説明

易分割性ポリエステル繊維およびそれを用いてなる混繊糸

【課題】 複合紡糸でなくとも後処理によって容易に分割して極細繊維とすることができる易分割性ポリエステル繊維を提供すること。
【解決手段】 下記式(I)で表されるポリオキシエチレン系ポリエーテルを0.5〜2.0重量%および下記式(II)で表される有機金属スルホン酸塩を0.1〜1.0重量%含有する芳香族系ポリエステル組成物を、繊維横断面が突起部分を3〜6個有する形状となるように紡糸する。
【化1】


【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に極細繊維とすることができる易分割性ポリエステル繊維に関するものである。さらに詳しくは、複数のポリマーを複合紡糸しなくとも、容易に分割できて極細繊維群となすことができ、優れた風合の布帛を容易に提供することができる易分割性ポリエステル繊維およびそれを用いてなる混繊糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、単繊維繊度が細い繊維を得る方法として、異種ポリマーを貼り合せ型や多芯型に複合紡糸し、得られた複合繊維を機械的に剥離分割したり、アルカリ減量等の化学的処理によって他方成分を溶解除去したりする方法はよく知られている(例えば特許文献1および2参照)。例えばポリエチレンテレフタレートと脂肪族系ポリアミドとを個別に溶融した後、紡糸口金から吐出する際にこれらを交互に円周上に配置した状態で貼合せる方法、あるいはポリスチレンを海、ポリエチレンテレフタレートを島として複合紡糸する方法などが提案されている。
【0003】
確かにこれらの方法によれば、単繊維繊度のより細い繊維を、後の化学的処理や機械的処理によって得ることができるものの、二種類以上のポリマーを個別に溶融する必要があり、また紡糸に用いる口金設計が難しいという問題がある。さらには、複数のポリマー原料を準備しなければならず、また使用する設備も二種類以上のポリマーが同時に溶融できるものでなければならないなど制約が大きく、設備投資が大きい、膨大な技術的検討期間と費用を必要、またそのようにして作製された糸そのものも専用の設備によって生産されるために非常に高価な物になってしまう、などの問題がある。
【0004】
このような問題を改善するため、生産性向上により生産コストを抑制する方法が種々提案されている。しかし、例えば口金面への異物堆積による断糸が起こりやすくなり、長時間安定して紡糸することが困難となるため、分割型でない通常の繊維の製造と比べるとより短い周期で口金のメンテナンスまたはパック交換を実施するか、より異物生成の少ないポリマーの開発が必要となり、その結果開発と製造に必要な費用が膨大となって生産コストを低下させることは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平5−239717号公報
【特許文献2】特開平5−051820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記背景技術を鑑みなされたもので、その目的は、複合紡糸でなくとも後処理によって容易に分割して極細繊維とすることができる易分割性ポリエステル繊維およびそれを用いてなる混繊糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、芳香族系ポリエステル中に特定のポリエーテルと有機スルホン酸金属塩とを配合し、これを突起部を有する断面形状に製糸すれば、得られる繊維は機械的ないしは化学的に容易に分割できて極細繊維化することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明の第1の目的は、「下記式(I)で表されるポリオキシエチレン系ポリエーテルを0.5〜2.0重量%および下記式(II)で表される有機金属スルホン酸塩を0.1〜1.0重量%含有する芳香族系ポリエステル組成物からなる繊維であって、該繊維横断面の形状に突起部分を3〜6個有することを特徴とする易分割性ポリエステル繊維。」により達成される。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
また、別の目的は、「上記の易分割性ポリエステル繊維と、該易分割性ポリエステル繊維よりも4〜40%高い沸水収縮率を有するポリエステル繊維とを混繊してなるポリエステル混繊糸。」により達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の易分割性ポリエステル繊維は、機械的ないし化学的処理により容易に極細繊維に分割でき、また、その分割面が特異な形状となるので、優れた風合とキシミ感を呈するものが得られる。また、これを高収縮繊維と混繊することにより天然の本絹の如き良好な光沢とふくらみときしみ感をもつものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明でいう芳香族系ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、アルキレングリコール主たるグリコール成分とするポリエステルを主たる対象とする。好ましい芳香族系ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどをあげることができ、なかでもポリエチレンテレフタレートおよびポリプロピレンテレフタレートが好ましい。かかる芳香族系ポリエステルには、上記酸成分およびグリコール成分以外の成分を少量共重合してもよい。
【0014】
なお、該芳香族系ポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の易分割性ポリエステル繊維は、上記芳香族系ポリエステル中に下記式(I)で表されるポリオキシエチレン系ポリエーテルを0.5〜2.0重量%および下記式(II)で表される有機金属スルホン酸塩を0.1〜1.0重量%を配合した組成物からなり、かつ繊維横断面形状が3〜6個の突起を有するものであることが肝要である。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
該ポリオキシエチレン系ポリエーテルは、上記式(I)から明らかなように、−CjH2j+1および−Cj’H2j’+1で表される枝わかれ部分を持つ鎖(以下おのおのA鎖ブロックおよびA’鎖ブロックと称する)と枝分かれの無い直鎖(以下B鎖ブロックと称する)からなる非ランダム共重合ポリオキシエチレン系ポリエーテルである。この時、上記JおよびJ’は13〜28、好ましくは14〜20の範囲である。JおよびJ’が13未満の場合は、繊維の分割が不均一となり、得られる織編物の表面に筋状の斑が発生する。JおよびJ’が28を超える場合は、充分な繊維の分割が起こらなくなる。
【0019】
さらに、B鎖ブロックの分子量(MwB)とA鎖ブロックおよびA’鎖ブロック(AおよびA’)との合計分子量(MwA)の比(以下MwA/MwBと称する)が0.2〜1.2、好ましくは0.25〜1.0であることが必要である。MwA/MwBが0.2未満の場合は、B鎖ブロックが長くなり過ぎ、あるいは、AおよびA’鎖ブロックの枝の長さが短くなり過ぎて、繊維の分割が起こらなくなる。MwA/MwBが1.2を超える場合には、AおよびA’鎖ブロックが長くなり過ぎ、あるいは、B鎖ブロックの枝の長さが短くなり過ぎて、繊維の分割が不均一となり、得られる織編物の表面に筋状の斑が発生する。
【0020】
このようなポリオキシエチレン系ポリエーテルの含有量は、重量基準で0.5〜2.0重量%、好ましくは、1.0〜2.0重量%でなければならない。該ポリオキシエチレン系ポリエーテルの含有量が0.5%重量%未満の場合には、いかなるアルカリ減量条件およびアルカリ減量率であっても十分な割繊は得られない。一方、ポリオキシエチレン系ポリエーテルの含有量が2.0重量%を超える場合には、繊維の分割と同時に繊維の溶失が起こりやすくなり、得られるマルチフィラメント糸の強度低下が起こる。
【0021】
なお、該ポリオキシエチレン系ポリエーテルの重量平均分子量は、5000〜16000、より好ましくは5500〜14000の範囲が適切である。
【0022】
次に、本発明にかかるポリエステル組成物中には、上述のポリオキシエチレン系ポリエーテルとともに、前述の式(II)で表される有機金属スルホン酸塩が含有されている必要がある。該有機金属スルホン酸塩は、単一の化合物であっても、各種のアルキル基あるいはアルキルアリール基を有する有機スルホン酸金属塩の混合物であってもよい。
【0023】
具体的には、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび上記の混合物などを例示することができる。
【0024】
かかる有機金属スルホン酸塩含有量は、組成物重量基準で0.1〜1.0重量%、好ましくは、0.2〜0.7重量%でなければならない。該有機金属スルホン酸塩の含有量が0.1%未満の場合には、割繊が充分に進行しなかったり、不均一な割繊が発生したりする。一方含有量が1.0重量%を越える場合には、繊維の分割と同時に繊維の溶失が起こりやすくなり、得られるマルチフィラメント糸の強度低下が起こる。
【0025】
本発明においては、上記の要件を満足するポリエステル組成物を、3〜6個の突起を有する繊維横断面形状に紡糸する必要がある。該断面形状が通常の丸断面の場合には、ポリエステル中に添加された上記ポリエーテルの効果によって、化学的処理(アルカリ減量)によって侵食を受けるものの期待される繊維の割繊は起こり難く、繊維表面のフィブリル化のみが発生する。また扁平形状の単糸断面の場合には、割繊は可能であるがそのためには高いアルカリ減量率を必要とし、割繊と同時に繊維表面のフィブリル化が起こる。一方繊維横断面形状に突起部分が6個を超えて存在する場合には、割繊を十分に安定して発生させることが難しくなり、また得られる布帛も耐磨耗性が不十分となって品位を損ないやすくなるので好ましくない。
【0026】
本発明に使用するポリオキシエチレン系ポリエーテルが上記のような割繊の効果は、次のようなメカニズムによって発現すると推定される。すなわち、該ポリオキシエチレン系ポリエーテルが、ポリエステルポリマーの繊維化過程で分子単位の伸張を受け、直鎖部分の両端にある枝分かれ部分が、ポリエステル分子に対してアンカー効果を発現し、ポリオキシエチレン系ポリエーテルの直鎖部分がポリエステル分子の伸張とともに引き伸ばされた状態で細化すると推定される。このような分子構造で細化されたポリエステル繊維では、アルカリ処理等の化学的脱離処理を受けた時、引き伸ばされたポリオキシエチレン系ポリエーテル分子に沿って繊維軸方向に、均一な添加剤の脱離による筋が生じるものと推定される。この時作製された糸が突起を有する場合、突起部分に比してその根元に相当する部分が吐出時の伸長応力差による歪を有し、優先的にアルカリ処理等の化学的脱離処理によって侵食され、単糸の割繊が起こるものと推定される。
【0027】
また、前記の有機金属スルホン酸塩は、アルカリ処理等の割繊処理工程で、繊維の分子構造中で、割繊の溝形成の基点となり、繊維全体にわたり均一な割繊化を進行させる役割を果たしていると推定される。
【0028】
前述のポリオキシエチレン系ポリエーテルおよび有機金属スルホン酸塩を芳香族系ポリエステル中に配合するには、該芳香族系ポリエステルが繊維化される前の任意の段階で、任意の方法を採用することができる。例えば、芳香族系ポリエステルの重縮合反応開始前、重縮合反応途中、重縮合反応終了時に、粉粒状体、グリコール等の溶媒に溶解または分散した状態で添加してもよい。また、ポリオキシエチレン系ポリエーテルおよび有機金属スルホン酸塩を規定量含有したマスターチップを予め作成し、乾燥工程あるいは溶融紡糸工程で、重縮合が終わった芳香族ポリエステルと固体混合あるいは溶融混合してもよい。
【0029】
上記の任意の方法で、ポリオキシエチレン系ポリエーテルおよび有機金属スルホン酸塩が混合された芳香族系ポリエステル組成物は、常法の溶融紡糸法でポリエステル繊維とすることができる。例えば、270〜300℃の紡糸温度で紡糸口金より吐出し、冷却固化し、油剤を付与した後、800〜3500m/分の速度で紡糸引き取ってポリエステル未延伸糸となす。該ポリエステル未延伸を一端ワインダーで巻き取って、紡糸工程とは別途に延伸を行ってもよく、一端巻き取ることなく、紡糸引き取り後連続して延伸を行ってもよい。
【0030】
本発明の易分割性ポリエステル繊維の短繊維繊度は通常の衣料用ポリエステル糸の範囲であればよい。すなわち、総繊度は、30〜200dtex、より好ましくは50〜150dtex、単糸繊度は1〜4dtex、より好ましくは2〜3dtex、の範囲であればよい。
【0031】
本発明においては、このようにして得られた易分割性ポリエステル繊維は、これより高い沸水収縮率、好ましくは4〜40%高い沸水収縮率を有する高収縮ポリエステル繊維と混繊することにより、易分割性ポリエステル繊維を糸条表面に浮き出すことが可能となり、割繊処理による細化した極細繊維が布帛表面により高密度で均一な状態で存在することになり、光沢感と手触りに優れた布帛を提供することができる。両ポリエステル繊維の沸水収縮率差が4%未満の場合は、易分割性ポリエステル繊維と混繊された糸もアルカリ処理による侵食を受けやすく、易分割性ポリエステル繊維の割繊が十分になされるよりも早く強度の低下を起こしやすい。一方、易分割性ポリエステル繊維より沸水収縮率が40%を越える高収縮な繊維は、常法で安定して生産することが難しく、また、織編物の熱収縮設定が困難となる。なお、易分割性ポリエステル繊維と高収縮繊維との混繊重量比率は20/80〜80/20の範囲が適当である。
【0032】
本発明の易分割性ポリエステル繊維あるいはポリエステル混繊糸を使用した織編物は、常法のアルカリ処理によって該易分割性繊維が全体的に割繊され、光沢感や手触り感だけでなく、割繊面の不均一性に起因するキシミ感等に優れた風合を呈する。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0034】
(1)固有粘度
常法にしたがい、オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
【0035】
(2)重量平均分子量
昭和電工(株)製のSHODEX GPC−101を用いて測定した。
【0036】
(3)割繊性
試料繊維をアルカリ溶割し、その後撮影されたマルチフィラメントの断面写真より単フィラメント数fを求め、アルカリ溶割前のフィラメント数Fを用いて、次式により分割率を算出し、分割率が60%を超えるものを○、20〜60%のものを△、20%未満のものを×で表した。
【数1】

【0037】
(4)織物品位
試料繊維に400回/mの撚りを掛け、経緯使いの平織り組織で製織し、80℃で精錬・リラックス処理、160℃・45秒でプレセット乾熱処理を行った。この織物を、常法の10%のアルカリ減量処理を行い、織物を全体的に割繊化した。ついで120℃・30分で染色を行い、自然乾燥した後、160℃・45秒でファイナルセットを行い、繊維分割による品位評価用織物とした。5人の検査員により、割繊化した織物表面の目視検査を行い、以下の格付けを行った。
レベル1: 織物表面に均一に光沢が生じ、十分な風合いを有している。
レベル5: 織物表面の割繊が不均一で、糸方向に光沢差による筋がみられる。
レベル2〜4:織物表面の光沢、品位及び均一性は上記1と5の間に各付けされる。
【0038】
(5)沸水収縮率
JIS L1013 8.18.1 B法に従い測定した。処理温度100℃。
【0039】
(6)強度、伸度
JIS−L1013の方法に従い引張試験を行い、破断時の強度、伸度を測定した。
【0040】
[実施例1〜7、比較例1〜4]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)および整色剤として酢酸コバルト4水塩0.009部(テレフタル酸ジメチルに対して0.07モル%)をエステル交換缶に仕込み、常法でエステル交換反応させた。次いで安定剤としてリン酸トリメチル0.058部(テレフタル酸ジメチルに対して0.080モル%)、重合触媒として三酸化アンチモン0.04部(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコールを追い出しながら240℃まで昇温したあと、重合反応缶に移した。
【0041】
次にこの反応混合物に、下記式(I)で表され、式(I)中のj、j’、m、m’、p、MwA/MwBおよび重量平均分子量が各々表1に示す値を有するポリオキシエチレン系ポリエーテルを、重量基準で1.4重量%となるように添加し、引き続いて反応缶内の圧力を1時間かけて760mmHgから3mmHgまで減圧し、10分後にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを重量基準で0.5重量%となるように添加した。さらに1mmHgまで減圧し、以下常法に従い重合を行い、ペレット状に裁断し、固有粘度0.63のポリエステルポリマー粒(以下ポリエステルチップと称する)を得た。
【0042】
【化5】

【0043】
【表1】

【0044】
こうして得られたポリエステルチップを各々常法で乾燥し、スクリュウ押出機を装備した溶融紡糸装置に導入し、286℃で溶融し、表1および図1から図5に示される形状の吐出孔を各々20個穿設した紡糸口金を通して吐出し、冷却固化し、油剤を付与した後、一対のゴデットローラーを介して1200m/分で紡糸引き取りし、ワインダーで巻き取りポリエステル未延伸糸を得た。該ポリエステル延伸糸を別途延伸装置に掛け、伸度が約30%となるように延伸倍率を設定し、100℃で延伸し、220℃で熱セットし、表1に示す繊維物性(強度、伸度)を有する50dtex/20フィラメントのポリエステル繊維を得た。前述の(3)および(4)の方法で各々のポリエステル繊維からの織物の繊維の分割性および品位を評価し、表1に示す結果を得た。
【0045】
表1から明らかなように、本発明の範囲内の構造式を有するポリオキシエチレン系ポリエーテルを本発明に既定する範囲の量含有するポリエステル繊維はアルカリ減量による十分な割繊と、さらに織物表面では極めて良好な光沢と柔らかな手触りをもった風合が発現された(実施例1〜7)。本発明の範囲外の構造を有するポリオキシエチレン系ポリエーテルを含有したポリエステル糸からの織物表面は経筋が多く、レベル4〜5の格付けとなった。
【0046】
[比較例5]
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを添加しない以外は実施例1と同じ方法、条件でポリエステルチップを作成し、ポリエステル糸を作成し、割繊品位を評価した結果、繊維分割による品位はレベル5であった。
【0047】
[実施例8]
実施例1で得られたポリエステル糸(沸水収縮率8.5%)と、イソフタル酸が10モル%共重された固有粘度0.63のポリエチレンテレフタレートからなり、沸水収縮率が35%のポリエステル高収縮糸(33dtex/12フィラメント)とをエアーノズルを通して交絡して混繊糸を得た。この混繊糸の繊維分割による品位は良好であり、また、得られる織物も極めて良好な風合いを発現した(レベル1)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の易分割性ポリエステル繊維によれば、複合紡糸をしなくとも容易に極細繊維化でき、天然の本絹の如き良好な光沢とふくらみ、さらには割繊面に起因するきしみ感をもつポリエステルマルチフィラメントが安価に製造することができ、特に衣料分野の素材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1〜5および比較例1〜2で採用した繊維横断面形状の模式図である。
【図2】実施例6で採用した繊維横断面形状の模式図である。
【図3】実施例7で採用した繊維横断面形状の模式図である。
【図4】比較例3で採用した繊維横断面形状の模式図である。
【図5】比較例4で採用した繊維横断面形状の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるポリオキシエチレン系ポリエーテルを0.5〜2.0重量%および下記式(II)で表される有機金属スルホン酸塩を0.1〜1.0重量%含有する芳香族系ポリエステル組成物からなる繊維であって、該繊維横断面の形状に突起部分を3〜6個有することを特徴とする易分割性ポリエステル繊維。
【化1】

【化2】

【請求項2】
請求項1記載の易分割性ポリエステル繊維と、該易分割性ポリエステル繊維よりも4〜40%高い沸水収縮率を有するポリエステル繊維とを混繊してなるポリエステル混繊糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−37265(P2006−37265A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217016(P2004−217016)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】