説明

撒き餌籠

【課題】釣りで使用する撒き餌籠において、目標の水深に到達する前に撒き餌が流出してしまう不具合を防ぎ、コンパクトで撒き餌収納性と操作性に優れた撒き餌籠を提供する。
【解決手段】外筒流出孔と投入口を備えた筒状収納ケースと、この内側で上下方向にスライド可能で内筒流出孔と支持手段と錘係着手段を備えた筒状シャッターと、両者の位置を制限するガイド手段と調節手段で構成され、海水の抵抗を利用した両者の相対的上下動により、流出孔の位置で形成する貫通孔を開閉させることを特徴とする撒き餌籠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りに使用される撒き餌籠の構造に関する。より具体的には、本発明は、海水中で流出孔を開閉して充填された撒き餌の流出量を調節する撒き餌籠の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コマセと呼ばれる撒き餌をコマセビシとも呼ばれる撒き餌籠に充填し、海水中で撒き餌を散布して集魚を期待する魚釣りがある。この撒き餌籠を利用する魚釣りにおいて、撒き餌籠を海中に投下してから海底や目標の深さに到達するまでに撒き餌籠に充填した撒き餌が流出してしまい、目的が達成されないという課題がある。
こうした課題を改善するための従来技術として、例えば、複数の流出孔を設けた円筒状の外筒と、この内側で上下にスライド可能で前記外筒流出孔に対応した位置に対を成す内筒流出孔を設けた内筒と、この外筒又は内筒の上端を覆う上蓋と、外筒又は内筒の下端を覆う下蓋で閉空間を形成して撒き餌を入れるケースと成し、外筒と内筒を相対的に上下にスライドさせてそれぞれの流出孔と遮断壁の位置関係で形成される貫通孔を開閉する方法がある。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)こうした従来技術として、これまでに以下に示す技術が開示されている。
【0003】
特許文献1のコマセビシは、コマセ挿入口とコマセ排出孔が形成され下方の錘部に支持される内ケースと、挿入口を開閉する蓋と、道糸支持部と、排出孔を開閉するシャッター孔を有し、内ケースを吸着保持するマグネットを具えた外ケースとで構成され、コマセビシを水面下に没する際に排出孔を閉塞し、道糸によるコマセビシの引き上げによりマグネットの吸着を解除し外ケースに対し内ケースを下方にスライドさせコマセ排出孔を拡開してコマセを排出する。また、錘部に対して内ケースを上下自在に支持する支持手段を有し、内ケースに対する外ケースのスライド量を調節して、排出孔の大きさを調節することができるとしている。
【0004】
特許文献2の釣用餌函は、外筒に円孔を有し上端に道糸支持部と鈎片による内ケース掛合手段を備えた外ケースと、内筒に円孔を有し上端に前記鈎片による掛合手段と下端に錘を設けた下蓋で構成され、水面下に没する際に排出孔を閉塞し、海底に当接して内筒が押し上げられ前記掛合手段が解除され、外ケースに対して内ケースを下方にスライドさせ円孔を一致させ餌を放出させる。また、内筒の内側に設けた円孔を備えた円筒状の調節筒を回動することにより開口を調節するとしている。
【0005】
特許文献3の釣り集魚用寄せえさ散布器は、筒側面上部に水取り入れ孔と下部に散布孔を有し、道糸支持部を備えた上蓋と下端に錘支持部を備えた受け皿で成る収納器と、外筒に散布孔と遮断壁を備え上部に水の抵抗を受けるつば(ラッパ形など)を有し下部に収納器の受け皿を備えた外体とで構成され、この散布器を水面下に没する際には外体が上方にスライドして散布孔を閉塞し、道糸による散布器の引き上げにより外体を下方にスライドさせ散布孔を拡開しばねの作用により拡開状態を保持してコマセを排出するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−83544号明細書
【特許文献2】公開実用昭和54−132694号明細書
【特許文献3】公開実用昭和56−175082号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの従来技術には、以下のような課題が存在する。
特許文献1の技術においては、内ケースの重力をマグネット吸引力で保持し道糸の引き上げにより吸着を解除することとしているが、収納する撒き餌の重量の変化など吸引すべき負荷の変動に対する吸着と解除の性能保証に難しさがある。またマグネット間に異物が入ると吸着力が低下し吸着不可となるが、構造上、吸着面の清掃は容易ではない。また、外ケースと内ケース上部のマグネット部の空間、及び錘支持部における内ケースと錘部の空間は、撒き餌の収納に寄与せずデッドスペースとなり、撒き餌の収納量において非効率である。
【0008】
特許文献2の技術においては、本餌函が目的の海底に下蓋の下面が当接したときの反動で鈎片が外れ内筒と調節筒が下がり各円孔が一致して餌が放出されるので、海底の上層の水深で餌を放出する目的の用途には適応できない。また放出量の調節は3つ目の円筒状の調節筒を必要とし構造的に複雑である。
【0009】
特許文献3の技術においては、本散布器が海水中に沈下する際、上方への水抵抗を受ける外ケースに抗して錘等の下方への重力により内ケースが下方にスライドする必要がある。この目的のため外筒上部に設けるつばを外側に拡開したラッパ形状などとした場合は、水抵抗を受けるという機能性に優れてはいるが、内ケースの餌の収納に係わらないつば部分の容量が大きくコンパクト性に欠ける。同目的でつばを逆に内側に閉じ形状とした場合は内ケースとの干渉を避けるために上方に配置せざるを得なく、その空間がデッドスペースとなる欠点がある。内ケースも下部中心に外ケースと同方向の水抵抗を受けるが、これは内ケースが錘等の重力による下方への移行に対して逆効果で本散布器の欠点である。撒き餌を散布するときは、道糸支持部を上方に煽って外筒上部のつばによる水抵抗を受ける外ケースに抗して内ケースを上方にスライドさせるが、内ケースも上部中心に外ケースと同方向の水抵抗を受ける逆効果の欠点があり、外筒下部については、内側に閉じた形状は沈下する際の水抵抗を受ける機能として活用できるが、内ケースとの干渉を防ぐために内ケースの下方に配置せざるを得なくこの部分に空間ができてデッドスペースとなる欠点がある。
本発明は、上述の従来技術の課題を解決して、海水中で流出孔を開閉して充填された撒き餌の流出量を調節でき、コンパクトで撒き餌収納性と操作性に優れた撒き餌籠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、本発明に係る撒き餌籠によって達成される。すなわち、複数の外筒流出孔を備えた筒状の外筒と、該外筒の上端を上蓋、下端を下蓋で覆って閉空間を形成し、且つ撒き餌を投入する開口部を開閉する撒き餌投入手段を備えた収納ケースと、前記外筒の内側で上下方向にスライド可能で前記外筒流出孔の位置に対応した少なくとも一以上の内筒流出孔を備えた筒状の内筒と、該内筒に設けた本装置を支持する支持手段と、錘を該内筒に係着させる錘係着手段で成るシャッターと、前記収納ケースと該シャッターを位置合わせするガイド手段とで構成され、該支持手段を支持することにより、前記収納ケースと該シャッターとを相対的に上下方向に移動させ、前記外筒流出孔と内筒流出孔の位置で形成する貫通孔を開閉させることを特徴とする撒き餌籠とする。
【0011】
また、前記ガイド手段が、前記外筒に設けた上下軸方向の一又は複数の案内溝に対応して、前記内筒に外側に突出して設けた案内具を挿通してスライドさせ、前記シャッターが前記収納ケースに対する上下移動範囲の下限位置にあるとき、ほぼ全ての前記外筒流出孔は前記内筒の壁部で閉塞され、該上下移動範囲の上限位置で少なくとも一以上の前記の外筒流出孔と内筒流出穴の位置が一致するように構成されたことを特徴とする撒き餌籠とする。
【0012】
また、前記支持手段が、前記内筒に直径方向に架設部材を架設し、該内筒中心軸上の該架設部材上端縁に道糸に繋げる道糸支持部を設けて成ることを特徴とする撒き餌籠とする。
【0013】
また、前記錘係着手段が、前記内筒に直径方向に設けた前記架設部材中心軸部に錘を係着し、且つ該錘の重心が前記道糸支持部より下方に配して成ることを特徴とする撒き餌籠とする。
また、前記錘係着手段が、前記道糸支持部と下方に距離を有した該内筒中心軸上の前記架設部材下端縁に錘を繋げる錘係止部を設けて成ることを特徴とする撒き餌籠とする。
また、前記錘係着手段が、前記内筒内側下部に略環状の錘を係着し、且つ該錘の重心が前記道糸支持部より下方に配して成ることを特徴とする撒き餌籠とする。
【0014】
また、前記ガイド手段が、外筒外側に周方向に帯状で且つテーパー部を備えた調節手段を設けて成り、前記外筒流出孔と内筒流出孔の位置で形成する貫通孔の大きさを調整することを特徴とする撒き餌籠とする。
また、前記ガイド手段が、前記内筒に設けた軸方向の一又は一対の案内溝と対応する前記外筒に設けた周方向の調節溝に案内具を挿通し、前記収納ケースと前記シャッターの周方向の位置調節を可能としたことを特徴とする撒き餌籠とする。
また、前記撒き餌投入手段が、前記上蓋又は下蓋に設けられたことを特徴とする撒き餌籠とする。
【発明の効果】
【0015】
本撒き餌籠を使用する際は、本撒き餌籠を水面に投下し道糸を緩めて海中に沈下させ、このとき収納ケースの下蓋と外筒が海水の抵抗により上方に力を受け、反対にシャッターは錘の重力で下方に力が作用するので、相対的には収納ケースは上方にシャッターは下方にスライドする。従って外筒に対して内筒は下方にスライドし、外筒流出孔は内筒流出孔の上部位置の壁部位により閉塞される。このため本撒き餌籠は、海中で降下中は外筒流出孔と内筒流出孔で形成される貫通孔が閉じて収納ケースに充填された撒き餌は流出しない。撒き餌を流出させようとするときは、海中の本撒き餌籠を道糸を煽って上方に上げる。このとき、収納ケースの上蓋と外筒が海水の抵抗により下方向に力を受けるので収納ケースに対してシャッターは上方にスライドし、外筒流出孔と内筒流出孔の位置が一致する方向に移行して貫通孔を開き、収納ケースに充填された撒き餌は外部に流出し散布される。
【0016】
この後も道糸を緩めると撒き餌籠は重力で沈下し前記同様に貫通孔は閉じ、再度煽ると貫通孔は開く。このように本発明の撒き餌の流出は、道糸による撒き餌籠の海水中での上下動の操作により生ずる水抵抗を利用して貫通孔の開閉を行う。従って、本撒き餌籠は、目標の水深まで餌の流出を防ぐことはもとより、使用者の意志で道糸を操作することにより海底に限らず好みの水深において自在に開閉できる。
【0017】
本発明の撒き餌籠は、装置全体を収納ケースとしたので構造空間の全てが撒き餌の収納空間であって、撒き餌の収納に係るデッドスペースが無くコンパクトで撒き餌収納の効率が高い。
本撒き餌籠は筒状の2重構造であることから、撒き餌投入手段は上蓋あるいは下蓋に設けた場合は、これによって複雑な構造を要せず操作性に優れる。
本撒き餌籠は収納ケースとシャッターとの位置合わせをするガイド手段と、流出量を調節する調節手段を設けている。ガイド手段は収納ケースに対するシャッターの位置を制限し、シャッターの移動範囲の上限位置で貫通孔は全開、下限位置で全閉として正確な流出孔の位置合わせができる。調節手段を手で操作することにより使用状況に適合した撒き餌流出量の調節ができ最適な利用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1の正面の断面図である。
【図2】図1の側面の断面図である。
【図3】本発明の実施例2の正面の断面図である。
【図4】本発明の実施例3の側面の断面図である。
【図5】本発明の実施例1の外観正面図である。
【図6】本発明の実施例4の外観正面図である。
【図7】本発明の実施例5の側面の断面図である。
【図8】本発明の実施例6の外観側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1〜図8は本発明の実施形態を示す。
図1〜図2に示す本発明の実施例1を用いて、本発明の基本的な形態を説明する。本発明の撒き餌籠は、円筒状の外筒11とその内側に上下方向にスライド可能に内筒12を配する。外筒11の上端の開口部は上蓋14により覆われ、下端は下蓋15にて覆われ、外筒11、上蓋14、下蓋15で閉空間と成し、撒き餌を収納する空間となる収納ケース7を構成する。内筒12は上端及び下端とも開口とする。
【0020】
外筒11には複数の外筒流出孔13aを設ける。外筒流出孔13aは、内筒12の壁部位によって塞がれたとき外筒流出孔13aに係る貫通孔は閉塞され、内筒12の壁の存在しない部位では開放となる。内筒12には、基本的構成として複数の外筒流出孔13aに対応して位置が一致し対を成す複数の内筒流出孔13bを設ける。外筒流出孔13aに対して内筒13bの位置が一致したとき、または外筒流出孔13aに対して内筒12に壁の部位が存在しないとき、両者で形成された貫通孔は開き、流出孔13bの上部位の壁13cが下降して外筒流出孔13aを塞いだとき貫通孔は閉鎖される。内筒流出孔13b以外の内筒の部位は外筒流出孔13aの遮断壁として利用されるので、内筒流出孔13bは外筒流出孔13aと同径の円孔が望ましい。
図1〜図2の実施例1においては、撒き餌の流出の効果を高める目的で最下位の流出孔の位置をできるだけ下位にするため、外筒の最下部の外筒流出孔13aに対応する内筒流出孔13b相当の部位は削除した構造としている。
【0021】
外筒流出孔13aと内筒流出孔13b又は壁13cの位置によって形成される貫通孔が充填された撒き餌の流出孔となる。本発明では、外筒11に対して内筒12が上方にスライドして移動範囲の上限位置において外筒流出孔13aと内筒流出孔13bの位置が一致し、両者で形成される貫通孔は全開状態となり、外筒に対して内筒が下方にスライドし下限位置で貫通孔が全閉になる構成である。外筒流出孔13aは内筒流出孔13bの上部位の壁13cで閉塞される。この全閉の下限位置から全開の上限位置までの移行の途中で外筒と内筒の相対的移動が制限されると、いわゆる半開きの状態を作ることができ、貫通孔の大きさを適宜決めることができる。図1〜図5はこの半開きの状態で描かれている。
【0022】
本撒き餌籠を使用する際、本撒き餌籠を水面に投下し道糸(図示しない)を緩めて海中に沈下させたとき、下蓋と外筒が海水の抵抗を受ける収納ケース7に対してシャッター8が下方に移動し、外筒流出孔13aと内筒流出孔13bで形成される貫通孔が閉じて充填された撒き餌は流出を妨げられる。内部の撒き餌を流出させようとするときは、道糸を煽って本撒き餌籠を上方に上げる。このとき、上蓋と外筒が海水の抵抗を受けて収納ケース7に対してシャッター8が上方にスライドし、外筒流出孔13aと内筒流出孔13bで形成される貫通孔が開き、ここから内部に収納した撒き餌が外部に流出される。
このとき、上蓋14には撒き餌籠に海水が流入するように水流入孔16を設けた。道糸を煽って撒き餌籠を上方に上げたとき水流入孔16から海水が入り込み内部に充填した撒き餌を押し出す効果がある。
図1に本撒き餌籠への海水の流入と撒き餌の流出を矢印で示している。
【0023】
シャッター8は、内筒12及び本装置を支持する支持手段と、本装置の内部に配した錘を係着し又は本装置の外部に配した錘を係止する錘係着手段で構成される。
ここで、本装置を支持する支持手段について説明する。図1、図2に示すように、架設部材21を内筒12の内側に直径方向に架設して設ける。架設部材21の中心軸上の上端縁に道糸支持部23を設け、道糸支持紐51を道糸支持部23に係止し上蓋の中心軸に設けた通し穴17を通して道糸(図示せず)に繋げる。道糸を支持することによって本装置は垂直に支持される。
つぎに、錘係着手段について説明する。図1、図2に、錘が本装置の外部に配された例の錘係着手段を示す。道糸支持部23の下方に適宜の距離をおいた架設部材21中心軸上の下端縁に錘係止部24を設ける。錘支持紐52を錘係止部24に係止し下蓋の中心軸に設けた通し穴18を通して錘(図示せず)に繋げる。
【0024】
図1、図2の実施例1に示すように、道糸支持部を支持して道糸と錘との間に張力が働いたとき道糸支持紐51、架設部材21、錘支持紐52が一直線上にあり、これによって架設部材21を固着したシャッターおよびスライドする収納ケースもこの直線方向に倣うことになる。この場合は、道糸支持紐51と錘支持紐52に作用する張力は架設部材21が受けるのみであり、内筒や外筒その他の構造には作用しない。道糸支持部23と錘係止部24を同一部所として間隔をおかない場合は、ここを支点として軸方向に対して傾斜し上蓋の通し孔17に道糸支持紐51が、下蓋の通し孔18に錘支持紐52が接触して、収納ケースとシャッターとの相対移動を妨げ、本撒き餌籠の機能を発揮できなくなる恐れがある。なお、架設部材21には内部の撒き餌の移動を妨げないように孔26を設けてもよい。
【0025】
つぎに、図3に実施例2として錘をシャッター内部に配する例を示す。架設部材21を内筒12の内側に直径方向に架設し、架設部材21の中心軸上の上端縁に道糸支持部23を設け、実施例1と同様に、道糸支持紐51を道糸支持部23に係止し上蓋の中心軸に設けた通し穴17を通して道糸(図示せず)に繋げる。
錘係着手段として、断面が略円形の柱状の錘50を架設部材21の中心軸上の下部に係着する。この例では収納する撒き餌の移動の抵抗を少なくする配慮をして、錘の形状を上部と下部を略円錐形とした円柱状としてあり、他にこの主旨での楕円体など他の形状であってもよい。錘の重心位置は内筒の中心軸上で前記道糸支持部23より距離をおいて下部にする。この例では、錘支持紐52と下蓋の通し孔18は不要である。その他は実施例1と同様である。これにより道糸と錘との間に張力が働いたとき道糸支持紐51、架設部材21、錘の重心が一直線上にあり、これによってシャッターおよび収納ケースもこの直線方向に倣う。収納ケース内に投入された撒き餌は中心軸上の錘の周囲を通って下蓋の収納ケース下部まで充填できる。
【0026】
図4に実施例3として錘をシャッター内部に配するもう一つの例を示す。架設部材21を内筒12の内側に直径方向に架設し、架設部材21の中心軸上の上端縁に道糸支持部23を設ける。錘係着手段として錘を内筒の内側下部に係着する。錘の形状は、内筒の中心軸に対し軸対象となるようにし、錘の重心位置は内筒の中心軸上となる形状とする。図4の例では錘49は収納する撒き餌の移動を阻害しないように略環状の形状とした。錘の重心位置は内筒の中心軸上で前記道糸支持部23より距離をおいて下部になるようにする。この例においても、錘支持紐52と下蓋の通し孔18は不要である。その他は実施例1と同様である。錘を内蔵する場合の道糸支持部の位置は、錘を含めた装置全体の重心位置より上方にするのが望ましい。これにより道糸と錘との間に張力が働いたとき道糸支持紐51、架設部材21、錘の重心が一直線上にあり、これによってシャッターおよび収納ケースもこの直線方向に倣う。収納ケース内に投入された撒き餌は環状錘の内側を通って下蓋の収納ケース下部まで充填できる。
【0027】
つぎに、ガイド手段について説明する。内筒外側に突出部を有する案内具22を内筒12に設ける。この案内具22は内筒の直径方向に一以上、望ましくは一対設ける。図1〜図5の実施例1〜3は、一対の案内具を内筒に直径方向に貫通して一体として設け、あわせて架設部材21に連結して設けた例である。案内具はこの例のように一対で一体である必然性はなく個別に設けてもよい。本撒き餌籠を分解・組み立てする際に内筒と外筒を分離するとき、内筒から外側への突出した案内具が障害となるので、案内具22は内筒及び又は架設部材に着脱自在とするのが望ましい。
【0028】
図5に示すように、案内具22は外筒に軸方向に対向して設けられた一対の案内溝25に沿って上下に動くことができ、これによって内筒は外筒の内側を上下にスライドすることができ、周方向の回動は制限される。案内具22が案内溝25の上端25uにあるとき、外筒流出孔13aと内筒流出孔13bの位置は一致し貫通孔は全開となり、下端25bにあるとき外筒流出孔13aは壁13cにより閉塞されて全閉となる。この例では、案内溝の上端と下端の範囲が外筒に対する内筒の移動範囲、すなわち収納ケースに対するシャッターの移動範囲として示したが、シャッターの移動を制限する当接部を収納ケースに設けるなど他の手段であってもよい。
【0029】
図5に示すように、外筒外側に周方向に帯状でかつテーパー部を備えた調節帯31を設ける。流出孔の貫通孔の全開に向けた案内溝25に沿った上方向への案内具22の動きを調節帯31のテーパー部で当接し受け止めて制限することができる。調節帯31は図で矢印を付したように外筒に沿って周方向に回動することができるので、案内具22の当接位置を手操作により調節することができる。案内具22がテーパー部の最深部31pの時に貫通孔は全開、最深部31pからテーパー側で受けるに従って案内具22の上方移行が制限されて貫通孔が小さくなり、テーパー部を越えると一定の半開となるようにしてある。調節帯31のテーパー部は一対の案内具22を受け止めるように中心軸に対向して一対として設けるのがよい。ストッパ32a、32bは調節帯31の軸方向の動きを制限するもので、その形状は、外筒の外側に帯状としても良く、図示の形状に限らない。
【0030】
図6に実施例4として、もう一つの他のガイド手段の例を示す。内筒12に中心軸に対向して設けた軸方向の一対の案内溝34に貫通して設けた案内具37は、外筒11に対向して周方向の一対の調節溝35をも貫通させる。案内具37と内筒12は案内溝35に沿って周方向に連動して動くので、案内具37を周方向に移動させると外筒流出孔13aと内筒流出孔13bの周方向の相対的な位置を変えることができる。案内具37が案内溝34の上端34uにあり、かつ、案内具37が調節溝35の一端35pにあるとき貫通孔は全開、案内具37が他端35c方向に移行するに従い外筒流通孔13aに対する内筒流通孔13bの位置が移行して貫通孔を小さくするように調節できる。案内具37の周方向の位置を適宜決めて外筒流出孔13aと内筒流出孔13bの貫通孔を調節した後、内筒は周方向の回動は制限された状態で上下に移動し、案内具37が案内溝34の下端34bで全閉となる。
この実施例4の場合は、外筒の最下部の外筒流出孔13aにおける調節溝35に係る流量調節は内筒流出孔13bが存在しないのでできない。
【0031】
つぎに、撒き餌投入手段について説明する。撒き餌投入手段として、上蓋14あるいは下蓋15を開閉する構造として撒き餌を投入する開口部とすることができる。両方とも開閉できる構造でもよい。図1に示す実施例1の例では、操作上、道糸支持側を上方に重力が働く錘係止側を下方にして手に持ったとき、撒き餌を充填するのに都合のよい上蓋14を撒き餌投入口とした。下蓋15はここでは固定した構造とした。
【0032】
図5は上蓋14を撒き餌投入口とし開放した状態で示されている。上蓋14は外筒11上部に蝶番41で回動自在に結合され、撒き餌投入口を閉鎖する時は、上蓋14に設けた留め金42を外筒に設けた留め金受け43に掛止される。このとき、上蓋14は蝶番41を中心に開閉するので、上蓋中央の通し孔17を通る道糸支持紐51は曲げ自在の素材とする。
【0033】
図7に下蓋部を撒き餌投入口とした実施例5を示す。この例では、略環状の錘を内筒の下部に係着させて錘を内蔵させ、撒き餌投入口を下蓋45としたので撒き餌投入を阻害しないように、架設部材21、道糸係止部23及び案内具22、調節体31等は上部に配置した。図7、図8は、シャッターは収納ケースの上限位置にあり、外筒流出孔と内筒流出孔の位置が一致している状態で示している。
【0034】
図8に胴部を撒き餌投入口とした実施例6を示す。この場合は撒き餌投入口として外筒と内筒の双方に相対する位置に開口部を設ける必要があり、内筒12に開口部54、外筒11に開口部55を設け、外筒に扉56を設けた。この例の場合も、撒き餌投入を阻害しないように、架設部材21、道糸係止部23及び案内具22、調節体31等は上部に配置した。
【符号の説明】
【0035】
1 実施例1
2 実施例2
3 実施例3
4 実施例4
5 実施例5
6 実施例6
7 収納ケース
8 シャッター
11 外筒
12 内筒
13a 外筒流出孔
13b 内筒流出孔
13c 壁
14 上蓋
15 下蓋
16 水流入孔
21 架設部材
22 案内具
23 道糸支持部
24 錘係止部
25 案内溝
31 調節帯
34 案内溝
35 調節溝
37 案内具
41 蝶番
42 留め金
43 留め金受け
49 環状錘
50 柱状錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外筒流出孔を備えた筒状の外筒と、該外筒の上端を上蓋、下端を下蓋で覆って閉空間を形成し、且つ撒き餌を投入する開口部を開閉する撒き餌投入手段を備えた収納ケースと、前記外筒の内側で上下方向にスライド可能で前記外筒流出孔の位置に対応した少なくとも一以上の内筒流出孔を備えた筒状の内筒と、該内筒に設けた本装置を支持する支持手段と、錘を該内筒に係着させる錘係着手段で成るシャッターと、前記収納ケースと該シャッターを位置合わせするガイド手段とで構成され、該支持手段を支持することにより、前記収納ケースと該シャッターとを相対的に上下方向に移動させ、前記外筒流出孔と内筒流出孔の位置で形成する貫通孔を開閉させることを特徴とする撒き餌籠。
【請求項2】
前記ガイド手段が、前記外筒に設けた上下軸方向の一又は複数の案内溝に対応して、前記内筒に外側に突出して設けた案内具を挿通してスライドさせ、前記シャッターが前記収納ケースに対する上下移動範囲の下限位置にあるとき、ほぼ全ての前記外筒流出孔は前記内筒の壁部で閉塞され、該上下移動範囲の上限位置で少なくとも一以上の前記の外筒流出孔と内筒流出穴の位置が一致するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の撒き餌籠。
【請求項3】
前記支持手段が、前記内筒に直径方向に架設部材を架設し、該内筒中心軸上の該架設部材上端縁に道糸に繋げる道糸支持部を設けて成ることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の撒き餌籠。
【請求項4】
前記錘係着手段が、前記内筒に直径方向に設けた前記架設部材中心軸部に錘を係着し、且つ該錘の重心が前記道糸支持部より下方に配して成ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の撒き餌籠。
【請求項5】
前記錘係着手段が、前記道糸支持部と下方に距離を有した該内筒中心軸上の前記架設部材下端縁に錘を繋げる錘係止部を設けて成ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の撒き餌籠。
【請求項6】
前記錘係着手段が、前記内筒内側下部に略環状の錘を係着し、且つ該錘の重心が前記道糸支持部より下方に配して成ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の撒き餌籠。
【請求項7】
前記ガイド手段が、外筒外側に周方向に帯状でかつテーパー部を備えた調節手段を設けて成り、前記外筒流出孔と内筒流出孔の位置で形成する貫通孔の大きさを調整することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の撒き餌籠。
【請求項8】
前記ガイド手段が、前記内筒に設けた軸方向の一又は一対の案内溝と対応する前記外筒に設けた周方向の調節溝に案内具を挿通し、前記収納ケースと前記シャッターの周方向の位置調節を可能としたことを特徴とする請求項1又は請求項3〜請求項6のいずれかに記載の撒き餌籠。
【請求項9】
前記撒き餌投入手段が、前記上蓋又は下蓋に設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の撒き餌籠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−187090(P2012−187090A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71031(P2011−71031)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(599161926)株式会社フジワラ (7)
【出願人】(592215620)
【Fターム(参考)】