有機半導体材料
【課題】半導体材料として優れた特性を有し、且つ、高い電荷注入促進機能を併せて有する分子配向系材料を提供する。
【解決手段】芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料。所定のセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、動作温度において、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を与える。
【解決手段】芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料。所定のセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、動作温度において、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を与える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規機能を有する有機半導体材料(ないし物質)に関し、特に、電荷注入促進機能を有する機能性の有機半導体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料には、低分子有機半導体材料を絶縁性のポリマーに分散した分子分散型ポリマーや低分子有機半導体に代表される有機アモルファス材料や、ペンタセンやオリゴチオフェンなどに代表される有機半導体材料の多結晶薄膜などがある。
【0003】
前者の有機アモルファス材料は主に、有機感光体、有機EL素子、有機太陽電池に利用され、後者の多結晶薄膜は、高い移動度を活用して、主に有機FET素子に用いられる。
【0004】
しかしながら、有機半導体材料を電子デバイスに応用する場合、無機半導体とは異なり、熱生成電荷濃度が小さく、また、ドーピングによる伝導性の制御が困難である。このため、有機半導体の伝導は、主に、電極材料と有機半導体との電気的接触によって支配される傾向がある。従って、有機半導体が本来有する特性を最大限引き出すためには、電極/有機半導体界面の特性が、極めて重要となる。
【0005】
このような観点から、デバイスに用いる有機半導体の電気的特性は、電極からの電荷注入の容易性と、移動度の高さがその有用性を決めるという傾向がある。
【0006】
一般に、電極材料と有機半導体を接触させた場合、その界面にはショットキー型のエネルギー障壁が形成され、その障壁は電極から有機半導体への電荷注入を阻害するため、その改善が検討されてきた。
【0007】
一例を上げれば、電極材料の仕事関数と有機半導体材料のHOMO,LUMO準位の適合性を考慮した材料の選択をはじめとして、電荷注入を促進するためのバッファー層(電荷注入促進層)の導入や(特許文献1)、電極材料を有機チオール、有機カルボン酸、有機ホスホン酸などで化学修飾すること(特許文献2)により電極材料の仕事関数を変化させる方法が開発され、実用されて来ている。
或いは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物(PEDOT−PSS)やポリアニリンにイオン性ドーパンとを添加した有機電荷注入層(特許文献3)や電荷注入層として、LiF、Ca等のアルカリ金属やその化合物を用いた有機ELや有機トランジスタ(特許文献4)が公知である。
【0008】
これに対し、限られた例ではあるが有機半導体材料を工夫することによって、電荷注入を促進する方法も知られている。
【0009】
文献(F. Huang,Y. Zhang,M. S. Liu,and A. K.-Y. Jen,Adv. Func. Mat.,19,2457−2466,2009;非特許文献1)によれば、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2N(CH2CH2OH)2基を直接、ポリフルオレンに置換した物質においては、Al電極から電子注入を促進できることが記載されている。
【0010】
この文献に示される例では、電荷注入は促進されるものの、ポリフルオレンがアモルファス凝集状態であるため、移動度が小さく、伝導度は最終的には移動度で律速されることになる。
【0011】
アモルファス材料に比べて高い移動度を有する分子配向を有する材料系において、電荷注入を促進することができれば、デバイスへ応用に関する際により効果的である。
【0012】
しかしながら、一般の多結晶材料では形成される粒界が電荷輸送を阻害するため、仮に、電荷注入を促進できたとしても、多結晶材料の特性を十分に引き出すことはできない。
【0013】
実際、高い移動度が期待できる分子配向系材料において高い電荷注入促進機能を実現した新規材料は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−335557号
【特許文献2】特許第4504105号
【特許文献3】特開2007−242938号
【特許文献4】特開2010−135809号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】F. Huang,Y. Zhang,M. S. Liu,and A. K.-Y. Jen,Adv. Func. Mat.,19,2457−2466,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、半導体材料として優れた特性を有し、且つ、高い電荷注入促進機能を併せて有する、新規な分子配向系材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一般に、分子配向を有する有機半導体材料を電子デバイスに好適に用いるためには、電極配置に対して、分子を伝導に好適な方向に配向させる必要があるばかりでなく、形成される粒界が伝導を妨げることがないよう粒界の形成を制御することが必要となる。
【0018】
より具体的には、電子デバイスに採用される電極配置には、プレーナー型とサンドイッチ型があるが、分子配向を有する物質の特性を最大限に引き出すためには、電極配置に応じて、それぞれ、該物質の分子を垂直、あるいは、水平に配向させることが必要となる。
【0019】
しかしながら、一般の有機物質においては、分子配向を任意に、垂直、また、水平に任意に配向させることは困難であるが、他方、ペンタセンやオリゴチチオフェンなどのように分子形状が棒状であれば、分子を垂直に配向させることは可能である。この場合、デバイス応用の点からは、プレーナー型の電極配置を利用すれば素子の作製は可能であるが、分子を水平に配向させることは難しいため、サンドイッチ型の電極配置を用いて素子に利用することは困難である。
【0020】
また、分子形状に異方性を持たない分子の場合には、いずれの配向も制御は困難で、粒界の形成方向もランダムとなるため、デバイスへの応用は難しい。
【0021】
したがって、電荷輸送能を有する有機分子に電荷注入の促進の機能を付与できたとしても、その効果を最大限に活用する事ができるのは、分子配向が電極配置に都合よく配向した場合に限られる。
【0022】
したがって、電荷注入の促進効果を有効に活用するためには、分子を水平、または,垂直に配向制御を実現することが不可欠である。
【0023】
本発明者は、鋭意研究の結果、このような分子配向の制御を可能にする方法として、液晶分子の活用が極めて効果的なことを見出した。
【0024】
例えば、文献(H.Iino and J. Hanna,Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 45, No. 33, pp. L867-L870 (2006)))に記載した
ように、液晶分子は液晶状態において分子配向を制御が可能で、かつ、液晶相を介して結晶化させることにより、結晶相においても分子配向を任意に制御することが可能である。
【0025】
したがって、本発明において、分子配向性を示す有機材料を有機半導体として用いて、何らかの分子修飾により、電荷注入促進の機能を付与できれば、分子配向の制御が可能であるため、電子デバイスに用いる際に、分子配向によりもたらされる優れた電荷輸送特性を最大限に活用することが可能となる。
【0026】
本発明者は、更に進んで、電荷注入の促進機能を付与するためには如何なる化学修飾が好適かを検討した結果、芳香環等のπ電子共役系を有する有機分子に、OH基を有す側鎖を持たせることにより、極めて顕著な電荷注入促進の効果を示すことを見出した。
【0027】
本発明の有機半導体材料は、上記知見に基づくものであり、より詳しくは、芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料であって;4μmのセルギャップを介して配置された一対の基板を有するセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、動作温度において、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を与え、且つ、前記有機半導体材料の分子が、伝導に都合の良い方向に配向することが可能であることを特徴とするものである。
【0028】
本発明によれば、芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料であって、且つ、該材料を構成する分子を、電極に対して伝導に都合の良い方向に分子を配向させることが可能である。すなわち、本発明においては、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAが「電極に対して平行」等の「伝導に都合の良い方向」に配向させることが可能となる。より具体的に言えば、プレーナー型電極配置の場合には、基板に対して垂直に配向させることが可能である。他方、サンドイッチ型電極配置においては、基板あるいは、電極面に対して水平に配向させることが可能である。本発明においては、このような「好適な分子配向」の実現により、電流注入を顕著に促進でき、かつ、高い伝導を実現できる。
【0029】
分子配向を前述のごとく都合よく制御するために、電荷輸送能を有する分子配向性分子の活用が有効である。分子に分子配向性を与えるためには、分子に、棒状、または、円盤状の幾何学的な異方性を付与すればよい。さらに、それらの分子に側鎖を導入すれば、その異方性が増大し、分子配向性を冗長することができる。つまり、電荷輸送性能を有する、棒状、または,円盤状の分子にOH基をもつ側鎖を少なくとも一つもたせた物質、さらに、好適には、電荷輸送性能を有する、棒状、または、円盤状の分子に側鎖を導入した構造として、その側鎖を少なくとも一つOH基を持つ側鎖で置換した構造をもつ物質を用いることが更に有効である。
【0030】
本発明は、例えば、以下の態様を含むことができる。
【0031】
[1] 芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料であって;
4μmのセルギャップを介して配置された一対の基板を有するセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、動作温度において、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を与え、且つ、
前記有機半導体材料の分子が、伝導に都合の良い方向に配向することが可能であることを特徴とする有機半導体材料。
【0032】
[2] 前記有機半導体材料が、コア部にπ−電子共役系を含む液晶性を示す材料である[1]に記載の有機半導体材料。
【0033】
[3] 前記有機半導体材料が、ネマチック相より高次の液晶相を示す液晶材料である[2]に記載の有機半導体材料。
【0034】
[4] 液晶相において、ITO電極を有する液晶セル内に配置した際に、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を示す[2]または[3]に記載の有機半導体材料。
【0035】
[5] 前記電荷輸送性分子ユニットAに結合した、環状構造ユニットBを有する[1]〜[4]のいずれか1項]に記載の有機半導体材料。
【0036】
[6] 前記側鎖Sが、電荷輸送性分子ユニットA、および/又は環状構造ユニットBに結合している[5]に記載の有機半導体材料。
【0037】
[7]前記有機半導体材料の「ネマチック相より高次の液晶相」が、N相、SmA相およびSmC相以外の相である[3]に記載の有機半導体材料。
【0038】
[8] 前記「N相、SmA相およびSmC相以外の相」が、SmB,SmBcryst、SmI、SmF、SmE、SmJ、SmG、SmK、およびSmHからなる群から選ばれる液晶相である[7]に記載の有機半導体材料。
【0039】
[9] 前記有機半導体材料を結晶相から昇温させた際に、前記「N相、SmA相およびSmC相以外の相」が、結晶相に隣接して現れる[7]または[8]に記載の有機半導体材料。
[10] 前記「伝導に都合の良い方向」が、サンドイッチ型に電極を配置した際に、該有機半導体材料の分子の電荷輸送性分子ユニットAが該電極表面に水平配向することである[1]に記載の有機半導体材料。
[11] 前記「伝導に都合の良い方向」が、プレーナー型に電極を配置した際に、有機半導体材料の分子の電荷輸送性分子ユニットAが該電極表面に垂直配向することである[1]に記載の有機半導体材料。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、電荷輸送部位を有する有機分子に、OH基を有する側鎖を少なくとも一つ置換した有機分子を用いて、プレーナー型、あるいは、サンドイッチ型の電極配置に対し、電荷輸送を損なわない方向に分子を配向させることにより、105〜106V/cm領域の電界において、10−5A/cm2以上の高い電流密度を実現できる。
【0041】
本発明において、特に、分子配向を容易に制御可能な分子配向性分子を電荷輸送部位を有する分子として活用すれば、好適な相(例えば、その液晶相、あるいは、その結晶相)において、104V/cm以上の電界下で、電極から電荷注入を顕著に促進する効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】6OBP6ジオールの、電流−電圧特性に与える電極の効果の一例を示すグラフである。
【0043】
【図2】6O−BP−O6ジオールの電流−電圧特性に与える膜厚の効果の一例を示すグラフである(結晶相30℃)。
【図3】6OBP6ジオールの電流−電圧特性に与える膜厚の効果の一例を示すグラフである(液晶相160℃)。
【図4】6OBP6ジオールの電流−電圧特性に与える配向膜PIの影響lの一例を示すグラフである(液晶相160℃)。
【0044】
【図5】TPD:6O−BP−O6ジオール混合系の電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃)。
【図6】8−TTP−8:6O−BP−O6ジオール(10.1モル%)混合系の電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃、液晶相80℃)。
【0045】
【図7】8−TTP−8:6O−BP−O6ジオール(27.3モル%)混合系の電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃ 液晶相80℃ 110℃)。
【0046】
【図8】6O−BP−O6:6O−BP−O6ジオール混合系の電流−電圧特性、および6O−BP−O6ジオールの濃度依存性の一例を示すグラフである(結晶相9.34モル%,30モル%,50.5モル% 30℃)。
【0047】
【図9】6O−BP−O6:1,12−ドデカンジオール混合系の電流−電圧特性:1,12−ドデカンジオールの濃度依存性の一例を示すグラフである(結晶相1.98モル%,9.68モル%,29モル% 30℃)。
【0048】
【図10】8−TTP−8:1,12−ドデカンジオール混合系の電流−電圧特性、および1,12−ドデカンジオールの濃度依存性の一例を示すグラフである(結晶相10.3モル%,29.5モル%,100モル% 30℃)。
【0049】
【図11】5BP−O8OHの偏光顕微鏡によるドメイン組織の顕微鏡写真である(結晶相100℃ 58℃;写真の倍率:200倍;実際のドメインは数十〜数百μ程度)。
【0050】
【図12】5BP−O8OHの電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図13】9−CHOH−BTBT−CHOH−9と、11−CHOH−BTBT−CHPOH−11を注入したセルの偏光顕微鏡写真である(倍率:200倍;実際のドメインは数十〜数百μ程度)。
【0051】
【図14】9−CHOH−BTBT−CHOH−9と、11−CHOH−BTBT−CHPOH−11を注入したセルの電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃)。
【0052】
【図15】5−BPO8OHの電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃)。
【図16】8−PNP−O4OHの30℃における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図17】6−BTBT−6ジオールの30℃における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図18】10−BTBT−10ジオールの30℃における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図19】10−BTBT−10オールと10−BTBT−10 の液晶相における電流−電圧特性の比較の一例を示すグラフである。
【0053】
【図20】6−TTP−8OHの結晶相と液晶相における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図21】6−TTP−6ジオールの80℃における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図22】8−TTP−8,6−TTP−6オール,6−TTP−6ジオールの移動度の温度依存性の一例を示すグラフである。
【図23】10−BTBT−10オールを用いたFETのトンスファー特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0055】
(基本構造)
本発明の有機半導体材料は、芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料である。
【0056】
前述のように、基本的に電荷注入の促進機能を有する有機半導体を実現するためには、電荷輸送部位となる芳香環を含むπ−電子系分にOH基を有する側鎖部を導入し、電極に対して、電荷輸送を妨げない方向に分子を配向させることが有効である。
【0057】
本発明においては、該有機半導体が液晶性を示すことに限定されるものではない。すなわち、所定の「分子配向性」を有する限り、本発明において使用可能である。本発明の効果をより効果的に引き出すためには、分子配向を制御できる分子形状に棒状、または、円盤状の幾何学的な異方性をもつ分子が好適で、さらに、その分子が「液晶分子」であることが好適に電荷注入の促進の機能を引き出す上で、有効である。
【0058】
(分子配向性)
本発明の有機半導体材料は、分子配向性を有する。この「分子配向性」は、より具体的には、2〜4μmのセルギャップを介して配置された一対の基板を有するセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、有機半導体材料の分子が該基板に平行に配向することを言う。このような「分子配向性」は、例えば、以下の方法によって、好適に確認することができる(このような分子配向性の確認方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば文献
日本液晶学会編 液晶科学実験入門 第12章 偏光顕微鏡のしくみとつか方 p131-132 シグマ出版 IISBN978−4−915666−49−0 C3058を参照することができる。)。
【0059】
(分子配向性の確認方法)
本発明において、分子が電極間に伝導に対して好適に配向しているかどうかは、電極からの電荷注入が促進された効果を伝導特性として利用する上で重要である。分子が幾何学的な異方性を持つ場合、薄膜を形成すると分子の配向方向により屈折率が異なるため、偏光顕微鏡を用いて観察すると着色して見える。分子が棒状の場合、2枚のガラス板をスペーサーで挟んで構成したセルに物質を注入した試料では、分子が基板に垂直に配向した場合や配向を持たない場合には黒色になり、分子が水平に配向するとその厚さと屈折率の違いによって着色する。この色は屈折率と膜の厚さに依存し、この関係は干渉色図表によって目安をうることができる。分子が円盤状の場合は、分子が基板に対して水平に配向した場合や分子が配向を持たない場合は黒色になる。この違いを利用すれば、該分子が基板に対してどのように配向しているか、あるいは、配向していないかを容易に判定することができる。本発明における「好適な分子の配向」とは、理想的には、分子が棒状の場合は分子が電極を含む基板表面に対して水平に配向した状態をいい、また、分子が円盤状の分子の場合は分子が電極を含む基板表面に対して垂直に配向した状態をいう。
【0060】
(電流密度)
本発明の有機半導体材料は、その動作温度において、1×105V/cmの電界強度で
1×10−5A/cm2以上の電流密度を与える。この電流密度は、更には1×10−4A/cm2以上(特に1×10−3A/cm2以上)であることが好ましい。
【0061】
(電流密度の確認方法)
このような「電流密度」は、例えば、以下の方法によって、好適に確認することができる。
ITO、あるいは、金属薄膜をパターン上に形成した2枚のガラス板をスペーサーを介して張り合わせたセルを用意し、これに、該有機半導体を注入する。電極に用いる材料はITO、Au、Ptなどが好適である。市販の配向膜を設けていないITO電極付き液晶セルを用いると最も簡便である。このセルに、電源、電流計を接続し、セルを流れる電流を常温で測定し、電極面積で規格化して電流密度を求める。流れる電流はセル厚に依存するため、この確認方法には、セルギャップが2〜10μmのセルを用いる(標準的には4μmのセルを用いる)。
【0062】
(移動度)
本発明の有機半導体材料は、その動作温度において、10−6cm2/Vs以上の移動度を与えるものが好ましい。この移動度は、更には10−5cm2/Vs以上(特に10−4cm2/Vs以上)であることが好ましい。なお、注入された電荷の量が同じであれば、移動度が高いほど電流密度は増加する(すなわち、移動度が大きい場合は結果的に電流密度は大きくなる)。
【0063】
(好適な分子配向性分子の例)
本発明において、好適な分子配向性分子を例示すれば、例えば、以下の通りである。
分子配向が容易な分子は、幾何学的に異方的な構造を持った分子、つまり、分子形状が棒状、または、円盤状の構造をした分子である。
【0064】
棒状分子では、複数の芳香環(複素環を含む)が単結合で直接、連結した分子、一例をあげれば、オリゴチフェン、オリゴパラフェニレンやその混合したオリゴマー、あるいは、芳香族縮環系分子やその構造の一部、または、全部を複素環やチフェン、チアゾール、シクロペンダジエンなどの5員環構造で置き換えた構造を持つ分子などである。その分子サイズは、合成のし易やすさや溶解度の点から、芳香環の数にして3〜6個程度のものが好適である。また、縮環構造と単環構造を単結合で連結した構造も有効で、同様に芳香環の数にして3〜7個程度の構造をもつ分子が好適である。
【0065】
より具体的にベンゼン環やチオフェン環を例に構造を挙げれば、オリゴマー構造の分子では、チフェンやベンゼンの4量体や5量体、あるいは、その混合した4量体や5量体、また、縮環系では、ペンタセンやテトラセン、あるいは、その構造の一部をチフェン環で置換した構造をもつナフトチフェン、アントラチオフェン、ナフタセノチオフェンやベンゾチエノベンゾチオフェンなどを挙げることができる。
【0066】
円盤状分子では、ベンゼン環等の芳香環が環状に縮環した構造をもつトリフェニレンやコロネン、ベンゾコロネン、ピレン、ペリレン、あるいは、その構造の一部を複素環で置き換えた構造を持つ分子、また芳香環が共役系で連結された環状構造を持つフタロシアニン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン等の構造を例に挙げることができる。
【0067】
以下においては、本発明において好適に使用可能な「液晶材料」を例に、本発明を詳しく説明する。
【0068】
(液晶材料)
液晶材料は、一般に、コア部と呼ばれる環構造を含む硬直な分子構造を有する部位と、その分子長軸方向に炭化水素等からなる側鎖を置換した構造を有する。
【0069】
(コア部)
特に、本発明においては、液晶材料が有機半導体としての電荷輸送能を有する必要性から、コア部に芳香環等のπ−電子共役系を含む構造を有することが必須である。
【0070】
その場合、コア部のπ−電子共役系を含む構造には,ベンゼン、あるいは、5員環構造を有するチオフェンやチアゾール、オキサチアゾール、チアチアゾール、あるいは、6員環構造をピリジン、ピラジン、ピリミジン等のヘテロ原子を含む芳香環を少なくとも一つことが必要であり、ポリアセンやその一部にヘテロ環構造を有する誘導体等のように縮環構造の一部に、前記、ヘテロ環を含む芳香環を含むものであっても良い。
【0071】
(好適な液晶材料)
液晶材料には、棒状液晶材料と円盤状液晶材料があり、いずれの液晶材料においても液体性の強いネマチック相を示すものもあるが、移動度の観点から、それぞれスメクチック相、カラムナー相を示すものの方が、より好適である。
【0072】
以下、説明はスメクチック相を示す棒状液晶材料を例に説明するが、ここに記載の内容は、基本的に、カラムナー相を示す円盤状液晶につても適用できる。
【0073】
(棒状液晶材料)
本発明において、前記コア部に置換した側鎖のうち、少なくとも一つの側鎖にOH基を置換した構造であって、かつ、液晶相で有機半導体材料として用いる場合は、少なくとも‐20℃から120℃までの温度領域でネマチック相よりも高次の液晶相を示す物質が好適であり、また、結晶相で有機半導体として用いる場合は、少なくとも‐20℃〜120℃までの温度領域で結晶相を示す物質が好適である。さらに、この温度範囲より広い温度範囲を持つ物質はさらに好適である。
【0074】
(側鎖)
側鎖に置換したOH基の位置は、コア部から離れている方が電荷輸送特性、及び、液晶相の発現の観点から好ましく、最適には、側鎖末端にOH基を置換することが最も良い結果を与える。
【0075】
液晶分子のコア部と側鎖とは直接、炭素で連結されていても、あるいは、O、S、N等のヘテロ原子を介して連結されていても良いが、移動度の点からは、直接、側鎖とコア部が炭素結合で連結されている方が好ましい。
【0076】
側鎖は2重結合や3重結合を含んでもよく、また、エチレンオキシ(−CH2CH2O−)基を含む構造であってもよい。
【0077】
液晶分子に置換した側鎖の長さは、主に炭素数の数によって鎖長がきまる。
【0078】
鎖長が長すぎると移動度の低下を招き、また、短すぎると液晶相を発現しなくなるため、「液晶分子に置換した側鎖の長さ」は、炭素数が3以上25以下であることが好ましく、更には、3以上20以下であることが好ましい。
【0079】
OH基が置換した側鎖の長さは、前述のように、OH基がコア部に近いと電荷輸送特性に悪い影響を与えるため、該「OH基が置換した側鎖の長さ」は、炭素数は1以上であることが好ましく、更には、3以上であることが好ましい。他方、該「OH基が置換した側鎖の長さ」は、炭素数は20以下であることが好ましく、更には、12 以下であることが好ましい。
【0080】
(電流密度)
前記、要件を満たす液晶材料は、OH基を含まない同一構造を有する液晶材料、(ここでは、側鎖の長さは定常的な伝導特性に大きな影響は与えないことから、同様の類似構造を有する液晶材料と考えても良い)に比べて、104〜106V/cmの電界領域において、3〜6桁高い電流密度を示し、その電荷注入効果は明白である。
【0081】
(電流密度の測定法)
この特性は、AuやITO等の電極を設けた2枚のガラス基板を2〜4μm程度のセル厚になるようにスペーサーを用いて貼りあわせた液晶セルに、液晶材料をその等方相温度で毛細管現象を利用して注入し、その電流電圧特性を測定することによって行うことにより、容易に評価できる。
【0082】
この測定には、市販のITOを電極とした液晶セルを持いることが簡便で、好適である。この場合に使用可能な「市販の液晶セル」としては、例えば、以下のような商品が好適に使用可能である:
株式会社 イーエッチシー SZ−B311M6N(セル厚4ミクロン、4mm角ITO(10Ω)付きガラス液晶セル、ポリイミド配向膜なし)
【0083】
OH基を有する液晶材料で測定される電流の大きさは、電極に用いる電極の種類、液晶材料の移動度、測定温度によって異なるもの、その効果は明白である。例えば、室温で結晶である液晶材料では、105V/cmの電界強度において10−5A/cm2以上の高い電流密度が観測できる。
【0084】
液晶相ではその分子配向秩序により移動度が異なるため電流密度の大きさは液晶相の種類によるが、一般に、結晶層に比べて、観測される電流密度は1〜2桁程度低いことが一般である。
【0085】
一方、同一条件において、対応するOH基を持たない液晶材料では、コア構造に依存するものの、一般に10−6A/cm2以下の電流密度が一般的で、明確な違いがある。
【0086】
(移動度)
一般に、半導体の有用性の目安となる移動度は、液晶材料においては分子の配向秩序に依存し、高次の液晶ほど一般に移動度が高くなることが知られている。
【0087】
その値は液体に近い低次の液晶相では10−4cm2/Vs程度で、最も結晶に近い高次の液晶相では0.1cm2/Vsを超える高い値を示すことから、液晶相を有機半導体をとしてデバイスへの応用する場合は、SmE相やSmG相等の高次の液晶相が有利となる。
【0088】
(好適な電荷輸送性分子ユニットA)
好適な電荷輸送性分子ユニットは少なくとも一つ芳香環をもち、より好ましくは、該芳香環が縮環構造を持ち、縮環数は2以上6以下であることが好ましい。電荷輸送性分子ユニットAは、ヘテロ環を含んでもよい。該縮環を構成する個々の環の炭素数は、5〜6個(すなわち、5員環〜6員環)であることが好ましい。
【0089】
電荷輸送性分子ユニットAを構成するヘテロ環も、5員環〜6員環であることが好ましい。ヘテロ環の数は、特に制限されないが、以下のような数であることが好ましい。
<ユニットAの環数> <ヘテロ環の数>
2個 0〜1個
3個 0〜1個
4個 1〜2個
5個 1〜3個(特に1〜2個)
6個 1〜3個(特に1〜2個)
【0090】
(好適な環状構造ユニットB)
本発明において、高い移動度が期待できる高次の液晶相の利用は有効である。これを発現させるための構造は前記した電荷輸送性分子ユニットAにフリップーフロップ運動の自由度を与えるための、「もう一つの構造」部分、ユニットBを連結することである。ユニットBは、単結合で電荷輸送性ユニットAと連結された芳香族縮環、または、脂環式分子構造であることが好ましい。環数は1以上6以下(更には、4以下、特に1〜3)であることが好ましい。
【0091】
ユニットBの環数は、特に制限されないが、ユニットAを構成する環の数を「NA」とし、ユニットAを構成する環の数を「NB」とした場合に、NA≧NBであることが好ましい。より具体的には、以下のような数であることが好ましい。
<ユニットAの縮環数> <ユニットBの環数>
1個 1個
2個 1〜2個、更には1個
3個 1〜3個、更には1〜2個(特に、1個)
4個 1〜4個、更には1〜3個(特に、1〜2個)
5個 1〜5個、更には1〜4個(特に、1〜3個)
6個 1〜6個、更には1〜4個(特に、1〜3個)
【0092】
ユニットBは、ヘテロ環を含んでもよい。該ヘテロ環は、5員環〜6員環であることが好ましい。
【0093】
(単結合)
本発明において、上記のユニットAとユニットBとは直接単結合で連結する必要がある。
【0094】
(好適な電荷輸送性分子ユニットAの例示)
本発明において好適に使用可能な「電荷輸送性分子ユニットA」を例示すれば、以下の通りである。Xは、S、O、NHを表す。
【0095】
【化1】
【0096】
【化2】
上記においてXは、S、O、NHを表わす。
【0097】
(好適な環状構造ユニットBの例示)
本発明において好適に使用可能な「環状構造ユニットB」を例示すれば、以下の通りである。
【化3】
上記において、ユニットBはユニットAと同一でも良い。
【0098】
(好適な単結合の例示)
本発明において好適に使用可能な、上記のユニットAおよびBを連結するための「単結合」は、ユニットAとユニットBの環状構造を構成する炭素のうち分子長軸方向にある炭素どうしを分子全体が棒状となる様に選ぶ。すなわち、本発明においては、ユニットAを構成する炭素と、ユニットBを構成する炭素とが、直接に「単結合」(single bond)で連結されている。
【0099】
(好適なユニットAおよびユニットBの組合せの例示)
本発明において好適に使用可能な「ユニットAおよびユニットBの組合せ」(前記に従って連絡したもの)を例示すれば、以下の通りである。
【化4】
【0100】
(好適な構造)
本発明による分子設計に従い、本発明においては、基本的に、3環以上の6環以内の芳香環が棒状(すなわち、概ね直線状)に連結した縮環系に、単結合を介して、少なくとももう一つの環状構造を縮環系の分子長軸方向に連結させた構造に、炭素数3以上の側鎖ユニットを分子長軸方向に連結させた構造であることが好ましい。
【0101】
上述したように、本発明による分子設計の基本は、3環以上の6環以内の芳香環の棒状に連結した縮環系に単結合を介して、少なくとももう一つの環状構造を縮環系の分子長軸方向に連結させた構造に、炭素数3以上の側鎖ユニットを分子長軸方向に連結させた構造である。これを下記の物質(図参照)を例として、実施例によって例示する。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
上記表中、〔化30〕は側鎖C12H25を有する化合物である。
【0108】
(高次の相)
有機半導体として低分子液晶物質を液晶薄膜として利用する場合は、分子配置の秩序性を持たないネマティック相、分子凝集層を形成するスメクティック液晶物質にあっては、分子層内に分子配置の秩序性を持たないSmA相やSmC相では流動性が高いため、イオン伝導が誘起されやすく、有機半導体として利用する際に大きな問題となる。これに対して、分子層内に分子配置の秩序性を持つ「N相、SmA相およびSmC相以外の液晶相」、すなわち、高次のスメクティック相(SmB,SmBcryst、SmI、SmF、SmE、SmJ、SmG、SmK、SmHなど)は、この点でイオン伝導を有機しにくいという(有機半導体として用いる際に都合が良い)特性を有している。
【0109】
また、これまでの種々の液晶物質の液晶相における電荷輸送特性の研究から、同一のコア構造を持つ液晶物質においては、スメクティック層内の分子配置の秩序性の高い高次の液晶相ほど、高い移動度を示すことが明らかにされており、イオン伝導の抑制のみならず、高い移動度を実現する観点からも、高次のスメクティック相を示す液晶物質が有機半導体として有用である。
【0110】
一方、液晶物質を有機半導体として結晶薄膜の形態で利用する場合、結晶相の直上の温度領域において、液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)が出現する液晶物質では、その液晶相が出現する温度以上に素子が加熱された場合、流動性のために素子が熱により破壊されるという大きな問題点がある。これに対し、結晶相の直上の温度領域において、分子層内に分子配置の秩序性を有する高次のスメクティック相を発現する液晶物質では、液晶温度に素子が加熱された場合でも、流動性が低いため素子は破壊されにくいため、液晶物質の結晶薄膜を有機半導体として電子素子に応用する際にも、高次の液晶相を示す液晶物質が必要となる(ただし、この場合に限れば、液晶相でなくとも、準安定な結晶相を示す物質でも良い)。換言すれば、液晶物質が液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)以外の液晶相を示す液晶物質や準安定相を示す物質であれば、本発明において好適に使用可能である。
【0111】
一般に、複数の液晶相や中間相を示す物質では、温度の低下に伴って液晶相の分子配向は秩序化するため、温度が高い領域において、液晶物質が液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)が現れ、最も配向秩序の高い高次の液晶相や準安定な結晶相は、結晶相温度に隣接した温度領域で発現することが良く知られている。液晶相薄膜を有機半導体材料として利用する場合、前述の液体性の強い低次の液晶相以外の相であれば、原理的に、有機半導体として利用可能であるので、結晶相に隣接した温度領域に出現する凝集相が液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)で無ければよいということになる。液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)に加えてそれ以外の高次の液晶相が出現する液晶物質では、液体性の強い低次の液晶相では分子配向の制御が高次の液晶相に比べて容易であるので、液体性の強い低次の液晶相で分子を配向させておき、高次の液晶相へ転位させることにより、分子配向の揺らぎや配向欠陥の少ない液晶薄膜を得ることができるので、液晶薄膜や結晶薄膜の高品質化が期待できる。
(有機半導体材料)
本発明の有機半導体材料が、液晶材料を含む場合には、該有機半導体材料は、N相、SmA相およびSmC相以外の液晶相を示すことが好ましい。
【0112】
(所定の液晶相)
本発明において、上記の「N相、SmA相およびSmC相以外の液晶相」は、SmB,SmBcryst、SmI、SmF、SmE、SmJ、SmG、SmK、およびSmHからなる群から選ばれる液晶相であることが好ましい。この「SmA相およびSmC相以外の液晶相」が、前記有機半導体材料を結晶相から昇温させた際に、「結晶相の次」に現れる液晶相であることが好ましい。
【0113】
(分子設計の要点)
本発明において液晶物質を利用する場合、高い電流密度を持つ液晶物質を実現するためには、次の点を考慮して分子設計を行うことが好ましい。
【0114】
(1)本発明においては、分子配向した液晶相や結晶相において、電荷の移動速度を支配する因子として、コア部と呼ばれる電荷の輸送関わるπ−電子系分子ユニットのTransfer積分の値が大きいことが重要となる。この値を実際に量子化学的手法により計算するためには、目的とする分子凝集状態における隣接する分子間の具体的な分子配置決定し、計算を行うことが必要となるが、相対的に言えば、互いの相対的な分子位置に対する揺らぎに対して、冗長性のある分子構造が有利となる。
【0115】
つまり、スメクティック液晶物質の場合、電荷輸送のサイトとなるπ−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットには棒状でかつある程度大きなサイズのπ−電子共役系を選ぶ。この場合、液晶分子の構造としてしばしば採用される小さな芳香環、例えば、ベンゼンやチオフェンなどを複数、単結合で連結し、大きなπ−電子共役系を構成した分子ユニットを用いるのではなく、縮環構造による大きなπ−電子共役系を持つ分子ユニットを用いる。縮環の環数は3以上が好ましいが、環数が大きすぎると溶媒に対する溶解度が低下するため6以下が現実的である。
【0116】
すなわち、本発明においては、benzene、pyridine、pyrimidine、thiopehene、thiazole、imidazole、furaneを芳香環構造として、これらが縮環して棒状の3環構造、4環構造、5環構造をとったものが、芳香族π−電子共役系縮環構造として好ましい。
【0117】
(2)本発明においては、 高い移動度を実現するためには、高次の液晶相を発現させることが必要となる。一般に、スメクティック液晶相では、分子層内の分子配置に秩序性を持たないSmA相やSmC相から、高次の液晶相になるに従い、液晶分子の分子運動は逐次、凍結されて行き、最も秩序性の高いSmE相やSmG相などでは、最終的に、分子のフリップーフロップ運動が残ると考えられる。
【0118】
この点を考慮し、液晶分子を構成する主たるコア構造に、前述の芳香族π−電子共役系縮環構造に単結合を介して、少なくとももう一つの剛直な構造を連結させた構造を用いることが好ましい。この場合、連結するもう一つの剛直な構造ユニットは、前述の芳香族π−電子共役系縮環構造と同数以下の環数を持つ構造が選ばれ、1または2でも良い。また、その構造には、必ずしも、ヘテロ環を含む広い意味での芳香環ばかりでなく、cyclohexaneやcyclopentaneなどの脂環式の環状構造であっても良い。
【0119】
(3)本発明においては、スメクティック液晶性を発現させるためには、前述のようにコア部と呼ばれる剛直な分子ユニットに棒状の分子形状の異方性と液体性を与えるためのフレキシブルな炭化水素ユニットを連結し、基本的に、直線状に配置した構造を持たせることが、棒状液晶物質の基本デザインである。
【0120】
本発明ではコア部とは、前述の芳香族π−電子共役系縮環構造に単結合を介して、少なくとももう一つの剛直な構造を連結させた構造がそれにあたる。コア部における炭化水素ユニットの連結位置は、分子全体として棒状の異方性を与えることが重要となるので、コア部の長軸方向とのなす角は90度以下となるよう連結位置を選ぶことが好ましい。その本数は最低1本であればよく、その炭素鎖の数は3以上であることが好ましい。
【0121】
その場合、コア部に連結する炭化水素ユニットの位置は、コア部の長軸方向であれば、コア部の両端のいずれか、あるいは、その両端に連結しても良い。液晶相を発現させる場合、また、炭化水素ユニットの構造に2重結合や三重結合、あるいは、酸素、硫黄、窒素などのヘテロ元素を含んだものを用いることも出来る。しかし、移動度という観点では、コア部に直接、炭化水素ユニットを連結させたものの方が好都合である。
【0122】
(スクリーニング法)
本発明において、上記の分子設計を満足する化合物中から、高次のスメクティック液晶相を発現し、有機半導体として有用な物質を、必要に応じてスクリーニングすることができる。このスクリーニングにおいて、基本的には、液晶相で有機半導体として用いる場合は高次のスメクティック相を発現すること、結晶相で有機半導体として用いる場合は、前述のように結晶相温度より高い温度から冷却したときに、結晶相に隣接して低次の液晶相を発現しないものを選ぶことが好ましい。この選択の方法は、後述する「スクリーニング法」にしたがって判定することにより、有機半導体材料として有用な物質を選択することが出来る。
【0123】
(電荷輸送性分子ユニット)
液晶分子におけるコア部に対応する電荷輸送性分子ユニットとして、環数3以上の芳香族π−電子縮環系の分子ユニットを用いることにより、分子位置の揺らぎに対するtransfer積分の冗長性を確保でき、同様に、ベンゼンやチオフェンなどを複数、単結合で連結したπ−電子共役系の分子ユニットではなく、縮環構造を持つ分子ユニットを採用することにより、分子配座が固定されるため、transfer積分の増大が期待でき、移動度の向上に役立つ。
【0124】
一方、大きな縮環構造を電荷輸送性分子ユニットをコア部として採用しても、dialkylpentaceneやdialkylbenzothienobenzothiopheneなどの例のように、コア部に直接、炭化水素鎖を連結させた物質では、液晶相の安定化がはかれず、一般に、液晶相を発現しないか、液晶相を発現したとしてもSmA相などの低次の液晶相しか発現しない文献 Liquid Crystal.Vol.34.No.9(2007)1001-1007. Liquid Crystal.Vol.30.No.5(2003)603-610。このため、単に電荷輸送性分子ユニットに大きな縮環構造を用いても、液晶相で高い移動度を実現することはできない。図に示したように、電荷輸送性分子ユニットに分子のフリップーフロップ運動の自由度を与えるためのもう一つの構造ユニットを連結した分子構造をコア部に採用することにより、初めて、高次の液晶相の発現と液晶相における高い移動度の実現が期待される。
【0125】
このような電荷輸送性分子ユニットにもう一つの剛直な構造ユニットを連結した構造(コア部)に炭化水素鎖を連結し、分子に、棒状の分子形状の異方性と液体性を付与することによって、高い確率で液晶相の発現を誘起することが出来る。炭化水素鎖を連結する場合、2本の炭化水素鎖を連結することが一般であるが、炭化水素鎖が1本の場合でも、液晶相はしばしば発現させることができる。この場合、液晶相の出現温度領域は、一般に、降温過程と昇温過程で非対称となることが多い。これは降温過程では、一般に液晶相温度領域が低温まで広がり、逆に、昇温過程では結晶相を高温領域まで広げることに役立つ。一方、炭化水素鎖を2本付与すると、発現した液晶相を安定化することができる。
【0126】
以上述べた基本的な分子設計に基づいて物質を合成した場合、その物質の本発明に関わる有用性は、基本的には、液晶相で有機半導体として用いる場合は高次のスメクティック相を発現すること、結晶相で有機半導体として用いる場合は、結晶相温度より高い温度から冷却したときに結晶薄膜に亀裂や空隙を形成しにくく、かつ、結晶相に隣接して、低次の液晶相を発現しないものを選ぶことが好ましい。言い換えれば、液晶相で有機半導体として用いる場合、結晶相に隣接する温度領域において、ネマティック相やSmA相やSmC相以外の液晶相を発現すること、また、結晶相で有機半導体として用いる場合には、結晶相より高い温度領域から冷却して結晶相へ転移させたとき、亀裂や空隙が形成されにくいことが判定基準となる。
【0127】
(スクリーニング法)
これは、以下に述べるスクリーニング法(判定法)によって、容易に判定することが出来る。このスクリーニング法に用いる各測定法の詳細に関しては、必要に応じて、下記の文献を参照することができる。
文献A:偏光顕微鏡の使い方:実験化学講第4版1巻丸善P429〜435
文献B:液晶材料の評価:実験化学講座第5版27巻P295〜300丸善
:液晶科学実験入門日本液晶学会編シグマ出版
【0128】
(S1)単離した被検物質をカラムクロマトグラフィーと再結晶により精製した後、シリカゲルの薄層クロマトグラフィーにより、該被検物質が単一スポットを示す(すなわち、混合物でない)ことを確認する。
【0129】
(S2)等方相に加熱したサンプルを毛細管現象を利用して、スライドガラスをスペーサーを介して張り合わせた15μm厚のセルに注入する。一旦、セルを等方相温度まで加熱し、偏光顕微鏡でそのテクスチャーを観察し、等方相より低い温度領域で暗視野とならないことを確認する。これは、分子長軸が基板に対して水平配向していることを示すもので、以後のテクスチャー観察に必要な要件となる。
【0130】
(S3)適当な降温速度、例えば、5℃/分程度の速度でセルを冷却しながら、顕微鏡によるテクスチャーを観察する。その際、冷却速度が速すぎると、形成される組織が小さくなり、詳細な観察が難しくなるので、再度、等方相まで温度を上げて、冷却速度を調整して、組織が容易に観察しやすい、組織のサイズが50μm以上となる条件を設定する。
【0131】
(S4)上記(S3)項で設定した条件で、等方相から室温(20℃)まで冷却しながらテクスチャーを観察する。この間にセル中で試料が結晶化すると、格子の収縮に伴い、亀裂や空隙が生じ、観察されるテクスチャーに黒い線、または、ある大きさを有する領域が現れる。サンプルを注入する際に空気がはいると同様の黒い領域(一般には丸い)が局所的に生じるが、結晶化によって生じた黒い線や領域は組織内や境界に分布して現われるので容易に区別できる。これらは、偏光子、及び、検光子を回転させても、消失や色の変化が見られないことから、テクスチャーに見られるこれ以外の組織とは容易に識別できる。(図2参照)このテクスチャーが現れる温度を結晶化温度として、その温度より高い温度領域で現れるテクスチャーがネマティック相、SmA相、SmC相でないことを確認する。サンプルがネマチック相を示す場合は、糸巻き状と表現される特徴的なシュリーレンテクスチャー(図3参照:典型的なシュリーレンテクスチャー)が観察され、SmA相やSmC相を示す場合は、fan−likeテクスチャーと呼ばれる扇型でその領域内は均一組織を有する特徴的なテクスチャー(図4参照:典型的なFan−likeテクスチャー)が観察されるので、その特徴的なテクスチャーから容易に判定することができる。
【0132】
特殊なケースとして、SmA相からSmB相、SmC相からSmF、SmI相に転移する物質では、相転移温度で一瞬に、視野の変化が見られるが、相転移したテクスチャーにはほとんど変化が見られない場合があり、形成されたSmB相やSmF相、SmI相のテクスチャーをSmA相、SmC相と誤認する場合があるので注意が必要である。その場合は、相転移温度で見られる一瞬の視野の変化に気をつけることが重要である。この確認が必要な場合は、DSCにより、中間相の数を確認した後、それぞれの温度領域でX線回折を測定し、各相に特有の高角度領域(θ−2θの判定において15〜30度)においてピークの有無を確認すれば、SmA相、SmC相(いずれもピークなし)とSmB相、SmF相、SmI相(いずれもピーク有り)を容易に判定することができる。
【0133】
(S5)室温(20℃)で、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって、黒い組織が見られないものは、有機半導体材料として利用可能であるので、この物質が室温で高次の液晶相、あるいは、結晶相(準安定な結晶相を含む)の如何に関わらず、本発明の範疇として取り扱うものとする。
【0134】
なお、本発明において好適に使用可能な液晶材料(この場合には、本発明の有機半導体材料における、−OH基以外の部分)の選択に関しては、必要に応じて、特願2011−053642号(2011年3月10日出願)を参照することができる。
【0135】
当該液晶材料をデバイスへ応用する際は、より高い移動度を実現できる結晶相で用いることが更に有効である。
【0136】
当該液晶材料は、単独で用いることが好適であるが、相溶する他の物質と混合して用いることも可能である。
【0137】
この場合、電荷注入促進の効果は、OH基を有する当該物質が、(混合物の総モル数を基準として)15モル%程度以上(更には、25モル%程度以上)含まれることが電荷注入の促進に有効である。該「他の物質」が液晶材料の伝導に対して電子的なトラップとなる場合には、OH基を有数する当該物質の含有量の上限として、80モル%程度以下(更には、60モル%程度以下)とすることが好ましい。
【0138】
(OH基を有する物質の濃度)
OH基を有する物質の濃度は、混合物のH−NMRのスペクトルの解析によって、その濃度の目安をうることができる。例えば、側鎖末端にOH基を有する液晶材料を含む混合物を例にとれば、「側鎖末端メチル基の水素」と「側鎖末端OH基のメチレン基の水素」の積分値の比率によって、その混合比を見積もることができる。本発明においては、該「積分値の比率」の値が0.06以上(更には0.1以上)であることが、本発明所定の効果を得る上で好ましい)。
【0139】
以上を要約すれば、本発明における効果を得るためには、OH基を置換した側鎖を少なくとも1本以上有し、かつ、コア部に、前記、π−電子共役系芳香環を少なくとも一つ構造にもつ物質で、より好適には、該物質が液晶相を示すものであり、更に、好ましくは、該物質がネマチック相よりも高次の液晶相を示す物質が、本発明の効果を有効に実現できる有用な物質である。
【0140】
その要件は以下のように決定することができる。
【0141】
(化学構造)
該物質の化学構造には、有機化学の分野において化学構造を決定することに一般に用いられるH−NMRスペクトル解析によって、前記、構造を確認する。特に、OH基が置換した構造を有することの確認は重要である。この場合、必要に応じて、重水置換によるOH基プロトンの消失の確認や赤外吸収スペクトルの測定によるOH基の確認を行い、物質構造を確認することができる(このようなNMRスペクトル解析、および赤外吸収スペクトル測定法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、文献:「有機化合物のスペクトルによる同定法」 (第7版)R. M. Silverstein、F. X. Webster、D. J. Kiemle 著、荒木峻、益子洋一郎、山本修、鎌田利紘 訳、出版年月日 2006/09/15、ISBN 9784807906338 東京化学同人,を参照することができる)。
【0142】
(ネマティック相以上の液晶相の発現の確認)
液晶材料であれば、一般に、走査型示差熱分析(DSC)測定によって、出現する相の数、温度領域を確認したのち、偏光顕微鏡による組織観察、X線回折法等を用いて出現する相を同定する。これらの液晶相確認法の詳細については、必要に応じて、文献(日本液晶学会編「液晶科学実験入門」、シグマ出版、ISBN978‐4‐915666‐49−0C3058(2007))を参照することができる。
【0143】
(偏光顕微鏡)
液晶材料がネマチック相より高次の液晶相を示すかどうかの判定は、最も簡便には、偏光顕微鏡による液晶の組織観察によって判定する事ができる。
【0144】
すなわち、ネマチック相はシュリーレン組織として知られる特有の組織を示すため、前記、文献(日本液晶学会編「液晶科学実験入門」)の第12章「偏光顕微鏡の仕組みと使い方」p107−146を参考に、シュリーレン組織として知られる組織の有無を確認すれば、ネマチック相とネマチック相より高次の液晶相であるかは容易に判定できる。
【0145】
液晶相の種類の同定が必要な場合は、必要に応じて、同文献(日本液晶学会編「液晶科学実験入門」、シグマ出版、ISBN978‐4‐915666‐49−0C3058(2007))記載の、第1章「液晶相の同定(1)カラミチック液晶、(2)キラ液晶」(p1−10)、「第2章 液晶相の同定(3)ディスコティック液晶相」のX線構造解析による同定(p11−21)、「第8章 液晶のX線回折測定―広角X線回折装置を用いた液晶相の測定」(p69−77)に詳しく記載されているので、これを参考に同定することができる。
【0146】
(3)電荷注入促進の効果の確認
「電荷注入促進効果」の評価には、液晶セルを用いて、その電流−電圧特性により行う。測定に用いる液晶セルの作製と試料の調製方法に関しては、前記文献(日本液晶学会編「液晶科学実験入門」、シグマ出版、ISBN978‐4‐915666‐49−0C3058(2007))の「第4章 液晶セルの作製方法」(p35−41)を参考にすれば良い。ただし、ここで重要な点は、電荷注入特性を評価する必要があるため、電極上に液晶材料が直接に接するようにすることが重要で、配向膜を用いると、観測される電流密度は小さく見積もられる結果となる。ここに、「電極上に液晶材料が直接に接する」とは、電極と液晶材料との間に、「他の物質」(例えば、配向膜)意図的にはさまないことを言う。
【0147】
電極には、ITO、または、Auを用いるとよい。
【0148】
次に液晶セルに、電源、電流計を接続し、電流電圧特性を測定する。
【0149】
電荷注入の促進効果は、ある電界強度における電流密度として評価でき、103V/cm以下の領域においても、その効果は明白であるが、105V/cmより高電界側では極めて顕著となる。ここでは、その程度が大きい物質ほど有用であるので、105V/cmの電界強度において、10−5A/cm2以上の電流密度を示すものを有用と判定する。
【0150】
以下に、実施例を用いて本発明を詳しく説明する。
【実施例】
【0151】
[実施例1]
本発明を、6,6’−([1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス(オキシ))ビス(ヘキサン−1−オール)(以下、6O−BP−O6ジオールと略す)を用いて説明する。この物質の合成は下記の通り行い、NMRによりその構造を確認した。
【0152】
【化5】
【0153】
Ar 雰囲気下で三つ口のフラスコを用い4,4’−ジヒドロキシビフェニル 5.0g(0.027モル)と4.4倍モルのNaOH(4.8g)をエタノール(60ml)に溶かし30分還流した。その後4.4倍モル当量の6-クロロヘキサノール16.3g(0.12モル)を滴下し24時間還流した。室温に冷却し水の中に反応液を注ぎ込み析出した固体を濾過して取り出した。アセトンで再結晶後(活性炭処理)アルミナ(溶離液として熱トルエン)を用いたカラムクロマトグラフィを行い更にエタノールによる再結晶を行い、無色の結晶 8.3gを得た。(収率〜80%)
【0154】
1H−NMR(500MHz,DMSOδ)7.51(d,J=8.7Hz,4H),6.97(d,J=8.7Hz,4H),4.36(t,J=5.3Hz,2H),3.98(t,J=6.4Hz,4H),3.40(q,J=6.0Hz,4H),1.72(quint,J=6.9Hz,4H),1.4〜1.33(m,12H)
【0155】
この物質はDSC,偏光顕微鏡による組織観察、X線回折の測定から、その相変化は以下のように同定された。
【0156】
Heating:Cry/91.7C/SmX/170.5C/Iso
【0157】
異なる電極材料を設けたガラス基板を用いて、液晶セル(セル厚:4μm)を作製し、30℃結晶相で、ITO,Au,Pt,Ag,Alを正に印加した場合の電流電圧特性を図1に示す(ここで用いた「液晶セル」作成法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば文献日本液晶学会編「液晶科学実験入門」、シグマ出版、ISBN978‐4‐915666‐49−0C3058(2007) を参照することができる)。該液晶セルのサイズ、構成は、以下の通りであった。
【0158】
<液晶セルの構成>
ITO,Au,Pt,Ag,Al電極の膜厚:30〜100nm程度
上記電極の形成法:スパッタ法、あるいは、真空蒸着法
上記電極の平面形状およびサイズ:数mm□
【0159】
[実施例2]
実施例1に記載の6−BP−O6ジオールを注入した異なるセル厚を有する液晶セル(電極ITO)を用いて、結晶相(30℃)、及び、液晶相(160℃)で電流−電圧特性を測定した結果を図2、及び、図3に示す。結晶相の場合、セル厚が厚い場合は、電荷輸送が阻害されるため電流値の低下がみられる。
【0160】
[実施例3]
6O−BP−O6ジオールをITOを電極とするポリイミド配向膜付き液晶セルとポリイミド配向膜を用いない液晶セル(セル厚:4μm)に注入し、その特性の違いを調べた結果を図3に示す。ポリイミド配向膜を用いないセル方が高い電流密度を示している。
【0161】
[実施例4]
正孔輸送材料落として知られるTPD(N,N’-diphenyl-N,N’-bis(3-methylphenyl)-1,1-biphenyl-4,4’-diamine)に6O−BP−O6ジオールをそれぞれ14.7モル%、30.2モル%混合し、ITO電極を有する液晶セル(セル厚:4μm)に注入して、電流−電圧特性を測定した。結果を図5に示す。
【0162】
[実施例5]
電荷輸送能を示すターチオフェン系液晶材料(ω,ω’-ジオクチルターチオフェン,8−TTP−8)に6O−BP−O6ジオールを10.1モル%,27.34モル%混合し、ITOを電極とする液晶セル(セル厚:4μm)に注入し、電流−電圧特性を30℃、80℃、110℃で測定した結果を図6、図7に示す。図中8−TTP−8で示した結果は60−BP−O6ジオールを含まない場合の測定結果である。
【0163】
【化6】
【0164】
[実施例6]
液晶性を示さない6−BP−O6(4,4’-ジヘキシロキシビフェニル)に6O−BP−O6ジオールを9.43モル%、10.1モル%、50.5モル%混合した試料をITO電極を有する液晶セル(セル厚:4μm)に注入し、電流−電圧特性を測定した結果を、比較のために、6O−BP−O6単体、あるいは、6O−BP−O6ジオール単体を用いた場合、また、正孔注入層として用いられるPEDOT・PSSをITO電極の上に積層し6O−BP−O6を注入した液晶セルを用いた場合の結果と合わせて図8に示す。6O−BP−O6ジオールを混合した系は、105V/cmの電界強度で30モル%を超える濃度では10−5A/cm2を超える高い電流密度を示す。
【0165】
【化7】
【0166】
[実施例7]
実施例6の参照実験として、6O−BP−O6ジオールの代わりに電荷輸送部位であるビフェニル基を持たない1,12−ドデセンジオールをそれぞれ1.98モル%、9.68モル%,29モル% 6O−BP−O6に混合し、ITO電極を用いた液晶セル(セル厚:4μm)に注入し、同様に30℃で電流−電圧特性を測定した結果を図9に示す。図には、6O−BP−O6をPEDOT・PSSをITO電極の上に積層した電極を有する液晶セルに注入した場合、6O−BP−O6ジオールを単体で用いた場合の結果も合わせて示した。1,12−ドデセンジオールを用いた場合には、電流密度は極めて小さく、電荷注入の促進効果は極めて小さいことが分かる。
【0167】
[実施例8]
実施例5の参照実験として、6O−BP−O6ジオールの代わりに電荷輸送部位であるビフェニル基を持たない1,12−ドデセンジオールをそれぞれ10.3モル%、29.5モル%,100モル%の濃度になるように混合した試料をITO電極付き液晶セルに注入し、電流電圧特性を30℃で測定した結果を図10に示す。1,12−ドデセンジオールを用いた場合には、電流密度の増加はほとんど見られない。
【0168】
[実施例9]
8−((4’−(ペンチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)オキシ)オクタン-1-オール(以下5−BP−O8OHと略す)を常法にしたがい、4’−ペンチルビフェノールとOH基をTHPで保護したブロモオクタノールとエーテル縮合反応により合成した。
【0169】
<合成法>
【化8】
【0170】
1H−NMR(500MHz,DMSOδ)
7.50(d,J=8.7Hz,4H),6.97(dd,J=6.4Hz,J=2.3Hz,4H),4.33(t,J=5.3Hz,1H),3.98(q,J=6.1Hz,4H),3.38(q,J=5.9Hz,2H),1.71(quint,J=6.5Hz,4H),1.29〜1.47(m,14H),0.94(t,J=7.3Hz,3H)
【0171】
この物質はCry2−57℃−Cry1−66.1℃−143.℃−Iの相系列を示した。
【0172】
この物質は、143℃と66.1℃の領域に現れる相は図11に示すように、偏光顕微鏡の観察を行ったところクラックが観測されることから、液晶相ではなく結晶相と判断される。
【0173】
しかしながら、測定用ITOを電極に有する液晶セル(セル厚:4.6μm)のリターでションの色から判断すると、分子は基板対し、水平方向に配向しているものと判断される。30℃で測定した液晶セルの電流−電圧特性を図12に示す。セル厚が17μmの厚い場合においても、105V/cmの電界強度において10−3A/cm2もの高い電流密度が観測された。
【0174】
[実施例10]
1,1'-(benzo[b]benzo[4,5]thieno[2,3-d]thiophene-2,7-diyl)bis(decan-1-ol)(以下、9−CHOH−BTBT−CHOH9と略す)の合成にあたり、その原料はB. Kosato,V. Kozmik and J. Svoboda Collect. Czech. Chem. Commum. Vol. 67, 645−664(2002)に記載された方法により合成した。
【0175】
水素化アルミニウムリチウム(27mg,0.72mmol)のTHF(10ml)溶液に2,7−ジ(1−オキソデカン−1−イル)[1] [ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(100mg,0.18mmmol)のTHF(20ml)溶液を滴下した。室温にて6時間攪拌した後、反応液に水を加え、次いで、2M塩酸を加えた。ジクロロメタンで抽出し、水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、参考例1で示される化合物(90mg,収率:90%)を得た。
【0176】
得られたベンゾチエノベンゾチオフェンのジオール誘導体の構造は、H−NMRより確認した。
【0177】
1H−NMR(300MHz, CDCl3,δ) : 7.91(s,2H),7.84(d,J=6.0Hz,2H),7.43(dd,J=0.9Hz,J=6.0Hz,2H),4.83(t,J=4.5Hz,2H),3.70(t,J=4.5Hz,2H),1.94−1.15(m,32H),0.87(t,J=4.8Hz,6H).
【0178】
この物質はDSCの測定から判断すると、液晶相を発現しないと判断された。
【0179】
【化9】
【0180】
また、1,1’−(benzo[b]benzo[4,5]thieno[2,3−d]thiophene−2,7−diyl)bis(undecan−1−ol)(以下、11−CHOH−BTBT−CHOH11と略す)を同様にして、合成した。
参考例1と同様方法により、2,7−ジ(1−オキソドデカン−1−イル)[1] [ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(300mg,0.50mmmol)を用いて反応を行い、参考例2で示される化合物(230mg,収率:77%)を得た。
【0181】
得られたベンゾチエノベンゾチオフェンのジオール誘導体の構造は、H−NMRより確認した。
【0182】
1H−NMR(300MHz, CDCl3,δ):7.92(s,2H),7.84(d,J=6.0Hz,2H),7.43(dd,J=0.9Hz,J=6.0Hz,2H),4.83(m,2H),1.92(m,2H),1.88−1.15(m,40H),0.87(t,J=4.8Hz,6H).
【0183】
DSCによる測定から、液晶相を発現しないと判断された。
【0184】
【化10】
【0185】
これらを物質をITO電極付きのセル厚15μmの液晶セルに注入し、室温で偏光顕微鏡によりそのテクスチャーを観察(倍率40〜200倍)すると、図13に示すように、黒色をしており、分子が基板に対して、立っていると判断された。
【0186】
これらのセルの電流電圧特性を30℃で測定したところ、図14に示すように、極めて低い電流しか、測定されなかった。
【0187】
[実施例11]
8−((6−オクチルフェニル)ナフタレン-2-イル)オキシ)ブタン−1−オール(以下、8−PNP−O4OHと略す)を以下のように合成した。
【0188】
【化11】
【0189】
4−オクチルフェニル−6−ナフタノール(950mg,2.86mmol)、テトラヒドロピラニルで保護した4−ブロモ−1−ブタノール(1356mg,5.72mmol)を脱水DMA(20ml)に溶かし、炭酸カリウム(789mg,5.72mmol)/ヨウ化カリウム(95mg,0.572mmol)を加え、80oCで24時間加熱攪拌した。反応液を濃縮し、残留物をジクロロメタンに溶かし、触媒量のp−トルエンスルホン酸をメタノールに溶かし、反応液に加えて、3時間攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、水洗後、乾燥した。カラムクロマトグラフィーで精製し、実施例2で示される化合物を1115mg(収率:96.5%)得た。この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、二つのスメクチック相を発現することを確認した。
【0190】
この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、二つのスメクチック相を発現することを確認した。
【0191】
Crys.−122.8℃−SmX−148.4℃−−SmX−155.4℃−Iso
【0192】
この物質をセル厚4μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、各温度で電流−電圧特性を測定したところ、図15に示すように、10−5A/cm2を超える高い電流密度が観測された。
【0193】
また、30℃では図16に示す高い電流密度が観測された。
【0194】
[実施例12]
6,6’−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2,7−ジイル)ビス(ヘキサン−1−オール)(以下、6−BTBT−6ジオールと略す)の合成に用いる原料の2,7-ジヨード[3,2-b][1]ベンゾチエノチオフェンはS.Y.ZherdevaらによるZh. Organic.1980,16,383−388、及び、US特許755785に記載の方法で合成した。
【0195】
アルゴン雰囲気下、2,7−ジヨード[3,2−b][1]ベンゾチエノチオフェン(チオフェン)(0.6g,1.2ミリモル)、5−ヘキシン‐1‐オール(0.60g,6.1ミリモル),ヨウ化銅(0.11g,0.6ミリモル)をピペリジン/N,Nージメチルホルムアミド(10ml/29ml)に溶かし、ビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.08g,0.12ミリモル)を加え、70℃で24時間加熱攪拌した。反応液に水を加え、攪拌し、析出物を得た。これをろ過し、水洗後、乾燥した。
【0196】
カラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする[3,2−b][1]ベンゾチエノチオフェン(チオフェン)の5−ヘキシン‐1‐オール置換体0.16g、収率:31%を得た。
【0197】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.94(s,2H),7.76(d,J=6.0Hz,2H),7.46(d,J=6.0Hz,2H),3.75(m,6H),2.52(m,4H),1.85−1.70(m.8H)
【0198】
この化合物(0.16g,0.37ミリモル)をエタノールに溶かし、10%パラジウム−炭素(0.2g)を加え、水素雰囲気下、室温で2日間攪拌した。反応液を濾過したあと、濃縮し、残留物カラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする6−BTBT−6ジオール 0.07g、収率43%で得た。
【0199】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.76(d,J=6.0Hz,2H),7.70(s,2H),7.27(d,J=6.0Hz,2H),3.65(m,6H),2.75(t,J=5.7Hz,4H),1.80−1.40(m.16H)
【0200】
【化12】
【0201】
この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、SmA相を示すことを確認した。
【0202】
Crys.−91.7℃−SmA−171.6.4℃−Iso
【0203】
この物質をセル厚4μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、30℃で電流−電圧特性を測定したところ、図17に示すように、104V/cmの低い電界強度にもかかわらず、10−5A/cm2を超える高い電流密度が観測された。
【0204】
[実施例13]
実施例12と同様な方法により、5−ヘキシン‐1‐オールに変えて、9−デシン‐1−オール(0.1.86g、12.0ミリモル)と2,7−ジヨード[3,2−b][1 ベンゾチエノチオフェン(1.49g,3.0ミリモル)から、[3,2−b][1]ベンゾチエノチオフェンの、9−デシン‐1−オール置換体0.18g、収率11%を得た。
【0205】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.94(s,2H),7.76(d,J=6.0Hz,2H),7.46(d,J=6.0Hz,J=0.9Hz,2H),3.65(m,6H),2.45(t,J=5.4Hz,4H),1.75−130(m.24H)
【0206】
次に、この化合物(0.15g,0.027ミリモル)を用いて、同様な方法で還元反応を行い、目的とする化合物10−BTBT−10ジオール 0.10g,収率69%を得た。
【0207】
【化13】
【0208】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.76(d,J=6.3Hz,2H),7.70(s,2H),7.28(d,J=6.3Hz,2H),3.72(m,2H),6.62(m,4H),2.73(t,J=5.7Hz,4H),1.75−1.15(m,32H)
【0209】
この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、SmA相を示すことを確認した。
【0210】
Cry.−130.6℃−SmA−135.9℃−Iso
【0211】
この物質をセル厚4μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、30℃で電流−電圧特性を測定したところ、図18に示すように、104V/cmの低い電界強度にもかかわらず、10−5A/cm2を超える高い電流密度が観測された。
【0212】
[実施例14]
実施例12に記載の方法と応用にして、6−(7−デシルベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2−イル)デカン−1−オール(以下、10−BTBT−10オールと略す)を1‐(7‐ヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエノベンゾチオフェン−2−イル)デカン(0.41g,0.81ミリモル)と9−デシン1‐オール(0.25g,1.62ミリモル)から、1‐(7‐ヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエノベンゾチオフェン−2−イル)デカンの9−デシン−1‐オール置換体0.14g,収率32%を得た。
【0213】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.93(s,1H),7.75(dd,J=6.0Hz,J=3.9Hz,2H),7.70(s.1H),
【0214】
7.45(dd,J=6.0Hz,J=1.2Hz,1H),7.27(dd,J=6.Hz,J=1.2Hz,1H),3.66(m.2H),
2.75t,J=6.0Hz,2H),2.52(t,J=5.4Hz,2H),1.80−1.20(m,29H),0.90(t,J=7.0Hz,3H)
【0215】
得られたこの化合物(0.14g,0.26ミリモル)を用いて、[実施例12]と同様な方法により還元反応を行い、10−BTBT−10オール 0.10g,収率72%を得た。
【0216】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):775(d,J=6.0Hz,1H),7.70(s,1H),7.27(d,J=6.0Hz,1H),3.63(t,J=5.4Hz,4H),2.75(t,J=5.7Hz,4H),1.75−1010(m,34H)0.89(t,J=7.0Hz,3H)1.75−1.15(m,32H)
【0217】
【化14】
【0218】
この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、SmA相を示すことを確認した。
【0219】
Crys.−130.6℃−SmA−135.9℃−Iso
【0220】
この物質をセル厚4μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、132.5℃で電流−電圧特性を測定したところ、図19に示すように、104V/cmの低い電界強度にもかかわらず、10−4A/cm2を超える高い電流密度が観測された。図には、比較のためにOH基を持たない10−BTBT−10 の120℃(SmA相)における電流電圧特性を合わせて示した。
【0221】
[実施例15]
6−(5’’−hexyl−[2,2’:5’,2’’−terthiophen]−5−yl)octan−1−ol(以下、6−TTP−8OHと略す)の合成は、5’−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン−5−ボロン酸ピナコールエステル(451mg,1.2mmol)をエタノール(10ml)に溶かし、炭酸カリウム(341mg, 2.4mmol)を水(3ml)に溶かし、テトラヒドロピラニルで保護した2−ブロモチオフェン−5−イル−オクタノール(291mg,1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(35mg,0.03mmol)をトルエン(15ml)に溶かし、その三つの溶液を混合し、90oCで3時間加熱攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、水洗後、乾燥した。カラムクロマトグラフィーで精製し本、実施例15で示される化合物、6−TTP−8OH221mg(収率:48%)を得た。
【0222】
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS),δ6.96(s,2H),6.95(d,J=3.4Hz,2H),6.67(d,J=3.4Hz,2H),3.64(dt,J=7.3Hz,J(CH2−OH)=5.4Hz,2H),2.78(t,J=7.3Hz,4H),1.68(quint,J=7.3Hz,4H),1.29−1.58(m,19H)ppm.
13CNMR(500MHz,CDCl3,TMS),δ=145.40,145.28,136.14,136.08,134.67,134.61,124.80,124.76,123.45,123.44,123.15,63.06,32.77,31.56,30.19,30.16,29.30,28.97,28.75,25.70,22.57,14.08ppm.
【0223】
この物質をセル厚3.7μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、30℃で電流−電圧特性を測定したところ、図20に示すように、液晶相、及び、結晶相において105V/cmの電界強度で、10−5A/cm2を超える高い電流密度が観測された。
【0224】
【化15】
【0225】
[実施例17]
6,6’−([2,2’:5’,2’’−terthiophene]−5,5’’−diyl)bis(hexan−1−ol)(以下、6−TTP−6iolと略す)を、て、ターチオフェンをTHF中でn−BuLiとt−BuOKを用いて、THPで水酸基を保護したBromohexan−1−Olと反応させ、収率27%でターチオフェンの両末端を置換したジアルキル体を得た。つぎに、得られたジアルキル体を塩化メチレンに溶解し、少量p−トルエンスルホン酸を含むメタノールを加え、3時時攪拌後水を加え、沈殿してくる結晶を濾取し、イソプロピルアルコールから再結晶によって、収率で85%で目的とする6−TTP−6diolを得た。
得られた物質を、DSC,偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折から相の同定を行った。高次のSm相は同定に至っていない。
Cry.−98.5℃−SmX−128℃−SmC−139℃−Iso
【0226】
5,5”−ビス(6−ヒドロキシルヘキシル)ターチオフェン(6−TTP−ジオール)
H−nmr(270MHz,CDCl3): δ 6.96 (s,2H),6.81(d,J=4.5Hz 2H),6.67(d,J=3.6Hz 2H),3.65(t,J=6.3Hz CH2OH×2,4H)2.80(t,J=7.1Hz ArCH2×2,4H),1.67(quint,J=7.7Hz ArCH2CH2×2,4H),1.50−1.60(m,CH2CH2OH×2,4H overlapped with H2O),1.41(quint,J=4.1Hz ArCH2CH2CH2CH2×2,8H),〜1.2(broad 2H,OH×2)
【0227】
【化16】
【0228】
<液晶層のデータ>
<図21 電圧−電流特性>
【0229】
[実施例18]
6−(5’’−hexyl−[2,2’:5’,2’’−terthiophen]−5−yl)hexan−1−ol(以下、6−TTP−6olと略す)を以下のように合成した。5’−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン−5−ボロン酸ピナコールエステル(451mg,1.2mmol)をエタノール(10ml)に溶かし、炭酸カリウム(341mg,2.4mmol)を水(3ml)に溶かし、テトラヒドロピラニルで保護した2−ブロモチオフェン−5−イル−ヘキサノール(3461mg,1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(35mg,0.03mmol)をトルエン(15ml)に溶かし、その三つの溶液を混合し、90oCで3時間加熱攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、水洗後、乾燥した。カラムクロマトグラフィーで精製し、6−TTP−6ol109mg収率:38%を得た。
【0230】
5−ヘキシル−5’’−(6−ヒドロキシヘキシル)ターチオフェン(6−TTP−6オール)の構造はH-NMRにより決定した。
【0231】
H−nmr(500MHz,CDCl3)δ6.97(s,2H),6.96(d,J=3.6Hz 2H),6.67(d,J=3.6Hz 2H),3.65(t,CH2OH×1,2H)2.79(d,J=6.9Hz ArCH2×2,4H),1.64−1.71(m,ArCH2CH2×2,4H),1.54−1.60(m,HOCH2CH2×1,2H overlapped with H2O),1.31−1.42(m,CH2×5,10H),〜1.2(broad 1H,OH×1),0.89(t,J=6.9Hz 3H,CH3)
【0232】
【化17】
【0233】
6−TTP−6olをDSC,偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折測定を行い、相転移の挙動から、Cry.−K65.5℃−SmG−95.8℃−Isoと決定した。
[図23−電圧−電流特性]
【0234】
[実施例19]
タイムオブフライト(time-of-flight)法により測定した8−TTP−8,6−TTP6オール,6−TTP−6ジオールの移動度の温度依存性を示す。OH基を置換した側鎖を有する液晶材料は、OH基を持たない類似化合物と比較しても、移動度に大きな遜色はない事がわかる。
【0235】
<図22 TOF移動度の図>
【0236】
[実施例20]
<8−PNP−O12OH>
8−((6−octylphenyl)naphthalen−2−yl)oxy)dodecan−1−ol(以下、8−PNP−O12OHと略す)を次のように合成した。
トルエン/2M炭酸ナトリウム水溶液(11ml/3ml)にアルゴンガスを導入し、アルゴン雰囲気下、この液に4−オクチルベンゼンボロン酸(737mg,3.15mmol)、12−(6−ブロモナフチルオキシ)ドデカン−1−オール(1143mg,3mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(104mg,0.09mmol)を加え、100oCで6時間加熱攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、水洗後、乾燥した。カラムクロマトグラフィーで精製し、実施例1で示される化合物、8−PNP−O12OH774mg(収率:50%)を得た。
【0237】
【化18】
【0238】
構造は、H−NMRによって、同定した。
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS),δ(ppm)=7.12−7.97(m.10H),4.07(t,2H),3.63(t,2H),2.65(t,2H),1.97(quint,2H),1.82(quint,2H),1.63(quint,2H)1.20−1.50(m,26H),0.88(t,3H).
13CNMR(125MHz,CDCl3,TMS),δ(ppm)=157.19,141.89,138.55,136.25,133.70,129.16,128.88,127.11,127.01,125.94,125.27,119.38,106.45,68.09,63.09,35.64,32.83,31.91,31.53,29.61,29.58,29.52,29.44,29.43,29.41,29.29,26.13,25.75,22.69,14.10.
この物質は、DSCの測定から、Cry.−131.2℃−Isoの相転移挙動を示し、液晶相は発現しない。
【0239】
[実施例21]
【0240】
SiO2付きP型シリコン基板上に10−BTBT−10オールの0.5wt%クロロフォルム溶液をスピンコートした後、形成した多結晶薄膜上に、マスクパターンを用いて、Auを50nm真空蒸着することによりソース、ドレインの電極パターンを形成し、トップコンタクトを有するボトムゲート型FETを試作した。W/Lは1000/100μm/μmである(このようなFET作成法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば文献:特許公報(B2)特許第4581062号を参照することができる。)。
【0241】
FETを作製後、100℃で30分、真空中で熱アニールした後、その特性を大気中、室温で測定した。図23にそのトランスファー特性を示す。移動度は10−2cm2/Vsと見積もられた。
【0242】
[産業上の利用の可能性]
【0243】
本発明は、OH基を有する材料を電荷注入促進機能を有する有機半導体材料として、有機EL素子の電荷輸送層、あるいは、有機太陽電池の有機トランジスタの活性層等の素子材料として用いることができる。
【0244】
また、電極との有機半導体との電荷注入を促進するための電荷注入促進物質として、電極界面に積層あるいは、有機半導体材料に混合して用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は新規機能を有する有機半導体材料(ないし物質)に関し、特に、電荷注入促進機能を有する機能性の有機半導体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料には、低分子有機半導体材料を絶縁性のポリマーに分散した分子分散型ポリマーや低分子有機半導体に代表される有機アモルファス材料や、ペンタセンやオリゴチオフェンなどに代表される有機半導体材料の多結晶薄膜などがある。
【0003】
前者の有機アモルファス材料は主に、有機感光体、有機EL素子、有機太陽電池に利用され、後者の多結晶薄膜は、高い移動度を活用して、主に有機FET素子に用いられる。
【0004】
しかしながら、有機半導体材料を電子デバイスに応用する場合、無機半導体とは異なり、熱生成電荷濃度が小さく、また、ドーピングによる伝導性の制御が困難である。このため、有機半導体の伝導は、主に、電極材料と有機半導体との電気的接触によって支配される傾向がある。従って、有機半導体が本来有する特性を最大限引き出すためには、電極/有機半導体界面の特性が、極めて重要となる。
【0005】
このような観点から、デバイスに用いる有機半導体の電気的特性は、電極からの電荷注入の容易性と、移動度の高さがその有用性を決めるという傾向がある。
【0006】
一般に、電極材料と有機半導体を接触させた場合、その界面にはショットキー型のエネルギー障壁が形成され、その障壁は電極から有機半導体への電荷注入を阻害するため、その改善が検討されてきた。
【0007】
一例を上げれば、電極材料の仕事関数と有機半導体材料のHOMO,LUMO準位の適合性を考慮した材料の選択をはじめとして、電荷注入を促進するためのバッファー層(電荷注入促進層)の導入や(特許文献1)、電極材料を有機チオール、有機カルボン酸、有機ホスホン酸などで化学修飾すること(特許文献2)により電極材料の仕事関数を変化させる方法が開発され、実用されて来ている。
或いは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物(PEDOT−PSS)やポリアニリンにイオン性ドーパンとを添加した有機電荷注入層(特許文献3)や電荷注入層として、LiF、Ca等のアルカリ金属やその化合物を用いた有機ELや有機トランジスタ(特許文献4)が公知である。
【0008】
これに対し、限られた例ではあるが有機半導体材料を工夫することによって、電荷注入を促進する方法も知られている。
【0009】
文献(F. Huang,Y. Zhang,M. S. Liu,and A. K.-Y. Jen,Adv. Func. Mat.,19,2457−2466,2009;非特許文献1)によれば、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2N(CH2CH2OH)2基を直接、ポリフルオレンに置換した物質においては、Al電極から電子注入を促進できることが記載されている。
【0010】
この文献に示される例では、電荷注入は促進されるものの、ポリフルオレンがアモルファス凝集状態であるため、移動度が小さく、伝導度は最終的には移動度で律速されることになる。
【0011】
アモルファス材料に比べて高い移動度を有する分子配向を有する材料系において、電荷注入を促進することができれば、デバイスへ応用に関する際により効果的である。
【0012】
しかしながら、一般の多結晶材料では形成される粒界が電荷輸送を阻害するため、仮に、電荷注入を促進できたとしても、多結晶材料の特性を十分に引き出すことはできない。
【0013】
実際、高い移動度が期待できる分子配向系材料において高い電荷注入促進機能を実現した新規材料は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−335557号
【特許文献2】特許第4504105号
【特許文献3】特開2007−242938号
【特許文献4】特開2010−135809号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】F. Huang,Y. Zhang,M. S. Liu,and A. K.-Y. Jen,Adv. Func. Mat.,19,2457−2466,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、半導体材料として優れた特性を有し、且つ、高い電荷注入促進機能を併せて有する、新規な分子配向系材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一般に、分子配向を有する有機半導体材料を電子デバイスに好適に用いるためには、電極配置に対して、分子を伝導に好適な方向に配向させる必要があるばかりでなく、形成される粒界が伝導を妨げることがないよう粒界の形成を制御することが必要となる。
【0018】
より具体的には、電子デバイスに採用される電極配置には、プレーナー型とサンドイッチ型があるが、分子配向を有する物質の特性を最大限に引き出すためには、電極配置に応じて、それぞれ、該物質の分子を垂直、あるいは、水平に配向させることが必要となる。
【0019】
しかしながら、一般の有機物質においては、分子配向を任意に、垂直、また、水平に任意に配向させることは困難であるが、他方、ペンタセンやオリゴチチオフェンなどのように分子形状が棒状であれば、分子を垂直に配向させることは可能である。この場合、デバイス応用の点からは、プレーナー型の電極配置を利用すれば素子の作製は可能であるが、分子を水平に配向させることは難しいため、サンドイッチ型の電極配置を用いて素子に利用することは困難である。
【0020】
また、分子形状に異方性を持たない分子の場合には、いずれの配向も制御は困難で、粒界の形成方向もランダムとなるため、デバイスへの応用は難しい。
【0021】
したがって、電荷輸送能を有する有機分子に電荷注入の促進の機能を付与できたとしても、その効果を最大限に活用する事ができるのは、分子配向が電極配置に都合よく配向した場合に限られる。
【0022】
したがって、電荷注入の促進効果を有効に活用するためには、分子を水平、または,垂直に配向制御を実現することが不可欠である。
【0023】
本発明者は、鋭意研究の結果、このような分子配向の制御を可能にする方法として、液晶分子の活用が極めて効果的なことを見出した。
【0024】
例えば、文献(H.Iino and J. Hanna,Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 45, No. 33, pp. L867-L870 (2006)))に記載した
ように、液晶分子は液晶状態において分子配向を制御が可能で、かつ、液晶相を介して結晶化させることにより、結晶相においても分子配向を任意に制御することが可能である。
【0025】
したがって、本発明において、分子配向性を示す有機材料を有機半導体として用いて、何らかの分子修飾により、電荷注入促進の機能を付与できれば、分子配向の制御が可能であるため、電子デバイスに用いる際に、分子配向によりもたらされる優れた電荷輸送特性を最大限に活用することが可能となる。
【0026】
本発明者は、更に進んで、電荷注入の促進機能を付与するためには如何なる化学修飾が好適かを検討した結果、芳香環等のπ電子共役系を有する有機分子に、OH基を有す側鎖を持たせることにより、極めて顕著な電荷注入促進の効果を示すことを見出した。
【0027】
本発明の有機半導体材料は、上記知見に基づくものであり、より詳しくは、芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料であって;4μmのセルギャップを介して配置された一対の基板を有するセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、動作温度において、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を与え、且つ、前記有機半導体材料の分子が、伝導に都合の良い方向に配向することが可能であることを特徴とするものである。
【0028】
本発明によれば、芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料であって、且つ、該材料を構成する分子を、電極に対して伝導に都合の良い方向に分子を配向させることが可能である。すなわち、本発明においては、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAが「電極に対して平行」等の「伝導に都合の良い方向」に配向させることが可能となる。より具体的に言えば、プレーナー型電極配置の場合には、基板に対して垂直に配向させることが可能である。他方、サンドイッチ型電極配置においては、基板あるいは、電極面に対して水平に配向させることが可能である。本発明においては、このような「好適な分子配向」の実現により、電流注入を顕著に促進でき、かつ、高い伝導を実現できる。
【0029】
分子配向を前述のごとく都合よく制御するために、電荷輸送能を有する分子配向性分子の活用が有効である。分子に分子配向性を与えるためには、分子に、棒状、または、円盤状の幾何学的な異方性を付与すればよい。さらに、それらの分子に側鎖を導入すれば、その異方性が増大し、分子配向性を冗長することができる。つまり、電荷輸送性能を有する、棒状、または,円盤状の分子にOH基をもつ側鎖を少なくとも一つもたせた物質、さらに、好適には、電荷輸送性能を有する、棒状、または、円盤状の分子に側鎖を導入した構造として、その側鎖を少なくとも一つOH基を持つ側鎖で置換した構造をもつ物質を用いることが更に有効である。
【0030】
本発明は、例えば、以下の態様を含むことができる。
【0031】
[1] 芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料であって;
4μmのセルギャップを介して配置された一対の基板を有するセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、動作温度において、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を与え、且つ、
前記有機半導体材料の分子が、伝導に都合の良い方向に配向することが可能であることを特徴とする有機半導体材料。
【0032】
[2] 前記有機半導体材料が、コア部にπ−電子共役系を含む液晶性を示す材料である[1]に記載の有機半導体材料。
【0033】
[3] 前記有機半導体材料が、ネマチック相より高次の液晶相を示す液晶材料である[2]に記載の有機半導体材料。
【0034】
[4] 液晶相において、ITO電極を有する液晶セル内に配置した際に、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を示す[2]または[3]に記載の有機半導体材料。
【0035】
[5] 前記電荷輸送性分子ユニットAに結合した、環状構造ユニットBを有する[1]〜[4]のいずれか1項]に記載の有機半導体材料。
【0036】
[6] 前記側鎖Sが、電荷輸送性分子ユニットA、および/又は環状構造ユニットBに結合している[5]に記載の有機半導体材料。
【0037】
[7]前記有機半導体材料の「ネマチック相より高次の液晶相」が、N相、SmA相およびSmC相以外の相である[3]に記載の有機半導体材料。
【0038】
[8] 前記「N相、SmA相およびSmC相以外の相」が、SmB,SmBcryst、SmI、SmF、SmE、SmJ、SmG、SmK、およびSmHからなる群から選ばれる液晶相である[7]に記載の有機半導体材料。
【0039】
[9] 前記有機半導体材料を結晶相から昇温させた際に、前記「N相、SmA相およびSmC相以外の相」が、結晶相に隣接して現れる[7]または[8]に記載の有機半導体材料。
[10] 前記「伝導に都合の良い方向」が、サンドイッチ型に電極を配置した際に、該有機半導体材料の分子の電荷輸送性分子ユニットAが該電極表面に水平配向することである[1]に記載の有機半導体材料。
[11] 前記「伝導に都合の良い方向」が、プレーナー型に電極を配置した際に、有機半導体材料の分子の電荷輸送性分子ユニットAが該電極表面に垂直配向することである[1]に記載の有機半導体材料。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、電荷輸送部位を有する有機分子に、OH基を有する側鎖を少なくとも一つ置換した有機分子を用いて、プレーナー型、あるいは、サンドイッチ型の電極配置に対し、電荷輸送を損なわない方向に分子を配向させることにより、105〜106V/cm領域の電界において、10−5A/cm2以上の高い電流密度を実現できる。
【0041】
本発明において、特に、分子配向を容易に制御可能な分子配向性分子を電荷輸送部位を有する分子として活用すれば、好適な相(例えば、その液晶相、あるいは、その結晶相)において、104V/cm以上の電界下で、電極から電荷注入を顕著に促進する効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】6OBP6ジオールの、電流−電圧特性に与える電極の効果の一例を示すグラフである。
【0043】
【図2】6O−BP−O6ジオールの電流−電圧特性に与える膜厚の効果の一例を示すグラフである(結晶相30℃)。
【図3】6OBP6ジオールの電流−電圧特性に与える膜厚の効果の一例を示すグラフである(液晶相160℃)。
【図4】6OBP6ジオールの電流−電圧特性に与える配向膜PIの影響lの一例を示すグラフである(液晶相160℃)。
【0044】
【図5】TPD:6O−BP−O6ジオール混合系の電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃)。
【図6】8−TTP−8:6O−BP−O6ジオール(10.1モル%)混合系の電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃、液晶相80℃)。
【0045】
【図7】8−TTP−8:6O−BP−O6ジオール(27.3モル%)混合系の電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃ 液晶相80℃ 110℃)。
【0046】
【図8】6O−BP−O6:6O−BP−O6ジオール混合系の電流−電圧特性、および6O−BP−O6ジオールの濃度依存性の一例を示すグラフである(結晶相9.34モル%,30モル%,50.5モル% 30℃)。
【0047】
【図9】6O−BP−O6:1,12−ドデカンジオール混合系の電流−電圧特性:1,12−ドデカンジオールの濃度依存性の一例を示すグラフである(結晶相1.98モル%,9.68モル%,29モル% 30℃)。
【0048】
【図10】8−TTP−8:1,12−ドデカンジオール混合系の電流−電圧特性、および1,12−ドデカンジオールの濃度依存性の一例を示すグラフである(結晶相10.3モル%,29.5モル%,100モル% 30℃)。
【0049】
【図11】5BP−O8OHの偏光顕微鏡によるドメイン組織の顕微鏡写真である(結晶相100℃ 58℃;写真の倍率:200倍;実際のドメインは数十〜数百μ程度)。
【0050】
【図12】5BP−O8OHの電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図13】9−CHOH−BTBT−CHOH−9と、11−CHOH−BTBT−CHPOH−11を注入したセルの偏光顕微鏡写真である(倍率:200倍;実際のドメインは数十〜数百μ程度)。
【0051】
【図14】9−CHOH−BTBT−CHOH−9と、11−CHOH−BTBT−CHPOH−11を注入したセルの電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃)。
【0052】
【図15】5−BPO8OHの電流−電圧特性の一例を示すグラフである(結晶相30℃)。
【図16】8−PNP−O4OHの30℃における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図17】6−BTBT−6ジオールの30℃における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図18】10−BTBT−10ジオールの30℃における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図19】10−BTBT−10オールと10−BTBT−10 の液晶相における電流−電圧特性の比較の一例を示すグラフである。
【0053】
【図20】6−TTP−8OHの結晶相と液晶相における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図21】6−TTP−6ジオールの80℃における電流−電圧特性の一例を示すグラフである。
【図22】8−TTP−8,6−TTP−6オール,6−TTP−6ジオールの移動度の温度依存性の一例を示すグラフである。
【図23】10−BTBT−10オールを用いたFETのトンスファー特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0055】
(基本構造)
本発明の有機半導体材料は、芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料である。
【0056】
前述のように、基本的に電荷注入の促進機能を有する有機半導体を実現するためには、電荷輸送部位となる芳香環を含むπ−電子系分にOH基を有する側鎖部を導入し、電極に対して、電荷輸送を妨げない方向に分子を配向させることが有効である。
【0057】
本発明においては、該有機半導体が液晶性を示すことに限定されるものではない。すなわち、所定の「分子配向性」を有する限り、本発明において使用可能である。本発明の効果をより効果的に引き出すためには、分子配向を制御できる分子形状に棒状、または、円盤状の幾何学的な異方性をもつ分子が好適で、さらに、その分子が「液晶分子」であることが好適に電荷注入の促進の機能を引き出す上で、有効である。
【0058】
(分子配向性)
本発明の有機半導体材料は、分子配向性を有する。この「分子配向性」は、より具体的には、2〜4μmのセルギャップを介して配置された一対の基板を有するセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、有機半導体材料の分子が該基板に平行に配向することを言う。このような「分子配向性」は、例えば、以下の方法によって、好適に確認することができる(このような分子配向性の確認方法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば文献
日本液晶学会編 液晶科学実験入門 第12章 偏光顕微鏡のしくみとつか方 p131-132 シグマ出版 IISBN978−4−915666−49−0 C3058を参照することができる。)。
【0059】
(分子配向性の確認方法)
本発明において、分子が電極間に伝導に対して好適に配向しているかどうかは、電極からの電荷注入が促進された効果を伝導特性として利用する上で重要である。分子が幾何学的な異方性を持つ場合、薄膜を形成すると分子の配向方向により屈折率が異なるため、偏光顕微鏡を用いて観察すると着色して見える。分子が棒状の場合、2枚のガラス板をスペーサーで挟んで構成したセルに物質を注入した試料では、分子が基板に垂直に配向した場合や配向を持たない場合には黒色になり、分子が水平に配向するとその厚さと屈折率の違いによって着色する。この色は屈折率と膜の厚さに依存し、この関係は干渉色図表によって目安をうることができる。分子が円盤状の場合は、分子が基板に対して水平に配向した場合や分子が配向を持たない場合は黒色になる。この違いを利用すれば、該分子が基板に対してどのように配向しているか、あるいは、配向していないかを容易に判定することができる。本発明における「好適な分子の配向」とは、理想的には、分子が棒状の場合は分子が電極を含む基板表面に対して水平に配向した状態をいい、また、分子が円盤状の分子の場合は分子が電極を含む基板表面に対して垂直に配向した状態をいう。
【0060】
(電流密度)
本発明の有機半導体材料は、その動作温度において、1×105V/cmの電界強度で
1×10−5A/cm2以上の電流密度を与える。この電流密度は、更には1×10−4A/cm2以上(特に1×10−3A/cm2以上)であることが好ましい。
【0061】
(電流密度の確認方法)
このような「電流密度」は、例えば、以下の方法によって、好適に確認することができる。
ITO、あるいは、金属薄膜をパターン上に形成した2枚のガラス板をスペーサーを介して張り合わせたセルを用意し、これに、該有機半導体を注入する。電極に用いる材料はITO、Au、Ptなどが好適である。市販の配向膜を設けていないITO電極付き液晶セルを用いると最も簡便である。このセルに、電源、電流計を接続し、セルを流れる電流を常温で測定し、電極面積で規格化して電流密度を求める。流れる電流はセル厚に依存するため、この確認方法には、セルギャップが2〜10μmのセルを用いる(標準的には4μmのセルを用いる)。
【0062】
(移動度)
本発明の有機半導体材料は、その動作温度において、10−6cm2/Vs以上の移動度を与えるものが好ましい。この移動度は、更には10−5cm2/Vs以上(特に10−4cm2/Vs以上)であることが好ましい。なお、注入された電荷の量が同じであれば、移動度が高いほど電流密度は増加する(すなわち、移動度が大きい場合は結果的に電流密度は大きくなる)。
【0063】
(好適な分子配向性分子の例)
本発明において、好適な分子配向性分子を例示すれば、例えば、以下の通りである。
分子配向が容易な分子は、幾何学的に異方的な構造を持った分子、つまり、分子形状が棒状、または、円盤状の構造をした分子である。
【0064】
棒状分子では、複数の芳香環(複素環を含む)が単結合で直接、連結した分子、一例をあげれば、オリゴチフェン、オリゴパラフェニレンやその混合したオリゴマー、あるいは、芳香族縮環系分子やその構造の一部、または、全部を複素環やチフェン、チアゾール、シクロペンダジエンなどの5員環構造で置き換えた構造を持つ分子などである。その分子サイズは、合成のし易やすさや溶解度の点から、芳香環の数にして3〜6個程度のものが好適である。また、縮環構造と単環構造を単結合で連結した構造も有効で、同様に芳香環の数にして3〜7個程度の構造をもつ分子が好適である。
【0065】
より具体的にベンゼン環やチオフェン環を例に構造を挙げれば、オリゴマー構造の分子では、チフェンやベンゼンの4量体や5量体、あるいは、その混合した4量体や5量体、また、縮環系では、ペンタセンやテトラセン、あるいは、その構造の一部をチフェン環で置換した構造をもつナフトチフェン、アントラチオフェン、ナフタセノチオフェンやベンゾチエノベンゾチオフェンなどを挙げることができる。
【0066】
円盤状分子では、ベンゼン環等の芳香環が環状に縮環した構造をもつトリフェニレンやコロネン、ベンゾコロネン、ピレン、ペリレン、あるいは、その構造の一部を複素環で置き換えた構造を持つ分子、また芳香環が共役系で連結された環状構造を持つフタロシアニン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン等の構造を例に挙げることができる。
【0067】
以下においては、本発明において好適に使用可能な「液晶材料」を例に、本発明を詳しく説明する。
【0068】
(液晶材料)
液晶材料は、一般に、コア部と呼ばれる環構造を含む硬直な分子構造を有する部位と、その分子長軸方向に炭化水素等からなる側鎖を置換した構造を有する。
【0069】
(コア部)
特に、本発明においては、液晶材料が有機半導体としての電荷輸送能を有する必要性から、コア部に芳香環等のπ−電子共役系を含む構造を有することが必須である。
【0070】
その場合、コア部のπ−電子共役系を含む構造には,ベンゼン、あるいは、5員環構造を有するチオフェンやチアゾール、オキサチアゾール、チアチアゾール、あるいは、6員環構造をピリジン、ピラジン、ピリミジン等のヘテロ原子を含む芳香環を少なくとも一つことが必要であり、ポリアセンやその一部にヘテロ環構造を有する誘導体等のように縮環構造の一部に、前記、ヘテロ環を含む芳香環を含むものであっても良い。
【0071】
(好適な液晶材料)
液晶材料には、棒状液晶材料と円盤状液晶材料があり、いずれの液晶材料においても液体性の強いネマチック相を示すものもあるが、移動度の観点から、それぞれスメクチック相、カラムナー相を示すものの方が、より好適である。
【0072】
以下、説明はスメクチック相を示す棒状液晶材料を例に説明するが、ここに記載の内容は、基本的に、カラムナー相を示す円盤状液晶につても適用できる。
【0073】
(棒状液晶材料)
本発明において、前記コア部に置換した側鎖のうち、少なくとも一つの側鎖にOH基を置換した構造であって、かつ、液晶相で有機半導体材料として用いる場合は、少なくとも‐20℃から120℃までの温度領域でネマチック相よりも高次の液晶相を示す物質が好適であり、また、結晶相で有機半導体として用いる場合は、少なくとも‐20℃〜120℃までの温度領域で結晶相を示す物質が好適である。さらに、この温度範囲より広い温度範囲を持つ物質はさらに好適である。
【0074】
(側鎖)
側鎖に置換したOH基の位置は、コア部から離れている方が電荷輸送特性、及び、液晶相の発現の観点から好ましく、最適には、側鎖末端にOH基を置換することが最も良い結果を与える。
【0075】
液晶分子のコア部と側鎖とは直接、炭素で連結されていても、あるいは、O、S、N等のヘテロ原子を介して連結されていても良いが、移動度の点からは、直接、側鎖とコア部が炭素結合で連結されている方が好ましい。
【0076】
側鎖は2重結合や3重結合を含んでもよく、また、エチレンオキシ(−CH2CH2O−)基を含む構造であってもよい。
【0077】
液晶分子に置換した側鎖の長さは、主に炭素数の数によって鎖長がきまる。
【0078】
鎖長が長すぎると移動度の低下を招き、また、短すぎると液晶相を発現しなくなるため、「液晶分子に置換した側鎖の長さ」は、炭素数が3以上25以下であることが好ましく、更には、3以上20以下であることが好ましい。
【0079】
OH基が置換した側鎖の長さは、前述のように、OH基がコア部に近いと電荷輸送特性に悪い影響を与えるため、該「OH基が置換した側鎖の長さ」は、炭素数は1以上であることが好ましく、更には、3以上であることが好ましい。他方、該「OH基が置換した側鎖の長さ」は、炭素数は20以下であることが好ましく、更には、12 以下であることが好ましい。
【0080】
(電流密度)
前記、要件を満たす液晶材料は、OH基を含まない同一構造を有する液晶材料、(ここでは、側鎖の長さは定常的な伝導特性に大きな影響は与えないことから、同様の類似構造を有する液晶材料と考えても良い)に比べて、104〜106V/cmの電界領域において、3〜6桁高い電流密度を示し、その電荷注入効果は明白である。
【0081】
(電流密度の測定法)
この特性は、AuやITO等の電極を設けた2枚のガラス基板を2〜4μm程度のセル厚になるようにスペーサーを用いて貼りあわせた液晶セルに、液晶材料をその等方相温度で毛細管現象を利用して注入し、その電流電圧特性を測定することによって行うことにより、容易に評価できる。
【0082】
この測定には、市販のITOを電極とした液晶セルを持いることが簡便で、好適である。この場合に使用可能な「市販の液晶セル」としては、例えば、以下のような商品が好適に使用可能である:
株式会社 イーエッチシー SZ−B311M6N(セル厚4ミクロン、4mm角ITO(10Ω)付きガラス液晶セル、ポリイミド配向膜なし)
【0083】
OH基を有する液晶材料で測定される電流の大きさは、電極に用いる電極の種類、液晶材料の移動度、測定温度によって異なるもの、その効果は明白である。例えば、室温で結晶である液晶材料では、105V/cmの電界強度において10−5A/cm2以上の高い電流密度が観測できる。
【0084】
液晶相ではその分子配向秩序により移動度が異なるため電流密度の大きさは液晶相の種類によるが、一般に、結晶層に比べて、観測される電流密度は1〜2桁程度低いことが一般である。
【0085】
一方、同一条件において、対応するOH基を持たない液晶材料では、コア構造に依存するものの、一般に10−6A/cm2以下の電流密度が一般的で、明確な違いがある。
【0086】
(移動度)
一般に、半導体の有用性の目安となる移動度は、液晶材料においては分子の配向秩序に依存し、高次の液晶ほど一般に移動度が高くなることが知られている。
【0087】
その値は液体に近い低次の液晶相では10−4cm2/Vs程度で、最も結晶に近い高次の液晶相では0.1cm2/Vsを超える高い値を示すことから、液晶相を有機半導体をとしてデバイスへの応用する場合は、SmE相やSmG相等の高次の液晶相が有利となる。
【0088】
(好適な電荷輸送性分子ユニットA)
好適な電荷輸送性分子ユニットは少なくとも一つ芳香環をもち、より好ましくは、該芳香環が縮環構造を持ち、縮環数は2以上6以下であることが好ましい。電荷輸送性分子ユニットAは、ヘテロ環を含んでもよい。該縮環を構成する個々の環の炭素数は、5〜6個(すなわち、5員環〜6員環)であることが好ましい。
【0089】
電荷輸送性分子ユニットAを構成するヘテロ環も、5員環〜6員環であることが好ましい。ヘテロ環の数は、特に制限されないが、以下のような数であることが好ましい。
<ユニットAの環数> <ヘテロ環の数>
2個 0〜1個
3個 0〜1個
4個 1〜2個
5個 1〜3個(特に1〜2個)
6個 1〜3個(特に1〜2個)
【0090】
(好適な環状構造ユニットB)
本発明において、高い移動度が期待できる高次の液晶相の利用は有効である。これを発現させるための構造は前記した電荷輸送性分子ユニットAにフリップーフロップ運動の自由度を与えるための、「もう一つの構造」部分、ユニットBを連結することである。ユニットBは、単結合で電荷輸送性ユニットAと連結された芳香族縮環、または、脂環式分子構造であることが好ましい。環数は1以上6以下(更には、4以下、特に1〜3)であることが好ましい。
【0091】
ユニットBの環数は、特に制限されないが、ユニットAを構成する環の数を「NA」とし、ユニットAを構成する環の数を「NB」とした場合に、NA≧NBであることが好ましい。より具体的には、以下のような数であることが好ましい。
<ユニットAの縮環数> <ユニットBの環数>
1個 1個
2個 1〜2個、更には1個
3個 1〜3個、更には1〜2個(特に、1個)
4個 1〜4個、更には1〜3個(特に、1〜2個)
5個 1〜5個、更には1〜4個(特に、1〜3個)
6個 1〜6個、更には1〜4個(特に、1〜3個)
【0092】
ユニットBは、ヘテロ環を含んでもよい。該ヘテロ環は、5員環〜6員環であることが好ましい。
【0093】
(単結合)
本発明において、上記のユニットAとユニットBとは直接単結合で連結する必要がある。
【0094】
(好適な電荷輸送性分子ユニットAの例示)
本発明において好適に使用可能な「電荷輸送性分子ユニットA」を例示すれば、以下の通りである。Xは、S、O、NHを表す。
【0095】
【化1】
【0096】
【化2】
上記においてXは、S、O、NHを表わす。
【0097】
(好適な環状構造ユニットBの例示)
本発明において好適に使用可能な「環状構造ユニットB」を例示すれば、以下の通りである。
【化3】
上記において、ユニットBはユニットAと同一でも良い。
【0098】
(好適な単結合の例示)
本発明において好適に使用可能な、上記のユニットAおよびBを連結するための「単結合」は、ユニットAとユニットBの環状構造を構成する炭素のうち分子長軸方向にある炭素どうしを分子全体が棒状となる様に選ぶ。すなわち、本発明においては、ユニットAを構成する炭素と、ユニットBを構成する炭素とが、直接に「単結合」(single bond)で連結されている。
【0099】
(好適なユニットAおよびユニットBの組合せの例示)
本発明において好適に使用可能な「ユニットAおよびユニットBの組合せ」(前記に従って連絡したもの)を例示すれば、以下の通りである。
【化4】
【0100】
(好適な構造)
本発明による分子設計に従い、本発明においては、基本的に、3環以上の6環以内の芳香環が棒状(すなわち、概ね直線状)に連結した縮環系に、単結合を介して、少なくとももう一つの環状構造を縮環系の分子長軸方向に連結させた構造に、炭素数3以上の側鎖ユニットを分子長軸方向に連結させた構造であることが好ましい。
【0101】
上述したように、本発明による分子設計の基本は、3環以上の6環以内の芳香環の棒状に連結した縮環系に単結合を介して、少なくとももう一つの環状構造を縮環系の分子長軸方向に連結させた構造に、炭素数3以上の側鎖ユニットを分子長軸方向に連結させた構造である。これを下記の物質(図参照)を例として、実施例によって例示する。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
上記表中、〔化30〕は側鎖C12H25を有する化合物である。
【0108】
(高次の相)
有機半導体として低分子液晶物質を液晶薄膜として利用する場合は、分子配置の秩序性を持たないネマティック相、分子凝集層を形成するスメクティック液晶物質にあっては、分子層内に分子配置の秩序性を持たないSmA相やSmC相では流動性が高いため、イオン伝導が誘起されやすく、有機半導体として利用する際に大きな問題となる。これに対して、分子層内に分子配置の秩序性を持つ「N相、SmA相およびSmC相以外の液晶相」、すなわち、高次のスメクティック相(SmB,SmBcryst、SmI、SmF、SmE、SmJ、SmG、SmK、SmHなど)は、この点でイオン伝導を有機しにくいという(有機半導体として用いる際に都合が良い)特性を有している。
【0109】
また、これまでの種々の液晶物質の液晶相における電荷輸送特性の研究から、同一のコア構造を持つ液晶物質においては、スメクティック層内の分子配置の秩序性の高い高次の液晶相ほど、高い移動度を示すことが明らかにされており、イオン伝導の抑制のみならず、高い移動度を実現する観点からも、高次のスメクティック相を示す液晶物質が有機半導体として有用である。
【0110】
一方、液晶物質を有機半導体として結晶薄膜の形態で利用する場合、結晶相の直上の温度領域において、液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)が出現する液晶物質では、その液晶相が出現する温度以上に素子が加熱された場合、流動性のために素子が熱により破壊されるという大きな問題点がある。これに対し、結晶相の直上の温度領域において、分子層内に分子配置の秩序性を有する高次のスメクティック相を発現する液晶物質では、液晶温度に素子が加熱された場合でも、流動性が低いため素子は破壊されにくいため、液晶物質の結晶薄膜を有機半導体として電子素子に応用する際にも、高次の液晶相を示す液晶物質が必要となる(ただし、この場合に限れば、液晶相でなくとも、準安定な結晶相を示す物質でも良い)。換言すれば、液晶物質が液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)以外の液晶相を示す液晶物質や準安定相を示す物質であれば、本発明において好適に使用可能である。
【0111】
一般に、複数の液晶相や中間相を示す物質では、温度の低下に伴って液晶相の分子配向は秩序化するため、温度が高い領域において、液晶物質が液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)が現れ、最も配向秩序の高い高次の液晶相や準安定な結晶相は、結晶相温度に隣接した温度領域で発現することが良く知られている。液晶相薄膜を有機半導体材料として利用する場合、前述の液体性の強い低次の液晶相以外の相であれば、原理的に、有機半導体として利用可能であるので、結晶相に隣接した温度領域に出現する凝集相が液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)で無ければよいということになる。液体性の強い低次の液晶相(N相、SmA相やSmC相)に加えてそれ以外の高次の液晶相が出現する液晶物質では、液体性の強い低次の液晶相では分子配向の制御が高次の液晶相に比べて容易であるので、液体性の強い低次の液晶相で分子を配向させておき、高次の液晶相へ転位させることにより、分子配向の揺らぎや配向欠陥の少ない液晶薄膜を得ることができるので、液晶薄膜や結晶薄膜の高品質化が期待できる。
(有機半導体材料)
本発明の有機半導体材料が、液晶材料を含む場合には、該有機半導体材料は、N相、SmA相およびSmC相以外の液晶相を示すことが好ましい。
【0112】
(所定の液晶相)
本発明において、上記の「N相、SmA相およびSmC相以外の液晶相」は、SmB,SmBcryst、SmI、SmF、SmE、SmJ、SmG、SmK、およびSmHからなる群から選ばれる液晶相であることが好ましい。この「SmA相およびSmC相以外の液晶相」が、前記有機半導体材料を結晶相から昇温させた際に、「結晶相の次」に現れる液晶相であることが好ましい。
【0113】
(分子設計の要点)
本発明において液晶物質を利用する場合、高い電流密度を持つ液晶物質を実現するためには、次の点を考慮して分子設計を行うことが好ましい。
【0114】
(1)本発明においては、分子配向した液晶相や結晶相において、電荷の移動速度を支配する因子として、コア部と呼ばれる電荷の輸送関わるπ−電子系分子ユニットのTransfer積分の値が大きいことが重要となる。この値を実際に量子化学的手法により計算するためには、目的とする分子凝集状態における隣接する分子間の具体的な分子配置決定し、計算を行うことが必要となるが、相対的に言えば、互いの相対的な分子位置に対する揺らぎに対して、冗長性のある分子構造が有利となる。
【0115】
つまり、スメクティック液晶物質の場合、電荷輸送のサイトとなるπ−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットには棒状でかつある程度大きなサイズのπ−電子共役系を選ぶ。この場合、液晶分子の構造としてしばしば採用される小さな芳香環、例えば、ベンゼンやチオフェンなどを複数、単結合で連結し、大きなπ−電子共役系を構成した分子ユニットを用いるのではなく、縮環構造による大きなπ−電子共役系を持つ分子ユニットを用いる。縮環の環数は3以上が好ましいが、環数が大きすぎると溶媒に対する溶解度が低下するため6以下が現実的である。
【0116】
すなわち、本発明においては、benzene、pyridine、pyrimidine、thiopehene、thiazole、imidazole、furaneを芳香環構造として、これらが縮環して棒状の3環構造、4環構造、5環構造をとったものが、芳香族π−電子共役系縮環構造として好ましい。
【0117】
(2)本発明においては、 高い移動度を実現するためには、高次の液晶相を発現させることが必要となる。一般に、スメクティック液晶相では、分子層内の分子配置に秩序性を持たないSmA相やSmC相から、高次の液晶相になるに従い、液晶分子の分子運動は逐次、凍結されて行き、最も秩序性の高いSmE相やSmG相などでは、最終的に、分子のフリップーフロップ運動が残ると考えられる。
【0118】
この点を考慮し、液晶分子を構成する主たるコア構造に、前述の芳香族π−電子共役系縮環構造に単結合を介して、少なくとももう一つの剛直な構造を連結させた構造を用いることが好ましい。この場合、連結するもう一つの剛直な構造ユニットは、前述の芳香族π−電子共役系縮環構造と同数以下の環数を持つ構造が選ばれ、1または2でも良い。また、その構造には、必ずしも、ヘテロ環を含む広い意味での芳香環ばかりでなく、cyclohexaneやcyclopentaneなどの脂環式の環状構造であっても良い。
【0119】
(3)本発明においては、スメクティック液晶性を発現させるためには、前述のようにコア部と呼ばれる剛直な分子ユニットに棒状の分子形状の異方性と液体性を与えるためのフレキシブルな炭化水素ユニットを連結し、基本的に、直線状に配置した構造を持たせることが、棒状液晶物質の基本デザインである。
【0120】
本発明ではコア部とは、前述の芳香族π−電子共役系縮環構造に単結合を介して、少なくとももう一つの剛直な構造を連結させた構造がそれにあたる。コア部における炭化水素ユニットの連結位置は、分子全体として棒状の異方性を与えることが重要となるので、コア部の長軸方向とのなす角は90度以下となるよう連結位置を選ぶことが好ましい。その本数は最低1本であればよく、その炭素鎖の数は3以上であることが好ましい。
【0121】
その場合、コア部に連結する炭化水素ユニットの位置は、コア部の長軸方向であれば、コア部の両端のいずれか、あるいは、その両端に連結しても良い。液晶相を発現させる場合、また、炭化水素ユニットの構造に2重結合や三重結合、あるいは、酸素、硫黄、窒素などのヘテロ元素を含んだものを用いることも出来る。しかし、移動度という観点では、コア部に直接、炭化水素ユニットを連結させたものの方が好都合である。
【0122】
(スクリーニング法)
本発明において、上記の分子設計を満足する化合物中から、高次のスメクティック液晶相を発現し、有機半導体として有用な物質を、必要に応じてスクリーニングすることができる。このスクリーニングにおいて、基本的には、液晶相で有機半導体として用いる場合は高次のスメクティック相を発現すること、結晶相で有機半導体として用いる場合は、前述のように結晶相温度より高い温度から冷却したときに、結晶相に隣接して低次の液晶相を発現しないものを選ぶことが好ましい。この選択の方法は、後述する「スクリーニング法」にしたがって判定することにより、有機半導体材料として有用な物質を選択することが出来る。
【0123】
(電荷輸送性分子ユニット)
液晶分子におけるコア部に対応する電荷輸送性分子ユニットとして、環数3以上の芳香族π−電子縮環系の分子ユニットを用いることにより、分子位置の揺らぎに対するtransfer積分の冗長性を確保でき、同様に、ベンゼンやチオフェンなどを複数、単結合で連結したπ−電子共役系の分子ユニットではなく、縮環構造を持つ分子ユニットを採用することにより、分子配座が固定されるため、transfer積分の増大が期待でき、移動度の向上に役立つ。
【0124】
一方、大きな縮環構造を電荷輸送性分子ユニットをコア部として採用しても、dialkylpentaceneやdialkylbenzothienobenzothiopheneなどの例のように、コア部に直接、炭化水素鎖を連結させた物質では、液晶相の安定化がはかれず、一般に、液晶相を発現しないか、液晶相を発現したとしてもSmA相などの低次の液晶相しか発現しない文献 Liquid Crystal.Vol.34.No.9(2007)1001-1007. Liquid Crystal.Vol.30.No.5(2003)603-610。このため、単に電荷輸送性分子ユニットに大きな縮環構造を用いても、液晶相で高い移動度を実現することはできない。図に示したように、電荷輸送性分子ユニットに分子のフリップーフロップ運動の自由度を与えるためのもう一つの構造ユニットを連結した分子構造をコア部に採用することにより、初めて、高次の液晶相の発現と液晶相における高い移動度の実現が期待される。
【0125】
このような電荷輸送性分子ユニットにもう一つの剛直な構造ユニットを連結した構造(コア部)に炭化水素鎖を連結し、分子に、棒状の分子形状の異方性と液体性を付与することによって、高い確率で液晶相の発現を誘起することが出来る。炭化水素鎖を連結する場合、2本の炭化水素鎖を連結することが一般であるが、炭化水素鎖が1本の場合でも、液晶相はしばしば発現させることができる。この場合、液晶相の出現温度領域は、一般に、降温過程と昇温過程で非対称となることが多い。これは降温過程では、一般に液晶相温度領域が低温まで広がり、逆に、昇温過程では結晶相を高温領域まで広げることに役立つ。一方、炭化水素鎖を2本付与すると、発現した液晶相を安定化することができる。
【0126】
以上述べた基本的な分子設計に基づいて物質を合成した場合、その物質の本発明に関わる有用性は、基本的には、液晶相で有機半導体として用いる場合は高次のスメクティック相を発現すること、結晶相で有機半導体として用いる場合は、結晶相温度より高い温度から冷却したときに結晶薄膜に亀裂や空隙を形成しにくく、かつ、結晶相に隣接して、低次の液晶相を発現しないものを選ぶことが好ましい。言い換えれば、液晶相で有機半導体として用いる場合、結晶相に隣接する温度領域において、ネマティック相やSmA相やSmC相以外の液晶相を発現すること、また、結晶相で有機半導体として用いる場合には、結晶相より高い温度領域から冷却して結晶相へ転移させたとき、亀裂や空隙が形成されにくいことが判定基準となる。
【0127】
(スクリーニング法)
これは、以下に述べるスクリーニング法(判定法)によって、容易に判定することが出来る。このスクリーニング法に用いる各測定法の詳細に関しては、必要に応じて、下記の文献を参照することができる。
文献A:偏光顕微鏡の使い方:実験化学講第4版1巻丸善P429〜435
文献B:液晶材料の評価:実験化学講座第5版27巻P295〜300丸善
:液晶科学実験入門日本液晶学会編シグマ出版
【0128】
(S1)単離した被検物質をカラムクロマトグラフィーと再結晶により精製した後、シリカゲルの薄層クロマトグラフィーにより、該被検物質が単一スポットを示す(すなわち、混合物でない)ことを確認する。
【0129】
(S2)等方相に加熱したサンプルを毛細管現象を利用して、スライドガラスをスペーサーを介して張り合わせた15μm厚のセルに注入する。一旦、セルを等方相温度まで加熱し、偏光顕微鏡でそのテクスチャーを観察し、等方相より低い温度領域で暗視野とならないことを確認する。これは、分子長軸が基板に対して水平配向していることを示すもので、以後のテクスチャー観察に必要な要件となる。
【0130】
(S3)適当な降温速度、例えば、5℃/分程度の速度でセルを冷却しながら、顕微鏡によるテクスチャーを観察する。その際、冷却速度が速すぎると、形成される組織が小さくなり、詳細な観察が難しくなるので、再度、等方相まで温度を上げて、冷却速度を調整して、組織が容易に観察しやすい、組織のサイズが50μm以上となる条件を設定する。
【0131】
(S4)上記(S3)項で設定した条件で、等方相から室温(20℃)まで冷却しながらテクスチャーを観察する。この間にセル中で試料が結晶化すると、格子の収縮に伴い、亀裂や空隙が生じ、観察されるテクスチャーに黒い線、または、ある大きさを有する領域が現れる。サンプルを注入する際に空気がはいると同様の黒い領域(一般には丸い)が局所的に生じるが、結晶化によって生じた黒い線や領域は組織内や境界に分布して現われるので容易に区別できる。これらは、偏光子、及び、検光子を回転させても、消失や色の変化が見られないことから、テクスチャーに見られるこれ以外の組織とは容易に識別できる。(図2参照)このテクスチャーが現れる温度を結晶化温度として、その温度より高い温度領域で現れるテクスチャーがネマティック相、SmA相、SmC相でないことを確認する。サンプルがネマチック相を示す場合は、糸巻き状と表現される特徴的なシュリーレンテクスチャー(図3参照:典型的なシュリーレンテクスチャー)が観察され、SmA相やSmC相を示す場合は、fan−likeテクスチャーと呼ばれる扇型でその領域内は均一組織を有する特徴的なテクスチャー(図4参照:典型的なFan−likeテクスチャー)が観察されるので、その特徴的なテクスチャーから容易に判定することができる。
【0132】
特殊なケースとして、SmA相からSmB相、SmC相からSmF、SmI相に転移する物質では、相転移温度で一瞬に、視野の変化が見られるが、相転移したテクスチャーにはほとんど変化が見られない場合があり、形成されたSmB相やSmF相、SmI相のテクスチャーをSmA相、SmC相と誤認する場合があるので注意が必要である。その場合は、相転移温度で見られる一瞬の視野の変化に気をつけることが重要である。この確認が必要な場合は、DSCにより、中間相の数を確認した後、それぞれの温度領域でX線回折を測定し、各相に特有の高角度領域(θ−2θの判定において15〜30度)においてピークの有無を確認すれば、SmA相、SmC相(いずれもピークなし)とSmB相、SmF相、SmI相(いずれもピーク有り)を容易に判定することができる。
【0133】
(S5)室温(20℃)で、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって、黒い組織が見られないものは、有機半導体材料として利用可能であるので、この物質が室温で高次の液晶相、あるいは、結晶相(準安定な結晶相を含む)の如何に関わらず、本発明の範疇として取り扱うものとする。
【0134】
なお、本発明において好適に使用可能な液晶材料(この場合には、本発明の有機半導体材料における、−OH基以外の部分)の選択に関しては、必要に応じて、特願2011−053642号(2011年3月10日出願)を参照することができる。
【0135】
当該液晶材料をデバイスへ応用する際は、より高い移動度を実現できる結晶相で用いることが更に有効である。
【0136】
当該液晶材料は、単独で用いることが好適であるが、相溶する他の物質と混合して用いることも可能である。
【0137】
この場合、電荷注入促進の効果は、OH基を有する当該物質が、(混合物の総モル数を基準として)15モル%程度以上(更には、25モル%程度以上)含まれることが電荷注入の促進に有効である。該「他の物質」が液晶材料の伝導に対して電子的なトラップとなる場合には、OH基を有数する当該物質の含有量の上限として、80モル%程度以下(更には、60モル%程度以下)とすることが好ましい。
【0138】
(OH基を有する物質の濃度)
OH基を有する物質の濃度は、混合物のH−NMRのスペクトルの解析によって、その濃度の目安をうることができる。例えば、側鎖末端にOH基を有する液晶材料を含む混合物を例にとれば、「側鎖末端メチル基の水素」と「側鎖末端OH基のメチレン基の水素」の積分値の比率によって、その混合比を見積もることができる。本発明においては、該「積分値の比率」の値が0.06以上(更には0.1以上)であることが、本発明所定の効果を得る上で好ましい)。
【0139】
以上を要約すれば、本発明における効果を得るためには、OH基を置換した側鎖を少なくとも1本以上有し、かつ、コア部に、前記、π−電子共役系芳香環を少なくとも一つ構造にもつ物質で、より好適には、該物質が液晶相を示すものであり、更に、好ましくは、該物質がネマチック相よりも高次の液晶相を示す物質が、本発明の効果を有効に実現できる有用な物質である。
【0140】
その要件は以下のように決定することができる。
【0141】
(化学構造)
該物質の化学構造には、有機化学の分野において化学構造を決定することに一般に用いられるH−NMRスペクトル解析によって、前記、構造を確認する。特に、OH基が置換した構造を有することの確認は重要である。この場合、必要に応じて、重水置換によるOH基プロトンの消失の確認や赤外吸収スペクトルの測定によるOH基の確認を行い、物質構造を確認することができる(このようなNMRスペクトル解析、および赤外吸収スペクトル測定法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば、文献:「有機化合物のスペクトルによる同定法」 (第7版)R. M. Silverstein、F. X. Webster、D. J. Kiemle 著、荒木峻、益子洋一郎、山本修、鎌田利紘 訳、出版年月日 2006/09/15、ISBN 9784807906338 東京化学同人,を参照することができる)。
【0142】
(ネマティック相以上の液晶相の発現の確認)
液晶材料であれば、一般に、走査型示差熱分析(DSC)測定によって、出現する相の数、温度領域を確認したのち、偏光顕微鏡による組織観察、X線回折法等を用いて出現する相を同定する。これらの液晶相確認法の詳細については、必要に応じて、文献(日本液晶学会編「液晶科学実験入門」、シグマ出版、ISBN978‐4‐915666‐49−0C3058(2007))を参照することができる。
【0143】
(偏光顕微鏡)
液晶材料がネマチック相より高次の液晶相を示すかどうかの判定は、最も簡便には、偏光顕微鏡による液晶の組織観察によって判定する事ができる。
【0144】
すなわち、ネマチック相はシュリーレン組織として知られる特有の組織を示すため、前記、文献(日本液晶学会編「液晶科学実験入門」)の第12章「偏光顕微鏡の仕組みと使い方」p107−146を参考に、シュリーレン組織として知られる組織の有無を確認すれば、ネマチック相とネマチック相より高次の液晶相であるかは容易に判定できる。
【0145】
液晶相の種類の同定が必要な場合は、必要に応じて、同文献(日本液晶学会編「液晶科学実験入門」、シグマ出版、ISBN978‐4‐915666‐49−0C3058(2007))記載の、第1章「液晶相の同定(1)カラミチック液晶、(2)キラ液晶」(p1−10)、「第2章 液晶相の同定(3)ディスコティック液晶相」のX線構造解析による同定(p11−21)、「第8章 液晶のX線回折測定―広角X線回折装置を用いた液晶相の測定」(p69−77)に詳しく記載されているので、これを参考に同定することができる。
【0146】
(3)電荷注入促進の効果の確認
「電荷注入促進効果」の評価には、液晶セルを用いて、その電流−電圧特性により行う。測定に用いる液晶セルの作製と試料の調製方法に関しては、前記文献(日本液晶学会編「液晶科学実験入門」、シグマ出版、ISBN978‐4‐915666‐49−0C3058(2007))の「第4章 液晶セルの作製方法」(p35−41)を参考にすれば良い。ただし、ここで重要な点は、電荷注入特性を評価する必要があるため、電極上に液晶材料が直接に接するようにすることが重要で、配向膜を用いると、観測される電流密度は小さく見積もられる結果となる。ここに、「電極上に液晶材料が直接に接する」とは、電極と液晶材料との間に、「他の物質」(例えば、配向膜)意図的にはさまないことを言う。
【0147】
電極には、ITO、または、Auを用いるとよい。
【0148】
次に液晶セルに、電源、電流計を接続し、電流電圧特性を測定する。
【0149】
電荷注入の促進効果は、ある電界強度における電流密度として評価でき、103V/cm以下の領域においても、その効果は明白であるが、105V/cmより高電界側では極めて顕著となる。ここでは、その程度が大きい物質ほど有用であるので、105V/cmの電界強度において、10−5A/cm2以上の電流密度を示すものを有用と判定する。
【0150】
以下に、実施例を用いて本発明を詳しく説明する。
【実施例】
【0151】
[実施例1]
本発明を、6,6’−([1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス(オキシ))ビス(ヘキサン−1−オール)(以下、6O−BP−O6ジオールと略す)を用いて説明する。この物質の合成は下記の通り行い、NMRによりその構造を確認した。
【0152】
【化5】
【0153】
Ar 雰囲気下で三つ口のフラスコを用い4,4’−ジヒドロキシビフェニル 5.0g(0.027モル)と4.4倍モルのNaOH(4.8g)をエタノール(60ml)に溶かし30分還流した。その後4.4倍モル当量の6-クロロヘキサノール16.3g(0.12モル)を滴下し24時間還流した。室温に冷却し水の中に反応液を注ぎ込み析出した固体を濾過して取り出した。アセトンで再結晶後(活性炭処理)アルミナ(溶離液として熱トルエン)を用いたカラムクロマトグラフィを行い更にエタノールによる再結晶を行い、無色の結晶 8.3gを得た。(収率〜80%)
【0154】
1H−NMR(500MHz,DMSOδ)7.51(d,J=8.7Hz,4H),6.97(d,J=8.7Hz,4H),4.36(t,J=5.3Hz,2H),3.98(t,J=6.4Hz,4H),3.40(q,J=6.0Hz,4H),1.72(quint,J=6.9Hz,4H),1.4〜1.33(m,12H)
【0155】
この物質はDSC,偏光顕微鏡による組織観察、X線回折の測定から、その相変化は以下のように同定された。
【0156】
Heating:Cry/91.7C/SmX/170.5C/Iso
【0157】
異なる電極材料を設けたガラス基板を用いて、液晶セル(セル厚:4μm)を作製し、30℃結晶相で、ITO,Au,Pt,Ag,Alを正に印加した場合の電流電圧特性を図1に示す(ここで用いた「液晶セル」作成法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば文献日本液晶学会編「液晶科学実験入門」、シグマ出版、ISBN978‐4‐915666‐49−0C3058(2007) を参照することができる)。該液晶セルのサイズ、構成は、以下の通りであった。
【0158】
<液晶セルの構成>
ITO,Au,Pt,Ag,Al電極の膜厚:30〜100nm程度
上記電極の形成法:スパッタ法、あるいは、真空蒸着法
上記電極の平面形状およびサイズ:数mm□
【0159】
[実施例2]
実施例1に記載の6−BP−O6ジオールを注入した異なるセル厚を有する液晶セル(電極ITO)を用いて、結晶相(30℃)、及び、液晶相(160℃)で電流−電圧特性を測定した結果を図2、及び、図3に示す。結晶相の場合、セル厚が厚い場合は、電荷輸送が阻害されるため電流値の低下がみられる。
【0160】
[実施例3]
6O−BP−O6ジオールをITOを電極とするポリイミド配向膜付き液晶セルとポリイミド配向膜を用いない液晶セル(セル厚:4μm)に注入し、その特性の違いを調べた結果を図3に示す。ポリイミド配向膜を用いないセル方が高い電流密度を示している。
【0161】
[実施例4]
正孔輸送材料落として知られるTPD(N,N’-diphenyl-N,N’-bis(3-methylphenyl)-1,1-biphenyl-4,4’-diamine)に6O−BP−O6ジオールをそれぞれ14.7モル%、30.2モル%混合し、ITO電極を有する液晶セル(セル厚:4μm)に注入して、電流−電圧特性を測定した。結果を図5に示す。
【0162】
[実施例5]
電荷輸送能を示すターチオフェン系液晶材料(ω,ω’-ジオクチルターチオフェン,8−TTP−8)に6O−BP−O6ジオールを10.1モル%,27.34モル%混合し、ITOを電極とする液晶セル(セル厚:4μm)に注入し、電流−電圧特性を30℃、80℃、110℃で測定した結果を図6、図7に示す。図中8−TTP−8で示した結果は60−BP−O6ジオールを含まない場合の測定結果である。
【0163】
【化6】
【0164】
[実施例6]
液晶性を示さない6−BP−O6(4,4’-ジヘキシロキシビフェニル)に6O−BP−O6ジオールを9.43モル%、10.1モル%、50.5モル%混合した試料をITO電極を有する液晶セル(セル厚:4μm)に注入し、電流−電圧特性を測定した結果を、比較のために、6O−BP−O6単体、あるいは、6O−BP−O6ジオール単体を用いた場合、また、正孔注入層として用いられるPEDOT・PSSをITO電極の上に積層し6O−BP−O6を注入した液晶セルを用いた場合の結果と合わせて図8に示す。6O−BP−O6ジオールを混合した系は、105V/cmの電界強度で30モル%を超える濃度では10−5A/cm2を超える高い電流密度を示す。
【0165】
【化7】
【0166】
[実施例7]
実施例6の参照実験として、6O−BP−O6ジオールの代わりに電荷輸送部位であるビフェニル基を持たない1,12−ドデセンジオールをそれぞれ1.98モル%、9.68モル%,29モル% 6O−BP−O6に混合し、ITO電極を用いた液晶セル(セル厚:4μm)に注入し、同様に30℃で電流−電圧特性を測定した結果を図9に示す。図には、6O−BP−O6をPEDOT・PSSをITO電極の上に積層した電極を有する液晶セルに注入した場合、6O−BP−O6ジオールを単体で用いた場合の結果も合わせて示した。1,12−ドデセンジオールを用いた場合には、電流密度は極めて小さく、電荷注入の促進効果は極めて小さいことが分かる。
【0167】
[実施例8]
実施例5の参照実験として、6O−BP−O6ジオールの代わりに電荷輸送部位であるビフェニル基を持たない1,12−ドデセンジオールをそれぞれ10.3モル%、29.5モル%,100モル%の濃度になるように混合した試料をITO電極付き液晶セルに注入し、電流電圧特性を30℃で測定した結果を図10に示す。1,12−ドデセンジオールを用いた場合には、電流密度の増加はほとんど見られない。
【0168】
[実施例9]
8−((4’−(ペンチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)オキシ)オクタン-1-オール(以下5−BP−O8OHと略す)を常法にしたがい、4’−ペンチルビフェノールとOH基をTHPで保護したブロモオクタノールとエーテル縮合反応により合成した。
【0169】
<合成法>
【化8】
【0170】
1H−NMR(500MHz,DMSOδ)
7.50(d,J=8.7Hz,4H),6.97(dd,J=6.4Hz,J=2.3Hz,4H),4.33(t,J=5.3Hz,1H),3.98(q,J=6.1Hz,4H),3.38(q,J=5.9Hz,2H),1.71(quint,J=6.5Hz,4H),1.29〜1.47(m,14H),0.94(t,J=7.3Hz,3H)
【0171】
この物質はCry2−57℃−Cry1−66.1℃−143.℃−Iの相系列を示した。
【0172】
この物質は、143℃と66.1℃の領域に現れる相は図11に示すように、偏光顕微鏡の観察を行ったところクラックが観測されることから、液晶相ではなく結晶相と判断される。
【0173】
しかしながら、測定用ITOを電極に有する液晶セル(セル厚:4.6μm)のリターでションの色から判断すると、分子は基板対し、水平方向に配向しているものと判断される。30℃で測定した液晶セルの電流−電圧特性を図12に示す。セル厚が17μmの厚い場合においても、105V/cmの電界強度において10−3A/cm2もの高い電流密度が観測された。
【0174】
[実施例10]
1,1'-(benzo[b]benzo[4,5]thieno[2,3-d]thiophene-2,7-diyl)bis(decan-1-ol)(以下、9−CHOH−BTBT−CHOH9と略す)の合成にあたり、その原料はB. Kosato,V. Kozmik and J. Svoboda Collect. Czech. Chem. Commum. Vol. 67, 645−664(2002)に記載された方法により合成した。
【0175】
水素化アルミニウムリチウム(27mg,0.72mmol)のTHF(10ml)溶液に2,7−ジ(1−オキソデカン−1−イル)[1] [ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(100mg,0.18mmmol)のTHF(20ml)溶液を滴下した。室温にて6時間攪拌した後、反応液に水を加え、次いで、2M塩酸を加えた。ジクロロメタンで抽出し、水洗後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残留物をカラムクロマトグラフィーで精製し、参考例1で示される化合物(90mg,収率:90%)を得た。
【0176】
得られたベンゾチエノベンゾチオフェンのジオール誘導体の構造は、H−NMRより確認した。
【0177】
1H−NMR(300MHz, CDCl3,δ) : 7.91(s,2H),7.84(d,J=6.0Hz,2H),7.43(dd,J=0.9Hz,J=6.0Hz,2H),4.83(t,J=4.5Hz,2H),3.70(t,J=4.5Hz,2H),1.94−1.15(m,32H),0.87(t,J=4.8Hz,6H).
【0178】
この物質はDSCの測定から判断すると、液晶相を発現しないと判断された。
【0179】
【化9】
【0180】
また、1,1’−(benzo[b]benzo[4,5]thieno[2,3−d]thiophene−2,7−diyl)bis(undecan−1−ol)(以下、11−CHOH−BTBT−CHOH11と略す)を同様にして、合成した。
参考例1と同様方法により、2,7−ジ(1−オキソドデカン−1−イル)[1] [ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(300mg,0.50mmmol)を用いて反応を行い、参考例2で示される化合物(230mg,収率:77%)を得た。
【0181】
得られたベンゾチエノベンゾチオフェンのジオール誘導体の構造は、H−NMRより確認した。
【0182】
1H−NMR(300MHz, CDCl3,δ):7.92(s,2H),7.84(d,J=6.0Hz,2H),7.43(dd,J=0.9Hz,J=6.0Hz,2H),4.83(m,2H),1.92(m,2H),1.88−1.15(m,40H),0.87(t,J=4.8Hz,6H).
【0183】
DSCによる測定から、液晶相を発現しないと判断された。
【0184】
【化10】
【0185】
これらを物質をITO電極付きのセル厚15μmの液晶セルに注入し、室温で偏光顕微鏡によりそのテクスチャーを観察(倍率40〜200倍)すると、図13に示すように、黒色をしており、分子が基板に対して、立っていると判断された。
【0186】
これらのセルの電流電圧特性を30℃で測定したところ、図14に示すように、極めて低い電流しか、測定されなかった。
【0187】
[実施例11]
8−((6−オクチルフェニル)ナフタレン-2-イル)オキシ)ブタン−1−オール(以下、8−PNP−O4OHと略す)を以下のように合成した。
【0188】
【化11】
【0189】
4−オクチルフェニル−6−ナフタノール(950mg,2.86mmol)、テトラヒドロピラニルで保護した4−ブロモ−1−ブタノール(1356mg,5.72mmol)を脱水DMA(20ml)に溶かし、炭酸カリウム(789mg,5.72mmol)/ヨウ化カリウム(95mg,0.572mmol)を加え、80oCで24時間加熱攪拌した。反応液を濃縮し、残留物をジクロロメタンに溶かし、触媒量のp−トルエンスルホン酸をメタノールに溶かし、反応液に加えて、3時間攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、水洗後、乾燥した。カラムクロマトグラフィーで精製し、実施例2で示される化合物を1115mg(収率:96.5%)得た。この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、二つのスメクチック相を発現することを確認した。
【0190】
この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、二つのスメクチック相を発現することを確認した。
【0191】
Crys.−122.8℃−SmX−148.4℃−−SmX−155.4℃−Iso
【0192】
この物質をセル厚4μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、各温度で電流−電圧特性を測定したところ、図15に示すように、10−5A/cm2を超える高い電流密度が観測された。
【0193】
また、30℃では図16に示す高い電流密度が観測された。
【0194】
[実施例12]
6,6’−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2,7−ジイル)ビス(ヘキサン−1−オール)(以下、6−BTBT−6ジオールと略す)の合成に用いる原料の2,7-ジヨード[3,2-b][1]ベンゾチエノチオフェンはS.Y.ZherdevaらによるZh. Organic.1980,16,383−388、及び、US特許755785に記載の方法で合成した。
【0195】
アルゴン雰囲気下、2,7−ジヨード[3,2−b][1]ベンゾチエノチオフェン(チオフェン)(0.6g,1.2ミリモル)、5−ヘキシン‐1‐オール(0.60g,6.1ミリモル),ヨウ化銅(0.11g,0.6ミリモル)をピペリジン/N,Nージメチルホルムアミド(10ml/29ml)に溶かし、ビス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(0.08g,0.12ミリモル)を加え、70℃で24時間加熱攪拌した。反応液に水を加え、攪拌し、析出物を得た。これをろ過し、水洗後、乾燥した。
【0196】
カラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする[3,2−b][1]ベンゾチエノチオフェン(チオフェン)の5−ヘキシン‐1‐オール置換体0.16g、収率:31%を得た。
【0197】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.94(s,2H),7.76(d,J=6.0Hz,2H),7.46(d,J=6.0Hz,2H),3.75(m,6H),2.52(m,4H),1.85−1.70(m.8H)
【0198】
この化合物(0.16g,0.37ミリモル)をエタノールに溶かし、10%パラジウム−炭素(0.2g)を加え、水素雰囲気下、室温で2日間攪拌した。反応液を濾過したあと、濃縮し、残留物カラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする6−BTBT−6ジオール 0.07g、収率43%で得た。
【0199】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.76(d,J=6.0Hz,2H),7.70(s,2H),7.27(d,J=6.0Hz,2H),3.65(m,6H),2.75(t,J=5.7Hz,4H),1.80−1.40(m.16H)
【0200】
【化12】
【0201】
この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、SmA相を示すことを確認した。
【0202】
Crys.−91.7℃−SmA−171.6.4℃−Iso
【0203】
この物質をセル厚4μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、30℃で電流−電圧特性を測定したところ、図17に示すように、104V/cmの低い電界強度にもかかわらず、10−5A/cm2を超える高い電流密度が観測された。
【0204】
[実施例13]
実施例12と同様な方法により、5−ヘキシン‐1‐オールに変えて、9−デシン‐1−オール(0.1.86g、12.0ミリモル)と2,7−ジヨード[3,2−b][1 ベンゾチエノチオフェン(1.49g,3.0ミリモル)から、[3,2−b][1]ベンゾチエノチオフェンの、9−デシン‐1−オール置換体0.18g、収率11%を得た。
【0205】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.94(s,2H),7.76(d,J=6.0Hz,2H),7.46(d,J=6.0Hz,J=0.9Hz,2H),3.65(m,6H),2.45(t,J=5.4Hz,4H),1.75−130(m.24H)
【0206】
次に、この化合物(0.15g,0.027ミリモル)を用いて、同様な方法で還元反応を行い、目的とする化合物10−BTBT−10ジオール 0.10g,収率69%を得た。
【0207】
【化13】
【0208】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.76(d,J=6.3Hz,2H),7.70(s,2H),7.28(d,J=6.3Hz,2H),3.72(m,2H),6.62(m,4H),2.73(t,J=5.7Hz,4H),1.75−1.15(m,32H)
【0209】
この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、SmA相を示すことを確認した。
【0210】
Cry.−130.6℃−SmA−135.9℃−Iso
【0211】
この物質をセル厚4μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、30℃で電流−電圧特性を測定したところ、図18に示すように、104V/cmの低い電界強度にもかかわらず、10−5A/cm2を超える高い電流密度が観測された。
【0212】
[実施例14]
実施例12に記載の方法と応用にして、6−(7−デシルベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2−イル)デカン−1−オール(以下、10−BTBT−10オールと略す)を1‐(7‐ヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエノベンゾチオフェン−2−イル)デカン(0.41g,0.81ミリモル)と9−デシン1‐オール(0.25g,1.62ミリモル)から、1‐(7‐ヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチエノベンゾチオフェン−2−イル)デカンの9−デシン−1‐オール置換体0.14g,収率32%を得た。
【0213】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):7.93(s,1H),7.75(dd,J=6.0Hz,J=3.9Hz,2H),7.70(s.1H),
【0214】
7.45(dd,J=6.0Hz,J=1.2Hz,1H),7.27(dd,J=6.Hz,J=1.2Hz,1H),3.66(m.2H),
2.75t,J=6.0Hz,2H),2.52(t,J=5.4Hz,2H),1.80−1.20(m,29H),0.90(t,J=7.0Hz,3H)
【0215】
得られたこの化合物(0.14g,0.26ミリモル)を用いて、[実施例12]と同様な方法により還元反応を行い、10−BTBT−10オール 0.10g,収率72%を得た。
【0216】
1H−NMR(300MHz、CDCl3,δ):775(d,J=6.0Hz,1H),7.70(s,1H),7.27(d,J=6.0Hz,1H),3.63(t,J=5.4Hz,4H),2.75(t,J=5.7Hz,4H),1.75−1010(m,34H)0.89(t,J=7.0Hz,3H)1.75−1.15(m,32H)
【0217】
【化14】
【0218】
この物質は、DSC、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折の測定結果から、SmA相を示すことを確認した。
【0219】
Crys.−130.6℃−SmA−135.9℃−Iso
【0220】
この物質をセル厚4μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、132.5℃で電流−電圧特性を測定したところ、図19に示すように、104V/cmの低い電界強度にもかかわらず、10−4A/cm2を超える高い電流密度が観測された。図には、比較のためにOH基を持たない10−BTBT−10 の120℃(SmA相)における電流電圧特性を合わせて示した。
【0221】
[実施例15]
6−(5’’−hexyl−[2,2’:5’,2’’−terthiophen]−5−yl)octan−1−ol(以下、6−TTP−8OHと略す)の合成は、5’−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン−5−ボロン酸ピナコールエステル(451mg,1.2mmol)をエタノール(10ml)に溶かし、炭酸カリウム(341mg, 2.4mmol)を水(3ml)に溶かし、テトラヒドロピラニルで保護した2−ブロモチオフェン−5−イル−オクタノール(291mg,1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(35mg,0.03mmol)をトルエン(15ml)に溶かし、その三つの溶液を混合し、90oCで3時間加熱攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、水洗後、乾燥した。カラムクロマトグラフィーで精製し本、実施例15で示される化合物、6−TTP−8OH221mg(収率:48%)を得た。
【0222】
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS),δ6.96(s,2H),6.95(d,J=3.4Hz,2H),6.67(d,J=3.4Hz,2H),3.64(dt,J=7.3Hz,J(CH2−OH)=5.4Hz,2H),2.78(t,J=7.3Hz,4H),1.68(quint,J=7.3Hz,4H),1.29−1.58(m,19H)ppm.
13CNMR(500MHz,CDCl3,TMS),δ=145.40,145.28,136.14,136.08,134.67,134.61,124.80,124.76,123.45,123.44,123.15,63.06,32.77,31.56,30.19,30.16,29.30,28.97,28.75,25.70,22.57,14.08ppm.
【0223】
この物質をセル厚3.7μmのITO電極を設けた液晶セルに注入し、30℃で電流−電圧特性を測定したところ、図20に示すように、液晶相、及び、結晶相において105V/cmの電界強度で、10−5A/cm2を超える高い電流密度が観測された。
【0224】
【化15】
【0225】
[実施例17]
6,6’−([2,2’:5’,2’’−terthiophene]−5,5’’−diyl)bis(hexan−1−ol)(以下、6−TTP−6iolと略す)を、て、ターチオフェンをTHF中でn−BuLiとt−BuOKを用いて、THPで水酸基を保護したBromohexan−1−Olと反応させ、収率27%でターチオフェンの両末端を置換したジアルキル体を得た。つぎに、得られたジアルキル体を塩化メチレンに溶解し、少量p−トルエンスルホン酸を含むメタノールを加え、3時時攪拌後水を加え、沈殿してくる結晶を濾取し、イソプロピルアルコールから再結晶によって、収率で85%で目的とする6−TTP−6diolを得た。
得られた物質を、DSC,偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折から相の同定を行った。高次のSm相は同定に至っていない。
Cry.−98.5℃−SmX−128℃−SmC−139℃−Iso
【0226】
5,5”−ビス(6−ヒドロキシルヘキシル)ターチオフェン(6−TTP−ジオール)
H−nmr(270MHz,CDCl3): δ 6.96 (s,2H),6.81(d,J=4.5Hz 2H),6.67(d,J=3.6Hz 2H),3.65(t,J=6.3Hz CH2OH×2,4H)2.80(t,J=7.1Hz ArCH2×2,4H),1.67(quint,J=7.7Hz ArCH2CH2×2,4H),1.50−1.60(m,CH2CH2OH×2,4H overlapped with H2O),1.41(quint,J=4.1Hz ArCH2CH2CH2CH2×2,8H),〜1.2(broad 2H,OH×2)
【0227】
【化16】
【0228】
<液晶層のデータ>
<図21 電圧−電流特性>
【0229】
[実施例18]
6−(5’’−hexyl−[2,2’:5’,2’’−terthiophen]−5−yl)hexan−1−ol(以下、6−TTP−6olと略す)を以下のように合成した。5’−ヘキシル−2,2’−ビチオフェン−5−ボロン酸ピナコールエステル(451mg,1.2mmol)をエタノール(10ml)に溶かし、炭酸カリウム(341mg,2.4mmol)を水(3ml)に溶かし、テトラヒドロピラニルで保護した2−ブロモチオフェン−5−イル−ヘキサノール(3461mg,1mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(35mg,0.03mmol)をトルエン(15ml)に溶かし、その三つの溶液を混合し、90oCで3時間加熱攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、水洗後、乾燥した。カラムクロマトグラフィーで精製し、6−TTP−6ol109mg収率:38%を得た。
【0230】
5−ヘキシル−5’’−(6−ヒドロキシヘキシル)ターチオフェン(6−TTP−6オール)の構造はH-NMRにより決定した。
【0231】
H−nmr(500MHz,CDCl3)δ6.97(s,2H),6.96(d,J=3.6Hz 2H),6.67(d,J=3.6Hz 2H),3.65(t,CH2OH×1,2H)2.79(d,J=6.9Hz ArCH2×2,4H),1.64−1.71(m,ArCH2CH2×2,4H),1.54−1.60(m,HOCH2CH2×1,2H overlapped with H2O),1.31−1.42(m,CH2×5,10H),〜1.2(broad 1H,OH×1),0.89(t,J=6.9Hz 3H,CH3)
【0232】
【化17】
【0233】
6−TTP−6olをDSC,偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折測定を行い、相転移の挙動から、Cry.−K65.5℃−SmG−95.8℃−Isoと決定した。
[図23−電圧−電流特性]
【0234】
[実施例19]
タイムオブフライト(time-of-flight)法により測定した8−TTP−8,6−TTP6オール,6−TTP−6ジオールの移動度の温度依存性を示す。OH基を置換した側鎖を有する液晶材料は、OH基を持たない類似化合物と比較しても、移動度に大きな遜色はない事がわかる。
【0235】
<図22 TOF移動度の図>
【0236】
[実施例20]
<8−PNP−O12OH>
8−((6−octylphenyl)naphthalen−2−yl)oxy)dodecan−1−ol(以下、8−PNP−O12OHと略す)を次のように合成した。
トルエン/2M炭酸ナトリウム水溶液(11ml/3ml)にアルゴンガスを導入し、アルゴン雰囲気下、この液に4−オクチルベンゼンボロン酸(737mg,3.15mmol)、12−(6−ブロモナフチルオキシ)ドデカン−1−オール(1143mg,3mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(104mg,0.09mmol)を加え、100oCで6時間加熱攪拌した。反応液をクロロホルムで抽出し、水洗後、乾燥した。カラムクロマトグラフィーで精製し、実施例1で示される化合物、8−PNP−O12OH774mg(収率:50%)を得た。
【0237】
【化18】
【0238】
構造は、H−NMRによって、同定した。
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS),δ(ppm)=7.12−7.97(m.10H),4.07(t,2H),3.63(t,2H),2.65(t,2H),1.97(quint,2H),1.82(quint,2H),1.63(quint,2H)1.20−1.50(m,26H),0.88(t,3H).
13CNMR(125MHz,CDCl3,TMS),δ(ppm)=157.19,141.89,138.55,136.25,133.70,129.16,128.88,127.11,127.01,125.94,125.27,119.38,106.45,68.09,63.09,35.64,32.83,31.91,31.53,29.61,29.58,29.52,29.44,29.43,29.41,29.29,26.13,25.75,22.69,14.10.
この物質は、DSCの測定から、Cry.−131.2℃−Isoの相転移挙動を示し、液晶相は発現しない。
【0239】
[実施例21]
【0240】
SiO2付きP型シリコン基板上に10−BTBT−10オールの0.5wt%クロロフォルム溶液をスピンコートした後、形成した多結晶薄膜上に、マスクパターンを用いて、Auを50nm真空蒸着することによりソース、ドレインの電極パターンを形成し、トップコンタクトを有するボトムゲート型FETを試作した。W/Lは1000/100μm/μmである(このようなFET作成法の詳細に関しては、必要に応じて、例えば文献:特許公報(B2)特許第4581062号を参照することができる。)。
【0241】
FETを作製後、100℃で30分、真空中で熱アニールした後、その特性を大気中、室温で測定した。図23にそのトランスファー特性を示す。移動度は10−2cm2/Vsと見積もられた。
【0242】
[産業上の利用の可能性]
【0243】
本発明は、OH基を有する材料を電荷注入促進機能を有する有機半導体材料として、有機EL素子の電荷輸送層、あるいは、有機太陽電池の有機トランジスタの活性層等の素子材料として用いることができる。
【0244】
また、電極との有機半導体との電荷注入を促進するための電荷注入促進物質として、電極界面に積層あるいは、有機半導体材料に混合して用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料であって;
4μmのセルギャップを介して配置された一対の基板を有するセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、動作温度において、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を与え、且つ、
前記有機半導体材料の分子が、伝導に都合の良い方向に配向することが可能であることを特徴とする有機半導体材料。
【請求項2】
前記有機半導体材料が、コア部にπ−電子共役系を含む液晶性を示す材料である請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項3】
前記有機半導体材料が、ネマチック相より高次の液晶相を示す液晶材料である請求項2に記載の有機半導体材料。
【請求項4】
液晶相において、ITO電極を有する液晶セル内に配置した際に、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を示す請求項2または3に記載の有機半導体材料。
【請求項5】
前記電荷輸送性分子ユニットAに結合した、環状構造ユニットBを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【請求項6】
前記側鎖Sが、電荷輸送性分子ユニットA、および/又は環状構造ユニットBに結合している請求項5に記載の有機半導体材料。
【請求項7】
前記有機半導体材料の「ネマチック相より高次の液晶相」が、N相、SmA相およびSmC相以外の相である請求項3に記載の有機半導体材料。
【請求項8】
前記「N相、SmA相およびSmC相以外の相」が、SmB,SmBcryst、SmI、SmF、SmE、SmJ、SmG、SmK、およびSmHからなる群から選ばれる液晶相である請求項7に記載の有機半導体材料。
【請求項9】
前記有機半導体材料を結晶相から昇温させた際に、前記「N相、SmA相およびSmC相以外の相」が、結晶相に隣接して現れる請求項7または8に記載の有機半導体材料。
【請求項10】
前記「伝導に都合の良い方向」が、サンドイッチ型に電極を配置した際に、該有機半導体材料の分子の電荷輸送性分子ユニットAが該電極表面に水平配向することである請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項11】
前記「伝導に都合の良い方向」が、プレーナー型に電極を配置した際に、有機半導体材料の分子の電荷輸送性分子ユニットAが該電極表面に垂直配向することである請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項1】
芳香族環を構造の少なくとも一部に含む、π−電子共役系からなる電荷輸送性分子ユニットAと;該分子ユニットAに結合した、OH基を有する側鎖Sを少なくとも1個有する有機半導体材料であって;
4μmのセルギャップを介して配置された一対の基板を有するセル内に、該有機半導体材料を配置した際に、動作温度において、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を与え、且つ、
前記有機半導体材料の分子が、伝導に都合の良い方向に配向することが可能であることを特徴とする有機半導体材料。
【請求項2】
前記有機半導体材料が、コア部にπ−電子共役系を含む液晶性を示す材料である請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項3】
前記有機半導体材料が、ネマチック相より高次の液晶相を示す液晶材料である請求項2に記載の有機半導体材料。
【請求項4】
液晶相において、ITO電極を有する液晶セル内に配置した際に、105V/cmの電界強度で10−5A/cm2以上の電流密度を示す請求項2または3に記載の有機半導体材料。
【請求項5】
前記電荷輸送性分子ユニットAに結合した、環状構造ユニットBを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【請求項6】
前記側鎖Sが、電荷輸送性分子ユニットA、および/又は環状構造ユニットBに結合している請求項5に記載の有機半導体材料。
【請求項7】
前記有機半導体材料の「ネマチック相より高次の液晶相」が、N相、SmA相およびSmC相以外の相である請求項3に記載の有機半導体材料。
【請求項8】
前記「N相、SmA相およびSmC相以外の相」が、SmB,SmBcryst、SmI、SmF、SmE、SmJ、SmG、SmK、およびSmHからなる群から選ばれる液晶相である請求項7に記載の有機半導体材料。
【請求項9】
前記有機半導体材料を結晶相から昇温させた際に、前記「N相、SmA相およびSmC相以外の相」が、結晶相に隣接して現れる請求項7または8に記載の有機半導体材料。
【請求項10】
前記「伝導に都合の良い方向」が、サンドイッチ型に電極を配置した際に、該有機半導体材料の分子の電荷輸送性分子ユニットAが該電極表面に水平配向することである請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項11】
前記「伝導に都合の良い方向」が、プレーナー型に電極を配置した際に、有機半導体材料の分子の電荷輸送性分子ユニットAが該電極表面に垂直配向することである請求項1に記載の有機半導体材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
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【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図11】
【図13】
【公開番号】特開2013−41984(P2013−41984A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177786(P2011−177786)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(CREST)「液晶性有機半導体の材料基盤技術の開拓」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(CREST)「液晶性有機半導体の材料基盤技術の開拓」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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