説明

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法

【課題】凸版印刷法により有機発光層を形成してなる有機EL素子であって、第一電極間にある隔壁前後に供給されるインキの流れ込みを防ぎ、隔壁近傍の有機発光層の膜厚と電極中央の有機発光層の膜厚を略同等にすることにより、画素内での発光ムラ並びに混色、画素間での発光ムラの無い高光学特性の有機EL素子の提供を目的とする。
【解決手段】基板上に、第一電極(画素電極)と有機発光体層が順次積層してなる画素が隔壁で区画され、さらに前記有機発光体層側上に前記第一電極と対向するように第二電極を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記隔壁で区画された画素間の中央部に第二の隔壁を設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示端末などのディスプレイへの用途が期待される有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子とする)とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、二つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層が形成され、有機発光層に電流を流すことで発光させるものであるが、効率よく発光させるには有機発光層の膜厚が重要であり、100nm程度の薄膜にする必要がある。さらに、これをディスプレイ化するには各画素が赤色(R)、緑色(G)、青色(B)となるように、有機発光層を高精細にパターニングする必要がある。
【0003】
有機発光層を形成する有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は抵抗加熱蒸着法等の乾式成膜法により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出難いという問題がある。
【0004】
そこで、最近では有機発光材料に高分子材料を用い、有機発光材料を溶剤に分散または溶解させて塗工液にし、これを湿式成膜法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するための湿式成膜法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法等があるが、高精細にパターニングしたりRGB3色に塗り分けしたりするためには、これらのウェットコーティング法では難しく、塗り分け・パターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
【0005】
さらに、各種印刷法のなかでも、ガラスを基板とする有機EL素子やディスプレイでは、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きであり、弾性を有するゴムブランケットを用いるオフセット印刷法や同じく弾性を有するゴム版や樹脂版を用いる凸版印刷法が適当である。実際にこれらの印刷法による試みとして、オフセット印刷による方法(特許文献1)、凸版印刷による方法(特許文献2)などが提唱されている。
【0006】
有機発光層の形成材料である有機発光材料は、水、アルコール系の溶剤に対する溶解性が悪く、塗工液(以下インキと記す)化するには、有機溶剤を用いて溶解、分散させる必要があり、中でも、トルエンやキシレンといった有機溶剤が好適である。したがって、有機発光材料のインキ(以下有機発光インキと記す)は有機溶剤のインキとなっている。
【0007】
ところが、オフセット印刷に用いるゴムブランケットはトルエンやキシレン有機溶剤によって膨潤や変形を起こしやすいという問題がある。ブランケットに使用されるゴムの種類はオレフィン系のゴムからシリコン系のゴムまで多様であるが、いずれのゴムもトルエン、キシレンその他の溶剤に対して耐性がなく、膨潤や変形が起こりやすく、よって有機発光インキの印刷には不適当である。
【0008】
また、弾性を有する凸版を使用する凸版印刷法には、ゴム製の版を用いるフレキソ印刷方式と樹脂性の版を用いる樹脂凸版方式があるが、このうち水現像タイプの樹脂凸版を用いる方式であれば、トルエン、キシレンといった有機溶剤に対する耐性も高く、有機発光インキの印刷に使用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−155858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般にアクティブマトリックス方式の基板に対して凸版印刷法を用いて有機発光層を形成する場合、ラインパターンを有する樹脂凸版の凸部は、第一電極間にある隔壁をまたぐようにしてインキを連続的に供給し、印刷される。したがって、有機発光インキは、パターン化された第一電極と第一電極間の隔壁の両方に供給される。このような場合においても、第一電極間にある隔壁前後に供給されたインキの流れ込みによって、隔壁近傍の有機発光層の膜厚が電極中央の有機発光層の膜厚と比較して厚くなってしまうことと、隔壁で囲まれた第一電極毎のインキの供給量にバラツキが発生してしまうことから、画素内での発光ムラ(発光領域の偏りなど)、画素間での発光ムラ(画素間の発光面積のバラツキ)が発生してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、凸版印刷法により有機発光層を形成してなる有機EL素子であって、第一電極間にある隔壁前後に供給されるインキの流れ込みを防ぎ、隔壁近傍の有機発光層の膜厚と電極中央の有機発光層の膜厚を略同等にすることにより、画素内での発光ムラ並びに混色、画素間での発光ムラの無い高光学特性の有機EL素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、基板上に、第一電極(画素電極)と有機発光体層が順次積層してなる画素が隔壁で区画され、さらに前記有機発光体層側上に前記第一電極と対向するように第二電極を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記隔壁で区画された画素間の中央部に第二の隔壁を設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記隔壁の高さが1.0μm以下の逆テーパ形状で、前記第二の隔壁の高さが1.0〜2.0μm、且つ、隣接する第二の隔壁とは非連続であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子である。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記有機発光体層を構成する有機発光体層組成物の少なくとも1層が、溶媒に溶解または分散によりインキ化し、前記インキを用いて湿式成膜法により有機発光体層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記湿式成膜法が凸版印刷法であることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、凸版印刷法により第一電極間にある隔壁前後に供給されるインキの流れ込みを防ぎ、隔壁近傍の有機発光層の膜厚と電極中央の有機発光層の膜厚を略同等にすることにより、画素内での発光ムラ並びに混色、画素間での発光ムラの無い高光学特性の有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の有機EL素子の説明断面図。
【図2】本発明の有機EL素子の正孔輸送層と有機発光層印刷前の説明断面図。
【図3】本発明の隔壁の配置例の模式図。
【図4】本発明の隔壁の配置例及び横から見た模式図。
【図5】本発明の凸版印刷装置の概略図。
【図6】本発明の隔壁形成の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の有機EL素子についてより具体的に図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の有機EL素子の説明断面図を示す。図1に示すように、本発明の有機EL素子は、ガラス基板1の上に、第一電極2を有している。パッシブマトリックス方式の場合、この第一電極2はストライプ状のパターンを有している。アクティブマトリックス方式の場合、第一電極2は画素ごとのパターンを有している。なお、本発明はパッシブマトリックス方式の有機EL素子、アクティブマトリックス方式の有機EL素子のどちらにも適用可能である。
【0020】
本発明の有機EL素子は、第一電極2上であって、隔壁51で区画された領域(画素)に有機発光媒体層を有している。有機発光媒体層は、有機発光層単独から構成されたものであってもよいし、有機発光層と発光補助層との積層構造から構成されたものでもよい。図1では発光補助層である正孔輸送層3と有機発光層(41、42、43)との積層構造から構成された有機発光媒体層を示している。第一電極2上に正孔輸送層3が設けられ、正孔輸送層3上に有機発光層41(赤色)、有機発光層42(緑色)、有機発光層43(青色)がそれぞれ設けられている。かつ、隔壁51と中央部に設けられた第二の隔壁52の間にはインキ溜り44が設けられている。
【0021】
また、正孔輸送層3と有機発光層41、42、43を塗布する前の状態を図2として紹介する。
【0022】
更に、有機発光層上に第二電極6が配置される。パッシブマトリックス方式の場合、ストライプ状を有する第一電極2と直交する形で第二電極6はストライプ状に設けられる。アクティブマトリックス方式の場合、第二電極6は、有機EL素子全面に形成される。
【0023】
また、図3、4に本発明の隔壁の配置例を示した。アクティブマトリックス方式の有機EL素子では第一電極2は画素毎に形成される。赤色(R)、緑色(G)、青色(B)という発光色の異なる有機発光インキを用いて凸版印刷法により有機発光層を形成しようとした場合、凸版印刷法に用いられる樹脂版はストライプ状であり、第一電極間にもインキは供給される。凸版印刷法における印刷方向を矢印Yで示した。このとき、印刷方向Yに対して図3、4のように、隔壁51により区画された画素間の中央部に第二の隔壁52を設けることにより、不要なインクはインク溜り44へと流れる。
【0024】
次に、本発明に係る有機EL素子の製造方法を説明する。
【0025】
本発明にかかる基板としては、絶縁性を有する基板であればいかなる基板も使用することができる。この基板側から光を出射するボトムエミッション方式の有機EL素子とする場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
【0026】
例えば、ガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これら、プラスチックフィルムやシートに、有機発光媒体層への水分の侵入を防ぐことを目的として、金属酸化物薄膜、金属弗化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
【0027】
また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
【0028】
また、これらに薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、アクティブマトリックス方式の有機EL素子用の基板とすることが可能である。薄膜トランジスタとしては、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0029】
活性層は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。
【0030】
これらの活性層は、例えば、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法、SiH4ガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法、Si2H6ガスを用いてLPCVD法により、また、SiH4ガスを用いてPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザー等のレーザーによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス)、減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にn+ポリシリコンのゲート電極を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)等が挙げられる。
【0031】
ゲート絶縁膜としては、通常、ゲート絶縁膜として使用されているものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO2;ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO2等を用いることができる。
【0032】
ゲート電極としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができ、例えば、アルミ、銅等の金属、チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属、ポリシリコン、高融点金属のシリサイド、ポリサイド等が挙げられる。
【0033】
また、薄膜トランジスタは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。本発明の有機EL素子は薄膜トランジスタが有機EL素子のスイッチング素子として機能するように接続されている必要があり、トランジスタのドレイン電極と有機EL素子の第一電極2が電気的に接続されている。薄膜トランジスタとドレイン電極と有機EL素子の第一電極2との接続は、平坦化膜を貫通するコンタクトホール内に形成された接続配線を介して行われる。
【0034】
基板上には第一電極2が設けられる。第一電極2を陽極とした場合、その材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等の金属複合酸化物や金、白金、クロムなどの金属材料を単層または積層したものをいずれも使用できる。第一電極2の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。
【0035】
なお、低抵抗であること、溶剤耐性があること、また、ボトムミッション方式としたときには透明性が高いことなどからITOが好ましく使用できる。ITOはスパッタ法によりガラス基板上1に形成され、フォトリソ法によりパターニングされて第一電極2となる。
【0036】
第一電極2を形成後、第一電極縁部を覆うようにして隔壁51及び隔壁51で区画された画素間の中央部に第二の隔壁52が形成される。隔壁51及び隔壁51で区画された画素間の中央部の第二の隔壁52は絶縁性を有する必要があり、感光性材料等を用いることができる。感光性材料としては、ポジ型であってもネガ型であってもよく、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることができる。また、隔壁形成材料として、SiO、TiO等を用いることもできる。
【0037】
隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングがおこなわれる。スピンコート法の場合、隔壁の高さは、スピンコートするときの回転数等の条件でコントロールできるが、1回のコーティングでは限界の高さがあり、それ以上高くするときは複数回スピンコートを繰り返す手法を用いる。また、隔壁形成材料がSiO、TiOの場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
【0038】
このとき画素隔壁51及び画素間の中央部の第二の隔壁52の各々の高さ及び形状が重要なポイントとなる。まずは以下に隔壁形成方法を記すがこれは一例であり下記に限定するものではない。まずは隔壁51を形成すべく前述のスピンコート法により該基板に感光性材料を塗布した後にホットプレート上にてプリベークにより焼き固め、これにパターンが描かれたフォトマスクを重ねた後に該基板は露光機により照射される。ここで照射を受けた感光性材料をアルカリ性現像液にて現像を施し、該現像液を水洗した後に該基板をオーブンにてポストベークを施す。以上の工程を以ってパターン化された隔壁を形成することが出来る。ここで形成する隔壁51の高さは有機発光層41、42、43の平坦性を上げるためには低くあるべきであり1.0μm以下が好ましい。また、同様の手法により形成する中央隔壁52は混色を防ぐためになるべく高くあるべきではあるが、高すぎると版から画素へのインキの転写に不良が起こりやすくなったり第2電極6を断線したりと、高さにも限界がある。その高さは1.0〜2.0μmの範囲が好ましい。また、下限として設定した1.0μmを下回ると混色が発生しやすくなってしまう。また、ここで画素間の中央部の第二の隔壁52の形状が逆テーパであることでインキの乗り越え難さを強化することが出来る。さらにインキ溜り44が幅10〜15μm程度といった十分な領域を確保する。尚、隔壁形成の過程は図5に記す。
【0039】
次に、有機発光媒体層を形成する。有機発光媒体層は、有機発光層41、42、43単独から構成されたものでもよいし、有機発光層41、42、43と正孔輸送層3、その他正孔注入層、電子輸送層、電子注入層といった発光を補助するための発光補助層との積層構造としてもよい。なお、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層は必要に応じて適宜選択される。
【0040】
有機発光層41、42、43は電流を流すことにより発光する層である。有機発光層41、42、43の形成する有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラートシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0041】
また、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポリフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N´−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N´−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光対等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料を、高分子中に分散させたものが使用できる。高分子としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等が使用できる。
【0042】
また、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド(PPP−NEt3)ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)などの高分子発光材料であってもよい。PPV前駆体、PNV前駆体、PPP前駆体などの高分子前駆体が挙げられる。また、これら高分子材料に前記低分子発光材料の分散又は共重合した材料や、その他既存の発光材料を用いることもできる。
【0043】
正孔輸送層の材料としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N´−ジフェニル−N,N´−ビス(3−メチルフェニル)−1,1´−ビフェニル−4,4´−ジアミン、N,N´−ジ(1−ナフチル)−N,N´−ジフェニル−1,1´−ビフェニル−4,4´−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0044】
また、電子輸送層の材料としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
【0045】
有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール
、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メチル−(t−ブチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン等を単独又は混合して用いることができる。また、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0046】
正孔輸送材料、電子輸送材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶剤などが挙げられる。特に、正孔輸送材料をインキ化する場合には水またはアルコール類が好適である。
【0047】
有機発光媒体層は湿式成膜法により形成される。なお、有機発光媒体層が積層構造から構成される場合には、その各層の全てを湿式成膜法により形成する必要はない。湿式成膜法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、吐出コート法、プレコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗布法と、凸版印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、有機発光層41、42、43を形成する場合、印刷法によって画素部に選択的に適用することができる。このため、各画素に、互いに異なる色彩に発光する発光層を印刷して、カラー表示のできる有機EL素子を製造することが可能となる。
【0048】
特に、有機発光層41、42、43の形成方法は凸版印刷法によって好適に形成される。凸版印刷法はインクジェット法と異なり、版と基板が直接的に接するようにしてインキが転移されるため、隔壁は低くすることが望ましい。本発明において凸版印刷法に用いる凸版は水現像タイプの樹脂凸版を用いることが好ましい。本発明における樹脂版を構成する水現像タイプの感光性樹脂としては、例えば親水性のポリマーと不飽和結合を含むモノマーいわゆる架橋性モノマー及び光重合開始剤を構成要素とするタイプが挙げられる。このタイプでは、親水性ポリマーとしてポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等が用いられる。また、架橋性モノマーとしては、例えばビニル結合を有するメタクリレート類が挙げられ、光重合開始剤としては例えば芳香族カルボニル化合物が挙げられる。中でも、印刷適性の面からポリアミド系の水現像タイプの感光性樹脂が好適である。
【0049】
有機発光層41、42、43の形成に用いる印刷装置は、平板に印刷する方式の凸版印刷装置であれば使用可能であるが、以下に示すような印刷装置が望ましい。図6に本発明の凸版印刷装置の概略図を示した。本製造装置は、インクタンク13とインキチャンバー14とアニロックスロール15と樹脂凸版16を取り付けした版胴17を有している。インクタンク13には、溶剤で希釈された有機発光インキが収容されており、インキチャンバー14にはインクタンク13より有機発光インキが送り込まれるようになっている。アニロックスロール15は、インキチャンバー14のインキ供給部及び版胴17に接して回転するようになっている。
【0050】
アニロックスロール15の回転にともない、インキチャンバー14から供給された有機発光インキはアニロクスロール15表面に均一に保持されたあと、版胴17に取り付けされた樹脂凸版16の凸部に均一な膜厚で転移する。さらに、被印刷基板18は摺動可能な基板固定台上に固定され、版のパターンと基板のパターンの位置調整機構により、位置調整しながら印刷開始位置まで移動して、版胴17の回転に合わせて樹脂凸版16の凸部が基板に接しながらさらに移動し、ステージ19上にある被印刷基板18の所定位置にパターニングしてインキを転移する。
【0051】
次に、第二電極6を形成する。第二電極6を陰極とした場合その材料としては電子注入
効率の高い物質を用いる。具体的にはMg、AL、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いる。または電子注入効率と安定性を両立させるため、低仕事関数なLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系が用いられる。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。また、トップエミッション方式の有機EL素子とする場合は、陰極は透明性を有する必要があり、例えば、これら金属とITO等の透明導電層の組み合わせによる透明化が可能となる。
【0052】
第二電極6の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。厚さは10nm〜1μm程度が望ましい。なお、本発明では第一の電極を陰極、第二の電極を陽極とすることも可能である。
【0053】
そして、ガラス板やガラスキャップ等により接着剤を介して封止をおこない、水分や酸素による発光媒体層等の劣化を防止し、有機EL素子となる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基き、本発明をより具体的に説明する。
【0055】
<実施例1>
薄膜トランジスタがスイッチング素子として機能するために、平坦化膜に作製されたコンタクトホールを介して第一電極2と接続されるように形成されたトップエミッション用バックプレーンを用い、画素数240×320ドットでサブピクセル数720×320ドットとした。そして、120μm×360μmピッチでサブピクセル間スペースは縦40μm、横100μmとなるようにクロム(Cr)をスパッタリング法によりパターン形成し、第一電極2とした。
【0056】
次に、ネガ型の感光性材料であるTELRシリーズ(東京応化社製)40mlをスピンコート法にて20sec、450rpmで有効面全面に塗布し、120度で60secプリベークを施した。そして、積算300mJの露光、75secの現像処理および90secの水洗後、230℃のポストベークを行い、図2に示したような配置を有する隔壁51を形成した。得られた隔壁の高さは0.5μmであり、縦の隔壁幅は10μmである。また、横の隔壁幅は10μmであった。各隔壁において第一電極2との重なり部分は5μmであり、第一電極2のエッジを被覆し、第一電極2の4辺を囲むようにしてある。さらにNPR9700T(ナガセケムテックス製)50mlを用い、スピンコート法にて15sec、450rpmで有効面全面に塗布し、90℃で60secプリベークを施した。そして、積算200mJの露光、60secの現像処理および90secの水洗後、200℃のポストベークを行い、第二の隔壁52を形成した。このとき第二の隔壁52の高さは1.0μmであり、縦の隔壁幅は10μmである。また、横の隔壁幅は3.0μmであった。この結果インク溜り44として幅5.0μmを設けた。
【0057】
次に、第一電極2上に正孔輸送層3として、厚さ0.1μmのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物(以下PEDOT/PSSという)を水に分散させ、スピンコート法により成膜した。その後、メタノールを用いてふき取ることによって有効画素周辺にある不必要箇所にある正孔輸送インキを取り除いた。
【0058】
次に、赤色、緑色、青色の発光色を有する有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体らを、水現像タイプの感光性樹脂凸版を用いた凸版印刷法で各色についておこない、有機発光層41、42、43を形成した。このとき、150線/インチのアニロックスロールを使用して、得られた有機発光層41、42、43の膜厚は80nmであった。
【0059】
次に、第二電極6として真空蒸着法でBaを5nm、その上にAlを20nm成膜した。その後スパッタリング法をもちいてITO膜を成膜し、大気暴露することなく露点−80度、酸素濃度1ppmの窒素下で熱硬化型接着剤を用いてガラス板をはりつけることによって封止をおこない、有機EL素子を作製した。
【0060】
<比較例1>
第二の隔壁52を設けず、隔壁パターンを高さ0.5μm、縦の隔壁幅を10μm、横の隔壁幅を10μmとし、第一電極2との重なり部分が5μmの隔壁51を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0061】
<比較例2>
画素隔壁パターンを高さ0.5μm、縦の隔壁幅を10μm、横の隔壁幅を10μmとし、第一電極2との重なり部分を5μmとし、第一電極2間に1列ずつの格子状パターンを有する隔壁51を形成した。さらに隔壁51と同様の手法・条件にて第二の隔壁52を形成した。このとき第二の隔壁52の高さは0.5μmであり、縦の隔壁幅は10μmである。また、横の隔壁幅は3.0μmであった。この結果インク溜り44として幅5.0μmを設けた。その後の工程は実施例1と同様に行い、有機EL素子を作製した。
【0062】
<比較例3>
画素隔壁パターンを高さ0.5μm、縦の隔壁幅を10μm、横の隔壁幅を10μmとし、第一電極2との重なり部分を5μmとし、第一電極2間に1列ずつの格子状パターンを有する隔壁51を形成した。さらに隔壁51と同様の手法・条件にて第二の隔壁52を形成した。このとき第二の隔壁52の高さは2.5μmであり、縦の隔壁幅は10μmである。また、横の隔壁幅は3.0μmであった。この結果インク溜り44として幅5.0μmを設けた。その後の工程は実施例1と同様に行い、有機EL素子を作製した。
【0063】
<比較例4>
隔壁51パターンを高さ1.5μm、縦の隔壁幅を10μm、横の隔壁幅を10μmとし、第一電極2との重なり部分は5μmとし、第一電極2間に1列ずつの格子状パターンを有する隔壁51を形成した。さらに実施例1と同様の手法にて縦方向に連なる第二の隔壁52を形成した。このとき第二の隔壁52の高さは1.0μmであり、縦の隔壁幅は10μmである。また、横の隔壁幅は3.0μmであった。その後の工程は実施例1と同様に行い、有機EL素子を作製した。
【0064】
<評価>
実施例1及び比較例1〜4で得られた有機EL素子に対して、パネルの表示確認をおこない、発光状態の評価をした。
【0065】
<比較結果>
実施例1で得られた本発明品は、発光ムラや混色(色ムラ)などの異常はなく、良好な結果が得られた。一方、比較例1で得られた比較例品では、画素内において発光域の偏りといった異常は見られなかったが、混色という色ムラ異常が発生した。また、比較例2では、混色(色ムラ)の異常が発生した。また、比較例3では、中央隔壁が高すぎることに起因する第二電極の断線(蒸着不良)やインキの転写不良が起こり、画素の抜けが確認された。また、比較例4では、非開口部における中央隔壁の存在が第二電極の蒸着不良を引き起こし、断線に由来する画素の抜けが確認された。以上のように、比較例品はいずれも実用レベルの高品位な発光状態が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、第一電極間に中央隔壁を有することにより混色を防ぎかつ第一電極縁部上の低い隔壁に囲まれた有機発光層の平坦性を向上することで、画素内での発光ムラ及び混色の無い、画素間での発光ムラの無い高光学特性を有する有機EL素子を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・基板、2・・・第一電極、3・・・正孔輸送層、41・・・赤色有機発光層、42・・・緑色有機発光層、43・・・青色有機発光層、44・・・インク溜り、51・・・隔壁、52・・・第二の隔壁、6・・・第二電極、7…封止樹脂、8…封止基板、9…有機EL素子、10…マスク、11…感光性材料、12…入射光方向、13・・・インクタンク、14・・・インキチャンバー、15・・・アニロックスロール、16・・・樹脂凸版、17・・・版胴、18・・・被印刷基板、19・・・ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、第一電極(画素電極)と有機発光体層が順次積層してなる画素が隔壁で区画され、さらに前記有機発光体層側上に前記第一電極と対向するように第二電極を設けた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記隔壁で区画された画素間の中央部に第二の隔壁を設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記隔壁の高さが1.0μm以下の逆テーパ形状で、前記第二の隔壁の高さが1.0〜2.0μm、且つ、隣接する第二の隔壁とは非連続であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記有機発光体層を構成する有機発光体層組成物の少なくとも1層が、溶媒に溶解または分散によりインキ化し、前記インキを用いて湿式成膜法により有機発光体層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項4】
前記湿式成膜法が凸版印刷法であることを特徴とする請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図3】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105694(P2013−105694A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250440(P2011−250440)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】