説明

新規なビスアミノフェノール類及びその製造方法

【課題】新規なビスアミノフェノール類及びその製造方法を提供する
【解決手段】一般式(I)で示されるビスアミノフェノール類。


(式中、R〜R10は同一又は相異なり水素原子、炭化水素基を表す)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は樹脂原料、樹脂添加剤、感光性樹脂原料、特にポリベンズオキサゾール樹脂(PBO樹脂)の原料として有用な新規なビスアミノフェノール類及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまで一般式(I)(化5)で示されるビスアミノフェノール類及び一般式(II)(化6)で示されるビスニトロフェノール類は報告例がなかった。
【0003】
【化5】


【0004】
【化6】


(両式中、R〜R10は同一又は相異なり水素原子、炭化水素基を表す)
【0005】また、特にウレタンやポリイミド向けの樹脂原料・添加剤、感光性樹脂原料、またはポリベンズオキサゾール樹脂(PBO樹脂)の原料として一般式(I)で示されるビスアミノフェノール類を用いた場合、特徴的な物性、特に加工容易性が期待されるものの合成例は報告されていなかった。一般的にPBO樹脂は極めて高い強度を有し、種々の用途への展開が図られているが、加工性の困難さが問題とされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、樹脂原料・樹脂添加剤、感光性樹脂原料、特にPBO樹脂原料として用いるアミン成分として、従来のアミン類に比べ得られるポリマーが特徴的な物性を示す新規なビスアミノフェノール類を提供することにある。更に、その新規化合物を工業的に製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリイミド原料として使用されている1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APBと略す)に、それを原料としたポリイミド樹脂のTgを低下させる作用が有ることに着目し、APBを基に新規なビスアミノフェノール類を種々合成した。その結果、ある種の新規なビスアミノフェノール類を原料としたPBO樹脂が、容易な加工性等、特徴的な物性を示しうることを見出し、この発明を完成した。
【0008】即ち本発明は、以下の(1)〜(3)により特定される。
(1)一般式(I)(化7)で示されるビスアミノフェノール類。
【0009】
【化7】


(式中、R〜R10は同一又は相異なり水素原子、炭化水素基を表す)
(2)一般式(II)(化8)で示されるビスニトロフェノール類。
【0010】
【化8】


(式中R〜R10は前記のとおりである)
【0011】(3)一般式(II)で示されるビスニトロフェノール類を還元することを特徴とする一般式(I)で示されるビスアミノフェノール類の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明を以下に具体的に説明する。一般式(I)〜(II)においてR〜R10で表される炭化水素基としては、低級アルキル基、低級アルケニル基、アラルキル基、アリール基を表す。上述の低級アルキル基としては直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。低級アルケニル基としては、直鎖または分岐の炭素数2〜6のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数7〜15のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。また、アリール基としては、炭素数6〜15のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0013】一般式(I)で示されるビスアミノフェノール類の具体的な例としては、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)−3−メチルベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−ヘキシルベンゼン、1,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−3−メチルベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−2−ヘキシルベンゼン、1,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)−4−クミルベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ナフタレン、1,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−クミルベンゼン、1,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ナフタレン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)−2,3,5−トリメチルベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0014】一般式(II)で示されるビスニトロフェノール類の具体的な例としては、1,3−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)−3−メチルベンゼン、1,3−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,4−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−ヘキシルベンゼン、1,2−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−3−メチルベンゼン、1,3−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,4−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−2−ヘキシルベンゼン、1,2−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)−4−クミルベンゼン、1,4−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)ナフタレン、1,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−クミルベンゼン、1,2−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシフェノキシ)ナフタレン、1,4−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)−2,3,5−トリメチルベンゼン、1,3−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−ニトロ−3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0015】一般式(I)で示されるビスアミノフェノール類は一般式(II)で示される対応するビスニトロフェノール類を還元することにより容易に製造することができる。還元方法はニトロ基をアミノ基に還元する方法ならばどのようなものでもかまわないが、例えば、ラネーニッケル触媒、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム等の重金属触媒又はそれらの金属を炭素やアルミナ等に担持した金属触媒の存在下での接触水素添加反応、酸性条件下、亜鉛、鉄、塩化スズ等の金属存在下で還元する方法、硫化ナトリウム、ナトリウムヒドロスルフィド、亜二チオン酸ナトリウム、硫化アンモニウム等の硫化物を用いる方法が挙げられる。後処理の容易さから接触水素添加反応が好ましい。反応の条件は特に限定はなく、従来公知の方法に準じて実施することができる。
【0016】接触水素添加反応を例にとれば、該反応においては、上述の重金属触媒存在下、水素ガス雰囲気下で反応を行う。触媒の使用量には特に限定はないが、通常原料に対し0.01モル%〜10当量、好ましくは0.1モル%〜1当量、更に好ましくは1モル%〜50モル%である。必要に応じて溶媒を使用することができる。反応に使用する溶媒としては特に限定はないが、水や、ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の炭化水素類、トルエン、キシレン又はエチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノール等のアルコール類、酢酸エステル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は単独または混合して用いてもよい。反応温度は−50〜100℃、好ましくは−30〜70℃、さらに好ましくは0〜50℃であり、反応時間は0.01〜10時間、好ましくは0.05〜5時間、さらに好ましくは0.1〜3時間である。
【0017】反応後は反応溶液を水に加えて析出する結晶をろ別するか、或いは有機溶媒で抽出した後、溶媒を留去することにより目的物の粗結晶を得ることができる。さらに精製を必要とする場合は、再結晶等を行い、より純度を上げることができる。再結晶に用いる溶媒としては特に限定はないが、水や、ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の炭化水素類、トルエン、キシレン又はエチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノール等のアルコール類、酢酸エステル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。これらの溶媒は単独または混合して用いてもよい。
【0018】一般式(II)で示されるビスニトロフェノール類は対応するビスフェノール類をジニトロ化して得ることができる。原料のビスフェノール類としては、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−3−メチルベンゼン、1,3−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)−2−ヘキシルベンゼン、1,2−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,2−ビス(4−ヒドロキシ−5−メチルフェノキシ)−3−メチルベンゼン、1,3−ビス(3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−2−ヘキシルベンゼン、1,2−ビス(3−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−4−クミルベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ナフタレン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−4−ヘキシルベンゼン、1,3−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)−2−クミルベンゼン、1,2−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ナフタレン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)−2,3,5−トリメチルベンゼン、1,3−ビス(3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−ヒドロキシ−2,5−ジ−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0019】ニトロ化方法は通常のベンゼン環をニトロ化する方法ならばどのようなものでもかまわないが、例えば、硝酸−硫酸、硝酸等を用いる方法、硝酸塩と酸を用いる方法、硝酸−無水酢酸を用いる方法、N等の窒素酸化物を用いる方法、ニトロソ化した後酸化する方法等が挙げられる。経済性から硝酸を用いる方法が好ましい。反応の条件は特に限定はなく、従来公知の方法に準じて実施することができるが、通常は窒素あるいはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行う。用いるニトロ化試剤の量は原料に対し2当量以上あれば十分であるが、2〜20当量、好ましくは2.2〜10当量である。反応温度は−50〜100℃、好ましくは−30〜70℃、さらに好ましくは0〜50℃、反応時間は0.01〜10時間、好ましくは0.05〜5時間、さらに好ましくは0.1〜3時間である。
【0020】反応後は反応溶液を水に加え析出する結晶をろ別するか、あるいは有機溶媒で抽出した後、溶媒を留去することにより目的物の粗結晶を得ることができる。さらに精製を必要とする場合は再結晶等を行い純度を上げることができる。再結晶に用いる溶媒としては特に限定はないが、水や、ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の炭化水素類、トルエン、キシレン又はエチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノール等のアルコール類、酢酸エステル等のエステル類が挙げられる。これらの溶媒は単独または混合して用いてもよい。
【0021】本発明の新規なビスアミノフェノール類はポリベンズオキサゾール(PBO)樹脂組成物、感光性樹脂組成物の製造に使用することに適している。PBO樹脂はPBO樹脂前駆体であるビスアミノフェノール類を含有するポリアミド類を加熱することにより得られるものである。本発明で提供されるビスアミノフェノール類を含むポリアミド類としては例えば一般式(V)(化9)
【0022】
【化9】


(式中R〜R10は前記のとおりであり、Yは2価の環式化合物基、kは2〜500を表す)を挙げることができる。当該ポリアミド類から製造されるPBO樹脂としては例えば一般式(VI)(化10)
【0023】
【化10】


(式中R〜R10は前記のとおりである)を挙げることができる。
【0024】一般式(V)、(VI)において、Yは、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、又は下記基(化11)等であるがこれらに限定されるものではない。得られたこれらのPBO樹脂は超高強度繊維等に利用することができる。
【0025】
【化11】


(式中、A:-CH-,-C(CH)-,-O-,-S-,-SO-,-CO-,-NHCO-,-C(CF)-)
【0026】本発明で提供されるビスアミノフェノール類は、更に感光性樹脂原料としても有用である。感光性樹脂組成物としては本発明で提供されるビスアミノフェノール類を含有するポリアミド、例えば一般式(V)と感光性ジアゾキノン化合物を含むものが一般的であるが、溶解促進剤としてビスフェノール類を添加しても良い。また、例えば、シリコンウェハーのような基板に対して、特に優れた密着性が必要な場合には、シリコーン変性ポリアミド酸を導入しても良い。シリコーン変性ポリアミド酸としては、例えば一般式(VII)(化12)
【0027】
【化12】


(式中Yは前記のとおりであり、hは2〜500を表し、Zは下記構造(化13)を示す)
【0028】
【化13】


(式中、R11とR12は2価の有機基、R13とR14は1価の有機基を示す)を挙げることができる。
【0029】一般式(VII)のZは、具体的には、例えば、下記式(化14)等であるが、これらに限定されるものではない。
【化14】


【0030】上記説明による感光性樹脂組成物は、半導体用途のみならず、多層回路の層間絶縁やフレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜や液晶配向膜等としても有用である。
【0031】
【実施例】実施例1(1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの合成)
50ml三ツ口フラスコに1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン2.94g(10mmol)、酢酸 54gを加え、窒素雰囲気、撹拌しながら60%硝酸4.2g(20mmol)を10分かけて滴下した。室温で1時間撹拌した後、反応液を水に加え、酢酸エチルを用い目的物を抽出した。有機相を水と飽和食塩水で洗浄した後、溶媒を濃縮した。得られた残渣にヘキサンを加え結晶を析出させた。結晶をろ別後、減圧下室温で乾燥することにより1,3−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの白色結晶が3.16g(8.0mmol)、収率80%、純度97%)得られた。物性は以下の通りである。
融点:128.5−130.0℃1H-NMR (CD3SOCD3):δ:6.65 (t,1H,J=2.4Hz),6.74(dd,2H,J=8.4,2.4Hz),7.15(d,2H,J = 9.2 Hz),7.31(dd,2H,J= 9.2,3.0Hz),7.35(t,1H,J=8.4Hz),7.56(d,2H,J=3.0Hz),10.88(br,2H)FD−mass:384(M
【0032】窒素雰囲気下で1,3−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン6.3g(15.9mmol)に1,4−ジオキサン30ml、5%パラジウム-炭素0.3gを加えた。常圧、90℃で水素雰囲気下撹拌した。所定量の水素を吸収した後(3時間かかった)、反応溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、原料が全て転化していた。触媒をろ過後、溶媒を留去した。残渣に酢酸エチルとヘキサンを加え撹拌したところ結晶が析出した。得られた結晶をろ別後、減圧下、室温で乾燥することにより1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの白色結晶が4.89g(14.6mmol)、収率92%、純度97%)得られた。物性は以下の通りである。
融点:178−180.5℃1H-NMR (CD3SOCD3),δ:4.67(br,4H),6.06(dd,2H,J=8.6,2.4Hz),6.29(d,2H,J=2.4Hz),6.38(t,1H,J=2.4Hz),6.49(dd,2H,J= 8.1,2.4Hz),6.60(d,2H,J=8.6Hz),7.18(t,1H,J=8.1Hz),9.00(br,2H)FD−mass:324(M
【0033】
【発明の効果】本発明により、樹脂原料・樹脂添加剤、感光性樹脂原料、又はポリベンズオキサゾール樹脂(PBO樹脂)原料として用いる際に、特徴的な物性、特に加工容易性が期待される新規なビスアミノフェノール類が提供でき、その新規化合物を工業的に製造できる方法も同時に提供できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】一般式(I)(化1)で示されるビスアミノフェノール類。
【化1】


(式中、R〜R10は同一又は相異なり水素原子、炭化水素基を表す)
【請求項2】 一般式(II)(化2)で示されるビスニトロフェノール類。
【化2】


(式中、R〜R10は同一又は相異なり水素原子、炭化水素基を表す)
【請求項3】一般式(I)で示されるビスアミノフェノール類が一般式(III)(化3)で示されるビスアミノフェノール類である、請求項1記載のビスアミノフェノール類。
【化3】


【請求項4】一般式(II)で示されるビスニトロフェノール類が一般式(IV)(化4)で示されるビスニトロフェノール類である、請求項2記載のビスニトロフェノール類。
【化4】


【請求項5】一般式(II)で示されるビスニトロフェノール類を還元することを特徴とする一般式(I)で示されるビスアミノフェノール類の製造方法。

【公開番号】特開2003−12611(P2003−12611A)
【公開日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−201715(P2001−201715)
【出願日】平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】