説明

操作スイッチ構造

【課題】押し子が当接する部位に傷等の損傷を生じ難いと共に、所定の操作感を長期間維持し易く、しかも製造が容易な操作スイッチ構造を提供する。
【解決手段】押圧操作部15と離間して対向配置される基体部14に、平坦部と、押圧操作部15に対応する位置で平坦部から突出する弾性変形可能なドーム部17とを備え、平坦部及びドーム部17とがシート部材19により被覆され、このシート部材19は、ドーム部17の中央部に対応した位置に押圧操作部15側に突出する押し子21を備え、押圧操作部15を押圧操作することにより、押し子21を介してドーム部17が弾性変形可能に構成された操作スイッチ構造であり、シート部材19と押し子21とがエラストマーにより一体に形成され、シート部材19がドーム部17及び平坦部の表面に密着してシート部材19の粘着性により固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基体部表面に設けられたドーム部を、ドーム部に対向配置された押圧操作部を押圧操作することで弾性変形させるように構成された操作スイッチ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作スイッチ構造として、電気回路の接点部が基体部表面に設けられ、この基体部表面に接点部を覆うように弾性変形可能な金属製のドーム部が設けられると共に、このドーム部に対向してキートップが配置されたものが多数使用されている。この操作スイッチ構造は、キートップを押圧操作すると、ドーム部が押圧されて弾性変形し、変形したドーム部が接点部に接触することにより接点部が導通されるようになっている。
【0003】
このような操作スイッチ構造として、基体部表面に配置されたドーム部を、接着剤や粘着剤が塗布されたシート部材により基体部表面と共に被覆して固定したものが知られており、更に、シート部材のドーム部に対応する位置のキートップ側に押し子が突出して設けられ、キートップを押圧操作することにより、押し子を介してドーム部を弾性変形させるように構成したものが知られている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0004】
下記特許文献1では、シート部材の下面に粘着層が設けられ、この粘着層により複数の金属薄板からなるドーム部が保持されると共に、粘着層によりシート部材が配線基板に固定されている。そして、ドーム部の中央部に対応するシート部材の上面位置に押し子が接着剤により接合されており、キートップを押圧操作すると、押し子を介してドーム部が弾性変形するようになっている。この特許文献1では、押し子をキートップではなく、シート部材に設けることで、押し子の位置ズレを防止し、所定の操作感が得られるようにしている。
【0005】
また、特許文献2では、シート部材に押し子が接着剤により接合されており、押し子からはみ出して硬化される接着剤の径を異ならせることで、押し子を介してドーム部を弾性変形させる際の操作力を変化させ、異なる操作感が得られるようにしている。
【特許文献1】特開2002−216582号公報
【特許文献2】特開2004−186020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基体部及びドーム部を被覆するシート部材に押し子が設けられた従来の操作スイッチ構造では、押し子が硬質の樹脂からなるものが多く、また、押し子周囲にはみ出して硬化或いは固化した接着剤が硬質であるため、押圧操作が繰り返されると、押し子や接着剤が当接されるキートップ側の部位に、傷等の損傷を生じ易かった。
【0007】
また、押し子とシート部材との間やシート部材とドーム部との間が接着剤や粘着剤により接合されているため、製造時には、それぞれの間に接着剤層や粘着剤層を形成して接合し、更に、その接着剤層や粘着剤層を硬化或いは固化させなければならず、製造に手間を要していた。また、使用時には、繰り返し変形されることで接着剤層や粘着剤層に劣化や破壊が生じると、剥離等を生じて操作感が変化し易かった。
【0008】
そこで、この発明は、押し子が当接する部位に傷等の損傷を生じ難いと共に、適度な操作感を長期間維持し易く、しかも製造が容易な操作スイッチ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1に記載の発明は、押圧操作部と離間して対向配置される基体部に、平坦部と、前記押圧操作部に対応する位置で前記平坦部から突出する弾性変形可能なドーム部とを備え、前記平坦部及び前記ドーム部とがシート部材により被覆され、該シート部材は、前記ドーム部の中央部に対応した位置に前記押圧操作部側に突出する押し子を備え、前記押圧操作部を押圧操作することにより、前記押し子を介して前記ドーム部が弾性変形可能に構成された操作スイッチ構造であり、前記シート部材と前記押し子とがエラストマーにより一体に形成され、前記シート部材が前記ドーム部及び前記平坦部の表面に密着して該シート部材の粘着性により固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記シート部材の前記ドーム部側表面は、鏡面に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記シート部材の前記ドーム部に対応する位置には、前記押し子が前記ドーム部を押圧する押圧力を補強するための押圧力補強手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記押圧力補強手段は、前記シート部材の前記押し子に対応する位置に設けられ、前記エラストマーより硬質の硬質処理部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の構成に加え、前記押圧力補強手段は、前記シート部材の前記押し子に対応する位置の前記ドーム部側表面に、該ドーム部側に突出して設けられた突起部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記突起部は、前記エラストマーより硬質の材料からなることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至6の何れか一つに記載の構成に加え、前記押圧力補強手段は、前記シート部材の前記押し子に対応する位置の前記ドーム部側表面に、前記押し子の外周以上の大きさで設けられた環状凹部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れか一つに記載の構成に加え、前記基体部は、前記平坦部を有する基板と、該基板表面に配置される弾性変形可能な弾性ドームとを備え、前記シート部材は、前記弾性ドーム及び前記基板表面に密着していることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れか一つに記載の構成に加え、前記基体部は、基板表面に配置されて、前記平坦部及び前記ドーム部とを一体に有するドームシートを備え、前記シート部材は、前記ドームシートに密着していることを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れか一つに記載の構成に加え、前記押し子と前記押圧操作部との間にELシートが配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10の何れか一つに記載の構成に加え、前記基体部は、光源を備え、前記シート部材は、前記光源からの光が入射可能であると共に、該光源からの光の少なくとも一部が内部で導光されて該光源とは異なる位置で放射可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、押し子がシート部材と一体にエラストマーにより形成されているので軟質であり、その押し子が当接する部位に傷等の損傷を生じ難い。また、押し子とシート部材との間の接合状態が変化することがなく、剥離や位置ズレ等による操作感の変化が生じることがない。
【0021】
更に、シート部材が軟質であって、それ自体の粘着性によりドーム部及び平坦に固定されているので、シート部材をドーム部及び平坦部に密着させることで容易に接合でき、シート部材と基体部との間に接着剤や粘着剤を設けたり、硬化させる必要がなく、製造が容易である。
【0022】
また、使用時には、シート部材とドーム部との間に接着剤層や粘着剤層等の他の層が介在しないため、繰り返し変形を受けても、接着剤層や粘着剤層等の他の層の劣化や破壊により剥離が生じるようなことがない。しかも、シート部材とドーム部との間が離間したとしても、シート部材自体の粘着性により直ちに再度粘着して固定できる。その結果、剥離や位置ズレ等による操作感の変化が生じ難く、適度な操作感を長期間維持し易い。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、シート部材のドーム部側表面が鏡面に形成されているので、ドーム部及び平坦部の表面に粘着し易く、シート部材とドーム部及び平坦部との間の接合強度を向上し易い。
【0024】
請求項3乃至7の何れか一つに記載の発明によれば、シート部材のドーム部に対応する位置に、押し子がドーム部を押圧する押圧力を補強するための押圧力補強手段が設けられているので、押し子がエラストマーから形成されていて軟質であっても、押圧操作部を押圧操作した際の押圧力をドーム部の押し子に対応する部位に集中させてドーム部を弾性変形させ易く、押圧操作時の明確な操作感を確保し易い。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、基体部が基板と、この基板表面に配置される弾性ドームとを備え、シート部材がこれらに密着しているので、シート部材により弾性ドームを基板表面に保持することができ、弾性ドームを保持するための手段を別に設ける必要がなく、構成を簡単にできる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、平坦部及びドーム部とを一体に有するドームシートを備え、シート部材がこのドームシートに密着しているので、シート部材とドームシートとの間の接合強度を全面にわたり均一に確保することができ、耐久性を確保し易い。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、押し子と押圧操作部との間にELシートが配置されているため、ELシートにより近接位置から押圧操作部を照光でき、押圧操作部からより強い光を放出することができる。しかも、押し子とキートップとの間にELシートが配置されていても、押し子がエラストマーにより形成されて軟質であるため、使用時に押し子がELシートに繰り返し圧接されても、ELシートの押し子側の面に傷等の損傷が生じ難い。そのため、押し子によりELシートが局部的に破損されることがなく、ELシートの均一な発光状態を長期間維持し易い。
【0028】
請求項11に記載の発明によれば、シート部材が光源からの光を導光して、光源とは異なる位置で放射可能に構成されているので、押し子を所定位置に配置するためのシート部材を、押圧操作部を背面側から照射するために利用することができ、照光機能を有する操作スイッチ構造の部品点数を少なくして構成を簡単にし易いと共に、その分、薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を図を用いて説明する。
[実施の形態1]
【0030】
図1及び図2はこの実施の形態1を示す。この実施の形態1の操作スイッチ構造は、携帯電話のテンキーとして筐体に組み込まれて使用されるものである。
【0031】
図1に示すように、この操作スイッチ10では、1枚のプリント基板11の平坦部としての表面に、互いに離間して配置された電極12a、12bからなる接点部13が複数縦横に配列して設けられて、各接点部13上にそれぞれ金属製の弾性変形可能な弾性ドームからなるドーム部17が配置されることにより基体部14が構成され、全てのドーム部17が各ドーム部17周囲のプリント基板11の表面と共に1枚のシート部材19により被覆されている。シート部材19のドーム部17とは反対側の面には、各ドーム部17の中央部に対応する位置に円柱状の押し子21がそれぞれ突出して一体に形成されている。
【0032】
このシート部材19上には、押し子21の頂部と当接した状態で、図示しない導線により回路と接続されたELシート23が配置されており、このELシート23の表面の各接点部13に対応する位置に、多数の硬質樹脂等からなる押圧操作部としてのキートップ15が粘着層25により接合されている。
【0033】
この操作スイッチ10は、キートップ15を押圧操作すると、ELシート23とシート部材19に設けられた押し子21とがキートップ15と共に移動し、押し子21によりドーム部17が押圧されて弾性変形し、これにより接点部13が導通されるようになっている。
【0034】
このような操作スイッチ10のキートップ15は、光を透過可能な硬質樹脂からなり、外部から操作可能となるように頂面が露出して配置されている。キートップ15の表面或いは裏面には、抜き文字等を有する加飾層等が設けられている。
【0035】
ELシート23は、詳細な図示は省略されているが、複数の層が積層された構造を有し、押し子21側の面の電極層と、反対側の面の電極層とに電圧が印荷されることで発光する構成となっている。このELシート23が発光することで、キートップ15の抜き文字等が透過した光により外部から視認され、また、キートップ15間の間隙を透過した光により各キートップ15の視認性が向上されるようになっている。
【0036】
一方、基体部14のドーム部17は、ステンレス鋼等の弾性変形可能な薄肉金属板をドーム状に成形した成形品からなり、各ドーム部17がそれぞれ独立した部材となっている。各ドーム部17は平坦なプリント基板11の表面に、周縁部が一方の電極12aに当接し、中央部が他方の電極12bと離間した状態で配置されている。このドーム部17は、中央部が押圧されて弾性変形することにより、中央部が電極12bと接触して、電極12a、12b間が導通され、中央部の押圧が解除されると、弾性によりドーム状に復元し、中央部が電極12bと離間されるようになっている。
【0037】
そして、シート部材19は、各ドーム部17のキートップ15側の立体的形状を有する略全面と密着すると共に、ドーム部17の周囲のプリント基板11の表面と密着しており、シート部材19自体の粘着性により、ドーム部17及びプリント基板11の表面に固定されている。ここでは、ドーム部17が繰り返し弾性変形する際にも、シート部材19がドーム部17の表面に密着した状態で維持され、弾性変形に追従できるようになっている。なお、ドーム部17に隣接する周囲には、ドーム部17及びプリント基板11の何れにも密着していない非密着部位が存在していてもよい。例えば、ドーム部17が押圧された際、ドーム部17内から押し出された気体を滞留或いは放出するための導空路を確保してもよい。
【0038】
このシート部材19は、装着される前の状態において、ドーム部17及びプリント基板11と対向する側の面が平坦な平面に形成され、キートップ15側の面が平坦な平面に複数の押し子21が突出した形状に形成されている。ドーム部17及びプリント基板11に装着した状態では、変形してドーム部17及びプリント基板11の表面形状に対応した立体形状となる。なお、この装着した状態では各押し子21がそれぞれ各ドーム部17の中央部に対応する位置に配置される。
【0039】
このようなシート部材19は、ドーム部17及びプリント基板11に密着させることによりこれらに固定可能な程度の粘着性を備え、更に、ドーム部17の立体形状に沿って変形可能であると共に、ドーム部17の繰り返しの弾性変形に追従して自在に変形可能な程度の硬度を有する材料から形成されている。
【0040】
また、このシート部材19は押し子21を一体に備えるものであり、この押し子21がキートップ15を押圧した際、キートップ15と共に移動してドーム部17を弾性変形させるものであるため、シート部材19の材料としては、ドーム部17を押圧して変形させることが可能な程度の硬度を有すると同時に、この発明では、押し子21が対向して当接する部位、ここでは、ELシート23に傷等の損傷を生じ難くできる程度の硬度であることが要求される。
【0041】
このようなシート部材19を構成する材料としては、各種のエラストマー材料から選択することができる。エラストマー材料では、適度な硬度を選択し易く、同時に、表面粗さを小さく抑えることで、材料自体の粘着性を得易いからである。
【0042】
好ましくは、このエラストマー材料としては、JIS K6253 タイプAに準拠して測定される硬度が30度〜80度、より好ましくは50度〜70度のものが好適である。このような範囲より過剰に大きい硬度のものでは、薄肉に形成しても、ドーム部17の繰り返し変形に追従できる程度の柔軟性を得にくく、また、形成される押し子21が硬くなり、押し子21と対向する部位に傷等の損傷を生じ易くなるからである。
【0043】
この実施の形態1では、押し子21とキートップ15との間にELシート23が配置されているため、押し子21はELシート23の対向面を構成する層より小さい硬度とすることが好適であり、シート部材19を構成する材料の硬度としては、ELシート23の対向面を構成する層の硬度より小さい範囲とすることが特に好適である。
【0044】
一方、JIS K6253 タイプAに準拠して測定される硬度が前記のような範囲より過剰に小さいと、押し子21の形状保持性が不足し、キートップ15を押圧してドーム部17を弾性変形させる際に押し子21が潰れ易くなる結果、キートップ15の押圧操作量が増加し易くなり、また、押圧時に押し子21によりドーム部17を押圧する面積が増加し易くなるため、キートップ15を押圧操作する際の力が変動してキートップ15の操作感を悪化させ易い。
【0045】
このような材料により形成されるシート部材19では、押し子21を除くドーム部17と密着する部位のシート部材19の厚さが、0.05〜0.4mm、好ましくは0.07〜0.2mmに形成されるのが好適であり、より好ましくは、ドーム部17の近傍周囲の厚さもこのような厚さとされるのがよく、特に、押し子21を除くシート部材19の全体がこのような厚さとされるのが好適である。この範囲より過剰に厚い場合には、ドーム部17の繰り返し変形に追従できる程度の柔軟性を得にくくなる。一方、この範囲より過剰に薄い場合には、ドーム部17の繰り返し変形に追従して繰り返し変形を受けた際等に切れ等が生じ易くなり、耐久性に劣る。
【0046】
このような硬度及び厚さを有するシート部材19では、シート部材19が十分に軟質であるため、シート部材19がドーム部17及びプリント基板11の表面の形状に沿って変形し易く、ドーム部17及びプリント基板11の表面の広い範囲に密着し易くできる。また、シート部材19自体の粘着性によりシート部材19が確実にドーム部17の弾性変形に追従し易いと同時に、キートップ15の操作時に適度な操作力で押し子21によりドーム部を弾性変形させることが可能である。
【0047】
このようなエラストマー材料としては、繰り返しの押圧操作による変形等による劣化が生じ難くて耐久性に優れ、また、耐熱性に優れるという理由で、シリコーン樹脂が好適である。更に、シリコーン樹脂によりシート部材19を成形すると、エラストマーの粘着性を付与するために使用される粘着成分の添加量を抑え、或いは、無くすことができる。
【0048】
シート部材19をドーム部17やプリント基板11の表面に密着させる場合、シート部材19中にエラストマーを構成する主成分の骨格と結合されない状態で各種の混合成分が含まれていると、その成分が粘着面に移行して付着することがある。このような移行成分が付着すると、接合面を汚染し、導通不良等の各種の不具合が生じ易くなる。そのため、シリコーン樹脂を用いれば、そのような不具合を防止し易くできて好ましい。
【0049】
特に、ポリイミドシリコーン樹脂とするか、或いは、フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応基を有するフッ素系エラストマーの硬化物とするのが好適である。シロキサンオリゴマーが密着面に移行することを防止できるからである。
【0050】
このようなエラストマー材料を用いて形成されるシート部材19では、ドーム部17側の面が鏡面に形成されていることが好ましい。この鏡面とは、表面粗さが小さく抑えられている状態である。
【0051】
シート部材19の表面を鏡面とすると、シート部材19が密着するドーム部17及びプリント基板11の表面に対して、微視的に接触面積が増加する結果、シート部材19自体の粘着性によるこれらの面への接合強度を向上し易い。
【0052】
そのような鏡面は、例えばシート部材19を成形型を用いて成形する場合、シート部材19の押し子21が設けられていない面を形成する型面の表面粗さを小さく抑えることにより作製することが可能である。この型面の表面粗さとしては、例えば、三次元形状測定装置NH−3(三鷹光器株式会社製、商品名)等により測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.5μmの範囲となるものが好適である。
【0053】
一方、シート部材19の押し子21が設けられたドーム部17と密着しない面、即ち、キートップ15側の表面は、ドーム部17と密着する面より粗面に形成されていることが好ましい。押し子21が設けられた面は、スイッチ部材の内部の空間に露出した状態で配置されるため、塵埃等が侵入して接触し易く、侵入した塵埃が表面に付着することを防止し易いからである。
【0054】
以上のような構成を有する操作スイッチ10によれば、押し子21がシート部材19と一体にエラストマーにより形成されているので軟質であり、その押し子21が当接する部位に傷等の損傷を生じ難い。また、押し子21とシート部材19との間の接合状態が変化することがなく、剥離や位置ズレ等による操作感の変化が生じることがない。、
【0055】
更に、シート部材19がそれ自体の粘着性によりドーム部17やプリント基板11表面に固定されているので、ドーム部17を保持するための手段を別に設ける必要がなく、構成が簡単であり、また、シート部材19をドーム部17及びプリント基板11表面に密着させることで容易に接合でき、接着剤や粘着剤を設けたり、硬化させる必要がなく、更に、貼り直しなども容易に行え、製造が容易である。
【0056】
また、使用時には、シート部材19とドーム部17との間に接着剤層や粘着剤層等の他の層が介在しないため、繰り返し変形を受けても、接着剤層や粘着剤層等の劣化や破壊により剥離が生じるようなことがない。しかも、シート部材19とドーム部17との間が離間するようなことが起こったとしても、シート部材19自体の粘着性により再度粘着して固定できる。その結果、剥離や位置ズレ等による操作感の変化が生じ難く、適度な操作感を長期間維持し易い。
【0057】
また、この操作スイッチ10では、押し子21とキートップ15との間にELシート23が配置されているため、ELシート23により近接位置からキートップ15を照光でき、キートップ15の抜き文字等からより強い光を放出することができる。
【0058】
同時に、押し子21とキートップ15との間にELシート23が配置されていても、押し子21がエラストマーにより形成されて軟質であるため、使用時に押し子21がELシート23に繰り返し圧接されても、ELシート23の押し子21側の面に傷等の損傷が生じ難い。そのため、押し子21によりELシート23が局部的に破損されることがなく、ELシート23の均一な発光状態を長期間維持し易い。
【0059】
更に、この操作スイッチ10によれば、ドーム部17がプリント基板11表面に複数配置され、複数のドーム部17が同一のシート部材19により被覆されているので、1枚のシート部材19でプリント基板11表面に配置された複数のドーム部17を被覆して密着すれば、各ドームに対応する押し子21を所定位置に配置することができ、製造が容易である。
【0060】
また、この操作スイッチ10によれば、シート部材19がプリント基板11の表面を密着した状態で被覆しているため、外部からキートップ15間などを通して、塵埃や水分が侵入しても、プリント基板11に付着することがなく、防塵性、防水性を確保することができ、プリント基板11の機能を保護することができる。
【0061】
更に、シート部材19がエラストマーからなるため、被覆した回路や電子部品などの静電気対策も施せる。
【0062】
なお、上記実施の形態1では、押圧操作部として、硬質樹脂からなる多数のキートップ15を用いた例について説明したが、特に限定されるものではなく、一枚の弾性変形可能なシートの所定位置に押圧操作可能な部位を設けることにより形成された操作パネルなどであってもよい。
[実施の形態2]
【0063】
図3は、実施の形態2の操作スイッチ構造を示す。
【0064】
この実施の形態2では、プリント基板11の表面全面を覆うようにドームシート31が配置されて基体部14が構成され、ドームシート31の表面に押し子21を備えたシート部材19が密着して固定されている。このドームシート31は弾性を有するPET樹脂等の樹脂シートからなり、プリント基板11の表面に沿う平坦部34と、この平坦部34の各接点部13に対応する位置に突出して設けられたドーム部35とを一体に有している。ドーム部35は、樹脂シートにより平坦部34から連続してドーム状に形成された凸部32と、凸部32のプリント基板11と対向する内面に設けられた導電カーボン印刷層33とから構成されている。
【0065】
この実施の形態2では、シート部材19がドームシート31の平坦部34と、凸部32のキートップ15側の面との全面に密着して固定されている。その他は実施の形態1と同様である。
【0066】
このような操作スイッチ30であっても、実施の形態1と全く同様の作用効果を得ることができる。特に、ここでは、平坦部34及びドーム部35とを一体に有するドームシート31の表面に連続してシート部材19を密着しているので、シート部材19が密着される面の材料が全て同一であるため、シート部材19とドームシート31との間の接合強度が全面にわたり均一に確保することが可能である。そのため、繰り返し使用しても、シート部材19とドームシート31との間に剥離等が生じ難く、耐久性を確保し易い。
【0067】
なお、この実施の形態2では、ドームシートとしてドームシート31の凸部32の内面に導電カーボン印刷層33が一体に設けられた例について説明したが、特に限定されない。例えば、実施の形態1と同様に、薄肉金属板からそれぞれ独立にドーム状に形成された多数の成形品を、ドームシート31と同様の形状を有するドームカバーシートの多数の凸部の内側で支持するように構成することも可能であり、また、蒸着等により形成された金属層により構成することも可能である。このようなドームカバーシートであっても、シート部材19を密着して固定して使用に供することができる。
[実施の形態3]
【0068】
図4は、この実施の形態3の操作スイッチ構造を示している。この実施の形態3の操作スイッチ構造は、携帯電話のテンキーとして筐体に組み込まれて使用されるものである。
【0069】
この操作スイッチ40は、プリント基板11及びプリント基板11の表面全面を覆うドームシート31を有する基体部14と、ドームシート31の表面にシート部材19が密着して固定されたシート部材19と、多数の押圧操作部としてのキートップ15及び固定パネル47を有してシート部材19上に配置された操作パネル41とを備えている。
【0070】
基体部14のプリント基板11には、互いに離間して配置された電極12a、12bからなる接点部13が複数縦横に配列して設けられ、接点部13の位置とは異なる離間した位置に側面発光式のLED等からなる光源45を備えている。この光源45は、操作パネル41の各キートップ15を背面側から照光するものであり、固定パネル47により覆われている。
【0071】
基体部14のドームシート31は、弾性を有する樹脂シートからなり、プリント基板11の表面に沿う平坦部34と、この平坦部34の各接点部13に対応する位置に平坦部34より突出して設けられたドーム部35とを一体に有している。ドーム部35は、樹脂シートにより平坦部34から連続してドーム状に形成された凸部32と、凸部32のプリント基板11と対向する内面に設けられた導電カーボン印刷層33とから構成されている。
【0072】
各ドーム部35の導電カーボン印刷層33は、周縁部が一方の電極12aに当接し、中央部が他方の電極12bと離間した状態で配置されている。このドーム部35は、中央部が押圧されて弾性変形することにより、中央部が電極12bと接触して、電極12a、12b間が導通され、中央部の押圧が解除されると、弾性によりドーム状に復元し、中央部が電極12bと離間されるようになっている。
【0073】
なお、このドームシート31は、後述するように、シート部材19が密着した状態で光を導く部材であるため、ドームシート31の光学的性質がシート部材19の導光性能或いは放射性能に影響を与える。そのため、例えば、シート部材19が広い範囲で光を放射させる部材である場合には、ドームシート31自体やシート部材19側の表面が白色や金属色とされるのが好適である。また、シート部材19が内部で光を導いて所定部位だけで光を放射させる部材の場合には、ドームシート31自体やシート部材19側の表面を透明であって、シート部材19より低屈折率の材料により形成されるのが好適である。この実施の形態3では、ドームシート31がシート部材19より低屈折率の透明なPET樹脂から構成されている。
【0074】
この操作パネル41は、キーシート43に多数のキートップ15と固定パネル47とが粘着層25により接合されて構成されており、各キートップ15がプリント基板11の各接点部13に対応する位置に配置されている。
【0075】
キートップ15は、光を透過可能な硬質樹脂からなり、外部から操作可能となるように頂面が露出して配置されている。キートップ15の表面或いは裏面には、抜き文字等を有する加飾層等が設けられている。
【0076】
キーシート43は、各キートップ15が押圧操作された際に弾性変形可能であると共に、光を透過可能なPET樹脂やウレタン樹脂などから形成されている。必要に応じ、光の透過を阻止する遮光層が一部に設けられていてもよい。
【0077】
そして、基体部14と操作パネル41との間に配置されたシート部材19は、ドームシート31の平坦部34及びドーム部35のキートップ15側表面の全面に密着して固定されており、キートップ15側の面の各ドーム部35の中央部に対応する位置に円柱状の押し子21がそれぞれ突出して一体に形成されている。シート部材19は、シート部材19自体の粘着性により、ドームシート31の表面に固定されており、押し子21の頂部がシート部材19に当接した状態で配置されている。
【0078】
また、このシート部材19には、基体部14に設けられた光源45の発光面と対向する入射部49が設けられており、入射部49から入射された光がシート部材19の内部を通して導光されて少なくともドーム部35に対応する位置から放射されて、キートップ15を背面側から照射するように構成されている。
【0079】
このようなシート部材19は、装着される前の状態では、ドームシート31と対向する側の面が平坦な平面に形成され、キートップ15側の面が平坦な平面に複数の押し子21が突出すると共に、入射部49が光源45側で厚肉となり、周辺側に向けて薄くなる形状に形成されている。ドームシート31に装着した状態では、変形してドーム部35及び平坦部34の表面形状に対応した立体形状となる。なお、装着した状態では、各押し子21がそれぞれ各ドーム部35の中央部に対応する位置にそれぞれ配置されると共に、入射部49が光源45と対向する。
【0080】
このようなシート部材19は、ドームシート31に密着させることにより固定可能な程度の粘着性を備え、更に、ドーム部35の立体形状に沿って変形可能であると共に、ドーム部35の繰り返しの弾性変形に追従して自在に変形可能な程度の硬度を有する材料から形成されている。この材料は、押し子21がドーム部35を押圧して弾性変形させることが可能な程度の硬度を有すると同時に、押し子21が対向して当接するキーシート43に傷等の損傷を生じ難くできる程度の硬度を有することが要求される。キーシート43に傷等の損傷が生じると、光が不均一に散乱して、輝度のばらつきが生じ易くなるからである。
【0081】
同時に、この材料は、入射部49から入射された光の少なくとも一部が、各キートップ15に対応する位置まで内部で導光可能な程度の透明性を有することが要求される。
【0082】
このような材料としては、実施の形態1と同様のエラストマー材料であって、より多くの光を透過可能な透明なエラストマー材料を用いることができる。この実施の形態3では、ドームシート35より屈折率の大きい透明なシリコーンゴムが使用されている。ここでは、屈折率が小さくなり易いフッ素系のものは好ましくない。
【0083】
なお、シート部材19の表面に、特に、ドームシート31側の表面にフッ素系シリコーン樹脂をコーティングする等によりクラッド層を積層することにより、導光性能を向上することも可能である。
【0084】
また、シート材料19には、必要に応じて、光の透過性を確保できる範囲で、シリカ粉等の光散乱材を混入して光を散乱し易くすることなども可能である。
【0085】
このような材料により形成されるシート部材19では、入射部49及び押し子21を除くシート部材19の厚さが、0.05〜0.4mm、好ましくは0.1〜0.2mmに形成されるのが好適である。過剰に厚い場合には、ドーム部35の繰り返し変形に追従できる程度の柔軟性を得にくくなる。一方、過剰に薄い場合には、ドーム部35の繰り返し変形に追従して繰り返し変形を受けた際等に切れ等が生じ易くて耐久性に劣り易いと共に、光源45からの光が導光され難くなり、複数のキートップ15に対応する位置で放射される光が不均一になり易い。
【0086】
このようなエラストマー材料を用いて形成されるシート部材19では、ドームシート31側の表面が鏡面に形成されていることが好ましい。シート部材19の表面を鏡面とすると、ドームシート31に対して、微視的に接触面積が増加する結果、シート部材19自体の粘着性による接合強度を向上し易い。同時に、シート部材19の表面を鏡面とすると、シート部材19内で表面に反射されつつ導かれる光が乱反射され難くなり、シート部材19の導光性能を向上できるからである。
【0087】
一方、シート部材19の押し子21が設けられたドーム部35と密着しない表面、即ち、キートップ15側の表面は、ドーム部35と密着する面より粗い粗面に形成されていることが好ましい。押し子21が設けられた面は、スイッチ部材の内部の空間に露出した状態で配置されるため塵埃等が侵入して接触し易く、塵埃が表面に付着して不均一に乱反射が生じ易くなることを防止できるからである。
【0088】
なお、シート材料19から光を放射させる部位の表面、例えば、ドーム部35に対応する位置のキートップ15側の表面、或いは、ドームシート31側の表面が、平坦部34に対応する位置の表面より粗い表面粗さに形成されているのが好適である。このようにすれば、平坦部34に比べてドーム部35に対応する位置で光をより多く放射させ易くできるからである。
【0089】
シート部材19の表面を粗面化するには、例えば、シボ調面のように粗く粗面化してもよく、表面に各種の形状の凹部や凸部を、例えば、各ドーム部35に対応する位置毎に、2個乃至10個程度形成することも可能である。また、シート部材19自体ではなく、ドーム部35の表面を粗面に形成してシート部材19を密着させることで粗面化することも可能である。この実施の形態3では、ドーム部35に対応する位置の表面が、シボ調に粗面化されている。
【0090】
以上のような構成を有する操作スイッチ40を使用するには、操作パネル41のキートップ15を押圧操作すると、キートップ15及びキーシート43が移動すると共にシート部材19の押し子21がドーム部35側へ移動し、この押し子21によりドーム部35が押圧されて弾性変形し、これにより接点部13が導通される。また、キートップ15の押圧操作を解除すると、ドーム部35の弾性力により復元し、接点部13が離間される。
【0091】
そして、光源45が発光すると、光源45の側面側の発光面から光が放射されて入射部49に入射され、この光がシート部材19内で導かれて、各ドーム部35に対応する位置に到達する。このとき、ドームシート31の平坦部34に対応する位置では、より多くの光がシート部材19内で導光され、ドームシート31の各ドーム部35に対応する位置において、粗面化されたシート部材19の表面により乱反射されることで光が放射される。この放射された光がキーシート43を透過すると共に、キートップ15に設けられた抜き文字等を有する加飾層に応じて透過し、操作スイッチ40から放射されて外部から視認される。
【0092】
以上のような構成を有する操作スイッチ40によれば、押し子21がシート部材19と一体にエラストマーにより形成されているので軟質であり、その押し子21が当接するキーシート43に傷等の損傷を生じ難い。そのため、キーシート43を透過する光が傷等の損傷部位で乱反射され難く、長期間優れた外観を維持し易い。特に、キーシート43の押し子21が当接する部位に印刷層等が設けられていても、印刷層等に傷等の損傷が生じ難く、優れた外観を維持し易い。
【0093】
また、押し子21がシート部材19と一体であるため、これらの間の接合状態が変化することがなく、剥離や位置ズレ等による操作感の変化が生じることがない。、
【0094】
更に、シート部材19がそれ自体の粘着性によりドームシート31表面に固定されているので、シート部材19をドームシート31表面に密着させることで容易に接合でき、接着剤層や粘着剤層を設けたり、硬化させる必要がなく、また、貼り直しなども容易に行え、製造が容易である。
【0095】
しかも、シート部材19とドーム部35との間に接着剤層や粘着剤層等の他の層が介在しないため、使用時に繰り返し変形を受けても、接着剤層や粘着剤層等の劣化や破壊により剥離が生じるようなことがない。しかも、シート部材19とドーム部35との間が離間するようなことが起こったとしても、シート部材19自体の粘着性により直ちに再度粘着して固定できる。そのため、剥離や位置ズレ等による操作感の変化が生じ難い。更に、平坦部34及びドーム部35とを一体に有するドームシート31の表面に連続してシート部材19が密着しているので、シート部材19とドームシート31との間の接合強度が全面にわたり均一に確保することが可能である。そのため、繰り返し使用しても、シート部材19とドームシート31との間に剥離等が生じ難い。従って、適度な操作感を長期間維持し易く、耐久性を確保することが可能である。
【0096】
また、この操作スイッチ40では、シート部材19が光源45からの光を導光してキートップ15の背面側へ放射可能に構成されているので、押し子21を所定位置に配置するためのシート部材19を、キートップ15を背面側から照射するために利用することができる。そのため、操作スイッチ40の部品点数が少なくて構成が簡単であると共に、その分薄型化を図ることができる。
【0097】
なお、この実施の形態3では、ドームシートとしてドームシート31の凸部32の内面に導電カーボン印刷層33が一体に設けられた例について説明したが、特に限定されない。例えば、実施の形態1と同様に、薄肉金属板からそれぞれ独立にドーム状に形成された多数の成形品を、ドームシート31と同様の形状を有するドームカバーシートの多数の凸部の内側で支持するように構成することも可能であり、また、蒸着等により形成された金属層により構成することも可能である。このようなドームカバーシートであっても、シート部材19を密着して固定して使用に供することができる。
【0098】
また、この実施の形態3では、ドームシート31を用いた例について説明したが、実施の形態1と同様に、プリント基板11の表面に多数の金属製の弾性ドームからなるドーム部17を配置し、プリント基板11の表面及び多数のドーム部17に直接密着させてシート部材19を配置することも可能である。
[実施の形態4]
【0099】
図5は、この実施の形態4の操作スイッチ構造を示している。
【0100】
この実施の形態4の操作スイッチ50では、まず、プリント基板11上に設けられた光源51からの光が操作パネル41の背面側全面に略均一に照射されるように構成されている。
【0101】
具体的には、基体部14では、複数のキートップ15間に上面発光式の光源51が備えられており、ドームシート31には、シート部材19と接触する全面に白色着色層や金属被膜等の光散乱層が設けられている。また、シート部材19は光源51を被覆して設けられており、ドームシート31側表面が鏡面で、操作パネル41側の押し子21を除く全面がシボ調に粗面化されている。
【0102】
その他の構成は実施の形態3と同様である。そして、このような操作スイッチ50であっても、実施の形態3と同様の作用効果を得ることができる。
【0103】
更に、このような構成の操作スイッチ50では、光源51が発光すると、光源51から放射された光の一部がシート部材19を透過して操作パネル41の背面に照射され、他の一部がシート部材19内に入射されてシート部材19内で導光される。この導かれた光がシート部材19のドームシート31側表面に達すると、ドームシート31に設けられた光散乱層にて散乱され、シート部材19の操作パネル41側の表面から広い範囲で放射される。また、導かれた光がシート部材19の操作パネル41側表面に達すると、シボ調に粗面化された表面で乱反射され、操作パネル41側表面の広い範囲に放射される。
【0104】
従って、この実施の形態4の操作スイッチ50では、点光源である光源51が発光すると、操作パネル41の背面側の広い範囲に略均一に光を照射し易く、操作パネル41に輝度ムラを形成し難くて優れた意匠性を確保し易い。
[実施の形態5]
【0105】
図6は、この実施の形態5のシート部材の一部であり、上記実施の形態1〜4に用いることが可能なシート部材の変形例を示している。
【0106】
この実施の形態5のシート部材19には、各ドーム部17、35に対向する位置に設けられた押し子21の表面に、押し子21によりドーム部17、35を押圧する押圧力を補強するための押圧力補強手段としての硬質処理部53が設けられている。ここでは、押し子21の押圧力を補強するとは、キートップ15の押圧操作時にエラストマーからなるシート部材19、特に押し子21及びその近傍が変形してドーム部17、35を弾性変形させ難くなることを抑制可能な強度にすることである。
【0107】
この硬質処理部53は、押し子21の表面に設けられており、シート部材19を構成するエラストマー自体の硬度より高い硬度を有している。このような硬質処理部53は、エラストマーの表面硬度を増加する各種の方法により形成することができ、例えば、紫外線硬化樹脂からなるコーティング、ウレタンコーティング等のエラストマーより硬質材料からなる被膜を形成してもよい。この場合、処理可能であれば、押し子21の頂面及びその近傍には硬質処理部53を形成しなくてもよい。
【0108】
また、押し子21の近傍周囲のシート部材19の表面に硬質処理部53が形成される場合、押し子21を中心としてドーム部17、35の面積の10%以下の範囲とするのが好適である。硬質処理部53の形成される範囲が広い程、ドーム部17、35に対応するシート部材19の柔軟性が低下し易くなり、シート部材19がドーム部17、35の変形に追従し難くなるからである。
【0109】
更に、硬質処理部53の硬度は、少なくともシート部材19を構成するエラストマー自体の硬度より高いと共に、JIS K6253 タイプDに準拠した硬度が50度以下とするのが好適である。エラストマー自体の硬度以下では、押し子21の押圧力を補強することができず、硬質処理部53を設ける必要がなく、一方、過剰に硬度が高いと、キートップ15の押圧操作を繰り返した際、硬質処理部53が繰り返し操作パネル41に圧接されて傷等の損傷を生じ易いからである。
【0110】
このようなシート部材19を用いていても、実施の形態1〜4と同様の作用効果を得ることが可能である。特に、ここでは、シート部材19のドーム部17、35に対応する位置に硬質処理部53が設けられているので、押し子21がエラストマーから形成された軟質のものであっても、キートップ15を押圧操作した際に、押し子21の変形を防止して押圧力をドーム部17、35の押し子21に対応する部位に集中させることができ、ドーム部17、35を弾性変形させ易くできる。そのため、押圧操作時のクリック感などの明確な操作感を確保することが可能である。
[実施の形態6]
【0111】
図7は、この実施の形態6のシート部材の一部であり、上記実施の形態1〜4に用いることが可能なシート部材の他の変形例を示している。
【0112】
この実施の形態6のシート部材19には、押し子21に対応する位置のドーム部17、35側表面に、ドーム部17、35側に突出して設けられた押圧力補強手段としての突起部55を有している。
【0113】
この突起部55は、押し子21と同軸に、シート部材19と一体に形成されており、シート部材19のドーム部17、35側表面からの突出高さhは、例えば、0.05〜0.2mmとするのが好適である。この高さが低いと、十分な押圧力の補強効果を得にくくなり、一方、高すぎると、シート部材19を基体部14表面に密着させた際の接合強度が低下し易く、キートップ15の押圧操作時の操作感が低下し易い。
【0114】
また、この突起部55の平面視における形状は特に限定されるものではないが、ここでは、押し子21の平面視形状と同一又は相似とされている。そして、この平面視における突起部55の大きさは、最大幅d2が押し子21の最大幅d1に対して0.5〜2倍となるようにするのが好適である。平面視における大きさが過剰に小さいと、押圧操作時に突起部55の周囲のシート部材19が変形され易くなり操作感が低下し易く、一方、過剰に大きいと、ドーム部17、35の広い範囲を押圧することになり、明確な操作感を得にくくなる。
【0115】
このようなシート部材19を用いても、実施の形態1〜4と同様の作用効果を得ることが可能である。特に、ここでは、シート部材19のドーム部17、35に対応する位置に突起部55が設けられているので、押し子21がエラストマーから形成された軟質のものであっても、押圧力を突起部55に集中させて、突起部55の分だけドーム部17、35を強く押圧することができ、ドーム部17、35を弾性変形させ易い。そのため、押圧操作時のクリック感などの明確な操作感を確保することができる。
[実施の形態7]
【0116】
図8は、この実施の形態7のシート部材の一部であり、上記実施の形態1〜4に用いることが可能なシート部材の他の変形例を示している。
【0117】
この実施の形態7のシート部材19には、押し子21の表面に、実施の形態5と同様の硬質処理部53を有すると共に、押し子21に対応する位置のドーム部17、35側表面に、実施の形態6と同様の突起部55を有しており、更に、この突起部55にも実施の形態5と同様の硬質処理部53が設けられている。
【0118】
このようなシート部材19を用いても、実施の形態1〜4と同様の作用効果を得ることが可能である。また、硬質処理部53及び突起部55により、実施の形態5及び6と同様の作用効果を得ることができる。特に、ここでは、突起部55の表面にも硬質処理部53が設けられているため、押圧操作時のクリック感などの明確な操作感を確保し易い。
【0119】
なお、この実施の形態7では、硬質処理部53を押し子21の表面と突起部55の表面の両方に設けた例について説明したが、例えば、硬質処理部53が押し子21の表面だけに設けられていてもよく、突起部55の表面だけに設けられていてもよい。特に、突起部55の表面だけに設けられていれば、押圧操作時に硬質処理部53が操作パネル41に直接接触することがなく、操作パネル41に傷等の損傷を与えにくくできて好適である。
[実施の形態8]
【0120】
図9は、この実施の形態8のシート部材の一部であり、上記実施の形態1〜4に用いることが可能なシート部材の他の変形例を示している。
【0121】
この実施の形態8のシート部材19には、 押し子21に対応する位置のドーム部17、35側表面に、ドーム部17、35側に突出して設けられた押圧力補強手段としての硬質突起部57を有している。
【0122】
この硬質突起部57は、実施の形態6の突起部55と同様の形状を有しており、シート部材19を構成するエラストマーより硬質の材料から形成されている。この硬質の材料は、シート部材19と接着或いはインサート成形等により一体化可能な材料であれば適宜選択可能であり、例えば、紫外線硬化樹脂等の光硬化性樹脂を用いることが可能である。
【0123】
このようなシート部材19を用いても、実施の形態1〜4と同様の作用効果を得ることが可能である。特に、ここでは、シート部材19のドーム部17、35に対応する位置に硬質突起部57が設けられているので、押し子21がエラストマーから形成された軟質のものであっても、押圧力を硬質突起部57に集中させてドーム部17、35を強く押圧することが容易であり、ドーム部17、35を弾性変形させ易い。そのため、押圧操作時のクリック感などの明確な操作感を確保することができる。しかも、硬質突起部57を設けていても、ドーム部17、35側であるため、硬質突起部57や接着剤等が操作パネル41に直接接触することがなく、押圧操作が繰り返されても、操作パネル41に傷等の損傷が生じ難くできる。
[実施の形態9]
【0124】
図10は、この実施の形態9のシート部材の一部であり、上記実施の形態1〜4に用いることが可能なシート部材の他の変形例を示している。
【0125】
この実施の形態9のシート部材19には、 押し子21に対応する位置のドーム部17、35側表面に、押し子21の外周以上の大きさで設けられた押圧力補強手段としての環状凹部59を有している。
【0126】
この環状凹部59は、平面視における押し子21の周縁と同一の位置又はその外側に形成されており、ドーム部17、35側に開口し、幅を有する有底溝形状、有底スリット形状等の形状となっている。
【0127】
このような環状凹部59が設けられたシート部材19では、環状凹部59の部位の肉厚t2がシート部材19の他の部位の厚さt1に比べて薄肉に形成されており、これにより、押し子21が押圧された際、押し子21に対応する部位が他の部位より突出し易くなっている。
【0128】
このようなシート部材19を用いても、実施の形態1〜4と同様の作用効果を得ることが可能である。特に、ここでは、シート部材19のドーム部17、35に対応する位置に環状凹部59が設けられていて、押し子21に対応する部位がシート部材19の周囲の部位から突出し易く形成されているので、押圧力を押し子21に対応する部位に集中させてドーム部17、35を押圧し易く、その分、ドーム部17、35を弾性変形させ易い。そのため、押圧操作時の明確な操作感を確保し易くできる。しかも、環状凹部59がシート部材19の他の部位より薄肉に形成されているので、シート部材19の押し子21における肉厚が厚くなることを防止し易く、操作スイッチの薄肉化を図り易い。
【0129】
なお、この実施の形態9では、押圧力補強手段として環状凹部59のみを設けた例について説明したが、この環状凹部59と共に、実施の形態5〜9に示されるような各種の押圧力補強手段を合わせて設けることも可能である。このようにすれば、シート部材19の押し子21の部位における肉厚を薄く抑えつつ、押圧操作時の操作感を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】この発明の実施の形態1の操作スイッチ構造の断面図である。
【図2】この発明の同実施の形態1の操作スイッチ構造の一部を示す拡大断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2の操作スイッチ構造の一部を示す拡大断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3の操作スイッチ構造の断面図である。
【図5】この発明の実施の形態4の操作スイッチ構造の断面図である。
【図6】この発明の実施の形態5のシート部材の変形例の一部を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図7】この発明の実施の形態6のシート部材の変形例の一部を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態7のシート部材の変形例の一部を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態8のシート部材の変形例の一部を示す断面図である。
【図10】この発明の実施の形態9のシート部材の変形例の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0131】
10、30、40、50 操作スイッチ
11 プリント基板
14 基体部
15 キートップ
17 ドーム部
19 シート部材
21 押し子
23 ELシート
31 ドームシート
34 平坦部
35 ドーム部
41 操作パネル
45、51 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧操作部と離間して対向配置される基体部に、平坦部と、前記押圧操作部に対応する位置で前記平坦部から突出する弾性変形可能なドーム部とを備え、前記平坦部及び前記ドーム部とがシート部材により被覆され、該シート部材は、前記ドーム部の中央部に対応した位置に前記押圧操作部側に突出する押し子を備え、前記押圧操作部を押圧操作することにより、前記押し子を介して前記ドーム部が弾性変形可能に構成された操作スイッチ構造であり、
前記シート部材と前記押し子とがエラストマーにより一体に形成され、
前記シート部材が前記ドーム部及び前記平坦部の表面に密着して該シート部材の粘着性により固定されていることを特徴とする操作スイッチ構造。
【請求項2】
前記シート部材の前記ドーム部側表面は、鏡面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の操作スイッチ構造。
【請求項3】
前記シート部材の前記ドーム部に対応する位置には、前記押し子が前記ドーム部を押圧する押圧力を補強するための押圧力補強手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の操作スイッチ構造。
【請求項4】
前記押圧力補強手段は、前記シート部材の前記押し子に対応する位置に設けられ、前記エラストマーより硬質の硬質処理部を有することを特徴とする請求項3に記載の操作スイッチ構造。
【請求項5】
前記押圧力補強手段は、前記シート部材の前記押し子に対応する位置の前記ドーム部側表面に、該ドーム部側に突出して設けられた突起部を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の操作スイッチ構造。
【請求項6】
前記突起部は、前記エラストマーより硬質の材料からなることを特徴とする請求項5に記載の操作スイッチ構造。
【請求項7】
前記押圧力補強手段は、前記シート部材の前記押し子に対応する位置の前記ドーム部側表面に、前記押し子の外周以上の大きさで設けられた環状凹部を有することを特徴とする請求項3乃至6の何れか一つに記載の操作スイッチ構造。
【請求項8】
前記基体部は、前記平坦部を有する基板と、該基板表面に配置される弾性変形可能な弾性ドームとを備え、前記シート部材は、前記弾性ドーム及び前記基板表面に密着していることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一つに記載の操作スイッチ構造。
【請求項9】
前記基体部は、基板表面に配置されて、前記平坦部及び前記ドーム部とを一体に有するドームシートを備え、前記シート部材は、前記ドームシートに密着していることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一つに記載の操作スイッチ構造。
【請求項10】
前記押し子と前記押圧操作部との間にELシートが配置されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一つに記載の操作スイッチ構造。
【請求項11】
前記基体部は、光源を備え、前記シート部材は、前記光源からの光が入射可能であると共に、該光源からの光の少なくとも一部が内部で導光されて該光源とは異なる位置で放射可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一つに記載の操作スイッチ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−177155(P2008−177155A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287092(P2007−287092)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】