説明

放電ランプ

【課題】 耐熱性および組み付け精度が高い放電ランプを提供する。
【解決手段】
発光部11を備える長尺のバーナーBNと、バーナーBNの長手方向に沿うように設けられたサポートワイヤ25(リード線)と、サポートワイヤ25を覆うように設けられたスリーブ3と、発光部11が前端側に位置するようにバーナーBNを保持可能な円盤状のフランジFLと、を具備する放電ランプであって、フランジFLは、前端側に金属板7を備え、金属板7にはスリーブ保持部72が一体形成されてなり、スリーブ保持部72は穴部721を備え、穴部721にスリーブ3が挿入保持されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の前照灯などとして使用される放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の前照灯に使用される放電ランプは、特許文献1や特許文献2で知られているように、バーナーと樹脂製のソケットとで構成されている。ソケットは前端側にフランジを備えている。そのバーナーは点灯中に発光する部分となる発光部を備えた二重管構造となっており、その発光部がフランジの前端側に位置するように、ソケットに保持されている。
【0003】
なお、最近では、特許文献3〜特許文献5のように、フランジが金属で構成された放電ランプも開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−297226号公報
【特許文献2】特開2007−323986号公報
【特許文献3】国際公開第2009/130654号
【特許文献4】国際公開第2008/110969号
【特許文献5】国際公開第2009/130640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、最近ではランプをコンパクトにするために、発光部とソケットとの距離を従来よりも近づけるニーズがある。しかし、このような設計を行うと、点灯中に熱くなる発光部によってフランジの温度が従来よりも高くなる。特許文献1や特許文献2のように、フランジやスリーブを保持する部分が樹脂製であると、その点灯時の熱によって溶融したり、熱変形してしまう。一方、特許文献3〜特許文献5のような放電ランプは、耐熱性は高いが、スリーブなどの組み付け精度が悪いことがわかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性および組み付け精度が高い放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の放電ランプは、発光部を備える長尺のバーナーと、前記バーナーの長手方向に沿うように設けられたリード線と、前記リード線を覆うように設けられたスリーブと、前記発光部が前端側に位置するように前記バーナーを保持可能な円盤状のフランジと、を具備する放電ランプであって、前記フランジは、前端側に金属板を備え、前記金属板にはスリーブ保持部が一体形成されてなり、前記スリーブ保持部は穴部を備え、前記穴部には前記スリーブが挿入保持されてなる
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放電ランプについて説明するための図である。
【図2】図1の放電ランプの断面について説明するための図である。
【図3】図1の放電ランプを前端側から見た状態について説明するための図である。
【図4】フランジについて説明するための図である。
【図5】金属部について説明するための図である。
【図6】ベースについて説明するための図である。
【図7】突片部の幅Wとグレア、ディフレクションについて説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の放電ランプについて説明するための図である。
【図9】放電ランプの他の例について説明するための図である。
【図10】フランジの他の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の放電ランプについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の放電ランプについて説明するための図、図2は、図1の放電ランプの断面について説明するための図、図3は、図1の放電ランプを前端側から見た状態について説明するための図である。なお、本発明においては、便宜上、自動車等に取り付けられた場合に前方となる図2に示した矢印Fの方向を前端、矢印Bの方向を後端と称して説明する。
【0010】
図1の放電ランプは、自動車の前照灯装置に用いられるHIDランプであり、長尺なバーナーBNとフランジFLとを備えている。
【0011】
バーナーBNは、二重管構造であり、その内部には内管1が配置されている。内管1は細長い形状であり、その中央付近には点灯中に発光する部分となる発光部11が形成されている。発光部11は略楕円状であり、その両端には板状のシール部12、そのさらに両端には境界部13を介して円筒部14が連続形成されている。この内管1は前述のとおり、発光する部分を含んでいるとともに、高温になるため、石英ガラスなどの透光性と耐熱性を具備した材料で構成されるのが望ましい。
【0012】
発光部11の内部には、中央が略円柱状、両端がテーパ状の放電空間111が形成されている。この放電空間111の容積は、自動車前照灯用の場合には、10mm〜30mm、さらには15mm〜25mmであるのが好適である。放電空間111には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、金属ハロゲン化物と希ガスを含み、水銀は含んでいない、いわゆる水銀フリーの構成である。
【0013】
金属ハロゲン化物は、ナトリウム、スカンジウム、亜鉛、インジウムなどのハロゲン化物で構成されている。それらの金属ハロゲン化物に結合されるハロゲンとしてはヨウ素が最適であるが、臭素や塩素などを組み合わせてもよい。また、金属ハロゲン化物の組み合わせもこれに限らず、スズやセシウムのハロゲン化物などを追加してもよい。
【0014】
希ガスは、キセノンで構成されている。希ガスは、目的によってその封入圧力を調整することができる。例えば、全光束等の特性を高めるためには、封入圧力を常温(25℃)において10atm以上、特に13atm以上にするのが望ましい。ただし、上限は製造上、現状で20atm程度である。なお、希ガスとしては、キセノンの他に、ネオン、アルゴン、クリプトンなどを使用したり、それらを組み合わせて使用したりすることもできる。
【0015】
シール部12には、電極マウント2が封着されている。電極マウント2は、金属箔21、電極22、コイル23およびリード線24により構成されている。
【0016】
金属箔21は、例えば、モリブデンからなる薄い金属板であり、その板状の面がシール部12の板状の面と平行するように配置されている。
【0017】
電極22は、例えば、タングステンに酸化トリウムをドープした、いわゆるトリエーテッドタングステンからなる電極である。その一端は金属箔21の発光部11側端部に重ね合わせ接続されており、他端は放電空間111内で所定の電極間距離を保って、互いの先端同士が対向するように配置されている。その電極間距離としては、自動車前照灯用の場合には、外観上における距離で3.5mm〜4.5mmであるのが望ましい。
【0018】
コイル23は、例えば、ドープタングステンからなる金属線であって、シール部12に封着される電極22の軸部の軸周りに螺旋状に巻装されている。
【0019】
リード線24は、例えば、モリブデンからなる金属線である。その一端は、発光部11に対して反対側の金属箔21に重ね合わせ接続されており、他端は管軸に沿って内管1の外部に延出されている。そのうち、ランプの前端側に延出したリード線24には、サポートワイヤ25の一端がレーザー溶接により接続されている。サポートワイヤ25は例えば、ニッケル線からなるL字状のリード線であり、長辺はバーナーBNと沿うように配置されている。そのサポートワイヤ25の長辺には、その外面を覆うように例えば、セラミックからなるスリーブ3が装着されている。
【0020】
上記で構成された内管1の外側には、筒状の外管4が内管1と同心状に設けられている。これら内外管の接続は、内管1の円筒部14付近に外管4を溶着し、両端部に溶着部41を形成することにより行なわれている。このため、内管1と外管4との間には気密に保たれた空間が形成され、その空間には、ネオン、アルゴン、キセノン、窒素から選択された一種のガスまたは混合ガスが0.3atm以下の圧力で封入されている。なお、外管4としては、チタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加した石英ガラスなど、内管1に熱膨張係数が近く、かつ紫外線遮断性を有する材料を使用するのが望ましい。
【0021】
これらで構成されたバーナーBNの後端側には、金属バンド5が設けられている。この金属バンド5は、例えばステンレスからなる金属板を外管4の外周面に沿うように設けたものであり、その両端同士をレーザーなどで溶接することで、バーナーBNに固定されている。
【0022】
金属バンド5付近には、フランジFLが配置されている。フランジFLは円盤状であって、前端側に金属板を備えている。具体的には、直径は約31mm、厚みは約2.5mmであり、図4に示すように、樹脂部6と金属部7とで構成されている。
【0023】
樹脂部6は、PPS、PEIなどの樹脂により成形されてなるものであり、フランジFLの周縁に位置している。このフランジFLには、ポッチ部61、切り欠き部62および凹部63が形成されている。ポッチ部61は、樹脂部6の前端側に設けられた突起であり、120度間隔で3つ形成されている。このポッチ部61は、寸法を測定する際の基点となる部分となる。例えば、ポッチ部61の先端から発光部11内の電極間中心までの距離D1は、放電ランプのLCL(Light Center Length)として規定されている。切り欠き部62は、樹脂部6の端部に形成された切り欠きであり、3つ形成されている。凹部63は、樹脂部6の前後端側に設けられた凹みであり、60度間隔で6つ形成されている。
【0024】
金属部7は、ステンレスなどからなる金属板であり、バーナーBNの長手方向に直交するように、樹脂部6に埋め込み形成されている。樹脂部6に埋め込まれる前の金属部7は、図5に示すような形状であり、突片部71、スリーブ保持部72、穴部73および切り欠き部74が形成されている。突片部71は、金属部7の中央方向に突出形成された突片であり、90度間隔で4枚が一体形成されている。この突片部71は、図1や図2に示すように、放電ランプの状態では後端方向に斜めに折り曲げられ、その先端部において金属バンド5を四方から保持している。スリーブ保持部72は、金属部7の中央方向に突出するように一体形成された金属板である。その中央部には円形の穴部721が形成されている。穴部73は、凹部63付近に形成された穴であり、60度間隔で6つ形成されている。切り欠き部74は、金属部7の周縁に形成された切り欠きであり、樹脂部6の切り欠き部62に対応するように3つ形成されている。
【0025】
フランジFLの後端側には、ベース8が配置されている。ベース8は、例えばステンレス、鉄、ニッケル、アルミニウムなどからなるものであり、図6に示すように、前端側にケース部81とリング82を備えている。ケース部81は、中空の筐体であり、その内部空間にはイグナイタやバラストなどの点灯回路装置が配置される(図示なし)。具体的には、放電ランプの始動および放電ランプの安定点灯に必要なトランスやコンデンサなどの回路素子や金属端子を内部に備えた樹脂ケースが配置される。なお、この点灯回路装置には、フランジFLよりも後端方向に延びるリード線24およびサポートワイヤ25の一端が電気的に接続され、バーナーBNには安定時は約25W、始動時は安定時電力に対して2倍以上である約55Wの電力が投入される。
【0026】
リング82は、ケース部81の前端側に形成された円柱状の筒であり、その前端側には60度間隔で6つの突起部822が形成されている。この突起部822は、リング82とフランジFLの接続に用いられる。具体的には、突起部822を金属部7の穴部73に挿入したのちに、その突出部分を凹部63に収納するように折り曲げることで、リング82とフランジFLとを固定することが可能となる。なお、折り曲げられた突起部822と金属部7の重なり部分にレーザー溶接等をして固定を強化することもできる。
【0027】
ここで、スリーブ3は金属部7に一体形成されたスリーブ保持部72の穴部721に挿入保持されている。このスリーブ保持部72はスリーブ3の長手方向の略中間地点に位置することになるため、バーナーBNとスリーブ3を平行に保ちやすくなり、組み付け精度が改善される。特に、バーナーBNの発光部11の中心とスリーブ3との距離D2のばらつきが抑制される。距離D2がランプによってばらつくと、特開2002−163911号公報にあるように、絶縁性等に影響が生じると考えられているため、その効果は有意義である。なお、点灯時にバーナーBNからの熱が到達するフランジFLの前端側には金属板が使用されているため、LCLが従来の長さであるD1=27.1mmから18.0mmに短くなり、フランジFLの温度が高くなったとしても、溶融変形することはない。
【0028】
また、4枚の突片部71も金属部7に一体形成している。距離D2は、バーナーBNとスリーブ3の位置で決まるため、4枚の突片部71も金属部7に一体形成し、バーナーBNを突片部71に、スリーブ3をスリーブ保持部72の穴部721に保持させるようにすると、距離D2のばらつきをさらに抑制することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、スリーブ保持部72の穴部721の直径をR1(mm)、スリーブ3の直径をR2(mm)としたとき、R2/R1を、0.8≦R2/R1<1に設定している。これは、スリーブ3が前後端方向に動作することを防止するためである。スリーブ3が前後端方向に動くと、スリーブ3が破損することがあるが、この関係を満たすことで、その動きを抑制することができる。なお、具体的には、R1=2.3mm、R2=2.0mmとしている。
【0030】
また、突片部71の幅をWとしたとき、2.0mm≦W≦3.0mmとしている。これは、ディフレクション、すなわち振動などが加わってもバーナーBNが不所望に変位することを抑制しつつ、グレアを抑制するためである。前端側に金属部7を備えるフランジFLでは、LCLであるD1が20.0mm以下になると、発光部11から出た光を反射してグレアが発生しうるが、この関係を満たすことで、図7に示すように、ディフレクションおよびグレアを抑制することができる。なお、突片部71の幅Wは、従来が4.0mm程度であるのに対し、本実施形態では3.0mmである。
【0031】
この実施形態では、前端側に金属部6を備えたフランジFLにスリーブ保持部72を一体形成し、スリーブ保持部72に設けた穴部621にスリーブ3を挿入保持させたことで、耐熱性およびスリーブ3の組み付け精度が高い放電ランプを実現することができる。また、金属部7に4枚の突片部71をさらに一体形成したため、バーナーBNの発光部11の中心とスリーブ3との距離D2のばらつきを抑止することができる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態の放電ランプについて説明するための図である。この第2の実施の形態の各部について、第1の実施の形態の放電ランプの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0033】
この実施形態では、サポート保持部72を屈曲させている。具体的には、サポート保持部72をその先端部を根元から後端側に、角度α=20度だけ屈曲させている。このように、サポート保持部72を屈曲させることで、スリーブ3に対して抵抗となるため、スリーブ3の前後端方向の動きを抑制することができる。なお、角度αは、スリーブ3の動きの抑制と製造上の観点から15度〜35度であるのが望ましい。また、屈曲させた状態で、穴部721を前後端から見たときに形状が略真円となるよう、穴部721は楕円状に形成するのが望ましい。
【0034】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0035】
例えば、放電ランプは、図9のように、点灯回路を具備しないタイプのものでもよい。
【0036】
サポートワイヤ25は、前端側のリード線24をコの字に屈曲させることで、省略してもよい。
【0037】
フランジFLは、図10のように、円盤状の樹脂部6に、カバー状の金属部7を覆うように設けたものや、特許文献5にあるように金属部のみで構成されたものであってもよい。つまり、耐熱性を向上させるために、前端側に金属板を有するフランジFLであればよい。
【0038】
突片部71は、3枚や6枚であってもよく、すなわちバーナーBNを保持可能な枚数である2枚以上であればよい。また、突片部71は、図9のように、フランジFLの前端側に突出するようにしてもよい。
【0039】
スリーブ保持部72の穴部721は、切り欠き状の穴であってもよい。また、その形状は扁平形や多角形などであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
BN バーナー
1 内管
11 発光部
25 サポートワイヤ
3 スリーブ
FL フランジ
6 樹脂部
7 金属部
72 スリーブ保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を備える長尺のバーナーと、前記バーナーの長手方向に沿うように設けられたリード線と、前記リード線を覆うように設けられたスリーブと、前記発光部が前端側に位置するように前記バーナーを保持可能な円盤状のフランジと、を具備する放電ランプであって、
前記フランジは、前端側に金属板を備え、前記金属板にはスリーブ保持部が一体形成されてなり、前記スリーブ保持部は穴部を備え、前記穴部には前記スリーブが挿入保持されてなることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記金属板には少なくとも2枚以上の金属片が一体形成されてなり、前記バーナーは前記金属片に保持されてなることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−252778(P2012−252778A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122068(P2011−122068)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】