説明

有機系廃棄物を利用した発電システム

【課題】有機系廃棄物からのエネルギー回収率を向上させた上に効率のよい発電を行うことができる石炭ボイラを使用した発電システムを提供する。
【解決手段】本発明の発電システムは、有機系廃棄物を水蒸気と130〜250℃の温度および0.2〜3MPaの圧力の条件下で接触させて、有機系廃棄物を微粒子状の乾燥物として排出する廃棄物処理装置1、該装置1から排出された乾燥物を保管して乾燥物中の水分を蒸発させる貯蔵槽2、該槽2から排出された乾燥物を石炭と共に粉砕する粉砕機5、粉砕機5から排出された混合燃料を燃焼させて高温高圧水蒸気に変換して排出する微粉炭ボイラ3、および発生した高温高圧水蒸気により発電する発電機4を備えており、微粉炭ボイラ3から排出された高温高圧水蒸気のわずかの部分が廃棄物処理装置1に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみ、魚腸骨、木質材料、下水汚泥、プラスチック、畜糞等の有機成分を含有する廃棄物(以下、「有機系廃棄物」という。)から効率的にエネルギーを回収して効率的な発電につなげる石炭ボイラを利用した発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機系廃棄物をエネルギーとして有効利用して資源循環型社会システム構築に貢献することを目的として、有機系廃棄物をボイラの燃料として燃焼させ、ボイラから発生した蒸気を利用して発電させる技術が検討されてきた。しかしながら、有機系廃棄物の種類によっては悪臭や腐敗の発生を考慮しなければならない上に、廃棄物をそのままボイラの燃料として燃焼させたのでは、廃棄物に含まれる塩素等の腐食性ガスがボイラの伝熱管を腐食させるため、蒸気条件(蒸気の温度と圧力)をあまり上げることができず、効率のよい発電を行うことができないという問題もあった。そのため、廃棄物に一定の処理を施した後で燃料として利用する技術が要請されている。
【0003】
これに対し、特開2000−283420号公報(特許文献1)は、廃棄物を破砕し、乾燥させた後、およそ350〜500℃で熱分解させて熱分解残渣を生成させ、この熱分解残渣から粒径1〜数10mmのチャーを選別した後、このチャーを移送し、別設備で燃料として燃焼させる廃棄物の燃料利用方法を提案している。上記別設備としては、発電所やセメント工場、製鉄所が例示されており、例えばチャーが発電所の石炭ボイラで石炭とともに燃料として利用されている。また、上述の廃棄物の熱分解のために必要なエネルギーを、熱分解の過程で生成される熱分解ガスを燃焼させることにより得た加熱ガスによって供給可能であることも記載されている。
【0004】
また、特開2003−94011号公報(特許文献2)は、有機系廃棄物を流体輸送可能なサイズに破砕した後、8〜10MPaおよび200〜250℃の亜臨界水で水熱処理して可溶化させ、次いで減圧冷却後の可溶化処理液を粗粉炭および石灰石と混合して燃料スラリを生成させ、該スラリを加圧流動層ボイラに燃料として供給する有機系廃棄物の処理方法を開示している。また、加圧流動層ボイラにて発生させる水蒸気を水熱反応装置における有機系廃棄物と水の混合物の加熱用熱源として利用可能であることも記載されている。
【0005】
これらの文献に開示された方法によると、有機系廃棄物を石炭代替燃料として発電することが可能になる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−283420号公報
【特許文献2】特開2003−94011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された方法によると、廃棄物を熱分解により粉末状のチャーとして移送するため、ハンドリング性がよくなると共に、悪臭や腐敗が発生する心配もなく、発電所等へ送り込むことが可能となる。しかしながら、この文献に記載された方法では廃棄物を350〜500℃で熱分解してチャーに変換させるため、この間に廃棄物の保有エネルギーの多くが熱分解ガスとして失われる。失われたエネルギーは廃棄物の熱分解のために利用されるものの、例えば微粉炭ボイラにチャーとして投入されるエネルギー量自体が少なくなるため、廃棄物から効率よくエネルギーを回収して石炭使用量の減少およびCO2排出量の削減へとつなげることが難しい。
【0008】
一方、特許文献2に開示された方法では、所要の発熱量を有する可溶化処理液を粗粉炭に混練して加圧流動層ボイラで燃焼させるため、可溶化処理液中の可燃性成分の燃焼熱も加圧流動層ボイラにおける高温高圧の燃焼ガスおよび水蒸気発生のための熱源の一部として利用可能である。しかしながら、この文献に記載された方法は特定形式のボイラを利用した方法であり、また8〜10MPaおよび200〜250℃の亜臨界状態での可溶化処理液の形成の過程で、有機系廃棄物の保有エネルギーが分解ガスとして失われる。さらに、加圧流動層ボイラで発生させる水蒸気の一部を利用して有機系廃棄物と水とを亜臨界状態にするために、比較的多くの水蒸気のエネルギーを消費するため、結果的に水蒸気による発電の効率が低下する。
【0009】
そこで、本発明の課題は、有機系廃棄物からのエネルギー回収率を向上させた上に効率のよい発電を行うことができ、その結果石炭ボイラにおける石炭の割合を減少させてCO2排出量の削減に寄与することができる、石炭ボイラを利用した改良された発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、有機系廃棄物を高温高圧の水蒸気と接触させて乾燥物として排出する廃棄物処理装置と、該廃棄物処理装置から排出された乾燥物を石炭と共に燃焼させて得られた熱を水蒸気に変換して排出する石炭ボイラと、該石炭ボイラから排出された水蒸気により発電する発電機とを備えており、上記石炭ボイラから排出された水蒸気の一部を廃棄物処理装置に供給し、130〜250℃の温度および0.2〜3MPaの圧力の条件下で有機系廃棄物と水蒸気とを接触させることにより、有機系廃棄物を微粒子状の乾燥物として排出することを特徴とする、有機系廃棄物を利用した発電システムにより達成されることを発見した。
【0011】
本発明において、「有機系廃棄物」という語は有機成分を含有する廃棄物全体を意味し、本発明では有機系廃棄物のいずれかまたはこれらの混合物を使用することができるが、天然物由来物質を含む有機系廃棄物を使用するのが好ましく、特に、埋め立ての立地条件や費用の点で逼迫した問題を抱えている食品廃棄物、下水汚泥、またはこれらの混合物などを有機系廃棄物として利用すると、上述の逼迫した問題の解決にも寄与できるため好ましい。
【0012】
本発明の構成において、有機系廃棄物と水蒸気とを上述の温度および圧力の条件下で接触させると、有機系廃棄物が水蒸気で蒸煮されるような状態となる。そして、廃棄物処理装置が水蒸気処理後に降温および減圧される過程で、例えば食品廃棄物に含まれる天然物由来成分の細胞の細胞膜および細胞壁が破壊され、細胞質が浸出する。その結果、有機系廃棄物が脱水され、分解および炭化が部分的に開始された状態の微粒子状の乾燥物が得られる。しかしながら、上述の温度および圧力の条件下では、処理前の有機系廃棄物の保有エネルギーが大幅に減少する程度まで分解および炭化が進行することがない。尚、本発明における「乾燥」の語は、上述のように、有機系廃棄物が脱水され、分解および炭化が部分的に開始した状態にすることを意味し、「乾燥物」とはこの「乾燥」によって得られた物質、すなわち部分的に分解および炭化が開始した物質を意味する。
【0013】
本発明において、廃棄物処理装置での処理は、130〜250℃の温度および0.2〜3MPaの圧力の条件下で行われる。温度および圧力が上述の条件より低いと乾燥が充分でないため石炭ボイラで乾燥物が燃焼しにくく、また微粒子状の乾燥物が得られにくい。温度および圧力が上述の条件より高いと有機系廃棄物の保有エネルギー量が大幅に失われるため、有機系廃棄物のエネルギー利用効率が低くなる。一方、有機系廃棄物と水蒸気との接触処理時間は、装置内の温度および圧力、および装置の容量(容量により、装置内の温度および圧力が上述の条件になるまでの時間が異なる。)に依存するが、一般には3分〜90分の範囲である。
【0014】
本発明の発電システムでは、有機系廃棄物の保有エネルギーが大幅に失われない状態で微粒子状の乾燥物に転換し、これを石炭と混合して石炭ボイラで燃焼させて発電するため、有機系廃棄物からのエネルギー回収率を向上させることが可能であり、石炭の使用量を効率的に減少させることが可能になる。また、石炭ボイラから排出される水蒸気のわずかな部分をそのまま加温加圧することなく有機系廃棄物の処理のために使用するだけで済むので、石炭ボイラから排出される水蒸気のほとんどを発電のために使用することができ、結果として効率のよい発電が可能である。さらに、後述するが、本発明の発電システムは、システム全体として良好なエネルギー収支を示し、本発明のシステム全体に含まれる機器の動作を行ってもなお大量の余剰電力を発生しうるため、余剰の電力を他の目的のために有効利用することができる。
【0015】
尚、有機系廃棄物を水蒸気で処理する先行技術において、廃棄物の発熱量を損失させない技術自体は公知である。例えば、特許3613567号公報は、処理容器内に投入された廃棄物に高圧水蒸気を注入し、廃棄物の結合分子を分離することにより微細化した、ガス化発電用の燃料に適した性状の燃料を製造する方法を開示している。この文献では、廃棄物の種類によってガス化発電用の燃料に適した性状にするための処理条件が異なることを指摘し、生ごみ、下水道汚泥、魚残渣、家畜糞、イカの肝臓(イカゴロ)、ホタテ貝の中腸腺(ホタテウロ)の6種類の各々に対して詳細に処理条件を規定している。しかしながら、この文献は他の種類の有機系廃棄物の処理、および処理物の石炭ボイラにおける石炭との混合燃焼システムについては何ら記載していない。
【0016】
石炭ボイラでの燃焼性を向上させるためには、乾燥物の水分が少ない方が好ましい。このため、本発明の発電システムにさらに廃棄物処理装置から排出された乾燥物を保管する貯蔵槽を備え、貯蔵槽において乾燥物の水分を蒸発させた後、石炭ボイラに投入するのが好ましい。
【0017】
本発明では、上述の条件下での有機系廃棄物と水蒸気との接触により予め微粒子状の乾燥物が得られるため、石炭ボイラとしては微粉炭ボイラまたは流動層ボイラを好適に使用することができる。有機系廃棄物を大量に処理して多くの発電量を得る電気事業のためには微粉炭ボイラを使用するのが好ましい。
【0018】
微粉炭ボイラを使用する場合には石炭を粉砕後にボイラに供給するが、本発明では、上述のように既に微粒子状の乾燥物が得られているため、本発明のシステムに廃棄物処理装置または貯蔵槽から排出された乾燥物と石炭とを混合して粉砕する粉砕機をさらに備えておくと、粉砕機内で石炭と乾燥物とが極めて均一に短時間で粉砕混合され、その結果、着火性に優れた燃焼性のよい混合燃料が得られる。従って、粉砕機を稼動するための電力消費量も少なくて済み、他の目的に使用可能な余剰電力をさらに増加させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発電システムによると、有機系廃棄物からのエネルギー回収率を高めることができるため、石炭ボイラにおける石炭の割合を確実に減少させることができ、CO2排出量の削減に貢献することができる。また、石炭ボイラから排出される水蒸気のわずかな部分をそのまま処理のために使用すれば充分であるため、石炭ボイラから排出される水蒸気のほとんどを発電のために使用することができ、結果として効率のよい発電が可能である。その上、システム全体として良好なエネルギー収支を示し、本発明のシステム全体の動作を行ってもなお余剰の電力を発生することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の発電システムの実施形態を説明する。
【0021】
第1実施形態
図1は、本発明の発電システムにおける基本的な実施の形態の構成を示した概略図である。
【0022】
本実施の形態の発電システムにおいて、有機系廃棄物は、まず廃棄物処理装置1において処理される。この廃棄物処理装置1は、廃棄物導入口と、水蒸気導入口と、処理後の乾燥物を排出する乾燥物排出口と、使用後の水蒸気を排出するための水蒸気排出口とを備えた耐圧容器を備えている。また、耐圧容器には攪拌機が備えられており、導入された水蒸気と有機系廃棄物との均一混合が可能なようになっている。そして、耐圧容器内に廃棄物導入口を介して有機系廃棄物が導入され、後述する石炭ボイラ3から供給される高温高圧水蒸気が水蒸気導入口を介して導入され、所定温度および所定圧力下で、所定時間、攪拌されつつ接触処理が行われるようになっている。接触処理の温度、圧力、および時間は有機系廃棄物の種類および量に依存して変更可能である。接触処理終了後の水蒸気は、水蒸気排出口から大気圧に開放され、凝縮水として排出されるようになっている。この水蒸気の排出と共に、耐圧容器内の温度が低下し、圧力も低下する。そして、処理を終了した乾燥物が、乾燥物排出口から大気中に排出されるようになっている。
【0023】
尚、廃棄物処理装置1は、上述のような回分式の装置に換えて、連続式の装置にしてもよい。連続式の廃棄物処理装置1は、有機系廃棄物を入り口から出口に所定滞留時間に応じて移動させるスクリューを内部に有する耐圧バレルを有しており、廃棄物フィーダーにより有機系廃棄物を入り口から上記耐圧バレルに供給し、発電機3からの高温高圧水蒸気を供給して有機系廃棄物と接触させながら上記スクリューにより出口まで移動させ、連続式の圧力開放取り出し口より水蒸気を連続的に大気圧に開放し、減圧後の乾燥物を連続的に大気中に開放するように構成される。
【0024】
本実施の形態の発電システムは、廃棄物処理装置1から排出された乾燥物を保管し、貯蔵の間に乾燥物中の水分を蒸発させる貯蔵槽2を有している。貯蔵槽2としては一般的な容器を使用することができ、場合により撹拌器を備えることもできる。
【0025】
本発明の発電システムは、さらに乾燥物と石炭とを燃料として燃焼させる石炭ボイラ3を備えている。石炭ボイラ3としては、慣用の流動層ボイラまたは微粉炭ボイラを使用することができる。これらの石炭ボイラ3には、石炭および乾燥物の導入口が備えられており、石炭と乾燥物が石炭ボイラ3中で燃焼されるようになっている。一方、燃焼熱は水蒸気に変換されて排出されるようになっており、水蒸気のほとんどの部分が慣用の発電機(蒸気タービン)4に供給され、水蒸気の残りの部分が廃棄物処理装置1の水蒸気導入口に供給されるようになっている。
【0026】
上述の構成を有する本実施の形態の発電システムは、以下のように動作する。
【0027】
まず、有機系廃棄物は、廃棄物処理装置1に投入され、石炭ボイラ3から供給された高温高圧の水蒸気と攪拌機により攪拌されつつ混合され、130〜250℃の温度および0.2〜3MPaの圧力の条件下、好ましくは180〜210℃の温度および1.0〜2.0MPaの圧力の条件下で、回分法または連続法により処理される。
【0028】
本実施の形態の発電システムでは、有機系廃棄物として、例えば、生ごみおよび魚腸骨等の食品の生産、流通および消費の各段階で廃棄される食品廃棄物、木片等の木質材料、古紙、古布、下水汚泥、泥炭、ゴム、プラスチック、畜糞等の有機成分を含有する廃棄物のいずれかまたはこれらの混合物を使用することができる。特に、天然物由来物質を含有する有機系廃棄物を使用するのが好ましく、特に食品廃棄物、下水汚泥、またはこれらの混合物を利用すると、埋め立て処分における立地条件や費用に関する逼迫した問題を解決できるため好ましい。さらにゴムおよびプラスチックの合成物も、好適には粗粉砕した後、好適には天然物由来物質を含有する廃棄物と混合して、本実施の形態の発電システムにおいて使用することができる。
【0029】
本実施の形態において、有機系廃棄物と水蒸気とを上述の温度および圧力の条件下で接触させると、有機系廃棄物に含まれる水が蒸発し、廃棄物処理装置内はこの蒸発した水蒸気と石炭ボイラから排出された水蒸気とで充満され、有機系廃棄物が水蒸気で蒸煮されるような状態となる。そして所定時間の処理の後、水蒸気は大気圧に開放されて凝縮水として回収され、発電所内の排水処理装置に給送される。
【0030】
一方、有機系廃棄物の処理物は、水蒸気の排出に伴う装置1内の温度および圧力の低下の過程で、例えば食品廃棄物に含まれる肉や野菜、下水汚泥に含まれる微生物の細胞膜および細胞壁が破壊され、細胞質が浸出し、結果として有機系廃棄物の脱水および部分的な分解および炭化が進行する。さらに、有機系廃棄物に含まれている石炭ボイラ等に悪影響を及ぼす可能性のある腐食成分などは、廃棄物処理装置内での処理中に分解され、または上記凝縮水に溶け込む。
【0031】
本実施の形態では、上記温度および圧力の条件下では、乾燥物の保有エネルギーが大幅に減少するまで分解および炭化が進行することがない。有機系廃棄物の保有エネルギーの約80%以上、好適には90%以上、特に好適には95%以上が保持される。従って、有機系廃棄物からのエネルギー回収率を高めることが可能となる。そして、処理後の乾燥物は、約5mm以下、好適には0.1〜3mmの粒径の微粒子状の乾燥物として廃棄物処理装置1から排出される。例えば、生ごみや下水汚泥はもろくて崩れやすい粒子に転換されるため、極めて着火性のよい燃料となる。
【0032】
本実施の形態では、温度および圧力が上述の条件より低いと乾燥が充分でないため石炭ボイラで燃焼しにくく、また、微粒子状の乾燥物が得られにくい。一方、温度および圧力が上述の条件より高いと、乾燥物の乾燥状態の制御が難しくなり、乾燥物の保有エネルギー量が小さくなるため有機系廃棄物の利用効率が低くなる。また、回分法の場合の有機系廃棄物と水蒸気との接触処理時間は、廃棄物処理装置1内の温度および圧力、および該装置1の容量に依存し、温度が高く、圧力が高く、装置1の容量が小さいほど時間が短くなるが、一般には3分〜90分の範囲であり、10〜30分の範囲が好ましい。
【0033】
次いで、廃棄物処理装置1から排出された乾燥物は、貯蔵槽2に供給され、槽内で所定期間、例えば6時間〜2日間放置される。本実施の形態では、上述したように、廃棄物処理装置1における処理により天然物由来物質を含有する廃棄物の細胞の細胞壁や細胞膜が破壊され、細胞質が浸出する。この過程で細胞から発生した水分は蒸発して廃棄物処理装置1から排出されるが、乾燥物上にも吸着する。この吸着水が貯蔵槽2での保管の間に蒸発し、乾燥物の含水率が好適には50〜60%の含水率から20〜30%程度に減少する。
【0034】
貯蔵槽2から排出された含水率の低下した乾燥物は、石炭ボイラ3で石炭と共に燃焼され、燃焼熱は水蒸気に変換されて排出され、水蒸気の大部分は慣用の発電機(蒸気タービン)4に供給される。有機系廃棄物の乾燥のために使用される水蒸気の量は非常に少なく、例えば、水蒸気全体の約1%に過ぎないボイラの灰落としやボイラへの投入空気の余熱などに用いる補助水蒸気の一部が、廃棄物処理装置1の水蒸気導入口に供給されて有機系廃棄物の乾燥のために使用される。発電機4から得られた電力の一部は、本実施の形態の発電システムに含まれる各機器の駆動のために供給される。
【0035】
第2実施形態
図2は、上述の基本的な実施形態の変形形態の構成を示している。以下、異なる点のみ説明する。
【0036】
図2に示す実施の形態では、貯蔵槽2から排出された乾燥物を石炭と混合して粉砕するための粉砕機5が備えられている。粉砕機5としては、慣用の石炭ミルを使用することができる。また、この実施の形態では、石炭ボイラとして微粉炭ボイラ3´が使用される。この実施の形態では、粉砕機5中で、貯蔵槽2から排出された乾燥物と石炭とが混合されて粉砕され、均一な混合燃料が得られる。粉砕機5における粉砕時間は、石炭が少なくとも約75μmの粒径になるまで継続される。粉砕機5からの排出物は、微粉炭ボイラ3´において燃焼され、燃焼熱が水蒸気に変換されて排出される。
【0037】
一般に流動層ボイラより微粉炭ボイラの方が容易に大規模化しうるため、有機系廃棄物を大量に処理して多くの発電量を得る電気事業のためには、微粉炭ボイラを使用するのが好ましい。そして、本発明では、上述のように、有機系廃棄物と水蒸気との上述の温度および圧力の条件下での接触により予め微粒子状の乾燥物が得られるため、微粉炭ボイラを利用する発電に適している。
【0038】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、変更が可能である。例えば、貯蔵槽を設けずに廃棄物処理装置から排出された乾燥物を直接石炭ボイラまたは粉砕機に供給することも可能であり、また、廃棄物処理装置1の水蒸気排出口から排出された水蒸気を貯蔵槽2の周囲に巡らせ、貯蔵槽3の加温のために使用するようにしてもよい。
【実施例】
【0039】
図3に、図2に示す発電システムと同様のシステムを使用し、有機系廃棄物として下水汚泥を使用した場合の実施例を示す。尚、本発明は以下の実施例に限定されず、下水汚泥の処理量、発電量等の数値もあくまで一例に過ぎない。
【0040】
実施例では、廃棄物処理装置1において、下水処理場の含水率80%の脱水汚泥を1時間に付き2.0tの割合で、攪拌機で攪拌しながら処理した。この処理のために、微粉炭ボイラ3´から排出された温度250℃および圧力2.0Mpaの水蒸気が1.0t/時間の流量で供給された。廃棄物処理装置1の温度および圧力は、供給された水蒸気の温度および圧力と同じに調整した。廃棄物処理装置1から排出された水蒸気は、凝縮水として2.1t/時間の流量で排出され、発電所内の排水処理装置へ給送された。一方、乾燥物(処理後の下水汚泥)はもろく崩れやすく、その粒径は約0.1〜5mmの範囲であり、含水率は55%であった。この乾燥物を貯蔵槽2の中で2日間保管したところ、乾燥物の含水率は29%に低下した。
【0041】
貯蔵槽2から乾燥物を0.6t/時間の流通量で、石炭槽から石炭を164.7t/時間の流通量で、それぞれ石炭ミル(粉砕機)に供給し、石炭が約75μmになるまで粉砕し、混合燃料を微粉炭ボイラで燃焼させた。燃焼熱は水蒸気として排出され(熱効率:90%)、1491t/時間の水蒸気は蒸気タービン4´に供給され、500MWの発電量が達成された。電力の一部は本システムの駆動のために用いられ、残部は売電された。一方、高圧補助蒸気ヘッダからの補助蒸気の一部にあたる1.0t/時間の蒸気が廃棄物処理装置1における下水汚泥の処理のために使用された。
【0042】
本発明により、下水汚泥からの効果的なエネルギー回収および石炭使用量の減量化が達成されたことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の発電システムにおける基本的な実施の形態の構成を示した概略図である。
【図2】本発明の発電システムにおける別の実施形態の構成を示した概略図である。
【図3】実施例の発電システムを説明した図である。
【符号の説明】
【0044】
1 廃棄物処理装置
2 貯蔵槽
3 石炭ボイラ
3´ 微粉炭ボイラ
4 発電機
4´ 蒸気タービン
5 粉砕機
5´ 石炭ミル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系廃棄物を高温高圧の水蒸気と接触させて乾燥物として排出する廃棄物処理装置と、
該廃棄物処理装置から排出された乾燥物を石炭と共に燃焼させ、得られた熱を水蒸気に変換して排出する石炭ボイラと、
該石炭ボイラから排出された水蒸気により発電する発電機と、
を備えており、
前記石炭ボイラから排出された水蒸気の一部を前記廃棄物処理装置に供給し、130〜250℃の温度および0.2〜3MPaの圧力の条件下で有機系廃棄物と水蒸気とを接触させることにより、有機系廃棄物を微粒子状の乾燥物として排出することを特徴とする、有機系廃棄物を利用した発電システム。
【請求項2】
前記廃棄物処理装置における有機系廃棄物と水蒸気との接触処理時間が3〜90分であることを特徴とする、請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
有機系廃棄物が、食品廃棄物、下水汚泥、またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項4】
さらに、前記廃棄物処理装置から排出された乾燥物を保管する貯蔵槽を含み、該貯蔵槽において乾燥物の水分を蒸発させた後、石炭ボイラに投入することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項5】
前記石炭ボイラが微粉炭ボイラまたは流動層ボイラであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発電システム
【請求項6】
さらに、石炭と前記廃棄物処理装置または前記貯蔵槽から排出された乾燥物とを混合して粉砕する粉砕機を含み、
該粉砕機から排出された乾燥物と石炭との混合燃料を微粉炭ボイラで燃焼させることを特徴とする、請求項5に記載の発電システム。
【請求項7】
発電機から得られた電力により、前記廃棄物処理装置、前記石炭ボイラ、および、存在する場合には前記粉砕機が駆動されるようになっていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−101503(P2010−101503A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270507(P2008−270507)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】