説明

放射線測定方法および装置

【課題】線源が不明な状況下においても線源の候補を絞り込むことができる簡便な方法、および、装置を提供する。
【解決手段】放射線の検知対象領域をマス目状に分割し、所定の角度領域からの放射線を検知する放射線検出器3を用い、検知対象領域に放射線検出器を配置して得られた放射線の検知角度領域をマス目上に表記し、検知対象領域の複数個所P1とP2で計測した検知角度領域をマス目上で重ね合わせることで、放射線の線源箇所を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線分布を可視化し、測定された放射線分布に基づいて放射線源の位置を特定する放射線測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を測定する技術の一例として図1に示すように、放射線検出部1の周囲を遮蔽体2で囲い、一部分だけ遮蔽体2を除去したり、厚さを薄くしたりすることで、放射線検出部1が面する特定の方向Yからの放射線Rのみを検出する指向性をもった放射線検出器3が既に存在する。
【0003】
ここで、放射線Rは、プラントの構造物や機器を透過してくるため、実際には、放射線源が存在する方向は分かるが、どの距離に存在するのかを把握することはできない。そこで図2に示すように、放射線検出器3を移動させて複数の方向から測定して線源Sの位置を特定する必要がある。
【0004】
図2の例では、放射線検出部1が面する特定の方向からの放射線Rを検出する放射線検出器3は、実線で示す左右の2組であり、この位置と放射線検出部1が面する特定の方向とから、放射線源Sの位置を特定する。
【0005】
これらの課題に対し、特許文献1では、プラント内で発生した人の近づけない事故に対して、遠隔操作で事故状況を把握し、事故状況に応じて安全に、早急に、効率よく対処する柔軟なシステムを提案している。
【0006】
特許文献1で提案しているのは具体的には、「環境情報を収集するモニタ手段を搭載し、事故地点若しくはその周辺または事故地点までの移動経路若しくはその周辺の状態を調査する少なくとも一体のモニタ用ロボットとマニピュレータを搭載し、各々が所定の作業を行う複数種類の作業用ロボットと、を含む複数の移動ロボットと、前記移動ロボットとの間で通信を行う第1の通信手段と、所定の指令拠点との間で双方向通信可能な第2の通信手段と、前記第1の通信手段を介して前記移動ロボットを遠隔操作する制御装置と、前記移動ロボットを収納する収納部と、を有する移動可能な指令基地と、前記指令基地を移動させる手段とを備え、前記制御装置は、前記モニタ用ロボットの調査結果に基づいて、若しくは前記作業用ロボットにより事故地点若しくはその周辺に設置されたセンサによる調査結果に基づいて、適当な機能を有する作業用ロボットを選定するとともに、作業用ロボットの出動後における前記モニタ用ロボットの調査結果、若しくは前記作業用ロボットにより事故地点若しくはその周辺に設置されたセンサによる調査結果に基づいて、前記移動ロボットの行動を修正する機能を有する事故対応ロボットシステム」である。
【0007】
ここで制御装置は、ローカルセンサモジュールに搭載されたセンサおよびモニタ用ロボットに搭載されたセンサにより取得された、温度、放射線量、有害物質濃度等のデータを2次元情報または3次元情報に重ねて表示する機能を有すると好適であり、また、制御装置は、事故状況の経時変化を表示する機能を有することも好ましいと述べている。
【0008】
また、特許文献2で提案しているのは具体的には、「放射線検出面を除く周囲が放射線遮蔽体で囲まれていて、被測定物以外及びコンプトン散乱からの放射線の影響を低減する構造とした、指向性を有する放射線検出器を2個以上互いに離間させて配置した複眼式の放射線検出器プローブを、異なる位置から被測定物に向けて線量測定を行うことにより、被測定物の立体的な線量分布を求める方法」について述べている。
また特許文献2では、「この方法を用いて、被測定物が容器等の中にあり、外部から全く形状が不明な場合に、容器の周囲から複眼式放射線検出器プローブで測定して内部の放射線量や形状を求める手段」についても述べている。
【0009】
その手順は、まず複眼式放射線検出器プローブを用いて、放射線強度の有無の境界を判定し、被測定物の表面形状を把握する。次に、被測定物を輪切りにした線上の平均線量を順次測定することにより、被測定物の内部分布を計算で求めるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3645460号
【特許文献2】特開2002−6052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら特許文献1の技術では、センサにより取得された放射線量等のデータを2次元情報または3次元情報に重ねて表示する機能については述べられているが、放射線源を特定する方法については述べていない。
【0012】
また、特許文献2の技術では、被測定物の立体的な線量分布を求めるために、いわゆる、ステレオ視(視差利用の三角測量)の構成をとる必要がある。また、線源が不明な状況で、線源を特定する具体的な方法については述べられていない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、線源が不明な状況下においても線源の候補を絞り込むことができる簡便な方法、および、装置を提供することにある。
【0014】
また、放射線源の位置を特定することで、状況に応じて、遮蔽体設置、除染、構造物や機器の撤去を効率的に行うと共に、遮蔽、除染、撤去の効果や、作業者の被爆状況を推定・管理するシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、放射線の検知対象領域をマス目状に分割し、所定の角度領域からの放射線を検知する放射線検出器を用い、検知対象領域に放射線検出器を配置して得られた放射線の検知角度領域をマス目上に表記し、検知対象領域の複数個所で計測した検知角度領域をマス目上で重ね合わせることで、放射線の線源箇所を推定する。
【0016】
また、放射線の検知対象領域を表すマス目上で、検知対象領域に存在する構造物の位置を考慮する。
【0017】
また、重ね合わせたマス目上の領域に、構造物が存在するときにここを線源とする。
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、放射線の検知対象領域をマス目状に分割し、所定の角度領域からの放射線を検知する放射線検出器と放射線検出器と同じ視野を含む撮像手段を用い、検知対象領域に放射線検出器を配置して得られた放射線の検知角度領域をマス目上に表記し、検知対象領域の複数個所で計測した検知角度領域をマス目上で重ね合わせることで、放射線の線源箇所を推定し、撮像手段から得られた画像から放射線の検知対象領域の形状計測データを生成し、当該形状計測データと推定した放射線の線源箇所を重ねる。
【0019】
また、形状計測データと推定した放射線の線源箇所の情報から、放射線の検知対象領域の線量分布を求める。
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、所定の角度領域からの放射線を検知する放射線検出器と、放射線検出器と同じ視野を含む撮像手段と、通信手段を搭載し、移動機構により移動可能とされた放射線測定装置であって、移動機構により異なる複数の場所に移動して測定した放射線測定結果並びに撮像手段の出力を通信手段により送信する。
【0021】
また、移動機構は、放射線検出器や撮像手段の位置および姿勢を認識する機能を備えた。
【0022】
また、放射線測定器は指向性を持つ2次元検出器である。
【0023】
また、放射線測定器は、距離測定機能を備え、距離測定結果に基づき、検出線量を補正する。
また、放射線測定器は、距離測定機能を備え、距離測定結果に基づき、測定環境の形状データを作成する機能を備えた。
【0024】
また、放射線測定器は、距離測定機能を備え、距離測定結果に基づき、測定環境の形状データを作成した結果に、判定した線源を配置し、線源からの放射分布を計算する機能を備えた。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、放射線源の位置を絞り込むことができ、その結果を用いて、遮蔽体設置、除染、構造物や機器の撤去を効率的に行うことが可能なる。また、遮蔽、除染、撤去の効果や、作業者の被爆状況を推定・管理するシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】指向性を持つ放射線検出器を示す図。
【図2】指向性を持つ放射線検出器による放射線源特定方法を示す図。
【図3】指向性を持つ2次元放射線検出器を示す図。
【図4】2次元放射線検出器の検出面、測定空間、立体角の関係を示す図。
【図5】測定位置P1での放射線測定を2次元断面に示した図。
【図6】測定位置P1での放射線測定をボクセル化して示した図。
【図7】測定位置P2での放射線測定を2次元断面に示した図。
【図8】測定位置P2での放射線測定をボクセル化して示した図。
【図9】測定位置P1とP2でのボクセル図を重ね合わせ表示した図。
【図10】測定位置P1とP2でのボクセル図の共通検出領域を表示した図。
【図11】測定位置P3での放射線測定を2次元断面に示した図。
【図12】測定位置P3での放射線測定をボクセル化して示した図。
【図13】共通検出領域8aと測定位置P3でのボクセル図を重ね合わせ表示した図。
【図14】測定位置P1、P2、P3でのボクセル図の共通検出領域を表示した図。
【図15】測定から線源特定に至るまでの処理フローを示す図。
【図16】光学式撮影機、2次元距離測定器を備えた2次元放射線検出装置を示す図。
【図17】移動して視点を変えて測定を行う装置構成を示す図。
【図18】測定対象であるプラント内部構成の一例を示す図。
【図19】図18の位置P1から見た情景を示す図。
【図20】図18の位置P2から見た情景を示す図。
【図21】複数の位置で測定された形状計測結果を合成したものに、線源を重ね合わせて表示した様子を示す図。
【図22】複数の位置で測定された形状計測結果を合成したものに、特性された線源を配置し、線源から放出される放射線量を計算した結果を表示した様子を示す図。
【図23】3次元情報を用いて利用するまでの処理フローを示す図。
【図24】処理を行う装置の機能ブロック図を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態を図3から図23を用いて説明する。
【実施例】
【0028】
図3は、指向性を持つ2次元放射線検出器を説明する図である。本発明では、図3に示すような指向性を持った2次元の放射線検出器3で3次元空間の放射線量を測定する。具体的には例えば、放射線検出部1の周囲を遮蔽体2で囲い、一部分だけ遮蔽体2を除去したり、厚さを薄くしたりすることで放射線が通過する開口部4を設ける。但しこの時に、遮蔽体2は開口部4と放射線検出部1の間に絞り部分30を構成するように設置される。図1の指向性の放射線検出器3では、この間の通路が平行通路になっている点で構成が相違する。
【0029】
この結果、放射線検出部1は絞り部30から開口部4を介して外部からの放射線Rを受けることになり、領域を有する特定方向YAからの放射線のみを検出する指向性をもった放射線検出器3とすることができる。なおこのとき、各種の分析機能を持つ放射線検出器を用いれば、後述する線源位置の推定のみならず、各種の情報も合わせて得ることが可能となる。
【0030】
図4は、指向性を持つ2次元放射線検出器の検出面と測定空間の関係、および、放射線検出器が張る立体角を説明する図である。ここでは放射線検出器3の放射線検出部1の放射線検知領域と、絞り部30を介して対峙する測定領域の関係を示している。なお放射線検出部1は、方形の9つの画素から構成されるとして示している。このとき図4に示すように、各画素が張る立体角、より詳細には、絞り部30で一旦収束してから再度広がる立体角中に存在する放射線源からの放射線を検出する。従って、例えば測定領域の右上に放射線源を含む場合には、検出領域の方形の9つの画素のうち、左下の画素が放射線を検知することになる。
【0031】
以後説明を簡単にするために、2次元平面を用いて説明を行う。図5は、図3の領域を含む指向性を持つ2次元放射線検出器を用いて、測定位置にて放射線を測定する様子を2次元断面で表した図である。ここでは、測定対象の2次元平面に構造物5a〜5cが存在しているとする。また測定器3は、2次元上の位置P1に設置され、方向Y1からの放射線を検知している。
【0032】
ここで、実際には構造物5cが放射線源Sを含んでいるとする。この場合、放射線検出器3で測定を行うと、方向Y1からの放射線を検知することになるので、放射線源Sである構造物5cを含む領域に対応した放射線検出素子(図4の9つの画素のうち対応する位置の画素)に放射線が入射することになる。9つの画素のうち、放射線を実際に検出した素子が張る立体角6aが放射線源Sの存在する候補領域である。
【0033】
図6は測定空間をボクセル化し、測定位置P1にて放射線が検出された放射線検出素子が張る立体角を含むボクセルを符号化した様子を説明する図である。図6では、図5の測定空間を横20縦22のマス目で構成し測定空間をボクセル化している。
【0034】
15がボクセル化された測定空間であり、左下を起点としたときには放射線検出器3の設置位置が、横3立3の位置として把握される。また構造物5a〜5cは○で示す場所に位置している。ボクセル化された図表上では、放射線を検出した素子が張る立体角6aに含まれるボクセル7aを符号化する。具体的には、立体角内のボクセル7aを「1(図示上では斜線表示)」、それ以外を「0」にする。図示の状態から理解できるように線源Sは構造物5cであるが、放射線は構造物を通過するために、これだけでは場所を特定するには至らない。
【0035】
そこで、測定位置を変更して再度測定する。図7は、指向性を持つ2次元放射線検出器を用いて、測定位置P2にて放射線を測定する様子を2次元断面で表した図である。図7では放射線検出器3の位置をP2とし、位置P1の場合と同様に、放射線が検出された放射線検出素子が張る立体角を6bとして表示している。この場合、線源Sの構造物5cのみが、立体角6bの中に確認される。
【0036】
図8は、図7に対応して求めたボクセルであり、立体角6bが含まれるボクセル7bを「1」として、それ以外を「0」としている。
【0037】
図9は、測定位置P1にて放射線が検出された放射線検出素子が張る立体角と、測定位置P2にて放射線が検出された放射線検出素子が張る立体角を含むボクセルの、両方を含むボクセルの全てを符号化した様子を説明する図である。具体的には、図6と図8の対応するボクセル位置の符号化された1または0の情報について、ボクセルの論理積(AND)をとり、ともに符号が1となるボクセル7cが、放射線源が存在する領域候補として絞り込む。図9の例では、構造物5cでボクセルを太線表示している部分がこれに合致するボクセルを示している。
【0038】
図10は、測定位置P1にて放射線が検出された放射線検出素子が張る立体角と、測定位置P2にて放射線が検出された放射線検出素子が張る立体角を含むボクセルの、両方を含むボクセルのみを符号化した様子を説明する図である。
【0039】
図10に示すように、位置P1と位置P2での計測、ボクセル化並びに一致領域検出により絞り込まれた領域(共通検出領域)を8aとする。ここで、位置P1と位置P2でのボクセル空間の対応付け(放射線検出器3の位置と姿勢の補正)は、放射線検出器3の移動と姿勢を測定しても良いし、構造物5a〜5cの形状特徴を用いてもよい(形状の計測方法については後述する)。
【0040】
ここではさらに、位置P3でも計測を行う。図11に示すように、放射線検出器3の位置を変えて、位置P3から測定を行う。そして位置P1、位置P2の場合と同様に、図12に示すように放射線が検出された放射線検出素子が張る立体角6cが含まれるボクセル7cを「1」として、それ以外を「0」とする。
【0041】
そして、図13のように、図10の領域8aとのさらなる論理積(AND)をとり、符号が「1」となるボクセルが、放射線源Sが存在する領域候補として、さらに絞り込まれる。図14は、測定位置P1、P2、P3でのボクセル図の共通検出領域を表示した図であり、さらに絞りこまれた領域を8bとして示している。
【0042】
なお、以上の説明は理解を容易にするために放射線の検知対象領域であるプラントを縦横のマス目状に分割して場所を特定する手法について説明した。つまり2次元の領域での場所特定をしてきたが、高さ方向も含めた間立方体上のマス目として3次元領域での場所特定が行えることは言うまでもない。
【0043】
図15に上記作業を計算機などで実行するための処理フローを示す。この処理フローを実行するための前提としては、人間が立ち入ることができない放射線源を含むプラント内に、移動台車を進入させる。移動台車には照明器具と、光学式の撮影機と、2次元の距離測定器を備えた指向性を持つ2次元放射線検出器3を搭載する。また優先または無線の通信手段により移動台車の位置と姿勢を把握しながら、プラント内の複数の位置で放射線測定を行う。プラント外部に取り出された放射線受信情報をボクセル化し、合成して、線源を推定する。図15に示すフローを繰り返していけば、線源が存在するであろう候補領域を絞り込むことができる。
【0044】
図15に示すフローでは、処理ステップS27で移動台車を移動させ、処理ステップS28で所定場所(所定角度位置)に停止し、処理ステップS29で放射線測定し、処理ステップS30で領域データを生成する。この領域データは、ボクセル化し合成して得られた図14の共通の放射線検知領域である。処理ステップS31では、合成結果から線源位置を特定することができたか否かを確認し、不十分でありさらに絞り込む必要がある場合には処理ステップS27に戻り、上記一連の処理を再実行する。線源位置を特定しあるいは特定するに十分な情報を入手した場合には処理ステップS32で終了とする。なお、この手順は一例を示したものであり、予定した箇所で計測を完了しその後にボクセル化し合成してもよい。また、図15の一連の処理は、その一部を外部の計算機で実行してもよい。
【0045】
なお実際には、絞り込んだ領域に特定の構造物や機器(本実施例では、構造物5c)が存在すれば、そこを線源Sとして、絞込み作業を完了すれば良い。また本実施例では、線源となる構造物を概ね絞り込むことが可能な例を示したが、構造物の存在が把握できない場合、例えば、大きな壁に遮られた空間の裏面以遠に線源が存在する場合などは、ある領域より後ろにあると判定して、線源の絞込みを完了すれば良い。
【0046】
図16は、光学式撮影機と2次元距離測定器を備えた2次元放射線検出装置を示す図である。次に、図16の装置を用いて、形状を計測する方法について述べる。この形状計測データ(距離データ)は、放射線検出器3での線量測定結果の補正に用いることが可能である。
【0047】
図16では先ず、放射線検出器3の近傍に、測距装置10(例えば、レーザ距離計)を配置する。距離を測定する手段は、レーザ距離計に限定するものではなく、ステレオカメラなどの測距方法を用いることができる。このとき、受光素子11とレンズ12からなる撮影機器9を同時に配置してよい。これにより測定空間の画像情報を得ることができ、テクスチャ貼り付け技術を用いて、測定した形状に実模様を貼り付けることが可能となる。
【0048】
ここで、測距装置10と撮影機器9の主光軸は一致させておくのがよい。主光軸を一致させる方法としては、測距装置10からのレーザビームを偏向素子13で折り返し、撮影機器9の面に配置されたハーフミラー14で主光軸が一致するように、レーザビームを反射させれば良い。
【0049】
このとき、偏向素子13をMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などの2次元偏向機構としておけば、測定空間内の構造物や機器の3次元座標を取得することができる。つまり、測距装置10で距離rを、偏向素子13で2軸の角度を測定することで、3次元座標が求まる。測距装置10と偏向素子13の距離は固定距離(図16中ではb)であるが、放射線検出器3、および、又は、撮影機器9での放射線検出素子、受光画素に対応するには、偏向角(図16中ではθ)分の補正が必要となる。
【0050】
次に、図17を用いて、移動して視点を変えて測定を行う装置について述べる。図17は、移動台車に、照明と、光学式の撮影機と、2次元の距離測定器を備えた指向性を持つ2次元放射線検出器を搭載し、通信手段で移動台車の位置と姿勢を把握しながら測定を行う装置構成を示している。
【0051】
ここで移動測定装置21は、移動機構17、放射線検出器3、撮影機器9、測距装置10、通信機器16c(無線)、必要に応じ照明器具18、自己位置・姿勢測定装置38、バッテリやコンピュータなどの周辺機器19、必要に応じ給電・信号ケーブルからなる。この装置では移動機構17で移動し、放射線検出器3、撮影機器9、測距装置10を測定したい空間に向ける。また必要に応じ、放射線検出器3、撮影機器9、測距装置10にパン・チルト機構を持たせておいても良い。つまり、本体である移動測定装置21事態は固定位置とするが、検出器が指向する向きが可変となるようにパンするものとしてもよい。
【0052】
なお、放射線検出結果、映像(画像)、距離情報は、移動機構の位置・姿勢情報と共に、ケーブル20を用いて有線通信で、もしくは、通信機器16c、16b、16aを用いてデータ処理用のコンピュータ39に送られる。コンピュータ39では、複数の位置で得られた情報を処理して、環境の形状データを復元したり、線源を推定したりする。
【0053】
移動測定装置21を用いる具体的な計測事例を、図18から図21を用いて説明する。図18には測定対象であるプラント内部構成の一例を示している。このプラントの内部には壁22dがあり、壁22dの前に構造物として例えば柱22a,22b,22cが存在する。放射線源Sは柱22cに付着しているとする。人間が立ち入ることができないこれらの環境内を移動測定装置21が移動進行し、放射線計測を実行する。移動測定装置21は、位置P1から位置P2に移動し、放射線測定を実行する。
【0054】
図19は位置P1から見た情景であり、撮影機器9で得られた画像に放射線検出器3の放射線測定結果を貼り付けた様子を示す。この角度からは、柱22a,柱22b,壁22dが撮影され表示される。このとき22cは柱22bの陰になるので、線源22cは柱22bの死角になる。このため撮影機器9で得られた画像には写らないが、放射線は構造物である柱22bを透過するので、放射線は、柱22bの表面にあるものとして表示される。この図では線源23bとして示されている。
【0055】
図20は位置P2から見た情景であり、撮影機器9で得られた画像に放射線検出器3の放射線測定結果を貼り付けた様子を示す。この角度からは、柱22a,柱22b,柱22c、壁22dが撮影され表示される。位置P2の撮影では、線源23cが画像でも確認できる。但し、構造物22aの一部で死角が生じているため、放射線は、構造物22aの表面の一部に弱い線源23aとして、また構造物22cの表面に強く線源23cとして表示される。
【0056】
これを、図15に示す方法を用いて、線源を絞り込み、3次元形状結果に貼り付けた様子を図21に示す。図21は複数の位置で測定された形状計測結果を合成したものに、線源を重ね合わせて表示した様子を示すものである。ここで24は、3次元形状で表した構造物(柱、壁)を意味している。なお3次元形状としては、点群データをそのまま表示しても良いし、点群データにテクスチャを貼り付けたものでも良いし、ポリゴン化しても良いし、ポリゴン化した結果にテクスチャを貼り付けたものでも良いし、CAD化しても良い。
【0057】
図22は、複数の位置で測定された形状計測結果を合成したものに、特性された線源を配置し、線源から放出される放射線量を計算した結果を表示した様子を示す図である。ここでは図21の結果を用いて、線源から放射される放射線の分布を計算した結果を計測強度がわかるように表している。
【0058】
なお、放射線源の3次元的な分布を推定する方法として、ML−EX(Maximum likelihood expectation maximization)法をはじめとした逐次近似法を用いた画像再構成法もある。逐次近似画像再構成では、測定結果を逆投影することで放射線源の分布の推定画像を作成し、該推定画像を投影することにより、測定位置(放射線検出器位置)で得られる新たな画像を作成し、該新たな画像と実際の画像の差を計算し、その差から上記推定画像を修正することで正しい画像に近づけていく。この手法では推定画像を投影する際に実際の体系を考慮することが可能であり、たとえば構造物による吸収や散乱などの効果を入れたうえで実際に得られた画像に一致する分布を求めることが可能になる。
【0059】
また、図23は上記作業のフローを示したものである。図23に示すフローは、図15のフローに続いて処理ステップS33から処理ステップS36を追加して実行するものである。処理ステップS33では、形状計測データを生成する。これらは、点群データ、ポリゴン、CADなどで構成できる。処理ステップS34では形状計測データに線源の情報を貼り付ける。処理ステップS35では線量分布のシミュレーションを行い、プラント内各部の線量を推定する。
【0060】
処理ステップS36では、この3次元情報を用いて、以後の対策を検討する。例えば線源から遮蔽するときの対策、線源を撤去するときの対策、除染するとしてその効果を推定する対策などに利用することができる。作業者の被爆量を管理したり、構造物、機器を撤去した場合の放射線量の分布を推定したりすることもできるし、遮蔽体を置いたとき遮蔽効果を推定することもできるし、除染の効果を可視化することも可能となる。
【0061】
図24には本実施例での処理を行う装置の機能ブロック図を示す。放射線検出装置 40により放射線を検出する。形状計測装置41としては光学式の撮影機やレーザ距離計などが考えられる。計算機42では、検出領域符号化部43において放射線検出素子が張る立体角を含むボクセルを符号化する。そして、領域データ合成部45では放射線検出素子が張る立体角の両方を含むボクセルのみを符号化し、放射線源が存在する領域候補として絞り込む。形状計測データ生成部44では形状計測装置41で取り込んだデータより形状データを生成する。合成データ生成部46では線源位置と形状計測データ生成部44で作成された形状データとを張り合わせる。また線量分布シミュレート部47では線源位置および形状データより線量分布シミュレーションを行なう。これら結果は表示装置48に表示させる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
放射線源の位置を特定する方法および装置として、人間の立ち入りが困難な環境での計測に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1:放射線検出部
2:遮蔽体
3:放射線検出器
4:開口部
5a〜5c:構造物
6a:立体角
9:撮影機器
10:測距装置
11:受光素子
12:レンズ
16c:通信機器
17:移動機構
21:移動測定装置
30:絞り部分
40:放射線検出装置
41:形状計測装置
42:計算機
43:検出領域符号化部
44:形状計測データ生成部
45:領域データ合成部
46:合成データ生成部
47:線量分布シミュレート部
48:表示装置
S:放射線源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の検知対象領域をマス目状に分割し、所定の角度領域からの放射線を検知する放射線検出器を用い、前記検知対象領域に前記放射線検出器を配置して得られた放射線の検知角度領域を前記マス目上に表記し、前記検知対象領域の複数個所で計測した検知角度領域を前記マス目上で重ね合わせることで、前記放射線の線源箇所を推定することを特徴とする放射線測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の放射線測定方法において、
放射線の検知対象領域を表すマス目上で、当該検知対象領域に存在する構造物の位置を考慮することを特徴とする放射線測定方法。
【請求項3】
請求項2記載の放射線測定方法において、
前記重ね合わせたマス目上の領域に、前記構造物が存在するときにここを線源とすることを特徴とする放射線測定方法。
【請求項4】
放射線の検知対象領域をマス目状に分割し、所定の角度領域からの放射線を検知する放射線検出器と該放射線検出器と同じ視野を含む撮像手段を用い、
前記検知対象領域に前記放射線検出器を配置して得られた放射線の検知角度領域を前記マス目上に表記し、前記検知対象領域の複数個所で計測した検知角度領域を前記マス目上で重ね合わせることで、前記放射線の線源箇所を推定し、
前記撮像手段から得られた画像から放射線の検知対象領域の形状計測データを生成し、当該形状計測データと前記推定した放射線の線源箇所を重ねる
ことを特徴とする放射線測定方法。
【請求項5】
請求項4記載の放射線測定方法において、
前記形状計測データと前記推定した放射線の線源箇所の情報から、前記放射線の検知対象領域の線量分布を求める
ことを特徴とする放射線測定方法。
【請求項6】
所定の角度領域からの放射線を検知する放射線検出器と、該放射線検出器と同じ視野を含む撮像手段と、通信手段を搭載し、移動機構により移動可能とされた放射線測定装置であって、前記移動機構により異なる複数の場所に移動して測定した放射線測定結果並びに撮像手段の出力を通信手段により送信することを特徴とする放射線測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の放射線測定装置において、
移動機構は、放射線検出器や撮像手段の位置および姿勢を認識する機能を備えたことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7記載の放射線測定装置において、
放射線測定器は指向性を持つ2次元検出器であることを特徴とする放射線測定器。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれかに記載の放射線測定装置において、
放射線測定器は、距離測定機能を備え、距離測定結果に基づき、検出線量を補正することを特徴とする放射線測定装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれかに記載の放射線測定装置において、
放射線測定器は、距離測定機能を備え、該距離測定結果に基づき、測定環境の形状データを作成する機能を備えたことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれかに記載の放射線測定装置において、
放射線測定器は、距離測定機能を備え、該距離測定結果に基づき、測定環境の形状データを作成した結果に、判定した線源を配置し、該線源からの放射分布を計算する機能を備えたことを特徴とする放射線測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−113610(P2013−113610A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257681(P2011−257681)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】