放電ランプおよび放電ランプ装置
【課題】 ノイズを抑制可能で、かつ始動性が良好な放電ランプおよび放電ランプ装置を提供する。
【解決手段】
実施形態の放電ランプは、発光部11を有する内管1、発光部11を覆うように設けられた外管4、を備えたバーナーBNと、発光部11がその前端側に位置するように、バーナーBNを保持可能なフランジFLと、を具備し、フランジFLがリフレクタに保持される放電ランプであって、フランジFLは金属部6を備え、金属部6はリフレクタに接触可能な接触部としてポッチ部75を備え、バーナーBNはその外面に沿うように装着された金属バンド5を備え、金属バンド5は金属部7と電気的に接続されており、外管4内にはアルゴンが封入され、金属バンド5およびポッチ部75は、電気的にグランドに接続され、バーナーBNには始動時に正極性の高圧パルスが供給される。
【解決手段】
実施形態の放電ランプは、発光部11を有する内管1、発光部11を覆うように設けられた外管4、を備えたバーナーBNと、発光部11がその前端側に位置するように、バーナーBNを保持可能なフランジFLと、を具備し、フランジFLがリフレクタに保持される放電ランプであって、フランジFLは金属部6を備え、金属部6はリフレクタに接触可能な接触部としてポッチ部75を備え、バーナーBNはその外面に沿うように装着された金属バンド5を備え、金属バンド5は金属部7と電気的に接続されており、外管4内にはアルゴンが封入され、金属バンド5およびポッチ部75は、電気的にグランドに接続され、バーナーBNには始動時に正極性の高圧パルスが供給される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動車等の車両の前照灯などとして使用される放電ランプおよび放電ランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の前照灯に使用される放電ランプは、バーナーと樹脂製のソケットとで構成されている。そのバーナーは点灯中に発光する部分となる発光部を備えた二重管構造となっており、その発光部がソケットの前端側に位置するように、ソケットに保持されている。
【0003】
このようなランプにおいて、最近ではランプをコンパクトにするために、発光部とソケットとの距離を従来よりも近づけるニーズがある。発光部とソケットとの距離が近くなると、熱源が近づきフランジの温度が上がってしまうため、耐熱性を向上させるべく、金属を用いたフランジが開発されている。
【0004】
ここで、この種の放電ランプは、点灯中にバーナーからノイズが発生するという問題がある。このノイズは、フランジに使用された金属を電気的にグランドに接続し、その金属を介してランプを搭載する装置である灯具をグランドに接続すると抑制されることがわかった。しかしながら、それによる新たな問題として、ランプの始動性が悪くなることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−297226号公報
【特許文献2】特開2007−323986号公報
【特許文献3】国際公開第2009/130654号
【特許文献4】国際公開第2008/110969号
【特許文献5】国際公開第2009/130640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ノイズを抑制可能で、かつ始動性が良好な放電ランプおよび放電ランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、実施形態の放電ランプは、発光部を有する内管、前記発光部を覆うように設けられた外管、を備えたバーナーと、前記発光部がその前端側に位置するように、前記バーナーを保持可能なフランジと、を具備し、前記フランジがリフレクタに保持される放電ランプであって、前記フランジは金属部を備え、前記金属部は前記リフレクタに接触可能な接触部を備え、前記バーナーはその外面に沿うように装着された金属バンドを備え、前記金属バンドは前記金属部と電気的に接続されており、前記外管内にはアルゴンまたはアルゴンを主体とするガスが封入され、前記金属バンドおよび前記接触部は、電気的にグランドに接続され、前記バーナーには始動時に正極性の高圧パルスが供給される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の放電ランプについて説明するための図である。
【図2】第1の実施形態の放電ランプについて説明するための断面図である。
【図3】第1の実施形態の放電ランプを前端側から見た状態について説明するための図である。
【図4】金属部について説明するための図である。
【図5】ベースについて説明するための図である。
【図6】第1の実施形態の放電ランプの回路接続について説明するための簡略図である。ベースについて説明するための図である。
【図7】正極性の高圧パルスの一例について説明するための図である。
【図8】外管内にアルゴン、窒素を封入するとともに、グランド接続有無に設定したランプに正極性の高圧パルスを印加したときのノイズと始動性について説明するための図である。
【図9】外管内に大気、ネオン、クリプトン、キセノンを封入するとともに、グランド接続有無に設定したランプに正極性の高圧パルスを印加したときのノイズと始動性について説明するための図である。
【図10】アルゴンと窒素の混合ガスにおいて、アルゴンの比率を変えたときの絶縁破壊電圧の変化について説明するための図である。
【図11】第2の実施形態の放電ランプ装置について説明するための図である。
【図12】第2の実施形態の放電ランプ装置について説明するための断面図である。
【図13】リフレクタについて説明するための図である。
【図14】第2の実施形態の放電ランプ装置を前端側から見た状態について説明するための図である。
【図15】放電ランプの第1の変形例について説明するための図である。
【図16】放電ランプの第2の変形例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の放電ランプについて、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の放電ランプについて説明するための図、図2は、第1の実施形態の放電ランプについて説明するための断面図、図3は、第1の実施形態の放電ランプを前端側から見た状態について説明するための図である。なお、本発明においては、便宜上、自動車に取り付けられた場合に前方となる図2に示した矢印Fの方向を前端、矢印Bの方向を後端と称して説明する。
【0010】
図1に示した放電ランプは、自動車の前照灯装置に用いられるHIDランプであり、バーナーBNとフランジFLとを備えている。
【0011】
バーナーBNは、二重管構造であり、その内部には内管1が配置されている。内管1は細長い形状であり、その中央付近には点灯中に発光する部分となる発光部11が形成されている。発光部11は略楕円状であり、その両端には板状のシール部12、そのさらに両端には境界部13を介して円筒部14が連続形成されている。この内管1は前述のとおり、発光する部分を含んでいるとともに、点灯中に高温になるため、石英ガラスなどの透光性と耐熱性を具備した材料で構成されている。
【0012】
発光部11の内部には、中央が略円柱状、両端がテーパ状の放電空間111が形成されている。この放電空間111の容積は、自動車前照灯用の場合には、10mm3〜30mm3、さらには15mm3〜25mm3であるのが好適である。放電空間111には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、金属ハロゲン化物と希ガスを含み、水銀は実質的に含んでいない、いわゆる水銀フリーの構成である。
【0013】
金属ハロゲン化物は、ナトリウム、スカンジウム、亜鉛、インジウムなどのハロゲン化物で構成されている。それらの金属ハロゲン化物に結合されるハロゲンとしてはヨウ素が最適であるが、臭素や塩素などを組み合わせてもよい。また、金属ハロゲン化物の組み合わせもこれに限らず、スズやセシウムのハロゲン化物などを追加してもよい。
【0014】
希ガスは、キセノンで構成されている。希ガスは、目的によってその封入圧力を調整することができる。例えば、全光束等の特性を高めるためには、封入圧力を常温(25℃)において10atm以上、特に13atm以上にするのが望ましい。ただし、上限は製造上、現状で20atm程度である。なお、希ガスとしては、キセノンの他に、ネオン、アルゴン、クリプトンなどを使用したり、それらを組み合わせて使用したりすることもできる。
【0015】
シール部12には、電極マウント2が封着されている。電極マウント2は、金属箔21、電極22、コイル23およびリード線24により構成されている。
【0016】
金属箔21は、例えば、モリブデンからなる薄い金属板であり、その板状の面がシール部12の板状の面と平行するように配置されている。
【0017】
電極22は、例えば、タングステンに酸化トリウムをドープした、いわゆるトリエーテッドタングステンからなる電極である。その一端は金属箔21の発光部11側端部に重ね合わせ接続されており、他端は放電空間111内で所定の電極間距離を保って、互いの先端同士が対向するように配置されている。その電極間距離としては、自動車前照灯用の場合には、外観上における距離で3.5mm〜4.5mmであるのが望ましい。
【0018】
コイル23は、例えば、ドープタングステンからなる金属線であって、シール部12に封着される電極22の軸部の軸周りに螺旋状に巻装されている。
【0019】
リード線24は、例えば、モリブデンからなる金属線である。その一端は、発光部11に対して反対側の金属箔21に重ね合わせ接続されており、他端は管軸に沿って内管1の外部に延出されている。そのうち、ランプの前端側に延出したリード線24には、例えば、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ25の一端がレーザー溶接により接続されている。このサポートワイヤ25には、管軸と平行する部分に、例えば、セラミックからなるスリーブ3が装着されている。
【0020】
上記で構成された内管1の外側には、筒状の外管4が内管1と同心状に設けられている。これら内外管の接続は、内管1の円筒部14付近に外管4を溶着し、両端部に溶着部41を形成することにより行なわれている。このため、内管1と外管4との間には気密に保たれた空間が形成され、その空間には、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンから選択された一または混合されたガスが封入されている。ガスの圧力は、0.3atm以下、さらには0.1atm以下であるのが好適である。なお、外管4としては、チタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加した石英ガラスなど、内管1に熱膨張係数が近く、かつ紫外線遮断性を有する材料を使用するのが望ましい。
【0021】
これらで構成されたバーナーBNの後端側には、金属バンド5が設けられている。この金属バンド5は、例えばステンレスからなる金属板を外管4の外周面に沿って配置したものであり、その両端同士を溶接することで、外管4に固定されている。
【0022】
金属バンド5付近には、フランジFLが配置されている。フランジFLは円盤状であって、その直径は例えば31mm、厚みは2.5mmであり、樹脂部6と金属部7とで構成されている。
【0023】
樹脂部6は、PPS、PEIなどの樹脂により成形されてなるものであり、フランジFLの周縁に位置している。このフランジFLは、切り欠き部61および凹部62を備えている。切り欠き部61は、樹脂部6の端部に形成された切り欠きであり、変則的に3つ形成されている。凹部62は、樹脂部6の前後端側に設けられた凹みであり、60度間隔で6つ形成されている。
【0024】
金属部7は、ステンレスなどからなる金属板であり、樹脂部6に埋め込み形成されている。樹脂部6に埋め込まれる前の金属部7は、図4に示すような形状であり、突片部71、スリーブ保持部72、穴部73、切り欠き部74、屈曲部75およびポッチ部76を備えている。突片部71は、金属部7の中央方向に突出するように形成された突片であり、90度間隔で4つ形成されている。この突片部71は、放電ランプの状態ではフラン時FLの後端方向に斜めに折り曲げられ、その先端部において金属バンド5を四方から保持している。スリーブ保持部72は、金属部7の中央方向に突出形成された金属板であり、その中央部には円形の穴が形成されている。その穴にはスリーブ3が挿通されている。穴部73は、凹部62と位置が対応するように形成された穴であり、60度間隔で6つ形成されている。切り欠き部74は、金属部7の周縁に形成された切り欠きであり、樹脂部6の切り欠き部61に対応するように3つ形成されている。
【0025】
屈曲部75は、金属部7の面から前端側に突出するように折り曲げ形成された板であり、120度間隔で3つ形成されている。ポッチ部76は、フランジの表面に露出する接触部として設けられた前端方向に突出する突起であり、それぞれの屈曲部75に形成されている。このポッチ部76は、寸法を測定する際の基点となる部分となる。例えば、図2に示すように、ポッチ部76の先端から発光部11内の電極間中心までの距離D1は、放電ランプのLCL(Light Center Length)として規定されている。本実施形態のD1は、20mm以下に設定されており、例えば18.0mmである。従来の放電ランプのD1が27.1mmであるから、D1は7mm以上も短くなっている。
【0026】
フランジFLの後端側には、ベース8が配置されている。ベース8は、例えばステンレス、鉄、ニッケル、アルミニウムなどの導電性の材料からなるものであり、図5に示すように、ケース部81とリング82を備えている。リング82は、ケース部81の前端側に形成された円柱状の筒であり、その前端側には60度間隔で6つの突起部821が形成されている。この突起部821は、リング82とフランジFLの接続に用いられる。例えば、突起部821を金属部7の穴部73に挿入したのちに、その突出部分を凹部62に収納するように折り曲げることで、リング82とフランジFLとを固定することが可能となる。折り曲げられた突起部821と金属部7の重なり部分にレーザー溶接等をして固定を強化するとなおよい。
【0027】
ベース8の内部には、図6に示すように絶縁性の筐体として樹脂ケースRCが配置されている。樹脂ケースRCの内部にはさらに点灯回路LCが配置されている。この点灯回路LCは、トランスやコンデンサなどの回路素子で構成された放電ランプを始動および安定点灯させるための回路であり、始動点灯回路IGと安定点灯回路BLで構成されている。始動点灯回路IGはイグナイタと呼ばれる回路であり、始動時に10kV以上の高圧パルスを放電ランプに供給することで、放電を開始させる。本実施形態では、始動点灯回路IGは始動時に正極性の高圧パルスを発生させる。「正極性の高圧パルス」とは、図7に示すような印加直後のパルスが正側に発生するパルスのことである。パルスの正負はトランスの巻き方向によって変更が可能である。安定点灯回路BLはバラストと呼ばれる回路であり、安定点灯時に放電ランプに定格電力を供給することで点灯を維持する。この安定点灯回路BLは安定時は約25W、始動直後は安定時電力に対して2倍以上である約55Wになるように点灯制御される。
【0028】
これら回路等の電気的な接続の一例について説明すると、始動点灯回路IGの入力側は、バッテリー等の直流電源DSと接続され、出力側は安定点灯回路BLの入力側と接続される。その際、直流電源DSのマイナス側はベース8とも接続されている。つまり、ベース8はグランド接続(接地)されている。ベース8は金属部7と電気的に繋がっているので、ポッチ部76もグランド接続されていることになる。さらに、金属部7は突片部71を介して金属バンド5と電気的に繋がっているので、金属バンド5もグランド接続されていることになる。安定点灯回路BLの出力側は、リード線24およびサポートワイヤ25と接続される。
【0029】
ここで、外管の内部にアルゴンを封入し、ポッチ部および金属バンドをグランド接続したランプ(ランプ1)と、グランド接続していないランプ(ランプ2)をリフレクタに搭載し、図7に示す正極性の高圧パルスを印加して始動させる試験を行った。また、外管の内部に窒素を封入し、ポッチ部および金属バンドをグランド接続したランプ(ランプ3)と、グランド接続していないランプ(ランプ4)をリフレクタに搭載し、同様の正極性の高圧パルスを印加して始動させる試験を行った。その結果を図8に示す。
【0030】
結果から、ランプ1はノイズが発生せず、始動性も良好であるのに対し、ランプ2は始動性が良好であるが、ノイズが発生することがわかる。ランプ3はノイズが発生しないが、ランプ4よりも始動電圧が大きく上昇して始動性が悪化したのに対し、ランプ4は始動性が良好であるが、ノイズが発生することがわかる。つまり、ノイズの発生を抑制しつつ、始動性も良好であったのは、ランプ1だけであった。
【0031】
ランプ1およびランプ3において、ノイズが抑制されたのは、ポッチ部をグランド接続にすることで、それに接触するリフレクタもグランド接続されて、そのリフレクタにより点灯中にバーナーから発生するノイズが軽減されるためである。ランプ1、ランプ2およびランプ4において、始動性が良好であったのは、始動時に外管内で誘電体バリア放電が広範囲で発生したためと考えられる。反対に、ランプ3において始動性が悪化したのは、金属バンドがグランドに接続されることで、始動時に外管内で生じる誘電体バリア放電が金属バンドに向かって発生してしまい、誘電体バリア放電が広がらず、補助電極効果が弱くなったためと考えられる。結果的に、ランプ3はランプ4よりも絶縁破壊電圧が約2kVも上昇していた。注目すべきは、ランプ3と同様に金属バンドをグランド接続しているにもかかわらず、ランプ1は始動性が良好であった点である。ランプ1の絶縁破壊電圧は、ランプ2に対して約0.2kV上昇した程度であった。この理由は定かでないが、外管内にアルゴンを封入した場合には、金属バンドをグランド接続しても始動性に影響が生じにくいといえる。
【0032】
次に、大気、ネオン、クリプトン、キセノンを封入したランプについて同様の試験を行った。その結果を図9に示す。結果からわかるように、始動時に誘電体バリア放電が発生しにくい大気を封入したランプ6を除けば、図8のアルゴンを封入した場合と同様の結果であった。ただし、ネオン、クリプトン、キセノンを封入したランプ7、9、11では、金属バンドをグランド接続していないそれぞれのランプ8、10、12のときと比較して、絶縁開始電圧が約1.0kV上昇した。したがって、アルゴンは特に効果的である結果となった。
【0033】
次に、アルゴンと窒素の混合ガスについて同様の試験を行った。その結果を図10に示す。図10は、アルゴンと窒素の混合ガスにおいて、アルゴン比率を変えたときの絶縁破壊電圧の変化について説明するための図である。なお、比率は、分圧比(モル比)である。
【0034】
結果からわかるように、アルゴン比率が高くなるほど、絶縁破壊電圧の上昇が小さく、すなわち始動性がよい。ただし、アルゴン比率が20%よりも低いと絶縁破壊電圧が高い傾向があるので、アルゴン比率は20%以上であるのが望ましい。さらに、アルゴン比率は、絶縁破壊電圧の上昇を0.5kV以下に抑制可能な80%以上であるのが望ましい。なお、クリプトン、キセノンなどとの混合ガスでも同様の結果である。
【0035】
この実施形態では、金属部7のポッチ部76をグランドに接続したことで、ランプを灯具に搭載したときにポッチ部76が金属製のリフレクタと接触して、リフレクタがグランド接続されるためノイズを抑制することができる。また、外管4の内部にアルゴンまたはアルゴンを20%以上、望ましくは80%以上含むような、アルゴンを主体とするガスを封入したことで、金属バンド5がグランド接続され、かつバーナーBNに始動時に正極性の高圧パルスを印加するようにしても、始動性を良好にすることができる。つまり、金属部7と一体形成された突片部71により金属バンド5を保持するという簡略化された構造を採用しながら、始動性を良好に保つことができる。
【0036】
また、フランジFLを樹脂部6と金属部7とで構成し、樹脂部6をフランジFLの縁に形成し、金属部7を樹脂部6に埋め込み形成したことで、リフレクタに搭載した場合に、リフレクタに露出するのはほぼ金属部7のみとなり、樹脂部6に発光部11から紫外線がほとんど照射されなくなるため、樹脂部6の劣化によってガス等が発生し、レンズが曇る現象を抑制することができる。また、周縁が樹脂であるので、製造が容易で、かつ寸法精度、強度が高いフランジFLを実現することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態の放電ランプ装置について説明するための図、図12は、第2の実施形態の放電ランプ装置について説明するための断面図である。この第2の実施形態の各部について、第1の実施形態の放電ランプ装置の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0038】
放電ランプ装置は、リフレクタ91、レンズ構成体92および放電ランプDLとで構成されている。
【0039】
リフレクタ91は、ステンレス等の導電性の材料からなるものであり、図13に示すようにネック部911と反射部912とで構成されている。ネック部911の内部形状は段差状となっており、すなわちネック部911の内部には形状の変化する空間913が形成されている。また、ネック部911の後端側に位置する段差部分には接触面914が形成されている。さらに、接触面914よりも後端側のネック部911の内部には、3つの係止片915が形成されている。反射部912は、ネック部911の前端側と連続的に形成されており、その内部には、空間913と連通するように空間916が形成されている。
【0040】
レンズ構成体92は、レンズ921およびレンズ保持部922とで構成されており、リフレクタ91の開口部分に配置されている。レンズ921は、リフレクタ91の開口から出た光を入光面923から入光させ、出光面924から出光させるレンズである。レンズ92の形状は、所望の配光に合わせて種々変更が可能である。
【0041】
放電ランプDLは、第1の実施形態で説明したランプであり、バーナーBN、特に発光部11が空間913に配置されるように、リフレクタ91と接続されている。
【0042】
この放電ランプDLとリフレクタ91の接続を、図14を参照して説明すると、まずは(a)のように、3つの係止片915とフランジFLの3つの切り欠き部74を合致させながら、樹脂部6の3つのポッチ部76がネック部911の接触面914と接触するまで放電ランプDLを移動させる。次に、スリーブ3の位置が図において下方にくるよう、管軸を中心にα度(例えば20度)、放電ランプDLを回転させる。すると、(b)のように、フランジFLの樹脂部6が接触面914と3つの係止片915の間に狭持されるようになり、リフレクタ91への放電ランプDLの搭載が完了する。
【0043】
この状態では、ポッチ部76がネック部911の接触面914と接触しているため、グランド接続されているポッチ部76により、リフレクタ91もグランド接続される。リフレクタ91がグランド接続になると、始動時、放電ランプに高圧パルスが印加され、バーナーBNからノイズが発生しても、そのノイズはリフレクタにより軽減される。また、外管4にはアルゴンを封入しているので、始動時にランプに正極性の高圧パルスを印加しても、放電開始電圧の上昇が抑制され、始動性を良好に保つことができる。
【0044】
また、図14(b)からわかるように、リフレクタ91の開口から放電ランプDLを見ると、フランジFLのパーツのうち確認できるのは金属部7だけである。すなわち、直径がR(例えば、26mm)である空間914には、ほとんど樹脂部6は露出していない。したがって、この状態では、放電ランプDLを点灯しても発光部11から発せられる紫外線は樹脂部6にはほとんど照射されないので、樹脂部6の劣化によってガス等が発生し、レンズ921の入光面923が曇るなどの不具合を抑制することができる。なお、樹脂部6の成形幅を変化させたランプを同様にリフレクタに保持させ点灯させたところ、多少であれば空間914に樹脂部6が露出していてもレンズ921が白化するようなことはなかった。このことから、本発明は空間914に樹脂部6が露出していない状態に限定して解釈されるべきではないといえる。
【0045】
この樹脂部6は、樹脂成形によって形成可能であり、寸法精度が優れているため、接触面914と係止片915の間に寸法的に嵌めることができなかったり、隙間が生じて保持が不十分となったりすることはない。また、樹脂部6は強度も優れているため、回動動作や着脱動作を繰り返してもフランジFLが変形したりすることはない。
【0046】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0047】
例えば、放電ランプは図15のように点灯始動回路と一体のランプ、図16のように点灯始動回路も安定始動回路も一体でないランプにも適用できる。
【0048】
内管1の表面に、導電性被膜を設けてもよい。導電性の被膜を形成することで、さらに始動性を改善することができる。特に、金属箔21が封着された封止部12の表面に導電性被膜を設けるのが望ましい。導電性の被膜としては、スズの酸化物、インジウムの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムとスズの酸化物であるITOなどを使用することができる。
【0049】
フランジFLは図15のように、樹脂部6の前端側に金属部7として金属のカバーを設けるような形態であってもよい。また、樹脂部6を使用せず、金属部7のみで構成するようにしてもよい。
【0050】
バーナーBNの保持は、図16のように、フランジFLの前端側に突出した突片部71により、行うようにしてもよい。また、図15のように、金属バンド5に突片部51を形成し、突片部51と金属部7とを溶接するようにしてもよい。
【0051】
リフレクタのグランド接続は、ポッチ部76を介す以外の方法で行ってもよい。すなわち、接触部は、ポッチ部76に限定されない。例えば、フランジFLの後端側の表面に露出するように金属部7と一体形成した金属片を設け、リフレクタへの取り付け状態においてその金属片が係止片915と接触するようにしてもよい。また、フランジFLの側壁の表面に露出するように金属部7と一体形成した金属片を設け、リフレクタへの取り付け状態においてその金属片がネック部911の内側面と接触するようにしてもよい。また、ベース8とリフレクタを直接的に接触させたり、ベース8に金属パーツを設け、その金属パーツをリフレクタと接触させるようにしてもよい。要するに、グランド接続されている放電ランプの何れかの金属パーツを利用してリフレクタがグランド接続される構造であればよい。また、ベース8のグランド接続は、シールドメッシュを備えたケーブルをコネクタ83に接続することで行ってもよい。
【符号の説明】
【0052】
BN バーナー
1 内管
11 発光部
4 外管
5 金属バンド
FL フランジ
6 樹脂部
7 金属部
76 ポッチ部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動車等の車両の前照灯などとして使用される放電ランプおよび放電ランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の前照灯に使用される放電ランプは、バーナーと樹脂製のソケットとで構成されている。そのバーナーは点灯中に発光する部分となる発光部を備えた二重管構造となっており、その発光部がソケットの前端側に位置するように、ソケットに保持されている。
【0003】
このようなランプにおいて、最近ではランプをコンパクトにするために、発光部とソケットとの距離を従来よりも近づけるニーズがある。発光部とソケットとの距離が近くなると、熱源が近づきフランジの温度が上がってしまうため、耐熱性を向上させるべく、金属を用いたフランジが開発されている。
【0004】
ここで、この種の放電ランプは、点灯中にバーナーからノイズが発生するという問題がある。このノイズは、フランジに使用された金属を電気的にグランドに接続し、その金属を介してランプを搭載する装置である灯具をグランドに接続すると抑制されることがわかった。しかしながら、それによる新たな問題として、ランプの始動性が悪くなることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−297226号公報
【特許文献2】特開2007−323986号公報
【特許文献3】国際公開第2009/130654号
【特許文献4】国際公開第2008/110969号
【特許文献5】国際公開第2009/130640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ノイズを抑制可能で、かつ始動性が良好な放電ランプおよび放電ランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、実施形態の放電ランプは、発光部を有する内管、前記発光部を覆うように設けられた外管、を備えたバーナーと、前記発光部がその前端側に位置するように、前記バーナーを保持可能なフランジと、を具備し、前記フランジがリフレクタに保持される放電ランプであって、前記フランジは金属部を備え、前記金属部は前記リフレクタに接触可能な接触部を備え、前記バーナーはその外面に沿うように装着された金属バンドを備え、前記金属バンドは前記金属部と電気的に接続されており、前記外管内にはアルゴンまたはアルゴンを主体とするガスが封入され、前記金属バンドおよび前記接触部は、電気的にグランドに接続され、前記バーナーには始動時に正極性の高圧パルスが供給される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の放電ランプについて説明するための図である。
【図2】第1の実施形態の放電ランプについて説明するための断面図である。
【図3】第1の実施形態の放電ランプを前端側から見た状態について説明するための図である。
【図4】金属部について説明するための図である。
【図5】ベースについて説明するための図である。
【図6】第1の実施形態の放電ランプの回路接続について説明するための簡略図である。ベースについて説明するための図である。
【図7】正極性の高圧パルスの一例について説明するための図である。
【図8】外管内にアルゴン、窒素を封入するとともに、グランド接続有無に設定したランプに正極性の高圧パルスを印加したときのノイズと始動性について説明するための図である。
【図9】外管内に大気、ネオン、クリプトン、キセノンを封入するとともに、グランド接続有無に設定したランプに正極性の高圧パルスを印加したときのノイズと始動性について説明するための図である。
【図10】アルゴンと窒素の混合ガスにおいて、アルゴンの比率を変えたときの絶縁破壊電圧の変化について説明するための図である。
【図11】第2の実施形態の放電ランプ装置について説明するための図である。
【図12】第2の実施形態の放電ランプ装置について説明するための断面図である。
【図13】リフレクタについて説明するための図である。
【図14】第2の実施形態の放電ランプ装置を前端側から見た状態について説明するための図である。
【図15】放電ランプの第1の変形例について説明するための図である。
【図16】放電ランプの第2の変形例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の放電ランプについて、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の放電ランプについて説明するための図、図2は、第1の実施形態の放電ランプについて説明するための断面図、図3は、第1の実施形態の放電ランプを前端側から見た状態について説明するための図である。なお、本発明においては、便宜上、自動車に取り付けられた場合に前方となる図2に示した矢印Fの方向を前端、矢印Bの方向を後端と称して説明する。
【0010】
図1に示した放電ランプは、自動車の前照灯装置に用いられるHIDランプであり、バーナーBNとフランジFLとを備えている。
【0011】
バーナーBNは、二重管構造であり、その内部には内管1が配置されている。内管1は細長い形状であり、その中央付近には点灯中に発光する部分となる発光部11が形成されている。発光部11は略楕円状であり、その両端には板状のシール部12、そのさらに両端には境界部13を介して円筒部14が連続形成されている。この内管1は前述のとおり、発光する部分を含んでいるとともに、点灯中に高温になるため、石英ガラスなどの透光性と耐熱性を具備した材料で構成されている。
【0012】
発光部11の内部には、中央が略円柱状、両端がテーパ状の放電空間111が形成されている。この放電空間111の容積は、自動車前照灯用の場合には、10mm3〜30mm3、さらには15mm3〜25mm3であるのが好適である。放電空間111には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、金属ハロゲン化物と希ガスを含み、水銀は実質的に含んでいない、いわゆる水銀フリーの構成である。
【0013】
金属ハロゲン化物は、ナトリウム、スカンジウム、亜鉛、インジウムなどのハロゲン化物で構成されている。それらの金属ハロゲン化物に結合されるハロゲンとしてはヨウ素が最適であるが、臭素や塩素などを組み合わせてもよい。また、金属ハロゲン化物の組み合わせもこれに限らず、スズやセシウムのハロゲン化物などを追加してもよい。
【0014】
希ガスは、キセノンで構成されている。希ガスは、目的によってその封入圧力を調整することができる。例えば、全光束等の特性を高めるためには、封入圧力を常温(25℃)において10atm以上、特に13atm以上にするのが望ましい。ただし、上限は製造上、現状で20atm程度である。なお、希ガスとしては、キセノンの他に、ネオン、アルゴン、クリプトンなどを使用したり、それらを組み合わせて使用したりすることもできる。
【0015】
シール部12には、電極マウント2が封着されている。電極マウント2は、金属箔21、電極22、コイル23およびリード線24により構成されている。
【0016】
金属箔21は、例えば、モリブデンからなる薄い金属板であり、その板状の面がシール部12の板状の面と平行するように配置されている。
【0017】
電極22は、例えば、タングステンに酸化トリウムをドープした、いわゆるトリエーテッドタングステンからなる電極である。その一端は金属箔21の発光部11側端部に重ね合わせ接続されており、他端は放電空間111内で所定の電極間距離を保って、互いの先端同士が対向するように配置されている。その電極間距離としては、自動車前照灯用の場合には、外観上における距離で3.5mm〜4.5mmであるのが望ましい。
【0018】
コイル23は、例えば、ドープタングステンからなる金属線であって、シール部12に封着される電極22の軸部の軸周りに螺旋状に巻装されている。
【0019】
リード線24は、例えば、モリブデンからなる金属線である。その一端は、発光部11に対して反対側の金属箔21に重ね合わせ接続されており、他端は管軸に沿って内管1の外部に延出されている。そのうち、ランプの前端側に延出したリード線24には、例えば、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ25の一端がレーザー溶接により接続されている。このサポートワイヤ25には、管軸と平行する部分に、例えば、セラミックからなるスリーブ3が装着されている。
【0020】
上記で構成された内管1の外側には、筒状の外管4が内管1と同心状に設けられている。これら内外管の接続は、内管1の円筒部14付近に外管4を溶着し、両端部に溶着部41を形成することにより行なわれている。このため、内管1と外管4との間には気密に保たれた空間が形成され、その空間には、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンから選択された一または混合されたガスが封入されている。ガスの圧力は、0.3atm以下、さらには0.1atm以下であるのが好適である。なお、外管4としては、チタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加した石英ガラスなど、内管1に熱膨張係数が近く、かつ紫外線遮断性を有する材料を使用するのが望ましい。
【0021】
これらで構成されたバーナーBNの後端側には、金属バンド5が設けられている。この金属バンド5は、例えばステンレスからなる金属板を外管4の外周面に沿って配置したものであり、その両端同士を溶接することで、外管4に固定されている。
【0022】
金属バンド5付近には、フランジFLが配置されている。フランジFLは円盤状であって、その直径は例えば31mm、厚みは2.5mmであり、樹脂部6と金属部7とで構成されている。
【0023】
樹脂部6は、PPS、PEIなどの樹脂により成形されてなるものであり、フランジFLの周縁に位置している。このフランジFLは、切り欠き部61および凹部62を備えている。切り欠き部61は、樹脂部6の端部に形成された切り欠きであり、変則的に3つ形成されている。凹部62は、樹脂部6の前後端側に設けられた凹みであり、60度間隔で6つ形成されている。
【0024】
金属部7は、ステンレスなどからなる金属板であり、樹脂部6に埋め込み形成されている。樹脂部6に埋め込まれる前の金属部7は、図4に示すような形状であり、突片部71、スリーブ保持部72、穴部73、切り欠き部74、屈曲部75およびポッチ部76を備えている。突片部71は、金属部7の中央方向に突出するように形成された突片であり、90度間隔で4つ形成されている。この突片部71は、放電ランプの状態ではフラン時FLの後端方向に斜めに折り曲げられ、その先端部において金属バンド5を四方から保持している。スリーブ保持部72は、金属部7の中央方向に突出形成された金属板であり、その中央部には円形の穴が形成されている。その穴にはスリーブ3が挿通されている。穴部73は、凹部62と位置が対応するように形成された穴であり、60度間隔で6つ形成されている。切り欠き部74は、金属部7の周縁に形成された切り欠きであり、樹脂部6の切り欠き部61に対応するように3つ形成されている。
【0025】
屈曲部75は、金属部7の面から前端側に突出するように折り曲げ形成された板であり、120度間隔で3つ形成されている。ポッチ部76は、フランジの表面に露出する接触部として設けられた前端方向に突出する突起であり、それぞれの屈曲部75に形成されている。このポッチ部76は、寸法を測定する際の基点となる部分となる。例えば、図2に示すように、ポッチ部76の先端から発光部11内の電極間中心までの距離D1は、放電ランプのLCL(Light Center Length)として規定されている。本実施形態のD1は、20mm以下に設定されており、例えば18.0mmである。従来の放電ランプのD1が27.1mmであるから、D1は7mm以上も短くなっている。
【0026】
フランジFLの後端側には、ベース8が配置されている。ベース8は、例えばステンレス、鉄、ニッケル、アルミニウムなどの導電性の材料からなるものであり、図5に示すように、ケース部81とリング82を備えている。リング82は、ケース部81の前端側に形成された円柱状の筒であり、その前端側には60度間隔で6つの突起部821が形成されている。この突起部821は、リング82とフランジFLの接続に用いられる。例えば、突起部821を金属部7の穴部73に挿入したのちに、その突出部分を凹部62に収納するように折り曲げることで、リング82とフランジFLとを固定することが可能となる。折り曲げられた突起部821と金属部7の重なり部分にレーザー溶接等をして固定を強化するとなおよい。
【0027】
ベース8の内部には、図6に示すように絶縁性の筐体として樹脂ケースRCが配置されている。樹脂ケースRCの内部にはさらに点灯回路LCが配置されている。この点灯回路LCは、トランスやコンデンサなどの回路素子で構成された放電ランプを始動および安定点灯させるための回路であり、始動点灯回路IGと安定点灯回路BLで構成されている。始動点灯回路IGはイグナイタと呼ばれる回路であり、始動時に10kV以上の高圧パルスを放電ランプに供給することで、放電を開始させる。本実施形態では、始動点灯回路IGは始動時に正極性の高圧パルスを発生させる。「正極性の高圧パルス」とは、図7に示すような印加直後のパルスが正側に発生するパルスのことである。パルスの正負はトランスの巻き方向によって変更が可能である。安定点灯回路BLはバラストと呼ばれる回路であり、安定点灯時に放電ランプに定格電力を供給することで点灯を維持する。この安定点灯回路BLは安定時は約25W、始動直後は安定時電力に対して2倍以上である約55Wになるように点灯制御される。
【0028】
これら回路等の電気的な接続の一例について説明すると、始動点灯回路IGの入力側は、バッテリー等の直流電源DSと接続され、出力側は安定点灯回路BLの入力側と接続される。その際、直流電源DSのマイナス側はベース8とも接続されている。つまり、ベース8はグランド接続(接地)されている。ベース8は金属部7と電気的に繋がっているので、ポッチ部76もグランド接続されていることになる。さらに、金属部7は突片部71を介して金属バンド5と電気的に繋がっているので、金属バンド5もグランド接続されていることになる。安定点灯回路BLの出力側は、リード線24およびサポートワイヤ25と接続される。
【0029】
ここで、外管の内部にアルゴンを封入し、ポッチ部および金属バンドをグランド接続したランプ(ランプ1)と、グランド接続していないランプ(ランプ2)をリフレクタに搭載し、図7に示す正極性の高圧パルスを印加して始動させる試験を行った。また、外管の内部に窒素を封入し、ポッチ部および金属バンドをグランド接続したランプ(ランプ3)と、グランド接続していないランプ(ランプ4)をリフレクタに搭載し、同様の正極性の高圧パルスを印加して始動させる試験を行った。その結果を図8に示す。
【0030】
結果から、ランプ1はノイズが発生せず、始動性も良好であるのに対し、ランプ2は始動性が良好であるが、ノイズが発生することがわかる。ランプ3はノイズが発生しないが、ランプ4よりも始動電圧が大きく上昇して始動性が悪化したのに対し、ランプ4は始動性が良好であるが、ノイズが発生することがわかる。つまり、ノイズの発生を抑制しつつ、始動性も良好であったのは、ランプ1だけであった。
【0031】
ランプ1およびランプ3において、ノイズが抑制されたのは、ポッチ部をグランド接続にすることで、それに接触するリフレクタもグランド接続されて、そのリフレクタにより点灯中にバーナーから発生するノイズが軽減されるためである。ランプ1、ランプ2およびランプ4において、始動性が良好であったのは、始動時に外管内で誘電体バリア放電が広範囲で発生したためと考えられる。反対に、ランプ3において始動性が悪化したのは、金属バンドがグランドに接続されることで、始動時に外管内で生じる誘電体バリア放電が金属バンドに向かって発生してしまい、誘電体バリア放電が広がらず、補助電極効果が弱くなったためと考えられる。結果的に、ランプ3はランプ4よりも絶縁破壊電圧が約2kVも上昇していた。注目すべきは、ランプ3と同様に金属バンドをグランド接続しているにもかかわらず、ランプ1は始動性が良好であった点である。ランプ1の絶縁破壊電圧は、ランプ2に対して約0.2kV上昇した程度であった。この理由は定かでないが、外管内にアルゴンを封入した場合には、金属バンドをグランド接続しても始動性に影響が生じにくいといえる。
【0032】
次に、大気、ネオン、クリプトン、キセノンを封入したランプについて同様の試験を行った。その結果を図9に示す。結果からわかるように、始動時に誘電体バリア放電が発生しにくい大気を封入したランプ6を除けば、図8のアルゴンを封入した場合と同様の結果であった。ただし、ネオン、クリプトン、キセノンを封入したランプ7、9、11では、金属バンドをグランド接続していないそれぞれのランプ8、10、12のときと比較して、絶縁開始電圧が約1.0kV上昇した。したがって、アルゴンは特に効果的である結果となった。
【0033】
次に、アルゴンと窒素の混合ガスについて同様の試験を行った。その結果を図10に示す。図10は、アルゴンと窒素の混合ガスにおいて、アルゴン比率を変えたときの絶縁破壊電圧の変化について説明するための図である。なお、比率は、分圧比(モル比)である。
【0034】
結果からわかるように、アルゴン比率が高くなるほど、絶縁破壊電圧の上昇が小さく、すなわち始動性がよい。ただし、アルゴン比率が20%よりも低いと絶縁破壊電圧が高い傾向があるので、アルゴン比率は20%以上であるのが望ましい。さらに、アルゴン比率は、絶縁破壊電圧の上昇を0.5kV以下に抑制可能な80%以上であるのが望ましい。なお、クリプトン、キセノンなどとの混合ガスでも同様の結果である。
【0035】
この実施形態では、金属部7のポッチ部76をグランドに接続したことで、ランプを灯具に搭載したときにポッチ部76が金属製のリフレクタと接触して、リフレクタがグランド接続されるためノイズを抑制することができる。また、外管4の内部にアルゴンまたはアルゴンを20%以上、望ましくは80%以上含むような、アルゴンを主体とするガスを封入したことで、金属バンド5がグランド接続され、かつバーナーBNに始動時に正極性の高圧パルスを印加するようにしても、始動性を良好にすることができる。つまり、金属部7と一体形成された突片部71により金属バンド5を保持するという簡略化された構造を採用しながら、始動性を良好に保つことができる。
【0036】
また、フランジFLを樹脂部6と金属部7とで構成し、樹脂部6をフランジFLの縁に形成し、金属部7を樹脂部6に埋め込み形成したことで、リフレクタに搭載した場合に、リフレクタに露出するのはほぼ金属部7のみとなり、樹脂部6に発光部11から紫外線がほとんど照射されなくなるため、樹脂部6の劣化によってガス等が発生し、レンズが曇る現象を抑制することができる。また、周縁が樹脂であるので、製造が容易で、かつ寸法精度、強度が高いフランジFLを実現することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態の放電ランプ装置について説明するための図、図12は、第2の実施形態の放電ランプ装置について説明するための断面図である。この第2の実施形態の各部について、第1の実施形態の放電ランプ装置の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0038】
放電ランプ装置は、リフレクタ91、レンズ構成体92および放電ランプDLとで構成されている。
【0039】
リフレクタ91は、ステンレス等の導電性の材料からなるものであり、図13に示すようにネック部911と反射部912とで構成されている。ネック部911の内部形状は段差状となっており、すなわちネック部911の内部には形状の変化する空間913が形成されている。また、ネック部911の後端側に位置する段差部分には接触面914が形成されている。さらに、接触面914よりも後端側のネック部911の内部には、3つの係止片915が形成されている。反射部912は、ネック部911の前端側と連続的に形成されており、その内部には、空間913と連通するように空間916が形成されている。
【0040】
レンズ構成体92は、レンズ921およびレンズ保持部922とで構成されており、リフレクタ91の開口部分に配置されている。レンズ921は、リフレクタ91の開口から出た光を入光面923から入光させ、出光面924から出光させるレンズである。レンズ92の形状は、所望の配光に合わせて種々変更が可能である。
【0041】
放電ランプDLは、第1の実施形態で説明したランプであり、バーナーBN、特に発光部11が空間913に配置されるように、リフレクタ91と接続されている。
【0042】
この放電ランプDLとリフレクタ91の接続を、図14を参照して説明すると、まずは(a)のように、3つの係止片915とフランジFLの3つの切り欠き部74を合致させながら、樹脂部6の3つのポッチ部76がネック部911の接触面914と接触するまで放電ランプDLを移動させる。次に、スリーブ3の位置が図において下方にくるよう、管軸を中心にα度(例えば20度)、放電ランプDLを回転させる。すると、(b)のように、フランジFLの樹脂部6が接触面914と3つの係止片915の間に狭持されるようになり、リフレクタ91への放電ランプDLの搭載が完了する。
【0043】
この状態では、ポッチ部76がネック部911の接触面914と接触しているため、グランド接続されているポッチ部76により、リフレクタ91もグランド接続される。リフレクタ91がグランド接続になると、始動時、放電ランプに高圧パルスが印加され、バーナーBNからノイズが発生しても、そのノイズはリフレクタにより軽減される。また、外管4にはアルゴンを封入しているので、始動時にランプに正極性の高圧パルスを印加しても、放電開始電圧の上昇が抑制され、始動性を良好に保つことができる。
【0044】
また、図14(b)からわかるように、リフレクタ91の開口から放電ランプDLを見ると、フランジFLのパーツのうち確認できるのは金属部7だけである。すなわち、直径がR(例えば、26mm)である空間914には、ほとんど樹脂部6は露出していない。したがって、この状態では、放電ランプDLを点灯しても発光部11から発せられる紫外線は樹脂部6にはほとんど照射されないので、樹脂部6の劣化によってガス等が発生し、レンズ921の入光面923が曇るなどの不具合を抑制することができる。なお、樹脂部6の成形幅を変化させたランプを同様にリフレクタに保持させ点灯させたところ、多少であれば空間914に樹脂部6が露出していてもレンズ921が白化するようなことはなかった。このことから、本発明は空間914に樹脂部6が露出していない状態に限定して解釈されるべきではないといえる。
【0045】
この樹脂部6は、樹脂成形によって形成可能であり、寸法精度が優れているため、接触面914と係止片915の間に寸法的に嵌めることができなかったり、隙間が生じて保持が不十分となったりすることはない。また、樹脂部6は強度も優れているため、回動動作や着脱動作を繰り返してもフランジFLが変形したりすることはない。
【0046】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0047】
例えば、放電ランプは図15のように点灯始動回路と一体のランプ、図16のように点灯始動回路も安定始動回路も一体でないランプにも適用できる。
【0048】
内管1の表面に、導電性被膜を設けてもよい。導電性の被膜を形成することで、さらに始動性を改善することができる。特に、金属箔21が封着された封止部12の表面に導電性被膜を設けるのが望ましい。導電性の被膜としては、スズの酸化物、インジウムの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムとスズの酸化物であるITOなどを使用することができる。
【0049】
フランジFLは図15のように、樹脂部6の前端側に金属部7として金属のカバーを設けるような形態であってもよい。また、樹脂部6を使用せず、金属部7のみで構成するようにしてもよい。
【0050】
バーナーBNの保持は、図16のように、フランジFLの前端側に突出した突片部71により、行うようにしてもよい。また、図15のように、金属バンド5に突片部51を形成し、突片部51と金属部7とを溶接するようにしてもよい。
【0051】
リフレクタのグランド接続は、ポッチ部76を介す以外の方法で行ってもよい。すなわち、接触部は、ポッチ部76に限定されない。例えば、フランジFLの後端側の表面に露出するように金属部7と一体形成した金属片を設け、リフレクタへの取り付け状態においてその金属片が係止片915と接触するようにしてもよい。また、フランジFLの側壁の表面に露出するように金属部7と一体形成した金属片を設け、リフレクタへの取り付け状態においてその金属片がネック部911の内側面と接触するようにしてもよい。また、ベース8とリフレクタを直接的に接触させたり、ベース8に金属パーツを設け、その金属パーツをリフレクタと接触させるようにしてもよい。要するに、グランド接続されている放電ランプの何れかの金属パーツを利用してリフレクタがグランド接続される構造であればよい。また、ベース8のグランド接続は、シールドメッシュを備えたケーブルをコネクタ83に接続することで行ってもよい。
【符号の説明】
【0052】
BN バーナー
1 内管
11 発光部
4 外管
5 金属バンド
FL フランジ
6 樹脂部
7 金属部
76 ポッチ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を有する内管、前記発光部を覆うように設けられた外管、を備えたバーナーと、前記発光部がその前端側に位置するように、前記バーナーを保持可能なフランジと、を具備し、前記フランジがリフレクタに保持される放電ランプであって、
前記フランジは金属部を備え、前記金属部は前記リフレクタに接触可能な接触部を備え、
前記バーナーはその外面に沿うように装着された金属バンドを備え、前記金属バンドは前記金属部と電気的に接続されており、
前記外管内にはアルゴンまたはアルゴンを20%以上含む混合ガスが封入され、
前記金属バンドおよび前記接触部は、電気的にグランドに接続され、
前記バーナーには始動時に正極性の高圧パルスが供給されることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
発光部を有する内管、前記発光部を覆うように設けられた外管、を備えたバーナーと、前記発光部がその前端側に位置するように、前記バーナーを保持可能なフランジと、前記フランジを保持可能な導電性のベースと、前記ベース内に設けられた点灯回路と、を具備し、前記フランジがリフレクタに保持される放電ランプであって、
前記フランジは金属部を備え、
前記金属部または前記ベースは前記リフレクタに接触可能な接触部を備え、
前記バーナーはその外面に沿うように装着された金属バンドを備え、前記金属バンドは前記金属部と電気的に接続されており、
前記外管内にはアルゴンまたはアルゴンを20%以上含む混合ガスが封入され、
前記金属バンドおよび前記接触部は、前記ベースを介して、前記点灯回路と電気的にグランドになるように接続され、
前記点灯回路は始動時に正極性の高圧パルスを前記バーナーに供給することを特徴とする放電ランプ。
【請求項3】
発光部を有する内管、前記発光部を覆うように設けられた外管、を備えたバーナーと、前記発光部がその前端側に位置するように、前記バーナーを保持可能なフランジと、を備えた放電ランプと、
後端側に接触面を有するネック部と、前記ネック部の前端側と連続するように形成された反射部と、前記ネック部および前記反射部の内部を連通するように形成された空間と、を備えた導電性のリフレクタと、を具備する放電ランプ装置であって、
前記フランジは金属部を備え、前記金属部は接触部を備え、前記フランジは前記接触部が前記ネック部と接触するように前記リフレクタに保持され、
前記バーナーは、その外面に沿うように装着された金属バンドを備え、前記金属バンドは前記金属部と電気的に接続されており、
前記外管内にはアルゴンまたはアルゴンを20%以上含む混合ガスが封入され、
前記金属バンドおよび前記リフレクタは、前記金属部を介して電気的にグランドに接続され、
前記バーナーには始動時に正極性の高圧パルスが供給されることを特徴とする放電ランプ装置。
【請求項1】
発光部を有する内管、前記発光部を覆うように設けられた外管、を備えたバーナーと、前記発光部がその前端側に位置するように、前記バーナーを保持可能なフランジと、を具備し、前記フランジがリフレクタに保持される放電ランプであって、
前記フランジは金属部を備え、前記金属部は前記リフレクタに接触可能な接触部を備え、
前記バーナーはその外面に沿うように装着された金属バンドを備え、前記金属バンドは前記金属部と電気的に接続されており、
前記外管内にはアルゴンまたはアルゴンを20%以上含む混合ガスが封入され、
前記金属バンドおよび前記接触部は、電気的にグランドに接続され、
前記バーナーには始動時に正極性の高圧パルスが供給されることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
発光部を有する内管、前記発光部を覆うように設けられた外管、を備えたバーナーと、前記発光部がその前端側に位置するように、前記バーナーを保持可能なフランジと、前記フランジを保持可能な導電性のベースと、前記ベース内に設けられた点灯回路と、を具備し、前記フランジがリフレクタに保持される放電ランプであって、
前記フランジは金属部を備え、
前記金属部または前記ベースは前記リフレクタに接触可能な接触部を備え、
前記バーナーはその外面に沿うように装着された金属バンドを備え、前記金属バンドは前記金属部と電気的に接続されており、
前記外管内にはアルゴンまたはアルゴンを20%以上含む混合ガスが封入され、
前記金属バンドおよび前記接触部は、前記ベースを介して、前記点灯回路と電気的にグランドになるように接続され、
前記点灯回路は始動時に正極性の高圧パルスを前記バーナーに供給することを特徴とする放電ランプ。
【請求項3】
発光部を有する内管、前記発光部を覆うように設けられた外管、を備えたバーナーと、前記発光部がその前端側に位置するように、前記バーナーを保持可能なフランジと、を備えた放電ランプと、
後端側に接触面を有するネック部と、前記ネック部の前端側と連続するように形成された反射部と、前記ネック部および前記反射部の内部を連通するように形成された空間と、を備えた導電性のリフレクタと、を具備する放電ランプ装置であって、
前記フランジは金属部を備え、前記金属部は接触部を備え、前記フランジは前記接触部が前記ネック部と接触するように前記リフレクタに保持され、
前記バーナーは、その外面に沿うように装着された金属バンドを備え、前記金属バンドは前記金属部と電気的に接続されており、
前記外管内にはアルゴンまたはアルゴンを20%以上含む混合ガスが封入され、
前記金属バンドおよび前記リフレクタは、前記金属部を介して電気的にグランドに接続され、
前記バーナーには始動時に正極性の高圧パルスが供給されることを特徴とする放電ランプ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図16】
【公開番号】特開2013−26069(P2013−26069A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160855(P2011−160855)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
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