説明

放射線治療システム及びその精度管理用ファントム

【課題】精度管理の作業を軽減することができる放射線治療システム及びその精度管理用ファントムを提供する。
【解決手段】被検体が載置される天板11、天板11を移動可能に支持する支持台12、及び天板11を回転する回転機構を有する寝台部10と、被検体の身長及び体重を模して作成されたファントム50と、直線状のガイドレール21、架台角度で停止した天板11上に載置されるファントム50の撮影を行うガイドレール21上を自走可能に配置された架台22とを有するCT部20と、治療角度で停止した天板11上のファントム50の撮影を行う回転部31を有する放射線治療部30とを備え、ファントム50の撮影によりCT部20で生成された画像データ及び放射線治療部30で生成された画像データに基づいて、寝台部10及びCT部20の位置の精度管理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体に放射線を照射して治療を行う放射線治療システム及びその精度管理用ファントムに関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍等の病変部の治療を目的とし、被検体の病変部を確認する画像データを得るための撮影装置としてのX線CT装置、確認した病変部に放射線を照射して治療を行う放射線治療装置、及びX線CT装置の撮影位置や放射線治療装置の照射位置へ被検体を移動する寝台装置を備えた放射線治療システムが知られている。
【0003】
この放射線治療システムでは、画像データから病変部の位置や大きさ等を特定し、その病変部に放射線を照射して病変部周辺の正常組織の障害を最小限に抑えることが重要であり、X線CT装置の撮影に関るユニット、放射線治療装置の照射に関るユニット、及び寝台装置の被検体の移動に関るユニットに高い位置精度が要求される。このため、据付け時や定期点検時に各ユニット位置の確認に適した複数のファントムを利用して、目視確認やファントムの撮影から得られる画像データの確認により、各ユニット位置の精度管理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−192245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のファントムの撮影を行う場合、ファントム毎に所定の位置に取り付けてから撮影を行う必要があり、各ユニット位置の精度管理の作業に手間がかかる問題がある。
【0006】
実施形態は、上記問題点を解決するためになされたもので、精度管理の作業を軽減することができる放射線治療システム及びその精度管理用ファントムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、実施形態の放射線治療システムは、被検体に撮影用の放射線を照射し、前記被検体を透過した放射線を検出して撮影を行い、この撮影により得られる画像データに基づいて、前記被検体に治療用の放射線を照射して治療を行う放射線治療システムにおいて、前記被検体が載置される天板、この天板を移動可能に支持する支持台、及び前記天板及び前記支持台を回転する回転機構を有する寝台部と、前記被検体の身長及び体重を模して作成されたファントムと、前記寝台部の一側に配置された直線状のガイドレールと、このガイドレール上を自走可能に配置され、架台角度で停止した前記天板上に載置される前記ファントムに複数の角度から放射線を照射し、前記ファントムを透過した放射線を検出して撮影を行う架台とを有し、前記架台の撮影により画像データを生成するCT部と、治療角度で停止した前記天板上の前記ファントムに複数の角度から放射線を照射し、前記ファントムを透過した放射線を検出して撮影を行う前記寝台部の他側に配置された回転部を有し、前記回転部の撮影により画像データを生成する放射線治療部と、前記CT部及び前記放射線治療部で生成された画像データに基づいて、前記寝台部及び前記CT部の位置の精度管理を行う精度管理部とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る放射線治療システムの構成を示すブロック図。
【図2】実施形態に係る寝台部、CT部、及び放射線治療部の構成並びに配置を示す側面図。
【図3】実施形態に係る光照射部の構成の一例を示す図。
【図4】実施形態に係るファントムの構成の一例を示す図。
【図5】実施形態に係る放射線治療システムの動作を示すフローチャート。
【図6】実施形態に係る放射線治療システムの動作を示すフローチャート。
【図7】実施形態に係る第1の画像データの一例を示す図。
【図8】実施形態に係る第4の画像データの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る放射線治療システムの構成を示したブロック図である。この放射線治療システム100は、被検体が載置される寝台部10と、寝台部10に載置された被検体等に撮影用の放射線を複数の角度から照射して撮影を行うCT部20と、寝台部10に載置された被検体に複数の角度から撮影用の放射線を照射して撮影が可能な放射線治療部30と、寝台部10、CT部20、及び放射線治療部30の各ユニットの位置の精度管理に用いるファントム50とを備えている。
【0011】
また、放射線治療システム100は、CT部20による撮影や放射線治療部30による撮影や治療を行うときに寝台部10に載置されるファントム50や被検体の位置決めを行うための基準位置を示す可視光を照射する光照射部40と、寝台部10に載置されたファントム50の撮影によりCT部20及び放射線治療部30で生成される画像データに基づいて各ユニットの位置の精度管理を行う精度管理部70とを備えている。
【0012】
更に、放射線治療システム100は、精度管理部70の精度管理により許容範囲を外れたユニットの異常情報を表示する表示部72と、CT部20で生成された画像データを被検体の病変部の位置や形状などに基づく治療計画データとして、放射線治療部30で生成された画像データと照合して位置合わせを行うための照合記録部71とを備えている。
【0013】
更にまた、寝台部10に載置されたファントム50や被検体をCT部20や放射線治療部30で撮影や治療が可能な位置へ移動させる入力、精度管理を実行させる入力等を行う操作部73と、寝台部10、CT部20、放射線治療部30、精度管理部70、及び照合記録部71を統括して制御する記憶回路を有するシステム制御部74とを備えている。
【0014】
次に、図1乃至図4を参照して、寝台部10、CT部20、放射線治療部30、光照射部40、及びファントム50の構成並びに正確な配置例について説明する。
図2は、寝台部10、CT部20、及び放射線治療部30の各ユニットの構成並びに配置を示した側面図である。
寝台部10は、放射線の外部への漏洩を防ぐために設けられた治療室110内の底面を形成する水平な床面110a上に配置され、ファントム50や被検体が載置される天板11と、この天板11を長手方向及び上下方向に移動可能に支持する支持台12と、床面110aに垂直な仮想の直線101上に配置される回転軸を中心として、天板11及び支持台12を矢印R1方向に回転する回転機構13を備えている。
【0015】
そして、回転機構13は、天板11上に載置されたファントム50や被検体の撮影がCT部20で行われるとき、天板11をR1方向に回転して、天板11の短手方向の中心を通る中心軸111が、直線101に直交する仮想の直線231に平行となる架台角度で停止させる。また、天板11上に載置されたファントム50や被検体の撮影や治療が放射線治療部30で行われるとき、天板11を架台角度からR1方向へ例えば180°回転した角度である治療角度で停止させる。
【0016】
CT部20は、寝台部10の一側に直線231に対して平行となる角度で床面110aに配置された直線状のガイドレール21と、ガイドレール21上を自走可能に配置され、ファントム50や被検体の撮影を行う架台22と、図示しないが、架台22の撮影により生成される投影データに基づいて画像データを生成する再構成部とを備えている。そして、ファントム50の撮影により生成した画像データを精度管理部70へ出力する。また、被検体の撮影により生成した画像データを照合記録部71へ出力する。
【0017】
架台22は、直線231が中心を貫通する開口部23を有し、直線231を仮想の回転軸として回転しながら撮影用の放射線であるX線を複数の角度から照射するX線管24と、入射するX線を検出して投影データを生成する開口部23を介してX線管24に対向配置されたX線検出部25とを備えている。
【0018】
そして、架台22は、寝台部10から最も離れた退避位置から、架台角度で停止した天板11の方向へ自走し、直線231上の直線101との交点から架台22の方向へ距離D1離れ、X線管24の焦点とX線検出部25の検出面の中心を通る直線211が直線231と直交する交点であるアイソセンタ20aを架台22の基準位置(アイソセンタ位置)として停止する。
【0019】
次いで、アイソセンタ位置で、架台角度で停止した天板11上に載置されるファントム50や被検体の開口部23内に位置する長手方向の所定範囲に、アイソセンタ20aを回転中心とするX線管24が複数の角度からX線を照射し、ファントム50や被検体を透過したX線をX線検出部25で検出して複数の投影データを生成することにより、アイソセンタ20aを撮影の中心として撮影を行う。また、停止した位置で、天板11の移動によりファントム50や被検体の長手方向における前記所定範囲よりも広範囲の撮影を行う。また、停止した位置からの自走により、ファントム50や被検体の長手方向における前記所定範囲よりも広範囲の撮影を行う。
【0020】
CT部20の再構成部では、架台22及び天板11が停止した位置での撮影により生成された投影データから、ファントム50や被検体の所定範囲における3次元画像データ、又はファントム50や被検体の所定範囲を所定の間隔でスライスしたときの断面を示す複数の2次元画像データを生成する。また、架台22が停止した位置での天板11の移動、又は天板11が停止した位置での架台22の自走による広範囲の撮影により生成された投影データから、広範囲における3次元画像データ、又は広範囲を所定の間隔でスライスしたときの複数の2次元画像データを生成する。
【0021】
放射線治療部30は、治療室110内における寝台部10の一側とは反対側の他側に配置される回転部31及びこの回転部31を回転可能に支持する床面110a上に配置された支持部32とを備えている。そして、回転部31は、直線231に直交する照射軸331を中心としてCT部20と同じ放射線である撮影用の放射線や、治療用の放射線を照射する放射線発生部33と、この放射線発生部33から照射された撮影用の放射線を検出して投影データを生成する放射線検出部34とを備えている。また、支持部32は、直線101と直交すると共にその交点から距離D1離れた位置で照射軸331と直交し、直線231の距離H1上方に位置する仮想の直線321上に配置される回転軸を中心として、回転部31を矢印R2方向へ回転可能に支持する。
【0022】
そして、放射線治療装置30は、架台角度からR1方向へ回転した治療角度で停止する天板11上のファントム50や被検体に回転部31がR2方向へ回転した複数の角度から放射線を照射し、ファントム50や被検体を透過した放射線を検出して複数の投影データを生成することにより撮影を行う。このファントム50の撮影により生成された投影データに基づき画像データを生成して精度管理部70に出力する。また、被検体の撮影により生成した投影データに基づき画像データを生成して照合記録部71に出力する。
【0023】
また、治療角度で停止する天板11上の、照射軸331と直線321との交点であるアイソセンタ30aを回転部31の基準位置とし、アイソセンタ30aに病変部が位置合わせされた被検体に、アイソセンタ30aを回転中心としてR2方向へ回転した複数の角度から治療用の放射線を照射して治療を行う。
【0024】
図3は、光照射部40の構成の一例を示した図である。この光照射部40は、治療室110内に配置され、CT部20の架台22の退避位置においてアイソセンタ20aを含む領域に可視光を複数の方向から照射する第1の光照射部41と、放射線治療部30における回転部31の退避角度においてアイソセンタ30aを含む領域に可視光を複数の方向から照射する第2の光照射部42とを備えている。
【0025】
第1の光照射部41は、治療室110内の側面を形成する4つの側壁の内のCT部20のガイドレール21の方向に対して垂直方向に形成された互いに対向する2つの側壁110b,110cにアイソセンタ20aを介して対向配置される2つの第1及び第2の光発生部411,412並びに2つの第3及び第4の光発生部413,414を備えている。
【0026】
第1の光発生部411は、側壁110bに配置され、アイソセンタ20aを含む鉛直な面を形成する第1の領域4111に可視光を広角照射する。また、第2の光発生部412は、側壁110cに配置され、アイソセンタ20aを含む鉛直な面を形成する第2の領域4121に可視光を広角照射する。また、第3の光発生部413は、側壁110bに配置され、アイソセンタ30aの高さで第1の領域4111に直交する水平な面を形成する第3の領域4131に可視光を広角照射する。また、第4の光発生部414は、側壁110cに配置され、アイソセンタ30aの高さで第2の領域4121に直交する水平な面を形成する第4の領域4141に可視光を広角照射する。
【0027】
第2の光照射部42は、側壁110b,110cに対向配置される2つの第1及び第2の光発生部421,422並びに2つの第3及び第4の光発生部423,424を備えている。そして、第1の光発生部421は、側壁110cに配置され、アイソセンタ30aを含む水平な面を形成する第1の領域4211に可視光を広角照射する。また、第2の光発生部422は、側壁110bに配置され、アイソセンタ30aを含む水平な面を形成する第2の領域4221に可視光を広角照射する。また、第3の光発生部423は、側壁110cに配置され、第1の領域4211に直交し、アイソセンタ30aを含む面を形成する第3の領域4231に可視光を広角照射する。また、第4の光発生部424は、側壁110bに配置され、第2の領域4221に直交し、アイソセンタ30aを含む面を形成する第4の領域4241に可視光を広角照射する。
【0028】
図4は、ファントム50の構成の一例を示した図である。そして、図4(a)は、ファントム50の側面図である。また、図4(b)は、図4(a)のAA矢視断面図である。また、図4(c)は、図4(b)のBB矢視断面図である。
【0029】
このファントム50は、長手方向における長さ及び重量が被検体の身長及び体重を模して作成され、直方体を成している。そして、長手方向における長さが被検体の身長に当たる1200〜2000mmの範囲であり、且つ、長手方向における重量配分が被検体の体軸方向における体重配分と同様に不均一となるように構成され、短手方向における幅が天板11上に載置可能な例えば400mmを有する。ここでは、成人男性の被検体を模して作成され、長手方向における長さが平均身長に当たる例えば1700mmであり、重量が平均体重に当たる65kgある。
【0030】
そして、ファントム50は、CT部20及び放射線治療部30からの放射線、並びに光照射部40からの可視光を透過する例えば透明なアクリル樹脂材等の部材からなる、同一寸法の直方体の形状を有する2つの第1及び第2の容器51a,51bにより構成される。また、第1及び第2の容器51a,51bの長手方向における複数の異なる位置に架台22及び回転部31の基準位置に基づいて互いに平行に配置された放射線を吸収する直線状の線体である第1乃至第3のワイヤ52a,53a,54a及び第1乃至第3のワイヤ52b,53b,54b、並びに放射線を吸収する吸収体である例えば金属球等の第1乃至第6の球体55乃至60により構成される。また、各第1及び第2の容器51a,51bに収容された被検体の体重を模するための放射線を透過する水等の液体により構成される。また、ファントム50の重量を被検体の体軸方向における体重の配分に模して配分するための、例えば第2の容器51bに収容された放射線を透過する前記液体よりも単位体積の重さが軽い直方体を成す複数の部材61により構成される。
【0031】
第1の容器51aはファントムの50の一端部側に配置され、第2の容器51bファントムの50の他端部側に配置される。そして、第1及び第2の容器51a,51bは、第1の容器51aの長手方向における一端部側の第1の側壁及び他端部側の第2の側壁の内の第2の側壁外面と、第2の容器51bの長手方向における一端部側の第1の側壁及び他端部側の第2の側壁の内の第1の側壁外面との係着により分割可能に連結されている。
【0032】
このように、第1の容器51aと第2の容器51bに分割可能とすることにより、ファントム50の可搬性の向上を図ることができる。
【0033】
また、第1の容器51aは、短手方向における第3及び第4の側壁外面の、長手方向における例えば被検体の頭部の中心に当たる第1の側壁近傍の位置に、この位置を識別可能に設けられた第1乃至第3のワイヤ52a,53a,54aに垂直な直線状の第1及び第2のライン511,512を有する。また、第3及び第4の側壁外面の、第1及び第2のライン511,512から第2の側壁方向へ距離DA離れた被検体の胸部の中心に当たる位置に、この位置を識別可能に設けられた第1及び第2のライン511,512に平行な第3及び第4のライン513,514を有する。
【0034】
また、第2の容器51bは、短手方向における第3及び第4の側壁外面の、第3及び第4のライン513,514から距離DB離れた被検体の下肢の付け根に当たる位置に、この位置を識別可能に設けた第3及び第4のライン513,514に平行な第5及び第6のライン515,516を有する。
【0035】
第1乃至第3のワイヤ52a,53a,54aは、第1の容器51aの長手方向における第1及び第2のライン511,512及び第3及び第4のライン513,514の位置を含む範囲に第1の容器51aの底面に対して平行に配置される。そして、第1のワイヤ52aは架台22のアイソセンタ20aの位置に合わせて設けられ、第1及び第2のライン511,512に対して垂直に第1の容器51a短手方向の中央に配置される。また、第2及び第3のワイヤ53a,54aはアイソセンタ20aの高さに対する回転部31のアイソセンタ30aの高さに合わせて設けられ、第1の容器51aの第3及び第4の側壁の第1のワイヤ52aよりも距離H1高い位置に配置される。
【0036】
第1乃至第3のワイヤ52b,53b,54bは、第2の容器51bの長手方向における第5及び第6のライン515,516の位置を含む範囲に配置される。そして、第1のワイヤ52bは、第1のワイヤ52aの延長線上にある第2の容器51b短手方向の中央に配置される。また、第2及び第3のワイヤ53b,54bは、第2及び第3のワイヤ53a,54aの延長線上にある第2の容器51bの短手方向における両端部側面を形成する第3及び第4の側壁に配置される。
【0037】
第1の球体55は、第2及び第3のワイヤ53a,54a並びに第1及び第2のライン511,512に直交する直線上における第1の容器51aの第3の側壁に配置され、第2の球体56は、前記直線上における第1の容器51aの第4の側壁に配置される。また、第3の球体57は、第2及び第3のワイヤ53a,54a並びに第3及び第4のライン513,514に直交する直線上における第1の容器51aの第3の側壁に配置され、第4の球体58は、前記直線上における第1の容器51aの第4の側壁に配置される。また、第5の球体59は、第2及び第3のワイヤ53b,54b並びに第5及び第6のライン515,516に直交する直線上における第2の容器51bの第3の側壁に配置固定され、第6の球体60は、前記直線上における第2の容器51bの第4の側壁に配置される。
【0038】
各部材61は、空気を内包するアクリル樹脂材により構成される。そして、例えば6個ある部材61の内、直列配列した一方の3個の部材61が第2の容器51b内の第2及び第3の側壁内面並びに底面に接触して配置され、直列配列した他方の3個の部材61が第2の容器51b内の第2及び第4の側壁内面並びに底面に接触して配置される。
【0039】
このように、第2の容器51b内に部材61を収容することにより、ファントム50の長手方向における重量を被検体の体軸方向における下肢と下肢以外の部分の体重配分に模して配分することができる。
【0040】
以下、図1乃至8を参照して、放射線治療システム100の精度管理を行う動作の一例を説明する。
図5及び図6は、放射線治療システム100の動作を示したフローチャートである。精度管理は、放射線治療システム100の据付け時や定期点検時に実行される。システム制御部74の記憶回路にはファントム50の第1及び第2のライン511,512と第3及び第4のライン513,514の間の距離DA、並びに第3及び第4のライン513,514と第5及び第6のライン515,516の間の距離DBの情報が保存されている。
【0041】
寝台部10の天板11は、中心軸111が直線231に平行な架台角度で停止し、またCT部20の架台22は退避位置で停止し、更に放射線治療部30の回転部31は退避角度で停止している。ファントム50は、被検体が載置される位置に合わせて、第2の容器51bと連結された第1の容器51aの長手方向における一端が天板11上の一端又は一端近傍に位置し、第1のワイヤ52a,52bが天板11の中心軸111上に位置するように天板11上に載置される。次いで、第2の容器51b内の所定の位置に部材61が固定され、各第1及び第2の容器51a,51b内に所定量の液体が注がれる。これにより、ファントム50の天板11上への取り付けが終了する。
【0042】
操作部73からの入力により、光照射部40の第1の光照射部41は、第1乃至第4の領域4111,4121,4131,4141に可視光を照射する。そして、架台22で撮影が行われるファントム50の位置決めを行うために、放射線治療システム100の操作者により操作部73から天板11を移動する入力が行われると、寝台部10の支持台12は、架台角度の天板11を長手方向及び上下方向へ移動する。
【0043】
ここでは、第1の領域4111の可視光がファントム50の第1のライン511を照射すると共に第2の領域4121の可視光が第2のライン512を照射するよう天板11を長手方向に移動させた後、第3の領域4131の可視光が第1のライン511の第1の球体55の高さの部分を照射すると共に第4の領域4141の可視光が第2のライン512の第2の球体56の高さの部分を照射する位置へ天板11を上下移動させる。この移動によりファントム50の位置決めが行われた位置で停止した天板11は、例えば長手方向における大部分が支持台12により支持され、支持台12から離れた部分がファントム50の荷重で撓むことのない位置である。そして、操作部73から精度管理を実行させる入力が行われると、放射線治療システム100は動作を開始する(図5のステップS1)。
【0044】
このように、ファントム50を天板11上に取り付けて第1の光照射部41から照射される可視光によりファントム50の位置決めを行い、操作部73から精度管理を実行させる入力を行うだけの簡単な作業により、放射線治療システム100の精度管理の動作を実行させることができる。
【0045】
なお、第3の領域4131の可視光が第1のライン511の第1の球体55の高さの部分を照射すると共に第4の領域4141の可視光が第2のライン512の第2の球体56の高さの部分を照射する位置へ天板11を上下移動させることができない場合、天板11の短手方向における上面が水平面に対して傾斜して異常であると判断して、天板11の短手方向における上面が水平になるように調整を行う。
【0046】
システム制御部74は、ファントム50が位置決めされた天板11の位置である第1のライン位置の情報を記憶回路に保存した後、寝台部10、CT部20、放射線治療部30、精度管理部70、及び表示部72に精度管理の動作を指示する。CT部20の架台22は、退避位置からガイドレール21上を自走して、アイソセンタ位置で停止する。
【0047】
停止した位置で、架台22は、天板11上のファントム50の長手方向における第1及び第2のライン511,512を含む所定範囲の撮影を行う。次いで、支持台12により第1のライン位置から架台22方向へ距離DA移動した第2のライン位置における天板11上のファントム50の長手方向における第3及び第4のライン513,514を含む所定範囲の撮影を行う。更に、第2のライン位置から架台22方向へ距離DB移動した第3のライン位置における天板11上のファントム50の長手方向における第5及び第6のライン515,516を含む所定範囲の撮影を行う。CT部20の再構成部は、架台22の撮影により生成された投影データに基づいて、第1のライン位置、第2のライン位置、及び第3のライン位置の各ライン位置における例えば3次元の画像データを生成する。そして生成した3次元の画像データを精度管理部70に出力する。
【0048】
精度管理部70は、CT部20から出力された3次元画像データ毎にこの画像データを構成している画素を探索する。そして、第1のライン位置の3次元画像データから第1乃至第3のワイヤ52a,53a,54a並びに第1及び第2の球体55,56から成る5つのデータを含む断面のデータである第1の画像データを検索し、また第2のライン位置の3次元画像データから第1乃至第3のワイヤ52a,53a,54a並びに第3及び第4の球体57,58の5つのデータを含む断面のデータである第2の画像データを検索し、更に第3のライン位置の3次元画像データから第1乃至第3のワイヤ52b,53b,54b及び第5及び第6の球体59,60の5つのデータを含む断面のデータである第3の画像データを検索する(図5のステップS2)。
【0049】
図7は、第1の画像データの一例を示した図である。この第1の画像データ80は、中心(画像中心)で直交する縦方向の鉛直方向を示す縦軸86及び横方向の水平方向を示す横軸87を含んでいる。また、画像中心又はこの中心付近に位置する第1のワイヤ52aの断面のデータである第1のワイヤデータ81と、第1のワイヤデータ81の上方の最も左側に位置する第2のワイヤ53aの断面のデータである第2のワイヤデータ82と、第1のワイヤデータ81の上方の最も右側に位置する第3のワイヤ54aの断面のデータである第3のワイヤデータ83とを含んでいる。また、第2のワイヤデータ82の右側近傍に位置する第1の球体55の断面のデータである第1の球体データ84と、第3のワイヤデータ83の左側近傍に位置する第2の球体56の断面のデータである第2の球体データ85とを含んでいる。
【0050】
なお、第2の画像データは、第1の画像データ80と同様に構成され、縦軸及び横軸、画像中心又はこの中心付近に位置する第1のワイヤ52aのデータ、このデータの上方の最も左側に位置する第2のワイヤ53aのデータ、第1のワイヤ52aのデータの上方の最も右側に位置する第3のワイヤ54aのデータ、第2のワイヤ53aのデータの右側近傍に位置する第3の球体57のデータ、及び第3のワイヤ54aのデータの左側近傍に位置する第4の球体58のデータを含む。
【0051】
また、第3の画像データは、第1の画像データ80と同様に構成され、縦軸及び横軸、画像中心又はこの中心付近に位置する第1のワイヤ52bのデータ、このデータの上方の最も左側に位置する第2のワイヤ53bのデータ、第1のワイヤ52bのデータの上方の最も右側に位置する第3のワイヤ54bのデータ、第2のワイヤ53bのデータの右側近傍に位置する第5の球体59のデータ、及び第3のワイヤ54bのデータの左側近傍に位置する第6の球体60のデータを含む。
【0052】
精度管理部70は、第1の画像データ80に基づいて第1のライン位置における天板11の精度管理を行う。ここでは、第1のワイヤデータ81と画像中心の間の距離を求める(図5のステップS3)。
【0053】
そして、第1のワイヤデータ81が画像中心から予め設定された許容範囲(第1の中心距離範囲)内である場合(図5のステップS4のはい)、架台22のアイソセンタ20aの位置が正常であると判定し、図5のステップS5へ移行する。また、第1のワイヤデータ81が第1の中心距離範囲から外れている場合(図5のステップS4のいいえ)、架台22のアイソセンタ20aの位置が異常であると判定し、アイソセンタ20a位置の異常情報を表示部72に表示させる(図5のステップS6)。
【0054】
このように、ファントム50の第1及び第2のライン511,512の撮影によりCT部20から得られる第1の画像データ80に基づいて、ファントム50が天板11の撓みにより傾斜することのない第1のライン位置では、アイソセンタ20a位置の精度管理を行うことができる。
【0055】
ステップS4の「はい」の後に、精度管理部70は、第2の画像データに基づいて第2のライン位置における天板11の精度管理を行う。ここでは、第2の画像データに含まれる第3の球体57のデータと第4の球体58のデータの2点間を直線で結び、結んだ2点間の直線の横軸に対する角度を求める(図5のステップS5)。
【0056】
そして、求めた角度が予め設定された許容範囲(傾斜範囲)内である場合(図5のステップS7のはい)、第2のライン位置における天板11が水平で正常であると判定し、図5のステップS8へ移行する。また、求めた角度が傾斜範囲から外れている場合(図5のステップS7のいいえ)、天板11の短手方向における上面が水平面に対して傾斜して異常であると判定し、第2のライン位置における天板11の傾斜異常情報を表示部72に表示させる(図5のステップS9)。
【0057】
このように、ファントム50の第3及び第4のライン513,514の撮影によりCT部20から得られる第2の画像データに基づいて、天板11の短手方向における上面の水平面に対する傾斜の精度管理を行うことができる。
【0058】
ステップS7の「はい」の後に、精度管理部70は、第2の画像データの第1のワイヤ52aのデータを通り、結んだ直線に直交する直線の交点と第1のワイヤ52aのデータの間の距離を求める(図5のステップS8)。
【0059】
そして、求めた距離がアイソセンタ30aとアイソセンタ20aの差分である距離H1に基づいて予め設定された許容範囲(第2の鉛直距離範囲)内である場合(図5のステップS10のはい)、天板11の長手方向における上面の水平面に対する傾斜が許容範囲内であるため、天板11の撓みが正常であると判定し、図6のステップS11へ移行する。また、求めた距離が第2の鉛直距離範囲から外れている場合(図5のステップS10のいいえ)、天板11の長手方向における上面の水平面に対する傾斜が許容範囲から外れているため、天板11の撓みが異常であると判定し、第2のライン位置における天板11の撓みの異常情報を表示部72に表示させる(図5のステップS12)。
【0060】
このように、ファントム50の第3及び第4のライン513,514の撮影によりCT部20から得られる第2の画像データに基づいて、第1のライン位置よりも天板11の一端が支持台12から離れ、ファントム50の重量による天板11の撓みでファントム50が傾斜する可能性のある第2のライン位置における、天板11の撓みによる上下方向の位置の精度管理を行うことができる。
【0061】
ステップS10の「はい」又はステップS12の後に、精度管理部70は、第2の画像データに基づいてガイドレール21の精度管理を行う。ここでは、第2の画像データに含まれる横軸方向における第1のワイヤ52aのデータと縦軸の間の距離を求める(図5のステップS11)。
【0062】
そして、求めた距離が予め設定された許容範囲(第2の水平距離範囲)内である場合(図5のステップS13のはい)、ガイドレール21が天板11の中心軸111に対して平行に配置されているため正常であると判定し、図6のステップS14へ移行する。また、求めた距離が第2の水平距離範囲から外れている場合(図5のステップS13のいいえ)、ガイドレール21が天板11の中心軸111に対して平行に配置されていないため異常であると判定し、ガイドレール21配置角度の異常情報を表示部72に表示させる(図5のステップS15)。
【0063】
このように、ファントム50の第3及び第4のライン513,514の撮影によりCT部20から得られる第2の画像データに基づいて、ガイドレール21配置角度の精度管理を行うことができる。
【0064】
ステップS13の「はい」又はステップS15の後に、精度管理部70は、第3の画像データに基づいて第3のライン位置における天板11の精度管理を行う。ここでは、第3の画像データに含まれる第5の球体59のデータと第6の球体60のデータの間の2点間を直線で結ぶ。次いで、結んだ2点間の直線の横軸に対する角度を求める(図6のステップS14)。
【0065】
そして、求めた角度が予め設定された許容範囲(傾斜範囲)内である場合(図6のステップS16のはい)、第3のライン位置における天板11が水平であると判定し、図6のステップS17へ移行する。また、求めた角度が傾斜範囲から外れている場合(図6のステップS16のいいえ)、天板11の短手方向における上面が水平面に対して傾斜していると判定し、第3のライン位置における天板11の傾斜異常情報を表示部72に表示させる(図6のステップS18)。
【0066】
ステップS16の「はい」後に、精度管理部70は、第3の画像データに含まれる第1のワイヤ52bのデータを通り、結んだ直線に直交する直線の交点と第1のワイヤ52bのデータの間の距離を求める(図6のステップS17)。
【0067】
そして、求めた距離が距離H1に基づいて予め設定された許容範囲(第3の鉛直距離範囲)内である場合(図6のステップS19のはい)、天板11の長手方向における上面の水平面に対する傾斜が許容範囲内であるため、天板11の撓みが正常であると判定し、図6のステップS20へ移行する。また、求めた距離が第3の鉛直距離範囲から外れている場合(図6のステップS19のいいえ)、天板11の長手方向における上面の水平面に対する傾斜が許容範囲から外れているため、天板11の撓みが異常であると判定し、第3のライン位置における天板11の撓み異常情報を表示部72に表示させる(図6のステップS21)。
【0068】
このように、ファントム50の第5及び第6のライン515,516の撮影によりCT部20から得られる第3の画像データに基づいて、第2のライン位置よりも天板11の一端が支持台12から離れ、ファントム50の重量で天板11の撓みによりファントム50が長手方向に傾斜する可能性の大きくなる第3のライン位置における、天板11の撓みによる上下方向の位置の精度管理を行うことができる。
【0069】
ステップS19の「はい」又はステップS21の後に、精度管理部70は、第3の画像データに基づいてガイドレール21の精度管理を行う。ここでは、横軸方向における第1のワイヤ52bのデータと縦軸の間の距離を求める(図6のステップS20)。
【0070】
そして、求めた距離が予め設定された許容範囲(第3の水平距離範囲)内である場合(図6のステップS22のはい)、ガイドレール21が天板11の中心軸111に対して平行に配置されているため正常であると判定し、図6のステップS23へ移行する。また、求めた距離が第3の水平距離範囲から外れている場合(図6のステップS22のいいえ)、ガイドレール21が天板11の中心軸111に対して平行に配置されていないため異常であると判定し、ガイドレール21配置角度の異常情報を表示部72に表示させる(図6のステップS24)。
【0071】
このように、ファントム50の第5及び第6のライン515,516の撮影よりCT部20から得られる第3の画像データに基づいて、ガイドレール21配置角度の精度管理を行うことができる。
【0072】
ステップS22の「はい」又はステップS24の後に、寝台部10は、ファントム50が載置された天板11を長手方向へ移動して第1のライン位置で停止させた後、R1方向に回転して治療角度で停止する(図6のステップS23)。
【0073】
放射線治療部30は、停止した天板11上のファントム50に回転部31がR2方向へ回転した複数の角度から放射線を照射し、ファントム50を透過した放射線を検出して複数の投影データを生成することにより撮影を行う。このファントム50の撮影により生成された投影データに基づいて第3の画像データを生成して精度管理部70に出力する。
【0074】
図8は、第4の画像データの一例を示した図である。この第4の画像データ90は、図7に示した第1の画像データ80と同様に構成され、画像中心で直交する縦方向の鉛直方向を示す縦軸96及び横方向の水平方向を示す横軸97を含んでいる。また、横軸97よりも下方の縦軸96上又は縦軸96近傍に位置する第1のワイヤ52aの断面のデータである第1のワイヤデータ91と、ワイヤデータ91の上方の最も左側に位置する第2のワイヤ53aの断面のデータである第2のワイヤデータ92と、第1のワイヤデータ91の上方の最も右側に位置する第3のワイヤ54aの断面のデータである第3のワイヤデータ93とを含んでいる。また、第2のワイヤデータ92の右側近傍に位置する第1の球体55の断面のデータである第1の球体データ94と、第3のワイヤデータ93の左側近傍に位置する第2の球体56の断面のデータである第2の球体データ95とを含んでいる。
【0075】
精度管理部70は、第1の画像データ80及び第4の画像データ90に基づいて、天板11の精度管理を行う。ここでは、第1の画像データ80の第1及び第2の球体データ84,85と第4の画像データ90の第1及び第2の球体データ94,95とが一致するように第1の画像データ80と第4の画像データ90を重ね合わせ、重ね合わせたときの第1の画像データ80の第1のワイヤデータ81と第4の画像データ90の第1のワイヤデータ91の2点間の距離を求める(図6のステップS25)。
【0076】
そして、求めた距離が架台角度と治療角度に基づいて予め設定された許容範囲(第4の水平距離範囲)から外れている場合(図6のステップS26のいいえ)、天板11の架台角度に対する治療角度が異常であると判定し、天板11の治療角度異常情報を表示部72に表示させる(図6のステップS27のいいえ)。また、求めた距離が第4の水平距離範囲内である場合(図6のステップS27のはい)、天板11の治療角度が正常であると判定し、図6のステップS28へ移行する。
【0077】
このように、ファントム50の第1及び第2のライン511,512の撮影によりCT部20及び放射線治療部30から得られる第1及び第4の画像データ80,90に基づいて、天板11の治療角度の精度管理を行うことができる。
【0078】
ステップS6、ステップS9、ステップS18、ステップS26の「はい」、又はステップS27の後に、寝台部10が天板11を移動してホームポジションで停止させる。次いで、システム制御部74が寝台部10、CT部20、放射線治療部30、精度管理部70、及び表示部72に精度管理の停止を指示することにより、放射線治療システム100は動作を終了する(図6のステップS28)。
【0079】
なお、Aライン位置に停止した天板11に対して、架台22を寝台部10の方向に自走させ、ファントム50の第1及び第2のライン511,512、第3及び第4のライン513,514、並びに第5及び第6のライン515,516の各ラインを含む所定範囲の撮影が可能な位置で停止させて各第1乃至第3の画像データを生成させる。そして、第1の画像データに基づいて架台22のアイソセンタ20a位置の精度管理を行わせ、第2及び第3の画像データに基づいてガイドレール21配置角度の精度管理を行わせるように実施してもよい。
【0080】
以上述べた実施形態によれば、ファントム50を天板11上に取り付けて第1の光照射部41から照射される可視光によりファントム50の位置決めを行い、操作部73から入力を行うだけの簡単な作業により、各ユニットに一連の動作を実行させて寝台部10及びCT部20の複数のユニット位置の精度管理を行うことができる。
【0081】
そして、ファントム50の第1及び第2のライン511,512の撮影によりCT部20から得られる第1の画像データ80に基づいて、架台22のアイソセンタ20a位置の精度管理を行うことができる。また、ファントム50の第1及び第2のライン511,512の撮影に引き続き行われる第3及び第4のライン513,514及び第5及び第6のライン515,516の撮影によりCT部20から得られる第2及び第3の画像データに基づいて、天板11の撓みによる上下方向の位置、天板11の短手方向における上面の水平面に対する傾斜、及びガイドレール21配置角度の精度管理を行うことができる。
【0082】
また、CT部20での撮影の後に引き続き行われるファントム50の第1及び第2のライン511,512の撮影によりCT部20及び放射線治療部30から得られる第1及び第4の画像データ80,90に基づいて、天板11の治療角度の精度管理を行うことができる。
【0083】
これにより、放射線治療システムの100の各ユニット位置の精度管理にかかる作業を軽減することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10 寝台部
11 天板
12 移動機構
20 CT部
20a,30a アイソセンタ
21 ガイドレール
22 架台
23 開口部
24 X線管
25 X線検出部
30 放射線治療部
31 回転部
32 支持部
33 放射線発生部
34 放射線検出部
50 ファントム
101,231,321 直線
110 治療室
110a 床面
111 中心軸
331 照射軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に撮影用の放射線を照射し、前記被検体を透過した放射線を検出して撮影を行い、この撮影により得られる画像データに基づいて、前記被検体に治療用の放射線を照射して治療を行う放射線治療システムにおいて、
前記被検体が載置される天板、この天板を移動可能に支持する支持台、及び前記天板及び前記支持台を回転する回転機構を有する寝台部と、
前記被検体の身長及び体重を模して作成されたファントムと、
前記寝台部の一側に配置された直線状のガイドレールと、このガイドレール上を自走可能に配置され、架台角度で停止した前記天板上に載置される前記ファントムに複数の角度から放射線を照射し、前記ファントムを透過した放射線を検出して撮影を行う架台とを有し、前記架台の撮影により画像データを生成するCT部と、
治療角度で停止した前記天板上の前記ファントムに複数の角度から放射線を照射し、前記ファントムを透過した放射線を検出して撮影を行う前記寝台部の他側に配置された回転部を有し、前記回転部の撮影により画像データを生成する放射線治療部と、
前記CT部及び前記放射線治療部で生成された画像データに基づいて、前記寝台部及び前記CT部の位置の精度管理を行う精度管理部とを
備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
前記ファントムは、
長手方向における長さが前記身長を模して作成され、且つ重量が前記体重を模して作成された放射線を透過する容器と、
前記架台のアイソセンタの高さに合わせて設けられ、前記容器の長手方向に配置され且つ前記容器の底面に対して平行に配置された前記放射線を吸収する直線状の第1のワイヤと、前記架台のアイソセンタの高さに対する前記回転部のアイソセンタの高さに合わせて設けられ、前記第1のワイヤに対して平行に前記容器の短手方向における両側壁に配置された前記放射線を吸収する直線状の第2及び第3のワイヤと、
前記両側壁の、長手方向における所定の位置にこの位置を識別可能に設けられた前記第2及び第2のワイヤに垂直な直線状の第1及び第2のラインと、
前記第1及び第2のライン並びに前記第2及び第3のワイヤに直交する直線上の前記両側壁に配置された前記放射線を吸収する第1及び第2の球体とを
有することを特徴とする放射線治療システム。
【請求項3】
前記架台のアイソセンタを含む鉛直な面を形成する第1の領域に可視光を照射する第1の光発生部と、前記架台のアイソセンタを含む鉛直な面を形成する第2の領域に可視光を照射する前記架台のアイソセンタを介して前記第1の光発生部に対向配置された第2の光発生部と、前記回転部のアイソセンタの高さで前記第1の領域に直交する面を形成する第3の領域に可視光を照射する第3の光発生部と、前記回転部のアイソセンタの高さで前記第2の領域に直交する水平な面を形成する第4の領域に可視光を照射する前記架台のアイソセンタを介して前記第3の光発生部に対向配置された第4の光発生部とを有し、
前記精度管理部は、前記第1の領域の可視光が前記第1のラインを照射すると共に前記第2の領域の可視光が前記第2のラインを照射し、且つ前記第3の領域の可視光が前記第1のラインの前記第1の球体の高さの部分を照射すると共に前記第4の領域の可視光が前記第2のラインの前記第2の球体の高さの部分を照射する第1のライン位置へ移動された前記天板上に載置される前記ファントムの長手方向における前記第1及び第2のラインを含む所定範囲の撮影により前記CT部で生成された画像データから、前記第1乃至第3のワイヤ並びに前記第1及び第2の球体の断面のデータを含む第1の画像データを生成し、生成した第1の画像データに基づいて前記架台のアイソセンタ位置の精度管理を行うようにしたことを特徴とする請求項2に記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記ファントムは、前記両側壁の前記所定の位置から前記寝台部の方向へ所定の距離離れた位置に、この位置を識別可能に設けられた前記第1及び第2のラインに平行な直線状の第3及び第4のライン、並びにこの第3及び第4のライン及び前記第2及び第3のワイヤに直交する直線上の前記両側壁に配置された前記放射線を吸収する第3及び第4の球体を有し、
前記精度管理部は、前記第1のライン位置から前記所定の距離前記架台方向へ移動された前記天板上に載置される前記ファントムの長手方向における前記第3及び第4のラインを含む所定範囲の撮影により前記CT部で生成された画像データから、前記第1乃至第3のワイヤ並びに前記第3及び第4の球体の断面のデータを含む第2の画像データを生成し、生成した第2の画像データに基づいて前記天板の長手方向における撓み及び前記天板の長手方向に対する前記ガイドレールの方向の角度の精度管理を行うようにしたことを特徴とする請求項3に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記精度管理部は、前記架台角度から所定の角度回転された前記治療角度の前記第1のライン位置で停止した記天板上に載置される前記ファントムの長手方向における前記第1及び第2のラインを含む撮影により前記放射線治療部で生成された前記第1乃至第3のワイヤ並びに前記第1及び第2の球体の断面のデータを含む画像データ及び前記第1の画像データに基づいて、前記天板の治療角度の精度管理を行うようにしたことを特徴とする請求項3に記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記容器は、分割可能に連結された第1及び第2の容器により構成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記容器は、前記体重を模するための前記放射線を透過する液体、及び前記重量を前記被検体の体軸方向における体重配分に模して配分するための前記放射線を透過する前記液体よりも単位体積の重さが軽い箱を収容していることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の放射線治療システム。
【請求項8】
放射線を複数の角度から照射して撮影を行う架台を有するCT部と、前記放射線を複数の角度から照射して撮影が可能な回転部を有する放射線治療部とを備えた放射線治療システムの精度管理用ファントムにおいて、
長手方向における長さが1200〜2000mmの範囲であり、且つ前記放射線を透過する液体を収容した際に前記長手方向における重量配分が不均一となるように構成された、前記放射線を透過する材料から成る容器と、
前記容器の長手方向における複数の異なる位置に、前記架台及び前記回転部の基準位置に基づいて配置された前記放射線を吸収する部材とを
備えたことを特徴とする放射線治療システムの精度管理用ファントム。
【請求項9】
前記容器は、前記長手方向における一端部側に前記液体を収容し、他端部側に前記放射線を透過する前記液体よりも単位体積の重量が軽い部材を収容していることを特徴とする請求項8に記載の放射線治療システムの精度管理用ファントム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−85703(P2012−85703A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233103(P2010−233103)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】