説明

放出制御性無菌注射アリピプラゾール製剤および方法

【課題】水で構成されそして筋肉内注射されると、少なくとも約1週間そして約6週間までの期間アリピプラゾールを放出する統合失調症および関連障害の治療のための放出制御無菌凍結乾燥アリピプラゾール製剤を提供する。
【解決手段】所望の平均粒子径(無菌湿式ボールミリングによって、約5〜100ミクロンの範囲の粒子径を約1〜30ミクロンの粒子径に減少させる工程を経る)の均質なアリピプラゾールおよびそのためのビヒクルから形成される、放出制御性無菌凍結乾燥アリピプラゾール製剤。該放出制御性凍結乾燥アリピプラゾール製剤の製造方法、上記製剤を使用する統合失調症の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本願は、米国仮出願第60/513,618号からの優先権の利益を主張し、この全ての開示は、本明細書中に参照により組込まれる。
【0002】
本発明は、放出制御性無菌凍結乾燥アリピプラゾール製剤、該無菌凍結乾燥アリピプラゾールを含有しそして少なくとも1週間アリピプラゾールを放出する注射製剤、上記製剤の製造方法、上記製剤を使用する統合失調症(schizophrenia)および関連障害の治療方
法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
米国特許第5,006,528号(Oshiroら)は、ドーパミン作動性神経伝達物質アンタゴニストとして、アリピプラゾールを包含する7−[(4−フェニルピペラジノ)−ブトキシ]カルボスチリル類を開示している。
【0004】
アリピプラゾールは、構造
【0005】
【化1】

【0006】
を有し、統合失調症の治療に有用な非定型抗精神病薬である。それは、乏しい水溶性を有する(室温で、<1μg/mL)。
【0007】
米国特許第6,267,989号(Liversidgeら)は、ナノ粒子組成物中における結晶成長および粒子凝集を防止する方法を開示しており、ここで、ナノ粒子組成物は、ボールミリングを含む水性ミリング技術を使用して、最適な有効平均粒子径へ減少される。
【0008】
米国特許第5,314,506号(Midlerら)は、高い純度および安定性の高表面積粒子を有する薬剤の直接結晶化のための方法に関し、ここで、衝突噴流(impinging jet streams)が、該薬剤の粒子の高強度微細混合(high intensity micromixing)を達
成するために使用され、核形成および微結晶の直接生成が続く。
【0009】
長時間作用するアリピプラゾール無菌注射製剤は、患者のコンプライアンスを増大させそしてそれによって統合失調症の治療における再発率を低下させ得る点で、薬物投薬形態としてメリットを有する。統合失調症の治療のための公知の長時間作用する薬物プロダクトの例としては、デカン酸ハロペリドールおよびデカン酸フルフェナジンが挙げられ、これらは両方とも、ゴマ油に溶解された低水溶性のエステル化合物を有する。リスペリドン(WO95/13814)およびオランザピン(WO99/12549)を含有するマイクロカプセルもまた公知である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の簡単な説明
本発明によれば、注射用水で構成されると、少なくとも約1週間、そして好ましくは約2、3または4週間そして6週間以上までの期間、治療量で、アリピプラゾールを放出する、無菌凍結乾燥アリピプラゾール製剤が、提供される。本発明の凍結乾燥アリピプラゾール製剤は、以下:
(a)アリピプラゾール、および
(b)該アリピプラゾールのためのビヒクル、
を含み、該製剤は、水で構成されると、(好ましくは、筋肉内に)注射されると少なくとも1週間、好ましくは2、3または4週間そして6週間以上までの期間、治療量のアリピプラゾールを放出する注射懸濁液を形成する。
【0011】
本発明の凍結乾燥アリピプラゾール製剤は、好ましくは以下を含む:
(a)アリピプラゾール、
(b)1以上の懸濁化剤(suspending agents)、
(c)必要に応じて1以上のバルキング剤(bulking agents)、
(d)必要に応じて1以上の緩衝剤、および
(e)必要に応じて1以上のpH調整剤。
【0012】
約1〜約30ミクロンの範囲内の該凍結乾燥アリピプラゾール製剤の平均粒子径が、少なくとも約1週間そして6週間以上まで(例えば、8週間まで)の期間、アリピプラゾールを放出する注射剤を製剤化することにおいて必須である。
【0013】
凍結乾燥アリピプラゾールの平均粒子径が小さいほど、持続放出期間が短くなることが判った。従って、本発明によれば、平均粒子径が約1ミクロンである場合、アリピプラゾールは、3週間未満、好ましくは2週間の期間、放出される。平均粒子径が約1ミクロンを超える場合、アリピプラゾールは、少なくとも2週間、好ましくは約3〜4週間、そして6週間以上までの期間、放出される。従って、本発明によれば、アリピプラゾール放出期間は、凍結乾燥製剤におけるアリピプラゾールの粒子径を変化させることによって変化され得る。
【0014】
用語“平均粒子径”は、レーザー光散乱(laser-light scattering;LLS)法によって測定される場合の体積平均直径(volume mean diameter)をいう。粒度分布は、LLS法によって測定され、そして平均粒子径は、粒度分布から計算される。
【0015】
更に、本発明によれば、無菌懸濁液の形態の放出制御性無菌注射アリピプラゾール製剤(controlled release sterile injectable aripiprazole formulation)(即ち、注射用水に懸濁された本発明の凍結乾燥製剤)が提供され、これは、(好ましくは、筋肉内に)注射されると、少なくとも1週間、治療量のアリピプラゾールを放出し、これは、以下を含む:
(a)アリピプラゾール、
(b)そのためのビヒクル、および
(c)注射用水。
【0016】
無菌懸濁液の形態の本発明の放出制御性無菌注射製剤は、該製剤の単位体積当たりの高い薬物ローディング(drug loadings)を可能にし、従って、少ない注射体積で比較的高
い用量のアリピプラゾールの送達を可能にする(1mLの懸濁液当たり0.1〜600mgの薬物)。
【0017】
更に、本発明によれば、以下の工程:
(a)所望の粒度分布および約5〜約100ミクロンの範囲内の平均粒子径を好ましくは有する、無菌アリピプラゾール原末(sterile bulk aripiprazole)を調製する工程、
(b)該無菌アリピプラゾール原末のための無菌ビヒクルを調製する工程、
(c)該無菌アリピプラゾール原末と該無菌ビヒクルを混合して、無菌一次懸濁液を形成する工程、
(d)該無菌一次懸濁液中のアリピプラゾールの平均粒子径を、約1〜約30ミクロンの範囲内に減少させて、最終無菌懸濁液を形成する工程、および
(e)該最終無菌懸濁液を凍結乾燥して、所望の多型形態(無水物、一水和物、または両方の混合物)のアリピプラゾールの無菌凍結乾燥懸濁液を形成する工程、
を包含する、上述の無菌凍結乾燥アリピプラゾール製剤の製造方法が提供される。
【0018】
上記方法を行う際に、所望の平均粒子径への無菌一次懸濁液の平均粒子径の減少は、無菌湿式粉砕手順を使用することによって行われ、これは好ましくは無菌湿式ボールミリングである。無菌湿式粉砕は、所望の平均粒度分布の均質な無菌アリピプラゾール製剤を形成することにおいて必須である。
【0019】
更に、本発明によれば、所望の多型形態、即ち、無水物、一水和物、または両方の混合物の無菌凍結乾燥アリピプラゾールを製造する、アリピプラゾールの最終無菌懸濁液の凍結乾燥方法が提供される。
【0020】
なお更に、本発明によれば、治療が必要な患者へ、治療量の上述の放出制御性注射アリピプラゾール製剤を投与する方法を包含する、統合失調症および関連疾患の治療方法が提供される。
【0021】
予想外の観察として、水性溶媒系に懸濁されたアリピプラゾールの懸濁液は、注射によって投与された場合、好ましくは筋肉内注射の場合、実質的に一定のアリピプラゾール薬物血漿濃度を維持することが見出された。大きな“バースト現象(burst phenomenon)”は観察されず、そして、本発明のアリピプラゾール懸濁液を使用して、コンスタントなアリピプラゾール薬物血漿濃度が1〜8週間以上維持され得ることはかなり驚くべきことである。経口投与されるアリピプラゾール製剤のための一日開始用量(daily starting dose)は、15ミリグラムである。1〜8週間以上の経口投与薬物量と等価の薬物用量を投
与するためには、単回用量として、非常に大量の薬物量の投与を必要とする。本発明の水性アリピプラゾール注射製剤は、患者にコンプライアンス問題を生じさせることなく、大量の薬物を送達するために、投与され得る。
【0022】
本発明のアリピプラゾール注射製剤は、アリピプラゾールの無水物または一水和物結晶形態あるいは両方を含有する混合物を含み得る。該一水和物が使用される場合、徐放された薬物血漿濃度の維持が可能である。
【0023】
本発明のアリピプラゾール注射製剤は、水性レディー・トゥー・ユーズ懸濁液(aqueous ready-to-use suspension)として投与され得る;しかし、この懸濁液を凍結乾燥する
ことによって、より有用な薬物プロダクトが供給され得る。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明の放出制御性無菌注射アリピプラゾール製剤は、該無菌注射製剤の重量に基づいて約1〜約40重量%、好ましくは約5〜約20重量%、そしてより好ましくは約8〜約15重量%の範囲内の量でアリピプラゾールを含む。
【0025】
示されたように、アリピプラゾールの所望の平均粒子径は、アリピプラゾールの所望の放出制御特性を有する注射製剤を製造するために必須である。従って、所望の放出制御を実現するために、アリピプラゾールは、約1〜約30ミクロン、好ましくは約1〜約20ミクロン、そしてより好ましくは約1から約10〜15ミクロンの範囲内の平均粒子径を有するべきである。
【0026】
所望の放出制御期間が少なくとも約2週間、6週間以上まで、好ましくは約3〜約4週間である場合、アリピプラゾールは、約1〜約20、好ましくは約1〜約10ミクロン、より好ましくは約2〜約4ミクロンの範囲内、そして最も好ましくは約2.5ミクロンの平均粒子径を有する。約2.5ミクロンの平均粒子径を有するアリピプラゾールは、以下のような粒度分布を有する:
【0027】
【表1】

【0028】
本発明のアリピプラゾール製剤は、好ましくは、以下から形成される:
A.アリピプラゾール、ならびに
B.そのためのビヒクル[これは、
(a)1以上の懸濁化剤、
(b)1以上のバルキング剤、
(c)1以上の緩衝剤、および
(d)必要に応じて1以上のpH調整剤
を含む]。
【0029】
懸濁化剤(suspending agent)は、無菌注射製剤の総重量に基づいて、約0.2〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約5重量%の範囲内の量で存在する。使用のために好適な懸濁化剤の例としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンの1、2またはそれ以上が挙げられるが、これらに限定されず、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリビニルピロリドンが好ましい。アリピプラゾールのためのビヒクルにおける使用のために好適な他の懸濁化剤としては、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然プロダクト(natural products)、および界面活性剤(非イオン性およびイオン性界面活性剤を含む)、例えば、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、グリセロール、アカシアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス(cetomacrogol emulsifying wax)、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(polyoxyethylene castor oil derivatives)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、市販のTweens(登録商標)、例えば、Tween20(登録商標)およびTween80(登録商標)(ICI Specialty Chemic
als));ポリエチレングリコール類(例えば、Carbowaxs 3350(登録商標)および1450(登録商標)、ならびにCarbopol 934(登録商標)(Union Carbide))、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンステアレート、コロイダル二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースtiカルシウム(carboxymethylcellulose ti calcium)、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC−SL、およびHPC−
L)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースフタレート、非結晶性セルロース(noncrystalline cellulose)、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキサイドおよびホルムアルデヒドとの4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポール(tyloxapol)
、スペリオン(superione)、およびトリトン(triton)としても公知)、ポロキサマー
(poloxamers)(例えば、Pluronics F68(登録商標)およびF108(登録商標)、これらは、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのブロックコポリマーである);ポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、Poloxamine 908(登録商標)としても公知、これは、エチレンジアミンへのプロピレンオキサイドおよびエチレンオキサイドの連続付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーである(BASF Wyandotte Corporation,Parsippany,N.J.));荷電リン脂質(charged phospholipid)、例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオクチルスルホサクシネート(DOSS);Tetronic 1508(登録商標)(T−1508)(BASF Wyandotte Corporation)、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル(例えば、Aerosol OT(登録商標)、これはスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルである(American Cyanamid));Duponol P(登録商標)、これはラウリル硫酸ナトリウムである(DuPont);Tritons X−200(登録商標)、これはアルキルアリールポリエーテルスルホネートである(Rohm and Haas);Crodestas F−110(登録商標)、これはスクロースステアレートおよびスクロースジステアレートの混合物である(Croda Inc.);p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、Olin−10G(登録商標)またはSurfactant 10−G(登録商標)としても公知(Olin Chemicals,Stamford,Conn.);Crodestas SL−40(登録商標)(Croda,Inc.);ならびにSA9OHCO、これはC1837CH(CON(CH))−CH(CHOH)(CHOH)である(Eastman Kodak Co.);デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシル β−D−グルコピラノシド;n−デシル β−D−マルトピラノシド;n−ドデシル β−D−グルコピラノシド;n−ドデシル β−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル β−D−チオグルコシド;n−ヘキシル β−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノニル β−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチル β−D−チオグルコピラノシドなど。
【0030】
これらの懸濁化剤の大部分は、公知の薬学的賦形剤であり、そしてthe American Pharmaceutical AssociationおよびThe Pharmaceutical Society of Great Britainによって共同発行されたthe Handbook of Pharmaceutical Excipientsに詳細に記載されており(The
Pharmaceutical Press, 1986)、参照により具体的に組込まれる。懸濁化剤は、市販さ
れておりそして/または当該分野において公知の技術によって製造され得る。
【0031】
ここで、所望の平均粒子径は約1ミクロン以上である場合は、カルボキシメチルセルロースまたはそのナトリウム塩が特に好ましい。
【0032】
バルキング剤(bulking agent)(冷凍/凍結乾燥保護剤(cryogenic/lyophilize protecting agent)とも呼ばれる)は、無菌注射製剤の総重量に基づいて、約1〜約10重量%、好ましくは約3〜約8重量%、より好ましくは約4〜約5重量%の範囲内の量で存在する。本明細書中における使用に好適なバルキング剤の例としては、マンニトール、スクロース、マルトース、キシリトール、グルコース、スターチ、ソルビトール等の1、2またはそれ以上が挙げられるが、これらに限定されず、平均粒子径が約1ミクロン以上である製剤のためには、マンニトールが、好ましい。キシリトールおよび/またはソルビトールは、所望の粒子径が達成および維持されるように、薬物粒子の結晶成長および凝集を阻害することによって、アリピプラゾール製剤の安定性を増強させることが判った。
【0033】
緩衝剤(buffer)は、凍結乾燥アリピプラゾール製剤の水性懸濁液のpHを、約6〜約8、好ましくは約7に調整する量で使用される。このようなpHを達成するために、通常、緩衝剤は、タイプに依存して、無菌注射製剤の総重量に基づいて、約0.02〜約2重量%、好ましくは約0.03〜約1重量%の範囲内、そしてより好ましくは約0.1重量%の量で使用される。本明細書中における使用のために好適な緩衝剤の例としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、またはTRIS緩衝剤の1、2またはそれ以上が挙げられるが、これらに限定されず、リン酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
本発明の凍結乾燥製剤は、pH調整剤(pH adjusting agent)を必要に応じて含んでいてもよく、これは、凍結乾燥アリピプラゾールの水性懸濁液のpHを、約6〜約7.5の範囲、好ましくは約7に調整する量で使用され、そして、凍結乾燥アリピプラゾールの水性懸濁液のpHが、所望の約7の中性pHに達するために上昇される必要があるのかあるいは低下される必要があるのかに依存して、酸または塩基であり得る。従って、pHが低下される必要がある場合、酸性pH調整剤、例えば、塩酸または酢酸、好ましくは塩酸が使用され得る。pHが上昇される必要がある場合、塩基性pH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウム、好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。
【0035】
凍結乾燥アリピプラゾール製剤は、2〜6週間の投薬のために、2.5mL以下、好ましくは2mLの容積中に、送達される約10〜約400mgのアリピプラゾールが提供される量の注射用水で構成され得る。
【0036】
本発明の凍結乾燥アリピプラゾール製剤の製造方法を行う際に、無菌アリピプラゾールおよび無菌ビヒクルが無菌的に混合されて無菌懸濁液が形成されるように、そして無菌懸濁液が無菌凍結乾燥粉末またはケーキを形成する様式で凍結乾燥されるように、全てが無菌状態であることが要求される。従って、無菌操作(aseptic procedure)が、所望の粒
度分布の無菌アリピプラゾール原末を製造するために使用される。無菌アリピプラゾール原末は、約5〜約100ミクロン、好ましくは約10〜約90ミクロンの範囲内の平均粒子径を有する。
【0037】
好ましくは、衝突噴流結晶化方法(impinging jet crystallization method)が、連続プロセッシングを使用しながら、所望の小さな粒子径ならびに狭い粒度分布、高表面積、高化学純度、高安定性(改善された結晶構造に起因する)の無菌アリピプラゾールを製造するために使用される。
【0038】
衝突噴流結晶化は、真正面から互いを打つ2つのジェットストリーム(jet streams)
を使用する。該ストリームの一方は、アリピプラゾールリッチの溶液を運搬し、そして他方は、水のような貧溶媒(anti-solvent)を運搬する。2つのストリームは互いを打ち、このことは、衝突時の高い乱れおよび高い強度の微細混合(micromixing)に起因して、
迅速な均一混合および過飽和を可能にする。この過飽和の即時の達成は、迅速な核形成を
開始させる。一般的に、平均結晶サイズは、過飽和が増加するほど、そして貧溶媒の温度が低下するほど、減少する。従って、最小粒度を得るためには、可能な最も高い濃度の上記リッチ溶液および最も低い温度の貧溶媒を有することが、有利である。
【0039】
懸濁化剤、バルキング剤、緩衝液、必要に応じてpH調整剤および水を含む無菌アリピプラゾール原末のためのビヒクルは、調製されてそして滅菌を受ける。その後、無菌アリピプラゾール原末および無菌ビヒクルは、無菌的に混合されて、無菌一次懸濁液が形成され、そしてアリピプラゾールの粒子径が、所望のレベルへ減少される。これは、好ましくは、無菌湿式粉砕手法(aseptic wet milling procedure)を使用することによって行わ
れ、ここで、無菌ビヒクル中に分散されたアリピプラゾールの無菌粒子は、粉砕媒体(grinding media)の存在下で粉砕手段に供され、アリピプラゾールの粒子径は、所望の放出制御期間に依存して、約1〜約10ミクロンの範囲内に減じられる。
【0040】
無菌湿式粉砕手法は、好ましくは、湿式ボールミリング(wet ball milling)である。アリピプラゾールの所望の平均粒子径が約1ミクロンを超える場合、一次懸濁液(混合されたアリピプラゾール−ビヒクル)は、約5〜約15L/時間、好ましくは約8〜約12L/時間、そしてより好ましくは約10L/時間で、単一回(シングルパス)、湿式ボールミルを通過せしめられ、アリピプラゾールの平均粒子径を所望の範囲内、例えば、約1〜約5ミクロンに縮小させる。
【0041】
ボールミル(例えば、Dynoミル)に加えて、他の低および高エネルギーミル(例えば、ローラーミル)が使用され得、そして高エネルギーミル(例えば、Netzschミル、DCミルおよびPlanetaryミル)が使用され得る。しかし、使用されるミリング手法および装置は、所望の平均粒子径の無菌アリピプラゾール製剤を製造し得ることが必須である。
【0042】
使用され得る粒子径減少のための他の技術としては、制御された無菌晶析法(aseptic controlled crystallization)、高剪断ホモジナイゼーション(high shear homogenization)、高圧ホモジナイゼーション(high pressure homogenization)およびマイクロフ
ルイダイゼーション(microfluidization)が挙げられ、約1〜約100ミクロンの範囲
の平均粒子径を有する粒子を製造する。
【0043】
得られる最終懸濁液は、無菌バイアル中へ無菌的に充填され、そして滅菌された凍結乾燥機中へ無菌的に搬入される。注意深く設計された凍結乾燥サイクルが、アリピプラゾールの所望の結晶形を形成しそして/または維持するために適用されることが必須であり、該結晶形は、一水和物形態(アリピプラゾール水和物A)ならびに多数の無水形態、即ち無水結晶B、無水結晶C、無水結晶D、無水結晶E、無水結晶F、および無水結晶Gの形態で存在することが知られており、これらは全て、本発明の製剤において使用され得る。
【0044】
本発明において使用されると下記に述べられるアリピプラゾール一水和物(グレイン)または水和物は、下記の(1)〜(5)に示される物理化学的特性を有している。このアリピプラゾール水和物は、これ以降、“アリピプラゾール水和物A”と記載される。
【0045】
(1)それは、約71℃に小さなピークそしておよそ60℃〜120℃に緩やかな吸熱ピークの出現を特徴とする吸熱曲線を有する。
【0046】
(2)それは、1.55-1. 63 ppm (m, 2H), 1.68-1. 78 ppm (m, 2H), 2.35-2. 46 ppm (m, 4H), 2. 48-2. 56 ppm (m, 4H + DMSO), 2.78 ppm (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.97 ppm (brt, J = 4.6 Hz, 4H), 3.92 ppm (t, J = 6.3 Hz, 2H), 6.43 ppm (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.49 ppm (dd, J = 8.4 Hz, J = 2.4 Hz, 1H), 7.04 ppm (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.11-
7. 17 ppm (m, 1H), 7.28-7. 32 ppm (m, 2H) および 10.00 ppm (s, 1H)に特徴的なピークを有するH−NMRスペクトルを有する。
【0047】
(3)それは、2θ=12.6°、15.4°、17.3°、18.0°、18.6°、22.5°および24.8°に特徴的なピークを有する粉末X線回折スペクトルを有する。
【0048】
(4)それは、IR(KBr)スペクトルにおいて、2951、2822、1692、1577、1447、1378、1187、963および784 cm-1に明確な赤外吸収バンドを有する。
【0049】
(5)それは、50μm以下の平均グレインサイズを有する。
【0050】
アリピプラゾール水和物Aは、従来のアリピプラゾール水和物をミリングすることによって製造される。
【0051】
従来のミリング方法は、該アリピプラゾール水和物をミルするために使用され得る。例えば、該アリピプラゾール水和物は、ミリング機器においてミルされ得る。広く使用されるミリング機器、例えば、アトマイザー、ピンミル、ジェットミルまたはボールミルが、使用され得る。これらの中で、アトマイザーが好ましい。
【0052】
アトマイザーを使用する場合の特定のミリング条件に関して、5000〜15000rpmの回転速度が、例えば10〜30rpmの供給回転(feed rotation)および1〜5
mmのスクリーンホールサイズと共に、主軸について使用され得る。
【0053】
ミリングによって得られるアリピプラゾール水和物Aの平均グレインサイズは、通常、50μm以下、好ましくは30μm以下であるべきである。平均グレインサイズは、以下に記載されるグレインサイズ測定方法(grain size measurement method)によって確認
され得る。
【0054】
グレインサイズ測定:測定されるグレイン0.1gを、0.5g大豆レシチンの20ml n−ヘキサン溶液中に懸濁させ、そしてグレインサイズを、サイズ分布メーター(M
icrotrack HRA,Microtrack Co.)を使用して測定した。
【0055】
本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶は、下記の(6)〜(10)に示される物理化学的特性を有している。これらのアリピプラゾール無水結晶は、これ以降、“アリピプラゾール無水結晶B”と呼ばれる。
【0056】
(6)それらは、次に示されるH−NMRスペクトル(DMSO−d6,TMS)を有する。具体的には、それらは、1.55-1. 63 ppm (m, 2H), 1.68-1. 78 ppm (m, 2H), 2.35-2. 46 ppm (m, 4H), 2.48-2. 56 ppm
(m, 4H + DMSO), 2.78 ppm (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.97 ppm (brt, J = 4.6 Hz, 4H), 3.92 ppm (t, J = 6.3 Hz, 2H), 6.43 ppm (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.49 ppm (dd, J = 8.4
Hz, J = 2.4 Hz, 1H), 7.04 ppm (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.11-7. 17 ppm (m, 1H), 7. 28- 7.32 ppm (m, 2H) および 10.00 ppm (s, 1H)に特徴的なピークを有する。
【0057】
(7)それらは、次に示される粉末X線回折スペクトルを有する。具体的には、それらは、2θ=11.0°、16.6°、19.3°、20.3°および22.1°に特徴的なピークを有する。
【0058】
(8)それらは、IR(KBr)スペクトルにおいて、2945、2812、1678、1627、1448、1377、1173、960および779 cm-1に明確な赤外吸収バンドを有する。
【0059】
(9)それらは、熱重量/示差熱分析(昇温速度5℃/分)において、約141.5℃付近に吸熱ピークを示す。
【0060】
(10)それらは、示差走査熱量測定(昇温速度5℃/分)において、約140.7℃付近に吸熱ピークを示す。
【0061】
本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶Bは、低吸湿性を有する。例えば、本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶Bは、60℃の温度および100%の湿度に設定されたデシケーター内で、24時間後、0.4%以下の含水量を維持する。
【0062】
含水量を測定する周知の方法は、それらが結晶の含水量を測定するために一般的に使用される方法である限り、使用され得る。例えば、Karl Fischer法のような方法が使用され得る。
【0063】
本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶Bは、例えば90〜125℃で上述のアリピプラゾール水和物Aを加熱することによって、調製される。加熱時間は、一般的に、加熱温度に依存して、約3〜50時間である。加熱時間および加熱温度は反比例し、その結果、例えば、加熱時間は、加熱温度が低いほど長くなり、そして加熱温度が高いほど短くなる。具体的には、アリピプラゾール水和物Aの加熱温度が100℃である場合、加熱時間は、通常、18時間以上、または好ましくは約24時間であるべきである。他方で、アリピプラゾール水和物Aの加熱温度が120℃である場合、加熱時間は約3時間であり得る。本発明のアリピプラゾール無水結晶Bは、100℃で約18時間アリピプラゾール水和物Aを加熱し、そして次いでそれを120℃で約3時間加熱することによって、確実に作製され得る。
【0064】
更に、本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶Bは、例えば90〜125℃で従来のアリピプラゾール無水結晶を加熱することによって、調製される。加熱時間は、一般的に、加熱温度に依存して、約3〜50時間である。加熱時間および加熱温度は、上述のように、反比例する。具体的には、該アリピプラゾール無水結晶の加熱温度が100℃である場合、加熱時間は、約4時間であり得、そして加熱温度が120℃である場合、加熱時間は約3時間であり得る。
【0065】
本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶Bを作製するための原料であるアリピプラゾール無水結晶は、例えば下記の方法aまたはbによって作製される。
【0066】
方法a:
アリピプラゾール無水結晶Bは、周知の方法、例えば、日本国特許公開公報191256/1990の実施例1に記載されるように7−(4−ブロモブトキシ)−3,4−ジヒドロカルボスチリルと1−(2,3−ジクロロフェニル)ピペリジンとを反応させそして得られる原料アリピプラゾール結晶をエタノールで再結晶させることによって、作製される。
【0067】
方法b:
アリピプラゾール無水結晶Bは、少なくとも60℃そして90℃未満の温度で、従来のアリピプラゾール水和物を加熱することによって、作製される。加熱時間は、加熱温度に依存して、一般的に約1〜30時間である。加熱時間および加熱温度は、上述のように、反比例する。具体的には、アリピプラゾール水和物の加熱温度が約60℃である場合、加熱温度は約8時間であり得、一方、加熱温度が80℃である場合、加熱時間は約4時間で
あり得る。
【0068】
方法bは、the Proceedings of the 4th Japanese-Korean Symposium on Separation Technology (October 6-8, 1996)に記載されている。
【0069】
更に、本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶Bは、例えば90〜125℃で従来のアリピプラゾール水和物を加熱することによって、作製される。加熱時間は、過熱温度に依存して、一般的に約3〜50時間である。加熱時間および加熱温度は、反比例する。具体的には、アリピプラゾール水和物の加熱温度が100℃である場合、加熱時間は約24時間であり得、一方、加熱温度が120℃である場合、加熱時間は約3時間であり得る。
【0070】
本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶Bを作製するための原料であるアリピプラゾール水和物は、例えば下記の方法cによって作製される。
【0071】
方法c:
アリピプラゾール水和物は、含水溶媒(hydrous solvent)中に、上記方法aによって
得られたアリピプラゾール無水結晶を溶解させ、そして得られる溶液を加熱次いで冷却することによって、得られる。この方法を使用して、アリピプラゾール水和物は、該含水溶媒中で、結晶として析出される。
【0072】
水を含有する有機溶媒が、通常、上記含水溶媒として使用される。有機溶媒は、水と混和性であるもの、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールもしくはイソプロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、テトラヒドロフラン等のエーテル、ジメチルホルムアミド、あるいはそれらの混合物であるべきであり、エタノールが特に望ましい。上記含水溶媒中の水の量は、上記溶媒の10〜25重量%、または好ましくは20重量%の近傍であり得る。
【0073】
上述のように、本発明において使用されるアリピプラゾール無水結晶Bは、アリピプラゾール水和物A、従来のアリピプラゾール無水結晶または従来のアリピプラゾール水和物を90〜125℃で加熱することによって作製され、そしてアリピプラゾール水和物A、従来のアリピプラゾール無水結晶または従来のアリピプラゾール水和物は、単独でまたは組み合わせて使用され得る。
【0074】
本発明で使用され得るアリピプラゾールの上記結晶形態および他の結晶形態ならびにこのような結晶形態の製造方法は、2003年4月4日に公開されたPCT WO 03/26659に開示されるように、水和物Aならびに無水結晶Bおよび無水結晶C、無水結晶D、無水結晶E、無水結晶F、および無水結晶Gを含む。
【0075】
凍結乾燥製剤においてアリピプラゾールの一水和物形態が望ましい場合、凍結乾燥サイクルは、適当な冷却速度で約−40℃まで製剤を冷却することを包含するべきである。一次乾燥は、約0℃未満の温度ならびに適当な真空および期間で行われるべきである。
【0076】
凍結乾燥製剤においてアリピプラゾールの無水物形態が望ましい場合、凍結乾燥サイクルは、3段階(凍結、一次乾燥、および二次乾燥)を包含するべきである。凍結段階は、適当な冷却速度で約−40℃まで製剤を冷却することを包含するべきである。一次乾燥は、約0℃未満の温度ならびに適当な真空および期間で行われるべきである。二次乾燥は、約0℃を超える温度ならびに適当な真空および期間で行われるべきである。
【0077】
得られる凍結乾燥アリピプラゾール懸濁液を含むバイアルは、大気圧または部分真空下
で無菌的に栓をされ、そして密封される。
【0078】
水性懸濁液の形態の好ましい注射製剤を、以下に示す:
【0079】
【表2】

【0080】
アリピプラゾールは、総注射製剤に基づいて、約1〜約40%(w/v)、好ましくは約5〜約20%(w/v)、そしてより好ましくは約8〜約15%(w/v)の範囲内の量で、水性注射製剤中に存在する。
【0081】
好ましい実施形態において、アリピプラゾールは、約50〜約400mg/製剤2mL、好ましくは約100〜約200mg/製剤1mLを提供するために、水性注射製剤中に存在する。
【0082】
本発明に従う好ましい各用量注射製剤(individual dose injectable formulations)
は、以下の通りである:
【0083】
【表3】

【0084】
本発明のアリピプラゾール製剤は、ヒト患者における、統合失調症および関連障害(例えば、双極性障害および痴呆)を治療するために使用される。本発明の注射製剤のために
使用される好ましい投薬量は、1ヶ月当たり1〜2回で与えられる、約100〜約400mgアリピプラゾール/mLを含有する単回注射または複数注射である。注射製剤は、好ましくは筋肉内投与されるが、皮下注射も同様に許容される。
【0085】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す。
【実施例】
【0086】
実施例
実施例1
アリピプラゾール注射(IM Depot)水性懸濁液(200mgアリピプラゾール/2mL、200mg/バイアル)を、以下のように調製した。
【0087】
メディアミリングによって調製されたアリピプラゾールマイクロサスペンジョン
アリピプラゾールの微粒子分散液(microparticulate dispersion)を、DYNO(登
録商標)−MILL(Willy A. Bachoffen AG Maschinenfabrik,Basel,Switzerland製のType KDL A)を使用して調製した。
【0088】
以下の成分を、15℃(±5℃)に維持された3Lガラス被覆ベッセル(3L glass jacketed vessel)へ添加し、無菌一次懸濁液を形成した:
アリピプラゾール 100g
カルボキシメチルセルロース、ナトリウム塩7L2P 9.0g
マンニトール 45g
リン酸ナトリウム、一塩基性 0.8g
水酸化ナトリウム溶液、1N pHを7.0へ調整するための十分量
注射用水、USP 1040gまでの十分量。
【0089】
一次懸濁液を、約0.5時間500〜1000rpmで、そして次いで更に1時間300〜500rpmで20”Hg(±5”Hg)の真空下で混合した。
【0090】
メディアミル(media mill)を、メディアミリングプロセスのために適宜に準備した。粉砕容器(grinding container)を、酸化ジルコニウムビーズで部分的に充填し、そして該分散液を、以下の条件で作動するミルに通過させた:
粉砕容器:冷却水用ジャケット付き0.6Lステンレス鋼ベッセル(water jacketed
0.6 L stainless steel vessel)
冷却水温度:15℃(±5℃)
撹拌速度:2500rpm
粉砕媒体:超高密度(VHD)酸化ジルコニウムビーズ500mL
懸濁液流量:10L/h
ミリング時間:6分。
【0091】
シングルパスミリング後、処理された懸濁液のサンプルを取り出し、そしてHoriba LA−910レーザー散乱粒度分布測定器(Horiba LA-910 Laser Scattering Particle Size Distribution Analyzer)を使用して粒度分布について評価した。粒子は、2.5ミクロン(μ)の平均粒子径および以下の粒度分布を有すると測定された:10%<0.4μ、50%<1.6μ、75%<3.3μ、90%<5.9μ、および95%<7.6μ。
【0092】
2.5mLの上記懸濁液を、滅菌したバイアル中に無菌的に充填し、次いでこれを、滅菌した栓で無菌的に部分的に栓をした。バイアルを、フリーズドライヤーへ無菌的に移し
、そして以下のサイクルに従って凍結乾燥した:
(a)熱処理:プロダクトを、0.1〜1時間、−40℃で凍結させ、そして少なくとも3時間、−40℃で維持する、
(b)コンデンサー(condenser)を−50℃以下に冷却する、
(c)一次乾燥:チャンバ圧を約100ミクロンHgへ低下させ、そしてプロダクト温度を約2時間を要して−5℃へ上昇させ;少なくとも48時間、−5℃および100ミクロンHgで一次乾燥を継続する、
(d)無菌窒素または空気を使用して、大気圧または部分真空下で、バイアルに栓をし、そしてフリーズドライヤーから取り出す、
(e)適当なシールでバイアルを密封しそしてラベルする。
【0093】
実施例2
アリピプラゾール注射(IM Depot)水性懸濁液(200mgアリピプラゾール/2mL、200mg/バイアル)を、以下のように調製した。
衝突噴流結晶化によって調製されたアリピプラゾールマイクロサスペンジョン
アリピプラゾールの微粒子分散液(microparticulate dispersion)を、衝突噴流結晶
化(impinging jet crystallization)を使用して調製した。
【0094】
以下の手順を使用して、無菌アリピプラゾール原末を形成した:
1. 95%エタノール2000mL中に、アリピプラゾール100gを懸濁させる。該懸濁液を、それが透明な溶液となるまで、80℃へ加熱する。
【0095】
2. 該アリピプラゾール溶液をホールディングベッセル(holding vessel)中へポリッシュフィルターし(polish filter)、そして80℃で維持する。
【0096】
3. 2000mLの水を別のホールディングビベッセル中へポリッシュフィルターし、そして80℃へ加熱する。
【0097】
4. 0.25kg/分で、0.02インチ直径ノズルを通して、該アリピプラゾール溶液を送液し、そしてそれを、0.02インチ直径ノズルを通して0.25kg/分で送液された30℃の水と衝突させて、結晶スラリー(crystal slurry)を形成させ、これをインピンジメントベッセル(impingement vessel)中に回収する。
【0098】
5. 該インピンジメントベッセルにおいて一定体積を維持するためにレシーバーへ連続的に移送しながら、新たに形成された結晶スラリーを該インピンジメントベッセル中で撹拌する。
【0099】
6. 衝突の完了時、レシーバー中のスラリーを室温に冷却する。
【0100】
7. スラリーを濾過する。
【0101】
8. 真空下35℃でウエットケークを乾燥し、減少された粒子径(90%<100μm)を有する100gのアリピプラゾールを得る(96%回収)。
【0102】
以下の成分を、15℃(±5℃)に維持された3Lガラス被覆ベッセル(3L glass jacketed vessel)へ添加し、無菌一次懸濁液を形成した:
アリピプラゾール(衝突噴流結晶化によって調製) 100g
カルボキシメチルセルロース、ナトリウム塩7L2P 9.0g
マンニトール 45g
リン酸ナトリウム、一塩基性 0.8g
水酸化ナトリウム溶液、1N pHを7.0へ調整するための十分量
注射用水、USP 1040gまでの十分量。
【0103】
該無菌懸濁液を、約0.5時間500〜1000rpmでそして次いで更に1時間300〜500rpmで20”Hg(±5”Hg)の真空下で混合した。
【0104】
該無菌懸濁液は、2.5ミクロンの平均粒子径および以下の粒度分布を有する粒子を含むことが判った:
10%<0.4μ
50%<1.6μ
75%<3.3μ
90%<5.9μ
95%<7.5μ。
【0105】
2.5mLの上記懸濁液を、滅菌したバイアル中に無菌的に充填し、次いでこれを、滅菌した栓で無菌的に部分的に栓をした。バイアルを、フリーズドライヤーへ無菌的に移し、そして以下のサイクルに従って凍結乾燥した:
(a)熱処理:プロダクトを、0.1〜1時間、−40℃で凍結させ、そして少なくとも6時間、−40℃で維持する、
(b)コンデンサー(condenser)を−50℃以下に冷却する、
(c)一次乾燥:チャンバ圧を約100ミクロンHgへ低下させ、そしてプロダクト温度を約2時間を要して−5℃へ上昇させ;少なくとも48時間、−5℃および100ミクロンHgで一次乾燥を継続する、
(d)無菌窒素または空気を使用して、大気圧または部分真空下で、バイアルに栓をし、そしてフリーズドライヤーから取り出す、
(e)適当なシールでバイアルを密封しそしてラベルする。
【0106】
実施例3(動物PKデータ)
A.ラットにおける単回投与I.M.デポ研究
実施例1において調製されたアリピプラゾールI.M.デポ製剤(I. M. depot formulation)を、12.5、25、および50mg/kgの用量で、15匹のラット(M−雄
性、F−雌性)の大腿筋中へ注射した。アリピプラゾールI.M.デポ投与後の全身性暴露の評価のために、血液サンプルを、第1(投与後6時間)、2、4、7、10、15、22、28、36および43日に採取し、そしてアリピプラゾールについて分析した。図1は、ラットにおけるアリピプラゾールの平均血漿濃度vs.時間プロファイルを示している。
【0107】
B.イヌにおける単回投与I.M.デポ研究
実施例1において調製されたアリピプラゾール筋肉内(intramuscular)(I.M.)
デポ製剤を、100、200、および400mgの用量で、5匹のイヌ(M−雄性、F−雌性)の大腿筋中へ注射した。アリピプラゾールI.M.デポ投与後の全身性暴露の評価のために、血液サンプルを、第1(投与後10および30分、ならびに1、3および8時間)、2、4、7、10、15、22、28、36および42日に採取し、そしてアリピプラゾールについて分析した。図2は、イヌにおけるアリピプラゾールの平均血漿濃度vs.時間プロファイルを示している。
【0108】
PKプロファイル
平均アリピプラゾールラット血清濃度−時間プロファイルを、図1においてグラフとして示す。アリピプラゾール水性懸濁液は、ラットモデルにおいて少なくとも4週間、安定した血清濃度を示した。
【0109】
平均アリピプラゾールイヌ血清濃度−時間プロファイルを、図2においてグラフとして示す。アリピプラゾール水性懸濁液は、イヌモデルにおいて3〜4週間、安定した血清濃度を示した。
【0110】
実施例4(ヒトPKデータ)
患者における単回投与I.M.デポ研究
実施例1において調製されたアリピプラゾールI.M.デポ製剤を、慢性の安定した統合失調症または統合失調性感情障害(schizoaffective disorder)と診断された患者へ筋肉内投与した。研究デザインは、全ての被検者へ5mg用量のアリピプラゾール溶液を投与することを包含し、患者一人当たり15、50および100mgでのIMデポの単回投与が続いた。PK分析のためのサンプルを、アリピプラゾールの血漿濃度が2連続の訪問について定量の下限値(lower limit of quantification)(LLQ)未満となるまで、
採取した。
【0111】
図3は、被検者2および3(15mgのIMデポが投薬された)ならびに被検者4および5(50mgのIMデポが投与された)における、アリピプラゾールの平均血漿濃度vs.時間プロファイルを示している。全ての場合において、アリピプラゾール血漿レベルは、放出の速い開始および少なくとも30日間の持続放出を示した。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、ラットにおける本発明の実施例1の製剤の平均血漿濃度 対 時間プロファイルを示すグラフである。
【図2】図2は、イヌにおける本発明の実施例1の製剤の平均血漿濃度 対 時間プロファイルを示すグラフである。
【図3】図3は、ヒトにおける本発明の実施例1の製剤の平均血漿濃度 対 時間プロファイルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アリピプラゾール
(b)そのためのビヒクル、および
(c)注射用水、
を含む、注射されると少なくとも1週間アリピプラゾールを放出する、放出制御性無菌アリピプラゾール注射製剤。
【請求項2】
前記ビヒクルが1以上の懸濁化剤を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
(a)アリピプラゾール、ならびに
(b)そのためのビヒクル[該ビヒクルは、
(1)1以上の懸濁化剤、
(2)必要に応じて1以上のバルキング剤(bulking agents)、および
(3)必要に応じて1以上の緩衝剤、
を含む]、ならびに
(c)注射用水、
を含む、注射されると少なくとも1週間アリピプラゾールを放出する、放出制御性アリピプラゾール注射製剤。
【請求項4】
更にpH調整剤を含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
無菌懸濁液の形態の、請求項3に記載の製剤。
【請求項6】
1〜30ミクロンの範囲内の平均粒子径を有するアリピプラゾールを含有する無菌懸濁液の形態の、請求項3に記載の製剤。
【請求項7】
1〜20ミクロンの範囲内の平均粒子径を有するアリピプラゾールを含有する無菌懸濁液の形態の、請求項3に記載の製剤。
【請求項8】
前記アリピプラゾールが、1〜10ミクロンの平均粒子径を有する、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
(a)前記アリピプラゾールが、1〜40%の範囲内の量で存在し、
(b)前記懸濁化剤が、0.2〜10%の範囲内の量で存在し、
(c)前記バルキング剤が、2〜10%の範囲内の量で存在し、
(d)前記緩衝剤が、前記懸濁液のpHを6〜7.5の範囲内に調整するために、0.02〜2%の範囲内の量で存在し、
上記%は全て、懸濁液の容量に基づく質量/容量%による%である、
懸濁液形態の請求項3に記載の製剤。
【請求項10】
前記懸濁化剤が、カルボキシメチルセルロースまたはそのナトリウム塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンであり、前記バルキング剤が、マンニトール、スクロース、マルトース、ラクトース、キシリトールまたはソルビトールであり、そして前記緩衝剤が、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムまたはトリス緩衝剤である、請求項3に記載の製剤。
【請求項11】
(a)アリピプラゾール、
(b)カルボキシメチルセルロースまたはそのナトリウム塩、
(c)マンニトール、
(d)リン酸ナトリウム、
(e)必要に応じて、水酸化ナトリウム、および
(f)注射用水、
を含む、注射されると2〜4週間アリピプラゾールを放出する、請求項3に記載の製剤。
【請求項12】
以下を含む、請求項11に記載の製剤:
【表1】

【請求項13】
懸濁液1mL当たり0.1〜600mgのアリピプラゾールの送達を可能にする、請求項4に記載の製剤。
【請求項14】
前記アリピプラゾールが、無水形態または一水和物の形態である、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
前記アリピプラゾールが、アリピプラゾール無水結晶Bまたはアリピプラゾール水和物Aの形態である、請求項14に記載の製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−102316(P2011−102316A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6037(P2011−6037)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【分割の表示】特願2006−536693(P2006−536693)の分割
【原出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】