説明

改変第IX因子ポリペプチドおよびその使用

本発明は、改変第IX因子ポリペプチド、例えば1以上のアミノ酸置換を有する第IX因子ポリペプチドに関する。本発明はまた、改変第IX因子ポリペプチドを作成する方法、および改変第IX因子ポリペプチドを使用する方法、例えば、血友病 B に罹患している患者を処置するために改変第IX因子ポリペプチドを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への言及
本願は、2009年7月31日に出願された米国仮出願第61/230,551号に基づく優先権の利益を主張し、該米国仮出願は参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
分野
本願は、改変第IX因子ポリペプチド、例えば、増大した比活性を示す第IX因子ポリペプチドおよびポリマーと複合化した第IX因子ポリペプチドに関する。本願はまた、改変第IX因子ポリペプチドおよびその複合体を作成する方法、ならびに改変第IX因子ポリペプチドを使用する方法、例えば、血友病 B に罹患している患者を処置するために該ポリペプチドを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
背景
血友病 B は、34,500 人に一人の男性に発生し、低い又は検出不能な血中 FIX タンパク質をもたらす、凝固第IX因子(FIX)をコードする遺伝子の様々な遺伝的欠損によって引き起こされる (Kurachi, et al., Hematol. Oncol. Clin. North Am. 6:991-997, 1992; Lillicrap, Haemophilia 4:350-357, 1998)。FIX の不十分なレベルは、不完全な凝固、および制御されない出血に起因する症状をもたらす。血友病 B は、既に始まっている出血を止めるためまたは出血が起こるのを防ぐため(予防)の、血漿由来または組換えの FIX タンパク質の静脈内注入によって効果的に処置される (Dargaud, et al., Expert Opin. Biol. Ther. 7:651-663; Giangrande, Expert Opin. Pharmacother. 6:1517-1524, 2005)。効果的な予防には、正常レベルの約 1% の FIX の最小トラフレベルを維持することが必要である (Giangrande, Expert Opin. Pharmacother. 6:1517-1524, 2005)。ネイティブな(native) FIX (血漿由来または組換えのいずれか)の半減期はおよそ 18 から 24 時間であるため、FIX レベルはボーラス注入後 3 から 4 日以内に正常レベルの 1% 未満まで低下し、効果的な予防を達成するためには平均して3日毎に注入を繰り返すことが必要となる (Giangrande, Expert Opin. Pharmacother. 6:1517-1524, 2005)。かかる頻繁な静脈内注射は患者にとって問題があり、特に子供において、効果的な予防を達成する上での障害となる (Petrini, Haemophilia 13 Suppl 2:16-22, 2007)。増大した比活性を有する FIX タンパク質は、保護の持続時間を増大させる可能性を有しており、そのため、医学的に著しく有効なものである。
【発明の概要】
【0004】
概要
本願は、FIX の比活性を改善するよう改変されたアミノ酸配列を含む FIX ポリペプチド(改変 FIX ポリペプチド、FIX 変異タンパク質(mutein)、または FIX 変異体とも称する)を提供する。いくつかの態様において、1以上のアミノ酸置換が導入される。いくつかの態様において、該ポリペプチドは凝固活性を有する。いくつかの態様において、改変 FIX ポリペプチドは、アミノ酸残基 85、86、87、338 および 410 における少なくとも1つの置換を含み得る。
【0005】
改変 FIX ポリペプチドは、1以上のアミノ酸置換の導入によって、例えば任意のアミノ酸による置換によって、作成することができる。例示的な態様としては、1以上の置換、例えば、これらに限定されないが、以下の置換を含む FIX ポリペプチドが挙げられる:
(a) D85F; D85G; D85H; D85I; D85M; D85N; D85R; D85S; D85W; D85Y; V86A; V86D; V86E; V86G; V86H; V86I; V86L; V86M; V86N; V86P; V86Q; V86R; V86S; V86T; T87F; T87I; T87K; T87M; T87R; T87V; T87W; R338A; R338F; R338I; R338L; R338M; R338S; R338T; R338V; R338W; E410N; E410Q;
(b) D85W および T87R; D85F および T87I; D85W および T87W; D85R および T85R; D85I および T87R; D85Y および T87F; D85I および T87M; D85F および T87R; D85F および T87V; D85R および T87K; D85H および T87I; D85I および T87I; D85Y および T87K; D85S および T87R; D85Y および T87R; D85G および T87K; D85H および T87W; D85H および T87K; D85F および T87K; D85H および T87V; D85M および T87I; D85H および T87M; R338A および E410N; R338A および E410Q;
(c) D85W、V86A、および T87R; D85F、V86A、および T87I; D85W、V86A、および T87W; D85R、V86A、および T85R; D85I、V86A、および T87R; D85Y、V86A、および T87F; D85I、V86A、および T87M; D85F、V86A、および T87R; D85F、V86A、および T87V; D85R、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87I; D85I、V86A、および T87I; D85Y、V86A、および T87K; D85S、V86A、および T87R; D85Y、V86A、および T87R; D85G、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87W; D85H、V86A、および T87K; D85F、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87V; D85M、V86A、および T87I; D85H、V86A、および T87M;
(d) D85W、V86A、T87R、および R338A; D85F、V86A、T87I、および R338A; D85W、V86A、T87W、および R338A; D85R、V86A、T85R、および R338A; D85I、V86A、T87R、および R338A; D85Y、V86A、T87F、および R338A; D85I、V86A、T87M、および R338A; D85F、V86A、T87R、および R338A; D85F、V86A、T87V、および R338A; D85R、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87I、および R338A; D85I、V86A、T87I、および R338A; D85Y、V86A、T87K、および R338A; D85S、V86A、T87R、および R338A; D85Y、V86A、T87R、および R338A; D85G、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87W、および R338A; D85H、V86A、T87K、および R338A; D85F、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87V、および R338A; D85M、V86A、T87I、および R338A; D85H、V86A、T87M、および R338A;
(e) D85W、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85W、V86A、T87W、R338A、および E410N; D85R、V86A、T85R、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87F、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87M、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87V、R338A、および E410N; D85R、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85S、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85G、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87W、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87V、R338A、および E410N; D85M、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87M、R338A、および E410N; D85W、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85W、V86A、T87W、R338A、および E410Q; D85R、V86A、T85R、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87F、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87M、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87V、R338A、および E410Q; D85R、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85S、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85G、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87W、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87V、R338A、および E410Q; D85M、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87M、R338A、および E410Q; ならびにこれらのいずれかの組合せ。
【0006】
本願はまた、FIX の比活性を改善するよう改変されたアミノ酸配列および FIX ポリペプチドに共有結合した1以上のポリマー部分を含む FIX ポリペプチド複合体を提供する。いくつかの態様において、該ポリマー部分は FIX ポリペプチド上の糖部分に共有結合しており、ここで、該糖部分は、哺乳類細胞における発現中に、ペプチドに自然に共有結合するものである。
【0007】
本願はまた、改変 FIX ポリペプチドおよび医薬上許容される担体を含む医薬品(pharmaceutical preparation)を提供する。
【0008】
本願はまた、治療上有効量の本明細書に記載される医薬品を必要としている対象に投与することを含む、血友病 B を処置する方法を提供する。
【0009】
本願はまた、該改変ポリペプチドをコードする DNA 配列、および該 DNA 配列を用いてトランスフェクトされた真核宿主細胞を提供する。
【0010】
本願はまた、以下の工程を含む、改変 FIX ポリペプチドを生産する方法を提供する:(i) 1以上のアミノ酸置換を導入することによってポリペプチドのアミノ酸配列を改変する工程; (ii) 該ポリペプチドを、例えば哺乳類の細胞株において、発現させる工程; および (iii) 該ポリペプチドを精製する工程。
【0011】
本願はまた、以下を含む複合体を提供する: a)1以上のアミノ酸置換を導入することによって改変されたアミノ酸配列を含む第IX因子ポリペプチド、ここで、少なくとも1つのアミノ酸置換が残基 338 におけるものである; b)該1以上のグリコシル化部位に結合した1以上の糖部分; および c)1以上の糖部分に共有結合した1以上のポリマー部分。
【0012】
本願はまた、以下の工程を含む、ポリマー部分のポリペプチドとの複合化を改善する方法を提供する: a) 1以上のグリコシル化部位を有するポリペプチドを提供する工程、ここで、該グリコシル化部位は1以上のシアル酸を含む; b) 該ポリペプチドの該シアル酸を酸化する工程; c) 触媒を提供する工程; および d) アミノ-オキシ官能基を含むポリマー部分を、該酸化されたシアル酸に共有結合させる工程。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図 1 は、正常ラットにおける糖PEG化された(glycoPEGylated)FIX-R338A、FIX-R338A および組換え野生型 FIX の、用量で標準化した(dose normalized)薬物動態プロファイルを示すグラフである。
【図2】図 2 は、血友病 B マウスにおける糖PEG化された FIX-R338A、FIX-R338A および rFIX の薬物動態プロファイルを示すグラフである。
【図3】図 3 は、rFIX、FIX-R338A または糖PEG化された FIX-R338A の静脈内注射後の血友病 B マウスの血漿中における FIX 活性を示すグラフである。
【図4】図 4 は、触媒を用いたPEG化反応および用いないPEG化反応の、SDS-PAGE による経時的解析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の説明
本願は、1以上のアミノ酸置換を含む FIX ポリペプチドを提供する。例えば、改変 FIX ポリペプチドは、アミノ酸残基 85、86、87、338 および 410 における少なくとも1つの置換を含み得る。改変 FIX ポリペプチドは、例えば血友病 B 患者における出血からの保護時間の延長をもたらす、増大した比活性を有し得る。改変 FIX ポリペプチドは、現在利用できる野生型 FIX タンパク質による治療によって可能になる場合よりも少ない回数の FIX の注入によって血友病 B 患者が出血からの保護を達成することを可能にする。
【0015】
活性化された第VII因子(FVII)は、血管壁に対する傷害の結果として放出される組織因子(TF)と複合体を形成することによって通常の止血過程を開始する。該複合体はその後 FIX を活性化する; FIXa と称される活性形態。該 FIX の活性化ペプチドは、第XIa因子(FXIa)または組織因子(TF)/第VIIa因子複合体のいずれかによる2つの部位におけるタンパク質分解性切断によって除去され、触媒的に活性な分子である第IXa因子(FIXa)が生成される。FIXa および第VIIIa因子(FVIIIa)は、FX を第Xa因子(FXa)に変換し、次いで第Xa因子がプロトロンビンをトロンビンに変換する。次いで、トロンビンがフィブリノーゲンをフィブリンに変換し、フィブリン血餅の形成がもたらされる。
【0016】
野生型 FIX は多数の翻訳後修飾を有しており、そのいくつかはインビボの薬物動態プロファイルにおいて役割を果たすことが示唆されているものである。血友病 B の効果的な処置となるためには、FIX は、生産された後、酵素活性を維持し、FVIII、FXI および FX と相互作用しなければならない。置換されたアミノ酸の導入がこれらの相互作用および機能を乱してはならない。本願は、一つには、機能の乱れは最小でありながら増大した比活性をもたらす可能性が高い FIX の改変を提供する。FIX の比活性を増強する変化は、凝固活性の潜在的な喪失を補うことができ、また、タンパク質のより低いレベルにおける有効性を付与することによって、改変された分子の有効性を延長する可能性もある。
【0017】
改変 FIX ポリペプチド
本願は、1以上のアミノ酸置換を含む FIX ポリペプチド、即ち、改変 FIX ポリペプチドを提供する。本明細書において用いる場合、“第IX因子”とは、内因性凝固経路のメンバーであり、且つ、血液凝固に必須である FIX タンパク質をいう。この定義が FIX タンパク質のネイティブ形態および組換え形態を含むことは理解されるはずである。特に断りのない限り、本明細書において用いる FIX は、凝固におけるその通常の役割において機能的であるあらゆる ヒト FIX タンパク質分子を意味し、そのいずれかの断片、類似体、変異体および誘導体もこれに含まれる。“断片”、“誘導体”、“類似体”、“変異タンパク質”および“変異体”の用語は、本願のポリペプチドについて言う場合、実質的に同じ生物学的機能または活性を維持している、ポリペプチドの断片、誘導体、類似体、変異タンパク質および変異体を意味する。
【0018】
FIX ポリペプチドの非限定的な例としては、FIX、FIXa、および FIX 活性を有する FIX の切断されたバージョンが挙げられる。少なくともある程度の FIX 活性を維持している、上記のもののいずれかの生物学的に活性な断片、欠失変異体、置換変異体または付加変異体もまた、FIX ポリペプチドとして機能を果たすことができる。いくつかの態様において、FIX ポリペプチドは、配列番号 1 と少なくとも約 70、80、90 または 95% 同一であるアミノ酸配列を含み得る。いくつかの態様において、改変 FIX ポリペプチドは、生物学的に活性なものである。生物学的活性は、例えば本明細書に記載される凝固アッセイによって、決定することができる。
【0019】
改変 FIX ポリペプチドは、アミノ酸の保存的置換を含み得る。保存的置換は、当該技術分野において、あるアミノ酸の、同様の特性を有する別のアミノ酸への置換として認識されており、例えば、アラニンからセリンへの変更; アルギニンからリジンへの変更; アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへの変更; アスパラギン酸からグルタミン酸への変更; システインからセリンへの変更; グルタミンからアスパラギンへの変更; グルタミン酸からアスパラギン酸への変更; グリシンからプロリンへの変更; ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへの変更; イソロイシンからロイシンまたはバリンへの変更; ロイシンからバリンまたはイソロイシンへの変更; リジンからアルギニンへの変更; メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへの変更; フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニンへの変更; セリンからスレオニンへの変更; スレオニンからセリンへの変更; トリプトファンからチロシンへの変更; チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへの変更; およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの変更が挙げられる。いくつかの態様において、配列番号 1 の FIX ポリペプチドは、1から30個、1から20個、または 1から10個の保存的アミノ酸置換を含む。
【0020】
特定のアミノ酸の一文字表記、それに対応するアミノ酸、および三文字表記は以下の通りである: A、アラニン (Ala); C、システイン (Cys); D、アスパラギン酸 (Asp); E、グルタミン酸 (Glu); F、フェニルアラニン (Phe); G、グリシン (Gly); H、ヒスチジン (His); I、イソロイシン (Ile); K、リジン (Lys); L、ロイシン (Leu); M、メチオニン (Met); N、アスパラギン (Asn); P、プロリン (Pro); Q、グルタミン (Gln); R、アルギニン (Arg); S、セリン (Ser); T、スレオニン (Thr); V、バリン (Val); W、トリプトファン (Trp); Y、チロシン (Tyr); および、ノルロイシン (Nle)。
【0021】
改変 FIX ポリペプチドは、グリコシル化され得る。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には N-結合または O-結合のいずれかである。N-結合とは、アスパラギン残基の側鎖への糖部分の結合をいう。トリペプチド配列 Asn-X-Ser および Asn-X-Thr(ここで X はプロリンを除く任意のアミノ酸である)は、Asn 側鎖への糖部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中におけるこれらトリペプチド配列のいずれかの存在が、潜在的な N-結合グリコシル化部位を作り出す。代表的な N-結合グリコシル化部位は、X1-Asn-X2-X3-X4 と表すことができる; ここで X1 は随意に Asp、Val、Glu、Gly または Ile であり; X2 は Pro を除く任意のアミノ酸であり; X3 は Ser または Thr であり; かつ、X4 は随意に Val、Glu、Gly、Gln または Ile である。FIX ポリペプチドへの N-結合グリコシル化部位の付加は、1以上の上記のトリペプチド配列が導入されるようアミノ酸配列を変更することによって達成される。
【0022】
O-結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸への、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの、糖である N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのいずれかの結合をいうが、5-ヒドロキシプロリンまたは 5-ヒドロキシリジンへの結合も可能である。FIX ポリペプチドへの O-結合グリコシル化部位の付加は、1以上の Ser または Thr 残基が導入されるようアミノ酸配列を変更することによって達成され得る。
【0023】
グリコシル化部位は、例えば1以上のアミノ酸残基を欠失させること、1以上の内在性 FIX アミノ酸残基を別のアミノ酸によって置換すること、または1以上のアミノ酸残基を付加することによって、導入することができる。アミノ酸残基の付加は、存在する2つのアミノ酸残基の間、またはネイティブな FIX 分子の N-もしくは C-末端のいずれにおけるものであってもよい。
【0024】
アミノ酸置換について用いる語法は、以下の通りである。最初の文字は、ヒト FIX のある位置において天然に存在するアミノ酸残基を表す。それに続く数字は、成熟したヒト FIX のアミノ酸配列(配列番号 1)における位置を表す。2番目の文字は、天然のアミノ酸を置換する別のアミノ酸を表す。例えば、V86A は、配列番号 1 の位置 86 における Val 残基が Ala 残基によって置換されていることを示す。
【0025】
本明細書において用いる FIX の残基番号体系は成熟ヒト FIX タンパク質の残基番号を参照するものであり、残基 1 が、シグナル配列およびプロペプチドの両方が除去された後の成熟 FIX ポリペプチドの最初のアミノ酸を表す。ネイティブまたは野生型の FIX が、配列番号 1 に示される完全長成熟ヒト FIX 分子である。
【0026】
1以上のアミノ酸置換を有する改変 FIX ポリペプチドの特性を対照ポリペプチドと比較することが望まれ得る。比較する特性としては、例えば、溶解性、活性、血漿半減期、および結合特性が挙げられる。比較のために最も適切な対照ポリペプチドを選択することは当業者の技術の範囲内である。いくつかの態様において、対照ポリペプチドは、1以上のアミノ酸置換以外は改変ポリペプチドと同一のものであってもよい。例示的なポリペプチドとしては、野生型 FIX ポリペプチド、および1以上の活性化置換、例えば R338A および/または V86A を含む FIX ポリペプチドが挙げられる。
【0027】
本願の一つの側面として、対照ポリペプチドと比較して増大した比活性を有する改変 FIX ポリペプチドが提供される。治療の有効性を達成するのに必要な投与頻度を減らすためには、増強された比活性が望まれ得る。したがって、特定の態様において、該 FIX ポリペプチドは、対照タンパク質と比較して約 20、30、40、60、80、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900 または 1000% 増大した比活性を有する。
【0028】
本明細書において、患者へポリペプチド薬剤を投与する文脈で用いられる“半減期”の用語は、患者における薬剤の血漿濃度が半分に減少するのに必要な時間として定義される。薬物動態解析の方法ならびに半減期およびインビボの安定性の決定方法は、当業者によく知られている。詳細は、Kenneth, et al., Chemical Stability of Pharmaceuticals: A Handbook for Pharmacists および Peters, et al., Pharmacokinetc analysis: A Practical Approach (1996) において見出すことができる。また、薬物動態パラメーター、例えば t-αおよび t-β半減期ならびに曲線下面積(AUC)が記載されている“Pharmacokinetics,” M Gibaldi & D Perron, published by Marcel Dekker, 2nd Rev. edition (1982) も参照される。
【0029】
改変 FIX ポリペプチドの活性は、絶対値、例えばユニットとして記載してもよく、または対照ポリペプチドの活性のパーセンテージとして記載してもよい。FIX の比活性は、凝固カスケードにおいて機能する能力、活性化された血小板上における FVIIIa との相互作用を介する FXa の形成を誘導する能力、または血餅の形成を支援する能力として定義することができる。活性は、例えば McCarthy, et al., (Thromb. Haemost. 87:824-830, 2002)に記載される血餅解析等の手法や当業者に公知の他の手法によってインビトロで評価することができる。活性は、その系統から生じる動物が FIX を欠損しているものとなるよう血友病 B の遺伝的突然変異と意図的に交配された幾つかの動物系統の一つを用いて、インビボで評価することもできる。かかる系統は、様々な供給源、例えば、これらに限定されないが、Division of Laboratories and Research, New York Department of Public Health, Albany, N.Y. および Department of Pathology, University of North Carolina, Chapel Hill, N.C. から入手することができる。これら供給源は両者とも、例えば、イヌ血友病 B に罹患したイヌを提供している。あるいは、FIX を欠損したマウスも入手することができる (Sabatino, et al., Blood 104:2767-2774, 2005)。FIX 活性 を試験するためには、被験ポリペプチドを罹患動物に注入し、小さな切り傷を作り、出血時間を健康な対照と比較する。
【0030】
ヒト野生型 FIX は、1 mgあたり 200 ユニット前後の比活性を有する。FIX の1ユニットは、1ミリリットルの正常な(プールされた)ヒト血漿(100%の FIX レベルに相当する)中に存在する FIX の量として定義されている。いくつかの態様において、改変 FIX ポリペプチドは、FIX ポリペプチド1mgあたり少なくとも約 200 ユニット、300 ユニット、400 ユニット、500 ユニットまたはそれ以上の比活性を有し得る。いくつかの態様において、改変 FIX ポリペプチドは、FIX ポリペプチド1mgあたり少なくとも約 500 ユニット、600 ユニット、700 ユニット、750 ユニットまたはそれ以上の比活性を有し得る。いくつかの態様において、FIX の比活性は、APTT すなわち活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイ(例えば Proctor, et al., Am. J. Clin. Pathol. 36:212, 1961 に記載されている)を用いて測定することができる。
【0031】
細胞、例えば肝臓または腎臓細胞において発現される場合、FIX ポリペプチドは、細胞機構によって合成され得、翻訳後修飾を受け、その後該細胞によって細胞外環境へ分泌される。したがって、細胞から分泌される FIX ポリペプチドの量は、タンパク質翻訳および細胞外分泌の両方の過程に依存する。いくつかの態様において、改変 FIX ポリペプチドは、対照タンパク質の分泌量に対して約 10、20、30、40、50、60、70 または 80% より大きく減少しない量で分泌され得る。例えば、改変 FIX ポリペプチドが対照 FIX ポリペプチドと比較して少なくとも約 20% の量で分泌される場合、改変 FIX ポリペプチドは対照 FIX ポリペプチドに対して約 80% より大きく減少しない量で分泌される。分泌される FIX ポリペプチドの量は、例えば、公知の方法を用いて細胞外の培地中におけるタンパク質レベルを決定することによって測定し得る。タンパク質定量のための伝統的な方法としては、2-D ゲル電気泳動、質量分析および抗体結合が挙げられる。生物学的サンプル中のタンパク質レベルをアッセイするための代表的な方法としては、抗体に基づく手法、例えばイムノブロッティング(ウエスタンブロッティング)、免疫組織学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、またはラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。
【0032】
いくつかの態様において、改変 FIX ポリペプチドは、対照タンパク質と FVIII、FXI または FX の少なくとも1つとの相互作用に対して約 40、50、60、70 または 80% より大きく減少しないレベルで、FVIII、FXI または FX の少なくとも1つと相互作用する。例えば、改変 FIX ポリペプチドは、対照 FIX ポリペプチドと比較して少なくとも 約 20% のレベルで FVIII、FXI または FX の少なくとも1つと相互作用する場合、対照 FIX ポリペプチドに対して約 80% より大きく減少しないレベルで FVIII、FXI または FX の少なくとも1つと相互作用し得る。凝固カスケードの他のメンバーとの FIX の結合は、例えば Chang, et al., (J. Biol. Chem. 273:12089-12094, 1998) に記載される方法を含む、当業者に公知のあらゆる方法によって決定することができる。
【0033】
本願は、一つには、1以上のアミノ酸置換を含む FIX ポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、D85F; D85G; D85H; D85I; D85M; D85N; D85R; D85S; D85W; D85Y; V86A; V86D; V86E; V86G; V86H; V86I; V86L; V86M; V86N; V86P; V86Q; V86R; V86S; V86T; T87F; T87I; T87K; T87M; T87R; T87V; T87W; R338A; R338F; R338I; R338L; R338M; R338S; R338T; R338V; R338W; E410N; E410Q; またはこれらのいずれかの組合せから選択される1以上の置換を含む FIX ポリペプチドが提供される。
【0034】
いくつかの態様において、D85W および T87R; D85F および T87I; D85W および T87W; D85R および T85R; D85I および T87R; D85Y および T87F; D85I および T87M; D85F および T87R; D85F および T87V; D85R および T87K; D85H および T87I; D85I および T87I; D85Y および T87K; D85S および T87R; D85Y および T87R; D85G および T87K; D85H および T87W; D85H および T87K; D85F および T87K; D85H および T87V; D85M および T87I; D85H および T87M; R338A および E410N; R338A および E410Q; またはこれらのいずれかの組合せから選択される1以上の置換を含む FIX ポリペプチドが提供される。
【0035】
いくつかの態様において、D85W、V86A、および T87R; D85F、V86A、および T87I; D85W、V86A、および T87W; D85R、V86A、および T85R; D85I、V86A、および T87R; D85Y、V86A、および T87F; D85I、V86A、および T87M; D85F、V86A、および T87R; D85F、V86A、および T87V; D85R、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87I; D85I、V86A、および T87I; D85Y、V86A、および T87K; D85S、V86A、および T87R; D85Y、V86A、および T87R; D85G、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87W; D85H、V86A、および T87K; D85F、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87V; D85M、V86A、および T87I; D85H、V86A、および T87M; またはこれらのいずれかの組合せから選択される1以上の置換を含む FIX ポリペプチドが提供される。
【0036】
いくつかの態様において、D85W、V86A、T87R、および R338A; D85F、V86A、T87I、および R338A; D85W、V86A、T87W、および R338A; D85R、V86A、T85R、および R338A; D85I、V86A、T87R、および R338A; D85Y、V86A、T87F、および R338A; D85I、V86A、T87M、および R338A; D85F、V86A、T87R、および R338A; D85F、V86A、T87V、および R338A; D85R、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87I、および R338A; D85I、V86A、T87I、および R338A; D85Y、V86A、T87K、および R338A; D85S、V86A、T87R、および R338A; D85Y、V86A、T87R、および R338A; D85G、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87W、および R338A; D85H、V86A、T87K、および R338A; D85F、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87V、および R338A; D85M、V86A、T87I、および R338A; D85H、V86A、T87M、および R338A; またはこれらのいずれかの組合せから選択される1以上の置換を含む FIX ポリペプチドが提供される。
【0037】
いくつかの態様において、D85W、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85W、V86A、T87W、R338A、および E410N; D85R、V86A、T85R、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87F、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87M、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87V、R338A、および E410N; D85R、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85S、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85G、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87W、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87V、R338A、および E410N; D85M、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87M、R338A、および E410N; D85W、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85W、V86A、T87W、R338A、および E410Q; D85R、V86A、T85R、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87F、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87M、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87V、R338A、および E410Q; D85R、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85S、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85G、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87W、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87V、R338A、および E410Q; D85M、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87M、R338A、および E410Q; およびこれらのいずれかの組合せから選択される1以上の置換を含む FIX ポリペプチドが提供される。
【0038】
いくつかの態様において、以下から選択される1以上の置換を含む FIX ポリペプチドが提供される:
(a) D85F; D85G; D85H; D85I; D85M; D85N; D85R; D85S; D85W; D85Y; V86A; V86D; V86E; V86G; V86H; V86I; V86L; V86M; V86N; V86P; V86Q; V86R; V86S; V86T; T87F; T87I; T87K; T87M; T87R; T87V; T87W; R338A; R338F; R338I; R338L; R338M; R338S; R338T; R338V; R338W; E410N; E410Q;
(b) D85W および T87R; D85F および T87I; D85W および T87W; D85R および T85R; D85I および T87R; D85Y および T87F; D85I および T87M; D85F および T87R; D85F および T87V; D85R および T87K; D85H および T87I; D85I および T87I; D85Y および T87K; D85S および T87R; D85Y および T87R; D85G および T87K; D85H および T87W; D85H および T87K; D85F および T87K; D85H および T87V; D85M および T87I; D85H および T87M;
(c) D85W、V86A、および T87R; D85F、V86A、および T87I; D85W、V86A、および T87W; D85R、V86A、および T85R; D85I、V86A、および T87R; D85Y、V86A、および T87F; D85I、V86A、および T87M; D85F、V86A、および T87R; D85F、V86A、および T87V; D85R、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87I; D85I、V86A、および T87I; D85Y、V86A、および T87K; D85S、V86A、および T87R; D85Y、V86A、および T87R; D85G、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87W; D85H、V86A、および T87K; D85F、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87V; D85M、V86A、および T87I; D85H、V86A、および T87M; R338A および E410N; R338A および E410Q;
(d) D85W、V86A、T87R、および R338A; D85F、V86A、T87I、および R338A; D85W、V86A、T87W、および R338A; D85R、V86A、T85R、および R338A; D85I、V86A、T87R、および R338A; D85Y、V86A、T87F、および R338A; D85I、V86A、T87M、および R338A; D85F、V86A、T87R、および R338A; D85F、V86A、T87V、および R338A; D85R、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87I、および R338A; D85I、V86A、T87I、および R338A; D85Y、V86A、T87K、および R338A; D85S、V86A、T87R、および R338A; D85Y、V86A、T87R、および R338A; D85G、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87W、および R338A; D85H、V86A、T87K、および R338A; D85F、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87V、および R338A; D85M、V86A、T87I、および R338A; D85H、V86A、T87M、および R338A;
(e) D85W、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85W、V86A、T87W、R338A、および E410N; D85R、V86A、T85R、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87F、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87M、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87V、R338A、および E410N; D85R、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85S、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85G、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87W、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87V、R338A、および E410N; D85M、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87M、R338A、および E410N; D85W、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85W、V86A、T87W、R338A、および E410Q; D85R、V86A、T85R、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87F、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87M、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87V、R338A、および E410Q; D85R、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85S、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85G、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87W、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87V、R338A、および E410Q; D85M、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87M、R338A、および E410Q; およびこれらのいずれかの組合せ。
【0039】
本願のさらなる側面において、増大した比活性を有する FIX ポリペプチドが提供される。いくつかの態様において、該ポリペプチドは、ポリペプチド1mgあたり少なくとも 約 200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1400、1600、1800、2000、4000、6000、8000 ユニットまたはそれ以上の比活性を有し得る。比活性は、上記の通りに、例えば APTT アッセイを用いて決定することができる。これらのポリペプチドは、特に血友病 B に罹患している患者において、治療剤として有用である。これらのポリペプチドは、さらなる置換または改変、例えば本明細書に記載のグリコシル化部位を含み得る。
【0040】
本願の1つの側面において、以下のアミノ酸配列を含む改変第IX因子ポリペプチドが提供される:
YNSGKLEEFVQGNLERECMEEKCSFEEAREVFENTERTTEFWKQYVDGDQCESNPCLNGGSCKDDINSYECWCPFGFEGKNCELX85X86X87CNIKNGRCEQFCKNSADNKVVCSCTEGYRLAENQKSCEPAVPFPCGRVSVSQTSKLTRAETVFPDVDYVNSTEAETILDNITQSTQSFNDFTRVVGGEDAKPGQFPWQVVLNGKVDAFCGGSIVNEKWIVTAAHCVETGVKITVVAGEHNIEETEHTEQKRNVIRIIPHHNYNAAINKYNHDIALLELDEPLVLNSYVTPICIADKEYTNIFLKFGSGYVSGWGRVFHKGRSALVLQYLRVPLVDRATCLX338STKFTIYNNMFCAGFHEGGRDSCQGDSGGPHVTEVEGTSFLTGIISWGEECAMKGKYGIYTKVSRYVNWIKX410KTKLT (配列番号 2);

ここで、X85 は D、F、G、H、I、M、N、R、S、W、および Y から選択される;
ここで、X86 は A、D、E、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、および V から選択される;
ここで、X87 は F、I、K、M、R、T、V、および W から選択される;
ここで、X338 は A、F、I、L、M、R、S、T、V、および W から選択される;
ここで、X410 は E、N、および Q から選択される。
【0041】
少なくとも1つのアミノ酸置換の導入は、X の位置の少なくとも1つにおける置換の結果である。いくつかの態様において、改変ポリペプチドは、約 1から30、1から20、または 1から10 個の間の保存的アミノ酸変化をさらに含み、且つ、FIX 活性を維持している。いくつかの態様において、改変ポリペプチドは、配列番号 1 と少なくとも約 80、85、90、95 または 99% 同一であり、且つ、FIX 活性を維持している。
【0042】
改変 FIX ポリペプチドの生産
アミノ酸配列の変更は、様々な手法により、例えば対応する核酸配列を部位特異的変異誘発によって改変することにより、達成することができる。部位特異的変異誘発のための手法は当該技術分野において周知であり、例えば Zoller, et al., (DNA 3:479-488, 1984) または Horton, et al., (Gene 77:61-68, 1989, pp. 61-68) に記載されている。即ち、FIX のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を用いて、所望の変更を導入することができる。同様に、特定のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応を用いて DNA コンストラクトを作成する方法は、当業者に周知である (例えば、PCR Protocols, 1990, Academic Press, San Diego, California, USA を参照)。
【0043】
FIX ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトもまた、確立された標準的な方法、例えば Beaucage, et al., (Gene Amplif. Anal. 3:1-26, 1983) に記載されるホスホラミダイト法によって合成的に作成することができる。ホスホラミダイト法においては、オリゴヌクレオチドを、例えば自動 DNA 合成機において合成し、精製し、アニールさせ、連結させ、適切なベクター中にクローニングする。FIX ポリペプチドをコードする DNA 配列は、例えば米国特許第4,683,202号 または Saiki, et al., (Science 239:487-491, 1988) に記載されるのと同様に、特定のプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応によって作成することもできる。さらに、核酸コンストラクトは、標準的な手法にしたがって、核酸コンストラクト全体の様々な部分に対応する合成由来、ゲノム由来または cDNA 由来の断片(必要に応じて)を連結することによって作成される、合成およびゲノム由来のもの、合成および cDNA由来のもの、またはゲノムおよび cDNA 由来のものが混在したものであってもよい。
【0044】
FIX ポリペプチドをコードする DNA 配列は、組換え DNA 技術を用いて組換えベクター中に挿入することができる。ベクターの選択は、該ベクターを導入する宿主細胞に依存することが多い。ベクターは、自己複製ベクターであってもよく、あるいは組み込み型ベクターであってもよい。自己複製ベクターは、染色体外の実体(extrachromosomal entity)として存在し、かつ、その複製が染色体の複製とは独立しているものであり、例えば、プラスミドである。組み込み型ベクターは、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、該ベクターが組み込まれた染色体と共に複製されるベクターである。
【0045】
ベクターは、改変 FIX をコードする DNA 配列が DNA の転写、翻訳またはプロセシングに必要なさらなるセグメント、例えばプロモーター、ターミネーターおよびポリアデニル化部位と作動可能に連結している発現ベクターであり得る。一般的に、発現ベクターはプラスミドもしくはウイルス DNA に由来するものであり得、または両方の要素を含むものであってもよい。“作動可能に連結”の用語は、セグメントが、その意図された目的に一致して機能するよう、例えば、転写がプロモーターにおいて開始され、ポリペプチドをコードする DNA 配列の中を進むよう、配置されていることを示す。
【0046】
FIX ポリペプチドを発現させる際に用いられる発現ベクターは、クローニングされた遺伝子または cDNA の転写を指揮(direct)することができるプロモーターを含み得る。プロモーターは、所望の宿主細胞において転写活性を示すあらゆる DNA 配列であり得、宿主細胞に対して相同な又は異種性のタンパク質をコードする遺伝子に由来するものであり得る。
【0047】
哺乳類細胞において FIX ポリペプチドをコードする DNA の転写を指揮するのに適したプロモーターの例は、例えば、SV40 プロモーター (Subramani, et al., Mol. Cell Biol. 1:854-864, 1981)、MT-I(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター (Palmiter, et al., Science 222:809-814, 1983)、CMV プロモーター (Boshart, et al., Cell 41:521-530, 1985)またはアデノウイルス 2 主要後期プロモーター (Kaufman et al.,, Mol. Cell Biol, 2:1304-1319, 1982)である。
【0048】
FIX ポリペプチドをコードする DNA 配列は、必要であれば、適切なターミネーター、例えばヒト成長ホルモンターミネーター (Palmiter, et al., Science 222:809-814, 1983) または TPIl (Alber et al., J. MoI. Appl. Gen. 1:419-434, 1982) もしくは ADH3 (McKnight, et al., EMBO J. 4:2093-2099, 1985) ターミネーターに作動可能に連結したものであってもよい。発現ベクターは、挿入部位の下流に位置するポリアデニル化シグナルを含むものであってもよい。ポリアデニル化シグナルとしては、SV40 の初期もしくは後期ポリアデニル化シグナル、アデノウイルス 5 EIb 領域のポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーター (DeNoto, et al., Nucl. Acids Res. 9:3719-3730, 1981)、またはヒト FIX 遺伝子のポリアデニル化シグナルが挙げられる。発現ベクターは、エンハンサー配列、例えば SV40 エンハンサーを含むものであってもよい。
【0049】
本発明の FIX ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路の中へ向けるために、ネイティブな FIX の分泌シグナル配列を用い得る。あるいは、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列またはプレ配列としても知られる)は、組換えベクター中において提供されてもよい。分泌シグナル配列は、FIX 類似体をコードする DNA 配列に正しい読み枠で連結され得る。分泌シグナル配列は、通常、ペプチドをコードする DNA 配列に対して 5'に位置している。例示的なシグナル配列としては、例えば、MPIF-1 のシグナル配列およびスタニオカルシンのシグナル配列が挙げられる。
【0050】
FIX ポリペプチド、プロモーターおよび所望によりターミネーターおよび/または分泌シグナル配列をコードする DNA 配列を連結するため、およびそれらを複製に必要な情報を含む適切なベクター中へ挿入するために用いられる手法は、当業者に周知である(例えば Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989 を参照)。
【0051】
哺乳類細胞をトランスフェクトし、細胞に導入された DNA 配列を発現させる方法は、例えば Kaufman, et al., (J. Mol. Biol. 159:601-621, 1982); Southern, et al., (J. Mol. Appl. Genet. 1:327-341, 1982); Loyter, et al., (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:422-426, 1982); Wigler, et al., (Cell 14:725-731, 1978); Corsaro, et al., (Somatic Cell Genetics 7:603-616, 1981), Graham, et al., (Virology 52:456-467, 1973); および Neumann, et al., (EMBO J. 1:841-845, 1982) に記載されている。クローニングされた DNA 配列は、例えばリポフェクション、DEAE-デキストランに媒介されるトランスフェクション、マイクロインジェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、レトロウイルス送達、エレクトロポレーション、ソノポレーション(sonoporation)、レーザー照射、マグネトフェクション(magnetofection)、自然形質転換(natural transformation)および微粒子銃形質転換によって、培養された哺乳類細胞に導入することができる(例えば Mehier-Humbert, et al., Adv. Drug Deliv. Rev. 57:733-753, 2005 を参照)。外来性の DNA を発現する細胞を同定および選択するために、通常、選択可能な表現型(選択可能なマーカー)を付与する遺伝子が、対象の遺伝子または cDNA と共に細胞に導入される。選択可能なマーカーとしては、例えば、薬剤、例えばネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートに対する耐性を付与する遺伝子が挙げられる。選択可能なマーカーは、マーカーおよび外来性 DNA の配列が連結している場合にこれらの増幅が可能になる、増幅可能な選択可能なマーカーであってもよい。例示的な増幅可能な選択可能なマーカーとしては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびアデノシンデアミナーゼが挙げられる。適切な選択可能なマーカーを選択することは、当業者の技術の範囲内である(例えば、米国特許第5,238,820号を参照)。
【0052】
DNA を用いて細胞をトランスフェクトした後、細胞を適切な増殖培地中で生育させて対象の遺伝子を発現させる。本明細書において用いる“適切な増殖培地”の用語は、栄養素ならびに細胞の生育および活性な FIX ポリペプチドの発現に必要な他の成分を含む培地を意味する。
【0053】
一般的に、培地は、例えば炭素源、窒素源、必須アミノ酸、必須の糖、ビタミン、塩、リン脂質、タンパク質および成長因子を含み、さらに、ビタミン K 依存性タンパク質、例えば FIX の場合には、ビタミン K も提供され得る。次いで、薬剤選択を適用して、選択可能なマーカーを安定に発現している細胞の増殖を選択する。増幅可能な選択可能なマーカーを用いてトランスフェクトした細胞については、増大したコピー数のクローニングされた配列を選択するために薬剤濃度を増大させることができ、それにより発現レベルを増大させることができる。次いで、安定にトランスフェクトされた細胞のクローンを、FIX ポリペプチドの発現についてスクリーニングする。
【0054】
本発明において使用するための哺乳類細胞株の例は、COS-1 (ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK)、HKB11 細胞 (Cho, et al., J. Biomed. Sci, 9:631-638, 2002)、および HEK-293 (ATCC CRL 1573; Graham, et al., J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977) 細胞株である。さらに、ラット Hep I (ラット肝細胞癌; ATCC CRL 1600)、ラット Hep II (ラット肝細胞癌; ATCC CRL 1548)、TCMK-1 (ATCC CCL 139)、Hep-G2 (ATCC HB 8065)、NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1)、CHO-K1 (ATCC CCL 61) および CHO-DUKX 細胞 (Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980) を含む、多数の他の細胞株を本発明において用いることができる。
【0055】
FIX ポリペプチドは、細胞培養培地から回収することができ、次いで、これらに限定されないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシングおよびサイズ排除)、電気泳動法(例えば調整用(preparative)等電点電気泳動(IEF))、溶解度差(differential solubility)(例えば硫酸アンモニウム沈殿)、抽出(例えば Protein Purification, Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989 を参照) またはこれらの様々な組合せを含む当該技術分野において公知の様々な手法によって精製することができる。例示的な態様において、ポリペプチドは、抗 FIX 抗体カラム上での親和性クロマトグラフィーによって精製し得る。さらなる精製は、常套の化学的精製手段、例えば高速液体クロマトグラフィーによって達成し得る。他の精製方法は当該技術分野において公知であり、改変 FIX ポリペプチドの精製に適用することができる (例えば、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982 を参照)。
【0056】
一般的に、“精製された”とは、分画に供されて様々な他の成分が除去されており、かつ、その発現される生物学的活性を実質的に維持しているタンパク質またはペプチド組成物をいう。“実質的に精製された”との用語を用いる場合、該用語は、タンパク質またはペプチドがその主要な構成要素、例えば該組成物中のタンパク質の約 50%、約 60%、約 70%、約 80%、約 90%、約 95%、約 99% またはそれ以上を構成する構成要素となっている組成物をいう。
【0057】
ポリペプチドの精製の程度を定量するための様々な方法が、当業者に公知である。これら方法としては、例えば、活性な画分の比活性を決定すること、または画分内のポリペプチドの量を SDS/PAGE 解析によって評価することが挙げられる。ある画分の純度を評価するための例示的な方法は、該画分の比活性を算出し、該活性を最初の抽出物の比活性と比較し、そして純度を計算する方法であり、該純度は本明細書において“倍精製数(fold purification number)”によって評価される。活性の量を表すために用いられる実際のユニットは、当然、特定のアッセイ手法に依存する。
【0058】
いくつかの態様において、FIX ポリペプチドは組織培養細胞において組換えにより発現されるものであり、グリコシル化は、宿主細胞、例えば哺乳類細胞の通常の翻訳後細胞機能の結果である。他の例において、細胞は、発現したポリペプチドへの所望の糖部分の付加が細胞内において起こるよう、酵素および所望のポリペプチドの組合せを発現するよう遺伝的に操作されている。あるいは、グリコシル化は、化学的または酵素的修飾によって達成することができる (例えば Lee, et al., J. Biol. Chem. 264:13848-13855, 1989 を参照)。ポリペプチドのグリコシル化パターンをカスタマイズするための様々な方法が、当該技術分野において提案されている (例えば WO 99/22764; WO 98/58964; WO 99/54342; 米国公開第2008/0050772号; および米国特許第5,047,335号を参照)。
【0059】
ポリマー複合化
改変 FIX ポリペプチドは、ポリマー部分を結合させるために用い得る1以上のポリマー複合化部位をさらに含み得る。いくつかの態様において、FIX ポリペプチドは、生体適合性のポリマーと複合化し得る。生体適合性のポリマーは、所望の薬物動態の改善を提供するために選択することができる。例えば、許容できない活性の減少を伴うことなく FIX 活性を有するポリペプチドの循環半減期を改善するため又はポリペプチドの抗原性を減少させるために、ポリマーの同一性(identity)、サイズおよび構造を選択することができる。
【0060】
改変 FIX ポリペプチドは、哺乳類細胞における発現中に該ペプチドに自然に結合する1以上の糖部分を含み得る。いくつかの態様において、糖部分は、ポリマー部分を結合させるための複合化部位として機能し得る。いくつかの態様において、ポリマー部分は、様々なリンカーまたは結合化学(linkage chemistry)を用いて、糖部分と結合させることができる。例えば、ポリマー部分は、ヒドラゾン結合またはアミノオキシ結合によって、糖部分と複合化させることができる。
【0061】
本発明において有用なポリマーの例としては、これらに限定されないが、ポリ(アルキレングリコール)、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(“PPG”)、エチレングリコールおよびプロピレングリコール等のコポリマー、ポリ(オキシエチル化(oxyethylated)ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルフォリン)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチル スターチ(HES)、ポリエチレンオキサイド、アルキル-ポリエチレンオキサイド、ビスポリエチレンオキサイド、および、ポリアルキレンオキサイド、ポリ(エチレングリコール-コ-プロピレングリコール)、ポリ(N-2-(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)のコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにデキストランが挙げられる。
【0062】
ポリマーは、特定の構造には限定されず、直鎖状(例えば、アルコキシPEG または二官能性PEG)であってもよく、または非直鎖状、例えば分枝状、フォーク状(forked)、多腕状(multi-armed)(例えば、ポリオールのコアに結合した PEG)および樹状であってもよい。さらに、ポリマーの内部構造は、あらゆる異なるパターンで組織化することができ、ホモポリマー、交互(alternating)コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマーおよびブロックトリポリマーからなる群より選択され得る。
【0063】
PEG および他の水溶性ポリマー(即ち、高分子試薬)は、FIX ポリペプチド上の所望の部位に結合するのに適した適当な活性化基によって活性化され得る。したがって、高分子試薬は、FIX ポリペプチドとの反応のための反応性基を有する。代表的な高分子試薬、およびこれらの高分子を活性部分と複合化する方法は、当該技術分野において公知であり、Zalipsky、et al., ("Use of Functionalized Poly(Ethylene Glycols) for Modification of Polypeptides" in Polyethylene Glycol Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications, J. M. Harris, Plenus Press, New York (1992)) および Zalipsky (Adv. Drug Rev. 16:157-182, 1995)においてさらに記載されている。
【0064】
ポリマーの重量平均分子量は、約 100 ダルトンから約 150,000 ダルトンであり得る。しかし、例示的な範囲としては、約 5,000 ダルトンより大きく約 100,000 ダルトンまでの範囲、約 6,000 ダルトンから約 90,000 ダルトンの範囲、約 10,000 ダルトンから約 85,000 ダルトンの範囲、約 10,000 ダルトンより大きく約 85,000 ダルトンまでの範囲、約 20,000 ダルトンから約 85,000 ダルトンの範囲、約 53,000 ダルトンから約 85,000 ダルトンの範囲、約 25,000 ダルトンから約 120,000 ダルトンの範囲、約 29,000 ダルトンから約 120,000 ダルトンの範囲、約 35,000 ダルトンから約 120,000 ダルトンの範囲、および約 40,000 ダルトンから約 120,000 ダルトンの範囲の重量平均分子量が挙げられる。
【0065】
生体適合性ポリマーについての例示的な重量平均分子量としては、約 100 ダルトン、約 200 ダルトン、約 300 ダルトン、約 400 ダルトン、約 500 ダルトン、約 600 ダルトン、約 700 ダルトン、約 750 ダルトン、約 800 ダルトン、約 900 ダルトン、約 1,000 ダルトン、約 1,500 ダルトン、約 2,000 ダルトン、約 2,200 ダルトン、約 2,500 ダルトン、約 3,000 ダルトン、約 4,000 ダルトン、約 4,400 ダルトン、約 4,500 ダルトン、約 5,000 ダルトン、約 5,500 ダルトン、約 6,000 ダルトン、約 7,000 ダルトン、約 7,500 ダルトン、約 8,000 ダルトン、約 9,000 ダルトン、約 10,000 ダルトン、約 11,000 ダルトン、約 12,000 ダルトン、約 13,000 ダルトン、約 14,000 ダルトン、約 15,000 ダルトン、約 20,000 ダルトン、約 22,500 ダルトン、約 25,000 ダルトン、約 30,000 ダルトン、約 35,000 ダルトン、約 40,000 ダルトン、約 45,000 ダルトン、約 50,000 ダルトン、約 55,000 ダルトン、約 60,000 ダルトン、約 65,000 ダルトン、約 70,000 ダルトンおよび約 75,000 ダルトンが挙げられる。上記のいずれかの総分子量を有する分枝状の生体適合性ポリマー(例えば、2つの 20,000 ダルトンのポリマーによって構成される 40,000 ダルトンの分枝状ポリマー)も用いることができる。
【0066】
いくつかの態様において、ポリマーは PEG である。PEG は、市販されているかまたは当該技術分野において周知の方法によるエチレングリコールの開環重合によって調製することができる周知の水溶性ポリマーである(Sandler and Karo, Polymer Synthesis, Academic Press, New York, Vol. 3, pages 138-161)。“PEG”の用語は、サイズや該 PEG の末端における修飾に関わりなく、あらゆるポリエチレングリコール分子を包含するよう広く用いられ、以下の式によって表され得る: X−O(CH2CH2O)n-1CH2CH2OH、式中、n は 20 から 2300 であり、X は H または末端修飾、例えば C1-4アルキルである。PEG は、結合反応に必要であるか、分子の化学合成によって生じるか、または分子の部分の最適な距離のためのスペーサーとして機能する、さらなる化学基を含み得る。さらに、かかる PEG は、連結された1以上の PEG 側鎖からなるものであってもよい。1より多くの PEG 鎖を有する PEG は、多腕状 PEG または分枝状 PEG と称される。分枝状 PEG は、例えば、グリセロール、ペンタエリスリトール(pentaerythriol)およびソルビトールを含む様々なポリオールへのポリエチレンオキサイドの付加によって作成することができる。例えば、4腕の(four-armed)分枝状 PEG は、ペンタエリスリトールおよびエチレンオキサイドから作成することができる。分枝状 PEG の例は、例えば、欧州出願公開第473084A および米国特許第5,932,462号に記載されている。PEG の一つの形態は、リジンの第一級アミノ基を介して連結した2つの PEG 側鎖(PEG2)を含むものである (Monfardini, et al., Bioconjugate Chem. 6:62-69, 1995)。
【0067】
一つの態様において、ポリマーは、エンドキャップ(end-capped)ポリマー、即ち、比較的不活性な基、例えば低級 C1-6 アルコキシ基によりキャップされた少なくとも1つの末端を有するポリマーであり得るが、ヒドロキシル基を用いてもよい。ポリマーが PEG である場合、例えば、ポリマーの一方の末端がメトキシ(--OCH3)基を有し、他方の末端がヒドロキシルまたは所望により化学的に修飾されていてもよい他の官能基である直鎖状の PEG であるメトキシ-PEG (通常、mPEG と称される)を用い得る。
【0068】
多腕状または分枝状の PEG 分子、例えば米国特許第5,932,462号に記載されるものも、PEG ポリマーとして使用し得る。さらに、PEG はフォーク状 PEG を含み得る (例えば、PCT 公開第 WO 1999/45964 は、本発明の1以上の態様において用い得る様々なフォーク状 PEG 構造を開示している)。分枝する炭素原子に Z 官能基を結合させる原子鎖は、繋留基(tethering group)として機能し、例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖およびこれらの組合せを含み得る。
【0069】
PEG ポリマーは、PEG 鎖の末端ではなく PEG の長さに沿って共有結合した反応性基、例えばカルボキシルを有するペンダント(pendant)PEG分子を含むものであってもよい。ペンダント反応性基は、直接的にまたはスペーサー部分、例えばアルキレン基を介して PEG に結合し得る。
【0070】
ポリペプチドへのポリマー分子の共有結合をもたらすためには、該ポリマー分子のヒドロキシル末端基が活性化形態、即ち反応性の官能基(例として、第一級アミノ基、ヒドラジド(HZ)、チオール、スクシナート(succinate)(SUC)、スクシンイミジルスクシナート(succinimidyl succinate)(SS)、スクシンイミジルスクシンアミド(succinimidyl succinamide)(SSA)、スクシンイミジルプロピオナート(succinimidyl propionate)(SPA)、スクシンイミジルブタノアート(succinimidyl butanoate)(SBA)、スクシンイミジルカルボキシメチラート(succinimidyl carboxymethylate)(SCM)、ベンゾトリアゾールカルボナート(benzotriazole carbonate)(BTC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、アルデヒド、ニトロフェニルカルボナート(nitrophenylcarbonate)(NPC)およびトレシラート(tresylate)(TRES)が挙げられる)を有する形態で提供される必要がある。適切に活性化されたポリマー分子が市販されており、例えば、NOF、Japan; Nektar Therapeutics、Inc.、Huntsville、Ala.; PolyMASC Pharmaceuticals plc、UK; または SunBio Corporation、Anyang City、South Korea が挙げられる。あるいは、ポリマー分子は、当該技術分野において公知の常套の方法によって活性化することができる (例えば WO 90/13540 を参照)。本発明における使用に適する活性化された直鎖状または分枝状ポリマー分子の具体例は、市販されているものであり、例えば、NOF、Japan; Nektar Therapeutics、Inc.、Huntsville、Ala のものである。活性化 PEG ポリマーの具体例としては、以下の直鎖状 PEG: NHS-PEG、SPA-PEG、SSPA-PEG、SBA-PEG、SS-PEG、SSA-PEG、SC-PEG、SG-PEG、SCM-PEG、NOR-PEG、BTC-PEG、EPOX-PEG、NCO-PEG、NPC-PEG、CDI-PEG、ALD-PEG、TRES-PEG、VS-PEG、OPSS-PEG、IODO-PEG および MAL-PEG、ならびに分枝状 PEG、例えば PEG2-NHS、PEG2-MAL、および、例えば、いずれも参照により本願明細書に取り込まれている米国特許第5,932,462号および米国特許第5,643,575号に開示されているものが挙げられる。
【0071】
一つの態様において、ポリマーは、FIX ポリペプチド上の遊離システインと反応して共有結合を形成し得るスルフヒドリル反応性部分を有する。かかるスルフヒドリル反応性部分としては、チオール、トリフラート、トレシラート、アジリジン、オキシラン、S-ピリジルまたはマレイミド部分が挙げられる。さらに、参照により本明細書に取り込まれている以下の公報が、有用なポリマー分子および/またはPEG化化学を開示している: 米国特許第6,113,906号; 第7,199,223号; 第5,824,778号; 第5,476,653号; 第4,902,502号; 第5,281,698号; 第5,122,614号; 第5,219,564号; 第5,736,625号; 第5,473,034号; 第5,516,673号; 第5,629,384号; 第5,382,657号; WO 97/32607; WO 92/16555; WO 94/04193; WO 94/14758; WO 94/17039; WO 94/18247; WO 94/28024; WO 95/00162; WO 95/11924; WO95/13090; WO 95/33490; WO 96/00080; WO 97/18832; WO 98/41562; WO 98/48837; WO 99/32134; WO 99/32139; WO 99/32140; WO 96/40791; WO 98/32466; WO 95/06058; WO 97/03106; WO 96/21469; WO 95/13312; WO 98/05363; WO 96/41813; WO 96/07670; EP809996; EP921131; EP605963; EP510356; EP400472; EP183503; EP154316; EP229108; EP402378; および EP439508。
【0072】
システイン残基のPEG化に関して、ポリペプチドをPEG化の前に還元剤、例えばジチオスレイトール(DDT)で処理することができる。還元剤はその後、常套の方法、例えば脱塩によって除去され得る。システイン残基と PEG の複合化は、通常、適切なバッファー中において、pH 6-9、4℃から 25℃まで変動する温度において、最長で約 16 時間の間、行われる。システイン残基と結合するための活性化された PEG ポリマーの例としては、例えば、以下の直鎖状および分枝状 PEG が挙げられる: ビニルスルホン-PEG (PEG-VS)、例えばビニルスルホン-mPEG (mPEG-VS); オルトピリジル-ジスルフィド-PEG (PEG-OPSS)、例えばオルトピリジル-ジスルフィド-mPEG (MPEG-OPSS); およびマレイミド-PEG (PEG-MAL)、例えばマレイミド-mPEG (mPEG-MAL) および分枝状マレイミド-mPEG2 (mPEG2-MAL)。
【0073】
一つの態様において、1以上の導入されたポリマー複合化部位を有する FIX ポリペプチドは、ジスルフィド結合を形成することによってポリペプチドのシステイン残基を“キャップ”する、システインを含有する細胞培養培地中で生育させた細胞において発現させることができる。ポリマー複合体を FIX ポリペプチドに付加するために、キャップを遊離させる穏やかな還元によって該システインキャップを除去することができ、その後、システイン特異的な高分子試薬を添加する。
【0074】
本願はまた、ポリマー複合化部位、即ちシステイン残基を、FIX ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に導入する工程; 該突然変異したヌクレオチド配列を発現させて、導入されたポリマー複合化部位を含むポリペプチドを生産する工程; 該ポリペプチドを精製する工程; 該ポリペプチドを、還元されたシステイン残基においてポリペプチドと反応するよう活性化された生体適合性ポリマーと反応させて、複合体を形成させる工程; および該複合体を精製する工程を含む、ポリマーと複合化した FIX ポリペプチドの作成方法を提供する。別の態様において、本願は、以下の工程を含む、FIX ポリペプチド変異タンパク質の部位特異的PEG化の方法を提供する: (a)導入されたポリマー複合化部位、即ち FIX ポリペプチドの露出した表面上に導入されたシステイン残基を含む FIX ポリペプチドを発現させる工程、ここで該システインはキャップされている; (b)該導入されたシステインを穏やかに還元してキャップを遊離させる条件下で、該 FIX ポリペプチドを還元剤と接触させる工程; (c)該キャップおよび還元剤を FIX ポリペプチドから除去する工程; および (d)該還元剤の除去後少なくとも約 5、15 または 30 分、PEG化された FIX ポリペプチドが生産される条件下で、スルフヒドリルカップリング部分を含む PEG を用いて該 FIX ポリペプチドを処理する工程。PEG のスルフヒドリルカップリング部分は、チオール、トリフラート、トレシラート、アジリジン、オキシラン、S-ピリジルおよびマレイミド部分からなる群より選択される。
【0075】
PEG化された FIX ポリペプチドを生産する例示的な方法を、以下に記載する。約 1 μM の、導入されたネイティブでないシステイン残基を含む精製された FIX ポリペプチドを、還元剤、例えば 0.7 mM のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP) または 0.07 mM のジチオスレイトール(DTT)を用いて 4℃で 30 分間穏やかに還元し、“キャップ”を遊離させる。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法により、例えばスピンカラムにサンプルを通過させることにより、還元剤を“キャップ”と共に除去してジスルフィドを再形成させる一方、導入されたシステインは遊離かつ還元されたままにする。還元剤の除去から少なくとも 30 分後に、少なくとも 10倍モル過剰の、5 から 85 kD の範囲のサイズを有する PEG-マレイミドを用いて、4℃で少なくとも 1 時間、FIX ポリペプチドを処理する。
【0076】
FIX のポリマー複合化は、当業者に公知のいずれかの方法によって評価し得る。例えば、ポリマーと複合化した FIX は、6% 還元トリス-グリシン SDS ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって解析することができる。電気泳動の後、複合化していない FIX ポリペプチドと比較したバンドの分子量のシフトを同定するため、ゲルをクーマシーブルー(Coomassie Blue)で染色して全タンパク質を同定するか又は標準的なウエスタンブロットのプロトコールに供試し得る。PEG に特異的なヨウ化バリウム(barium-iodine)染色を用いて、分子量のシフトを有するバンドが PEG化されたタンパク質を含むことを確認することができる。ポリマー複合化の程度および効率を決定するために、FIX ポリペプチドを、ポリマー複合化の前および後に、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析によって解析してもよい。
【0077】
いくつかの態様において、ポリマー複合化は、グリコシル化によって結合した糖部分の1つ以上において生じ得る。かかるポリマー複合化の方法は当該技術分野において公知であり、例えば、いずれも参照により本明細書に取り込まれている WO94/05332、US2009/0081188 および US 5,621,039 に記載されている。ポリマーが PEG である場合、それは一般的に糖PEG化と称される。
【0078】
いくつかの態様において、US 5,621,039 に記載される化学的結合によるポリマー複合化は、触媒の添加によって改良することができる。いくつかの態様において、触媒は化学的触媒である。例えば、化学的触媒は、糖に存在する遊離のアルデヒドとアミノ基との反応効率を増大させるために用いることができるアニリンであり得る。他の態様において、他の適当な化学的触媒は、アニリン誘導体、例えば o-Cl-、p-Cl-、o-CH3O-、p-CH3O-、および p-CH3-アニリンであり得る。
【0079】
いくつかの態様において、ポリマー複合化は、FIX 中の自然に生じるグリコシル化部位において起こり得る。野生型の第IX因子は、第IX因子の全シアル酸含量の約 80% を含む2つの N-結合グリコシル化部位を有している。これら2つの N-結合部位(N157 および N167)は両者ともに、凝固カスケードの伝播の間に(R145-Ala146)および(R180-V181)の2つの部位で切断されて触媒的に活性な FIXa 分子となる活性化ペプチドの中に位置している。
【0080】
FIX 中の自然に生じるグリコシル化部位におけるポリマー複合化に加えて、FIX タンパク質の異なるドメインに位置する代替的部位においてポリマーを複合化させることも望ましい。これは、例えば N157 を A157 へ変更し、かつ、N167 を A167 へ変更することによって、位置 N157 および N167 において自然に生じる N-結合グリコシル化部位を最初に除去し、次いで、分子のどこかに、例えば触媒ドメインまたは2つの EGF ドメインの一方の中に、新たな機能的な N-結合グリコシル化部位を導入することにより達成することができる。かかる新たな機能的な N-結合グリコシル化部位はこれまでに、PCT US2009/040813 において開示されている。
【0081】
医薬組成物
哺乳類における上記の状態の処置の有効性を決定するために用いられる周知のアッセイに基づき、かつ、これらの結果を、これらの状態を処置するために用いられる既知の医薬の結果と比較することにより、望まれる各々の適応症の処置のための本発明のポリペプチドの有効量を容易に決定することができる。これらの状態の一つの処置において投与される活性成分の量は、採用される特定のポリペプチドおよび投与単位、投与様式、処置期間、処置される患者の年齢および性別、ならびに処置される状態の特性および程度などの事項によって大きく変動し得る。
【0082】
本願は、一つには、本明細書に記載される1以上のアミノ酸置換を有する FIX ポリペプチドを含む組成物を提供する。組成物は、インビボの投与に適し、かつパイロジェンを含まないものであり得る。組成物はまた、医薬上許容される担体を含むものであり得る。“医薬上または薬理学上許容される”の語句は、動物またはヒトに投与した場合に、有害な、アレルギー性の、または他の予期しない(untoward)反応を生じない分子実体(molecular entity)および組成物をいう。本明細書において用いる場合、“医薬上許容される担体”には、あらゆる溶剤、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延化剤等が含まれる。医薬的活性物質のためのかかる媒体および剤の使用は、当該技術分野において周知である。補足的な活性成分を組成物に取り込むこともできる。
【0083】
本発明の組成物には、伝統的な(classic)医薬品が含まれる。これら本発明の組成物の投与は、あらゆる一般的な経路で投与しうる。医薬組成物は、あらゆる常套の方法、例えば静脈内、皮内、筋肉内、皮下または経皮送達によって、対象に導入することができる。処置は、単回投与からなるものであってもよく、または一定期間にわたる複数回投与からなるものであってもよい。
【0084】
活性化合物は、投与のために遊離塩基または薬理学上許容される塩の水溶液として調製し得る。液体ポリエチレングリコール中で分散系(dispersion)を調製してもよい。通常の保管および使用条件下において、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含む。
【0085】
注入可能な使用に適した医薬形態としては、無菌の水溶液または分散系、および注入可能な無菌の溶液または分散系の即時調製用の無菌粉末が挙げられる。該形態は無菌である必要があり、かつ容易に注射できる程度に流動性のものである必要がある。それは製造および保管条件下において安定である必要があり、微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用から保護される必要がある。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、スクロース、L-ヒスチジン、ポリソルベート 80 またはこれらの適切な混合物を含む、溶剤または分散媒であり得る。微生物の作用の阻止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。注入可能な組成物は、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含み得る。注入可能な組成物の吸収の延長は、組成物中における吸収を遅延させる物質の使用によってもたらされ得る。
【0086】
無菌の注入可能な溶液は、必要な量の活性化合物(例えば FIX ポリペプチド)を、必要に応じて上記した様々な他の成分と共に、適切な溶剤中に導入し、その後濾過滅菌することによって調製することができる。
【0087】
一般的に、分散系は、基本となる(basic)分散媒および上記の他の成分のうち必要なものを含む無菌の媒体中に、滅菌された様々な活性成分を導入することによって調製することができる。無菌の注入可能溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製方法としては、例えば、事前に無菌濾過された溶液から活性成分および望まれるさらなる成分の粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術が挙げられる。
【0088】
組成物はまた、微生物の増殖を防止または阻止するための抗微生物剤を含み得る。本発明に適する抗微生物剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール(thimersol)およびこれらの組合せが挙げられる。
【0089】
組成物中に抗酸化剤が存在してもよい。抗酸化剤は、酸化を防止し、それにより調製物の劣化を防止するために用いることができる。本発明における使用に適した抗酸化剤としては、例えば、アスコルビルパルミタート(ascorbyl palmitate)、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラート、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0090】
賦形剤として界面活性剤が存在してもよい。例示的な界面活性剤としては、以下が挙げられる: ポリソルベート、例えば Tween(登録商標)-20 (ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート) および Tween(登録商標)-80 (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、ならびにプルロニック(pluronic)、例えば F68 および F88 (いずれも BASF、Mount Olive、N.J. から入手可能である); ソルビタンエステル; 脂質、例えばリン脂質、例えばレシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸および脂肪族エステル; ステロイド、例えばコレステロール; ならびにキレート剤、例えば EDTA、亜鉛および他の適切なカチオン。
【0091】
賦形剤として酸および塩基が組成物中に存在してもよい。使用し得る酸の非限定的な例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびこれらの組合せが挙げられる。適切な塩基の例としては、これらに限定されず、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム(potassium fumerate)およびこれらの組合せが挙げられる。
【0092】
組成物中の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性および組成物の特定のニーズに応じて異なり得る。通常、個々の賦形剤の最適な量は、通常の実験によって、即ち、異なる量の賦形剤(少量から多量までの範囲)を含む組成物を調製し、安定性および他のパラメーターを試験し、次いで、有意な有害効果を伴わずに最適な性能が達成される範囲を決定することにより、決定し得る。一般的に、賦形剤は、30重量%未満の濃度で、賦形剤の約 1 重量%から約 99 重量%、約 5 重量% から約 98 重量%、約 15 から約 95重量%の量で、組成物中に存在し得る。これら上述の医薬的賦形剤は、他の賦形剤と共に、"Remington: The Science & Practice of Pharmacy," 19 ed., Williams & Williams, (1995); the "Physician's Desk Reference," 52 ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998); および Kibbe, A. H., Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3 Edition, American Pharmaceutical Association, Washington, D.C., 2000 に記載されている。
【0093】
製剤後、その剤形に適合する様式で、且つ、治療上有効な量で、溶液を投与し得る。本明細書において“治療上有効量”とは、血流中または標的組織中において望まれるレベルのポリペプチドを提供するために必要なポリペプチドの量をいうために用いられる。正確な量は、多数の要因、例えば、特定の FIX ポリペプチド、治療組成物の構成成分および物理的特性、対象の患者集団、送達様式、個々の患者の考慮(consideration)等に依存するものであり、本明細書に記載される情報に基づいて当業者によって容易に決定され得るものである。
【0094】
製剤は、様々な剤形、例えば注入可能溶液等の形態で容易に投与することができる。水溶液における非経口投与については、例えば、溶液は必要であれば適切に緩衝し、十分な生理食塩水またはグルコースを用いて希釈液を最初に等張にするべきである。これら特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適する。
【0095】
FIX の投与量は、通常、ユニットで表される。体重1kgあたり1ユニットの FIX は、血漿レベルを 0.01 U/ml、即ち 1% 上昇させ得る。一方、健康な患者は、血漿1mlあたり1ユニット、即ち、100% の FIX を有する。軽症の血友病 B は 6-60%の間の FIX 血漿濃度によって定義され、中等度の症例は 1-5%の間の FIX 血漿濃度によって定義され、血友病 B の症例の約半数を占める重症は 1% 未満の FIX を有する。小さな出血の予防的処置または治療には通常、FIX レベルを 15-30%の間まで上昇させることが必要とされる。中等度の出血の処置には通常、該レベルを 30-50%の間まで上昇させることが必要とされ、大きな外傷の処置には、該レベルを 50 から 100%まで上昇させることが必要とされ得る。患者の血中レベルを上昇させるのに必要な全ユニット数は、以下の通りに決定することができる: 1.0 ユニット/kg x 体重(kg) x 望まれるパーセンテージ増大(正常の%)。非経口投与は、最初のボーラス投与およびその後の薬剤の治療的循環レベルを維持するための連続注入によって行い得る。いくつかの態様において、15 から 150 ユニット/kg の FIX ポリペプチドを投与し得る。当業者は、良好な医療行為および個々の患者の臨床状態によって決定される有効量および投与計画を容易に最適化するであろう。
【0096】
投与の頻度は、薬剤の薬物動態パラメーターおよび投与経路に依存する。最適な医薬剤形は、投与経路および望まれる投与量に応じて、当業者により決定され得る (例えば、参照により本明細書に取り込まれる Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 20th edition, 2000 を参照)。かかる剤形は、投与される薬剤の物理的状態、安定性、インビボの放出速度およびインビボのクリアランス速度に影響し得る。投与経路に応じ、体重、体表面積または器官のサイズによって適切な用量を算出することができる。適切な処置用量を決定するために必要な計算のさらなる精密化は、通常、過度の実験を伴わず、特に、本明細書に記載される用量の情報およびアッセイ、ならびに動物またはヒトの臨床試験において得られた薬物動態データを考慮して、当業者によって行われる。例示的な投与スケジュールとしては、これらに限定されないが、1日に5回、1日に4回、1日に3回、1日に2回、1日に1回、1週間に3回、1週間に2回、1週間に1回、1カ月に2回、1カ月に1回の投与、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0097】
適切な投与量は、血液凝固レベルを決定するための確立されたアッセイの使用と、関連する用量反応データとを併用して確認し得る。最終的な投与計画は、薬剤の作用を修飾する因子、例えば、薬剤の比活性、障害の重篤度、患者の応答性、患者の年齢、状態、体重、性別および栄養、感染の重篤度、投与時間ならびに他の臨床的因子を考慮して、担当医によって決定され得る。
【0098】
例示的な使用
本明細書に記載の組成物は、FIX の機能的欠損または FIX の欠乏、例えば FIX のインビボ半減期の短縮、FIX の結合特性の変化、FIX の遺伝的欠損および FIX の血漿濃度の減少に関連するあらゆる出血性障害を処置するために用いることができる。FIX の遺伝的欠損には、例えば、FIX をコードするヌクレオチド配列における塩基の欠失、付加および/または置換が含まれる。一つの態様において、出血性障害は血友病 B であり得る。かかる出血性障害の症状としては、例えば、重篤な鼻出血、口腔粘膜の出血、関節血症、血腫、持続性の血尿、消化管出血、後腹膜出血、舌/咽頭後出血、頭蓋内出血、および外傷関連出血が挙げられる。
【0099】
本発明の組成物は、予防的適用のために用いることができる。いくつかの態様において、改変 FIX ポリペプチドは、対象自身の凝固能力を増強させるために、病気または傷害に感受性であるかあるいはその危険がある対象に対して投与することができる。かかる量は、“予防上有効量”として定義され得る。予防のための改変 FIX ポリペプチドの投与には、血友病 B に罹患している患者が手術を受けようとしており、手術の前に1から4時間の間ポリペプチドが投与される状況が含まれる。さらに、ポリペプチドは、制御されない出血に対する予防剤としての使用に適するものであり、所望により血友病に罹患していない患者におけるものであってもよい。したがって、例えば、ポリペプチドは、手術の前に、制御されない出血の危険がある患者に対して投与し得る。
【0100】
本明細書に記載されるポリペプチド、物質、組成物および方法は、本発明の代表例を意図したものであり、本発明の範囲はこれらの例の範囲によって限定されないことが理解される。当業者は、開示されるポリペプチド、物質、組成物および方法についてのバリエーションを用いて本発明が実施され得ること、およびかかるバリエーションが本発明の範囲内とみなされることを認識するであろう。
【0101】
以下の実施例は、本明細書に記載される本発明を説明するために示されるものであり、決して本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0102】
実施例
本発明がより良く理解されるよう、以下の実施例を示す。これらの実施例は単に説明を目的とするものであり、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書中で言及する全ての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0103】
実施例 1: ヒト第IX因子 cDNA のクローニング
ヒト FIX cDNA のコード領域の 5' および 3' 末端の配列に相補的な PCR プライマーのペアを、公開されている cDNA 配列 (NM_000133) から設計した。5'プライマー(FIXF1; ATCATAAGCTTGCCACCATGCAGCGCGTGAACATG(配列番号: 3)、FIX の開始コドンは下線部の右)は、ATG 開始コドンを含む FIX コード領域の最初の 18 ヌクレオチドならびにそれに先行するコンセンサス Kozak 配列(下線を付した)および HindIII 制限部位を含むものであった。3'プライマー(FIXR3、ATCATAAGCTTGATTAGTTAGTGAGAGGCCCTG)(配列番号: 4)は、FIX コード領域の末端の 45 ヌクレオチド 3'側に位置する 22 ヌクレオチドの FIX 配列、およびそれに先行する HindIII 部位を含むものであった。これらのプライマーおよび高フィデリティーのプルーフリーディングポリメラーゼ(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いる、正常ヒト肝臓(Stratagene、San Diego、CA)からの第一鎖 cDNA の増幅により、ヒト FIX cDNA について期待されるサイズ(1464 bp)の単一のバンドがもたらされた。HindIII による消化後、PCR 産物をゲル精製し、プラスミド pEAKflcmv の HindIII 部位へクローニングした。FIX cDNA が該ベクター中の CMV プロモーターに対して前方向(forward orientation)に挿入されたクローンを、制限消化によって同定した。いくつかのクローンのインサートについて二本鎖 DNA 配列決定を行い、得られた配列の FIX 配列へのアラインメントにより、該 cDNA が成熟タンパク質のアミノ酸 148 におけるスレオニンを有するヒト FIX をコードしていることが実証された。このプラスミドを、pEAKflcmv-FIX と命名した。
【0104】
実施例 2: 改変第IX因子ポリペプチドの作製
ヒト FIX 配列内の様々なアミノ酸を変化させるため、Quickchange(商標)プライマー設計プログラム(Stratagene、San Diego、CA)を用いてプライマーのペアを設計した。製造者の説明書にしたがって Quickchange(商標)II XL 部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene、San Diego、CA)を使用し、これらのプライマーを用いて pEAKflcmv-FIX プラスミド中に突然変異を生成した。FIX コード領域全体の DNA 配列決定によって、所望の突然変異を含むクローンを同定した。突然変異を作出するために用いたセンス鎖オリゴヌクレオチドの配列を表 1 に示す。
【0105】
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】

【0106】
実施例 3: HKB11 細胞における第IX因子ポリペプチドの発現
変化したタンパク質配列を有する FIX 遺伝子が発現し、哺乳類細胞から分泌されたかを決定するため、および FIX の凝固活性に対するこれらの置換の効果を決定するため、これらの FIX 変異体をコードする発現プラスミドを HKB11 細胞にトランスフェクトした。HKB11 は、HEK293 細胞と B 細胞リンパ腫の融合によって作成されたヒト細胞株である。
【0107】
HKB11 細胞を、10 ng/mL の可溶性ビタミンK3(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を補充した無血清培地において、CO2(5%)インキュベーター中、37℃で、軌道シェーカー(orbital shaker)(100-125 rpm)上で懸濁培養において生育させ、0.25 から 1.5 x 106 細胞/mL の密度に維持した。
【0108】
トランスフェクション用の細胞を、1000 rpm で 5 分間の遠心分離によって回収し、次いで FreeStyle(商標) 293 発現培地(Invitrogen, Carlsbad, CA) に 1.1 x 106 細胞/mL で再懸濁した。細胞を 6 ウェルプレートに播種し(4.6 mL/ウェル)、37℃の CO2 インキュベーター中において、軌道ローテーター(orbital rotator)(125 rpm)上でインキュベートした。各ウェルにつき、5 μgのプラスミド DNA を 0.2 mL の Opti-MEM(登録商標) I 培地(Invitrogen)と混合した。各ウェルにつき、7 μL の 293fectin(商標)試薬(Invitrogen)を 0.2 mL の Opti-MEM(登録商標) I 培地と穏やかに混合し、室温で 5 分間インキュベートした。該希釈された 293fectin(商標)を、該希釈された DNA 溶液に添加し、穏やかに混合し、室温で 20-30 分間インキュベートし、次いで 5 x 106 (4.6 mL) の HKB11 細胞が播種された各ウェルへ添加した。次いで、細胞を、CO2 インキュベーター中、37℃で 3 日間、軌道ローテーター(125 rpm)上でインキュベートし、その後、細胞を 1000 rpm で 5 分間の遠心分離によってペレット化し、上清を回収して 4℃で保存した。
【0109】
実施例 4: BHK21 細胞における第IX因子ポリペプチドの発現
変化したタンパク質配列を有する FIX 遺伝子が発現し、哺乳類細胞から分泌されたかを決定するため、および FIX の凝固活性に対するこれらの置換の効果を確認するため、これらの FIX 変異体をコードする発現プラスミドを BHK21 細胞にトランスフェクトした。
【0110】
BHK21 細胞を、10 ng/ml の可溶性ビタミンK3(Menadione, Sigma)を補充した専用の(proprietary)無血清培地において、CO2(5%)インキュベーター中、37℃で、軌道シェーカー(100-125 rpm)上で懸濁培養において生育させ、0.25 から 1.5 x 106 細胞/ml の密度に維持する。
【0111】
トランスフェクション用の細胞を、1000 rpm で 5 分間の遠心分離によって回収し、次いで 1x106 細胞/ml で再懸濁させる。
【0112】
細胞を 6 ウェルプレートに播種し(4.6 ml/ウェル)、37℃の CO2 インキュベーター中において、軌道ローテーター(125 rpm)上でインキュベートする。各ウェルにつき、5 μgのプラスミド DNA を 0.2 ml の Opti-MEM I 培地(Invitrogen)と混合した。各ウェルにつき、7 μl の 293Fectin 試薬(Invitrogen)を 0.2 ml の Opti-MEM I 培地と穏やかに混合し、室温で 5 分間インキュベートする。該希釈された 293Fectin を、該希釈された DNA 溶液に添加し、穏やかに混合し、室温で 20-30 分間インキュベートし、次いで 5 x 106 (4.6 ml)の BHK21 細胞が播種された各ウェルへ添加する。次いで、細胞を、CO2 インキュベーター中において 37℃で 3 日間、軌道ローテーター(125 rpm)上でインキュベートし、その後、細胞を 1000 rpm で 5 分間の遠心分離によってペレット化し、上清を回収して 4 ℃で保存する。
【0113】
実施例 5: 第IX因子のウエスタンブロット
細胞培養上清(50μL)を 20 μL の 4x SDS-PAGE ローディングダイ(loading dye)と混合し、95℃で 5 分間加熱し、NuPAGE(登録商標) 4-12% SDS PAGE ゲルにロードし、次いで、ニトロセルロース膜に転写した。5% ミルクパウダーを用いる 30 分間のブロッキングの後、膜を、ヒト FIX に対する HRP標識されたヤギポリクローナル抗体(US Biological, Swampscott, Massachusetts, カタログ番号 F0017-07B)と共に室温で 60 分間インキュベートした。0.1% の Tween(登録商標)-20 バッファーを有するリン酸緩衝生理食塩水を用いた洗浄の後、SuperSignal(登録商標)Pico(Pierce, Rockford, IL)を用いて HRP からのシグナルを検出し、X線フィルムに露光した。
【0114】
実施例 6: 第IX因子の ELISA
細胞培養上清中の FIX 抗原レベルを、FIX ELISA キット(Hyphen Biomed/Aniara, Mason, OH) を用いて決定した。細胞培養上清をサンプル希釈バッファー(該キット中に含まれている)中で希釈して、標準曲線の範囲内のシグナルを得た。100 ng/mL から 0.2 ng/mL の標準曲線を作成するために、サンプル希釈液中で希釈した、ヒト血漿から精製された FIX タンパク質(Hyphen Biomed/Aniara, カタログ番号 RK032A, 比活性 196 U/mg)を用いた。希釈したサンプルおよび標準を、ポリクローナル抗 FIX 捕獲抗体で事前コーティングされている ELISA プレートに添加した。ポリクローナル検出抗体を添加した後、キット製造者によって記載された通りに、プレートを室温で 1 時間インキュベートし、十分に洗浄し、次いで TMB 基質(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)を用いて発色させ、SpectraMax(登録商標)プレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて 450 nM においてシグナルを測定した。標準曲線を2成分プロットに適合させ、未知のものの値を該曲線から外挿した。
【0115】
また、製造者の説明書に従って市販の FIX ELISA 試薬(Haemochrom Diagnostica GmbH, Essen, Germany)を使用して、FIX の発現レベルを定量した。コムギ胚芽凝集素(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を 384 ウェルの MaxiSorp(商標)プレート(Nunc(商標), Rochester, NY)にコートした。ウェルをブロッキングし、洗浄し、次いで上清を添加した。さらなる洗浄の後、HRP結合ポリクローナル抗 FIX 抗体(Haemochrom Diagnostica GmbH, Essen, Germany)を用いて検出を行った。
【0116】
実施例 7: 第IX因子凝固アッセイ
FIX の凝固活性を、Electra(商標)1800C 自動凝固分析機(Beckman Coulter, Fullerton, CA)上で行う FIX 欠乏ヒト血漿における aPTT アッセイを用いて決定した。簡潔に記載すると、凝固希釈剤中における上清サンプルの3つの希釈が該装置によって作成され、次いでその 100 μL が、100 μL の FIX 欠乏血漿(Aniara, Mason, OH)および 100 μL の自動化された aPTT 試薬(ウサギ脳リン脂質および微粒子化されたシリカ)(bioMerieux, Inc., Durham, NC)と混合される。100 μL の 25 mM CaCl2 溶液の添加後、血餅形成までの時間を記録した。ELISA アッセイにおいて標準として用いたものと同じ精製ヒト FIX (Hyphen Biomed/Aniara)の系列希釈を用いて、標準曲線を各ランについて作成した。標準曲線は常に 0.95 以上の相関係数を有する直線となり、これを用いて未知のサンプルの FIX 活性を決定した。位置 86 におけるアミノ酸置換を含む FIX ポリペプチドの活性を、表 2 に示す。1以上のアミノ酸置換を含む FIX ポリペプチドの活性を、表 3 および 4 に示す。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】

【0120】
実施例 8: 循環する FIX の測定
FIX ポリペプチドの循環半減期を、インビトロのアッセイを用いて測定する。このアッセイは、インビボおよびインビトロにおける、肝細胞におけるアデノウイルス(Ad)の蓄積を媒介する FIX の能力に基づく。簡潔に記載すると、FIX は、Ad のファイバーノブ(fiber knob)ドメインと結合し、細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)を介するウイルス取り込みのための橋を提供することができることが示されている(Shayakhmetov, et al., J. Virol 79:7478-7491, 2005)。ファイバーノブドメイン内に突然変異を有するアデノウイルスベクター突然変異体である Ad5mut は、FIX と結合しない。Ad5mut は細胞に感染する能力およびインビボの肝毒性が有意に減少しており、この事は、Ad ベクターを肝細胞へ標的化する際において FIX が主要な役割を果たしていることを示す(Shayakhmetov, et al., 2005)。Ad ベクターを肝細胞へ標的化する FIX の能力は、タンパク質とHSPGの相互作用の阻害剤によって阻止することができる(Shayakhmetov, et al., 2005)。
【0121】
さらに、HSPGに媒介される FIX の取り込みは FIX のクリアランスに有意に寄与し、そのため、HSPG 相互作用の妨害は FIX の半減期を増大させると期待される。したがって、肝細胞における FIX および/または FIX 変異体のインビトロの取り込みを測定し、取り込みの減少した変異体は、増大したインビボの半減期を有すると期待される。
【0122】
インビトロで FIX の半減期を測定するため、哺乳類細胞を、FIX または FIX 変異体の存在下または非存在下においてアデノウイルスと共にインキュベートする。ウイルスの取り込みは野生型 FIX によって媒介され、ウイルスゲノム中にコードされるレポーター遺伝子の発現、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼの発現によって測定される。FIX 変異体の存在下におけるアデノウイルスの取り込みの減少は、レポーター遺伝子発現の減少、例えば、野生型 FIX と比較して減少した GFP 蛍光または減少したルシフェラーゼ酵素活性として測定される。
【0123】
FIX の循環半減期は、当業者に周知の標準的な手法を用いてインビボで測定される。簡潔に記載すると、FIX または FIX 変異体のそれぞれの量を、静脈内注射によって対象に投与する。注入後の多数の時点において血液サンプルを採取し、適切なアッセイ(例えば ELISA)によって FIX 濃度を決定する。半減期、即ち FIX の濃度が投与直後の FIX 濃度の半分となる時間を決定するため、様々な時点における FIX 濃度を、該用量の FIX を投与した直後に予測または測定された FIX 濃度と比較する。インビトロのアッセイにおける細胞取り込みの減少とインビボのアッセイにおける半減期の増大との間の相関が期待される。
【0124】
実施例 9: 改変 FIX の糖PEG化
およそ 5 mg の改変 FIX タンパク質を、反応バッファー(25 mM HEPES, pH7.7, 50 mM NaCl, 10 mM CaCl2, 0.01% TWEEN-80)へバッファー交換して複合化反応に干渉するスクロースおよびアミノ酸を除去し、次いで、1 ml のサンプルループを用いて 1 ml/分の流速において AKTA-FPLC クロマトグラフィーシステム(GE)を有する 5 ml の HiTrap 脱塩カラム(Sephadex G25)へロードした(移動相は反応バッファー)。タンパク質画分を回収し、スクリューキャップのチューブ内にプールした(〜2 ml)。この FIX 溶液(〜2.1 mg/ml)へ、穏やかな酸化のために、メタ過ヨウ素酸ナトリウム(Sigma #311448, Mw213.89, NaIO4)ストック溶液(400 mM 水溶液、調製したばかりのもの)を添加して 最終 2 mM の [NaIO4] に到達させ、FIX の糖部分において反応性のアルデヒドを生成させた。該混合物を、暗条件において 4℃で 60 分間、ローテーター上でインキュベートした。0.5mM という低いメタ過ヨウ素酸ナトリウム濃度も有効である。
【0125】
次いで、4 ℃における 15 分間のさらなるインキュベーションにおいて、2M グリセロール水性ストックを用いて(終濃度 20 mM のグリセロールまで)残余の NaIO4 をクエンチングすることにより酸化工程を終了させた。すぐに酸化反応混合物(〜2 ml)を上記のとおりに再度 G25 カラムへロードして、その後の PEG化反応に干渉する過剰の NaIO4、グリセロールおよびグリセルアルデヒドから、酸化された組換え FIX を分離した。
【0126】
反応バッファー中において得られた酸化型 FIX 溶液(〜0.95 mg/ml、4.5 ml 中に 4.3 mg)に対し、80 mg のヒドラジン-PEG30 (40xモル過剰、NOF カタログ# SUNBRIGHT ME-300HZ)および 10 mM のアニリン(100% EtOH 中における 1M ストック溶液)を添加し、回転するプラットフォーム上で 4℃において PEG化反応を終夜行った。PEG化反応のための最適な条件は、0.3 から 0.9 mg/ml の [FIX] と、[FIX] に対し 5 から 40 倍モル過剰で添加されたヒドラジン-PEG30 であることが判明した。ジPEG化された FIX に対するモノPEG化された FIX の比を変更するために、PEG化時間をさらに最適化することができる。
【0127】
SDS-PAGE、クーマシーブルー、ヨウ素染色、ウエスタンブロット解析およびサイズ排除クロマトグラフィーによる糖PEG FIX の広範な特徴決定によって、糖PEG化された FIX はおよそ 70% のモノPEG化された FIX および 30% のジPEG化された FIX を含有することが判明した。FIX の糖PEG化方法のさらなる最適化を、メタ過ヨウ素酸ナトリウム濃度を 0.5mM まで低下させること、0.6 mg/ml の第IX因子濃度において 5 倍モル過剰のアミノオキシ PEG を用いること、PEG化反応の時間を最適化すること、ならびにヘパリンカラムおよびその後のサイズ排除カラムでの精製によって達成した。最適化された条件を用いて、98.7% の均一な PEG化種を達成することが可能であった。過ヨウ素酸による糖酸化の速度および程度は、例えば Wolfe and Hage, 1995 18 によって抗体について記載されたように、反応時間、pH、温度および過ヨウ素酸濃度によって制御することができる。糖タンパク質上のシアル酸残基は、1 mM の過ヨウ素酸および 0 ℃の温度を用いることによって、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)によって特異的に酸化することができる事が報告されている。FIX の糖PEG化の部位特異性は、1mM の過ヨウ素酸またはより低い濃度を用いることで最適化し得る。クエンチング工程の最適化も達成し得る。最後に、PEG化工程は、例えば、異なる分子量、例えば 5K、10K、15K、20K、30K、40K、60K または 150Kまでの分子量を有する PEG の使用によって最適化し得る。導入部において上述した代替のポリマーを用いてもよい。導入部において上述した通り、PEG 部分または他のポリマーへ結合する代替の反応性基を利用する代替のリンカー化学を用いてもよく、例えばアミノオキシ PGE またはヒドロキシ-PEG-アミンが挙げられる。
【0128】
実施例 10: PEG-ヒドラジドを用いる FIX-R338A の糖PEG化
突然変異 R338A を含むヒト第IX因子(FIX-R338A)を発現する BHK21 細胞株を標準的な方法を用いて作成し、15L スケールの灌流リアクターにおける発酵のためにスケールアップした。培地中に存在する分泌された FIX-R338A タンパク質を、イオン交換クロマトグラフィーによって 98% の純度まで精製した。得られたタンパク質を、“方法”のセクションにおいて上述した通りに、40Kda の PEG-ヒドラジンを用いる糖PEG化に供した。PEG化された FIX-R338A の収率は、PEG化反応中において触媒としてアニリンを含めることにより、約 10% から約 50% まで増大させることができた。5mg の FIX-R338A についてラージスケールの PEG化を行い、得られたタンパク質を、aPTT アッセイ(活性化剤としてエラグ酸を使用する)または市販の発色アッセイキットによってインビトロの凝固活性についてアッセイした。いずれのアッセイにおいても、商業的に生産された組換えの野生型 FIX (rFIX)を用いて標準曲線を作成した。出発物質(FIX-R338A)および rFIX の対照を、各アッセイにおいてランした。表 5 に示されるデータは、糖PEG化された FIX-R338A が出発物質の 47% から 60%の活性を有し、rFIX の 184% から 189 % の活性を有したことを示す。
【0129】
【表5】

【0130】
活性化ペプチド中の糖における PEG化を、より活性の高い FIX の変異体と組み合わせることにより、組換えの野生型 FIX タンパク質よりも約 2 倍高い比活性を有する PEG化された FIX を作成することができた。rFIX を同じ糖PEG化手法および精製に供した場合、得られた糖PEG化された rFIX は発色アッセイによる 122 IU/mg の比活性を有し、これは改変されていない rFIX の比活性の 59% であった。したがって、糖PEG化された組換えの野生型 FIX と比較すると、糖PEG化された R338A は 3 倍高い比活性を有したことになり、これは 3 倍少ないタンパク質で同じ治療的利益を達成することを可能にする。
【0131】
糖PEG化された FIX-R338A のゲル解析により、タンパク質が、1つの部位のみ(モノ-PEG化)または2つの部位(ジ-PEG化)において PEG化された FIX-R338A の混合物を含んでいることが示された。タンパク質を染色するクーマシー染色されたゲルは、モノ-PEG化およびジ-PEG化された FIX-R338A の指標である2つの主要な PEG化されたバンドの存在を示した。モノ-PEG化された形態が優勢な形態であるように見受けられた。
【0132】
実施例 11: アミノオキシ-PEG を用いる改変 FIX の糖PEG化
精製された第IX因子(FIX)を最初に、AKTA-FPLC クロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)上の 5ml の HiTrap 脱塩カラム(GE Healthcare)を用いて、1ml/分の流速で、反応バッファー(25mM HEPES、pH 7.7、50mM NaCl、10mM CaCl2、0.01% w/v Tween-80)へバッファー交換した。タンパク質画分を回収し、プールした。調製したばかりのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)(Sigma)を 400 mM の水性ストック溶液から 2 mM の終濃度まで添加することにより、FIX を酸化した。FIX の酸化は、FIX の糖部分において、アミノオキシ-PEG またはヒドラジン-PEG によって修飾することが可能な反応性のアルデヒドを生成する。混合物を、暗条件下において 4℃で 60 分間、ローテーター上でインキュベートした。2M のグリセロールを終濃度 20 mM のグリセロールまで添加し、4℃で 15 分間さらにインキュベートすることにより、NaIO4 をクエンチングした。酸化反応混合物をすぐに、上記の通りに再度脱塩カラムへロードして、その後の PEG化に干渉する過剰の NaIO4、グリセロールおよびグリセルアルデヒドから、酸化された FIX を分離した。得られた酸化型 FIX 溶液(FIX 濃度 〜0.5 mg/ml)に対し、40 倍モル過剰の固体メトキシ-PEG-30-オキシアミン(NOF cat# SUNBRIGHT ME-300CA)および 10mM のアニリン(100% EtOH 中の 1M ストック溶液)を添加した。回転するプラットフォーム上で、4℃において終夜、PEG化反応を行った。PEG化反応の最適な条件は、20-40 倍モル過剰の PEG を伴う 0.3-0.9 mg/ml の FIX であることが判明した。得られるジ-PEG化された FIX に対するモノ-PEG化された FIX の比を変更するために、PEG化時間をさらに最適化することができる。
【0133】
PEG化反応混合物を、反応バッファーを用いて 1:1 に希釈し、AKTA クロマトグラフィーシステムを用いて 0.5ml/分の流速で HiTrap(商標)ヘパリン HP 1-ml カラム(GE)にロードして PEG化された FIX を精製した。遊離の PEG はヘパリンカラムに結合しなかった。PEG化された FIX を、勾配溶出(20 分にわたる 0-100% のバッファー B)によって、PEG化されていない FIX から分離した。バッファー A は反応バッファーであり、バッファー B は 25mM HEPES、pH 7.7、500mM NaCl、20mM CaCl2、0.01% w/v Tween-80 であった。PEG化された FIX が最初に溶出し、その後 PEG化されていない FIX が溶出した。PEG化された FIX を含む画分をプールし、エンドトキシン除去に供した。パイロジェンフリーの H2O を用いて Profos(登録商標) AG EndoTrap HD ビーズを充填した 1-ml の Endotrap カラムを用いて、可能性のあるエンドトキシンを除去した。カラムを、衛生化されたチューブを用いて AKTA システムに接続した。AKTA 装置、全てのラインおよびカラムは、20% エタノール中の 1N NaOH を用いて 1 時間、その後 0.1N 酢酸、20% エタノールを用いて 2 時間、衛生化した。次いで、カラムを Milli-Q 水で十分に洗浄した。再生バッファー(20mM トリス-HCl pH7.5、1M NaCl、2mM EDTA)を最初にカラムへアプライし、次いで、1ml/分で 50% バッファー B (25mM HEPES、pH 7.7、500mM NaCl、20mM CaCl2、0.01% Tween-80)を用いてカラムを平衡化した。ヘパリンカラムからの PEG化された FIX を 0.5ml/分で Endotrap カラムにロードし、FIX を含むフロースルー画分を、無菌のパイロジェンフリーの容器に回収した。
【0134】
精製され、且つエンドトキシンを含まない PEG化された FIX を濃縮し、限外濾過(10K MW カットオフ)によってフォーミュレーション(Formulation)バッファー(0.234% NaCl、8mM ヒスチジン、0.8% スクロース、208mM グリシン、0.004% Tween-80)へのバッファー交換を 6 回行い、分注し、急速凍結させた後に -80℃で保存した。糖PEG FIX のタンパク質濃度を、A280 (13.3 (mg/ml)-1cm-1 の吸光係数)を測定することによって決定した。タンパク質濃度ならびに FIX の発色アッセイおよび aPTT アッセイ(エラグ酸活性化剤)から比活性を算出した。FIXa およびエンドトキシンによるコンタミネーションの可能性も、FIXa の発色アッセイおよびエンドトキシン検出アッセイによって評価した。糖PEG FIX のさらなる生化学的特徴決定も行った(クーマシーブルーおよびヨウ素染色を用いる SDS-PAGE、ウエスタンブロット解析、サイズ排除クロマトグラフィー)。糖PEG化された FIX (ピーク 1) は、60% のモノPEG化された FIX および 40% のジPEG化された FIX を含むことが判明した。PEG化効率は 50% と見積もられ、全回収率は 30% と見積もられた。
【0135】
実施例 12: PEG-アミノオキシを用いる FIX-R338A の糖PEG化
突然変異 R338A を含むヒト第IX因子(FIX-R338A)を発現する BHK21 細胞株を、標準的な方法を用いて作成し、15L スケールの灌流リアクターにおける発酵のためにスケールアップした。培地中に存在する分泌された FIX-R338A タンパク質を、イオン交換クロマトグラフィーによって 98% の純度まで精製した。得られた FIX-R338A タンパク質を、上記の通りに、アミノオキシ-30Kda PEG を用いる糖PEG化に供した。5mg の FIX-R338A について PEG化を行い、得られたタンパク質を、aPTT アッセイ(活性化剤としてエラグ酸を用いる)または市販の発色アッセイキットによって、インビトロの凝固活性についてアッセイした。いずれのアッセイにおいても、商業的に生産された組換えの野生型 FIX を用いて標準曲線を作成した。出発物質(FIX-R338A)および rFIX の対照を、各アッセイにおいてランした。表 6 に示されるデータは、糖PEG化された FIX-R338A が出発物質の % から % の活性を有し、rFIX の % から % の活性を有したことを示す。
【0136】
【表6】

【0137】
実施例 13: 均一なモノPEG化された FIX-R338A を生産するよう最適化された条件下における、PEG-アミノオキシを用いる FIX-R338A の糖PEG化
突然変異 R338A を含むヒト第IX因子(FIX-R338A)を発現する BHK21 細胞株を標準的な方法を用いて作成し、15L スケールの灌流リアクターにおける発酵のためにスケールアップした。培地中に存在する分泌された FIX-R338A タンパク質を、イオン交換クロマトグラフィーによって 98% の純度まで精製した。最初に 10 mg の FIX-R338A タンパク質を、AKTA-FPLC クロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)上で 5ml の HiTrap 脱塩カラム(GE Healthcare)を用いて 1ml/分の流速で、反応バッファー(25mM HEPES、pH 7.7、50mM NaCl、10mM CaCl2、0.01% w/v Tween-80)へバッファー交換した。タンパク質画分を回収し、プールした。調製したばかりのメタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)(Sigma)を 400 mM の水性ストック溶液から 0.5 mM の終濃度まで添加することにより、FIX を酸化した。FIX の酸化は、FIX の糖部分において、アミノオキシ-PEG によって修飾することが可能な反応性のアルデヒドを生成する。混合物を、暗条件下において 4℃で 60 分間、ローテーター上でインキュベートした。2M のグリセロールを終濃度 20 mM のグリセロールまで添加し、4℃で 15 分間さらにインキュベートすることによって、NaIO4 をクエンチングした。酸化反応混合物をすぐに、上記の通りに再度脱塩カラムへロードして、その後の PEG化に干渉する過剰の NaIO4、グリセロールおよびグリセルアルデヒドから、酸化された FIX を分離した。得られた酸化型 FIX 溶液(FIX 濃度 〜0.6 mg/ml)に、FIX タンパク質に対して 5 倍モル過剰の固体メトキシ-PEG-30-オキシアミン(NOF cat# SUNBRIGHT ME-300CA)および 10mM のアニリン(100% EtOH 中の 1M ストック溶液)を添加した。回転するプラットフォーム上において 4℃で 2 時間、PEG化反応を行った。PEG化反応混合物を、反応バッファーを用いて 1:1 に希釈し、AKTA クロマトグラフィーシステムを用いて 0.5ml/分の流速で HiTrap(商標)ヘパリン HP 1-ml カラム(GE)上にロードして PEG化された FIX を精製した。遊離の PEG は、ヘパリンカラムに結合しなかった。PEG化された FIX を、勾配溶出(20 分にわたる 0-100% のバッファー B)によって、PEG化されていない FIX から分離した。バッファー A は反応バッファーであり、バッファー B は 25mM HEPES、pH 7.7、500mM NaCl、20mM CaCl2、0.01% w/v Tween-80 であった。PEG化された FIX が最初に溶出し、その後 PEG化されていない FIX が溶出した。主にモノ-PEG化された FIX を含む画分をプールし、サイズ排除クロマトグラフィー(SD200)に供して、モノPEG化された FIX-R338A、ジPEG化された FIX-R338A および遊離の FIX-R338A をさらに分離した。95% の均一なモノPEG化された FIX を含む画分を回収し、濃縮し、透析によって formulation バッファー(0.234% NaCl、8mM ヒスチジン、0.8% スクロース、208mM グリシン、0.004% Tween-80)へ戻し、分注し、急速凍結させた後、-80℃で保存した。糖PEG FIX-R338A のタンパク質濃度を、A280(13.3 (mg/ml)-1cm-1 の吸光係数)を測定することによって決定した。タンパク質濃度ならびに FIX の発色アッセイおよび aPTT アッセイ(エラグ酸活性化剤)から比活性を算出した。いずれのアッセイにおいても、商業的に生産された組換えの野生型 FIX を用いて標準曲線を作成した。出発物質(FIX-R338A)の対照。表 7 に示されるデータは、糖PEG化された FIX-R338A が、アッセイに応じて、出発物質の 34% から 80% の活性を有したことを示す。
【0138】
【表7】

【0139】
実施例 14: 糖PEG化された FIX-R338A の薬物動態プロファイル
糖PEG化された FIX-R338A、FIX-R338A または組換えの野生型 FIX (rFIX)を、正常ラットまたは血友病 B マウスに静脈内注射によって投与した。FIX タンパク質の循環レベルを、ELISA に基づくアッセイを用いて経時的に測定した。正常ラットにおいて、糖PEG化された FIX-R338A の薬物動態プロファイルは、FIX-R338A および rFIX の両者と比較して有意に改善していた (図 1)。
【0140】
血友病 B マウスにおいても、糖PEG化された FIX-R338A の薬物動態プロファイルは、FIX-R338A および rFIX の両者と比較して有意に改善していた (図 2)。
【0141】
これらの試験から算出された薬物動態パラメーター(表 8 および 9)により、糖PEG化された FIX-R338A がラットにおいては約 1.4 倍、マウスにおいては 1.5 倍の終末半減期(T1/2)における改善を有したことが示された。全体のクリアランス(overall clearance)は、ラットにおいては 3 から 4 倍、マウスにおいては 6 から 8 倍減少した。用量で標準化した曲線下面積(AUCnorm)および平均滞留時間(MRT)の両者とも、両方の種において増大した。
【0142】
【表8】

【0143】
【表9】

【0144】
また、図 3 に示す通り、rFIX、FIX-R338A または糖PEG化された FIX-R338A のいずれかの静脈内注射後の様々な時間において、血友病 B マウスの血漿サンプル中において FIX 活性を決定した。これらのデータは、PEG化された FIX-R338A 分子の活性による、有意に改善された PK 特性を示す。
【0145】
実施例 15: 第IX因子の PEG化のための触媒としてのアニリン
ポリマー部分、例えば PEG の、FIX を含むタンパク質上の糖との複合化のための触媒としてアニリンを評価するため、組換え WT-FIX タンパク質を、1つ目の反応が 10mM のアニリンを含み、2つ目の同一の反応がアニリンの添加なしで行われたこと以外は実施例 11 に記載される通りに PEG化した。PEG化反応の経時変化を、SDS-PAGE 上の解析によってモニターした(図 4)。アニリンの存在下において、55Kda の遊離 FIX タンパク質のより分子量の大きな形態への変換によって証明される PEG化の効率は増大した。ゲルの定量により、18時間の反応の後、アニリンの非存在下においては遊離の FIX のわずか 18% しか PEG化されなかったのに対し、アニリンの存在下では遊離の FIX の 73% が PEG化されたことが示され、アニリンが PEG 複合化の割合を改善したことが証明された。
【0146】
実施例 16: N157 または N167 における突然変異による、第IX因子の糖における部位特異的ポリマー複合化
第IX因子は N157 および N167 に位置する2つの N-結合グリコシル化部位を含んでおり、哺乳類細胞におけるタンパク質発現の間にこれらの部位へ付加されるグリカンが、第IX因子の全グリカン上に存在するシアル酸部分の大部分を含んでいる。実施例 9 から 15 に記載される、ポリマー、例えば PEG の、第IX因子のシアル酸との複合化は、N157 および N167 に結合するグリカンのいずれか又は両方において起こり得る。医薬的観点からは、ポリマーが2つの N-結合グリコシル化部位の一方のみと結合しているポリマー複合化第IX因子を作成することが望ましく、これは、かかる産物がより均一であるからである。R338A 突然変異を含む第IX因子を、N157 が A157 へ、または N167 が A167 へ変化するよう突然変異させ、N-結合グリコシル化部位の各々を除去した。アスパラギン(N)残基とグルタミン(Q)残基の構造上の類似性から、N157Q および N167Q は、それぞれの N-結合グリコシル化部位を除去する代替の突然変異であると予測される。BHK21 細胞における R338A-N157A および R338A-N167A の発現、ならびに細胞培養上清における ELISA による抗原レベルの測定および aPTT アッセイによる活性の測定により、N167A 変異タンパク質が親 FIX-R338A タンパク質と同様の比活性(FIX タンパク質1mgあたりの IU として表される)を有することが実証された(表 10)。対照的に、N157A 変異タンパク質は、親 FIX-R338A タンパク質よりも 1.7 倍高い比活性を示した (表 10)。FIX-R338A タンパク質と比較して、精製された FIX-R338A-N157A タンパク質について同様の 1.7 倍高い比活性が測定された(表 10)。したがって、均一なポリマー複合化第IX因子タンパク質を生成するためには、N157 における N-結合グリコシル化部位を除去し、その結果 N167 において優先的にポリマー複合化を可能にする N157 の突然変異、例えば N157A または N157Q が、N167 における突然変異よりも好ましい。
【0147】
【表10】

【0148】
本明細書において言及されたすべての刊行物および特許は、参照により本明細書に取り込まれる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、記載した本発明の方法の様々な改変およびバリエーションは当業者にとって明らかであろう。
【0149】
本発明を特定の態様と関連づけて説明したが、特許請求の範囲に記載される本発明がかかる特定の態様に過度に限定されるべきでないことは理解すべきである。実際、生化学または関連する分野の当業者にとって明らかな、本発明を実施するための上記の様式の様々な改変が、以下の特許請求の範囲内のものとして意図されている。当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様と等価な多くのものを認識するか又は日常的な実験のみを用いて確認することができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のアミノ酸置換を導入することによって改変されたアミノ酸配列を含む第IX因子ポリペプチド。
【請求項2】
残基 86 におけるアミノ酸置換を含むものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
アミノ酸残基 85、86 および 87 から選択される1以上のアミノ酸置換を含むものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項4】
アミノ酸残基 85、86、87、338 および 410 から選択される1以上のアミノ酸置換を含むものである、請求項1のポリペプチド。
【請求項5】
1以上のアミノ酸置換が、D85F; D85G; D85H; D85I; D85M; D85N; D85R; D85S; D85W; D85Y; V86A; V86D; V86E; V86G; V86H; V86I; V86L; V86M; V86N; V86P; V86Q; V86R; V86S; V86T; T87F; T87I; T87K; T87M; T87R; T87V; T87W; R338A; R338F; R338I; R338L; R338M; R338S; R338T; R338V; R338W; E410N; E410Q; D85W および T87R; D85F および T87I; D85W および T87W; D85R および T85R; D85I および T87R; D85Y および T87F; D85I および T87M; D85F および T87R; D85F および T87V; D85R および T87K; D85H および T87I; D85I および T87I; D85Y および T87K; D85S および T87R; D85Y および T87R; D85G および T87K; D85H および T87W; D85H および T87K; D85F および T87K; D85H および T87V; D85M および T87I; D85H および T87M; R338A および E410N; R338A および E410Q; D85W、V86A、および T87R; D85F、V86A、および T87I; D85W、V86A、および T87W; D85R、V86A、および T85R; D85I、V86A、および T87R; D85Y、V86A、および T87F; D85I、V86A、および T87M; D85F、V86A、および T87R; D85F、V86A、および T87V; D85R、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87I; D85I、V86A、および T87I; D85Y、V86A、および T87K; D85S、V86A、および T87R; D85Y、V86A、および T87R; D85G、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87W; D85H、V86A、および T87K; D85F、V86A、および T87K; D85H、V86A、および T87V; D85M、V86A、および T87I; D85H、V86A、および T87M;D85W、V86A、T87R、および R338A; D85F、V86A、T87I、および R338A; D85W、V86A、T87W、および R338A; D85R、V86A、T85R、および R338A; D85I、V86A、T87R、および R338A; D85Y、V86A、T87F、および R338A; D85I、V86A、T87M、および R338A; D85F、V86A、T87R、および R338A; D85F、V86A、T87V、および R338A; D85R、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87I、および R338A; D85I、V86A、T87I、および R338A; D85Y、V86A、T87K、および R338A; D85S、V86A、T87R、および R338A; D85Y、V86A、T87R、および R338A; D85G、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87W、および R338A; D85H、V86A、T87K、および R338A; D85F、V86A、T87K、および R338A; D85H、V86A、T87V、および R338A; D85M、V86A、T87I、および R338A; D85H、V86A、T87M、および R338A; D85W、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85W、V86A、T87W、R338A、および E410N; D85R、V86A、T85R、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87F、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87M、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87V、R338A、および E410N; D85R、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85I、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85S、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85Y、V86A、T87R、R338A、および E410N; D85G、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87W、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85F、V86A、T87K、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87V、R338A、および E410N; D85M、V86A、T87I、R338A、および E410N; D85H、V86A、T87M、R338A、および E410N; D85W、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85W、V86A、T87W、R338A、および E410Q; D85R、V86A、T85R、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87F、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87M、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87V、R338A、および E410Q; D85R、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85I、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85S、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85Y、V86A、T87R、R338A、および E410Q; D85G、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87W、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85F、V86A、T87K、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87V、R338A、および E410Q; D85M、V86A、T87I、R338A、および E410Q; D85H、V86A、T87M、R338A、および E410Q; ならびにこれらのいずれかの組合せから選択されるものである、請求項4のポリペプチド。
【請求項6】
以下のアミノ酸配列を含む第IX因子ポリペプチド:

YNSGKLEEFVQGNLERECMEEKCSFEEAREVFENTERTTEFWKQYVDGDQCESNPCLNGGSCKDDINSYECWCPFGFEGKNCELX85X86X87CNIKNGRCEQFCKNSADNKVVCSCTEGYRLAENQKSCEPAVPFPCGRVSVSQTSKLTRAETVFPDVDYVNSTEAETILDNITQSTQSFNDFTRVVGGEDAKPGQFPWQVVLNGKVDAFCGGSIVNEKWIVTAAHCVETGVKITVVAGEHNIEETEHTEQKRNVIRIIPHHNYNAAINKYNHDIALLELDEPLVLNSYVTPICIADKEYTNIFLKFGSGYVSGWGRVFHKGRSALVLQYLRVPLVDRATCLX338STKFTIYNNMFCAGFHEGGRDSCQGDSGGPHVTEVEGTSFLTGIISWGEECAMKGKYGIYTKVSRYVNWIKX410KTKLT (配列番号 2);

ここで、X85 は D、F、G、H、I、M、N、R、S、W および Y から選択され;
ここで、X86 は A、D、E、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T および V から選択され;
ここで、X87 は F、I、K、M、R、T、V および W から選択され;
ここで、X338 は A、F、I、L、M、R、S、T、V および W から選択され;
ここで、X410 は E、N、および Q から選択される。
【請求項7】
1以上のグリコシル化部位をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載のポリペプチド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の第IX因子ポリペプチドおよび医薬上許容される担体を含む医薬品。
【請求項9】
治療上有効量の請求項8の医薬品を必要としている対象に投与することを含む、血友病 B を処置する方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリペプチドをコードする DNA 配列。
【請求項11】
宿主細胞が第IX因子ポリペプチドを発現することを可能にするよう、請求項10に記載の DNA 配列を用いてトランスフェクトされた真核宿主細胞。
【請求項12】
第IX因子ポリペプチドを生産する方法であって、(i)1以上のアミノ酸置換を導入することによってポリペプチドのアミノ酸配列を改変する工程; (ii)細胞株において該ポリペプチドを発現させる工程; および(iii)該ポリペプチドを精製する工程を含む、方法。
【請求項13】
該1以上のグリコシル化部位に結合した1以上の糖部分をさらに含む、請求項7のポリペプチド。
【請求項14】
1以上の糖部分がシアル酸である、請求項13のポリペプチド。
【請求項14】
a)請求項13または14のポリペプチドおよび b)該ポリペプチドに共有結合した1以上のポリマー部分を含む複合体。
【請求項15】
1以上のポリマー部分が1以上の糖部分に共有結合している、請求項14の複合体。
【請求項16】
1以上のポリマー部分が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、エチレングリコールおよびプロピレングリコール等のコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルフォリン)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチル スターチ(HES)、ポリエチレンオキサイド、アルキル-ポリエチレンオキサイド、ビスポリエチレンオキサイド、および、ポリアルキレンオキサイド、ポリ(エチレングリコール-コ-プロピレングリコール)、ポリ(N-2-(ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)のコポリマーまたはブロックコポリマー、ならびにデキストランからなる群より選択される、請求項15の複合体。
【請求項17】
1以上のポリマー部分がポリ(アルキレングリコール)である、請求項16の複合体。
【請求項18】
ポリ(アルキレングリコール)がポリエチレングリコール(PEG)である、請求項17の複合体。
【請求項19】
以下を含む複合体:
a) 1以上のアミノ酸置換を導入することによって改変されたアミノ酸配列を含む第IX因子ポリペプチド、ここで、少なくとも1つのアミノ酸置換が残基 338 におけるものである;
b) 該1以上のグリコシル化部位と結合した1以上の糖部分; および
c) 1以上の糖部分と共有結合した1以上のポリマー部分。
【請求項20】
該残基 338 における置換が、R338A、R338F、R338I、R338L、R338M、R338S、R338T、R338V および R338W からなる群より選択されるものである、請求項19の複合体。
【請求項21】
該ポリペプチドが、アミノ酸残基 157 および 167 から選択される1以上のアミノ酸置換をさらに含む、請求項19または20の複合体。
【請求項22】
該残基 157 における置換が、N157A および N157Q からなる群より選択されるものである、請求項21の複合体。
【請求項23】
該残基 167 における置換が、N167A および N167Q からなる群より選択されるものである、請求項21の複合体。
【請求項24】
以下の工程を含む、ポリペプチドへのポリマー部分の複合化を改善する方法: a) 1以上のグリコシル化部位を有するポリペプチドを提供する工程、ここで、該グリコシル化部位は1以上のシアル酸を含む; b) 該ポリペプチドの該シアル酸を酸化する工程; c) 触媒を提供する工程; および d) アミノオキシ官能基を含むポリマー部分を該酸化されたシアル酸と共有結合させる工程; これにより複合化の割合が増大する。
【請求項25】
該触媒が、アニリンならびにアニリン誘導体、例えば o-Cl-、p-Cl-、o-CH3O-、p-CH3O- および p-CH3-アニリンからなる群より選択されるものである、請求項24の方法。
【請求項26】
該複合化の割合が、触媒を用いない場合と比較して増大する、請求項24の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500726(P2013−500726A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523129(P2012−523129)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/044177
【国際公開番号】WO2011/014890
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】