説明

放電ランプ

【課題】 高効率でしかも長寿命で、かつ、強度も十分な電極ヘッドを具備した冷陰極蛍光ランプ等の放電ランプを提供すること。
【解決手段】 放電ランプ1の電極ヘッド5、5a〜5iを、外層部位8、8a、8b、8c、8iに覆われている内層部位7、7a、7b、7c、7iとが同心の複層構造にし、空孔にエミッタ物質が含浸されている多孔質焼結金属に形成する。また、内層部位7、7a、7b、7c、7iは外層部位8、8a、8b、8c、8iよりも空孔率を高く形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ディスプレイ等のバックライト光源に用いる、多孔質焼結金属からなる電極ヘッドを用いた冷陰極蛍光ランプ等の放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶のバックライトや、複写機やファクシミリ等のようなOA機器における原稿読み取り光源に、放電ランプである小型の蛍光ランプ(電極ヘッド蛍光ランプ)が使用されていることが多い。これらのOA機器では、応用の拡大化や普及に伴って、高性能、高効率化、多機能化、小形化あるいは長寿命化などが要求されている。このような要求に対応して、バックライト用光源としての蛍光ランプについても必然的に、高効率化や長寿命化や小型化などの性能の向上が要望されている。
【0003】
図13(a)および(b)は、バックライト用光源として、従来使用されている冷陰極蛍光ランプの概略構成を示すもので、図13(a)は全体の側断面図、図13(b)は電極ヘッド封装領域の拡大側断面図である。図13(a)および(b)において、ガラスバルブ31は、内壁面に紫外線による刺激で発光する蛍光体層32が設けられ、かつネオンやアルゴンなどの稀ガスおよび水銀を放電媒体として封入されている。ガラスバルブ31の両端部には対向して封止導入された一対のリード線33、33が設けられている。ガラスバルブ1の内部のリード線33、33の対向する先端部には、それぞれ、リード線33、33に電気的に接続された電極ヘッド(冷陰極ヘッド)34、34が配設されている。
【0004】
ガラスバルブ31は、内径φ1.2〜4.8mm程度、長さ40〜800mm程度である。また、そのガラスバルブ31の内部には、例えば、0.5〜2.0mg/cm程度の水銀および60〜150Torr程度の稀ガスが放電媒体として封入されている。
【0005】
また、電極ヘッド34は、たとえば内径φ0.6〜1.7mm程度、肉厚0.1〜0.2mm程度、長さ2〜3mm程度の円筒体(例えば、ニッケル製円筒体)34aと、この円筒体34aの内部に、外面にエミッタ物質(電子放射性物質)を塗布・焼き付けした中心部材34bとで構成されている。
【0006】
そして、これら電極ヘッド34とリード線33との接合は、構成部材である円筒体34aの縮径部に、封止導入された一対のリード線33の先端部を挿入・嵌合し、レーザ光の照射による溶接(例えば特許文献1を参照)や、ろう材にMo(モリブテン)−Ru(ルテニウム)を用いたろう付け(例えば特許文献2を参照)等の手段により、電気的に接続され、かつ、機械的に接合固定されている。
【0007】
つまり、リード線33、33を介して電極ヘッド34、34に所要の電圧を印加して、電極ヘッド34、34を放電電極として機能させている。なお、中心部材34bは、熱電子の放出を高め長期寿命を得るためのもので、一般的に、バリウム化合物、イットリウム化合物、ランタン化合物などの電子放出性の物質を主体とした素材で形成されている。これらの構成で、エミッタ層34bを担持す一対の電極ヘッド34、34に、リード線33、33を介して通電すると紫外線が放射され、この紫外線を蛍光体層32によって可視光に変換して、冷陰極蛍光ランプとして機能する。
【0008】
最近では、このエミッタ物質が点灯中(放電中)に飛散し、使用時間の経過と共に枯渇するのを防ぐ為に、空孔を設けた多孔質焼結金属で形成された電極ヘッドに、エミッタ物質を含浸させる試みがなされている。(例えば特許文献3を参照)
図14に別の従来例の側断面図を示すように、多孔質焼結金属で形成された電極ヘッド34aは、全体にわたり多数の空孔(不図示)が形成されている。各空孔にエミッタ物質が含浸されている。それにより電極ヘッド34aに保持できるエミッタ物質の量が多くなり、電極ヘッド34aの表面でエミッタ物質が消失しても、各空孔の内部に保持されたエミッタ物質が表面に供給されて表面のエミッタ物質が補充されるので、長期にわたり電極ヘッド34aの表面に良好なエミッタ物質を供給できるという利点がある。
【0009】
なお、電極ヘッド34aの多孔質焼結金属は、通常、空孔率は30%以上の金属部分が疎な構造が用いられている。金属は、Ni(ニッケル)やW(タングステン)やMo(モリブデン)等が用いられおり、それらは単体で用いても混合で用いられている場合もある。
【特許文献1】特開2003−272520号公報 (段落番号0025〜0026)
【特許文献2】特開2000−215844号公報 (段落番号0028)
【特許文献3】特開平7−570696号公報 (段落番号0010)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述のように空孔を設けた多孔質焼結金属で形成された電極ヘッドに、エミッタ物質を含浸させた場合、金属の空孔の割合が高い(空孔率が30%以上)疎な多孔質焼結金属であれば、電極ヘッドに多くのエミッタ物質を含浸できるのだが、多孔質焼結金属の空孔率を高くすると、電極ヘッドの強度が低下するという不具合が生じる。
【0011】
また、空孔を設けた多孔質焼結金属で形成された電極ヘッドは、空孔の割合が高いほど、リード線との接合が困難になる。
【0012】
本発明はこれらの事情にもとづいてなされたもので、高効率でしかも長寿命で、かつ、強度も十分な電極ヘッドを具備した冷陰極蛍光ランプ等の放電ランプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、内壁面に蛍光体層が設けられ、かつ希ガスおよび水銀が封入されたガラスバルブと、このガラスバルブの両端部にそれぞれ封装されたリード線に固定されて該ガラスバルブの内部に配置された一対の開口部を有するカップ状の電極ヘッドを具えた放電ランプであって、
前記電極ヘッドは、外装部位と、この外層部位の内側に密接して配置され前記開口部以外が前記外層部位に覆われた内層部位と、この内層部位の内側に形成または密接配置されている中心部位とを具えた複層構造で、前記各部位は空孔にエミッタ物質が含浸されている多孔質焼結金属によって形成され、かつ、前記内層部位は前記外層部位よりも空孔率が高く形成されていることを特徴とする放電ランプである。
【0014】
また本発明によれば、前記電極ヘッドを構成している前記内層部位の内側に形成されている前記中心部位は、該内層部位の周辺側から凹状の底部に形成されていることを特徴とする放電ランプである。
【0015】
また本発明によれば、前記電極ヘッドを形成している前記内層部位の空孔率は30%以上であり、前記外層部位の空孔率は20%以下であることを特徴とする放電ランプである。
【0016】
また本発明によれば、前記電極ヘッドを形成している前記中心部位の空孔率は、前記内層部位の空孔率と等しいことを特徴とする放電ランプである。
【0017】
また本発明によれば、前記電極ヘッドを形成している前記中心部位の空孔率は、前記外層部位の空孔率と等しいことを特徴とする放電ランプである。
【0018】
また本発明によれば、前記リード線は、該リード線の先端部に形成されたおねじが前記電極ヘッドのリード線差込口に形成されためねじと螺着して該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする放電ランプである。
【0019】
また本発明によれば、前記リード線は、該リード線の先端部に形成されたタッピンねじが前記電極ヘッドのリード線差込口に進入して形成されためねじと螺着して該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする放電ランプである。
【0020】
また本発明によれば、前記リード線は、該リード線の頭部と異形部とによって前記電極ヘッドのリード線差込口に固定されることにより該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする放電ランプである。
【0021】
また本発明によれば、前記リード線は、前記電極ヘッドのリード線差込口に圧入されて該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする放電ランプである。
【0022】
また本発明によれば、前記リード線は、前記電極ヘッドが加熱成形された状態でのリード線差込口に挿入され、焼結の際の熱処理により該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする放電ランプである。
【0023】
また本発明によれば、内壁面に蛍光体層が設けられ、かつ希ガスおよび水銀が封入されたガラスバルブと、このガラスバルブの両端部にそれぞれ封装されたリード線に固定されて該ガラスバルブの内部に配置された一対のカップ状の電極ヘッドを具えた放電ランプであって、
前記電極ヘッドは、外層部位に覆われている内層部位が該外層部位の内側に配置された複層構造で、空孔にエミッタ物質が含浸されている多孔質焼結金属によって形成され、かつ、前記内層部位は前記外層部位よりも空孔率が高く形成されていると共に、該内層部位の中央側には前記リード線によって密接して中心部位が形成されていることを特徴とする放電ランプである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高効率でしかも長寿命で、かつ、強度も十分な電極ヘッドを具備した冷陰極蛍光ランプ等の放電ランプを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明では、冷陰極蛍光ランプ等の放電ランプでの多孔質焼結金属で形成された電極ヘッドの強度を増すために、電極ヘッドを複層構造にし、外層部位の空孔率を内層部位より低くし(金属部分が密な状態)、内層部位はエミッタ物質を多く含浸させるために空孔率を高く(金属部分が疎な状態)した。また、アークスポットが集中する部分の空孔率は低くした。これらにより、高効率でしかも長寿命で、かつ、強度も十分な電極ヘッドを具備した冷陰極蛍光ランプ等の放電ランプを実現した。
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。図1は冷陰極蛍光ランプの一部切欠側面図、図2は図1に示した冷陰極蛍光ランプの端部の側断面拡大図である。
【0027】
放電ランプである冷陰極蛍光ランプの一例は、直管形でランプ電流が30mA以下の蛍光ランプ1で、軟質ガラスや硬質ガラスからなる管状のガラスバルブ2は外径が約4.8mm、肉厚が約0.5mm、全長が約400mmである。ガラスバルブ2の両端に形成されたそれぞれの封止部にはリード線3が気密に封装されている。ガラスバルブ2の内部のリード線3の先端には、リード線差込口4にリード線3が差し込まれた円柱カップ状の電極ヘッド5が固着されている。
【0028】
電極ヘッド5は電子放射性物質(エミッタ物質)を空孔(不図示)に含浸した多孔質焼結金属で形成され、形状的には一方向に開口部を有するカップ状の複層構造で、中央部側にはアークスポットが先端に集中するように、先端が尖った円錐状の中心部位6が、周辺側7dから凹状の底部7eに形成されている。
【0029】
また、中心部位6の外側は内層部位7が形成され、さらに内層部位7の外側には密接して外層部位8が設けられている。各部位6、7、8は相互に同心状に形成されている場合もあれば、非同心状に形成さている場合もある。ただしいずれの場合も、各部位6、7、8は相互に密接して一体化し、全体が円柱カップ状に形成されている。これらの形状によりホローカソードの機能が得られる。
【0030】
なお、先端形状は1本の円錐状に限らず、複数本が林立しているものでもよく、また、個々の形状も円錐状に限らず、角錐や円柱や角柱等の形状を用いることができる。ただし、いずれの場合でも、周辺側7dから凹状の底部7eに形成されている。
【0031】
また、外層部位8の空孔率は内層部位7より低くされて(金属が密な状態)おり、内層部位7はエミッタ物質を多く含浸させるために空孔率を外層部位8より高く(金属が疎な状態)形成されている。なお、図2で示した電極ヘッド5の場合は、中心部位6と内層部位7とが一体物で形成されている。
【0032】
電極ヘッド5に用いられている多孔質焼結金属としては、Ta(タンタル)からなる高融点金属と、Zr(ジルコニウム)からなる還元作用を有する金属が用いられ、電子放射性物質(エミッタ物質)としては、Ba(バリウム)からなるアルカリ土類金属が用いられている。
【0033】
なお、多孔質焼結金属の組成材料は、外にも、高融点金属群としてNb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)などが、また、還元作用を有する金属群としてMg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Si(ケイ素)、Zr(ジルコニウム)等を用いることができる。
【0034】
電子放射性物質(エミッタ物質)としては、外にも、アルカリ土類金属群のCa(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、Ra(ラジウム)等を用いることができる。
【0035】
また、ガラスバルブ2の内壁面にはたとえば青色、緑色、赤色に発光領域を有する蛍光体を混合した3波長形の蛍光体被膜が形成され、ガラスバルブ2の内部には、水銀Hgや希ガスである例えば、Xe(キセノン)約90容積%−He(ヘリウム)約10容積%の混合希ガスが約100Torr封入してある。
【0036】
このような構成の蛍光ランプ1を、通常の高周波点灯回路(不図示)に接続し通電すると、電極ヘッド5の先端表面に存在している電子放射性物質が電子放射をして両電極へッド5、5間に放電を起こす。そして、Xeなどの希ガスが発光し紫外線を発し、この紫外線をガラスバルブ2の内壁面の蛍光体被膜7が受け励起して所定の可視光をガラスバルブ2の外に放射する。
【0037】
また、ガラスバルブ2の材質は鉛ガラスやソーダライムガラスなどの軟質ガラスあるいはアルミノシリケートガラスなどの硬質ガラスであってもよく、その形状は直管形状のものに限らず、U字形状やW字形状などの屈曲したガラスバルブ2あるいは直管状のものを複数本接続して放電路を直列的に形成したガラスバルブ2などであってもよい。さらに、ランプに封入する希ガスはXe(キセノン)−He(ヘリウム)に限らずXe(キセノン)にAr(アルゴン)、Ne(ネオン)やKr(クリプトン)などを混合したガスであってもよく、これもランプ特性に合わせ、混合比や封入圧を適宜決めればよい。
【0038】
したがって、蛍光ランプ1は、上述のように電極ヘッド5が、電子放射性物質(エミッタ物質)を空孔に含浸した多孔質焼結金属の複層構造であるので、電極ヘッド5はBa等の酸化物からなるエミッタ物質を多量に含有している。それにより、エミッタ物質の消耗は電極ヘッド5の表面に存在しているものに限らず、電極ヘッド5の表面側に位置するものが無くなっても電極ヘッド5の内部から供給され、放電を長期に亘り持続できて長寿命化が可能になる。
【0039】
また、エミッタ物質を含有している電極ヘッド5は、エミッタ物質の消耗が蛍光ランプ1の点灯経過とともに電極ヘッド5の表面側から内部へと徐々に移行し、しかもエミッタ物質を多量に保持しているので陰極降下電圧を低く抑えることが出来る。それにより、ランプ電圧および消費電力の低下が図れると共に、発光効率および始動特性を向上できる。また、電極ヘッド5の陰極降下電圧の低減が持続されることとなり大電流領域の使用においても高効率、長寿命化した蛍光ランプ1が得られる。また、電極ヘッド5のスパッタリングが少なくなり長寿命化の一助となる。
【0040】
また、この蛍光ランプ1は、ガラスバルブ2の内部にXeを含む希ガスを封入したことにより、蛍光ランプ1の点灯中の電極ヘッド5の保温性が高められた結果、電極ヘッド55での熱損失が少なく、かつ、電極ヘッド5からの熱電子放出の効率を高めることができ、電極ヘッド5部材のスパッタリングの抑制も可能になる。
【0041】
これらの蛍光ランプ1は、例えば、図3に示すようにバックライト装置11の光源として組込みまれ使用される。この図3において、蛍光ランプ1、1、…を装着した反射鏡12に装着され、反射鏡12の開口部側には光拡散板13が設けられる。これらの構成のバックライト装置11は、パソコンやテレビなどの液晶表示装置のバックライト装置として用いられる。また、所定のディスプレイ装置が形成された表示板のバックライト装置としても使用される。蛍光ランプ1が高効率であるので、これら装置の高効率化がはかれるとともに小形化も可能である。
【0042】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されず、例えば、放電ランプは蛍光ランプに限らず、希ガス発光によるランプなど他の細管形(放電路が小断面)の低圧放電ランプに適用できる。また、その用途もバックライト装置用に限らず、照明用はもとより殺菌などの紫外線放射用のランプなどにも適用することができる。
【0043】
次に、本発明の放電ランプに用いる電極ヘッド5についての他の実施例について説明する。なお、何れの実施例においても、図2と同一機能箇所には同一番号を付して、その個々の説明を省略する。また、エミッタ物質と多孔質焼結金属の物質は上述の場合と同様なので、物質については個々の実施の形態での説明は省略する。
【0044】
まず、第1の実施例について説明する。
【0045】
図4は、第1の実施例における電極ヘッド5aの側断面図である。
【0046】
電極ヘッド5aは、エミッタ物質(エミッタ物質)を空孔に含浸した多孔質焼結金属の複層構造で、外層部位8aの空孔率を内層部位7aより低くし(金属が密な状態)、内層部位7aはエミッタ物質を多く含浸させるために空孔率を外層部位8aより高くして(金属が疎な状態)形成されている。また、アークスポットが集中する中心部位6aは、外層部位8aの一部の形状として一体に形成されている。したがって、中心部位6aの空孔率も低く形成されている。
【0047】
この場合、外層部位8aは空孔率20%以下の密な多孔質焼結金属を用い、この外層部位8aに覆われている内層部位7aは空孔率30%以上の疎な多孔質焼結金属を用いている。しかも、外層部位8aと一体化しているアークスポットが集中する中央部位6aの円錐も空孔率20%以下の金属が密な多孔質焼結金属で形成しているので、中央部位6aの円錐が空孔率30%以上の疎な多孔質焼結金属を用いた場合に比べて、スパッタに対して強くなり、電極ヘッド5の長寿命化が図れる。
【0048】
次に、第2の実施例について説明する。
【0049】
図5は、第2の実施例における電極ヘッド5bの側断面図である。
【0050】
この実施例では、上述の第1の実施の形態と異なり、外層部位8bと中心部位6bとでは、同一空孔率であるが分離して設けられている。
【0051】
すなわち、電極ヘッド5bは、エミッタ物質を空孔に含浸した多孔質焼結金属の複層構造で、外層部位8bの空孔率を内層部位7bより低くし(金属が密な状態)、内層部位7bはエミッタ物質を多く含浸させるために空孔率を外層部位8bより高くして(金属が疎な状態)形成されている。また、アークスポットが集中する中心部位6bは、外層部位8bと分離して形成されている。したがって、中心部位6bの空孔率も低く形成されている。
【0052】
つまり、外層部位8b以外は、アークスポットが集中する中央部位6bの円錐付近のみを空孔率20%以下の密な多孔質焼結金属で形成している。
【0053】
この構成による電極ヘッド5bは、内層部位7bに多量にエミッタ物質を含浸することが出来るので、中央部位6bの円錐部でのエミッタ物質が消耗された際に、中央部位6bの円錐部に対して内層部位7bから長時間に亘り均等にエミッタ物質を供給することができる。それにより、長時間に亘って高効率に電極ヘッド5bが安定した機能を果たすことができて、電極ヘッド5bの長寿命化が図れる。
【0054】
次に、第3の実施例について説明する。
【0055】
図6は、第3の実施例における電極ヘッド5cの側断面図である。
【0056】
この実施例では、内層部位7cの全体を外層部位8cで覆う構造にしている。この場合、内層部位7cは空孔率30%以上の金属が疎な多孔質焼結金属を用い、外層部位8cは空孔率20%以下の金属が密な多孔質焼結金属で形成している。この構造により、内層部位7cと外層部位8cの各空孔に含浸されているエミッタ物質の余分な消費を防止しることができ、電極ヘッド5cの長寿命化が図れる。
【0057】
次に、上述の各実施の形態における電極ヘッドとリード線との接合方法の実施例について、例示して説明する。
【0058】
電極ヘッド5dとリード線3dとの接合方法の第1の実施例は、図7(a)に模式図を示すように、例えば、リード線3dは、外径がφ0.8mmの高融点金属(モリブテン、タングステン等)の丸棒で先端部におねじ14が形成されている。一方、図7(b)に示すように、電極ヘッド5dは多孔質焼結金属で形成され、中心部にリード線差込口4aが形成され、このリード線差込口4dはめねじ15が形成されている。
【0059】
電極ヘッド5dとリード線3dとの接合は、電極ヘッド5dのおねじ14をリード線差込口4aに形成されためねじ15に螺合して、螺着による結合を行う。螺着による電極ヘッド5dとリード線3dの接合であるので、リード線3dと電極ヘッド5dとは強固に固定されて一体化する。これにより、機械的にも電気的にも強固で良好な接続が得られる。
【0060】
電極ヘッド5eとリード線3eとの接合方法の第2の実施例は、図8(a)に模式図を示すように、例えば、リード線3eは、外径がφ0.8mmの高融点金属(モリブテン、タングステン等)の丸棒で先端部にタッピンねじ16が形成されている。一方、電極ヘッド5eは多孔質焼結金属で形成され、中心部にリード線差込口4eが形成されている。
【0061】
図8(b)に示すように、図示しない回転工具により、リード線3eと電極ヘッド5eのリード線差込口4eとを同心の状態で、リード線3eを回転させながら矢印A方向に進めてタッピングにより、リード線3eを電極ヘッド5eのリード線差込口4eに螺着させる。
【0062】
図8(c)に示すように、図示しない回転工具により、さらに前進させて、リード線3eをリード線差込口4eの所定位置まで圧入して、リード線3eと電極ヘッド5eとを螺着固定する。
【0063】
リード線3eと電極ヘッド5eとは螺着による固定であるので、リード線3eと電極ヘッド5eとは強固に固定されて一体化する。これにより、機械的にも電気的にも強固で良好な接続が得られる。
【0064】
電極ヘッド5fとリード線3fとの接合方法の第3の実施例は、図9に模式図を示すように、例えば、リード線3fは、外径がφ0.8mmの高融点金属(モリブテン、タングステン等)の丸棒で先端部に径大の頭部17が形成されたリベット状である。一方、電極ヘッド5fは多孔質焼結金属で形成され、中心部にリード線差込口4fが形成されている。
【0065】
リード線3fの頭部17をヘッド5fのリード線差込口4fの内側に係合させ、その状態で、リード線3fを差込口4fの外側をと係合する位置を、かしめ工具によりかしることにより、突起状の異形部18を形成する。それにより、リード線3fは、リード線3fの頭部17と異形部18とが電極ヘッドのリード線差込口4fの両端に固定され、リード線3fを電極ヘッド5fに固定する。
【0066】
リード線3fと電極ヘッド5fとはかしめによる固定であるので、リード線3fと電極ヘッド5fとは強固に固定されて一体化する。これにより、機械的にも電気的にも強固で良好な接続が得られる。
【0067】
電極ヘッド5gとリード線3gとの接合方法の第4の実施例は、図10(a)〜(c)に模式図を示すように、リード線3を電極ヘッド5gのリード線差込口4gに圧入して固定している。
【0068】
すなわち、図10(a)に示すように、例えば、リード線3gは、外径がφ0.8mmの高融点金属(モリブテン、タングステン等)の丸棒である。一方、電極ヘッド5gは多孔質焼結金属で形成され、中心部に内径がφ0.78mmのリード線差込口4gが形成されている。
【0069】
図10(b)に示すように、図示しない圧入工具により、リード線3gと電極ヘッド5gのリード線差込口4とを同心の状態で矢印A方向に押圧して、リード線3gを電極ヘッド5gのリード線差込口4gに圧入する。
【0070】
図10(c)に示すように、図示しない圧入工具により、さらに押圧して、リード線3gをリード線差込口4gの所定位置まで圧入して、リード線3gと電極ヘッド5gとを固定する。
【0071】
圧入により、リード線3gと電極ヘッド5gとは強固に固定されて一体化する。これにより、機械的にも電気的にも強固で良好な接続が得られる。
【0072】
電極ヘッド5hとリード線3hとの接合方法の第5の実施例は、図11(a)〜(d)に模式図を示すように、リード線3hを電極ヘッド5hのリード線差込口4hに焼結前に挿入して、その後の熱処理により固定する方法である。
【0073】
すなわち、図11(a)に示すように、例えば、リード線3hは、外径がφ0.8mmの高融点金属(モリブテン、タングステン等)の丸棒である。一方、電極ヘッド5hは中心部に内径がφ0.83mmのリード線差込口4hが形成されている。ただし、この電極ヘッド5hは、加熱成形された状態で、まだ、焼結されていない。したがって、金属同士は完全には接続されていない状態である。
【0074】
図11(b)に示すように、リード線3hを電極ヘッド5hのリード線差込口4hの所定位置まで挿入する。
【0075】
次に、図11(c)に示すように、リード線3hを電極ヘッド5hのリード線差込口4hの所定位置まで挿入した状態で、熱処理炉19の中で900℃程度に加熱して焼結する。その際、融点の低い金属の表面は溶解して周辺の金属を包み、電極ヘッド5hは全体の強度が増強される。
【0076】
図11(d)に示すように、熱処理炉19による加熱・焼結の際に、電極ヘッド5hは膨張する。この膨張により、リード線差込口4hは収縮して内径が縮小する。その結果、リード線差込口4hに挿入されている箇所のリード線3fは緊縮され強固に固定される。その結果、リード線3hと電極ヘッド5hが強固に一体化する。それにより、リード線3fと電極ヘッド5hとは機械的にも電気的にも強固で良好な接続が得られる。
【0077】
次に、上述の電極ヘッドとリード線との接合方法により形成された本発明の放電ランプに用いる電極ヘッドについての実施例について、接合方法を図8に示した、リード線3eの先端部にタッピンねじ16が形成されている場合について図12を参照して説明する。なお、図8および図2と同一機能箇所には同一番号をそれぞれ付して、その個々の説明を省略する。また、エミッタ物質と多孔質焼結金属の物質は上述の電極ヘッドの場合と同様なので、それぞれの物質についての説明は省略する。
【0078】
図12に示すように、電極ヘッド5iは、電子放射性物質(エミッタ物質)を空孔(不図示)に含浸した多孔質焼結金属の複層構造で、外層部位8iとこの外層部位8iに覆われている内層部位7iが形成されている。また、内層部位7iの内側の中央側には密接してリード線3iの先端部が延在して露出し中心部位6iが形成されている。各部位6i、7i、8iは相互に密接して一体化し、全体が円柱カップ状に形成されている。これらの形状によりホローカソードの機能が得られる。
【0079】
なお、外層部位8iの空孔率は内層部位7iより低くされて(金属が密な状態)おり、内層部位7iはエミッタ物質を多く含浸させるために空孔率を外層部位8iより高く(金属が疎な状態)形成されている。
【0080】
この場合、外層部位8iは空孔率20%以下の密な多孔質焼結金属を用い、この外層部位8iに覆われている内層部位7iは空孔率30%以上の疎な多孔質焼結金属を用いている。しかも、アークスポットが集中する中央部位6iは、リード線3iの先端部を用いているので、スパッタに対して強くなり、電極ヘッド5iの長寿命化が図れる。
【0081】
なお、上述の場合は、電極ヘッドとリード線との接合方法について、図8(a)〜(c)で説明したタッピンねじによる接合方法を用いたが、図7、図9および図10で用いた各接合方法によるものを用いても同様な作用が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は冷陰極蛍光ランプの一部切欠側面図。
【図2】冷陰極蛍光ランプの端部の側断面拡大図。
【図3】バックライト装置の説明図。
【図4】電極ヘッドの変形例の側断面図。
【図5】電極ヘッドの変形例の側断面図。
【図6】電極ヘッドの変形例の側断面図。
【図7】(a)および(b)は、電極ヘッドとリード線との接合方法の説明図。
【図8】(a)〜(c)は、電極ヘッドとリード線との接合方法の説明図。
【図9】電極ヘッドとリード線との接合方法の説明図。
【図10】(a)〜(c)は、電極ヘッドとリード線との接合方法の説明図。
【図11】(a)〜(d)は、電極ヘッドとリード線との接合方法の説明図。
【図12】電極ヘッドの変形例の側断面図。
【図13】(a)は従来の冷陰極蛍光ランプの全体の側断面図、(b)はその封装領域の拡大側断面図。
【図14】従来の電極ヘッドの側面断面拡大図。
【符号の説明】
【0083】
1…蛍光ランプ、2…ガラスバルブ、3、3a〜3i…リード線、4、4a〜4i…リード線差込口、5、5a〜5i…電極ヘッド、6、6a〜6c、6i…中心部位、7、7a〜7c、7i…内層部位、8、8a〜8c、8i…外層部位、9…蛍光体被膜、14…おねじ、15…めねじ、17…頭部、18…異形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面に蛍光体層が設けられ、かつ希ガスおよび水銀が封入されたガラスバルブと、このガラスバルブの両端部にそれぞれ封装されたリード線に固定されて該ガラスバルブの内部に配置された一対の開口部を有するカップ状の電極ヘッドを具えた放電ランプであって、
前記電極ヘッドは、外装部位と、この外層部位の内側に密接して配置され前記開口部以外が前記外層部位に覆われた内層部位と、この内層部位の内側に形成または密接配置されている中心部位とを具えた複層構造で、前記各部位は空孔にエミッタ物質が含浸されている多孔質焼結金属によって形成され、かつ、前記内層部位は前記外層部位よりも空孔率が高く形成されていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記電極ヘッドを構成している前記内層部位の内側に形成されている前記中心部位は、該内層部位の周辺側から凹状の底部に形成されていることを特徴とする請求項1記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記電極ヘッドを形成している前記内層部位の空孔率は30%以上であり、前記外層部位の空孔率は20%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記電極ヘッドを形成している前記中心部位の空孔率は、前記内層部位の空孔率と等しいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記電極ヘッドを形成している前記中心部位の空孔率は、前記外層部位の空孔率と等しいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記リード線は、該リード線の先端部に形成されたおねじが前記電極ヘッドのリード線差込口に形成されためねじと螺着して該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項7】
前記リード線は、該リード線の先端部に形成されたタッピンねじが前記電極ヘッドのリード線差込口に進入して形成されためねじと螺着して該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項8】
前記リード線は、該リード線の頭部と異形部とによって前記電極ヘッドのリード線差込口に固定されることにより該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項9】
前記リード線は、前記電極ヘッドのリード線差込口に圧入されて該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項10】
前記リード線は、前記電極ヘッドが加熱成形された状態でのリード線差込口に挿入され、焼結の際の熱処理により該電極ヘッドと接続・固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の放電ランプ。
【請求項11】
内壁面に蛍光体層が設けられ、かつ希ガスおよび水銀が封入されたガラスバルブと、このガラスバルブの両端部にそれぞれ封装されたリード線に固定されて該ガラスバルブの内部に配置された一対のカップ状の電極ヘッドを具えた放電ランプであって、
前記電極ヘッドは、外層部位に覆われている内層部位が該外層部位の内側に配置された
複層構造で、空孔にエミッタ物質が含浸されている多孔質焼結金属によって形成され、かつ、前記内層部位は前記外層部位よりも空孔率が高く形成されていると共に、該内層部位の中央側には前記リード線によって密接して中心部位が形成されていることを特徴とする放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−12586(P2006−12586A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187657(P2004−187657)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】