分間の室温でのインキュベーション時間後、抽出物を1時間60℃でインキュベートした後、さらに15分間室温でインキュベーションした。10mlのシンチレーション液(Ultima gold、6013329、Packard Bioscience)を各バイアルに添加した。バイアルを1時間室温でインキュベートし、次いで、βカウンター(TRI−CARB 2100TR、液体シンチレーションアナライザー、Packard Bioscience)において解析した。すべての試料は、3連で測定した。注射した用量のパーセントの値(%ID/g(組織))を各試料について計算した。NST200取込みと腫瘍容積間の比較を示す。各投与後のNST200の取込み値は腫瘍容積と相関しており、これを、式(腫瘍を球形と仮定する)V=πD3/6(式中、Dは、平均腫瘍直径である)によって計算した。
実験結果
ドキソルビシン(5日間持続)での処置の間、腫瘍塊は縮小しなかった(図8A参照)。対照的に、腫瘍は、成長し続け、その容積は、対照非処置腫瘍(処置腫瘍よりも5日間早く回収した)と比べ50%増加を示す。この増加は、非有意であることがわかった。腫瘍容積のかかる非有意な変化は、2回用量のドキソルビシン処置後に起こり、3H−NST200取込みの18.5倍という劇的な増加が検出され、これは、3H−NST200が、腫瘍塊の収縮が検出されない場合であっても、腫瘍内の細胞死を検知することできる感度のよいツールであることを示す(図8B参照)。
【0155】
(実施例10)
マウスにおける中大脳動脈閉塞後のアポトーシス障害のオートラジオグラフィー法による検出のためのトリチウム標識NST200の使用
実験手順
p−MCAを、側頭骨(subtemporal)からのアプローチにより、顕著な虚血性障害の転帰を有するBalb/Cマウスにおいて誘導した。p−MCAの24時間後、動物の神経学的スコアを評価し(0−臨床的症状なし〜3−片麻痺、回転行動および緊張病)、放射標識されたNST200(80μCi/動物)を、連続2時間静脈内注射した後、動物を致死させた。10μm凍結切片を調製し、風乾し、トリチウム感受性フィルム(Hyperfilm−3h、RPN535B Amersham−Pharmacia, Eu)に露光した。フィルムを7週間の期間露光し、現像し(GBX Developer & Fixer, Kodak, USA)、デンシトメトリー測定によって解析した。3H−DDC密度(光学密度/mm2)の測定を、虚血中心対反対側の半球とでのシグナルにおいて行い、TINAソフトウェアによって評価した。シグナルを、Microscaleオートラジオグラフィー標準(RPN510 Amersham−Pharmacia, Eu)にしたがって変換し、nCi/mg単位で示した。
実験結果
3H−NST 200の蓄積(a)H&E染色(b)を示す図9からわかるように、オートラジオグラフィー画像解析により、アポトーシス(apoptotoc)細胞死/壊死性細胞死の領域内での3H−NST200による傷害の標的化の特異性が示された。この結果を、H&E染色によってさらに確認した。したがって、3H−NST200は、オートラジオグラフィー画像解析において、脳アポトーシス障害のマーカーとして使用することができる。
【0156】
(実施例11)
3H−放射標識されたNST 200によるラット虚血再潅流腎(I/R)のオートラジオグラフィー
実験手順
ケタミン(80mg/kg)とキシラジン(lOmg/kg)の組合せの腹腔内投与によって誘導した全身麻酔下のラットにおいて手術を行なった。腎虚血は、片側性左腎動脈を、小さな非外傷性血管用鉗子を用いて45分間締めることにより誘導した。同じ動物の反対側の未処置腎臓を、偽手術された(sham−operated)対照由来の腎臓とした。再潅流は、鉗子を外すことにより開始した。腎再潅流の期間は24時間とした。再潅流の過程の間、動物に100μCiの3H−NST205を静脈内注射し、1時間後、両方の腎臓を切除し、液体窒素中で凍結し、−70℃で使用まで保存した。10μm凍結切片を調製し、風乾し、トリチウム感受性フィルム(Hyperfilm−3h、RPN535B Amersham−Pharmacia, Eu)に露光した。フィルムを7週間の期間露光し、現像し(GBX Developer & Fixer, Kodak, USA)、デンシトメトリー測定によって解析した。3H−DDC密度(光学密度/mm2)の測定を、虚血性腎臓対反対側の腎臓とでのシグナルにおいて行い、TINAソフトウェアによって評価した。シグナルを、Microscaleオートラジオグラフィー標準(RPN510 Amersham−Pharmacia, Eu)にしたがって変換し、nCi/mg単位で示した。
実験結果
図10に示すように、ラット腎臓の虚血−再潅流傷害の間、アポトーシスが、皮髄領域と外髄(OM)の遠位細管において観察され、一方、重篤な壊死が、(OM)の近位直細管において見られた。皮質では障害はあまり観察されなかった。反対側の偽腎臓では、障害細管は観察されなかった。オートラジオグラフィー画像解析により、アポトーシス細胞死/壊死性細胞死の領域内での3H−NST205による傷害の標的化の特異性が示され、形態素解析によって確認した。対照的に、反対側の腎臓内への3H−NST205取込みは示されず、傷害腎臓内のみへの3H−NST205取込みの特異性が強調される。
【0157】
(実施例12)
放射線造影剤誘導性急性遠位腎尿細管壊死(ATN)のラットモデルにおける3H NST205によるオートラジオグラフィー
実験手順
選択的髄質低酸素細管障害を有する腎障害を、インドメタシン(Sigma Chemical Co.)10mg/kg(i.v.)、Nωニトロ−L−アルギニンメチルエステル(L−NAME、Sigma Chemical Co.)10mg/kg(i.v.)、および放射線造影剤であるイオタラム酸ナトリウム80%(Angio−Conray, Mallinckrodt Inc)6mL/kg(i.a.)の併用投与によって誘導した。別のラットにビヒクルを注射し、対照とした。損傷を与えた24時間後、対照動物と実験動物の両方に、100μCiの3H−NST205を静脈内注射し、1時間後、両方の腎臓を切除し、液体窒素中で凍結した。
実験結果
図11からわかるように、腎臓の形態の解析により、広範囲の程度の髄質(すなわち、外髄の外側および内側細片)障害が明らかになった。3H−NST205のホーミングは、主に、外髄内に限定された。形態の損傷のない特定の領域では、3H−NST205取込みは観察されなかった。
【0158】
(実施例13)
3H−200による実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)のイメージング;オートラジオグラフィー
実験手順
EAEを、C3H.SW/C57/bl雌マウス(6〜8週齢)の免疫処置により誘導した。動物は、ラットミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)のアミノ酸35〜55を包含するペプチドで免疫処置した。このペプチドは、固相手法を用いてペプチド合成装置にて合成した。マウスの脇腹の一部位に、75μlのMOGペプチド含有完全フロイントアジュバント(CFA)および200μgのヒト結核菌(mycobacterium tuberculosis)を含むエマルジョン200μlを皮下注射した。同一のブースター(buster)を、1週間後に、他方の脇腹の一部位に注射した。脳炎誘発性抗原刺激の後、マウスを毎日観察し、EAEの臨床的兆候をスコアリングした(0=臨床的症状なし〜5=四肢の完全麻痺)。疾患の選択した病期において(症状発現前または末期)、1時間のインキュベーションのために、動物に、放射標識したNST200(100μCi/動物)を静脈内注射し、その後、動物を致死させた。10μm凍結切片を調製し、風乾し、トリチウム感受性フィルムに露光した。フィルムを7〜9週間の期間露光し、現像し、デンシトメトリー測定によって解析した。3H−DDC密度(光学密度/mm2)の測定を、虚血中心対反対側の半球とでのシグナルにおいて行い、TINAソフトウェアによって評価した。
実験結果
多発性硬化症疾患のEAE動物モデルは、中枢神経系の白質を標的とする慢性障害性(disabling)自己免疫神経障害を擬態した。実験動物における白質の重篤な障害は、図12に示すオートラジオグラフィーにおいて観察された。脳レベルでは、冠状部切片は、対照の非免疫処置マウスでは明るい染色であるのと比べ、脳の底部の錐体路の暗い染色、および脳全体で過剰の放射能−リガンド蓄積を示した。また、放射性同位元素標識した3H−200の印象的な蓄積が、脊髄レベルでも観察された。脊髄の縦断面は、対照未処置動物の脊髄と比べ、免疫処置マウスの白質の側方路(lateral tract)の高レベルの標識化を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化1】
に示す構造で表される化合物(式(II)に示す構造で表される化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびに前記塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、RはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、またはC16の直鎖または分枝鎖アルキルを表し、nおよびmは、各々独立して、0、1、2、3または4の整数を表し、Mは非存在であり、かつDは放射性同位体に置換される部分であり、前記部分はヒドロキシル基、ニトロ基、またはハロゲン原子から選択される)。
【請求項2】
Rが−CH3または−CH2CH3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが−CH3である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
放射性同位体が18Fである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物の各カルボキシル基が保護基によって保護されている請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
保護基がtert−ブチルまたはエチルを含む請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
放射性同位体に置換される部分がメシラートを含む請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式(V):
【化2】
(式中、JはOHを表し、rは4、5、6、7、または8の整数を表す)に示す構造で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式(5):
【化3】
に示す構造で表される化合物。
【請求項10】
式(V):
【化4】
(式中、JはOHを表し、rは4、5、6、7、または8の整数を表す)に示す構造で表される化合物を18Fで放射標識する方法であって、式(V)で表される化合物に放射性同位体18Fを結合させる工程からなる方法。
【請求項11】
式(V)で表される化合物にメシラート部分を結合させる工程、およびそのメシラート部分を放射性同位体18Fで置換する工程からなる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物の各カルボキシル基を保護基で保護する工程を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
保護基はtert−ブチルまたはエチルを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記部分を放射性同位体18Fで置換する工程の後に保護基を除去する工程を含む請求項12に記載の方法。
【請求項1】
式(II):
【化1】
に示す構造で表される化合物(式(II)に示す構造で表される化合物の薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物および金属キレートならびに前記塩の溶媒和物および水和物を含み、式中、RはC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、またはC16の直鎖または分枝鎖アルキルを表し、nおよびmは、各々独立して、0、1、2、3または4の整数を表し、Mは非存在であり、かつDは放射性同位体に置換される部分であり、前記部分はヒドロキシル基、ニトロ基、またはハロゲン原子から選択される)。
【請求項2】
Rが−CH3または−CH2CH3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが−CH3である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
放射性同位体が18Fである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物の各カルボキシル基が保護基によって保護されている請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
保護基がtert−ブチルまたはエチルを含む請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
放射性同位体に置換される部分がメシラートを含む請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式(V):
【化2】
(式中、JはOHを表し、rは4、5、6、7、または8の整数を表す)に示す構造で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式(5):
【化3】
に示す構造で表される化合物。
【請求項10】
式(V):
【化4】
(式中、JはOHを表し、rは4、5、6、7、または8の整数を表す)に示す構造で表される化合物を18Fで放射標識する方法であって、式(V)で表される化合物に放射性同位体18Fを結合させる工程からなる方法。
【請求項11】
式(V)で表される化合物にメシラート部分を結合させる工程、およびそのメシラート部分を放射性同位体18Fで置換する工程からなる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物の各カルボキシル基を保護基で保護する工程を含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
保護基はtert−ブチルまたはエチルを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記部分を放射性同位体18Fで置換する工程の後に保護基を除去する工程を含む請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−140424(P2012−140424A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279984(P2011−279984)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【分割の表示】特願2006−548583(P2006−548583)の分割
【原出願日】平成17年1月16日(2005.1.16)
【出願人】(505467867)アポセンス リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】APOSENSE LTD.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【分割の表示】特願2006−548583(P2006−548583)の分割
【原出願日】平成17年1月16日(2005.1.16)
【出願人】(505467867)アポセンス リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】APOSENSE LTD.
【Fターム(参考)】
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