説明

撮影装置およびその制御方法

【課題】撮影時に標準モードとマクロモードの切り替えを操作者に意識させることなく、ピントの合った撮影を容易に行うことができるようにすることである。
【解決手段】入力されたズーム操作に基づいてズームレンズを移動させることで、像を変倍し(S120)、移動されたズームレンズの位置における、フォーカスレンズの被写体に対する近接限界位置を求め(S130、S140)、ズームレンズが移動された後の状態で像が合焦状態を維持するために必要となるフォーカスレンズの目標位置が、近接限界位置に基づいて求まるしきい位置よりも撮像面側にあるときに、フォーカスレンズを移動させることで、像を撮像面に合焦する(S150〜S180)。一方、フォーカスレンズの目標位置がしきい位置よりも被写体側にあるときに、ズームレンズをワイド側に移動した上で(S190〜、合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う(S140〜S180)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の発展に伴い、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮像装置が普及している。これらの撮像装置には、通常、ズーム機構とオートフォーカス機構とが設けられている。ズーム機構によれば、操作者のズーム操作に応じてズームレンズを移動させることで、被写体の像を変倍することができる。オートフォーカス機構によれば、フォーカスレンズを移動させることで、被写体にピントを合わせることができる。
【0003】
また、撮像装置には、「マクロモード」と呼ばれる接写用の撮影モードが装備されている(特許文献1〜5)。接写撮影においては、標準モードでは、オートフォーカス機構を用いても被写体にピントを合わせることができないことがあり、この場合に、マクロモードで撮影することで、至近距離の被写体をはっきりと写すことができる。なお、標準モードとマクロモードの切り替えは、操作者により操作されるスイッチによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−143382号公報
【特許文献2】特開平05−300422号公報
【特許文献3】特開2005−2498790号公報
【特許文献4】特開2007−116305号公報
【特許文献5】特開2007−221375号公報
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、操作者は、標準モードとマクロモードとの切り替えが煩わしく、切り替えを忘れて、接写撮影時にピントの合わない映像を撮ってしまうことがあり得た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、接写撮影時にピントの合った映像を、容易かつ確実に撮ることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う撮影装置であって、
ズーム操作を入力する操作入力部と、
前記入力されたズーム操作に基づいて前記ズームレンズを移動して、前記像を変倍するズーム制御部と、
前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置における、前記フォーカスレンズの前記被写体に対する近接限界位置を求める近接限界位置算出部と、
前記ズーム制御部による前記ズームレンズの移動の都度に、前記フォーカスレンズを前記近接限界位置より近接方向側とならない範囲内で移動して、前記像を前記撮像面に合焦するフォーカス制御部と
を備え、
前記フォーカス制御部は、
前記ズーム制御部により前記ズームレンズが移動された後の状態で前記像が合焦状態を維持するために必要となる前記フォーカスレンズの目標位置が、前記近接限界位置に基づいて求まるしきい位置よりも近接方向側にあるときに、前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う、撮影装置。
【0009】
適用例1に係る撮影装置によれば、ズーム制御部によりズームレンズが移動された後の状態で撮像面上の像が合焦状態を維持するために必要となるフォーカスレンズの目標位置が、近接限界位置に基づいて求まるしきい位置よりも近接方向側にあるときに、ズームレンズはワイド側に移動された上で、合焦のためのフォーカスレンズの移動が行われる。このために、フォーカス制御部で、フォーカスレンズを近接限界位置より近接方向側に移動しないと、ピントが合わないような場合にも、ズームレンズがワイド側に移動された上で、ピント合わせがなされることになる。したがって、操作者は、接写撮影時にピントの合った映像を、容易かつ確実に撮ることができる。
【0010】
[適用例2] 適用例1に記載の撮影装置であって、フォーカス制御部は、前記撮像面で得られた像を解析して、前記撮像面における合焦状態を表す評価値を求め、前記フォーカスレンズを移動させて撮影を行うのに先立って、前記被写体を撮影しつつ前記フォーカスレンズの位置を順次変化させて、該変化させる過程においてそれぞれ求められた前記評価値の変化に基づき、前記フォーカスレンズの目標位置を求める、撮影装置。
【0011】
適用例2に記載の撮影装置によれば、フォーカスレンズの位置を順次変化させながら時々の合焦状態を表す評価値を求め、その評価値の変化からフォーカスレンズの目標位置を求めることができる。したがって、高精度の判定が可能となる。
【0012】
[適用例3] 適用例1または2に記載の撮影装置であって、前記フォーカス制御部は、前記ズームレンズのワイド側への移動として、撮影可能な最近距離で最もテレよりの位置にズームレンズを移動する、撮影装置。
【0013】
適用例3に記載の撮影装置によれば、撮影可能な最近距離が補償できる位置までズームし、その上でピント合わせがなされることになる。したがって、至近距離で確実にピントの合った映像を得ることができる。
【0014】
[適用例4] ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う撮影装置であって、
ズーム操作を入力する操作入力部と、
前記入力されたズーム操作に基づいて前記ズームレンズを移動して、前記像を変倍するズーム制御部と、
前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置における、前記被写体の最短撮影距離を求める最短撮影距離算出部と、
前記ズーム制御部による前記ズームレンズの移動の都度に、前記フォーカスレンズを移動して、前記像を前記撮像面に合焦するフォーカス制御部と
前記被写体までの実撮影距離を求める実撮影距離算出部と
を備え、
前記フォーカス制御部は、
前記実撮影距離が前記最短撮影距離未満であるときに、前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う、撮影装置。
【0015】
適用例4に係る撮影装置によれば、実撮影距離が最短撮影距離未満であるときに、ズームレンズはワイド側に移動された上で、合焦のためのフォーカスレンズの移動が行われる。このために、実撮影距離が短すぎてピントが合わないような場合にも、ズームレンズがワイド側に移動された上で、ピント合わせがなされることになる。したがって、操作者は、接写撮影時にピントの合った映像を、容易かつ確実に撮ることができる。
【0016】
[適用例5] 適用例4に記載の撮影装置であって、本体と、前記光学系を有するカメラと、前記本体に連結され、先端に前記カメラが取り付けられたアームと、前記本体に対する前記アームの傾斜角度を少なくとも調整することで、前記被写体から前記撮像面までの距離を変更しうる調整機構とを備え、前記実撮影距離算出部は、前記被写体までの実撮影距離を、前記調整機構の状態から求める、撮影装置。
【0017】
適用例5に係る撮影装置によれば、被写体までの実撮影距離が、調整機構の状態から簡単に求めることができる。
【0018】
[適用例6] 適用例4または5に記載の撮影装置であって、前記フォーカス制御部は、前記ズームレンズのワイド側への移動として、撮影可能な最近距離で最もテレよりの位置にズームレンズを移動する、撮影装置。
撮影装置。
【0019】
適用例6に記載の撮影装置によれば、撮影可能な最近距離が補償できる位置までズームし、その上でピント合わせがなされることになる。したがって、至近距離で確実にピントの合った映像を得ることができる。
【0020】
[適用例7] ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う撮影装置の制御方法であって、
ズーム操作を入力する操作入力工程と、
前記入力されたズーム操作に基づいて前記ズームレンズを移動して、前記像を変倍するズーム制御工程と、
前記ズーム制御工程により移動された前記ズームレンズの位置における、前記フォーカスレンズの前記被写体に対する近接限界位置を求める近接限界位置算出工程と、
前記ズーム制御工程による前記ズームレンズの移動の都度に、前記フォーカスレンズを前記近接限界位置より近接方向側とならない範囲内で移動して、前記像を前記撮像面に合焦するフォーカス制御工程と
を備え、
前記フォーカス制御工程は、
前記ズーム制御工程により前記ズームレンズが移動された後の状態で前記像が合焦状態を維持するために必要となる前記フォーカスレンズの目標位置が、前記近接限界位置に基づいて求まるしきい位置よりも近接方向側にあるときに、前記ズーム制御工程により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う、撮影装置の制御方法。
【0021】
[適用例8] ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う撮影装置の制御方法であって、
ズーム操作を入力する操作入力工程と、
前記入力されたズーム操作に基づいて前記ズームレンズを移動して、前記像を変倍するズーム制御工程と、
前記ズーム制御工程により移動された前記ズームレンズの位置における、前記被写体の最短撮影距離を求める最短撮影距離算出工程と、
前記ズーム制御工程による前記ズームレンズの移動の都度に、前記フォーカスレンズを移動して、前記像を前記撮像面に合焦するフォーカス制御工程と
前記被写体までの実撮影距離を求める実撮影距離算出工程と
を備え、
前記フォーカス制御工程は、
前記実撮影距離が前記最短撮影距離未満であるときに、前記ズーム制御工程により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う、撮影装置の制御方法。
【0022】
適用例7に係る撮影装置の制御方法は適用例1に係る撮影装置と同様の作用効果を奏し、適用例8に係る撮影装置の制御方法は適用例4に係る撮影装置と同様の作用効果を奏する。すなわち、両制御方法によれば、操作者は、接写撮影時にピントの合った映像を、容易かつ確実に撮ることができる。
【0023】
なお、本発明は、上述した撮影装置としての構成、および撮影装置の制御方法としての構成のほか、前記制御方法としての構成を実行するためのコンピュータプログラムとしても構成することができる。コンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、磁気ディスクや光ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例に係る資料提示装置10とその周辺を示す説明図である。
【図2】カメラヘッドに備えられるビデオカメラ90の概略構成を示すブロック図である。
【図3】マイクロコンピュータ400が実行するレンズ移動制御ルーチンのフローチャートである。
【図4】山登り制御を示す説明図である。
【図5】接写撮影時におけるAF評価値の変化を示す説明図である。
【図6】第2実施例におけるマイクロコンピュータが実行するレンズ移動制御ルーチンのフローチャートである。
【図7】実撮影距離Dの求め方を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
A−1.資料提示装置10の全体構成:
図1は、本発明の第1実施例に係る資料提示装置10とその周辺を示す説明図である。資料提示装置10は、机などに載置される本体11と、本体11から上方に湾曲して伸びるアーム20と、アーム20の上端に直角に固定された筒体22と、筒体22の一方側の端部に設けられたカメラヘッド30とを備える。
【0026】
本体11の上面には、操作者により操作される操作パネル12が設けられている。操作パネル12には、電源スイッチや、合焦位置を調整するためのボタン、映像の明るさを調整するためのボタンなど、種々のスイッチ/ボタンが備えられている。また、本体11の背面には、図示しないDC電源端子や、アナログRGBの入出力端子、USB端子などの各種の入出力端子が設けられている。本実施例では、アナログRGBの出力端子に表示装置40がケーブルを介して接続されている。表示装置40としては、例えば、CRTや液晶ディスプレイ、プロジェクタ、テレビなどが用いられる。
【0027】
カメラヘッド30にはCCDを用いたビデオカメラが内蔵されており、資料提示装置10は、机などに載置された資料(被写体)RSを単位時間当たりに所定のフレーム数(例えば30フレーム)で撮影する。撮影して得られた映像信号は、表示装置40に出力され、表示装置40で表示される。この結果、表示装置40には、資料RSの映像が表示される。
【0028】
筒体22におけるカメラヘッド30とは反対側の端部には、オートフォーカスの実行を指示するためのオートフォーカス(AF)ボタン33と、ズーム操作を指示するためのズームダイヤル34とが設けられている。AFボタン33およびズームダイヤル34は、操作者により操作される。AFボタン33は、押すことで指示を行うことができる。
【0029】
ズームダイヤル34は、定位置から右回り方向または左回り方向に回す操作を受け付けるダイヤルである。ズームダイヤル34は、上記操作を受けたときに定位置に復帰する復元力を発生し、上記操作がなされなくなると、回転したダイヤルを定位置に戻す。ズームダイヤル34は、上記回した方向と操作した時間とでズーム倍率を指定することができる。右回り方向を望遠(ズームイン)、左回り方向を広角(ズームアウト)とした場合、例えば、右回り方向に1秒間だけ回す操作を行ったときには変倍率を1.1とし、右回り方向に2秒間だけ回す操作を行ったときには変倍率を2.1とし、…、左回り方向に1秒間だけ回す操作を行ったときには変倍率を0.9とし、左回り方向に2秒間だけ回す操作を行ったときには変倍率を0.8とする指定がなされる。
【0030】
ズームダイヤル34は、適用例1の記載における「操作入力部」に相当する。AFボタン33およびズームダイヤル34は、必ずしも筒体22に設ける必要はなく、操作パネル12等の別の位置に設ける構成としてもよい。操作パネル12に設ける場合、ズームダイヤルに替えて、ボタンによりズーム倍率を指定する構成とすればよい。
【0031】
資料提示装置10において、アーム20は、アーム20の下端において回動軸機構24にて図中矢印Aで示すように、鉛直面内において回動自在に軸支されている。この結果、カメラヘッド30が取り付けられた筒体22は、図中矢印Bで示すように回動自在に移動する。また、カメラヘッド30は、図中矢印Cで示すように、筒体22の中心軸周りに回動自在となっている。前記アーム20の回動とカメラヘッド30の回動とによって、高い自由度でもって、カメラヘッド30の位置と向きを変化させることができる。
【0032】
A−2.ビデオカメラ90の構成:
図2は、カメラヘッドに備えられるビデオカメラ90の概略構成を示すブロック図である。図示するように、本実施例のビデオカメラ90は、レンズユニット100と、CCD200と、AGC回路310と、画像処理DSP(Digital Signal Processor)320と、オートフォーカス(AF)回路330と、マイクロコンピュータ400とを備えている。
【0033】
レンズユニット100は、被写体側の最前面から順に、ユニット内に固定された第1レンズ110と、光軸に沿って移動して変倍動作を行うズームレンズ120と、ユニット内を透過する光量を調整するアイリス機構130と、ユニット内に固定された第3レンズ140と、光軸に沿って移動して焦点位置を調整するフォーカスレンズ150とを備えている。なお、インナーフォーカス式のレンズユニットにおいては、ズームレンズのことをバリエータレンズと、フォーカスレンズのことをコンペンセータレンズと呼ぶ場合がある。
【0034】
ズームレンズ120には、ズームレンズ120を光軸に沿って往動あるいは復動させるリードスクリューを備えたズームモータ510が接続されている。ズームモータ510はステッピングモータであり、当該ズームモータ510の駆動を行うズームドライバ515を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。したがって、ズームレンズ120は、マイクロコンピュータ400から指定されたステップ数に応じて、レンズユニット100内を光軸に沿って移動し、変倍動作(ズーム動作)を行うことができる。
【0035】
フォーカスレンズ150には、フォーカスレンズ150を光軸に沿って往動あるいは復動させるリードスクリューを備えたフォーカスモータ530が接続されている。フォーカスモータ530はステッピングモータであり、当該フォーカスモータ530の駆動を行うフォーカスドライバ535を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。したがって、フォーカスレンズ150は、マイクロコンピュータ400から指定されたステップ数に応じて、レンズユニット100内を光軸に沿って移動し、焦点位置を調整する動作(フォーカス動作)を行うことができる。
【0036】
アイリス機構130には、当該アイリス機構130の絞りを調整するアイリスモータ520が接続されている。アイリスモータ520はガルバノメータであり、当該アイリスモータ520の駆動を行うアイリスドライバ525を介して、マイクロコンピュータ400に接続されている。したがって、アイリス機構130は、マイクロコンピュータ400からの指示に応じて、レンズユニット100を透過する光量を調整することができる。なお、本実施例では、ズームモータ510やフォーカスモータ530はステッピングモータであるとし、アイリスモータ520はガルバノメータであるとしたが、直流モータなど他の形式のモータを採用するものとしてもよい。
【0037】
上述したように、ズームレンズ120とフォーカスレンズ150とは、レンズユニット100内を光軸に沿って移動する。そのため、レンズユニット100は、これらのレンズが予め定めた基準位置である原点に移動したかを検出するために、第1原点センサ170と、第2原点センサ180とを備えている。第1原点センサ170と第2原点センサ180とは、フォトインタラプタによって構成されており、マイクロコンピュータ400に接続されている。マイクロコンピュータ400は、これらのセンサを用いることで、ズームレンズ120の位置やフォーカスレンズ150の位置を正確に調整することができる。
【0038】
CCD200は、レンズユニット100を透過した光を受光し、この光を電気信号に変換するイメージセンサである。CCD200の撮像面が、適用例1の記載における「撮像面」に相当する。
【0039】
AGC回路310は、CCD200から出力される電気信号を入力し、この電気信号の出力を適切な出力に増幅する回路である。
【0040】
画像処理DSP320は、AGC回路310から電気信号を入力し、この信号に対してA/D変換を施すことで画像データを生成する。画像処理DSP320は、こうして生成された画像データを、コンポジットビデオ信号やSビデオ信号に変換し、これを出力端子800を介して、テレビモニタや録画装置等の外部機器に出力する。さらに、画像処理DSP320は、A/D変換によって生成した画像データから、輝度信号を抽出し、これをAF回路330に出力する機能を備えている。画像処理DSP320は、他にも、画像データに対してガンマ補正やアパーチャ補正、ホワイトバランスの調整など、種々の画像処理を施す機能を備えている。
【0041】
AF回路330は、ハイパスフィルタや絶対値回路、ゲート回路、検波回路からなる回路である。AF回路330は、画像処理DSP320から輝度信号を入力すると、この輝度信号からハイパスフィルタで高周波成分を抽出し、絶対値回路によって、この高周波成分を絶対値化する。そして、ゲート回路によって、絶対値化された高周波成分のうち、所定の測距枠内の高周波成分だけを取り出し、この高周波成分から検波回路によってピーク検波することでAF評価値を生成する。AF回路330は、こうして、AF評価値を生成すると、このAF評価値をマイクロコンピュータ400に出力する。AF評価値は、フォーカスレンズ150の合焦状態が良好になるほど高い値を示す。
【0042】
図1を用いて先に説明した操作パネル12、AFボタン33、およびズームダイヤル34は、マイクロコンピュータ400に接続されている。これにより、操作者が操作パネル12、AFボタン33、ズームダイヤル34等を操作すると、その操作指示がマイクロコンピュータ400に伝達される。マイクロコンピュータ400は、これら操作指示に応じて、ズームモータ510、フォーカスモータ530等の各モータの駆動制御を行うことで、ズーム動作、フォーカス動作などを行う。
【0043】
本実施例の資料提示装置10では、フォーカス動作として、手動でピントを合わせるマニュアルフォーカスと、自動でピントを合わせるオートフォーカスとを行うことが可能である。マニュアルフォーカスは、操作パネル12に設けられた合焦位置調整用のボタンの操作を受けて動作する。すなわち、操作者は、操作パネル12に設けられた合焦位置調整用のボタンを調整することで、手動でピントを合わせることができる。
【0044】
オートフォーカスは、AFボタン33の操作を受けて動作する。すなわち、操作者は、AFボタン33を押すことで、自動でピントを合わせることができる。資料提示装置10は、ワンショットオートフォーカス方式を採用しており、一度ピントが合うとオートフォーカス動作は解除され、そのときのピント位置を維持する。
【0045】
なお、本実施例では、オートフォーカスは、ズームダイヤル34の操作を受けたときにも動作する構成となっている。すなわち、マイクロコンピュータ400は、AFボタン33が押されたときや、ズームダイヤル34が操作されたときに、自動的にピントを合わせる処理を行う。なお、この構成に換えて、オートフォーカスは、ズームダイヤル34の操作を受けたときに動作しない構成としてもよい。また、オートフォーカスをズームダイヤル34の操作に連動するか連動しないかを、操作者が予め設定しておく構成とすることもできる。
【0046】
マイクロコンピュータ400は、自身のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、ズーム動作、フォーカス動作などを行う。この結果、マイクロコンピュータ400は、適用例1の記載におけるズーム制御部410、近接限界位置算出部420、およびフォーカス制御部430を機能的に実現することになる。各部410〜430については、後ほど詳述する。上記コンピュータプログラムを記録するメモリは、例えば、磁気ディスクや光ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体に替えることができる。
【0047】
A−3.ソフトウェアの構成:
図3は、マイクロコンピュータ400が実行するレンズ移動制御ルーチンのフローチャートである。このレンズ移動制御ルーチンは、前述したズーム動作とフォーカス動作とを実行するためのもので、AFボタン33が押されたとき、またはズームダイヤル34が操作されたときに実行開始される。
【0048】
図3に示すように、処理が開始されると、マイクロコンピュータ400は、まず、実行開始する契機となった操作がAFボタン33とズームダイヤル34のいずれの操作であるかを判定する(ステップS100)。ここで、ズームダイヤル34であると判定されたときには、マイクロコンピュータ400は、ズームダイヤル34の操作の内容を取り込んで、その操作の内容に基づいて変倍率(ズーム倍率)を求める(ステップS110)。この変倍率は、マイクロコンピュータ400に指定するためのものであることから、以下「指定ズーム倍率」と呼ぶ。
【0049】
ステップS110の実行後、マイクロコンピュータ400は、指定ズーム倍率に基づいてズームモータ510を駆動して、前記指定ズーム倍率に撮影像を変倍する(ステップS120)。この結果、ズームダイヤル34の操作に応じたズーム倍率に変倍がなされる。すなわち、ステップS110およびS120の処理がズーム動作に対応する。マイクロコンピュータ400は、ステップS110およびS120の処理を実行することで、ズーム制御部410(図1)を機能的に実現する。
【0050】
次いで、マイクロコンピュータ400は、第1原点センサ170の検出信号から現在のズームレンズ位置を求める(ステップS130)。
【0051】
続いて、マイクロコンピュータ400は、ステップS130で求めたズームレンズ位置における、フォーカスレンズ150の近接限界位置および遠距離限界位置を設定する処理を行う(ステップS140)。フォーカスレンズ150の合焦位置を被写体に一致させることのできる、すなわち、CCD200で撮影される像が合焦状態(ピントが合った状態)を維持することのできるフォーカスレンズの位置範囲は、ズームレンズ120の位置によって変わる。このため、この位置範囲を近接限界位置と長距離限界位置とによって示すものとして、ステップS150では、ステップS130で求めたズームレンズ位置に対応した、フォーカスレンズ150の近接限界位置および長距離限界位置を求める。詳しくは、次のようにして行う。なお、近接限界位置は前記フォーカスレンズの移動範囲の近接方向の限界位置であり、長距離限界位置は前記フォーカスレンズの移動範囲の長距離方向の限界位置である。
【0052】
予め実験によって、ズームレンズ位置を徐々に変えて、各ズームレンズ位置で合焦状態を維持できるフォーカスレンズの位置範囲を測定する。各位置範囲は、近接限界位置と長距離限界位置とにより示すようにする。そして、ズームレンズ位置と、近接限界位置および長距離限界位置との対応関係を表の形で記録し、マイクロコンピュータ400のメモリに、上記表を示すテーブルデータを記憶させる。ステップS140では、ステップS130で求めたズームレンズ位置を上記テーブルデータに突き合わせることで、ステップS130で求めたズームレンズ位置に対応する近接限界位置と長距離限界位置とを読み出し、両位置を設定する。マイクロコンピュータ400は、ステップS140の処理を実行することで、近接限界位置算出部420(図2)を機能的に実現する。
【0053】
ステップS140の実行後、マイクロコンピュータ400は、ステップS170の判定処理で用いるしきい位置PTを、次のようにして求める(ステップS150)。ステップS140で求めた近接限界位置に対して、遠距離方向に微小な所定距離sだけ移動した位置を、しきい位置PTとして求める。
【0054】
その後、マイクロコンピュータ400は、フォーカスレンズ150を移動させながら、AF回路330からAF評価値を入力し、このAF評価値が最大となる位置Pmaxを検出する処理を行う(ステップS160)。この処理は、「山登り制御」として広く知られたオートフォーカス制御方法の一部をなすもので、具体的には次のように行われる。
【0055】
図4は、山登り制御を示す説明図である。まず、フォーカスレンズ150を現在の位置P0から光軸に沿って微振動させつつ、入力したAF評価値の増減に基づき、AF評価値の山登り方向を判断する。そして、その方向にフォーカスレンズ150を移動させながら入力したAF評価値が、ピークとなる位置Pmaxを検出する。なお、フォーカスレンズ150を移動させる範囲は、ステップS140で設定された近接限界位置L1と長距離限界位置L2との間の範囲(移動可能範囲)を外れないように制限されている。ピークとなったか否かの判定は、AF評価値が所定値を上回った後、増大から減少へ転じる位置を検出するようにしている。このピークとなる位置Pmaxが、AF評価値が最大となる位置としてステップS160で検出される。このピークとなる位置Pmaxが、適用例1の記載における「フォーカスレンズの目標位置」に相当する。
【0056】
なお、移動可能範囲で山の頂点となるピークが見つからず、近接限界位置L1でAF評価値が最大となるときがある。この場合には、近接限界位置L1が、AF評価値が最大となる位置PmaxとしてステップS160で検出される。このことについては、後ほど詳しく説明する。
【0057】
ステップS160の実行後、マイクロコンピュータ400は、ステップS160で検出した位置Pmaxが、ステップS150で求めたしきい位置PTより近接方向側(すなわち被写体側)であるか否かを判定する(ステップS170)。ここで、位置Pmaxがしきい位置PTより近接方向側にないと判定されたときには、ステップS180に処理を進めて、フォーカスレンズ150をステップS160で検出した位置Pmaxに移動する。
【0058】
図4の例示では、位置Pmaxはしきい位置PTより遠距離方向側にあることから、フォーカスレンズ150は位置Pmaxに移動させられる。この結果、自動で被写体にピントが合わせられる。すなわち、被写体の像を撮像面に合焦させることができる。S130ないしS180の処理がフォーカス動作に対応し、前述した標準モードに対応する。ステップS180の実行後、このレンズ位置制御ルーチンを一旦終了する。
【0059】
なお、ステップS100で、このレンズ位置制御ルーチンを実行開始する契機となった操作がAFボタン33であると判定されたときには、マイクロコンピュータ400は、ズーム動作であるステップS110およびS120の処理を実行することなく、ステップS130に処理を進めて、フォーカス動作だけを行う。
【0060】
図4に示すような山登り制御を行うことが可能なのは、撮影距離が標準的な場合である。接写(近接)撮影を行おうとした場合、AF評価値がピークとなる位置Pmaxが検出不能となることがある。
【0061】
図5は、接写撮影時におけるAF評価値の変化を示す説明図である。接写撮影時には、図示するように、AF評価値がピークとなる位置XPmaxは近接限界位置L1より近接方向側となることが想定される。図4で示す位置Pmax、図5で示す位置XPmaxが、適用例1の記載における「フォーカスレンズの目標位置」に相当する。すなわち、位置XPmaxは、合焦状態を維持するために必要となるフォーカスレンズ150の目標位置である。図5の場合には、ステップS160で検出される位置Pmaxは、近接限界位置L1となる。このために、位置Pmaxはしきい位置PTより近接方向側にあることになる。
【0062】
図3に戻って、ステップS170で、位置Pmaxがしきい位置PTより近接方向側にあると判定された場合には、マイクロコンピュータ400は、ステップS190に処理を進める。すなわち、前述した図5の場合には、位置Pmaxはしきい位置PTより近接方向側にあることから、ステップS190に処理が進められる。
【0063】
ステップS190では、マイクロコンピュータ400は、撮影可能な最近距離(以下、単に「最近距離」と呼ぶ)で最もテレよりの位置に、ズームレンズ120を移動する処理を行う。最近距離は資料提示装置10の製品仕様によって決まっており、この最近距離とズームレンズ120の設計データとによって、前記移動する位置が決まってくる。ステップS190でズームレンズ120の移動後、マイクロコンピュータ400は、ステップS140に処理を戻す。すなわち、最近距離で最もテレよりの位置にズームレンズ120を移動した上で、ステップS140以後のフォーカス動作を、再度、実行する。
【0064】
ステップS190によるズーム動作は、ズームレンズ120を動作前の位置よりワイド側に移動するものであり、図5における移動可能範囲を近接方向に広がりをもたすことになる。この結果、フォーカスレンズ150の目標位置XPmaxはしきい位置PTより近接方向側でなくなり、ステップS170で否定判定される。否定判定されると、ステップS180に進み、ステップS190でズーム動作を行った後のステップS160による山登り制御により求められた位置Pmaxにフォーカスレンズ150は移動させられる。この結果、撮影可能な最近距離で最もテレよりの位置に変倍し、その変倍した状態で、被写体の像を撮像面に合焦させることができる。
【0065】
前記変倍をしてフォーカス動作を行う処理は、撮影可能な最近距離で最もテレよりとなる変倍が可能であることから、マクロモードと呼ぶことができる。マイクロコンピュータ400は、ステップS120ないしS190の処理を実行することで、フォーカス制御部430(図1)を機能的に実現する。特に、ステップS190によるズーム動作、その後のステップS140〜S180の処理によるフォーカス動作は、フォーカス制御部における「前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う」構成に相当する。
【0066】
A−4.実施例効果:
以上のように構成された第1実施例にかかる資料提示装置10では、被写体が至近距離にあるときに、自動でワイド側にズームして、被写体の像を撮像面に合焦させることができる。したがって、操作者は、接写撮影時にピントの合った映像を、容易かつ確実に撮ることができる。
【0067】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例に係る資料提示装置について、次に説明する。第2実施例の資料提示装置は、第1実施例の資料提示装置と比較して、アーム20を軸支する回動軸機構24に、アーム20の傾斜角度を測定する角度センサ(図7の900)が設けられている点が相違する。その他のハードウェアの構成は同一である。ソフトウェアの構成は次の通り相違する。すなわち、図3に示したレンズ移動制御ルーチンに替えて、第2実施例独自のレンズ移動制御ルーチンをマイクロコンピュータ400は実行する。本実施例では、第1実施例と同一の部品には、第1実施例と同じ符号を付けて説明する。なお、回動軸機構24が適用例5の記載における「調整機構」に相当する。
【0068】
図6は、第2実施例におけるマイクロコンピュータ400が実行するレンズ移動制御ルーチンのフローチャートである。図6において、第1実施例と同一の番号がついているステップは、第1実施例と同じ処理を実行する。すなわち、ステップS110−S130,S140,S160,S180,S190は、第1実施例と同じ処理を実行する。
【0069】
マイクロコンピュータ400は、ステップS130で、現在のズームレンズ位置を求めた後に、そのズームレンズ位置における最短撮影距離DSを設定する処理を行う(ステップS240)。CCD200で撮影される像が合焦状態を維持することのできる最短撮影距離DSは、ズームレンズ120の位置によって変わる。予め実験によって、ズームレンズ位置を徐々に変えて、各ズームレンズ位置で被写体にピントが合う最短の撮影距離を測定する。撮影距離は、被写体から撮像面であるCCDまでの距離である。そして、ズームレンズ位置と最短撮影距離との対応関係を表の形で記録し、マイクロコンピュータ400のメモリに、上記表を示すテーブルデータを記憶させる。ステップS240では、ステップS130で求めたズームレンズ位置を上記テーブルデータに突き合わせることで、ステップS130で求めたズームレンズ位置に対応する最短撮影距離を読み出し、この値を設定する。
【0070】
ステップS240の実行後、被写体から撮像面までの実際の距離、すなわち、実撮影距離Dを求める(ステップS250)。実撮影距離Dの求め方は次の通りである。
【0071】
図7は、実撮影距離Dの求め方を示す説明図である。資料提示装置10を机などの水平面に置いたときに、アーム20は、鉛直面内において軸U周りに自在に回動する。カメラヘッド30は、鉛直面内において軸V周りに自在に回動する。図中の角度θは、アーム20の突出方向と軸Uを含む水平方向との間の角度であり、回動軸機構24に設けられた前述した角度センサ900により検出される。角度センサ900は、詳しくは、本体11の所定面(例えば、底面)に対するアーム20の傾斜角度を測定するもので、角度θを検出することができる。図中の角度αは、U−V間の方向とアーム20の突出方向との間の角度であり、資料提示装置10に固有の値である。図中の角度βは、U−V間の方向と軸Uを含む水平方向との間の角度であり、角度θから角度αを引くことで求めることができる。図中のMは、U−V間の距離である。
【0072】
資料提示装置10が置かれた机などの水平面に、被写体である資料RSが置かれている。いま、軸Vの位置にCCD200の撮像面があると仮定すると、撮像面から資料RSまでの距離Dは、次式(1)により求めることができる。
【0073】
D = D1 + h …(1)
【0074】
ここで、D1は軸Vから軸Uを含む水平面までの距離であり、hは軸Uを含む水平面から資料RSまでの距離である。D1は次式(2)により求めることができる。
【0075】
D1 = M・sinβ
= M・sin(θーα) …(2)
【0076】
したがって、式(1)、(2)より、撮像面から資料RSまでの距離Dは、次式(3)により求めることができる。
【0077】
D = M・sin(θーα) + h …(3)
【0078】
式(3)より求められる距離Dは、前述したように、軸Vの位置にCCD200の撮像面があると仮定した場合の値であることから、仮定した位置から実際の位置までの垂直方向の距離を補正することで、撮像面からの被写体までの実撮影距離(以下、この値もDと呼ぶ)を求めることができる。
【0079】
図6に戻り、ステップS260の実行後、マイクロコンピュータ400は、ステップS250で検出した実撮影距離Dが、ステップS240で設定した最短撮影距離DS未満であるか否かを判定する(ステップS170)。ここで、実撮影距離Dが最短撮影距離DS未満でない、すなわち以上であると判定された場合には、ステップS140に処理を進める。マイクロコンピュータ400は、第1実施例と同じステップS140、S160、S180の処理を実行することで、標準モードでフォーカス動作を行う。
【0080】
一方、ステップS170で、実撮影距離Dが最短撮影距離DS未満であると判定された場合には、ステップS190に処理を進める。マイクロコンピュータ400は、第1実施例と同様に、撮影可能な最近距離が補償できる位置までズームレンズ120をワイド側に移動し、その後、ステップS120に処理を戻す。この結果、第1実施例と同様に、マクロモードでフォーカス動作を行う。
【0081】
以上のように構成された第2実施例にかかる資料提示装置では、ズームダイヤル34が操作されると、そのズームダイヤル34の操作量に応じてズームレンズ120を移動させるズーム動作がなされる。そして、角度センサ900により検出されるアーム20の傾斜角度から求められる実撮影距離が、前記移動されたズームレンズの位置における最短撮影距離未満であるときに、自動でズームレンズ120をワイド側に移動して、被写体の像を撮像面に合焦させることができる。
【0082】
このために、第2実施例にかかる資料提示装置では、被写体が至近距離にあるときに、自動でワイド側にズームして、被写体の像を撮像面に合焦させることができる。したがって、操作者は、接写撮影時にピントの合った映像を、容易かつ確実に撮ることができる。また、第2実施例では、被写体までの実撮影距離Dが、回動軸機構2の状態から簡単に求めることができる。
【0083】
C.変形例:
以上、本発明の第1および第2実施例、並びにそれらの変形例について説明したが、本発明はこれらの実施例や変形例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。また、そのほか、以下のような変形が可能である。
【0084】
・変形例1:
前記第1、第2実施例および各変形例では、フォーカスレンズの目標位置がしきい位置より近接方向側にあるときの処理として、最近距離で最もテレよりの位置にズームレンズを一度で移動した上でフォーカス動作を行う構成としたが、これに替えて、指定ズーム倍率を徐々に減少しながら、そのズーム倍率の減少の都度に、フォーカス動作を行う構成としてもよい。詳しくは、図3のステップS190(または図6のステップS190)において、現在の指定ズーム倍率を所定比率(例えば5%)たけ減少する処理を行い、ステップS190の実行後、処理をステップS120に戻すようにする。この構成によれば、指定ズーム倍率を5%だけ減少した上で、ステップS120のズーム動作、およびステップS130以後のフォーカス動作を実行することになる。この処理の繰り返しによって、ワイド方向へのズームが徐々になされることになり、図5において、移動可能範囲が近接方向に徐々に広がり、フォーカスレンズ150の目標位置XPmaxはしきい位置PTより近接方向側でなくなる。この結果、被写体の像を撮像面に合焦させることのできる略最低のズーム倍率に変倍し、その変倍した状態で、被写体の像を撮像面に合焦させることができる。なお、ズーム倍率を減少するための所定比率は5%に限る必要なく、1%、2%といったより細かい比率であってもよいし、10%、20%といったより大きな比率であってもよい。
【0085】
・変形例2:
さらに、フォーカスレンズの目標位置がしきい位置より近接方向側にあるときの処理(すなわち、ステップS190の処理)は、前記第1、第2実施例および前記変形例1の構成に限る必要もなく、一般的な手法のマクロモードとすることもできる。一般的なマクロモードとしては、レンズを高倍率のものに入れ替える構成、デジタルズームに変更する構成等を採用することができる。要は、フォーカスレンズの目標位置がしきい位置より近接方向側にあるときの処理として、ズーム制御部により移動されたズームレンズの位置よりもズームレンズをワイド側に移動した上で、合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う構成であれば、いずれの構成とすることもできる。
【0086】
・変形例3:
前記第1、第2実施例および各変形例では、フォーカス動作として山登り制御を採用していたが、これに限る必要はなく、フォーカスレンズを移動させることで、像を撮像面に合焦することができるものであれば、どのような構成とすることもできる。
【0087】
・変形例4:
前記第1、第2実施例および各変形例では、撮影装置として、図1に示した資料提示装置10を採用したが、様々な構成の資料提示装置を採用することができる。例えば、資料提示装置10では、アーム20そのものは変形しない構成であったが、これに替えて、2本のアーム(上アームと下アーム)が連結部で連結され、前記連結部で回動可能な構成としてもよい。この構成の資料提示装置の場合、第2実施例では、下アームの本体に対する傾斜角度を検出する第1の角度センサと、下アームと上アームとの間の角度を検出する第2の角度センサとを用いて、実撮影距離を求める構成とすればよい。要は、実撮影距離を変更しうる調整機構(上記例では、下アームと本体の間の連結機構、および下アームと上アームとの間の連結機構が相当する)についての状態を検出し、その調整機構の状態から実撮影距離を算出する構成とすればよい。
【0088】
・変形例5:
前記第2実施例および変形例4では、調整機構である回動軸機構24の状態から実撮影距離を算出する構成としたが、これに替えて、カメラヘッド30に超音波センサを設けて、その超音波センサにより実撮影距離を測定する構成としてもよい。要は、実撮影距離を求めることができる構成であれば、いずれのセンサの検出信号に基づくものであってもよい。
【0089】
・変形例6:
前記第1、第2実施例および各変形例では、ズームレンズを移動することでズーム動作を、フォーカスレンズを移動することでフォーカス動作を行うこととしたが、これに替えて、ズームレンズの形状を変えることでズーム動作を、フォーカスレンズの形状を変えることでフォーカス動作を行う構成としてもよい。また、ズームレンズ、フォーカスレンズの一方は移動することで動作させ、他方は形状を変えることで動作させる構成としてもよい。形状を変えるレンズとしては、液体レンズがよく知られている。液体レンズを使えば、ズーム動作やフォーカス動作を行うことができる。これらのことから、ズーム制御部は、ズームレンズを移動させ、あるいはズームレンズを変形させる等の「ズームレンズを駆動する」ことで、像を変倍することができる。また、フォーカス制御部は、フォーカスレンズを移動させ、あるいはフォーカスレンズを変形させる等の「フォーカスレンズを駆動する」ことで、像を撮像面に合焦することができる。
【0090】
・変形例7:
前記第1、第2実施例および各変形例では、撮影装置として、資料提示装置を採用していたが、資料提示装置に限る必要もなく、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話に搭載のデジタルビデオカメラ、ネットワークカメラなど、種々の撮影装置として実現可能である。
【符号の説明】
【0091】
10…資料提示装置
11…本体
12…操作パネル
20…アーム
22…筒体
24…回動軸機構
30…カメラヘッド
33…オートフォーカスボタン
34…ズームダイヤル
40…表示装置
90…ビデオカメラ
100…レンズユニット
110…第1レンズ
120…ズームレンズ
130…アイリス機構
140…第3レンズ
150…フォーカスレンズ
170…第1原点センサ
180…第2原点センサ
200…CCD
310…AGC回路
320…画像処理DSP
330…AF回路
400…マイクロコンピュータ
410…ズーム制御部
420…近接限界位置算出部
430…フォーカス制御部
510…ズームモータ
515…ズームドライバ
520…アイリスモータ
525…アイリスドライバ
530…フォーカスモータ
535…フォーカスドライバ
800…出力端子
RS…資料
L1…近接限界位置
L2…長距離限界位置
DS…最短撮影距離
D…実撮影距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う撮影装置であって、
ズーム操作を入力する操作入力部と、
前記入力されたズーム操作に基づいて前記ズームレンズを移動して、前記像を変倍するズーム制御部と、
前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置における、前記フォーカスレンズの前記被写体に対する近接限界位置を求める近接限界位置算出部と、
前記ズーム制御部による前記ズームレンズの移動の都度に、前記フォーカスレンズを前記近接限界位置より近接方向側とならない範囲内で移動して、前記像を前記撮像面に合焦するフォーカス制御部と
を備え、
前記フォーカス制御部は、
前記ズーム制御部により前記ズームレンズが移動された後の状態で前記像が合焦状態を維持するために必要となる前記フォーカスレンズの目標位置が、前記近接限界位置に基づいて求まるしきい位置よりも近接方向側にあるときに、前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う、撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影装置であって、
フォーカス制御部は、
前記撮像面で得られた像を解析して、前記撮像面における合焦状態を表す評価値を求め、
前記フォーカスレンズを移動させて撮影を行うのに先立って、前記被写体を撮影しつつ前記フォーカスレンズの位置を順次変化させて、該変化させる過程においてそれぞれ求められた前記評価値の変化に基づき、前記フォーカスレンズの目標位置を求める、撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮影装置であって、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズのワイド側への移動として、撮影可能な最近距離で最もテレよりの位置にズームレンズを移動する、撮影装置。
【請求項4】
ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う撮影装置であって、
ズーム操作を入力する操作入力部と、
前記入力されたズーム操作に基づいて前記ズームレンズを移動して、前記像を変倍するズーム制御部と、
前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置における、前記被写体の最短撮影距離を求める最短撮影距離算出部と、
前記ズーム制御部による前記ズームレンズの移動の都度に、前記フォーカスレンズを移動して、前記像を前記撮像面に合焦するフォーカス制御部と
前記被写体までの実撮影距離を求める実撮影距離算出部と
を備え、
前記フォーカス制御部は、
前記実撮影距離が前記最短撮影距離未満であるときに、前記ズーム制御部により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う、撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載の撮影装置であって、
本体と、
前記光学系を有するカメラと、
前記本体に連結され、先端に前記カメラが取り付けられたアームと、
前記本体に対する前記アームの傾斜角度を少なくとも調整することで、前記被写体から前記撮像面までの距離を変更しうる調整機構と
を備え、
前記実撮影距離算出部は、
前記被写体までの実撮影距離を、前記調整機構の状態から求める、撮影装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の撮影装置であって、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズのワイド側への移動として、撮影可能な最近距離で最もテレよりの位置にズームレンズを移動する、撮影装置。
【請求項7】
ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う撮影装置の制御方法であって、
ズーム操作を入力する操作入力工程と、
前記入力されたズーム操作に基づいて前記ズームレンズを移動して、前記像を変倍するズーム制御工程と、
前記ズーム制御工程により移動された前記ズームレンズの位置における、前記フォーカスレンズの前記被写体に対する近接限界位置を求める近接限界位置算出工程と、
前記ズーム制御工程による前記ズームレンズの移動の都度に、前記フォーカスレンズを前記近接限界位置より近接方向側とならない範囲内で移動して、前記像を前記撮像面に合焦するフォーカス制御工程と
を備え、
前記フォーカス制御工程は、
前記ズーム制御工程により前記ズームレンズが移動された後の状態で前記像が合焦状態を維持するために必要となる前記フォーカスレンズの目標位置が、前記近接限界位置に基づいて求まるしきい位置よりも近接方向側にあるときに、前記ズーム制御工程により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う、撮影装置の制御方法。
【請求項8】
ズームレンズとフォーカスレンズとを有する光学系を介して撮像面に像を結ぶことで、被写体の撮影を行う撮影装置の制御方法であって、
ズーム操作を入力する操作入力工程と、
前記入力されたズーム操作に基づいて前記ズームレンズを移動して、前記像を変倍するズーム制御工程と、
前記ズーム制御工程により移動された前記ズームレンズの位置における、前記被写体の最短撮影距離を求める最短撮影距離算出工程と、
前記ズーム制御工程による前記ズームレンズの移動の都度に、前記フォーカスレンズを移動して、前記像を前記撮像面に合焦するフォーカス制御工程と
前記被写体までの実撮影距離を求める実撮影距離算出工程と
を備え、
前記フォーカス制御工程は、
前記実撮影距離が前記最短撮影距離未満であるときに、前記ズーム制御工程により移動された前記ズームレンズの位置よりも前記ズームレンズをワイド側に移動した上で、前記合焦のためのフォーカスレンズの移動を行う、撮影装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24977(P2013−24977A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157970(P2011−157970)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】