説明

摺動部材

【課題】Crめっき摺動部材の摩擦係数を下げる。
【解決手段】摺動部材のCrめっき層の、X線回折分析により特定される(222)面が表面側を向いた(222)配向結晶1の存在率を60%以上80%以下とし、該Crめっき層表面に形成されるCr酸化皮膜3の厚さを薄くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手材と相対的に摺動する面にCrめっき層が形成された摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
相手材と相対的に摺動する面にCrめっき層が形成された摺動部材としては、例えばロータリーピストンエンジンのアペックスシールが摺動するロータハウジングが知られ、或いは自身が相手材に対して摺動する鉄系摺動部材にもCrめっき層を形成することが一般に行なわれている。このようなCrめっき(硬質Crめっき)層は、例えばHv1000程度と硬度が高いことから摩耗が少なく、また、表面がCr酸化皮膜で保護され焼き付きを生じ難いという特徴がある。
【0003】
摺動部材には、上述の耐摩耗性の他、低摩擦特性が要求されるが、Feめっきに関しては結晶配向性の観点から、低摩擦特性を得るという提案が知られている(特許文献1参照)。それは、(hhh)面が摺動面側を向いた(hhh)配向結晶が多くなるように、摺動面における六稜金属結晶の面積率を60%以上にするというものである。
【特許文献1】特開平6−316785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、摺動面にCrめっき層を形成した摺動部材に関して、結晶配向性の観点から特性の向上を図る研究は未だ充分になされていない。すなわち、Crめっきは上述の如き特徴を有するものの、Crめっき層表面に生成するCr酸化皮膜は例えば鉄系の相手材(Hv580〜600程度)に対して高硬度(Hv1100〜1400)であり、しかも、Crめっき層本体に強固に結合していることから、このCr酸化皮膜が相手材に対してアブレッシブに(研磨するように)作用し、摩擦係数が高くなっている。
【0005】
そこで、本発明は、Crめっき摺動部材を結晶配向性の観点から改良して耐摩耗性と低摩擦性とを同時に得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、Crめっき層における(222)配向結晶の割合を多くして上記課題を解決した。
【0007】
すなわち、本発明は、相手材と相対的に摺動する面にCrめっき層が形成された摺動部材であって、
上記Crめっき層は、X線回折分析により特定される(222)面が表面側を向いた(222)配向結晶の、該Crめっき層表面での存在率が60%以上80%以下であることを特徴とする。
【0008】
上記(222)面は、Cr結晶(BCC)の原子が最密充填された結晶面であり、結晶格子間隔が最も狭い。従って、相手材との相対的な摺動によって外力が作用したときに生ずる結晶の歪みが大きくなる。このため、(222)配向結晶の存在率が高い当該Crめっき層は、元来高い圧縮残留応力を有するところ、外力によってその内部圧縮応力の高まる度合いが大きい。
【0009】
そうして、Cr結晶の酸化は、酸素がCrめっき層表面から内部に拡散することによって生じ、その結果として、このCrめっき層表面にCr酸化皮膜が形成される。ところが、上述の如く圧縮応力が高いCrめっき層においては、結晶格子間隔が狭められていることから、酸素の拡散を生じ難くなっている。このため、通常の使用環境で生ずるCr酸化皮膜は薄くなり、該皮膜の表面から内部に向かう内部応力の勾配が急になる。
【0010】
その結果、相手材との相対的な摺動時に、上記Cr酸化皮膜が剥離し易くなり、或いはCr酸化皮膜内部での劈開を生じて部分的に欠けやすくなり、摩擦力、換言すれば摺動抵抗が小さくなる。すなわち、摺動時にCr酸化皮膜と相手材とが部分的に凝着し、その凝着部分をCr酸化皮膜或いはCrめっき層から剥がすために必要なせん断力が摩擦力となるところ、上述の如くCr酸化皮膜が薄く、剥離ないしは内部劈開を生じ易いことから、固体潤滑剤的な作用を生じて摩擦力が小さくなるものである。
【0011】
なお、(222)面が表面側を向いた(222)配向結晶の、当該Crめっき層表面での存在率が80%を超えると、さらに応力が高まることにより、酸化の進行を抑制するように作用する。その結果、摺動面に形成されるCr酸化皮膜の厚さが過度に薄くなり、相手材との摺動に伴い、これら酸化皮膜の欠落が増加する。これに伴い、下地のCrめっき層本体の露出が顕著となり、金属同士の凝着を引き起こすため、好ましくない。
【0012】
上述の薄く剥離ないしは内部劈開を生じ易いCr酸化皮膜が形成されるようにするためには、上記Crめっき層の圧縮残留応力を20MPa以上、さらには40MPa以上とすることが好ましい。
【0013】
また、上記Cr酸化皮膜の厚さは上記(222)配向結晶の平均結晶子径よりも小さくなっていることが好ましい。すなわち、Cr酸化皮膜の厚さが(222)配向結晶子のサイズと略同程度か、それよりも厚くなってしまっている場合、それは、当該(222)配向結晶子全体が酸化されていることに他ならない。そうなると、摺動時に該結晶子が脱落し易くなって、過剰摩耗の原因になってしまう。
【0014】
但し、Cr酸化皮膜の厚さが当該結晶子径が比して薄くなり過ぎているケースも好ましいものではない。このケースは、当該結晶子径が過度に大きいときに生ずるが、それは、Cr酸化皮膜が一つの結晶子に対して広い面積で結合した状態になっていることを意味し、該Cr酸化皮膜がCrめっき層から剥離し難くなる、つまり、摩擦係数が大きくなる。従って、Cr酸化皮膜は、上記結晶子径の例えば1/5以上1/1未満の厚さになることが好ましい。
【0015】
また、上記Crめっき層は、Crの多結晶体で形成する他、Crを主成分とするCrMo合金めっきで形成するようにしてもよい。Moの添加によりめっき皮膜の結晶の微細化、強度の向上、耐熱性の向上が図れ、潤滑性の向上、低摩擦化(摩擦係数の低減)、焼き付き防止に有利になる。Mo共析量は0.3%以上1.0%以下が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、摺動面にCrめっき層が形成された摺動部材において、そのCrめっき層表面における(222)配向結晶の存在率を60%以上80%以下としたから、該Crめっき層の圧縮残留応力を高めてCr酸化皮膜の厚さを薄くし、該Cr酸化皮膜の剥離性ないしは劈開性を高めることができ、耐摩耗性と同時に低摩擦特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明に係る摺動部材のCrめっき層を模式的に示すものであり、同図において、1はX線回折分析により特定される(222)面(ミラー指数(222)の結晶面)が表面側を向いた(222)配向Cr結晶、2は結晶配向が異なるその他のCr結晶である。このCrめっき層の表面に、(222)配向Cr結晶1及び他のCr結晶2の部位に生成した酸化物1a,2aよりなるCr酸化皮膜3が形成されている。この摺動部材は、Crめっき層表面における(222)配向Cr結晶1の存在率が60%以上80%以下と高いことを特徴とし、そのため、Cr酸化皮膜3の厚さが(222)配向Cr結晶1の平均結晶子径よりも小さく、つまり薄くなっている。
【0019】
このような(222)配向結晶の存在率が高いCrめっき層は、めっき浴及びめっき条件の調整により形成することができる。
【0020】
<Crめっき層の形成方法>
Cr成分、硫酸及び触媒としての有機スルフォン酸を含み、さらに必要に応じてMo成分を含むメッキ浴に鋼製ワークを入れて所定温度に予熱し、数分間の逆電処理によってワーク表面を洗浄した後、数分間のストライクメッキ処理(正電処理)及び所定時間の本メッキ処理(正電処理)を順に行なうことによって、Crめっき層を形成する。
【0021】
Cr成分としては、無水クロム酸CrO3が好ましく、必要に応じてCr23を添加する。Mo成分としては、モリブデン酸ナトリウムやモリブデン酸アンモニウムを採用することができる。有機スルフォン酸としては、HSO3Rで表され、Rが、メチル基、エチル基等の炭素数10以下の脂肪族炭化水素基、パラ位置にメチル基を有するトルエン、不飽和炭化水素基を有するスチレンなど1つの芳香環に非環式炭化水素が結合した芳香族炭化水素基であることが好ましい。Rは他の芳香族炭化水素基であってもよいし、スルフォン酸基(HSO3)は複数個あってもよい。具体的にはメタンスルフォン酸、メタン時スルフォン酸等が挙げられる。
【0022】
メッキ浴は、例えば、無水クロム酸を240g/L以上280g/L以下、硫酸イオン量を2.5g/L以上3.3g/L以下、有機スルフォン酸量を10ml/L以上35ml/L以下、モリブデン酸ナトリウム量を50g/L以上65g/L以下とすればよい。メッキ浴温度は例えば50℃以上60℃以下に調整する。
【0023】
洗浄用逆電処理の電流密度は、50A/dm2以上60A/dm2以下、ストライクメッキ処理の電流密度は40A/dm2以上55A/dm2以下、本メッキ処理の電流密度は30A/dm2以上40A/dm2以下とすればよい。仕上げ研削加工はホーニング等により行ない、めっき層表面が例えばRa2.0μm以下となるようにすることが好ましい。
【0024】
(222)配向結晶の存在率は上記有機スルフォン酸の添加量によって調整することができる。
【0025】
すなわち、一般には有機スルフォン酸を使用せずに、硫酸によってめっき浴のCrをワーク表面に析出させているが、有機スルフォン酸をめっき浴に添加すると、(222)配向結晶の存在率が高くなる。これは、有機スルフォン酸は極性が強いことから、ワーク表面に吸着し易く、そのことによって、Crの析出ポイントが従来とは異なるものになり、Crめっきの結晶配向性が(222)面を増加させるように働くと考えられる。有機スルフォン酸の濃度が高くなるほど、(222)配向結晶の割合は増加する。
【0026】
<実施例及び比較例>
メッキ浴における触媒(有機スルフォン酸)の添加量を変化させて鋼製ワークの表面にCrMoメッキ皮膜を形成した。メッキ浴組成は表1の通りであり、触媒添加量を0ml/Lから30ml/Lで変化させた。触媒、すなわち、有機スルフォン酸としては、アトテック社製のHeef25−Rを用いた。メッキ条件は表2に示す通りである。表2において、「ストライク」はメッキ皮膜のワーク表面への密着力を高めるための短時間メッキであり、「A/dm2 」は電流密度、時間は処理時間を表している。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
−(222)面の存在率−
上記触媒添加量が異なる各Crめっき層の、表面側を向いた各結晶面の存在率をX線回折分析によって測定した。測定は、供試材のCrめっき面をホーニング加工した後に理学電機株式会社製X線回折装置RU−200を用いて表3に示す条件で行なった。結果を表4に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
表4によれば、触媒として有機スルフォン酸を添加した実施例1〜3では、同触媒を添加していない比較例よりも、(222)面の存在率が高くなり(60%以上)、また、触媒添加量が多くなるに従って(222)面の存在率が高くなっている。
【0033】
−顕微鏡写真−
図2は実施例3(触媒添加量30mL)のCrめっき層(ホーニング加工後)の断面を電解放射型透過電子顕微鏡(株式会社日立製作所製HF−2000)を用いて、加速電圧200kVの条件にて撮影した写真であり、図3は比較例の同写真である。実施例3(図2)では、Crめっき層表面に形成されたCr酸化皮膜は薄く、表面が平滑になっている。そのCr酸化皮膜厚さは、6.6nmであり、層数は79層である。これに対して、比較例(図3)では、Cr酸化皮膜は厚く、表面が凸凹になっている。そのCr酸化皮膜厚さは52.9nmであり、層数は634層である。
【0034】
なお、上記層数は以下のようにして求めた。すなわち、まず結晶子径を後述のシェラーの式により求めるとともに、透過電子顕微鏡で酸化皮膜の厚みを観察する。次に、表3の条件にてX線回折データの観測された(222)面の回折角度から、ブラッグの式(2dsinθ=nλ,ここで、d;格子面間隔,θ;回折角度,λ;Mo-Kαの波長,n=1)により、結晶格子面間隔0.0834nmを求めた。そして、酸化皮膜の厚みをこの結晶格子面間隔で除した数値を層数とした。
【0035】
このように実施例のCr酸化皮膜厚さが薄くなっているのは、実施例ではCrめっき層の圧縮残留応力が高くなり、その結果、表面から内部への酸素の拡散を生じ難くなったためである。
【0036】
すなわち、実施例の場合、有機スルフォン酸の添加により、表4に示すようにCr結晶(BCC)の原子が最密充填され結晶格子間隔が狭い(222)面の存在率が高く、圧縮残留応力が高くなっている。また、ホーニング加工によってCrめっき層に対してその表面に沿う方向の外力が加わると、Cr結晶格子に歪みを生ずるが、(222)面は結晶格子間隔が狭いことから、その格子が変形されて生ずる結晶の歪みが大きくなり、そのことによって、圧縮残留応力がさらに高まる。そうして、Cr酸化皮膜は、酸素がCrめっき層表面から内部に拡散することによって生ずるが、上述の如く圧縮応力が高い実施例のCrめっき層においては、結晶格子間隔が狭められて酸素の拡散を生じ難くなっているから、Cr酸化皮膜の厚さが薄くなったものである。
【0037】
実施例3及び比較例の(222)配向の結晶子径は15nm程度であり、実施例3の場合、Cr酸化皮膜は結晶子径の半分以下の厚さになっている。これに対して、比較例ではCr酸化皮膜の厚さは当該結晶子径の数倍の厚さになっている。
【0038】
−(222)面存在率と内部応力と摩擦係数との関係−
上記実施例1〜3及び比較例各々について、ホーニング加工後のCrめっき層の内部応力をX線応力測定法によって測定した。その測定は、理学電機株式会社製ストレインフレックスPSPC/MSF−2Mを用いて表5に示す条件で行なった。
【0039】
【表5】

【0040】
また、上記実施例1〜3及び比較例各々について、ホーニング加工後、図4に示す試験器を用いて摺動テストを行ない、摩擦係数を測定した。同図において、21は円板状の供試材、22はチル鋳鉄製摺動片23を固定した円板状の回転支持台である。供試材21の下面に周縁近傍を周回するようにCrめっき層24が環状に設けられている。供試材21の中心部には該供試材21を貫通するエア供給孔25が形成されている。回転支持台22には3個の摺動片23が周方向に120度の角度間隔をおいて固定され、各摺動片23の上端が支持台22より上方へ突出している。この3個の摺動片23に供試材21が載せられている。摩擦試験は、エア供給孔25から2.5kg/cm2 の圧力でエアを供給しながら無潤滑状態で行なった。荷重は50N、摺動片23の周速は0.075m/sとした。
【0041】
以上の測定結果を表6に示す。表6中の結晶子径は上記X線回折装置によって測定し、シェラーの式(結晶子径D(hkl)=0.9λ/(β1/2・cosθ),ここで、hklはミラー指数、λは特性X線の波長(オングストローム)、β1/2は(hkl)面の半価幅(ラジアン)、θはX線反射角度である。)により求めた。図5は実施例1〜3及び比較例各々の内部応力測定結果に基づいて、(222)面の存在率と内部応力との関係がわかるようにグラフ化したものである。図6は実施例1〜3及び比較例各々の内部応力及び摩擦係数の測定結果に基づいて、該内部応力と摩擦係数との関係をグラフ化したものである。
【0042】
【表6】

【0043】
図5及び図6では、応力[MPa]軸のプラス側は引張応力、マイナス側が圧縮応力となる。図5から、実施例ではCrめっき層が圧縮残留応力を有すること、(222)面の存在率が高くなるに従ってその圧縮残留応力が高くなること、(222)面の存在率を60%以上にすると、圧縮残留応力が20MPa以上になることがわかる。図6から、圧縮在留応力が高くなるに従って摩擦係数が小さくなること、摩擦係数を小さくするために圧縮残留応力を20MPa以上にすることが好ましいことがわかる。
【0044】
図7は上記触媒添加量零の比較例と触媒添加量30ml/Lの実施例3とについて、上記摺動テスト後にCrめっき層表面のCr2pについてXPS(X線光電子分光)分析を行なった結果を示す。同図によれば、触媒添加量30ml/Lの本発明例では金属Crに起因する574.4eVにおいて触媒添加量零の従来例よりも強度が大きくなっており、Cr酸化皮膜が薄くなっていること、或いはCrめっき層本体が露出していること、すなわち、Cr酸化皮膜が剥離し易くなっていることがわかる。
【0045】
図7の結果は、図2に示すように実施例のCr酸化皮膜が薄いこと、並びに図6に示す実施例の摩擦係数が小さいことと符合する。すなわち、実施例の場合、(222)面の存在率が高くなり、その結果、圧縮残留応力が高くなってCr酸化皮膜が薄くなっているものであり、そのことが、上記図2の顕微鏡写真及び図7のXPSスペクトルに現れている。そして、実施例の場合、Cr酸化皮膜が薄くなっていることから、該皮膜表面と内部との応力差が大きくなっており、これが原因となって、該皮膜が相手材との摺動によって剥離ないしは劈開を生じ易くなり、図6に示すように摩擦係数が小さくなっているものである。
【0046】
また、上記実施例の場合、(222)配向の結晶子径がCr酸化皮膜厚さの5倍以下の大きさになっているから、Cr酸化皮膜の剥離に要する力が大きくならず、そのことも、上記摩擦係数の低減に有利に働いているものであり、また、該結晶子径がCr酸化皮膜厚さの2倍以上になっているから、摺動時に酸化皮膜と共に当該(222)配向結晶粒子自体が脱落することが防止され、過剰摩耗となることが避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る摺動部材のCrめっき層表面部の構造を模式的に示す図である。
【図2】実施例に係るCrめっき層表面部の顕微鏡写真である。
【図3】比較例に係るCrめっき層表面部の顕微鏡写真である。
【図4】摩擦特性試験のための試験器を示す一部断面にした正面図である。
【図5】Crめっき層の(222)面存在率と内部応力との関係を示すグラフ図である。
【図6】Crめっき層の内部応力と摩擦係数との関係を示すグラフ図である。
【図7】実施例及び比較例の摺動テスト後のCr2pのXPSスペクトルを示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0048】
1 (222)配向のCr結晶
1a (222)配向のCr結晶部位に生成した酸化物
2 他のCr結晶
2a 他のCr結晶部位に生成した酸化物
3 Cr酸化皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手材と相対的に摺動する面にCrめっき層が形成された摺動部材であって、
上記Crめっき層は、X線回折分析により特定される(222)面が表面側を向いた(222)配向結晶の、該Crめっき層表面での存在率が60%以上80%以下であることを特徴とする摺動部材。
【請求項2】
請求項1において、
上記Crめっき層は、20MPa以上の圧縮残留応力を有することを特徴とする摺動部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記Crめっき層表面にCr酸化皮膜が形成されていることを特徴とする摺動部材。
【請求項4】
請求項3において、
上記Cr酸化皮膜の厚さは、上記(222)配向結晶の平均結晶子径よりも小さいことを特徴とする摺動部材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記Crめっき層は、Crを主成分とするCrMo合金めっきによって形成されていることを特徴とする摺動部材。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−291423(P2007−291423A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118118(P2006−118118)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】