昆虫及びクモの防除のためのRNAi
【課題】昆虫及び/又はクモの防除のための非化合物に基づく新しいアプローチを提供する。
【解決手段】昆虫及び/又はクモ害虫の個体数を効果的に制御することができるRNAiのための標的ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列。また、昆虫にRNAiを仲介するための二本鎖RNA領域を含むRNA構築物、DNA構築物、発現ベクター、宿主細胞、及びRNAiを用いて昆虫及び/又はクモを防除するための組成物。昆虫及び/又はクモの個体数の制御におけるその構築物、ベクター、宿主細胞、及び組成物の使用、並びにRNAiに基づき昆虫及び/又はクモ害虫を防除する方法における使用に適したキット。
【解決手段】昆虫及び/又はクモ害虫の個体数を効果的に制御することができるRNAiのための標的ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列。また、昆虫にRNAiを仲介するための二本鎖RNA領域を含むRNA構築物、DNA構築物、発現ベクター、宿主細胞、及びRNAiを用いて昆虫及び/又はクモを防除するための組成物。昆虫及び/又はクモの個体数の制御におけるその構築物、ベクター、宿主細胞、及び組成物の使用、並びにRNAiに基づき昆虫及び/又はクモ害虫を防除する方法における使用に適したキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫種における二本鎖RNA(dsRNA)介在性遺伝子サイレンシングの分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、本明細書において初めて同定された新規な標的に対応するdsRNAの発現のために設計された遺伝子構築物に関する。これらの構築物は、詳しくはdsRNA介在性昆虫害虫防除に、特に屋内昆虫又は屋内クモ、例えばゴキブリの防除に有用である。
【背景技術】
【0002】
害虫防除、詳しくは昆虫及び/又はクモの防除、特に屋内昆虫、外部寄生虫、並びにゴキブリ、ノミ、アリ、シロアリ、ハサミムシ、カ、ハエ、及びイエコオロギなどの公衆の保健衛生(例えば都市の保護)に関連する昆虫の防除は重要な分野である。ゴキブリやハエなどの昆虫は、不潔で、管理の行き届いていない場所に生息するという公衆の共通の認識があることから、家庭、職場、飲食店、病院、又は倉庫などの場所における昆虫の存在は疑いようもない悩みの種である。
【0003】
これらの昆虫は悩みの種になるばかりでなく、食物や食器も汚し、織物製品や紙製品を台無しにし、それらが触れた表面に汚れや不快臭を付ける。さらに、これらの昆虫は、細菌の保菌動物として健康上のリスクを引き起こすおそれがある。例えばゴキブリは、食中毒を引き起こす細菌(サルモネラ種(Salmonella spp.)及び赤痢菌種(Shigella spp.))を伝染させるおそれがある。チャバネゴキブリは、ブドウ球菌種(Staphylococcus spp.)、連鎖球菌種(Streptococcus spp.)、肝炎ウイルス、及び大腸菌型細菌などの病原性生物を伝染させることができると考えられている。チャバネゴキブリは、腸チフス及び赤痢の蔓延にも関係付けられてきた。一部の者、特に喘息をもつ者は、これらのゴキブリが産生するアレルゲンに感受性がある。
【0004】
家屋害虫と闘うために開発され、市販されている様々な化学殺虫剤及び捕獲装置がある。しかし、これらの手段の効力が増大することは、通常は健康上のリスクが増大することと結びついている。殺虫剤は食物を汚染するおそれがあり、これは、台所、飲食店、又は食物貯蔵庫などの場所ではほとんど避けることができず、混入はヒトに健康上のリスクを引き起こすおそれがある。
【0005】
この汚染問題の解決は、より毒性の低い殺虫剤を使用することであった。しかし、より毒性の低い殺虫剤を適用すると、昆虫が時を経て抵抗性になる確率が増加する。
【0006】
殺虫剤は、例えばアセチルコリン受容体などのある種の昆虫タンパク質に結合することにより作用し、そのタンパク質の不活性化又は過剰活性化のいずれかにより害虫種を死滅させる。殺虫剤はある濃度で安全であるように開発されてきたが、高用量又は長期間取り込むとヒトの健康に影響を及ぼすおそれがあり、実際に影響を及ぼす。農業用化学物質とは逆に、屋内昆虫の殺虫剤は、食物が貯蔵又は調理される場所に適用されるため、食物汚染及びヒトとの接触を避けることはできない。
【0007】
化学害虫防除剤の1つの代替となるものは、生物学的薬剤を利用することである。過去数年間で、RNA干渉すなわち「RNAi」による多細胞生物遺伝子のダウンレギュレーション(「遺伝子サイレンシング」とも呼ばれる)が確立した技法となった。
【0008】
一般にRNAiは、ダウンレギュレーションされる遺伝子(「標的遺伝子」)のヌクレオチド配列(の少なくとも一部)に対応するヌクレオチド配列を含む(一般にアニーリングした2つの相補的RNA一本鎖又はヘアピン構築物のいずれかとしての)二本鎖RNA断片、すなわち「dsRNA」と生物を接触させることを含む。とりわけ国際出願の国際公開第99/32619号パンフレット(Carnegie Institute of Washington)、国際出願の国際公開第99/53050号パンフレット(CSIRO)、国際出願の国際公開第00/01846号パンフレット(Devgen)、及びFireら、Nature、第391巻、806〜811頁、1998年2月が参照される。
【0009】
線虫では、RNAiは、dsRNA断片自体をそれとして、又はdsRNA断片を含む細菌株又は線虫による摂食時にdsRNA断片を発現することのできるか細菌株のいずれかをその線虫に給餌することにより行うことができる。このいわゆる「給餌によるRNAi」について、とりわけ出願人による国際出願の国際公開第00/01846号パンフレット、及び線虫C.エレガンス(C.elegans)を使用している上記に引用した国際公開第99/32619号パンフレットが参照される。
【0010】
多数のdsRNA構築物が当技術分野において記載されている。古典的dsRNAは、ダウンレギュレーションする必要のある標的配列に相補的な配列に隣接する2つの収束性のプロモーターを有するDNA構築物から産生される(例えば国際公開第00/01846号パンフレット(Devgen)参照)。dsRNA介在性遺伝子サイレンシングの技術が進歩するにつれて、新しい構築物が設計され、様々な目的のためにdsRNAが改良された。
【0011】
dsRNAをさらに効率的に産生するために、ステム−ループ−ステム構造すなわち「ヘアピン」が開発された。例えば、国際公開第99/53050号パンフレットという文書(CSIRO)に記載されているように、このヘアピンは1つの一本鎖RNA転写物からdsRNAを形成させる。このRNA転写物は、RNA転写物を折り畳み、塩基対を形成させてdsRNAのステム部分にする非相補的ループ構造により分離されたセンス版及びアンチセンス版の相補的配列を含む。
【0012】
dsRNA遺伝子サイレンシングは、例えば臨床適用(国際公開第2004/001013号パンフレット)及び植物におけるdsRNA介在性遺伝子サイレンシングなどの多数の異なる領域に適用を見出している。植物では、遺伝子サイレンシングに有用なdsRNA構築物は低分子干渉RNA(siRNA)に開裂するように、及びそれにプロセシングされるようにも設計された。
【0013】
RNAiは、植物寄生線虫から植物を保護する手段として、すなわち植物(例えば植物全体、又は植物の部分、組織、若しくは細胞)に、植物寄生線虫の成長、生殖、及び/又は生存に不可欠な植物寄生線虫標的遺伝子に対応するdsRNA断片を形成する1つ又は複数のヌクレオチド配列を発現させることによる手段としてもまた提案された。当該技法の説明については、本出願人による国際出願の国際公開第00/01846号パンフレット、米国特許第6506559号(国際公開第99/32619号パンフレットに基づく)、並びに国際出願の国際公開第01/96584号パンフレット、国際公開第01/37654号パンフレット、及び国際公開第03/052110号パンフレットを参照することができる。
【0014】
Elbashirら(Nature、411、494〜498、2001)は、長さ21ヌクレオチドのdsRNA断片(低分子干渉RNAすなわちsiRNAとも名付けられている)を使用して、哺乳動物細胞における効果的なRNAi介在性遺伝子サイレンシングを実証した。
【0015】
国際公開第03/004644号パンフレットは、一般論として節足動物へのdsRNAの送達を記載しており、このパンフレットは参照により本明細書に組み込まれている。国際公開第03/004644号パンフレットは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)におけるRNAiを使用したレポーター遺伝子GUS(Clonetech)のダウンレギュレーション及びオオタバコガ(H.armigera)におけるvATPアーゼ遺伝子のダウンレギュレーションを詳述している。
【0016】
国際公開第01/34815号パンフレットは、dsRNAを産生するバキュロウイルス発現ベクター及び害虫防除へのこれらのベクターの使用に関する。
【0017】
RNAiの技法は、ここ数年、植物、線虫、及び哺乳動物細胞の技術分野で一般に公知であったが、昆虫及び/又はクモにおける遺伝子発現をダウンレギュレーションするためのRNAiの使用については現在のところほとんど知られていない。さらに、屋内昆虫、外部寄生虫並びに公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモなどの害虫種を防除するためのRNAiの適用についてはほとんど知られていない。
【0018】
dsRNA介在性害虫防除に適し、効率的な構築物は、以下の条件の少なくとも一部を満たすべきである。
(1)dsRNAは有害生物により取り込まれなければならない、
(2)dsRNAは有害生物中で良好な安定性を有さなければならない、
(3)dsRNAは有害生物に有効で、その生存率、成長、及び/若しくは発育を制御しなければならない、及び/又は
(4)dsRNAは最大の安全性及び最小の環境影響を保証しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
今回、上に言及した条件を満たすdsRNA構築物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、昆虫及び/又はクモの防除のための、化合物に基づかない新規な取り組みを記載する。活性成分はヌクレオチドである二本鎖RNA(dsRNA)であり、それを(例えばベイト剤又はゲル塗布剤の形の)殺虫又は殺クモ製剤として使用することができる。dsRNAの配列は不可欠な昆虫遺伝子の部分と一致し、RNA干渉(RNAi)により昆虫標的のダウンレギュレーションを引き起こす。mRNAのダウンレギュレーションの結果として、dsRNAは対応する昆虫タンパク質の発現を阻害することによって、その昆虫及び/又はクモの死滅、成長停止、又は生殖不能を引き起こす。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】人工ペレット餌でのチャバネゴキブリの死滅率。ペレット中のdsRNAの濃度は1%w/wであった。イミダクロプリドの濃度は1%w/wであった。
【図2】人工ペレット餌でのチャバネゴキブリの死滅率。ペレット中のdsRNA(配列番号9に表す配列を有するBg001及び配列番号68に表す配列を有するBg001コンカテマー2)の濃度は1%w/wであった。この実験では、ヘキサフルムロン(1%w/w)を陽性対照として、溶媒を陰性対照として試験した。
【図3】室温で8ヶ月間のLB培地(LB)及び無Rnアーゼ水(MQ)中のBg032 dsRNAの安定性。
【図4】1週間第1齢若虫にdsRNA(Bg001)を適用したときにゴキブリの死滅率が受ける効果。この実験では、種々雑多のdsRNA及び溶媒を陰性対照として試験した。ペレット中のdsRNAの濃度は1%w/wであった。
【図5A】本発明の配列
【図5B】本発明の配列
【図5C】本発明の配列
【図5D】本発明の配列
【図5E】本発明の配列
【図5F】本発明の配列
【図5G】本発明の配列
【図5H】本発明の配列
【図5I】本発明の配列
【図5J】本発明の配列
【図5K】本発明の配列
【発明を実施するための形態】
【0022】
標的
本発明者らは、昆虫又はクモ害虫の個体数を効果的に制御することができるRNAiのための新規な標的を初めて同定した。
【0023】
疑いを避けるために、標的は、本明細書において、昆虫及び/又はクモがその正常な生理学的機能及び生化学的機能を維持するためにタンパク質産物が必要とされる遺伝子と定義される。標的遺伝子の発現阻害は、その昆虫及び/又はクモが摂食、成長、又は生存する能力を制限する。本発明の実施に採用することができる昆虫及び/又はクモの遺伝子の例には、必須遺伝子、発育、代謝、又は神経伝達などの過程に関与する遺伝子、並びに産物が現存する殺虫剤及び/又はクモの標的である遺伝子がある。本発明の好ましい実施形態では、標的は、転写、翻訳、細胞骨格、細胞周期、代謝(同化又は異化)、エンドサイトーシス、細胞内及び細胞間輸送、カルシウム結合、核内移行及び核外移行、ヌクレオチド結合、シグナルペプチダーゼ−タンパク質結合、プロテアソーム、小胞輸送、神経伝達、水分平衡、イオン平衡、スプライシング、有糸分裂、減数分裂、染色体の組織化、安定性又は完全性、マイクロRNA、siRNA、翻訳後タンパク質修飾、電子伝達、アポトーシス、膜の完全性、並びに細胞接着などの細胞機能に必要な経路の部分である。
【0024】
本発明で同定された新規な標的遺伝子は、以下のものを含む。
A)構造タンパク質、例えばトロポミオシン1(GenBank AF260897)(配列番号41及び42)、アクチン5C(GenBank AY004248)(配列番号57及び58)、並びに同一又は他の昆虫及び/又はクモ種において同一の生物学的機能を有する相同又は非相同タンパク質、
B)代謝酵素、例えばHMGコエンザイムAシンターゼ(GenBank X73679)(配列番号49及び50)、並びに同一又は他の昆虫及び/又はクモ種において同一の生物学的機能を有する相同又は非相同タンパク質、
C)V−ATPアーゼなどのイオン/pHのホメオスタシスに関与する酵素、並びに同一又は他の昆虫及び/又はクモ種において同一の生物学的機能を有する相同又は非相同タンパク質、
D)例えば
リボソームタンパク質S4ホモログ(配列番号1及び2)
リボソームタンパク質S9ホモログ(配列番号11及び12)
リボソームタンパク質L9ホモログ(配列番号21及び22)
リボソームタンパク質L19ホモログ(配列番号31及び32)
などの転写/翻訳機構に関与する酵素。
【0025】
したがって、第1の態様によると、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子が提供され、このオーソロガスなヌクレオチド配列は、配列番号1、11、21、及び31のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。好ましいオーソロガスな配列は、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ(red poultry mite)、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/若しくはクモ由来の配列を含むか、又は本発明の方法により使用された場合はその配列を包含する。さらに好ましいオーソロガスな配列は、非限定的にチャバネゴキブリ種(Blatella spp.)(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(Periplaneta spp.)(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(Blatta spp.)(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(Supella spp.)(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目)(Blattodea);非限定的にトフシアリ種(Solenopsis spp.)(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(Monomorium spp.)(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(Camponotus spp.)(例えばオオアリ種(カーペンターアント(Carpenter Ant)))、ケアリ種(lasius spp.)(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(Tetramorium spp.)(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(Myrmica spp.)(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(Formica spp)(ウッドアント(wood ant))、シリアゲアリ種(Crematogaster spp.)(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント(Acrobat Ant)))、イリドミルメクス種(Iridomyrmex spp.)(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(Pheidole spp.)(オオズアリ)、及びダシムチラ種(Dasymutilla spp.)(例えばDasymutilla occidentalis)(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科)(Formicoidea);非限定的にアミテルメス種(Amitermes spp.)(例えばアミテルメス−フロリデンシス(Amitermes floridensis)(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト(Florida dark−winged subterranean termite)))、レティキュリテルメス種(Reticulitermes spp.)(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(Reticulitermes flavipes)(イースタンサブテラネアンテルマイト(eastern subterranean termite))、レティキュリテルメス−ヘスペルス(Reticulitermes hesperus)(ウエスタンサブテラネアンテルマイト(Western Subterranean Termite)))、イエシロアリ種(Coptotermes spp.)(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(Incisitermes spp.)(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、及びネオテルメス種(Neotermes spp.)(例えばネオテルメス−コネキサス(Neotermes connexus)(フォレストツリーテルマイト(Forest Tree Termite)))などのシロアリ(シロアリ目(Isoptera)及び/又はシロアリ科(Termitidae))に由来する。
【0026】
別の態様によると、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列を含むか、その配列から本質的になるか、又はその配列からなる核酸分子が提供される。
【0027】
配列番号4、6、7、16、27、26、27、36、及び37の全ては、選択的及び特異的に本発明の新規な配列を同定するために利用された特異的プライマーのヌクレオチド配列を表す。
【0028】
この新規に同定した遺伝子の全ては、チャバネゴキブリの転写/翻訳機構の構成要素を表す。RNAiによりこれらの遺伝子の発現を阻害することによって、又は新規に同定した標的遺伝子の発現を阻害することによって、重要な害虫を防除することができる。
【0029】
これらの新規な標的遺伝子のオーソログもまた、他の昆虫及び/又はクモ種の防除においてダウンレギュレーションのさらなる標的となることが当業者により予測されており、そう了解されよう。したがって、本発明の新規な核酸分子のオーソログもまた考慮される。
【0030】
タンパク質配列又はヌクレオチド配列は、「有意な」レベルの配列類似性又は同一性を示すならば、相同である可能性が高い。真に相同な配列は、共通の祖先遺伝子からの分岐により関係している。配列ホモログは2つの種類に属しうる。すなわち、(i)ホモログが異なる種に存在する場合、そのホモログはオーソログとして知られている。例えばマウス及びヒトのα−グロビン遺伝子はオーソログである。(ii)パラログは単一種内の相同遺伝子である。例えばマウスのα−グロビン遺伝子及びβ−グロビン遺伝子はパラログである。本明細書では「オーソログ」は上に言及した両方の種類のホモログを意味する。
【0031】
一実施形態では、オーソログは、配列番号1、11、21、31、41、49、又は57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列と少なくとも約40%、50%、又は60%のヌクレオチド配列同一性を有するものである。好ましくはオーソログは、配列番号1、11、21、31、41、49、又は57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するものである。
【0032】
別の実施形態によると、本発明は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに表すヌクレオチド配列を含むか、その配列から本質的になるか、又はその配列からなる遺伝子の、昆虫又はクモオーソログである標的遺伝子を包含する。例としてオーソログは、配列番号71から200のいずれかに表すヌクレオチド配列、又はその少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26個、若しくは27個のヌクレオチドの断片を含むことがある。昆虫若しくはクモのオーソロガスな遺伝子、又は本発明の配列の1つのヌクレオチド17個の断片を少なくとも含む配列の非限定的なリストを表4及び5に示す。表4及び5に表示する配列は、本発明の一部を形成すると意図される。したがってオーソログは、表4及び5に示す配列のいずれかを含むか、その配列から本質的になるか、又はその配列からなる。
【0033】
別の態様によると、本発明は、それ故に昆虫及び/又はクモの侵襲又は感染を防除するための本明細書に記載した方法のいずれかを包含し、その方法は、昆虫及び/又はクモを二本鎖RNAと接触させるステップを含み、その二本鎖RNAはアニーリングされた相補鎖を含み、その二本鎖RNAの1つは、配列番号71から200に表す配列のいずれかの、少なくとも17、18、19、20、又は21個のヌクレオチドの断片を含む標的遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも部分に相補的なヌクレオチド配列を有し、それによってその二本鎖RNAは昆虫及び/又はクモにより取り込まれ、それによって成長を制御するか、死滅させるか、又はその昆虫及び/若しくはクモによる侵襲若しくは感染を防止する。前記昆虫及び/又はクモは、本明細書に記載した任意の標的生物/種を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることがある。
【0034】
本発明に包含される関連核酸分子は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む核酸分子とのハイブリダイゼーションによって定義することもまたできる。好ましくは、ハイブリダイゼーション条件は中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下であり、なおさらに好ましくは高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下である。中程度及び高ストリンジェンシーの当該条件は、当業者によく知られているであろう。例えば、50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDSを含む溶液中で42℃で、又は5×SSC及び1%SDSを含む溶液中で65℃でインキュベーションするハイブリダイゼーション反応、並びに0.2×SSC及び0.1%SDS中で65℃での洗浄は、適切な高ストリンジェンシー条件となる。
【0035】
本発明は、これらの新規な標的遺伝子及びそのオーソログのタンパク質産物もまた提供する。
【0036】
したがって、第2の態様によると、配列番号2、12、22、若しくは32のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含むタンパク質、又はさらなる昆虫及び/若しくはクモ種由来の保存されたアミノ酸配列を有するオーソロガスなタンパク質を提供する。
【0037】
上に言及したように、新規な標的遺伝子のオーソログは、他の昆虫及び/又はクモ種の防除におけるダウンレギュレーションのためのさらなる標的となろうこともまた予測されている。したがって、本発明の新規なタンパク質分子のオーソログもまた考慮されている。
【0038】
一実施形態では、オーソログは、配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列と少なくとも約40%のアミノ酸配列同一性を有するものである。好ましくは、オーソログは、配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列と少なくとも約40%、50%、60%、65%、70%、80%、さらに好ましくは少なくとも約90%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は95%のアミノ酸配列同一性を有するものである。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしているヌクレオチドもまた提供する。本発明のこの態様に包含される核酸分子には、同一のタンパク質分子をコードする点で機能的に同等な核酸分子もまた含まれる。したがって、遺伝暗号の縮重により可能な全ての核酸分子が、本発明のこの態様の範囲内に入ると意図される。
【0040】
標的生物/標的種
本発明に使用する「標的種」は、害虫となる任意の昆虫又はクモであってもよい。この用語は、任意の発育期にある昆虫又はクモにもまた関する。昆虫は、生きていない外骨格を有することから、昆虫は一定速度で成長することはできず、それどころか定期的に自分の外骨格を脱ぎ捨てることにより段階的に成長する。この過程は脱皮(moulting又はecdysis)と呼ばれる。脱皮と脱皮の間の段階は「齢」と呼ばれ、この段階は本発明により標的とすることができる。また、昆虫の卵や生きた子もまた本発明により標的とすることができる。有翅昆虫亜綱における変態を含む、発育周期の全ての段階は、本発明によるRNAiによって標的とすることができる。したがって、幼虫、蛹、若虫などの発育段階などの個別の段階を全て標的とすることができる。
【0041】
標的種は、動物界、さらに詳しくは節足動物門、そして昆虫綱(Class Insecta)又はクモ綱(Class Arachnida)に属する任意の生物又は種を意味する任意の昆虫又はクモであってもよい。本発明の方法は、RNA干渉による遺伝子サイレンシングに感受性であり、それらの周辺環境から二本鎖RNAをインターナリゼーションすることができる全ての昆虫及びクモに適用することができる。
【0042】
本発明の一実施形態では、昆虫又はクモは、以下の目に属することがある:ダニ目(Acari)、クモ網、シラミ目(Anoplura)、ゴキブリ目(Blattodea)、コウチュウ目(Coleoptera)、トビムシ目(Collembola)、ハサミムシ目(Dermaptera)、カマキリ目(Dictyoptera)、ハサミコムシ目(Diplura)、ハエ目(Diptera)、シロアリモドキ目(Embioptera)、カゲロウ目(Ephemeroptera)、ガロアムシ目(Grylloblatodea)、カメムシ目(Hemiptera)、カメムシ亜目(Heteroptera)、ヨコバイ亜目(Homoptera)、ハチ目(Hymenoptera)、シロアリ目(Isoptera)、チョウ目(Lepidoptera)、ハジラミ目(Mallophaga)、シリアゲムシ目(Mecoptera)、アメミカゲロウ目(Neuroptera)、トンボ目(Odonata)、バッタ目(Orthoptera)、ナナフシ目(Phasmida)、シラミ目(Phithiraptera)、カワゲラ目(Plecoptera)、カマアシムシ目(Protura)、チャタテムシ目(Psocoptera)、ノミ目(Siphonaptera)、シラミ目(Siphunculata)、シミ目(Thysanura)、腹吻亜目(Sternorrhyncha)、ネジレバネ目(Strepsiptera)、アザミウマ目(Thysanoptera)、トビケラ目(Trichoptera)、ジュズヒゲムシ目(Zoraptera)、及びシミ亜目(Zygentoma)。
【0043】
好ましいが、非限定的な本発明の実施形態では、昆虫又はクモは、以下からなる群から選択される。
(1) ダニ目:マダニ亜目(Ixodida)(マダニ)を含むダニ
(2) クモ綱:クモ目(Araneae)(クモ)及びメクラグモ目(Opiliones)(メクラグモ)、例には、Latrodectus mactans(クロゴケグモ)及びLoxosceles recluse(ドクイトグモ)がある。
(3) シラミ目:Pediculus humanus(ヒトジラミ)などのシラミ
(4) ゴキブリ目:チャバネゴキブリ(Blatella germanica)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、及びチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のものを含むゴキブリ。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
(5) コウチュウ目:コウチュウ、例には、ヒラタキクイムシの科(ナガシンクイムシ上科(Bostrichoidea));デンドロクトヌス種(Dendroctonus spp.)(ブラックツルペンチンビートル(Black Turpentine Beetle)、サザンパインビートル(Southern Pine Beetle)、IPSエングレーバービートル(IPS Engraver Beetle));マルカツオブシムシ(アントレヌス種(Anthrenus spp)、アタゲヌス種(Attagenus spp);オールドハウスボーラー(Old House Borer)(カミキリムシ科:ヒロトルペス−バジュルス(Hylotrupes bajulus));シバンムシ(Anobium punctatum);トリボリウム種(Tribolium spp)(コクヌストモドキ);Trogoderma granarium(ヒメアカカツオブシムシ);Oryzaephilus sarinamensis(ノコギリヒラタムシ)など(シミ)がある。
(6) ハサミムシ目:ハサミムシ科
(7) ハエ目:カ(カ科(Culicidae))及びハエ(ハエ亜目(Brachycera))、例は、ハマダラカ種(Anopheles spp.)などのハマダラカ亜科(Anophelinae)及びアエデス−フルブス(Aedes fulvus)などのカ亜科(Culicinae);タバヌス−プンクティファ(Tabanus punctifer)(ホースフライ(Horse Fly))、Glossina morsitans morsitans(ツェツェバエ)などのアブ科(Tabanidae)、ドレインフライ(drain flies)(チョウバエ科(Psychodidae))、及びMusca domestica(イエバエ)などの弁翅亜節(Calyptratae)、ニクバエ(ニクバエ科(Sarcophagidae))など。
(8) カメムシ亜目:Cimex lectularius(トコジラミ)などのカメムシ
(9) ハチ目:アリ(アリ科(Formicoidea))、ミツバチ(ミツバチ上科(Apoidea))を含むハチ(ハチ亜目(Apocrita):Solenopsis invicta(ヒアリ)、Monomorium pharaonis(イエヒメアリ)、オオアリ種(Camponotus spp)(オオアリ)、(lasius niger(トビイロケアリ)、(tetramorium caespitum)(トビイロシワアリ)、Myrmica rubra(キイロクシケアリ)、ヤマアリ種(ウッドアント)、クレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント)、Iridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びDasymutilla occidentalis)(アリガタバチ)など
(10) シロアリ目:シロアリ、例には:アミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、イースタンサブテラネアンテルマイト(レティキュリテルメス−フラビペス)、R.ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、Coptotermes formosanus(イエシロアリ))、Incisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、ネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))、及びシロアリ科(Termitidae)がある。
(11) チョウ目:ガ、例には:Tineola bisselliella(コイガ)などのヒロズコガ科(Tineidae)及びマルハキバガ科(Oecophoridae)、並びにPyralis farinalis(カシノシマメイガ)などのメイガ科(Pyralidae)がある。
(12) チャタテムシ目:ブックライス(チャタテムシ)
(13) ノミ目:ヒトノミ(Pulex irritans)などのノミ
(14) 腹吻亜目:アブラムシ(アブラムシ科(Aphididae))
(15) シミ亜目:シミ、例は:マダラシミ(Thermobia domestica)及びセイヨウシミ(Lepisma saccharina)である。
【0044】
好ましい標的昆虫又はクモには、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモが含まれる。さらに好ましい標的は、非限定的にチャバネゴキブリ種(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目);非限定的にトフシアリ種(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(例えばオオアリ種(カーペンターアント))、ケアリ種(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(ウッドアント)、シリアゲアリ種(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント))、イリドミルメクス種(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びダシムチラ種(例えばDasymutilla occidentalis(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科);非限定的にアミテルメス種(例えばアミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、レティキュリテルメス種(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(イースタンサブテラネアンテルマイト)、レティキュリテルメス−ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、イエシロアリ種(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、ネオテルメス種(例えばネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))などのシロアリ(シロアリ目及び/又はシロアリ科)である。さらに好ましい標的はゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0045】
RNA構築物
「相補的」とは、RNA鎖が、特定の配列がDNA配列である場合はその配列のRNA同等物、又はそのDNA配列の相補体のRNA同等物に相当することを意味する。
【0046】
本発明は、遺伝子発現のRNAi介在性ダウンレギュレーションのための追加の標的に関する。本明細書において同定した全ての標的に関して、本発明のさらなる態様では二本鎖RNA領域を含むRNA構築物が提供され、その少なくとも1方の鎖は、
(i)配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181;のいずれか1つに定義する標的核酸分子、或いは
(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子のいずれか1つのヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。上記のように、オーソログは、配列番号1、4、6、7、11、16、17、21、26、27、31、36、37、41、43、44、49、51、52及び57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%のヌクレオチド配列同一性を有することがある。好ましくは、オーソログは、配列番号1、4、6、7、11、16、17、21、26、27、31、36、37、41、43、44、49、51、52及び57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するものである。
【0047】
前述のように、本明細書においてチャバネゴキブリで同定した標的のオーソログは、屋内昆虫及び/又はクモ、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫を含むその他の昆虫並びに/又はクモ種における有望な標的と見なされる。
【0048】
さらに好ましい標的は、ゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリから得られる。最も好ましい標的は、新規な標的が同定されたチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0049】
効果的な遺伝子サイレンシングには約21bpの低分子干渉RNA(siRNA)の形成が理想的であると以前に報告された。しかし、出願人の出願では、ある種の有害生物に効率的に取り込まれるための最短長のdsRNAは、好ましくは少なくとも約80〜100bpであることが示された。自由生活性線虫C.エレガンス又は植物寄生線虫サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)などの無脊椎動物では、おそらくこれらの長鎖dsRNAの方が無脊椎動物による取り込みが効率的であることから、これらの長鎖断片の方が遺伝子サイレンシングに有効であるという見通しが立てられている。
【0050】
27塩基長の平滑末端RNA、又は29bpのステム及びヌクレオチド2個の3’突出を有する低分子ヘアピン型(sh)RNAのいずれかからなる合成RNA二本鎖は、従来型の21塩基長siRNAよりも強力にRNA干渉を誘導することもまた最近示唆された(Williams、Nature Biotechnology、第23巻、2005年2月2日、181、及びKimら、Nature Biotechnology、第23巻、2005年2月2日、222〜229、及びSiolasら、Nature Biotechnology、第23巻、2005年2月2日、227〜231参照、これらの参照はその全体が本明細書に組み込まれている)。したがって、上に同定した標的に基づき、27塩基長の平滑末端RNA、又は29bpのステム及びヌクレオチド2個の3’突出を有する低分子ヘアピン型(sh)RNAのいずれかである分子もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
したがって一実施形態では、RNA構築物は少なくとも約17bp、好ましくは少なくとも約21bp、さらに好ましくは約20〜1500bp、なおさらに好ましくは約80〜1000bp、最も好ましくは約17〜27bp又は約80〜250bpの長さを有する二本鎖RNA領域、例えば約17bp、18bp、20bp、21bp、22bp、23bp、24bp、25bp、26bp、27bp、50bp、80bp、100bp、150bp、200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、900bp、100bp、1100bp、1200bp、1300bp、1400bp又は1500bpの二本鎖RNA領域を有する。
【0052】
二本鎖RNAの長さの上限は、i)dsRNAが昆虫及び/又はクモにより取り込まれる必要性、並びにii)dsRNAが関連する細胞内でプロセシングされて、RNAiを指令する断片になる必要性に依存することがある。選択された長さは、RNAの合成法及び細胞へのRNA送達様式にもまた影響されうる。好ましくは、本発明の方法に使用される二本鎖RNAは、長さ10000bp未満、さらに好ましくは1000bp以下、さらに好ましくは500bp以下、さらに好ましくは300bp以下、さらに好ましくは100bp以下であろう。
【0053】
害虫防除に関する有効性は、単一のRNA構築物を用いて複数の標的遺伝子を標的とすることにより増大することがある。したがって、二本鎖RNAが介在する複数のRNA干渉が、可能なことには全て同時に、又は可能なことにはカスケード的に起こると思われることから、害虫が生存し抵抗性を獲得する見込みは低い。
【0054】
本発明の方法は、複数の標的遺伝子のダウンレギュレーション又は阻害を実現するために、又は単一の標的遺伝子のより強力な阻害を実現するために、同一の昆虫及び/又はクモに2つ以上の異なる二本鎖RNA又はRNA構築物を同時又は連続的に与えることを包含する。
【0055】
さらなる実施形態によると、本発明によるRNA構築物は、少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含み、その鎖の少なくとも1つは、本明細書に記載した任意のヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含み、ここで、前記ヌクレオチド配列の相補性は、(i)配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれかに示す核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列、又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のそのオルトロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子と少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有し、ここで、配列同一率は同一の長さにわたり計算される。
【0056】
「同一の長さにわたり」により、%同一率を配列間で計算する場合に、両配列での対応する一続きのヌクレオチドにわたりこれを行うことを意味する。
【0057】
或いは、複数の標的配列に対して作用する1つの二本鎖RNAを与えることにより複数の標的遺伝子がダウンレギュレーションされる。或いは、標的遺伝子に対応する二本鎖RNA断片の1つを超えるコピーの存在により、単一の標的をより効率的に阻害することができる。したがって、本発明の一実施形態では、二本鎖RNA構築物は、複数のdsRNA領域を含み、各dsRNA領域の少なくとも1方の鎖は、昆虫及び/又はクモ標的遺伝子の標的ヌクレオチド配列の少なくとも部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。本発明によると、RNA構築物中のdsRNA領域は、同一又は異なる標的遺伝子に相補的であってもよく、及び/又はdsRNA領域は同一又は異なる昆虫及び/又はクモ種由来の標的遺伝子に相補的であってもよい。
【0058】
したがって、本発明は、本発明の単離された二本鎖RNA又はRNA構築物を提供し、それは、少なくとも2つの二本鎖RNA領域を含み、そのそれぞれの少なくとも1方の鎖は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つのヌクレオチド配列、又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含むか、本質的にその配列からなるか、又はその配列からなり、ここで、そのオーソロガスなヌクレオチド配列は、配列番号1、11、21、及び31のいずれか1つのヌクレオチド配列、又は配列番号41、43、44、49、51、52、及び57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列を含む核酸分子の少なくとも関連する部分と少なくとも70%、80%、85%、87.5%、90%、95%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。好ましくは前記二本鎖RNA又はRNA構築物は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか、好ましくは配列番号65から70のいずれかから独立して選択される1つ又は少なくとも2つのヌクレオチド配列を含むか、本質的にその配列からなるか、又はその配列からなる。
【0059】
したがって、本発明の一実施形態では、RNA構築物は複数のdsRNA領域を含み、各dsRNA領域の少なくとも1方の鎖は、昆虫及び/又はクモ種由来の標的遺伝子のヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。本発明によると、RNA構築物中のdsRNA領域は、同一又は異なる標的遺伝子に相補的であってもよく、dsRNA領域は同一又は異なる昆虫種由来の標的に相補的であってもよい。
【0060】
dsRNA領域は、以下のように組み合わせることができる。
a)単一の法的遺伝子を標的とする複数のdsRNA領域を組み合わせる場合、それらの領域はRNA構築物中に本来の順序(すなわち標的遺伝子に断片が出現する順序)で組み合わせることができる、
b)或いは、断片の本来の順序を無視することにより、断片を混ぜ合わせて、ランダム又は故意に任意の順序に組み合わせてRNA構築物にすることができる。
c)或いは、1つの単一断片をRNA構築物中に数回、例えば1から10回、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回繰り返すことができ、また
d)(単一又は異なる標的遺伝子を標的とする)dsRNA領域をセンス又はアンチセンス方向に組み合わせることができる。
【0061】
加えて、組み合わせる標的遺伝子は、以下の種類の1つ又は複数の遺伝子(該当するその全ての可能な組合せを含む)から選択してもよい。
e)「必須」遺伝子又は「病原性遺伝子」は、1つ又は複数の標的昆虫及び/又はクモに重要で、サイレンシングした場合に致死的又は重大な(例えば、運動、摂食、麻痺、飲水、生殖能力、生殖、成長の)表現型を招く遺伝子を包含する。強い致死的標的遺伝子の選択は強力なRNAi効果を招く。本発明のRNA構築物において、同一又は異なる(非常に効果的な)致死的遺伝子を標的とする複数のdsRNA領域を組み合わせて、昆虫及び/又はクモの防除に果たすRNAiの効果の効力、有効性、又は速度をさらに増大させることができる。
f)「弱小遺伝子」は、本明細書に記載した細胞経路の1つに特に興味深い機能を有するが、独立してサイレンシングすると表現型に弱小作用を招く標的遺伝子を包含する。本発明のRNA構築物では、単一又は異なる弱小遺伝子を標的とする複数のdsRNA領域を組み合わせて、より強いRNAi効果を得ることができる。
g)「昆虫及び/又はクモ特異的」遺伝子は、生物情報学の相同性検索、例えばBLAST検索により決定することのできる非有害生物における実質的な相同的対応物を有さない遺伝子及び遺伝子の部分を包含する。昆虫及び/若しくはクモ特異的標的遺伝子又はその部分の選択は、種特異的RNAi効果を招き、非標的生物に効果を有さないか、又は実質的な(有害)効果を有さない。
h)「保存された遺伝子」は、標的生物及び非標的生物の間で(アミノ酸レベルで)保存されている遺伝子を包含する。非標的種に及ぼす可能性のある効果を減らすために、そのような効果的であるが保存された遺伝子を分析し、これらの保存された遺伝子の可変領域由来の標的配列を選択して、RNA構築物中のdsRNA領域による標的とする。ここで、保存性はヌクレオチド配列のレベルで評価される。このように、当該可変領域は、保存された標的遺伝子のうち、ヌクレオチド配列レベルで最小に保存された部分を包含する。
i)「保存された経路の」遺伝子は、同一の生物学的経路若しくは細胞過程に関与する遺伝子を包含するか、又は異なる昆虫及び/若しくはクモ種において同一の機能を有して、特異的及び強力なRNAi効果と効率的な害虫防除とを招く遺伝子を包含する。
j)或いは、本発明によるRNA構築物は、異なる生物学的経路由来の複数の遺伝子を標的とし、広範囲の細胞性RNAi効果とより効率的な昆虫及び/又はクモの防除とを招く。
【0062】
好ましくは、全ての二本鎖RNA領域は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つのヌクレオチド配列の部分に相補的な、少なくとも1方の鎖を含む。しかし、二本鎖RNA領域の1つが、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つのヌクレオチド配列の部分に相補的な、少なくとも1方の鎖を含む場合は、残りの二本鎖RNA領域は、昆虫及び/又はクモ種由来の(公知の標的遺伝子を含む)任意の標的遺伝子の部分に相補的な少なくとも1方の鎖を含むことがある。
【0063】
本発明は、本明細書に記載した任意のRNA構築物もまた提供し、その構築物は、少なくとも1つの追加の機能的配列と、場合によってはリンカーとを含む。一実施形態では、複数のdsRNA領域は1つ又は複数のリンカーで連結している。別の実施形態では、そのリンカーはRNA構築物の側に存在し、dsRNA領域を対象の別の領域と分離している。dsRNA構築物用の種々のリンカーの種類は、本発明により提供される。
【0064】
「条件的に自己開裂するリンカー」は、ある条件下でプロセシングされることができるRNA配列である。条件的に自己開裂する適切なリンカーの一例は、低pH条件下で自己開裂するRNA配列である。当該RNA配列の適切な例は、Jayasena及びGold(Proc Natl Acad Sci USA.1997年9月30日;94(20):10612〜7)により記載されており、この文書は参照により本明細書に組み込まれている。
【0065】
条件的に自己開裂する適切なリンカーの別の例は、高pH条件下で自己開裂するRNA配列である。当該RNA配列の適切な例は、Bordaら(Nucleic Acids Res.2003年5月15日;31(10):2595〜600)により記載されており、この文書は参照により本明細書に組み込まれている。この配列は、ハンマーヘッド型リボザイムHH16の触媒中心に由来する。
【0066】
本発明の一態様では、リンカーは有害生物中で短鎖dsRNA領域の結合を切断するために使用してもよい。好都合にはこの状態で、リンカー配列は特定の状況での長鎖dsRNA領域から短鎖dsRNA領域への分割を促進し、これらの状況で別々のdsRNA領域の放出を招き、これらの短鎖dsRNA領域による効率的な遺伝子サイレンシングに至ることができる。
【0067】
本発明の別の態様では、リンカーは、RNA構築対中の部位に存在し、dsRNA領域を対象の別の配列と分離し、その別の配列はある追加の機能をRNA構築物に用意することが好ましい。RNA構築物に組み込むことのできる他の(対象の)機能的配列の非限定的な例は、例えば(i)dsRNA構築物の大規模産生を容易にする追加の配列、(ii)dsRNAの安定性を増加/減少させる追加の配列、(iii)組成物中のタンパク質又は他の分子に結合して害虫種による取り込みを容易にする追加の配列、(iv)アプタマーであり、害虫種の腸内の受容体又は分子に結合して、その害虫種による取り込み、エンドサイトーシス、及び/又はトランスサイトーシスを容易にする追加の配列、(v)dsRNA領域のプロセシングを触媒する追加の配列である。
【0068】
特定の実施形態によると、例えば昆虫及び/又はクモなどの害虫種は腸系を有し、リンカーはその昆虫及び/又はクモの腸内で自己開裂する。腸内pHは強酸性から強塩基性まで多様である。
【0069】
或いは、リンカーはエンドソーム内で自己開裂する。本発明の構築物がエンドサイトーシス又はトランスサイトーシスを介して有害生物に取り込まれ、その結果、害虫種のエンドソーム内で区画化される場合にこれは好都合なことがある。エンドソームは低pH環境を有し、リンカーの開裂に至ることもある。
【0070】
疎水性条件下で自己開裂する上に言及したリンカーは、細胞壁を通過して1つの細胞から別の細胞に移動させるために使用するときの、例えば昆虫及び/又はクモの有害生物の細胞壁を貫通させるときの本発明のdsRNA構築物に特に有用である。
【0071】
イントロンもまたリンカーとして使用することができる。本明細書に使用する「イントロン」は、メッセンジャーRNAの任意の非コードRNA配列であってもよい。本発明の構築物に特に適したイントロン配列は、(1)Uが豊富で(35〜45%)、(2)塩基対がランダムに選択されうるか、又は公知のイントロン配列に基づきうる(約50から約500bpまで多様な)平均長100bpを有し、(3)5’末端が−AG:GT−若しくは−CG:GT−で開始し、及び/又は(4)3’末端に−AG:GC−若しくは−AG:AAを有する。
【0072】
約1塩基対から約10000塩基対までの範囲の非相補的RNA配列もまたリンカーとして使用することができる。
【0073】
上記のように、本発明のdsRNA領域は、昆虫及び/又はクモ害虫を効果的に防除するためにRNAiが起こることができる程度の相補性であるという条件下で、標的遺伝子の部分のみに対応してもよい。使用する構築物を含むdsRNA領域が標的遺伝子をダウンレギュレーションすることができる限り、適切な標的遺伝子の全長配列が公知であることは本発明に必須ではない。
【0074】
例えば、昆虫及び/又はクモ由来の(ESTなどの)部分遺伝子配列が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200に記載した配列の1つのオーソログである限り、前記部分配列に基づくdsRNA断片を使用することが可能である。配列相同性又は相補性の程度は、使用するdsRNA断片の長さにわたり決定される。
【0075】
さらに、本発明において結果として生じるdsRNA断片が標的遺伝子を依然としてダウンレギュレーションすることができる限り、(例えば欠失、挿入、又は置換により)1つ又は複数のヌクレオチド位置が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200に記載した配列を含む核酸分子と異なるdsRNA断片を使用することもまた可能である。
【0076】
好ましくは、RNA構築物中のdsRNA断片は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列を含む標的核酸分子のいずれか1つのヌクレオチド配列の関連する部分と、少なくとも約70%のヌクレオチド配列同一性、好ましくは少なくとも約80%の配列同一性、なおさらに好ましくは少なくとも約85%又は87.5%の配列同一性、もっとさらに好ましくは約90%の配列同一性、もっとさらに好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、そして最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を含む相補性又は相同性レベルを有する。
【0077】
配列同一性を決定する方法は、当技術分野において日常的であり、それには、Blastソフトウェア及びGAP分析(GCGプログラム)の使用がある。dsRNAの少なくとも1方の鎖と標的遺伝子との高レベルの配列同一性(相補性)は、効果的なRNAi、故に害虫防除を仲介するために必要である。
【0078】
しかし、本発明のdsRNA領域が哺乳動物オーソログの配列に比べて害虫標的の配列に選択的であることも同様に好都合である。食物が存在する台所などの環境で害虫を防除しなければならず、その環境の中でヒトや他の哺乳動物が、その害虫を防除するために設計された組成物に曝露されるおそれがある場合に、このことは本発明に特に関連性がある。害虫種に有毒であるのと等しく哺乳動物にも有毒なおそれのある化学薬剤よりも、選択的な生物学的薬剤の方が好ましい。
【0079】
さらに、本発明のRNA構築物などの生物学的薬剤については、分子が経時的に生分解され、故に(公知の殺虫剤などの)化学薬剤よりもヒトの利用者に環境上及び健康上のリスクを与えることが少ないものであることは好都合である。
【0080】
したがって、好ましい実施形態によると、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示す核酸分子のヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む、RNA構築物中の二本鎖RNAの少なくとも1方の鎖は、哺乳動物種由来の対応する(オーソロガスな)ヌクレオチド配列と約5%未満、約10%未満、約12.5%未満、約15%未満、約20%未満、約30%未満、約40%未満の配列同一性を有する。一実施形態では、21個の連続するヌクレオチドにわたり哺乳動物の配列との配列同一性はない。別の実施形態では、24個の連続するヌクレオチドにわたり哺乳動物種由来の対応するヌクレオチド配列と約10%未満又は約12.5%未満の配列同一性がある。好ましくは、哺乳動物種はヒトである。
【0081】
一実施形態では、(配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示す核酸分子のヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む、RNA構築物中の二本鎖RNAの)少なくとも1方の鎖は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18個のヌクレオチド、19個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、21個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、70個のヌクレオチド、80個のヌクレオチド、90個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、250個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、350個のヌクレオチド、400個のヌクレオチド、450個のヌクレオチド、500個のヌクレオチド、550個のヌクレオチド、600個のヌクレオチド、650個のヌクレオチド、700個のヌクレオチド、900個のヌクレオチド、1000個のヌクレオチド、1100個のヌクレオチド、1200個のヌクレオチド、又は1300個のヌクレオチドを含む。
【0082】
少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも約17個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約18個のヌクレオチド、19個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、21個のヌクレオチド、23個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、70個のヌクレオチド、80個のヌクレオチド、90個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、250個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、350個のヌクレオチド、400個のヌクレオチド、450個のヌクレオチド、500個のヌクレオチド、550個のヌクレオチド、600個のヌクレオチド、650個のヌクレオチド、700個のヌクレオチド、900個のヌクレオチド、1000個のヌクレオチド、1100個のヌクレオチド、1200個のヌクレオチド、又は約1300個のヌクレオチドを含む少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物もまた提供される。
【0083】
DNA構築物及び発現構築物並びに宿主細胞
さらなる態様では、本発明は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200に表す、本発明の新規な標的のヌクレオチド配列を含むDNA構築物もまた提供する。
【0084】
本発明は、さらに本発明のRNA構築物をコードしている領域を含むDNA構築物に関する。
【0085】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明のDNA構築物のいずれかを含む発現構築物もまた提供する。
【0086】
発現構築物は、適切な条件下で、上に言及したdsRNA領域を含むRNA構築物を(転写により)提供することができる構築物である。
【0087】
dsRNAを発現するための遺伝子構築物は当技術分野において周知であり、例えば、国際公開第99/32619号パンフレット、国際公開第00/01846号パンフレット、及び国際公開第01/88121号パンフレット(全てDevgen);国際公開第00/44914号パンフレット及び国際公開第01/70949号パンフレット、並びにすでに上に言及した従来技術に記載された構築物が参照される。そこに言及されたように、当該構築物はDNA又はRNAであってよく(好ましくはDNAであり)、(細菌の形質転換及び細菌での発現に適した発現ベクターなどの)適切な発現ベクター又は他の発現系の形態であってもよい。例えば、その構築物は、細菌での産生に適した、又は昆虫及び/若しくはクモの形質転換に適した細菌系又はウイルス系に(例えば形質転換により)存在してもよく、その遺伝子構築物を含むこれら及び他の宿主細胞は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0088】
本発明による発現構築物は、dsRNA断片自体をコードしている配列以外に、通常は適切な調節エレメント(プロモーター、ターミネーター、及びエンハンサーなど)及び本質的に公知の当該遺伝子構築物の他のエレメントを含むものであり、例えばハイブリダイゼーションして所望のdsRNA領域を形成する2つの別々の相補的RNA鎖としてdsRNA領域を発現してもよく、また自己ハイブリダイゼーションして、所望のdsRNA領域を含む「ステム−ループ」又は「ヘアピン」構造を形成する2つの相補鎖を含む単一のRNAの形態でdsRNA領域を発現してもよい。全ての当該構築物を本発明に適切に使用することができ、本発明は、使用する構築物が昆虫及び/又はクモ害虫での効果的なRNAiを仲介することができるdsRNAの発現に適する限り、前記構築物の種類に関して特に限定されない。
【0089】
構築物自体もまた本質的に公知な方法で構築してもよく、これについてもう一度上記の従来技術の参考文献並びにSambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(第2版)、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)及びF.Ausubelら編、「Current protocols in molecular biology」、Green Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク(1987)が参照される。
【0090】
dsRNA領域は、構成的プロモーター又は誘導性プロモーター(例えば特異的化合物、細菌などに加える損傷などによって誘導されるプロモーター)の制御下の細菌宿主で好ましくは発現されてもよい。構成的又は誘導性プロモーターは、(例えば、細菌の生活環の特異的部分に)非特異的又は特異的であってもよい。
【0091】
細菌宿主細胞は、生物学的害虫防除剤として利用する前に不活性化する必要がありうる。これは、加熱又は例えばフェノール若しくはホルムアルデヒドを用いた処理などにより、当技術分野に公知の任意の技法により行うことができる。或いは、昆虫及び/又はクモ害虫に本発明のdsRNA領域を送達するために、適切に変更されたバキュロウイルスなどの不活性化ウイルスを利用してもよい。
【0092】
発現構築物は、細菌細胞での使用に好ましくは適したプロモーター又は他の制御エレメント、ターミネーター、翻訳エンハンサー又は転写エンハンサー、挿入因子、シグナル配列、選択マーカーなどの、ヌクレオチド配列又は遺伝子構築物用の本質的に公知の全ての他のエレメントをさらに含んでもよい。構築物のこれらのさらなるエレメントをコードする配列もまた、適切な生物学的起源から単離してもよいし、合成的に用意してもよい。
【0093】
適切なプロモーターのいくつかの特定であるが非限定的な例には、RNA PolI、RNA PolII、RNA PolIII、T7 RNAポリメラーゼ、又はT3 RNAポリメラーゼ、又はSP6 RNAポリメラーゼ由来のプロモーター、並びに上に引用した従来技術、例えば国際公開第00/01846号パンフレットにおいて言及されたプロモーター及び他の調節エレメントもまたあるが、それに限定されるわけではない。本発明は、さらに一本鎖RNAの発現を指令することができる細菌プロモーターを提供し、そのRNAは、発現するとループを含むヘアピン型二次構造を形成することができ、二本鎖RNA領域が利用される。
【0094】
細菌宿主又はウイルス宿主に構築物を導入するための形質転換技法の、特異的であるが非限定的な例には、形質転換、エレクトロポレーション、トランスフェクションなどがある。
【0095】
したがって本発明は、(a)本明細書に記載したRNA構築物をコードしているヌクレオチドと、(b)(a)のヌクレオチドの発現を駆動することができる1つ又は複数の制御配列と、場合によっては(c)転写終結配列とを含む発現構築物を提供する。
【0096】
発現構築物は、市販されていることがあるプラスミド又はベクターに挿入してもよい。本発明の一実施形態によると、発現構築物は、細菌への形質転換に適し、形質転換された細菌細胞における本発明によるRNA構築物の維持及び発現に適した細菌発現ベクターである。これによって、国際公開第01/01846号パンフレットに出願人により記載されたプラスミド及びベクターが参照され、その参照はその全体が本明細書に組み込まれている。その代わりとなるのは、国際公開第01/34815号パンフレットに記載されたウイルスなどの、昆虫種に感染することができるウイルス細胞を使用することであり、このパンフレットの参照は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0097】
本明細書に使用する用語「制御配列」は、広い状況の中でとらえるべきであり、それらの制御配列が結合され、及び/又は作動可能に連結される配列の発現を駆動及び/又は調節することができる調節ヌクレオチド配列を表す。本発明の一実施形態によると、制御配列は細菌又はウイルス中で作動可能であり、好ましくは、制御配列は細菌配列由来である。用語「制御配列」は、細胞、組織、又は器官での核酸分子の発現を活性化するか、又は高めることのできるプロモーター又は配列を包含する。
【0098】
場合により、1つ又は複数の転写終結配列もまた発現構築物に組み込んでもよい。用語「転写終結配列」は、一次転写物の3’プロセシング及びポリアデニル化並びに転写終結のシグナルを発する、転写ユニット末端での制御配列を包含する。転写エンハンサー又は翻訳エンハンサーなどの追加の調節エレメントを発現構築物に組み込んでもよい。
【0099】
本発明の発現構築物は、特異的細胞型での維持及び/又は複製に必要な複製起点をさらに含んでもよい。
【0100】
一例は、細胞中のエピソーム性遺伝子エレメント(例えばプラスミド又はコスミド分子)として細菌細胞中に維持するために発現構築物が必要な場合である。好ましい複製起点には、f1−ori及びcolE1 oriがあるが、それに限定されるわけではない。
【0101】
発現構築物は、場合によっては選択マーカー遺伝子を含んでもよい。本明細書に使用する用語「選択マーカー遺伝子」は、本発明の発現構築物をトランスフェクトされているか、又はそれを用いて形質転換された細胞においてその遺伝子が発現し、細胞の同定及び/又は選択を容易にする、細胞に表現型を付与する任意の遺伝子を含む。適切な選択マーカーの例には、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、テトラサイクリン耐性遺伝子(Tcr)、カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)、ホスフィノスリシン耐性遺伝子、及びクロラムフェニコール(CAT)遺伝子がある。他の選択マーカー遺伝子、例えばmanAは、代謝の形質を与える。可視マーカー遺伝子もまた使用することができ、それには例えばβ−グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)がある。
【0102】
したがって上に記載するように、本発明は、本発明のRNA構築物、及び/又はDNA構築物、及び/又は発現構築物を含む宿主細胞を提供する。好ましくは、宿主細胞は細菌細胞であるが、例えばウイルスであってもよい。昆虫及び/又はクモに特異的に感染するバキュロウイルスなどのウイルスを利用してもよい。このウイルスは哺乳動物には感染しないものであるため、望ましくないRNAi作用は起こらないものであることから、このことは、哺乳動物、特にヒトに対する安全性を保証する。
【0103】
ヒト又は他の哺乳動物との接触が見込まれる(上記のように台所などの)環境で、害虫にRNAiを仲介するための送達剤として細菌細胞又はウイルスを使用する場合、その送達剤として使用する前にその細菌細胞又はウイルスを好ましくは不活性化すべきである。不活性化は、例えば熱処理、フェノール又はホルムアルデヒド処理などの任意の手段により実現することができる。
【0104】
本発明のRNA構築物を作製する方法もまた提供される。この方法は、本発明のDNA構築物を転写させて前記RNA構築物を産生させる条件下で、
a.前記DNA構築物若しくは本発明の発現構築物を無細胞成分と接触させるステップ、又は
b.前記DNA構築物若しくは本発明の発現構築物を細胞に適用するステップを含む。
【0105】
したがって、転写に必要な構成要素が用意されているin vitro法が提供される。当業者であればこれらの構成要素をすぐに利用でき、多数のin vitro発現キットが市販されている。
【0106】
或いは、宿主細胞中で発現を駆動してもよい。好ましくは、細胞は細菌細胞であるが、例えばウイルスであってもよい。
【0107】
さらに本発明のさらなる態様では、本発明の宿主細胞は本発明のdsRNA分子及びRNA構築物の産生のための供給源として使用してもよい。例えば、本発明のRNA構築物を有効量で産生させるために、(前記の)本発明の発現構築物を含む細菌宿主細胞を適切な条件(例えば37℃又は42℃)で培養することができる。細菌の大規模発酵工程及び回収工程は当技術分野において周知であり、商業的に利用されている。抗生物質耐性宿主株を利用する場合は、場合によりアンピシリン、カルベニシリン、又はクロラムフェニコールなどの適切な抗生物質を補充した例えばLB培地などの任意の適切な培地の中で細菌培養を行うことができる。
【0108】
したがって、結果として得られた細菌培養物は、本発明のRNA構築物を大量に産生する。細菌自体は、本明細書に記載した適切な害虫防除剤組成物に製剤してもよいし、例えば標的昆虫又はクモによる摂食により取り込ませるために、本発明のRNA構築物の直接の(食物)供給源として使用してもよい。
【0109】
同様に一実施形態では、細菌を上記のように破壊するか、又は別の方法で不活性化することにより、dsRNAの供給源として使用することができる。例えば浸透圧ショックなどの任意の適切な手段を使用して、例えば細胞を破裂又は溶解させることができ、細菌の溶解物又は他の適切な細胞画分又は抽出物を本発明の組成物に利用することができる。
【0110】
一実施形態では、細菌抽出物又は溶解物を適切に精製して、実質的に純粋なRNA構築物を含有する抽出物を残すことができる。好ましくは、実質的に全ての細菌構成要素が最終的なdsRNA含有抽出物から除去され、続いての抽出物を実質的に本発明の組成物の任意の1つに製剤することができる。適切な精製ステップは当技術分野において周知であり、それには非限定的な例として適切な濾過ステップ、例えば電荷又は分子量に基づく分離が含まれていてもよい。対象のdsRNA分子を精製するために、適切なハイブリダイゼーション反応もまた採用してもよい。
【0111】
RNA構築物は、選択的沈殿、カラムクロマトグラフィー、免疫精製法及び他のものを含む標準的な技法により実質的な純度に精製することができる(例えばScopes、Protein Purification:Principles and Practice(1982);Ausubelら、上記;及びSambrookら、上記を参照されたい)。
【0112】
二本鎖RNA分子を含むRNA構築物及びDNA構築物は、典型的には天然塩基を組み込んでいるものである。しかし、変異体も本発明の範囲内に含まれる。したがって、「RNA」及び「DNA」の範囲は、それぞれ天然ヌクレオチドと同様に塩基対を形成しRNAiを仲介することができるか、又は転写されてRNAを産生することができる周知の糖修飾塩基を含む合成アナログを包含する。例えば、非天然塩基、化学修飾塩基、若しくは誘導体化塩基を組み込んだヌクレオチドアナログ、又は修飾された主鎖を有するヌクレオチドアナログが想定される。これは、本発明の構築物に組み込むことができるリンカーにも等しく当てはまる。特に、用語「二本鎖RNA」又は「dsRNA」は、非天然塩基を含有するdsRNAを包含すると解釈すべきである。非天然若しくは塩基を含むか、又は化学修飾された主鎖を有する二本鎖RNAは、dsRNA構築物の安定性の増加又は減少に関して追加の利点を与えることがある。
【0113】
害虫防除剤組成物
なおさらなる態様では、本発明は、本発明のRNA構築物、及び/又は本発明のDNA構築物、及び/又は本発明の発現構築物、及び/又は本発明の宿主細胞を、適切な担体、賦形剤、又は希釈剤と共に含む害虫防除剤組成物に関する。
【0114】
最も好ましい実施形態によると、その組成物は、昆虫及び/又はクモによる摂食に適した形態である。
【0115】
その組成物は、昆虫及び/又はクモに適用するために適した任意の物理的形態であってもよい。その組成物は、例えば固体形態(粉末、ペレット、又はベイト剤など)、液体形態(スプレーなど)、又はゲル形態であってもよい。
【0116】
その組成物は、その組成物を長期保存したときにdsRNAを安定化するか、及び/又はdsRNAの分解を防止するように作用するさらなる構成要素を含有してもよい。
【0117】
その組成物は、なおさらには腸管細胞又は腸細胞によるdsRNAの取り込みを高めるか、又は促進する構成要素を含有してもよい。これらには、例えば一般的に細胞へのRNAの取り込みを促進する化学薬剤、例えばリポフェクタミンなどがありうる。
【0118】
本発明の「組成物」は、1つの容器に二本鎖RNAと、別の容器にRNA含有実体(RNA構築物、DNA構築物、発現構築物、又は宿主細胞など)に適した希釈剤又は担体とを含む「パーツのキット(kit−of−parts)」として供給してもよいことが考慮されている。本発明は、二本鎖RNAをさらなる構成要素なしに単独で供給することにも関する。これらの実施形態では、dsRNAは、濃縮水溶液などの濃縮された形態で供給してもよい。dsRNAは凍結形態で、又はフリーズドライ形態すなわち凍結乾燥形態でも供給してもよい。後者の方が長期保存では安定であり、使用直前に解凍及び/又は適切な希釈剤で再構成することができる。
【0119】
特定の一実施形態では、組成物は、昆虫及び/又はクモによる侵襲から支持体を保護するために、その支持体に適用することができるコーティング、ペースト、又は粉末のことがある。この実施形態では、組成物を使用して昆虫及び/又はクモによる侵襲、又はそれにより起こる損傷に感受性の任意の支持体又は材料、例えば食料及び他の生鮮材料、並びに木などの支持体を保護することができる。この実施形態に好ましい標的昆虫及び/又はクモ種には、先に定義した(「標的生物/標的種」参照)本発明の害虫、すなわち屋内昆虫及び/又はクモ、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫があるが、それに限定されるわけではない。最も好ましい標的種はゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0120】
この実施形態では、組成物は、少なくとも1つの二本鎖RNA含有実体(例えば上記のRNA構築物)と、意図された使用に適した少なくとも1つの担体、希釈剤、又は賦形剤とを含むものであり、ここで、二本鎖RNA領域はアニーリングした相補鎖を含み、その二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖は防除される昆虫及び/又はクモ由来の標的遺伝子の標的ヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を有する。
【0121】
賦形剤の性質及び組成物の物理的形態は、処理が望まれる支持体の性質に応じて変動することがある。例えば組成物は、処理される材料又は支持体に刷毛で塗られるか、噴霧されるか、又は押印される液体であってもよいし、処理される材料又は支持体に適用されるコーティング又は粉末であってもよい。したがって一実施形態では、組成物は適切な表面の上のコーティングの形態であり、そのコーティングは、それと接触する昆虫及び/又はクモに接着し、ついには摂食される。
【0122】
一実施形態では、組成物はベイト剤の形態である。ベイト剤は昆虫及び/又はクモを誘引して、組成物と接触するように設計されている。それと接触すると、組成物は、次に例えば摂食により昆虫及び/又はクモによりインターナリゼーションされ、RNAiを仲介し、故に昆虫及び/又はクモを死滅させる。前記ベイト剤は、タンパク質性食物、例えば魚粉などの食品を含んでもよい。ホウ酸もまたベイト剤として使用することができる。ベイト剤は、標的とされる種に依存することがある。例えば、チャバネゴキブリは自分が入手できるほぼ全ての食品を食べるものである。誘引剤もまた使用することができる。誘引剤は、例えば男性フェロモン又は女性フェロモンなどのフェロモンであってもよい。例として、「Insect Pheremones and their use in Pest Management」(Howseら、Chapman and Hall、1998)という書籍に言及されているフェロモンを本発明に使用することができる。誘引剤は、昆虫及び/又はクモをベイト剤に誘引するように作用し、特定の昆虫及び/又はクモを標的とすることができるし、全範囲の昆虫を誘引することもできる。ベイト剤は固体、ペースト、ペレット、又は粉末形態などの任意の適切な形態であってもよい。
【0123】
ベイト剤は、昆虫及び/又はクモによりコロニーに運び込まれることもある。次に、ベイト剤はコロニーの他のメンバーの食物源として作用し、故に多数の昆虫及び/又はクモ、可能性があることには昆虫及び/又はクモ害虫のコロニー全体を効果的に防除することができる。害虫へのRNAi介在性効果の遅延作用がベイト剤をコロニーに運び込ませ、故に昆虫及び/又はクモへの曝露に最大の影響をもたらすことから、これは、本発明の二本鎖RNAの使用に関連する利点である。
【0124】
追加的に、昆虫及び/又はクモと接触する組成物は、昆虫及び/又はクモのクチクラに残存することができる。昆虫及び/若しくはクモ自体の個別の掃除、又は昆虫及び/若しくはクモの相互の掃除のいずれかである掃除の際に組成物は摂食され、故に昆虫及び/又はクモに組成物の効果を仲介することができる。これは、組成物が例えば数日間でありうる期間に外部環境条件に曝露された場合でもdsRNAが無傷のままであり、RNAiを仲介することが十分にできるほど安定であることを必要とする。
【0125】
ベイト剤は、適切な「ハウジング」又は「トラップ」の中に用意してもよい。当該ハウジング及びトラップは市販されており、現存するトラップを本発明の組成物を包含するように適合させることができる。昆虫及び/又はクモの進入を誘う任意のハウジング又はトラップが本発明の範囲内に含まれる。ハウジング又はトラップは、例えば箱型であってもよく、予め成形された状態で用意してもよいし、例えば折り畳むことのできる厚紙で形成していてもよい。ハウジング又はトラップに適切な材料には、プラスチック及び厚紙があり、特に段ボールがある。当該ハウジング又はトラップに適切な寸法は、例えば幅7〜15cm、長さ15〜20cm、及び高さ1〜5cmである。一度中に入った昆虫及び/又はクモの運動を制限するために、トラップの内面を粘着物で覆うことができる。ハウジング又はトラップは、内部でベイト剤を定位置にしておくことができる適切な窪みを有してもよい。進入した後で昆虫は容易にトラップを離れることができないが、ハウジングは、昆虫及び/又はクモが摂食し、捕食者を避けて安全を確保できる好ましい環境をそれらに用意する「摂食場所」として働くことから、トラップはハウジングと区別される。
【0126】
したがって、さらなる態様では、本発明は、昆虫及び/又はクモのための本発明の組成物を有するハウジング又はトラップを提供し、それは、本明細書に記載した組成物の任意の特徴を組み込んでいてもよい。
【0127】
さらなる代替の実施形態では、組成物はスプレーの形態で用意してもよい。したがって、ヒトである使用者は、害虫に組成物を直接噴霧することができる。次に、組成物は昆虫及び/又はクモにインターナリゼーションされ、そこから組成物はRNA干渉を仲介し、故に昆虫及び/又はクモを防除することができる。スプレーは好ましくは加圧/エーロゾル化スプレー又はポンプスプレーである。粒子は、昆虫及び/又はクモに、例えば昆虫及び/又はクモの外骨格に接着するために適した径のことがあり、そこから吸収されることができる。粒子径は、市販されている装置のMastersizerの使用などの公知の手段により測定することができる。
【0128】
なおさらなる実施形態では、担体は、昆虫及び/又はクモのクチクラに接着する静電荷電した粉末又は粒子である。昆虫及び/又はクモに接着し、故に本発明のRNA構築物を送達することができる適切な粉末及び粒子は、共に参照により本明細書に組み込まれている国際公開第94/00980号パンフレット及び国際公開第97/33472号パンフレットに詳細に記載されている。
【0129】
或いは、担体は昆虫のクチクラに接着する磁気粒子を含んでもよい。昆虫及び/又はクモに接着することができ、故に本発明のRNA構築物を送達することができる適切な磁気粒子は、参照が本明細書に組み込まれている国際公開第00/01236号パンフレットに詳細に記載されている。
【0130】
好ましいなおさらなる実施形態では、組成物の担体は、最初は磁化していないが、昆虫及び/又はクモの体により提供される電界にさらされると磁気的に分極することができる金属粒子を含む。この作用様式は国際公開第2004/049807号パンフレットに詳細に記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。
【0131】
昆虫及び/又はクモと接触するこれらの組成物は、昆虫及び/又はクモのクチクラに残存することができる。昆虫及び/若しくはクモ自体の個別の掃除又は昆虫及び/若しくはクモの相互の掃除のいずれかである掃除の際に組成物は摂食され、故に昆虫及び/又はクモに組成物の効果を仲介することができる。これは、組成物が例えば数日間でありうる期間に外部環境条件に曝露された場合でもdsRNAが無傷のままであり、RNAiを仲介することが十分にできるほど安定であることを必要とする。
【0132】
好ましくは、組成物は昆虫及び/又はクモ害虫への二本鎖RNAの取り込みを増大させる担体を組み込んでおり(上の「標的生物/標的種」参照)、それは好ましくは昆虫及び/又はクモであり、好ましくはゴキブリの種である。当該担体は、好ましくは水中油型乳剤、ミセル、コレステロール、リポポリアミン、及びリポソームのうち1つ又は複数を含む脂質系担体であってもよい。本発明の構築物の取り込みを促進するその他の薬剤は当業者に周知であり、それには、ポリカチオン、デキストラン、及びCS096、CS102などの(トリス)カチオン系脂質がある。市販されているリポソームにはLIPOFECTIN(登録商標)及びCELLFECTIN(登録商標)などがある。いくつかの適切な担体は、「トランスフェクション促進剤」の名称で国際公開第03/004644号パンフレットに挙げられており、提供された各例は、これによって参照により組み込まれている。
【0133】
さらに好ましい実施形態では、担体はヌクレオチド凝縮剤である。好ましくは、ヌクレオチド凝縮剤はスペルミジン若しくは硫酸プロタミン、又はその誘導体を含む。
【0134】
本発明の組成物をさらなる害虫防除剤を含めたさらなる活性成分と一緒に組み合わせることができる。したがって組成物は、1つの容器に二本鎖RNA含有組成物と、別の容器に化学害虫防除剤又は生物学的害虫防除剤でありうる1つ又は複数の適切な害虫防除剤とを含む「パーツのキット」として用意してもよい。或いは組成物は、安定で、相互に一緒に使用する混合物として用意してもよい。
【0135】
本発明の二本鎖RNA分子に相補的に作用することができる適切な活性成分には、非限定的に以下のものがある:クロルピリホス、アレスリン、レスメトリン、テトラブロモエチル、ジメトール−シクロプロパンカルボン酸(dimethol−cyclopropane carboxylic acid)(一般に液体組成物に入れられる)、及びヒドラメチルノン、アベルメクチン、クロルピリホス、スルフラミド(sulfuramid)、ヒドロプレン、フィプロニル(GABA受容体)、メチルカルバミド酸イソプロピルフェニル、インドキサカルブ(PARA)、ノビフルムロン(キチン合成阻害剤)、イミプロトリン(PARA)、アバメクチン(グルタミン酸依存性塩素チャネル)、イミダクロプリド(アセチルコリン受容体)(これらは一般にベイト組成物に入れられる)。
【0136】
好ましい実施形態では、活性成分は、保健環境の問題から見て好ましい殺虫剤及び/又は殺クモ剤、例えばヒドラメチルノン及びアベルメクチンなどであることが公知である。
【0137】
別の実施形態によると、dsRNAは、細菌細胞又は真菌細胞などの適切な宿主細胞に発現し、その細胞は害虫種により取り込まれるか、又は食べられる。さらなる実施形態によると、dsRNAは、好ましくはそのdsRNAを発現している細菌細胞又は真菌細胞である細胞から単離又は精製され、そのdsRNAは害虫種に害虫防除剤として又は害虫防除製剤に入れて用意される。細菌又は真菌宿主細胞などの宿主細胞を操作して、本発明の任意のdsRNA又はRNA構築物を産生させることができる。好ましくは細菌細胞であるこれらの宿主細胞は、害虫種により摂食されるか、又は別の方法でインターナリゼーションされうる。取り込まれたときにdsRNAはRNAi応答を開始することができ、標的mRNAの分解及び害虫の脆弱化又は死滅に至る。
【0138】
したがって、さらに特定の実施形態では、前記二本鎖RNA又はRNA構築物は、細菌などの原核生物、又は酵母、宿主細胞、若しくは宿主生物などの真核生物により発現される。これらの細胞又は生物は、昆虫及び/又はクモによる取り込みを容易にするために適した任意の製剤の中に用意することができる。
【0139】
本発明の使用及び方法
なおさらなる態様では、本発明は、RNA干渉により昆虫及び/又はクモを防除するための本発明のRNA構築物、及び/又は本発明のDNA構築物、及び/又は本発明の発現構築物、及び/又は本発明の組成物、及び/又は本発明のハウジング若しくはトラップの使用に関する。その使用は、本明細書に同定された新規な標的とオーソロガスな標的遺伝子を有する全ての発育段階のいくつかの昆虫及び/又はクモに適用することができ、それらには、屋内昆虫及び/又はクモ、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモが含まれる。最も好ましい標的種はゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0140】
好ましくは、RNAiを介し害虫と闘い、結果としてその害虫は、死滅し、麻痺し、成長が遅延し、摂食が阻害され、及び/又はその生殖が妨害される。
【0141】
相補的な態様では、本発明は昆虫及び/又はクモ(害虫)を防除する方法もまた提供し、その方法は、昆虫及び/又はクモに上に定義したdsRNA領域を含むRNA構築物、及び/又は本発明のDNA構築物、及び/又は上に定義した発現構築物、及び/又は上に定義した宿主細胞、及び/又は上に定義した組成物、及び/又は上に定義したハウジング若しくはトラップを適用するステップを含み、ここで二本鎖RNAは、RNA干渉により少なくとも1つの昆虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる。
【0142】
適用は、例えば昆虫及び/又はクモに摂食させることを伴うことがあるし、昆虫及び/又はクモに(上記及び/又は上に定義した様々な提示形態の)dsRNAを接触させることを伴うこともある。直接接触に適した手段には、本発明の組成物に関して上に定義及び記載したベイト剤、粘着性ストリップ、帯磁及び荷電した粉末及び粒子、スプレー、ゲル、軟膏、表面処理などがある。任意の適用手段が、標的遺伝子発現の効果的な二本鎖RNA介在性干渉をもたらすことによって昆虫及び/又はクモを防除するならば、その適用手段は本発明の範囲内に含まれる。
【0143】
複数の標的に対する構築物を含む複数の二本鎖RNA領域を用意することが好都合なことがある。それは、このことが昆虫及び/又はクモの防除の有効性を増大させ、昆虫及び/又はクモが抵抗性を獲得する確率も減少させるからである。
【0144】
したがって、本発明の一実施形態では、複数の別々のRNAi事象を仲介するために、上に定義した複数のRNA構築物、及び/又は上に定義したDNA構築物、及び/又は上に定義した発現構築物、及び/又は上に定義した宿主細胞、及び/又は上に定義した組成物、及び/又は上に定義したハウジング若しくはトラップが害虫に提供/適用される。
【0145】
複数の標的は、全てが同時に標的とされることがあるし、連続的に標的とされることもある。したがって、一実施形態では、昆虫及び/又はクモが抵抗性を獲得する確率を減らすために複数のRNA構築物、及び/又はDNA構築物、及び/又は発現構築物、及び/又は宿主細胞、及び/又は組成物、及び/又はハウジング若しくはトラップが、連続的に供給/適用される。
【0146】
本発明の方法は、本明細書において同定された新規な標的とオーソロガスな標的遺伝子を有する、全ての発育段階のいくつかの昆虫及び/又はクモに適用することができる。標的昆虫には、屋内昆虫及び/又はクモ、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモが含まれる。最も好ましい標的種はゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0147】
好ましくは、RNAiにより昆虫及び/又はクモ害虫と闘い、結果としてその害虫は、死滅し、麻痺し、成長が遅延し、摂食が阻害され、及び/又はその生殖が妨害される。
【0148】
一実施形態では、宿主細胞は、本発明のRNA構築物を産生するように操作された細菌細胞であってもよい。
【0149】
なおさらなる態様では、本発明は、ゴキブリに少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物を提供/適用することを含む、ゴキブリ害虫を防除する方法を提供し、その二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖は、ゴキブリリボソームタンパク質をコードしているヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。ゴキブリリボソームタンパク質は、ゴキブリの侵襲の効果的な防除を仲介することができるRNAiについての新規な標的となる。
【0150】
好ましくは、少なくとも1つの二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも約17、18、19、20、21個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約23個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、70個のヌクレオチド、80個のヌクレオチド、90個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、250個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、350個のヌクレオチド、400個のヌクレオチド、450個のヌクレオチド、500個のヌクレオチド、550個のヌクレオチド、600個のヌクレオチド、650個のヌクレオチド、700個のヌクレオチド、900個のヌクレオチド、1000個のヌクレオチド、1100個のヌクレオチド、1200個のヌクレオチド、又は約1300個のヌクレオチドを含む。
【0151】
なおさらなる態様では、本発明はゴキブリ害虫を防除する方法を提供し、その方法は、ゴキブリに少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物を提供/適用するステップを含み、その二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖は、トロポミオシン、HMGコエンザイムAシンターゼ遺伝子、又はアクチン5C遺伝子をコードしているヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。ゴキブリトロポミオシン、HMGコエンザイムAシンターゼ、及びアクチン5Cタンパク質はRNAiについての新規な標的となり、それはゴキブリ侵襲の効果的な防除を仲介することができる。
【0152】
好ましくは、少なくとも1つの二本鎖領域の少なくとも1方の鎖は、配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも約17個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約18個のヌクレオチド、19個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、21個のヌクレオチド、23個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、70個のヌクレオチド、80個のヌクレオチド、90個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、250個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、350個のヌクレオチド、400個のヌクレオチド、450個のヌクレオチド、500個のヌクレオチド、550個のヌクレオチド、600個のヌクレオチド、650個のヌクレオチド、700個のヌクレオチド、900個のヌクレオチド、1000個のヌクレオチド、1100個のヌクレオチド、1200個のヌクレオチド、又は約1300個のヌクレオチドを含む。
【0153】
本発明の方法は、本明細書に同定した新規な標的とオーソロガスな標的遺伝子を有する、全ての発育段階のいくつかの昆虫及び/又はクモに適用することができる。標的昆虫には、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモが含まれる。より好ましい標的種は、非限定的にチャバネゴキブリ種(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目);非限定的にトフシアリ種(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(例えばオオアリ種(カーペンターアント))、ケアリ種(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(ウッドアント)、シリアゲアリ種(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント))、イリドミルメクス種(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びダシムチラ種(例えばDasymutilla occidentalis(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科);非限定的にアミテルメス種(Amitermes spp.)(例えばアミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、レティキュリテルメス種(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(イースタンサブテラネアンテルマイト)、レティキュリテルメス−ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、イエシロアリ種(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、及びネオテルメス種(例えばネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))などのシロアリ(シロアリ目及び/又はシロアリ科)、ゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリである。さらに好ましい標的はゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0154】
好ましくは、RNAiにより昆虫及び/又はクモ害虫と闘い、結果的にその害虫は、死滅し、麻痺し、成長が遅延し、摂食が阻害され、及び/又はその生殖が妨害される。
【0155】
本発明のキット
本発明は、本発明の方法に使用するためのキットもまた提供する。これらのキットは、本発明のRNA構築物、及び/又はDNA構築物、及び/又は発現構築物、及び/又は宿主細胞、及び/又は組成物、及び/又はハウジング若しくはトラップを組み入れていてもよく、その全てはdsRNA領域を送達して特異的標的遺伝子に対するRNAiをもたらす。
【0156】
好ましくは、キットは、そのキットの構成要素の使用説明書もまた含むものである。本発明のキットに見られるか、又は本発明のキットの構成要素により産生される二本鎖RNAは、RNA干渉により少なくとも1つの昆虫(害虫)遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる。
【0157】
好ましくは、(上記の)さらに効果的な害虫防除をもたらすために、キットは、それぞれが異なる標的遺伝子又は昆虫及び/若しくはクモ種でRNAiを仲介する複数の構成要素を備える。したがって、キットは複数のRNA構築物、及び/又はDNA構築物、及び/又は発現構築物、及び/又は組成物を備えることがあり、各二本鎖RNAは、RNA干渉により少なくとも1つの昆虫及び/又はクモ(害虫)遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる。
【0158】
好ましくは、キットの構成要素を連続的に適用し、効果的な害虫駆除を仲介する。しかし、最大の影響に必要ならば、一部又は全ての構成要素を同時に適用してもよい。
【0159】
キットは、公知の害虫防除剤を追加的に備えてもよく、その害虫防除剤は、本発明の部分を形成している構成要素と一緒に、又は別々に用意することができる。
【0160】
本発明の二本鎖RNA分子に相補的に作用しうる適切な有効成分には、非限定的に以下のものがある:クロルピリホス、アレスリン、レスメトリン、テトラブロモエチル、ジメトール−シクロプロパンカルボン酸(一般に液体組成物に入れられる)、及びヒドラメチルノン、アベルメクチン、クロルピリホス、スルフラミド、ヒドロプレン、フィプロニル(GABA受容体)、メチルカルバミド酸イソプロピルフェニル、インドキサカルブ(PARA)、ノビフルムロン(キチン合成阻害剤)、イミプロトリン(PARA)、アバメクチン(グルタミン酸依存性塩素チャネル)、イミダクロプリド(アセチルコリン受容体)(これらは一般にベイト組成物に入れられる)。
【0161】
好ましい実施形態では、活性成分は、衛生環境の問題から見て「好ましい」殺虫剤及び/又は殺クモ剤、例えばヒドラメチルノン及びアベルメクチンなどであることが知られている。
【0162】
したがって、本発明のキットは、広範囲の害虫を防除する選択肢を与えるために同時に複数の種に向けることもまたできる。二本鎖RNA分子を(適切な構築物の部分などとして)キットに含めて、例えば同一の標的の種間オーソログを含む複数の標的のRNAiを仲介することができる。
【0163】
キットは、適切な緩衝液及びパッケージなどもまた含み、その中の構成要素の安定性及び保存を確実にすることができる。
【0164】
本発明の技術的な長所
従来の化学殺虫剤の使用に比べて、本発明に関連する多数の大きな長所がある。
(1)dsRNAを仲介しているRNAiは、効果的に発現をダウンレギュレーションすることにより害虫を防除するために、高度のヌクレオチド配列同一性で標的と一致しなければならない。したがって、特異性は、1方の鎖が標的配列と高い相同性を有するが、その鎖がヒトなどの哺乳動物種でのオーソロガスな配列と低い相同性だけを有する二本鎖RNA分子を設計することにより実現することができる。この特異性は、従来の化学殺虫剤で実現できるものよりも大きい。
(2)害虫の防除に使用することができる新しいセットの標的が同定された。これらの標的は以前に同定されていないため、害虫種に獲得された抵抗性はないはずである。
(3)新規な標的に対するRNAiに使用する二本鎖RNAは、DMSOなどの公知の化学合成害虫防除剤に比べて生分解性の産物である。この構築物が生分解性であることから、この構築物は環境面でさらに健全になる。
(4)RNAiは、害虫を死滅させる点で必ずしも即時効果を与えるわけではなく、それどころかその効果は効果的に仲介されるが、二本鎖RNAがその標的と会合するには時間が必要である。RNAiの効果は、(Dow AgroSciencesからのキチン合成阻害剤である)ノビフルムロンのようにその後にそして接触直後でなしに害虫の死滅を招くことができる。したがって、害虫が殺虫剤及び/又は殺クモ剤の近くで大量の死んだ害虫に出くわして害虫の間にショック効果が広がるという機会が少ないことから、RNAiを使用すると、昆虫及び/又はクモなどの害虫の大規模な侵襲を比較的容易に防除することができる。
(5)同時に複数の標的を使用することは、害虫の個体数のさらに有効な防除をもたらし、抵抗性を獲得する確率を減らすことができる。標的はいくつかの害虫種に共通で、広範囲の処置を与えることがある。
(6)従来の害虫防除剤とは対照的に、本発明のDNA及びRNA構築物、組成物、並びに宿主細胞の性質が比較的安全であることから、関連する場所を処理するために職業的な援助は必要ないであろう。
(7)二本鎖RNA領域含有構築物が、標的害虫集団以外の遺伝子発現に有害作用もごく小さな作用も有さないように設計されていることから、ヒトの活動性の混乱は最小限しか必要ないであろう。
【0165】
以下の実験の部を参照すると、本発明がさらに理解されよう。
[表の説明]
表1:新規に同定した昆虫標的遺伝子の例。割り当てられた遺伝子機能はFlyBaseオーソログに基づく。
表2:チャバネゴキブリ標的配列に相補的なdsRNA断片。
表3:うまく脱皮して成虫期になったゴキブリの数に及ぼすdsRNA処置の効果を生きた昆虫の率で表したもの(平均±標準誤差、n=4)。
表4:選択された標的遺伝子配列*。配列*の少なくとも17bpの断片は、昆虫種での特異的にオーソロガスな配列に存在する(GI番号で表す)。
表5:選択された標的遺伝子配列*。配列*の少なくとも17bpの断片は、クモ種での特異的にオーソロガスな配列に存在する(GI番号で表す)。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【表4−5】
【表4−6】
【表4−7】
【表4−8】
【表4−9】
【表4−10】
【表4−11】
【表4−12】
【表4−13】
【表4−14】
【表4−15】
【表4−16】
【表4−17】
【0170】
【表5−1】
【表5−2】
【実施例】
【0171】
〔実施例1:ファミリーPCRによるチャバネゴキブリBg001、Bg003、Bg004、及びBg005遺伝子の部分配列のクローニング〕
TRIzol Reagent(カタログ番号15596−026/15596−018、Invitrogen、ロックヴィル、メリーランド州、米国)を製造業者の説明書通りに使用して、高品質の無傷のRNAをチャバネゴキブリ(入手源:Central Science Laboratory、ヨーク)から単離した。このRNA調製物に存在するゲノムDNAは、製造業者が指示したDnアーゼ処理により除去した。市販のキット(SuperScript(商標)III Reverse Transcriptase、カタログ番号18080044、Invitrogen、ロックヴィル、メリーランド州、米国)を製造業者の説明書通りに使用して、cDNAを作製した。
【0172】
Bg001、Bg003、Bg004、及びBg005遺伝子の部分を含むcDNA配列を単離するために、Amplitaq Gold(カタログ番号N8080240、Applied Biosystems)を製造業者が指示したように使用して、縮重プライマーを用いた一連のPCR反応を行った。
【0173】
Bg001については、縮重プライマーoGBKA002及びoGBKA020(本明細書においてそれぞれ配列番号3及び配列番号4で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、57℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号1で表し、Bg001遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号2で表す。
【0174】
Bg003について、縮重プライマーoGBKC001及びoGBKC010(本明細書においてそれぞれ配列番号13及び配列番号14で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号11で表し、Bg003遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号12で表す。
【0175】
Bg004について、縮重プライマーoGBKD001及びoGBKD006(本明細書においてそれぞれ配列番号23及び配列番号24で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、50℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号21で表し、Bg004遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号22で表す。
【0176】
Bg005について、縮重プライマーoGBKE002及びoGBKE009(本明細書においてそれぞれ配列番号33及び配列番号34で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、52℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号31で表し、Bg005遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号32と表す。
【0177】
〔実施例2:EST配列によるチャバネゴキブリBg031、Bg032、及びBg033遺伝子の部分配列のクローニング〕
TRIzol Reagent(カタログ番号15596−026/15596−018、Invitrogen、ロックヴィル、メリーランド州、米国)を製造業者の説明書通りに使用して、高品質の無傷のRNAをチャバネゴキブリ(入手源:Central Science Laboratory、ヨーク)から単離した。このRNA調製物に存在するゲノムDNAは、製造業者が指示したようにDNアーゼ処理により除去した。市販のキット(SuperScript(商標)III Reverse Transcriptase、カタログ番号18080044、Invitrogen、ロックヴィル、メリーランド州、米国)を製造業者の説明書通りに使用して、cDNAを作製した。
【0178】
Bg031、Bg032及びBg033遺伝子由来の部分cDNA配列を同定するために、公共データベースGenbank由来の公共データベースGenbankのそれぞれ受託番号AF260897、X73679、及びAY004248に各遺伝子あたり1つのESTを見出した。
【0179】
Bg031、Bg032、及びBg033遺伝子の部分を含むcDNA配列を単離するために、Perfectshot(商標)ExTaq(カタログ番号RR005A、タカラバイオ株式会社)を製造業者が指示したように使用して、ESTに基づく特異的プライマーを用いた一連のPCR反応を行った。
【0180】
Bg031について、特異的プライマーoGBLA001及びoGBLA002(本明細書においてそれぞれ配列番号43及び配列番号44で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit;カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号41で表し、Bg031遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号42で表す。
【0181】
Bg032について、特異的プライマーoGBLB003及びoGBLB004(本明細書においてそれぞれ配列番号51及び配列番号52で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号49で表し、Bg032遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号50で表す。
【0182】
Bg033について、特異的プライマーoGBLC001及びoGBLC004(本明細書においてそれぞれ配列番号59及び配列番号60で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号57で表し、Bg033遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号58で表す。
【0183】
〔実施例3:チャバネゴキブリBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032、及びBg033遺伝子のdsRNA産生〕
市販のキットT7 RiboMAX(商標)Express RNAi System(カタログ番号P1700、Promega)を使用して、ミリグラム量のdsRNAを合成した。最初に2つの異なる一本鎖5’T7 RNAポリメラーゼプロモーターテンプレートを2つの異なるPCR反応で作製した。各反応物はT7プロモーターに対して異なる方向で標的配列を含む。
【0184】
Bg001について、特異的T7 FWプライマーoGBLD001及び特異的RVプライマーoGBLD010(本明細書においてそれぞれ5及び配列番号6で表す)を以下の条件のPCR反応に使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLD009及び特異的T7 RVプライマーoGBLD002(本明細書においてそれぞれ配列番号7及び配列番号8で表す)を上記と同条件のPCR反応で使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号9で表す。
【0185】
Bg003について、特異的T7 FWプライマーoGBLD003及び特異的RVプライマーoGBLD012(本明細書においてそれぞれ配列番号15及び配列番号16と表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLD011及び特異的T7 RVプライマーoGBLD004(本明細書においてそれぞれ17及び配列番号18で表す)を上記と同条件のPCR反応で使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号19で表す。
【0186】
Bg004について、特異的T7 FWプライマーoGBLD005及び特異的RVプライマーoGBLD014(本明細書においてそれぞれ配列番号25及び配列番号26で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLD013及び特異的T7 RVプライマーoGBLD006(本明細書においてそれぞれ配列番号27及び配列番号28で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用してアンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号29で表す。
【0187】
Bg005について、特異的T7 FWプライマーoGBLD007及び特異的RVプライマーoGBLD016(本明細書においてそれぞれ配列番号35及び配列番号36で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLD015及び特異的T7 RVプライマーoGBLD008(本明細書においてそれぞれ配列番号37及び配列番号38で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用してアンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号39で表す。
【0188】
Bg031について、特異的T7 FWプライマーoGBLA007及び特異的RVプライマーoGBLA002(本明細書においてそれぞれ配列番号45及び配列番号44で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLA001及び特異的T7 RVプライマーoGBLA008(本明細書においてそれぞれ配列番号43及び配列番号46で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号47で表す。
【0189】
Bg032について、特異的T7 FWプライマーoGBLB007及び特異的RVプライマーoGBLB004(本明細書においてそれぞれ配列番号53及び配列番号52で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLB003及び特異的T7 RVプライマーoGBLB008(本明細書においてそれぞれ配列番号51及び配列番号54で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号55で表す。
【0190】
Bg033について、特異的T7 FWプライマーoGBLC007及び特異的RVプライマーoGBLC004(本明細書においてそれぞれ61及び配列番号60で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLC001及び特異的T7 RVプライマーoGBLC008(本明細書においてそれぞれ配列番号59及び配列番号62で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号63で表す。
【0191】
〔実施例4:チャバネゴキブリBlattella germanicaに対する活性についてdsRNA標的をスクリーニングする実験室内試験〕
蒸留水に溶かした1〜10μg/μl dsRNA原液を調製した。各dsRNA溶液を適切な濃度に希釈し、それを細かく磨り潰した実験室動物用餌(ラット及びマウス標準食、B&K Universal Ltd、ハル、英国)(全ての酵素を不活性化するために予め熱処理したもの)と混合した。この混合物又は製剤を等重量(0.3g)の小さなペレットに成形し、終濃度0.1%から2%w/w dsRNAにして、室温で一晩乾燥させた。
【0192】
新たに孵化したチャバネゴキブリB.germanicaの若虫をプラスチック蓋のついた容器(29±2℃、相対湿度最低40%、12:12明暗光周期)に10匹ずつ入れた。動物を24時間絶食させてからペレットを提示した。成虫になるまで週に2回、ゴキブリの生存、瀕死、又は死滅を評定した。週に1回、ペレットを新たに調製したペレットと交換した。dsRNA含有ペレットである製剤を陰性対照(溶媒)及び陽性対照(1又は2%イミダクロプリド(市販のゴキブリ用ベイト剤に通常使用されている))と比較した。図1に示すように、Bg001、Bg003、及びBg005で処置したときは初回投与の24日以内に、Bg004で処置したときは29日以内に、それぞれゴキブリの少なくとも80%は死滅した。
【0193】
〔実施例5:効率に関する種々の断片の実験
ヒトと実質的な相同性を有さないチャバネゴキブリBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032、及びBg033遺伝子の断片の同定〕
本明細書においてそれぞれ配列番号1、配列番号11、配列番号21、配列番号31、配列番号41、配列番号49、及び配列番号57に表すBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032、及びBg033遺伝子の部分配列を分析し、非標的生物と実質的な相同性を有さない断片を見出した。特に、dsRNAは生物中でsiRNA分子に細切されるものであることから、非標的種と相同性を有するであろうsiRNA配列を求めて配列をスキャンした。当該siRNAは非標的生物に有害作用を起こすおそれがあるため、最終産物に組み入れるdsRNA断片に入れるのは避けることが好ましい。選択された断片は、例えばベイト剤に存在してゴキブリの摂食によりベイト剤から取り込まれる場合、RNA干渉によるゴキブリ防除に適する。この分析について、非標的生物はヒト(Homo sapiens)であった。非標的生物に存在しない21個の隣接するヌクレオチド(best1_human_21_0)、又は3つのミスマッチを許した24個の隣接するヌクレオチド(best1/2/3_human_24_3)の断片を同定した。これを本明細書において「フリーフラッグ(freefrag)」と名付ける。第1の選択基準で非標的生物の配列を有さないBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032及びBg033の最長配列を配列番号で示し、本明細書において「フリーフラッグ」と名付ける。これらのBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032、及びBg033のフリーフラッグは、本明細書においてそれぞれ配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40、配列番号48、配列番号56、及び配列番号64で表す。本発明での使用に適した他のフリーフラッグ配列の数例の長さ及び配列を表2に示す。正確な配列は、この表から容易に推定することができる。表に記載した全てのフリーフラッグ配列は、本発明の配列群に属する。
【0194】
当業者は、様々な長さのより多くの当該フリーフラッグが、本明細書に提示したチャバネゴキブリ配列、並びに本発明による他の害虫配列中の対応する遺伝子及びタンパク質のオーソログである配列で同定されることがあり、したがって、本発明がこれらのさらに同定することのできるフリーフラッグに及ぶことを認識しているであろう。
【0195】
〔実施例6:最適の断片の選択;効率についてのコンカテマーの試験〕
各標的遺伝子についてコンカテマーを設計した。コンカテマーは50から100bpのds断片の合成タンデム反復である。本実施例では、タンパク質ファミリー中で相同性を有する領域から、そしてヌクレオチドレベルで最良の予測されるsiRNAを含む領域及び40から60%のGC含量、可能であれば好ましくは約50%のGC含量を有する領域から最良の可能性のある断片を選択することによってコンカテマーを設計した。
【0196】
Bg001について、50bp断片、すなわち配列番号65及び66に表す断片の5回繰り返しからなる2つのコンカテマーを設計し、本明細書においてそれぞれ配列番号67及び配列番号68で表すBg001コンカテマー1及びBg001コンカテマー2を得た。さらに、100bpの繰り返し、すなわち配列番号69に表す繰り返しの3回繰り返しからなる1つのコンカテマーを設計し、本明細書において配列番号70で表すBg001コンカテマー3を得た。ベクターにクローニングするためにXbaI及びSmaI隣接部位を付加し、dsRNAを産生させた。コンカテマーを含むこれらのdsRNA構築物をゴキブリの実験室内試験で試験した。
【0197】
図2に示すさらなる実験で、Bg001及びBg001コンカテマー2で処置したときの死滅率は陰性対照(溶媒)に比べて有意に高かった。
【0198】
死滅率以外に、処置は発育に有意な効果を示した。例えば表3に示すように、48日目にはBg001で処置されて生存しているゴキブリのうち33.3%だけが脱皮して成虫期段階になったが、Bg001コンカテマー2で処置されたゴキブリはこの期間に1匹もそうならなかった。
【0199】
〔実施例7:種々の製剤の試験〕
RNA干渉(RNAi)は、多数の異なる種において配列特異的に標的遺伝子の発現を阻害する、潜在的に非常に強力な手段である。しかし、RNAiが貴重で効果的であるためには、所与の任意の標的遺伝子を、非特異的ノックダウン及び有毒な副作用なしに特異的にサイレンシングすることが不可欠である。dsRNAの適用は、細胞内でのこれらの化合物の作用部位にこれらの化合物を効果的に送達できないことによって妨害されてきた。特異性を失わずに相互作用の強度及び安定性を高めるためのdsRNAの化学修飾の進歩が継続中である。この実験では、チャバネゴキブリの標的遺伝子にdsRNAを送達するためのいくつかの概念について評価する。
【0200】
エンドサイトーシを容易にすることによりdsRNAの細胞内取込みを増大させること、又は脂質及びリポソームなどの送達剤を使用して生物学的環境におけるdsRNAの安定性を増大させることによって、RNAiに誘導される効果を向上することができる。siRNA−はアニオン性ホスホジエステル主鎖を有し、この理由からカチオン性リポソーム/脂質介在性siRNA送達(siFection)が検討される。これらのカチオン性リポソーム/脂質に基づく系は、リポフェクタミン及び1,2−ジオレオイル−3−トリメチル−アンモニウムプロパン(DOTAP)−コレステロールを含めたいくつかの市販製品から選択され、ゴキブリの実験室内試験でdsRNA製剤を試験する。検討するパラメーターには混合の脂質:dsRNA比、カチオン性リポソーム/脂質−dsRNA複合体の形成度、粒子径、送達様式、及び用量反応効果がある。
【0201】
〔実施例8:dsRNAの安定性試験〕
遺伝子サイレンシングのためのdsRNA適用は、分子の生物学的安定性、特異性、及び送達の改善に依存するものである。
【0202】
一部の標的種の腸内のpHを模倣するために、作製したdsRNAの安定性をpH7及びpH9のTRIZMA緩衝液及びpH11のCAPS緩衝液で試験した。dsRNAを数日間インキュベートし、その一定分量を異なる時間間隔で20%ポリアクリルアミドゲル上において分析した。ゲルの結果に基づき、dsRNAの安定性に及ぼすpHの影響は観察できなかった。
【0203】
作製したdsRNAの安定性を、無RNアーゼ水及びLB培地中で室温で8ヶ月間にわたり時間の関数として試験した。一定分量を毎週及び/又は毎月採取し、−20℃で保存してから20%ポリアクリルアミドゲル上において分析した。図3に示すようにポリアクリルアミドゲルでdsRNAの有意な分解を観察することはできなかった。
【0204】
〔実施例9:チャバネゴキブリBlattella germanicaの初期若虫期での死滅率に及ぼす単回投与dsRNAを試験するための実験室内試験〕
蒸留水に溶かした10μg/μl dsRNA原液を調製し、それを細かく磨り潰した実験室動物用餌(ラット及びマウス標準食、B&K Universal Ltd、ハル、英国)(全ての酵素を不活性化するために予め熱処理したもの)と混合した。この混合物又は製剤を等重量(0.3g)の小さなペレットに成形し、終濃度1%w/w dsRNAにして、室温で一晩乾燥させた。
【0205】
新たに孵化したチャバネゴキブリB.germanicaの若虫をプラスチック蓋のついた容器(29±2℃、相対湿度最低40%、12:12明暗光周期)に10匹ずつ入れた。動物を24時間絶食させてからペレットを提示した。1週間後にこの初回用量を未処置のペレットと交換した。成虫になるまで週に2回、ゴキブリの生存、瀕死、又は死滅を評定した。図4に示すように、Bg001 dsRNA含有ペレットは、2つの陰性対照(溶媒及び種々雑多なdsRNA)に比べて有意に高い死滅率を示した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫種における二本鎖RNA(dsRNA)介在性遺伝子サイレンシングの分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、本明細書において初めて同定された新規な標的に対応するdsRNAの発現のために設計された遺伝子構築物に関する。これらの構築物は、詳しくはdsRNA介在性昆虫害虫防除に、特に屋内昆虫又は屋内クモ、例えばゴキブリの防除に有用である。
【背景技術】
【0002】
害虫防除、詳しくは昆虫及び/又はクモの防除、特に屋内昆虫、外部寄生虫、並びにゴキブリ、ノミ、アリ、シロアリ、ハサミムシ、カ、ハエ、及びイエコオロギなどの公衆の保健衛生(例えば都市の保護)に関連する昆虫の防除は重要な分野である。ゴキブリやハエなどの昆虫は、不潔で、管理の行き届いていない場所に生息するという公衆の共通の認識があることから、家庭、職場、飲食店、病院、又は倉庫などの場所における昆虫の存在は疑いようもない悩みの種である。
【0003】
これらの昆虫は悩みの種になるばかりでなく、食物や食器も汚し、織物製品や紙製品を台無しにし、それらが触れた表面に汚れや不快臭を付ける。さらに、これらの昆虫は、細菌の保菌動物として健康上のリスクを引き起こすおそれがある。例えばゴキブリは、食中毒を引き起こす細菌(サルモネラ種(Salmonella spp.)及び赤痢菌種(Shigella spp.))を伝染させるおそれがある。チャバネゴキブリは、ブドウ球菌種(Staphylococcus spp.)、連鎖球菌種(Streptococcus spp.)、肝炎ウイルス、及び大腸菌型細菌などの病原性生物を伝染させることができると考えられている。チャバネゴキブリは、腸チフス及び赤痢の蔓延にも関係付けられてきた。一部の者、特に喘息をもつ者は、これらのゴキブリが産生するアレルゲンに感受性がある。
【0004】
家屋害虫と闘うために開発され、市販されている様々な化学殺虫剤及び捕獲装置がある。しかし、これらの手段の効力が増大することは、通常は健康上のリスクが増大することと結びついている。殺虫剤は食物を汚染するおそれがあり、これは、台所、飲食店、又は食物貯蔵庫などの場所ではほとんど避けることができず、混入はヒトに健康上のリスクを引き起こすおそれがある。
【0005】
この汚染問題の解決は、より毒性の低い殺虫剤を使用することであった。しかし、より毒性の低い殺虫剤を適用すると、昆虫が時を経て抵抗性になる確率が増加する。
【0006】
殺虫剤は、例えばアセチルコリン受容体などのある種の昆虫タンパク質に結合することにより作用し、そのタンパク質の不活性化又は過剰活性化のいずれかにより害虫種を死滅させる。殺虫剤はある濃度で安全であるように開発されてきたが、高用量又は長期間取り込むとヒトの健康に影響を及ぼすおそれがあり、実際に影響を及ぼす。農業用化学物質とは逆に、屋内昆虫の殺虫剤は、食物が貯蔵又は調理される場所に適用されるため、食物汚染及びヒトとの接触を避けることはできない。
【0007】
化学害虫防除剤の1つの代替となるものは、生物学的薬剤を利用することである。過去数年間で、RNA干渉すなわち「RNAi」による多細胞生物遺伝子のダウンレギュレーション(「遺伝子サイレンシング」とも呼ばれる)が確立した技法となった。
【0008】
一般にRNAiは、ダウンレギュレーションされる遺伝子(「標的遺伝子」)のヌクレオチド配列(の少なくとも一部)に対応するヌクレオチド配列を含む(一般にアニーリングした2つの相補的RNA一本鎖又はヘアピン構築物のいずれかとしての)二本鎖RNA断片、すなわち「dsRNA」と生物を接触させることを含む。とりわけ国際出願の国際公開第99/32619号パンフレット(Carnegie Institute of Washington)、国際出願の国際公開第99/53050号パンフレット(CSIRO)、国際出願の国際公開第00/01846号パンフレット(Devgen)、及びFireら、Nature、第391巻、806〜811頁、1998年2月が参照される。
【0009】
線虫では、RNAiは、dsRNA断片自体をそれとして、又はdsRNA断片を含む細菌株又は線虫による摂食時にdsRNA断片を発現することのできるか細菌株のいずれかをその線虫に給餌することにより行うことができる。このいわゆる「給餌によるRNAi」について、とりわけ出願人による国際出願の国際公開第00/01846号パンフレット、及び線虫C.エレガンス(C.elegans)を使用している上記に引用した国際公開第99/32619号パンフレットが参照される。
【0010】
多数のdsRNA構築物が当技術分野において記載されている。古典的dsRNAは、ダウンレギュレーションする必要のある標的配列に相補的な配列に隣接する2つの収束性のプロモーターを有するDNA構築物から産生される(例えば国際公開第00/01846号パンフレット(Devgen)参照)。dsRNA介在性遺伝子サイレンシングの技術が進歩するにつれて、新しい構築物が設計され、様々な目的のためにdsRNAが改良された。
【0011】
dsRNAをさらに効率的に産生するために、ステム−ループ−ステム構造すなわち「ヘアピン」が開発された。例えば、国際公開第99/53050号パンフレットという文書(CSIRO)に記載されているように、このヘアピンは1つの一本鎖RNA転写物からdsRNAを形成させる。このRNA転写物は、RNA転写物を折り畳み、塩基対を形成させてdsRNAのステム部分にする非相補的ループ構造により分離されたセンス版及びアンチセンス版の相補的配列を含む。
【0012】
dsRNA遺伝子サイレンシングは、例えば臨床適用(国際公開第2004/001013号パンフレット)及び植物におけるdsRNA介在性遺伝子サイレンシングなどの多数の異なる領域に適用を見出している。植物では、遺伝子サイレンシングに有用なdsRNA構築物は低分子干渉RNA(siRNA)に開裂するように、及びそれにプロセシングされるようにも設計された。
【0013】
RNAiは、植物寄生線虫から植物を保護する手段として、すなわち植物(例えば植物全体、又は植物の部分、組織、若しくは細胞)に、植物寄生線虫の成長、生殖、及び/又は生存に不可欠な植物寄生線虫標的遺伝子に対応するdsRNA断片を形成する1つ又は複数のヌクレオチド配列を発現させることによる手段としてもまた提案された。当該技法の説明については、本出願人による国際出願の国際公開第00/01846号パンフレット、米国特許第6506559号(国際公開第99/32619号パンフレットに基づく)、並びに国際出願の国際公開第01/96584号パンフレット、国際公開第01/37654号パンフレット、及び国際公開第03/052110号パンフレットを参照することができる。
【0014】
Elbashirら(Nature、411、494〜498、2001)は、長さ21ヌクレオチドのdsRNA断片(低分子干渉RNAすなわちsiRNAとも名付けられている)を使用して、哺乳動物細胞における効果的なRNAi介在性遺伝子サイレンシングを実証した。
【0015】
国際公開第03/004644号パンフレットは、一般論として節足動物へのdsRNAの送達を記載しており、このパンフレットは参照により本明細書に組み込まれている。国際公開第03/004644号パンフレットは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)におけるRNAiを使用したレポーター遺伝子GUS(Clonetech)のダウンレギュレーション及びオオタバコガ(H.armigera)におけるvATPアーゼ遺伝子のダウンレギュレーションを詳述している。
【0016】
国際公開第01/34815号パンフレットは、dsRNAを産生するバキュロウイルス発現ベクター及び害虫防除へのこれらのベクターの使用に関する。
【0017】
RNAiの技法は、ここ数年、植物、線虫、及び哺乳動物細胞の技術分野で一般に公知であったが、昆虫及び/又はクモにおける遺伝子発現をダウンレギュレーションするためのRNAiの使用については現在のところほとんど知られていない。さらに、屋内昆虫、外部寄生虫並びに公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモなどの害虫種を防除するためのRNAiの適用についてはほとんど知られていない。
【0018】
dsRNA介在性害虫防除に適し、効率的な構築物は、以下の条件の少なくとも一部を満たすべきである。
(1)dsRNAは有害生物により取り込まれなければならない、
(2)dsRNAは有害生物中で良好な安定性を有さなければならない、
(3)dsRNAは有害生物に有効で、その生存率、成長、及び/若しくは発育を制御しなければならない、及び/又は
(4)dsRNAは最大の安全性及び最小の環境影響を保証しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
今回、上に言及した条件を満たすdsRNA構築物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、昆虫及び/又はクモの防除のための、化合物に基づかない新規な取り組みを記載する。活性成分はヌクレオチドである二本鎖RNA(dsRNA)であり、それを(例えばベイト剤又はゲル塗布剤の形の)殺虫又は殺クモ製剤として使用することができる。dsRNAの配列は不可欠な昆虫遺伝子の部分と一致し、RNA干渉(RNAi)により昆虫標的のダウンレギュレーションを引き起こす。mRNAのダウンレギュレーションの結果として、dsRNAは対応する昆虫タンパク質の発現を阻害することによって、その昆虫及び/又はクモの死滅、成長停止、又は生殖不能を引き起こす。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】人工ペレット餌でのチャバネゴキブリの死滅率。ペレット中のdsRNAの濃度は1%w/wであった。イミダクロプリドの濃度は1%w/wであった。
【図2】人工ペレット餌でのチャバネゴキブリの死滅率。ペレット中のdsRNA(配列番号9に表す配列を有するBg001及び配列番号68に表す配列を有するBg001コンカテマー2)の濃度は1%w/wであった。この実験では、ヘキサフルムロン(1%w/w)を陽性対照として、溶媒を陰性対照として試験した。
【図3】室温で8ヶ月間のLB培地(LB)及び無Rnアーゼ水(MQ)中のBg032 dsRNAの安定性。
【図4】1週間第1齢若虫にdsRNA(Bg001)を適用したときにゴキブリの死滅率が受ける効果。この実験では、種々雑多のdsRNA及び溶媒を陰性対照として試験した。ペレット中のdsRNAの濃度は1%w/wであった。
【図5A】本発明の配列
【図5B】本発明の配列
【図5C】本発明の配列
【図5D】本発明の配列
【図5E】本発明の配列
【図5F】本発明の配列
【図5G】本発明の配列
【図5H】本発明の配列
【図5I】本発明の配列
【図5J】本発明の配列
【図5K】本発明の配列
【発明を実施するための形態】
【0022】
標的
本発明者らは、昆虫又はクモ害虫の個体数を効果的に制御することができるRNAiのための新規な標的を初めて同定した。
【0023】
疑いを避けるために、標的は、本明細書において、昆虫及び/又はクモがその正常な生理学的機能及び生化学的機能を維持するためにタンパク質産物が必要とされる遺伝子と定義される。標的遺伝子の発現阻害は、その昆虫及び/又はクモが摂食、成長、又は生存する能力を制限する。本発明の実施に採用することができる昆虫及び/又はクモの遺伝子の例には、必須遺伝子、発育、代謝、又は神経伝達などの過程に関与する遺伝子、並びに産物が現存する殺虫剤及び/又はクモの標的である遺伝子がある。本発明の好ましい実施形態では、標的は、転写、翻訳、細胞骨格、細胞周期、代謝(同化又は異化)、エンドサイトーシス、細胞内及び細胞間輸送、カルシウム結合、核内移行及び核外移行、ヌクレオチド結合、シグナルペプチダーゼ−タンパク質結合、プロテアソーム、小胞輸送、神経伝達、水分平衡、イオン平衡、スプライシング、有糸分裂、減数分裂、染色体の組織化、安定性又は完全性、マイクロRNA、siRNA、翻訳後タンパク質修飾、電子伝達、アポトーシス、膜の完全性、並びに細胞接着などの細胞機能に必要な経路の部分である。
【0024】
本発明で同定された新規な標的遺伝子は、以下のものを含む。
A)構造タンパク質、例えばトロポミオシン1(GenBank AF260897)(配列番号41及び42)、アクチン5C(GenBank AY004248)(配列番号57及び58)、並びに同一又は他の昆虫及び/又はクモ種において同一の生物学的機能を有する相同又は非相同タンパク質、
B)代謝酵素、例えばHMGコエンザイムAシンターゼ(GenBank X73679)(配列番号49及び50)、並びに同一又は他の昆虫及び/又はクモ種において同一の生物学的機能を有する相同又は非相同タンパク質、
C)V−ATPアーゼなどのイオン/pHのホメオスタシスに関与する酵素、並びに同一又は他の昆虫及び/又はクモ種において同一の生物学的機能を有する相同又は非相同タンパク質、
D)例えば
リボソームタンパク質S4ホモログ(配列番号1及び2)
リボソームタンパク質S9ホモログ(配列番号11及び12)
リボソームタンパク質L9ホモログ(配列番号21及び22)
リボソームタンパク質L19ホモログ(配列番号31及び32)
などの転写/翻訳機構に関与する酵素。
【0025】
したがって、第1の態様によると、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列、又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子が提供され、このオーソロガスなヌクレオチド配列は、配列番号1、11、21、及び31のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。好ましいオーソロガスな配列は、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ(red poultry mite)、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/若しくはクモ由来の配列を含むか、又は本発明の方法により使用された場合はその配列を包含する。さらに好ましいオーソロガスな配列は、非限定的にチャバネゴキブリ種(Blatella spp.)(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(Periplaneta spp.)(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(Blatta spp.)(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(Supella spp.)(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目)(Blattodea);非限定的にトフシアリ種(Solenopsis spp.)(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(Monomorium spp.)(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(Camponotus spp.)(例えばオオアリ種(カーペンターアント(Carpenter Ant)))、ケアリ種(lasius spp.)(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(Tetramorium spp.)(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(Myrmica spp.)(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(Formica spp)(ウッドアント(wood ant))、シリアゲアリ種(Crematogaster spp.)(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント(Acrobat Ant)))、イリドミルメクス種(Iridomyrmex spp.)(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(Pheidole spp.)(オオズアリ)、及びダシムチラ種(Dasymutilla spp.)(例えばDasymutilla occidentalis)(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科)(Formicoidea);非限定的にアミテルメス種(Amitermes spp.)(例えばアミテルメス−フロリデンシス(Amitermes floridensis)(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト(Florida dark−winged subterranean termite)))、レティキュリテルメス種(Reticulitermes spp.)(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(Reticulitermes flavipes)(イースタンサブテラネアンテルマイト(eastern subterranean termite))、レティキュリテルメス−ヘスペルス(Reticulitermes hesperus)(ウエスタンサブテラネアンテルマイト(Western Subterranean Termite)))、イエシロアリ種(Coptotermes spp.)(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(Incisitermes spp.)(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、及びネオテルメス種(Neotermes spp.)(例えばネオテルメス−コネキサス(Neotermes connexus)(フォレストツリーテルマイト(Forest Tree Termite)))などのシロアリ(シロアリ目(Isoptera)及び/又はシロアリ科(Termitidae))に由来する。
【0026】
別の態様によると、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列を含むか、その配列から本質的になるか、又はその配列からなる核酸分子が提供される。
【0027】
配列番号4、6、7、16、27、26、27、36、及び37の全ては、選択的及び特異的に本発明の新規な配列を同定するために利用された特異的プライマーのヌクレオチド配列を表す。
【0028】
この新規に同定した遺伝子の全ては、チャバネゴキブリの転写/翻訳機構の構成要素を表す。RNAiによりこれらの遺伝子の発現を阻害することによって、又は新規に同定した標的遺伝子の発現を阻害することによって、重要な害虫を防除することができる。
【0029】
これらの新規な標的遺伝子のオーソログもまた、他の昆虫及び/又はクモ種の防除においてダウンレギュレーションのさらなる標的となることが当業者により予測されており、そう了解されよう。したがって、本発明の新規な核酸分子のオーソログもまた考慮される。
【0030】
タンパク質配列又はヌクレオチド配列は、「有意な」レベルの配列類似性又は同一性を示すならば、相同である可能性が高い。真に相同な配列は、共通の祖先遺伝子からの分岐により関係している。配列ホモログは2つの種類に属しうる。すなわち、(i)ホモログが異なる種に存在する場合、そのホモログはオーソログとして知られている。例えばマウス及びヒトのα−グロビン遺伝子はオーソログである。(ii)パラログは単一種内の相同遺伝子である。例えばマウスのα−グロビン遺伝子及びβ−グロビン遺伝子はパラログである。本明細書では「オーソログ」は上に言及した両方の種類のホモログを意味する。
【0031】
一実施形態では、オーソログは、配列番号1、11、21、31、41、49、又は57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列と少なくとも約40%、50%、又は60%のヌクレオチド配列同一性を有するものである。好ましくはオーソログは、配列番号1、11、21、31、41、49、又は57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するものである。
【0032】
別の実施形態によると、本発明は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに表すヌクレオチド配列を含むか、その配列から本質的になるか、又はその配列からなる遺伝子の、昆虫又はクモオーソログである標的遺伝子を包含する。例としてオーソログは、配列番号71から200のいずれかに表すヌクレオチド配列、又はその少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26個、若しくは27個のヌクレオチドの断片を含むことがある。昆虫若しくはクモのオーソロガスな遺伝子、又は本発明の配列の1つのヌクレオチド17個の断片を少なくとも含む配列の非限定的なリストを表4及び5に示す。表4及び5に表示する配列は、本発明の一部を形成すると意図される。したがってオーソログは、表4及び5に示す配列のいずれかを含むか、その配列から本質的になるか、又はその配列からなる。
【0033】
別の態様によると、本発明は、それ故に昆虫及び/又はクモの侵襲又は感染を防除するための本明細書に記載した方法のいずれかを包含し、その方法は、昆虫及び/又はクモを二本鎖RNAと接触させるステップを含み、その二本鎖RNAはアニーリングされた相補鎖を含み、その二本鎖RNAの1つは、配列番号71から200に表す配列のいずれかの、少なくとも17、18、19、20、又は21個のヌクレオチドの断片を含む標的遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも部分に相補的なヌクレオチド配列を有し、それによってその二本鎖RNAは昆虫及び/又はクモにより取り込まれ、それによって成長を制御するか、死滅させるか、又はその昆虫及び/若しくはクモによる侵襲若しくは感染を防止する。前記昆虫及び/又はクモは、本明細書に記載した任意の標的生物/種を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなることがある。
【0034】
本発明に包含される関連核酸分子は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む核酸分子とのハイブリダイゼーションによって定義することもまたできる。好ましくは、ハイブリダイゼーション条件は中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下であり、なおさらに好ましくは高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下である。中程度及び高ストリンジェンシーの当該条件は、当業者によく知られているであろう。例えば、50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDSを含む溶液中で42℃で、又は5×SSC及び1%SDSを含む溶液中で65℃でインキュベーションするハイブリダイゼーション反応、並びに0.2×SSC及び0.1%SDS中で65℃での洗浄は、適切な高ストリンジェンシー条件となる。
【0035】
本発明は、これらの新規な標的遺伝子及びそのオーソログのタンパク質産物もまた提供する。
【0036】
したがって、第2の態様によると、配列番号2、12、22、若しくは32のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含むタンパク質、又はさらなる昆虫及び/若しくはクモ種由来の保存されたアミノ酸配列を有するオーソロガスなタンパク質を提供する。
【0037】
上に言及したように、新規な標的遺伝子のオーソログは、他の昆虫及び/又はクモ種の防除におけるダウンレギュレーションのためのさらなる標的となろうこともまた予測されている。したがって、本発明の新規なタンパク質分子のオーソログもまた考慮されている。
【0038】
一実施形態では、オーソログは、配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列と少なくとも約40%のアミノ酸配列同一性を有するものである。好ましくは、オーソログは、配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列と少なくとも約40%、50%、60%、65%、70%、80%、さらに好ましくは少なくとも約90%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は95%のアミノ酸配列同一性を有するものである。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしているヌクレオチドもまた提供する。本発明のこの態様に包含される核酸分子には、同一のタンパク質分子をコードする点で機能的に同等な核酸分子もまた含まれる。したがって、遺伝暗号の縮重により可能な全ての核酸分子が、本発明のこの態様の範囲内に入ると意図される。
【0040】
標的生物/標的種
本発明に使用する「標的種」は、害虫となる任意の昆虫又はクモであってもよい。この用語は、任意の発育期にある昆虫又はクモにもまた関する。昆虫は、生きていない外骨格を有することから、昆虫は一定速度で成長することはできず、それどころか定期的に自分の外骨格を脱ぎ捨てることにより段階的に成長する。この過程は脱皮(moulting又はecdysis)と呼ばれる。脱皮と脱皮の間の段階は「齢」と呼ばれ、この段階は本発明により標的とすることができる。また、昆虫の卵や生きた子もまた本発明により標的とすることができる。有翅昆虫亜綱における変態を含む、発育周期の全ての段階は、本発明によるRNAiによって標的とすることができる。したがって、幼虫、蛹、若虫などの発育段階などの個別の段階を全て標的とすることができる。
【0041】
標的種は、動物界、さらに詳しくは節足動物門、そして昆虫綱(Class Insecta)又はクモ綱(Class Arachnida)に属する任意の生物又は種を意味する任意の昆虫又はクモであってもよい。本発明の方法は、RNA干渉による遺伝子サイレンシングに感受性であり、それらの周辺環境から二本鎖RNAをインターナリゼーションすることができる全ての昆虫及びクモに適用することができる。
【0042】
本発明の一実施形態では、昆虫又はクモは、以下の目に属することがある:ダニ目(Acari)、クモ網、シラミ目(Anoplura)、ゴキブリ目(Blattodea)、コウチュウ目(Coleoptera)、トビムシ目(Collembola)、ハサミムシ目(Dermaptera)、カマキリ目(Dictyoptera)、ハサミコムシ目(Diplura)、ハエ目(Diptera)、シロアリモドキ目(Embioptera)、カゲロウ目(Ephemeroptera)、ガロアムシ目(Grylloblatodea)、カメムシ目(Hemiptera)、カメムシ亜目(Heteroptera)、ヨコバイ亜目(Homoptera)、ハチ目(Hymenoptera)、シロアリ目(Isoptera)、チョウ目(Lepidoptera)、ハジラミ目(Mallophaga)、シリアゲムシ目(Mecoptera)、アメミカゲロウ目(Neuroptera)、トンボ目(Odonata)、バッタ目(Orthoptera)、ナナフシ目(Phasmida)、シラミ目(Phithiraptera)、カワゲラ目(Plecoptera)、カマアシムシ目(Protura)、チャタテムシ目(Psocoptera)、ノミ目(Siphonaptera)、シラミ目(Siphunculata)、シミ目(Thysanura)、腹吻亜目(Sternorrhyncha)、ネジレバネ目(Strepsiptera)、アザミウマ目(Thysanoptera)、トビケラ目(Trichoptera)、ジュズヒゲムシ目(Zoraptera)、及びシミ亜目(Zygentoma)。
【0043】
好ましいが、非限定的な本発明の実施形態では、昆虫又はクモは、以下からなる群から選択される。
(1) ダニ目:マダニ亜目(Ixodida)(マダニ)を含むダニ
(2) クモ綱:クモ目(Araneae)(クモ)及びメクラグモ目(Opiliones)(メクラグモ)、例には、Latrodectus mactans(クロゴケグモ)及びLoxosceles recluse(ドクイトグモ)がある。
(3) シラミ目:Pediculus humanus(ヒトジラミ)などのシラミ
(4) ゴキブリ目:チャバネゴキブリ(Blatella germanica)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、及びチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のものを含むゴキブリ。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
(5) コウチュウ目:コウチュウ、例には、ヒラタキクイムシの科(ナガシンクイムシ上科(Bostrichoidea));デンドロクトヌス種(Dendroctonus spp.)(ブラックツルペンチンビートル(Black Turpentine Beetle)、サザンパインビートル(Southern Pine Beetle)、IPSエングレーバービートル(IPS Engraver Beetle));マルカツオブシムシ(アントレヌス種(Anthrenus spp)、アタゲヌス種(Attagenus spp);オールドハウスボーラー(Old House Borer)(カミキリムシ科:ヒロトルペス−バジュルス(Hylotrupes bajulus));シバンムシ(Anobium punctatum);トリボリウム種(Tribolium spp)(コクヌストモドキ);Trogoderma granarium(ヒメアカカツオブシムシ);Oryzaephilus sarinamensis(ノコギリヒラタムシ)など(シミ)がある。
(6) ハサミムシ目:ハサミムシ科
(7) ハエ目:カ(カ科(Culicidae))及びハエ(ハエ亜目(Brachycera))、例は、ハマダラカ種(Anopheles spp.)などのハマダラカ亜科(Anophelinae)及びアエデス−フルブス(Aedes fulvus)などのカ亜科(Culicinae);タバヌス−プンクティファ(Tabanus punctifer)(ホースフライ(Horse Fly))、Glossina morsitans morsitans(ツェツェバエ)などのアブ科(Tabanidae)、ドレインフライ(drain flies)(チョウバエ科(Psychodidae))、及びMusca domestica(イエバエ)などの弁翅亜節(Calyptratae)、ニクバエ(ニクバエ科(Sarcophagidae))など。
(8) カメムシ亜目:Cimex lectularius(トコジラミ)などのカメムシ
(9) ハチ目:アリ(アリ科(Formicoidea))、ミツバチ(ミツバチ上科(Apoidea))を含むハチ(ハチ亜目(Apocrita):Solenopsis invicta(ヒアリ)、Monomorium pharaonis(イエヒメアリ)、オオアリ種(Camponotus spp)(オオアリ)、(lasius niger(トビイロケアリ)、(tetramorium caespitum)(トビイロシワアリ)、Myrmica rubra(キイロクシケアリ)、ヤマアリ種(ウッドアント)、クレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント)、Iridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びDasymutilla occidentalis)(アリガタバチ)など
(10) シロアリ目:シロアリ、例には:アミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、イースタンサブテラネアンテルマイト(レティキュリテルメス−フラビペス)、R.ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、Coptotermes formosanus(イエシロアリ))、Incisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、ネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))、及びシロアリ科(Termitidae)がある。
(11) チョウ目:ガ、例には:Tineola bisselliella(コイガ)などのヒロズコガ科(Tineidae)及びマルハキバガ科(Oecophoridae)、並びにPyralis farinalis(カシノシマメイガ)などのメイガ科(Pyralidae)がある。
(12) チャタテムシ目:ブックライス(チャタテムシ)
(13) ノミ目:ヒトノミ(Pulex irritans)などのノミ
(14) 腹吻亜目:アブラムシ(アブラムシ科(Aphididae))
(15) シミ亜目:シミ、例は:マダラシミ(Thermobia domestica)及びセイヨウシミ(Lepisma saccharina)である。
【0044】
好ましい標的昆虫又はクモには、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモが含まれる。さらに好ましい標的は、非限定的にチャバネゴキブリ種(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目);非限定的にトフシアリ種(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(例えばオオアリ種(カーペンターアント))、ケアリ種(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(ウッドアント)、シリアゲアリ種(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント))、イリドミルメクス種(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びダシムチラ種(例えばDasymutilla occidentalis(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科);非限定的にアミテルメス種(例えばアミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、レティキュリテルメス種(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(イースタンサブテラネアンテルマイト)、レティキュリテルメス−ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、イエシロアリ種(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、ネオテルメス種(例えばネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))などのシロアリ(シロアリ目及び/又はシロアリ科)である。さらに好ましい標的はゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0045】
RNA構築物
「相補的」とは、RNA鎖が、特定の配列がDNA配列である場合はその配列のRNA同等物、又はそのDNA配列の相補体のRNA同等物に相当することを意味する。
【0046】
本発明は、遺伝子発現のRNAi介在性ダウンレギュレーションのための追加の標的に関する。本明細書において同定した全ての標的に関して、本発明のさらなる態様では二本鎖RNA領域を含むRNA構築物が提供され、その少なくとも1方の鎖は、
(i)配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181;のいずれか1つに定義する標的核酸分子、或いは
(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子のいずれか1つのヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。上記のように、オーソログは、配列番号1、4、6、7、11、16、17、21、26、27、31、36、37、41、43、44、49、51、52及び57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%のヌクレオチド配列同一性を有することがある。好ましくは、オーソログは、配列番号1、4、6、7、11、16、17、21、26、27、31、36、37、41、43、44、49、51、52及び57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するものである。
【0047】
前述のように、本明細書においてチャバネゴキブリで同定した標的のオーソログは、屋内昆虫及び/又はクモ、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫を含むその他の昆虫並びに/又はクモ種における有望な標的と見なされる。
【0048】
さらに好ましい標的は、ゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリから得られる。最も好ましい標的は、新規な標的が同定されたチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0049】
効果的な遺伝子サイレンシングには約21bpの低分子干渉RNA(siRNA)の形成が理想的であると以前に報告された。しかし、出願人の出願では、ある種の有害生物に効率的に取り込まれるための最短長のdsRNAは、好ましくは少なくとも約80〜100bpであることが示された。自由生活性線虫C.エレガンス又は植物寄生線虫サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)などの無脊椎動物では、おそらくこれらの長鎖dsRNAの方が無脊椎動物による取り込みが効率的であることから、これらの長鎖断片の方が遺伝子サイレンシングに有効であるという見通しが立てられている。
【0050】
27塩基長の平滑末端RNA、又は29bpのステム及びヌクレオチド2個の3’突出を有する低分子ヘアピン型(sh)RNAのいずれかからなる合成RNA二本鎖は、従来型の21塩基長siRNAよりも強力にRNA干渉を誘導することもまた最近示唆された(Williams、Nature Biotechnology、第23巻、2005年2月2日、181、及びKimら、Nature Biotechnology、第23巻、2005年2月2日、222〜229、及びSiolasら、Nature Biotechnology、第23巻、2005年2月2日、227〜231参照、これらの参照はその全体が本明細書に組み込まれている)。したがって、上に同定した標的に基づき、27塩基長の平滑末端RNA、又は29bpのステム及びヌクレオチド2個の3’突出を有する低分子ヘアピン型(sh)RNAのいずれかである分子もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
したがって一実施形態では、RNA構築物は少なくとも約17bp、好ましくは少なくとも約21bp、さらに好ましくは約20〜1500bp、なおさらに好ましくは約80〜1000bp、最も好ましくは約17〜27bp又は約80〜250bpの長さを有する二本鎖RNA領域、例えば約17bp、18bp、20bp、21bp、22bp、23bp、24bp、25bp、26bp、27bp、50bp、80bp、100bp、150bp、200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、900bp、100bp、1100bp、1200bp、1300bp、1400bp又は1500bpの二本鎖RNA領域を有する。
【0052】
二本鎖RNAの長さの上限は、i)dsRNAが昆虫及び/又はクモにより取り込まれる必要性、並びにii)dsRNAが関連する細胞内でプロセシングされて、RNAiを指令する断片になる必要性に依存することがある。選択された長さは、RNAの合成法及び細胞へのRNA送達様式にもまた影響されうる。好ましくは、本発明の方法に使用される二本鎖RNAは、長さ10000bp未満、さらに好ましくは1000bp以下、さらに好ましくは500bp以下、さらに好ましくは300bp以下、さらに好ましくは100bp以下であろう。
【0053】
害虫防除に関する有効性は、単一のRNA構築物を用いて複数の標的遺伝子を標的とすることにより増大することがある。したがって、二本鎖RNAが介在する複数のRNA干渉が、可能なことには全て同時に、又は可能なことにはカスケード的に起こると思われることから、害虫が生存し抵抗性を獲得する見込みは低い。
【0054】
本発明の方法は、複数の標的遺伝子のダウンレギュレーション又は阻害を実現するために、又は単一の標的遺伝子のより強力な阻害を実現するために、同一の昆虫及び/又はクモに2つ以上の異なる二本鎖RNA又はRNA構築物を同時又は連続的に与えることを包含する。
【0055】
さらなる実施形態によると、本発明によるRNA構築物は、少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含み、その鎖の少なくとも1つは、本明細書に記載した任意のヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含み、ここで、前記ヌクレオチド配列の相補性は、(i)配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれかに示す核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列、又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のそのオルトロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子と少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、さらに好ましくは少なくとも約95%、なおさらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有し、ここで、配列同一率は同一の長さにわたり計算される。
【0056】
「同一の長さにわたり」により、%同一率を配列間で計算する場合に、両配列での対応する一続きのヌクレオチドにわたりこれを行うことを意味する。
【0057】
或いは、複数の標的配列に対して作用する1つの二本鎖RNAを与えることにより複数の標的遺伝子がダウンレギュレーションされる。或いは、標的遺伝子に対応する二本鎖RNA断片の1つを超えるコピーの存在により、単一の標的をより効率的に阻害することができる。したがって、本発明の一実施形態では、二本鎖RNA構築物は、複数のdsRNA領域を含み、各dsRNA領域の少なくとも1方の鎖は、昆虫及び/又はクモ標的遺伝子の標的ヌクレオチド配列の少なくとも部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。本発明によると、RNA構築物中のdsRNA領域は、同一又は異なる標的遺伝子に相補的であってもよく、及び/又はdsRNA領域は同一又は異なる昆虫及び/又はクモ種由来の標的遺伝子に相補的であってもよい。
【0058】
したがって、本発明は、本発明の単離された二本鎖RNA又はRNA構築物を提供し、それは、少なくとも2つの二本鎖RNA領域を含み、そのそれぞれの少なくとも1方の鎖は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つのヌクレオチド配列、又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含むか、本質的にその配列からなるか、又はその配列からなり、ここで、そのオーソロガスなヌクレオチド配列は、配列番号1、11、21、及び31のいずれか1つのヌクレオチド配列、又は配列番号41、43、44、49、51、52、及び57のいずれか1つに示すヌクレオチド配列を含む核酸分子の少なくとも関連する部分と少なくとも70%、80%、85%、87.5%、90%、95%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。好ましくは前記二本鎖RNA又はRNA構築物は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか、好ましくは配列番号65から70のいずれかから独立して選択される1つ又は少なくとも2つのヌクレオチド配列を含むか、本質的にその配列からなるか、又はその配列からなる。
【0059】
したがって、本発明の一実施形態では、RNA構築物は複数のdsRNA領域を含み、各dsRNA領域の少なくとも1方の鎖は、昆虫及び/又はクモ種由来の標的遺伝子のヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。本発明によると、RNA構築物中のdsRNA領域は、同一又は異なる標的遺伝子に相補的であってもよく、dsRNA領域は同一又は異なる昆虫種由来の標的に相補的であってもよい。
【0060】
dsRNA領域は、以下のように組み合わせることができる。
a)単一の法的遺伝子を標的とする複数のdsRNA領域を組み合わせる場合、それらの領域はRNA構築物中に本来の順序(すなわち標的遺伝子に断片が出現する順序)で組み合わせることができる、
b)或いは、断片の本来の順序を無視することにより、断片を混ぜ合わせて、ランダム又は故意に任意の順序に組み合わせてRNA構築物にすることができる。
c)或いは、1つの単一断片をRNA構築物中に数回、例えば1から10回、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回繰り返すことができ、また
d)(単一又は異なる標的遺伝子を標的とする)dsRNA領域をセンス又はアンチセンス方向に組み合わせることができる。
【0061】
加えて、組み合わせる標的遺伝子は、以下の種類の1つ又は複数の遺伝子(該当するその全ての可能な組合せを含む)から選択してもよい。
e)「必須」遺伝子又は「病原性遺伝子」は、1つ又は複数の標的昆虫及び/又はクモに重要で、サイレンシングした場合に致死的又は重大な(例えば、運動、摂食、麻痺、飲水、生殖能力、生殖、成長の)表現型を招く遺伝子を包含する。強い致死的標的遺伝子の選択は強力なRNAi効果を招く。本発明のRNA構築物において、同一又は異なる(非常に効果的な)致死的遺伝子を標的とする複数のdsRNA領域を組み合わせて、昆虫及び/又はクモの防除に果たすRNAiの効果の効力、有効性、又は速度をさらに増大させることができる。
f)「弱小遺伝子」は、本明細書に記載した細胞経路の1つに特に興味深い機能を有するが、独立してサイレンシングすると表現型に弱小作用を招く標的遺伝子を包含する。本発明のRNA構築物では、単一又は異なる弱小遺伝子を標的とする複数のdsRNA領域を組み合わせて、より強いRNAi効果を得ることができる。
g)「昆虫及び/又はクモ特異的」遺伝子は、生物情報学の相同性検索、例えばBLAST検索により決定することのできる非有害生物における実質的な相同的対応物を有さない遺伝子及び遺伝子の部分を包含する。昆虫及び/若しくはクモ特異的標的遺伝子又はその部分の選択は、種特異的RNAi効果を招き、非標的生物に効果を有さないか、又は実質的な(有害)効果を有さない。
h)「保存された遺伝子」は、標的生物及び非標的生物の間で(アミノ酸レベルで)保存されている遺伝子を包含する。非標的種に及ぼす可能性のある効果を減らすために、そのような効果的であるが保存された遺伝子を分析し、これらの保存された遺伝子の可変領域由来の標的配列を選択して、RNA構築物中のdsRNA領域による標的とする。ここで、保存性はヌクレオチド配列のレベルで評価される。このように、当該可変領域は、保存された標的遺伝子のうち、ヌクレオチド配列レベルで最小に保存された部分を包含する。
i)「保存された経路の」遺伝子は、同一の生物学的経路若しくは細胞過程に関与する遺伝子を包含するか、又は異なる昆虫及び/若しくはクモ種において同一の機能を有して、特異的及び強力なRNAi効果と効率的な害虫防除とを招く遺伝子を包含する。
j)或いは、本発明によるRNA構築物は、異なる生物学的経路由来の複数の遺伝子を標的とし、広範囲の細胞性RNAi効果とより効率的な昆虫及び/又はクモの防除とを招く。
【0062】
好ましくは、全ての二本鎖RNA領域は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つのヌクレオチド配列の部分に相補的な、少なくとも1方の鎖を含む。しかし、二本鎖RNA領域の1つが、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つのヌクレオチド配列の部分に相補的な、少なくとも1方の鎖を含む場合は、残りの二本鎖RNA領域は、昆虫及び/又はクモ種由来の(公知の標的遺伝子を含む)任意の標的遺伝子の部分に相補的な少なくとも1方の鎖を含むことがある。
【0063】
本発明は、本明細書に記載した任意のRNA構築物もまた提供し、その構築物は、少なくとも1つの追加の機能的配列と、場合によってはリンカーとを含む。一実施形態では、複数のdsRNA領域は1つ又は複数のリンカーで連結している。別の実施形態では、そのリンカーはRNA構築物の側に存在し、dsRNA領域を対象の別の領域と分離している。dsRNA構築物用の種々のリンカーの種類は、本発明により提供される。
【0064】
「条件的に自己開裂するリンカー」は、ある条件下でプロセシングされることができるRNA配列である。条件的に自己開裂する適切なリンカーの一例は、低pH条件下で自己開裂するRNA配列である。当該RNA配列の適切な例は、Jayasena及びGold(Proc Natl Acad Sci USA.1997年9月30日;94(20):10612〜7)により記載されており、この文書は参照により本明細書に組み込まれている。
【0065】
条件的に自己開裂する適切なリンカーの別の例は、高pH条件下で自己開裂するRNA配列である。当該RNA配列の適切な例は、Bordaら(Nucleic Acids Res.2003年5月15日;31(10):2595〜600)により記載されており、この文書は参照により本明細書に組み込まれている。この配列は、ハンマーヘッド型リボザイムHH16の触媒中心に由来する。
【0066】
本発明の一態様では、リンカーは有害生物中で短鎖dsRNA領域の結合を切断するために使用してもよい。好都合にはこの状態で、リンカー配列は特定の状況での長鎖dsRNA領域から短鎖dsRNA領域への分割を促進し、これらの状況で別々のdsRNA領域の放出を招き、これらの短鎖dsRNA領域による効率的な遺伝子サイレンシングに至ることができる。
【0067】
本発明の別の態様では、リンカーは、RNA構築対中の部位に存在し、dsRNA領域を対象の別の配列と分離し、その別の配列はある追加の機能をRNA構築物に用意することが好ましい。RNA構築物に組み込むことのできる他の(対象の)機能的配列の非限定的な例は、例えば(i)dsRNA構築物の大規模産生を容易にする追加の配列、(ii)dsRNAの安定性を増加/減少させる追加の配列、(iii)組成物中のタンパク質又は他の分子に結合して害虫種による取り込みを容易にする追加の配列、(iv)アプタマーであり、害虫種の腸内の受容体又は分子に結合して、その害虫種による取り込み、エンドサイトーシス、及び/又はトランスサイトーシスを容易にする追加の配列、(v)dsRNA領域のプロセシングを触媒する追加の配列である。
【0068】
特定の実施形態によると、例えば昆虫及び/又はクモなどの害虫種は腸系を有し、リンカーはその昆虫及び/又はクモの腸内で自己開裂する。腸内pHは強酸性から強塩基性まで多様である。
【0069】
或いは、リンカーはエンドソーム内で自己開裂する。本発明の構築物がエンドサイトーシス又はトランスサイトーシスを介して有害生物に取り込まれ、その結果、害虫種のエンドソーム内で区画化される場合にこれは好都合なことがある。エンドソームは低pH環境を有し、リンカーの開裂に至ることもある。
【0070】
疎水性条件下で自己開裂する上に言及したリンカーは、細胞壁を通過して1つの細胞から別の細胞に移動させるために使用するときの、例えば昆虫及び/又はクモの有害生物の細胞壁を貫通させるときの本発明のdsRNA構築物に特に有用である。
【0071】
イントロンもまたリンカーとして使用することができる。本明細書に使用する「イントロン」は、メッセンジャーRNAの任意の非コードRNA配列であってもよい。本発明の構築物に特に適したイントロン配列は、(1)Uが豊富で(35〜45%)、(2)塩基対がランダムに選択されうるか、又は公知のイントロン配列に基づきうる(約50から約500bpまで多様な)平均長100bpを有し、(3)5’末端が−AG:GT−若しくは−CG:GT−で開始し、及び/又は(4)3’末端に−AG:GC−若しくは−AG:AAを有する。
【0072】
約1塩基対から約10000塩基対までの範囲の非相補的RNA配列もまたリンカーとして使用することができる。
【0073】
上記のように、本発明のdsRNA領域は、昆虫及び/又はクモ害虫を効果的に防除するためにRNAiが起こることができる程度の相補性であるという条件下で、標的遺伝子の部分のみに対応してもよい。使用する構築物を含むdsRNA領域が標的遺伝子をダウンレギュレーションすることができる限り、適切な標的遺伝子の全長配列が公知であることは本発明に必須ではない。
【0074】
例えば、昆虫及び/又はクモ由来の(ESTなどの)部分遺伝子配列が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200に記載した配列の1つのオーソログである限り、前記部分配列に基づくdsRNA断片を使用することが可能である。配列相同性又は相補性の程度は、使用するdsRNA断片の長さにわたり決定される。
【0075】
さらに、本発明において結果として生じるdsRNA断片が標的遺伝子を依然としてダウンレギュレーションすることができる限り、(例えば欠失、挿入、又は置換により)1つ又は複数のヌクレオチド位置が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200に記載した配列を含む核酸分子と異なるdsRNA断片を使用することもまた可能である。
【0076】
好ましくは、RNA構築物中のdsRNA断片は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列を含む標的核酸分子のいずれか1つのヌクレオチド配列の関連する部分と、少なくとも約70%のヌクレオチド配列同一性、好ましくは少なくとも約80%の配列同一性、なおさらに好ましくは少なくとも約85%又は87.5%の配列同一性、もっとさらに好ましくは約90%の配列同一性、もっとさらに好ましくは少なくとも約95%の配列同一性、そして最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を含む相補性又は相同性レベルを有する。
【0077】
配列同一性を決定する方法は、当技術分野において日常的であり、それには、Blastソフトウェア及びGAP分析(GCGプログラム)の使用がある。dsRNAの少なくとも1方の鎖と標的遺伝子との高レベルの配列同一性(相補性)は、効果的なRNAi、故に害虫防除を仲介するために必要である。
【0078】
しかし、本発明のdsRNA領域が哺乳動物オーソログの配列に比べて害虫標的の配列に選択的であることも同様に好都合である。食物が存在する台所などの環境で害虫を防除しなければならず、その環境の中でヒトや他の哺乳動物が、その害虫を防除するために設計された組成物に曝露されるおそれがある場合に、このことは本発明に特に関連性がある。害虫種に有毒であるのと等しく哺乳動物にも有毒なおそれのある化学薬剤よりも、選択的な生物学的薬剤の方が好ましい。
【0079】
さらに、本発明のRNA構築物などの生物学的薬剤については、分子が経時的に生分解され、故に(公知の殺虫剤などの)化学薬剤よりもヒトの利用者に環境上及び健康上のリスクを与えることが少ないものであることは好都合である。
【0080】
したがって、好ましい実施形態によると、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示す核酸分子のヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む、RNA構築物中の二本鎖RNAの少なくとも1方の鎖は、哺乳動物種由来の対応する(オーソロガスな)ヌクレオチド配列と約5%未満、約10%未満、約12.5%未満、約15%未満、約20%未満、約30%未満、約40%未満の配列同一性を有する。一実施形態では、21個の連続するヌクレオチドにわたり哺乳動物の配列との配列同一性はない。別の実施形態では、24個の連続するヌクレオチドにわたり哺乳動物種由来の対応するヌクレオチド配列と約10%未満又は約12.5%未満の配列同一性がある。好ましくは、哺乳動物種はヒトである。
【0081】
一実施形態では、(配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示す核酸分子のヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む、RNA構築物中の二本鎖RNAの)少なくとも1方の鎖は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18個のヌクレオチド、19個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、21個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、70個のヌクレオチド、80個のヌクレオチド、90個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、250個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、350個のヌクレオチド、400個のヌクレオチド、450個のヌクレオチド、500個のヌクレオチド、550個のヌクレオチド、600個のヌクレオチド、650個のヌクレオチド、700個のヌクレオチド、900個のヌクレオチド、1000個のヌクレオチド、1100個のヌクレオチド、1200個のヌクレオチド、又は1300個のヌクレオチドを含む。
【0082】
少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも約17個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約18個のヌクレオチド、19個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、21個のヌクレオチド、23個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、25個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、70個のヌクレオチド、80個のヌクレオチド、90個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、250個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、350個のヌクレオチド、400個のヌクレオチド、450個のヌクレオチド、500個のヌクレオチド、550個のヌクレオチド、600個のヌクレオチド、650個のヌクレオチド、700個のヌクレオチド、900個のヌクレオチド、1000個のヌクレオチド、1100個のヌクレオチド、1200個のヌクレオチド、又は約1300個のヌクレオチドを含む少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物もまた提供される。
【0083】
DNA構築物及び発現構築物並びに宿主細胞
さらなる態様では、本発明は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200に表す、本発明の新規な標的のヌクレオチド配列を含むDNA構築物もまた提供する。
【0084】
本発明は、さらに本発明のRNA構築物をコードしている領域を含むDNA構築物に関する。
【0085】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明のDNA構築物のいずれかを含む発現構築物もまた提供する。
【0086】
発現構築物は、適切な条件下で、上に言及したdsRNA領域を含むRNA構築物を(転写により)提供することができる構築物である。
【0087】
dsRNAを発現するための遺伝子構築物は当技術分野において周知であり、例えば、国際公開第99/32619号パンフレット、国際公開第00/01846号パンフレット、及び国際公開第01/88121号パンフレット(全てDevgen);国際公開第00/44914号パンフレット及び国際公開第01/70949号パンフレット、並びにすでに上に言及した従来技術に記載された構築物が参照される。そこに言及されたように、当該構築物はDNA又はRNAであってよく(好ましくはDNAであり)、(細菌の形質転換及び細菌での発現に適した発現ベクターなどの)適切な発現ベクター又は他の発現系の形態であってもよい。例えば、その構築物は、細菌での産生に適した、又は昆虫及び/若しくはクモの形質転換に適した細菌系又はウイルス系に(例えば形質転換により)存在してもよく、その遺伝子構築物を含むこれら及び他の宿主細胞は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0088】
本発明による発現構築物は、dsRNA断片自体をコードしている配列以外に、通常は適切な調節エレメント(プロモーター、ターミネーター、及びエンハンサーなど)及び本質的に公知の当該遺伝子構築物の他のエレメントを含むものであり、例えばハイブリダイゼーションして所望のdsRNA領域を形成する2つの別々の相補的RNA鎖としてdsRNA領域を発現してもよく、また自己ハイブリダイゼーションして、所望のdsRNA領域を含む「ステム−ループ」又は「ヘアピン」構造を形成する2つの相補鎖を含む単一のRNAの形態でdsRNA領域を発現してもよい。全ての当該構築物を本発明に適切に使用することができ、本発明は、使用する構築物が昆虫及び/又はクモ害虫での効果的なRNAiを仲介することができるdsRNAの発現に適する限り、前記構築物の種類に関して特に限定されない。
【0089】
構築物自体もまた本質的に公知な方法で構築してもよく、これについてもう一度上記の従来技術の参考文献並びにSambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(第2版)、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)及びF.Ausubelら編、「Current protocols in molecular biology」、Green Publishing and Wiley Interscience、ニューヨーク(1987)が参照される。
【0090】
dsRNA領域は、構成的プロモーター又は誘導性プロモーター(例えば特異的化合物、細菌などに加える損傷などによって誘導されるプロモーター)の制御下の細菌宿主で好ましくは発現されてもよい。構成的又は誘導性プロモーターは、(例えば、細菌の生活環の特異的部分に)非特異的又は特異的であってもよい。
【0091】
細菌宿主細胞は、生物学的害虫防除剤として利用する前に不活性化する必要がありうる。これは、加熱又は例えばフェノール若しくはホルムアルデヒドを用いた処理などにより、当技術分野に公知の任意の技法により行うことができる。或いは、昆虫及び/又はクモ害虫に本発明のdsRNA領域を送達するために、適切に変更されたバキュロウイルスなどの不活性化ウイルスを利用してもよい。
【0092】
発現構築物は、細菌細胞での使用に好ましくは適したプロモーター又は他の制御エレメント、ターミネーター、翻訳エンハンサー又は転写エンハンサー、挿入因子、シグナル配列、選択マーカーなどの、ヌクレオチド配列又は遺伝子構築物用の本質的に公知の全ての他のエレメントをさらに含んでもよい。構築物のこれらのさらなるエレメントをコードする配列もまた、適切な生物学的起源から単離してもよいし、合成的に用意してもよい。
【0093】
適切なプロモーターのいくつかの特定であるが非限定的な例には、RNA PolI、RNA PolII、RNA PolIII、T7 RNAポリメラーゼ、又はT3 RNAポリメラーゼ、又はSP6 RNAポリメラーゼ由来のプロモーター、並びに上に引用した従来技術、例えば国際公開第00/01846号パンフレットにおいて言及されたプロモーター及び他の調節エレメントもまたあるが、それに限定されるわけではない。本発明は、さらに一本鎖RNAの発現を指令することができる細菌プロモーターを提供し、そのRNAは、発現するとループを含むヘアピン型二次構造を形成することができ、二本鎖RNA領域が利用される。
【0094】
細菌宿主又はウイルス宿主に構築物を導入するための形質転換技法の、特異的であるが非限定的な例には、形質転換、エレクトロポレーション、トランスフェクションなどがある。
【0095】
したがって本発明は、(a)本明細書に記載したRNA構築物をコードしているヌクレオチドと、(b)(a)のヌクレオチドの発現を駆動することができる1つ又は複数の制御配列と、場合によっては(c)転写終結配列とを含む発現構築物を提供する。
【0096】
発現構築物は、市販されていることがあるプラスミド又はベクターに挿入してもよい。本発明の一実施形態によると、発現構築物は、細菌への形質転換に適し、形質転換された細菌細胞における本発明によるRNA構築物の維持及び発現に適した細菌発現ベクターである。これによって、国際公開第01/01846号パンフレットに出願人により記載されたプラスミド及びベクターが参照され、その参照はその全体が本明細書に組み込まれている。その代わりとなるのは、国際公開第01/34815号パンフレットに記載されたウイルスなどの、昆虫種に感染することができるウイルス細胞を使用することであり、このパンフレットの参照は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0097】
本明細書に使用する用語「制御配列」は、広い状況の中でとらえるべきであり、それらの制御配列が結合され、及び/又は作動可能に連結される配列の発現を駆動及び/又は調節することができる調節ヌクレオチド配列を表す。本発明の一実施形態によると、制御配列は細菌又はウイルス中で作動可能であり、好ましくは、制御配列は細菌配列由来である。用語「制御配列」は、細胞、組織、又は器官での核酸分子の発現を活性化するか、又は高めることのできるプロモーター又は配列を包含する。
【0098】
場合により、1つ又は複数の転写終結配列もまた発現構築物に組み込んでもよい。用語「転写終結配列」は、一次転写物の3’プロセシング及びポリアデニル化並びに転写終結のシグナルを発する、転写ユニット末端での制御配列を包含する。転写エンハンサー又は翻訳エンハンサーなどの追加の調節エレメントを発現構築物に組み込んでもよい。
【0099】
本発明の発現構築物は、特異的細胞型での維持及び/又は複製に必要な複製起点をさらに含んでもよい。
【0100】
一例は、細胞中のエピソーム性遺伝子エレメント(例えばプラスミド又はコスミド分子)として細菌細胞中に維持するために発現構築物が必要な場合である。好ましい複製起点には、f1−ori及びcolE1 oriがあるが、それに限定されるわけではない。
【0101】
発現構築物は、場合によっては選択マーカー遺伝子を含んでもよい。本明細書に使用する用語「選択マーカー遺伝子」は、本発明の発現構築物をトランスフェクトされているか、又はそれを用いて形質転換された細胞においてその遺伝子が発現し、細胞の同定及び/又は選択を容易にする、細胞に表現型を付与する任意の遺伝子を含む。適切な選択マーカーの例には、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、テトラサイクリン耐性遺伝子(Tcr)、カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)、ホスフィノスリシン耐性遺伝子、及びクロラムフェニコール(CAT)遺伝子がある。他の選択マーカー遺伝子、例えばmanAは、代謝の形質を与える。可視マーカー遺伝子もまた使用することができ、それには例えばβ−グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)がある。
【0102】
したがって上に記載するように、本発明は、本発明のRNA構築物、及び/又はDNA構築物、及び/又は発現構築物を含む宿主細胞を提供する。好ましくは、宿主細胞は細菌細胞であるが、例えばウイルスであってもよい。昆虫及び/又はクモに特異的に感染するバキュロウイルスなどのウイルスを利用してもよい。このウイルスは哺乳動物には感染しないものであるため、望ましくないRNAi作用は起こらないものであることから、このことは、哺乳動物、特にヒトに対する安全性を保証する。
【0103】
ヒト又は他の哺乳動物との接触が見込まれる(上記のように台所などの)環境で、害虫にRNAiを仲介するための送達剤として細菌細胞又はウイルスを使用する場合、その送達剤として使用する前にその細菌細胞又はウイルスを好ましくは不活性化すべきである。不活性化は、例えば熱処理、フェノール又はホルムアルデヒド処理などの任意の手段により実現することができる。
【0104】
本発明のRNA構築物を作製する方法もまた提供される。この方法は、本発明のDNA構築物を転写させて前記RNA構築物を産生させる条件下で、
a.前記DNA構築物若しくは本発明の発現構築物を無細胞成分と接触させるステップ、又は
b.前記DNA構築物若しくは本発明の発現構築物を細胞に適用するステップを含む。
【0105】
したがって、転写に必要な構成要素が用意されているin vitro法が提供される。当業者であればこれらの構成要素をすぐに利用でき、多数のin vitro発現キットが市販されている。
【0106】
或いは、宿主細胞中で発現を駆動してもよい。好ましくは、細胞は細菌細胞であるが、例えばウイルスであってもよい。
【0107】
さらに本発明のさらなる態様では、本発明の宿主細胞は本発明のdsRNA分子及びRNA構築物の産生のための供給源として使用してもよい。例えば、本発明のRNA構築物を有効量で産生させるために、(前記の)本発明の発現構築物を含む細菌宿主細胞を適切な条件(例えば37℃又は42℃)で培養することができる。細菌の大規模発酵工程及び回収工程は当技術分野において周知であり、商業的に利用されている。抗生物質耐性宿主株を利用する場合は、場合によりアンピシリン、カルベニシリン、又はクロラムフェニコールなどの適切な抗生物質を補充した例えばLB培地などの任意の適切な培地の中で細菌培養を行うことができる。
【0108】
したがって、結果として得られた細菌培養物は、本発明のRNA構築物を大量に産生する。細菌自体は、本明細書に記載した適切な害虫防除剤組成物に製剤してもよいし、例えば標的昆虫又はクモによる摂食により取り込ませるために、本発明のRNA構築物の直接の(食物)供給源として使用してもよい。
【0109】
同様に一実施形態では、細菌を上記のように破壊するか、又は別の方法で不活性化することにより、dsRNAの供給源として使用することができる。例えば浸透圧ショックなどの任意の適切な手段を使用して、例えば細胞を破裂又は溶解させることができ、細菌の溶解物又は他の適切な細胞画分又は抽出物を本発明の組成物に利用することができる。
【0110】
一実施形態では、細菌抽出物又は溶解物を適切に精製して、実質的に純粋なRNA構築物を含有する抽出物を残すことができる。好ましくは、実質的に全ての細菌構成要素が最終的なdsRNA含有抽出物から除去され、続いての抽出物を実質的に本発明の組成物の任意の1つに製剤することができる。適切な精製ステップは当技術分野において周知であり、それには非限定的な例として適切な濾過ステップ、例えば電荷又は分子量に基づく分離が含まれていてもよい。対象のdsRNA分子を精製するために、適切なハイブリダイゼーション反応もまた採用してもよい。
【0111】
RNA構築物は、選択的沈殿、カラムクロマトグラフィー、免疫精製法及び他のものを含む標準的な技法により実質的な純度に精製することができる(例えばScopes、Protein Purification:Principles and Practice(1982);Ausubelら、上記;及びSambrookら、上記を参照されたい)。
【0112】
二本鎖RNA分子を含むRNA構築物及びDNA構築物は、典型的には天然塩基を組み込んでいるものである。しかし、変異体も本発明の範囲内に含まれる。したがって、「RNA」及び「DNA」の範囲は、それぞれ天然ヌクレオチドと同様に塩基対を形成しRNAiを仲介することができるか、又は転写されてRNAを産生することができる周知の糖修飾塩基を含む合成アナログを包含する。例えば、非天然塩基、化学修飾塩基、若しくは誘導体化塩基を組み込んだヌクレオチドアナログ、又は修飾された主鎖を有するヌクレオチドアナログが想定される。これは、本発明の構築物に組み込むことができるリンカーにも等しく当てはまる。特に、用語「二本鎖RNA」又は「dsRNA」は、非天然塩基を含有するdsRNAを包含すると解釈すべきである。非天然若しくは塩基を含むか、又は化学修飾された主鎖を有する二本鎖RNAは、dsRNA構築物の安定性の増加又は減少に関して追加の利点を与えることがある。
【0113】
害虫防除剤組成物
なおさらなる態様では、本発明は、本発明のRNA構築物、及び/又は本発明のDNA構築物、及び/又は本発明の発現構築物、及び/又は本発明の宿主細胞を、適切な担体、賦形剤、又は希釈剤と共に含む害虫防除剤組成物に関する。
【0114】
最も好ましい実施形態によると、その組成物は、昆虫及び/又はクモによる摂食に適した形態である。
【0115】
その組成物は、昆虫及び/又はクモに適用するために適した任意の物理的形態であってもよい。その組成物は、例えば固体形態(粉末、ペレット、又はベイト剤など)、液体形態(スプレーなど)、又はゲル形態であってもよい。
【0116】
その組成物は、その組成物を長期保存したときにdsRNAを安定化するか、及び/又はdsRNAの分解を防止するように作用するさらなる構成要素を含有してもよい。
【0117】
その組成物は、なおさらには腸管細胞又は腸細胞によるdsRNAの取り込みを高めるか、又は促進する構成要素を含有してもよい。これらには、例えば一般的に細胞へのRNAの取り込みを促進する化学薬剤、例えばリポフェクタミンなどがありうる。
【0118】
本発明の「組成物」は、1つの容器に二本鎖RNAと、別の容器にRNA含有実体(RNA構築物、DNA構築物、発現構築物、又は宿主細胞など)に適した希釈剤又は担体とを含む「パーツのキット(kit−of−parts)」として供給してもよいことが考慮されている。本発明は、二本鎖RNAをさらなる構成要素なしに単独で供給することにも関する。これらの実施形態では、dsRNAは、濃縮水溶液などの濃縮された形態で供給してもよい。dsRNAは凍結形態で、又はフリーズドライ形態すなわち凍結乾燥形態でも供給してもよい。後者の方が長期保存では安定であり、使用直前に解凍及び/又は適切な希釈剤で再構成することができる。
【0119】
特定の一実施形態では、組成物は、昆虫及び/又はクモによる侵襲から支持体を保護するために、その支持体に適用することができるコーティング、ペースト、又は粉末のことがある。この実施形態では、組成物を使用して昆虫及び/又はクモによる侵襲、又はそれにより起こる損傷に感受性の任意の支持体又は材料、例えば食料及び他の生鮮材料、並びに木などの支持体を保護することができる。この実施形態に好ましい標的昆虫及び/又はクモ種には、先に定義した(「標的生物/標的種」参照)本発明の害虫、すなわち屋内昆虫及び/又はクモ、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫があるが、それに限定されるわけではない。最も好ましい標的種はゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0120】
この実施形態では、組成物は、少なくとも1つの二本鎖RNA含有実体(例えば上記のRNA構築物)と、意図された使用に適した少なくとも1つの担体、希釈剤、又は賦形剤とを含むものであり、ここで、二本鎖RNA領域はアニーリングした相補鎖を含み、その二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖は防除される昆虫及び/又はクモ由来の標的遺伝子の標的ヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を有する。
【0121】
賦形剤の性質及び組成物の物理的形態は、処理が望まれる支持体の性質に応じて変動することがある。例えば組成物は、処理される材料又は支持体に刷毛で塗られるか、噴霧されるか、又は押印される液体であってもよいし、処理される材料又は支持体に適用されるコーティング又は粉末であってもよい。したがって一実施形態では、組成物は適切な表面の上のコーティングの形態であり、そのコーティングは、それと接触する昆虫及び/又はクモに接着し、ついには摂食される。
【0122】
一実施形態では、組成物はベイト剤の形態である。ベイト剤は昆虫及び/又はクモを誘引して、組成物と接触するように設計されている。それと接触すると、組成物は、次に例えば摂食により昆虫及び/又はクモによりインターナリゼーションされ、RNAiを仲介し、故に昆虫及び/又はクモを死滅させる。前記ベイト剤は、タンパク質性食物、例えば魚粉などの食品を含んでもよい。ホウ酸もまたベイト剤として使用することができる。ベイト剤は、標的とされる種に依存することがある。例えば、チャバネゴキブリは自分が入手できるほぼ全ての食品を食べるものである。誘引剤もまた使用することができる。誘引剤は、例えば男性フェロモン又は女性フェロモンなどのフェロモンであってもよい。例として、「Insect Pheremones and their use in Pest Management」(Howseら、Chapman and Hall、1998)という書籍に言及されているフェロモンを本発明に使用することができる。誘引剤は、昆虫及び/又はクモをベイト剤に誘引するように作用し、特定の昆虫及び/又はクモを標的とすることができるし、全範囲の昆虫を誘引することもできる。ベイト剤は固体、ペースト、ペレット、又は粉末形態などの任意の適切な形態であってもよい。
【0123】
ベイト剤は、昆虫及び/又はクモによりコロニーに運び込まれることもある。次に、ベイト剤はコロニーの他のメンバーの食物源として作用し、故に多数の昆虫及び/又はクモ、可能性があることには昆虫及び/又はクモ害虫のコロニー全体を効果的に防除することができる。害虫へのRNAi介在性効果の遅延作用がベイト剤をコロニーに運び込ませ、故に昆虫及び/又はクモへの曝露に最大の影響をもたらすことから、これは、本発明の二本鎖RNAの使用に関連する利点である。
【0124】
追加的に、昆虫及び/又はクモと接触する組成物は、昆虫及び/又はクモのクチクラに残存することができる。昆虫及び/若しくはクモ自体の個別の掃除、又は昆虫及び/若しくはクモの相互の掃除のいずれかである掃除の際に組成物は摂食され、故に昆虫及び/又はクモに組成物の効果を仲介することができる。これは、組成物が例えば数日間でありうる期間に外部環境条件に曝露された場合でもdsRNAが無傷のままであり、RNAiを仲介することが十分にできるほど安定であることを必要とする。
【0125】
ベイト剤は、適切な「ハウジング」又は「トラップ」の中に用意してもよい。当該ハウジング及びトラップは市販されており、現存するトラップを本発明の組成物を包含するように適合させることができる。昆虫及び/又はクモの進入を誘う任意のハウジング又はトラップが本発明の範囲内に含まれる。ハウジング又はトラップは、例えば箱型であってもよく、予め成形された状態で用意してもよいし、例えば折り畳むことのできる厚紙で形成していてもよい。ハウジング又はトラップに適切な材料には、プラスチック及び厚紙があり、特に段ボールがある。当該ハウジング又はトラップに適切な寸法は、例えば幅7〜15cm、長さ15〜20cm、及び高さ1〜5cmである。一度中に入った昆虫及び/又はクモの運動を制限するために、トラップの内面を粘着物で覆うことができる。ハウジング又はトラップは、内部でベイト剤を定位置にしておくことができる適切な窪みを有してもよい。進入した後で昆虫は容易にトラップを離れることができないが、ハウジングは、昆虫及び/又はクモが摂食し、捕食者を避けて安全を確保できる好ましい環境をそれらに用意する「摂食場所」として働くことから、トラップはハウジングと区別される。
【0126】
したがって、さらなる態様では、本発明は、昆虫及び/又はクモのための本発明の組成物を有するハウジング又はトラップを提供し、それは、本明細書に記載した組成物の任意の特徴を組み込んでいてもよい。
【0127】
さらなる代替の実施形態では、組成物はスプレーの形態で用意してもよい。したがって、ヒトである使用者は、害虫に組成物を直接噴霧することができる。次に、組成物は昆虫及び/又はクモにインターナリゼーションされ、そこから組成物はRNA干渉を仲介し、故に昆虫及び/又はクモを防除することができる。スプレーは好ましくは加圧/エーロゾル化スプレー又はポンプスプレーである。粒子は、昆虫及び/又はクモに、例えば昆虫及び/又はクモの外骨格に接着するために適した径のことがあり、そこから吸収されることができる。粒子径は、市販されている装置のMastersizerの使用などの公知の手段により測定することができる。
【0128】
なおさらなる実施形態では、担体は、昆虫及び/又はクモのクチクラに接着する静電荷電した粉末又は粒子である。昆虫及び/又はクモに接着し、故に本発明のRNA構築物を送達することができる適切な粉末及び粒子は、共に参照により本明細書に組み込まれている国際公開第94/00980号パンフレット及び国際公開第97/33472号パンフレットに詳細に記載されている。
【0129】
或いは、担体は昆虫のクチクラに接着する磁気粒子を含んでもよい。昆虫及び/又はクモに接着することができ、故に本発明のRNA構築物を送達することができる適切な磁気粒子は、参照が本明細書に組み込まれている国際公開第00/01236号パンフレットに詳細に記載されている。
【0130】
好ましいなおさらなる実施形態では、組成物の担体は、最初は磁化していないが、昆虫及び/又はクモの体により提供される電界にさらされると磁気的に分極することができる金属粒子を含む。この作用様式は国際公開第2004/049807号パンフレットに詳細に記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。
【0131】
昆虫及び/又はクモと接触するこれらの組成物は、昆虫及び/又はクモのクチクラに残存することができる。昆虫及び/若しくはクモ自体の個別の掃除又は昆虫及び/若しくはクモの相互の掃除のいずれかである掃除の際に組成物は摂食され、故に昆虫及び/又はクモに組成物の効果を仲介することができる。これは、組成物が例えば数日間でありうる期間に外部環境条件に曝露された場合でもdsRNAが無傷のままであり、RNAiを仲介することが十分にできるほど安定であることを必要とする。
【0132】
好ましくは、組成物は昆虫及び/又はクモ害虫への二本鎖RNAの取り込みを増大させる担体を組み込んでおり(上の「標的生物/標的種」参照)、それは好ましくは昆虫及び/又はクモであり、好ましくはゴキブリの種である。当該担体は、好ましくは水中油型乳剤、ミセル、コレステロール、リポポリアミン、及びリポソームのうち1つ又は複数を含む脂質系担体であってもよい。本発明の構築物の取り込みを促進するその他の薬剤は当業者に周知であり、それには、ポリカチオン、デキストラン、及びCS096、CS102などの(トリス)カチオン系脂質がある。市販されているリポソームにはLIPOFECTIN(登録商標)及びCELLFECTIN(登録商標)などがある。いくつかの適切な担体は、「トランスフェクション促進剤」の名称で国際公開第03/004644号パンフレットに挙げられており、提供された各例は、これによって参照により組み込まれている。
【0133】
さらに好ましい実施形態では、担体はヌクレオチド凝縮剤である。好ましくは、ヌクレオチド凝縮剤はスペルミジン若しくは硫酸プロタミン、又はその誘導体を含む。
【0134】
本発明の組成物をさらなる害虫防除剤を含めたさらなる活性成分と一緒に組み合わせることができる。したがって組成物は、1つの容器に二本鎖RNA含有組成物と、別の容器に化学害虫防除剤又は生物学的害虫防除剤でありうる1つ又は複数の適切な害虫防除剤とを含む「パーツのキット」として用意してもよい。或いは組成物は、安定で、相互に一緒に使用する混合物として用意してもよい。
【0135】
本発明の二本鎖RNA分子に相補的に作用することができる適切な活性成分には、非限定的に以下のものがある:クロルピリホス、アレスリン、レスメトリン、テトラブロモエチル、ジメトール−シクロプロパンカルボン酸(dimethol−cyclopropane carboxylic acid)(一般に液体組成物に入れられる)、及びヒドラメチルノン、アベルメクチン、クロルピリホス、スルフラミド(sulfuramid)、ヒドロプレン、フィプロニル(GABA受容体)、メチルカルバミド酸イソプロピルフェニル、インドキサカルブ(PARA)、ノビフルムロン(キチン合成阻害剤)、イミプロトリン(PARA)、アバメクチン(グルタミン酸依存性塩素チャネル)、イミダクロプリド(アセチルコリン受容体)(これらは一般にベイト組成物に入れられる)。
【0136】
好ましい実施形態では、活性成分は、保健環境の問題から見て好ましい殺虫剤及び/又は殺クモ剤、例えばヒドラメチルノン及びアベルメクチンなどであることが公知である。
【0137】
別の実施形態によると、dsRNAは、細菌細胞又は真菌細胞などの適切な宿主細胞に発現し、その細胞は害虫種により取り込まれるか、又は食べられる。さらなる実施形態によると、dsRNAは、好ましくはそのdsRNAを発現している細菌細胞又は真菌細胞である細胞から単離又は精製され、そのdsRNAは害虫種に害虫防除剤として又は害虫防除製剤に入れて用意される。細菌又は真菌宿主細胞などの宿主細胞を操作して、本発明の任意のdsRNA又はRNA構築物を産生させることができる。好ましくは細菌細胞であるこれらの宿主細胞は、害虫種により摂食されるか、又は別の方法でインターナリゼーションされうる。取り込まれたときにdsRNAはRNAi応答を開始することができ、標的mRNAの分解及び害虫の脆弱化又は死滅に至る。
【0138】
したがって、さらに特定の実施形態では、前記二本鎖RNA又はRNA構築物は、細菌などの原核生物、又は酵母、宿主細胞、若しくは宿主生物などの真核生物により発現される。これらの細胞又は生物は、昆虫及び/又はクモによる取り込みを容易にするために適した任意の製剤の中に用意することができる。
【0139】
本発明の使用及び方法
なおさらなる態様では、本発明は、RNA干渉により昆虫及び/又はクモを防除するための本発明のRNA構築物、及び/又は本発明のDNA構築物、及び/又は本発明の発現構築物、及び/又は本発明の組成物、及び/又は本発明のハウジング若しくはトラップの使用に関する。その使用は、本明細書に同定された新規な標的とオーソロガスな標的遺伝子を有する全ての発育段階のいくつかの昆虫及び/又はクモに適用することができ、それらには、屋内昆虫及び/又はクモ、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモが含まれる。最も好ましい標的種はゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0140】
好ましくは、RNAiを介し害虫と闘い、結果としてその害虫は、死滅し、麻痺し、成長が遅延し、摂食が阻害され、及び/又はその生殖が妨害される。
【0141】
相補的な態様では、本発明は昆虫及び/又はクモ(害虫)を防除する方法もまた提供し、その方法は、昆虫及び/又はクモに上に定義したdsRNA領域を含むRNA構築物、及び/又は本発明のDNA構築物、及び/又は上に定義した発現構築物、及び/又は上に定義した宿主細胞、及び/又は上に定義した組成物、及び/又は上に定義したハウジング若しくはトラップを適用するステップを含み、ここで二本鎖RNAは、RNA干渉により少なくとも1つの昆虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる。
【0142】
適用は、例えば昆虫及び/又はクモに摂食させることを伴うことがあるし、昆虫及び/又はクモに(上記及び/又は上に定義した様々な提示形態の)dsRNAを接触させることを伴うこともある。直接接触に適した手段には、本発明の組成物に関して上に定義及び記載したベイト剤、粘着性ストリップ、帯磁及び荷電した粉末及び粒子、スプレー、ゲル、軟膏、表面処理などがある。任意の適用手段が、標的遺伝子発現の効果的な二本鎖RNA介在性干渉をもたらすことによって昆虫及び/又はクモを防除するならば、その適用手段は本発明の範囲内に含まれる。
【0143】
複数の標的に対する構築物を含む複数の二本鎖RNA領域を用意することが好都合なことがある。それは、このことが昆虫及び/又はクモの防除の有効性を増大させ、昆虫及び/又はクモが抵抗性を獲得する確率も減少させるからである。
【0144】
したがって、本発明の一実施形態では、複数の別々のRNAi事象を仲介するために、上に定義した複数のRNA構築物、及び/又は上に定義したDNA構築物、及び/又は上に定義した発現構築物、及び/又は上に定義した宿主細胞、及び/又は上に定義した組成物、及び/又は上に定義したハウジング若しくはトラップが害虫に提供/適用される。
【0145】
複数の標的は、全てが同時に標的とされることがあるし、連続的に標的とされることもある。したがって、一実施形態では、昆虫及び/又はクモが抵抗性を獲得する確率を減らすために複数のRNA構築物、及び/又はDNA構築物、及び/又は発現構築物、及び/又は宿主細胞、及び/又は組成物、及び/又はハウジング若しくはトラップが、連続的に供給/適用される。
【0146】
本発明の方法は、本明細書において同定された新規な標的とオーソロガスな標的遺伝子を有する、全ての発育段階のいくつかの昆虫及び/又はクモに適用することができる。標的昆虫には、屋内昆虫及び/又はクモ、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモが含まれる。最も好ましい標的種はゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0147】
好ましくは、RNAiにより昆虫及び/又はクモ害虫と闘い、結果としてその害虫は、死滅し、麻痺し、成長が遅延し、摂食が阻害され、及び/又はその生殖が妨害される。
【0148】
一実施形態では、宿主細胞は、本発明のRNA構築物を産生するように操作された細菌細胞であってもよい。
【0149】
なおさらなる態様では、本発明は、ゴキブリに少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物を提供/適用することを含む、ゴキブリ害虫を防除する方法を提供し、その二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖は、ゴキブリリボソームタンパク質をコードしているヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。ゴキブリリボソームタンパク質は、ゴキブリの侵襲の効果的な防除を仲介することができるRNAiについての新規な標的となる。
【0150】
好ましくは、少なくとも1つの二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖は、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも約17、18、19、20、21個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約23個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、70個のヌクレオチド、80個のヌクレオチド、90個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、250個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、350個のヌクレオチド、400個のヌクレオチド、450個のヌクレオチド、500個のヌクレオチド、550個のヌクレオチド、600個のヌクレオチド、650個のヌクレオチド、700個のヌクレオチド、900個のヌクレオチド、1000個のヌクレオチド、1100個のヌクレオチド、1200個のヌクレオチド、又は約1300個のヌクレオチドを含む。
【0151】
なおさらなる態様では、本発明はゴキブリ害虫を防除する方法を提供し、その方法は、ゴキブリに少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物を提供/適用するステップを含み、その二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖は、トロポミオシン、HMGコエンザイムAシンターゼ遺伝子、又はアクチン5C遺伝子をコードしているヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む。ゴキブリトロポミオシン、HMGコエンザイムAシンターゼ、及びアクチン5Cタンパク質はRNAiについての新規な標的となり、それはゴキブリ侵襲の効果的な防除を仲介することができる。
【0152】
好ましくは、少なくとも1つの二本鎖領域の少なくとも1方の鎖は、配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも約17個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約18個のヌクレオチド、19個のヌクレオチド、20個のヌクレオチド、21個のヌクレオチド、23個のヌクレオチド、24個のヌクレオチド、27個のヌクレオチド、30個のヌクレオチド、40個のヌクレオチド、50個のヌクレオチド、60個のヌクレオチド、70個のヌクレオチド、80個のヌクレオチド、90個のヌクレオチド、100個のヌクレオチド、150個のヌクレオチド、200個のヌクレオチド、250個のヌクレオチド、300個のヌクレオチド、350個のヌクレオチド、400個のヌクレオチド、450個のヌクレオチド、500個のヌクレオチド、550個のヌクレオチド、600個のヌクレオチド、650個のヌクレオチド、700個のヌクレオチド、900個のヌクレオチド、1000個のヌクレオチド、1100個のヌクレオチド、1200個のヌクレオチド、又は約1300個のヌクレオチドを含む。
【0153】
本発明の方法は、本明細書に同定した新規な標的とオーソロガスな標的遺伝子を有する、全ての発育段階のいくつかの昆虫及び/又はクモに適用することができる。標的昆虫には、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに非限定的な例としてハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミなどの公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモが含まれる。より好ましい標的種は、非限定的にチャバネゴキブリ種(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目);非限定的にトフシアリ種(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(例えばオオアリ種(カーペンターアント))、ケアリ種(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(ウッドアント)、シリアゲアリ種(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント))、イリドミルメクス種(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びダシムチラ種(例えばDasymutilla occidentalis(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科);非限定的にアミテルメス種(Amitermes spp.)(例えばアミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、レティキュリテルメス種(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(イースタンサブテラネアンテルマイト)、レティキュリテルメス−ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、イエシロアリ種(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、及びネオテルメス種(例えばネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))などのシロアリ(シロアリ目及び/又はシロアリ科)、ゴキブリ、例えばチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含むチャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)を含むワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)を含むトウヨウゴキブリ属、並びにチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含むスペラ属のゴキブリである。さらに好ましい標的はゴキブリである。最も好ましい標的はチャバネゴキブリ(Blatella germanica)である。
【0154】
好ましくは、RNAiにより昆虫及び/又はクモ害虫と闘い、結果的にその害虫は、死滅し、麻痺し、成長が遅延し、摂食が阻害され、及び/又はその生殖が妨害される。
【0155】
本発明のキット
本発明は、本発明の方法に使用するためのキットもまた提供する。これらのキットは、本発明のRNA構築物、及び/又はDNA構築物、及び/又は発現構築物、及び/又は宿主細胞、及び/又は組成物、及び/又はハウジング若しくはトラップを組み入れていてもよく、その全てはdsRNA領域を送達して特異的標的遺伝子に対するRNAiをもたらす。
【0156】
好ましくは、キットは、そのキットの構成要素の使用説明書もまた含むものである。本発明のキットに見られるか、又は本発明のキットの構成要素により産生される二本鎖RNAは、RNA干渉により少なくとも1つの昆虫(害虫)遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる。
【0157】
好ましくは、(上記の)さらに効果的な害虫防除をもたらすために、キットは、それぞれが異なる標的遺伝子又は昆虫及び/若しくはクモ種でRNAiを仲介する複数の構成要素を備える。したがって、キットは複数のRNA構築物、及び/又はDNA構築物、及び/又は発現構築物、及び/又は組成物を備えることがあり、各二本鎖RNAは、RNA干渉により少なくとも1つの昆虫及び/又はクモ(害虫)遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる。
【0158】
好ましくは、キットの構成要素を連続的に適用し、効果的な害虫駆除を仲介する。しかし、最大の影響に必要ならば、一部又は全ての構成要素を同時に適用してもよい。
【0159】
キットは、公知の害虫防除剤を追加的に備えてもよく、その害虫防除剤は、本発明の部分を形成している構成要素と一緒に、又は別々に用意することができる。
【0160】
本発明の二本鎖RNA分子に相補的に作用しうる適切な有効成分には、非限定的に以下のものがある:クロルピリホス、アレスリン、レスメトリン、テトラブロモエチル、ジメトール−シクロプロパンカルボン酸(一般に液体組成物に入れられる)、及びヒドラメチルノン、アベルメクチン、クロルピリホス、スルフラミド、ヒドロプレン、フィプロニル(GABA受容体)、メチルカルバミド酸イソプロピルフェニル、インドキサカルブ(PARA)、ノビフルムロン(キチン合成阻害剤)、イミプロトリン(PARA)、アバメクチン(グルタミン酸依存性塩素チャネル)、イミダクロプリド(アセチルコリン受容体)(これらは一般にベイト組成物に入れられる)。
【0161】
好ましい実施形態では、活性成分は、衛生環境の問題から見て「好ましい」殺虫剤及び/又は殺クモ剤、例えばヒドラメチルノン及びアベルメクチンなどであることが知られている。
【0162】
したがって、本発明のキットは、広範囲の害虫を防除する選択肢を与えるために同時に複数の種に向けることもまたできる。二本鎖RNA分子を(適切な構築物の部分などとして)キットに含めて、例えば同一の標的の種間オーソログを含む複数の標的のRNAiを仲介することができる。
【0163】
キットは、適切な緩衝液及びパッケージなどもまた含み、その中の構成要素の安定性及び保存を確実にすることができる。
【0164】
本発明の技術的な長所
従来の化学殺虫剤の使用に比べて、本発明に関連する多数の大きな長所がある。
(1)dsRNAを仲介しているRNAiは、効果的に発現をダウンレギュレーションすることにより害虫を防除するために、高度のヌクレオチド配列同一性で標的と一致しなければならない。したがって、特異性は、1方の鎖が標的配列と高い相同性を有するが、その鎖がヒトなどの哺乳動物種でのオーソロガスな配列と低い相同性だけを有する二本鎖RNA分子を設計することにより実現することができる。この特異性は、従来の化学殺虫剤で実現できるものよりも大きい。
(2)害虫の防除に使用することができる新しいセットの標的が同定された。これらの標的は以前に同定されていないため、害虫種に獲得された抵抗性はないはずである。
(3)新規な標的に対するRNAiに使用する二本鎖RNAは、DMSOなどの公知の化学合成害虫防除剤に比べて生分解性の産物である。この構築物が生分解性であることから、この構築物は環境面でさらに健全になる。
(4)RNAiは、害虫を死滅させる点で必ずしも即時効果を与えるわけではなく、それどころかその効果は効果的に仲介されるが、二本鎖RNAがその標的と会合するには時間が必要である。RNAiの効果は、(Dow AgroSciencesからのキチン合成阻害剤である)ノビフルムロンのようにその後にそして接触直後でなしに害虫の死滅を招くことができる。したがって、害虫が殺虫剤及び/又は殺クモ剤の近くで大量の死んだ害虫に出くわして害虫の間にショック効果が広がるという機会が少ないことから、RNAiを使用すると、昆虫及び/又はクモなどの害虫の大規模な侵襲を比較的容易に防除することができる。
(5)同時に複数の標的を使用することは、害虫の個体数のさらに有効な防除をもたらし、抵抗性を獲得する確率を減らすことができる。標的はいくつかの害虫種に共通で、広範囲の処置を与えることがある。
(6)従来の害虫防除剤とは対照的に、本発明のDNA及びRNA構築物、組成物、並びに宿主細胞の性質が比較的安全であることから、関連する場所を処理するために職業的な援助は必要ないであろう。
(7)二本鎖RNA領域含有構築物が、標的害虫集団以外の遺伝子発現に有害作用もごく小さな作用も有さないように設計されていることから、ヒトの活動性の混乱は最小限しか必要ないであろう。
【0165】
以下の実験の部を参照すると、本発明がさらに理解されよう。
[表の説明]
表1:新規に同定した昆虫標的遺伝子の例。割り当てられた遺伝子機能はFlyBaseオーソログに基づく。
表2:チャバネゴキブリ標的配列に相補的なdsRNA断片。
表3:うまく脱皮して成虫期になったゴキブリの数に及ぼすdsRNA処置の効果を生きた昆虫の率で表したもの(平均±標準誤差、n=4)。
表4:選択された標的遺伝子配列*。配列*の少なくとも17bpの断片は、昆虫種での特異的にオーソロガスな配列に存在する(GI番号で表す)。
表5:選択された標的遺伝子配列*。配列*の少なくとも17bpの断片は、クモ種での特異的にオーソロガスな配列に存在する(GI番号で表す)。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【表4−4】
【表4−5】
【表4−6】
【表4−7】
【表4−8】
【表4−9】
【表4−10】
【表4−11】
【表4−12】
【表4−13】
【表4−14】
【表4−15】
【表4−16】
【表4−17】
【0170】
【表5−1】
【表5−2】
【実施例】
【0171】
〔実施例1:ファミリーPCRによるチャバネゴキブリBg001、Bg003、Bg004、及びBg005遺伝子の部分配列のクローニング〕
TRIzol Reagent(カタログ番号15596−026/15596−018、Invitrogen、ロックヴィル、メリーランド州、米国)を製造業者の説明書通りに使用して、高品質の無傷のRNAをチャバネゴキブリ(入手源:Central Science Laboratory、ヨーク)から単離した。このRNA調製物に存在するゲノムDNAは、製造業者が指示したDnアーゼ処理により除去した。市販のキット(SuperScript(商標)III Reverse Transcriptase、カタログ番号18080044、Invitrogen、ロックヴィル、メリーランド州、米国)を製造業者の説明書通りに使用して、cDNAを作製した。
【0172】
Bg001、Bg003、Bg004、及びBg005遺伝子の部分を含むcDNA配列を単離するために、Amplitaq Gold(カタログ番号N8080240、Applied Biosystems)を製造業者が指示したように使用して、縮重プライマーを用いた一連のPCR反応を行った。
【0173】
Bg001については、縮重プライマーoGBKA002及びoGBKA020(本明細書においてそれぞれ配列番号3及び配列番号4で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、57℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号1で表し、Bg001遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号2で表す。
【0174】
Bg003について、縮重プライマーoGBKC001及びoGBKC010(本明細書においてそれぞれ配列番号13及び配列番号14で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号11で表し、Bg003遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号12で表す。
【0175】
Bg004について、縮重プライマーoGBKD001及びoGBKD006(本明細書においてそれぞれ配列番号23及び配列番号24で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、50℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号21で表し、Bg004遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号22で表す。
【0176】
Bg005について、縮重プライマーoGBKE002及びoGBKE009(本明細書においてそれぞれ配列番号33及び配列番号34で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、52℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号31で表し、Bg005遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号32と表す。
【0177】
〔実施例2:EST配列によるチャバネゴキブリBg031、Bg032、及びBg033遺伝子の部分配列のクローニング〕
TRIzol Reagent(カタログ番号15596−026/15596−018、Invitrogen、ロックヴィル、メリーランド州、米国)を製造業者の説明書通りに使用して、高品質の無傷のRNAをチャバネゴキブリ(入手源:Central Science Laboratory、ヨーク)から単離した。このRNA調製物に存在するゲノムDNAは、製造業者が指示したようにDNアーゼ処理により除去した。市販のキット(SuperScript(商標)III Reverse Transcriptase、カタログ番号18080044、Invitrogen、ロックヴィル、メリーランド州、米国)を製造業者の説明書通りに使用して、cDNAを作製した。
【0178】
Bg031、Bg032及びBg033遺伝子由来の部分cDNA配列を同定するために、公共データベースGenbank由来の公共データベースGenbankのそれぞれ受託番号AF260897、X73679、及びAY004248に各遺伝子あたり1つのESTを見出した。
【0179】
Bg031、Bg032、及びBg033遺伝子の部分を含むcDNA配列を単離するために、Perfectshot(商標)ExTaq(カタログ番号RR005A、タカラバイオ株式会社)を製造業者が指示したように使用して、ESTに基づく特異的プライマーを用いた一連のPCR反応を行った。
【0180】
Bg031について、特異的プライマーoGBLA001及びoGBLA002(本明細書においてそれぞれ配列番号43及び配列番号44で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit;カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号41で表し、Bg031遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号42で表す。
【0181】
Bg032について、特異的プライマーoGBLB003及びoGBLB004(本明細書においてそれぞれ配列番号51及び配列番号52で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号49で表し、Bg032遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号50で表す。
【0182】
Bg033について、特異的プライマーoGBLC001及びoGBLC004(本明細書においてそれぞれ配列番号59及び配列番号60で表す)を、以下の条件下で2つの独立したPCR反応に使用した:95℃で10分間、続いて95℃で30秒間、55℃で1分間、及び72℃で1分間を40サイクル、続いて72℃で7分間。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、精製し(QIAquick Gel Extraction Kit、カタログ番号28706、Qiagen)、pCR4−TOPOベクター(カタログ番号K4575−40、Invitrogen)にクローニングし、配列決定した。両PCR産物の配列決定によって生じたコンセンサス配列を、本明細書において配列番号57で表し、Bg033遺伝子の部分配列と呼ぶ。対応する部分アミノ酸配列を本明細書において配列番号58で表す。
【0183】
〔実施例3:チャバネゴキブリBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032、及びBg033遺伝子のdsRNA産生〕
市販のキットT7 RiboMAX(商標)Express RNAi System(カタログ番号P1700、Promega)を使用して、ミリグラム量のdsRNAを合成した。最初に2つの異なる一本鎖5’T7 RNAポリメラーゼプロモーターテンプレートを2つの異なるPCR反応で作製した。各反応物はT7プロモーターに対して異なる方向で標的配列を含む。
【0184】
Bg001について、特異的T7 FWプライマーoGBLD001及び特異的RVプライマーoGBLD010(本明細書においてそれぞれ5及び配列番号6で表す)を以下の条件のPCR反応に使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLD009及び特異的T7 RVプライマーoGBLD002(本明細書においてそれぞれ配列番号7及び配列番号8で表す)を上記と同条件のPCR反応で使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号9で表す。
【0185】
Bg003について、特異的T7 FWプライマーoGBLD003及び特異的RVプライマーoGBLD012(本明細書においてそれぞれ配列番号15及び配列番号16と表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLD011及び特異的T7 RVプライマーoGBLD004(本明細書においてそれぞれ17及び配列番号18で表す)を上記と同条件のPCR反応で使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号19で表す。
【0186】
Bg004について、特異的T7 FWプライマーoGBLD005及び特異的RVプライマーoGBLD014(本明細書においてそれぞれ配列番号25及び配列番号26で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLD013及び特異的T7 RVプライマーoGBLD006(本明細書においてそれぞれ配列番号27及び配列番号28で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用してアンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号29で表す。
【0187】
Bg005について、特異的T7 FWプライマーoGBLD007及び特異的RVプライマーoGBLD016(本明細書においてそれぞれ配列番号35及び配列番号36で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLD015及び特異的T7 RVプライマーoGBLD008(本明細書においてそれぞれ配列番号37及び配列番号38で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用してアンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号39で表す。
【0188】
Bg031について、特異的T7 FWプライマーoGBLA007及び特異的RVプライマーoGBLA002(本明細書においてそれぞれ配列番号45及び配列番号44で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLA001及び特異的T7 RVプライマーoGBLA008(本明細書においてそれぞれ配列番号43及び配列番号46で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号47で表す。
【0189】
Bg032について、特異的T7 FWプライマーoGBLB007及び特異的RVプライマーoGBLB004(本明細書においてそれぞれ配列番号53及び配列番号52で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLB003及び特異的T7 RVプライマーoGBLB008(本明細書においてそれぞれ配列番号51及び配列番号54で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号55で表す。
【0190】
Bg033について、特異的T7 FWプライマーoGBLC007及び特異的RVプライマーoGBLC004(本明細書においてそれぞれ61及び配列番号60で表す)を以下の条件のPCR反応で使用して、センスT7テンプレートを作製した:95℃で4分間、続いて95℃で30秒間、51℃で30秒間、及び72℃で1分間を35サイクル、続いて72℃で10分間。特異的FWプライマーoGBLC001及び特異的T7 RVプライマーoGBLC008(本明細書においてそれぞれ配列番号59及び配列番号62で表す)を上記と同条件のPCR反応に使用して、アンチセンスT7テンプレートを作製した。結果として得られたPCR産物をアガロースゲルで分析し、NaClO4沈殿により精製した。作製したT7 FW及びRVテンプレートを混合して転写させ、結果として得られたRNA鎖をアニーリングし、Dnアーゼ及びRnアーゼ処理し、製造業者の説明書通りに酢酸ナトリウムにより精製した。結果として得られたdsRNAのセンス鎖を、本明細書において配列番号63で表す。
【0191】
〔実施例4:チャバネゴキブリBlattella germanicaに対する活性についてdsRNA標的をスクリーニングする実験室内試験〕
蒸留水に溶かした1〜10μg/μl dsRNA原液を調製した。各dsRNA溶液を適切な濃度に希釈し、それを細かく磨り潰した実験室動物用餌(ラット及びマウス標準食、B&K Universal Ltd、ハル、英国)(全ての酵素を不活性化するために予め熱処理したもの)と混合した。この混合物又は製剤を等重量(0.3g)の小さなペレットに成形し、終濃度0.1%から2%w/w dsRNAにして、室温で一晩乾燥させた。
【0192】
新たに孵化したチャバネゴキブリB.germanicaの若虫をプラスチック蓋のついた容器(29±2℃、相対湿度最低40%、12:12明暗光周期)に10匹ずつ入れた。動物を24時間絶食させてからペレットを提示した。成虫になるまで週に2回、ゴキブリの生存、瀕死、又は死滅を評定した。週に1回、ペレットを新たに調製したペレットと交換した。dsRNA含有ペレットである製剤を陰性対照(溶媒)及び陽性対照(1又は2%イミダクロプリド(市販のゴキブリ用ベイト剤に通常使用されている))と比較した。図1に示すように、Bg001、Bg003、及びBg005で処置したときは初回投与の24日以内に、Bg004で処置したときは29日以内に、それぞれゴキブリの少なくとも80%は死滅した。
【0193】
〔実施例5:効率に関する種々の断片の実験
ヒトと実質的な相同性を有さないチャバネゴキブリBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032、及びBg033遺伝子の断片の同定〕
本明細書においてそれぞれ配列番号1、配列番号11、配列番号21、配列番号31、配列番号41、配列番号49、及び配列番号57に表すBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032、及びBg033遺伝子の部分配列を分析し、非標的生物と実質的な相同性を有さない断片を見出した。特に、dsRNAは生物中でsiRNA分子に細切されるものであることから、非標的種と相同性を有するであろうsiRNA配列を求めて配列をスキャンした。当該siRNAは非標的生物に有害作用を起こすおそれがあるため、最終産物に組み入れるdsRNA断片に入れるのは避けることが好ましい。選択された断片は、例えばベイト剤に存在してゴキブリの摂食によりベイト剤から取り込まれる場合、RNA干渉によるゴキブリ防除に適する。この分析について、非標的生物はヒト(Homo sapiens)であった。非標的生物に存在しない21個の隣接するヌクレオチド(best1_human_21_0)、又は3つのミスマッチを許した24個の隣接するヌクレオチド(best1/2/3_human_24_3)の断片を同定した。これを本明細書において「フリーフラッグ(freefrag)」と名付ける。第1の選択基準で非標的生物の配列を有さないBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032及びBg033の最長配列を配列番号で示し、本明細書において「フリーフラッグ」と名付ける。これらのBg001、Bg003、Bg004、Bg005、Bg031、Bg032、及びBg033のフリーフラッグは、本明細書においてそれぞれ配列番号10、配列番号20、配列番号30、配列番号40、配列番号48、配列番号56、及び配列番号64で表す。本発明での使用に適した他のフリーフラッグ配列の数例の長さ及び配列を表2に示す。正確な配列は、この表から容易に推定することができる。表に記載した全てのフリーフラッグ配列は、本発明の配列群に属する。
【0194】
当業者は、様々な長さのより多くの当該フリーフラッグが、本明細書に提示したチャバネゴキブリ配列、並びに本発明による他の害虫配列中の対応する遺伝子及びタンパク質のオーソログである配列で同定されることがあり、したがって、本発明がこれらのさらに同定することのできるフリーフラッグに及ぶことを認識しているであろう。
【0195】
〔実施例6:最適の断片の選択;効率についてのコンカテマーの試験〕
各標的遺伝子についてコンカテマーを設計した。コンカテマーは50から100bpのds断片の合成タンデム反復である。本実施例では、タンパク質ファミリー中で相同性を有する領域から、そしてヌクレオチドレベルで最良の予測されるsiRNAを含む領域及び40から60%のGC含量、可能であれば好ましくは約50%のGC含量を有する領域から最良の可能性のある断片を選択することによってコンカテマーを設計した。
【0196】
Bg001について、50bp断片、すなわち配列番号65及び66に表す断片の5回繰り返しからなる2つのコンカテマーを設計し、本明細書においてそれぞれ配列番号67及び配列番号68で表すBg001コンカテマー1及びBg001コンカテマー2を得た。さらに、100bpの繰り返し、すなわち配列番号69に表す繰り返しの3回繰り返しからなる1つのコンカテマーを設計し、本明細書において配列番号70で表すBg001コンカテマー3を得た。ベクターにクローニングするためにXbaI及びSmaI隣接部位を付加し、dsRNAを産生させた。コンカテマーを含むこれらのdsRNA構築物をゴキブリの実験室内試験で試験した。
【0197】
図2に示すさらなる実験で、Bg001及びBg001コンカテマー2で処置したときの死滅率は陰性対照(溶媒)に比べて有意に高かった。
【0198】
死滅率以外に、処置は発育に有意な効果を示した。例えば表3に示すように、48日目にはBg001で処置されて生存しているゴキブリのうち33.3%だけが脱皮して成虫期段階になったが、Bg001コンカテマー2で処置されたゴキブリはこの期間に1匹もそうならなかった。
【0199】
〔実施例7:種々の製剤の試験〕
RNA干渉(RNAi)は、多数の異なる種において配列特異的に標的遺伝子の発現を阻害する、潜在的に非常に強力な手段である。しかし、RNAiが貴重で効果的であるためには、所与の任意の標的遺伝子を、非特異的ノックダウン及び有毒な副作用なしに特異的にサイレンシングすることが不可欠である。dsRNAの適用は、細胞内でのこれらの化合物の作用部位にこれらの化合物を効果的に送達できないことによって妨害されてきた。特異性を失わずに相互作用の強度及び安定性を高めるためのdsRNAの化学修飾の進歩が継続中である。この実験では、チャバネゴキブリの標的遺伝子にdsRNAを送達するためのいくつかの概念について評価する。
【0200】
エンドサイトーシを容易にすることによりdsRNAの細胞内取込みを増大させること、又は脂質及びリポソームなどの送達剤を使用して生物学的環境におけるdsRNAの安定性を増大させることによって、RNAiに誘導される効果を向上することができる。siRNA−はアニオン性ホスホジエステル主鎖を有し、この理由からカチオン性リポソーム/脂質介在性siRNA送達(siFection)が検討される。これらのカチオン性リポソーム/脂質に基づく系は、リポフェクタミン及び1,2−ジオレオイル−3−トリメチル−アンモニウムプロパン(DOTAP)−コレステロールを含めたいくつかの市販製品から選択され、ゴキブリの実験室内試験でdsRNA製剤を試験する。検討するパラメーターには混合の脂質:dsRNA比、カチオン性リポソーム/脂質−dsRNA複合体の形成度、粒子径、送達様式、及び用量反応効果がある。
【0201】
〔実施例8:dsRNAの安定性試験〕
遺伝子サイレンシングのためのdsRNA適用は、分子の生物学的安定性、特異性、及び送達の改善に依存するものである。
【0202】
一部の標的種の腸内のpHを模倣するために、作製したdsRNAの安定性をpH7及びpH9のTRIZMA緩衝液及びpH11のCAPS緩衝液で試験した。dsRNAを数日間インキュベートし、その一定分量を異なる時間間隔で20%ポリアクリルアミドゲル上において分析した。ゲルの結果に基づき、dsRNAの安定性に及ぼすpHの影響は観察できなかった。
【0203】
作製したdsRNAの安定性を、無RNアーゼ水及びLB培地中で室温で8ヶ月間にわたり時間の関数として試験した。一定分量を毎週及び/又は毎月採取し、−20℃で保存してから20%ポリアクリルアミドゲル上において分析した。図3に示すようにポリアクリルアミドゲルでdsRNAの有意な分解を観察することはできなかった。
【0204】
〔実施例9:チャバネゴキブリBlattella germanicaの初期若虫期での死滅率に及ぼす単回投与dsRNAを試験するための実験室内試験〕
蒸留水に溶かした10μg/μl dsRNA原液を調製し、それを細かく磨り潰した実験室動物用餌(ラット及びマウス標準食、B&K Universal Ltd、ハル、英国)(全ての酵素を不活性化するために予め熱処理したもの)と混合した。この混合物又は製剤を等重量(0.3g)の小さなペレットに成形し、終濃度1%w/w dsRNAにして、室温で一晩乾燥させた。
【0205】
新たに孵化したチャバネゴキブリB.germanicaの若虫をプラスチック蓋のついた容器(29±2℃、相対湿度最低40%、12:12明暗光周期)に10匹ずつ入れた。動物を24時間絶食させてからペレットを提示した。1週間後にこの初回用量を未処置のペレットと交換した。成虫になるまで週に2回、ゴキブリの生存、瀕死、又は死滅を評定した。図4に示すように、Bg001 dsRNA含有ペレットは、2つの陰性対照(溶媒及び種々雑多なdsRNA)に比べて有意に高い死滅率を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記オーソロガスなヌクレオチド配列が、配列番号1、11、21、及び31のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を有する核酸分子。
【請求項2】
少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物であって、前記二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、(i)請求項1に記載の核酸分子、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子のいずれか1つのヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含むRNA構築物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの二本鎖RNA領域が少なくとも17bpの長さを有する、請求項2に記載のRNA構築物。
【請求項4】
前記ヌクレオチド配列の相補性が、(i)請求項1又は請求項2に記載の核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子と少なくとも70%のヌクレオチド配列同一性を有し、前記配列同一性の率が同一の長さにわたり計算される、請求項2又は3に記載のRNA構築物。
【請求項5】
(i)請求項1又は請求項2に記載の核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子と相補的なヌクレオチド配列を含む前記少なくとも1方の鎖が、24個の隣接するヌクレオチドにわたり哺乳動物種由来の対応するヌクレオチド配列と12.5%未満の配列同一性を有する、請求項2〜4のいずれかに記載のRNA構築物。
【請求項6】
配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか、例えば配列番号65から70のいずれかから独立して選択される少なくとも2つのヌクレオチド配列を含む、請求項2〜5のいずれかに記載のRNA構築物。
【請求項7】
(i)請求項1に記載のヌクレオチド配列を含むか、又は(ii)請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物をコードしている領域を含むDNA構築物。
【請求項8】
請求項7に記載のDNA構築物を含む発現構築物。
【請求項9】
請求項7に記載のヌクレオチドの発現を駆動することができる1つ又は複数の制御配列と、場合によっては転写終結配列とをさらに含む、請求項8に記載の発現構築物。
【請求項10】
請求項2〜6のいずれかに記載のRNA構築物、請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物を含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞を適切な担体と一緒に含む害虫防除組成物。
【請求項12】
前記担体が、静電荷電した粉末若しくは粒子及び/又は磁気粒子、好ましくは最初帯磁していないが、前記昆虫又はクモの体が与える電界にさらされると磁気的に分極することができる金属粒子を含み、前記粉末又は粒子が、前記昆虫又はクモのクチクラに接着し、昆虫又はクモにより摂食されることができる、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の組成物を含む、昆虫及び/又はクモのためのハウジング又はトラップ。
【請求項14】
RNA干渉により昆虫及び/又はクモを防除するための、請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップの使用。
【請求項15】
昆虫及び/又はクモを防除する方法であって、昆虫及び/又はクモに、請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを適用するステップを含み、前記二本鎖RNAが、RNA干渉によって少なくとも1つの昆虫及び/又はクモ遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる方法。
【請求項16】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが前記昆虫及び/又はクモに適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記昆虫及び/又はクモが抵抗性を獲得する確率を減らすために、請求項2〜6のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが連続的に適用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記昆虫及び/又はクモが、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモ、好ましくはハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ(trd poultry mite)、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミを含む、請求項14に記載の使用又は請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記昆虫及び/又はクモが、非限定的にチャバネゴキブリ種(Blatella spp.)(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(Periplaneta spp.)(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(Blatta spp.)(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(Supella spp.)(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目)(Blattodea);非限定的にトフシアリ種(Solenopsis spp.)(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(Monomorium spp.)(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(Camponotus spp)(例えばオオアリ種(カーペンターアント(Carpenter Ant)))、ケアリ種(lasius spp.)(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(Tetramorium spp.)(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(Myrmica spp.)(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(Formica spp)(ウッドアント(wood ant))、シリアゲアリ種(Crematogaster spp.)(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(Crematogaster lineolata)(アクロバットアント(Acrobat Ant)))、イリドミルメクス種(Iridomyrmex spp.)(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(Pheidole spp.)(オオズアリ)、及びダシムチラ種(Dasymutilla spp.)(例えばDasymutilla occidentalis)(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科)(Formicoidea);非限定的にアミテルメス種(Amitermes spp.)(例えばアミテルメス−フロリデンシス(Amitermes floridensis)(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト(Florida dark−winged subterranean termite)))、レティキュリテルメス種(Reticulitermes spp.)(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(Reticulitermes flavipes)(イースタンサブテラネアンテルマイト(eastern subterranean termite))、レティキュリテルメス−ヘスペルス(Reticulitermes hesperus)(ウエスタンサブテラネアンテルマイト(Western Subterranean Termite)))、イエシロアリ種(Coptotermes spp.)(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(Incisitermes spp.)(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、ネオテルメス種(Neotermes spp.)(例えばネオテルメス−コネキサス(Neotermes connexus)(フォレストツリーテルマイト(Forest Tree Termite)))などのシロアリ(シロアリ目(Isoptera)及び/又はシロアリ科(Termitidae))を含み、最も好ましくはチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含む、請求項18に記載の使用又は方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法に使用するためのキットであって、請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを使用説明書と一緒に備え、前記二本鎖RNAが、RNA干渉により少なくとも1つの害虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができるキット。
【請求項21】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを備え、各二本鎖RNAが、RNA干渉により少なくとも1つの害虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記害虫が抵抗性を獲得する確率を減らすために、請求項2〜6のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが連続的に使用される、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
ゴキブリ害虫を防除する方法であって、少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物をゴキブリに与えるステップを含み、前記二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、ゴキブリリボソームタンパク質をコードしているヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17、18、19、20、21個、又はそれを超えるヌクレオチドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの追加のdsRNA領域を含み、前記dsRNA領域の少なくとも1方の鎖が、昆虫及び/又はクモ種由来のさらなる遺伝子のヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物。
【請求項26】
少なくとも1つの追加の機能的配列と、場合によってはリンカーとをさらに含む、請求項2〜6又は25のいずれか一項に記載のRNA構築物。
【請求項27】
前記追加の機能的配列が、(i)前記RNA構築物の大規模産生を容易にする配列と、(ii)dsRNAの安定性を増加又は減少させる配列と、(iii)タンパク質又は他の分子を結合させて、昆虫及び/若しくはクモによる前記RNA構築物の取り込みを容易にする配列と、(iv)昆虫の腸内で受容体又は分子に結合し、前記昆虫及び/又はクモによる取り込み、エンドサイトーシス、及び/又はトランスサイトーシスを容易にするアプタマーである配列とを含む群から選択される、請求項26に記載のRNA構築物。
【請求項28】
前記リンカーが、条件的に自己開裂するRNA配列であり、好ましくはpH感受性リンカー又は疎水性感受性リンカーである、請求項26又は27に記載のRNA構築物。
【請求項29】
前記リンカーがイントロンである、請求項26又は27に記載のRNA構築物。
【請求項30】
前記ヌクレオチド配列の相補性が、(i)請求項1又は請求項2に記載の核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子と少なくとも70%のヌクレオチド配列同一性を有し、前記配列同一性の率が同一の長さにわたり計算される、請求項23〜27のいずれか一項に記載のRNA構築物。
【請求項31】
(i)請求項1又は請求項2に記載の核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子及び/又はクモと相補的なヌクレオチド配列を含む少なくとも1方の鎖が、哺乳動物種由来の対応するヌクレオチド配列と24個の隣接するヌクレオチドにわたり12.5%未満の配列同一性を有する、請求項25〜30のいずれか一項に記載のRNA構築物。
【請求項32】
少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17、18、19、20、21個、又はそれを超えるヌクレオチドを含む、請求項3〜6又は25〜28のいずれかに記載のRNA構築物。
【請求項33】
前記哺乳動物種がヒトである、請求項31又は32に記載のRNA構築物。
【請求項34】
少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物であって、前記二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17、18、19、20、21個、又はそれを超えるヌクレオチドを含むRNA構築物。
【請求項35】
請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物をコードしている領域を含むDNA構築物。
【請求項36】
請求項35に記載のDNA構築物を含む発現構築物。
【請求項37】
請求項25〜34のいずれかに記載のRNA構築物、請求項35に記載のDNA構築物、又は請求項36に記載の発現構築物を含む宿主細胞。
【請求項38】
細菌細胞である、請求項10又は37に記載の宿主細胞。
【請求項39】
不活性化細菌細胞である、請求項38に記載の宿主細胞。
【請求項40】
請求項2〜6又は25〜34のいずれかに記載のRNA構築物を作製する方法であって、請求項7又は35に記載のDNA構築物を転写させて前記RNA構築物を産生させる条件下で、a.前記DNA構築物又は請求項8、9、若しくは36のいずれかに記載の発現構築物を無細胞成分と接触させるステップ、又はb.前記DNA構築物又は請求項8、9、若しくは36のいずれかに記載の発現構築物を細胞に適用するステップを含む方法。
【請求項41】
前記細胞が細菌細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞を適切な担体と一緒に含む害虫防除組成物。
【請求項43】
昆虫及び/又はクモよる摂食に適した形態である、請求項10、11、又は43のいずれかに記載の組成物。
【請求項44】
ペレット若しくは粉末などの固体形態、液体形態、又はゲル形態である、請求項42又は43に記載の組成物。
【請求項45】
ベイト剤の形態である、請求項42〜44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記ベイト剤が、タンパク質性食物などの少なくとも1つの食品、又はホウ酸及び/若しくは誘引剤、例えばフェロモンをさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
昆虫及び/又はクモが前記組成物を摂食するために進入することができるハウジング又はトラップに用意されている、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
スプレー、好ましくは加圧/エーロゾル化スプレー又はポンプスプレーの形態である、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
昆虫及び/又はクモが接触すると、前記昆虫及び/又はクモに接着する、適切な表面上のコーティングの形態である、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記担体が、静電荷電した粉末若しくは粒子及び/又は磁気粒子、好ましくは最初帯磁していないが、前記昆虫及び/又はクモの体がもたらす電界にさらされると磁気的に分極することができ、前記昆虫及び/又はクモのクチクラに接着する金属粒子を含む、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記担体が、前記害虫への前記二本鎖RNAの取り込みを増大させる、請求項42〜50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記担体が、好ましくは水中油型エマルジョン、コレステロール、ミセル、リポポリアミン、及びリポソームのうち1つ又は複数を含む脂質系担体である、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記担体が、ヌクレオチド凝縮剤、好ましくはスペルミジン又は硫酸プロタミンを含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
さらなる害虫防除剤と組み合わせた、請求項11、12、又は42〜53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
請求項42〜46又は54のいずれか一項に記載の組成物を含む、昆虫及び/又はクモ用のハウジング又はトラップ。
【請求項56】
RNA干渉により昆虫及び/又はクモを防除するための、請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項55に記載のハウジング若しくはトラップの使用。
【請求項57】
前記昆虫及び/又はクモが、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモ、好ましくはハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミを含む、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
前記昆虫及び/又はクモが、非限定的にチャバネゴキブリ種(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目);非限定的にトフシアリ種(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(例えばオオアリ種(カーペンターアント))、ケアリ種(例えばIasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(ウッドアント)、シリアゲアリ種(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント))、イリドミルメクス種(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びダシムチラ種(例えばDasymutilla occidentalis(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科);非限定的にアミテルメス種(例えばアミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、レティキュリテルメス種(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(イースタンサブテラネアンテルマイト)、レティキュリテルメス−ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、イエシロアリ種(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、及びネオテルメス種(例えばネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))などのシロアリ(シロアリ目及び/又はシロアリ科)を含み、最も好ましくはチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記昆虫及び/又はクモが、成長が遅延するか、麻痺するか、生殖不能になるか、又は死滅する、請求項14、18、又は56〜58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項60】
昆虫及び/又はクモを防除する方法であって、昆虫及び/又はクモに、請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを適用することを含み、前記二本鎖RNAがRNA干渉により少なくとも1つの昆虫及び/又はクモ遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる方法。
【請求項61】
請求項25〜34のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが適用される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記害虫が抵抗性を獲得する確率を減らすために、請求項25〜34のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが連続的に適用される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記昆虫及び/又はクモが、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモ、好ましくはハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミを含む、請求項60〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記昆虫及び/又はクモが、非限定的にチャバネゴキブリ種(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目);非限定的にトフシアリ種(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(例えばオオアリ種(カーペンターアント))、ケアリ種(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(ウッドアント)、シリアゲアリ種(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント))、イリドミルメクス種(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びダシムチラ種(例えばDasymutilla occidentalis(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科);非限定的にアミテルメス種(例えばアミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、レティキュリテルメス種(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(イースタンサブテラネアンテルマイト)、レティキュリテルメス−ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、イエシロアリ種(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、及びネオテルメス種(例えばネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))などのシロアリ(シロアリ目及び/又はシロアリ科)を含む、請求項60〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記昆虫及び/又はクモが、成長が遅延するか、麻痺するか、生殖不能になるか、又は死滅する、請求項15〜16又は60〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
請求項60〜65のいずれか一項に記載の方法に使用するためのキットであって、請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを使用説明書と一緒に備え、前記二本鎖RNAが、RNA干渉により少なくとも1つの害虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができるキット。
【請求項67】
請求項25〜34のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物を備え、各二本鎖RNAがRNA干渉により少なくとも1つの害虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる、請求項64に記載のキット。
【請求項68】
前記害虫が抵抗性を獲得する確率を減らすために、請求項25〜34のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物が連続的に使用される、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
ゴキブリ害虫を防除する方法であって、ゴキブリに少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物を適用するステップを含み、前記二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、トロポミオシン、HMGコエンザイムAシンターゼ遺伝子、又はアクチン5C遺伝子をコードしているヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つの二本鎖領域の少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17、18、19、20、21個、又はそれを超えるヌクレオチドを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ゴキブリ害虫が、チャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ属、及びスペラ属を含む属の群に属する種から選択される、請求項23、24、69、又は70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
前記ゴキブリ害虫が、チャバネゴキブリ(Blatella germanica)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)、及びチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含む群から選択される、請求項23、24、又は69〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含むタンパク質、又はさらなる昆虫及び/若しくはクモ種由来の保存されたアミノ酸配列を有するオーソロガスなタンパク質。
【請求項74】
オーソログが、配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項73に記載のタンパク質。
【請求項75】
請求項2〜6又は25〜34のいずれかのRNA構築物を作製する方法であって、前記RNA構築物の発現を可能にする条件下で、請求項10又は37〜39のいずれかに記載の宿主細胞を培養するステップを含む方法。
【請求項76】
前記RNA構築物の精製をさらに含む、請求項75に記載の方法。
【請求項1】
配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180及び181のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫若しくはクモ種由来のオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、前記オーソロガスなヌクレオチド配列が、配列番号1、11、21、及び31のいずれか1つのヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を有する核酸分子。
【請求項2】
少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物であって、前記二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、(i)請求項1に記載の核酸分子、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子のいずれか1つのヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含むRNA構築物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの二本鎖RNA領域が少なくとも17bpの長さを有する、請求項2に記載のRNA構築物。
【請求項4】
前記ヌクレオチド配列の相補性が、(i)請求項1又は請求項2に記載の核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子と少なくとも70%のヌクレオチド配列同一性を有し、前記配列同一性の率が同一の長さにわたり計算される、請求項2又は3に記載のRNA構築物。
【請求項5】
(i)請求項1又は請求項2に記載の核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子と相補的なヌクレオチド配列を含む前記少なくとも1方の鎖が、24個の隣接するヌクレオチドにわたり哺乳動物種由来の対応するヌクレオチド配列と12.5%未満の配列同一性を有する、請求項2〜4のいずれかに記載のRNA構築物。
【請求項6】
配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか、例えば配列番号65から70のいずれかから独立して選択される少なくとも2つのヌクレオチド配列を含む、請求項2〜5のいずれかに記載のRNA構築物。
【請求項7】
(i)請求項1に記載のヌクレオチド配列を含むか、又は(ii)請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物をコードしている領域を含むDNA構築物。
【請求項8】
請求項7に記載のDNA構築物を含む発現構築物。
【請求項9】
請求項7に記載のヌクレオチドの発現を駆動することができる1つ又は複数の制御配列と、場合によっては転写終結配列とをさらに含む、請求項8に記載の発現構築物。
【請求項10】
請求項2〜6のいずれかに記載のRNA構築物、請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物を含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞を適切な担体と一緒に含む害虫防除組成物。
【請求項12】
前記担体が、静電荷電した粉末若しくは粒子及び/又は磁気粒子、好ましくは最初帯磁していないが、前記昆虫又はクモの体が与える電界にさらされると磁気的に分極することができる金属粒子を含み、前記粉末又は粒子が、前記昆虫又はクモのクチクラに接着し、昆虫又はクモにより摂食されることができる、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の組成物を含む、昆虫及び/又はクモのためのハウジング又はトラップ。
【請求項14】
RNA干渉により昆虫及び/又はクモを防除するための、請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップの使用。
【請求項15】
昆虫及び/又はクモを防除する方法であって、昆虫及び/又はクモに、請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを適用するステップを含み、前記二本鎖RNAが、RNA干渉によって少なくとも1つの昆虫及び/又はクモ遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる方法。
【請求項16】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが前記昆虫及び/又はクモに適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記昆虫及び/又はクモが抵抗性を獲得する確率を減らすために、請求項2〜6のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが連続的に適用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記昆虫及び/又はクモが、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモ、好ましくはハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ(trd poultry mite)、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミを含む、請求項14に記載の使用又は請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記昆虫及び/又はクモが、非限定的にチャバネゴキブリ種(Blatella spp.)(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(Periplaneta spp.)(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(Blatta spp.)(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(Supella spp.)(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目)(Blattodea);非限定的にトフシアリ種(Solenopsis spp.)(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(Monomorium spp.)(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(Camponotus spp)(例えばオオアリ種(カーペンターアント(Carpenter Ant)))、ケアリ種(lasius spp.)(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(Tetramorium spp.)(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(Myrmica spp.)(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(Formica spp)(ウッドアント(wood ant))、シリアゲアリ種(Crematogaster spp.)(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(Crematogaster lineolata)(アクロバットアント(Acrobat Ant)))、イリドミルメクス種(Iridomyrmex spp.)(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(Pheidole spp.)(オオズアリ)、及びダシムチラ種(Dasymutilla spp.)(例えばDasymutilla occidentalis)(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科)(Formicoidea);非限定的にアミテルメス種(Amitermes spp.)(例えばアミテルメス−フロリデンシス(Amitermes floridensis)(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト(Florida dark−winged subterranean termite)))、レティキュリテルメス種(Reticulitermes spp.)(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(Reticulitermes flavipes)(イースタンサブテラネアンテルマイト(eastern subterranean termite))、レティキュリテルメス−ヘスペルス(Reticulitermes hesperus)(ウエスタンサブテラネアンテルマイト(Western Subterranean Termite)))、イエシロアリ種(Coptotermes spp.)(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(Incisitermes spp.)(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、ネオテルメス種(Neotermes spp.)(例えばネオテルメス−コネキサス(Neotermes connexus)(フォレストツリーテルマイト(Forest Tree Termite)))などのシロアリ(シロアリ目(Isoptera)及び/又はシロアリ科(Termitidae))を含み、最も好ましくはチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含む、請求項18に記載の使用又は方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法に使用するためのキットであって、請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを使用説明書と一緒に備え、前記二本鎖RNAが、RNA干渉により少なくとも1つの害虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができるキット。
【請求項21】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを備え、各二本鎖RNAが、RNA干渉により少なくとも1つの害虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記害虫が抵抗性を獲得する確率を減らすために、請求項2〜6のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項7又は8に記載のDNA構築物、及び/又は請求項9に記載の発現構築物、及び/又は請求項10に記載の宿主細胞、及び/又は請求項11又は12に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが連続的に使用される、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
ゴキブリ害虫を防除する方法であって、少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物をゴキブリに与えるステップを含み、前記二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、ゴキブリリボソームタンパク質をコードしているヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17、18、19、20、21個、又はそれを超えるヌクレオチドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの追加のdsRNA領域を含み、前記dsRNA領域の少なくとも1方の鎖が、昆虫及び/又はクモ種由来のさらなる遺伝子のヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む、請求項2〜6のいずれか一項に記載のRNA構築物。
【請求項26】
少なくとも1つの追加の機能的配列と、場合によってはリンカーとをさらに含む、請求項2〜6又は25のいずれか一項に記載のRNA構築物。
【請求項27】
前記追加の機能的配列が、(i)前記RNA構築物の大規模産生を容易にする配列と、(ii)dsRNAの安定性を増加又は減少させる配列と、(iii)タンパク質又は他の分子を結合させて、昆虫及び/若しくはクモによる前記RNA構築物の取り込みを容易にする配列と、(iv)昆虫の腸内で受容体又は分子に結合し、前記昆虫及び/又はクモによる取り込み、エンドサイトーシス、及び/又はトランスサイトーシスを容易にするアプタマーである配列とを含む群から選択される、請求項26に記載のRNA構築物。
【請求項28】
前記リンカーが、条件的に自己開裂するRNA配列であり、好ましくはpH感受性リンカー又は疎水性感受性リンカーである、請求項26又は27に記載のRNA構築物。
【請求項29】
前記リンカーがイントロンである、請求項26又は27に記載のRNA構築物。
【請求項30】
前記ヌクレオチド配列の相補性が、(i)請求項1又は請求項2に記載の核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫及び/若しくはクモ種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子と少なくとも70%のヌクレオチド配列同一性を有し、前記配列同一性の率が同一の長さにわたり計算される、請求項23〜27のいずれか一項に記載のRNA構築物。
【請求項31】
(i)請求項1又は請求項2に記載の核酸分子のヌクレオチド配列の部分と、或いは(ii)配列番号41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれか1つに示すヌクレオチド配列又は昆虫種由来のそのオーソロガスなヌクレオチド配列を含む核酸分子及び/又はクモと相補的なヌクレオチド配列を含む少なくとも1方の鎖が、哺乳動物種由来の対応するヌクレオチド配列と24個の隣接するヌクレオチドにわたり12.5%未満の配列同一性を有する、請求項25〜30のいずれか一項に記載のRNA構築物。
【請求項32】
少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17、18、19、20、21個、又はそれを超えるヌクレオチドを含む、請求項3〜6又は25〜28のいずれかに記載のRNA構築物。
【請求項33】
前記哺乳動物種がヒトである、請求項31又は32に記載のRNA構築物。
【請求項34】
少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物であって、前記二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17、18、19、20、21個、又はそれを超えるヌクレオチドを含むRNA構築物。
【請求項35】
請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物をコードしている領域を含むDNA構築物。
【請求項36】
請求項35に記載のDNA構築物を含む発現構築物。
【請求項37】
請求項25〜34のいずれかに記載のRNA構築物、請求項35に記載のDNA構築物、又は請求項36に記載の発現構築物を含む宿主細胞。
【請求項38】
細菌細胞である、請求項10又は37に記載の宿主細胞。
【請求項39】
不活性化細菌細胞である、請求項38に記載の宿主細胞。
【請求項40】
請求項2〜6又は25〜34のいずれかに記載のRNA構築物を作製する方法であって、請求項7又は35に記載のDNA構築物を転写させて前記RNA構築物を産生させる条件下で、a.前記DNA構築物又は請求項8、9、若しくは36のいずれかに記載の発現構築物を無細胞成分と接触させるステップ、又はb.前記DNA構築物又は請求項8、9、若しくは36のいずれかに記載の発現構築物を細胞に適用するステップを含む方法。
【請求項41】
前記細胞が細菌細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞を適切な担体と一緒に含む害虫防除組成物。
【請求項43】
昆虫及び/又はクモよる摂食に適した形態である、請求項10、11、又は43のいずれかに記載の組成物。
【請求項44】
ペレット若しくは粉末などの固体形態、液体形態、又はゲル形態である、請求項42又は43に記載の組成物。
【請求項45】
ベイト剤の形態である、請求項42〜44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
前記ベイト剤が、タンパク質性食物などの少なくとも1つの食品、又はホウ酸及び/若しくは誘引剤、例えばフェロモンをさらに含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
昆虫及び/又はクモが前記組成物を摂食するために進入することができるハウジング又はトラップに用意されている、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
スプレー、好ましくは加圧/エーロゾル化スプレー又はポンプスプレーの形態である、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
昆虫及び/又はクモが接触すると、前記昆虫及び/又はクモに接着する、適切な表面上のコーティングの形態である、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
前記担体が、静電荷電した粉末若しくは粒子及び/又は磁気粒子、好ましくは最初帯磁していないが、前記昆虫及び/又はクモの体がもたらす電界にさらされると磁気的に分極することができ、前記昆虫及び/又はクモのクチクラに接着する金属粒子を含む、請求項42〜46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記担体が、前記害虫への前記二本鎖RNAの取り込みを増大させる、請求項42〜50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記担体が、好ましくは水中油型エマルジョン、コレステロール、ミセル、リポポリアミン、及びリポソームのうち1つ又は複数を含む脂質系担体である、請求項51に記載の組成物。
【請求項53】
前記担体が、ヌクレオチド凝縮剤、好ましくはスペルミジン又は硫酸プロタミンを含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
さらなる害虫防除剤と組み合わせた、請求項11、12、又は42〜53のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項55】
請求項42〜46又は54のいずれか一項に記載の組成物を含む、昆虫及び/又はクモ用のハウジング又はトラップ。
【請求項56】
RNA干渉により昆虫及び/又はクモを防除するための、請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項55に記載のハウジング若しくはトラップの使用。
【請求項57】
前記昆虫及び/又はクモが、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモ、好ましくはハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミを含む、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
前記昆虫及び/又はクモが、非限定的にチャバネゴキブリ種(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目);非限定的にトフシアリ種(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(例えばオオアリ種(カーペンターアント))、ケアリ種(例えばIasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(ウッドアント)、シリアゲアリ種(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント))、イリドミルメクス種(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びダシムチラ種(例えばDasymutilla occidentalis(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科);非限定的にアミテルメス種(例えばアミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、レティキュリテルメス種(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(イースタンサブテラネアンテルマイト)、レティキュリテルメス−ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、イエシロアリ種(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、及びネオテルメス種(例えばネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))などのシロアリ(シロアリ目及び/又はシロアリ科)を含み、最も好ましくはチャバネゴキブリ(Blatella germanica)を含む、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記昆虫及び/又はクモが、成長が遅延するか、麻痺するか、生殖不能になるか、又は死滅する、請求項14、18、又は56〜58のいずれか一項に記載の使用。
【請求項60】
昆虫及び/又はクモを防除する方法であって、昆虫及び/又はクモに、請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを適用することを含み、前記二本鎖RNAがRNA干渉により少なくとも1つの昆虫及び/又はクモ遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる方法。
【請求項61】
請求項25〜34のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが適用される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記害虫が抵抗性を獲得する確率を減らすために、請求項25〜34のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップが連続的に適用される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記昆虫及び/又はクモが、屋内昆虫、外部寄生虫、並びに公衆の保健衛生に関連する昆虫及び/又はクモ、好ましくはハエ、ハダニ、アザミウマ、ダニ、赤色ニワトリダニ、アリ、ゴキブリ、シロアリ、イエコオロギを含むコオロギ、シミ、チャタテムシ、コウチュウ、ハサミムシ、カ、及びノミを含む、請求項60〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記昆虫及び/又はクモが、非限定的にチャバネゴキブリ種(例えばBlatella germanica(チャバネゴキブリ))、ワモンゴキブリ種(例えばPeriplaneta americana(ワモンゴキブリ)及びPeriplaneta australiasiae(コワモンゴキブリ))、トウヨウゴキブリ種(例えばBlatta orientalis(トウヨウゴキブリ))、及びスペラ種(例えばSupella longipalpa(チャオビゴキブリ)などのゴキブリ(ゴキブリ亜目);非限定的にトフシアリ種(例えばSolenopsis invicta(ヒアリ))、ヒメアリ種(例えばMonomorium pharaonis(イエヒメアリ))、オオアリ種(例えばオオアリ種(カーペンターアント))、ケアリ種(例えばlasius niger(トビイロケアリ))、シワアリ種(例えばTetramorium caespitum(トビイロシワアリ))、クシケアリ種(例えばMyrmica rubra(キイロクシケアリ))、ヤマアリ種(ウッドアント)、シリアゲアリ種(例えばクレマトガスタ−リネオラタ(アクロバットアント))、イリドミルメクス種(例えばIridomyrmex humilis(アルゼンチンアリ))、オオズアリ種(オオズアリ)、及びダシムチラ種(例えばDasymutilla occidentalis(アリガタバチ))などのアリ(アリ上科);非限定的にアミテルメス種(例えばアミテルメス−フロリデンシス(フロリダダークウィングドサブテラネアンテルマイト))、レティキュリテルメス種(例えばレティキュリテルメス−フラビペス(イースタンサブテラネアンテルマイト)、レティキュリテルメス−ヘスペルス(ウエスタンサブテラネアンテルマイト))、イエシロアリ種(例えばCoptotermes formosanus(イエシロアリ))、インシシテルメス種(例えばIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ))、及びネオテルメス種(例えばネオテルメス−コネキサス(フォレストツリーテルマイト))などのシロアリ(シロアリ目及び/又はシロアリ科)を含む、請求項60〜63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記昆虫及び/又はクモが、成長が遅延するか、麻痺するか、生殖不能になるか、又は死滅する、請求項15〜16又は60〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
請求項60〜65のいずれか一項に記載の方法に使用するためのキットであって、請求項25〜34のいずれか一項に記載のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物、及び/又は請求項13に記載のハウジング若しくはトラップを使用説明書と一緒に備え、前記二本鎖RNAが、RNA干渉により少なくとも1つの害虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができるキット。
【請求項67】
請求項25〜34のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物を備え、各二本鎖RNAがRNA干渉により少なくとも1つの害虫遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることができる、請求項64に記載のキット。
【請求項68】
前記害虫が抵抗性を獲得する確率を減らすために、請求項25〜34のいずれか一項に記載の複数のRNA構築物、及び/又は請求項35に記載のDNA構築物、及び/又は請求項36に記載の発現構築物、及び/又は請求項37〜39のいずれか一項に記載の宿主細胞、及び/又は請求項42〜54のいずれか一項に記載の組成物が連続的に使用される、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
ゴキブリ害虫を防除する方法であって、ゴキブリに少なくとも1つの二本鎖RNA領域を含むRNA構築物を適用するステップを含み、前記二本鎖RNA領域の少なくとも1方の鎖が、トロポミオシン、HMGコエンザイムAシンターゼ遺伝子、又はアクチン5C遺伝子をコードしているヌクレオチド配列の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つの二本鎖領域の少なくとも1方の鎖が、配列番号1、4、6、7、9、10、65から70、71から79、11、16、17、19、20、80から87、21、26、27、29、30、88から93、31、36、37、39、40、94から108、180、181、41、43、44、47、48、109から147、182から187、49、51、52、55、56、148から150、57、63、64、151から179、及び188から200のいずれかに示すヌクレオチド配列又はその相補体を含む任意の核酸分子の少なくとも17、18、19、20、21個、又はそれを超えるヌクレオチドを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ゴキブリ害虫が、チャバネゴキブリ属、ワモンゴキブリ属、トウヨウゴキブリ属、及びスペラ属を含む属の群に属する種から選択される、請求項23、24、69、又は70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
前記ゴキブリ害虫が、チャバネゴキブリ(Blatella germanica)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、及びコワモンゴキブリ(Periplaneta australiasiae)、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)、及びチャオビゴキブリ(Supella longipalpa)を含む群から選択される、請求項23、24、又は69〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列を含むタンパク質、又はさらなる昆虫及び/若しくはクモ種由来の保存されたアミノ酸配列を有するオーソロガスなタンパク質。
【請求項74】
オーソログが、配列番号2、12、22、又は32のいずれか1つに示すアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項73に記載のタンパク質。
【請求項75】
請求項2〜6又は25〜34のいずれかのRNA構築物を作製する方法であって、前記RNA構築物の発現を可能にする条件下で、請求項10又は37〜39のいずれかに記載の宿主細胞を培養するステップを含む方法。
【請求項76】
前記RNA構築物の精製をさらに含む、請求項75に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【公開番号】特開2013−13408(P2013−13408A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164064(P2012−164064)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【分割の表示】特願2008−514231(P2008−514231)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(500563371)デフヘン・ナムローゼ・フェンノートシャップ (5)
【氏名又は名称原語表記】DEVGEN nv
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【分割の表示】特願2008−514231(P2008−514231)の分割
【原出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(500563371)デフヘン・ナムローゼ・フェンノートシャップ (5)
【氏名又は名称原語表記】DEVGEN nv
【Fターム(参考)】
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