説明

新規な重合性化合物およびその製造方法

【課題】重合性官能基と紫外線吸収部を併せ持つ高分子量化が可能な重合性化合物であって、フェノール性水酸基の影響を考慮する必要なく簡便な工程で合成でき、経時変化が起こりにくい重合性化合物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記の一般式(1)で表される重合性化合物である。


(式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2は直鎖もしくは分岐のアルキル基、環状構造を含むアルキル基、または末端に芳香環を含むアルキル基を示し、−X−は2価の置換基を示す。)フェノール性水酸基を封鎖しても紫外線吸収能がほとんど変化しないフェルラ酸のフェノール性水酸基側に(メタ)アクリル酸ユニットを結合させた重合性化合物およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収能力を有する新規な重合性化合物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、紫外線吸収剤として、屋外使用耐候性ポリカーボネート、自動車用等の屋外塗料、クリアトップコーティング材、インクジェット印刷材、眼鏡、コンタクトレンズ、液晶バックパネル用の導光板等の高分子材料全般に利用される新規な重合性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子材料用の紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系等の化合物が利用されている。これらの化合物のほとんどは低分子の化合物であるため、高分子材料に添加した際にブリードアウトしやすく、フィルム上に析出しやすいという問題点がある。
【0003】
また、低分子であるために揮発しやすく、高分子材料の加工中に揮散してしまうために、添加量の減少を引き起こすという問題点も有していた。
【0004】
これらの問題点を解決するべく、紫外線吸収剤に重合性官能基を導入し、これを重合することにより高分子量の紫外線吸収剤を開発しようという試みが行われており、紫外線吸収部としてヒドロキシベンゾフェノン系またはベンゾトリアゾール系の化合物を利用した重合性官能基を有する紫外線吸収剤がすでに報告されている(特許文献1、2)。これらの紫外線吸収能を有する化合物は、ケト−エノール互変異性によって紫外線のエネルギーを安定に熱に変換すると考えられており、紫外線吸収の機能を発現させるためにはフェノール性水酸基の存在は必須となっている。
【0005】
しかし、最終生成物に遊離のフェノール性水酸基を残しつつ、重合性官能基の導入も含む多段階の合成を進めるためには、試薬中のヒドロキシル基との反応性を区別する必要があり、そのため反応条件として試薬量、温度等精密に制御する必要性があるため、特許文献1、2に記載された紫外線吸収剤は、大量生産を目的とする工業的製造においては不都合な面がある。
【0006】
また、ヒドロキシベンゾフェノン系およびベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤は、それらの構造中に存在する遊離フェノール性水酸基が酸化されるか、或いは、樹脂中の残存触媒と反応することによって、黄変現象が起こる事も知られている。
【0007】
したがって、特別な制御等を必要とせず簡便な工程で製造することができ、製造後も黄変等の経時変化が起こりにくい、高分子量化が可能な紫外線吸収剤が求められていた。
【0008】
さらに、ヒドロキシベンゾフェノン系およびベンゾトリアゾール系も含む多くの紫外線吸収剤は、枯渇資源である石油由来原料を用いて多くのエネルギーを費やし、いくつものステップをかけて合成されているが、グリーンケミストリーの観点からは、石油由来原料を用いずに、簡便な工程で製造される、紫外線吸収剤の開発が求められていた。
【特許文献1】特開2000−119262号公報
【特許文献2】特開2002−80487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、重合性官能基と紫外線吸収部を併せ持つ高分子量化が可能な重合性化合物であって、フェノール性水酸基の影響を考慮する必要なく簡便な工程で合成でき、経時変化が起こりにくい重合性化合物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、天然から容易かつ大量に得られ、またフェノール性水酸基を封鎖しても紫外線吸収能力がほとんど変化しないフェルラ酸のフェノール性水酸基側に(メタ)アクリル酸ユニットを結合させた重合性化合物により、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表される重合性化合物である。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2は直鎖もしくは分岐のアルキル基、環状構造を含むアルキル基、または末端に芳香環を含むアルキル基を示し、−X−は2価の置換基を示す。)
本発明の重合性化合物においては、−X−が下記の一般式(2)〜(5)で示される構造のいずれか、または、それらを組み合わせた構造であることが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R3は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐構造を有するアルキレン基を示し、nは0から10までの整数を示す。)
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R4、R5は各々独立に炭素数1〜5の直鎖のアルキル基を示す。)
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R6は炭素数1〜5のアルキル基を示す。またjは0または1を示す。)
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、R7は水素または炭素数1〜3のアルキル基を示す。kは0から2の整数、lは0または1を示す。)
本発明の重合性号物において、−X−が上記一般式(2)と(3)の組み合わせである構造としては、下記一般式(6)であることが好ましい。
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、R3は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐構造を有するアルキレン基、nは0から10までの整数、−Y−は上記一般式(3)〜(5)のいずれかで示される構造である2価の置換基を示す。)
本発明の重合性化合物の製造方法としては、前述の−X−が一般式(2)である場合には、フェルラ酸由来部分と(メタ)アクリル酸部分の結合にフェルラ酸エステルとヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸類或いはその誘導体とのエーテル結合反応を利用する方法(以下、「製法A」という)、または、フェルラ酸エステル類にアルキレンオキサイドを反応させてアルキレンオキシド鎖を伸張した後に(メタ)アクリル酸部分を反応させる方法(以下、「製法B」という)を用いることが好ましい。
【0024】
また、前述の−X−が一般式(3)〜(6)である場合には、分子内にエポキシ基またはオキセタニル基を有する(メタ)アクリレート類とフェルラ酸エステル類とを反応させる製造方法(以下、「製法C」という)を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の重合性化合物は、遊離フェノール性水酸基を残しておく必要がないため、フェノール性水酸基を反応させる簡便な方法で合成することができる。また、本発明の重合性化合部は充分な紫外線吸収能を有しながら遊離フェノール性水酸基を有していないため、重合性化合物から重合体または共重合体を得るポリマー化工程においてもフェノール性水酸基の影響を考慮する必要がなく、簡便な工程で紫外線吸収剤または該紫外線吸収剤を配合した高分子材料製品の製造を行うことができる。また、本発明の重合性化合物を用いた紫外線吸収剤または該紫外線吸収剤を配合した高分子材料製品を製造した後においても、フェノール性水酸基に起因する変色等の経時変化が起こりにくいという優れた性質を有しており、製品の品質面における大きな利点を有するものである。さらに、本発明の重合性化合物は、枯渇資源である石油由来原料を用いず、簡便な工程で製造することができるため、無駄なエネルギーの消費を抑えることができ、グリーンケミストリーの観点から好ましいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の重合性化合物について詳細に説明する。
本発明の重合性化合物は分子内にフェルラ酸部分と(メタ)アクリル酸部分を有する化合物であり、紫外線吸収能力を維持するために遊離のフェノール性水酸基を必要としないことが特徴である。そのため既存のヒドロキシベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系化合物と比べて誘導体の合成が極めて容易である。また遊離のフェノール性水酸基に起因した黄変も起こりにくいという特徴を有している。
【0027】
本発明の化合物は、フェルラ酸ユニットと(メタ)アクリル酸ユニットを合わせ持つ化合物であり、これらの両ユニットをつなぐ部分は一般式(1)で−X−として示された2価の置換基である。
【0028】
−X−は、上記一般式(2)〜(5)で示される構造およびそれらの組み合わせ構造であり、組み合わせ構造の好適な例としては、上記一般式(6)で示される構造が挙げられる。
【0029】
本発明の化合物は分子内にフェルラ酸由来の骨格を有しているが、フェルラ酸のカルボン酸側は物性調整のために様々なエステル構造とすることができる。一般式(1)のRは特に限定される訳ではないが、直鎖あるいは分岐のアルキル基を示し、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ヘプタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、ベンジルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の第一級アルコールとのエステル、イソプロピル、イソブチル、シクロヘキシル、イソノルボルニル等の第二級アルコールとのエステル、さらにはt−ブチル、アダマンチルといった第三級アルコールとのエステルが挙げられる。
【0030】
フェルラ酸は、ポリカーボネート等の樹脂の劣化の要因となる320nm付近に最大吸収波長を持ち、またその吸収能力が、既存のヒドロキシベンゾフェノン系化合物と比べて非常に高くなっている。すなわち、フェルラ酸を用いた本発明の重合性化合物は、従来品よりもポリカーボネート等の樹脂の劣化を抑制する能力に優れると期待される。
【0031】
本発明に用いられるフェルラ酸としては、特に由来等が限定されるものではないが、例えば、米糠油やサトウカエデ、マツの種子中や小麦の胚乳細胞壁、イネの胚乳細胞などの細胞壁等に由来するものが挙げられる。すなわち、本発明の重合性化合物の製造においては、紫外線吸収部位に関しては枯渇資源である石油由来原料を用いる必要がない。
【0032】
フェルラ酸の製造方法としては、例えば、米原油及び黒褐色の粘性に富んだピッチ、油分に富んだアルカリフーズ、ダーク油と称する粗脂肪酸に富んだ副産物を原料として、アルカリ性メタノール、エタノール、IPAなどを溶媒として加水分解法により抽出する方法が挙げられる。また合成法としてはバニリンとマロン酸及び少量のピペリジンの混合物をピリジン中で反応させる方法が挙げられる。
【0033】
以下に、一般式(1)で表される重合性化合物の具体例を式(7)〜(60)として示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるわけではない。
【0034】
なお、以下の式中において、nは0から10までの整数、mは0から20までの整数を示す。
【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
【化16】

【0045】
【化17】

【0046】
【化18】

【0047】
【化19】

【0048】
【化20】

【0049】
【化21】

【0050】
【化22】

【0051】
【化23】

【0052】
【化24】

【0053】
【化25】

【0054】
【化26】

【0055】
【化27】

【0056】
【化28】

【0057】
【化29】

【0058】
【化30】

【0059】
【化31】

【0060】
【化32】

【0061】
【化33】

【0062】
【化34】

【0063】
【化35】

【0064】
【化36】

【0065】
【化37】

【0066】
【化38】

【0067】
【化39】

【0068】
【化40】

【0069】
【化41】

【0070】
【化42】

【0071】
【化43】

【0072】
【化44】

【0073】
【化45】

【0074】
【化46】

【0075】
【化47】

【0076】
【化48】

【0077】
【化49】

【0078】
【化50】

【0079】
【化51】

【0080】
【化52】

【0081】
【化53】

【0082】
【化54】

【0083】
【化55】

【0084】
【化56】

【0085】
【化57】

【0086】
【化58】

【0087】
【化59】

【0088】
【化60】

【0089】
(製造方法)
以下に、本発明の重合性化合物の製造方法(合成方法)について詳述する。
【0090】
前述の−X−が一般式(2)である(アルキレンオキシ部を有する)重合性化合物の製造方法としては、フェルラ酸由来部分と(メタ)アクリル酸部分の結合にフェルラ酸エステルとヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸類或いはその誘導体とのエーテル結合反応を利用する方法(前述の「製法A」)、または、フェルラ酸エステルにアルキレンオキサイドを反応させてアルキレンオキシド鎖を伸張した後に(メタ)アクリル酸部を反応させる方法(前述の「製法B」)などが挙げられる。
【0091】
また、前述の−X−が一般式(3)〜(6)である重合性化合物の製造方法としては、分子内にエポキシ基またはオキセタニル基を有する(メタ)アクリレート類とフェルラ酸エステル誘導体とを反応させる製造方法(前述の「製法C」)が挙げられる。
【0092】
このような本発明の重合性化合物の製造方法は、フェルラ酸からわずか2、3工程で目的の重合性化合物を得ることを可能とするものであり、工業的生産にも好適に用いることができる。
【0093】
より具体的には、上記製法Aは(ポリ)アルキレンオキシ(メタ)アクリル酸エステル類のアルコール性水酸基を好ましい脱離基とした後にフェルラ酸エステル類のフェノール性水酸基と反応させることにより、(メタ)アクリル酸部とフェルラ酸部とを結合する方法であり、上記製法Bは、フェルラ酸エステルのフェノール性水酸基から環状エーテルを利用してアルキレンオキシ基を伸張した後、生じたアルコール性水酸基と(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸クロリドとを反応させることにより合成する方法などである。
【0094】
上記製法Aとしては、(ポリ)アルキレンオキシ(メタ)アクリル酸エステル類のアルコール性水酸基を、対応するハロゲン化物、トシル基等の脱離基に変換した後、フェルラ酸エステル類のフェノール性水酸基と反応させるウィリアムソン法、アルコール性水酸基をアゾジカルボン酸エステル類で活性化した後にフェノール性水酸基と反応させる光延反応を利用する方法等を挙げることができるが、反応ステップが1段階で済むことから光延反応を利用する方法が好適に用いられる。
【0095】
上記光延反応に用いられる溶媒としてはn−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エチル等およびこれらの混合溶媒が挙げられるがトルエンが最も好適に利用される。また反応温度は−40〜100℃が好ましく、より好ましくは−20℃〜40℃である。
【0096】
上記製法Bを用いて本発明の重合性化合物を製造する際、環状エーテルとの反応に使用される触媒としては、酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類が挙げられる。これらのうち好ましいものは、金属アルコキシドおよびアミン類であり、特に好ましくはトリエチルアミンである。触媒の使用量は特に限定されないが、フェルラ酸エステル1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.1〜3モルである。
【0097】
上記製法Bを用いてフェルラ酸エステルのフェノール性水酸基に環状エーテルを付加させる際には、フェルラ酸エステルと環状エーテルと触媒とを一括で仕込んで反応させても良いし、フェルラ酸エステルと触媒の混合物に環状エーテルを圧入、或いは滴下して反応させても良い。該環状エーテルとしては、エポキシ環、オキセタン環を有する化合物等が挙げられ、より具体的にはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン等が挙げられる。
【0098】
該付加反応の反応溶媒としてはトルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が用いられ、特に好ましくは、トルエン、テトラヒドロフランが用いられる。反応溶媒として、トルエンを用いることにより、より安価な試薬で工業的生産に適した製造方法を用いることが可能となる。
【0099】
フェルラ酸エステルに環状エーテルを付加させる際の反応温度は、通常0℃〜250℃であり、好ましくは20℃〜180℃である。
【0100】
さらにアルキレンオキシド鎖が伸張された化合物に対して、塩基存在下に(メタ)アクリル酸クロリドを反応させるか、または酸触媒存在下に(メタ)アクリル酸を反応させることにより、当該発明化合物群を製造することができる。
【0101】
また、上記製法Cの反応(エポキシ基およびオキセタニル基の開環反応)を利用する場合は、対応するグリシジル系化合物およびオキセタン系化合物とフェルラ酸エステル類のフェノール性水酸基との反応を利用する方法が挙げられる。
【0102】
この際の反応は、通常、50℃〜250℃の範囲の温度で、1〜50時間程度行なわれる。該反応の際、好ましくは、触媒が用いられる。触媒の具体例としては、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)等のアミン類、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩、又はテトラフェニルホスホニウム塩等の第四級ホスホニウム塩、そのほか、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類や、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等を挙げることができる。上記の反応では触媒は単独で用いてもよいし、適宜数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
また、反応の際、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセルソルブ等のアルコール類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロブアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物等を反応溶剤として用いることができる。
【0104】
反応の際、重合禁止剤として、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、4−メチルキノリン、フェノチアジン等を反応系に共存させてもよい。
【0105】
上記製法Cの反応(エポキシ基およびオキセタニル基の開環反応)に際して、アクリル酸又はメタクリル酸の重合反応を抑制するために、場合によっては、空気等の気流下に反応を行なうこともできる。その際には、空気による酸化反応を防止するために、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤を併用してもよい。
【0106】
次に、上記方法によって得られた本発明の重合性化合物を高分子材料製品等に適用する方法について説明する。
【0107】
本発明の重合性化合物は、通常、それらをモノマーとして含む重合体または共重合体として、樹脂中に添加、塗布して利用することが可能である。その場合、本発明の重合性化合物のみからなる重合体または共重合体を利用することも可能であるが、通常は、他のモノマーと共重合させてポリマー化した共重合体を用いることが望ましい。
【0108】
重合反応を添加、塗布前にあらかじめ行っておいて得られたポリマーを樹脂に添加する方法と、本発明の重合性化合物と他のモノマー類と混合して樹脂上に塗布した後に、紫外線、電子線、熱等により重合する方法があり、いずれの方法も利用することができる。
【0109】
重合反応はラジカル重合、アニオン重合などを用いることができるが、好ましくはラジカル重合が用いられる。あらかじめポリマー化してから用いる場合には、開始剤としてアゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等を利用して、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等を行うことが可能である。
【0110】
また、他のモノマーと混合し、樹脂上に塗布した後に重合する場合には、光開始剤として、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、チオキサントン系等の化合物や熱開始剤として過酸化ベンゾイル等の過酸化物を用いて、塗布後に紫外線、熱等により重合することが可能である。また電子線を利用する場合には特に開始剤を添加することなく、重合することが可能である。
【0111】
本重合性化合物の重合は、単独重合、共重合いずれの方法でも行うことができる。
共重合を行う場合のモノマーとしては、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、アルキルビニルエーテル類、塩化ビニル、エチレン、プロピレン等を挙げることができるが、好ましくはスチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステル誘導体である。
【0112】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0113】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0114】
【化61】

【0115】
まず、フェルラ酸エチルエステル444mg、トリフェニルフォスフィン630mg、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.26mLのトルエン(20mL)溶液に、氷冷下ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(40%トルエン溶液)1.4mLをゆっくり滴下した。滴下終了後、氷浴をはずし室温で一昼夜撹拌した。析出した固体を濾過した後、溶媒を減圧下留去した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより目的物660mgを得た。
【0116】
実施例1で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。なお、NMRデータの測定は、Bruker社製AVANCE400を用いて行った。また記載の1HNMRのケミカルシフト値はテトラメチルシランを基準とした値である。またMSスペクトルの測定はPerSeptive Biosystems社製Marinerを用いて行った(以下の測定においても同様である。)。
【0117】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.62(1H,d,J = 15.9Hz), 7.06−7.10(2H,m), 6.90(1H,d,J = 8.1Hz),6.44(1H,dd,J = 17.4,1.4Hz),6.32(1H,d,J = 15.9Hz),6.17(1H,dd,J = 10.4, 17.4Hz),5.86(1H, dd,J = 10.4, 1.4Hz),4.55(2H,t,J = 5.0Hz),4.31(2H,t,J = 5.0Hz), 4.26(2H,q,J = 6.1Hz),3.89(3H,s),1.34(3H,t,J = 6.1Hz)
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.2,166.0,150.0,149.8,144.3,131.4,128.4,122.3,116.4,113.6,110.5,67.1,62.7,60.4,56.0,14.3.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C1721NaO6 (M +H+) 321.13. found, 321.12.
【実施例2】
【0118】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0119】
【化62】

【0120】
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸デシルエステル(83mg)、2−ヒドロキシエチルアクリレートの代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレートを用い、実施例1の方法と同様の操作により式(62)の化合物を合成した(20mg)。
【0121】
実施例2で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0122】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.62(1H,d,J = 15.9Hz), 7.07−7.10(2H,m), 6.92(1H,d,J = 8.1Hz),6.32(1H,d,J = 15.9Hz),6.13(1H,brs),5.58(1H, brs),4.53(2H,t,J = 4.7Hz),4.32(2H,t, J = 4.7Hz), 4.19(2H,t,J = 6.7Hz),3.89(3H,s),1.95(3H,s), 1.70(2H,m), 1.27−1.41(14H,m),0.88(3H,t,J = 6.7Hz)
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.3,150.1,149.9,144.3,135.9,128.4,126.1,122.3,116.4,113.8,110.6,67.2,64.7,62.9,56.0, 31.9, 29.5, 29.3, 28.8, 6.0, 22.7, 18.3, 14.1.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2638NaO6 (M +Na+) 469.26. found, 469.22
【実施例3】
【0123】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0124】
【化63】

【0125】
まず、フェルラ酸エチルエステル222mg、トリエチルアミン0.21mLのTHF(5mL)溶液に、氷冷下アクリル酸クロリド0.1mLをゆっくり滴下した。滴下終了後、氷浴をはずし室温で一昼夜撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機相を洗浄、乾燥した後、クロロホルム/ヘキサン系で固体を析出させることにより目的物140mgを得た。
【0126】
実施例3で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0127】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.65(1H,d,J = 16.0Hz), 7.08−7.15(2H,m), 6.63(1H,dd,J = 17.3, 1.3Hz),6.40(1H,d,J = 16.0Hz),6.35(1H,dd,J = 17.3,10.5Hz),6.04(1H,dd,J = 10.4, 1.2Hz), 4.27(2H,q,J = 7.1Hz),3.86(3H,s),1.35(3H,t, J = 7.1Hz)
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ166.8,163.8,151.5,143.9,141.2,133.5,133.0,127.4,123.3,121.2,118.5,111.3, 60.6,56.0,14.3.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C15175 (M +H) 277.11. found, 277.09.
【実施例4】
【0128】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0129】
【化64】

【0130】
(式中、n=6(平均値))
フェルラ酸エチルエステル(444mg)を用い、2−ヒドロキシエチルアクリレートの代わりにポリエチレングリコールアクリレート(数平均分子量375)を用い、実施例1の方法と同様の操作により式(64)の化合物を合成した(66mg)(微量の不純物を含む)。
【0131】
実施例4で得られた重合性化合物のNMRデータを以下に示す。
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.62(1H,d,J = 15.9Hz), 7.04−7.09(2H,m), 6.90(1H,d,J = 8.2Hz),6.43(1H,brd,J = 17.3Hz),6.31(1H,d,J = 15.9Hz),6.17(1H,dd,J = 10.4, 17.3Hz),5.84(1H,brd,J = 10.4Hz),4.22−4.33(6H,m),3.88(3H,s),3.61−3.75(24H,m), 1.34(3H,t,J = 6.1Hz)
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.2,166.2,150.4,149.6,144.5,131.9,128.4,128.3,122.4,116.0,113.0,110.1,70.8,70.8,70.6,69.5,68.4,63.4,60.4,56.0,14.3
【実施例5】
【0132】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0133】
【化65】

【0134】
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸2−エチルヘキシルエステル(306mg)を用い、実施例1の方法と同様の操作により式(65)の化合物を合成した(205mg)。
【0135】
実施例5で得られた重合性化合物のNMRデータおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0136】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.61(1H,d,J = 15.9Hz), 7.07−7.10(2H,m), 6.90(1H,d,J = 8.1Hz),6.44(1H,dd,J = 17.3,1.4Hz),6.32(1H,d,J = 15.9Hz),6.17(1H,dd,J = 10.4, 17.3Hz),5.86(1H, dd,J = 10.4, 1.4Hz),4.55(2H,t,J = 5.1Hz),4.31(2H,t, J = 5.1Hz), 4.11−4.13(2H,m),3.84(3H,s),1.60 (1H,m), 1.30−1.43 (8H, m),0.89−0.95 (6H, m).
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.4,166.0,150.0,149.8,144.2,131.4,128.4,128.0,122.3,116.5,113.6,110.5,67.1,66.9, 62.7,56.0,38.9, 30.5, 29.0, 23.8, 23.0,14.1, 11.0.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C23336 (M +H) 405.23. found, 405.21.
【実施例6】
【0137】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0138】
【化66】

【0139】
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸2−エチルヘキシルエステル(15g)、2−ヒドロキシエチルアクリレートの代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレートを用い、実施例1の方法と同様の操作により式(66)の化合物を合成した(17.5g)(微量の不純物を含む)。
【0140】
実施例6で得られた重合性化合物のNMRデータおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0141】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.62(1H,d,J = 15.9Hz), 7.08−7.10(2H, m), 6.92(1H,d,J = 8.1Hz),6.33(1H,d,J = 15.9Hz),6.13(1H,brs),5.58(1H, brs),4.53(2H,t,J = 5.2Hz),4.32(2H,t, J = 5.2Hz), 4.11−4.15(2H,m),3.90(3H,s),1.95(3H,s), 1.65 (1H,m), 1.24−1.46 (8H, m),0.93−0.95 (6H,m).
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.3,167.2,150.0,149.8,144.2,135.9,129.0,128.3,128.2,126.1,122.3,116.4,113.7, 110.5, 67.1,66.8, 62.9,56.0,38.8, 30.4, 28.9, 23.7, 22.9,14.0, 11.0.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2434NaO6 (M +Na) 441.23. found, 441.20.
【実施例7】
【0142】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0143】
【化67】

【0144】
(式中、n=7(平均値))
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸2−エチルヘキシルエステル(612mg)、2−ヒドロキシエチルアクリレートの代わりにポリエチレングリコールメタクリレート(数平均分子量360)を用い、実施例1の方法と同様の操作により式(67)の化合物を合成した(134mg)(微量の不純物を含む)。
【0145】
実施例7で得られた重合性化合物のNMRデータを以下に示す。
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.61(1H,d,J = 15.9Hz), 7.05−7.09(2H,m), 6.90(1H,d,J = 8.2Hz),6.31(1H,d,J = 15.9Hz),6.13(1H,brs),5.58(1H,brs),4.29−4.31(2H,m),4.20−4.23(2H,m), 4.11−4.13(2H,m),3.90(3H,s),3.61−3.76(28H,m),1.95(3H,s), 1.65 (1H,m), 1.25−1.44 (8H,m),0.89−0.95 (6H,m).
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.4,167.3,150.4,149.6,144.2,136.1,127.8,125.7,122.4,116.1,113.0, 110.1, 70.8, 70.6, 70.5, 69.5, 69.1, 68.4, 66.8,63.9,56.0,38.9, 30.4, 28.9, 23.8,23.0,22.0,18.3,14.0,11.0.
【実施例8】
【0146】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0147】
【化68】

【0148】
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸シクロヘキシルエステル(138mg)、2−ヒドロキシエチルアクリレートの代わりに2−ヒドロキシエチルメタクリレートを用い、実施例1の方法と同様の操作により式(68)の化合物を合成した(138mg)。
【0149】
実施例8で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0150】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.61(1H,d,J = 15.9Hz), 7.07−7.10(2H,m), 6.91(1H,d,J = 8.2Hz),6.32(1H,d,J = 15.9Hz),6.13(1H,brs),5.58(1H,brs),4.88(1H,m), 4.53(2H,t,J = 5.1Hz),4.32(2H,t, J = 5.1Hz),3.89(3H,s),1.95(3H,s), 1.91−1.94(2H,m), 1.73−1.79(2H, m),1.30−1.50(6H,m)
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.2,166.6,149.9,149.8,144.0,135.9,128.4,126.1,122.2,117.0,113.7, 110.5, 72.6, 67.1, 62.9,56.0,31.8, 25.4, 23.8, 18.2.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2228NaO6 (M +Na) 411.18. found, 411.16.
【実施例9】
【0151】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0152】
【化69】

【0153】
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸イソボルニルエステル(165mg)、2−ヒドロキシエチルアクリレートの代わりに2−ヒドロキシメチルメタクリレートを用いて実施例1の方法と同様の操作により式(69)の化合物を合成した(77mg)(微量の不純物を含む)。
【0154】
実施例9で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0155】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.56(1H,d,J = 15.5Hz), 7.06−7.09(2H,m), 6.91(1H,d,J = 8.2Hz),6.32(1H,d,J = 15.5Hz),6.13(1H,brs),5.58(1H,brs),4.79−4.82(1H,m), 4.53(2H,t,J = 5.2Hz),4.32(2H,t,J = 5.2Hz),3.90(3H,s),1.95 (3H,s), 1.55−1.90 (3H,m), 0.82−1.28 (4H,m), 1.07 (3H,s), 0.90(3H,s), 0.87(3H, s).
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.2,166.7,150.0,149.9,143.9,135.9,128.4,126.1,122.3,117.0,113.7, 110.6, 81.0, 67.1,62.9,56.0,48.9, 47.0, 45.1, 38.9, 33.8, 27.1, 21.1, 20.0, 11.5.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2634NaO6 (M +Na) 465.23. found, 465.22.
【実施例10】
【0156】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0157】
【化70】

【0158】
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸t−ブチルエステル(63mg)を用い、実施例1の方法と同様の操作により式(70)の化合物を合成した(65mg)。
【0159】
実施例10で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0160】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.52(1H,d,J = 15.9Hz), 7.07−7.08(2H,m), 6.89(1H,d,J = 8.2Hz),6.44(1H,dd,J = 17.3,1.4Hz),6.25(1H,d,J = 15.9Hz),6.15(1H,dd,J = 10.4, 17.3Hz),5.86(1H, dd,J = 10.4, 1.4Hz),4.55(2H,t,J = 5.1Hz),4.31(2H,t, J = 5.1Hz),3.89(3H,s),1.53 (9H,s)
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ166.5,166.0,149.8,149.7,143.3,131.4,128.5,128.0,122.1,118.3,113.6,110.4,80.3,67.1, 62.7, 55.9, 28.2.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C1924NaO6 (M +Na) 371.15. found, 371.13.
【実施例11】
【0161】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0162】
【化71】

【0163】
まず、フェルラ酸エチルエステル1.1g、グリシジルメタクリレート0.82mL、ヒドロキノン5mgのトルエン(20mL)溶液に、触媒としてベンジルーメチルーイミダゾール39μLを加え、環流下一昼夜撹拌した。次に、反応溶液を濃縮して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより目的物705mgを得た(微量の他の異性体を含む)。
【0164】
実施例11で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0165】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.62(1H,d,J = 15.9Hz), 7.05−7.09(2H, m), 6.90(1H,d,J = 8.2Hz),6.32(1H,d,J = 15.9Hz),6.15(1H,brs),5.61(1H,brs),4.06−4.50(7H,m),3.88(3H,s),1.96(3H,s), 1.34(3H, t, J = 5.Hz).
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.3,167.1,149.9,149.8,144.2,135.8,128.5,126.2,122.2,116.5,114.1,110.3, 70.7, 68.4, 65.3, 60.4, 55.8, 18.3, 14.3.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C19257 (M +H) 365.16. found, 365.15.
【実施例12】
【0166】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0167】
【化72】

【0168】
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸2−エチルヘキシルエステル(306mg)、べンジル−メチル−イミダゾールの代わりにテトラブチルアンモニウムブロミドを用いて実施例11の方法と同様の操作により式(72)の化合物を合成した(262mg)(微量の異性体を含む)。
【0169】
実施例12で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0170】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.61(1H,d,J = 15.9Hz), 7.06−7.10(2H,m), 6.91(1H,d,J = 8.2Hz),6.33(1H,d,J = 15.9Hz),6.15(1H,brs),5.61(1H,brs),4.06−4.37(7H,m),3.88(3H,s),1.96(3H,s),1.64−1.67(1H,m), 1.31−1.46 (8H, m),0.91−0.95 (6H,m)
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.4,167.3,149.8,144.1,135.8,128.6,126.5,122.3,116.6,114.1,110.2, 70.7, 68.4, 66.7, 65.3, 55.8, 38.8, 30.4, 28.9, 23.8, 23.0, 18.3, 14.0, 11.0.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2536NaO7 (M +Na) 471.24. found, 471.20.
【実施例13】
【0171】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0172】
【化73】

【0173】
フェルラ酸エチルエステルの代わりにフェルラ酸シクロヘキシルエステル(138mg)、べンジル−メチル−イミダゾールの代わりにテトラブチルアンモニウムブロミドを用いて実施例11の方法と同様の操作により式(73)の化合物を合成した(85mg)(微量の異性体を含む)。
【0174】
実施例13で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0175】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.60(1H,d,J = 15.9Hz), 7.06−7.10(2H,m), 6.90(1H,d,J = 8.2Hz),6.31(1H,d,J = 15.9Hz),6.15(1H,brs),5.61(1H,brs),4.90(1H,m), 4.30−4.37(3H,m)4.06−4.16(2H,m),3.87(3H,s),1.96(3H, s),1.90−1.95(2H,m), 1.76−1.81(2H,m), 1.20−1.56(6H,m).
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.4,166.5,149.8,143.9,135.8,128.6,126.2,122.3,117.2,114.1,110.2, 72.7,70.7, 68.4, 66.7, 65.3, 55.8, 31.8, 30.4, 25.4, 23.8, 18.2.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2330NaO7 (M +Na) 441.19. found, 441.16.
【実施例14】
【0176】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0177】
【化74】

【0178】
グリシジルメタクリレートの代わりに4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、触媒としてベンジルーメチルーイミダゾールの代わりにテトラブチルアンモニウムブロミド、溶媒としてトルエンの代わりにジメチルホルムアミドを用いて実施例11の方法と同様の操作により式(74)の化合物を合成した(280mg、収率71%)。
【0179】
実施例14で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0180】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.62(1H,d,J = 15.9Hz), 7.05−7.10(2H,m), 6.92(1H,d,J = 8.3Hz),6.40(1H,dd,J = 17.3, 1.4Hz),6.32(1H, d, J = 15.9Hz), 6.10(1H, dd, J = 17.3,10.4Hz), 5.82(1H,dd, J = 10.4, 1.4Hz),5.61(1H, brs),4.05−4.29(7H,m),3.88(3H,s),3.53−3.64(4H, m),1.64−1.78(4H,m), 1.34(3H, t, J = 7.1Hz).
13C NMR(100MHz, CDCl3)δ167.1,166.2,150.1,149.7,144.3,130.6,128.4,128.2,122.3,116.3,113.7,110.2, 71.4, 71.0, 70.6, 68.9, 64.2, 60.4, 55.8, 26.0, 25.4, 14.3.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2230NaO8 (M +Na) 445.18. found, 445.14.
【実施例15】
【0181】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0182】
【化75】

【0183】
グリシジルメタクリレートの代わりにサイクロマー−A−200、触媒としてベンジル−メチル−イミダゾールの代わりにテトラブチルアンモニウムブロミド、溶媒としてトルエンの代わりにジメチルホルムアミドを用いて実施例11の方法と同様の操作により式(76)の化合物(異性体を含む)を合成した(284mg、収率60%)。
【0184】
実施例15で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0185】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.62(1H,d,J = 15.9Hz), 7.05−7.19(2H,m), 6.92−6.96(1H,m),6.35−6.45(1H,m),6.32(1H, d, J = 15.9Hz), 6.09−6.16(1H,m), 5.83−5.86(1H,m),5.61(1H, brs),4.03−4.29(6H,m),3.88(3H,s),3.53−3.64(4H,m), 1.50−2.30(7H,m), 1.26(3H, t, J = 7.1Hz)
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2228NaO7 (M +Na) 427.17. found, 427.15.
【実施例16】
【0186】
下記化学式で表される化合物の合成を行った。
【0187】
【化76】

【0188】
グリシジルメタクリレートの代わりに3−エチル−3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、触媒としてベンジル−メチル−イミダゾールの代わりにテトラフェニルホスホニウムブロミド、溶媒としてトルエンの代わりにスルホランを用いて実施例11の方法に準じた方法により油状物を得た。得られた油状物のMSスペクトルを測定した結果、目的物と同定されうる分子量のピークが存在することを確認した。
【0189】
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C2230NaO7 (M +Na) 427.19. found, 427.09.
【実施例17】
【0190】
フェルラ酸エステルのフェノール性水酸基から環状エーテルを利用してアルキレンオキシ基を伸張した後に(メタ)アクリロイル基を導入する方法として下記の実験を行った。
【0191】
【化77】

【0192】
フェルラ酸エチルエステル2.2g、トリエチルアミン0.14mL、エチレンオキシド(0.88mol/L inトルエン)と溶媒のトルエン(20mL)を耐圧ガラス容器に入れ、120℃で6時間加熱した。反応終了後固形物をろ過した。ろ液を濃縮して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成することにより、上式のAの化合物(710mg)を得た。
【0193】
エチレンオキシ基が導入された化合物A133mg、トリエチルアミン0.1mLのTHF(5.0mL)に0℃でメタクリロイルクロリド0.06mLを加えた。反応溶液を室温で一昼夜攪拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機相を洗浄、乾燥した後、クロロホルム/ヘキサン系で固体を析出させることにより目的物62mgを得た。
【0194】
実施例17で得られた重合性化合物のNMRおよびMSスペクトルのデータを以下に示す。
【0195】
<NMRデータ>
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ 7.62(1H,d,J = 15.9Hz), 7.05−7.10(2H,m), 6.91(1H,d,J = 8.1Hz),6.32(1H,d,J = 15.9Hz),6.13(1H,brs),5.58(1H, brs),4.53(2H,t,J = 5.2Hz),4.31(2H,t, J = 5.2Hz), 4.28(2H,q,J = 7.2Hz),3.88(3H,s),1.95(3H,s), 1.34(3H,t,J = 7.2Hz)
13C NMR(100MHz,CDCl3)δ167.2,167.1,150.0,149.8,144.3,135.9,128.3,126.1,122.3,116.3,113.7,110.5,67.1,62.9,60.4,56.0,18.3,14.3.
<MSスペクトルデータ>
ESI−TOF−MS m/e calcd for C1822NaO6 (M +Na) 357.13. found, 357.08.
【実施例18】
【0196】
(重合性化合物の紫外線吸収特性の評価)
実施例5および実施例12で得られた重合性化合物の紫外線吸収スペクトル、比較例として市販のヒドロキシベンゾフェノン系化合物の紫外線吸収スペクトルを測定した。測定結果を図1に示す。
【0197】
また、それぞれの化合物の320nm付近の最大吸収波長とその波長でのモル吸光係数の値を以下に示す。
実施例 5の化合物 320nm(ε= 17700) (EtOH)
実施例12の化合物 321nm(ε= 19500) (EtOH)
ヒドロキシベンゾフェノン系化合物 324nm(ε= 7900) (EtOH)
図1から、実施例5および12で得られた本発明の重合性化合物のスペクトルはほぼ同じであり、フェルラ酸部分の以外の差異は吸収スペクトルに大きな影響を及ぼさないことがわかる。また吸収波長のピークは、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物Bとほぼ同じ吸収波長であることもわかる。さらに実施例5および12で得られた本発明の重合性化合物のモル吸光度係数はヒドロキシベンゾフェノン系化合物Bの約2倍であり、この波長領域で非常に有効な紫外線吸収能力を有していることがわかる。
【0198】
(比較例)
紫外線吸収剤としても利用されているp−ヒドロキシ桂皮酸類から合成される重合性化合物Cと実施例1で得られた本発明の重合性化合物の紫外線吸収スペクトルの測定結果を図2に示す。それぞれの化合物の最大吸収波長とその波長でのモル吸光係数の値を以下に示す。
【0199】
実施例1の化合物 318nm ε= 16600 (EtOH)
重合性化合物C 308nm ε= 20900 (EtOH)
図2から本発明の化合物は化合物Cと比べて長波長側に吸収帯があり、光劣化の原因の一つである320nm付近の吸収が高くなっていることがわかる。
【実施例19】
【0200】
(重合反応例1)
実施例1で得られた化合物(141mg)とメチルメタクリレート(0.28mL)とTHF中、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(26mg)を開始剤として重合反応(60℃、18時間)を行った。得られた反応溶液をメタノールに注ぎ、得られた固形物をTHF/MeOH系で再沈殿精製することにより重合物296mgを得た。
共重合体中のモル組成比は、フェルラ酸ユニット含有アクリレート:メチルメタクリレート(MMA)=1:8.2であり、得られた重合物の分子量(測定溶媒:THF、ポリスチレン換算)は以下の通りであった。
Mn=25350
Mw=71460
【実施例20】
【0201】
(重合反応例2)
実施例1で得られた化合物(423mg)をTHF中、AIBN(1mg)を開始剤として重合反応(60℃、18時間)を行った。得られた反応溶液をメタノールに注ぎ、得られた固形物をTHF/MeOH系で再沈殿精製することにより重合物110mgを得た。
【0202】
得られた重合物の分子量(測定溶媒:THF、ポリスチレン換算)は以下の通りであった。
Mn=20210
Mw=43255
【実施例21】
【0203】
(重合物の紫外線吸収スペクトル)
実施例19で得られた重合物を薄膜にして紫外線吸収スペクトル測定を行った結果を図3に示す。また比較例として重合前の化合物である実施例1の化合物の溶液状態でのスペクトルも併せて示す(それぞれのスペクトルの測定方法は異なるため吸収波長の比較のみ)。
【0204】
図3から本発明の化合物は重合した後であっても、重合前と同様の吸収能力を有することがわかる。
【0205】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の請求範囲は上記に限定されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明の重合性化合物は、紫外線吸収剤として、屋外使用耐候性ポリカーボネート、自動車用等の屋外塗料、クリアトップコーティング材、インクジェット印刷材、眼鏡、コンタクトレンズ、液晶バックパネル用の導光板等に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】実施例5および実施例12の重合性化合物の紫外線吸収スペクトルを示す図である。
【図2】実施例1の重合性化合物の紫外線吸収スペクトルを示す図である。
【図3】実施例19の重合物の紫外線吸収スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される重合性化合物。
【化1】

(式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2は1価の置換基を示し、−X−は2価の置換基を示す。)
【請求項2】
2が、直鎖もしくは分岐のアルキル基、環状構造を含むアルキル基、または末端に芳香環を含むアルキル基である、請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項3】
−X−が下記の一般式(2)〜(5)で示される構造のいずれか、または、それらを組み合わせた構造である、請求項1に記載の重合性化合物。
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐構造を有するアルキレン基を示し、nは0から10までの整数を示す。)
【化3】

(式中、R4、Rは各々独立に炭素数1〜5の直鎖のアルキル基を示す。)
【化4】

(式中、R6は炭素数1〜5のアルキル基を示す。またjは0または1を示す。)
【化5】

(式中、R7は水素または炭素数1〜3のアルキル基を示す。kは0から2の整数、lは0または1を示す)
【請求項4】
−X−が上記一般式(2)で示される構造である、請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項5】
−X−が上記一般式(3)、(4)または(5)で示される構造である、請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項6】
−X−が下記の一般式(6)で示される構造である、請求項1に記載の重合性化合物。
【化6】

(式中、R3は炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐構造を有するアルキレン基、nは0から10までの整数、−Y−は上記一般式(3)〜(5)のいずれかで示される構造である2価の置換基を示す。)
【請求項7】
フェルラ酸由来部分と(メタ)アクリル酸部分の結合に際して、フェルラ酸エステルとヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸類或いはその誘導体とのエーテル結合反応を利用することを特徴とする、請求項4に記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項8】
フェルラ酸エステルにアルキレンオキサイドを反応させてアルキレンオキシド鎖を伸張した後に(メタ)アクリル酸部を反応させることを特徴とする、請求項4に記載の重合性化合物の製造方法。
【請求項9】
分子内にエポキシ基またはオキセタニル基を有する(メタ)アクリレート類とフェルラ酸エステルとを反応させることを特徴とする、請求項5または6に記載の重合性化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−215189(P2009−215189A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58281(P2008−58281)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【出願人】(000190895)新中村化学工業株式会社 (19)
【出願人】(591066362)築野食品工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】