説明

有機発光表示装置

【課題】効果的に大面積化することができる有機発光表示装置を提供する。
【解決手段】基板本体と、基板本体上に形成された薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタと接続して電子を注入する透明電極710と透明電極上に形成された有機発光層720と有機発光層上に形成されて正孔を注入する反射電極730とを有する有機発光素子70と、を含み、有機発光層は、電子注入用金属層7243と電子注入層7241と電子注入用双極子層7242とを含み透明電極上に形成された電子注入部724と、電子注入部上に形成された発光部721と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置(organic light emitting diode display)は、光を放出する有機発光素子を有して画像を表示する自発光型表示装置である。有機発光表示装置は、有機発光層の内部で電子と正孔が結合して生成された励起子(exciton)が、励起状態から基底状態に落ちる際に発生するエネルギーによって光が発生し、これを利用して画像を表示する。
【0003】
一般に、有機発光表示装置は、電子移動度(carrier mobility)に優れた低温多結晶シリコン薄膜トランジスタ(LTPS TFT)を使用する。しかし、低温多結晶シリコン薄膜トランジスタは、非晶質シリコン薄膜トランジスタと比較して、製造工程が複雑となる。一方、非晶質シリコン薄膜トランジスタは、複雑な結晶化工程を省略することができ、大面積工程に有利である。このため、低温多結晶シリコン薄膜トランジスタを含む有機発光表示装置は、大型化されるほど、生産性が低下する。
【0004】
したがって、有機発光表示装置を効率的に大型化させるために、電子移動度が比較的低くなっても、大面積工程に有利な非晶質シリコン薄膜トランジスタを使用しようとする開発が行なわれている。しかし、非晶質シリコン薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであるため、非晶質シリコン薄膜トランジスタと接続された有機発光素子の効率及び耐久性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、効果的に大面積化することができる有機発光表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る有機発光表示装置は、基板本体と、前記基板本体上に形成された薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタと接続して電子を注入する透明電極と前記透明電極上に形成された有機発光層と前記有機発光層上に形成されて正孔を注入する反射電極とを有する有機発光素子と、を含み、前記有機発光層は、電子注入用金属層と電子注入層と電子注入用双極子層(dipole layer)とを含み前記透明電極上に形成された電子注入部と、前記電子注入部上に形成された発光部と、を含む。
【0007】
前記薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであり得る。
【0008】
前記薄膜トランジスタは非晶質シリコン薄膜トランジスタであり得る。
【0009】
前記透明電極は4.5eVより大きい仕事関数を有し得る。
【0010】
前記透明電極は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、In2O3(Indium Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、GIZO(Gallium Indium Zinc Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、及びAZO(Aluminum−Doped Zinc Oxide)のいずれか一つ以上を含み得る。
【0011】
前記反射電極は4.5eVより小さい仕事関数を有し得る。
【0012】
前記電子注入用金属層は4.5eVより小さい仕事関数を有し得る。
【0013】
前記反射電極及び前記電子注入用金属層のうちの一つ以上は、銀(Ag)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、及びアルミニウム(Al)のいずれか一つ以上を含み得る。
【0014】
前記電子注入用双極子層は、C60(Fullerene)、F16CuPc(Fluorinated Copper−phthalocyanine)、TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)、TCNNQ(11,11,12,12−tetracyano−1,4−naphthaquinodimethane)、PTCDI(perylene tetracarboxylic diimide)、NTCDI(1,4;5,8−naphthalene−tetracarboxylic diimide)、及びNTCDA(1,4,5,8−Naphthalene−tetracarboxylic−dianhydride)のいずれか一つ以上を含み得る。
【0015】
前記透明電極上に前記電子注入用金属層、前記電子注入層、及び前記電子注入用双極子層が順次に積層され得る。
【0016】
前記電子注入層と前記電子注入用双極子層は互いに混合され得る。
【0017】
前記電子注入部と前記発光部との間に配置された電子輸送層をさらに含み得る。
【0018】
前記有機発光層は、正孔注入層及び正孔注入用双極子層を含み、前記発光部と前記反射電極との間に配置された正孔注入部をさらに含み得る。
【0019】
前記正孔注入用双極子層は、C60(Fullerene)、F16CuPc(Fluorinated Copper−phthalocyanine)、TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)、TCNNQ(11,11,12,12−tetracyano−1,4−naphthaquinodimethane)、PTCDI(perylene tetracarboxylic diimide)、NTCDI(1,4;5,8−naphthalene−tetracarboxylic diimide)、及びNTCDA(1,4,5,8−Naphthalene−tetracarboxylic−dianhydride)のいずれか一つ以上を含み得る。
【0020】
前記正孔注入用双極子層は、双極子特性を有する金属酸化膜を含み得る。
【0021】
前記双極子特性を有する金属酸化膜は、酸化モリブデン(molybdenum oxide)、酸化タングステン(tungsten oxide)、酸化バナジウム(vanadium oxide)、酸化レニウム(rhenium oxide)、及び酸化ルテニウム(ruthenium oxide)のいずれか一つ以上を含み得る。
【0022】
前記発光部上に前記正孔注入用双極子層及び前記正孔注入層が順次に積層され得る。
【0023】
前記正孔注入層と前記正孔注入用双極子層は互いに混合され得る。
【0024】
前記正孔注入部と前記発光部との間に配置された正孔輸送層をさらに含み得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、有機発光表示装置を効果的に大面積化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る有機発光表示装置の構造を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の有機発光表示装置が有する画素回路を示す回路図である。
【図3】図1の有機発光表示装置に使用された薄膜トランジスタ及び有機発光素子を中心に拡大して示した部分断面図である。
【図4】図3の有機発光素子の一部を拡大して示した部分断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る実験例と比較例を比較したグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係る実験例と比較例を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態に係る有機発光表示装置について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が実施できるように詳細に説明する。本発明は、種々の相異なる実施形態にて実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0028】
明細書の全体にわたって同一または類似する構成要素に対しては、同一の参照符号を付ける。また、図面における各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したので、本発明が必ずしも図示した大きさ及び厚さのものに限定されることはない。
【0029】
図面において、種々の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。また、図面において、説明の便宜のために、一部層及び領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「の上」に、または「上」にあると記載するときは、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。
【0030】
以下、図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る有機発光表示装置101について説明する。
【0031】
図1に示すように、有機発光表示装置101は、表示領域DAと非表示領域NAに区分された基板本体111とを含む。基板本体111の表示領域DAには、多数の画素領域PEが形成されて画像を表示し、非表示領域NAには、一つ以上の駆動回路910、920が形成される。ここで、画素領域PEは、画像を表示する最小単位の画素が形成された領域をいう。しかし、本実施形態において、必ずしも非表示領域NAに全ての駆動回路910、920を設けなければならないわけではなく、一部または全部を省略することも可能である。
【0032】
図2に示したように、本発明の実施形態に係る有機発光表示装置101は、一つの画素領域PEごとに有機発光素子(organic light emitting diode)70、二つの薄膜トランジスタ(thin film transistor、TFT)10、20、及び一つのキャパシタ(capacitor)80が配置された2Tr−1Cap構造を有する。しかし、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、有機発光表示装置101は、一つの画素領域PEごとに、三つ以上の薄膜トランジスタと二つ以上のキャパシタを配置した構造を有することもでき、別途の配線をさらに設けて多様な構造を有するように形成することも可能である。このように、追加的に設けられる薄膜トランジスタ及びキャパシタのうちの一つ以上は、補償回路の構成になることができる。
【0033】
補償回路は、画素領域PEごとに形成された有機発光素子70の均一性を向上させて、画質に偏差が生じることを抑制する。一般に、補償回路は2個〜8個の薄膜トランジスタを含むことができる。
【0034】
また、基板本体111の非表示領域NAの上に形成された駆動回路910、920も、追加の薄膜トランジスタを含むことができる。
【0035】
有機発光素子70は、正孔注入電極のアノード(anode)電極と、電子注入電極のカソード(cathode)電極と、及びアノード電極とカソード電極との間に配置された有機発光層とを含む。
【0036】
具体的には、本実施形態に係る有機発光表示装置101は、一つの画素領域PEごとに第1薄膜トランジスタ10と第2薄膜トランジスタ20とを含む。第1薄膜トランジスタ10及び第2薄膜トランジスタ20は、それぞれゲート電極、非結晶半導体層、ソース電極、及びドレイン電極を含む。第1薄膜トランジスタ10と第2薄膜トランジスタ20は、それぞれ互いに異なる方法によって結晶化された多結晶半導体層を含むことができる。
【0037】
図2には、ゲートラインGL、データラインDL、及び共通電源ラインVDDと共に、キャパシタラインCLが示されているが、本実施形態は、図2に示された構造に限定されることはない。したがって、キャパシタラインCLは、場合によって省略することも可能である。
【0038】
データラインDLには第2薄膜トランジスタ20のドレイン電極が接続され、ゲートラインGLには第2薄膜トランジスタ20のゲート電極が接続される。第2薄膜トランジスタ20のソース電極は、キャパシタ80を通じてキャパシタラインCLに接続される。第2薄膜トランジスタ20のソース電極とキャパシタ80との間に第1薄膜トランジスタ10のゲート電極が接続される。第1薄膜トランジスタ10のソース電極にはVSSが接続され、ドレイン電極には有機発光素子70のカソード電極が接続される。
【0039】
第2薄膜トランジスタ20は、発光させようとする画素領域PEを選択するスイッチング素子として使用される。第2薄膜トランジスタ20が導通すれば、キャパシタ80は蓄電され、この際に蓄電される電荷量はデータラインDLから印加される電圧の電位に比例する。そして、第2薄膜トランジスタ20が遮断された状態で、キャパシタラインCLに1フレーム周期で電圧を増大させる信号が入力されると、第1薄膜トランジスタ10のゲート電位は、キャパシタ80に蓄電された電圧を基準として印加される電圧のレベルが、キャパシタラインCLを通じて印加される電圧に沿って上昇する。第1薄膜トランジスタ10は、ゲート電位が閾値電圧を越えれば導通する。このことにより、共通電源ラインVDDに印加された電圧が第1薄膜トランジスタ10を通じて有機発光素子70に印加され、有機発光素子70は発光する。
【0040】
このような画素領域PEの構成は、上述したものに限定されず、当業者が容易に変形実施できる範囲内で多様に変形可能である。
【0041】
以下、図3を参照して、本発明の実施形態に係る第1薄膜トランジスタ10及び有機発光素子70の構造について詳細に説明する。
【0042】
基板本体111は、ガラス、石英、またはセラミックなどで作られた透明な絶縁性基板で形成するか、またはプラスチックなどで作られた透明なフレキシブル(flexible)基板で形成することができる。
【0043】
基板本体111上にゲート電極121が形成される。ゲート電極121は、通常、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、チタニウム(Ti)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)のいずれか一つ以上を含むことができる。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。ゲート電極121は、電気的特性に優れた多様な金属で形成することができる。
【0044】
また、図示していないが、基板本体111とゲート電極121との間にバッファ層を形成することができる。一例として、バッファ層は、窒化ケイ素(SiNx)の単一膜、または窒化ケイ素(SiNx)と酸化ケイ素(SiO)が積層された二重膜構造に形成することができる。バッファ層は、不純元素または水分のように不必要な成分の浸透を防止し、表面を平坦化する役割を果たすことができる。バッファ層は、基板本体111の種類及び工程条件によって形成するか、または省略することができる。
【0045】
ゲート電極121上にはゲート絶縁膜130が形成される。ゲート絶縁膜130は、テトラエトキシシラン(tetra ethyl ortho silicate、TEOS)、窒化ケイ素、酸化ケイ素、及び窒酸化ケイ素のいずれか一つ以上を含む。一例として、ゲート絶縁膜130は、40nmの厚さを有する窒化シリコン膜と、80nmの厚さを有するテトラエトキシシラン膜とが順次に積層された二重膜に形成することができる。
【0046】
ゲート絶縁膜130上には非晶質半導体層145が形成される。非晶質半導体層145は非晶質シリコン(amorphous silicon)で作られる。非晶質半導体層145の上には、それぞれ非晶質半導体層145の一部と接続されたドレイン電極156及びソース電極157が形成される。ドレイン電極156及びソース電極157は互いに離隔して配置される。
【0047】
また、ドレイン電極156及びソース電極157は、ゲート電極121と同様に、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、チタニウム(Ti)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)のいずれか一つ以上を含むことができる。
【0048】
このように、第1薄膜トランジスタ10は、ゲート電極121、非晶質半導体層145、ドレイン電極156、及びソース電極157を含む非晶質シリコン薄膜トランジスタである。第1薄膜トランジスタ10はN型薄膜トランジスタである。
【0049】
ドレイン電極156及びソース電極157の上には平坦化膜160が形成される。平坦化膜160は、ソース電極157の一部を露出するコンタクトホール167を有する。平坦化膜160は平坦化特性を有する有機膜で作ることができる。なお、平坦化膜160は場合によって省略することも可能である。
【0050】
平坦化膜160の上には透明電極710が形成される。透明電極710は、有機発光層720に電子を注入する電子注入電極になる。透明電極710は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、In2O3(Indium Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、GIZO(GalliumIndium Zinc Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、及びAZO(Aluminum−Doped ZincOxide)のいずれか一つ以上を含む。
【0051】
また、平坦化膜160の上には透明電極710の少なくとも一部を露出する開口部195を有する画素定義膜190が形成される。画素定義膜190の開口部195は、光が発生する発光領域を定義する。
【0052】
透明電極710の上には有機発光層720が形成される。有機発光層720の上には反射電極730が形成される。反射電極730は有機発光層720に正孔を注入する正孔注入電極になる。したがって、反射電極730は仕事関数の高い物質で形成されることが有利である。例えば、通常、正孔注入電極は4.5eVより大きい仕事関数を有するNi(ニッケル)、モリブデン(Mo)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、及びCu(銅)のいずれか一つ以上で作られる。
【0053】
しかし、本発明の実施形態においては、正孔注入部725の形成によって、正孔注入電極として使用される反射電極730を、相対的に小さい仕事関数を有する金属によっても効果的に形成することができる。具体的には、本発明の実施形態においては、反射電極730は、4.5eVより小さい仕事関数を有する金属で形成され得る。
【0054】
このような構造により、有機発光層720で発生した光は、透明電極710を通過して外部に放出される。つまり、本発明の実施形態に係る有機発光表示装置101は、背面方向に光を放出して画像を表示する背面発光型構造を有する。図3で点線に表示した矢印は、光が放出される方向を示す。
【0055】
また、有機発光表示装置101は、図示していないが、封止部材をさらに含むことができる。封止部材は、基板本体111と対向配置し、有機発光素子70をカバーする封止基板とすることができる。封止基板は周縁に沿って形成されたシラントによって、基板本体111と合着密封することができる。また、封止部材として封止薄膜が用いられることも可能である。
【0056】
一方、有機発光表示装置101が背面発光型構造を有するためには、透明電極710が第1薄膜トランジスタ10のソース電極157と接続されなければならない。そして、第1薄膜トランジスタ10がN型薄膜トランジスタであるので、透明電極710は電子注入電極にならなければならない。
【0057】
しかし、透明電極710の素材として用いられる透明な酸化物の大部分が、相対的に高い仕事関数を有する。具体的に、透明電極710は4.5eVより大きい仕事関数を有する。これにより、透明電極710は単独では電子注入を円滑に行うことが難しい。
【0058】
したがって、図4に示すように、有機発光層720は、透明電極710を通ずる電子注入が円滑に行われるように助ける電子注入部724を含む。本発明の実施形態において、電子注入部724は、通常の電子注入層7241の以外に、電子注入用金属層7243及び電子注入用双極子層(dipole layer)7242をさらに含む。
【0059】
電子注入用金属層7243は、透明電極710の上に形成される。電子注入用金属層7243は4.5eVより小さい仕事関数を有する。電子注入用金属層7243の仕事関数が4.0eVより小さいと、さらに効果的である。つまり、電子注入用金属層7243は仕事関数が小さいほど良い。電子注入用金属層7243は、銀(Ag)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、及びアルミニウム(Al)のいずれか一つ以上を含む。
【0060】
電子注入層7241は電子注入用金属層7243の上に形成される。電子注入層7241としては、当業者にとって公知である通常の電子注入層が使用される。例えば、電子注入層は、LiFまたはLiQ(lithium quinolate)などのような物質で作ることができる。
【0061】
電子注入用双極子層7242は電子注入層7241の上に形成される。電子注入用双極子層7242は、C60(Fullerene)、F16CuPc(Fluorinated Copper−phthalocyanine)、TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)、TCNNQ(11,11,12,12−tetracyano−1,4−naphthaquinodimethane)、PTCDI(perylene tetracarboxylic diimide)、NTCDI(1,4;5,8−naphthalene−tetracarboxylic diimide)、及びNTCDA(1,4,5,8−Naphthalene−tetracarboxylic−dianhydride)のいずれか一つ以上を含む。
【0062】
本発明の実施形態が上述したものに限定されることはない。したがって、電子注入用双極子層7242は、電子注入層7241と混合して一体に形成することも可能である。
【0063】
また、有機発光層720は、電子注入部724上に順次に配置された電子輸送層722、発光部721、正孔輸送層723、及び正孔注入部725をさらに含む。
【0064】
電子輸送層722は電子注入用双極子層7242の上に配置される。電子輸送層722は必要に応じて省略することも可能である。電子輸送層722としては、当業者に公知である通常の電子輸送層が使用される。例えば、電子輸送層722は、オキサジアゾール(oxadiazole)、トリアゾル(triazole)、フェナントリン(phenanthroline)、ベンゾキサゾール(benzoxazole)、及びベンズチアゾール(benzthiazole)などのようなアリール化合物で作られる。
【0065】
発光部721は電子輸送層722の上に配置される。発光部721は、当業者に公知である通常の有機発光物質で形成される。
【0066】
本発明の実施形態においては、電子注入用双極子層7242により、発光部721のエネルギー準位と無関係に電子注入が円滑に行える。
【0067】
正孔輸送層723は発光部721の上に配置される。正孔輸送層723は、必要に応じて省略することも可能である。正孔輸送層723としては、当業者に公知である通常の正孔輸送層が使用される。例えば、正孔輸送層723は、TPD(N,N'−diphenyl−N,N'−bis(3−methylphenyl)−1,1'−bi−phenyl−4,4'−diamine)、及びNPB(N,N'−di(naphthalen−1−yl)−N,N'−diphenyl−benzidine)などのような物質で形成される。
【0068】
正孔注入部725は、正孔輸送層723の上に形成された正孔注入用双極子層7251と、正孔注入用双極子層7251の上に形成された正孔注入層7252とを含む。
【0069】
正孔注入用双極子層7251は、C60(Fullerene)、F16CuPc(Fluorinated Copper−phthalocyanine)、TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)、TCNNQ(11,11,12,12−tetracyano−1,4−naphthaquinodimethane)、PTCDI(perylene tetracarboxylic diimide)、NTCDI(1,4;5,8−naphthalene−tetracarboxylic diimide)、及びNTCDA(1,4,5,8−Naphthalene−tetracarboxylic−dianhydride)のいずれか一つ以上を含むことができる。
【0070】
また、正孔注入用双極子層7251は、双極子特性を有する金属酸化膜を含むこともできる。双極子特性を有する金属酸化膜は、酸化モリブデン(molybdenum oxide)、酸化タングステン(tungsten oxide)、酸化バナジウム(vanadium oxide)、酸化レニウム(rhenium oxide)、及び酸化ルテニウム(ruthenium oxide)のいずれか一つ以上を含む。
【0071】
正孔注入層7252は、当業者に公知である通常の正孔注入層が使用される。例えば、正孔注入層7252は、MTDATA(4,4',4”−tris(3−methylphenylphenylamino)triphenylamine)、CuPc(copper phthalocyanine)、及びPEDOT/PSS(poly(3,4−ethylenedioxythiphene、polystyrene sulfonate)などのような物質で形成される。
【0072】
本発明の実施形態は上述したものに限定されない。したがって、正孔注入用双極子層7251は、正孔注入層7252と混合されて一体に形成することも可能である。
【0073】
正孔注入層7252の上には反射電極730が配置される。
【0074】
このような構成により、大面積工程に適した非晶質シリコン薄膜トランジスタを使用して、有機発光素子70を効率的に駆動することができる。したがって、有機発光表示装置101は、背面発光型構造を有しながらも、効果的に大型化することができる。
【0075】
具体的には、N型薄膜トランジスタである第1薄膜トランジスタ10のドレイン電極157と接続された透明電極710を電子注入電極として使用し、反射電極730を正孔注入電極として使用しながらも、発光部721に電子注入及び正孔注入を円滑に行うことができる。
【0076】
つまり、本発明の実施形態においては、電子注入部724及び正孔注入部725を通じて、通常正孔注入電極として使用された透明電極710を電子注入電極として使用することができ、通常電子注入電極として使用された反射電極730を正孔注入電極として使用することができる。
【0077】
また、本発明の実施形態においては、有機発光層720の上にITOのような透明導電膜が形成されないので、ITOが形成される過程で有機発光層が損傷するおそれがない。有機発光層720の上にスパッタ(sputter)を用いてITOのような透明導電膜を形成すれば、有機発光層720は損傷しやすい。
【0078】
以下、図5及び図6を参照して、実施例と比較例を対比して説明する。
【0079】
実施例は、本発明の実施形態において形成された有機発光素子を、非晶質シリコン薄膜トランジスタを通じて駆動した有機発光表示装置である。
【0080】
比較例1は、通常の背面発光型構造の有機発光表示装置であって、有機発光素子が低温多結晶シリコン薄膜トランジスタを通じて駆動される。また、有機発光素子は、ITOからなるアノード電極、CuPcからなる正孔注入層、NPBからなる正孔輸送層、通常の発光部、BeBq2(bis(benzo−quinoline)berellium)からなる電子輸送層、LiFからなる電子注入層、及びAlからなるカソード電極を含む。
【0081】
比較例2は、電子注入部を除いては実施例と同一の構造を有する。比較例2の電子注入部は、電子注入用金属層及び電子注入用双極子層が除外され、電子注入層だけを有する。
【0082】
比較例3は、正孔注入部を除いては実験例と同一の構造を有する。比較例3の正孔注入部は、正孔注入用双極子層が除外され、正孔注入層だけを有する。
【0083】
図5は、電流(I)−電圧(V)曲線を示す。図5に示したように、有機発光素子が非晶質シリコン薄膜トランジスタによって駆動され、背面発光型構造を有する実施例は、通常の背面発光型構造を有する比較例1と比較して、特性において大差ないことが分かる。
【0084】
一方、本発明の実施形態によらない有機発光素子が非晶質シリコン薄膜トランジスタによって駆動される場合には、特性が著しく低下することが比較例2と比較例3を通じて分かる。
【0085】
図6は、電流効率(CE)−電流密度(J)曲線を示す。図6に示すように、実施例は比較例1と比較して、約30%以上向上した電流効率を有することが分かる。
【0086】
以上のような実験を通じ、本発明の実施形態によれば、背面発光型有機発光表示装置が、大面積工程に有利な非晶質薄膜トランジスタを使用しながらも、通常の背面発光型有機発光表示装置と比較して類似するか、または向上した特性を有することが分かる。
【0087】
本発明について上述した実施形態により説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲の概念および範囲を逸脱しない限り、多様な修正及び変形が可能であるということを、当業者であれば理解できるであろう。
【符号の説明】
【0088】
10 第1薄膜トランジスタ、
20 第2薄膜トランジスタ、
70 有機発光素子、
80 キャパシタ、
101 有機発光表示装置、
111 基板本体、
121 ゲート電極、
130 ゲート絶縁膜、
145 非晶質半導体層、
156 ドレイン電極、
157 ソース電極、
160 平坦化膜、
167 コンタクトホール、
190 画素定義膜、
195 開口部、
710 透明電極、
720 有機発光層、
724 電子注入部、
722 電子輸送層、
721 発光部、
723 正孔輸送層、
725 正孔注入部、
730 反射電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体と、
前記基板本体上に形成された薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタと接続して電子を注入する透明電極と前記透明電極上に形成された有機発光層と前記有機発光層上に形成されて正孔を注入する反射電極とを有する有機発光素子と、を含み、
前記有機発光層は、電子注入用金属層と電子注入層と電子注入用双極子層(dipole layer)とを含み前記透明電極上に形成された電子注入部と、前記電子注入部上に形成された発光部と、を含むことを特徴とする有機発光表示装置。
【請求項2】
前記薄膜トランジスタはN型薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
前記薄膜トランジスタは非晶質シリコン薄膜トランジスタであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
前記透明電極は4.5eVより大きい仕事関数を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
前記透明電極は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZITO(Zinc Indium Tin Oxide)、GITO(Gallium Indium Tin Oxide)、In2O3(Indium Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、GIZO(Gallium Indium Zinc Oxide)、GZO(Gallium Zinc Oxide)、FTO(Fluorine Tin Oxide)、及びAZO(Aluminum−Doped Zinc Oxide)のいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
前記反射電極は4.5eVより小さい仕事関数を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
前記電子注入用金属層は4.5eVより小さい仕事関数を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
前記反射電極及び前記電子注入用金属層のうちの一つ以上は、銀(Ag)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、及びアルミニウム(Al)のいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項9】
前記電子注入用双極子層は、C60(Fullerene)、F16CuPc(Fluorinated Copper−phthalocyanine)、TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)、TCNNQ(11,11,12,12−tetracyano−1,4−naphthaquinodimethane)、PTCDI(perylene tetracarboxylic diimide)、NTCDI(1,4;5,8−naphthalene−tetracarboxylic diimide)、及びNTCDA(1,4,5,8−Naphthalene−tetracarboxylic−dianhydride)のいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項10】
前記透明電極上に前記電子注入用金属層、前記電子注入層、及び前記電子注入用双極子層が順次に積層されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項11】
前記電子注入層と前記電子注入用双極子層は互いに混合されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項12】
前記電子注入部と前記発光部との間に配置された電子輸送層をさらに含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項13】
前記有機発光層は、正孔注入層及び正孔注入用双極子層を含み、前記発光部と前記反射電極との間に配置された正孔注入部をさらに含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項14】
前記正孔注入用双極子層は、C60(Fullerene)、F16CuPc(Fluorinated Copper−phthalocyanine)、TCNQ(Tetracyanoquinodimethane)、TCNNQ(11,11,12,12−tetracyano−1,4−naphthaquinodimethane)、PTCDI(perylene tetracarboxylic diimide)、NTCDI(1,4;5,8−naphthalene−tetracarboxylic diimide)、及びNTCDA(1,4,5,8−Naphthalene−tetracarboxylic−dianhydride)のいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項13に記載の有機発光表示装置。
【請求項15】
前記正孔注入用双極子層は、双極子特性を有する金属酸化膜を含むことを特徴とする請求項13または14に記載の有機発光表示装置。
【請求項16】
前記双極子特性を有する金属酸化膜は、酸化モリブデン(molybdenum oxide)、酸化タングステン(tungsten oxide)、酸化バナジウム(vanadium oxide)、酸化レニウム(rhenium oxide)、及び酸化ルテニウム(ruthenium oxide)のいずれか一つ以上を含むことを特徴とする請求項15に記載の有機発光表示装置。
【請求項17】
前記発光部上に前記正孔注入用双極子層及び前記正孔注入層が順次に積層されることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項18】
前記正孔注入層と前記正孔注入用双極子層は互いに混合されることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。
【請求項19】
前記正孔注入部と前記発光部との間に配置された正孔輸送層をさらに含むことを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載の有機発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−216840(P2011−216840A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160685(P2010−160685)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】