説明

新規なグアニジン誘導体及びその医学的使用

本発明は、低コンダクタンスのカルシウム活性カリウムチャネル(SKチャンネル)の調節因子として有用な新規のグアニジン誘導体に関する。他の態様において本発明は、治療を目的とする方法でのこれら組成物の使用及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コンダクタンスのカルシウム活性カリウムチャネル(SKチャンネル)の調節因子として有用な新規のグアニジン誘導体に関する。他の態様において本発明は、治療を目的とする方法でのこれら組成物の使用及び本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低コンダクタンスのカルシウム活性カリウムチャネル(SKチャンネル)の3つのサブタイプを複製したものが、SK1、SK2及びSK3である(ゲノム用語を用いてのKCNN1−3に相当する)。これらのチャンネル活性は、チャンネルに構造的に結合しているカルモジュリンを介して細胞内遊離カルシウム([Ca2+)の濃度により決定する。SKチャンネルは、([Ca2+)によりしっかり調整される。つまり生理的範囲において、0.1μM付近までは[Ca2+で閉まるが、1μMでは、[Ca2+で十分に活性化する。カリウムに対して選択的であり、開放されているか又は活性のあるSKチャンネルは、細胞の膜電位への過分極的影響を有する。SKチャンネルは、中枢神経系内で幅広く発現する。SK1及びSK2の分布は、高度の重複を示し、マウスの脳内の新皮質、辺縁系、海馬の領域で最も高い出現レベルを示す。反対に、SK3チャンネルは、基底核、視床及び脳幹モノアミン作動性ニューロン、例えば背側縫線核、青斑核及び腹側被蓋領域(Sailer等、:「マウス脳内の低コンダクタンス・Ca2+活性カリウムチャンネルの3つのサブユニットSK1、SK2、SK3の免疫組織化学的分布の比較(Comparative immunohistochemical distribution of three small−conductance Ca2+−activated potassium channel subunits,SK1,SK2,and SK3 in mouse brain)」、Mol.Cell.Neurosci.2004 26 458〜469)において高い発現レベルを示す。SKチャンネルは、骨格筋、腺細胞、肝臓細胞及びT−リンパ球を含めたいくつかの末端細胞にも存在する。
【0003】
活性SKチャンネルの過分極性作用は、興奮性細胞の発射パターン及び興奮性の制御に重要な役割を演じる。アパミン及びビククリンメトブロマイドなどのSKチャンネル阻害物質は、興奮性を増加させることが実証されている一方で、オープナー1−EBIOは、電気的活動を減少させることができる。電圧依存性の経路を介してのCa2+流入量が、膜電位に対して非常に敏感である非興奮性細胞において、SKチャンネル活性剤は、推進力を増加させる一方、SKチャンネル遮断剤は、脱分極作用を有し、これによってカルシウムに対する推進力を減少させることになる。
【0004】
[Ca2+と膜電位との結合においてSKチャンネルが果たす重要な役割を踏まえると、SKチャンネルは、新規治療薬を開発するための興味深い標的である。
【0005】
SKチャンネル及びSKチャンネル調節因子の総論は、Liegeois J−F等、「低コンダクタンスのカルシウム活性カリウム(SK)チャンネルの調整:医化学における新しいチャレンジ(Modulation of small conductance calcium−activated potassium(SK)channels:a new challenge in medicinal chemistry)」Current Medicinal Chemistry 2003、10 625〜647に見出すことができる。
【0006】
SKチャンネルの既知の調整因子は、大きな分子又はペプチド(例えば、アパミン、スキラトキシン、ツボクラリン、塩化デクアリニウム及びUCL1684)であること、又は低電位を有する(例えば1−EBIO及びリルゾール)ことが不利である。よって、最適化した薬理学的特性を有する化合物が引き続き必要である。特に、SK3チャンネル調整因子のような選択性リガンドの必要性は大きい。
【0007】
Struve等、J.Org.Chem 1977 42(25)4035〜4040は、幾種かのN−ホスホノ−2−イミノイミダゾリジン(環状グアニジン)の合成及び構造割当について記載している。化合物1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−イリデンアミンは、中間化合物として開示されている。しかしこの化合物の生物活性は、報告されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は式Iのグアニジン誘導体、その異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又はその医薬として許容可能な塩を提供する
【化1】


[式中、
m及びnは、互いに独立して、0、1又は2であり、但し、mが0である場合、nも0ではなく、
Aは、II、III及びIVから選択される結合基を表し
【化2】


(式中、sは、0、1又は2であり、
tは、1、2又は3であり、
R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環がハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキル−アミノ及びN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される置換基で1回又は複数回場合によって置換されていてもよい)、
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキルアミノ及び/又はN,N−ジアルキルアミノを表し、但し、Aが、結合基II(sは0である)である場合、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは水素と異なり、R、R、R、R及びR10の少なくとも1つは水素と異なる]。
【0009】
別の態様において本発明は、本発明のグアニジン誘導体、又は任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬として許容可能なその塩、又はそのプロドラッグの治療有効量を含む医薬組成物を、少なくとも1種の医薬として許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤の少なくとも1種と共に提供する。
【0010】
別の態様の見地から、本発明は、本発明のグアニジン誘導体、又は任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬として許容可能なその塩の、薬物製造のための使用に関する。
【0011】
さらに別の態様において本発明は、ヒトを含めた動物生体の疾患若しくは障害若しくは状態を治療、予防又は緩和するための方法であって、この疾患、障害又は状態がSKチャンネルの調節に反応し、この方法が本発明のグアニジン誘導体、任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又はその医薬として許容可能な塩の治療有効量を、これを必要とする、そのような動物生体へ投与するステップを含む。
【0012】
本発明の他の目的は、以下の詳細な説明及び実施例から、当業者に明白となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
グアニジン誘導体
第1の態様において、本発明は、式Iのグアニジン誘導体、その異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又はその医薬として許容可能な塩を提供する
【化3】


[式中、
m及びnは、互いに独立して、0、1又は2であり、但し、mが0である場合、nも0ではなく、
Aは、II、III及びIVから選択される結合基を表し
【化4】


(式中、sは、0、1又は2であり、
tは、1、2又は3であり、
R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキルアミノ及びN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される置換基で1回又は複数回場合によって置換されていてもよい)、
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキルアミノ及び/又はN,N−ジアルキルアミノを表し、但し、Aが、結合基II(sは0である)である場合、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは水素と異なり、R、R、R、R及びR10の少なくとも1つは水素と異なる。]
【0014】
好ましい実施形態において、本発明のグアニジン誘導体は、式Iの化合物である(式中m及びnは、互いに独立して、0、1又は2であり、但し、mが0である場合、nも0ではない)。
【0015】
さらに好ましい実施形態において、m及びnのうちの1個が、0、1又は2であり、その他のm及びnが1又は2である。
【0016】
別のより好ましい実施形態において、m及びnのうちの1個は、0又は1であり、そのs他のm及びnは1である。
【0017】
第3のより好ましい実施形態において、m及びnは両方とも1を表す。
【0018】
第4のより好ましい実施形態において、mは1を表し、nは0を表す。
【0019】
別の好ましい実施形態において、本発明のグアニジン誘導体は、式Iの化合物であり、[式中Aは、II、III及びIVから選択される結合基を表す
【化5】


(式中、sは、0、1又は2であり、
tは、1、2又は3であり、
R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環がハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキルアミノ及びN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される置換基で1回又は複数回場合によって置換されていてもよい)]。
【0020】
さらに好ましい実施形態Aは、以下を表す。
【化6】

【0021】
別の好ましい実施形態において、Aは以下を表す。
【化7】

【0022】
第3のさらに好ましい実施形態において、Aは以下を表す。
【化8】

【0023】
第4のさらに好ましい実施形態において、Aは以下を表す。
【化9】

【0024】
第5のさらに好ましい実施形態において、Aは以下を表す
【化10】


(式中、R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキルアミノ及びN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される置換基で1回又は複数回場合によって置換されていてもよい)。
【0025】
さらに好ましい実施形態において、R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ及びシアノからなる群から選択される置換基で1回又は複数回場合によって置換されていてもよい。
【0026】
さらにより好ましい実施形態において、R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環が場合によって、ハロ、特にフルオロ又はクロロにより4回置換されてもよい。
【0027】
別のさらに好ましい実施形態において、R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環が、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキルアミノ及びN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される置換基で1回又は2回場合によって置換されていてもよい。
【0028】
第3の好ましい実施形態において、本発明のグアニジン誘導体は、式Iの化合物であり、式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、N−アルキルアミノ及び/又はN,N−アルキルアミノを表す。
【0029】
さらに好ましい実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表す。
【0030】
さらにより好ましい実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表す。
【0031】
さらにより好ましい実施形態において、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0032】
特に好ましい一実施形態において、R、R、R、R及びRの1個並びにR、R、R、R及びR10の1個は、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、残りのR、R、R、R及びR並びにR、R、R、R及びR10は、水素を表す。
【0033】
第3のさらにより好ましい実施形態において、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、水素を表す。
【0034】
第4のさらに好ましい実施形態において、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、水素を表す。
【0035】
第5のさらに好ましい実施形態において、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、水素を表す。
【0036】
別の特に好ましい実施形態において、R、R、R、R及びRの2個並びにR、R、R、R及びR10の2個は、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、残りのR、R、R、R及びR並びにR、R、R、R及びR10は、水素を表す。
【0037】
さらに好ましい実施形態において、R、R、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0038】
別のさらに好ましい実施形態において、R、R、R及びR10は、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R及びRは、全て水素を表す。
【0039】
第3のさらに好ましい実施形態において、R、R、R及びR10は、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R及びRは、全て水素を表す。
【0040】
第4のさらに好ましい実施形態において、R、R、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0041】
第5のさらに好ましい実施形態において、R、R、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0042】
第6のさらに好ましい実施形態において、R、R、R及びRは、全てハロ、特にフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを表し、R、R、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0043】
第7のさらに好ましい実施形態において、R、R、R及びRは、全てフルオロ又はクロロを表し、R、R、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0044】
さらに好ましい実施形態において、R、R、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0045】
さらにより好ましい実施形態において、R及びRの両方は、アルコキシ、特にメトキシを表し、R及びRの両方は、トリフルオロメトキシを表し、R、R、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0046】
第3の特に好ましい実施形態において、R、R、R、R及びRの3個並びにR、R、R、R及びR10の3個は、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、残りのR、R、R、R及びR並びにR、R、R、R及びR10は、水素を表す。
【0047】
さらに好ましい実施形態において、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0048】
別のさらに好ましい実施形態において、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0049】
第3のより好ましい実施形態において、R、R、R、R、R及びRは、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0050】
さらに好ましい実施形態において、R、R、R、R、R及びRは、全てハロ、特にフルオロ又はブロモを表し、R、R、R及びR10は、全て水素を表す。
【0051】
さらにより好ましい実施形態において、R及びRの両方は、ブロモを表し、R、R、R、及びRは、全てフルオロを表し、R、R、R、及びR10は、全て水素を表す。
【0052】
第4のさらに好ましい実施形態において、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R及びRは、全て水素を表す。
【0053】
第5のさらに好ましい実施形態において、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、R、R、R及びRは、全て水素を表す。
【0054】
最も好ましい実施形態において、本発明のグアニジン誘導体又はその医薬として許容可能な塩は、以下の通りである。
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジクロロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン;
(±)−trans−1,3−ビス−(3,4−ジフルオロ−ベンジル)オクタヒドロ−ベンゾイミダゾール−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(4−フルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)テトラヒドロピリミジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3−トリフルオロメチル−ベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−フェニル−イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2,4,5−トリフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−[1,3]ジアゼパン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3−トリフルオロメトキシベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;又は
1,3−ビス−(2−メトキシ−5−トリフルオロメトキシベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン。
【0055】
上記の2種以上の実施形態の任意の組合せは、本発明の範囲内と考えられる。
【0056】
置換基の定義
本発明の文脈において、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0057】
本発明の文脈において、アルキル基は、一価飽和の、直鎖又は分枝炭化水素鎖を表す。炭化水素鎖は、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリーペンチル、ヘキシル及びイソヘキシルなど、1〜6個の炭素原子(C1〜6アルキル)を含有することが好ましい。好ましい実施形態において、アルキルは、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル及びターシャリーブチルなどのC1〜4アルキル基を表す。本発明の別の実施形態において、アルキルは、C1〜3アルキル基を表し、これは特にメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであってよい。
【0058】
本発明の文脈において、アルコキシ基は、「−O−アルキル」を表し、式中、アルキルは、上記定義の通りである。本発明の好ましいアルコキシ基は、メトキシである。
【0059】
本発明の文脈において、N−アルキル−アミノ基は、セカンダリーアミノ基を表し、N,N−ジアルキルアミノ基は、ターシャリーアミノ基を表し、式中、アルキルは、上記定義の通りである。
【0060】
医薬として許容可能な塩
本発明の化合物は、意図する投与に適した任意の形態で提供し得る。適切な形態は、本発明の化合物の医薬的(すなわち生理的)に許容可能な塩及びプレドラッグ又はプロドラッグの形態を含む。
【0061】
医薬として許容可能な付加塩の例は、無制限に、塩酸塩、臭化水素塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコネート、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホナート、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボネート、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン−p−スルホン酸塩など無毒の無機酸及び有機酸の付加塩を含む。そのような塩は、当分野において知られており記載されている手順で形成してもよい。
【0062】
本発明の化合物の医薬として許容可能なカチオン塩の例は、無制限に陰性基を含有する本発明の化合物の、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、コリン、リシニウム、アンモニウム塩などを含む。そのようなカチオン塩は、当分野において知られており記載されている手順で形成してもよい。
【0063】
本発明の文脈上、N含有化合物の「オニウム塩」は、医薬として許容可能な塩としても考えられる。好ましい「オニウム塩」は、アルキルオニウム塩、シクロアルキルオニウム塩及びシクロアルキルアルキルオニウム塩を含む。
【0064】
本発明の化合物のプレドラッグ又はプロドラッグの例は、本発明による物質の適切なプロドラッグの例を含み、これらは、親化合物の1種又は複数の反応基又は誘導体化基において修飾された化合物を含む。特に興味深いのは、カルボキシル基、ヒドロキシ基、又はアミノ基において修飾された化合物である。適切な誘導体の例は、エステル又はアミドである。
【0065】
本発明の化合物は、溶解性又は非溶解性の形態で水、エタノールなどの医薬として許容可能な溶媒と共に提供してもよい。溶解性の形態は、一水和物、二水和物、半水化物、三水和物、四水和物などの水和形態も含んでよい。本発明の目的において、溶解性の形態は、通常非溶解性の形態と等しいと考えられる。
【0066】
異性体
本発明の化合物は、光学異性体、ジアステレオマー、加えて幾何異性体(シス−トランス異性体)を含めた異なる立体異性体で存在し得ることは、当業者であれば理解されよう。本発明は、そのような異性体の全て及びラセミ混合物を含めた任意のその混合物を含む。
【0067】
ラセミ体は、既知の方法及び技術で光学対掌体に分割することができる。鏡像異性化合物(鏡像異性体中間体)を分離する一方法は、光学活性酸の使用により、塩基による処理で分解したジアステレオマー塩を遊離させる方法である。ラセミ化合物を光学対掌体に分割する別の方法は、光アクティブマトリクスのクロマトグラフィーに基づく。したがって本発明のラセミ化合物は、例えばD−又はL−(酒石酸、マンデル酸又はカンファースルホン酸)の塩の例えば分別結晶により、その光学対掌体に分割することができる。
【0068】
光学異性体を分割するさらなる方法は、当分野において周知である。そのような方法は、Jaques J,Collet A,& Wilen Sが「光学異性体、ラセミ化合物、及び分割」(Enantiomers,Racemates,and Resolutions)、John Wiley and Sons、New York(1981)で記載の方法を含む。
【0069】
光学活性化合物は、光学活性出発物質又は中間体から調製することもできる。
【0070】
標識化合物
本発明の化合物は、標識又は非標識の形態で使用し得る。本発明の文脈において標識化合物は、一般に自然界で存在する原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子で代替される1つ又は複数の原子を有する。この標識によって、前記化合物の定量的検出が容易となるであろう。
【0071】
本発明の標識化合物は、様々な診断方法における診断用ツール、ラジオトレーサー、又は監視剤として、及びin vivoでの受容体画像に対し有用となり得る。
【0072】
本発明の標識異性体は、標識として少なくとも1種の放射性核種を含有するのが好ましい。陽電子を放射する放射性核種は、全て利用の候補となる。本発明の文脈において、放射性核種は、好ましくはH(重水素)、H(三重水素)、13C、14C、131I、125I、123I、及び18Fから選択されるのが好ましい。
【0073】
本発明の標識異性体を検出する物理的方法は、ポジトロン断層法(PET)、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)、核磁気共鳴分光法(MRS)、磁気共鳴映像法(MRI)及びX線コンピュータ断層撮影法(CAT)又はその組合せから選択してもよい。
【0074】
調製法
本発明の化合物は、化学合成のための方法、例えば実施例に記載する従来の方法で調製し得る。本発明の応用に記載されている処理用の出発物質は、既知のもの又は市販の薬品から従来の方法によって容易に調製し得る。
【0075】
本発明の一化合物はまた、従来の方法を用いて本発明の別の化合物に変換することができる。
【0076】
本発明の明細書に記載の最終反応生成物は、従来の技術、例えば抽出、結晶化、蒸留、クロマトグラフィーなどで単離してもよい。
【0077】
生物活性
SKチャンネルを、in vitroで調節する本発明の化合物の能力を試験してもよい。SK流内の化合物誘発による変化を、例えばStrobaek等、「HEK293細胞内に発現した低コンダクタンスのCa2+活性化Kチャンネルの薬理学的特性(Pharmacological characterization of small−conductance Ca2+−activated K channels expressed in HEK293 cells)」、British Journal of Pharmacology 2000 129 991〜999において記載されているように、パッチクランプ技法で測定することにより、機能的調節を求めることができる。この種の測定から、所与の化合物の有効性を、例えば、遮断剤/阻害剤に対するK又はIC50値及びオープナー/活性剤に対するEC50値などとして求めることができる。同様のデータは、他のパッチクランプ構成及び様々な細胞系において内生的に発現するチャンネルから得ることができる。
【0078】
一実施形態において、本発明の化合物は、SK1及びSK2よりもSK3に対して選択性を示す。さらなる実施形態において、本発明の化合物は、正のSKチャンネル調節因子、例えば正のSK3チャンネル調節因子などである。よりさらなる実施形態において、本発明の化合物は、負のチャンネル調節因子、例えば負のSK3チャンネル調節因子などである。特別の実施形態において、本発明の化合物は、SKチャンネル遮断剤、例えばSK3チャンネル遮断剤などである。
【0079】
パッチクランプ実験において観察された活性に基づき、本発明の化合物は、ヒトを含めた哺乳動物の、疾患、障害若しくは状態がSKチャンネルの調節に応答する疾患若しくは障害若しくは状態の治療、予防又は緩和に有用と考えられる。
【0080】
特別の実施形態において、本発明の化合物は、呼吸器疾患、てんかん、痙攣、発作、欠神発作、血管攣縮、冠状動脈攣縮、運動ニューロン疾患、ミオキミア、腎障害、腎嚢胞、膀胱過敏、膀胱痙攣、泌尿生殖器疾患、尿失禁、膀胱流出路閉塞、勃起不全、胃腸障害、胃腸運動性減弱、胃腸運動不全、術後イレウス、便秘、胃食道逆流性疾患、分泌性下痢、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、運動失調、外傷性脳疾患、脳卒中、パーキンソン病、双極性障害、精神病、統合失調症、不安、感情障害、うつ病、躁うつ病、精神障害、認知症、学習障害、加齢による記憶喪失、記憶注意欠陥、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、月経困難、ナルコレプシー、睡眠障害、睡眠時無呼吸、レイノー病、間欠性跛行症、シェーグレン症候群、口内乾燥症、不整脈、循環器疾患、高血圧、緊張性筋ジストロフィー、筋緊張性異栄養症、痙性、口内乾燥、2型糖尿病、高インスリン血症、早産、癌、脳腫瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、大腸炎、クローン病、免疫抑制、難聴、偏頭痛、疼痛、神経因性疼痛、炎症痛、三叉神経痛、失明、鼻漏、眼球高血圧(緑内障)及び脱毛症の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0081】
さらに好ましい実施形態において、本発明の化合物は、呼吸器疾患、尿失禁、勃起不全、不安、てんかん、精神病、統合失調症、双極性障害、うつ病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病若しくは疼痛の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0082】
さらにより好ましい実施形態において、本発明の化合物は、精神病、統合失調症、双極性障害、うつ病、てんかん、パーキンソン病若しくは疼痛の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0083】
さらにより好ましい実施形態において、本発明の化合物は、軽度若しくは中度若しくは重度の疼痛、急性、慢性若しくは周期性の疼痛、偏頭痛による疼痛、術後疼痛、幻肢痛、炎症性疼痛、神経因性疼痛、慢性頭痛、中心性疼痛、糖尿病性神経障害に、治療後神経痛に若しくは末梢神経損傷に関連する疼痛の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0084】
別の好ましい実施形態において、本発明の化合物は、統合失調症、うつ病又はパーキンソン病の治療、予防又は緩和に有用であると考えられる。
【0085】
活性化医薬成分(API)の適切な用量は、投与の正確な様式、投与する形態、考慮すべき適応症、被検者、特に関連する被検者の体重、さらに担当医師又は獣医の好み及び経験によるが、1日あたり約0.1〜約1000mgAPI、さらに好ましくは1日あたり約10〜約500mgAPI、最も好ましくは1日あたり約30〜約100mgAPIの範囲であると現在では企図している。
【0086】
本発明の好ましい化合物は、ミクロモル以下及びミクロモルの範囲、すなわち1未満〜約100μMの生物活性を示す。
【0087】
医薬組成物
別の態様において本発明は、本発明のグアニジン誘導体の治療有効量を含む新規な医薬組成物を提供する。
【0088】
グアニジン誘導体は、具体的には以下又は医薬として許容可能なその塩であってよい。
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジクロロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ジベンジル−イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン;
(±)−trans−1,3−ビス−(3,4−ジフルオロ−ベンジル)オクタヒドロ−ベンゾイミダゾール−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(4−フルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)テトラヒドロピリミジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3−トリフルオロメチル−ベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−フェニル−イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2,4,5−トリフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−[1,3]ジアゼパン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3−トリフルオロメトキシベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;又は
1,3−ビス−(2−メトキシ−5−トリフルオロメトキシベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン。
【0089】
治療に使用する本発明の化合物は、原化合物の形態で投与してもよいが、医薬組成物の活性成分を、任意選択で生理的に許容可能な塩の形態で、1種又は複数の補助剤、賦形剤、担体、緩衝剤、希釈剤及び/若しくは他の通常の医薬補助剤と共に導入するのが好ましい。
【0090】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明の化合物、又は医薬として許容可能なその塩若しくはその誘導体を含む医薬組成物を、1種又は複数の医薬として許容可能な担体、任意選択で、当分野において知られていて、使用されている他の治療成分及び/又は予防成分と共に提供する。担体(複数可)は、配合物の他の成分に相容性であり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。
【0091】
本発明の医薬組成物は、所望の治療に適していれば、いかなる利便経路によっても投与し得る。投与の好ましい経路は、経口投与、特に錠剤で、カプセルで、糖衣錠で、粉末で又は液体状での経口投与、及び非経口投与、特に皮膚注射、皮下注射、筋肉注射、静脈注射での投与を含む。本発明の医薬組成物は、所望の配合物に適切な標準の方法及び従来の技法を用いて、熟練者であれば誰でも調製することができる。必要ならば、活性成分の持続放出に適応させた組成物を採用してもよい。
【0092】
配合及び投与の技法に関するさらなる詳細は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」Maack Publishing Co.,Easton,PAの最新版に見出すことができる。
【0093】
実際の用量は、治療している疾患の種類及び重度に依存し、医師の判断の範囲内であり、所望の治療効果を上げるために、本発明の特定の状況に応じて用量の滴定により実際の用量を変えてもよい。しかし、各投与につき約0.1〜約500mg、好ましくは約1〜約100mg、最も好ましくは約1〜約10mgの活性成分を含有する医薬組成物が治療的処置に適していると現在では企図している。
【0094】
活性成分は、1日につき1回又は数回の投与回数で投与してもよい。場合によっては、0.1μg/kg i.v.及び1μg/kg p.o.まで低い用量で、満足できる結果を得ることができる。用量範囲の上限は、約10mg/kg i.v.及び100mg/kg p.o.であると現在考えられている。好ましい範囲は、約0.1μg/kg〜約10mg/kg/日 i.v.及び約1μg/kg〜約100mg/kg/日 p.o.である。
【0095】
治療方法
別の態様において本発明は、ヒトを含めた動物生体の疾患若しくは障害若しくは状態の治療、予防又は緩和の方法であって、この疾患、障害又は状態がSKチャンネルの調節に反応し、この方法が本発明の化合物の有効量を、これを必要とするそのような、ヒトを含めた動物生体へ投与するステップを含む。
【0096】
本発明により企図される好ましい医学的適応症は、上記に記述したものである。
【0097】
適切な用量範囲は、通常通り投与の正確な様式、投与する形態、投与の対象となる適応症、関与する被検者、及び関連する被検者の体重、さらに担当医師又は獣医の好み及び経験によるが、1日0.1〜1000mg、1日10〜500mg、特に1日30〜100mgであると現在は企図されている。
【実施例】
【0098】
本発明は以下の実施例を参照することによって説明されるが、請求された本発明の範囲が、以下の実施例によっていかなる形においても限定されることはないことを意図している。
【0099】
手順とは、本発明の化合物を調製するために使用する一般的な手順を表している。省略形を以下のごとく使用している。
Ac:アセチル
Boc:tert−ブチルオキシカルボニル
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
Et:エチル
eq:当量(複数可)
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析法
LDA:リチウムジイソプロピルアミン
Me:メチル
mp:融点
MW:マイクロ波
rt:室温
TEA:トリエチルアミン
THF:テトラヒドロフラン
【0100】
手順A
ジクロロメタンに溶解している所定のジアミンに、水溶性の1M NaHCO(3当量)及びジ−tert−ブチルジカルボネート(2当量)並びに混合液を加え、4時間の間rtで撹拌した。有機相を単離し、0.1Mの水溶性HClで洗浄し、MgSOで乾燥、濾過し、蒸発させて乾燥状態にし、N,N’−ジBocで保護されたジアミンを得た。
【0101】
第2工程において、N,N’−ジBocで保護されたジアミンをTHF中に溶解し、窒素下で、THF中の2.2当量LDAの溶液に−78℃で滴状添加した。この反応混合液をゆっくりと0℃まで暖め、所定のハロゲン化ベンジル(2.2当量)を滴状添加した。混合液は、窒素下で、一晩中rtで撹拌し、水溶性NaHCOを加え、EtOAcで抽出した。合わせた有機相を、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製し、N,N’−ジベンジル化したN,N’−ジBocジアミン中間体を得た。
【0102】
その後の工程では、このN,N’−ジベンジル−N,N’−ジBocジアミンをジクロロメタン中に溶解し、20当量のトリフルオロ酢酸を加え、rtで2時間撹拌した。次いで反応混合液を蒸発乾固し、水性のNaHCOを加え、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機相を、乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮乾固し、所望のN,N’−ジベンジル化したジアミンを得た。
【0103】
最終工程では、このN,N’−ジベンジル化したジアミンをアセトニトリル中に溶解し、臭化シアン(1.4当量)を加えた。この混合液を室温で撹拌し、形成した沈殿物を濾別し、アセトニトリルで洗浄して、所望の1,3−ジベンジル化したグアニジン誘導体を得た。代替法として、この生成物をカラムクロマトグラフィー、分取LCMS又は再結晶化により精製した。
【0104】
手順Aの一実施例、1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−イミダゾリジン−2−イリデンアミンの調製をスキーム1に示す。
【0105】
スキーム1
【化11】

【0106】
手順B
最初の工程において、ジオキサンに溶解している所定のジアミンに、ジ−tert−ブチルジカルボネート(2当量)及び混合液を加え、一晩90℃で撹拌した。室温まで冷却後、反応混合液を蒸発乾固し、粗生成物はさらなる精製を行わず、次の工程で使用した。
【0107】
N,N’−ジBocで保護されたジアミンをDMF中に溶解し、0℃まで冷却し、2当量の水酸化ナトリウムを加えた。この反応混合液を0℃で1時間撹拌し、所定のハロゲン化ベンジル(2当量)を滴状添加した。混合液は、窒素下で、室温で2時間の間撹拌し、水溶性NaHCOを加え、EtOAcで抽出した。合わせた有機相を、乾燥し(MgSO)、濾過し、真空濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製し、所望のN,N’−ジベンジル化したN,N’−ジBocジアミンを得た。
【0108】
その後の工程では、このN,N’−ジベンジル化したN,N’−ジBocジアミンをジクロロメタン中に溶解し、0℃に冷却し、10当量のトリフルオロ酢酸を加え、室温で一晩撹拌した。この反応混合液を蒸発乾固し、EtOAcに再び溶解し、水性の1M NaOHを加え、EtOAcで抽出した。合わせた有機相を、乾燥(NaSO)、濾過し、蒸発乾固し、所望のN,N’−ジベンジル化したジアミンを得た。
【0109】
最終工程では、このN,N’−ジベンジル化したジアミンをエタノール中に溶解し、臭化シアン(1.1当量)を加えた。この混合液を0℃で1時間撹拌し、次いで還流温度まで4時間加熱した。rtまで冷却後、混合液を蒸発乾固し、粗生成物1,3−ジベンジル化したグアニジン誘導体をカラムクロマトグラフィー、分取LCMS又は再結晶化により精製した。
【0110】
手順Bの一実施例、1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミンの調製をスキーム2に示す。
【0111】
スキーム2
【化12】

【0112】
手順C
THFに溶解している所定のジアミンに、ベンズアルデヒド(2当量)を加え、加熱還流し、形成された水をDean Stark装置を用いて除去した。こうして、反応混合液を還流温度で一晩撹拌し、室温まで冷却し、蒸発乾固した。残ったイミン粗生成物はジクロロメタンに再び溶解し、分子ふるいを加え、0℃まで冷却した。次いで混合液にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(3当量)を加え、室温で2日間、さらに40℃で16時間の間撹拌した。反応混合液をrtまで冷却し、水を加え、EtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥(NaSO)、濾過し、真空中で濃縮した。次いで粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製(EtOAc/ヘキサン)し、所望のN,N’−ジベンジル化したジアミンを得た。
【0113】
このN,N’−ジベンジル化したジアミンをエタノール中に溶解し、臭化シアン(1.1当量)と反応させて、手順Aに記載の通りに精製し、所望の1,3−ジベンジル化したグアニジン誘導体を得た。
【0114】
手順Cの一実施例、(±)−トランス−1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)オクタヒドロベンゾイミダゾール−2−イリデンアミンの調製をスキーム3に示す。
【0115】
スキーム3
【化13】

【0116】
手順D
所定のジアミンを、いくつかの標準的方法のうちの1方法を用いて、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのペプチドカップリング試薬を用いてその場で活性化したハロゲン化ベンゾイル、カルボン酸無水物又はカルボン酸などの活性化したカルボン酸誘導体(2当量)と反応させることにより対応するジアミンに変換した。第2工程において、ジアミンはTHFに溶解し、0℃に冷却し、THF(8当量)中のボラン溶液を加えた。反応混合液を窒素下でrtで1時間撹拌し、次いで40℃に一晩加熱した。混合液は、rtに冷却し、1Mの水性NaOHを加え、EtOAcで抽出した。合わせた有機相を、ブラインで洗浄し、乾燥(NaSO)、濾過し、真空で濃縮した。次いで粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製し、所望のN,N’−ジアルキル化したジアミンを得た。
【0117】
該N,N’−ジアルキル化したジアミンをエタノール中に溶解し、臭化シアン(1.1当量)と反応させて、手順Aに記載の通りに精製し、所望の1,3−ジアルキル化したグアニジン誘導体を得た。
【0118】
手順Dの一実施例、1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミンの調製をスキーム4に示す。
【0119】
スキーム4
【化14】

【0120】
(実施例1)
1,3−ビス(3,4−ジフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物1)
表題化合物は、手順Aの4工程で、3,4−ジフルオロベンジルブロミドをベンジル化試薬として用いて調製した。臭化シアンと反応させた後、沈殿した固体を濾別し、アセトニトリルで洗浄し、表題化合物を臭化水素酸塩として得た。NMR(DMSO−d6)δ 3.51(s,4H)、4.58(s,4H)、7.21〜7.24(m,2H)、7.46〜7.54(m,4H)、8.47(s,2H)。MS(ES)m/z 338([M+1],100)。
【0121】
(実施例2)
1,3−ビス−(3,4−ジクロロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物2)
表題化合物は、手順Aの4工程で3,4−ジクロロベンジルブロミドをベンジル化試薬として用いて調製した。臭化シアンと反応させた後、沈殿した固体を濾別し、粗製材料を分取LCMSで精製し、表題化合物を臭化水素酸塩として得た。NMR(DMSO−d6)δ 3.50(s,4H)、4.58(s,4H)、7.31〜7.35(m,2H)、7.62〜7.71(m,4H)、8.45(s,2H)。MS(ES)m/z 404([M+1],100)。
【0122】
(実施例3)
ジベンジル−イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物3)
表題化合物は、手順Aに記載の通り、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン及び臭化シアンから1工程で調製した。沈殿した固体は、反応混合液から濾別し、アセトニトリルで洗浄し、MeOHから再結晶化し、表題化合物を臭化水素酸塩として得た。NMR(DMSO−d6)δ 3.48(s,4H)、4.61(s,4H)、7.32〜7.46(m,10H)、8.51(s,2H)。MS(ES)m/z 266([M+1],100)。
【0123】
(実施例4)
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン(化合物4)
表題化合物は、手順Bにより4工程で、3,4−ジフルオロベンジルブロミドをベンジル化試薬として用いて、2−アミノベンジルアミンから調製し、臭化水素酸塩として単離した(mp215〜218℃)。NMR(DMSO−d6)δ 4.55(s,2H)、4.90(s,2H)、5.28(s,2H)、7.08〜7.58(m,10H)、8.53(s,2H)。MS(ES)m/z 400([M+1],100)。
【0124】
(実施例5)
(±)−トランス−1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)オクタヒドロベンゾイミダゾール−2−イリデンアミン(化合物5)
表題化合物は、手順Cにより、(±)−トランス−1,2−シクロヘキサンジアミン及び3,4−ジフルオロベンズアルデヒドから調製した。臭化シアンと反応させた後、反応混合液を蒸発乾固し、粗生成物をエーテルで洗浄し、MeOHから再結晶化し、表題化合物を臭化水素酸塩として得た(mp238〜240℃)。MS(ES)m/z 392([M+1]、100)
【0125】
(実施例6)
1,3−ビス−(4−フルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物6)
表題化合物は、手順Aにより4工程で、4−フルオロベンジルブロミドをベンジル化試薬として用いて調製した。臭化シアンと反応させた後、沈殿した固体を濾別し、アセトニトリルで洗浄して、表題化合物を臭化水素酸塩として得た。NMR(DMSO−d6)δ 3.46(s,4H)、4.60(s,4H)、7.23〜7.31(m,4H)、7.36〜7.43(m,4H)、8.55(s,2H)。MS(ES)m/z 302([M+1],100)。
【0126】
(実施例7)
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)テトラヒドロピリミジン−2−イリデンアミン(化合物7)
表題化合物は、手順Aにより4工程で、4−フルオロベンジルブロミドをベンジル化試薬として用いて調製した。臭化シアンと反応させた後、反応混合物を濾過し、蒸発させて、残りの粗生成物をEtO/アセトニトリルから再結晶化し、表題化合物を臭化水素酸塩として得た。NMR(DMSO−d6)δ 1.97(p,2H)、3.36(t,4H)、4.66(s,4H)、7.15〜7.20(m,2H)、7.38〜7.54(m,4H)、7.60(br s,2H)。MS(ES)m/z 352([M+1],100)。
【0127】
(実施例8)
1,3−ビス−(3トリフルオロメチルベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物8)
表題化合物は、手順Aにより4工程で、3−(トリフルオロメチル)ベンジルブロマイドをベンジル化試薬として用いて調製した。臭化シアンと反応させた後、沈殿した固体を濾別し、アセトニトリルから再結晶化し、表題化合物を臭化水素酸塩として得た。NMR(DMSO−d6)δ 3.54(s,4H)、4.73(s,4H)、7.65〜7.78(m,8H)、8.60(s,2H)。MS(ES)m/z 402([M+1],100)。
【0128】
(実施例9)
1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン(化合物9)
表題化合物は、手順Dに記載の通り3工程で調製した。第1工程において、2−アミノ−ベンジルアミンを、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロプル)−カルボジイミド(2.2当量)及び1−ヒドロキシ−7−アザベンゾ−トリアゾールの存在下で、2−ブロモ−4,5−ジフルオロ安息香酸(2当量)とDMF中で反応させ、ジベンゾイル化したジアミンを得た。最終工程(臭化シアンとの反応)後、沈殿した固体を濾別し、再結晶化させて、表題化合物を臭化水素酸塩として得た(Mp.220〜224℃)。MS(ES)m/z 558([M+1]、100)。
【0129】
(実施例10)
1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物10)
表題化合物は、手順Dに記載の通り3工程で調製した。第1工程において、エチレンジアミンを、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロプル)−カルボジイミド(2.2当量)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下で、2−ブロモ−4,5−ジフルオロ安息香酸(2当量)とDMF中で反応させ、ジベンゾイル化したジアミンを得た。最終工程(臭化シアンとの反応)後、粗生成物を水系処理により単離し、カラムクロマトグラフィー(CHCl/MeOH)で精製し、表題化合物を遊離塩基として得た。NMR(DMSO−d6)δ 3.61(s,4H)、4.73(s,4H)、7.63〜7.71(m,2H)、7.98〜8.01(m,2H)、8.42(br s,1H)。MS(ES)m/z 496([M+1],100)。
【0130】
(実施例11)
1−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−フェニル−イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物11)
表題化合物は、手順Aの4工程で、N−フェニルエチレンジアミンから調製した。第1工程では1当量のBocOを使用し、同様に第2工程では1当量の3,4−ジフルオロベンジルブロミドをベンジル化試薬として使用した。臭化シアンと反応させた後、粗生成物を水系処理により単離し、分取LCMSで精製し、表題化合物を遊離塩基として得た。MS(ES)m/z 288([M+1]、100);HR−MS:288.1316([M+1]、C1616;calc.288.131228)。
【0131】
(実施例12)
1,3−ビス−(2,4,5−トリフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物12)
表題化合物は、手順Dに記載の通り3工程で調製した。第1工程において、エチレンジアミンを、TEAの存在下で、2,4,5−トリフルオロベンゾイルクロライド(2当量)とアセトニトリル中で反応させ、N,N’−ジベンゾイル化したエチレンジアミンを水系処理により得た。最終工程(MW加熱を用いて、200℃で60分間行った、臭化シアンとの反応)後、沈殿した固体を濾別し、再結晶化して、表題化合物を臭化水素酸塩として得た。MS(ES)m/z 374([M+1]、100);HR−MS:374.1086([M+1]、C1714;calc.374.10919)。
【0132】
(実施例13)
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−[1,3]ジアゼパン−2−イリデンアミン(化合物13)
表題化合物は、手順Aの4工程で、ベンジル化試薬として3,4−ジフルオロベンジルブロミドを用いて、1,4−ジアミノブタンから調製した。臭化シアンとの反応(この工程は、MW加熱を用いて、200℃で60分間行った)後、粗生成物を水系処理により単離し、分取LCMSで精製し、表題化合物を遊離塩基として得た。MS(ES)m/z 366([M+1]、100);HR−MS:366.1599([M+1]、C1920;calc.366.159334)。
【0133】
(実施例14)
1,3−ビス−(3−トリフルオロメトキシベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物14)
表題化合物は、手順Dに記載の通り3工程で調製した。第1工程において、エチレンジアミンを、TEAの存在下で、3−(トリフルオロメトキシ)ベンゾイルクロライド(2当量)とアセトニトリル中で反応させ、N,N’−ジベンゾイル化したエチレンジアミンを水系処理により得た。最終工程(臭化シアンとの反応)後、粗生成物を水系処理により単離し、ジエチルエーテルから再結晶化して、表題化合物を臭化水素酸塩として単離した。MS(ES)m/z 434([M+1]、100);HR−MS:434.1299([M+1]、C1918;calc.434.13032)。
【0134】
(実施例15)
1,3−ビス−(2−メトキシ−5−トリフルオロメトキシベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン(化合物15)
表題化合物は、手順Dに記載の通り3工程で調製した。第1工程において、エチレンジアミンを、TEAの存在下で、2−メトキシ−5−(トリフルオロメトキシ)ベンゾイルクロライド(2当量)をアセトニトリル中で反応させ、ジベンゾイル化したエチレンジアミンを水系処理により得た。最終工程(臭化シアンとの反応)後、粗生成物を水系処理により単離し、カラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物を臭化水素酸塩として得た。MS(ES)m/z 494([M+1]、100);HR−MS:494.1532([M+1]、C2122;calc.494.15145)。
【0135】
(実施例16)
生物活性
この実施例は、本発明の代表的化合物の生物活性を実証するものである。低コンダクタンスCa2+活性Kチャンネル(SKチャンネル・サブタイプ3)を介してのイオン電流を、パッチクランプ技法のホールセル構成を用いて記録した。
【0136】
hSK3チャンネルを発現しているHEK293組織培養細胞を、37℃、5% CO中で、10%FCS(ウシ胎児の血清)を追加したDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)中で、生育した。60〜80%の集密で、細胞をトリプシン処理により収集し、カバーガラス上に植付けた。
【0137】
カバーガラス上に培養した細胞は、地上に設置したFaradayケージ内の防振台の上に置かれた倒立顕微鏡上に乗せた15μl灌流室内(流速約1ml/分)に置いた。実験は、室温(20〜22℃)で行われた。EPC−9パッチクランプアンプ(HEKA−electronics、Lambrect、Germany)をITC16インターフェースを介してマッキントッシュコンピュータに接続した。データは直接ハードディスクに保存し、IGORソフトウエア(Wavemetrics、Lake Oswega、OR、USA)で分析した。
【0138】
パッチクランプ技法のホールセル構成を適応させた。要するに、ホウケイ酸ピペット(強度2〜4MΩ)の先端を、遠隔制御システムを用いて、細胞膜上に静かに置く。軽吸引によりギガシール(ピペット抵抗が増加して1GΩを超える)が形成され、ピペットの下の細胞膜がさらに強い吸引で破壊される。細胞のキャパシタンスは、電気的に補正し、ピペットと細胞内部との抵抗(直列抵抗、Rs)を測定し、補正した。細胞のキャパシタンスは、5〜20pFで、直列抵抗は3〜6MΩの範囲であった。Rs及びキャパシタンス補正は、この実験中に更新された(各刺激の前に)。漏出の減算は行わなかった。
【0139】
細胞外(槽)の溶液は、(mM中):156KCl、0.1 CaCl、3MgCl、10HEPES(pH=KOHと共に7.4)を含んだ。試験した化合物をDMSOに溶解して、細胞外溶液中で少なくとも1000回希釈した。
【0140】
細胞内(ピペット)の溶液は:154mM KCl、10mM HEPES、10mM EGTAを含有した。Ca2+の所望の自由濃度(0.3〜0.4μM、MG2+は常に1mM)を得るために必要なCaCl及びMgClの濃度をEqCalソフトウエア(Cambridge、UK)で計算し、加えた。
【0141】
ホールセル構成を確定した後、電圧ランプ(−80〜+80mV)を、保持電位0mVから5秒ごと細胞に印加する。安定したベースライン電流を100〜500秒の時間内に得て、次いで試験化合物を含有する細胞外溶液に変更することにより、化合物を添加した。活性を、―75mVでの電流の変化から定量化した。
【0142】
阻害剤に対して、ベースライン電流を、最初の電流の50%まで減少させるのに必要な濃度として定義された、K値を見積もった。
【0143】
本発明の化合物の代表と考えられる化合物7及び化合物15に対して求めたK値が、サブマイクロの範囲(すなわち1μM未満)内であり、これはこれら化合物の強いSK3活性化特性を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのグアニジン誘導体、その異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又はその医薬として許容可能な塩
【化1】


[式中、
m及びnは、互いに独立して、0、1又は2であり、但し、mが0である場合、nも0ではなく、
Aは、II、III及びIVから選択される結合基を表し
【化2】


(式中、sは、0、1又は2であり、
tは、1、2又は3であり、
R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキル−アミノ及びN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択される置換基で1回又は複数回場合によって置換されていてもよい)、
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに独立して、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキルアミノ及び/又はN,N−ジアルキルアミノを表し、
但し、Aが結合基II(sは0である)である場合、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは水素と異なり、R、R、R、R及びR10の少なくとも1つは水素と異なる]。
【請求項2】
m及びnが、互いに独立して、0、1又は2であり、但し、mが0である場合、nも0ではない、請求項1に記載のグアニジン誘導体。
【請求項3】
Aが、II、III及びIVから選択される結合基を表す、請求項1に記載のグアニジン誘導体
【化3】


[式中、sは、0、1又は2であり、
tは、1、2又は3であり、
R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキル−アミノ及びN,N−ジアルキル−アミノからなる群から選択される置換基で1回又は複数回場合によって置換されていてもよい]。
【請求項4】
Aが以下を表す、請求項3に記載のグアニジン誘導体
【化4】


[式中、
R’及びR”は、それらが結合している環と一緒になって6員縮合ベンゾ環を形成し、このベンゾ環は、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、N−アルキル−アミノ及びN,N−ジアルキル−アミノからなる群から選択される置換基で1回又は複数回場合によって置換されていてもよい]。
【請求項5】
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10が、互いに独立して、水素、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、N−アルキル−アミノ及び/又はN,N−ジアルキル−アミノを表す、請求項1から4までのいずれか一項に記載のグアニジン誘導体。
【請求項6】
、R、R、R及びRの1つ並びにR、R、R、R及びR10の1つが、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、
、R、R、R及びRの残り並びにR、R、R、R及びR10は、水素を表す、請求項5に記載のグアニジン誘導体。
【請求項7】
、R、R、R及びRの2つ並びにR、R、R、R及びR10の2つが、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、
、R、R、R及びRの残り並びにR、R、R、R及びR10が、水素を表す、請求項5に記載のグアニジン誘導体。
【請求項8】
、R、R、R及びRの3つ並びにR、R、R、R及びR10の3つが、互いに独立して、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、アルキル及び/又はアルコキシを表し、
、R、R、R及びRの残り並びにR、R、R、R及びR10が、水素を表す、請求項5に記載のグアニジン誘導体。
【請求項9】
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジクロロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン;
(±)−trans−1,3−ビス−(3,4−ジフルオロ−ベンジル)オクタヒドロ−ベンゾイミダゾール−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(4−フルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)テトラヒドロピリミジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3−トリフルオロメチル−ベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2−ブロモ−4,5−ジフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−フェニル−イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(2,4,5−トリフルオロベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3,4−ジフルオロベンジル)−[1,3]ジアゼパン−2−イリデンアミン;
1,3−ビス−(3−トリフルオロメトキシベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;又は
1,3−ビス−(2−メトキシ−5−トリフルオロメトキシベンジル)イミダゾリジン−2−イリデンアミン;
である、請求項1に記載のグアニジン誘導体又はその医薬として許容可能な塩。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載のグアニジン誘導体、又は任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬として許容可能なその塩、又はそのプロドラッグの治療有効量を、少なくとも1種の医薬として許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤と共に含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか一項に記載のグアニジン誘導体、又は任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬として許容可能なその塩の、薬物製造のための使用。
【請求項12】
ヒトを含めた哺乳動物の、SKチャンネルの調節に反応する疾患若しくは障害若しくは状態を治療、予防又は緩和するための医薬組成物の製造のための、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
SKチャンネルの調節に反応する疾患、障害又は状態が、呼吸器疾患、てんかん、痙攣、発作、欠神発作、血管攣縮、冠状動脈攣縮、運動ニューロン疾患、ミオキミア、腎障害、腎嚢胞、膀胱過敏、膀胱痙攣、泌尿生殖器疾患、尿失禁、膀胱流出路閉塞、勃起不全、胃腸障害、胃腸運動性減弱、胃腸運動不全、術後イレウス、便秘、胃食道逆流性疾患、分泌性下痢、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈性心疾患、運動失調、外傷性脳疾患、脳卒中、パーキンソン病、双極性障害、精神病、統合失調症、不安、感情障害、うつ病、躁うつ病、精神障害、認知症、学習障害、加齢による記憶喪失、記憶注意欠陥、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、月経困難、ナルコレプシー、睡眠障害、睡眠時無呼吸、レイノー病、間欠性跛行症、シェーグレン症候群、口内乾燥症、不整脈、循環器疾患、高血圧、緊張性筋ジストロフィー、筋緊張性異栄養症、痙性、口内乾燥、2型糖尿病、高インスリン血症、早産、癌、脳腫瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、大腸炎、クローン病、免疫抑制、難聴、偏頭痛、疼痛、神経因性疼痛、炎症痛、三叉神経痛、失明、鼻漏、眼球高血圧(緑内障)及び脱毛症である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
ヒトを含めた動物生体の、SKチャンネルの調節に反応する疾患又は障害又は状態の治療、予防又は緩和の方法であって、請求項1から9までいずれか一項に記載のグアニジン誘導体、又は任意のその異性体若しくはその異性体の任意の混合物、又は医薬として許容可能なその塩の治療有効量を、これを必要とするそのような動物生体へ投与するステップを含む方法。

【公表番号】特表2009−530352(P2009−530352A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500870(P2009−500870)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052747
【国際公開番号】WO2007/110363
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(505377201)ノイロサーチ アクティーゼルスカブ (135)
【Fターム(参考)】