説明

新規イソフラボン化合物

【課題】新規なイソフラボン化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物又はその塩。式(1)中、R1、R2及びR4は、それぞれ同一又は異なって水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を示し;R3は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示すか、又は下記式(2)で示される基を示す。式(2)中、R5は、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはカルボキシアルキル基で置換されたアシルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規イソフラボン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆は、豆腐、醤油、納豆等の原料としてよく知られており、大豆種子から機能性成分を得る試みが盛んに行われている。大豆由来の機能性成分としては、イソフラボン類がよく知られている。大豆に含まれるイソフラボン類としては、これまでに、ダイゼイン、ゲニステイン、及びグリシテインの3種類のアグリコンとその配糖体とを含む12種類のイソフラボンの存在が確認されている(特許文献1)。
【0003】
大豆及びイソフラボン類には、種々の生理活性があることが報告されている。例えば、イソフラボンについては、エストロゲン様作用を有しており骨粗鬆症等の更年期障害に対する改善効果があることや、抗酸化作用、発癌抑制、心疾患予防効果等が知られている。また、特許文献2には、5,7,4’−トリヒドロキシイソフラボン(ゲニステイン)、及びイソフラボン類を含有することが知られているオノニス根抽出物に、美白作用や抗炎症作用があることが開示されている。その一方で特許文献1には、イソフラボンの抗アレルギー作用はきわめて弱いことが開示されている。
【0004】
他方、大豆種子については、青大豆抽出物がIgE低下作用や、Th1−Th2バランスをTh1有意に改善する作用を有し、抗アレルギー剤として使用できること(特許文献3)や、光照射した青大豆抽出物がIL−2産生抑制活性を有し、抗炎症作用を発揮すること(非特許文献1)が知られている。しかし、これらの有効成分がどのような物質であるかは明らかにされていない。
【0005】
上記のとおり、大豆及びイソフラボン類の優れた効果は従来よく知られているものの、その有効成分については未だ充分に明らかにされていないのが実状である。大豆及びイソフラボン類による種々の生理活性を発揮する成分を明らかにするとともに、より生理活性の高いイソフラボン類を得ることができれば、医薬や食品等の有効成分として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−197398号公報
【特許文献2】特開平6−16531号公報
【特許文献3】特開2010−53125号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日本食品科学工学会第57回大会講演集、第109頁2Fp5、2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、斯かる従来の実状に鑑み、より高い生理活性を有するイソフラボン類化合物、及びそれを用いた医薬、食品等の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、優れた抗炎症作用を有する新規なイソフラボン化合物を見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(1):
【0011】
【化1】

〔式中、R1、R2及びR4は、それぞれ同一又は異なって水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を示し;R3は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示すか、又は下記式(2)
【化2】

(式中、R5は、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはカルボキシアルキル基で置換されたアシルである)
で示される基を示す〕、
で表される化合物又はその塩を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【0012】
また本発明は、上記式(1)で表される化合物又はその塩を含有する抗炎症剤を提供することにより、上記課題を解決したものである。
また本発明は、上記式(1)で表される化合物又はその塩を含有する医薬、化粧品、飲食品、及び飼料を提供することにより、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、顕著な抗炎症作用を有し、種々の炎症性疾患、炎症症状の予防及び/又は改善に有効な新規なイソフラボン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の新規イソフラボン化合物は、以下の式(1)で表されるものである。
【0015】
【化3】

【0016】
上記式中、R1、R2及びR4は、それぞれ同一又は異なって水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を示す。炭素数1〜4のアルキル、及び炭素数1〜4のアルキルオキシ基におけるアルキルは、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。上記炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル及びエチルが好ましく、上記炭素数1〜4のアルキルオキシ基としては、メトシキ及びエトキシが好ましい。
【0017】
3は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であり得る。あるいは、R3は、下記式(2)で示される基であってもよい。
【0018】
【化4】

【0019】
式中、R5は、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはカルボキシアルキル基で置換されたアシルである。
3における炭素数1〜4のアルキル基、ならびにR5における炭素数1〜4のアルキル基及びカルボキシアルキル基のアルキルは、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。R3及びR5における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル及びエチルが好ましく、R5におけるカルボキシアルキル基としては、カルボキシメチル及びカルボキシエチルが好ましい。
【0020】
本発明の上記式(1)で表される化合物(以下、式(1)化合物)のうちさらに好ましいものとしては、R1、R2及びR4が何れも水素原子であるもの、R1及びR4が水素原子でありR2がメトキシであるもの、ならびにR1がヒドロキシ基でありR2及びR4が水素原子であるものが挙げられる。このときのR3は、水素原子であるか、又はR5が水素原子、アセチル又はカルボキシメチルカルボニルである式(2)で表される化合物であるのが好ましい。
【0021】
本発明の式(1)化合物の塩としては、R3が上記式(2)で示される基であり、R5がカルボキシアルキル基で置換されたアシルである化合物の塩(例えば、マロニル配糖体の塩)が挙げられ、そのうち、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩が好ましい。
【0022】
本発明のイソフラボン化合物(式(1)化合物)の好ましい例を以下に列挙する。
7−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
5,7−ジヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−6−メトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−6−メトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−5−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−(6−O−アセチル−β−D−グルコピラノシルオキシ)−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−6−メトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−[6−O−(カルボキシメチルカルボニル)−β−D−グルコピラノシルオキシ]−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−[6−O−[(カルボキシメチル)カルボニル]−β−D−グルコピラノシルオキシ]−5−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
7−[6−O−[(カルボキシメチル)カルボニル]−β−D−グルコピラノシルオキシ]−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−6−メトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン
【0023】
本発明の式(1)化合物は、例えば、任意のイソフラボン類化合物を出発物質として、当該イソフラボン類化合物のB環を酸化することによって製造することができる。
上記出発物質としては、例えば、B環の4’位にヒドロキシ基を有する任意のイソフラボン類化合物、より具体的な例としては、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、テクトリゲニン、イソホルモノネチン、プルネチン、ムニンギン、ジヒドロキシイソフラボン、トリヒドロキシイソフラボン、4’−ヒドロキシ−7−イソプロピルオキシイソフラボン、4’,7−ジヒドロキシ−5−メチルイソフラボン、4’,7−ジヒドロキシ−8−メチルイソフラボン、4’,5,6−トリヒドロキシ−7−メトキシイソフラボン、4’,5,7−トリヒドロキシ−6,8−ジメトキシイソフラボン、イソフラボン配糖体であるダイジン、ゲニスチン、グリシチン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、ならびにそれらの誘導体、等を挙げることができる。
【0024】
イソフラボンB環の酸化反応は、例えば、特開2009−23990号公報に記載のフラボノイド化合物のB環の酸化方法を参考にして行うことができる。酸化方法としては、溶媒中、必要に応じて触媒の存在下で出発物質と酸化剤とを反応させればよい。このときの酸化剤としては、TAIB([ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼン)、Oxone(オキソン)、Pb(OAc)4(4−アセチル化鉛)、PIFA(フェニルヨード(III)ビス−トリフルオロアセテート)、PIDA(フェニルヨード(III)ジアセ
テート)又はPhI(O2CCF32等を使用することができ、触媒としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル)等を使用することができるが、これらに限定されない。得られた化合物を液液分配やシリカゲルクロマトグラフィー等の任意の手段で精製、濃縮することによって、本発明化合物を得ることができる。
上記方法によって製造された本発明の式(1)化合物は、出発物質におけるB環の4’位にオキソ基を有し、且つ1’位にヒドロキシ基が置換した構造を有する。
なお、上述した製造手順は例示であって、本発明化合物の製造方法を限定するものではない。
【0025】
本発明の式(1)化合物は、後記試験例に示されるとおり、リポポリサッカライドによって産生されるNOを効果的に抑制し、優れた抗炎症作用を有し、抗炎症剤の有効成分として有用である。
本明細書において、「炎症」とは、局所的な炎症及び全身的な炎症を含み、「炎症」の症状および状態としては、炎症の4大徴候である疼痛、発赤、熱感、腫脹;ならびにそれらによって誘発される様々な二次的症状、例えば、炎症性の皮膚炎、胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患、関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎、ならびに花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等を含む。本発明の式(1)化合物又はその塩は、これらの炎症の症状又は状態を予防、治療、改善又は緩和させることができる。
【0026】
よって、本発明はまた、上記式(1)化合物又はその塩を含有する抗炎症剤を提供する。当該抗炎症剤は、例えば、ヒト又は動物における疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善又は緩和、等のために使用することができる。
【0027】
さらに本発明は、上記式(1)化合物又はその塩を含有する医薬、化粧品、飲食品、及び飼料を提供する。式(1)化合物又はその塩は、ヒト又は動物用の医薬、化粧品、飲食品、飼料等に有効成分として使用され、抗炎症効果を発揮することができる。
【0028】
本発明の医薬は、式(1)化合物又はその塩を有効成分として含有する抗炎症薬、あるいはヒト又は動物における疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善若しくは緩和等のための医薬であり得る。
本発明の医薬の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤等の経口剤;吸入剤、坐剤等の経腸製剤;点滴剤;注射剤;外用剤;経皮、経粘膜、経鼻剤;吸入薬;貼布剤等が挙げられる。
なお、液剤、懸濁剤等の液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングされていてもよい。
【0029】
本発明の化粧品は、式(1)化合物又はその塩を有効成分として含有する。当該化粧品の形態としては、クリーム、乳液、ローション、懸濁液、ジェル、パウダー、パック、シート、パッチ、スティック、ケーキ等、化粧品が通常とり得る任意の形態が挙げられる。好ましくは、本発明の化粧品は、肌の炎症や赤み、アレルギー、アトピー、ニキビ等の症状を予防、改善若しくは緩和することができる化粧品である。
【0030】
本発明の医薬及び化粧品は、式(1)化合物又はその塩を単独で含有していてもよく、あるいは、各々、医薬として許容される担体及び化粧料として許容される担体を組み合わせて含有していてもよい。本発明の医薬及び化粧品は、式(1)化合物又はその塩に、慣用される担体、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、酸化防止剤、着色剤、アルコール、水、水溶性高分子、香料、甘味料、矯味剤、酸味料等を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。必要に応じてさらに、他の有効成分又は薬効成分を配合してもよい。
【0031】
本発明の医薬及び化粧品における式(1)化合物又はその塩の含有量は、その剤型により異なるが、通常は、0.1〜99質量%、好ましくは1〜80質量%の範囲である。
【0032】
本発明の飲食品又は飼料は、式(1)化合物又はその塩を有効成分として含有する。これらの飲食品又は飼料は、抗炎症効果、あるいはヒト又は動物における疼痛;発赤;熱感;腫脹;炎症性の皮膚炎;胃炎及び潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患;関節リウマチ及び変性性骨関節炎等の関節炎;アレルギー性結膜炎及びアトピー性皮膚炎等の種々のアレルギー性炎症疾患における炎症症状、等の炎症の症状又は状態の予防、治療、改善又は緩和、等の効果を企図して、その旨を表示した健康食品、機能性飲食品、特定保健用飲食品、病者用飲食品、家畜、競走馬、鑑賞動物等のための飼料、ペットフード等であり得る。
【0033】
本発明の飲食品及び飼料の形態は特に制限されず、式(1)化合物又はその塩を配合できる全ての形態が含まれる。例えば当該形態としては、固形、半固形または液状であり得、あるいは、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ゲル、シロップ、経管経腸栄養用流動食等の各種形態が挙げられる。
具体的な飲食品の形態の例としては、緑茶、ウーロン茶や紅茶等の茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、アルコール飲料、精製水等の飲料、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリン等のスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えばビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)等が挙げられる。
本発明の飼料は飲食品とほぼ同様の組成や形態で利用できることから、本明細書における飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることが出来る。
【0034】
上記飲食品及び飼料は、式(1)化合物又はその塩、ならびに飲食品や飼料の製造に用いられる他の飲食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(たとえば呈味成分、甘味料、有機酸等の酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)等を配合して、常法に従って製造することができる。あるいは、通常食されている飲食品又は飼料に式(1)化合物又はその塩を配合することにより、本発明に係る飲食品又は飼料を製造することができる。
【0035】
本発明の飲食品及び飼料における式(1)化合物又はその塩の含有量は、食品の形態により異なるが、通常は、0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜50質量%の範囲である。
【0036】
上記医薬、化粧品、飲食品及び飼料は、式(1)化合物又はその塩の質量を基準として、成人1日当たり0.1〜100gの範囲で投与又は摂取される。経口投与又は摂取の場合、一般的な1日当たりの投与量は1〜50gである。上記1日当たりの投与又は摂取量は、1回で投与又は摂取してもよいが、数回に分けて投与又は摂取してもよい。
上記1日当たりの量を適切に投与又は摂取できるよう、本発明の医薬の剤型若しくは投与レジメン、又は飲食品及び飼料の形態を、1日当たりの投与又は摂取量が管理できる形にすることが望ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0038】
製造実施例
7−ヒドロキシ−3−(1−ヒドロキシ−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン(実施例1)の合成
【0039】
【化5】

【0040】
ダイゼイン(7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)30mg(0.12mmol)を、10mlの50%THF−H2Oに溶解し、TEMPO3.6mg(0.023mmol)を室温下にて加えた。この反応溶液中に、TAIB60.2mg(0.14mmol)を1mlの50%THF−H2Oに溶解したものを10分間かけて添加し、室温で2時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸ナトリウムを10ml加え溶液を洗浄し、その後1M HClを加えて中性に戻し、20%MeOH−CHCl3(2×100ml)で抽出した。得られた有機層にMgSO4を加え、次いでMgSO4をろ過により除去して得られたろ液を濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(10%MeOH−CHCl3)にて精製し、実施例1の化合物を0.3mg(収率1%)得た。
実施例1化合物についてNMR解析及び質量分析を行った。
1H-NMR(重DMSO, δppm):10.76ppm(1H, s br), 8.36ppm(1H, s), 7.79ppm(1H, d, J = 8.4Hz ), 6.89ppm(1H, d, J = 8.4 Hz ), 6.83ppm(1H, s), 6.77ppm(2H , d, J = 9.6 Hz ), 6.50ppm(1H, s br ), 6.13ppm(2H, d, J = 9.6 Hz);MS: m/z 271.1[M+H]+.
【0041】
試験例1
NO産生抑制作用
マクロファージをリポポリサッカライド(LPS)で活性化してNO産生を増強させ、このNO産生に対する上記で調製した組成物の作用を調べた。
RAW264.7細胞(DSファーマバイオメディカル株式会社)は10%FCS+DMEM培地で継代維持した。RAW264.7細胞を2×105細胞/mL(10%FCS+DMEM培地)に調整した細胞浮遊液を、1mLずつ24ウェルプレートに播種し、24時間予備培養した。次いで、培地を500ng/mlのLPSと試験化合物とを含む10%FCS+DMEM培地に交換し、18時間培養した。コントロールとして、LPSのみで試験化合物を含まない培地に交換し、同じ時間培養した。培養終了後、培地中に放出されたNOをNO2イオンに誘導して定量を行った。
NO2イオンの定量は、測定キット(Griess Reagent System:Promega社)を用いて、操作説明書に従って行った。結果は、下記式によってコントロールを100とする、NO産生量の抑制率として計算した。なお、各組成物は、DMSOに溶解して0.2体積%で培地に添加した。

100−{(サンプルのNO産生量/コントロールのNO産生量)×100}

各種濃度の添加によるNO産生抑制率から、50%抑制濃度(IC50)を算出し、その結果を表1に示す。本発明化合物は大豆イソフラボンであるダイゼインに比べて顕著なNO産生抑制効果を有し、抗炎症剤として優れていることが示された。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

〔式中、R1、R2及びR4は、それぞれ同一又は異なって水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルキルオキシ基を示し;R3は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示すか、又は下記式(2)
【化2】

(式中、R5は、水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基若しくはカルボキシアルキル基で置換されたアシルである)
で示される基を示す〕、
で表される化合物又はその塩。
【請求項2】
請求項1記載の化合物又はその塩を含有する医薬。
【請求項3】
請求項1記載の化合物又はその塩を含有する抗炎症剤。
【請求項4】
請求項1記載の化合物又はその塩を含有する化粧品。
【請求項5】
請求項1記載の化合物又はその塩を含有する飲食品。
【請求項6】
請求項1記載の化合物又はその塩を含有する飼料。

【公開番号】特開2013−6809(P2013−6809A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141923(P2011−141923)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】