説明

有機エレクトロルミネセンスデバイスのための新規材料

本発明は、有機電子デバイス、特にエレクトロルミネセンスデバイスにおいて用いられ、縮合芳香族系から誘導される新規化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、有機電子デバイス、特にエレクトロルミネセンスデバイスにおいて用いることができ、縮合した芳香族系の誘導体である新規材料に関する。
【0002】
最も広い意味で電子産業とみなされ得る種々のタイプの多くのアプリケーションにおいて、例えば、有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)において、機能性材料としての有機半導体の使用はかねてから現実のものとなっており、また近い将来において期待される。
【0003】
しかしながら、これらのデバイスは相変わらず、至急の改善を必要とするかなりの問題を未だに示している。
【0004】
1.駆動寿命は、特に青色発光の場合に未だに短く、これは、今までのところ単純なアプリケーションを商業的に達成することができるのみであることを意味する。
2.場合によっては、異性体化合物の混合物を使用するが、これらは異なる物性を有し得る(ガラス転移温度、ガラス形成性質、吸収(absorption)、光ルミネセンス)。場合によって、これらの立体異性体は処理温度において異なる蒸気圧を有するために、有機電子デバイスの均一な、再現性ある製造が不可能である。この問題は、例えば、未公開出願 EP 04026402.0 に詳細に記載されている。
3.用いられる化合物は、場合によっては一般の有機溶媒にわずかに溶けるのみであり、このことは、合成中のこれらの精製を困難にするだけでなく、有機電子デバイスの製造の場合にはプラントの洗浄をより困難にもする。
【0005】
直近の技術は、種々の縮合芳香族化合物、特にアントラセンまたはペリレン誘導体の、特に青色発光エレクトロルミネセンスデバイスにおけるホスト材料としての使用であると考えられ得る。従来技術において開示されているホスト材料は、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(US 5935721)である。ホスト材料として適切である他のアントラセン誘導体は、例えば、WO 01/076323, WO 01/021729, WO 04/013073, WO 04/018588, WO 03/087023 または WO 04/018587 に記載されている。アリール置換されたペリレンおよびクリセンに基づくホスト材料は、WO 04/016575 に記載されており、これは原理上は、対応するアントラセンおよびフェナントレン誘導体をも包含する。WO 03/095445 および CN 1362464 は、OLEDにおいて用いる9,10−ビス(1−ナフチル)アントラセン誘導体を記載する。良好な結果がこれらの化合物を用いて既に達成されているが、改善されたホスト材料を得ることが所望され得る。上記の化合物は、これらがアトロプ異性体を形成し、よってデバイス製造中に乏しい再現性での結果をもたらす場合に特に問題となる。
【0006】
上記した従来技術は、ホスト材料は有機エレクトロルミネセンスデバイスの機能において重要な役割を果たすことを確認している。従って、この材料の最適化により有機電子デバイスの性質を改善することがさらに可能であろう。つまり、材料、特に青色発光OLEDのためのホスト材料であって、有機電子デバイスにおいて良好な効率と同時に長い耐用年数をもたらし、かつデバイスの製造および駆動において再現性ある結果をもたらす材料についての要求が存在し続けている。驚くべきことに、ある種の縮合芳香環を含む大環状化合物を含む有機電子デバイスが、従来技術に対して優位な改善を有することが見出された。これらの材料は、従来技術による材料と比較して、有機電子デバイスにおいて効率の上昇および寿命の延長を可能にする。これらの材料はアトロプ異性を示すことがないために、有機電子デバイスの再現性ある製造が可能であり続ける。従って、本発明は、これらの材料、および有機電子デバイスにおけるこれらの使用に関する。
【0007】
JP 05140145 は、OLEDで用いるある種の大環状化合物を記載している。これらの化合物は、ルミネセンス材料または正孔輸送化合物として記載されている。ホスト材料としてのこのタイプの大環状化合物の適性は、この出願からは明らかではない。
【0008】
本発明は、式(1)の化合物に関する
【化2】

【0009】
(式中、以下が用いられる記号および添え字に適用される。すなわち、
Ar1,Ar3は、それぞれの出現において同一であるか異なり、5〜50個の芳香族環原子を有する芳香族環系または複素芳香族環系(これらは、1つ以上のR基により置換されていてもよい)であり、
Ar2は、それぞれの出現において同一であるか異なり、14〜40個の芳香族環原子を有する縮合アリール基または縮合ヘテロアリール基(これらは、1つ以上のR基により置換されていてもよい)であり、但し、2つの基Ar1およびAr3は、隣接位またはペリ位を介してAr2には結合しておらず、
1およびL2は、それぞれの出現において同一であるか異なり、1〜60個のC原子を含有する二価の有機架橋(これらは、1つ以上のR基により置換されていてもよい)であり、
Rは、それぞれの出現において同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、CN、NO2、COOR1、B(OR12、B(R12、Si(R13、1〜40個のC原子を有する直鎖のアルキル鎖若しくはアルコキシ鎖、または3〜40個のC原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基(これらのそれぞれはR1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の非隣接のC原子は、N−R1、O、S、O−CO−O、CO−O、−CR1=CR1−または−C≡C−により置き換えられていてもよく、かつ1つ以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNにより置き換えられていてもよい)、または5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環系若しくは複素芳香族環系(これらは、1つ以上のR1基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つ若しくは4つの組み合わせであり、ここで2つ以上のR基は互いに、さらなる単環または多環の脂肪族環系または芳香族環系を形成していてもよく、
1は、それぞれの出現において同一であるか異なり、Hまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基であり、ここで2つ以上のR1基は互いに、環系を形成していてもよく、
xは、それぞれの出現において同一であるか異なり、0または1であり、ここで、x=0とは、架橋L2が存在しないことを意味する)。
【0010】
式(1)の化合物は、好ましくは70℃以上の、特に好ましくは100℃以上の、非常に特に好ましくは130℃以上のガラス転移温度Tgを有する。
【0011】
本発明の目的上、芳香族環系は、環系において6〜40個のC原子を含有する。本発明の目的上、複素芳香族環系は、環系において2〜40個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、但し、C原子とヘテロ原子の総数が少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。本発明の目的上、芳香族環系または複素芳香族環系は、必ずしもアリール基またはヘテロアリール基のみを含有する系ではなく、複数のアリール基またはヘテロアリール基が、例えばsp3混成のC、NまたはO原子のような短い非芳香族単位(H以外の10%未満の原子、好ましくはH以外の5%未満の原子)により中断されていてもよい系を意味すると解釈される。つまり、例えば本発明の目的上の芳香族環系は、9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル等のような系を意味するものと解釈される。ここで芳香族環系または複素芳香族環系の一部は以下の定義の意味において縮合基であってもよい。
【0012】
本発明の目的上、縮合アリール基または縮合ヘテロアリール基とは、9〜40個の芳香族環原子を有する環系であって、少なくとも2つの芳香環または複素芳香環が互いに縮合している、すなわち、少なくとも1つの共有の辺と、共有の芳香族π電子系を有する環系を意味するものと解釈される。これらの環系はRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。縮合芳香族環系または縮合複素芳香族環系の例は、ナフタレン、キノリン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、クリセン、アクリジン等であるが、一方で、例えばビフェニルは、2つの環系の間に共有の辺が存在しないために縮合アリール基ではない。同様に、例えばフルオレンも、2つのフェニル単位が共有の芳香族環系を形成しないために縮合芳香族環系ではない。
【0013】
本発明の目的上、Ar2の結合を除いて、隣接位とは、芳香環の2つの直接的に隣接するC原子上の位置を意味するものと解釈される。本発明の目的上、ペリ位とは、ナフタレンにおける1,8位、または他の縮合アリール基若しくは縮合ヘテロアリール基における匹敵する位置を意味するものと解釈される。
【0014】
本発明の目的上、C1−〜C40−アルキル基(ここで、個々のH原子またはCH2基は、上記した基により置換されていてもよい)は、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基、シクロヘプテニル基、オクテニル基、シクロオクテニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基またはオクチニル基を意味するものと解釈される。C1−〜C40−アルコキシ基とは、特に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、または2−メチルブトキシを意味するものと解釈される。5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族環系または複素芳香族環系(これらは、それぞれの場合において、上記したR基により置換されていてもよく、またいずれもの所望の位置を介して芳香環または複素芳香環に結合していてもよい)は、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス−若しくはトランス−インデノフルオレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解釈される。
【0015】
縮合アリール基または縮合ヘテロアリール基Ar2は、好ましくは、3つ、4つ、5つまたは6つの芳香族単位または複素芳香族単位を含有し、これらはそれぞれの場合において、1つ以上の共有の辺を介して互いに縮合し、従って、共有の芳香族π電子系を形成しており、またこれらはRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。縮合アリール基または縮合へテロアリール基Ar2は、特に好ましくは、3つ、4つまたは5つの芳香族単位または複素芳香族単位を含有し、特には3つまたは4つの芳香族単位または複素芳香族単位を含有し、これらはそれぞれの場合において、1つ以上の共有の辺を介して互いに縮合し、従って、共有の芳香族系を形成し、またこれらはRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。相互に縮合した芳香族単位および複素芳香族単位は、好ましくはベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジンおよびピリダジンから選択され、これらはRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよく、特に好ましくはベンゼンおよびピリジンであり、非常に特に好ましくはベンゼンである。以下のスキーム1は、アントラセンの例に関して、縮合アリール基において芳香族単位を意味するもの、および共有の辺を意味するものを図式的に示す。
【化3】

【0016】
ここで2つの基Ar1およびAr3は、隣接位を介してAr2に結合しておらず、またペリ位を介してもAr2に結合していない。結合は好ましくは、単位Ar2の少なくとも4個の芳香族環原子が、Ar1およびAr3の結合との間に位置するように存在する。
【0017】
縮合アリール基または縮合ヘテロアリール基であるAr2は、特に好ましくは、アントラセン、アクリジン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、ナフタセン、クリセン、ペンタセンおよびペリレンから成る群から選択され、これらはRにより任意に置換されていてもよい。Rによる置換は、より優れた溶解性の化合物を得るためには適切であり得る。縮合芳香族環系は、特に好ましくは、アントラセン、フェナントレン、ピレンおよびペリレン、特にアントラセンおよびピレンから成る群から選択され、これらはRにより任意に置換されていてもよい。単位Ar1およびAr3は好ましくは、アントラセンに、1,5位、9,10位、2,6位または1,4位を介して結合しており、特に好ましくは9,10位を介して結合している。ピレンへの結合は好ましくは、1,6位、1,8位、1,3位または2,7位を介して行われ、特に好ましくは1,6位または2,7位を介して行われる。フェナントレンへの結合は好ましくは、2,7位、3,6位、2,9位または2,10位を介して、特に好ましくは2,7位または3,6位を介して行われる。ペリレンへの結合は好ましくは、3,9位、3,10位、3,8位または2,8位を介して、特に好ましくは3,9位または3,10位を介して行われる。フェナントロリンへの結合は好ましくは、2,9位または3,8位を介して行われる。これらの縮合アリール基上の位置を以下のスキーム2に示す。
【化4】

【0018】
好ましいAr1基およびAr3基は、それぞれの出現において同一であるか異なり、5〜20個の芳香環原子、特に好ましくは5〜16個の芳香環原子、非常に特に好ましくは6〜14の芳香環原子を有する芳香族環系または複素芳香族環系である。これらはRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。芳香族ヘテロ原子を含まない芳香環系が特に好ましい。本発明の特に好ましい態様において、架橋L1、および存在する場合に架橋L2は、Ar1およびAr3にそれぞれ、Ar2への結合に対するオルト位において結合している。ここでオルト位とは、ベンゼンに対してと同様に、直接的に隣接する炭素原子上の位置を意味するものと解釈される。
【0019】
Ar1基およびAr3基は、好ましくは同一となるように選択される。この好ましさは、化合物のより容易な合成による入手のためである。
【0020】
好ましい二価の架橋L1およびL2は、1〜60個のC原子を含有する系であり、アルキレン、アルケン、6〜40個のC原子を含有する芳香族基、2〜40個のC原子を含有する複素芳香族基、イミン、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、チオアリール基、アミン、アリールアミンおよびアリールボラン、またはこれらの系の1つ以上の組み合わせから選択される。アルケンと芳香族化合物または複素芳香族化合物との組み合わせが特に好ましい。さらに、アリールアミン、アリールオキシ基またはアルコキシ基が好ましい。ここで架橋は、それぞれ、上記のR基により置換されていてもよい。
【0021】
架橋L1およびL2は、特に好ましくは、1〜10個のC原子を含有する二価の直鎖のアルキレン基または3〜10個のC原子を含有する二価の分枝若しくは環状のアルキレン基、1〜10個のC原子を有する二価のアルコキシ基若しくはビアルコキシ基、二価のアルケン基、6〜20個のC原子を有する二価の芳香族環系、2〜20個のC原子を有する二価の複素芳香族環系、またはこれらの系の2つ、3つ若しくは4つの組み合わせから選択される。これらの基は上記したR基により置換されていてもよい。架橋L1およびL2は、非常に特に好ましくは、1〜8個のC原子を含有する二価の直鎖のアルキレン基、3〜10個のC原子を含有する二価の分枝若しくは環状のアルキレン基、1〜8個のC原子を有する二価のアルコキシ基若しくはビアルコキシ基、二価のアルケン基、6〜18個のC原子を有する二価の芳香族環系、3〜18個のC原子を有する二価の複素芳香族環系、またはこれらの系の2つ若しくは3つの組み合わせから選択される。
【0022】
ここで架橋の長さは、好ましくは、実質的にストレスのない系が形成されるように選択される。架橋の長さに応じて、Ar1およびAr3に対する結合についてのAr2基の自由回転が可能である系、またはAr2基の自由回転が不可能な系を形成することができる。
【0023】
架橋の長さは、好ましくは、架橋が直接連結において4〜20個の架橋原子を含有するように選択される。架橋の長さまたは直接連結とは、架橋点間の架橋原子に沿った最も短い経路を意味するものと解釈される。ここで、直接連結の原子のみが架橋長さとみなされるために、架橋原子の数は架橋長さよりも多いということを特筆しておく。Ar2が9,10−または1,4−結合したアントラセン単位である場合には、架橋は好ましくは、4〜14個の架橋原子を、特に好ましくは5〜8個の架橋原子を含有する。Ar2がピレン単位または2,7−結合したフェナントレン単位である場合には、架橋は好ましくは、5〜16個の架橋原子を、特に好ましくは7〜14個の架橋原子を含有する。Ar2が3,6−結合したフェナントレン単位である場合には、架橋は好ましくは、4〜12個の架橋原子を、特に好ましくは4〜10個の架橋原子を含有する。
【0024】
本発明の好ましい態様において、添え字x=0であり、すなわち、1つの架橋L1のみが存在する。このことは、その際に低分子量の化合物が形成され、これはより容易に蒸発させることができ、またはより高い溶解性を有するために好ましいであろう。
【0025】
本発明のさらに好ましい態様において、添え字x=1であり、すなわち、2つの架橋L1およびL2が構造に存在する。このことは、このタイプの化合物が場合によって合成することがより容易であるために好ましいであろう。
【0026】
ここで、式(1)の化合物または架橋は、荷電していてもよい。
【0027】
式(1)の適切な化合物の例は、以下に示す構造(1)〜(82)である。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0028】
式(1)の化合物の一般的な合成については、B. Dietrich, P. Viout, J.-M. Lehn(Macrocyclic Chemistry, 1992, VCH)を参照されたい。式(1)の化合物を、例えば、最初にAr1−Ar2−Ar3系を構築することにより合成することができ、この系は芳香族基Ar1およびAr3上に適切な官能性を有しており、これは架橋L1およびL2の形成をそれぞれ促進する。さらなる反応工程において、架橋L1、または架橋L1およびL2を導入することができる。構造が、Ar1−Ar2結合ついての回転およびAr2−Ar3結合についての回転が阻害されている(アトロプ異性体の存在)ものの場合には、まず最初に、2つの官能基がAr2の同じ側にある(シン異性体)アトロプ異性体を単離することが適切であろう。このことは、例えば、再結晶により、またはクロマトグラフ分離により達成され得る(例えば、EP 04026402.0 を参照のこと)。これは、架橋L1の形成と閉環をより単純に行うことを可能にする。架橋の導入については、閉環を簡素化し、オリゴマーまたはポリマーの形成を防止するために、希釈を伴う反応を行うことが適切であろう。架橋L1および任意にL2の形成について適切である種々のタイプの反応は、例えば、ウイティッヒ−ホーナー反応、イミン形成、エーテル形成、例えばウイリアムソン法によるもの、またはパラジウムにより触媒されるブッフバルト(Buchwald)法によるもの、クライゼンエステル縮合、チーグラーニトリル縮合、アシロイン縮合、セリウム若しくはトリウムのカルボン酸塩のルジチカ(Ruzicka)縮合、エステル形成、アミド形成、4+2付加環化、例えばディールス−アルダー反応、ブッフバルトアミノ化、スズキカップリングまたはオレフィンメタセシスである。
【0029】
適切に官能化された式(1)の化合物、特にブロム化化合物、例えば上に示した構造(4)および(44)のようなものを、ポリマーへの取り込みのために用いることもできる。
【0030】
従って本発明は、さらに、式(1)の繰り返し単位を含む共役、部分的に共役した、または非共役のポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーに関する。これらの繰り返し単位を、例えば、ポリフルオレン(例えば EP 842208 または WO 00/22026 に従って)、ポリスピロビフルオレン(例えば EP 707020, EP 894107 または EP 04028865.6 に従って)、ポリ−パラ−フェニレン(例えば WO 92/18552 に従って)、ポリジヒドロフェナントレン(例えば WO 014689 に従って)、ポリフェナントレン(例えば WO 05/104264 に従って)、ポリインデノフルオレン(例えば WO 04/041901 または WO 04/113412 に従って)、ポリカルバゾール(例えば WO 04/070772 に従って)、ポリアントラセン、ポリナフタレン若しくはポリチオフェン(例えば EP 1028136 に従って)に重合することができる。これらの単位の複数を含有するポリマー、または式(1)の繰り返し単位のホモポリマーも可能である。
【0031】
本発明はさらに、式(1)の少なくとも1種の化合物と、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミンおよびアリールアミンのクラスから選択される1種以上の化合物とを含む混合物に関する。モノスチリルアミンとは、1つのスチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族の、アミンとを含む化合物を意味するものと解釈される。ジスチリルアミンとは、2つのスチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族の、アミンとを含む化合物を意味するものと解釈される。トリスチリルアミンとは、3つのスチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族の、アミンとを含む化合物を意味するものと解釈される。テトラスチリルアミンとは、4つのスチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族の、アミンとを含む化合物を意味するものと解釈される。本発明の目的上、アリールアミンまたは芳香族アミンとは、窒素に直接的に結合している3つの芳香族環系または複素芳香族環系を含む化合物を意味するものと解釈される。スチリル基は、特に好ましくはスチルベンであり、これはさらに置換されていてもよい。特に好ましいドーパントは、トリスチリルアミンのクラスから選択される。このタイプのドーパントの例は、置換または未置換のトリスチルベンアミン、または未公開特許出願 DE 102004031000.9、EP 04028407.7 および EP 05001891.0.に記載されているドーパントである。
【0032】
本発明はさらに、有機電子デバイスにおける式(1)の化合物または対応するポリマーの使用に関する。
【0033】
本発明はさらに、アノード、カソード、および式(1)の少なくとも1種の化合物または対応するポリマーを含む少なくとも1つの有機層を含む有機電子デバイスに関する。
【0034】
有機電子デバイスは、好ましくは、有機およびポリマー発光ダイオード(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチデバイス(organic field-quench device)(O−FQD)、光受容体、発光電気化学セル(LEC)、および有機レーザダイオード(O−laser)から成る電子デバイスの群から選択される。有機およびポリマー発光ダイオードが好ましい。
【0035】
有機電子デバイスは、1つ以上の有機層を含み、これらの少なくとも1層は、式(1)の少なくとも1種の化合物を含む。デバイスが有機エレクトロルミネセンスデバイスである場合には、少なくとも1つの有機層が発光層である。有機トランジスタの場合には、少なくとも1つの有機層が電荷輸送層である。有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいて、さらなる層が発光層に加えて存在していてもよい。これらは、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電荷障壁層、電子輸送層、および/または電子注入層であってよく、これらのそれぞれはドープされていてもよいし、ドープされていなくてもよい。しかしながら、ここで、これらの層のそれぞれが必ずしも存在する必要はないということを指摘しておく。
【0036】
式(1)の化合物の正確な構造によって、これを、有機電子デバイスにおいて種々の機能で用いることができ、例えば一重項状態からまたはより高いスピン多重度の状態(例えば三重項状態)から発光するドーパントのためのホスト材料として、ドーパントとして、正孔輸送材料として、電子輸送材料として、または正孔障壁材料として用いることができる。本発明の好ましい態様において、当該化合物はホスト材料として用いられる。好ましいドーパントは、上記したモノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミンおよびアリールアミンの群から選択される。
【0037】
さらに、1つ以上の層が昇華プロセスによりコーティングされていることを特徴とする有機電子デバイスが好ましい。ここでの材料を、蒸着により、真空昇華ユニットにおいて、10-5mbar以下の、好ましくは10-6mbar以下の、特に好ましくは10-7mbar以下の圧力で付着させる。
【0038】
同様に、1つ以上の層がOVPD(有機気相成長(organic vapour phase deposition))プロセスにより、またはキャリアガス昇華を用いてコーティングされていることを特徴とする有機電子デバイスが好ましい。ここでの材料を、一般的に、10-5mbar〜1barの圧力で付着させる。
【0039】
さらに、1つ以上の層が溶液から、例えばスピンコーティングにより、またはいずれもの所望の印刷プロセス、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷若しくはオフセット印刷のようなものを用いて、特に好ましくはLITI(光誘起熱画像化(light induced thermal imaging)、熱転写印刷)またはインクジェット印刷により製造されることを特徴とする有機電子デバイスが好ましい。
【0040】
上記の発光デバイスは、従来技術に対して以下の驚くべき利点を有する。
【0041】
1.対応するデバイスの安定性は、従来技術による系と比べて高く、これは特に、より長い寿命から明らかである。
2.本発明による化合物の昇華安定性は、従来技術による化合物の昇華安定性よりも高い。
3.その乏しい溶解性のために精製が困難であった今日用いられている化合物とは対照的に、式(1)の化合物は容易に溶解し、従って、精製がより単純であり、また溶液からの処理もより単純である。
4.従来技術による材料は場合によってアトロプ異性体を形成し、これは既に上記した通り再現性についての問題をもたらす。少なくとも1つの架橋L1の導入を通じて、本発明によれば、1つのみのアトロプ異性体が用いられ、これは異性体が存在せず、従ってデバイスの再現性のある製造が可能であることを意味する。特に、この架橋の導入は、材料の調製および精製の間の溶液状態における再異性化、または昇華の間の固体における若しくはガス相における再異性化が不可能であり、従って、異なる異性体の存在に起因する問題がここでは起こり得ないということも意味する。
【0042】

以下の合成を、他に述べない限り、保護ガス雰囲気下で行う。出発材料を、アルドリッチまたはABCRから購入することができる(9,10−ジブロモアントラセン、2−ホルミルベンゼンボロン酸、メトキシフェニルボロン酸、2−ブロモフェノール、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(0)、無機物、溶媒)。o−キシリレン二リン酸テトラエチルを DE 19600304 に記載されているように調製することができる。9,10−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)アントラセンを Zweig et al.(J. Org. Chem. 1967, 32, 1322)に記載されているように調製することができる。アントラセン−9−ボロン酸およびアントラセン−9,10−ビスボロン酸を、Suzuki et al.(Syn. Met. 2004, 143, 89)に記載されているように調製することができ、続いて水分離器上でエチレングリコールを用いてエステル化する(添加溶媒 トルエン)(収率:アントラセン−9−ボロン酸エチレングリコールエステルは83.0%、アントラセン−9,10−ビスボロン酸ビスエチレングリコールエステルは33.7%)。
【0043】
例1:アンサ化合物1(A1)の合成
【化17】

【0044】
a)9,10−ビス(2−ホルミルフェニル)アントラセン(アトロプ異性体混合物)
【化18】

【0045】
2.3g(2mmol)のテトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(0)を、500mlのトルエン、150mlのエタノール、および400mlの水の混合物中の33.6g(100mmol)の9,10−ジブロモアントラセン、45.0g(300mmol)の2−ホルミルベンゼンボロン酸および55.1g(520mmol)の炭酸ナトリウムの十分に撹拌し、脱気した懸濁液に加え、この混合物を60時間還流する。冷却後、有機層を分離し、500mlの水を用いて3回、500mlの飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて1回洗浄し、続いて硫酸マグネシウムにて乾燥させる。乾燥剤をろ過した後、有機層を、ロータリエバポレータにおいて減圧下で蒸発乾固させる。このようにして得られるオイル状の残渣を300mlのクロロホルムに溶解させ、吸引しながらシリカゲルフリットを通してろ過する。減圧下でクロロホルム相を蒸発させた後、糊状の残渣を200mlのエタノールに溶解させ、室温で1時間撹拌する。析出した結晶を吸引しながらろ過し、50mlのエタノールを用いて洗浄し、続いて減圧下で乾燥させる;収量:24.5g、理論の63.4%、1H−NMRによれば98%。1H−NMRによれば、このフラクションは、2つのアトロプ異性体を含み、これは、1.0(δ=9.43ppm):1.5(δ=9.40ppm)の割合の、ホルミルプロトンの光学的に分解したシグナルから明らかである。エタノール母液を減圧下でオイルにまで濃縮する;収量:12.8g、理論の33.1%、1H−NMRによれば97%。1H−NMRによれば、このフラクションは、1.0(δ=9.43ppm):2.9(δ=9.40ppm)の割合の2つのアトロプ異性体を含む。
【0046】
b)アンサ化合物1(A1)
2.11g(22mmol)のナトリウムtert−ブトキシドを、500mlのDMF中の2.08g(5.5mmol)のo−キシリレン二リン酸テトラエチルの溶液に0℃で加え、続いて0℃で45分間撹拌する。500mlのDMF中の1.93g(5mmol)の9,10−(2−ホルミルフェニル)アントラセン(a)からのアトロプ異性体)の溶液を、上記の溶液に激しく撹拌しながら1.5時間に渡って滴下して加える。反応混合物を室温でさらに12時間撹拌した後、1000mlの水、50mlの1NのHCl、および500mlのエタノールの混合物を滴下して加える。析出した沈殿物をろ過し、毎回50mlの水/エタノール(1:1,v/v)を用いて3回洗浄した後、毎回50mlのエタノールを用いて3回洗浄し、乾燥させる。残渣を3mlの酢酸エチルに溶解させ、15mlのn−ヘキサンを加え、この混合物を30分間撹拌する。オリゴマーフラクションおよびポリマーフラクションをろ過した後、母液をn−ヘキサン/酢酸エチル(10:1,v/v)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフにかける。収量:371mg、理論の16.2%、純度:HPLCによれば99.0%。昇華:p=1×10-5mbar、T=340℃。
【0047】
例2:アンサ化合物2(A2)の合成
【化19】

【0048】
a)9,10−ビス(2−ヒドロキシフェニル)アントラセン
【化20】

【0049】
2.3g(2mmol)のテトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(0)を、500mlの1,2−ジメトキシエタン、150mlのエタノールおよび400mlの水の混合物中の33.6g(100mmol)の9,10−ジブロモアントラセン、45.6g(300mmol)の2−メトキシベンゼンボロン酸、および55.1g(520mmol)の炭酸ナトリウムの十分に撹拌した、脱気した懸濁液に加え、この混合物を60時間還流する。冷却後、有機層を分離し、500mlの水を用いて3回および500mlの飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて1回洗浄し、続いて硫酸マグネシウムにて乾燥させる。乾燥剤をろ過した後、有機層を減圧下で蒸発乾固させる。このようにして得られるオイル状の残渣を300mlのクロロホルムに溶解させ、吸引しながらシリカゲルフリットを介してろ過する。クロロホルム相を減圧下で蒸発させた後、糊状の残渣を500mlのNMPに溶解させ、107.1g(800mmol)のヨウ化リチウム(無水物)を加え、混合物を190℃で24時間撹拌する。冷却後、反応混合物を2000mlの1NのHCl中に撹拌しながら導入する。沈殿した固体をろ過し、毎回200mlの水を用いて3回、および毎回100mlのエタノールを用いて3回洗浄する。最終的に、生成物をDMSO(10ml/g)から1回、ジオキサン(20ml/g)から1回再結晶した後、減圧下で乾燥させる。収量:24.8g、理論の68.4%、純度:HPLCによれば98.0%。化合物はアトロプ異性体の存在を示さず、これはOH基、アントラセンプロトンのAA’BB’成分、およびo−フェニレン基のABCD成分についての一重線を有する温度非依存1H−NMRスペクトルから明らかである。
【0050】
b)アンサ化合物2(A2)
3.62g(10mmol)の9,10−ビス(2−ヒドロキシフェニル)アントラセン、19.74g(10mmol)の炭酸バリウム、および500mlのDMSOの混合物を100℃に30分間加熱する。200mlのDMSO中の1.75g(10mmol)の1,2−ビスクロロメチルベンゼンの溶液を、この混合物に2時間に渡って滴下して加え、続いて混合物を100℃でさらに30分間撹拌する。冷却後、1000mlの水と50mlの1NのHClの混合物を加える。析出した沈殿物をろ過し、毎回50mlの水/エタノール(1:1,v:v)を用いて3回洗浄した後、毎回20mlのエタノールを用いて3回洗浄し、乾燥させる。残渣を5mlの酢酸エチルに溶解させ、20mlのn−ヘキサンを加えて、混合物を30分間撹拌する。オリゴマーフラクションおよびポリマーフラクションをろ過した後、母液を、n−ヘキサン/酢酸エチル(10:1,v/v)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフにかける。減圧下で乾燥させた後の収量:1.11g、理論の23.9%、純度:HPLCによれば99.0%。昇華:p=1×10-5mbar、T=340℃。
【0051】
例3:アンサ化合物3(A3)の合成
【化21】

【0052】
3.62g(10mmol)の9,10−ビス(2−ヒドロキシフェニル)アントラセン、3.30ml(30mmol)の4−メチルモルホリン、50mgの4−ジメチルアミノピリジン、および300mlのジオキサンの混合物を70℃に加熱する。200mlのジオキサン中の1.45ml(10mmol)のフタロイルクロライドの溶液をこの混合物に2時間に渡って滴下して加え、続いて混合物を70℃でさらに30分間撹拌する。冷却後、1000mlの水と50mlの1NのHClの混合物を加える。析出した沈殿物をろ過し、毎回50mlの水/エタノール(1:1,v:v)を用いて3回洗浄した後、毎回30mlのエタノールを用いて3回洗浄し、乾燥させる。残渣を5mlの酢酸エチルに溶解させ、35mlのn−ヘキサンを加えて、混合物を30分間撹拌する。オリゴマーフラクションおよびポリマーフラクションをろ過した後、母液を、n−ヘキサン/酢酸エチル(7:1,v:v)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフにかける。収量:1.30g、理論の26.4%、純度:HPLCによれば99.0%。昇華:p=1×10-5mbar、T=350℃。
【0053】
例4:アンサ化合物4(A4)の合成
【化22】

【0054】
a)1,3−ビス(2−ブロモフェニルオキシ)プロパン
【化23】

【0055】
2.6g(110mmol)の水素化ナトリウムを、200mlのDMF中の18.2g(105mmol)の2−ブロモフェノールの溶液に、激しく撹拌しながら少量ずつ加える。混合物をさらに15分間撹拌した後、1.5g(10mmol)のヨウ化ナトリウムを加える。50mlのDMF中の4.8ml(50mmol)の1,3−ジブロモプロパンの混合物を、上記混合物に滴下して加え、続いて室温で60時間撹拌する。この反応混合物に5mlのエタノールを滴下して加え、これを1000mlの水中に注ぎ入れ、200mlのジクロロメタンを用いて3回抽出する。集めた有機層を500mlの水を用いて5回洗浄し、MgSO4にて乾燥させ、減圧下で蒸発させる。残った泡状の物質を200mlのn−ヘプタンを用いて撹拌しながら洗浄し、吸引しながらろ過し、n−ヘプタンを用いて洗浄し、減圧下で乾燥させる。収量:15.0g、理論の77.7%、純度:1H−NMRによれば98.0%。
【0056】
b)アンサ化合物4(A4)
8.4mlのn−BuLi(n−ヘキサン中2.5M)を、1000mlのジエチルエーテル中の3.86g(10mmol)の1,3−ビス(2−ブロモフェニルオキシ)プロパンの溶液に撹拌しながら滴下して加える。反応混合物をRTでさらに2時間撹拌した後、−78℃にまで冷却し、続いて200mlのTHF中の2.10g(10mmol)のアントラキノンの溶液を滴下して加える。混合物を室温にまでゆっくりと昇温させた後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を200mlの氷酢酸に溶解させ、15.0g(10mmol)のヨウ化ナトリウムと17.6g(20mmol)の次亜リン酸ナトリウム水和物を加え、混合物を1時間還流する。冷却後、反応混合物を2lの水中に注ぎ入れ、毎回200mlのジクロロメタンを用いて3回抽出する。集めた有機層を毎回500mlの水を用いて3回洗浄し、続いて硫酸マグネシウムにて乾燥させ、減圧下で蒸発乾固させる。残渣を3mlの酢酸エチルに溶解させ、30mlのn−ヘキサンを加えて、混合物を30分間撹拌する。オリゴマーフラクションおよびポリマーフラクションをろ過した後、母液を、n−ヘキサン/酢酸エチル(10:1,v:v)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフにかける。収量:601mg、理論の14.9%、純度:HPLCによれば99.0%。
【0057】
例5:アンサ化合物5(A5)の合成
【化24】

【0058】
a)9,10−ビス(2,6−ビスヒドロキシフェニル)アントラセン
【化25】

【0059】
22.5g(50mmol)の9,10−ビス(2,6−ジメトキシフェニル)アントラセンを、500mlのNMP中に溶解させ、107.1g(800mmol)のヨウ化リチウム(無水物)を加え、この混合物を190℃にて48時間撹拌する。冷却後、反応混合物を2000mlの1NのHCl中に撹拌しながら導入する。沈殿した固体をろ過し、毎回200mlの水を用いて3回洗浄した後、毎回100mlのエタノールを用いて3回洗浄する。最後に、生成物をDMSO(15ml/g)から再結晶し、減圧下で乾燥させる。収量:16.9g、理論の85.7%、純度:HPLCによれば99.0%。
【0060】
b)アンサ化合物5(A5)の合成
3.94g(10mmol)の9,10−ビス(2,6−ビスヒドロキシフェニル)アントラセン、39.5g(20mmol)の炭酸バリウム、および500mlのDMSOの混合物を100℃で30分間加熱する。200mlのDMSO中の3.85g(22mmol)の1,2−ビスクロロメチルベンゼンを上記混合物に2時間に渡って滴下して加え、続いて混合物を100℃でさらに30分間撹拌する。冷却後、1000mlの水と50mlの1NのHClの混合物を加える。析出した沈殿物をろ過し、毎回50mlの水/エタノール(1:1,v:v)を用いて3回洗浄した後、毎回50mlのエタノールを用いて3回洗浄し、乾燥させる。残渣を、n−ヘキサン/酢酸エチル(7:1,v:v)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフにかける。減圧下で乾燥させた後の収量:2.9g、理論の48.4%、純度:HPLCによれば99.0%。
【0061】
例6:アンサ化合物6(A6)の合成
【化26】

【0062】
a)9,10−ビス(2−ブロモフェニル)アントラセン
【化27】

【0063】
2.9g(2.5mmol)のテトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(0)を、1300mlのジオキサン、350mlのエタノールおよび950mlの水の混合物中の121ml(1.0mol)の1,2−ジブロモベンゼン、79.5g(250mmol)の9,10−アントラセンビスボロン酸ビスエチレングリコールエステル、および157gのフッ化カリウム(2.7mol)の脱気した懸濁液に加えた後、混合物を100時間還流する。冷却後、結晶質の固体を吸引しながらろ過し、毎回200mlの水/エタノール(1:1,v:v)を用いて3回、および毎回100mlのエタノールを用いて3回洗浄し、減圧下で乾燥させて、o−ジクロロベンゼン(5ml/g)から再結晶する。収量:38.8g、理論の31.8%、純度:HPLCによれば99.0%。
【0064】
b)1,2−ビス(アントラセン−9−イル)ベンゼン
【化28】

【0065】
1.6g(1mmol)のテトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(0)を、550mlのジオキサン、150mlのエタノールおよび400mlの水の混合物中の12.1ml(100mmol)の1,2−ジブロモベンゼン、74.4g(300mmol)の9−アントラセンボロン酸エチレングリコールエステル、58.1gのフッ化カリウム(1mol)の脱気した懸濁液に加え、この混合物を100時間還流する。冷却後、固体を吸引しながらろ過し、毎回200mlの水/エタノール(1:1,v:v)を用いて3回、および毎回100mlのエタノールを用いて3回洗浄し、減圧下で乾燥させる。固体を1000mlの酢酸に懸濁させて、1時間還流する。懸濁液を90℃にまで冷ましておき、ガラス吸込フィルタ(P3)を通して素早くろ過する。ろ液を700mlの酢酸に再懸濁させ、1時間還流し、再び熱いうちに吸引しながらろ過する。このようにして得られた固体を1000mlの熱エタノール中で撹拌しながら洗浄し、減圧下で乾燥させる。収量:33.8g、理論の78.5%、純度:1H−NMRによれば97%。
【0066】
c)1,2−ビス(10−ブロモアントラセン−9−イル)ベンゼン
【化29】

【0067】
35.6g(200mmol)のNBSを、500mlのTHF中の21.5g(50mmol)の1,2−ビス(アントラセン−9−イル)ベンゼンおよび300gのガラスビーズ(直径4mm)の懸濁液に、光を排除しながら、室温で激しく撹拌しながら加える。混合物を24時間撹拌した後、さらに17.8g(100mmol)のNBSを加え、混合物をさらに24時間撹拌する。混合物をシリカフリットを通して吸引しながらろ過してガラスビーズを除去し、後者を500mlのEtOHを用いてすすぐ。母液中の固体をろ過し、毎回100mlのエタノールを用いて5回洗浄し、減圧下で乾燥させる。収量:22.9g、理論の77.8%、純度:1H−NMR(TCE−d2,90℃)によれば97.0%。
【0068】
d)アンサ化合物6(A6)の合成
16.8ml(42mmol)のn−BuLi(n−ヘキサン中2.5M)を、1000mlのTHF中の4.88g(10mmol)の9,10−ビス(2−ブロモフェニル)アントラセンおよび5.88gの1,2−ビス(10−ブロモアントラセン−9−イル)ベンゼンの−78℃に冷却された懸濁液に滴下して加え、この混合物を−78℃でさらに3時間撹拌する。その後、6.1g(45mmol)の無水塩化銅(II)を加え、混合物を−78℃でさらに1時間撹拌し、室温にまで昇温させて、50℃でさらに16時間撹拌する。冷却し、1000mlのジクロロメタンを添加した後、混合物をシリカゲルを通してろ過し、有機層を10%のアンモニア溶液を用いて5回洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥させ、減圧下で蒸発させる。残渣を6mlのジクロロメタンに溶解させ、30mlのn−ヘキサンを加え、混合物を30分間撹拌する。オリゴマーフラクションおよびポリマーフラクションをろ過した後、母液を、n−ヘキサン/ジクロロメタン(5:1,v:v)を用いてシリカゲル上でクロマトグラフにかける。収量:730mg、理論の9.6%、純度:HPLCによれば99.0%。昇華:p=1×10-5mbar、T=300℃。
【0069】
例7:OLEDの製造
OLEDを、WO 04/058911 に記載されている一般的なプロセス(これは、詳細な状況に対して個々の場合に適合させる(例えば、最適の効率または色を達成するための層の厚さの変化))により製造する。
【0070】
以下の例において、種々のOLEDの結果を示す。発光層に加えて、用いた基本構造、材料および層の厚さはより良い比較のために全ての例において同一である。以下の構造を有するOLEDを、上記した一般プロセスと同様に製造する。
【0071】
正孔注入層(HIL):60nmのPEDOT(水からスピンコーティングにより付着させる;H.C.シュターク(Starck),ゴスラー(Goslar),ドイツから購入;ポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン))
正孔輸送層(HTL):20nmのNaphDATA(蒸着により付着させる;SynTec,ウォルフェン(Wolfen),ドイツから購入;4,4’,4’’−トリス(N−1−ナフチル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)
正孔輸送層(HTL):20nmのS−TAD(蒸着により付着させる;WO 99/12888 に記載されるように調製;2,2’,7,7’−テトラキス(ジフェニルアミノ)スピロ−9,9’−ビフルオレン)
発光層(EML):材料、濃度および層の厚さについては表1を参照のこと
電子輸送層:AlQ3の10nm(蒸着により付着させる;SynTecから購入したAlQ3;トリス(キノリナト)アルミニウム(III))
Ba−Al(カソード):3nmのBa,この上に150nmのAl。
【0072】
これらの未だ最適化されていないOLEDを、標準的な方法により特性決定する;エレクトロルミネセンススペクトル、効率(cd/Aで測定)、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算される輝度の関数としてのパワー効率(Im/Wにて測定)、および寿命を本目的のために測定する。寿命は、10mA/cm2の一定の電流密度においてOLEDの初期輝度が半分にまで低下した後の時間として定義する。
【0073】
表1は、層の厚さを含むEMLの組成に沿った、いくつかのOLEDの結果を示す。EMLは発光材料としてドーパントD1を含む。用いたホスト材料は、以下に示す化合物V1およびV2(従来技術による比較材料)およびアンサ化合物A1〜A6(例1〜6)である。
【化30】

【0074】
表から判断できる通り、より良好な寿命が、従来技術によるホスト材料よりも本発明によるアンサ化合物を用いて得られる。さらに、特に、青色ドーパントと組み合わせたアンサ化合物A6は、1つの発光層のみから非常に効率的な白色発光を生成することができ、非常に良好な寿命を有する。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物。
【化1】

(式中、以下が用いられる記号および添え字に適用される。すなわち、
Ar1,Ar3は、それぞれの出現において同一であるか異なり、6〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環系または複素芳香族環系(これらは、1つ以上のR基により置換されていてもよい)であり、
Ar2は、それぞれの出現において同一であるか異なり、14〜40個の芳香族環原子を有する縮合アリール基または縮合ヘテロアリール基(これらは、1つ以上のR基により置換されていてもよい)であり、但し、2つの基Ar1およびAr3は、隣接位またはペリ位を介してAr2には結合しておらず、
1およびL2は、それぞれの出現において同一であるか異なり、1〜60個のC原子を含有する二価の有機架橋(これらは、1つ以上のR基により置換されていてもよい)であり、
Rは、それぞれの出現において同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、CN、NO2、COOR1、B(OR12、B(R12、Si(R13、1〜40個のC原子を有する直鎖のアルキル鎖若しくはアルコキシ鎖、または3〜40個のC原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル鎖若しくはアルコキシ鎖(これらのそれぞれはR1により置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の非隣接のC原子は、N−R1、O、S、O−CO−O、CO−O、−CR1=CR1−または−C≡C−により置き換えられていてもよく、かつ1つ以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNにより置き換えられていてもよい)、または5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環系若しくは複素芳香族環系(これらは、1つ以上のR1基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つ若しくは4つの組み合わせであり、ここで2つ以上のR基は互いに、さらなる単環または多環の脂肪族環系または芳香族環系を形成していてもよく、
1は、それぞれの出現において同一であるか異なり、Hまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基であり、ここで2つ以上のR1基は互いに、環系を形成していてもよく、
xは、それぞれの出現において同一であるか異なり、0または1であり、ここで、x=0とは、架橋L2が存在しないことを意味する)。
【請求項2】
前記縮合アリール基または縮合ヘテロアリール基Ar2が、3つ、4つ、5つまたは6つの芳香族単位または複素芳香族単位を含み、これらはそれぞれの場合において、1つ以上の共有の辺を介して縮合し、従って共有の芳香族系を形成しており、またこれらはRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
互いに縮合した前記芳香族単位および複素芳香族単位Ar2が、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジンおよびピリダジンから選択され、これらはRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記縮合アリール基またはヘテロアリール基Ar2が、アントラセン、アクリジン、フェナントレン、ピレン、ナフタセン、クリセン、ペンタセン、フェナントロリンおよびペリレンから成る群から選択され、これらはRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
2つのAr1基およびAr3基が、単位Ar2の少なくとも4個の芳香族環原子がAr1およびAr3の間に位置するように結合していることを特徴とする請求項1〜4の一項以上に記載の化合物。
【請求項6】
Ar1基およびAr3基はそれぞれの出現において同一であるか異なり、6〜40個のC原子を有する芳香族環系、または2〜40個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を有し、但しC原子とヘテロ原子の総数が少なくとも5個である複素芳香族環系を示し、これらはそれぞれRにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを特徴とする請求項1〜5の一項以上に記載の化合物。
【請求項7】
架橋L1および存在する場合に架橋L2は、Ar1およびAr3にそれぞれ、Ar2に対する結合に対してオルト位で結合していることを特徴とする請求項1〜6の一項以上に記載の化合物。
【請求項8】
Ar1基およびAr3基が同一であるように選択されることを特徴とする請求項1〜7の一項以上に記載の化合物。
【請求項9】
二価の架橋L1およびL2が、アルケン、6〜40個のC原子を含有する芳香族基、2〜40個のC原子を含有する複素芳香族基、イミン、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、チオアリール基、アミン、アリールアミン、アルキレン、およびアリールボラン、またはこれらの系の1つ以上の組み合わせの群から選択されることを特徴とする請求項1〜8の一項以上に記載の化合物。
【請求項10】
架橋L1およびL2の長さが、実質的にストレスのない系が形成されるように選択されることを特徴とする請求項1〜9の一項以上に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10の一項以上に記載の繰り返し単位を含む共役、部分的に共役した、または非共役のポリマー、オリゴマーまたはデンドリマー。
【請求項12】
請求項1〜11の一項以上に記載の少なくとも1種の化合物、並びにモノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミンおよびアリールアミンのクラスから選択される1種以上の化合物を含む混合物。
【請求項13】
有機電子デバイスにおける請求項1〜12の一項以上に記載の化合物および混合物の使用。
【請求項14】
アノード、カソード、および請求項1〜12の一項以上に記載の少なくとも1種の化合物または混合物を含む少なくとも1つの有機層を含む有機電子デバイス。
【請求項15】
有機およびポリマー発光ダイオード(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機電界クエンチデバイス(organic field-quench device)(O−FQD)、および有機レーザダイオード(O−laser)から成る電子デバイスの群から選択される請求項14に記載の有機電子デバイス。
【請求項16】
請求項1〜11の一項以上に記載の前記化合物が、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいてホスト材料として用いられていることを特徴とする請求項14および/または15に記載の有機電子デバイス。
【請求項17】
ドーパントが、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミンおよびアリールアミンの群から選択されることを特徴とする請求項16に記載の有機電子デバイス。

【公表番号】特表2008−538350(P2008−538350A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501186(P2008−501186)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001991
【国際公開番号】WO2006/097208
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】