説明

断熱構造

【課題】 建築物の壁部、床部、屋根部や天井部等を断熱するのに用いる断熱構造を提供する。
【解決手段】 面材表面上に硬質ウレタンフォーム断熱材を積層してなる断熱構造であって、面材はロール状にすることが可能な軟質性材料からなり、硬質ウレタンフォーム断熱材は、独立気泡率が10%以下でありかつ密度が10〜25Kg/m3である低密度連続気泡構造硬質ウレタンフォームである断熱構造。本発明の断熱構造は、従来当然のように用いられていた中板材を省略可能とすることで、建築物の断熱構造を簡略化かつ軽量化し、断熱性能を維持しながら、断熱施工をより簡易に行うことを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱するのに用いる断熱構造に関する。詳細には、本発明は、建築物の壁部、床部、屋根部や天井部等を断熱するのに用いる断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の断熱構造としては、柱及び間柱の外側に下地板材を固定し、その内側又は外側に硬質ウレタンフォームをスプレーしたものが通常使用される(例えば特許文献1を参照)。特許文献1に開示される建築物の外壁部は、具体的には、屋外側から、順に
外壁材−通気胴縁−透湿防水紙付き中板材−現場発泡ウレタン・柱−内壁材
の構成となっている。すなわち、硬質ウレタンフォームは、中板材に吹き付けられるような構成となっている。
【0003】
通常の断熱スプレー用硬質ウレタンフォームは、独立気泡率が高いいわゆる独立気泡組織構造のものである。かかるフォームは、各々の独立気泡内に存在するフロン等のガスの熱伝導率が空気に比べて低いことにより、高い断熱性と言う性質を有する。しかし、独立気泡組織構造のものは、発泡圧が高く、セル内ガスの膨張が温度に影響され、温度差によってセル内ガスの膨張が変化することから、寸法安定性に乏しく、大きな圧力にて収縮現象を起こす。更に、硬質ウレタンフォームは、発泡圧が大きい。すなわち、軟質面材に従来の硬質ウレタンフォームをスプレーしたのでは、収縮現象により面材に大きな圧力がかかり、面材が破れたり、発泡圧によってスプレー面の反対側の面に大きなデコボコがついてしまうのである。更には、硬質ウレタンフォームは、生成時に一般に反応性が大きく、大きな内部発熱を伴い、高温状態を経て硬化・生成されるが、実使用時の断熱層の温度は、冬季において0℃近辺まで低下することもあり、当該温度差によりウレタン自身が割れてしまうこともある。従って、従来の独立気泡ウレタンフォーム断熱構造においては、スプレーを行うに際し、上述した問題を克服するために、必ず高い発泡圧や収縮力や高温に耐える程の機械的強度を有する下地板材、例えば合板、板状断熱材等を必要としていたのである。
【0004】
独立気泡ウレタンフォーム断熱構造において、合板に代えてプラスチックフィルム基材に断熱材付着層を積層させた吹付用積層シートを用いることが提案された(例えば特許文献2を参照)。特許文献2において用いられるプラスチックフィルム基材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等が例示されているが、かかるフィルム基材は、独立気泡ウレタンフォームの発泡圧で変形しないことが要件とされる。しかし、独立気泡ウレタンフォームの発泡圧は非常に大きく、例示されているような通常のプラスチックフィルムでは、独立気泡ウレタンフォームの発泡圧で変形しない程の機械的強度を持たないことから、特許文献2に開示される吹付用積層シートは、現実的なものではない。
【0005】
次に、建築物の天井部に設ける断熱構造において、小屋裏内部の昼間の高温空気流が直接断熱材に加熱蓄積されないように断熱材上面に熱反射箔を層着した遮熱材を配置することが提案された(例えば特許文献3を参照)。特許文献3において用いられる遮熱材は、複数のシートからなり、上面シートの上面にはアルミ箔が層着される。しかし、特許文献3において断熱材として開示される硬質ウレタンフォームは、通常のものであって、本発明において用いる硬質ウレタンフォームとは異なるものである。また、特許文献3において、遮熱材の下面シートの下面に硬質ウレタンフォームが吹き付けられることから、必然的にこの下面シートは、独立気泡ウレタンフォームの発泡圧や収縮圧で変形しないことが要件とされる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−97829号公報
【特許文献2】特開平10−266377号公報
【特許文献3】特開2000−355989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記事情に鑑み、従来の断熱性能を維持しながら、断熱施工をより簡易にかつ安価に行うことが可能となる断熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、いわゆる連続気泡ウレタンフォームであって、低密度のものについては、独立気泡ウレタンフォームの発泡圧又は収縮圧で変形しない程の機械的強度を持たない面材に直接吹き付けることにより得られる断熱構造によって前記課題を達成できることを見出した。また、このような断熱構造は、特殊な連続気泡ウレタンフォームを吹き付けることにより得られることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、以下の1〜10の発明が提供される。
1.面材表面上に硬質ウレタンフォーム断熱材を積層してなる断熱構造であって、面材はロール状にすることが可能な軟質性材料からなり、硬質ウレタンフォーム断熱材は、独立気泡率が10%以下でありかつ密度が10〜25Kg/m3である低密度連続気泡構造硬質ウレタンフォームである断熱構造。
2.軟質性材料が透湿性及び防水性を備えた材料である上記1記載の断熱構造。
3.軟質性材料が遮熱性を備えた材料である上記1記載の断熱構造。
4.軟質性材料が、独立気泡ウレタンフォーム原液を吹き付けた場合に、該フォームの発泡圧又は収縮圧で変形しない程の機械的強度を持たない上記1〜3のいずれか一記載の断熱構造。
5.軟質性材料が紙材、紙材の片面又は両面にプラスチックフィルムをラミネートしたラミネート紙材、フィルム材、繊維シート材、不織布にプラスチックを含浸させた繊維系シート材或は不織布の片面に合成樹脂微多孔質膜を被覆又は積層したシート材から選ぶ一種又はそれ以上である上記1、2又は4記載の断熱構造。
6.建築物の壁部、床部を断熱する目的で用いる上記1、2、4又は5記載の断熱構造。
7.軟質性材料が、表面に金属の熱反射層を有するシート材である上記1、3又は4記載の断熱構造。
8.軟質性材料が、金属箔を紙、不織布、プラスチックフィルムにラミネートした金属箔ラミネートプラスチックシート材又は金属を紙、不織布、プラスチックフィルムに蒸着した金属蒸着シート材から選ぶ一種又はそれ以上である上記1、3、4又は7記載の断熱構造。
9.建築物の屋根部、天井部を断熱する目的で用いる上記1、3、4、7又は8記載の断熱構造。
10.硬質ウレタンフォーム断熱材を吹き付け施工によって面材表面上に積層させる上記1〜9のいずれか一記載の断熱構造。
【発明の効果】
【0010】
硬質ウレタンフォーム断熱材を軟質性面材に直接吹き付けることが可能であり、当該構造にて実用上使用可能な断熱構造を得ることができる。これにより、従来当然のように用いられていた中板材(下地合板)を省略可能とすることで、建築物の断熱構造を簡略化かつ軽量化し、断熱性能を維持しながら、断熱施工をより簡易に行うことが可能となる。本発明の断熱構造は、新規建築物はもちろんのこと、リフォームにおいても有効に用いることができる。また、本発明において用いる面材は軟質であり、ロール状にすることが可能であり、従来用いられていた合板のような剛性を有するロール状にすることが不可能な材料に比べて、運搬や施工作業が極めて容易であり、断熱施工をより安価にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において用いる面材は、独立気泡ウレタンフォームの発泡圧又は収縮圧で変形しない程の機械的強度を持たない軟質性又は可撓性又は柔軟性のもので十分であり、いわゆる剛性を有する板材とは異なるものである。また、本発明において用いる面材は、ロール状にすることが可能であるようなものを言い、かかる面材を使用することにより、運搬や施工作業が極めて容易になる。本発明において用いる面材は、壁、床等の断熱構造に用いる場合には、壁、床等の中の湿気を逃がし、結露による腐食を防ぐために高い透湿性を備え、かつ外部からの水の浸入を防ぐために防水性を備えたものである。また、屋根部や天井部の断熱構造に用いる場合には、屋根から小屋裏内部に入り込む侵入熱を阻止するため、又は屋根から小屋裏内部に入り込む侵入熱が蓄積して高温となった小屋裏内部熱が天井を通って下部の屋内に熱伝達するのを阻止するために、遮熱性を有するものである。
【0012】
このような面材として、建築物の壁部や床部の場合、例えばクラフト紙、中芯紙等の紙材、例えばクラフト紙の片側にポリエチレンフィルムをラミネートしたような紙材の片面または両面にプラスチックフィルムをラミネートしたラミネート紙面材、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルム面材、ポリエステル不織布のような繊維シート材、不織布にプラスチックを含浸させたような繊維系シート材等を挙げることができる。具体的には、従来の断熱構造において、下地合板に貼着されていた透湿防水シートを、そのまま面材として用いるものであり、例えば、透湿防水シートとして広く使用されている、デュポン社製「タイベック」等が好ましく使用される。
【0013】
また、不織布の片面に合成樹脂微多孔質膜を被覆又は積層したシート材も面材として使用することができる。この場合、不織布として、ポリエチレン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン等の合成繊維、又はセルロース系、タンパク質系、その他の半合成繊維、再生繊維等を挙げることができる。合成樹脂微多孔質膜は、ポリウレタン、ポリアクリル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂に化学的又は物理的処理を施して微多孔を多数有するものである。形成したシート材に、必要に応じて撥水剤を含浸させる。このようなシート材の詳細については、実公平4−28746号公報に記載されている。中でも、セーレン社製「ラミテクト」は、ポリエステル不織布と合成樹脂微多孔質膜とを積層してなるハウスラップ材であり、高い透湿性及び防水性の両方を備えており、建築物の壁部や床部の断熱構造用面材として好ましい。
【0014】
次に、面材として、建築物の天井部や屋根部の場合、表面に金属の熱反射層を有するシート材等を挙げることができる。屋根から小屋裏内部に入り込む侵入熱又は屋根から小屋裏内部に入り込む侵入熱が蓄積して高温となった小屋裏内部熱は、シート材表面の熱反射層による反射作用で下部への熱伝達を阻止する。
【0015】
このような面材として、アルミ箔、錫箔のような金属箔を紙、不織布、プラスチックフィルムにラミネートした金属箔ラミネートプラスチックシート材、例えばアルミ箔ラミネートポリエチレンシート材、アルミのような金属を紙、不織布、プラスチックフィルムに蒸着した金属蒸着シート材等を挙げることができる。中でも、アルミ箔ラミネートポリエチレンシート材が好ましい。
【0016】
本発明において用いる硬質ポリウレタンフォームは、ポリオールとポリイソシアネートとを触媒、発泡剤、整泡剤、その他の助剤の存在下に反応させて得られるものであり、独立気泡率が10%以下と低くかつ密度が10〜25Kg/m3と小さい低密度連続気泡構造硬質ウレタンフォームである。なお、本発明の硬質ウレタンフォームには、イソシアヌレートフォームも含まれる。
【0017】
通常の従来断熱スプレー現場発泡用硬質ウレタンフォームは、優れた断熱性能が得られることから、いわゆる独立気泡型のものであり、原料により差はあるが85%以上の独立気泡率を有するものであった。しかし、独立気泡硬質ウレタンフォームは、前述した理由、すなわち収縮現象による面材の破れ、高い発泡圧によるスプレー面の反対側における平滑性の低下、更には温度差によるウレタン自身の割れ等により、本発明において用いることができない。これに対して、本発明において用いる硬質ポリウレタンフォームは、独立気泡率が10%以下と低い連続気泡構造を有することから、発泡圧が低く、収縮し難いことから、本発明において用いる軟質面材表面上に吹き付けてもスプレー面の反対側における面材の顕著な平滑性の低下が無く、更には温度差も小さいことからウレタン自身の割れ等も見られない。
【0018】
本発明において、硬質ポリウレタンフォームは、密度が10〜25Kg/m3の範囲のものを用いる。独立気泡型硬質ポリウレタンフォームは、通常30Kg/m3程度の密度を有し、低密度にするのは処方的に困難である。また、独立気泡率が10%以下の硬質ポリウレタンフォームであっても、密度が25Kg/m3を越えるものは、吹き付けウレタンの重量が大きくなるため軟質面材がウレタンを支持し難くなり、スプレー面の反対側に大きなデコボコがついたり、面材が引き裂かれたりして面材に悪影響を及ぼすおそれが出てくる。
【0019】
他方、独立気泡型の従来ウレタンに比べ、独立気泡率10%以下のいわゆる連続気泡型ウレタンは、断熱性能面ではやや劣る。よって、断熱層として従来のウレタンと同程度の断熱性能を発現するためには、断熱層の厚みを、従来型のウレタンに比べ厚く吹き付ける必要がある。そのように厚く吹き付ける場合において、密度の高いウレタンを用いることは、重量的に見て重くなり、結果的に軟質面材の破れ、ウレタンの剥がれ等の問題が生じる恐れが生じることより、好ましくない。本発明において用いる低密度連続気泡構造硬質ウレタンフォームは、密度が10〜25Kg/m3の範囲、好ましくは11〜23Kg/m3の範囲であり、より好ましくは12〜20Kg/m3の範囲である。密度が10Kg/m3よりも 低いと、吹き付け施工を行う上で、少量の吹き付けであっても、大きく発泡することになり、かえって吹き付け施工が非常に難しくなる。例えば、吹き付け厚みを揃えることが困難となる。従って、本発明において用いる低密度連続気泡構造硬質ウレタンフォームは、密度が10Kg/m3以上、好ましくは12Kg/m3以上となる。
なお、本発明における密度は、JISA9526に準じて測定した密度を示し、いわゆる吹付けフォームの芯密度である。
【0020】
独立気泡率が10%以下でありかつ密度が10〜25Kg/m3の範囲の硬質ウレタンフォームであれば、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、触媒・発泡剤・整泡剤等その他の成分等、製造原料的に特に限定するものではない。原料としては、例えば以下を挙げることができる。
【0021】
ポリオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等の多官能性水酸基含有化合物又はトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミノ基及び水酸基を含有する化合物或いはエチレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノトルエンなどの多官能性アミノ基含有化合物に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加した2〜8個の水酸基を含有し、平均水酸基価が20〜4000程度のポリエーテルポリオール或いはこれらのポリエーテルポリオールにビニル基含有化合物を重合したポリマーポリオール等を例示することができる。
【0022】
主として現場発泡に使用することからすれば、瞬時に発泡・硬化することが望まれるため、エチレンジアミン等の自己活性の高い化合物を開始剤としたポリエーテルポリオールを含むことが好ましく、また、連通化させることからすれば、いわゆる軟質ウレタンフォームに通常使用されるグリセリン等にアルキレンオキシドを付加させた平均水酸基価20〜150程度のポリエーテルポリオールを併用するのが好ましい。なお、両タイプのポリオールを併用する場合、相分離の問題が生じる恐れがあるため、平均水酸基価250〜500程度のポリオールをさらに併用するのがより好ましい。
【0023】
ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのポリイソシアネートをポリオールと反応させたり、カルボジイミド化した変性体及びこれらの混合物等を用いることができる。中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート(クルードMDI、ピュア−MDI、ポリメリックMDI等)が好ましい。
【0024】
発泡剤としては、水のみを発泡剤として用いることが環境的には好ましい。水を発泡剤として用いる場合に、水はポリイソシアネートと反応して二酸化炭素を発生させ、発泡剤として作用し、かつまた反応熱による水蒸気としてウレタンの連続気泡化にも関与する。好ましい水の添加量はポリオール100重童部に対して10〜40重量部である。
【0025】
触媒としては、既に長く知られているアミン系、錫系、鉛系、カリウム塩系等の触媒を用いることができる。アミン系触媒としては、例えばトリメチルアミンエチルピペラジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等の3級アミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、ジメチルエタノールアミンなどのアルカノールアミン等を挙げることができる。錫系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、スタナスオクテート等を挙げることができる。鉛系触媒としては、オクチル酸鉛等を挙げることができる。カリウム塩系触媒としては、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等を挙げることができる。
【0026】
整泡剤としては、一般に軟質スラブ、軟質モールド用や硬質フォーム用として用いられる、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン・ポリアルキレン共重合体、ポリアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサンなどのシリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0027】
さらに必要に応じて、難燃剤、減粘剤、酸化防止剤、着色剤等の助剤を用いることができる。
【0028】
低密度連続気泡硬質ウレタンフォームの原料を面材にスプレーする方法については、従来から使用されているスプレー発泡機をそのまま用いることができ、またスプレーする方法についても、特に限定されるものではなく、従来と同様なスプレー方法、例えば現場発泡スプレー法を用いればよい。
【0029】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施の態様を説明するが、本発明は、これらの実施の態様に限定されない。
図1を参照すると、木造建築物の外壁部1の断面を示す。外壁部1は、屋外側2より屋内側3に向かって順に、外壁材4、胴縁5、通気層6、面材7、柱8、間柱9、低密度連続気泡硬質ウレタンフォーム10を配置してなる。面材7は、柱8、間柱9等の軸組構造体の屋外側2にタッカー止めにより、又は接着剤、両面テープ等によって取り付ける。柱8、間柱9等に取り付けた面材7に、屋内側3より低密度連続気泡硬質ウレタンフォームの原液をスプレー発泡機を使用してスプレーして発泡させる。発泡が終了して、面材7に低密度連続気泡硬質ウレタンフォーム10が付着する。こうして、本発明の断熱構造11を形成する。面材7に原液をスプレーする前又は後に、胴縁5を面材7の屋外側2に取り付け、次いで、胴縁5の屋外側2に外壁材4を取り付けて外壁部1を構築する。
【0030】
図2を参照すると、図2(A)は木造建築物の屋根部101及び天井部201の断面を示す。図2(B)は、同図(A)のA−A’における断面を示す。屋根部101は、屋外側102より屋内側103に向かって順に、屋根材104、ルーフィング105、野地合板106、胴縁107、通気層108、面材109、垂木110、低密度連続気泡硬質ウレタンフォーム111を配置してなる。垂木110の屋外側102に面材109を取り付ける。この場合、面材109は、熱反射層が屋外側102になるようにする。垂木110への面材109の取り付けは、タッカー止めにより、又は接着剤、両面テープ等によって行うことができる。垂木110に取り付けた面材109に、屋内側103より低密度連続気泡硬質ウレタンフォームの原液をスプレー発泡機を使用してスプレーして発泡させる。発泡が終了して、面材109に低密度連続気泡硬質ウレタンフォーム111が付着する。こうして、本発明の断熱構造112を形成する。面材109に原液をスプレーする前又は後に、胴縁107を面材109の屋外側102に取り付け、次いで、胴縁107の屋外側102に野地合板106、ルーフィング105、次いでその上に屋根材104を取り付けて屋根部101を構築する。
【0031】
図2(C)は、同図(A)のB−B’における断面を示す。面材204を桁205の下面に取り付ける。この場合、面材204は、熱反射層が小屋裏内部202側になるようにする。桁205への面材204の取り付けは、タッカー止めにより、又は接着剤、両面テープ等によって行うことができる。面材204に、屋内側103、すなわち面材204に関して下方又は床側より低密度連続気泡硬質ウレタンフォームの原液をスプレー発泡機を使用してスプレーして発泡させる。発泡が終了して、面材204に低密度連続気泡硬質ウレタンフォーム206が付着する。こうして、本発明の断熱構造207を形成する。
【実施例】
【0032】
以下に実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0033】
実施例1〜4
実施例において、下記に示す成分を表1に示す質量部割合で配合して面材A又はBにスプレーした:
ポリオールA:グリセリン系ポリエーテルポリオール(水酸基価:30)
ポリオールB:グリセリン系ポリエーテルポリオール(水酸基価:300)
ポリオールC:グリセリン系ポリエーテルポリオール(水酸基価:100)
ポリオールD:グリセリン系ポリエーテルポリオール(水酸基価:410)
ポリオールE:トリエタノールアミン系ポリエーテルポリオール(水酸基価:350)
ポリオールF:トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール(水酸基価:410)
ポリオールG:エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール(水酸基価:600)
アミン触媒A:東ソー社製「トヨキャットET」
アミン触媒B:花王社製「カオーライザーNo.26」
製泡剤A :東レ・ダウコーニング・シリコーン社製「SF2937F」
製泡剤B :東レ・ダウコーニング・シリコーン社製「SF2938F」
難燃剤 :トリス(クロロプロピル)ホスフェート
金属触媒 :日本化学産業社製「ニッカオクチックスPb(17%)」
ポリイソシアネート:住化バイエルウレタン社製「スミジュール44V20」

面材A :透湿防水防風シート(セーレン社製「ラミテクト」)
面材B :アルミニウム箔ラミネートポリエチレン面材(密度:250g/m3、厚み:0.3mm、アルミ箔厚み:7μm)
【0034】
硬質ウレタンフォームのスプレーを下記の通りにして行った:図3に示す試験用軟質面材付き枠体を作成した。枠材は、硬質ウレタンの両面をクラフト紙でサンドイッチしたものを切り出して作成し、枠体の片面全体を覆うようにして面材A又は面材Bを両面テープにてテンションをかけてたるみの無いように貼着した。面材Bを貼着する場合には、ポリエチレン面(すなわち、アルミニウム箔面と反対の面)を枠体に貼着した。下記の表1に示す成分をポリオール成分とポリイソシアネート成分とを容積比1:1で混合して、面材を貼着した側と反対の枠材が着いた側より枠材で囲まれた吹付け面にスプレーした。
【0035】
成分を枠材で囲まれた吹付け面にスプレーし、発泡が終了した後に、得られた供試体の吹付け厚みを測定し、その後、供試体を低温室(3℃設定)に10日間放置した。放置後の供試体について、面材(スプレーした面とは逆の面)の平滑性を目視により評価した。得られた結果を表1に示す。
表1中:◎:面材に若干のシワが見られるが、凹凸は見られない。
○:面材に凸部が見られるが、使用に支障はない。
×:面材に大きな凹凸が見られ、通気層を遮断する恐れがあり、断熱材 として使用できない。
【0036】
平滑性を評価した後に、左右2本の縦枠の反りをそれぞれ測定した。
この試験は、ウレタンフォームの温度差による収縮圧力を示すものである。縦枠の反りが大きい程、温度差によるフォームの収縮が大きく、現場施工では、フォームのひびや割れ現象が出現する。
【0037】
密度、独立気泡率及び熱伝導率については、別途JIS法又はASTM法に準拠して供試体からサンプルをカットして測定した。
フォーム密度:JIS A 9526
独立気泡率 :ASTM D2856(発泡方向に対して平行)
熱伝導率 :JIS A 9526(発泡方向に対して平行)
【0038】
比較例1及び2
実施例に示す成分に代えて、市販されているクララフォームHR300NSG(倉敷紡績社製)を、実施例と同様にして面材A又はBの吹付け面にスプレーした。
【0039】
【表1】

【0040】
上記の比較例1及び2から明らかな通りに、通常使用されている独立気泡型硬質ウレタンフォームを軟質性面材に付着してなる断熱構造は、吹付け面の裏面の凹凸が大きく、通常20mm〜30mm程度の幅を有する通気層を遮断する恐れがあり、また有効な断熱性能が得られない。また、温度差による枠材の反りが顕著に大きく、これは、温度差によるフォームの収縮が大きく、現場施工では、フォームのひびや割れ現象が生じ、断熱性能が不完全になり、またフォーム内部や屋内での結露の発生に至ることを表す。
これに対し、実施例1〜4から明らかな通りに、独立気泡率が10%以下でありかつ密度が10〜25Kg/m3である低密度連続気泡構造硬質ウレタンフォームを軟質性面材に付着してなる本発明の断熱構造は、通常使用されている独立気泡型硬質ウレタンフォームに比べて断熱性能面ではやや劣る。よって、断熱層として従来のウレタンと同程度の断熱性能を発現するために、断熱層の厚みを厚く吹き付けても、吹き付け面の裏面の凹凸が小さく、実用上の何ら問題となるものではなかった。また、かつ温度差による枠材の反りが小さく、これは、温度差によるフォームの収縮が小さく、現場施工において、フォームのひびや割れ現象が生じず、断熱性能が不完全になったり又はフォーム内部や屋内で結露が発生する等の問題がないことを表す。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の断熱構造は、一般的に断熱するのに用いる断熱構造材として使用することができる。特に、本発明の断熱構造は、建築物の壁部、床部、屋根部、天井部等を断熱するのに用いる断熱構造材として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の断熱構造を使用した木造建築物の外壁部及び天井部の断面を示す。
【図2】Aは、本発明の断熱構造を使用した木造建築物の屋根部の断面を示す。Bは、AのA−A’における断面を示す。Cは、AのB−B’における断面を示す。
【図3】実施例において用いた試験用軟質面材付き枠体を示す。
【符号の説明】
【0043】
4 外壁材
5 胴縁
6 通気層
7 面材
8 柱
9 間柱
10 低密度連続気泡硬質ウレタンフォーム
11 断熱構造
104 屋根材
105 ルーフィング
106 野地合板
107 胴縁
108 通気層
109 面材
110 垂木
111 低密度連続気泡硬質ウレタンフォーム
112 断熱構造
204 面材
205 桁
206 低密度連続気泡硬質ウレタンフォーム
207 断熱構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面材表面上に硬質ウレタンフォーム断熱材を積層してなる断熱構造であって、面材はロール状にすることが可能な軟質性材料からなり、硬質ウレタンフォーム断熱材は、独立気泡率が10%以下でありかつ密度が10〜25Kg/m3である低密度連続気泡構造硬質ウレタンフォームである断熱構造。
【請求項2】
軟質性材料が透湿性及び防水性を備えた材料である請求項1記載の断熱構造。
【請求項3】
軟質性材料が遮熱性を備えた材料である請求項1記載の断熱構造。
【請求項4】
軟質性材料が、独立気泡ウレタンフォーム原液を吹き付けた場合に、該フォームの発泡圧又は収縮圧で変形しない程の機械的強度を持たない請求項1〜3のいずれか一記載の断熱構造。
【請求項5】
軟質性材料が紙材、紙材の片面又は両面にプラスチックフィルムをラミネートしたラミネート紙材、フィルム材、繊維シート材、不織布にプラスチックを含浸させた繊維系シート材或は不織布の片面に合成樹脂微多孔質膜を被覆又は積層したシート材から選ぶ一種又はそれ以上である請求項1、2又は4記載の断熱構造。
【請求項6】
建築物の壁部、床部を断熱する目的で用いる請求項1、2、4又は5記載の断熱構造。
【請求項7】
軟質性材料が、表面に金属の熱反射層を有するシート材である請求項1、3又は4記載の断熱構造。
【請求項8】
軟質性材料が、金属箔を紙、不織布、プラスチックフィルムにラミネートした金属箔ラミネートプラスチックシート材又は金属を紙、不織布、プラスチックフィルムに蒸着した金属蒸着シート材から選ぶ一種又はそれ以上である請求項1、3、4又は7記載の断熱構造。
【請求項9】
建築物の屋根部、天井部を断熱する目的で用いる請求項1、3、4、7又は8記載の断熱構造。
【請求項10】
硬質ウレタンフォーム断熱材を吹き付け施工によって面材表面上に積層させる請求項1〜9のいずれか一記載の断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−57398(P2006−57398A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242699(P2004−242699)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】