説明

新規ピリジニウム誘導体および医薬

【課題】優れた抗癌作用を有する新規ピリジニウム誘導体および医薬品の提供。
【解決手段】下式で表されるピリジニウム誘導体を含有してなる医薬を使用する。またピリジニウム環がナフタレン環の2位で結合した新規ピリジニウム誘導体を得た。


(式中、Qは、アリール、芳香族複素環基を、RおよびRは、水素原子、アルキル、アリール等を、mは0〜4を、nは0〜7を、Xは、薬理学的に許容されるアニオンを表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌活性を有する新規ピリジニウム誘導体および当該化合物等を含有してなる医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4位にナフチル基を有する1−アルキルピリジニウム誘導体が、染料や液晶の性質を有することが知られている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0003】
下記式で示されるナフタレン環の1位にピリジニウム環等が結合したナフタレン誘導体は、光吸収強度が強い化合物として知られている(例えば、特許文献1参照)。ピリジニウム環の1位の置換基として、ヒドロキシ基、メチル基、フェニル基が例示されている。
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、AおよびAは、ピリジン環、ピリジニウム環を表し、R〜Rは、水素原子、置換基を表す)
【0006】
しかしながら、これらの何れの化合物も医薬品、特に抗癌剤としては知られてない。
【0007】
【特許文献1】特開平8−198850号公報
【非特許文献1】Journal of Heterocyclic Chemistry, 2001, 38, 11-23
【非特許文献2】Chemical Physics Letters 1995, 238, 47-53
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、医薬として有用な新規ピリジニウム誘導体および該ピリジニウム誘導体等を含有してなる医薬品、特に抗癌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、1位にアリール基等が結合したピリジニウム環にナフタレン環が結合して形成されるピリジニウム誘導体が、抗癌活性を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)式(I)
【0011】
【化2】

【0012】
{式中、Qは、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換芳香族複素環基を表し、RおよびRは、同一または異なって、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基、置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基、OR(式中、Rは、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基または置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基を表す)、NR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、S(O)pR(式中、pは、0、1または2を表し、Rは、前記Rと同義である)、COR(式中、Rは、前記Rと同義である)、COOR(式中、Rは、前記Rと同義である)、OCOR(式中、Rは、前記Rと同義である)、CONR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR10COR11(式中、R10およびR11は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR12COOR13(式中、R12およびR13は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR14SO15(式中、R14およびR15は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR16C(=Z)NR1718[式中、Zは、酸素原子、硫黄原子、NR19(式中、R19は、前記Rと同義である)、NCN、CHNOまたはC(CN)を表し、R16、R17およびR18は、同一または異なって、前記Rと同義である]、NR20SONR2122(式中、R20、R21およびR22は、同一または異なって、前記Rと同義である)、SONR2324(式中、R23およびR24は、同一または異なって、前記Rと同義である)、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表し、mは、0または1〜4の整数を表し、mが2以上の場合、Rは、同一または異なっていてもよく、nは、0または1〜7の整数を表し、nが2以上の場合、Rは、同一または異なっていてもよく、Xは、薬理学的に許容されるアニオンを表す}で表されるピリジニウム誘導体を含有してなる医薬や、
(2)式(I)で表されるピリジニウム誘導体を含有してなる医薬が、抗癌剤である前記(1)記載の医薬や、
(3)式(I)で表される化合物が、下記式(Ia)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Q、R、R、m、nおよびXは、前記と同義である)で表されるピリジニウム誘導体である前記(1)または(2)記載の医薬や、
(4)ピリジニウム基が、その4位でナフチル基に結合している前記(1)〜(3)記載の医薬や、
(5)Qが、置換アリール基である前記(1)〜(4)記載の医薬や、
(6)置換アリール基が、2,4−ジニトロフェニル基である前記(5)記載の医薬や、
(7)nが、0である前記(1)〜(6)記載の医薬、および、
(8)薬理学的に許容されるアニオンが、塩化物イオンである前記(1)〜(7)記載の医薬に関する。
【0015】
また、本発明は、
(9)式(Ia)
【0016】
【化4】

【0017】
{式中、Qは、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換芳香族複素環基を表し、RおよびRは、同一または異なって、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基、置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基、OR(式中、Rは、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基または置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基を表す)、NR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、S(O)pR(式中、pは、0、1または2を表し、Rは、前記Rと同義である)、COR(式中、Rは、前記Rと同義である)、COOR(式中、Rは、前記Rと同義である)、OCOR(式中、Rは、前記Rと同義である)、CONR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR10COR11(式中、R10およびR11は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR12COOR13(式中、R12およびR13は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR14SO15(式中、R14およびR15は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR16C(=Z)NR1718[式中、Zは、酸素原子、硫黄原子、NR19(式中、R19は、前記Rと同義である)、NCN、CHNOまたはC(CN)を表し、R16、R17およびR18は、同一または異なって、前記Rと同義である]、NR20SONR2122(式中、R20、R21およびR22は、同一または異なって、前記Rと同義である)、SONR2324(式中、R23およびR24は、同一または異なって、前記Rと同義である)、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表し、mは、0または1〜4の整数を表し、mが2以上の場合、Rは、同一または異なっていてもよく、nは、0または1〜7の整数を表し、nが2以上の場合、Rは、同一または異なっていてもよく、Xは、薬理学的に許容されるアニオンを表す}で表される新規ピリジニウム誘導体に関する。
【0018】
さらに、本発明は、
(10)ピリジニウム基が、その4位でナフチル基に結合している前記(9)記載のピリジニウム誘導体や、
(11)Qが、置換アリール基である前記(9)または(10)記載のピリジニウム誘導体や、
(12)置換アリール基が、2,4−ジニトロフェニル基である前記(11)記載のピリジニウム誘導体や、
(13)nが、0である前記(9)〜(12)記載のピリジニウム誘導体、および、
(14)薬理学的に許容されるアニオンが、塩化物イオンである前記(9)〜(13)記載のピリジニウム誘導体に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のピリジニウム誘導体は、優れた抗癌活性を有し、各種の癌に対し抗癌剤として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)という)を含有してなる医薬としては特に制限はないが、抗癌剤として使用するのが好ましい。
化合物(I)を医薬として用いる場合、ナフタレン環とピリジニウム環の結合位置は、ナフタレン環の1位もしくは2位、あるいは、ピリジニウム環の2位〜4位の何れの位置でもよいが、ナフタレン環の2位とピリジニウム環の2位〜4位の何れかの位置で結合した化合物が好ましく、ナフタレン環の2位とピリジニウム環の4位で結合した化合物がより好ましい。
【0021】
アルキル基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキル、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
【0022】
シクロアルキル基は、例えば、炭素数3〜8のシクロアルキル、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、1−シクロヘキセニル等が挙げられる。
【0023】
アルケニル基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数2〜10のアルケニル、具体的には、ビニル、1−プロペニル、アリル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル等が挙げられる。
【0024】
アルキニル基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数2〜10のアルキニル、具体的には、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、イソプロピニル、2−ブチニル、2−ペンチニル、2−ペンテン−4−イニル、2−ヘキシニル等が挙げられる。
【0025】
アリール基は、例えば、炭素数6〜14のアリール、具体的には、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0026】
アラルキル基は、そのアリール部分は前記アリール基と同義であり、アルキル部分は前記アルキル基と同義であり、例えば、炭素数7〜15のアラルキル、具体的にはベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、ベンズヒドリル、トリチル、ナフチルメチル等を挙げることができる。
【0027】
芳香族複素環基は、同一または異なって、少なくとも1以上の異項原子、例えば、窒素、酸素、硫黄等を含む5員または6員の芳香族複素環基からなり、該複素環基は、単環性または該単環性複素環基が複数またはアリール基と縮合した多環性の縮合芳香族複素環基、例えば、二環性もしくは三環性複素環基であってもよい。単環性の芳香族複素環基の具体例としては、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等が挙げられ、多環性の縮合芳香族複素環基としては、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、カルバゾリル、キノリル、イソキノリル、アクリジニル、ナフチリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インダゾリル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、プリニル、プテリジニル、チアントレニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル等を挙げることができる。
【0028】
芳香族複素環アルキル基は、その芳香族複素環部分は前記芳香族複素環基と同義であり、アルキル部分は前記アルキル基と同義であり、例えば、少なくとも1以上の異項原子を含む芳香族複素環アルキル、具体的にはピリジルメチル、ピリジルエチル、フラニルメチル、チエニルメチル等を挙げることができる。
【0029】
脂環式複素環基は、同一または異なって、少なくとも1以上の異項原子、例えば、窒素、酸素、硫黄等を含み、飽和または一部不飽和結合が存在してもよい3〜8員の脂環式複素環基であり、単環性あるいは該単環性の複素環基が複数またはアリール基もしくは芳香族複素環基と縮合した多環性の縮合脂環式複素環基であってもよい。単環性の脂環式複素環基として、具体的には、アジリジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ジヒドロチアゾリル、テトラヒドロフラニル、1,3−ジオキソラニル、チオラニル、ピペリジノ、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリノ、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、オキサチアニル、オキサジアジニル、チアジアジニル、ジチアジニル、アゼピニル、ジヒドロアゾシニル等が例示され、多環性の縮合脂環式複素環基として、具体的には、インドリニル、イソインドリニル、クロマニル、イソクロマニル、キヌクリジニル等を挙げることができる。
【0030】
ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
【0031】
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基および脂環式複素環基における置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基、脂環式複素環基、OR、NR、S(O)qR(式中、qは、0、1または2を表す)、COR、COOR、OCOR、CONR、NRCOR、NRCOOR、NRSO、NRC(=Z)NR(式中、Zは、酸素原子、硫黄原子、NR、NCN、CHNOまたはC(CN)を表す)、NRSONR、SONR、ニトロ基、シアノ基およびハロゲン原子等から適宜選択される。ここで、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基または脂環式複素環基等を表す。
【0032】
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基および脂環式複素環基は、前記と同義である。
【0033】
また、置換基としてのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、芳香族複素環基、芳香族複素環アルキル基および脂環式複素環基等は、さらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記した置換基と同様のものが挙げられる。
【0034】
これら置換基の置換数としては、同一または異なって、最大各基に存在する水素原子の数まで可能であるが、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0035】
また、薬理学的に許容されるアニオンとしては、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ホウ酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン等の無機イオン類または有機酸から生成される有機イオン類等が挙げられ、該有機酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、安息香酸等のカルボン酸類、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸類が挙げられ、好ましくはハロゲン化物イオンが、ハロゲン化物イオンの中でも、塩化物イオンより好ましく用いられる。
【0036】
次に、化合物(I)の製造方法について説明する。
なお、化合物(I)の中で、特に、式(Ia)で表される化合物は新規化合物であるが、下記製造方法により、製造することができる。
【0037】
製造法1
化合物(I)は、次の反応工程に従い製造することができる。
【0038】
【化5】

【0039】
(式中、Xは脱離基を表し、Q、R、R、X、mおよびnは前記と同義である)
【0040】
Xの定義における脱離基としては、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換もしくは非置換のアリールスルホニルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子は前記と同意義を表す。アルキルスルホニルオキシ基は、そのアルキル部分は前記アルキル基と同義であり、例えば、炭素数1〜10のアルキルスルホニルオキシ、具体的には、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等を挙げることができる。アリールスルホニルオキシ基は、そのアリール部分は前記アリール基と同義であり、例えば、炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ、具体的にはベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ等を挙げることができる。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ニトロ基等が挙げられ、ハロゲン原子は前記ハロゲン原子と同義であり、アルキル基は前記アルキル基と同義である。また、Xは脱離基を表すが、反応系中でアニオンとなり、そのままXとなることもある。
【0041】
化合物(I)は、化合物(II)と化合物(III)を、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。
【0042】
なお、化合物(II)は、市販品として入手可能であるか、Jie Jack Li等 「Palladium in Heterocyclic chemistry」 Pergamon出版、2000年6月 p6−18およびp183−232に記載されている方法あるいはそれらに準じて得ることができ、化合物(III)は、市販品として入手可能である。
【0043】
製造法2
化合物(I)は、Jie Jack Li等 「Palladium in Heterocyclic chemistry」 Pergamon出版、2000年6月 p6−18およびp183−232に記載されている方法に準じて、種々のクロスカップリング反応を用いることで製造することができるが、一例を下記に説明する。
【0044】
【化6】

【0045】
もしくは
【0046】
【化7】

【0047】
(式中、Lは脱離基を表し、Mはクロスカップリング反応に適した含金属脱離基を表し、Q、R、R、X、mおよびnは前記と同義である)
【0048】
Lの定義における脱離基としては、前記Xにおる脱離基の定義と同義であり、化合物(I)のXとしては、Lの脱離基から形成されるものもある。
【0049】
Mの定義におけるクロスカップリング反応に適した含金属脱離基の金属としては、リチウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、スズ等が挙げられ、含金属脱離基の具体例としては、−B(OH)、−MgCl、−MgBr、−ZnBr、−ZnI、−Sn(nBu)、−SiCl(Et)等が挙げられる。
【0050】
化合物(I)は、化合物(IV)と化合物(V)を、もしくは、化合物(VI)と化合物(VII)を、遷移金属触媒および塩基存在下、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、水もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。遷移金属触媒の遷移金属としては、パラジウム、ニッケル、銅、鉄等が挙げられ、遷移金属触媒の具体例としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)等が挙げられる。これらの遷移金属触媒は、配位子存在下、対応する遷移金属塩からin situで調整してもよく、配位子としてはトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等が挙げられ、遷移金属塩としては塩化パラジウム、酢酸パラジウム、塩化ニッケル、塩化銅(I)、酸化銅(I)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)等が挙げられる。塩基としては、例えばトリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、カリウム tert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0051】
なお、化合物(IV)および化合物(VI)は、市販品として入手可能であるか、EP453197に記載されている方法あるいはそれらに準じて得ることもでき、化合物(V)および化合物(VII)は、市販品として入手可能である。
【0052】
上記製造法において、定義した基が実施方法の条件下で変化するかまたは方法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される保護基の導入および脱離方法[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1981年)参照]等を用いることにより目的化合物を得ることができる。また、各置換基に含まれる官能基の変換は、上記製造法以外にも公知の方法[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(Comprehensive Organic Transformations) 、R.C.ラロック(Larock)著(1989年)等]によっても行うことができ、化合物(I)の中には、これを合成中間体としてさらに新規な誘導体(I)へ導くことができるものもある。
【0053】
上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
【0054】
化合物(I)の中には、異性体が存在し得るものがあるが、本発明は、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を包含する。
【0055】
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、目的とする塩とは異なる塩の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解もしくは懸濁させ、酸または塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
【0056】
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水あるいは各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明の抗癌剤として使用することができる。
【0057】
化合物(I)またはそれらの薬理学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤とすることが望ましく、該医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくは二種以上の担体と混合し、製剤学の常法により製造することができる。
【0058】
投与経路としては、経口投与または吸入投与、静脈内投与などの非経口投与が挙げられる。
【0059】
投与形態としては、錠剤、注射剤などが挙げられ、錠剤は、例えば乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、界面活性剤、グリセリン等の、各種添加剤を混合し、常法に従い製造すればよく、吸入剤は、例えば乳糖等を添加し、常法に従い製造すればよい。注射剤は、水、生理食塩水、植物油、可溶化剤、保存剤等を添加し、常法に従い製造すればよい。
【0060】
化合物(I)またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、通常成人一人当たり、0.001mg〜5g、好ましくは0.1mg〜1g、より好ましくは1〜500mgを、一日一回ないし数回に分けて投与する。
【0061】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0062】
【化8】

【0063】
A.4−(2−ナフチル)ピリジン(4)の製造
炭酸ナトリウム0.89gをベンゼン8mLと水4mLの混合液に溶かし、窒素雰囲気下、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を40mg、4−ブロモピリジン塩酸塩(3)を0.65g、2−ナフタレンボロン酸を0.64g加え、5時間加熱還流した。反応物を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、除媒して、標題化合物(4)を0.65g(収率94%)得た。
【0064】
B.4−(2−ナフチル)−1−(2,4−ニトロフェニル)ピリジニウムクロライド(1)の製造
トルエン15mLに上記製造法で得た化合物(4)を0.65g、市販の2,4−ジニトロクロロベンゼン(5)を1.3g溶かし、70℃で2時間撹拌した。反応物をろ過し、得られた固体をアセトンで洗浄することにより標題化合物(1)を0.10g(収率7.8%)得た。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6) δ: 9.50-9.55 (2H, m), 9.17 (1H, d), 9.00-9.07 (4H, m), 8.52(1H, d), 8.35(1H, dd), 8.25 (1H, d), 8.18 (1H, dd), 8.10 (1H, dd), 7.68-7.80 (2H, m).
【実施例2】
【0065】
細胞増殖阻害試験
ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS;ハイクロン(Hyclone)社)を含有したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;インビトロジェン−ギブコBRL(Invitrogen−Gibco BRL)社)を培養培地として、96穴プレートで5000細胞/ウエル(cells/well)の密度で、5%COで満たされた37℃の恒温室で8時間培養した。各ウエルに、各種濃度となるように調製した試験サンプル(DMSO溶液より調製)の10%FBS含有DMEM溶液を添加し、培養を継続した。2日間培養後の生細胞数を、MTS法による細胞増殖試験キット(プロメガ(Promega)社;CellTiter96(R) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay)を用いて測定し、細胞増殖スコアを次式に従って算出した。
【0066】
細胞増殖スコア(%)= 100xM/M

:サンプルを添加した場合のMTS試薬による吸光度
:サンプル溶解用の溶媒のみを添加した場合のMTS試薬による吸光度
【0067】
試験結果は、各濃度における細胞増殖阻害率で表した。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【実施例3】
【0069】
化合物(1)10mg、乳糖70mg、デンプン15mg、ポリビニルアルコール4mgおよびステアリン酸マグネシウム1mg(計100mg)からなる組成を用い、常法により、錠剤を調製する。
【実施例4】
【0070】
常法により、化合物(1)70mg、精製大豆油50mg、卵黄レシチン10mgおよびグリセリン25mgからなる組成に、全容量100mLとなるよう注射用蒸留水を添加し、バイアルに充填後、加熱滅菌して注射剤を調製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】



{式中、Qは、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換芳香族複素環基を表し、RおよびRは、同一または異なって、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基、置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基、OR(式中、Rは、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基または置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基を表す)、NR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、S(O)pR(式中、pは、0、1または2を表し、Rは、前記Rと同義である)、COR(式中、Rは、前記Rと同義である)、COOR(式中、Rは、前記Rと同義である)、OCOR(式中、Rは、前記Rと同義である)、CONR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR10COR11(式中、R10およびR11は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR12COOR13(式中、R12およびR13は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR14SO15(式中、R14およびR15は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR16C(=Z)NR1718[式中、Zは、酸素原子、硫黄原子、NR19(式中、R19は、前記Rと同義である)、NCN、CHNOまたはC(CN)を表し、R16、R17およびR18は、同一または異なって、前記Rと同義である]、NR20SONR2122(式中、R20、R21およびR22は、同一または異なって、前記Rと同義である)、SONR2324(式中、R23およびR24は、同一または異なって、前記Rと同義である)、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表し、mは、0または1〜4の整数を表し、mが2以上の場合、Rは、同一または異なっていてもよく、nは、0または1〜7の整数を表し、nが2以上の場合、Rは、同一または異なっていてもよく、Xは、薬理学的に許容されるアニオンを表す}
で表されるピリジニウム誘導体を含有してなる医薬。
【請求項2】
式(I)で表されるピリジニウム誘導体を含有してなる医薬が、抗癌剤である請求項1記載の医薬。
【請求項3】
式(I)で表される化合物が、下記式(Ia)
【化2】

(式中、Q、R、R、m、nおよびXは、前記と同義である)
で表されるピリジニウム誘導体である請求項1または2記載の医薬。
【請求項4】
ピリジニウム基が、その4位でナフチル基に結合している請求項1〜3記載の医薬。
【請求項5】
Qが、置換アリール基である請求項1〜4記載の医薬。
【請求項6】
置換アリール基が、2,4−ジニトロフェニル基である請求項5記載の医薬。
【請求項7】
nが、0である請求項1〜6記載の医薬。
【請求項8】
薬理学的に許容されるアニオンが、塩化物イオンである請求項1〜7記載の医薬。
【請求項9】
式(Ia)
【化3】

{式中、Qは、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換芳香族複素環基を表し、RおよびRは、同一または異なって、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基、置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基、OR(式中、Rは、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換シクロアルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換脂環式複素環基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換芳香族複素環基または置換もしくは非置換芳香族複素環アルキル基を表す)、NR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、S(O)pR(式中、pは、0、1または2を表し、Rは、前記Rと同義である)、COR(式中、Rは、前記Rと同義である)、COOR(式中、Rは、前記Rと同義である)、OCOR(式中、Rは、前記Rと同義である)、CONR(式中、RおよびRは、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR10COR11(式中、R10およびR11は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR12COOR13(式中、R12およびR13は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR14SO15(式中、R14およびR15は、同一または異なって、前記Rと同義である)、NR16C(=Z)NR1718[式中、Zは、酸素原子、硫黄原子、NR19(式中、R19は、前記Rと同義である)、NCN、CHNOまたはC(CN)を表し、R16、R17およびR18は、同一または異なって、前記Rと同義である]、NR20SONR2122(式中、R20、R21およびR22は、同一または異なって、前記Rと同義である)、SONR2324(式中、R23およびR24は、同一または異なって、前記Rと同義である)、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン原子を表し、mは、0または1〜4の整数を表し、mが2以上の場合、Rは、同一または異なっていてもよく、nは、0または1〜7の整数を表し、nが2以上の場合、Rは、同一または異なっていてもよく、Xは、薬理学的に許容されるアニオンを表す}
で表される新規ピリジニウム誘導体。
【請求項10】
ピリジニウム基が、その4位でナフチル基に結合している請求項9記載のピリジニウム誘導体。
【請求項11】
Qが、置換アリール基である請求項9または10記載のピリジニウム誘導体。
【請求項12】
置換アリール基が、2,4−ジニトロフェニル基である請求項11記載のピリジニウム誘導体。
【請求項13】
nが、0である請求項9〜12記載のピリジニウム誘導体。
【請求項14】
薬理学的に許容されるアニオンが、塩化物イオンである請求項9〜13記載のピリジニウム誘導体。

【公開番号】特開2008−120699(P2008−120699A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303313(P2006−303313)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(506374708)有限責任中間法人ファルマIP (9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】