説明

放電加工用電極線およびその製造方法

【課題】放電加工のとき、電極線の欠片および微塵の発生が少なく、向上された面粗度と加工速度を有する放電加工用電極線とその製造方法を提供する。
【解決手段】放電加工用電極線は、銅を含む第1金属からなる芯線と、前記芯線の外面にメッキされる第2金属が前記芯線との相互拡散によって前記芯線と第2金属の境界部に形成される第1合金層と、前記第1金属が前記第2金属の方向に拡散されて前記第1合金層の外郭に形成される第2合金層を含み、特に、前記芯線、第1合金層、第2合金層を有する放電加工用電極線の表面に第2合金層のクラックを通じて下の芯線材が溶岩湧出形状に迫り上がって多数の細片粒を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電加工用電極線およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、電極線の放電加工の時、微塵の発生が少なく、加工速度と加工物の面粗度が向上する放電加工用電極線およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放電加工用電極線を用いる放電加工方法は、図1のように加工物1に予め形成しておいたスタート穴7に電極線2を挿通させ、該電極線2を挿通方向に引っ張って移動させながら、電極線2とスタート穴7の内壁面との間に高周波電圧を印加することによって、その間にアークを発生させ、加工物1を溶融して加工液および電極線、加工物などの瞬間的な気化爆発力によって溶融物を除去することにより、所定の形状に加工物を加工する方法である。
【0003】
前記放電加工のために放電加工機には電源供給装置、電極線搬送装置、加工物の搬送装置そして、加工液循環装置が設置される。
加工物搬送装置は、図面の矢印方向即ち、電極線2に対して直交する方向に移動し、電極線2は供給リール3から連続的に送出され、加工物の両端のガイドローラ5、5′を経て巻取リール4に巻き取られる。
【0004】
この時、加工物1と電極線2との間に電源供給装置6によって高周波電圧が印加されて切削加工が行なわれ、切削加工のとき、発生する熱を除去するために脱イオン純水が加工領域に加工液として供給される。放電加工の効率、特に、加工速度は加工液の供給流速、加工電流密度、そして放電波形および周波数などと密接な関係があり、斯かる技術の構成要素等の調節によって改善が可能であるものと考えられる。
【0005】
放電加工用電極線としては従来から純銅が使用されているが、純銅は導電性が良いだけではなく延伸率が高く細線加工が容易であるため純銅が使用されている。しかし純銅線は放電加工するとき、引張強度が低いのでよく断線するという短所がある。また、引張力をあまり大きくすることができないため電極線の振動が抑制できなくなり、加工の精密度が低下するという短所がある。
【0006】
また、加工速度が遅くなるなど様々な問題がある。従って、特殊加工用としてモリブデン線、タングステン線などの精密加工用の高強度線が使用されたり、また一般加工用として65/35重量比の黄銅線を代表とする黄銅電極線が幅広く使用されている。
【0007】
黄銅電極線は、純銅と比べて約2倍以上の引張強度を有し、また合金成分である亜鉛の働きによって放電安定性、気化爆発力などが向上する。従って、純銅電極線より加工速度を高めることができ、加工の精密度が向上するという長所を有する。
【0008】
また、放電加工の利用分野が拡大することによって、一層、引張強度および加工速度の向上の要求が高まっており、黄銅にAl、Siなどの微量の元素を添加して、引張強度と加工速度を向上させた黄銅電極線が開発されている。
黄銅合金の亜鉛含量が高いほど加工速度は向上すると思われるが、亜鉛含量が40%を超えると脆弱なβ相が形成されるので、細線にするときに引抜きが容易ではないという問題点がある。
【0009】
このような問題点を解決するために、本発明の発明者は、韓国特許登録10−518727において、電極線が銅を含む第1金属からなる芯線と、前記芯線の縁に第1金属と第2金属との相互拡散反応によって第2金属の成分が第1金属の方向に拡散されて芯線の外郭から芯線の中心方向に形成される合金層と、前記芯線上に第1金属と第2金属との相互拡散反応によって第1金属の成分が第2金属の方向に拡散されて形成される合金メッキ層と、前記合金メッキ層上に形成され、前記芯線である第1金属より低い気化温度を有する第2金属からなるメッキ層を含み;前記芯線上に形成される合金メッキ層は前記第1金属と第2金属の相互拡散反応によって形成され、前記複数層の中で一番高い硬度と低い延伸率を有し;前記合金メッキ層およびメッキ層は電極線の長手方向に対して概ね直角をなすクラックを含む構造を提案した。
【0010】
また、電極線が、銅を含む第1金属からなる芯線と、前記芯線の縁に第1金属と第2金属との相互拡散反応によって第2金属の成分が第1金属の方向に拡散されて芯線の外郭から芯線の中心方向に形成される合金層と、前記芯線上に第1金属と第2金属との相互拡散反応によって第1金属の成分が第2金属の方向に拡散されて形成される合金メッキ層を含み;前記芯線上に形成される合金メッキ層は第1金属と、第1金属より低い気化温度を有する第2金属の相互拡散反応によって形成され、芯線より高い硬度と低い延伸率を有する合金メッキ層をなし、前記合金メッキ層は電極線の長手方向に対して直角をなすクラックを含む構造を提案し、前記第1金属は銅、黄銅または銅合金、前記第2金属は亜鉛、アルミニウム、錫またはその合金を利用する。
【0011】
また、本発明の発明者は、韓国特許登録10−518731において、放電加工機に使用される電極線の製造方法に於いて、銅を含む第1金属からなる第1直径の線材を芯線として提供する段階と;前記第1金属の芯線を第1金属より低い気化温度を有する第2金属が溶融されている溶融メッキ槽に通して、芯線の外郭に第1金属と第2金属との相互拡散反応によって前記第1金属および第2金属より硬度が高く、延伸率が低い合金層を形成するとともに、その上に第2金属からなるメッキ層を形成するための溶融メッキ段階と;前記合金層とメッキ層が形成された前記線材を第2直径に引抜きながら、前記合金層の高い硬度と低い延伸率によって前記合金層およびメッキ層にクラックを形成する段階と;前記クラックが形成された細線を熱処理して機械的な性質を安定化させる段階の工程を経る技術を提案した。
【0012】
前記芯線に合金層とメッキ層を形成するために芯線を400〜500℃の溶融メッキ槽に1〜10秒間通し、前記第1金属は銅、黄銅または銅合金、前記第2金属は亜鉛、アルミニウム、錫またはその合金を利用する。
【0013】
また、本発明の発明者は、韓国特許登録10−518733において、放電加工機に使用される電極線の製造方法に於いて、銅を含む第1金属からなる第1直径の線材を芯線として提供する段階と;前記第1金属の芯線を第1金属より低い気化温度を有する第2金属が溶融されているメッキ槽を通して芯線の外郭に第1金属と第2金属との相互拡散反応によって前記第1金属および第2金属より硬度が高く延伸率が低い合金メッキ層を形成するための溶融メッキ段階と;合金メッキ層が形成された前記線材を第2直径に引抜きしながら合金メッキ層の高い硬度と低い延伸率によって合金メッキ層にクラックを形成する段階と;前記クラックが形成された細線を熱処理して機械的な性質を安定化させる段階の工程を経る技術を提案した。
【0014】
前記従来の技術では、亜鉛層の溶融および加えられる熱によって銅を含む芯線金属と相互拡散反応により銅亜鉛の細片粒から構成された合金層を有する電極線を形成することによって、加工速度が改善されるという長所はあるが、黄銅の芯線が510N以上の延伸工程で鋼線化されるので、よく割れて放電加工のとき、微塵及び細片屑が多く発生するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】韓国特許登録10−518727
【特許文献2】韓国特許登録10−518731
【特許文献3】韓国特許登録10−518733
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は斯かる問題点を解決するために、溶融メッキの工程で延伸率が高く、引張強度が低い芯線が形成されるように熱処理温度を調整する。
このように形成された引張強度が低い芯線、即ち、相対的に軟らかい黄銅芯線が、延伸工程で発生する圧力によって、合金層のクラックを通じて溶岩湧出形状に亜鉛銅合金を突き抜いて表面の方へ迫り上がって亜鉛銅合金の細片粒を囲んだり覆うように形成することによって、放電加工のとき、加工速度は維持しながら細塵または細片屑の発生量が減る放電加工用電極線を提供することを目的にする。
【0017】
また、本発明は延伸および引抜き工程の前段階で、亜鉛がコーティングされた相対的に軟らかい黄銅芯線を、上、下、左、右の何れか一方または複数の方向から曲げたりツイストさせて、放電加工用電極線を構成する線材の表面に、該線材の長手方向に対して直角方向に予めクラックまたは亀裂を形成することによって、延伸および引抜き工程で、該クラックと亀裂を通じて相対的に軟らかい芯線材質が電極線の表面の方に迫り上がるようにして、幅より長さが少なくとも2倍以上の長さの細片粒が電極線の表面に形成されるようにする。
本発明の他の目的は、このように電極線の表面に線材の長手方向に対して直角方向に、幅より長さが少なくとも2倍以上の長さの細片粒を形成することによって、放電加工のとき加工物の面粗度を向上させ、電極線の微塵発生を抑制するとともに速い加工速度を維持することができる放電加工用電極線を提供することである。
【0018】
また、本発明の他の目的は、放電加工の精密度を改善し、環境にやさしい電極線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的を達成するために本発明の放電加工用電極線は、銅を含む第1金属からなる芯線と、前記芯線の外面にメッキされる第2金属が前記芯線との相互拡散によって前記芯線と第2金属との境界部に形成される第1合金層と、前記第1金属が前記第2金属の方向に相互拡散されて前記第1合金層の外郭に形成される第2合金層を含み、少なくとも前記芯線、第1合金層、第2合金層を含む放電加工用電極線の表面に前記第2合金層に形成されるクラックを通じて前記芯線材が迫り上がって多数の細片粒を形成するとともに、前記放電加工用電極線の表面に構成される細片粒は、少なくとも前記芯線材、前記第2合金材からなる細片粒を構成することを特徴とする。
【0020】
また、前記放電加工用電極線の表面に構成される細片粒は、少なくとも前記芯線材が迫り上がるとき前記第1合金材がともに迫り上がって、前記芯線材、前記第1合金材、前記第2合金材からなる細片粒を構成することを特徴とする。
【0021】
また、前記第1金属は銅、黄銅または銅合金からなり、前記第2金属は亜鉛、アルミニウム、錫またはその合金からなることを特徴とする。
また、少なくとも前記第2合金材の細片粒は、前記芯線材質によって囲まれる形態を含むことを特徴とする。
【0022】
また、前記芯線材質の細片粒は、放電加工用電極線の長手方向に対して概ね直角方向に配列され、該芯線材質の細片粒の長さは幅の2〜10倍の大きさに構成されることを特徴とする。
【0023】
本発明の目的を達成するための放電加工用電極線の製造方法は、銅を含む第1金属からなる第1直径の線材を芯線として提供する段階と;前記芯線に第2金属を利用してメッキする段階と、前記メッキされた芯線を引張強度500N/mm以下と延伸率5%以上に形成するとともに前記芯線と前記第2金属との相互拡散によって少なくとも前記芯線と第2金属との境界部に形成される第1合金層と、前記第1金属が前記第2金属の方向に拡散されて前記第1合金層の外郭に第2合金層が形成されるように熱処理する段階と、前記第1合金層、第2合金層、芯線を含む放電加工用電極線を第2直径に形成するための細線工程で前記放電加工用電極線の表面に前記芯線材が第2合金層に形成されるクラックを通じて迫り上がって少なくとも前記芯線材、前記第2合金材からなる細片粒を形成する段階を含む。
【0024】
また、前記放電加工用電極線の表面に細片粒を形成する段階で、前記芯線材が迫り上がるとき前記第1合金材がともに迫り上がって、前記芯線材、前記第1合金材、前記第2合金材からなる細片粒を形成することを特徴とする。
また、前記メッキは、電気メッキ、溶融メッキまたは化学メッキ方法を利用する。
【0025】
また、前記メッキは、溶融メッキであり、前記熱処理段階は、メッキ槽の入り口温度を550〜700℃、出口温度を420〜500℃とし、1〜10秒の浸漬時間の範囲内で前記芯線をメッキ槽に通すことを特徴とする。
また、前記細片粒を形成する段階の放電加工用電極線を第2直径に細線して引抜きする前に該放電加工用電極線を上、下、左、右の何れか一方または複数の方向から曲げたりツイストさせる工程を追加することを特徴とする。
【0026】
この時、第1金属は純銅、または63〜67重量%の銅と33〜37重量%の亜鉛からなる黄銅が使用される。また、第2金属は、亜鉛、アルミニウム、錫またはその合金が使用される。
【0027】
特に、本発明において、溶融メッキ方法を利用する場合、第1金属からなる第1直径の芯線に第2金属が所定の厚さにメッキされ、該メッキされた芯線の引張強度を500N/mm以下、延伸率は5%以上に形成するためには同じ大きさの溶融メッキ槽で温度を上げてメッキ工程を行なったり、溶融メッキ槽を通す浸漬時間を長くしたりする必要がある。また、溶融メッキ槽を通す線材の移動速度をコントロールする方法を利用しても良い。
【0028】
一例として、線材の巻取り速度が速い場合は、溶融メッキ槽を長く構成したり、溶融メッキ槽の温度を上げたりしなければならない。
【0029】
斯かる巻取り速度とメッキ槽の長さ、温度条件は、亜鉛がメッキされた芯線、即ち、第1直径の芯線の線材に1〜3μmほどの第1合金層と、3〜10μmほどの第2合金層を形成するとともに芯線材の引張強度が500N/mm以下、延伸率は5%以上となるように設定されれば良い。
【0030】
この時、芯線の線材の縁に第1金属と第2金属との相互拡散反応によって第2金属の成分が第1金属の方向に拡散されて芯線の外郭から芯線の中心方向に第1合金層が形成され、また第1合金層の外郭に第1金属と第2金属との相互拡散反応によって第1金属の成分が第2金属の方向に拡散されて芯線である第1金属より気化温度が低く、第2金属の気化温度より高い第2合金層が形成される。
【0031】
前記電極線の製造方法は、電極線の機械的な性質を安定化させるために第2直径に細線された放電加工用電極線をさらに熱処理する段階を含む。
【発明の効果】
【0032】
本発明の放電加工用電極線は、芯線を構成する材質が放電加工用電極線の合金層に形成されるクラックを通じて溶岩湧出形状に表面まで迫り上がって、表面に多数の細片粒を形成するように構成され、前記放電加工用電極線の表面に構成される芯線材の細片粒が少なくとも第2合金層の細片粒を囲むように構成されることによって、割れた細片粒の離脱を防止して放電加工のとき、細塵の発生を抑制することができ、放電の効率が改善されて加工速度が速くなるという効果を得ることができる。
【0033】
細塵発生が抑制されると放電加工のとき、細塵による再放電を防止し電極線が通るダイヤモンドガイドダイス穴が細塵屑によって詰まってしまうことを防止することができる。
【0034】
特に、本発明は細片粒の長さが幅より約2〜10倍の大きさに放電加工用電極線の長手方向に対して概ね直角方向に配列されるので、加工物の面粗度と加工速度が向上するという効果が得られる。
【0035】
斯かる加工速度の向上は、細線化のとき圧力によって相対的に軟らかい芯線がクラックを通じて表面まで迫り上がって第2合金層を囲む形態に細片粒を形成するので電極線から細塵および細片屑が発生しにくくなり、第1金属より気化温度が低い第2合金層が放電のとき熱エネルギーの爆発力を増加させるためであるものと考えられる。
【0036】
一方、放電加工用電極線の表面は全体的に均一な円周表面を維持し表面が凸凹していないので、加工の精密度に悪い影響を与えず細片粒の周りのクラックによって放電加工の時冷却効果を向上させ、比較的低い気化温度のため放電加工の時発生する細塵および細片屑が容易に除去されるので洗浄力および加工物の面粗度が向上するという効果が得られる。
【0037】
特に、本発明の実施形態2、実施形態4のように延伸工程の前段階で中間線材にストレスを与えて細片粒の長さが幅より約2〜10倍の大きさに放電加工用電極線の長手方向に対して概ね直角方向に配列されるように製造することによって、加工速度および面粗度がともに向上するという効果が得られる。
【0038】
実施形態2、実施形態4の製造方法による細片粒を有する放電加工用電極線は、上方から下方に最大15,000mm/minの速度で移動し、加工物の加工速度は一例として40mm厚さの加工物を加工するとき約3〜4mm/minの速度で加工することができる。
【0039】
このような効果を得ることができるのは、電極線の長手方向に対して直角方向に配列される多数の細片粒のパターンがまるで多重刃が加工物の表面を仕上げしながら下降する形で放電加工されるためであるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一般的な放電加工機の技術構成およびその原理を説明するための概略図である。
【図2】本発明の放電加工用電極線の製造方法を説明するための図面である。
【図3】本発明の実施形態1の放電加工用電極線の製品写真である。
【図4】本発明の実施形態2の放電加工用電極線の製品写真である。
【図5】本発明の実施形態3の放電加工用電極線の製品写真である。
【図6】本発明の実施形態4の放電加工用電極線の製品写真である。
【図7】実施形態2の延伸工程の前段階で中間線材にストレスを与えてクラックが形成された状態を示す写真である。
【図8】実施形態4の延伸工程の前段階で中間線材にストレスを与えてクラックが形成された状態を示す写真である。
【図9】本発明の実施形態1、実施形態3による製品の断面を示す模式図である。
【図10】本発明の実施形態2、実施形態4による製品の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、図2乃至図10を参照して本発明の放電加工用電極線の構造および製造方法に対する技術構成、作用効果を詳しく説明する。
図2は、本発明の放電加工用電極線の製造方法を示す図である。先ず、図2に示すように、0.9〜1.2mm直径の銅65重量%、亜鉛35重量%からなる黄銅芯線12が提供される。
【0042】
前記芯線12を黄銅より低い気化温度を有する亜鉛が溶融されているメッキ槽10に一定時間浸漬通過させて、芯線12の外郭に亜鉛メッキ層を溶融メッキする。
【0043】
前記メッキ槽10の入り口温度は550〜700℃、出口温度は420〜500℃に調整し、1〜10秒の浸漬時間範囲内で浸漬通過させて亜鉛メッキされた芯線12の引張強度を500N/mm以下に、延伸率は5%以上になるようにする。
【0044】
この時、芯線12には該界面から、メッキ槽10に溶融している亜鉛と黄銅との拡散反応によって、黄銅の芯線より硬度は高く、延伸率は低い合金層が形成される。
【0045】
前記温度でメッキ槽を通して合金層が形成された芯線12は、引抜き装置14により好適な直径、例えば、0.07乃至0.35mmになるように引抜きがなされる。
前記メッキ槽を通す方法の外に、電気メッキまたは化学メッキ方法等を利用して、3〜10μmほどの厚さに亜鉛がメッキされた黄銅の芯線を10〜60Vの電圧と100〜600m/minの速度で熱処理して、亜鉛メッキされた芯線12の引張強度を500N/mm以下、延伸率は5%以上になるように形成することができる。
【0046】
前記芯線12と亜鉛メッキ層との間に構成される第1合金層の外郭には、亜鉛メッキ層に芯線の銅成分が拡散されて構成される第2合金層が形成され、第2合金層は一番高い硬度と一番低い引張強度を有する。このように第2合金層は他の層と比べて硬度が高く、延伸率が低いので引抜き処理されると第2合金層に多数のクラックが発生し、そのクラックを通じて相対的に軟らかい黄銅の芯線材質が、第2合金層の表面まで溶岩湧出形状に迫り上がって分布する。
前記細線は、熱処理工程を経て機械的な性質をさらに安定化させることができる。
【0047】
図3、図5は細線に引抜かれた放電加工用電極線の表面を示す写真であり、図9は図3および図5の放電加工用電極線の断面構造を説明するための模式図である。
【0048】
図9を参照すると、放電加工用電極線の表面に黄銅からなる芯線材と合金材が多く分布していることが分かり、その芯線材と合金材がクラックを通じて溶岩湧出形状に迫り上がって合金層の細片粒とともに表面に分布したり、合金材の細片粒を囲んだりしていることが分かる。
【0049】
また、引抜きの工程で合金層が形成された芯線を細線にするとき、ローラ16′と引抜き装置14との間にその線材の上、下、左、右の何れか一つの方向から曲げたり、ストレスを与えたりするツイスト装置33を設置することによって、中間線材にクラックがさらに形成され、そのクラックを通じて相対的に軟らかい黄銅の芯線が亜鉛メッキ層の表面まで迫り上がって、線材の円周方向に細片粒が形成される。
【0050】
前記のように細線工程の前段階で電極線を構成する中間線材にストレスを与えるとその線材の表面に円周方向に長形の細片粒が配列され、その細片粒は幅より長さが約2〜10倍の大きさに形成されるという特徴を示す。
【0051】
図4、図6は、細線工程の前段階で電極線を構成する中間線材に曲げなどのストレスを与えた後、細線引抜きして製造された放電加工用電極線の表面を示す写真であり、図10は、図4および図6の放電加工用電極線の断面構造を説明するための模式図である。
【0052】
図10を参照すると、放電加工用電極線の表面に黄銅からなる芯線材質が多く分布していて、電極線の表面に円周方向に黄銅の細片粒が一定のパターンで配列される。
【0053】
このように電極線の表面に芯線材の細片粒が多く分布する原因は、メッキ熱処理工程で引張強度は500N/mm以下、延伸率は5%以上になるように芯線材質の熱処理温度を適切にコントロールし、細線工程の前にツイスト装置を利用して線材を所定の方向に曲げたり、ストレスを与えたりすることによるものと考えられる。
【0054】
本発明の放電加工用電極線は、黄銅の芯線12と、亜鉛と芯線が相互拡散して芯線の境界部に形成される第1合金層22と、亜鉛層に芯線材質が拡散して第1合金層の外郭に形成される第2合金層23を含む。
【0055】
前記芯線12の材質は、銅または黄銅等銅を含む金属であれば良く、この芯線12により電極線として要求される伝導度および機械的強度を維持し、第2合金層23は芯線12の材質より溶融点および気化温度が低い亜鉛を使用しているので放電加工のとき、芯線を保護して加工速度を向上させる。
【0056】
また、前記第2合金層23は多数のクラックおよび細片粒を有するので、従来の電極線より優れた冷却速度を得ることができる。メッキに使用される材質は溶融点および気化温度が芯線より低く、銅または黄銅の芯線金属に溶融メッキが可能であり、溶融メッキのとき銅との拡散反応によって比較的硬度が高い合金層を形成することができる金属であれば良い。
【0057】
メッキに使用される金属としては、亜鉛、アルミニウム、錫等がある。
従って、このような亜鉛合金線材を放電加工用電極線として細線にするとき、芯線と合金層との間の延伸率の差によって合金層にクラックを容易に形成することができる。
【0058】
図3から図6に示すように比較的軟らかい芯線材質が相対的に鋼線である合金層をクラックを境界にして囲む形を取るので放電加工のとき、電極線から芯線および合金層の細片屑、細片粒の欠片が発生しにくく、加工物から生じた細塵および細片屑等が細片粒の境界部のクラックの隙間の中に吸着されて除去されるので洗浄力が従来の放電加工用電極線と比べて向上する
【0059】
(実施形態1)
中間線材、即ち、銅65重量%と亜鉛35重量%の成分比を有する黄銅線を直径0.9mmの芯線(第1金属)として準備する。
前記芯線に第2金属である亜鉛を利用して溶融亜鉛メッキを行なう。
溶融亜鉛メッキの工程に利用される芯線を、アルカリ脱脂槽に浸漬、水洗い、酸性洗浄し、再び水洗いした後、塩化アンモニウムフラックス槽に浸漬する。
【0060】
前記フラックス処理された第1金属の芯線を、第2金属の溶融亜鉛メッキ槽に浸漬して溶融亜鉛メッキを行なうとき、芯線が通過するメッキ槽の入り口の温度は、出口より高い550〜700℃、出口の温度は入り口より低い420〜500℃の温度を維持するようにし、芯線の中間線材を1〜10秒ぐらい浸漬して溶融亜鉛メッキを行なう。
【0061】
前記のように高温で芯線の中間線材を溶融亜鉛メッキを行なって、引張強度は500N/mm以下、延伸率は5%以上になるように形成する。
【0062】
このように高温のメッキ槽に浸漬して溶融亜鉛メッキを行なうと、芯線が溶融亜鉛槽に浸漬されている間に該芯線の境界面から亜鉛との相互拡散反応によって銅亜鉛の合金層を構成する第1合金層22が形成され、その合金層の外郭には亜鉛銅の合金層を構成する第2合金層23が形成されるとともに軟質の芯線が製造される。
【0063】
前記亜鉛銅からなる第2合金層は、一番硬度が高い部分であり、軟線の芯線より延伸率が低い。
【0064】
前記溶融亜鉛メッキおよび相互拡散によって、芯線表面の境界面には1〜3μmの銅亜鉛合金層からなる第1合金層が形成され、最外郭には3〜10μmの亜鉛銅合金層からなる第2合金層が形成される。
【0065】
前記第1合金層が、固体の芯線と液体状態の溶融亜鉛の相互拡散反応によって形成され、亜鉛銅からなる第2合金層も液体である溶融亜鉛と固体である第1金属の芯線が相互拡散作用によって結合されるので芯線との結合力が強化される。
【0066】
前記第1合金層、第2合金層、軟線である芯線からなる中間線材は、細線(延伸)工程の際に、第2合金層に多数のクラックが発生し、該クラックの隙間を通じて相対的に軟らかい芯線金属が最外郭の第2合金層の表面まで溶岩湧出形状に迫り上がって表面にともに分布する。
【0067】
前記合金層が形成された中間線材は、引抜き細線工程を経て0.07〜0.35mmの直径を有する細線に製造される。
【0068】
前記引抜きされた細線の第2合金層は、芯線より硬度が高く延伸率が低いので引抜き細線の工程中に第2合金層が形成されている最外郭層の表面に多数のクラックが発生し、第2合金層は第1合金層を介して芯線の第1金属と界面をなす。
【0069】
前記製造方法によって形成される放電加工用電極線の表面には、図3、図9のように芯線の第1金属の成分と銅亜鉛合金層からなる第1合金層の金属成分および亜鉛銅合金層からなる第2合金層の金属成分など3種類の成分を有する細片粒がそれぞれ形成される。
【0070】
前記細線工程によって加工された放電加工用電極線は、300〜600℃の温度雰囲気で0.05〜3秒ぐらい再び熱処理を行なって芯線の機械的な性質を安定化させる。
【0071】
(実施形態2)
中間線材、即ち、銅65重量%と亜鉛35重量%の成分比を有する黄銅線を、直径0.9mmの芯線(第1金属)として準備する。
前記芯線に第2金属である亜鉛を利用して溶融亜鉛メッキを行なう。
溶融亜鉛メッキの工程に利用される芯線を、アルカリ脱脂槽に浸漬、水洗い、酸性洗浄し、再び水洗いした後、塩化アンモニウムフラックス槽に浸漬する。
【0072】
前記フラックス処理された第1金属の芯線を、第2金属の溶融亜鉛メッキ槽に浸漬して溶融亜鉛メッキを行なうとき、芯線が通過するメッキ槽の入り口の温度は、出口より高い550〜700℃、出口の温度は入り口より低い420〜500℃の温度を維持するようにし、芯線の中間線材を1〜10秒ぐらい浸漬して溶融亜鉛メッキを行なう。
【0073】
前記のように高温で芯線の中間線材を溶融亜鉛メッキを行なって、引張強度は500N/mm以下、延伸率は5%以上になるように形成する。
このように高温のメッキ槽に浸漬して溶融亜鉛メッキを行なうと、芯線が溶融亜鉛槽に浸漬されている間に該芯線の境界面から亜鉛との相互拡散反応によって銅亜鉛の合金層を構成する第1合金層22が形成され、その合金層の外郭には亜鉛銅の合金層を構成する第2合金層23が形成されるとともに軟質の芯線が製造される。
【0074】
前記亜鉛銅からなる第2合金層は、一番硬度が高い部分であり、軟線の芯線より延伸率が低い。
前記溶融亜鉛メッキおよび相互拡散によって、芯線表面の境界面には1〜3μmの銅亜鉛合金層からなる第1合金層が形成され、最外郭には3〜10μmの亜鉛銅合金層からなる第2合金層が形成される。
【0075】
前記第1合金層が、固体の芯線と液体状態の溶融亜鉛の相互拡散反応によって形成され、亜鉛銅からなる第2合金層も液体である溶融亜鉛と固体である第1金属の芯線が相互拡散作用によって結合されるので芯線との結合力が強化される。
【0076】
前記第1合金層、第2合金層、軟線の芯線からなる中間線材は、細線工程を行なう前に、図2のローラ16′と引抜き装置14との間に設置されて該中間線材をジグザグに曲げるツイスト装置33を通過する。
細線工程の前に中間線材をジグザグに曲げるツイスト装置33に通した後、前記中間線材は、引抜き細線工程を経て0.07〜0.35mmの直径を有する細線に製造される。
【0077】
本実施形態では、特に、中間線材を細線引抜きする前に所定方向に曲げてストレスを与えることによって、図7のように中間線材の長手方向に対して直角方向に第2合金層にクラックが多発し、そのクラックを通じて軟質の黄銅からなる芯線金属が第2合金層の表面まで溶岩湧出形状に迫り上がって表面に多数の細片粒群が形成される。
【0078】
前記中間線材の曲げストレス工程によって、放電加工用電極線の表面に黄銅からなる芯線材質がさらに多く分布され、電極線の表面に円周方向に黄銅の細片粒が一定のパターンで配列される。前記黄銅の細片粒の長さは、幅より約2〜10倍の大きさに形成される。
【0079】
前記製造方法によって形成される放電加工用電極線の表面には、図4、図10のように芯線の第1金属の成分と銅亜鉛合金層からなる第1合金層の金属成分および亜鉛銅合金層からなる第2合金層の金属成分など3種類の成分を有する細片粒がそれぞれ構成される。
【0080】
前記細線工程によって加工された放電加工用電極線は、300〜600℃の温度雰囲気で0.05〜3秒ぐらい再び熱処理を行なって芯線の機械的な性質を安定化させる。
【0081】
(実施形態3)
中間線材、即ち、銅65重量%と亜鉛35重量%の成分比を有する黄銅線を直径0.9mmの芯線(第1金属)として準備する。
前記芯線に第2金属である亜鉛を利用して電気亜鉛メッキを行なう。
電気亜鉛メッキ工程に利用される芯線は、アルカリ脱脂槽に浸漬、水洗い、酸性洗浄され、再び水洗いされた後、電気亜鉛メッキ槽に通される。
【0082】
前記電気亜鉛メッキされた中間線材は、熱処理機に投入されて50〜60Vの電圧から155m/minの速度で熱処理され、引張強度は500N/mm以下、延伸率は5%以上になる芯線を製造する。
【0083】
前記条件を満足する芯線を有する中間線材を形成するために、電気メッキを行なった後熱処理を実施すると、芯線(第1金属)と電気亜鉛メッキされた第2金属との境界面には相互拡散反応によって銅亜鉛の第1合金層22が形成され、その合金層の外郭には亜鉛銅の第2合金層23が形成される。
前記亜鉛銅の第2合金層は、一番硬度が高い部分であり、軟線の芯線より延伸率が低い。
【0084】
前記電気亜鉛メッキおよび相互拡散によって、芯線の境界面には1〜3μmの銅亜鉛からなる第1合金層が形成され、第1合金層の外郭には3〜10μmの亜鉛銅からなる第2合金メッキ層が形成される。
【0085】
前記第1合金層は芯線を構成する第1金属と電気メッキ材である亜鉛、即ち、第2金属の相互拡散反応によって形成され、第2合金層は芯線を構成する第1金属の成分が電気亜鉛メッキされた第2金属方向に相互拡散作用によって形成されるとともに、芯線は引張強度が500N/mm以下、延伸率が5%以上になる軟線状態に形成される。
【0086】
前記芯線に第1合金層と第2合金層が形成された中間線材は細線工程の際、硬度が一番高い第2合金層に多数のクラックが発生し、該クラックの隙間を通じて相対的に軟らかい芯線金属が、最外郭の第2合金層の表面まで溶岩湧出形状に迫り上がって表面にともに分布する。
【0087】
前記合金層が形成された中間線材は、引抜き細線工程を経て0.07〜0.35mmの直径を有する細線に製造される。
前記引抜きされた細線の第2合金層は、芯線より硬度が高く延伸率が低いので引抜き細線の工程中に第2合金層が形成されている最外郭層の表面に多数のクラックが発生し、第2合金層は第1合金層を介して芯線の第1金属と界面をなす。
【0088】
前記製造方法によって形成される放電加工用電極線の表面には、図5、図9のように芯線の第1金属の成分と銅亜鉛合金層からなる第1合金層の金属成分および亜鉛銅合金層からなる第2合金層の金属成分など3種類の成分を有する細片粒がそれぞれ構成される。
前記細線工程によって加工された放電加工用電極線は、300〜600℃の温度雰囲気で0.05〜3秒ぐらい再び熱処理を行なって芯線の機械的な性質を安定化させる。
【0089】
(実施形態4)
中間線材、即ち、銅65重量%と亜鉛35重量%の成分比を有する黄銅線を、直径0.9mmの芯線(第1金属)として準備する。
前記芯線に第2金属である亜鉛を利用して電気亜鉛メッキを行なう。
電気亜鉛メッキ工程に利用される芯線は、アルカリ脱脂槽に浸漬、水洗い、酸性洗浄され、再び水洗いされた後、電気亜鉛メッキ槽に通される。
前記電気亜鉛メッキされた中間線材は、熱処理機に投入されて50〜60Vの電圧から155m/minの速度で熱処理されて、引張強度は500N/mm以下、延伸率は5%以上になる芯線を製造する。
【0090】
前記条件を満足する中間線材を形成するために、電気メッキを行なった後熱処理を実施すると、芯線(第1金属)と電気亜鉛メッキされた第2金属との境界面では相互拡散反応によって銅亜鉛の第1合金層22が形成され、その合金層の外郭には亜鉛銅の第2合金層23が形成される。
【0091】
前記第1合金層は芯線を構成する第1金属と電気メッキ材である亜鉛、即ち、第2金属の相互拡散反応によって形成され、第2合金層は芯線を構成する第1金属の成分が電気亜鉛メッキされた第2金属方向に相互拡散作用によって形成されるとともに、芯線は引張強度が500N/mm以下、延伸率が5%以上になる軟線状態に形成される。
前記亜鉛銅の第2合金層は、一番硬度が高い部分であり、軟線の芯線より延伸率が低い。
【0092】
前記電気メッキを行なった後、熱処理によって、芯線表面の境界面には1〜3μmの銅亜鉛合金層からなる第1合金層が形成され、最外郭には3〜10μmの亜鉛銅合金層からなる第2合金層が形成される。
【0093】
前記第1合金層、第2合金層、軟線の芯線からなる中間線材は、細線工程を行なう前に、図2のローラ16′と引抜き装置14との間に設置されて該中間線材をジグザグに曲げるツイスト装置33を通過する
細線の前に中間線材をジグザグに曲げるツイスト装置33に通した後、前記中間線材は、引抜き細線工程を経て0.07〜0.35mmの直径を有する細線に製造される。
【0094】
本実施形態では、特に、中間線材を細線引抜きする前に所定の方向に曲げてストレスを与えることによって、図8のように中間線材の長手方向に対して直角方向に第2合金層にクラックが多発し、そのクラックを通じて軟質の黄銅からなる芯線金属が第2合金層の表面まで溶岩湧出形状に突き抜いて表面に多数の細片粒を形成する。
【0095】
前記中間線材の曲げストレス工程によって、放電加工用電極線の表面に黄銅からなる芯線材質が多く分布され、電極線の表面に円周方向に黄銅の細片粒が一定のパターンで配列される。前記黄銅の細片粒の長さは、幅より約2〜10倍の大きさに形成される。
【0096】
前記製造方法によって形成される放電加工用電極線の表面は、図6、図10のように芯線の第1金属の成分と銅亜鉛合金層からなる第1合金層の金属成分および亜鉛銅合金層からなる第2合金層の金属成分など3種類の成分を有する細片粒群から構成される。
前記細線工程によって加工された放電加工用電極線は、300〜600℃の温度雰囲気で0.05〜3秒ぐらい再び熱処理を行なって芯線の機械的な性質を安定化させる。
【0097】
以上、上述した実施形態においては電極線の表面に相対的に軟らかい芯線がクラックを通じて迫り上がって露出して第2合金層を囲む形態に細片粒を形成するので電極線から細塵および細片粒の欠片などが発生しにくく、第1金属より気化温度が低い第2合金層が放電のとき熱エネルギーの爆発力を増加させるため、加工速度が改善され、放電加工のとき加工物の面粗度が向上する。
【0098】
本発明の実施形態においては、電気メッキと溶融メッキを例として説明したが、化学メッキを行なった後、熱処理しても同じ効果を得ることができる。
また、第1金属としては、黄銅の他に銅、銅合金を利用することができ、第2金属としては、亜鉛、アルミニウム、錫またはその合金などを利用しても良い。
上述した本発明の実施形態は、本発明の技術構成および製造方法を限定するものではなく、本発明の技術思想および目的を外れない範囲内で様々に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 加工物
2 電極線
3 供給リール
4 巻取リール
5、5′、16、16′、18 ローラ
6 電源供給装置
7 スタート穴
10 メッキ槽
12 芯線(中間線材)
14 引抜き装置
22 第1合金層
23 第2合金層
33 ツイスト装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属からなる芯線と、
前記芯線の外面にメッキされる第2金属が前記芯線との相互拡散によって前記芯線と第2金属の境界部に形成される第1合金層と、
前記第1金属が前記第2金属の方向に相互拡散されて前記第1合金層の外郭に形成される第2合金層を含み、
少なくとも前記芯線、第1合金層、第2合金層を含む放電加工用電極線の表面に前記第2合金層に形成されるクラックを通じて前記芯線材が迫り上がって多数の細片粒を形成するとともに、前記放電加工用電極線の表面に構成される細片粒は、少なくとも前記芯線材、前記第2合金材からなる細片粒を構成することを特徴とする放電加工用電極線。
【請求項2】
前記放電加工用電極線の表面に構成される細片粒は、前記芯線材が迫り上がるとき前記第1合金材がともに迫り上がって、前記芯線材、前記第1合金材、前記第2合金材からなる細片粒が分布されて構成されることを特徴とする請求項1に記載の放電加工用電極線。
【請求項3】
前記第1金属は銅、黄銅または銅合金からなり、前記第2金属は亜鉛、アルミニウム、錫またはその合金からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電加工用電極線。
【請求項4】
前記第2合金材の細片粒は、前記芯線材質によって囲まれる形態を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電加工用電極線。
【請求項5】
前記芯線材質の細片粒は、放電加工用電極線の長手方向に対して概ね直角方向に配列され、該芯線材質の細片粒の長さは幅の2〜10倍の大きさに構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電加工用電極線。
【請求項6】
第1金属からなる第1直径の線材を芯線として提供する段階と;
前記芯線に第2金属を利用してメッキする段階と、
前記メッキされた芯線を引張強度は500N/mm以下、延伸率は5%以上に形成するとともに前記芯線と前記第2金属との相互拡散によって少なくとも前記芯線と第2金属との境界部に形成される第1合金層と、前記第1金属が前記第2金属の方向に拡散されて前記第1合金層の外郭に第2合金層が形成されるように熱処理する段階と、
前記第1合金層、第2合金層、芯線を含む放電加工用電極線を第2直径に形成するための細線工程で、前記放電加工用電極線の表面に前記芯線材が第2合金層に形成されるクラックを通じて迫り上がって少なくとも前記芯線材、前記第2合金材からなる細片粒を形成する段階を含むことを特徴とする放電加工用電極線の製造方法。
【請求項7】
前記放電加工用電極線の表面に細片粒を形成する段階で、前記芯線材が迫り上がるとき前記第1合金材がともに迫り上がって、前記芯線材、前記第1合金材、前記第2合金材からなる細片粒を形成することを特徴とする請求項6に記載の放電加工用電極線の製造方法。
【請求項8】
前記メッキは、電気メッキ、溶融メッキまたは化学メッキ方法を利用することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の放電加工用電極線の製造方法。
【請求項9】
前記メッキは、溶融メッキであり、前記熱処理段階は、メッキ槽の入り口温度を550〜700℃、出口温度を420〜500℃とし、1〜10秒の浸漬時間の範囲内で前記芯線をメッキ槽に通すことを特徴とする請求項8に記載の放電加工用電極線の製造方法。
【請求項10】
前記細片粒を形成する段階の放電加工用電極線を第2直径に細線して引抜きする前に該放電加工用電極線を上、下、左、右の何れか一方または複数の方向からツイストさせる工程を追加することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の放電加工用電極線の製造方法。
【請求項11】
前記第1金属は銅、黄銅または銅合金を利用し、前記第2金属は亜鉛、アルミニウム、錫またはその合金を利用することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の放電加工用電極線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232402(P2012−232402A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255761(P2011−255761)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(511284982)
【出願人】(511267930)
【出願人】(511267941)
【Fターム(参考)】