説明

有機発光素子

【課題】発光効率及び電力効率が向上した有機発光素子を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板上の第1電極および第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に積層された有機層と、を含み、前記第1電極は、Al、第1元素及びNiを含むAl系反射膜と、透明導電性膜と、を含み、前記第1元素は、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される1以上の元素であり、前記Al系反射膜及び前記透明導電性膜は、前記基板上にこの順に積層され、前記第1電極と前記有機層との間に炭素系材料含有膜が積層された、有機発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(organic light emitting diode)は、自発光型素子であり、視野角が広くコントラストに優れるだけでなく、応答時間が速く、輝度、駆動電圧及び応答速度特性に優れて多色化が可能であるという長所を有している。
【0003】
一般的な有機発光素子は、基板上にアノードが形成されており、このアノードの上に正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードが順次形成されている構造を有する。ここで、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層は、有機化合物を含む有機薄膜である(例えば、特許文献1)。
【0004】
前述したような構造を有する有機発光素子の駆動原理は次の通りである。
【0005】
前記アノードとカソードとの間に電圧を印加すれば、アノードから注入された正孔は、正孔輸送層を経て発光層に移動し、カソードから注入された電子は、電子輸送層を経て発光層に移動する。前記正孔及び電子は、発光層領域で再結合して励起子(exiton)を生成する。この励起子が励起状態から基底状態に失活する際に、発光が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2007−0071978号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発光効率及び電力効率が向上した有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明によれば、基板と、前記基板上の第1電極および第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に積層された有機層と、を含み、前記第1電極は、Al、第1元素及びNiを含むAl系反射膜と、透明導電性膜と、を含み、前記第1元素は、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される1以上の元素であり、前記Al系反射膜及び前記透明導電性膜は、前記基板上にこの順に積層され、前記第1電極と前記有機層との間に炭素系材料含有膜が積層された、有機発光素子が提供される。
【0009】
好ましくは、前記Al系反射膜は、AlNi相(ここで、xは原子比であって2.5ないし3.5である)を含む。好ましくは、前記AlNi相が前記透明導電性膜と接触する。
【0010】
好ましくは、前記Al系反射膜の、前記透明導電性膜と接触する面にNiリッチ酸化物層が存在する。
【0011】
好ましくは、前記Al系反射膜中の、Niの含量は、0.6ないし5質量%である。
【0012】
好ましくは、前記第1元素はLaを含む。
【0013】
好ましくは、前記Al系反射膜中、前記第1元素の含量は、0.1ないし3質量%である。
【0014】
好ましくは、前記透明導電性膜は、インジウムスズ酸化物(ITO)または酸化スズ(SnO)を含む。
【0015】
好ましくは、前記炭素系材料含有膜に含まれる炭素系材料が、フラーレン系化合物、金属含有フラーレン系錯化合物、カーボンナノチューブ、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、およびカルビン(carbine)からなる群から選択される1以上である。金属含有フラーレン系錯化合物としては、例えば、MgC60、CaC60、及びSrC60が挙げられる。
【0016】
好ましくは、前記第1電極は、第2元素含有亜鉛酸化物膜をさらに含み、前記第2元素は、Al、In、Ga、Ge、Gd、Zr、Mo、及びNiからなる群から選択される1以上の元素である。好ましくは、前記基板上に、前記Al系反射膜、前記透明導電性膜、及び前記第2元素含有亜鉛酸化物膜がこの順に積層される。
【0017】
好ましくは、前記第2元素含有亜鉛酸化物膜中の、前記第2元素の含量は、前記第2元素含有亜鉛酸化物膜100質量部当り0.5ないし20質量部である。
【発明の効果】
【0018】
本発明による有機発光素子によれば、発光効率及び電力効率特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による有機発光素子の構造を示す概略断面図である。
【図2】基板上に形成された第1電極を観察した顕微鏡写真である。
【図3A】基板上に形成された第1電極を観察した顕微鏡写真である。
【図3B】基板上に形成された第1電極を観察した顕微鏡写真である。
【図4A】Ti層(B層)上に形成されたAl系反射膜(A層)の断面を観察したTEM写真である。
【図4B】図4Aの異常成長結晶粒の成分分析結果である。
【図5】基板上に形成された第1電極の断面を観察したTEM写真である。
【図6】本発明の他の実施形態による有機発光素子の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面に基づいて本発明を説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による有機発光素子10の構造を示す概略断面図である。有機発光素子10は、基板1、第1電極5、炭素系材料含有膜6及び有機層7及び第2電極9がこの順に積層された構造を有する。前記第1電極5は、Al、第1元素及びNiを含むAl系反射膜5a及び透明導電性膜5bを含み、前記Al系反射膜5aと前記透明導電性膜5bは、前記基板1上にこの順に積層されている。
【0022】
基板1としては、通常の有機発光素子で使われる基板が適宜用いられうるが、機械的強度、熱安定性、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板が好ましい。
【0023】
基板1上には、Al、第1元素及びNiを含むAl系反射膜5aが形成されている。前記第1元素は、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される1以上の元素でありうる。
【0024】
前記Al系反射膜5aは、反射率が高く、有機発光素子の発光効率を改善しうる。また、前記Al系反射膜5aは、Alの特性上、熱安定性が高く、高温の製造工程にさらされても、耐久性に優れる。加えて、前記Al系反射膜5aは、これと隣接して形成される他の無機または有機材料を含む層との付着特性も優れている。
【0025】
図2は、通常のTFT基板上に2質量%のNi及び0.35質量%のLaを含むAl系反射膜を形成し、前記Al系反射膜の上にITOの透明導電性膜を形成した後、これを観察した顕微鏡写真である。図2のカソード接合部(図2の中央部)でAl系反射膜及びITOの透明導電性膜が実質的に分離されていないことを確認することができる。
【0026】
前記Al系反射膜5a上には、透明導電性膜5bがAl系反射膜5aと接触して形成されるため、前記Al系反射膜5aと透明導電性膜5bとの間には、電位差によるガルバニック腐食(Galvanic corrosion)が実質的に発生しない。
【0027】
ガルバニック腐食は、互いに異なる二種の金属が隣接している時、その二種の金属の電位差によって電圧が発生して電流が流れて、電気が発生する現象を意味する。このように電気的に接触している互いに異なる金属は、界面での仕事関数の差により、相対的に活性が大きな(低い電位の)金属がアノードとして作用し、相対的に活性が低い(高い電位の)金属がカソードとして作用する。この際、前記二種の金属が腐食性溶液にさらされると、前記金属間の電位差によって両金属で腐食が発生し、これをガルバニック腐食(Galvanic Corrosion)という。活性の高いアノードは、単独で存在する場合に比べてより速い速度で腐食され、活性が低いカソードは、より遅い速度で腐食が進行する。このようなガルバニック腐食が、互いに異なる物質からなる2つの電極間の界面に沿って広がると、前記電極間の接触抵抗が急激に上昇して、非常に不安定な抵抗分布を与えうる。これにより、有機発光素子の駆動時、画素間の色の発光が一部は明るく、一部は暗く発光されるなどの輝度不均一が発生し、画質が大きく低下する。このように、ガルバニック腐食は有機発光素子の品質低下の一要因となりうる。
【0028】
しかしながら、後述するように、前記Al系反射膜5aは、第1元素を含むため、前記Al系反射膜5aと透明導電性膜5bとの間でガルバニック腐食が実質的に発生しなくなる。したがって、本発明の実施形態による有機発光素子は、優れた品質を有しうる。
【0029】
図3A及び図3Bは、各々、通常のTFT基板上に、2質量%のNi及び0.35質量%のLaを含むAl系反射膜を形成した後、前記Al系反射膜の上にITOの透明導電性膜を形成し、これを観察した顕微鏡写真である。図3A及び図3Bから、Al系反射膜とITOの透明導電性膜との間に実質的にガルバニック腐食が発生していないことを確認することができる。
【0030】
前記Al系反射膜5aは、Niを含む。そのため、前記Al系反射膜5aは、AlNi相(ここで、xは原子比であって2.5ないし3.5である)を含みうる。xは、Niに対するAlの原子比であって、前記範囲内で多様に変化しうる。
【0031】
図4Aは、Ti層(B層)上に形成された、2質量%のNi及び0.35質量%のLaを含むAl系反射膜(A層)の断面を観察したTEM写真であり、図4Bは、図4Aで灰色の球形塊りとしてみられる、AlNiの異常成長結晶粒(第1測定地点及び第2測定地点)をEDS半定量法で分析した結果である。図4Bから、図4A中のAlNiの異常成長結晶粒には、AlとNiとがAl(K):Ni(K)=73:27(原子%基準である)の割合で含まれることがわかる。したがって、前記Al系反射膜は、AlNi(ここで、xは、約3である)と推定される相を含むことを確認することができる。ここで、Al(K)およびNi(K)は、それぞれ、Alの原子数とNiの原子数との合計を100%としたときのAlおよびNiの原子数の比率(%)を表す。
【0032】
好ましくは、前記AlNi相は、前記透明導電性膜5bと接触する。
【0033】
また、好ましくは、前記Al系反射膜5aの、前記透明導電性膜5b側の面に、Niリッチ酸化物層が存在する。
【0034】
図5は、通常のTFT基板上に、2質量%のNi及び0.35質量%のLaを含むAl系反射膜(C領域)を形成した後、前記Al系反射膜上にITOの透明導電性膜(D領域)を形成し、その断面を観察したTEM写真である。図5中、Al系反射膜とITOの透明導電性膜間の白色のライン状の領域(Eで表示されるライン状の領域)の一部は、Niリッチ酸化物層であって、その厚さは、約7ないし8nmと観察されうる。
【0035】
前述したようなAlNi相(ここで、xは原子比であって、2.5ないし3.5である)及び/またはNiリッチ酸化物層によって、Al系反射膜5aと透明導電性膜5bとの間の、オ−ム接触(ohm contact)が可能になる。
【0036】
前記Al系反射膜中の、Niの含量は、例えば、0.6ないし5質量%であり、好ましくは、1ないし4質量%である。本発明の一実施形態において、前記Niの含量は2質量%でありうる。前記Al系反射膜5a中の、Niの含量が0.6質量%以上である場合、Al系反射膜5aと透明導電性膜5bとの間の接触抵抗が安定化しうる。前記Al系反射膜5a中の、Niの含量が5質量%以下である場合、Al系反射膜5aの反射率及び耐薬品性が実質的に低下しなくなる。しかしながら上記の範囲は、例示的な範囲であって、これに限定されるものではない。
【0037】
前記Al系反射膜5aは、第1元素を含む。前記第1元素は、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される1つ以上の元素を含む。
【0038】
前記Al系反射膜5aが前記第1元素を含むことによって、熱安定性が改善され、ガルバニック腐食が抑制されうる。例えば、前記第1元素は、Laを含むことができるが、これらに限定されるものではない。例えば、前記第1元素はLaである。
【0039】
前記第1元素の含量は、例えば、0.1ないし3質量%であり、好ましくは0.1ないし1質量%でありうる。前記第1元素の含量が0.1質量%以上であれば、Al系反射膜5a中のAlの熱安定性が実質的に低下せず、前記第1元素の含量が3質量%以下である場合、反射率低下などの問題が実質的に防止されうる。前記第1元素の含量範囲は、例示的な範囲であって、これらに限定されるものではない。より好ましくは、前記第1元素の含量は、0.3ないし0.35質量%であるが、これらに限定されるものではない。なお、前記第1元素を複数種含む場合は、これらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0040】
前記Al系反射膜5aの厚さは、例えば50nm以上であり、好ましくは100ないし500nmである。前記Al系反射膜5aの厚さが50nm以上である場合、有機層7で生成された光がAl系反射膜5aを透過して発光効率が低下する問題が実質的に防止されうる。
【0041】
前記透明導電性膜5bの具体例としては、透明で導電性を有する金属酸化物が挙げられる。その例としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、または酸化スズ(SnO)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、透明導電性膜5bはITOからなる。
【0042】
前記透明導電性膜5bの厚さは、例えば5ないし100nmであり、好ましくは7ないし80nmである。前記透明導電性膜5bの厚さが前述したような範囲を満足する場合、Al系反射膜5aの反射率の低下を最小化しつつ有機発光素子の効率が向上しうる。
【0043】
前記透明導電性膜5b上には、炭素系材料含有膜6が備えられている。前記炭素系材料含有膜6は、前記第1電極5から提供される正孔が有機層7に効率よく注入及び輸送されるようにし、Al系反射膜5a及び透明導電性膜5bを含む第1電極を備えた有機発光素子の効率及び消費電力特性を向上させうる。また、炭素系材料含有膜6の高い屈折率(>1.8)は、Al系反射膜5aから反射される光の位相差を補償することによって、有機発光素子の効率及び消費電力特性を向上させうる。
【0044】
前記炭素系材料含有膜6に含まれる炭素系材料としては、例えば、炭素数が50ないし600である炭素同素体、金属含有炭素系化合物などが挙げられる。好ましくは、前記炭素系材料は、フラーレン系化合物、金属含有フラーレン系錯化合物、カーボンナノチューブ、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、およびカルビン(carbine)からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。金属含有フラーレン系錯化合物としては、MgC60、CaC60、及びSrC60などが挙げられる。
【0045】
好ましくは、前記炭素系材料は、C60−C500フラーレン系化合物でありうる。より好ましくは、前記炭素系材料はC60でありうる。
【0046】
前記炭素系材料含有膜6の厚さは、例えば1ないし300Åでありうる。好ましくは、前記炭素系材料含有膜6の厚さは、3ないし100Åであり、より好ましくは、3ないし30Åであるが、これらに限定されるものではない。前記炭素系材料含有膜6の厚さが前述した範囲を満足する場合、高効率で、高色純度の赤色、緑色及び/または青色発光が得られうる。
【0047】
前記炭素系材料含有層6の上に、有機層7が備えられる。本明細書において、「有機層」とは、炭素系材料含有層6と第2電極9との間に積層されたあらゆる層を包括して示すものであって、前記有機層7は金属錯体なども含み、必ずしも有機物からなる膜のみを意味するものではない。
【0048】
前記有機層7としては、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層及び電子注入層のうち、1つ以上の層を含むことができる。
【0049】
例えば、有機層7は、炭素系材料含有膜6の側から、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された構造を有しうる。または、前記有機層7は炭素系材料含有膜6の側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層がこの順に積層された構造を有することができるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記正孔注入層(HIL)は、前記炭素系材料含有膜6の上に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法(Langmuir Blodgett)のような多様な方法を用いて形成しうる。
【0051】
真空蒸着法によって正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性などによって異なるが、一般的に蒸着温度100ないし500℃、真空度10−8ないし10−3Torr、蒸着速度0.01ないし100Å/秒の範囲で適切に選択されうる。
【0052】
スピンコーティング法によって正孔注入層を形成する場合、そのコーティング条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、約2000ないし5000rpmのコーティング速度で行なわれうる。コーティング後の溶媒除去のための熱処理温度は、約80ないし200℃の温度範囲で適切に選択されうる。
【0053】
正孔注入層の材料としては、公知の正孔注入材料が使用されうるが、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、m−MTDATA[4,4’,4”−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine]、NPB(N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenylbenzidine))、TDATA、2T−NATA、Pani/DBSA(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonicacid:ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PEDOT/PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/Poly(4−styrenesulfonate):ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート))、Pani/CSA(Polyaniline/Camphorsulfonicacid:ポリアニリン/カンファースルホン酸)またはPani/PSS(Polyaniline)/Poly(4−styrenesulfonate):ポリアニリン)/ポリ(4−スチレンスルホネート))などが挙げられる。しかしながらこれらに限定されるものではない。
【0054】
【化1】

【0055】
前記正孔注入層の厚さは、例えば、50ないし10000Åであり、好ましくは、50ないし2500Åである。前記正孔注入層の厚さが前述の範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇がなく、満足できる正孔注入特性が得られうる。
【0056】
次に、好ましくは、前記正孔注入層の上に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法(Langmuir Blodgett)のような多様な方法を用いて正孔輸送層(HTL)を形成する。真空蒸着法及びスピンコーティング法によって正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択されうる。
【0057】
正孔輸送層の材料としては、例えば、下記化学式41または42で表される化合物が使用される。
【0058】
【化2】

【0059】
前記化学式41及び42中、R10は−(Ar−Arで表され;R16は−(Ar11−Ar12で表され;Ar、Ar11、L及びL11は、互いに独立して、置換または非置換のC−C30アルキレン基、置換または非置換のC−C30アルケニレン基、置換または非置換のC−C30アリーレン基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリーレン基、及び−N(Q)−で表される基からなる群から選択され;n、m、a及びbは、互いに独立して、0ないし10の整数であり;前記RないしR、R11ないしR15、R17、R18、R21ないしR29、Ar、Ar12及びQは、互いに独立して、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、置換または非置換のC−C30アルキル基、置換または非置換のC−C30アルケニル基、置換または非置換のC−C30アルキニル基、置換または非置換のC−C30アルコキシ基、置換または非置換のC−C30アルキルチオール基、置換または非置換のC−C30アリール基、置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基、及び−N(Q)(Q)で表される基からなる群から選択され;前記Q及びQは、互いに独立して、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、置換または非置換のC−C30アルキル基、置換または非置換のC−C30アルケニル基、置換または非置換のC−C30アルキニル基、置換または非置換のC−C30アルコキシ基、置換または非置換のC−C30アルキルチオール基、置換または非置換のC−C30アリール基、及び置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基からなる群から選択され;前記−(Ar−のうち、n個のArは互いに同一か異なり、前記−(Ar11−のうち、m個のAr11は互いに同一か異なり、前記−(L−のうち、a個のLは互いに同一か異なり、−(L11−のうち、b個のL11は互いに同一か、異なりうる。
【0060】
10である−(Ar−Ar及びR16である−(Ar11−Ar12において、Ar及びAr11は、好ましくは、置換または非置換のC−C10アルキレン基、置換または非置換のC−C10アルケニレン基である。または、置換または非置換のフェニレン基、置換または非置換のペンタレニレン基(pentalenylene)、置換または非置換のインデニレン基(indenylene)、置換または非置換のナフチレン基(naphthylene)、置換または非置換のアズレニレン基(azulenylene)、置換または非置換のヘプタレニレン基(heptalenylene)、置換または非置換のインダセニレン基(indacenylene)、置換または非置換のアセナフチレン基(acenaphthylene)、置換または非置換のフルオレニレン基(fluorenylene)、置換または非置換のフェナレニレン基(phenalenylene)、置換または非置換のフェナントレニレン基(phenanthrenylene)、置換または非置換のアントラセニレン基(anthracenylene)、置換または非置換のフルオランテニレン基(fluoranthenylene)、置換または非置換のトリフェニレニレン基(triphenylenylene)、置換または非置換のピレニレニレン基(pyrenylenylene)、置換または非置換のクリセニレニレン基(chrysenylene)、置換または非置換のナフタセニレン基(naphthacenylene)、置換または非置換のピセニレン基(picenylene)、置換または非置換のペリレニレン基(perylenylene)、置換または非置換のペンタフェニレン基(pentaphenylene)、置換または非置換のヘキサセニレン基(hexacenylene)、置換または非置換のピロリレン基(pyrrolylene)、置換または非置換のピラゾリレン基(pyrazolylene)、置換または非置換のイミダゾリレン基(imidazolylene)、置換または非置換のイミダゾリニレン基(imidazolinylene)、置換または非置換のイミダゾピリジニレン基(imidazopyridinylene)、置換または非置換のイミダゾピリミジニレン基(imidazopyrimidinylene)、置換または非置換のピリジニレン基(pyridinylene)、置換または非置換のピラジニレン基(pyrazinylene)、置換または非置換のピリミジニレン基(pyrimidinylene)、置換または非置換のインドリレン基(indolylene)、置換または非置換のプリニレン基(purinylene)、置換または非置換のキノリニレン基(quinolinylene)、置換または非置換のフタラジニレン基(phthalazinylene)、置換または非置換のインドリジニレン基(indolizinylene)、置換または非置換のナフチリジニレン基(naphthyridinylene)、置換または非置換のキナゾリニレン基(quinazolinylene)、置換または非置換のシノリニレン基(cinnolinylene)、置換または非置換のインダゾリレン基(indazolylene)、置換または非置換のカルバゾリレン基(carbazolylene)、置換または非置換のフェナジニレン基(phenazinylene)、置換または非置換のフェナントリジニレン基(phenanthridinylene)、置換または非置換のピラニレン基(pyranylene)、置換または非置換のクロメニレン基(chromenylene)、置換または非置換のベンゾフラニレン基(benzofuranylene)、置換または非置換のチオフェニレン基(thiophenylene)、置換または非置換のベンゾチオフェニレン基(benzothiophenylene)、置換または非置換のイソチアゾリレン基(isothiazolylene)、置換または非置換のベンゾイミダゾリレン基(benzoimidazolylene)、置換または非置換のイソキサゾリレン基(isoxazolylene)、置換または非置換のトリアジニレン基、及び−N(Q)−で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、前記Qは、例えば、水素、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、置換または非置換のC−C10アルキル基、置換または非置換のC−C10アルケニル基、置換または非置換のC−C10アルキニル基、置換または非置換のC−C10アルコキシ基、置換または非置換のC−C10アルキルチオール基、置換または非置換のC−C14アリール基、及び置換または非置換のC−C14ヘテロアリール基からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
より好ましくは、Arは及びAr11は、互いに独立して、C−C10アルキレン基;フェニレン基;ナフチレン基;アントリレン基;フルオレニレン基;カルバゾリレン基;ピラゾリレン基;ピリジニレン基;トリアジニレン基;−N(Q)−;ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、C−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基からなる群から選択された1つ以上の置換基で置換されたC−C10アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フルオレニレン基、カルバゾリレン基、ピラゾリレン基、ピリジニレン基、及びトリアジニレン基からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。ここで、前記Qは、水素;C−C10アルキル基;フェニル基;ナフチル基;カルバゾリル基;フルオレニル基;及びハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、C−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基からなる群から選択された1つ以上の置換基で置換されたC−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、カルバゾリル基、及びフルオレニル基からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
前記−(Ar−Ar及び−(Ar11−Ar12において、Ar及びAr12についての詳細な説明は、前述したQについての説明を参照する。
【0063】
前記−(Ar−Ar及び−(Ar11−Ar12において、n及びmは、互いに独立して、0ないし10の整数である。好ましくは、前記n及びmは、互いに独立して、0、1、2、3、4または5であるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
前記−(Ar−Arの−(Ar−において、n個のArは互いに同一か、異なりうる。例えば、nが2である場合、−(Ar−において、2個のArはいずれもフェニレン基であるか、または1つのArは−N(Q)−であり、残りのArはフェニレン基でありうるなど、多様な変形例が可能である。前記−(Ar11−Ar12もこれと同様に解釈されうる。
【0065】
前記化学式41及び42中、RないしR、R11ないしR15、R17、R18及びR21ないしR29についての詳細な説明は、前記Qについての詳細な説明を参照する。
【0066】
好ましくは、前記R13は、フェニル基、ナフチル基、またはアントリル基でありうるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
好ましくは、前記R28及びR29は、互いに独立して、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基からなる群から選択されうるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
前記化学式41及び42中、L及びL11についての詳細な説明は、前記Ar及びAr11についての詳細な説明を参照する。
【0069】
好ましくは、前記L及びL11は、互いに独立して、フェニレン基、C−C10アルキルフェニレン基、フルオロフェニレン基、カルバゾリレン基、トリアジニレン基、C−C10アルキルトリアジニレン基、フェニルトリアジニレン基、C−C10アルキレン基またはフェニルカルバゾリレン基でありうるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
前記化学式41及び42中、a及びbは、互いに独立して、0ないし10の整数である。好ましくは、前記a及びbは、互いに独立して、0、1、2または3である。
【0071】
前記化学式42の一実施形態において、R10である−(Ar−ArにおけるAr、及びR16の−(Ar11−Ar12におけるAr11は、互いに独立して、フェニレン基、カルバゾリレン基、フルオレニレン基、メチルフルオレニレン基、ピラゾリレン基、フェニルピラゾリレン基、−N(Q)−(ここで、Qは、水素、フェニル基、フルオレニル基、ジメチルフルオレニル基、ジフェニルフルオレニル基、カルバゾリル基、フェニルカルバゾリル基である)、ジフェニルフルオレニレン基、トリアジニレン基、メチルトリアジニレン基、フェニルトリアジニレン基、テトラフルオロフェニレン基、エチレン基、及びメチルフェニレン基からなる群から選択され、n及びmは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5または6であり、前記Ar及びAr12は、水素、シアノ基、フルオロ基、フェニル基、シアノフェニル基、ナフチル基、アントリル基、メチル基、ピリジニル基、カルバゾリル基、フェニルカルバゾリル基、フルオレニル基、ジメチルフルオレニル基及びジフェニルフルオレニル基からなる群から選択され;R11、R12、R14、R15、R17、R18及びR21ないしR27は水素であり;R13は、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基からなる群から選択され;R28及びR29は、互いに独立して、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基からなる群から選択され;L11はフェニレン基であり;bは0または1でありうる。
【0072】
例えば、前記化学式42中、R13は、下記化学式101Aないし101Dのうち、1つで表されうる。
【0073】
【化2−2】

【0074】
例えば、前記化学式42中、L11はフェニレン基であり、bは1でありうる。
【0075】
例えば、前記化学式42中、R10は下記化学式102Aないし102Gのうち、1つで表されうる。
【0076】
【化2−3】

【0077】
例えば、前記化学式42中、R28及びR29は、互いに独立して、メチル基またはフェニル基であり得る。
【0078】
例えば、前記化学式42中、R11、R12、R14ないしR18及びR21ないしR27は、水素でありうる。
【0079】
例えば、前記化学式41中、R、R及びRは、互いに独立して、C−C10アルキル基;C−C10アルコキシ基;フェニル基;ナフチル基;カルバゾリル基;フルオレニル基;ピレニル基;アントリル基;ピラゾリル基;ピリジニル基;ハロゲン元素、シアノ基、ヒドロキシル基、C−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、フェニル基、シアノフェニル基、ジフェニルアミノ基、ナフチル基、カルバゾリル基、フルオレニル基、C−C10アルキルフルオレニル基、ジ(C−C10アルキル)フルオレニル基、フェニルフルオレニル基、ジ(フェニル)フルオレニル基及びアントリル基のうち、1つ以上で置換されたC−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、カルバゾリル基、フルオレニル基、ピレニル基、アントリル基、ピラゾリル基、またはピリジニル基;または−N(Q)(Q)でありうる。ここで、前記Q及びQは、互いに独立して、C−C10アルキル基;C−C10アルコキシ基;フェニル基;ナフチル基;カルバゾリル基;フルオレニル基;ピレニル基;アントリル基;ピラゾリル基;ピリジニル基;またはハロゲン元素、シアノ基、ヒドロキシル基、C−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、フェニル基、シアノフェニル基、ジフェニルアミノ基、ナフチル基、カルバゾリル基、フルオレニル基、C−C10アルキルフルオレニル基、ジ(C−C10アルキル)フルオレニル基、フェニルフルオレニル基、ジ(フェニル)フルオレニル基及びアントリル基のうち、1つ以上で置換されたC−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、カルバゾリル基、フルオレニル基、ピレニル基、アントリル基、ピラゾリル基、またはピリジニル基;であり得る。
【0080】
例えば、前記化学式41中、R、R、及びRは、互いに独立して、下記化学式201ないし226のうち、1つでありうる。
【0081】
【化2−4】

【0082】
【化2−5】

【0083】
【化2−6】

【0084】
本発明の他の実施形態によれば、前記正孔輸送層は、下記の化合物1〜38から選択される1つを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
【化3−1】

【0086】
【化3−2】

【0087】
【化3−3】

【0088】
【化3−4】

【0089】
前記正孔輸送層の厚さは、例えば50ないし10000Åであり、好ましくは100ないし2500Åである。前記正孔輸送層の厚さが前述したような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇がなく、満足できる正孔輸送特性を得る。
【0090】
前記正孔輸送層の上に、好ましくは真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法(Langmuir Blodgett)のような方法を用いて発光層(EML)を形成する。真空蒸着法及びスピンコーティング法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0091】
前記発光層は発光材料として1つの化合物を含むか、ホストとドーパントとの組合せを含むことができる。前記ホストの例としては、Alq、CBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル)、PVK(ポリ(n−ビニルカルバゾール))、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(ADN)、TCTA、TPBI(1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(1,3,5−tris(N−phenylbenzimidazole−2−yl)benzene))、TBADN(3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン)、E3、DSA(ジスチリルアリーレン)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
【化4】

【0093】
一方、赤色ドーパントとして、例えば、PtOEP、Ir(piq)、BtpIr(acac)などが利用されうるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
【化5】

【0095】
また、緑色ドーパントとして、例えば、Ir(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)などが利用されうるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
【化6】

【0097】
一方、青色ドーパントとして、例えば、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)、ter−フルオレン(fluorene)、4,4’−ビス(4−ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(TBPe)、下記化学式51及び54のうち、いずれか1つで表される化合物、下記化学式81で表される化合物、下記化学式83で表される化合物などが利用されうるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
【化7】

【0099】
【化8】

【0100】
前記化学式51および54中、Ar51、A52、Ar53及びAr54各々についての詳細な説明は、前述したArについての説明と同一なので、本明細書におけるArについての説明を参照する。
【0101】
好ましくは、前記化学式51および54において、Ar51、A52、Ar53及びAr54は、互いに独立して、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、及びフェニル置換されたアントリレン基からなる群から選択される。
【0102】
前記化学式51および54中、R201ないしR206及びR51ないしR56各々についての詳細な説明は前述したArについての説明と同一なので、本明細書におけるArについての説明を参照する。好ましくは、R201ないしR206は水素である。
【0103】
前記化学式51および54中、d、e、f及びgは、互いに独立して、0ないし10の整数である。好ましくは、前記d、e、f及びgは、互いに独立して、0、1または2である。
【0104】
好ましくは、前記化学式51および54中、R51ないしR56は、互いに独立して、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、カルバゾリル基、及び−N(Q)(Q)からなる群から選択される。ここでQ及びQは、互いに独立して、メチル基、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基からなる群から選択される。
【0105】
前記化学式81中、L21は、置換または非置換のC−C30アルキレン基、置換または非置換のC−C30アルケニレン基、置換または非置換のC−C30アリーレン基及び置換または非置換のC−C30ヘテロアリーレン基からなる群から選択され;cは1ないし20の整数であり;−(L21−において、c個のL21は互いに同一か異なり;R31ないしR34は、互いに独立して、置換または非置換のC−C30アルキル基、置換または非置換のC−C30アルケニル基、置換または非置換のC−C30アルキニル基、置換または非置換のC−C30アルコキシ基、置換または非置換のC−C30アリール基及び置換または非置換のC−C30ヘテロアリール基からなる群から選択されうる。
【0106】
前記化学式81中、L21についての詳細な説明は、前記Arについての詳細な説明(但し、−N(Q)−についての説明は除く)を参照し、前記R31ないしR34についての詳細な説明は、前記Qについての詳細な説明(但し、−N(Q)(Q)についての説明は除く)を参照する。
【0107】
好ましくは、前記化学式81中、L21はエテニレン基、プロフェニレン基(炭素数3のアルケニレン基)、またはフェニレン基である。
【0108】
好ましくは、前記化学式81中、cは1、2、3、4、5、または6である。
【0109】
好ましくは、前記化学式81中、前記R31ないしR34は、互いに独立して、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基からなる群から選択される。
【0110】
前記化学式81の−(L21−において、c個のL21は互いに同一か、異なりうるが、例えば、cが2である場合、2個のL21はいずれもフェニレン基であるか、または2個のL21のうち、1つはフェニレン基であり、残りの1つはエテニレン基でありうるなど、多様な変形例が可能である。
【0111】
前記化学式81で表される化合物の一例として、下記化合物40が挙げられる、これに限定されるものではない。
【0112】
【化9】

【0113】
前記化学式83中、Ar81及びAr82各々についての詳細な説明は、前述したArについての説明と同一なので、本明細書におけるArについての説明を参照する。
【0114】
好ましくは、前記化学式83中、前記Ar81及びAr82は、互いに独立して、フェニレン基、フェニル−置換されたフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェニル置換されたアントリレン基、及び−N(Q)−からなる群から選択される。ここで、Qは、好ましくは、フェニル基または1つ以上のFで置換されたフェニル基である。
【0115】
前記化学式83中、R221ないしR226及びR81ないしR84各々についての詳細な説明は、前述したようなArについての説明と同一なので、本明細書におけるArについての説明を参照する。好ましくは、R221ないしR226は水素である。
【0116】
前記化学式83中、j及びkは、互いに独立して、0ないし10の整数である。好ましくは、前記j及びkは、互いに独立して、0、1または2である。
【0117】
好ましくは、前記化学式83中、前記R81ないしR84は、互いに独立して、水素、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、カルバゾリル基、及び−N(Q)(Q)からなる群から選択される。ここでQ及びQは、互いに独立して、メチル基、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基からなる群から選択される。
【0118】
好ましくは、前記有機層7のうち発光層は、前記化合物40、下記化合物43、51ないし55及び58のうち、いずれか1つをホストとして含む。
【0119】
【化10】

【0120】
前記発光層の発光材料としてドーパントとホストを共に使用する場合、ドーパントのドーピング濃度は、特に制限されないが、通常ホスト100質量部を基準として前記ドーパントの含量は0.01〜15質量部である。
【0121】
前記発光層の厚さは、例えば、100〜1000Åであり、好ましくは、200〜600Åである。前記発光層の厚さが前述したような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇がなく、優れた発光特性を示すことができる。
【0122】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記有機層7は正孔輸送層及び発光層を含む。好ましくは、前記正孔輸送層は、前記化学式41、42で表される化合物を含み、前記発光層はFIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)、ter−フルオレン、DPAVBi、TBPeまたは前記化学式51、54、81、83で表される化合物(ドーパント)と前述したようなホストとを含む。ここで、上記の化合物は青色ドーパントであるために、このような有機発光素子は高効率及び低消費電力を有しつつ、高色純度の青色光を放出しうる。
【0123】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記有機層7は、正孔輸送層及び発光層を含む。好ましくは、前記正孔輸送層は前記化合物1ないし37のうち、少なくとも1つの化合物を含み、前記発光層は前記化合物40と前述したようなホストを含む。
【0124】
発光層に燐光ドーパントをさらに使用する場合には、三重項励起子または正孔の電子輸送層への拡散を防止するために、好ましくは、前記正孔輸送層と発光層との間に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような方法を用いて正孔阻止層(HBL)を形成する。真空蒸着法及びスピンコーティング法により正孔阻止層を形成する場合、その条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。公知の正孔阻止材料も使用されうるが、その例としては、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体などが挙げられる。
【0125】
前記正孔阻止層の厚さは、例えば50ないし1000Åであり、好ましくは、100ないし400Åである。前記正孔阻止層の厚さが前述したような範囲である場合、実質的な駆動電圧の上昇がなく、優れた正孔阻止特性が得られうる。
【0126】
次いで、好ましくは、電子輸送層(ETL)を真空蒸着法、またはスピンコーティング法、キャスト法などの多様な方法を用いて形成する。真空蒸着法及びスピンコーティング法により電子輸送層を形成する場合、その条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。前記電子輸送層の材料は、電子注入電極(カソード)から注入された電子を安定して輸送する機能を有するものであって、公知の電子輸送材料が利用できる。例えば、キノリン誘導体、特にトリス(8−キノリノレート)アルミニウム(Alq)、TAZ、Balqのような公知の材料を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
【化11】

【0128】
前記電子輸送層の厚さは、例えば、100ないし1000Åであり、好ましくは、150ないし500Åである。前記電子輸送層の厚さが前述した範囲である場合、実質的な駆動電圧の上昇がなく、満足できる電子輸送特性が得られうる。
【0129】
また電子輸送層の上に、カソードから電子の注入を容易にする機能を有する材料を用いて電子注入層(EIL)が積層されうるが、これは特に材料を制限しない。
【0130】
前記電子注入層形成材料としては、例えば、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaOのような電子注入層を形成する材料として公知の任意の材料が利用できる。前記電子注入層の蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0131】
前記電子注入層の厚さは、例えば1ないし100Åであり、好ましくは5ないし90Åである。前記電子注入層の厚さが前述の範囲である場合、実質的な駆動電圧の上昇がなく、満足できる電子注入特性が得られうる。
【0132】
このような有機層7の上に、第2電極9が備えられる。前記第2電極9は、電子注入電極であるカソードであるが、この際、前記第2電極形成用の金属としては、低い仕事関数を有する金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物が好ましく使用されうる。具体例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)、ITO、IZOなどが挙げられる。
【0133】
図6は、本発明の他の実施形態による有機発光素子30の断面図を概略的に示す図面である。有機発光素子30は、基板21、第1電極25、炭素系材料含有膜26、有機層27及び第2電極29を含む。前記第1電極25は、基板21上に、Al系反射膜25a、透明導電性膜25b及び第2元素含有亜鉛酸化物膜25cをこの順で含む。ここで、基板21、炭素系材料含有膜26、有機層27、第2電極29、Al系反射膜25a及び透明導電性膜25bについての詳細な説明は、前記図1についての説明を参照する。
【0134】
図6によれば、第1電極25は、第2元素含有亜鉛酸化物膜25cをさらに含む。前記第2元素含有亜鉛酸化物膜25cは、第1電極25の仕事関数をさらに高めて、正孔注入障壁を低くするため、正孔が第1電極25から有機層27に容易に注入されるようになる。
【0135】
前記第2元素含有亜鉛酸化物膜25cにおいて、第2元素は、特に制限されないが、例えば、Al、In、Ga、Ge、Gd、Zr、Mo、及びNiからなる群から選択される1つ以上の元素である。より好ましくは、前記第2元素は、Alを含む。特に好ましくは、前記第2元素はAlである。
【0136】
前記第2元素の含量は、好ましくは、前記第2元素含有亜鉛酸化物膜25c 100質量部当り0.5ないし10質量部である。より好ましくは、前記第2元素の含量は、前記第2元素含有亜鉛酸化物膜25c 100質量部当り0.5ないし5質量部である。前記第2元素含有亜鉛酸化物膜25cの、前記第2元素の含量が前述したような範囲である場合、第2元素含有亜鉛酸化物膜25cの正孔輸送能が向上し、かつ電気抵抗の増加及び可視光領域での光透過率の低下が実質的に発生しなくなる。なお、前記第2元素を複数種含む場合は、これらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0137】
前記第2元素含有亜鉛酸化物膜25cの厚さは、例えば1ないし800Åであり、好ましくは10ないし500Åである。前記第2元素含有亜鉛酸化物膜25cの厚さが前述したような範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇がなく、優れた効率及び消費電力特性が得られうる。
【0138】
以上、前記有機発光素子を図1及び図6を参照して説明したが、前記有機発光素子はこれらに限定されるものではない。例えば、前記有機発光素子は、前記Al系反射膜と基板との間に金属層をさらに具備しうる。前記金属層は、前記Al系反射膜中のAl成分の基板への拡散に対するバリア層としての役割を担う。前記金属層は、例えば、Mo、W、Ti、Pd、Pt及びAuからなる群から選択された1つ以上の金属を含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、前記金属層は、Ti層である。前記金属層の厚さは、特に制限されないが、例えば20ないし200nmであり、好ましくは50ないし100nmである。前記金属層の厚さが前述の範囲である場合、Al成分の拡散を十分に防止できる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明を下記の実施例を用いてさらに説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0140】
<比較例1>
基板及び第1電極として、コーニング(Corning)社製の15Ω/cm(1200Å)ITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切って、イソプロピルアルコールと純水とで各々5分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して使用した。前記基板の上にm−MTDATAを真空蒸着して700Å厚さの正孔注入層を形成した後、前記正孔注入層の上に前記化合物5を真空蒸着して700Å厚さの正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層の上に、ホストとしてADN97質量%、ドーパントとして前記化合物58を3質量%使用して200Å厚さの発光層を形成した。前記発光層の上に、Alqを真空蒸着して300Å厚さの電子輸送層を形成した。前記電子輸送層の上に、Liqを真空蒸着して5Å厚さの電子注入層を形成した後、Mg:Agを真空蒸着して160Å厚さのカソードを形成した後、保護膜としてAlqを600Åの厚さで蒸着することで有機発光素子を完成した。
【0141】
<実施例1>
基板及び第1電極として、ITOガラス基板の代わりに、5000Å厚さのAlNiLa膜(前記AlNiLa膜中の、Niの含量は2質量%であり、Laの含量は0.3質量%である)、透明導電性膜として70Å厚さのITO膜が順次形成されたガラス基板を使用し、前記ITO膜の上に、炭素系材料含有膜として3Å厚さのC60膜を真空蒸着法を用いて形成した後、正孔注入層を形成したという点を除いては、前記比較例1と同様の手法で有機発光素子を作製した。
【0142】
<実施例2>
60膜の厚さを5Åにした点を除いては、前記実施例1と同様の手法で有機発光素子を作製した。
【0143】
<実施例3>
60膜の厚さを10Åにした点、および正孔注入層を形成しなかった点を除いては、前記実施例1と同様の手法で有機発光素子を作製した。
【0144】
<実施例4>
60膜の厚さを30Åに変更して正孔注入層を形成していないという点を除いては、前記実施例1と同様の手法で有機発光素子を作製した。
【0145】
<評価>
前記比較例1及び実施例1ないし4の有機発光素子に対する消費電力及び効率をPR650 Spectroscan Source Measurement Unit.(Photo Research社製)を用いて評価した。結果を下記表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
前記表1によれば、実施例1ないし4の有機発光素子は、比較例1の有機発光素子に比べて、駆動電圧が低くなり、電力効率が向上したことが確認できた。
【符号の説明】
【0148】
10、30 有機発光素子、
1、21 基板、
5、25 第1電極、
5a、25a Al系反射膜、
5b、25b 透明導電性膜、
25c 第2元素含有酸化物膜、
6、26 炭素系材料含有膜、
7、27 有機層、
9、29 第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の第1電極および第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に積層された有機層と、
を含み、
前記第1電極は、Al、第1元素及びNiを含むAl系反射膜と、透明導電性膜と、を含み、
前記第1元素は、La、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される1以上の元素であり、
前記Al系反射膜及び前記透明導電性膜は、前記基板上にこの順に積層され、
前記第1電極と前記有機層との間に炭素系材料含有膜が積層された、有機発光素子。
【請求項2】
前記Al系反射膜が、AlNi相(ここで、xは原子比であって、2.5ないし3.5である)を含む、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記AlNi相が、前記透明導電性膜と接触している、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記xが3である、請求項2または3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記Al系反射膜の、前記透明導電性膜と接触する面にNiリッチ酸化物層が存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記Al系反射膜中の、Niの含量が0.6ないし5質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記第1元素が、Laを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記Al系反射膜中の、前記第1元素の含量が0.1ないし3質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記Al系反射膜が、La、Ni及びAlからなり、前記Al系反射膜中の、前記Laの含量が0.1ないし3質量%であり、前記Al系反射膜中の、前記Niの含量が0.6ないし5質量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記透明導電性膜がインジウムスズ酸化物(ITO)または酸化スズ(SnO)を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記炭素系材料含有膜中に含まれる炭素系材料が、フラーレン系化合物、金属含有フラーレン系錯化合物、カーボンナノチューブ、炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、およびカルビン(carbine)からなる群から選択される1以上である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記炭素系材料がC60である、請求項11に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記第1電極が、第2元素含有亜鉛酸化物膜をさらに含み、前記第2元素は、Al、In、Ga、Ge、Gd、Zr、Mo、及びNiからなる群から選択される1以上の元素である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記第2元素がAlである、請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記基板上に、前記Al系反射膜、前記透明導電性膜、及び前記第2元素含有亜鉛酸化物膜がこの順で積層されている、請求項13または14に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記第2元素含有亜鉛酸化物膜中の前記第2元素の含量は、前記第2元素含有亜鉛酸化物膜100質量部当り0.5ないし10質量部である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の有機発光素子。

【図1】
image rotate

【図6】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−82173(P2011−82173A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229116(P2010−229116)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【Fターム(参考)】