説明

散水ヘッド

【課題】容易に流量を制御し、散水口から吐出される水勢を調整できる散水ヘッドを提供する。
【解決手段】先端に通水ヘッド部6を有し、その通水ヘッド部6の先端面の中心軸から偏心した位置に水の流出口7aを形成したヘッド本体1と、通水ヘッド部6の先端面に接して上記中心軸を中心に回動可能に保持される回動部材2と、回動部材2の先端側で回動部材2と共に回転し、その先端面に散水口31を穿設した散水部材3とからなり、回動部材2には流出口7aと同一円周上にそれぞれ別個の入口を基端面に開口して、互いに独立した径の異なる複数の通水孔25b、25dを有し、散水部材3内には各通水孔25b、25dの下流に位置して散水口31へ連通する共通通水路を有し、散水部材3の回動操作により流出口7aと一の上記通水孔の入口とが連通して散水口31から散水されるとともに、他の通水孔の入口が通水ヘッド部6の先端面によって閉鎖される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水用ノズル、シャワー器具、水栓などの吐水装置において、先端に設けられ、流量を調節することのできる散水ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吐水装置においては、その用途に応じて水勢を調整する必要が生じていた。
例えば園芸に用いる散水用ノズルの場合、比較的水勢の強い通常のシャワー吐水以外に、植物を保護するため、ジョロ吐水と呼ばれる水勢の弱いシャワー吐水に切り替えられることが求められていた。
【0003】
また、浴室用のシャワーヘッドでは、刺激の強いシャワー吐水を好まない使用者のために、水勢の弱いシャワー吐水に切り替えられることが求められていた。
さらに台所用の吐水装置においても、食器の汚れを落とす際には水勢の強いシャワー吐水、シンクの水はねを防止するためには弱い水勢のシャワー吐水というように、水勢を調整する必要があった。
【0004】
水勢を決める水の速度は、散水口に流れ込む流量と散水口の面積との関係で決まる。このため、水勢を弱くするためには、散水口の面積を大きくする方法と散水口に流れ込む流量を少なくする方法とがある。
例えば、散水口の面積を調整できる構成として、特許文献1では、シャワーヘッド先端のシャワー板に穿設された多数の小孔(シャワー散水口)を、シャワー板の中心からの距離によっていくつかの領域に区画し、シャワー板を回転させることによって、シャワー板の中心からどの領域まで吐水させるかを選択することができるものが記載されている。
【0005】
また、散水口に流れ込む流量を調整する構成として、特許文献2には、通水管中にこの通水路と直交する円筒状のバルブ本体を配置し、このバルブ本体の中心軸に直交する断面に十字状に交差させた2つの流路を形成し、かつ、一方の流路には流量を制限する制水盤を配置した流量制御装置であって、バルブ本体を回転させることにより一方の流路を選択して流量を制御するものが記載されている。
【0006】
特許文献3には、先端にシャワー散水口とストレート散水口とを設けた外筒と、給水装置から水の供給を受けてこの外筒内部に保持される内筒とからなる流量制御装置であって、内筒の外壁には通水用の透孔が穿設されるとともに、外筒と内筒との間の空間を、突設隔壁によってストレート散水口に連通する前間隙とシャワー散水口に連通する後間隙とに分割してあり、内筒が外筒に対し軸方向に前後動することで吐水状態をストレート吐水、停止およびシャワー吐水に切り替えられると同時に水勢も調整できるものが記載されている。また、内筒と外筒とは螺合によって取り付けられているため、外筒を回転させるだけで相対的に前後動させることができて、微調整も容易となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−37641号公報
【特許文献2】特許第4189027号公報
【特許文献3】特公平4−39386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の発明では、シャワー板の吐水面積を増減させることで水勢を調整しているため、シャワー散水口を設けるシャワー板に十分な平面部が求められ、流量制御装置が大型になっていた。
また、特許文献2の発明では、上記のバルブ本体を直交させて収容できる大型の通水管を形成する必要があり、流路制御装置全体が大きなものとなっていた。
また、特許文献3の発明では、容易な回転操作で水勢の微調整や吐水形状の切り替えが可能であったが、内筒が外筒に対し軸方向に前後動するため、流量制御装置全体が軸方向に長いものとなっていた。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、コンパクトな構成で容易に流量を制御し、散水口から吐出される水勢を調整することができる流量制御装置を備えた散水ヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、把持部とその先端の通水ヘッド部とを有し、その通水ヘッド部の先端面の中心軸から偏心した位置に水の流出口を形成したヘッド本体と、上記通水ヘッド部の先端面に接して上記中心軸を中心に回動可能に保持される回動部材と、上記回動部材の先端側で回動部材と共に回転し、その先端面には散水口を穿設した散水部材とからなる散水ヘッドであって、上記回動部材には、上記流出口と同一円周上にそれぞれ別個の入口を基端面に開口し、互いに独立した径の異なる複数の通水孔を有し、上記散水部材内には上記各通水孔の下流に位置して上記散水口へ連通する共通通水路を有し、上記散水部材の回動操作により上記流出口と一の上記通水孔の入口とが連通して上記散水口から散水されるとともに、他の通水孔の入口が上記通水ヘッド部の先端面によって閉鎖されることを特徴とする。
【0011】
第2の発明に係る散水ヘッドは、上記ヘッド本体の先端面には、上記流出口と同一円周上に、周縁をOリングで塞いだ窪み状の閉鎖部を設け、上記回動操作により上記流出口と一の上記通水路の入口とを接続したときには、他の上記通水路の入口が上記閉鎖部によって閉鎖されることを特徴とする。
【0012】
第3の発明に係る散水ヘッドは、上記回動部材の上記複数の通水孔の先端と上記散水部材との間には間隙を設けて、これを上記共通通水路としたことを特徴とする。
【0013】
第4の発明に係る散水ヘッドは、上記回動部材には、上記複数の通水孔から独立して、基端面の上記各入口と同一円周上に形成した独立入口から上記散水部材に形成した独立散水口へと連通する独立通水孔を設けたことを特徴とする。
【0014】
第5の発明に係る散水ヘッドは、上記通水ヘッド部の先端面と上記回動部材の基端面との一方から軸材を突出し、他方が上記軸材に軸支されていることを特徴とする。
【0015】
第6の発明に係る散水ヘッドは、上記回動部材と上記散水部材との一方が他方を被覆することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、上記回動部材には上記流出口と同一円周上にそれぞれ別個の入口を基端面に開口して、互いに独立した径の異なる複数の通水孔を有し、上記散水部材内には上記各通水孔の下流に位置して上記散水口へ連通する共通通水路を有し、上記散水部材の回動操作により上記流出口と一の上記通水孔の入口とが連通して散水口から散水されることにより、散水部材を回動操作するだけで径の異なる複数の通水孔から一つを選択することができ、流量を制御することで水勢の調整を行う散水ヘッドが提供される。
上記散水部材の回動操作により上記流出口と一の上記通水孔の入口とが連通して散水口から散水されるとともに、他の通水孔の入口が上記通水ヘッド部の先端面によって閉鎖されることにより、共通通水路から上記他の通水孔へ流れることによる水漏れが防止される。
【0017】
第2の発明によれば、上記ヘッド本体の先端面には、上記流出口と同一円周上に周縁をOリングで塞いだ窪み状の閉鎖部を設け、上記回動操作により上記流出口と一の上記通水路の入口とを接続したときには、他の入口が上記閉鎖部によって閉鎖されることにより、必要最小限の面積しかないOリングによって閉鎖部を水密にシールすることで、Oリング等のシール部材によって生じる回動操作の抵抗を最小限にすることができ、流量の制御を容易に行うことができる。
【0018】
第3の発明によれば、上記回動部材の上記複数の通水孔の先端と上記散水部材の散水プレートとの間には間隙を設けて、これを上記共通通水路としたことにより、別途共通通水路を設ける場合などに比べて、材料を節約することができ、部品の製造も容易となる。
【0019】
第4の発明によれば、上記回動部材には、上記複数の通水孔から独立して、基端面の上記各入口と同一円周上に形成した独立入口から上記散水部材に形成した独立散水口へと連通する独立通水孔を設けたことにより、流量の調整に加えて、シャワー吐水とストレート吐水など吐水形状の選択も可能な散水ヘッドを提供することができる。
【0020】
第5の発明によれば、上記通水ヘッド部の先端面と上記回動部材の基端面との一方から軸材を突出し、他方が上記軸材に軸支されていることにより、簡易な連結構造で通水ヘッド部と回動部材とを回動可能に取り付けることができ、組立性を向上させることができる。
【0021】
第6の発明によれば、上記回動部材と上記散水部材との一方が他方を被覆することにより、連結用の部品を別体で設けることなく回動部材と散水部材とを取り付けられるとともに、すっきりとした外観を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る散水ヘッドの分解前方斜視図である。
【図2】同散水ヘッドの分解後方斜視図である。
【図3】ヘッド本体の通水ヘッド部を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】回動部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図5】散水部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図6】(a)は散水ヘッドのシャワー吐水位置を示す縦断面図であり、(b)は部分正面図である。
【図7】(a)は散水ヘッドのジョロ吐水位置を示す縦断面図であり、(b)は部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る散水ヘッドについて説明する。
図1、図2に示すように、この散水ヘッドは、把持部を有するヘッド本体1と、このヘッド本体1の先端に接して回動自在に取り付けられて流量の調整を行う回動部材2と、この回動部材2の先端を覆うとともに各散水口を設けた散水部材3とからなる。
ヘッド本体1は、全体として長筒を途中で屈曲させた逆さL字形の筒体に形成され、下端にはホースと内嵌する接続端部4を螺着して水道などから水を導入できるようにしてある(図6)。
ヘッド本体1の屈曲部分と上記接続端部4との間には把持部5を形成しており、また、ヘッド本体1の下流側先端には略円筒形の通水ヘッド部6を設けている。ヘッド本体1は、接続端部4から通水ヘッド部6まで貫通する内部通水孔7を内部に有している(図6)。
把持部5は、ヘッド本体1の屈曲部分と上記接続端部4との間において通水ヘッド部6側の側周面を、握り易く滑りにくいように表面波形に成形した弾性体で覆ってなり、後述するレバー11とともに握り込まれる(図1、図6)。
【0024】
図6に示すように、このヘッド本体1には、必要なときだけ散水ができるように止水弁を設けている。
この止水弁は、内部通水孔7の通水ヘッド部6付近に設けられた弁座8と、この弁座8に離間、当接することにより内部通水孔7を遮断、開通することができる弁体9と、この弁体9を弁座8に押し付ける方向に付勢するスプリング10と、ヘッド本体1外部からこの弁体9を往復動させるためのレバー11とからなる。
【0025】
弁座8は、ヘッド本体1の屈曲部分から通水ヘッド部6までの中間位置に設けられ、内部通水孔7の周壁から中心側へ環状にせり出して、弁体9を受け止めることができるようになっている。
弁体9は内部通水孔7と略等しい径に形成してあり、先端が弁座8に当接すると止水弁の下流側への水流を完全に遮断した弁閉状態とすることができる。この弁体9には棒材9aが付設されており、棒材9aはヘッド本体1の屈曲部分を貫通して外部に延びている。棒材9aがヘッド本体1を貫通する部分の内側にはシール部材12を配設して、水漏れを防止する。
スプリング10は、この棒材9aに巻きつけて配置されるとともに両端のシール部材12と弁体9とを押圧しており、結果として弁体9を弁座8に押し付ける方向に付勢している。
【0026】
レバー11は、ヘッド本体1の把持部5の背部に突設したレバー取付部13にピン14を用いて取り付けられ、このピン14の軸周りに回動可能になっている(図1、図6)。
その上方では、屈曲部分から突出している棒材9aがレバー11を貫通するとともに、ナットや雌ネジなどによってレバー11に取り付けられている。
また、ピン14による取付部分の下側は、把持部5に沿って下方に延びるグリップ部分11aが形成されている。
【0027】
レバー11は、ピン14による取付部分を支点、グリップ部分11aを力点、棒材9aとの取付部分を作用点としており、グリップ部分11aを握り込んでヘッド本体1に近接させると、棒材9aおよびその先端の弁体9を弁座8から離間する方向に引き出すことができる。スプリング10の付勢力に反して弁体9が弁座8から離間すると、弁開状態となって下流の通水ヘッド部6へ通水することができる。
【0028】
なお、ヘッド本体1の屈曲部分の外部では金属製の係止フレーム15が回動可能に取り付けられている(図1、図6)。
止水弁を弁開にした状態で係止フレーム15を後方に回動させると、係止フレーム15がレバー11に当たって突っ張ることで、弁開状態を保持することができる。これにより、長時間散水を行うときに、常にスプリング10の付勢力に反してレバー11を握り込み続けることなく、弁開状態を保持することができる。
【0029】
図1、図2に示すように、この散水ヘッドには、ヘッド本体1の下流側先端に設置された略円筒形の通水ヘッド部6と、複数の通水孔25a〜25eを穿設するとともに上記通水ヘッド部6の先端面に回動可能に接する円盤状の回動部材2と、この回動部材2を被覆して共に回転し、先端面には複数の散水口31〜34を有する散水部材3とからなる流量制御装置が設けられている。
【0030】
図3に示すように、通水ヘッド部6は、略円筒形に形成されてヘッド本体1の先端に固定されている。通水ヘッド部6の先端では、エンドプレート6aから、周壁6bと流出口7aと閉鎖部16とクリック部17とが同じ高さまで突出して先端面を形成している(図3(b))。
上記先端面の中心からは、小さな円筒形の軸材18がさらに突出している。軸材18の内壁にはネジ溝が切られている(図6)。
また、軸材18の下部には、底面扇形の柱状に形成された回動制限片19が併設されて突出している。
【0031】
流出口7aは、軸材18の真上に設けられており内部通水孔7の出口を形成している。
通水ヘッド部6の内部通水孔7は、図6に示すように階段状に曲折して形成されている。
また、上記軸材18を中心として上記流出口7aと同一円周上の位置には、閉鎖部16(16a、16b)が左右対称に設けられている。この閉鎖部16は根元をエンドプレート6aによって閉塞された円筒状に形成されている。
流出口7aおよび閉鎖部16の周縁にはそれぞれOリング溝を設けてOリング20(20a、20b、20c)をはめ込み、流出口7aまたは閉鎖部16と回動部材2の各通水孔25a〜25eとが水漏れなく連通することができるようにしている。
また、クリック部17には穴が凹設されるとともに、弾性体で形成したクリック片17aがこの穴に収容されて、その頭頂部がわずかに突出している(図3、図6)。クリック片17aはスプリング17bによって突出方向に付勢されている。
【0032】
図4は、回動部材2を示している。
この回動部材2は、上記通水ヘッド部6と同径で上流側の面を平らに形成した円盤状の部材であって、下流側の面から通水並列部21と軸通孔22の周壁と係止爪23とが突設されている(図4(b))。
回動部材2の上流側の面は平らに形成され、通水ヘッド部6の先端面に接して回動できるようになっている。
【0033】
回動部材2の中心には、通水ヘッド部6の軸材18を軸通させる軸通孔22が穿設されており、その周壁は下流側に筒状に突出している。また、上流側の面には、上記回動制限片19よりも角度の大きな扇形の回動制限溝24が、軸通孔22の下部に併設されている(図4(c))。
【0034】
通水並列部21は、上記軸通孔22の上部で扇形の範囲にわたって突出形成されている。この通水並列部21には、通水ヘッド部6の流出口7aと同一円周上に、ストレート通水孔25a、シャワー通水孔25b、扇通水孔25c、ジョロ通水孔25d、コーン通水孔25eをそれぞれ穿設している。このうち、ストレート通水孔25a、シャワー通水孔25b、扇通水孔25c、コーン通水孔25eは上記流出口7aと同径に形成し、ジョロ通水孔25dは上記流出口7aよりも小さな径に形成している。
【0035】
これにより、回動部材2が通水ヘッド部6の先端面に接して上記軸材18に軸支された状態で軸まわりに回動することによって、流出口7aに連通する通水孔25a〜25eを変更することができる(図1、図2参照)。
回動部材2が回動可能な角度は、回動制限片19が回動制限溝内24をスライドする範囲に制限されるため、回動によって流出口7aの先端に配置されるのは、ストレート通水孔25aからコーン通水孔25eまでの間の範囲に制限される。
【0036】
また、上流側の面の下部には、5つのクリック用窪み26が同一円周上に凹設されている。
各クリック用窪み26a〜26eは、各通水孔25a〜25eが流出口7aと連通したときに、それぞれクリック片17aを収容して使用者にクリック感を感得させる(図6、図7)。
【0037】
図5は、散水部材3を示している。
散水部材3は、通水ヘッド部6および回動部材2と略同径の円盤である散水プレート3aと、この散水プレート3aの周縁を立ち上げた円筒側壁3bとからなり、回動部材2を被覆するように取り付けられる。
散水部材3先端の周縁部には、ゴムなどの弾性体で形成した保護リング27を外嵌させて保護している(図1、図6(b))。
【0038】
散水プレート3aの中心には、ネジ孔28が穿設されている。ネジ29は、このネジ孔28と、回動部材2の軸通孔22とに挿通され、軸材18内部のネジ溝に螺着される(図1、図6)。その際、ネジ29と散水プレート3aとの間にはワッシャー30をかませる。
【0039】
ネジ孔28の周囲には、多数の小孔からなるシャワー散水口31を穿設している。
また、ストレート通水孔25a、扇通水孔25c、コーン通水孔25eに相当する位置には、それぞれストレート散水口32、扇散水口33、コーン散水口34が穿設される。その裏面には、ストレート散水口32、扇散水口33、コーン散水口34をそれぞれストレート通水孔25a、扇通水孔25c、コーン通水孔25eに水密に連通させる散水筒36(36a、36b、36c)が形成されている。
【0040】
ストレート散水口32は、断面円形に形成されている。
扇散水口33は、縦長の縦裂に形成されている。
コーン散水口34は、断面円形の口において、中央を縦長の部材で塞ぎ、更に中心を円形の部材で塞いだことにより、左右対称に向かい合う扇のような形状の流路を形成している。
【0041】
シャワー通水孔25bとジョロ通水孔25dとに相当する位置には散水口を穿設せず、先端側の表面にシャワー吐水を意味するシャワー表示部35を設け、その裏面には円弧状の受け部37を突出させて組み立て時に通水並列部21と接するようにしている。このため、シャワー通水孔25bおよびジョロ通水孔25dの位置では、通水並列部21と散水プレート3aとの間に間隙が保持される。
また、係止爪23に相当する裏面の位置には円弧状の係止爪受け38を突設しており、組み立て時に係止爪23が係止爪受け38に嵌まることで、散水部材3が回動部材2に対して回動しないように固定することができる(図1、図2参照)。
また、円筒側壁3bの内側面は回動部材2の外側面を被覆し、かつ接着されて一体化されることにより、回動部材2と散水部材3とは水密に連結されている(図6)。なお、Oリング等の弾性部材を介在させたり、単に樹脂シールによってシールするなど、水密に連結する方法については適宜選択することが可能である。
【0042】
散水ヘッドを組み立てるには、ヘッド本体1の通水ヘッド部6から突出した軸材18に回動部材2およびこの回動部材2に連結された散水部材3を軸支させた状態で、ネジ29をネジ孔28と軸通孔22とに通して軸材18内に螺着する(図1)。
【0043】
以下、このような散水ヘッドの散水状態の切り替え操作について説明する。
流出口7aに扇通水孔25cを連通させた状態では、ヘッド本体1の内部通水孔7から供給される水は、流出口7aから扇通水孔25cおよび散水筒36bを通過して、扇散水口33から吐出される(図2参照)。
【0044】
この扇吐水位置から回動部材2を反時計回りに回動させて、図6のように、流出口7aにシャワー通水孔25bを連通させた状態では、ヘッド本体1の内部通水孔7から供給される水は、流出口7aからシャワー通水孔25bを通過して散水プレート3aとの間の間隙に流れ込む。上記間隙に流れた水は、図5(c)中の破線矢印の流路を通りシャワー散水口31から比較的強い水勢で吐出される。
このとき、ジョロ通水孔25dの上流には閉鎖部16aが位置して閉鎖するため、水が上記間隙からジョロ通水孔25dに流れて水漏れを起こすことがない。
【0045】
このシャワー吐水位置から回動部材2をさらに反時計回りに回動させて、流出口7aにストレート通水孔25aを連通させた状態では、ヘッド本体1の内部通水孔7から供給される水は、流出口7aからストレート通水孔25aおよび散水筒36aを通過して、ストレート散水口32から吐出される。
【0046】
前記扇吐水位置から回動部材を時計回りに回動させて、図7のように、流出口7aにジョロ通水孔25dを連通させた状態では、ヘッド本体1の内部通水孔7から供給される水は、流出口7aからジョロ通水孔25dを通過して散水プレート3aとの間の間隙に流れ込む。上記間隙に流れた水は、図5(c)中の破線矢印の流路を通りシャワー散水口31から吐出される。
ジョロ通水孔25dはシャワー通水孔25bよりも小さな径に形成されているため、内部通水孔7から間隙に流れ込む水の流量が絞られる。そのため、水は比較的水勢の弱いシャワー吐水状態(ジョロ吐水状態)でシャワー散水口31から吐出される。
このとき、シャワー通水孔25bの上流には閉鎖部16bが位置して閉鎖するため、水が上記間隙からシャワー通水孔に流れて水漏れを起こすことがない。
【0047】
このジョロ吐水位置から回動部材2をさらに時計回りに回動させて、流出口7aにコーン通水孔25eを連通させた状態では、ヘッド本体1の内部通水孔7から供給される水は、流出口7aからコーン通水孔25eおよび散水筒36cを通過して、コーン散水口34から吐出される(図2参照)。
【0048】
このような散水ヘッドでは、散水部材3および回動部材2の回動操作により、径の異なるシャワー通水孔25bとジョロ通水孔25dとの一方を選択して上記流出口7aと連通させてシャワー散水口31から散水するとともに、他方が上記通水ヘッド部6の先端面によって閉鎖されるため、コンパクトな構成で切り替えの容易な流量制御装置が提供される。また、多数の通水孔25a〜25eが回動部材2の同一円周上に配置されているので、薄い円盤状の回動部材2にも多数の通水孔を設けることができて、流量制御装置を小型化することができる。
【0049】
特に、シャワー通水孔25bおよびジョロ通水孔25dの先端と散水部材3の散水プレート3aとの間に間隙を設けて、これをシャワー散水口31への共通通水路として用いることにより、別途共通通水路を設ける場合などに比べて、材料を節約することができ、部品の製造も容易となる。
【0050】
また、シャワー通水孔25bとジョロ通水孔25dとの一方が流出口7aと連通する際には、他方が閉鎖部16によって閉鎖されるため、水漏れが防止される。
必要最小限の面積しかないOリング20によって閉鎖部16を水密にシールすることで、Oリング等のシール部材によって生じる回動操作の抵抗を最小限にすることができ、操作の容易な流量制御装置が提供される。
【0051】
さらに、シャワー通水孔25bおよびジョロ通水孔25dと同一円周上に、これらから独立してそれぞれストレート散水口32、扇散水口33、コーン散水口34へと連通する、ストレート通水孔25a、扇通水孔25c、コーン通水孔25eを設けたことにより、同じ平面内での回動操作で、流量の制御に加えて吐水形状の切り替えも可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 ヘッド本体
2 回動部材
3 散水部材
3a 散水プレート
5 把持部
6 通水ヘッド部
7 内部通水孔
7a 流出口
16 閉鎖部
18 軸材
19 回動制限片
20 Oリング
22 軸通孔
24 回動制限溝
25a ストレート通水孔
25b シャワー通水孔
25c 扇通水孔
25d ジョロ通水孔
25e コーン通水孔
29 ネジ
30 ワッシャー
31 シャワー散水口
32 ストレート散水口
33 扇散水口
34 コーン散水口
36 散水筒
37 受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部とその先端の通水ヘッド部とを有し、その通水ヘッド部の先端面の中心軸から偏心した位置に水の流出口を形成したヘッド本体と、
上記通水ヘッド部の先端面に接して上記中心軸を中心に回動可能に保持される回動部材と、
上記回動部材の先端側で回動部材と共に回転し、その先端面には散水口を穿設した散水部材とからなる散水ヘッドであって、
上記回動部材には、上記流出口と同一円周上にそれぞれ別個の入口を基端面に開口し、互いに独立した径の異なる複数の通水孔を有し、
上記散水部材内には上記各通水孔の下流に位置して上記散水口へ連通する共通通水路を有し、
上記散水部材の回動操作により上記流出口と一の上記通水孔の入口とが連通して上記散水口から散水されるとともに、他の通水孔の入口が上記通水ヘッド部の先端面によって閉鎖されることを特徴とする散水ヘッド。
【請求項2】
上記ヘッド本体の先端面には、上記流出口と同一円周上に、周縁をOリングで塞いだ窪み状の閉鎖部を設け、
上記回動操作により上記流出口と一の上記通水路の入口とを接続したときには、他の上記通水路の入口が上記閉鎖部によって閉鎖されることを特徴とする請求項1記載の散水ヘッド。
【請求項3】
上記回動部材の上記複数の通水孔の先端と上記散水部材との間には間隙を設けて、これを上記共通通水路としたことを特徴とする請求項1又は2記載の散水ヘッドの流量制御装置。
【請求項4】
上記回動部材には、上記複数の通水孔から独立して、基端面の上記各入口と同一円周上に形成した独立入口から上記散水部材に形成した独立散水口へと連通する独立通水孔を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の散水ヘッド。
【請求項5】
上記通水ヘッド部の先端面と上記回動部材の基端面との一方から軸材を突出し、他方が上記軸材に軸支されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の散水ヘッド。
【請求項6】
上記回動部材と上記散水部材との一方が他方を被覆することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の散水ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−274198(P2010−274198A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129269(P2009−129269)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(592243553)株式会社タカギ (31)
【Fターム(参考)】