説明

暖房便座装置

【課題】暖房便座の快適性を維持しつつ、無駄な電力消費を抑制することができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座と、前記便座を加熱する加熱部と、前記便座の温度を検知する温度検知部と、前記便座に使用者が着座したことを検知する着座検知部と、前記加熱部への通電量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、使用者が前記便座から離座することを予測する離座予測手段を含み、前記着座検知部により使用者の着座を検知したときは、前記便座の温度を設定温度に維持するように前記加熱部への通電量を制御し、前記着座検知部により使用者の着座を検知している状態で、前記離座予測手段により使用者が前記便座から離座することを予測した際は、前記便座の温度を前記設定温度よりも下げるように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者が便座に座ったときに、冷たいという不快感を与えないように便座の着座面を適温に暖める暖房便座装置がある。暖房便座装置では、便座にヒータ等の発熱手段が内蔵され、この発熱手段への通電量を制御部によって制御することにより、着座面を必要な温度に暖めている。最近では、消費電力を抑制するために、使用しないときには低温で待機しておき、使用時には短時間で着座面を暖める、いわゆる瞬間式の暖房便座装置も知られている。
【0003】
使用状況に応じて発熱手段への通電量を制御する暖房便座装置では、使用者が便座から離れたとき(離座時)においても、一定時間は便座の温度を使用者が設定した設定温度に保つ制御を行っている。このような制御では、便座の使用を終了したにもかかわらず、一定時間通電が続くことから、必要のない電力を消費することになるという問題が生じる。
【0004】
特許文献1には、使用者が離座した時に、発熱手段への通電を停止する技術が開示されている。この暖房便座装置では、使用者が離座すると通電を停止するため、消費電力の抑制を図ることができる。しかし、使用者が離座したときに発熱手段への通電を停止しても、離座直前までは通電していることから、さらなる消費電力の抑制には工夫が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−50586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、暖房便座の快適性を維持しつつ、無駄な電力消費を抑制することができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、便座と、前記便座を加熱する加熱部と、前記便座の温度を検知する温度検知部と、前記便座に使用者が着座したことを検知する着座検知部と、前記加熱部への通電量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、使用者が前記便座から離座することを予測する離座予測手段を含み、前記着座検知部により使用者の着座を検知したときは、前記便座の温度を設定温度に維持するように前記加熱部への通電量を制御し、前記着座検知部により使用者の着座を検知している状態で、前記離座予測手段により使用者が前記便座から離座することを予測した際は、前記便座の温度を前記設定温度よりも下げるように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする暖房便座装置である。
【0008】
この暖房便座装置によれば、離座予測手段によって使用者が離座することを予測して離座前のタイミングで便座の温度を設定温度から下げる制御を行うため、使用者の快適性を損なうことなく、省エネルギー効果の高い暖房便座装置を提供することができるようになる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記制御部は、前記温度検知部により、前記便座の温度が、使用者が前記便座に着座した際に冷たいと感じない冷感限界温度であることを検知し、かつ、前記着座検知部により使用者の着座を検知しているときには、前記便座の温度を前記冷感限界温度よりも上げるように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、便座の温度が冷感限界温度になっているときに使用者が着座を維持している場合には、便座の温度を冷感限界温度よりも上げる制御を行うため、使用者に冷たさを感じさせることのない快適な暖房便座装置を提供することができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、人体検知部をさらに備え、前記制御部は、前記温度検知部により、前記便座の温度が、使用者が前記便座に着座した際に冷たいと感じない冷感限界温度であることを検知し、かつ、前記着座検知部により使用者の着座を検知していないときであって、前記人体検知部により人体を検知しているときは、前記便座の温度を前記冷感限界温度に維持するように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする暖房便座装置である。
【0012】
この暖房便座装置によれば、便座の温度が冷感限界温度になっているときに人体検知部により人体を検知しているときには、便座の温度を冷感限界温度に維持するため、再着座された場合でも、使用者に冷たさを感じさせることのない快適な暖房便座装置を提供することができる。
【0013】
第4の発明は、第1または第2の発明において、人体検知部をさらに備え、前記制御部は、前記温度検知部により、前記便座の温度が、使用者が前記便座に着座した際に冷たいと感じない冷感限界温度であることを検知し、かつ、前記着座検知部により使用者の着座を検知していないときであって、前記人体検知部により人体を検知していないときは、前記便座の温度を前記冷感限界温度よりも下げるように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする暖房便座装置である。
【0014】
この暖房便座装置によれば、便座の温度が冷感限界温度になっているときに人体検知部により人体を検知していないときは、便座の温度を冷感限界温度よりも下げる制御を行うため、無駄に便座を加熱することがなく、省エネルギー効果の高い暖房便座装置を提供することができる。
【0015】
第5の発明は、第1または第4の発明において、人体検知部と、便蓋と、をさらに備え、前記制御部は、前記温度検知部により、前記便座の温度が、使用者が前記便座に着座した際に冷たいと感じない冷感限界温度であることを検知し、かつ、前記着座検知部により使用者の着座を検知していないときであって、前記人体検知部により人体を検知していないときは、前記便蓋を閉じる制御を行うことを特徴とする暖房便座装置である。
【0016】
この暖房便座装置によれば、便蓋の保温効果により便座の温度が下がる時間を長くすることができるので、使用者がトイレルームから去ったあと、すぐに戻って再着座するときや、別の使用者がすぐにトイレルームに入室した際の便座の昇温電力を減らすことができる。これにより、省エネルギー効果の高い暖房便座装置を提供することができる。
【0017】
第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記離座予測手段は、局部洗浄の洗浄を停止するスイッチが選択されたことによって使用者が前記便座から離座することを予測することを特徴とする暖房便座装置である。
【0018】
この暖房便座装置によれば、離座予測手段を、局部洗浄の洗浄を停止するスイッチで行うため、既存の構造で第1〜第5のいずれか1つの発明における制御を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、暖房便座の快適性を維持しつつ、無駄な電力消費を抑制することができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】実施形態にかかる暖房便座装置の制御構成を例示するブロック図である。
【図3】待機モードからの加熱制御の具体例を説明するグラフ図である。
【図4】保温モードからの降温制御についての参考例を説明するグラフ図である。
【図5】第1実施形態に係る降温制御の具体例を説明するグラフ図である。
【図6】第2実施形態に係る降温制御の具体例を説明するグラフ図である。
【図7】第3実施形態に係る降温制御の具体例を説明するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、実施形態にかかる暖房便座装置の制御構成を例示するブロック図である。
【0022】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、便座200と、暖房便座機能部400と、を有する。便座200には、必要に応じて便蓋300が設けられている。便座200と便蓋300とは、暖房便座機能部400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便座200及び便蓋300は、便座200からの放熱を防ぐために、断熱材を内蔵しておくのが好ましい。
【0023】
図2に表したように、便座200は、加熱部の例であるヒータ210と、温度検知部の一例である温度検知センサ220と、を内蔵する。ヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖める。ここで、ヒータ210には、抵抗加熱手段ほか、電磁誘導によって加熱を行う誘導加熱手段など、各種の加熱手段が含まれる。
【0024】
また、温度検知センサ220は、便座200の例えば着座面(使用者のおしりが接する面)SLの温度を検知する。実施形態において便座200の温度とは着座面SLの温度のことをいうものとする。着座面SLの温度は、温度検知センサ220で検知された温度のほか、検知された温度から計算される着座面SLの温度であってもよい。
【0025】
暖房便座機能部400は、制御部410を含む。制御部410は、温度検知センサ220からの検知信号に基づいてヒータ210への通電量を制御する。
制御部410は、離座予測手段411を含む。離座予測手段411は、使用者が便座200から離座することを予測する手段である。すなわち、離座予測手段411は、使用者が便座200に座っている状態でこれから離座しようとするときに行う動作(離座前動作)を検知する。
制御部410は、離座予測手段411による検知結果に基づき便座200の温度を制御する。
【0026】
また、暖房便座機能部400は、便座200への使用者の着座を検知する着座検知センサ420を含む。暖房便座機能部400には、便座200の前方にいる使用者を検知する人体検知センサ430、トイレ室への使用者の入室を検知する入室検知センサ440、トイレ室の室温を検知する室温検知センサ460が含まれていてもよい。
【0027】
着座検知部の例である着座検知センサ420は、使用者が便座200に着座する直前において便座200の上方に存在する人体や、便座200に着座した使用者を検知することができる。着座検知センサ420は、便座200に着座した使用者だけではなく、便座200の上方に存在する使用者を検知してもよい。このような着座検知センサ420としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサを用いることができる。着座検知センサ420は、使用者が着座した際の荷重によってON/OFFが行われるスイッチであってもよい。
着座検知センサ420は、使用者の着座を検知した際には、制御部410に着座を検知した旨の信号SG3を出力する。
【0028】
また、人体検知部の例である人体検知センサ430は、便器800の前方にいる使用者、すなわち便座200から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。つまり、人体検知センサ430は、トイレ室に入室して便座200に近づいてきた使用者を検知することができる。このような人体検知センサ430としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサを用いることができる。
人体検知センサ430は、人体を検知した際には、制御部410に人体を検知した旨の信号SG1を出力する。
【0029】
また、入室検知センサ440は、トイレ室のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知することができる。つまり、入室検知センサ440は、トイレ室に入室した使用者だけではなく、トイレ室に入室する前の使用者、すなわちトイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。
【0030】
このような入室検知センサ440としては、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。マイクロ波のドップラー効果を利用したセンサや、マイクロ波を送信し反射したマイクロ波の振幅(強度)に基づいて被検知体を検知するセンサなどを用いた場合、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。つまり、トイレ室に入室する前の使用者を検知することができる。
【0031】
入室検知センサ440は、人体を検知した際には、制御部410に人体を検知した旨の信号SG2を出力する。人体検知センサ430または入室検知センサ440は、本出願の人体検知部の一例である。
【0032】
室温検知センサ460は、トイレ室の室温を検知して、室温の情報を含む信号SG4を制御部410に出力する。
【0033】
図1に表したトイレ装置では、暖房便座機能部400の上面に凹設部441が形成され、この凹設部441に一部が埋め込まれるように入室検知センサ440及び室温検知センサ460が設けられている。
【0034】
入室検知センサ440は、便蓋300が閉じた状態では、その基部付近に設けられた透過窓301を介して使用者の入室を検知する。また、着座検知センサ420及び人体検知センサ430は、暖房便座機能部400の前方の中央部に設けられている。ただし、着座検知センサ420、人体検知センサ430、及び入室検知センサ440の設置形態は、これらに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0035】
また、室温検知センサ460は、暖房便座機能部400の内部に限定されず、例えば暖房便座機能部400とは別体として設けられたリモートコントローラなどの選択手段600の内部に設けられていてもよい。すなわち、室温検知センサ460は、トイレ室の室温を検知できればよい。
【0036】
暖房便座機能部400は、便蓋300を開閉させる便蓋駆動装置450を含む。便蓋駆動装置450は、例えば、便蓋300が暖房便座機能部400に対して軸支された位置の近傍に設置され、制御部410からの信号により便蓋300を開閉させる。
【0037】
この動作は、暖房便座機能部400とは別体として設けられた選択手段600により操作できるようにしてもよい。この場合には、使用者が選択手段600を適宜操作すると、その操作内容の信号は、暖房便座機能部400に送信される。そうすると、制御部410は、選択手段600から送信された信号により便蓋駆動装置450の駆動を制御し、便蓋300を開閉する。
【0038】
また、暖房便座機能部400は、衛生洗浄装置(局部洗浄装置)としての機能部を併設してもよい。すなわち、暖房便座機能部400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水(お湯や冷水)を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。
【0039】
さらに、暖房便座機能部400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。この際、暖房便座機能部400の側面には、脱臭ユニットからの排気口443及び室内暖房ユニットからの排出口445が適宜設けられる。ただし、実施形態においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0040】
便器800や暖房便座装置100は、選択手段600で受け付けた使用者の指示によってコントロールされる。選択手段600には、便蓋300の開閉ボタン、便器800の洗浄水を流す洗浄ボタン、動作モードを設定、変更するためのボタン、暖房便座装置100の各種設定(設定温度、待機温度、水温、水勢、吐出位置など)や吐水開始、吐水停止、乾燥機能の開始、停止等を行うボタンBPが設けられている。また、選択手段600には、設定内容や動作状況を表示する表示部DPや、状態を報知するスピーカ等の出力部SPが設けられていてもよい。
【0041】
次に、本実施形態に係る暖房便座装置100の制御部410による便座200の加熱制御について説明する。
制御部410は、非使用時にはヒータ210への通電を停止または通電量を小さくして便座200の着座面SLを低めの温度に設定し、使用時にはヒータ210への通電量を大きくして便座200の着座面SLを急速加熱することにより、着座面SLを適温に昇温させる即暖運転モードを実行することができる。
【0042】
制御部410は、着座面SLの温度を制御するための目標温度として、待機温度HT0、着座可能温度HT1及び設定温度HT2を用いる。
これらの温度のうち、設定温度HT2が最も高く、待機温度HT0が最も低い。着座可能温度HT1は、設定温度HT2と待機温度HT0との間の温度である。
【0043】
設定温度HT2は、使用者が着座しているときの目標温度である。
待機温度HT0は、便座200が使用されていないときの目標温度である。
着座可能温度HT1は、使用者が便座200に着座したときに冷たさを感じない温度である。例えば、着座可能温度HT1は29°程度であり、26°以上、30°以下が好適である。実施形態では、着座可能温度HT1の範囲のうち、29°を一例として説明する。着座面SLの温度としての29°は、冷感限界温度の一例である。
【0044】
図3は、待機モードからの加熱制御の具体例を説明するグラフ図である。
図3において、横軸は時間、縦軸は着座面SLの温度である。なお、時間に対する温度の遷移に伴いヒータ210への電力供給量についても例示している。
図3では、待機モードM0において着座面SLの温度が待機温度HT0に維持されている状態からの温度遷移を例示している。
【0045】
先ず、制御部410は、待機モードM0を実行する。待機モードM0では、制御部410は、着座面SLの温度を待機温度HT0に維持する制御を行う。待機モードM0は、ヒータ210への電力供給量Po0が非常に少ない状態、またはヒータ210への通電を停止した状態である。
【0046】
制御部410は、待機モードM0の実行中に、人体を検知したか否かを判断する。
人体の検知は、人体検知センサ430及び入室検知センサ440の少なくともいずれかによって行われる。実施形態では、人体検知センサ430によって人体の検知を行う場合を例とする。
人体検知センサ430は、人体を検知した場合、その旨を示す信号SG1を出力する。一方、人体検知センサ430は、人体を検知していない場合、信号SG1を出力しないか、人体を検知していない旨を示す信号SG1を出力する。
制御部410は、人体検知センサ430で人体を検知していない場合には待機モードM0を続行する。一方、制御部410は、人体検知センサ430で人体を検知した旨の信号SG1を受信した場合、急速加熱モードM1での加熱制御を実行する。
【0047】
制御部410は、人体検知センサ430によって人体を検知したタイミングF1で信号SG1を受信して、急速加熱モードM1による加熱制御へ移行すると、タイミングF1から、予め決められた時間(第1時間t1)のカウントを開始する。
【0048】
第1時間t1は、制御部410の図示しない記憶手段に予め設定された時間である。記憶手段に設定された第1時間t1は、例えば固定値である。第1時間t1は、例えば、人体検知センサ430によって人体を検知してから使用者が便座200に着座するまでの時間よりも短い時間である。例えば、人体検知センサ430によって人体を検知してから使用者が便座200に着座するまでの時間を統計によって求めておき、この時間よりも短い時間を第1時間t1として設定しておく。
したがって、急速加熱モードM1の途中で使用者が便座200に着座する可能性は低く、使用者は、急速昇温を体感せずにすむ。
【0049】
急速加熱モードM1では、第1時間t1が経過するまでヒータ210への電力供給量がPo1になる。電力供給量Po1は、人体を検知する前、すなわち待機モードM0での電力供給量Po0よりも多い電力供給量である。これにより、着座面SLの温度を着座可能温度HT1に到達させる。
【0050】
第1時間t1の経過後、制御部410は、加熱モードM2による加熱制御へ移行する。加熱モードM2では、急速加熱モードM1での昇温速度よりも低い昇温速度となるように、ヒータ210への電力供給量Po2が設定されている。電力供給量Po2は、急速加熱モードM1が終了した時の着座面SLの温度によって演算される。例えば、制御部410は、急速加熱モードM1が終了した時の着座面SLの温度に対応した計算式やテーブルデータから電力供給量Po2を求めてもよい。
【0051】
制御部410は、着座面SLの温度が設定温度HT2に到達した後、保温モードM3へ移行する。保温モードM3は、着座面SLの温度を設定温度HT2に保つ電力供給量Po3をヒータ210に与えるよう制御して、着座面SLの温度を設定温度HT2に保持するモードである。これにより、着座面SLの温度が設定温度HT2に保持される。
【0052】
着座面SLの設定温度HT2は、使用者が便座200に着座したときに快適な温もりを感じる着座可能温度以上の温度であり、予め設定された温度である。なお、設定温度HT2は、使用者の好みによって変更できるようになっていてもよい。
便座200を使用しているあいだ、便座200の温度は設定温度HT2に維持される。これにより、使用者は快適に便座200を利用することができる。
【0053】
次に、保温モードM3から便座200の温度を下げる降温制御について説明する。
【0054】
(参考例)
先ず、参考例に係る降温制御について説明する。
図4は、保温モードからの降温制御についての参考例を説明するグラフ図である。
図4において、横軸は時間、縦軸は着座面SLの温度である。なお、時間に対する温度の遷移に伴いヒータ210への電力量についても例示している。
【0055】
制御部410は、保温モードM3の実行中、着座検知センサ420により着座を検知しなくなり(タイミングF2)、さらに人体検知センサ430により人体を検知しなくなると(タイミングF3)、予め設定された一定時間t2のカウントを開始する。
【0056】
そして、一定時間t2が経過したタイミングF4で、制御部410は、待機状態移行モードM4による制御を開始する。待機状態移行モードM4では、ヒータ210を電力供給量Po4で制御する。電力供給量Po4は、例えばヒータ210への電力供給を停止した状態(電力供給量ゼロ)である。これにより、着座面SLの温度は、設定温度HT2から下がる。待機状態移行モードM4は、着座面SLの温度が待機温度HT0に達するまで実行される。
【0057】
制御部410は、着座面SLの温度が待機温度HT0に達すると、待機モードM0による制御へ移行する。待機モードM0では、ヒータ210への電力供給量Po0が非常に少ない状態、またはヒータ210への通電を停止した状態である。これにより、着座面SLの温度が待機温度HT0に維持される。
【0058】
図4に例示した参考例による降温制御では、着座検知センサ420により着座を検知しなくなったタイミングF2から待機状態移行モードM4を開始するタイミングF4までのあいだ保温モードM3を継続している。タイミングF2以降では使用者は離座しているにもかかわらず、電力供給量Po3によるヒータ210への通電が行われる。
【0059】
(第1実施形態)
次に、第1実施形態に係る降温制御について説明する。
図5は、第1実施形態に係る降温制御の具体例を説明するグラフ図である。
図5において、横軸は時間、縦軸は着座面SLの温度である。なお、時間に対する温度の遷移に伴いヒータ210への電力供給量についても例示している。
図5では、保温モードM3によって着座面SLの温度が設定温度HT2に維持されている状態からの温度遷移を例示している。
【0060】
制御部410は、保温モードM3の実行中、離座予測手段411により使用者が便座200から離座することを予測すると(タイミングF11)、待機状態移行モードM11による制御へ移行する。待機状態移行モードM11では、ヒータ210への電力供給量をPo11に制御する。電力供給量Po11は、電力供給が非常に少ない状態、またはヒータ210への通電を停止した状態である。これにより、着座面SLの温度は下降していく。
【0061】
ここで、離座予測手段411による離座の予測の例について説明する。
使用者は、便座200に座って便器800の使用を開始し、その使用が終わってから離座するまでの間に特定の動作(離座前動作)を行うことが多い。
例えば、使用者は、排泄後、離座するまでの間に衛生洗浄装置の吐水の開始、吐水の停止、乾燥機能の開始、乾燥機能の停止、トイレットペーパの使用などの離座前動作を行う。離座予測手段411は、これらの離座前動作を検知した場合、検知した旨の信号を制御部410へ送る。
制御部410は、離座予測手段411から離座前動作を検知した旨の信号を受けたタイミングF11で、待機状態移行モードM11による制御へ移行する。
【0062】
一例として、離座予測手段411によって衛生洗浄装置の吐水の停止を離座前動作として検知する場合を説明する。
着座している使用者が、排泄後に選択手段600を操作して、衛生洗浄装置の吐水停止のボタンBPを選択したとする。このボタンBPの選択によって衛生洗浄装置の吐水が停止される。また、離座予測手段411は、このボタンBPの選択を検知して、検知した旨の信号を制御部410へ送る。
【0063】
制御部410は、離座予測手段411から送られた信号を受けると、便座200の温度制御のモードを、保温モードM3から待機状態移行モードM11へ切り替える。これにより、使用者が離座する前から着座面SLの温度の降下が始まる。
なお、使用者は、離座前動作から実際に離座するまで長い時間を要しないため、着座面SLの温度の降下が始まっても冷たさを感じることはない。
【0064】
このような制御により、離座予測手段411によって使用者が離座することを予測して、使用者が実際に離座する前のタイミングF11で便座200の温度を設定温度HT2から下げる制御を行うことができる。これにより、使用者の快適性を損なうことなく、省エネルギー効果の高い暖房便座装置100を提供することができるようになる。
【0065】
なお、上記に掲げた離座前動作は一例であり、これに限定されることはない。本実施形態及び以下に例示する実施形態では、衛生洗浄装置の吐水開始を離座前動作の一例として説明する。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る降温制御について説明する。
図6は、第2実施形態に係る降温制御の具体例を説明するグラフ図である。
図6において、横軸は時間、縦軸は着座面SLの温度である。なお、時間に対する温度の遷移に伴いヒータ210への電力供給量についても例示している。
図6では、保温モードM3によって着座面SLの温度が設定温度HT2に維持されている状態からの温度遷移を例示している。
【0067】
第2実施形態に係る降温制御において、保温モードM3の実行中に離座予測手段411による離座前動作を検知したタイミングF11から待機状態移行モードM11へ移行する制御は図5に表した第1実施形態と同じである。
【0068】
制御部410は、待機状態移行モードM11での電力供給量Po11による制御で着座面SLの温度が下がり、着座面SLの温度が着座可能温度HT1に達したタイミングF21で着座検知センサ420から出力される信号SG3の有無を判断する。このタイミングF21で着座検知センサ420から使用者の着座を検知した旨の信号SG3を受信した場合、制御部410は、待機状態移行モードM11による制御から昇温モードM21による制御へ移行する。
【0069】
昇温モードM21では、着座面SLの温度を着座可能温度HT1よりも上げるようにヒータ210への電力供給量Po21を制御する。
この昇温モードM21では、図3に表した急速加熱モードM1での昇温速度(第1の昇温速度)よりも遅い昇温速度(第2の昇温速度)で昇温を行うようにしてもよい。
【0070】
昇温モードM21による制御で着座面SLの温度が設定温度HT2に達した段階で、制御部410は、保温モードM3による制御へ移行し、着座面SLの温度を設定温度HT2に維持する。
【0071】
このような制御によれば、便座200の温度が着座可能温度HT1になっているときに使用者が着座を維持している場合には、便座200の温度を着座可能温度HT1よりも上げる制御を行うため、使用者に冷たさを感じさせることのない快適な暖房便座装置100を提供することができる。
【0072】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る降温制御について説明する。
図7は、第3実施形態に係る降温制御の具体例を説明するグラフ図である。
図7において、横軸は時間、縦軸は着座面SLの温度である。なお、時間に対する温度の遷移に伴いヒータ210への電力供給量についても例示している。
図7では、保温モードM3によって着座面SLの温度が設定温度HT2に維持されている状態からの温度遷移を例示している。
【0073】
第3実施形態に係る降温制御において、保温モードM3の実行中に離座予測手段411による離座前動作を検知したタイミングF11から待機状態移行モードM11へ移行する制御は図5に表した第1実施形態と同じである。
【0074】
制御部410は、待機状態移行モードM11での電力供給量Po11による制御で着座面SLの温度が下がり、着座面SLの温度が着座可能温度HT1に達したタイミングF12で着座検知センサ420から出力される信号SG3の有無を判断する。このタイミングF12で着座検知センサ420から使用者の着座を検知した旨の信号SG3を受信した場合、制御部410は、待機状態移行モードM11による制御から着座可能温度維持モード(冷感限界温度維持制御)M12による制御へ移行する。
【0075】
着座可能温度維持モードM12では、ヒータ210への電力供給量をPo12にする。制御部410は、例えば、温度検知センサ220による着座面SLの温度の検知結果に基づきヒータ210への電力供給量Po12をフォードバック制御する。これにより、着座面SLの温度を着座可能温度HT1に維持する。
【0076】
このような制御により、便座200の温度が着座可能温度HT1になっているときに人体検知センサ430により人体を検知しているときには、便座200の温度を着座可能温度HT1に維持するため、再着座された場合でも、使用者に冷たさを感じさせることのない快適な暖房便座装置100を提供することができる。
【0077】
次に、着座可能温度維持モードM12の実行中に、着座検知センサ420により着座を検知しなくなり、人体検知センサ430により人体を検知しなくなると(タイミングF13)、制御部410は、待機到達モードM13による制御へ移行する。待機到達モードM13では、制御部410は、着座面SLの温度を着座可能温度HT1よりも下げるようにヒータ210への通電量を制御する。電力供給量Po13は、電力供給が非常に少ない状態、またはヒータ210への通電を停止した状態である。待機到達モードM13では、ヒータ210への通電を停止して消費電力低減を図ることが望ましい。これにより、着座面SLの温度は下降していく。
【0078】
制御部410は、待機到達モードM13による制御を開始したタイミングF13から時間t11のカウントを開始する。そして、着座面SLの温度が下降している途中、時間t11が経過したタイミングF14で、便蓋駆動装置450に指示を与え、便蓋300を閉じる制御を行う。
【0079】
このようにタイミングF14で便蓋300が閉じると、便蓋300の保温効果により便座200の温度が下がる時間を、便蓋300が開いている場合に比べて長くすることができる。これにより、使用者がトイレルームから去ったあと、すぐに戻って再着座するときや、別の使用者がすぐにトイレルームに入室した際の便座200の昇温電力を減らすことができ、省エネルギー効果の高い暖房便座装置100を提供することができる。
【0080】
着座面SLの温度がさらに下降し、待機温度HT0に到達した段階で、制御部410は、待機モードM0による制御へ移行する。待機モードM0では、ヒータ210への電力供給量Po0が非常に少ない状態、またはヒータ210への通電を停止した状態である。これにより、着座面SLの温度が待機温度HT0に維持される。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、暖房便座の快適性を維持しつつ、無駄な電力消費を抑制することができる暖房便座装置100を提供することができるようになる。
【0082】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0083】
100…暖房便座装置、200…便座、210…ヒータ、220…温度検知センサ、300…便蓋、400…暖房便座機能部、410…制御部、411…離座予測手段、420…着座検知センサ、430…人体検知センサ、440…入室検知センサ、600…選択手段、800…便器、BP…ボタン、DP…表示部、HT0…待機温度、HT1…着座可能温度、HT2…設定温度、M0…待機モード、M1…急速加熱モード、M2…加熱モード、M3…保温モード、M11…待機状態移行モード、M12…着座可能温度維持モード、M13…待機到達モード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座と、
前記便座を加熱する加熱部と、
前記便座の温度を検知する温度検知部と、
前記便座に使用者が着座したことを検知する着座検知部と、
前記加熱部への通電量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
使用者が離座することを予測する離座予測手段を含み、
前記着座検知部により使用者の着座を検知したときは、前記便座の温度を設定温度に維持するように前記加熱部への通電量を制御し、
前記着座検知部により使用者の着座を検知している状態で、前記離座予測手段により使用者が離座することを予測した際は、前記便座の温度を前記設定温度よりも下げるように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記温度検知部により、前記便座の温度が、使用者が前記便座に着座した際に冷たいと感じない冷感限界温度であることを検知し、かつ、前記着座検知部により使用者の着座を検知しているときには、前記便座の温度を前記冷感限界温度よりも上げるように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
人体検知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記温度検知部により、前記便座の温度が、使用者が前記便座に着座した際に冷たいと感じない冷感限界温度であることを検知し、かつ、前記着座検知部により使用者の着座を検知していないときであって、前記人体検知部により人体を検知しているときは、前記便座の温度を前記冷感限界温度に維持するように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
人体検知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記温度検知部により、前記便座の温度が、使用者が前記便座に着座した際に冷たいと感じない冷感限界温度であることを検知し、かつ、前記着座検知部により使用者の着座を検知していないときであって、前記人体検知部により人体を検知していないときは、前記便座の温度を前記冷感限界温度よりも下げるように前記加熱部への通電量を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項5】
人体検知部と、
便蓋と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記温度検知部により、前記便座の温度が、使用者が前記便座に着座した際に冷たいと感じない冷感限界温度であることを検知し、かつ、前記着座検知部により使用者の着座を検知していないときであって、前記人体検知部により人体を検知していないときは、前記便蓋を閉じる制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記離座予測手段は、局部洗浄の洗浄を停止するスイッチが選択されたことによって使用者が離座することを予測することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74911(P2013−74911A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214846(P2011−214846)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】